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2010年度開始の家庭医療後期研修プログラムについて

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2010年度開始の家庭医療後期研修プログラムについて
様式 専門医-3
1/2
受付番号
受付日 20
年 月 日
決定日 20
年 月 日
決定
ポートフォリオ詳細事例報告書(専門医認定審査用)1
氏
名
会員番号
2011 年 6 月 21 日
事例発生時期
2011 年 9 月 8 日
終了時期
領
域
高齢者
表
題
専門医通院が困難となった高齢者に包括的なケアを提供し在宅療養を継続した事例
記載上の注意:10.5pt の文字を用いて記載すること。このページを含めて 2 枚に収めること。
1.なぜこの事例をこの領域において報告しようと考えたか
専門医へのアクセスが悪く通院困難となった要介護状態の高齢者を経験した。総合診療専門医が
他科の専門医やケアマネジャーと連携することで在宅でのケアを継続することが可能となった。こ
の事例を通して、高齢者の包括的なケアにおける総合診療専門医の役割の重要性を学んだため報告
する。
2.事例の記述と考察
(実践した具体的内容(経過や問題の分析から解決に至るプロセス)および
今後の学習課題の設定を中心とした省察とその根拠)
【症例】80 歳 男性
[主訴]通院困難、腎瘻交換
[現病歴]昭和 63 年〇〇大学にて腎瘻造設術後、・・の自宅から 35km 離れた・・市の総合病院泌
尿器科へ 2 週間に 1 回の頻度で腎瘻交換のために通院していた。昭和 62 年発症の術後後遺症による
下肢麻痺に加え頚椎症性脊髄症による下肢筋力低下と歩行障害が進行したため、平成 17 年 5 月当診
療所から訪問診療と訪問リハビリテーションを開始した。
平成 23 年 2 月尿路感染症、5 月重症肺炎により当診療所に入退院を繰り返した。また、加齢によ
る廃用がすすみ体位変換が困難となり臀部に褥瘡が発生し、車椅子や自家用車への移乗が困難にな
り妻の介護負担が増え、通院介助には同じ敷地内に住む長女の介助も必要になった。しかし、妻も
高齢で持病があり、長女も更年期障害による体調不良が続いていたため、2 週間に 1 回の泌尿器科専
門医受診が困難になっていた。
[既往歴]昭和 62 年 直腸臀部悪性軟部腫瘍術後、人工肛門造設術後、下肢麻痺
昭和 63 年 膀胱全摘術後、腎瘻造設術後
平成 17 年 頚椎症性頚髄症
平成 21 年 胆石胆嚢炎術後
[家族歴]特記事項なし
[嗜好歴]喫煙なし、飲酒なし
[アレルギー]特記事項なし
[服薬歴]プロデック 100mg2T2×、ルジオミール 25mg1T2×、ファモチジン 20mg1T1×、ハルシオン 0.25mg1T1×
[高齢者総合評価(CGA:Comprehensive Geriatric Assessment)]
ADL(Activities of Daily Living) Dressing 部分介助(下半身全介助)、Eating 自立、Ambulating
全介助(歩行不可能、移乗全介助)、Toileting 人工肛門 腎瘻、Hygiene 部分介助(入浴全介助、
様式 専門医-3
受付番号
2/2
受付日 20
年 月 日
決定日 20
年 月 日
決定
歯磨き髭剃り自立)
IADL(Instrumental Activities of Daily Living) 全て妻
認知障害:なし、転倒転落:歩行不可能、ベッド転落予防柵あり、失禁:人工排泄路のためなし
[経過]CGA の結果、移動能力低下による通院介助と入浴介助が解決すべき問題であることが明らか
になった。泌尿器科専門医と相談し、腎瘻交換を当診療所からの訪問診療時に行うことにした。事
前に専門医から腎瘻交換手順を書いた文書、動画を送付していただき自己学習した後、当診療所医
師、看護師が総合病院で腎瘻交換を見学し、手順と物品を確認し準備をした。その 9 日後の訪問診
療時に腎瘻交換を試験的に実施し、腎瘻交換方法のマニュアルを作成し、診療所内で伝達講習を行
った。その後も訪問診療時に定期的に腎瘻交換を実施し、褥瘡の処置や介護者のケアも行った。
また、患者は 56 歳という若さで人工肛門と腎瘻を造設し下肢不自由となりながらも、自費で介護
用ベッドや車椅子を発注して購入したり、自分の意志でケアを選択することで自尊心を保っていた。
患者と介護者の加齢に伴い介護量が増し介護サービスを利用する必要性が高まっていたが、患者は
妻以外の者、特に元気な頃の自分をよく知る村内の者によるケアの提供に抵抗していた。そこで、
ケアマネジャーと連携し患者の意向を汲みながら村外業者による訪問入浴を導入する等少しずつ介
護ケアを導入した。これにより、患者の身体的負担、家族の介護負担が減り、在宅で安心して生活
できる環境を整えることができた。
【考察】
専門医通院が困難になった際に、総合診療医が他科の専門医やケアマネジャー等と連携すること
で在宅でのケアを継続することができた事例を経験した。
高齢者の総合評価とケアは複雑なためチームケアが必要となる(参考文献①)
。今事例では総合診
療専門医と泌尿器科専門医、診療所看護師、ケアマネジャーがチームを形成した。その際に総合診
療医が中心になって CGA をし、専門医と連携して専門手技を獲得し、看護師とケアマネジャーと情
報を共有し、それぞれの役割を分担することで包括的なケアを提供することができた。
また、虚弱高齢者の介護者もまた虚弱であることが多く、在宅療養を継続するためには介護者の
支援も重要となる(参考文献②)
。今事例でも介護サービス導入による介護者の支援が必要であった。
介護サービスを拒否する患者の病い体験を傾聴し、働き盛りの時期に病気により多くのものを失っ
た苦しみを全人的に理解することで、村外業者によるサービスを提供するという共通の理解基盤を
見出した(参考文献③)
。このように、総合診療医が患者中心の医療を行い患者の人生や illness に
寄り添うことで介護者を支援する方法が見出せ、高齢者の在宅療養を可能にすることができた。
【事例からの学びのエッセンス】
・ 専門医通院が困難になった高齢者のケアは、総合診療医が中心になって専門医と連携し診療を継
続することで医療の質を保ち在宅療養を続けることができる。
・ 在宅療養を望む高齢者のケアは、総合診療医がケアマネジャーと連携して介護サービスを調整し
介護者の支援をすることで可能となる。
【参考文献】
① ジョン・P・スローン:第 11 章チームとケース・マネージメント.プライマリ・ケア老年医学:P126-P133;2001.
② ジョン・P・スローン:第 12 章在宅ケアと介護者の支援.プライマリ・ケア老年医学:P134-P141;2001.
③ モイラ・スチュワート:第 1~3 の要素.患者中心の医療:P37-70;1995
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