Comments
Description
Transcript
Untitled
ハートムーン 三月 愁 目次 君に届けたい ハートムーン 逢いに行くよ 夏・恋・花火 雨音を待って 初恋 Little girl W RAINBOW 短編小説 ガラスのオブジェ 春の涙 隣の芝生は… 雨上がりは君の空 着信音が HELLO を告げる Boy Friend 風見鶏 僕の日常 青いフラグ Happy Valentine ラブレター 窓に昇る月 銀河の星 君が眠りに落ちるまで 迷宮 ひと夏の宿題 夜明けに降る星 帰り道 ヴォイス 月下美人 タイムリミット 化身 Silent 君と僕の それからの未来 未来に吹く風 エピソード 黒い翼 輪廻 意地と見栄とで明日は晴れる 僕は夜に沈む 果てなく遥か 浅黄色のマフラー 最後の一葉 あした 2 ハートムーン 白い闇 らしくないって .. 美しい雨 白い帆船 螢雪 3 君に届けたい 散り始めた桜 あの日の君の笑顔は忘れ物 何度でも僕は取りに戻るよ 君は涙をビーズに変えては微笑んだ その横顔は僕だけが知ってると言わせて すれ違う言葉たちが戸惑う心を迷子にしてゆくけど 君のまっすぐな視線はいつも嘘がないから 君がまだ気づかない君に気づいてよ 風が青く染まる 君は重い扉を開け始めた 探し物は見つけられたかな 君の心に触れるたびはじめての気持ち 伝えたい言葉がただひとつだけ言えない なにげない優しさで君が笑えるなら僕は風になるから 君の一番近くでそっと届けたい 桜の樹の下で 僕が見つけた君を 4 ハートムーン 逢いに行くよ 虫ピンで貼りついた心 無理にひきはがして 追われるように部屋を出てゆけば 誰かの鳴った携帯が Run Run Run と急きたてる ビルの隙間でしぼんだ空はもう色を失くしてる 紙ヒコーキに乗せた夢は気ままに風にのり ビルの谷間をすりぬけていった 週末君に逢いに行くよ すれ違うたび転がる不安は無意味なほどに 今日もなにかと心をかき乱す アイ アイ アイ 誰かの投げたシグナルがI・I・Iと叫んでる 人の波に埋もれてもそれでも今を生きてゆく どこかに落ちた紙ヒコーキ 泥にまみれても また拾いあげ空に飛ばすよ 明日は君に逢いに行くよ 5 雨音を待って 優しい雨は髪をつたって 頬を濡らして 心の奥にしみこんでゆく あなたを待って 雨が降る音で目覚めた朝は あなたを待って 雨音だけが言葉の代わり ただ あなたと逢えるだけの雨の日が 夏の匂いに近づいてゆく あの日雨は嘘を濡らした 夢を濡らして あなたの哀しみも濡らしてた 朝が来れば 冷たい雨は雪に変わる 朝が来れば めぐるのはあなたの消えた季節 目を閉じれば緑陰を濡らす雨に あなたの横顔がかすんでゆく 6 ハートムーン 目覚めてゆく春めいた朝 僕は足を止めて 透明な空を見上げてた 7 Little girl 雨を吸い込んだアスファルト 君の軽い足どりが空から雲を追い払う 予定は未定 気の向くままに 君がまとう光と影は ひと振りで変わる万華鏡 鮮やかなコントラスト Little girl 答えを導くベクトルはまだ君の中で眠ってる 閉め忘れた窓の隙間 傾いた淡い光は君の影を揺らしてる 12 の星座は眠りを忘れ かけ違えた夢と現実は 不機嫌な天使が紡いだ 未完成な物語 Little girl 瞳に隠すシグナルは また誰かを探してる 8 ハートムーン 短編小説 夕闇がため息を包み 読みかけの小説にどこにも行けない想いを閉じる 時を刻む針は冷たい音をたて 夜はモノローグを綴り始める 繰り返す想いは短編小説 誰も知らない短編小説 街路樹がまた冬をまとい あなたの部屋に残したままの心がまだ帰れない