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カナダにおける 日本研究の今 - 国際日本文化研究センター学術リポジトリ
カ ナ ダ にお け る 日本研 究 の今 楊 暁 捷(X.JieYANG) (カ ナ ダ ・カ ル ガ リ ー 大 学) 去 る2007年9月 、 日文 研 創 立20周 年記 念 国際 シ ンポ ジ ウム に招 かれ 、世 界 各 国 か ら集 ま っ た 日本 研 究 者 と共 に 、 海 外 に お け る 日本 研 究 と い う大 き な テ ー マ を め ぐ っ て さ ま ざ ま な 交 流 が で き た 。 シ ン ポ ジ ウ ム に お い て 与 え られ た テ ー マ は 、 カ ナ ダ に お け る 日本 研 究 。 こ れ ま で 、 筆 者 は カ ナ ダ の 大 学 に18年 間近 く勤務 して きた が 、 しか しな が ら、 カ ナ ダ 全 土 に お い て 行 わ れ て い る 日本 研 究 の 全 容 を す べ て 漏 れ な く述 べ る 知 識 や 能 力 を持 た な い 。 つ ぎ に 記 す の は 、 あ く ま で もカ ナ ダ で 仕 事 を し、 日本 語 教 育 と 日本 研 究 に 携 わ っ て き た 一 個 人 の観 察 に 過 ぎ な い 。 こ の 報 告 は 、 カ ナ ダ の 大 学 教 育 の 概 要 、 日本 研 究 を テ ー マ とす る 「カ ナ ダ 日本 研 究 学 会 」 、 日本 語 や 日本 文 化 の 教 師 の 集 ま りで あ る 「カ ナ ダ 日本 語 教 育 振 興 会 」 と い う三 つ の 項 目 を 中 心 に ま と め て み る 。 、 カ ナ ダ の 大 学 と大 学 院 教 育 日本 研 究 の 基 礎 は 、 い う ま で も な く 大 学 と い う教 育 機 関 で あ る 。 研 究 に 携 わ る 人 間 、 研 究 の た め の 環 境 、 そ して 新 しい 研 究 者 の 養 成 な ど の 社 会 的 な シ ス テ ム の 中 か ら、研 究 の成 果 が生 まれ て くる。 カナ ダの大 学や 短期 大 学 は、 す べて 州 立 に よる もの で ある。 ウォー タル ー大 学 の ChrisRedmond氏 が 纏iめ た オ ン ラ イ ン リ ソ ー ス (http:〃www.uwaterloo.ca/canu/)に 「CanadianUniversities」 よ る と 、 大 学 や 短 期 大 学 は あ わ せ て102と 数 え られ る。 中 で は 、 い く っ か の 規 模 の 大 き い 大 学 は 、 昔 か らい くつ か の 分 校 を持 ち 、 近 年 に な っ て わ り に 新 し い 大 学 も 同 じ 州 に あ る 中 、 小 の 町 で 分 校 を 作 る と い う傾 向 が 見 ら れ た 。 これ に加 え て 、 特 定 の 単 科 証 書 、 大 学 レベ ル の コ ー ス を 提 供 す る機 関 (そ の 多 く は 、 州 政 府 の 助 成 を 受 け な が ら 、 団 体 や 地 域 の 組 織 に よ っ て 運 営 さ れ て い る)な ど は 、 さ ら に50近 い名 前 が 加 え られ る。 カ ナ ダ の 大 学 は 、 学 生 を 積 極 的 に 受 け 入 れ る こ とに 特 徴 が あ る。 た と え ば 、 大 学 に 入 る た め の 高 校 の 成 績 を 十 分 に 持 っ て い な い 学 生 で も 、 短 期 大 学 な ど に 入 学 した 翌 年 か ら途 中 で 転 学 す る こ と を 歓 迎 し 、 一 定 の 割 合 ま で 他 大 学 で の 習 得 科 目 を そ の ま ま 認 め る 。(た だ し、 こ の よ う な 科 目 、 卒 業 す る た め の 単 位 数 に の み 反 映 し 、 在 学 の 平 均 成 績 に 計 算 さ れ な い 。) 47 楊 暁 捷iX.JieYANG 以 上 の よ うな 背 景 に お い て 、 学 生 の 移 動 が 生 ま れ 、 大 学 間 の連 結 が 図 られ 、 そ して 自然 と教 育 者 た ち の 横 の 交 流 が 行 わ れ る 。 