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国際協力人づくり事例集

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国際協力人づくり事例集
国際協力人づくり事例集
平成 20 年 3 月
財団法人 海外職業訓練協会
Overseas Vocational Training Association
はじめに
財団法人海外職業訓練協会(以下「協会」という。)は国際化に対応し
た人材養成など海外職業訓練について、企業等で働く従業員への支援を行
なうことを目的として、官民一体の協力のもとに、1985年(昭和57年11月)
に設立された厚生労働省許可の公益法人です。
当協会では、その目的を達成するため、社会ニーズに対応した多角的な
諸事業や「人づくり」を側面から支援しておりますが、平成16年度より厚
生労働省からの委託を受けて、人材養成分野における政府及びNGO等の
国際協力関係者からなる「開発委員会」を設置し、広く国際協力関係者等
に提供するために、政府及びNGO等が実施する国際プロジェクトに関す
る情報の収集、分類、整理等の検討を行い、これまでにその成果を年度ご
とに取り纏めてきたところです。
今年度も国際プロジェクト運営等の関係者がプロジェクトの形成段階か
ら事後評価の段階に至る中で遭遇された様々な問題やトラブルを質問形式
により、また、問題解決に各団体及び関係者がどのように対応されたかを
回答事例の形として、事例を収集・整理し、編集作業を進めて参りました。
また、同時に今年度は当協会が行ってきた本事業の集大成の年であるとの
考えからこの事例集の内容等の充実を図り、全体を二部構成に分け、第一
部については、「国際協力プロジェクトに関わる問題事例」で取り纏め、
また、第二部では「現地で技術協力を行なう中で求められる指導教材
(PROTS)の新たな開発にあたっての考え方」について取り纏めておりま
す。さらに、プロジェクトの運営活動以外の宗教、慣習、広報等の関連す
る周辺分野につきましてもプロジェクトを実施する上で重要であることか
ら同様に情報収集を行い、その結果を反映させ、今年度は(1)人材養成
に関わる国際協力プロジェクトQ&A事例(68事例)及び(2)新たな訓
練マニュアル開発への考え方をセットで刊行できることになりました。
a
この事例集は、多くの国で様々なプロジェクトに関係しておられる国際
協力関係者の皆様に事例をご執筆いただきました。
本事例集を、皆様方のお役に立てていただければ、幸いに存じます。
最後になりましたが、当該事例集の作成にあたり、ご多忙の中ご執筆に
ご協力いただき、また貴重な情報をご提供くださいました国際協力関係者
の皆様、並びに事例集の編集作業等にご尽力いただきました委員の皆様に、
この場をお借りして厚く御礼申上げます。
平成20年3月
財団法人 海外職業訓練協会
b
「後発開発途上国向け協力マニュアル等開発委員会」
委員名簿
順不同・敬称略 平成20年3月現在
座 長
稲川 文夫 独立行政法人 労働政策研究・研修機構 人材育成部門
アドバイザリー・リサーチャー
委 員
木附 文化 財団法人 オイスカ 常務理事
鈴木 俊介 特定非営利活動法人 AMDA社会開発機構 理事長
平木 良一 NPO特定非営利法人 グローバル人材育成協会 専務理事
久米 篤憲 独立行政法人 雇用・能力開発機構 千葉センター
訓練課 機械系講師
c
目 次
第1部
プロジェクト形成段階
1.ニーズ調査
1−1 ニーズ調査の方法(手順)を教えてください。……………………… 005
1−2 ニーズ調査で気を付けることは何でしょうか。……………………… 009
2.ニーズからのプロジェクトの立案(計画)
2−1 途上国でプロジェクトを実施するにあたっての
留意点は何でしょうか。………………………………………………… 011
2−2 就職率の期待できない地域では、職業訓練を
どのように考えればよいでしょうか。………………………………… 022
2−3 職業訓練により目に見えるような成果を上げるには
どうしたらよいでしょうか。…………………………………………… 026
2−4 収入向上を目的とする職業訓練の分野を教えてください。………… 028
2−5 収入向上のための事業をする場合、どんなことに気を付けて
計画すればよいでしょうか。…………………………………………… 030
2−6 プロジェクトの計画を立案する流れを教えてください。…………… 037
2−7 職業訓練の支援を効果的に進めていくにあたっての
考え方や気を付けるべきことはないでしょうか。…………………… 041
プロジェクト準備段階
3.現地受益者の特定とアプローチ
3−1 受益者の選択について教えてください。……………………………… 045
3−2 訓練を雇用に結び付けるためにはどうすればよいでしょうか。…… 056
4.プロジェクトの準備
4−1 1グループ何人での訓練が適切でしょうか。………………………… 066
i
4−2 スタッフのリクルートの際にどのような点に
留意すればよいでしょうか。…………………………………………… 070
4−3 教材作成のノウハウ・注意点を教えてください。…………………… 076
4−4 現地の人たちに指導する方法を教えてください。…………………… 082
4−5 途上国で技術指導をするには、
どのようなことが必要でしょうか。…………………………………… 084
プロジェクト実施段階
5.プロジェクト実施中
5−1 技術の普及を効果的に促進させる方法を教えてください。………… 091
5−2 現地指導員をどのように管理・指導すればよいでしょうか。……… 093
5−3 適切な職業訓練を実施するためには何を
注意すればよいでしょうか。…………………………………………… 097
5−4 基本技術への興味を持たせる良い方法を教えてください。………… 101
5−5 研修生の生活待遇条件に不満が出た場合、
どのように対処すればよいでしょうか。……………………………… 105
6.中間評価
6−1 指導した相手の理解度を把握する方法を教えてください。………… 107
7.プロジェクト計画の見直し
7−1 プロジェクト計画を途中で変更した例を教えてください。………… 109
8.最終評価
8−1 最終評価の視点、次回への反映及び
活用方法について教えてください。………………………………………111
9.プロジェクトの終了及び現地への引き渡し
9−1 プロジェクトを定着させるには、どのようなことに
注意すればよいでしょうか。…………………………………………… 113
9−2 プロジェクトの終了時に効果の持続性を保つには
どのような準備が必要とされますか。………………………………… 117
ii
プロジェクト終了後
10.フォローアップ
10−1 プロジェクト完了後の運営は、どのようにフォローアップしたら
よいでしょうか。………………………………………………………… 123
10−2 職業訓練の修了生はどのようにフォローアップしたら
よいでしょうか。………………………………………………………… 125
11.事後評価
11−1 職業訓練の評価項目にはどのようなものがありますか。…………… 127
11−2 訓練評価の基準の設定と分析をどのように行ったら
よいでしょうか。………………………………………………………… 128
その他
12.宗教
12−1 途上国のスタッフと親密な関係を構築するには
どうしたらよいでしょうか。(宗教面)………………………………… 133
13.慣習
13−1 プロジェクトについて対象者を含めた周辺の方に理解してもらう
何か良い方法はないでしょうか。……………………………………… 135
13−2 プロジェクトで実施するセミナーへの参加の促進を図るには、
どのようにしたらよいでしょうか。…………………………………… 142
13−3 女性向け職業訓練を実施するための留意点は何でしょうか。……… 144
14.言語
14−1 現地語に通訳してもらう場合に、気を付けることは
何でしょうか。…………………………………………………………… 147
15.援助協調
15−1 他の援助機関と事業内容が重なった場合の対処の仕方について
教えてください。………………………………………………………… 149
iii
15−2 他国援助団体、国際機関との関係はどのように構築すれば
よいでしょうか。………………………………………………………… 151
16.広報
16−1 プロジェクト活動の広報を促進するには、どのような方法が
有効でしょうか。………………………………………………………… 153
17.健康管理(研修生)
17−1 衛生環境の悪い地域で活動を行う場合に、気を付けることは
何でしょうか。…………………………………………………………… 155
第2部
新たな職業訓練実施マニュアルの開発に向けて…………………………………… 159
参考資料
団体連絡先…………………………………………………………………………… 193
索引
プロジェクト実施国別……………………………………………………………… 197
NGO団体別 ………………………………………………………………………… 200
JICAほかプロジェクト名別 ……………………………………………………… 201
iv
第1部
Q&A事例
1
プロジェクト形成段階
3
Q
A
1―1―A1
ニーズ調査の方法(手順)を教えてください。
ヨルダンで実施中のパレスチナ難民女性職業訓練改善計画で行ってい
る就業支援訓練(wage employment section)では、次のような方法でニ
ーズを把握しています。
一般的な訓練ニーズの把握方法
1.その国の労働市場の傾向などを文献などから把握
2.伸びている産業や人材が不足している産業分野の絞り込み
3.労働省や関連団体などから詳しい情報を収集
4.実際の産業の現場(民間企業など)を訪問
5.それらの企業が、どのような人材と技術を必要としているのかなどの
情報を実際に収集
6.その人材と技術を育成できるような訓練を構築:この時、訓練を提供
する団体の資質とそれを取り巻く環境も十分に考慮する
ヨルダンの労働市場は、アメリカの関税優遇措置を受け、縫製工場が多
く進出しているため何千、何百人規模の工場が多く、常時人材を必要とし
ています。これらの企業では企業内技術訓練を実施しており、この技術訓
練中は、ヨルダンの労働基準に準じた賃金も支払われます。これらの工場
の多くでは、従業員の技術の問題よりもヨルダン人従業員の就業倫理の低
さに悩まされています。
カウンターパート機関である訓練提供者のヨルダン外務省パレスチナ局
(DPA:Department of Palestinian Affairs)は、難民キャンプの市役所的
役割を担っている団体で、職業訓練センターをキャンプ内で運営していま
す。一方、ヨルダンには職業訓練公社(VTC)参加の職業訓練センターが
5
全国規模で広がっており、これらのセンターは難民キャンプの近隣にも存
在します。
職業訓練の多くは、企業とVTCがすでに提供しているという環境を考慮
し、DPA自身により訓練投資を多く必要とするフォーマルな職業訓練を行
う必要性は低いと判断されました。しかし、プロジェクトでは、人々にも
っと働く意欲を持ってもらうことが大事ではないかと考え、就業キャンペ
ーンと就業倫理訓練(各自の必要に応じて1∼3日程度)を開始しました。
その後、企業訪問及びプロジェクトの活動の評判が広がり、難民キャンプ
周辺企業から求人の依頼がプロジェクトへ届くようになりました。一部の
中小企業などは、企業内訓練を実施していなかったため、工業用ミシン操
作訓練(各自のレベルに応じて5日∼1カ月程度)をDPAの職業訓練セン
ターで開始しました。これに加え、ホテルサービス訓練(合計1カ月、2
週間の講義、実地訓練と2週間のOJT)も他の民間の専門学校から講師を
招いて実施しています。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
ヨルダン・ハシェミット王国
2.実
間
2006年1月∼2009年1月
名
国際協力機構(JICA)/
3.実
施
施
期
機
関
ヨルダン外務省パレスチナ局(DPA)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
パレスチナ難民女性職業訓練改善計画
5.ターゲットグループ
ヨルダン国内のパレスチナキャンプ在住者
(主に女性)
6.プロジェクトの目的
女性の労働に対する社会の理解を深め、パレ
スチナ難民女性の雇用と現金収入の向上を目
指す
6
Q
A
1―1―A2
ニーズ調査の方法(手順)を教えてください。
バーレーンでは出稼ぎ労働者の労働人口に対する割合が高く、自国の
青少年、特にドロップアウト・低学歴層の雇用機会が少なく、政府は職業
訓練の機会を多く設けるなどの政策を推し進めていました。JICAが実施
した若者対象の雇用調査では、企業、政府、雇用を求める若者及び職業訓
練機関の対応とニーズの調査から始めました。調査は、①雇用に関する法
令、慣行、賃金形態を把握する、②過去の関係報告書を精査する、③政府
から刊行されている政策、制度、統計を分析する、④現状把握のため上記
4者に別々のアンケートを作成して配布する、⑤政府関係省庁、企業、訓
練センター等を訪問して関係者と面談を行う、⑥出稼ぎ労働者及び派遣機
関と面談する、⑦政労使の代表を参集してワークショップを開催し情報交
換をする等の方法で行いました。
しかし、問題はアンケートの回収率が30%台という関係者の関心の低さ
にありました。その対策として、各配布先を訪問し関係者とアンケートの
内容に関して話し合い、そこで得られた情報をアンケートに反映させるこ
とにしました。その結果、回収率を80%まで高めることができました。次
の問題点は、企業が自国の若者受け入れに非協力的で政府の雇用政策に批
判的なことでした。この件は、政府関係者に報告して助成金制度を設ける
事により、企業から協力を得ることができました。その他、利害が反する
自国の若者と出稼ぎ労働者との対立に関する感情的なコメントや、ニーズ
調査から逸脱した回答が多かったため、これらのコメントを政府関係者に
報告して自国の若者のIT産業等への切り替え調整を図ってもらうことにな
りました。結論として、調査は上記7項目を必要に応じて問題を解決しな
がら並行して行うことにより、効果を上げることができました。
7
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
バーレーン王国
2.実
間
1992年∼1996年
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
人的資源開発(HRD)マスタープラン策定
5.ターゲットグループ
バーレーンの青少年
6.プロジェクトの目的
職業訓練の充実を図り青少年の雇用を促進す
る
8
Q
A
1―2―A1
ニーズ調査で気を付けることは何でしょうか。
技術協力で必要不可欠な項目として、関連情報の収集があります。し
かし、戦乱の渦中にあったエリトリアのような国では情報の空白があり、
