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ケイカルエース・スーパーシリカ技術資料 (超軽量けい酸カルシウム保温材)

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ケイカルエース・スーパーシリカ技術資料 (超軽量けい酸カルシウム保温材)
ケイカルエース・スーパーシリカ技術資料
(超軽量けい酸カルシウム保温材)
明星工業株式会社
日本ケイカル株式会社
<ニチアス株式会社>
1.ケイカルエース・スーパーシリカの一般的な用途
2.ケイカルエース・スーパーシリカの優位性
3.ケイカルエース・スーパーシリカの物理的性能
4.ケイカルエース・スーパーシリカの種類
5.ケイカルエース・スーパーシリカの保温厚さの算出
6.ケイカルエース・スーパーシリカの規格寸法
7.ケイカルエース・スーパーシリカ施工上の注意点
8.ケイカルエース・スーパーシリカ施工完了後の運転における注意点
1.ケイカルエース・スーパーシリカの一般的な用途
ケイカルエース・スーパーシリカは軽量性にもかかわらず、機械的強度が大きく、断熱性能に優れ、
経年変化が少ないことから、製品の安定性などに優れているため、常温から高温度域(1000℃以下)
までの主力保温材として広く以下の分野で使用されています。
1)石油化学プラント
塔槽類(加熱分解炉、蒸留塔、各種反応器等)、熱交換器、配管およびタンク類
2)火力及び原子力発電プラント
ボイラー、タービン本体、煙風道および配管類
3)製鉄プラント
炉ならびに関連装置、機器および配管類
4)製紙プラント
蒸解釜、苛性化装置、エバポレーター、洗浄装置および配管類
5)焼却プラント
焼却炉、集塵機、関連装置、ダクトおよび配管類
6)鉱業、窯業プラント
各装置の機器および配管類
7)食品、ビール、医療品プラント
機器および配管類
8)船舶関係
船内装置、機器、排気および配管類
9)建設設備、地域冷暖房関係
空調装置、冷暖房用発電設備および配管類
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2.ケイカルエース・スーパーシリカの優位性
1)常時使用温度は850℃
けい酸カルシウム保温材1号-15に分類され、一般に使用されている保温材の中では最も優れた耐熱性能を
有しています。
保温材使用温度比較表
ケイカルエース・スーパーシリカは耐熱性に優れ、約600℃までは、寸法変化はほとんどありません。
加熱後の線収縮率
2)
熱伝導率が小さい。
JIS A 9510無機多孔質保温材はけい酸カルシウム保温材とはっ水性パーライト保温材が規定されていますが、この
中でもケイカルエース・スーパーシリカの熱伝導率が最っとも小さく、断熱性に優れています。
無機多孔質保温材の内訳
(JIS A 9505)
1.けい酸カルシウム保温材
けい酸と石灰を高温高圧の飽和水蒸気圧下で水熱反応法で結晶化した、けい酸カル
シウム水和物と成型し、乾燥したもの
1号―15
1号―22
(最高使用温度
2号―17
1、000℃以下)
2号―22
(最高使用温度
650℃以下)
2.はっ水性パーライト保温材
真珠岩を粉砕して加熱膨張させたものに補強繊維および無機バインダーとを添加し、加圧成形して
乾燥させたもの
3号―25
(最高使用温度
900℃以下)
4号―18
(最高使用温度
650℃)
無機多孔質保温材熱伝導率比較表
また、JIS A9504『人造鉱物繊維保温材』には鉱物またはガラスを溶融し有機バインダーで成型したロッ
クウール保温材及びグラスウール保温材が規定され同じ用途の保温材として使用されていますがこの中
でもケイカルエース・スーパーシリカが保温性能に重要な熱伝導率において最も優れていることがわかり
す。
繊維質保温材とケイカルエース・スーパーシリカの熱伝導率比較表
熱伝導率が小さいということは同条件で保温厚さを算出すれば、多の保温材と比較してより薄い厚さで
同等の保温性能を期待でき、また他の保温材と同じ厚みで施工すれば放散熱量を小さくできるので大きな
経済効果があります
厚み
105mm
ケイカルエース・スーパーシリカ
115mm
JIS 2号-17品
放散熱量
180.8
W/m
ケイカルエース・スーパーシリカ
182.5
W/m
JIS 2号-17品
体積
122.8L/m
(88.9%)ケイカルエース・スーパーシリカ
138.2L/m
(100%)JIS 2号-17品
前提:JIS A 9501-95
稼働時間:8000時間
配管:10B
内部温度:300℃
[ケイカルエース・スーパーシリカは、けい酸カルシム2-17と同じ放散熱量で算出した厚み]
ケイカルエース・スーパーシリカとJIS 2号‐17の経済効果比較表