大 学 や 短 期 大 学 で は 、 日本 との 関 連 す る 科 目 と い え ば 、 ま ず は や は り 日本 語 で あ る。 国 際 交 流 基 金 が 行 っ た 「海 外 日 本 語 教 育 機 関 調 査 結 果(カ (http:〃www.jpf.go.jp/j/japan _j/oversea/kunibetsu/2005/canada.html)に 2003年 度 に お い て 、 日本 語 教 育 を 実 施 した 高 等 教 育 の 機 関 数 は39、 学 習 者 数 は7092で ナ ダ)」 よ る と、 教 師 数 は101、 あ る 。 す な わ ち 約 四 割 の 大 学 、 短 期 大 学 が 日本 語 の 授 業 を 提 供 し 、 平 均 に して 一 機 関 が2人 か3人 の 教 師 を擁iし、1人 の 教 師 は70人 え る と い う計 算 に な る。 筆 者 の 勤 務 す る大 学 で は 、 過 去10年 常 勤 の 日本 語 教 師 が5人 教 え て い て 、 年 間 約600人 の学 生 を教 ほ どつ ね に 常 勤 、 非 の 学 生 が 日本 語 の ク ラ ス に 通 っ て い た 。 実 際 の 感 覚 も 上 記 の 数 字 を 裏 付 け る も の で あ る。 一 方 で は 、 日本 語 教 育 が 東 ア ジ ア諸 言 語 科 目 の 中 心 で 、 と き に は 率 先 す る役 目 を果 た して い る の に 対 して 、 日本 の 歴 史 、 宗 教 、 政 治 、 経 済 な ど は 、 東 ア ジ ア 科 目 の 一 部 と な り、 ほ とん ど の 大 学 で は 特 定 の 分 野 と し て 独 立 して い な い の が 実 情 で あ る 。 す な わ ち 日本 関係 の 科 目 が た と え 設 け られ た と して も 、 そ れ が 他 の 分 野 の専 門 家 が 兼 任 す る か 、 あ る い は 中 国 や 朝 鮮 に つ い て も 担 当 す る とい う前 提 で 日本 専 門 家 が 務 め る こ と に な る 。 そ れ も 例 え ば 東 ア ジ ア とい う名 で は な く、 歴 史 、 宗 教 、 経 営 とい っ た 、 ま っ た く異 な る 学 科 、 学 部 に所 属 され て 、 日本 とい う名 の 下 で の 交 流 そ れ 自体 は 、 特 別 な 努 力 を 要 す る もの で ある。 カ ナ ダ の 大 学 で は 、 日本 に 関 す る大 学 院 教 育 が す こ しず つ だ が 、 確 実 に 広 ま る 傾 向 を み せ て い る。 中 で も 、 東 部 の トロ ン ト大 学 と西 部 の ブ リテ ィ ッ シ ュ ・コ ロ ン ビ ア 大 学(UBC)は 、 歴 史 に し て も 規 模 に し て も別 格 で あ る 。 こ の 二 つ の 大 学 は 、 い ず れ も 豊:富な 蔵 書 を有 す る東 ア ジ ア 図 書 館 を 持 ち 、 しか も東 ア ジ ア 研 究 学 科 に お い て さ ま ざ ま な 分 野 の 日本 研 究 家 を 教 授 陣 に集 め て い る 。 長 い 教 育 の 伝 統 に従 い 、 人 数 こそ 多 く な い が 、 優 秀 な 学 生 を 育 て 、 そ の 多 くは 博 士 号 を 取 得 して か ら 、 さ っ そ く 北 米 や 日本 の 大 学 で 教 鞭 を 取 り は じめ た 。 近 年 の 盛 ん な 国 際 交 流 が 進 む 中 、 カ ナ ダ の 優 秀 な 学 生 が 学 部 教 育 を 修 了 して か ら 日本 へ の 留 学 を 選 ぶ の に 対 して 、 ア ジ ア 各 国 か ら の 留 学 生 、 と りわ け 日本 語 を母 国語 とす る 日本 の 留 学 生 た ち に よ る こ れ ら の 大 学 院 課 程 へ の 参 加 が 目 立 っ 。 そ うい う意 味 で 、 大 学 院 教 育 も 、 す こ しず つ だ が 、 確 実 に変 貌 を 遂 げ て い る。 