技術協力に必要となる人口、社会、経済、産業、教育、雇用に関する情報
が不足しています。また、存在していても政府の政策の都合により、その
信憑性が疑われる情報、データもあります。特に雇用に関するデータは調
査団独自では収集が困難なため、政府の出所に頼ることになります。エリ
トリアの調査では、農業等の従事者で現金収入を期待している者、また、
特に女性に多い、外で働くことを希望しながら家事に従事している者等の
人数がはっきりしませんでした。これらを指摘して確認しようとすると、
おおよその数字が口答で述べられますが、確認の都度人数が異なりました。
JICAでは、帰国後にデータを挿入した調査報告書の作成が義務付けられ
ていますが、2カ月前に同プロジェクトについて同様の事前調査を行った
ため、関連資料はすべて持ち帰られ、その後の新しいデータは皆無でした。
戦後、激変すると思われた除隊兵士を含む雇用関係のデータは数カ月先と
のことで、その時点では政府の統計局には資料が何も届いていませんでし
た。
このようなケースは少ないと思われますが、「結果重視」の調査におい
て、関連データが少ないことは致命的です。短期間に調査を繰り返したこ
とが、情報やデータを十分に得られない大きな原因でした。
対策としては、①既に使われたデータを再度分析して、違った角度から
検証する、②国連開発計画(UNDP:United Nations Development
Programme)、国際労働機関(ILO:International Labour Organization)
の事務所から未だ使われていない情報を参照する、③既に収集済みの教育
省、労働省のほか、産業省を訪問して、漏れたデータの収集に努める、④
9
また企業のニーズ調査をアンケート方式で実施、訪問してその確認を行う、
⑤さらに対象となっている職業訓練校以外の職業訓練センター、高等技術
学校を訪問して情報交換を行う等を実施しました。
そのため、報告書の内容は充実したものとなりましたが、数表、図等で
表すデータを使用した説明は不足しており、満足のいく報告書にはなりま
せんでした。また、短期間に繰り返された調査、統計局のデータ処理の遅
れ、情報の信憑性等は現場で調査を行う調査団の力が及ばない要素でした。
調査団を送るタイミング、受け入れ準備の確認、情報、データの客観性等
について気を配ると、よりよい調査が実施できると思われます。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
2.実
3.実
施
施
期
機
関
エリトリア国
間
名
国際協力機構(JICA)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
職業訓練校拡張計画
5.ターゲットグループ
青少年男女、高卒
6.プロジェクトの目的
職業訓練を通じて基礎技術を習得させること
により、生活向上と社会復帰を目指す
10
Q
A
2―1―A1
途上国でプロジェクトを実施するにあたっての
留意点は何でしょうか。
当団体が本プロジェクトを実施する上で重要視したのは、信頼できる
カウンターパートを見つけること、少なくとも短期では終わらない関わり
を期待できる活動資金の目途をつけるという2点でした。
カウンターパートについては以下の二つの理由により、どこの国や地域
で活動を行う場合でも常に重要視している点です。一つは、当団体からの
支援が終了した後も現地のNGO自身により活動が継続できること、すな
わち、地域の復興の担い手の能力向上に寄与するということです。もう一
つは、その地域の習慣、文化、宗教、価値観等への理解の不十分さからく
る失敗を極力避けるためです。
当該国訪問前の情報収集の段階から、信頼できるカウンターパートを発
掘することにかなりの力点を置きました。インターネットを通して探すの
はもちろんのこと、当該国に詳しい専門家や訪問経験者から情報収集を行
い、いくつかの団体を候補として挙げ、渡航した時には事務所を訪問して
話を聞き、その中でこちらが関心を持った団体の活動現場を実際に訪問さ
せてもらうなどしました。
また、いくらニーズが高く、当該分野における活動経験を有していても、
資金の目途が立たなければ活動の実現には至らないため、活動資金の目途
は大きな問題です。特に当該国に関して日本での注目度が低い場合、募金
もなかなか集まらないのが実状です。そのため、国連やJICAのような組
織との連携の可能性や、政府の補助金や民間の助成金等を事前に検討する
ことも必要になります。本プロジェクトの場合は、当該国が長い内戦の終
結後、大規模な難民帰還が始まろうとしている時期であり、国連難民高等
弁務官事務所(UNHCR)が共に活動するパートナーのNGOを求めていた
11
ので連携が可能となりました。
写真1 カウンターパート
候補団体の事務所訪問
写真2 カウンターパート
候補団体の活動
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
スーダン共和国(ジュバ市)
2.実
間
2006年7月∼現在
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
日本国際ボランティアセンター(JVC)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
難民帰還支援プロジェクト
5.ターゲットグループ
帰還難民
6.プロジェクトの目的
車輌整備を通じて、難民帰還事業の技術的支
援を行うこと、また技術訓練によって帰還難
民の定住促進に寄与すること
12
Q
A
2―1―A2
途上国でプロジェクトを実施するにあたっての
留意点は何でしょうか。
事業の実施にあたっては、カウンターパートの組織・人(参加者)の
自主性、プロジェクト終了後も自分達でやっていけるかという事業の継続
性、責任・対応力が大事だと考えています。
国際労働財団(JILAF)のプロジェクトは事業の性格上制約があり柔軟
性に欠けるため、JILAFがカウンターパートとしてベストではないと判断
した組織とも現地政府からの依頼等により、事業を実施することを求めら
れることがあります。そうした制約と上記の3点の両方をクリアできるよ
う、まず相手から提案を出してもらい、それにこちらからのアドバイス、
示唆をうまく織り交ぜながらプロジェクトを形成する必要があります。
結果として、「制約」をクリアし、事業を一緒に行う相手組織や参加者
が、自分達のニーズに基づいた、自分達の事業であるとの意識を持ってプ
ロジェクトを始めること、勉強することがその後のプロジェクト推進に大
きな力となります。
その上で、私たちは現地側に任せつつも、現地で一緒に汗をかき、事業
終了後には必ずその事業の良かった点と、次回に向けた改善点について話
し合うことにしています。
協力を始める前に相手組織についてよく知ること、その上で事業の目的
と目標をできるだけ具体的に確認することが重要です。
また、JILAFの事業の場合は労働組合組織がカウンターパートですから、
その労働組合が組合員=労働者のために人材養成や訓練を実施したいと考
えていることが、協力を始める前提となります。そのため、組合員が自分
たちで作った(組合員から選挙で役員を選出した)、組合員による(組合
費をきちんと徴収している)、組合員のための労働組合であることを確認
13
します。具体的には、組合員が何人いて、組合費をいくら集め、労使協議
はどのくらいの頻度で行っているか、労働協約はあるか等について質問し、
実際に労働協約を見せてもらいます。
組合員のための労働組合組織であれば、組合員のために組合役員や組合
員を対象としたどのような教育プログラムが必要か、よく議論した上で目
的、目標を具体的に確認することができます。
協力を始める前に、この一つ一つのプロセスを大切に確認することによ
り、自分たちの事業であるという意識が養われます。このプロセスをおろ
そかにすると、私たちに付き合って、私たちのための事業を手伝っている
ような感覚に陥る、また研修参加日当などのお金だけが目的の参加者が来
ることになります。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
アジア11カ国(東、東南、南アジア)
2.実
1994年∼
施
期
間
(各プロジェクトは基本的に1年単位)
3.実
施
機
関
名
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
財団法人 国際労働財団(JILAF)
労組教育プロジェクト、
社会開発プロジェクト
5.ターゲットグループ
各国労働組合のナショナルセンター
(一部産別)
6.プロジェクトの目的
労働者、労働組合への教育プログラムを通じ
てトレーナーを育成し、労働者の意識改革と
労働組合の組織強化を促進する
14
Q
A
2―1―A3
途上国でプロジェクトを実施するにあたっての
留意点は何でしょうか。
プロジェクトの準備段階では、現存する組織が新たに始めようとする
プロジェクトとどのような係わり合いを持つのか慎重に調査をしなければ
なりません。
新規訓練コースを始める際に、工業系カレッジ、職業訓練所等、競合す
る教育機関を前もって調べ、実際に訪問し教官、校長と話し合いをしまし
た。その中で、自らが始めようとするプロジェクトの概要を関係者の様子
を見ながら説明しました。新しい訓練コースが他の訓練機関と重ならない
ことと修了生の取扱いについて理解をいただくことにしました。
訓練を開始する前に関係教育機関を訪ねることは、現行の国家教育体系
が理解できるばかりではなく、これから進もうとする指針も知ることがで
きます。また各教育機関との連携を深めることにより、技術、技能の共有
にも役立つものと思われます。とりわけ重要なことは、相互協力により、
それぞれの持つ訓練の特質を尊重できることであると思われます。
企画へのアプローチの方法は千差万別であると思いますが、プロセスを
間違えないことが成功への近道であると思います。
内部的には講師の選任、カリキュラムの作成など、政府の指導に従い一
定のレベルを保ちながら訓練体制を整えなければなりません。
農業省訓練センターではインストラクターの中から自薦、他薦を問わず
応募者と面談し講師を決定、カリキュラムの作成を行ないました。
講師の講義内容については基本カリキュラムに整合性を持たせるため、
授業で使用する独自のテキストを事前に提出するよう講師にお願いしまし
た。
ほとんどのインストラクターは講師の経験が不足していたため、リハー
15
サルを行ないました。しかし、訓練生を同席させないことが望ましいと思
われます。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
ブータン王国(パロ)
2.実
間
2006年5月より現在も継続中
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
農業機械技術者養成コース
5.ターゲットグループ
農村青年(高校生レベル)
6.プロジェクトの目的
職業訓練指導員の能力強化と市場のニーズに
対応した訓練コースの開発
16
Q
A
2―1―A4
途上国でプロジェクトを実施するにあたっての
留意点は何でしょうか。
途上国でプロジェクトを開発実施するには、①必要で十分な情報入手、
②問題点と課題の検討、③既存のノウハウの活用、④現地に合った臨機応
変な対応、⑤今後を想定した長期的視野が重要となります。
2003年当時、ブータンでは国レベルの技能検定制度が確立されておらず、
国連開発計画(UNDP:United Nations Development Programme)は技能
検定制度策定のため職業訓練の現状の把握、制度策定にあたっての問題点
と課題を調査し、技能検定準備の作業部会を設置して数職種の技能基準の
草案を作成することになりました。関係省庁から技能検定に関する資料を
入手することにより、制度確立に関する政府の意向を確認しました。経済
界や企業では検定制度確立のメリットと必要性が認識されていました。ま
た、共通の基準が今後の訓練に役立つことから、訓練教育機関でも技能検
定制度の確立を熱望していました。しかし、調査開始後、大きな問題が3
つあることが判明しました。
第一に、職業標準を作るために必要なブータン国内の仕事の業種数が未
整理でした。いくつの業種が存在するのか、仕事の分類表がないと職業標
準は作成できないため、国際労働機関(ILO:International Labour
Organization)が既に開発している国際標準職業分類(ISCO:
International Standard Classification of Occupation)を使うことで関係者
の了解を得ました。その中からブータンに存在する業種を選び、国内の職
業標準をまとめました。第二の問題は、仕事が数業種掛け持ちとなってい
ることでした。かつて日本の鍛冶屋がそうであったようになべ底修理、農
機具修理、時計修理、配管、家具の修理など何でもこなす修理屋が多く、
これらを単独の業種とした基準を作ることが必要なのかという疑問が出た
17
ため、このような複数の業種を扱う業種を新たに設けることになりました。
第三に、ブータンの水力発電の電力量は国全体の電力需要を賄うレベルで
はない上に、外貨獲得のため電力の大半をインドへ輸出しているため、電
力不足で既存の製造業種が非常に少ないことでした。対策として、今後電
力が十分となることを考慮し、それに伴い新設される工作機械の関連業種
を予め想定して基準を設定しました。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
ブータン王国
2.実
間
2003年5月∼2003年7月
名
国連開発計画(UNDP)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
国家技能検定制度策定
5.ターゲットグループ
技能労働者
6.プロジェクトの目的
技能検定制度の確立
18
Q
A
2―1―A5
途上国でプロジェクトを実施するにあたっての
留意点は何でしょうか。
当団体では本プロジェクトを現地NGOとの共同事業として実施して
います。そのため活動を始める前の段階で、様々な点についてどれだけ相
互理解を図れるかが重要になります。まずは、双方の役割分担をできる限
り明確にすることです。特に、外国のNGOに対する依存心を不必要に生
じさせないよう、こちら側ができること及びできないことを明確にしてお
くことが望ましいです。当団体の場合は、購入する資機材の所有権、ある
いはその移譲の時期、事務所の使用、会計報告等およそ10項目について覚
書を作成しました。また、それを作成する過程の話し合いにおいて、相互
の考え方についての理解を深めていきました。
また、相手団体の組織の仕組み、特に重要な決定がどのような手続きで
なされるのかについて知っておくことが望ましいです。当団体の場合は相
手団体の本部が活動地とはかなり離れた所にあり、頻繁なコミュニケーシ
ョンは困難です。そのため、日頃接する地域事務所にどの程度の決定権や