ありふれた孤独に街は暮れてゆくから 訪れる長い夜におびえてる 変わらぬ結末の短編小説 “ 哀 ” と名付けた短編小説 9 春の涙 緋色から群青へと移ろう空が かげりゆく街を物憂げに見下ろした 君の心の隙間を探してる僕は どうしようもなく おろかだね 重ね合わせても その赤いくちびるは冷たくて 熱を持たない火傷はきっと深く胸を侵してる 雨のように舞い落ちてゆく花びらは 音もなくこぼれた春の涙みたいだ 瞳にお互いを映しても ふたりは 違う言葉を抱いている 夜明けにひとり冷たい朝に打ち上げられて 光の波の中で僕はまだぬくもりを探してる 10 ハートムーン 雨上がりは君の空 連日の雨で湿った心は 口げんかのせいでもうふやけてる 「ごめん」という言葉は喉の奥にしがみついて 手を離してくれないんだ かわりに落としたため息は 吸い込まれるように 濡れた地面にしみてゆく まるで心を映すようなあじさいの花は淡いむらさき 止まない雨は銀色の雨 水槽の中に沈んだ景色はガラスを曇らせるモノクロの町 約束のない明日はカラになったグラスのように 今日を満たしてはくれない 雲のすき間から射し込んだ弱い陽射しは まだ夏には少し遠いから 君が笑顔になるだけであじさいの色は変わるのに ただ梅雨明けを待つ昼下がり 11 Boy Friend 甘噛みみたいな恋の痛みで 引き下がる君じゃないだろう 男と女の友情は紙切れよりも強いんだって 夜中の車道で君は叫んだ 君が望まなくたって 僕はいつもそばにいるよ Boy Friend も楽じゃない 君が引いたボーダーライン 飛び越えるには負け癖がつきすぎて 君がくれたサボテンを見るたび僕は苦笑い 君は無限大の無邪気を取り出して そんな目で僕を見るんだ 赤いセーター着て真冬の朝に飛行機雲を指でたどった 街にリボンをかけるみたいに 誰が何を言ったって君は永遠の謎でいてよ Boy Friend も楽じゃない 気を抜いたらブービートラップ 12 ハートムーン また落ち込む先は地球の裏側 君がくれたサボテンはいつ頃花を咲かすやら 13 僕の日常 今朝の占いは僕の星座が最悪でハミガキしながら 見なきゃよかったと思った時には手遅れさ 寝起きの脳にインプットされた情報は消去できない 君は寝がえりをうって夢の続きへお出かけさ 僕も行きたいよ 現実をほうり投げて 今日もネクタイをしめて コーヒーの缶 自販機から転がり落ちる すれ違う車が跳ね上げた昨日の雨の水たまり ため息ひとつでやりすごす 週末は天気も上々で車を東へ走らせる 窓から流れこむ空気は清々しくて 卒業間近の帰り道 僕は何も言えずにいたけど 約束を君がくれたから僕たちの恋は始まった あの日と同じ風の匂いがする季節 まぶしい陽ざしを浴びたら ドラマのワンシーンを演じてみようか 春は何度もめぐってくるけど青い風に吹かれれば 2 人ならそれだけでいいよね 14 ハートムーン Happy Valentine 人待ち顔の週末は Happy Valentine 百花繚乱 から騒ぎ ウィスキーボンボン並んで 3 つ ハートのマークも並んで 3 つ アイ スウィート&ビターなI なら パッケージに赤いリボンで あなたのハートを乱しましょう 甘いロマンスが欲しいなら Happy Valentine 恋のかけひき エトセトラ ハートのピアスを揺らせばそっと ピンクのルージュが誘惑してる ア イ チョコスイーツでとろける Love 天使が弓を引き絞る あなたのハートを射とめましょう 15 窓に昇る月 微かなラストノートと優しい鼓動に 穏やかな波が満ちてゆく 見つめるあなたの瞳の色は誰も知らない 今 言葉をすべて失くしても 微笑むだけで伝えることがわかるから