二 、 カ ナ ダ 日本 研 究 学 会(JSAC) カ ナ ダ全 国規 模 の 日本研 究 の 組 織 は、 StudiesAssociationofCanada)で 「カ ナ ダ 日 本 研 究 学 会 」(JSAC:Japan あ る。 学 会 の メ ン バ ー は 、 主 に カ ナ ダ の 大 学 、 研 究 機 関 、 そ れ に 政 府 の 調 査 機 関 な どに 勤 め る 日本 研 究 に携 わ る学 者 、 研 究 者 、 大 学 教 官 た ち か ら な る 。(図1) 48 カ ナ ダ に お け る 日本 研 究 の 今 JSACの 活 動 の 中 心 は 、 年1回 の 学 会 の 運 営 で あ る。1987年 予 備 大 会 を 経 て 、JSAC第 会 は1988年 の 一 次大 にマ ギル 大 学で 行 わ れ 、 今 年 は ち ょ う ど20年 目 とな る 。 研 究 大 会 で 取 り上 げ られ る 課 題 は 、最 初 の時 期 は主 に政 治 、経 済 、 歴 史 な ど を 中 心 と した が 、 そ の 後 、 さ らに文学 、文化 、 言語 教 育 な ど も加 わ り、 発 表 論 文 の 中 で 占め る割合 も近年 明 らかに増 え続 け て い る。 発 表 論 文 は つ ね に 公 募 を も っ て 集 め られ 、 複 数 の 学 者 に よ る 匿名 の 審 査 な ど を 経 て 、 最 終 の 大 会 プ ロ グ ラ ム が 作 成 さ れ る。 年 次 大 会 の 開 催 地 は 毎 年 変 わ り、 主 催 校 の メ ン バ ー が 中 心 とな っ て そ の 年 の 運 営 委 員 会 を 結 成 し、 い わ ば 研 究 会 の 伝 統 を 踏 ま え な が ら、 主 催 者 の 努 力 な ど を 反 映 す る 新 しい 機 軸 が 毎 年 打 ち 出 され て い る。 な お 、 カ ナ ダ に お け る大 学 院 教 育 の 発 展 に 伴 い 、 最 近 数 年 の 傾 向 と し て は 、 日本 を 含 む カ ナ ダ 以 外 の 学 者 た ち の 参 加 、 そ れ に 若 い 学 者 、 と りわ け 大 学 院 生 へ の 発 表 の 場 の 提 供 、 大 学 院 生 を 対 象 と した 論 文 賞 な ど の 表 彰 が 挙 げ ら れ る 。(表) 今 年 の 年 次 大 会 は8,月 中 旬 に ト ロ ン トの ヨ ー ク 大 学 で 開 催 さ れ 、 Eventuality-PushingtheEnvelopeFurther」 大 会 期 間 で は 、 合 わ せ て25の 「Japanandits との 大 会 テ ー マ を 掲 げ 、 三 日 に わ る パ ネ ル が 設 け られ 、59本 の 論 文 が 発 表 され た 。 大 会 の 運 営 委 員 長 は 、 ヨ ー ク 大 学 の 太 田 徳 夫 氏 で あ る 。 年 次 大 会20周 年 と い う節 目 に 相 応 し く 、 大 会 プ ロ グ ラ ム に は 、 特 別 に カ ナ ダ や 南 ア メ リカ 、 ヨー ロ ッパ 在 住 の 日 本 人 一 世 、 カ ナ ダ の 大 学 な どの 場 で 活 躍 す る 日本 人 二 世 の 代 表 を 招 き 、 そ れ ぞ れ 違 う 時 代 に お け る 経 験 談 を 語 らせ 、 さ ら に オ ー ス トラ リ ア 日 本 学 会 、 日 本 カ ナ ダ 研 究 学 会 との交 流 の場 を設 けた。 一 方 では 、研 究者 の絶対 数 の少 な い こ との反 映 だ ろ うか、大 会論 文 は 互い に離 れ た 分 野 や 研 究 テ ー マ を 取 り扱 い 、 特 定 の テ ー マ に 限 っ て の 交 流 が 十 分 に 行 わ れ た と は 言 え な い 。 一 例 と して 、 今 年 の 学 会 で の 筆 者 が 参 加 した パ ネ ル に は 、 あ わ せ て っ ぎ の3本 の発 表 が組 ま れ た。 