裁量が与えられているのかは重要なポイントになります。本プロジェクト
の場合は、幸いかなりの決定権が地域事務所に与えられているので、これ
まで大きな齟齬は経験していません。しかし可能性として、双方で同意し
たと思っていた決定事項が後で相手団体の本部によって反対されるという
ケースはあり得ます。
そして、プロジェクトの目標設定を共有することが大事なのは言うまで
もありませんが、問題なのはどの時点でどういったレベルの目標を設定す
るかです。活動開始前に最終目標まで設定できれば理想的ですが、初めて
の国や相手との活動の場合、一定の経験を積む前に設定する目標がどこま
で適切なものになり得るかという問題があります。状況に応じて目標や活
19
動期間を変更することも可能ですが、一方であまり変更を繰り返すと当初
の目標が形骸化しかねません。この点は常に頭を悩ます問題です。当団体
の場合は、活動が正式に始まってから半年あまり経った段階で、ようやく
プロジェクトの最終目標及び期間の設定に至りました。
写真1
現地NGOとの話し合い
日本国際ボランティアセンター(JVC)とスーダン教会評議会(SCC)*1の全般的な役割
職務説明
スタッフ
プログラム・マネージャー
●プロジェクトの監督、調整、資金調達
●プロジェクトの企画、報告
●プロジェクト経理システムの確立
JVC
●調達
技術アドバイザー(2名)
●メンテナンス業務への技術的な助言と監督
●備品、予備部品の在庫管理システムの確立
●調達
●技術訓練の企画
*1 スーダン教会評議会(Sudanese Church Council)はスーダンにある主だったキ
リスト教各派の連合体で、独自にコンポストトイレ建設などの慈善事業を行ってい
る。
20
スタッフ
管理者
職務説明
●プロジェクトの調整
●プロジェクトの企画、報告
●調達
上級整備士(3名)
●備品、予備部品の在庫管理システムの確立
●メンテナンス記録の管理
SCC
●日常のメンテナンス業務
整備士(7名)
●日常のメンテナンス業務
経理
●日常の経理業務
タイピスト
●メンテナンス記録の管理
倉庫管理人
●日常の在庫管理
警備員(2名)
●作業場の警備
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
スーダン共和国(ジュバ市)
2.実
間
2006年7月∼現在
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
日本国際ボランティアセンター(JVC)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
難民帰還支援プロジェクト
5.ターゲットグループ
帰還難民
6.プロジェクトの目的
車輌整備を通じて、難民帰還事業の技術的支
援を行うこと、また技術訓練によって帰還難
民の定住促進に寄与すること
21
Q
A
2―2―A1
就職率の期待できない地域では、
職業訓練をどのように考えればよいでしょうか。
国境なき子どもたち(KnK)では、東ティモールの首都ディリ市にお
いて、2006年5月に発生した騒乱の影響を受けた青少年を対象に、同年10
月以降、家電製品修理の職業訓練を実施しています。
現地では実際、若者層の就業機会が非常に少ない現状にあるため、既存
の店舗などにおいて就職することが難しい場合などは、職業技術を習得し
た青少年が数名集まって、事業サイトの近くに小規模の作業場を開設して
自ら開業し、習得した技術を実際に生かすための新しい試みがなされてき
ました。
また、この職業訓練には就業支援以外の側面もあります。当時は、現地で
ほとんどの学校が再開されていなかった点を勘案して、青少年にとっては
職業訓練の場が、同世代の者たちと日々の時間を共有する学校の代わりと
なる場を提供していました。職業訓練を通じて、騒乱の影響で毎日の居場
所を失った青少年に、何かに打ち込むことのできる機会を提供することが
可能になったとともに、彼らの健全な成長を促すことにもつながりました。
写真1 家電製品修理訓練の参加者
写真2 訓練後に作業場を開設した
研修生たち
22
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
東ティモール民主共和国
2.実
間
2006年∼(継続)
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
国境なき子どもたち(KnK)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
職業訓練プロジェクト
5.ターゲットグループ
騒乱の影響を受けた貧困家庭出身の青少年たち
6.プロジェクトの目的
騒乱の影響を受けて行き場を失った青少年ら
に活動の場を提供し、彼らの自立支援と健全
な成長を促すこと
23
Q
A
2―2―A2
就職率の期待できない地域では、
職業訓練をどのように考えればよいでしょうか。
就職率というのは職業訓練の成果を測る指標の一つに過ぎません。も
ちろん重要な指標ではありますが、それ以外にも様々な効果が期待できま
す。中でも大きなものは個人個人の能力向上に寄与すること、そしてその
ことが一人一人の自信回復や希望に繋がること、またそれらが就業やひい
ては生き方の選択肢を増やすということです。
就職率の期待できないような地域では、日々の生計を立てていくこと自
体が困難である場合が少なくありません。そのような環境では、たとえ就
職には至らなくとも、持っている技術によっていくばくかの収入を得る、
またその技術をいかに活用したらよいかと考えることそのものが明日への
希望に繋がります。
具体的な例で言うと、例えば自転車や車の修理技術を持っていれば、自
分で修理屋を開くことはできなくとも、自分の自転車等を自分自身で直す
ことにより、その分の支出を抑えることができます。
また、修理技術を持っていれば修理屋への就職以外にも、自分自身によ
る小さな店の開店や運転手としての就職といった選択肢や可能性が出てき
ます。
生活を改善する、あるいは自立を目指す上で重要なのは、将来への希望
が持てるかどうかということです。職業訓練はそれに寄与するものだと思
います。
24
写真1 タイヤ修理場
写真2 タイヤを修理する研修生
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
スーダン共和国(ジュバ市)
2.実
間
2006年7月∼現在
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
日本国際ボランティアセンター(JVC)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
難民帰還支援プロジェクト
5.ターゲットグループ
帰還難民
6.プロジェクトの目的
車輌整備を通じて、難民帰還事業の技術的支
援を行うこと、また技術訓練によって帰還難
民の定住促進に寄与すること
25
Q
A
2―3―A1
職業訓練により目に見えるような成果を上げるには
どうしたらよいでしょうか。
本プロジェクトでは、自動車整備の職業訓練を実施しており、その訓
練には顧客の車輌を実際に修理、整備する実地研修も含まれます。実地研
修では、訓練生は講師の作業を間近に見守り、講師の監督指導の下、実際
に作業を行ないます。訓練が進み、訓練生が知識や経験を身につけるほど
訓練生に委託できる作業は増え、さらにそれが技能向上に繋がります。ま
た、修理及び整備作業のレベルが確かなものであれば顧客も増え、持ち込
まれる車輌が増えるほど、訓練生による実地研修の機会を増やすことにな
ります。
そして、実際に修理、整備作業を行なった場合は代金を請求するため、
自動車整備工場の修理、整備作業のキャパシティーが増えることは工場の
自立採算への道も開きます。
以上のように職業訓練と収入創出活動を結びつけることで、目に見える
ような成果を上げることができます。
写真1 車輌修理の実地研修
26
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
スーダン共和国(ジュバ市)
2.実
間
2006年7月∼現在
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
日本国際ボランティアセンター(JVC)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
難民帰還支援プロジェクト
5.ターゲットグループ
帰還難民
6.プロジェクトの目的
車輌整備を通じて、難民帰還事業の技術的支
援を行うこと、また技術訓練によって帰還難
民の定住促進に寄与すること
27
Q
A
2―4―A1
収入向上を目的とする職業訓練の分野を
教えてください。
ヨルダンで実施中のパレスチナ難民女性職業訓練改善計画で行ってい
る起業家育成訓練(self-employment section)は、雇用を目的とした職業
訓練とは違い現金収入向上のための職業訓練であるため、現地の労働市場
の傾向を見ただけでは、適切な職業訓練の職種が見えてきません。調査な
どの決まった手法を用いるだけではなく、私が一番留意している点は、カ
ウンターパートや訓練対象者の意見を聞くことです。地元で生計を立てて
いる人々は、「あそこの何々さんが、あんなことをして儲けている」など
の情報を持つことから、それを糸口にその業種もしくは、その製品を探っ
ていくと、外国人の私からは見えなかった職業などが見えてきます。その
他には、大きな工場の下請けや孫請け、材料の流通などを調べてみると、
意外な職種が見えてくることがあります。私のカンボジアの経験では、縫
製工場の余り布が小さな工場へ流れ、その工場ではそれらの余り布を使い
マットなどを製作していました。そこからヒントを得て、マット製作の内
職から現金収入が向上するようマット作りの訓練を行いました。
上記のような経験や留意事項を踏まえ、ヨルダンのプロジェクトにおい
ては、現在までマッシュルーム生産、モザイク制作、乳製品加工、ウサギ
飼育、洗剤製造訓練が始まっています。各分野の専門家・トレーナーは、
省庁などに所属する公務員の場合もあれば、自営業者ということもありま
す。自営業者の場合、訓練修了者へのマーケティングサポートを行っても
らえる場合もあるため、訓練生がその訓練から習得した技術で、現金収入
に結びつきやすくなっています。
28
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
ヨルダン・ハシェミット王国
2.実
間
2006年1月∼2009年1月
名
国際協力機構(JICA)/
3.実
施
施
期
機
関
ヨルダン外務省パレスチナ局(DPA)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
パレスチナ難民女性職業訓練改善計画
5.ターゲットグループ
ヨルダン国内のパレスチナキャンプ在住者
(主に女性)
6.プロジェクトの目的
女性の労働に対する社会の理解を深め、パレ
スチナ難民女性の雇用と現金収入の向上を目
指す
29
Q
A
2―5―A1
収入向上のための事業をする場合、
どんなことに気を付けて計画すればよいでしょうか。
ヨルダンでJICAが実施中のパレスチナ難民女性職業訓練改善計画で
行われている起業家育成訓練(self-employment section)での取り組みを
通じて得た、現金収入向上のための職業訓練を計画する場合の留意点は以
下のとおりです。
1.訓練の目的の明確化:訓練が現金収入を目的としている場合は、訓
練からの習得技術が趣味レベルに終わらないよう留意。
2.競争力のある訓練分野の開拓と選定:訓練から習得した技術で制作
(もしくはサービス)された製品の市場での競争力をみる。現在の
グローバル化が進む中、世界のどこにいても中国製などの安価な商
品との価格競争に巻き込まれてしまう。訓練種類を決定するとき、
これらの市場での安価な商品と重ならないような製品(もしくはサ
ービス)の訓練職種を特定することが重要。
(1)訓練種類を選定したら、その技術の専門家もしくは自営業者を
探し、材料とその価格及び市場の売値を確認し、その製品から
どのくらい利益がでるか調査。
(2)情報収集:広報のための製品の特徴やメリットなどの情報を収
集。
(3)その分野の専門家もしくは自営業者と相談しながら訓練内容、
カリキュラムを構築(「女性向け職業訓練を実施するための留
意点」参照)。
3.マーケティングの間接的サポート:基本的な会計、マーケティング
サポートを行う人材及び団体の紹介等。
30
本プロジェクトにおける起業家育成訓練の目的は、訓練修了者の現金収
入向上です。そのため、訓練職種の選択にあたり、市場の安価な商品と重
らないような製品に関わる訓練を探し出し、実施しています。プロジェク
トでは、現在までマッシュルーム生産、モザイク制作、乳製品加工、ウサ
ギ飼育、洗剤製造訓練が始まっています。私の経験から、市場での安価な
商品と同じ、ないしは類似のものを個人事業者が作った場合、市場での完
成品よりも製品の原材料の価格の方が高いということが多々あり、洋服な
どがその好例ですが現金収入へと結びつきません。訓練終了後は、OJTと
して第1回目の原材料の提供と、市場開拓のための人材や組織の紹介など
間接的なサポートを行っています。同時に訓練修了者への訪問指導も行っ
ています。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
ヨルダン・ハシェミット王国
2.実
間
2006年1月∼2009年1月
名
国際協力機構(JICA)/
3.実
施
施
期
機
関
ヨルダン外務省パレスチナ局(DPA)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
パレスチナ難民女性職業訓練改善計画
5.ターゲットグループ
ヨルダン国内のパレスチナキャンプ在住者
(主に女性)
6.プロジェクトの目的
女性の労働に対する社会の理解を深め、パレ
スチナ難民女性の雇用と現金収入の向上を目
指す
31
Q
A
2―5―A2
収入向上のための事業をする場合、
どんなことに気を付けて計画すればよいでしょうか。
国境なき子どもたち(KnK)では、2000年9月よりカンボジアのバッ
タンバンにおいて、貧困家庭出身の子どもやストリートチルドレン、人身
売買被害者のための自立支援施設「若者の家」を運営し、個々人の希望や
能力、意思に応じて、基礎的な教育や職業訓練を受ける機会を提供してき
ました。収入向上を目的とした活動の立案形成や計画を行う際には、特に
以下の点に十分留意してきました。
①裨益者のニーズ:誰が裨益者となるのか、どのような職業技術習得の
ニーズがあるのか
②現地の社会文化的要因への配慮:当該の職業技術の導入が現地の人々
の価値観に反したものとならないか、現地の伝統文化が十分考慮され
ているか
③技術習得までの参加者支援:貧困家庭出身者が職業訓練参加中の期間
において、他の労働に従事できなくなることを考慮した生活支援の必
要性、父兄や保護者から職業訓練参加への理解・協力を得られるか
④現地政府・団体からの協力・支援:現地政府や専門家・団体から必要