ひっそりと夜を揺らせば 小さな窓に月が昇った 物語の終わりには新しいページ 手を伸ばせば夢の続き 重ねる時間は降り積もる雪のように ただ微笑みを返すだけで 温かな手がすべてを包み込んでゆく ビロードの夜の空 白い三日月を昇らせて 16 ハートムーン 君が眠りに落ちるまで 泡だつ波間に君が落としたひと粒の幸せを僕は掬いに行くよ 満ち潮が足跡を消し去っても僕はまた君を見つけるから 運命という歯車はふと動きを止めて それは気まぐれを楽しむように 月のあかりが陰らぬように僕はここにいよう 君が眠りに落ちるまで 夢の続きが見れるまで にびいろ 純白の海鳥 鈍色の空 水平線はざわめき うちよせる波に 砂の城が跡形を失くしても僕はもう立ち止まらない 暗転するなにげない日々の歯車が軋めば 足元の影は波に濡れてゆく 渦まく波が届かぬように 僕はここにいよう 君が眠りに落ちるまで 夢の浜辺をたどるまで 17 ひと夏の宿題 ものの見事に夏は終わった 蝉しぐれは変わらないのに アイスティーの氷を口に入れ 出来たての傷心を冷やしてる どこかでひっかかってる未練なんて 宿題はなかったことにして かた結びのスニーカーで遊び人の軽い笑顔を ひとつ選ぶと暦の上の秋を歩いて行く 街はすっかり秋へ急いで 昨日までは真夏の夜の夢 逃した魚は大きいのかな 跳ね返る水しぶきが塩からい 街に流れるメロディを口ずさむ 恋の終わりの歌だっけ 陽射しの暑さを手のひらで掴もうとするけれど かけら 想い出みたいにすりぬけた欠片さえも残さずに 18 ハートムーン 帰り道 自分の尻尾を追いかけて犬がグルグル回ってる 子猫がじゃれて遊んでる 帰り道の商店街 夕暮れのざわめきが心地いい 君はオレンジを僕にほうり投げて 空を見上げて深呼吸 「明日も晴れるといいね」って 明日も明後日も その次も この空はきっと 晴れてるよ 沈んでゆく太陽に影は長く伸びてゆく この坂道をのぼったら小さな町が見下ろせる 風が吹きぬける小高い公園で ふたりはまるで子供みたいにブランコこいで 空に一瞬近づいた 「一番星を見つけたよ」 この手は星に届くから 君の願いはかなうよ きっと 19 月下美人 真珠色した零のような月光が よ あなたの頬を濡らす夜に 咲きそめし儚き花よ 人知れず夜明けには月のように消えゆく花に そっとくちびるよせたなら 一夜の夢に咲く花よ 心の中で咲く花よ ため息の白い花びら重ねれば 刹那をつないだ永遠で 咲いて散る切なき花よ 濃紺の闇にも隠せないあふれる想いに 花の言葉を繰り返す 誰が知る儚い恋を 誰が知る儚い恋を 20 ハートムーン 化身 あなたが触れた椿なら それが白い椿なら 今宵あなたの夢の中 蝶の化身になりましょう ひらひらと ひらひらと あなたの胸にしのびましょう 白い椿がこぼれたら 夜の終わりを告げるなら 千の夜明けを隠しても 冷たい雪になりましょう はらはらと はらはらと あなたの肩に落ちましょう 21 君と僕の それからの未来 目にとびこんできた見なれた部屋の 夢の寝床で目覚まし見れば アラームが鳴る前に目が覚めるなんて ほんと何年ぶりだろう 思わず笑う 今日は君とドライブしよう 海岸線を走っていこう 気づけば何度も時計を見てる 君へのサプライズでグルグルしてる 冷たい水で顔を洗おう それなりに器用に生きてきたはずが 自信なんてカケラもなくて 君の前では水増しの自分を見せてた 見かけだおしなんだ ほんとのところ 君とならきっと探せるから ふたりで探しに行こう 少し指先がふるえてるけど い し 小さな貴石を君の指にはめたなら 君と僕と それからの未来へ 22 ハートムーン エピソード コルクの栓を数えて僕は 