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「とやまっ子さんさん広場」とは

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「とやまっ子さんさん広場」とは
特集「少子化」
「とやまっ子さんさん広場」とは
∼地域の力を生かした子育ての新たな支え合いを進めるために∼
児童青年家庭課
最近「子ども」に関する話題という
荻布 佳子
区への対応、夏休みだけの預かりの要
まれ、仕事に忙しく時間的にも精神的
望への対応など、多様なニーズに柔軟
にも子どもと向き合えない親が増える
に対応できる仕組みが必要になってき
中で、子どもをとりまく状況は大きく
ました。
変わってきています。ふと気づくと、
放課後児童クラブ(いわゆる学童保育)
子どもは地域での居場所を失い、家庭
と、少子化の進行、いじめ、不登校の
があります。平成1
7年4月現在、県内
においても家族のふれあいの時間をな
増加や、子どもが被害者となり加害者
で1
5
9か所を数えており、県では設置主
となる痛ましい事件の発生など、心配
体の市町村に対し、運営費や施設整備
なことが多く目に付くように思われま
の補助を行い支援に努めています。
す。
ただ、放課後児童クラブは、
子どもが育つ環境としての
「地域」の再構築を
くし、手伝いなど自立のトレーニング
やきちんとしたしつけを受ける機会も
失って、ゲーム漬けか勉強漬け、とい
そして何よりも「とやまっ子さんさ
う状況になっていないでしょうか。子
少子化対策や子育て支援は待ったなし
①保護者が日中、仕事などでいない児
ん広場」が目指すのは、地域の子育て
どもの心の問題や自立できない若者の
の状況です。富山県でも、平成1
7年度
童を預かる制度であり、親が家にい
力を再構築し、子どもが地域の中でた
増加の背景には、大人になる上で必要
の事業の中でいくつかの新しい取り組
る家庭の子どもは対象とならないこと
くましく育つ環境づくりを進めようと
な人間関係のトレーニングや自立への
みを始めました。
「とやまっ子さんさん
②利用する児童が急増しており必ずし
いうところにあります。
橋渡しの環境が失われてきていること
広場モデル事業」もそのひとつであり、
も希望者全てを受け入れできていな
子育ての新たな支え合いを進めること
いこと
を目的に取り組むものです。
すべての子どもたちを受け止める
柔軟な仕組みの必要性
この事業に取り組む趣旨についてお
話したいと思います。
かつては、どの地域でも、大勢の子
ども達が群れ遊ぶ姿が見られました。
ただ幸い、富山県は大都市に比べる
③年間2
0
0日以上、1日3時間以上、留
子どもは多くの子ども同士や大人と触
と、隣近所で支えあう地域のコミュニ
守家庭児童5名以上、という補助制
れ合う中で、時には喧嘩したり叱られ
ティがまだ残っていますし、地域の活
度の基準があり、これに達しないも
たりしながら自然に社会のルールや思
動等に参加しようというボランティア
のは補助対象にできないこと
いやりの心を学び、情緒を養ってきた
精神も旺盛です。
ように思います。また、大家族や近所
こうした特性を生かし、子どもの生
今後も放課後児童クラブの充実を図
づきあいの中で、子どもを見守る、預
活の中に、身近な地域で生き生きと過
ることはもちろん大切ですが、保護者
かるといった助け合いのネットワーク
ごす環境をつくり、またそれを地域が
が家にいる子どもであっても利用でき
もありました。
支えるしくみをつくれないか。こうし
などの課題があります。
子育てを支援し、子どもの健全育成
る制度や、補助要件を満たさないため
ところが、今は、地域の人間関係が
を図る制度には、小学生を対象とした
に放課後児童クラブを設置できない地
希薄になり、あふれるようなモノに囲
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があると思われます。
て生まれたのが、
「とやまっ子さんさん
広場」なのです。
33
が特徴です。この取組みに対して、県
とやまっ子さんさん広場とは
と市町村とが1/2ずつ助成を行います。
「とやまっ子さんさん広場」という名
こうして今年度(平成1
7年度)スタ
前には、子どもが地域の子ども同士や
ートした「とやまっ子さんさん広場モ
大人との交流の中で、太陽のように元
デル事業」ですが、制度を簡単にご説
気に輝いて育っていってほしいという
明しましょう。
願いが込められています。
まず、実施主体は、町内会などの地
夏休みには氷見市と立山町の合計3
