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低負担ヘルスケアに向けた低電圧バイオセンシング 技術の開発
低負担ヘルスケアに向けた低電圧バイオセンシング技術の開発 133 低負担ヘルスケアに向けた低電圧バイオセンシング 低負担ヘルスケアに向けた低電圧バイオセンシング 技術の開発 技術の開発 * ** 新 津 葵 一 新 津 葵 一 Development Low-voltage Biosensing Human-harmonic Healthcare Development of of Low-voltage Biosensing forfor Human-harmonic Healthcare *Kiichi ** Kiichi Niitsu Niitsu Development of low-voltage biosensing technology for human-harmonic healthcare is reported. Lowvoltage operation enables low power consumption, which allows small battery size. For developing low-voltage biosensing, we have introduced time-domein circuit architecture. Comparing with conventional voltage-domain circuit architecture which requires high-voltage-operation analog circuitries using stacked transistors, timedomain circuit architecture can be composed by low-voltage-operation and digital circuitries. Since digital circuitries are familier with CMOS device scaling, the proposed time-domain biosensing circuit can be improved its performance by introducing scaled CMOS process. 1.はじめに 本研究においては、CMOS(シーモス、 相補型金属酸化膜半導体電界効果トラン 電圧 ジスタ)集積回路製造プロセスの微細化に 適応した時間分解能回路を用いて低電圧 動作が可能なバイオセンシングを実現し、 電源電圧 5V @旧型 CMOS 低負担なヘルスケアへの発展を目指す。 健 康社会の礎となる医療技術は目覚しい発 展を遂げており、 長寿命化に貢献している 電圧領域回路 (トランジスタ縦積み:多) 高電源電圧 (高消費電力) 時間分解能回路を用いた 低電圧バイオセンシングの導入 (本研究) が、 健康寿命はあまり向上しておらず平均 寿命との差である不健康期間は近年拡大 傾向にある。 その主要因が生活習慣病であ り、 特に近年社会問題となっているのが糖 計測 尿病である。糖尿病は、血糖値の調整機能 時間 が低下する疾病であり、その治療・予防に おいては血糖値の継続的な計測が重要で ある。しかしながら、既存技術は高消費エ ネルギーならびにバッテリー駆動であるが 電源電圧 0.5V @先端 CMOS 針 時間領域回路 (トランジスタ縦積み:少) 低電源電圧 (低消費電力) 故にサイズが大きく、 患者負担が大きいた めにあまり普及にはいたっていない。 本研究においては、 常時血糖計測を行う バイオセンシングの回路技術の改良によ 図1.時間分解能回路を用いた低電圧バイオセンシング: 低負担ヘルスケアの実現を目指す り,熱や電磁波といった環境からの発電による起電圧で動作可能でバッテリー不要なバイオセンシングの実現を目指す。 従来バイオセンシングに用いられていた電圧領域回路はトランジスタの縦積み段数の多いアナログ回路が用いられており、 低電圧動作は困難であった。我々がこれまでに取り組んできた時間分解能回路 1)はデジタル回路で構成されるためにトラ ンジスタの縦積み段数が少ないため、低電圧動作が可能となる。さらに、デジタル回路が微細化との親和性が高いために 半導体製造プロセスの微細化に伴って性能の向上が可能となる。環境発電での動作が実現可能となる水準(0.5V)まで低電 圧動作化を行い、低負担な常時血糖計測の実現を目指す。 