捨てよかどうか迷ってるんだ 2 人であけたワインの栓を君は集めてビンに入れてた 積み重ねたコルクが崩れてテーブルの上を飛び跳ねた 一緒に笑える君がいなくて 僕は淋しくちょっと笑った いつも見ていたドラマが終わるよ 犯人当てたらって賭けてたね 僕がはずれたら君にワインを買ってあげる約束だった 時々 ワインを飲んだあとやっぱりコルクは残しておくよ コルクを重ねて遊んでみるよ 僕はひとりでちょっと笑った 23 輪廻 金の波 銀の波 うちよせては ひいてゆく はるか悠久をこの手に掬う 伝える為に生まれた言葉は 月の鏡が千の夜を幾度映しても あなたの姿を探し続ける 記憶のほとりに見つけた あなたの面影を揺らす水面には 欠けてゆく月が落ちてゆく 時の波 夢の波 光る砂を濡らしては 静かな海に空は焦がれる ほほえむように流れた涙は 信じる脆さと忘れる強さが 惹かれ合うように 24 ハートムーン あなたの夢を見つづけている 眩暈のような時の果て 繰り返してゆく輪廻の中で あなただけを探し続ける 25 僕は夜に沈む 現実の延長線上にある未来に 交差するのは挫折と希望 僕はペンを置く 小説はいつしか懺悔に変わってた 迷路のような路地を駆けぬけて 息を切らして君を捜した 哀しすぎる結末は書けぬまま 僕は夜に沈む 高層ビルから見下ろせば ダイヤモンドでも ここにあるのは埃と虚言 僕はここに居る 誰の目にも映らないとしても あかし 痛みは生きている証だと歌う 錆びたシャッター前のストリート 同じ目をした君が振り向く時 夜がまた深くなる 26 ハートムーン 浅黄色のマフラー くず籠の中に捨てられていた走り書きのメモ 君の小さな丸い字が ちらっと見えて胸が痛んだ 結局 なるようにしかならないのかもしれないね むずかしい顔しても似合わないんだろうけど 君がくれた浅黄色のマフラーまいて 春まだ遠い町に出てみるよ この町のどこかで また君に逢えそうな気がして にぎやかな大通り 背中を丸めて歩いてみるよ ベージュのコートにからみつくのは乾いた風だけ いつの間にか 2 人が出逢った場所に来ていたよ あの日もこの町に雪が降っていたね 見上げればまた雪が降りそうだ 27 ハートムーン 天気予報 君はうらめしげに見てる 僕のせいじゃないからね 明日の雨は いいんじゃない 雨に濡れても 心の熱を奪いながら時は流れる 星も月も空も君が思うままに マホウをかけよう 君の瞳にはハートムーン ハート型の月が映る 窓のそば 君の髪を風がとかして 雨が嫌いな君を 風がなだめる いいんじゃない 君と一緒に 昨日と同じ明日がきて今日は過ぎてゆく ありふれた町と ありふれた夜に マホウをかけよう 28 ハートムーン 君の夢の中にハートムーン ハート型の月が昇る 29 夏・恋・花火 乙女心をメールで飛ばして 入道雲の向こうへ飛ばして 「今年最後の花火大会 あの川原で待ってます」 夏まつり カキ氷 覚えてる はぐれそうになった時につないだ指が ひんやりと冷たくて ちょっとだけ笑ったね あの時気づいたよ 何かを予感して あの夏 星空をふたりで一緒に見上げたね 冷たいグラスが汗をかいてる ほてる頬にぎゅっとおしつけた 君からの返信を待つ間 胸のふるえが止まらない あの日降りだした雨の中 かさを忘れた君を呼びとめてしまってた 30 ハートムーン かさに落ちる雨音が 君がいるだけで 少しせつなくて 言葉を忘れてた 今夜 星空に真夏の花火が打ち上がる 31 初恋 なつかしい笑顔が、私が手離した時間と距離を 一瞬で引き寄せた ささやかな恋心は卒業と同時に 想い出に変えてしまったけど 私が好きだった歌を覚えていてくれた それが嬉しくて 