な便宜や技術支援が得られるか
⑤マーケットの確保:習得した職業技術を活かす雇用の場や機会が確保
されるのか、習得した職業技術により製作された製品を販売する場や
機会が確保されるのか
⑥製品の質の向上:習得した職業技術により製作された作品が付加価値
を生み出すか
⑦実施可能性の担保:あらゆる側面から考慮して実際に実施可能かどうか
32
⑧自立発展性の担保:中長期的に参加者の主体的な参加が見込めるか、製
品販売による利益が公平な方法で受益者の手に確実に届くか、将来の参
加者間での協同組合の結成やマイクロクレジット*2等を通じた運営組織
支援が可能か
現地での綿密なニーズ調査の結果を踏まえ、当団体の運営する施設にお
いて生活する女子、及び近隣のコミュニティにおける貧困家庭出身の女子
を対象に、2006年8月にはカンボジアの伝統産業である絹織物技術を学ぶ
ための職業訓練(通年)を、また2007年7月には縫製技術を学ぶための職
業訓練(通年)を開始しました。これら二つの職業訓練の内容選定に関し
ては、現地の伝統文化を尊重するとともに、プロジェクトの実施可能性を
見極めつつ、近隣コミュニティや裨益者の保護者からの理解・支援を得ら
れるように十分配慮しました。また、現地でのネットワークを通じてパー
トナー団体からの技術支援を受け、職業技術習得後の就業先(マーケット、
縫製工場等)の確保を行うとともに、2007年7月には現地で製作された製
品の販売を目的として、日本でのフェアトレード*3会社の設立なども行い
ました。品質指導などにも力を入れつつ、裨益者の中長期での主体的な参
加を促進するための働きかけなども行っています。
2007年10月時点において、絹織物職業訓練には17名(うち施設滞在者は
4名)、縫製職業訓練には8名(うち施設滞在者は3名)が定期的に参加
しています。
*2
担保となる資産がなく、金融機関から低利で融資を受けることができない途上国
の貧困層の人たちを対象とする小額無担保融資制度。
*3 途上国の原料や製品を途上国の人々が正当な利益を得られるよう適正な価格で継
続的に購入することにより、生産者の生活向上と自立を目的として始められた貿易
形態をいう。
33
写真1 絹織物職業訓練の参加者
写真2 縫製職業訓練の参加者
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
カンボジア王国
2.実
間
2006年∼(継続)
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
国境なき子どもたち(KnK)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
職業訓練プロジェクト
5.ターゲットグループ
貧困家庭出身、または人身売買被害者
(すべて女子)
6.プロジェクトの目的
恵まれない青少年らに活動の場を提供し、彼
らの自立支援と健全な成長を促すこと
34
Q
A
2―5―A3
収入向上のための事業をする場合、
どんなことに気を付けて計画すればよいでしょうか。
計画段階において、成果物やサービス(以下、製品という)をいかに
売るのかをおさえておくことがとても重要です。そのためにマーケティン
グ手法を用いることをお勧めします。
ここでのマーケティングは「顧客をよく調べ理解し、製品が顧客にぴっ
たりと合って、独りでに売れてしまうようにすること」と定義しておきま
す。
非営利組織では、ともすれば「マーケティング」という言葉が商業ベー
スの響きのために敬遠されがちです。しかし、学校や病院と同様に、途上
国で行う事業で卓越した成果を上げるために、マーケティングを活用する
ことはとても有用です。
本協会の場合、フィリピンでこの3年間に行った木工製品やオイル漬サ
ーディン製作販売による収入向上の事業において、専門家の手を借りなが
らマーケティングを実施し、今までにない収入の向上と持続性を高めるこ
とができました。
マーケティングのポイントは下記の4点です。
1.顧客は誰か。顧客は私たちの提供する製品のどこに価値を見出しう
るのか。
2.競合相手は誰か。彼らは、どのような製品を提供しているのか。
3.自らの位置づけをはっきりさせる。提供する製品の売りはどこか。
強み、弱みは何か。
4.狙うターゲットを決める。価格、流通経路、プロモーションの在り
方を決める。
実施する上で、専門家の手を借りることも出てくるかと思います。本協
35
会の場合は、カウンターパートのルートで現地専門家を探り当てることが
できました。有料になりますが、日本貿易振興機構(JETRO)等を通じ
て、現地調査会社のリストを入手することもできます。現地に商工会議所
がある場合には、そこで相談に乗ってくれる可能性もあります。
調査にかかる費用は、実施する規模や内容によりかなり幅があります。
事前に自らで行う部分と専門家を活用する部分を整理しておき、予算を相
手側に伝え、調査依頼する内容を決めていくことも一つの手だと思います。
案件形成のための事前調査費用として外務省が補助してくれる場合もあり
ます。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
フィリピン共和国(バタンガス州)
2.実
間
2003年∼2007年
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
地球ボランティア協会(GVS)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
オイルサーディン製造による
コミュニティ開発等
5.ターゲットグループ
現地住民
6.プロジェクトの目的
住民の収入向上と持続的開発を行う
36
Q
A
2―6―A1
プロジェクトの計画を立案する流れを
教えてください。
本プロジェクトの例で言うと最終的な計画立案に至るまでに、情報収
集、ニーズ確認、実施前調査、予算・実施計画策定の4段階を必要としま
した。
まず、情報収集段階で当該国を初めて訪問した際、できる限り多くの団
体や施設から、どういった分野にどういったニーズがあるか、広く浅く情
報を収集しました。その中で優先順位が高く、かつ当団体が実施経験を有
する分野として保健、水・衛生、教育、職業訓練の4分野を選定しまし
た。
それぞれの分野で具体的にどういったニーズがどの程度あるか、データ
収集を試みました。しかし、そもそも正確なデータが存在しないことや、
移動の困難さや滞在ビザの制限などから自身でデータを計測することも難
しく、結局ニーズの確認を明確に数量で表すことはできませんでした。そ
うした中、職業訓練の自動車整備部門において、難民帰還事業における後
方支援としての必要性や整備技術者の圧倒的不足が明らかであったことも
あり、その分野での活動実施に焦点を絞る決断を下しました。
実施前調査として、活動実施のためにどういった人材や資機材の投入が
必要か、また既存の資源で活用できるものとして何があるかなどを調査し
ました。
その上で最終的に予算を作り、また1事業年度における達成可能な重点
目標について検討しました。それらの流れを経て計画立案に至りました。
37
写真1 施設による情報収集
写真2 必要な機材の調査
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
スーダン共和国(ジュバ市)
2.実
間
2006年7月∼現在
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
日本国際ボランティアセンター(JVC)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
難民帰還支援プロジェクト
5.ターゲットグループ
帰還難民
6.プロジェクトの目的
車輌整備を通じて、難民帰還事業の技術的支
援を行うこと、また技術訓練によって帰還難
民の定住促進に寄与すること
38
Q
A
2―6―A2
プロジェクトの計画を立案する流れを
教えてください。
事業開始の4カ月前には方向性を決め、相手組織にドラフト・プロポ
ーサル(提案提出依頼)を送ります。その際には、それまでの事業実施の
反省点や国際労働財団(JILAF)として考えている方向性などに基づき、
提案提出に際してのアドバイス事項と提案書に必要な背景、目的、参加対
象者、実施時期、期間と回数、予算等の項目についてのガイドラインを添
付します。また複数の提案がある場合には、自分たちの提案に対しても優
先順位をつけてもらいます。
3カ月前に提案を受け取ったら、JILAF内部で検討を行い、目的や実施
方法の妥当性などについて必要がある場合は確認しつつ、事業の大枠が固
まったら予算についても精査して相手組織とやり取りをします。この時期
のやり取りには、「鳴かせてみせようホトトギス」のための工夫が肝要で、
こちらが一方的に決めた、または押し付けた計画・予算にならないよう充
分に注意します。
上記のやり取りの後、事業開始の1カ月前には承認文書と、報告書の書
き方、アンケートの提出時期、自己評価表の書き方、予算の使用条件、決
算報告の作り方を書いた事業実施のガイドラインと、責任者からガイドラ
インに従って事業を実施することに合意するサインをもらうための合意文
書を送付します。サインをした合意文書が返送された時点で、現地での使
用予算の80%を送金し事業を開始します。
39
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
アジア11カ国(東、東南、南アジア)
2.実
1994年∼
施
期
間
(各プロジェクトは基本的に1年単位)
3.実
施
機
関
名
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
財団法人 国際労働財団(JILAF)
労組教育プロジェクト、
社会開発プロジェクト
5.ターゲットグループ
各国労働組合のナショナルセンター
(一部産別)
6.プロジェクトの目的
労働者、労働組合への教育プログラムを通じ
てトレーナーを育成し、労働者の意識改革と
労働組合の組織強化を促進する
40
Q
A
2―7―A1
職業訓練の支援を効果的に進めていくにあたっての
考え方や気を付けるべきことはないでしょうか。
ジェン(JEN)はスリランカの津波被災者に対して職業訓練を通した
収入向上事業を行いました。効果的な職業訓練活動を行うため、以下の3
点について、事例を用いて説明します。
①土地の文化、生活に根ざした活動を選ぶ
職業訓練にあたり、野菜栽培と魚網作り活動を選びました。どちらも
スリランカになじみのある伝統的活動のため、短期間(2カ月)での技
術習得が可能でした。また、土地に根ざした活動のため、訓練後も村内
で安定したマーケットが望め、安定・継続した収入効果を得ることがで
きました。漁村では魚網作り・修繕のニーズが高いため、事業後も習得
した技術を生かして収入に結びつけています。野菜栽培でも、収穫した
野菜の販売や日々の家庭での消費により、安定した継続的な収入向上効
果を得ています。
②住民の理解と主体性を高める
魚網作りの訓練の際、被災地の住民から「訓練ではなく魚網だけほし
い」と言われました。魚網のみを配っている団体があったためでした。
しかし、「魚網は使っているうちに壊れてしまうが、身につけた技術は
一生使うことができる」と繰り返し説得し、理解を求めました。物をも
らうだけでなく、技術を身につけることの重要性と活動の目的を理解し
てもらうことで、参加者のやる気を促進しました。また、支援への依存
を高めないよう、活動の主体が住民にあることを繰り返し伝え、オーナ
ーシップの意識を高めることで、住民が主導となり活動を継続できるよ
うになりました。
41
③参加者同士のサポート体制を作る
職業訓練で大事なのは、訓練後も参加者が活動を継続し、安定した収
入を得ることです。JENの事業では、活動中に参加者同士に生まれた連
帯を通して、参加者を中心とした互助会を結成しました。互助会を作る
ことで、訓練後も参加者同士で助け合い、共同での資材購入や販売を行
うなど、活動を継続しやすくしました。互助会には参加者以外の住民も
参加し、コミュニティ全体に技術が伝わり、コミュニティ全体の連帯が
強まるという効果も生まれました。
写真1 野菜栽培参加者
写真2 魚網作りの様子
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
スリランカ民主社会主義共和国
2.実
間
2006年4月∼2007年9月
名
特定非営利活動法人 ジェン(JEN)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
津波被災者生活再建自立支援事業
5.ターゲットグループ
津波被災者
6.プロジェクトの目的
被災した人たちの経済的・心理的自立を目指
す
42
プロジェクト準備段階
43
Q
A
3―1―A1
受益者の選択について教えてください。
国境なき子どもたち(KnK)では、東ティモールの首都ディリ市にお
いて、2006年4月に発生した騒乱の影響を受けた青少年を対象に、同年10
月以降、家電製品修理の職業訓練を実施しています。活動開始に際しては
当初、現地のパートナー団体や地元コミュニティの協力を得ながら、職業
訓練への参加希望者の青少年による登録票の記入を実施しました。その内
容に基づき、彼らの家庭・生活環境や教育レベル、当該分野の技術レベル、
本人の希望や意思などを見極めた上で、独自に定めた基準に基づき、職業
訓練への参加者の選定などを行いました。職業訓練への参加枠の人数が限
られているため、騒乱の影響を大きく受け、より苛酷な生活環境に置かれ
ている者を優先して選定するように配慮しました。
写真1 家電製品修理の職業訓練の様子
45
写真2 家電製品修理の職業訓練の様子
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
東ティモール民主共和国
2.実
間
2006年∼(継続)
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
国境なき子どもたち(KnK)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
職業訓練プロジェクト
5.ターゲットグループ
騒乱の影響を受けた貧困家庭出身の青少年たち
6.プロジェクトの目的
騒乱の影響を受けて行き場を失った青少年ら
に活動の場を提供し、彼らの自立支援と健全
な成長を促すこと
46
Q
A
3―1―A2
受益者の選択について教えてください。
本プロジェクトの受益者は難民キャンプから帰還してきた難民の人々
であり、かつその中でも一定の教育を受けてきた人々です。このように特
定するまでに以下のような経緯がありました。
活動実施国スーダンにおいても、支援を必要としている人々は帰還難民
だけではなく地域の人々も同様です。しかし、受益者は何らかの基準で絞
らなければなりません。地域の人々については現地スタッフとして雇用す
ることもあり、訓練生として採用する受益者については、これから大規模
に帰還しかつ生活再建の上で大きな困難に直面するであろう帰還難民に絞