域住民団体やボランティア・NPO 活動
地区で事業がスタートしました。事業
を行う団体などです。対象となる児童
が始まってまだ日も浅く、その成果の
は、小学生以下の子ども5人以上で、
検証はまだこれからですが、実施して
未就学児から場合によっては中学生ま
いる地区からは、
「子どもがお年寄りや
でが受け入れ可能です。こうした子ど
地域の大人とふれあえるのがよい」
、
「身
もの世話をしてくださるのは、子育て
近なところで行っているので広場と保
を終えた高齢者の方や地域の身近な住
護者とのコミュニケーションがよくと
民の方です。また、実施期間は、年間
れるのがよい」
、などの感想が寄せられ
概ね1
0
0日以上を原則としますが、夏休
ています。
みだけなど長期休業中のみの開設も可
こうした交流の輪が広がるよう、改
能となっています。実施箇所は、公民
善を加えるべき点は改善し今後も取り
館、地区集会場や民家など地域の身近
組んでいきたいと思います。
な場所で、子ども達はそこで自由に子
ども同士遊んだり、世話人の方から伝
承遊びを習ったり、また宿題をしたり
して過ごします。小規模、異年齢の広
場であり、実施期間や時間も柔軟に設
定でき、地域主体で運営されるところ
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35
子育てに関する学びの場づくり、既存
とやまっ子さんさん広場モデル事業と放課後児童クラブとの比較
これからのとやまっ子さんさん
広場と子育て支援
とやまっ子さんさん広場モデル事業
1 目的
放課後児童クラブ
留守家庭児童の小学生に対し、授業
地域の力を生かした子育ての新たな
支え合いを推進するため、地域住民や の終了後に適切な遊び及び生活の場を
ボランティア・NPO 活動を行う組織・ 与えて、その健全な育成を図る。
団体等が、地域において多様な形で取
り組む自主的な子どもの居場所づくり
を進める。
2 実施主体
① 町内会等の地域住民団体
① 市町村
② ボランティア・NPO 活動を行う組 ② 社会福祉法人
織・団体 など
3 対象
・原則小学生以下の子ども
昼間保護者が家にいない児童(小学生)
・利用児童数は概ね5人以上
国庫補助
1
0名以上
ただし、地域の実態に応じて中学生
県単独補助 5名以上
の受入れも可
4 期間
年間概ね1
0
0日以上
年間2
0
0日以上
ただし、夏休みなど長期休業期間の
みの開設も可
5 時間
6 場所
など
制度にとらわれない子どもの豊かな育
ちの場づくりなど、さまざまなことを
進めていくことが必要だと考えます。
この事業に限らず、今後も新たな子
今後、
「とやまっ子さんさん広場」も
育て支援策の取り組みが始まり充実が
その一端を担い、子どもの元気な育ち
図られていくでしょう。ただ、最近、
と、親の喜びに満ちた子育てを支える
子育て支援策の充実だけでなく、親の
力となってくれることを期待していま
子育て力の回復を図ることが非常に重
す。
要だとの指摘がなされるようになって
います。
この指摘には一人の親として私も思
い当たる点があり耳が痛いのですが、
今の親たちの多くは、豊かな時代に苦
労知らずで育っており、また小さい子
概ね1
4時から1
9時までの間で原則3時 1日3時間以上
間以上
(9割は5∼6時で終了)
1
9時までの開設を促進
どもと接する機会が少ないまま親にな
公民館、地区集会場、民家、その他の 児童館、学校余裕教室等、社会資源を
施設
活用
に、仕事の忙しさ等も加わり、自分の
っている人が少なくありません。それ
子育てもなるべく、保育所まかせ、学
7 指導員、
世話人
地域住民、地域の高齢者など
放課後児童指導員
校まかせ、祖父母まかせ、塾まかせ、
というように楽をしたがる傾向がある
ように思えるのです。
今後は、親が自覚とゆとりを持って
親としての務めを果たし、また子育て
の喜びを感じることができるよう、仕
事と子育てを両立しやすい環境整備や、
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プロフィール
荻布 佳子(おぎの よしこ)
富山市出身。1
9
8
6年入庁。現在、児童青年
家庭課家庭係長として、母子家庭等の支援
と児童健全育成(放課後児童クラブや児童
館)を担当。中学生の息子を持つが、家庭
や地域の子育て力の回復は自分自身のテー
マでもある。趣味はフルート。どれだけや
ってもきりがなく、楽器を通していろいろ
な出会いのあるところが気に入っている。
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