頬をなでる風が優しくて ただ ほほんでしまう あの頃見えなかったものが見えてきたけど あの頃と同じ景色の中にはなくて どこか淋しくて なぜか切なくて ななめに傾けたグラスの中ではじけるサイダーを 一気に飲みほした 変わらない君の横顔を見ていると 私の心はあの日に戻ってゆく かすかに芽生えた甘ずっぱい思い ふっと目をそらし 気づけば また 目で追っている ただ 見つめてしまう 32 ハートムーン あの頃追えなかったものを追いかけてみたら あの頃と違う景色が広がる世界 変わらぬ君がその中にいる 33 W RAINBOW 天気雨 赤いかさをクルクル回して 君の方へ雫を飛ばした 君の迷惑そうな顔の向こうに W RAINBOW 幸せを 2 倍にしてくれる 今日は君が作る番だから 私の好きなペペロンチーノ ほど良い辛さの恋のスパイス 今日もトラブル 君にあげるよ スニーカー お気に入りなのに シミを見つけて 君をなぜだか怒りたくなる 君のとまどうような顔の向こうに W RAINBOW 見るといいことあるらしいよ 君がいつも口ずさむメロディは 私を揺らすゆりかごだから ふたつ重なる虹色のかさ 君の上にさしてあげるよ 34 ハートムーン ガラスのオブジェ 指からすべり落ちて砕け散ったガラスのオブジェ 裏腹な心は その指を傷つけて 言葉を捜してはため息とすりかえる 星の形のガラスのオブジェ 砕けたガラスは いくつもの鏡のように 私の素顔を映しては こぼれた涙のようにただキラキラと光るだけ 月明かりの部屋の中 ひざを抱えて見上げてる と き はるかな時間を超えた星は闇を射ぬいて 零度の空をゆれる瞳が映してる 君からもらったガラスのオブジェ 電話のコールを数える指がふるえても 君の声はガラスのかけら つなぎ合わせる指はその優しさを知っている 35 隣の芝生は… 着ぶくれてゆく言い訳で身動きできなくなる前に 次に来たバスで逃げ出すよ 答えがほしい時にはいつも 探すほど見つからなくて 隣の芝生は青いよね また しょーもない堂々めぐり それでもいいさって言いながら やっぱりどこかであがいてる シニカルな口ぶりは似合わないのにね タ ダ マフィンとコーラの朝食に無料の笑顔を追加して カロリー 青春の熱量は高いよね キャラ ジーンズをはきかえるみたいに気軽に仮面も取りかえて 隣は何をする人ぞだね カメレオンみたいな街で コミカルなひとり芝居なら すねながら強がってみる ロジカルな大人にはほど遠い 36 ハートムーン 着信音が HELLO を告げる 着信音が HELLO を告げる GAME が始まるメッセージ 冷めた瞳の奥には微熱が眠る 目に映るものはリフレクションで その真実を隠すように 夢を見る時間は束の間 とびきりの楽しい夢へと HELLO を告げる 極彩色のパノラマの中 バラバラのピースをこぼす 君が欲しいものも 僕が欲しいものも 完成されたパズルじゃないはず 追いかけたくなる衝動は 眠りから目覚めた微熱 それは始まりの合図 GAME が始まる 37 風見鶏 風向きが変わったよ 風見鶏が向きを変えたから 都合の悪い事はうまくはぐらかして 少し遠出しよう Un Un Un 君の鼻歌が調子はずれだから笑ってあげるよ 知ってるかい この先に何があるかを やわらかな土の上 君のメロディがスキップしてゆくよ ルール違反なのさ 何も縛られずに生きてゆくのは 行きあたりばったりと思いつきが 僕のポリシーだから Hu Hu Hu .. 