TransformationsoftheMaterialCultureoftheHara-obi AdaptingChineseLegendsintoJapanesePopularCulture MedievalPictureScrollsintheContemporaryTime 49 楊 暁 捷X.JieYANG 表JSAC年 度 大 会 一 覧(JSAC公 年度 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 式 サ イ トに基 づ く) 大 会テ ー マ 会場 ConferenceonModernJapan UniversityofAlberta,Edmonton McGillUniversity,Montreal YorkUniversity,Toronto UniversityofBritishColumbia,Vancouver UniversityofManitoba,Winnipeg CarltonUniversity,Ottawa ConcordiaUniversity,Montreal UniversityofAlberta,Edmonton 1999 UniversityofVictoria,Victoria SaintMary'sUniversity,Halifax UniversityofToronto,Toronto UniversityofNorthernBritishColumbia, PrinceGeorge McGillUniversity,Montreal 2000 UniversityofBritishColumbia,Vancouver aooi UniversityofSaskatchewan,Saskatoon 2002 2003 2004 2005 2006 UniversityofCalgary,Calgary McMasterUniversity,Hamilton UniversityofVictoria,Victoria UniversityofAlberta,Edmonton ThompsonRiversUniversity,Kamloops 2007 YorkUniversity,Toronto わ ず か に JapanaftertheEconomicMiracle: InSearchofNewDirections MediatingJapan:Transformationsin theProductionofJapaneseCulture JapanandAsiaPacificinthe21stCentury: History,CultureandPolicyIssues JapanintheAgeofGlobalization JapaninaChangedWorld WhyJapanMatters! Connections&IdentitiesinEastAsianandBeyond JapanatOurDoorstepandinthe ChangingGlobalCommunity JapananditsEventuality-PushingtheEnvelopeFurther 「日 本 の 伝 統 と 現 代 生 活 」 と い う こ と で 共 通 点 が 見 出 せ ら れ 、 主 催 者 の 運 営 の 苦 心 が 伺 え る。 な お 、JSACの 年次 大 会 は、 これ ま で主催 校担 当者 の 責任 で何 回 か その年 の発 表 論 文 が 単 行 本 と し て 刊 行 さ れ た 。 最 近 の も の と し て は 、 『JapanAfterThe EconomicMiracle (Netherlands:Kluwer AcademicPublishers,2000), QWhyJapanMatters! (Victoria:Universityof Victoria,2005)が あ る。 諸 般 の 事 情 か ら、 大 会 論 文 集 の 出 版 は 学 会 運 営 内 容 と は な っ て い な い。 ちな み に、筆 者 は これ まで 直 接 にJSACの 運 営 に参加 した経 験 が な い 。 た だ し 、1995年 か ら、 長 期 間 の 日本 滞 在 以 外 、 毎 年 の 例 50 図2CASA公 式 サ イ ト(http:〃canadianasian studies.concordia.ca/htm/maine.htm) カ ナ ダ に お け る 日本 研 究 の今 会 に は ず っ と参 加 し て 、 上 記 の 二 つ の 学 会 論 文 集 に も発 表 原 稿 を 寄 せ た 。 