3)圧縮強度、曲げ強度等の機械的強度が大きい。
保温材は施工中や施工後に人が乗ったり、物がぶつかったりする危険がありますが、ケイカルエー
ス・スーパーシリカは圧縮強度が50N/cm2以上あり、人造鉱物繊維保温材のようにつぶれて保温性能が
低下したり、保温材を被覆する外装板から内部に雨水が侵入する心配がありません。
また、ケイカルエース・スーパーシリカは、曲げ強度も1号-15の規定の20N/cm2 以上を大きく
上回る50N/cm2以上より輸送中及び施工時の折損の心配がありません。
けい酸カルシウム保温材の密度と曲げ強さの関係
4)無機多孔質保温材の中では最も軽量
ケイカルエース・スーパーシリカが分類されるけい酸カルシウム保温材1号-15は無機多孔質保温材の中で
最も軽量な密度155kg/m3以下であり、またケイカルエース・スーパーシリカは固有の二段水熱反応により
製造されているため他社の1号-15と比較してより軽量の密度100∼135kg/m3となっています。
軽量であるため作業性がよく、工期も短縮することができます。
けい酸カルシウム保温材
はっ水性パーライト保温材
1号-15
155kg/m3以下
1号-22
220kg/m3以下
2号-17
170kg/m3以下
2号-22
220kg/m3以下
3号-25
250kg/m3以下
4号-18
185kg/m3以下
ケイカルエース・スーパーシリカの製造方法
5)吸水率が小さい
ケイカルエース・スーパーシリカは密度が小さく、空隙が多いため吸水しますが、二段水熱反応に
より製造されているため、けい酸カルシウム結晶の構造が緻密で水中での吸水速度が最も小さい保
温材です。
ケイカルエース・スーパーシリカは吸水しても水に溶けることなく再度乾燥すれば元の保温性能に復帰
できます。
吸水率比較表
6)不燃材なので火災時にも安全
ケイカルエース・スーパーシリカは、けい酸カルシウム水和物の結晶構造で完全無機質材料で構成され
ており、人造鉱物繊維保温材のようにバインダーを含んでいないので同じ不燃材でも火災時に煙や有
毒ガスが発生することはなく安全です。
けい酸カルシウムは、この特性により鉄骨構造物の耐火被覆材としても使用されている種類もありま
す。
種類
結晶構造
Ig.loss
SiO2
Al2O3
Fe2O3
CaO
MgO
PH値
8.5
44.6
2.1
1.1
42.3
1.3
9.8
10.1
43.5
7.1
2.9
29.0
0.7
9.5
ゾノトライト系
JIS 1号
(6CaO・6SiO2・H2O)
[ケイカルエース・
スーパーシリカ]
トバモライト系
JIS 2号
(5CaO・6SiO2・5H2O)
けい酸カルシウム保温材の化学成分
7)耐久性に富む
ケイカルエース・スーパーシリカは、けい酸カルシウム水和物の結晶で構成されているため化学的に
安定しており、他の保温材のようにバインダーを使用していないため、高温時にバインダーが飛んだ
り吸水してバインダーが水に溶けたりして形状が維持できなくなることはなく耐久性に富んでいます。
8)オーステナイト系ステンレスにも安心して使用できます。
オーステナイト系ステンレスの応力腐食割れの原因となる可能性塩素イオン含有量を50ppm以下に抑制
しているため、ASTM C795『オーステナイト系ステンレスの応力腐食割れに関する保温材の使用の規格』
に規定される使用可能範囲に余裕を持って入ります。
可溶性Cl-と(Na++SiO32-)イオン濃度による温材の使用範囲(ASTM-C795)
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3.ケイカルエース・スーパーシリカの物理的性能
(注―1)
項目
密度
単位
(参考)JIS A 9510-09 ベース
ケイカルエース・
スーパーシリカ
1号―15
2号―17
2号―22
(kg/m3)
100
155以下
170以下
220以下
N/cm2
50
20以上
20以上
30以上
(kgf/ cm2)
(5.1)
(2.0以上)
(2.0以上)
(3.0以上)
1000℃ 3時間
同左
―
―
1.0
2.0以下
650℃ 3時間
同左
同左
同左
(0.2)
―
2.0以下
2.0以下
曲げ強さ
線収縮率
%
JIS 1号-15
(0≦θ≦300)
λ=0.0477+0.000128θ(注-2)
(300≦θ≦800)
λ=0.0555+2.05×10-5θ
熱伝導率
JIS A
9501-06
(解説)
+1.93×10-7θ2
W/mk
(0≦θ≦200)
λ=0.0465
+0.000116θ
(200≦θ≦600)
ケイカルエース・スーパーシリカ実
測値
λ=0.0570
(0≦θ≦300)