君はバカだねと上から目線で笑っていいよ 大事なのさ か なんでも描ける余白がさ タンポポの綿毛が ふわふわと僕みたいに飛んでくよ 38 ハートムーン 青いフラグ 失恋フラグを踏んだなら 今日の涙はタイムカプセル 10 年後にはダイヤに変える そばにあるその笑顔 そっと抱きしめて 雲の切れ間 君がその目を上げた時 やわらかな哀しみが射してくる セオリーどおりコマを進めて 昨日を重ねた跳び箱跳んだ やがて季節は惰性でめぐり その手の中の明日は羽を広げた 地面を蹴りあげて跳んだ青いフラグ さなぎが蝶に羽化するように 39 ラブレター 届くはずのない手紙 あなたの名前を書いてみたくて 根雪に埋もれた春を探しに あなたの消えた跡をたどって 涙が凍って かけらになって 小さな小さなダイヤになって 無数の光をちりばめて 閉ざした冬に舞い落ちた 吐く息が白い朝 深としたうす青の空を見る あなたと春を歩くつもりで 心はあの日で止まってた 優しい雪が降ってくるなら この手のひらに降ってくるなら 少しずつ 時をとかして 少しずつ 冬をとかして 40 ハートムーン 銀河の星 太陽系第三惑星が僕の星 銀河に浮かぶシャングリラ 君を招待するよ 恋人は銀河の果てに降りてくる 大気圏からの光の帯は地上へと続く長いランウェイ 足元には星のかけらを敷きつめて 君がその薄い羽を広げたら この星に無数の愛が降ってくる 夢の数だけ光る星を道案内に カシオペアまで遊覧船 ゆらゆらと揺れて行こう 恋人は銀河の星に住んでいる 絶望をのみこんだブラックホールは深海へと続く入り口 頭上をかすめるほうき星をつかまえて 月のクレーターを通りすぎたら どこまでも青く透明なプラネット 41 迷宮 魂がざわつく感触がしのびよる ゆるやかに流れてるファンタジア 季節も時間も息をひそめて あざやかすぎる色彩を抜ければ 追いかければ迷うほど呼吸は浅く 闇が包む深い森 名を呼ぶのなら 君の名はラビリンス 迷宮の囚われ人に下弦の月は微笑んだ 君が指をならすまで目覚めない町 ぬくもりのない光が照らしてる 心あやつるような旋律は みなも 青い水面を揺らす君の声 目じるしに道にこぼしたジェリービーンズ かえすがえす振り返る夢の足跡 僕だけのラビリンス 月が隠した僕の影は君にそっとくちづけた 42 ハートムーン 夜明けに降る星 月夜にルビーは光らない 君の涙は光らない 君を見つけたのは闇が月を隠す前 底のない森に迷いこんでた 銀の光は心をつなぐため 君の胸に星の雫を飾るため 蒼ざめた薔薇が咲く夜に 絹の光のヴェールの中で 君を連れて行こう果てしない物語へ 漆黒の森に星が降る時 地上が銀の光で満ちる時 君は明けの明星 夜明けに降る星 43 ヴォイス 夜の闇からひとつぶ零れ落ちた あれは流れ星 それとも 天使の涙 君のヴォイス ふるえてる 僕の手のひらで羽を閉じるといい 僕は僕で僕のまま 君は君で君のまま 迷う子羊は霧の中 僕の笛で家にお帰り 宵の空からかすかに滲み出した それはグラデーション 薔薇色のプリムローズ 僕のヴォイス 抱きしめる 君の哀しみで凍りついた朝を 過去は過去で過去のまま 時は時を超えてゆく 44 ハートムーン シ グ ナ ス 星の涙 零す白鳥座 僕の羽で空にお帰り 45 タイムリミット 淡墨でふちどられた雲のすき間から 光が射し込むように 僕の心に光が見えたのは あの頃と変わらない君の… 雑踏の中見つけてしまった 立ち止まってしまった あの頃と変わらぬ君のまなざしに 僕たちの空間は時を止めてしまった 僕の知らない未来 たとえ明日で終わるとしても タイムリミットは最後の一秒 川から海へと水が流れるように 今日から明日へ続いてゆくのを 疑うことさえ知らなくて 未来だけを与えられていた ふいに鮮やかによみがえる 記憶のかけらに 人波も街もフェイドアウトして 46 ハートムーン 2 人だけの時間は鼓動をうってしまった 