一 方 で は 、JSACと 並 行 して 、 比 較 的 に 規 模 が 小 さ く な る が 、 究 学 会 」(CASA:CanadianAsianStudiesAssociation)の 「カ ナ ダ ア ジ ア 研 東 アジ ア支 部会 も毎年 集 ま り 、 日 本 を テ ー マ と す る 研 究 が 発 表 さ れ る 。(図2) 三 、 カ ナ ダ 日本 語 教 育 振 興 会(CAJLE) カ ナ ダ の 日本 語 教 師 の 全 国 的 な 組 織 は 、 大 学 や 中 等 教 育 、 日本 語 学 校 か ら参 加 者 が 集 ま る 「カ ナ ダ 日本 語 教 育 振 興 会 」(CAJLE:CanadianAssociationforJapanese LanguageEducation)で CAJLEは あ る。CAJLEは 、2008年 に成 立20周 年 を迎 える。 は じ め に トロ ン ト大 学 や トロ ン ト 日本 語 補 習 校 の 教 師 、 大 学 院 生 や 関 係 者 が 中 心 に な っ て 発 足 され 、 そ の:第1回 の 集 会 は 、 「現 職 目本 語 教 師 研 修 会 」 と の 名 で1988年 夏 に トロ ン トで 行 わ れ た 。 そ の 当 時 か ら 、 そ れ ぞ れ の 地 域 に お け る 日本 語 教 師 の 集 ま り は 多 数 あ り、 バ ン ク ー バ ー 日本 語 教 師 会 な ど、 い ま な お 地 道 な 活 動 を 続 け て お り、 規 模 の よ り小 さ い も の と して は 、 エ ドモ ン トン 、 カ ル ガ リー な ど の都 市 の 日本 語 教 師 の 集 ま りも 定 期 的 な 活 動 を行 っ て い る。 こ れ に 対 し て 、 CAJLEは トロ ン ト地 域 で の さま ざま な 活 動 に加 え て 、 トロ ン ト以 外 か らの 教 師 の 参 加 を 積 極 的 に 受 け 入 れ て き た 。 そ の 結 果 、 い ま や15名 前 後 の理 事会 のメ ンバー の 大 半 は トロ ン ト以 外 か ら の 参 加 者 で あ り、 カ ナ ダ 全 国 の み な らず 、 ア メ リカ や 日 本 か ら の 顔 ぶ れ ま で い る 。 年 次 大 会 や 論 文 集 の 出 版 を 通 じ て 、 カ ナ ダ の 日本 語 教 師 の 象 徴 的 な 組 織 に 成 長 した 。 CAJLEの 大 き な 行 事 は 、 年 一 度 の 年 次 大 会 で あ る。 例 年 、 研 究 発 表 と教 師 研 修 と い う二 っ の 内 容 を 中 心 に据 え 、 国 際 交 流 基 金 な ど の 助 成 を 受 け て 、 日本 か ら講 師 を 迎 え て 日本 語 教 育 の 最 新 の 情 報 を 知 り、 教 授 法 を 習 う。2007年 度 の年 次 大会 は、 8月 下 旬 に ニ ュ ー ブ ラ ン ズ ウ ィ ッ ク 大 学 で 開 催 され 、 「今 の 日本 語 一 そ して カ ナ ダ に お け る 言 語 教 育 の 今 」 を 大 会 テ ー マ と し て 、21本 の論文 と四つ の研 修 会、 それ に 一 つ の パ ネ ル デ ィ ス カ ッ シ ョ ン が 行 わ れ た 。 さ らに 、 年 次 大 会 に は 、 カ ナ ダ 以 外 か ら の 参 加 者 が 増 え 、 組 織 に た い へ ん な 活 力 を も た ら して い る。 と りわ け 日本 か ら は 日本 語 教 育 を研 究 分 野 とす る い ま な お 数 少 な い 大 学 院 課 程 の 指 導 教 官 、在 学 中 の 大 学 院 生 た ち が 参 加 し、 こ れ に 加 え て 、 隣 の ア メ リカ は も と よ り、 トル コ 、 韓 国 、 香 港 な ど、 英 語 圏 以 外 の 参 加 者 も 年 々 増 え て い る。 大 会 の 公 式 言 語 は 日本 語 で あ り 、 各 国 の 日本 語 教 師 た ち の 交 流 は ま さ にCAJLEの 大 き な 特 徴 の 一 つ とな っ て 、 カ ナ ダ と世 界 との 距 離 が 大 い に 縮 ま っ た 。 こ れ と 同 時 に 、CAJLEは1997年 『ジ ャ ー ナ ルCAJLE』 を発 行 し 、2007年 に 第9号 か ら論 文 集 を 出 版 した 。 