2016 年 3 月 11 日 受理 * *豊田理研スカラー 名古屋大学大学院工学研究科電子情報システム専攻 2.実験手法 134 低負担ヘルスケアに向けた低電圧バイオセンシング技術の開発 時間分解能回路による低電圧バイオセンシング (血糖値からデジタル値への変換)の可能性を確か 2.実験手法 パルス入力 めるために低電圧・血糖値―パルス幅変換回路技 ÆĆôë¥þWadĉ§{ijtql 時間分解能回路による低電圧バイオセンシング 術の確立を行う。図2に血糖値―パルス幅変換回 íäFbwru[XªÂX£ë¹gÛF (血糖値からデジタル値への変換)の可能性を確か VDD >?; パルス入力 路の回路図ならびにその動作をしめす.パルス入 _dQ_Wĉ§íä>|s²ªÂ¥þ½ めるために低電圧・血糖値―パルス幅変換回路技 力によってトランジスタ M1 がオンし,キャパシタ ïXÛàgîD@¦ēWíä>|s²ªÂ¥ 術の確立を行う。図2に血糖値―パルス幅変換回 C路の回路図ならびにその動作をしめす.パルス入 に電荷が充電されキャパシタの端子電位 Vn が上 þX¥þ¦VbZWPXgM_Nđ|s 昇する.Vn はトランジスタ M3 のゲート端子に接 WaRSxrsu k|qu 力によってトランジスタ M1 GjMď がオンし, キャパシタ がしきい値電圧 Vth を下回るタ 続されており,Vn $2 C WĉìGĉLek|quXá«ĉ に電荷が充電されキャパシタの端子電位 Vn G が上 イミングによって出力パルス幅が決まる. C からの ÅNdđ$2 昇する.Vn Yxrsu はトランジスタ M3 Xnxá«WÁ のゲート端子に接 放電電流を引き抜くトランジスタ をサブスレッ èLeSEcď$2 $7g¥du 続されており,Vn GMHCĉ§ がしきい値電圧M2 Vth を下回るタ ショルド領域で動作させると, C から放電される ilWaRS|s²GÎ\dđ Fb イミングによって出力パルス幅が決まる.C からの 電流量は電極電圧(M2 のゲート電圧)の指数関数と XÃĉĉÑg´H¾Ixrsu gp}s 放電電流を引き抜くトランジスタ M2 をサブスレッ なるため,放電時の傾きは電極電圧の指数関数と FbÃĉLe vqyĊ¨TLOdU ショルド領域で動作させると, C から放電される なる.ネルンストの式より電極電圧は血糖値に対 dĉÑąYĉÌĉ§ Xnxĉ§X¿ÄćÄ 電流量は電極電圧(M2 のゲート電圧)の指数関数と 数比例することが知られているため,線形での血 UVdQ_ďÃĉÆXHYĉÌĉ§X¿ÄćÄ なるため,放電時の傾きは電極電圧の指数関数と 糖値-パルス変換が可能となる。我々は当該回路 UVdđzsxX³acĉÌĉ§YíäW なる.ネルンストの式より電極電圧は血糖値に対 を 600nm CMOS プロセスで試作・実証済みである 2) ®ÄÍNdKUGÙbeSCdQ_ďé¶TX 数比例することが知られているため,線形での血 パルス パルス出力 入力 充電 M1 VDD DD 放電) 充電 M11 M2 Vn VnnC >?; パルス >?; パルス出力 入力 M3 M33 Vn Cに充電 t C4) Cに充電 放電(点線): t 傾きは電極電圧 と指数関係 )(")E 放電(点線): t .6)) 傾きは電極電圧 2' と指数関係 V Vthnn 電極 ) 放電 C -2 10 M 22 9dec/V= -3 0.009dec/mV Vth 10 ) th 電極 パルス 出力 10-2 -4 試作集積回路 10 -2 出力 出力 パルス -5 9dec/V= 10-3 0.009dec/mV パルス幅 -3 幅[s] 10 測定結果 -6 >?; (血糖値 パルス 10-4 出力 10 -4 %(& 試作集積回路 に比例) 出力 出力 >?; -7 パルス 10-5 10 -50.4 >?; パルス幅 0.6 0.8 1.0 [s] 幅[s] ! ($ 測定結果 電極電圧[V](ネルンストの式より決定) -6 (血糖値 10-6 4) に比例) -7 -7 図2. 低電圧血糖値-パルス幅変換回路: 10 0.4 0.6 0.8 1.0 電極電圧が血糖値に対数比例し,パルス幅(放電の傾き)が電極電圧と ))[V](=?@;<589) 電極電圧[V](ネルンストの式より決定) 指数関係にあるため,線形での血糖値-パルス幅変換が可能となる t t t DC B>?;&E 図2. )$ 低電圧血糖値-パルス幅変換回路: ))-$ 4/A>?;*)5.