ることにしました。また、本プロジェクトの実施パートナーでもある国連
難民高等弁務官事務所(UNHCR:Office of the U. N. High Commissioner
for Refugees)の受益者が主として難民であるため、そういった要因も考
慮しました。
そして、帰還難民の中からさらにどういった基準で訓練生を採用するか
は、活動の達成目標の内容によります。本プロジェクトの場合は、短期の
職業訓練を実施している団体はいくつかあっても、長期の訓練を通して高
いレベルの技術者を育てるコースは皆無だったので、「2年間にわたって
日本における3級自動車整備士レベルの技術者を育てる」ということを達
成目標としました。
受益者を選択する基準として、より貧しい人、これまで教育を受ける機
会のなかった人といった基準もありますが、本プロジェクトの場合は前述
のような目標を達成するために、一定の教育を受けておりかつ同じ分野で
の経験を有している人に絞りました。そうした選択の基準については、訓
練生を募集する段階で明示しました。
一方で女性の社会参加や能力向上を促進する意味から、女性候補者に対
47
しては基準を緩和して、より積極的な応募を促しました。
図1 インターンの選択基準(募集例)
日本国際ボランティアセンター(JVC)・スーダン教会評議会(SCC)
共同自動車整備ワークショップ
インターン募集
JVC・SCC共同自動車整備ワークショップでは、スーダン難民帰還者からインタ
ーンを募集します。
応募者は次の基準を満たすこと
受入総数
10名(女性の応募も可)
年齢
17∼25歳
学歴
中卒
語学
基礎英語必須
その他
●ジュバ市在住
●健康状態が良好であること
●スーダン難民帰還者であること
●特に女性応募者を奨励
*インターンシップは6月初旬に始まり、2008年12月まで継続します。
*インターンにはワークショップの規定により、給料が支給されます。
*修了証は訓練の完了をもって授与されます。
*応募者は、カバー・レターと履歴書をワークショップのプログラム・マネージャ
ーに提出してください。提出期限は2007年5月17日の正午までです。
*書類選考を通過し面接に進まれた方のリストは、2007年5月21日の午後にワーク
ショップの合同事務所掲示板に掲示します。
JVC・SCC共同自動車整備ワークショップ
プログラム・マネージャー
●●●●●
48
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
スーダン共和国(ジュバ市)
2.実
間
2006年7月∼現在
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
日本国際ボランティアセンター(JVC)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
難民帰還支援プロジェクト
5.ターゲットグループ
帰還難民
6.プロジェクトの目的
車輌整備を通じて、難民帰還事業の技術的支
援を行うこと、また技術訓練によって帰還難
民の定住促進に寄与すること
49
Q
A
3―1―A3
受益者の選択について教えてください。
JICAでは、バーレーンにおいて人的資源開発(HRD)分野のマスタ
ープランを策定するため、職業訓練の実態調査を行うことになりました。
社会福祉省、労働省が受け入れ機関となり、民間では企業、訓練センター
等からなる職業訓練機関、関係省庁からなる職業訓練評議会から助言を受
けることになりました。職業訓練評議会は、湾岸諸国の6カ国(バーレー
ン、オマーン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェート、カター
ル)と連携し、政策、制度、計画に関して政府への働きかけを行っていま
した。JICAがバーレーンのマスタープラン策定について職業訓練評議会
メンバーに説明をしたところ、その成果への期待が膨らみ、他の湾岸諸国
からも協力が得られることになりました。
ところが、多くの職業訓練評議会メンバーからバーレーンで解決できな
い雇用、就業規則等を湾岸6カ国の問題として捉え、解決して欲しいとい
う提案があり、バーレーンの労働大臣からもマスタープランは6カ国を視
野に入れるよう要望されるという問題が生じました。そのため、受益者は
バーレーン1カ国から湾岸諸国6カ国へと大きく拡がり、多国間にまたが
ることとなりました。
その対策として、以下のことを行いました。
①バーレーンにはJICA事務所がなく、現地大使館の技術協力担当者に
状況を説明し対策をお願いした。
②JICA本部に報告して6カ国に拡大しうる計画の対策をお願いした。
③担当大臣と協議して二国間協力の限度を説明した。
④職業訓練評議会メンバーにマスタープランはバーレーンのためである
ことを強調した。
その結果、JICAがその他5カ国を訪問して、バーレーンと同様の調査
50
を実施し、今後各国からの要請があれば二国間で対処することになりまし
た。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
2.実
3.実
施
施
期
機
関
バーレーン王国から湾岸地域に変更
間
名
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
国際協力機構(JICA)
人的資源開発(HRD)マスタープラン策定
5.ターゲットグループ
6.プロジェクトの目的
人的資源開発(HRD)分野のマスタープラン
策定
51
Q
A
3―1―A4
受益者の選択について教えてください。
インドネシアで実施している農業研修では、リーダー的資質を持ち、
かつ田畑に入って汗を流すことを厭わない若者をできるだけ探します。
農業は、農学をマスターしても作物を育て、農場を経営できるようには
なりません。自ら田畑に入って、耕し、種をまき、施肥を行い、草取りな
ど、作物の成長を助ける作業をしなければなりません。頭も体も使って汗
をかいて、熟練技術を含めて少しずつ身に付けていくものです。したがっ
て、研修指導員は「田んぼが教室で、稲が先生である」という基本をまず
研修生に対して強調します。研修・訓練を受ける若者は、自分の家に田畑
があり、今まで農業に従事しており、地域で指導者になれるような資質を
持つ者が理想的ですが、現地社会の中で農業という職業は下位に見られ、
外で汗を流すことが賎しい仕事と見なされることが多いため、農作業を熱
心に行うこと、地域のリーダー格になれる資質を持つことの二つを同時に
備え、かつ向上心豊かな若者はなかなかおりません。しかし、毎年研修コ
ースを実施する際には、苦労を厭わずに両方を備えた若者を探します。そ
うすると、もっぱら作業が得意で熟練技術の向上が早い者、理論的な理解
は早いが農作業にはあまり熱心でない者も、一緒に研修を受ける中で両方
の資質を持つ者から良い影響を受けます。
実践的作業を行いながら教える現場研修が中心なので、そのような研修
の方法を知ってくる研修希望者は、往々にして作業が得意で熟練技術は向
上しても、全員の作業の段取りは不得意という者が多くなります。そのよ
うな若者は、研修終了後個々のレベルでは農業を立派に行っていますが、
それだけでは社会的インパクトは小さいので、やはり、他へ影響を与えら
れる力を持ち、かつ公へ貢献する意欲のある者を選び、研修することが人
材育成の効果を上げるためには大切です。
52
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
インドネシア共和国
2.実
間
2000年2月∼現在
名
財団法人 オイスカ(OISCA)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
インドネシアOB研修センター
5.ターゲットグループ
インドネシア国内青年農業者
6.プロジェクトの目的
研修を受けたOBが自らの力で農業を営み、
3.実
施
施
期
機
関
指導することを目指す
53
Q
A
3―1―A5
受益者の選択について教えてください。
フィリピンのネグロス州で地域の農家に蚕を育て、繭を生産してもら
う養蚕開発プロジェクトを進めています。このプロジェクトの受益者は、
研修を受けて養蚕技術の普及員となる農業者と、普及員の活動により養蚕
に対する基本的な考え方や姿勢を理解し、プロジェクトに参加する農家の
人々です。
養蚕技術普及のため、農家を指導する普及員の育成が必要となり、養蚕
技術及び普及の研修を実施しました。この研修生選抜では、熱心に技術を
学び、労を厭わず地道に熟練技術を身につけ、かつ献身的に村々を回って、
時には指導先で寝泊りして農家の面倒をみることのできるような意欲を持
った若者を選びました。また、農家を指導する普及員は、プロジェクトの
組織の中で日本人リーダーの指導によく従い、献身的な活動ができる者で
なければなりません。
研修生は、養蚕プロジェクトを実施する村々の若い農業者の中から選び
ますが、この地域においてオイスカは以前より、農業開発協力、植林活動、
教育支援などを行ってきました。そのような活動を通じて生まれた現地の
支援者グループがあります。活動の目的、方法、考え方などを理解してい
る支援者、友人たち、あるいは行政の関係者が確実に研修生選考を行うた
めに大きな力になってくれました。
養蚕は生き物を相手にします。油断をすると蚕が病気で全滅することも
あります。育蚕場を清潔に保つ必要があり、夜、危ない兆候があったら朝
まで待つことはできません。農家にとって、屋内で蚕を育てる約1カ月間
は緊張の連続です。そのような基本を学び、迅速に問題へ対処できるよう
になるためには、技術と同時に基本的なものの考え方、姿勢が必要となる
ので、そのような意識改革を含めた資質向上を目指すよう指導します。
54
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
フィリピン共和国ネグロス州
2.実
間
1989年∼現在
名
財団法人 オイスカ(OISCA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
ネグロス養蚕普及プロジェクト
5.ターゲットグループ
ネグロス州農家
6.プロジェクトの目的
養蚕の技術指導と普及により、農民自らの力
で農業者を育成する
55
Q
A
3―2―A1
訓練を雇用に結び付けるためには
どうすればよいでしょうか。
カンボジアの、キエンクリエン障害者職業訓練センターで職業訓練を
実施しております。当会の受益者の場合、卒業後、会社で働くにせよ、自
営の小規模ビジネスを始めるにせよ、職業技術を身につけただけでは仕事
はなかなか長続きしません。なぜならば、訓練生には、学校に通うチャン
スが全くなく文字の読み書きや算数ができない人も多いため、技術だけ身
につけてもお釣りの計算ができない、注文を書きとめられないなどのため、
顧客に適切に対応できないことが多いからです。また、障害が原因でいじ
められ、家族から大切に扱われなかったという経験などから、自分に自信
が持てず人と接することが苦手という人も少なくありません。
この問題に対応するために、当会では、技術訓練だけでなくビジネス訓
練、社会教育、そして受益者の人間的な成長を高めるための包括的なプロ
グラムを実施しています。訓練生は、読み書き、算数、出納帳のつけ方、
癖のある客への対応、効果的な看板の出し方などを教室内や現場で先生や
卒業生から学びます。また、生徒会を結成し訓練生が中心となって活動を
計画・実施すること、スポーツ大会、皆の前で自分の意見を発表する機会
を多く作ることなどによって訓練生が少しでも自信を取り戻せるよう支援
をしています。
さらに、訓練校卒業後3年間に最低3回の家庭訪問を実施し、訓練生の
フォローアップを行っています。卒業後に訓練生が直面する技術的な問題
を解決するだけでなくビジネスについての相談やアドバイス等も行い、卒
業生の持続的な経済活動を後押ししています。
このような経験から、技術訓練のみでなく、ビジネスや人間形成にかか
わる包括的なプログラムを実施すること、また卒業後にきめ細かいフォロ
56
ーアップを行うことで、初めて訓練が実を結び卒業生の雇用や経済的自立
につながると実感しています。
写真1 生徒会の様子
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
カンボジア王国
2.実
間
1993年2月開始、2006年10月現地法人化
名
特定非営利活動法人 難民を助ける会(AAR
3.実
施
施
期
機
関
Japan)並びに、AAR Vocational Training for
the Disabled(AAR VTD)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
キエンクリエン障害者職業訓練センター
5.ターゲットグループ
カンボジア(プノンペンと南部9州)の障害者
6.プロジェクトの目的
職業訓練を通して、地雷被害者やポリオ後遺
症等による障害者の自立を支援する
57
Q
A
3―2―A2
訓練を雇用に結び付けるためには
どうすればよいでしょうか。
チュニジア電気電子技術者育成プロジェクトを実施してきました。こ
の国では概ね企業の新入社員採用は不定期に行われております。一般的に
就職希望者は各種学校や職業訓練センター卒業後、ディプロマを取得し、
その後ディプロマをもとに主に新聞広告や職業安定所での情報を頼りに就
職活動を行い、およそ1年程度をかけて就職先を見つける、というのが普
通のやり方です。そのため学校や職業訓練センターは、学問・技術を教え
ることだけが役目であり、学生の就職活動や就職状況には関心がありませ
んでした。
このような状況を打開するために、我々は第一期生の卒業時期をターゲ
ットに、就職支援活動をチュニジアに芽吹かせるための行動を開始しまし
た。我々の所属先である雇用・能力開発機構(ポリテクセンター、職業能
力開発短期大学校)で行ってきた就職対策委員会活動のノウハウを技術移
転することにしました。当プロジェクト内に就職対策委員会を設置し、規
程の明文化、活動の流れと各段階で必要な書類作り、卒業後のフォローア
ップの仕方をまとめ、学生向けの就職活動マニュアル等を就職支援システ
ムとして作り上げました。またJICA専門家1名、チュニジア就職対策委
員1名の2名体制で企業訪問を行い、企業訪問及び求人開拓のノウハウに
ついても技術移転を実施しました。
この活動により、卒業生の就職率は当プロジェクト目標であった80%を
大きく上回る89%という高数値を記録することができました。この出口
(就職先)の確保は職業訓練センターの質とレベルを維持することに不可
欠なものであり、他国の類似案件においても重要だろうと思います。
58
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
チュニジア共和国(チュニス)
2.実
間
2001年2月1日∼2006年1月31日
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
チュニジア電気電子技術者育成計画
