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ー今まで南米などをテーマに色彩豊かな世界を描いて
﹃絵で読む﹁老子﹂無為を生きる﹄著者インタビュー 老子には生き方のヒントが ちりばめられています ん っ け て い み の 途 わ た は い の 〇 れ ん ね の の た 都 中 か 。 な る 編 年 た 欧 ﹁ も 要 り 合 で 者 前 が に け の が ︶ て た お 一 ﹁ 日 ・ 九 イ 本 み 二 ラ 初 の 九 ス の る 年 ト イ ︵ 、 ﹂ ラ イ 東 と ス ラ 京 い ト 長 尾 み の な ー め っ 主 な 作 品 に 、 ﹃ ソ ン ブ せ ﹄ ︵ 朝 日 新 聞 社 ︶ ﹃ ら ・ 補 足 改 訂 版 ﹄ ︵ 小 の 哲 学 者 の 言 葉 が 、 日 本 や も 影 響 を 与 え つ づ け て き た ﹂ え 方 が 決 し て 押 し っ け が 考 る よ う に な っ て き て 、 そ う す る 言 っ て い る こ と は 意 外 に 単 純 で ん の は こ れ だ 、 自 分 に も ぴ っ た り 集 も の 米 措 の 素 と に わ と 、 あ か し そ て っ て れ は て 読 ぞ め 、 ん れ て 僕 だ に 読 は り 多 む ぽ 、 様 こ ん あ な と と る 読 が 気 人 み で が は 方 き 楽 仏 が る に に 柔 軟 性 が あ る か ら だ と 思 い ま す 。 だ い 〇 さ ろ も そ ん で す ね 。 そ の 誕 生 目 だ な か め − 今 ま で 南 米 な ど を テ ー マ に 色 彩 豊 か な 早 世 速 界 そ を の 描 夜 い か て ら 読 み 出 し て み た と こ ろ 、 と き た 長 尾 さ ん が 、 墨 絵 で ﹃ 老 子 ﹄ に 挑 ま て れ よ た く こ わ の か 本 ら は な 実 い 。 で も 、 一 生 懸 命 読 ん で に 新 鮮 で し た 。 ん く そ も そ も ﹃ 老 子 ﹄ を 描 こ う と 思 わ れ た き っ 求 だ っ た の で し ょ う か ? た 僕 は 今 年 の 六 月 に 喜 寿 を 迎 え た の だ け ど 、 占 て 分 が の 前 く ら い に た ま た ま ね 、 二 十 年 来 の つ 二 き 五 あ で あ る 0 君 か ら ﹃ 老 子 ﹄ の 本 を ひ ょ い と 手 ち 渡 も は じ ま り で す 。 ﹁ こ れ は ど う で す か ﹂ と 老 。 子 で と は 一 回 も 言 わ な い ん だ ︵ 笑 ︶ 。 非 常 は し 自 と そ れ で も ま だ 、 ど う し よ う か と 迷 っ て い た ア の ア レ ク サ ン ド ル ・ ソ ク ー ロ フ 監 督 が 連 昭 和 天 皇 を テ ー マ に 撮 っ た ﹁ 太 陽 ﹂ と い う に 呼 ば れ た ん で す 。 そ れ で 観 に 行 っ た ら 、 ー サ ー に ﹁ ロ ー タ ン ︵ 老 子 ︶ を 読 ん だ こ と 聞 い て い た 。 映 画 の 中 の こ と で は あ る か も ど 、 そ う か 、 天 皇 は 天 皇 で 身 を 守 る 術 と し 読 ん で い た ん だ な と 思 っ て 、 よ し や ろ う と ん で す 。 今 回 の 本 は 、 僕 の 考 え で 読 ん で 受 け 取 っ た し て 、 た め 息 の よ う な 小 さ な 言 葉 で 表 現 し ﹃ 老 子 ﹄ を こ ん な ふ う に 落 と す の は お か し は 、 併 記 し た 原 文 に も ど っ て も ら え ば い い し て 、 自 分 は こ う 解 釈 す る と 思 っ て く だ さ な れ ば う れ し い で す ね 。 今 の 時 代 、 そ う い る 材 料 が 必 要 な の で は な い か 、 そ れ に は 老 て 思 う ん で す よ 。 − 墨で絵も言葉もお描きになるのは、初めてですよね。 最初に﹁墨絵で﹂と注文されたとき、今まで生業とし て描いてきた作為だらけの、色彩による作品を﹁それは もう見慣れております﹂と言われているんだなと、こち らは解釈するわけです︵笑︶。 そりゃあ自由自在にやりたいけど、家族を食べさせる ためにはそうもいかないじゃないですか。慣れた絵の具 や紙でずっと継続してやってきたわけだし、まわりも認 知してくれているからそういう方面の仕事が来ているん だと勝手に思っていた。でも自分がわからなかっただけ で、相手は飽きていたのかもしれない。それなら、何か の流れの中にいる身としては、元の岸に戻ろうとじたば たしてもしようがない。戻った岸は護岸工事をされちゃ って、上がれないってこともあるんです︵笑︶。自分の今 までのやり方でやるぞと強く反発するのではなくて、そ の流れに流されてみようかと思ったのが、まさに自然で したね。 製作中は、﹃老子﹄を読むだけ読んだ後、散歩に行きま した。そして歩きながら、考えて、考える。