+-))2 電極電圧が血糖値に対数比例し,パルス幅(放電の傾き)が電極電圧と '4,:07A"15$ B>?;-#23: が、より先端のプロセスで実装することによりさらなる低電源化が期待される。バイオセンシングにおいては、酸化還元 指数関係にあるため,線形での血糖値-パルス幅変換が可能となる íäĐ|sªÂG£ëUVd@¼AYµú¥ 糖値-パルス変換が可能となる。我々は当該回路 3) 2) や酸化還元電位を用いたDNA検出 4)、グルコース検出 5)に成 法を用いる。我々は酸化還元電流を用いたがん細胞検出 ! ~ tsTù÷Ó]TBd þg 21 を 600nm CMOS プロセスで試作・実証済みである 功しており、今までに培った技術を活用して取り組む。 G?acáX~ tsTðNdKUWacLbVdĉÔ GÇ·Led@{ijtqlWECSY?Ą ă が、より先端のプロセスで実装することによりさらなる低電源化が期待される。バイオセンシングにおいては、酸化還元 4) ?losË `Ą ăĉgÖCQĘęėË W ÏgÖCd@¼AYĄ ăĉÑgÖCQGhåêË 、グルコース検出 5)に成 法を用いる。我々は酸化還元電流を用いたがん細胞検出 3)や酸化還元電位を用いたDNA検出 3.結果と考察 »MSEc?\TW©RQ½ïgÐÖMS¢cæ^@ 功しており、今までに培った技術を活用して取り組む。 先端プロセスでの半導体集積回路の試作・評価を行った結果、時間領域回路での動作を確認した。さらに、小面積でも パルス出力をデジタル変換可能な時間デジタル変換器の開発にも成功した。 サイクリック動作を導入することで小面積で 3.結果と考察 も高ダイナミックレンジの時間デジタル変換を実現することに成功した。 á~ tsTX¡°ĈÞ¥þXùøgîRQçÊ?ÆĆĊ¨¥þTXgÛûMQ@ 先端プロセスでの半導体集積回路の試作・評価を行った結果、時間領域回路での動作を確認した。さらに、小面積でも パルス出力をデジタル変換可能な時間デジタル変換器の開発にも成功した。サイクリック動作を導入することで小面積で 4.将来展望 も高ダイナミックレンジの時間デジタル変換を実現することに成功した。 本研究を発展させ、さらなる低電源化ならびに低電力化に取り組みたい。また、血清等のより実用に近いケースを想 ÈÚßg×±LO?LbVdĉÔ VbZWĉ W¢cæ]QC@\Q?íÒâXacÖWÿCmsgº¬ 定しての実験・実証を行い、社会実装への足掛かりとしたい。複数世代での半導体集積回路の設計・試作を通して、バ MSXċ÷gîC?Ýð[XýÀFcUMQC@òÄTX¡°ĈÞ¥þXöõùgĀMS?{ij 4.将来展望 イオセンシングにおける半導体集積回路製造プロセス微細化との親和性を理論的に検証し、将来にわたる高性能化への tqlWEJd¡°ĈÞ¥þñā~ ts¸å UXó¤¹gÕüØWË÷M? ¯ÉWfQdČ¹ë [XĂãg 本研究を発展させ、さらなる低電源化ならびに低電力化に取り組みたい。また、血清等のより実用に近いケースを想 道筋を示したい。 ÜMQC@ 定しての実験・実証を行い、社会実装への足掛かりとしたい。複数世代での半導体集積回路の設計・試作を通して、バ イオセンシングにおける半導体集積回路製造プロセス微細化との親和性を理論的に検証し、将来にわたる高性能化への REFERENCES 道筋を示したい。 (1)K. Niitsu, M. Sakurai, N. Harigai, T. J. Yamaguchi, and H. Kobayashi, "CMOS Circuits to Measure Timing Jitter čĒĎ..768!&/85&.&5.,&."%&1&,8(-.&2)3'&<&6-.!.5(8.7673*&685*".1.2,.77*5#6.2, Using a *+*5*2(*)03(/&2)&&6(&)*)".1*.++*5*2(*140.+.*5:.7-87<<(0*314*26&7.323852&03+ Self-Referenced Clock and a Cascaded Time Difference Amplifier with Duty-Cycle Compensation," IEEE Journal &!*0+ REFERENCES of Solid-State Circuits, vol. 47, no. 11, pp. 2701-2710, Nov. 2012. !30.)