5.ターゲットグループ
職業訓練実施者(管理職及び指導員)
6.プロジェクトの目的
養成訓練による技能者の育成と在職者の技能
向上に必要な訓練コースの開発・実施
59
Q
A
3―2―A3
訓練を雇用に結び付けるためには
どうすればよいでしょうか。
私たちがブータンで行った農業機械技術者養成コースを例に述べま
す。訓練を雇用に効率よく結びつけるためには、プロジェクトの立ち上げ
の段階から幅広く、そのプロジェクトが裨益する人々・地域の人口構成や
職業分布の調査、分析を行い、統括部所(省、庁)との連携を密に行うこ
とが大切です。雇用を求める時期つまり訓練の終了時のみならず、訓練を
実施する過程においても地域や企業の協力と理解を得る必要があります。
また、訓練内容を政策担当者や雇用者の要請により近づけられるよう検討
するためでもあります。
訓練内容検討段階においては、今日先進国において無用の長物と化した
技術でも発展途上国にとっては応用ができる技術として重要視されること
も少なくありません。機具、機械の開発教育においてはどのレベルから教
えるか検討する必要があります。先進国であれば多くの場合、訓練生が過
去に用いられた技術の習得から始める必要はありません。しかし、ブータ
ンでは、機械、機具の原理、構造、機能といったところから実習を含め、
訓練・学習を始めなければ、技術者として生計を立てることは困難です。
多くの発展途上国では企業などの雇用者が少ないため、就職する場所が
多くありません。そこで、訓練が実生活に有効に働くように、自らの自助
努力が報われるように、技術者としての訓練にあわせて、企業家としての
基礎的な知識を習得させることが要求されると思われます。
訓練修了段階においては、各所より情報を集め就職の斡旋も当然行ない
ますが、自立に向けて意欲のある訓練生については、事業者として自立で
きるように指導・支援することも必要です。そこで、国情にもよりますが、
訓練コース実施者が中心となって、①訓練修了生が政府からの営業許可等
60
の許認可の取得を容易にできるようにする、②訓練卒業生が行う事業に対
して銀行融資の優遇措置申請、③政府所有の土地の使用権取得等も推進す
るなども有意義です。また訓練修了間もない訓練生を、先に事業を始めた
修了生のところで現場研修させるなどのシステムを実現できれば、効率よ
い継続的雇用対策になると思われます。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
ブータン王国(パロ)
2.実
間
2006年5月より現在も継続中
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
農業機械技術者養成コース
5.ターゲットグループ
農村青年(高校生レベル)
6.プロジェクトの目的
職業訓練指導員の能力強化と市場のニーズに
対応した訓練コースの開発
61
Q
A
3―2―A4
訓練を雇用に結び付けるためには
どうすればよいでしょうか。
訓練を雇用につなげるために必要、あるいは役に立つこととしては以
下のようなことが考えられます。
・地域の労働需要や自営業の機会の的確な把握。
・裨益者の社会的・経済的背景や訓練ニーズについて把握。
・基本的な経営、会計、営業、販売、PR等、自営業に関わる分野の訓練
も組み合わせる。
・リボルビング・ファンド*4の活用など、訓練修了生の起業支援。
・訓練者が初等教育を終えていない層からの場合、訓練と識字教育などを
組み合わせる。
・公的機関での雇用を目指す場合、履歴書の書き方、面接の対応などを含
めた進路指導を行う。
・訓練の計画などになるべく地域の利害関係者(民間セクターも含め)を
関与させる。
スーダンの基礎的技能、職業訓練強化プロジェクトでは、特に女性を対
象とした訓練を想定して基礎的なマーケット調査を行った後、食堂経営な
どを潜在的分野と捉え、女性グループでの食堂経営を目指し、訓練を始め
ました。人気のあるメニューや現在その分野で就業している人たちの訓練
ニーズなども把握した上で、調理や食品衛生の知識はもとより、ビジネス
マネジメントなどについても講習を行い、訓練修了後は、グループで活動
することを前提に、起業のためのリボルビング・ファンドなども準備して
います。
62
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
スーダン共和国(ジュバ市)
2.実
間
2006年9月∼2009年8月
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
スーダン国基礎的技能、
職業訓練強化プロジェクト
5.ターゲットグループ
若者、国内避難民、ジュバおよび近郊の人々
6.プロジェクトの目的
南部スーダン政府における復興事業や生計向
上に必要な技能習得の体制を強化する
*4 事業を実施する住民組織やNGOが資機材(医薬品、農機具、家畜、苗等)を地域
住民に供与し、住民は利益を得た後にそれに見合う資金を返済するシステム。返済
された資金を積み立て、資機材の供与を繰り返すことにより、資機材の供給と資金
の回収・運用システムが確立し、持続的な発展が可能となる。
63
Q
A
3―2―A5
訓練を雇用に結び付けるためには
どうすればよいでしょうか。
ヨルダンで実施中のパレスチナ難民女性職業訓練改善計画で行ってい
る就業支援訓練(wage employment section)では、訓練開始前に訓練生
の就職の目途をつけた上で訓練を計画・実施しています。このようなやり
方が可能なのは、ヨルダンでは、特に工場などでの単純及び準熟練レベル
の労働者が著しく不足しているためです。訓練生が働く意思と忍耐力があ
れば雇用機会はある、というのがヨルダンの労働市場の現状です。
ヨルダン外務省パレスチナ局(DPA:Department of Palestinian Affairs)
の職業訓練センターで行っている就業支援と訓練の関係は、以下のとおり
です。
1.失業者がセンターへ訓練申請書を提出する。
2.それに応じてセンター側が、企業側へ求人の希望を問い合わせる。
3.求人がある場合は、必要な訓練がその申請者へ提供される。
4.同時にこの逆、つまり企業側から求人の依頼があり、それに応じて
求人の広報を行い、訓練を実施することもある。
特別な技術訓練が必要でない場合は、直接企業へ紹介という形をとるこ
ともあります。センターでの訓練は短期間、長くても1カ月のため、両者
(求人側、求職側)を長い期間待たせることがあまりないことから、この
ようなやり方が可能となっています。同時に、訓練地域も難民キャンプと
限られているため、急な求人などの広報にも手間を取らず迅速に現場の状
況に応じて対応できます。
就業支援訓練プロジェクトで特に取り組まなければならない問題は、雇
用機会ではなく社会的慣習にあります。工場などでの労働は恥(特に女性)
とみる傾向がある上、もともと女性が働くということが社会から求められ
64
ていないため、女性自身の働きたいという意識が低いのです。それに加え、
キャンプ等へは各団体(パレスチナ難民救済機関UNRWA、ヨルダン政府、
イスラム教団体、NGO等)からの経済的、物質的援助等があり、働かな
くても最低限の生活が維持できる環境があります。このような状況から、
訓練後の就職率はいいものの離職率も高いため、訓練のターゲット層であ
るパレスチナ難民(特に女性)が継続的に収入向上をしていくには、まだ
まだ時間がかかると考えています。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
ヨルダン・ハシェミット王国
2.実
間
2006年1月∼2009年1月
名
国際協力機構(JICA)/
3.実
施
施
期
機
関
ヨルダン外務省パレスチナ局(DPA)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
パレスチナ難民女性職業訓練改善計画
5.ターゲットグループ
ヨルダン国内のパレスチナキャンプ在住者
(主に女性)
6.プロジェクトの目的
女性の労働に対する社会の理解を深め、パレ
スチナ難民女性の雇用と現金収入の向上を目
指す
65
Q
A
4―1―A1
1グループ何人での訓練が適切でしょうか。
本プロジェクトでは、1クラスのみ10人で開始しました。指導員の人
数や、訓練活動以外での様々な作業量を考慮するとその規模が適切であろ
うと判断しました。しかし、現実にはその程度の規模であっても様々な困
難がありました。
一つは訓練時の使用言語である英語力に関して、訓練生の間にばらつき
があることです。使用言語については、専門用語はほとんど英語であり、
公用語のアラビア語や各民族の言葉には訳せないことから必然的に英語と
なります。加えて訓練生一人ひとりの教育レベルにもばらつきがあり、そ
のことは当初の面接だけでは中々把握し切れませんでした。長い内戦のた
めの避難生活、難民キャンプで受けられる教育レベルや期間も一定ではな
い等、様々な要因があり、訓練生によっては理解力や思考力を育む機会が
ほとんどなかったのではないかと推測されます。
進度の遅い訓練生には補習を行います。それでもなお開きがある場合は
クラスを分けて、それぞれ別の到達目標を設定することを検討する等、現
在も試行錯誤しています。
1クラスの人数が少なければきめ細かい対応が可能になり、また一人ひ
とりに対する実地研修の機会もより多くなります。故に訓練の質を充実さ
せることができます。しかし、人数としての成果は小さくなり、脱落者が
出れば尚更です。
一方、人数が多ければ到達レベルが低くなる傾向があります。脱落者も
多くなるかもしれませんが、より多くの人に機会を提供したことになり、
それは一つの明確な成果です。到達目標やこちら側の実施体制に応じて、
1クラスにおける適切な人数を探っていくことになるのだと思います。
66
写真1 研修風景
写真2 研修生の到達目標
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
スーダン共和国(ジュバ市)
2.実
間
2006年7月∼現在
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
日本国際ボランティアセンター(JVC)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
難民帰還支援プロジェクト
5.ターゲットグループ
帰還難民
6.プロジェクトの目的
車輌整備を通じて、難民帰還事業の技術的支
援を行うこと、また技術訓練によって帰還難
民の定住促進に寄与すること
67
Q
A
4―1―A2
1グループ何人での訓練が適切でしょうか。
国際労働財団(JILAF)では、参加者が訓練の教材となる現場を実際
に見学し、訓練中も実施される講義をただ聴くだけでなく、全員が発言す
るようすべての講義でグループ討議を行う、全参加者が訓練中に必ず一回
は発表するよう交代で討議結果を発表するなど、訓練をより実践的に行う
参加型トレーニングを取り入れています。参加型トレーニングでは、前日
の訓練のまとめを発表する、時間管理、ゲームや歌などレクリエーション
も参加者が交代して担当します。
また、JILAFでは訓練をより実践的にするため、トレーナー育成研修
(TOT:Training of Trainers)という訓練方法を多くの場合に使います。
これは、訓練を受けた参加者が職場に戻り、トレーナーとして同様の訓練
を実施することで裨益の拡大に有効です。
TOTを参加型トレーニングで実施すると、参加者がすぐに職場で同様の
訓練を行う、トレーニングの成果としての活動を開始することが可能とな
ります。全体の参加者が20人∼25人でこのようなトレーニングを行う場合、
全員がグループ討議で発言する、さらに結果を発表するためには、1グル
ープ5人×5グループ=25人ぐらいが適切です。
68
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
アジア11カ国(東、東南、南アジア)
2.実
1994年∼
施
期
間
(各プロジェクトは基本的に1年単位)
3.実
施
機
関
名
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
財団法人 国際労働財団(JILAF)
労組教育プロジェクト、
社会開発プロジェクト
5.ターゲットグループ
各国労働組合のナショナルセンター
(一部産別)
6.プロジェクトの目的
労働者、労働組合への教育プログラムを通じ
てトレーナーを育成し、労働者の意識改革と
労働組合の組織強化を促進する
69
Q
A
4―2―A1
スタッフのリクルートの際に
どのような点に留意すればよいでしょうか。
国境なき子どもたち(KnK)では、東ティモールの首都ディリ市にお
いて、2006年4月に発生した騒乱の影響を受けた青少年を対象に、同年10
月以降、家電製品修理の職業訓練を実施しています。
現地スタッフをリクルートする際には、雇用条件が現地の給料スケール
や労働法規、待遇に準じたものとなるように十分配慮しました。また、採
用時点でのスタッフの能力や過去の経験を客観的に把握することも当然重
要となりますが、中長期的には彼ら自身がプロジェクトを自発的に実施・
運営していくことが理想的な形になると考えますので、リクルートの際に
は候補者の応募動機や仕事への考え方、勤勉さなどの面からも精査する必
要があるといえます。なお、一般公募するよりも、既に働いていて信頼で
きるスタッフの紹介などを通じて探す方が、人間関係も上手く行きやすい
面があります。ただし、縁故採用の場合には注意を要することもありま
す。
途上国では、優秀な人材であれば、給料など待遇面の差によって、国際
機関などの関連団体に容易に引き抜かれることも十分あり得るため、ある
程度まとまった期間での契約を当初から締結することが好ましい場合も少
なくありません。
70
写真1 現地スタッフと裨益者の子どもたち
写真2 現地スタッフの業務の様子
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
東ティモール民主共和国
2.実
間
2006年∼(継続)
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
国境なき子どもたち(KnK)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
職業訓練プロジェクト
5.ターゲットグループ
騒乱の影響を受けた貧困家庭出身の青少年たち
6.プロジェクトの目的
騒乱の影響を受けて行き場を失った青少年ら
に活動の場を提供し、彼らの自立支援と健全
な成長を促すこと
71
Q
A
4―2―A2
スタッフのリクルートの際に
どのような点に留意すればよいでしょうか。
事前調査、その後の効果的な啓発活動のため、傘下の現地団体は初め
てスタッフの雇用を行いました。雇用に際しては、運営スタッフの裁量に
任せました。
その結果、社会福祉修士号を取得した新卒の男性2名が採用され、将来
は当該事業のみならず現地団体の活動全体に関わってもらいたいと運営・