逆行してゆく心 切れた絆たぐりよせたら ひとつ秒針が時を刻んだ 47 Silent 静止した景色の中で 水色の空は感情のない声のように 何か足りない ボクがあのポカリと浮かんだ雲になったら 君が見えるだろう 静かすぎるんだよ まるで無声映画みたいに ボクは嵐を待ってるんだ 巻き込まれてこっぱみじんになれば 退屈な今日はもういらないんだ 叫んでみたところで かわいたこの声が誰にも届かないのなら 沈黙と同じ この空の真下には この空と同じだけの 水色の世界 48 ハートムーン 現実は残酷で でも捨てるには惜しいから ボクは明日を待ってるんだ 君を見つけたら手をつなぐんだ 冷たい空とはさよならするんだ 49 あした 未来に吹く風 流砂の上につけた足跡 悠久の一瞬に吹く風になる 目深にかぶったフードの隙間 ラ プ ラ ス Laplace の瞳を探してる 君へ左へ 僕は右へ 分岐点のその先でまた出会うため 天文学的数字の上で君はひとつの未来を歩く 遥かに遠い蜃気楼 今歩くのを止めたなら このまま砂に埋もれてゆくだけ ひらめ 閃く陽炎に揺れる花 巻き上が砂塵の殺那消えてゆく 海の色さえ知らない鳥が 頭上で小さな点になる コ ン パ ス 羅針盤もない砂の海 50 ハートムーン 果てなく続く砂丘の先に夢を描いて ぎょく 玉を散らした夜空は凍え 僕はひとつの未来を選ぶ 遙かで揺れる蜃気楼 あした 伸ばした指に触れている確かな未来に吹く風が 51 黒い翼 黒い月が昇る夜 黒い翼が広がって 星のない空を飛ぶ そしてどこからか 聴こえるレクイエム 闇の海に溺れては黒い月を見上げてる 何が恐いのかわからないまま うつ 羽音を聞きながら ただ虚ろにとけてゆく 月の輪郭が 銀色にふちどられ 翼は羽根を散らす そして落下してゆく明日という海へ 深い眠りから君は ゆっくりと目覚めてゆく 光が夢の残骸を消した一瞬 日常という今日が始まる 黒い月が昇る夜 悪夢と未来が とけあう夜に 君は落下してゆく 朝を求めて 52 ハートムーン 意地と見栄とで明日は晴れる 足の踏み場もない部屋に招かれたように苦笑い 右へ左へ 東へ西へ あらゆるいわゆる神だのみ すました顔できれいごとを並べても 理詰めじゃ心は動かない 苦しい時にはワラにもすがる 嘘八百もたまにはいいさ ジョーカーを引いたくせしてとりあえず余裕のあるふり 世界は常に変幻自在 かわず 飛ぼうが跳ねよが井の蛙 し ょ 諦めを背中に背負ったらうつむくだけさ 笑えばなんとかなるもんさ 面倒事はひとまずおいて 腹のたしにもならないジョーク 意地と見栄とで笑うオレ さまになる日がそのうち来るさ 53 果てなく遥か 魚眼レンズの向こうから 間伸びした世界が手招きをする イメージばかりが先走り ゴムまりのように飛び跳ねた 埃をかぶったインビテーション そろそろ出かけようか 期限がまだ切れてないなら 途中下車を繰り返し 道はあるようでないようで 壊れた標識が惑わせる いつまでも土手に寝ころがり 形を変えてゆく雲を眺めた 言葉が必要ないほどに 過ぎゆく 季節を惜しんでた 突風がかき消した紅い桜が 胸の中をよぎってく まだ色褪せてないのなら 54 ハートムーン 風が背中を押すようで どこに向かうか道の果て ゆらり陽炎が立ち上ぼる 55 最後の一葉 見知らぬ香りが微かに残る 訳を尋ねることはできずに 嘘も本当も枯れ葉になるだけ 風に舞う思い出がひと葉また一葉落ちてゆく中 最後のひと葉がしがみついてる 違う世界でめぐり逢えたら まっさきに私を見つけて抱きしめて 2 人の間に闇がしのびこむ前に 探してた未来がどんな形で 出逢いと別れを引き寄せようと 季節の終わりを繰り返そうと