!7&7*.5(8.76930234439 (1)K. Niitsu, M. Sakurai, N. Harigai, T. J. Yamaguchi, and H. Kobayashi, "CMOS Circuits to Measure Timing Jitter (2)M. Takihi, K. Niitsu, and K. Nakazato, "Charge-Conserved Analog-to-Time Converter for a Large-Scale CMOS čēĎ"&/.-...768&2)&/&=&73-&5,*326*59*)2&03,73".1*329*57*5+35&&5,*!(&0*! Using a Self-Referenced Clock and a Cascaded Time Difference Amplifier with Duty-Cycle Compensation," IEEE Journal Bionsensor Array," in Proc. IEEE Int. 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Niitsu, J. Tanaka, Y. Ishige, M. Kamahori, and K. Nakazato, "An Extended-Gate CMOS Sensor Array with čĕĎ3135...768"&2&/&%6-.,*&1&-35.&2)&/&=&732;7*2)*)&7*!!*263555&<:.7- Electroless Plating for CMOS-Based Direct Counting of Bacterial and HeLa Cells," IEEE Transactions on Biomedical Enzyme-Immobilized Microbeads for Redox-Potential Glucose Detection," in Proc. IEEE Biomedical Circuits and 2=<1*113'.0.=*).(53'*&)6+35 *)3;37*27.&008(36**7*(7.32.253(.31*).(&0.5(8.76&2)!<67*16 Circuits and Systems, vol. 9, no. 5, pp. 607-619, Nov. 2015. Systems Conference (BioCAS 2014), Oct. 2014, pp. 464-467. 32+*5*2(*.3!(744 (4)H. Komori, K. Niitsu, J. Tanaka, Y. Ishige, M. Kamahori, and K. Nakazato, "An Extended-Gate CMOS Sensor Array with (5)H. Ishihara, K. Niitsu, and K. Nakazato, "Analysis and Experimental Verification of DNA Single Base Polymerization čĖĎ6-.-&5&..768&2)&/&=&732&0<6.6&2);4*5.1*27&0$*5.+.(&7.323+!.2,0*&6*30<1*5.=&7.32 Enzyme-Immobilized Microbeads for Redox-Potential Glucose Detection," in Proc. IEEE Biomedical Circuits and Detection Using CMOS FET-Based Redox Potential Sensor Array," Jpn. J. Appl. Phys., vol. 54, no. 4S, 04DL05 (6 *7*(7.32#6.2,!"&6*) *)3;37*27.&0!*263555&<42440-<693023!4&,*6 Systems Conference (BioCAS 2014), Oct. 2014, pp. 464-467. pages), Mar. 2015. &5 (5)H. Ishihara, K. Niitsu, and K. Nakazato, "Analysis and Experimental Verification of DNA Single Base Polymerization Detection Using CMOS FET-Based Redox Potential Sensor Array," Jpn. J. Appl. Phys., vol. 54, no. 4S, 04DL05 (6 pages), Mar. 2015.