日本人スタッフとも彼らに期待を持ちました。しかし、半年後に現地を訪
れた時には、その2名は既に解雇され、新たに女性パートスタッフが雇用
されていました。
運営スタッフの説明によると、男性スタッフは活動開始当初の戸別訪問
による調査など具体的な業務がある時には問題はなかったが、調査終了後
の住民との対話、具体的な啓発活動などに取り組む段階に入ると、住民か
らの訪問を事務所で待つなど主体性の無さが目立つようになり、また、運
営スタッフが自ら住民に働きかけるよう何度指導しても改善が見られなか
ったので解雇したとのことでした。
対象地域との関係もできておらず活動自体も軌道に乗っていない今回の
ような新規事業では、年齢、経験の不足、階級の違いもあり、新卒の男性
スタッフが研修もない状況で住民の中に入っていくことは困難であったと
思われます。一方、女性スタッフは医療系フィールドワーカーとしての経
験があり、近隣のスラムの住民であったため、住民との対話が容易であっ
たと思われます。
また、事業内容や団体の活動全般について、運営スタッフと男性スタッ
フとの相互理解が不足しており、運営スタッフ側の育成能力が不十分でし
た。
72
今後のスタッフの雇用に関しては、能力、長期的/短期的な雇用、研修
の要/不要など目的に応じた「適材適所」が重要であると同時に、雇用側
の育成能力強化も重要であると感じました。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
インド(バンガロール)
2.実
間
2004年9月∼2006年8月
名
財団法人 アジア・アフリカ国際奉仕財団
(AIV)
/
3.実
施
施
期
機
関
Sampurna−サンプルナ−(現地傘下団体)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
HIV/AIDS 教育・防止プロジェクト
5.ターゲットグループ
都市郊外スラム街内 2地域
6.プロジェクトの目的
社会的弱者である女性、子供、障害者に関す
る支援を行い、福祉の増進、生活の向上に寄
与する
73
Q
A
4―2―A3
スタッフのリクルートの際に
どのような点に留意すればよいでしょうか。
青年農業者育成のため農業技術研修コースを実施しており、基本的に
はこの卒業生からスタッフを採用します。青年が技術を学ぶための研修で
すが、同時に研修を受けるということは、自分のためだけではなく、自分
の村に帰って近隣の農民へ学んだことを伝えること、農業は村づくりの基
本であり、そのような基本産業を土台にしてさらに発展的に村の将来につ
いて考えること、また、農業技術は1∼2年で習得できるものではなく、
卒業後いかに自分自身が研鑽を続けるか、など「ものの考え方や価値」を
習得してもらうことに努めます。そのような価値を掴んだ研修生は卒業後、
自分はこのコースの卒業生であるという誇り・アイデンティティを持つよ
うになります。そうした卒業生を輩出した後は、卒業生の中から特に指導
力があり、研修の意義への理解と、卒業生としての自覚の強い若者をリク
ルートします。
しかし、人はいろいろ事情があり、いつまでもスタッフとして活動した
いが親の求めで郷里へ帰る者、あるいはもっと野心的に高収入を目指す者
などがいます。スタッフの補充が必要となってきますが、そのような場合
も、研修卒業生の中から選びます。
真に力のある農業技術者になるためには長い年月がかかります。スタッ
フとして働くことは、農業研修コース実施の中で、先輩に学びながら現場
でさらに実践することであり、同時に後輩の指導もしなければなりません。
教えることは自分が技術、情報をしっかり掴むために有益な勤めです。若
いスタッフは、研修の実施に貢献しつつ同時にいろいろな実践の中で自分
の力を高める機会を持つことになります。
74
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
ミヤンマー連邦(マグウェイ、パコック区)
2.実
間
1996年より現在も継続中
名
財団法人 オイスカ(OISCA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
オイスカ農林業研修センター
5.ターゲットグループ
青年農業者
6.プロジェクトの目的
稲作を中心とした有機農業の普及と人材育成
75
Q
A
4―3―A1
教材作成のノウハウ・注意点を教えてください。
チュニジアは1995年、欧州連合とパートナーシップ協定を締結しまし
た。この協定は、同国が1998年3月から12年以内に欧州と自由貿易関係に
移行することを定めています。欧州から輸入される製品と競争できるよう
になるためには、産業界の技術水準及び労働生産性の向上が必要不可欠と
なっています。このような背景に基づいて、JICAは同国政府より、首都
チュニス市内に電気・電子技術職業訓練センター設立の要請を受け、この
センターにおいて2001年2月より5年間の技術協力を行いました。
このチュニジア電気電子技術者育成計画においては、チュニジア指導員
は授業を担当しながら、同時に技術移転対象として参加しました。各技術
移転項目について基礎理論から応用実習課題まで、大きな単位でその内容
を用意しても、連続して技術移転受講者として参加することが難しく、な
かなか最後まで到達できません。この問題に対処するため各技術移転項目
内容を技術要素単位に細分化・ユニット化し、それぞれに特徴的な実習課
題を設定し、それぞれが各ユニット単位で完結するよう技術移転内容を整
理し技術移転を実施しました。
技術移転の成果として開発したテキストブック及び教育用教材は、実習
課題を中心に構成し、プロジェクト終了後も各モジュール担当指導員が自
学復習できるよう、システム構成図、各種使用回路図、PLCプログラムな
ど、細部にわたるまで丁寧に記述しました。
プロジェクト実施国の状況にもよりますが、現地指導員は実験・実習機
材の不備な環境の中で勉強してきているため理論中心の勉強法となってお
り、実験・実習については不慣れな場合が多く見受けられます。そのため、
実験・実習用テキストをまとめる場合には実験・実習について不慣れな現
地指導員であっても自信を持って学生に指導できるよう些細なことまで懇
76
切丁寧に記述することが必要です。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
チュニジア共和国(チュニス)
2.実
間
2001年2月1日∼2006年1月31日
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
チュニジア電気電子技術者育成計画
5.ターゲットグループ
職業訓練実施者(管理職及び指導員)
6.プロジェクトの目的
養成訓練による技能者の育成と在職者の技能
向上に必要な訓練コースの開発・実施
77
Q
A
4―3―A2
教材作成のノウハウ・注意点を教えてください。
チュニジアにおいて、職業訓練実施者(管理職及び指導員)の管理・
指導能力向上を目的として、電気電子技術者育成計画を行いました。実習
機材が不足する中での、職業訓練は座学中心になりがちです。当プロジェ
クトの受益者であるカウンターパート(現地指導員)は、理論的には理解
していても、簡単な組立作業をさせると全くできない場合があります。こ
れでは実践的な職業訓練を行うことはできません。カウンターパートには
設計者と作業者は違うという意識があり、実際の作業をやりたがらない場
合もありますが、彼らの意識改革を促し、実習主体の訓練にしていくこと
が必要です。訓練を進めるには様々な実習教材が必要になりますが、「実
習教材がなければ自分たちで工夫して作る」という積極的な活動が行われ
るよう指導していくことも大切です。実習教材が高価で、相手国の実情と
かけ離れているものであれば、プロジェクト終了後の継続性に問題が出て
きます。したがって、教材製作にあたっては、部品・材料が国内で容易に
入手可能で、当該国側で費用が負担できること、当該国の関連分野が求め
ている技術レベルに合致すること等を考慮する必要があります。
製作された実習教材などの成果物は一部を展示用ケースなどに入れ、多
くの人の目に触れるようにするのも効果的です。カウンターパートの技術
レベルの確認もできますし、彼らのやる気が生まれ、彼ら同士の技術交流
も期待できます。企業や政府関係、一般市民などが見学する際に、センタ
ーをPRすることが可能です。
また、作成した実習教材が他の訓練センターで活用されることにより、
移転された技術が他の訓練センターを通じ国内へ波及する効果も期待でき
ます。テキストや教材など「目に見える形で成果物を残し、いつでも利用
できるようにする」ことは技術移転を行う上で重要です。
78
写真1 複数分野のカウンターパートが
協力して開発した他センター向け
マイコン開発教材
写真2 成果物展示用ケースの設置
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
チュニジア共和国(チュニス)
2.実
間
2001年2月1日∼2006年1月31日
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
チュニジア電気電子技術者育成計画
5.ターゲットグループ
職業訓練実施者(管理職及び指導員)
6.プロジェクトの目的
養成訓練による技能者の育成と在職者の技能
向上に必要な訓練コースの開発・実施
79
Q
A
4―3―A3
教材作成のノウハウ・注意点を教えてください。
国際労働財団(JILAF)では、「POSITIVE」と呼ばれる労働組合主導
による参加型・実践重視の労働安全衛生(OSH)トレーニングプログラム
を実施しています。
POSITIVEはトレーナー育成研修で、以下の6つの教材があります。
①トレーニング・マニュアル(トレーニングを受ける際、さらに自分がト
レーニングを実施する際に使用)
②アクション・マニュアル(トレーニングを受けた後、実際に自分が職場
で改善活動を行う際に使用)
③トレーナーズ・ガイドブック(トレーナーとして、トレーニングを企画・
立案∼実施する場合のノウハウすべてとトレーニング・ツールを集約)
さらに、プログラムの概要がわかる
④リーフレット(トレーニング実施にあたっての協力者=訪問する工場等
にプログラムの内容を説明する際に使用)
またトレーニング・マニュアルの中には
⑤チェックリスト(工場訪問をする際に、具体的に良い点、改善すべき点
をチェック)
⑥プログラムスケジュール(標準的な4日間プログラムの事例を記載)
等具体的なツールも入っています。
(上記すべて英語版と現地語版を作成)
教材の更新・改訂にあたっては、トレーニングの際も一緒に現地へ行き
トレーニングを指導する労働安全衛生の専門家と協議しながら、実際のト
レーニング時の経験を踏まえ、具体的な事例や写真、イラストをより多く
盛り込み、参加者がより理解しやすいよう工夫します。各国の事例や経験
を盛り込むには、多くの専門家と何回もやりとりを行うため、新しい教材
の開発には1年、改訂でも半年以上を費やします。
80
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
アジア11カ国(東、東南、南アジア)
2.実
1994年∼
施
期
間
(各プロジェクトは基本的に1年単位)
3.実
施
機
関
名
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
財団法人 国際労働財団(JILAF)
労組教育プロジェクト、
社会開発プロジェクト
5.ターゲットグループ
各国労働組合のナショナルセンター
(一部産別)
6.プロジェクトの目的
労働者、労働組合への教育プログラムを通じ
てトレーナーを育成し、労働者の意識改革と
労働組合の組織強化を促進する
81
Q
A
4―4―A1
現地の人たちに指導する方法を教えてください。
上から「指導」するのではなく、同じ目線に立って「一緒に汗をかく」
といったスタンスがまず重要です。
言語は、できれば現地の人たちが使っている言語を使います。私の場合、
フィリピンではタガログ語に英語を混ぜて使用、インドネシアではインド
ネシア語で講義を実施します。現地の言葉での講義ができない場合でも、
挨拶や自己紹介は、現地の言葉で行うと、現地の人たち(参加者)との距
離がグッと縮まります。
講義をする際、質問に答える際、打合せ等をする際は、話したいことを
なるべくシンプルに整理して、ポイントを明確に述べることが重要です。
難しいことを長々と話すと、反論や質問は出ないかもしれませんが、理解
もされず、後に残りません。
できればなるべく多く現場を訪問して相手側の状況をよく勉強し、相手
のことを理解していることを示しながら、こちらも本音や事例を交えると
よいと思います。
82
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
アジア11カ国(東、東南、南アジア)
2.実
1994年∼
施
期
間
(各プロジェクトは基本的に1年単位)
3.実
施
機
関
名
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
財団法人 国際労働財団(JILAF)
労組教育プロジェクト、
社会開発プロジェクト
5.ターゲットグループ
各国労働組合のナショナルセンター
(一部産別)
6.プロジェクトの目的
労働者、労働組合への教育プログラムを通じ
てトレーナーを育成し、労働者の意識改革と
労働組合の組織強化を促進する
83
Q
A
4―5―A1
途上国で技術指導をするには、
どのようなことが必要でしょうか。
難民を助ける会がミャンマー(ビルマ)で運営する障害者のための職
業訓練校では、訓練生が技術を習得すると同時に、社会性(社会生活力)
を身につけることが大切であると考えています。
裁縫や美容・理容の技術を習得することはもちろん大切ですが、その技
術を活かして経済的に自立していくためには、お店に来るお客さんや地域
の人々と良い関係を築くことも必要です。つまり、社会性も重要な技術と
とらえています。社会性が向上すると、何よりも自分自身が地域の一員と
して楽しく生きることができるからです。
そこで、授業や寮生活以外でも、障害を持つ訓練生や卒業生たちが、社
会の重要な一員として積極的に社会に働きかけていけるように、様々な活
動も行っています。
例えば自助活動。これは、訓練校を卒業し自分の生まれ育った地域に帰
っても、障害者同士助け合っていけるよう、自分たちに何ができるかを考
え、実行します。また、社会貢献活動も行っています。学んだ技術を活か
して地域の人たちに無料でヘアカットを行ったり、地域の清掃を行ったり、
孤児院の子どもたちと交流したりすることが、「小さくても自分のできる
ことを社会の一員として行っていける」という自信につながっています。
その他にも、訓練生が実社会で生きていくために必要な知識や心構えを
学んでもらおうと、毎朝のお話会では様々な分野から講師を招いています。
例えば、自分自身障害を持つ人からは努力して成功した話を、実務家から
は卒業後を見据えて自分の事業や接客についての話をしてもらいます。さ