いざ絵を描 くという段階になっても、和紙というのは下書きしたり 消しゴムで消すことはできませんから、デッサンを何枚 も何枚も描きました。そして﹁これだ﹂と決めたら、心 を無にして一気に筆を運ぶ。 最初の三分の一くらいまでは大変でしたけれど、あと のめりこんじゃった。まさに老子の無為の思想を実践し ないと思いながらも、読んでいるうちに自然にだんだん 最初はこんな難しいものを絵で表現するなんてできっこ はすーっといったんです。そして﹃老子﹄の世界を絵に していくうちに、今度は自分というものがわかってきた 間が幸せになる方向だろうかと思うのです。二五〇〇年 大国ほど苦労しているでしょう。国でも企業でも、大き くするのをよしとする風潮だけれど、それは果たして人 る、小さくて治まっている国がいいなあと。今、確かに めに行ったりはしないのです。こういう自給自足のでき ろきょろ気にすることはしない。だから、船に乗って攻 の生活に満足しているので、よその国の繁栄などをきょ たようなものです。今は、やりおおせてよかったなあと 前の言葉なのに、今の世界情勢にあてはめて読むことが 思いますよ。 のですが、今回はすべてを中国風にではなく、時間と空 その理想的な小国をハワイのような小さな島に描いた できる。面白いですよね。 尾さんの世界が広がっているという印象を受けました。 −墨絵の濃淡にもカラフルな色彩を感じて、やはり長 今回の本は、﹃老子﹄全八十三早を水墨画と短詩でつづら 間を超えた絵にしてみました。あとは蘊蓄を披瀝するよ うな、説明的なものにはしたくないなと。例えば、人々 なぜ鹿なのだろうと思うわけです。そこでいろいろ調べ が鹿を追いかけて狩猟をしているという言葉に出会うと れたわけですが、とくにお好きな章はありますか? ﹁小国寡民﹂ですね。原文で描かれているのは、どこか で犬や鶏が鳴く声がのどかに聞こえる小さな国なんだけ ど、そこには少ない民が暮らしている。彼らは自分たち てみると、当時は鹿には頂点に立つエリートという意味 が があり、憧れの存在であったことがわかる。つまり、み いのかもしれないということでしょうね。 僕はね、体制にはかならず反発する者であり、親分は つくらない。だから団体には絶対入らない。団体に入ら ないと推薦されないから、勲章もなにももらえない。で も、もらえないほうがへつらうより楽だから、生涯小者 んなでトップを目指しているという意味合いもこめられ かもしれないけれど、ずっとそうやってきたわけです。 ているのですが、それを言葉で説明してもつまらないの で、壷の模様として描いてみました。さりげなく絵にこ 大企業に所属していても、所詮その中のひとりでしかな めたところもいろいろあるので、絵で読む﹃老子﹄とし ても楽しんでもらいたいなあと思っています。 それも自然。安心してひとりでいることの気楽さを味わ ってみるといいと思うんだけどなあ。﹃老子﹄には、そう い。せっかく定年になって組織から解き放たれたのなら、 −一九六九年にイラスト小説︵イラストーリー︶とい う独自のスタイルで出版された﹃バサラ人間﹄や﹃革命 て面白いんです。 いうときのヒントがちりばめられているから、読んでい 屋﹄が最近復刊されて、再び若い人たちに注目されてい るとお聞きしています。当時若者だった団塊の世代が今 いっせいに定年退職を迎える時期にかって、世間では﹁二 このごろ口癖のようにみんなに言っているのは、慣れ て︵笑︶。墨一色の挿し絵の世界で頑張っていた時代が終 女房に言わせると、この仕事をしてから丸くなったっ いかがですか? ﹃老子﹄と取り組み、この本を完成されたご感想は たものを継続しょうとするのが、ストレスやノイローゼ わって、今度は色彩でやってやろうと一生懸命やってい 〇〇七年問題﹂などと呼ばれていますが。 の原因になるんじゃないかということです。人間は今ま 構成・文/藤井恵子 た好きに読んでくださればうれしいですね。 今回の本を手に取ってくれた方が、それぞれの思いでま 者次第だと思うんだ。喜寿の僕が絵によって読み解いた 僕はね、﹃老子﹄をどういうふうに読みこなすかは、読 ていたのが、ひょいと﹃老子﹄を手渡されたことで、違 う世界が見えてきた。それがひじょうに自然な流れであ ったわけで、今は大感謝していますよ。 た。今まで出したい品物はこれなんだと自分で決めつけ な︵笑︶。でも、これによってまたひとつ僕の流れができ ね﹂と言ったんです。年をとった僕を見限っているんだ この作品をやり終えたときに、女房は﹁卒業制作です ジタバタしてもしょうがない。 での人生をずっと見ていると、やりたいことをやって生 きてきたんだし、この先も怒ったり反発したりといくら んだということが、だんだんわかってきましたね。今ま いうようなことではなくて、そういうふうな流れがある たら、次は墨絵でと提案される。流行は繰り返されると で元気に過ごしてきて、その元気を継続させるために医 者に行ったり、薬を飲んだり、健康法をいろいろ試した りする。これまで何十年も会社という組織の中で働いて きた人も、定年になって今までの生活が変わることがス トレスになるのかもしれない。でも、継続させなければ と思っているのは自分だけで、自然の流れはそうではな 定価:1、680円︵税込︶A5判/178ページ ISBN4-09-387649-5