論 文 の 掲 載 な ど、 編 集 委 員会 は丁 寧 で厳 正 な審 査 を行 い 、高 い 水準 を保 ってい る。 さ らに、 「CAJLEニ ュ ー ス レ タ ー 」 は 年2回 発 行 し 、 学 会 動 向 や 地 域 の 活 動 報 告 な どの 内 容 に 留 ま らず 、 会 員 の 随 筆 な ど も加 わ り 、 つ ね に20枚 前 後 の 分 量 に な る。2年 前 51 楊 暁 捷X.JieYANG か らニ ュー ス レター は電 子発 行 に 切 り替 え 、 過 去4年 半 の もの は す べ て オ ン ライ ン に 公 開 して い る。CAJLEの サ イ トは 、 出 版 物 の 案 内 や 公 開 に加 え て 、 過 去20年 に わ た る活 動 報 告 、 写 真 を 含 め る最 近 数 年 の 年 次 大 会 の 記 録 な ど豊 富 な 資 料 を 提 供 し て い る。(図3) な お 、 筆 者 は2003年 CAJLEの から 理 事 会 に参 加 し 、 広 報 関 連 の 役 目 を 与 え られ 、 と りわ 図3CAJLE公 式 サ イ ト(http:〃www.cajle.net) け ニ ュー ス レ タ ー の 編 集 や ホ ー ム ペ ー ジ の 制 作 、 管 理 を担 当 し て い る 。 四、 ま とめに代 えて 以 上 、 二 つ の研 究 会 を 通 じ て 、 カ ナ ダ に お け る 目本 研 究 と 日本 語 教 育 に ま つ わ る 様 子 の 一 端 を ご く 簡 単 に 紹 介 した 。 繰 り返 しに な る が 、 こ こ に 述 べ ら れ て き た も の は 、 す べ て 筆 者 の 経 験 や個 人 の 理 解 に よ る も の で あ り、 行 き 届 か な か っ た り、 ひ い て は 誤 解 した り した こ と が あれ ば 、 そ れ もす べ て 筆 者 個 人 の 責 任 に あ る。 も と も と、 研 究 の 環 境 、 あ り方 な どは た え ず 進 化 し 、 多 様 化 され た 今 日 に お い て 、 個 々 の 研 究 者 の 関 心 や い ろ い ろ な レベ ル で の 交 流 、 研 究 の 業 績 、 そ して そ れ が もた ら した 英 語 圏 あ る い は 日本 語 圏 で の 影 響 な ど 、 こ れ らす べ て を 全体 的 に 眺め る こ とは、お よそ 一個 人 の観 察 、 報 告 の 範 囲 を超 え る 。 さ らに 言 え ば 、 情 報 化 社 会 が 進 ん だ 今 日で は 、 カ ナ ダ と い う 国 と い う枠 組 み で の 観 察 は 、 自ず とそ の 限 界 が あ る 。 言 語 、 地 域 、 分 野 、 そ して 発 信 の 方 法 な ど、在来 の分 け方 に囚 われ な い こ と こ そ 、 今 日の 学 術 研 究 の 特 徴 だ と言 え よ う。 そ の よ うな 新 た な研 究 の あ り方 が す こ しず つ 姿 を見せ 始 め たい ま、 あ るい 52 図4日 文 研 ・平 成14年 度 北 米 シ ン ポ ジ ウム カ ナ ダ に お け る 日本研 究 の 今 は カ ナ ダ の よ うな 、 横 の 繋 が り の 緩 い 国 が 一 番 さ き に そ の 恩 恵 を 受 け る の か も しれ な い 。 こ れ に 関 し て は 、 あ え て 一 つ の 例 を 挙 げ る と す れ ば 、 い ま か ら5年 前 に バ ン フ で 行 わ れ た 国 際 集 会 が そ れ に 当 た る の で は な い か と思 わ れ る。 す で に 報 告 集 ま で 出 版 され た の で 、 こ こ で は 多 く触 れ な い こ と に し よ う。(図4) 最 後 に 、 日文 研 創 立20周 年 に 当 た り、 国 際 的 な 交 流 の 場 に招 い て くれ た 集 会 の 主 催 者 、 そ して 充 実 し た 数 日 の 交 流 を 陰 で 支 え て くれ た ス タ ッ フ に あ ら た め て 感 謝 を 申 し上 げ た い 。 53