λ=0.035+0.00011θ(注-2)
(300≦θ≦800)
λ=0.0477+3.14×10-5θ
+1.63×10-7θ2
-0.936×10-5θ
+3.74×10-7θ2
(0≦θ≦300)
λ=0.0535
+0.000116
θ
(300≦θ≦600)
λ=0.0612
+3.38×10-5θ
+1.95×10-7θ2
JIS 1号-15
(0≦θ≦300)
λ=0.035+0.00011θ(注-2)
(300≦θ≦800)
λ=0.0477+1.76×10-5θ
(0≦θ≦300)
λ=0.040
λ=0.046
+0.00010θ
+0.00010θ
(200≦θ≦600)
ケイカルエース・スーパーシリカ実
測値
λ=0.0490
(300≦θ≦600)
+1.66×10-7θ2
Kcal/m・h・℃
(0≦θ≦200)
(0≦θ≦300)
λ=0.031+0.00009θ(注-2)
λ=0.0527
-0.805×10-5θ
+2.91×10-5θ
+3.21×10-7θ2
+1.68×10-7θ2
(300≦θ≦800)
λ=0.041+2.70×10-5θ
+1.40×10-7θ2
(注-1)
ケイカルエース・スーパーシリカの物性値は厚さ50mmのボードの物性値です
(注-2) θ:温度℃
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4.ケイカルエース・スーパーシリカの種類
ケイカルエース・スーパーシリカは通常品のほかに用途に応じて下記の製品があります。
1)ケイカルエース・スーパーシリカ
WP―T
ケイカルエース・スーパーシリカの吸水を防止するためにはっ水処理した製品で、屋外使用で内
部温度が70∼150℃の場合、屋外使用で寒冷地の場合などに推奨します。
WP―T
全体はっ水処理品
2)ケイカルエクセル
保温材は高温になると輻射の影響で熱伝導率が急激に大きくなるので、不透明化剤を添加し高温
での熱伝導率を小さくした製品で保温厚みをケイカルエース・スーパーシリカ通常品よりさらに
薄くしたい場合などに使用します。
0.16
0.14
熱伝導率(W/m・K)
0.12
0.1
0.08
0.06
0.04
JIS 1号-15
ケイカルエクセル
0.02
0
0
100
200
300
400
温度(℃)
熱伝導率比較表
500
600
700
3)エルボエース
現場での配管曲管の施工は保温材をエビ加工してつなぎ合わて施工し、手間がかかり熟練度を要
するので、エルボ部分を工場で予めプレファブ化した製品です。
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5.ケイカルエース・スーパーシリカの保温厚さの算出
施工厚さを算出する場合、保温の設計条件により算出方法が異なり、求められる施工厚さも異なりま
す。主な保温の設計条件は以下のとおりとなります。
1)経済的保温厚さ
保温施工に要する費用と、熱損失から生じる燃費増大とのバランスにおいて経済的な保温厚さを算出
する方法で以下の条件を提示していただければ計算致します。
•
内部温度、配管径(平面の有無)
•
表面熱伝達率(JISベースでは12W/㎡K)
•
外気温度(JISベースでは20℃)
•
年利率(JISベースでは5%)
•
使用年数(JISベースでは15年)
•
保温材の施工価格(JISベースのみの計算)
•
熱量価格(JISベースでは5円/1000W・hr)
•
年間使用時間(JISベースでは4000hrまたは8000hr)
2)放散熱量指定以下の保温厚さ
配管、機器の単位長さ、単位面積当りの放散熱量指定以下の保温厚さを算出する方法で以下の条
件を提示して頂ければ計算致します。
•
内部温度、配管径(平面の有無)
•
指定の放散熱量(単位長さ、単位面積当り)
•
表面熱伝達率(JISベースでは12W/㎡K)
•
外気温度(JISベースでは20℃)
3)表面温度指定以下の保温厚さ
保温材の表面温度が指定以下になる場合の保温厚さを算出する方法で以下の条件を提示して頂け
れば計算致します。
•
内部温度、配管径(平面の有無)
•
指定の表面温度
•
表面熱伝達率(JISベースでは12W/㎡K)
•
外気温度(JISベースでは20℃)
4)内部流体の温度降下防止(水配管の凍結防止を含む)の保温厚さ
保温する配管の内部流体の温度降下防止(水配管の凍結防止を含む)の保温厚さを算出する方法
で以下の条件を提示して頂ければ計算致します。
•
内部流体の管入口温度、流速、比熱
•
配管径、配管の全長
•
指定の管出口温度、保持時間
•
表面熱伝達率(JISベースでは12W/㎡K)
•
外気温度(JISベースでは20℃)
トップに戻る
6.ケイカルエース・スーパーシリカの規格寸法