まばたき程の一瞬で愛はこの手を風に変えてゆく 最後の一葉が風に揺れれば いつもの朝が街を包んだ 朽ちはてた想い出は凍りつき 冬空にガラスの一葉が砕けちってゆく 56 ハートムーン 白い闇 かじかんだ手のひらで太陽と月を隠しても そ ら 蒼穹は魔力を失くさない しょうけい 果てない憧憬を描かせる 生まれてからの一瞬と目を閉じる永遠が 私の身にふりかかるまで 失くした時と同じ体温で 熱を奪うことを知っている 速度を上げながら景色は未来を見せてゆく 行き先もわからないまま 汽車は四季をかけぬけてゆく 白い闇に昇った白い月を探すように あるはずなのに見ることはない 哀しみに欠けてはまた満ちてゆく あ か 心の在り処を探してる 57 らしくないって .. 虫を追っかけまわしてた 暗がりが恐かった らしくない感傷っていうのかな ささやかな秋にすれ違い 思い出すままに 振り向けば あの虫カゴの中で こうとうむけい 荒唐無稽な夢ときれいな蝶を飼っていた あの日と同じ空が見えそうで 少し遠回りをして 訪ねてみようか 強がっていた あの頃の自分を 悪いことを たくらんでは 心のままに 笑っていたから ちょっと うらやましいんだ 忘れさられた 虫カゴの中 残っていたのは らしくもない “ 感傷 ” ってヤツ 58 ハートムーン 美しい雨 着飾った街並みに降る雨は誰をなぐさめる きれいな世界だと君が言うのなら 信じるふりをしてもいいけど 哀しい記憶は雨の景色にすりかえてゆけばいい 窓は雨ににじんで不鮮明な模様を描く 君が失ったものは君には重すぎたから 美しい雨が流してしまった とまどった喧騒とから騒ぎの街を隠して 虹色の雨が夜を濡らすなら ただ 流れてゆく心のままに 窓に映る君の瞳はそこに何を探しているの 雨と君の間に冷たい季節を残して 君が触れるものは こわれた幻想だから 美しい雨が隠してしまった 59 白い帆船 屋根裏部屋で見つけた 一冊の古びた絵本 ページをめくると 鮮やかなマリンブルーに白い帆船が描かれていた 「少年は旅に出た」 僕は次のページをめくる 埃だらけの床の上に 天窓から射す光 絵本の世界で 帆船は嵐の中 木の葉のように揺れていた 「少年はただ願う」 僕はまたページをめくる 祈りのように凪いだ海 すべるように進む船 最後のページヘ おだやかな陽射しを浴びて帆船は港へ着いた 少女が待つ場所へ 僕はそっとページを閉じた 60 ハートムーン 僕の名を呼ぶ君の声 ふと現実にまいもどる 夕暮れの部屋 僕はいつの間にソファーの上で眠ってしまったんだろう 不思議な気分だよ あの少女に君が似ている 61 螢雪 闇に静かに降る雪は 深く静かに積もる雪 2 人がつけた足跡を ましろ 秋めて真白に積もる雪 どんなに想い重ねても ほど あや 解ける綾の縦の糸 あやま 春に溶ける過ちを 雪どけ水に流しましょう 手のひら受ける淡い雪 ほの 仄かに灯る螢雪 春を運んでくる風は 冬の終わりを告げる風 2 人がたどりついた時 風は明日を散らしてく どんなに夢を紡いでも ほど からんだ嘘は解けない 雪に咲いた花の名を 春待つ風がさらうでしょう 手のひら掬う雪解けに 零れて浮かぶ銀の月 62 ハートムーン 三月 愁 発 行 2014 年 5 月 30 日 発行者 横山三四郎 出版社 e ブックランド社 東京都杉並区久我山 4-3-2 〒 168-0082 電話番号 03-5930-5663 ファクス 03-3333-1384 http://www.e-bookland.net/ 本電子書籍は、購入者個人の閲覧の目的のためのみ、ファ イルのダウンロードが許諾されています。複製・転送・譲 渡は、禁止します。