『規格寸法表』
長さ:610mm
呼称
保温材の厚さ(m/m)
A(m/m)
B(インチ)
カ
15
1
30
40
50
65
75
バ
20
3
/4
30
40
50
65
75
|
25
1
30
40
50
65
75
32
1・1/4
30
40
50
65
75
40
1・1/2
30
40
50
65
75
50
2
30
40
50
65
75
65
2・1/2
30
40
50
65
75
80
3
30
40
50
65
75
90
3・1/2
30
40
50
65
75
100
4
30
40
50
65
75
125
5
30
40
50
65
75
150
6
30
40
50
65
75
200
8
30
40
50
65
75
250
10
30
40
50
65
75
300
12
30
40
50
65
75
350
14
30
40
50
65
75
400
16
30
40
50
65
75
450
18
30
40
50
65
75
500
20
30
40
50
65
75
550
22
30
40
50
65
75
600
24
30
40
50
65
75
650
26
30
40
50
65
75
700
28
―
40
50
65
75
750
30
―
40
50
65
75
/2
800
32
30
40
50
65
75
850
34
―
40
50
65
75
900
36
―
40
50
65
75
1000
―
30
40
50
65
75
1250
―
30
40
50
65
75
R
1500
―
30
40
50
65
75
付
2000
―
30
40
50
65
75
成
2500
―
30
40
50
65
75
型
3000
―
30
40
50
65
75
3500
―
30
40
50
65
75
4000
―
30
40
50
65
75
5000
―
30
40
50
65
75
板
幅(m/m)
長さ(m/m)
保温材の厚さ(m/m)
150
610
30
40
50
65
75
303
610
30
40
50
65
75
150
915
―
40
50
65
75
303
915
―
40
50
65
75
610
915
―
40
50
65
75
ボ
|
ド
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7.ケイカルエース・スーパーシリカ施工上の注意点
ケイカルエース・スーパーシリカの施工においては以下の点について留意します。
1. 保温材の輸送搬入、倉庫での保管を含めた工事期間を通じ、保温材が雨水にかからぬよう注意し
ます。
2. 保温材に湿気がある場合は完全に乾燥させてから取り付けます。
3. 保温材は継ぎ合わせ目に空隙を生じないようしっかり固定します。
もし、空隙を生じた場合ロックウール等の繊維質の保温材を充填します。
4. 原則として保温厚さが75mmまでは1層とし、それ以上は複層とします。
複層とする場合は、保温末端部を除いて、各層の継ぎ合わせ目が同一箇所とならないように施工
します。
5. 外装材の取付けにおいては、保温材内部への雨水侵入防止対策を十分に行います。外装材の取付
け完了後、内部に雨水侵入が予想される保温施工端部及び外装板切込み部等は開口部は適当なコ
ーキング材でシーリングします。
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8.ケイカルエース・スーパーシリカ施工完了後の運転における注意点
ケイカルエース・スーパーシリカの施工完了後の運転においては以下の点に留意します。
1.ケイカルエース・スーパーシリカは工場出荷時には2∼5%の吸湿率で管理されていますが湿度が
80%以上の環境に保管すると最大15%程度まで吸湿します。従いまして保温材取付け完了後、急激に
温度を100℃以上に上げて運転を開始しますと保温材に吸湿された水分が水蒸気となり一時的に被覆
した外装板の裏面で凝縮して保温材の目地より水滴となって落ちることがあります。吸湿した水分が
すべて蒸発すればこの現象は収まり、保温材としての設計値通りの性能が発揮できますが、食品、医
薬品工場等の屋内では十分注意が必要です。
2.ケイカルエース・スーパーシリカはけい酸カルシウムの中でゾノトライト(6CaO・6SiO2・H2O)結晶
で構成されており500℃までは寸法変化は全くありませんが750℃以上でケイカルエース・スーパーシ
リカを長時間使用する場合は加熱面との接触面で結晶水の脱水反応により若干の強度低下がありま
す。
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