らに、週一回の訓練生主体のワークショップを通じて、授業やその他の活
動全般に関して様々な提案や意見交換を行い、円滑にコミュニケーション
84
を行う方法についても学んでいます。
このような活動を通して、3カ月半の訓練校生活で、職業訓練を通して
の技術の習得はもちろんのこと、他者との接し方が目に見えて変化する訓
練生もいます。
写真1 孤児院でのヘアカットの様子
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
ミャンマー連邦
2.実
間
1999年∼現在
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
難民を助ける会(AAR Japan)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
障害者のための職業訓練校の運営
5.ターゲットグループ
ミャンマー全国の障害者
6.プロジェクトの目的
職業訓練を通して、地雷被害者やポリオ後遺
症等による障害者の自立を支援する
85
Q
A
4―5―A2
途上国で技術指導をするには、
どのようなことが必要でしょうか。
私たちが技術指導を行う上で気をつけている点は、①指導の際に簡潔
な言葉を使うこと、②講義の際にできる限り図や表を多用すること、③実
技の機会を多く提供することです。
本プロジェクトでは日本人技術者がスーダン人を指導しています。日本
人側も必ずしも外国語が得意ではありませんが、だからこそ簡潔な単語や
表現で説明を行ないます。逆に、外国語が流暢に話せることは時として複
雑な言い回しや観念的な表現が増えることにつながり、これまで充分な教
育機会のなかった訓練生の場合だとかえって分かりづらいものとなりま
す。
講義では訓練生の理解を促進するために図や表を多用するようにします
が、そのための資料収集に苦労しています。専門分野における外国語の資
料は入手困難であったり高価だったりするため、自身で作成することもあ
ります。
実技訓練では、訓練生一人一人に均等に機会を与えることに腐心してい
ます。自動車修理技術習得のための実地研修では実際の故障車の修理を行
います。しかし、実際に持ち込まれてくる車輌に対して常に全員で作業に
あたることは非効率的でもあります。作業別にグループ分けをし、廃車か
ら部品や機材を外してそれらを使っての分解・組立ての練習を常時できる
よう工夫しています。
86
写真2 廃車を利用した実地研修
写真1 図表を用いた技術指導
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
スーダン共和国(ジュバ市)
2.実
間
2006年7月∼現在
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
日本国際ボランティアセンター(JVC)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
難民帰還支援プロジェクト
5.ターゲットグループ
帰還難民
6.プロジェクトの目的
車輌整備を通じて、難民帰還事業の技術的支
援を行うこと、また技術訓練によって帰還難
民の定住促進に寄与すること
87
プロジェクト実施段階
89
Q
A
5―1―A1
技術の普及を効果的に促進させる方法を
教えてください。
技術の普及を効果的に促進させるには、トレーナー育成研修(TOT:
Training of Trainers)が実践的で最も有効な研修だと考えます。現地研修
指導員を対象として、実践的で参加者がすぐ活用できるような内容で研修
を実施し、コースの最終日には参加者一人一人が訓練終了後の活動計画を
作って発表し、その計画について参加者全員で議論・アドバイスをして確
認します。
トレーナー育成研修では、工場見学や各セッションでのグループ討議、
発表などを全員参加型で行ないます。参加者は、チェックリストを持って
全員が工場見学を行い、その見学先の事例を多く用いた講義の後、すべて
の講義に関してグループ討議と発表を行うことで、研修終了後には、今度
は自分がトレーナーとして同様のトレーニングを実施し、実際の職場での
活動ができるようにして技術を普及させます。
トレーナー育成研修を通じて現地にトレーナーを育て、自分たちで研修
活動ができるよう図り、研修の実施にあたっても、徐々に現地組織への移
管を進めていきます。例えば1回目は、<トレーナー:日本人、運営:
JILAF>、2回目は、<トレーナー:現地、運営:JILAFと現地組織、研
修内容については日本人専門家がアドバイス>、3回目は、<トレーナー、
運営ともに現地に任せ日本側はアドバイス>といったように移管を進めて
いくことにより、プロジェクト終了後は持続的な活動ができるよう準備し
ます。器材等は人材の育成状況に合わせて検討します。
コース終了後半年ほど経ってから参加者を再び集め、活動の成果や成功
事例などを報告してもらい、全員がそれを共有するための評価会議を実施
しています。また、参加者が職場に帰って活動している現場を視察・調査
91
する、彼らの意欲を高めるためフォローアップを行う、経営側への理解を
求めるため対話を行うなども有効です。
このトレーナー育成研修を実施する前の計画段階で、現地カウンターパ
ートと良く話し合い、研修実施と評価会議(スキルアップも兼ねる)、モ
ニタリングをどう組み合わせてPDCA*5を回し、技術普及していくかをお
互いに確認し、中期計画(3年程度)を立案してもらうことも重要です。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
アジア11カ国(東、東南、南アジア)
2.実
1994年∼
施
期
間
(各プロジェクトは基本的に1年単位)
3.実
施
機
関
名
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
財団法人 国際労働財団(JILAF)
労組教育プロジェクト、
社会開発プロジェクト
5.ターゲットグループ
各国労働組合のナショナルセンター
(一部産別)
6.プロジェクトの目的
労働者、労働組合への教育プログラムを通じ
てトレーナーを育成し、労働者の意識改革と
労働組合の組織強化を促進する
*5
Plan/Do/Check/Actionの頭文字を揃えたもので、計画(Plan)→実行(Do)→
評価(Check)→改善(Action)の手順で循環的に繰り返すことにより、継続的に
品質や業務の改善、業績向上を図るマネジメント手法をいう。
92
Q
A
5―2―A1
現地指導員をどのように
管理・指導すればよいでしょうか。
チュニジア電気電子技術者育成計画の例を述べます。プロジェクト初
期の段階では、機材・工具の注文、注文どおりの納品であるかのチェック、
訓練カリキュラムの作成など、現地指導員には馴染みの薄いことが多いの
で、赴任直後は日本側専門家が主体になって行なわなければなりません。
ここでの注意事項は、人間関係を円滑にし、相手のプライドを傷つけない
ようにしなければなりません。私の場合、毎日のようにセンター内を回り、
挨拶することで人間関係を円滑にしました。
また、彼らは理論的なことは学校でよく勉強していますが、一般的には
機材等が十分に整備されていないため、理論中心で実習はあまり行われて
いません。実際に作業していないため、機材、工具、部品等の管理の方法、
必要性が分かりません。
専門家が機材、工具、部品の管理方法を提案、実施し検証していかなけ
ればなりません。これについては、理論を言っているだけでは、先に進ま
ないので、常に現地指導員との共同作業を基本としなければなりません。
または、作業している姿を見せることが大切です。
プロジェクト後半になると、持続性のことも視野に入れなければなりま
せん。専門家がいなくなっても自主的に維持していく力を付けてやるため
には、ある程度相手にまかせ、補助的な立場に徹することも必要かと思い
ます。
具体的な例を述べますと、プロジェクト後半で在職者対象の短期訓練コ
ース(能力開発セミナー)の実施内容を検討していた時、日本側専門家は
まず基礎的な技術力を持ったチュニジアの人材が多数必要と判断し、日本
の若手技術者の教育で要望の高い内容のコースを提案しましたが、チュニ
93
ジア側はもっとレベルの高い内容を主張しました。結局相手の意見を尊重
して、その内容に合うようにカリキュラムを作りました。このカリキュラ
ムに沿って行った短期訓練コースにおいて、日本人専門家の役割は、現地
指導員の欠けている部分への技術移転を行い、短期訓練では機材トラブル
でのロスタイムが一番怖いことを強調し、実施前の機材の点検の重要性を
認識させることでした。さらに、実施中はいつトラブルが起きても対処で
きるように、待機することでした。
また、このコースでの担当指導員を複数制にし、できるだけ多くの現地
指導員に経験を積ませることを心掛けました。この短期訓練コースにおい
て指導員としての勤めを無事終えた彼らの顔は頼もしく見えました。この
ような経験の積み重ねで成長していくと思います。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
チュニジア共和国(チュニス)
2.実
間
2001年2月1日∼2006年1月31日
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
チュニジア電気電子技術者育成計画
5.ターゲットグループ
職業訓練実施者(管理職及び指導員)
6.プロジェクトの目的
養成訓練による技能者の育成と在職者の技能
向上に必要な訓練コースの開発・実施
94
Q
A
5―2―A2
現地指導員をどのように
管理・指導すればよいでしょうか。
チュニジア電気・電子技術職業訓練センターのメカトロニクス分野に
は、日本からの供与機材として、「ファクトリーオートメーションシステ
ム」、「工業用ロボットシステム」、「空気圧制御システム」、「油圧制御シス
テム」、「NC旋盤、マシニングセンタ」、「普通旋盤、汎用フライス盤」と
いった多種多様な機材が導入されています。
我々のプロジェクト期間中はもとより、プロジェクト終了後においても
安定して良好な状態を維持できるよう記録・作業簿を整備しました。整備
した書類は、機材リスト、各機材の問合せ先リスト、ワークログ、メンテ
ナンスシート、点検作業の流れ、各機材の日常点検簿、定期点検簿、保守
消耗部品の把握のための機材管理簿などです。特に点検作業の流れについ
て、しっかりとまとめることにより、日々の訓練や準備作業の中で機材ト
ラブルが発生した場合の各種書類(ワークログ、メンテナンスシートなど)
と情報の流れ、機材担当者の役割、故障履歴と処置の記録を明確に行いま
した。さらに全機材について作業の標準化を行いました。これは機材の点
検作業についての標準書であり、これにより全指導員が同じレベルで点検
作業、故障への対応ができるようになりました。
また、実際に機材が故障した際の修理及びその後の保全が的確にできる
よう、各機材についてメンテナンスマニュアルを整備しました。
チュニジア職業訓練センターにおける現地指導員は、多くの場合、実
験・実習機材の不備な環境の中で勉強してきているため理論中心の勉強法
となっており、実験・実習については不慣れな場合が多く、当然、機材の
日常的なメンテナンスや故障対応についても経験が不足しています。この
ような点を勘案しプロジェクト終了後も機材を良好な状態に維持できるよ
95
う、また故障を怖がらず自信を持って機材を活用できるよう各機材につい
て機材管理簿及びメンテナンスマニュアルを整備する必要があります。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
チュニジア共和国(チュニス)
2.実
間
2001年2月1日∼2006年1月31日
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
チュニジア電気電子技術者育成計画
5.ターゲットグループ
職業訓練実施者(管理職及び指導員)
6.プロジェクトの目的
養成訓練による技能者の育成と在職者の技能
向上に必要な訓練コースの開発・実施
96
Q
A
5―3―A1
適切な職業訓練を実施するためには
何を注意すればよいでしょうか。
チュニジア電気電子技術者育成計画の例です。このような職業訓練に
おいてパソコンを使用する機会は多くなっています。パソコンは実習機材
の中で汎用性があり使用頻度も高く、維持・管理をしっかり行う必要があ
ります。他の実習室同様にパソコン室にも専任の機材管理責任者を置き、
機材の管理を徹底させることが必要です。
チュニジア電気電子技術者育成計画では、使用状況を確認するため使用
記録簿を整備し、使用後必ず記入し、不具合があれば責任者へ連絡し迅速
に対応できる体制作りを行いました。さらに、ソフトウェア管理台帳を整
備し、導入されているソフトウェア、数量管理を行いました。
チュニジア側現地指導員によっては、何か不具合があると機材管理責任
者などに報告せず、他の実習場で使っているパソコン本体、ディスプレイ、
周辺機器を勝手に移動して間に合わせ、放置する傾向がありました。これ
では、訓練を実施していく際に支障が出てきますし、管理上問題がありま
す。本体、ディスプレイ、周辺機器、それぞれに「部屋番号+番号」など
分かりやすいIDを付けて識別し、配置計画で定められた位置から移動さ
せないよう指導する必要があります。
最近のディスクトップ・パソコンは保守を容易にするため、本体の開閉
がしやすい構造になっていますが、逆にメモリやハードディスク等が盗難
にあう危険性があります。鍵でロックするなど容易に開閉できないような
対策が必要だと思います。
ノートパソコンも同様に使用時にはセキュリティ・チェーンを付ける、
使用後は鍵付き収納庫へ入れるなどの対策が必要です。パソコン室の出入
り口も使用時以外は施錠するなど、利便性を考慮しつつも十分な対策が必
97
要となります。
ソフトウェアの違法なコピーや、実習に必要なソフトウェア以外のイン
ストールを禁止するなど、現地指導員にコンプライアンス(法令遵守)を
浸透させることも重要です。また、ウィルス対策ソフトを導入し、ウィル
ス感染の被害を防ぐ必要があります
写真1 パソコン室
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
チュニジア共和国(チュニス)
2.実
間
2001年2月1日∼2006年1月31日
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
チュニジア電気電子技術者育成計画
5.ターゲットグループ
職業訓練実施者(管理職及び指導員)
6.プロジェクトの目的
養成訓練による技能者の育成と在職者の技能
向上に必要な訓練コースの開発・実施
98
Q
A
5―3―A2
適切な職業訓練を実施するためには
何を注意すればよいでしょうか。
バングラデシュは文化、宗教の影響なのか、いまだ農村女性が外出あ
るいは外で働くためには、父または夫の許可を得なければなりません。ま
た、さまざまな要因で女性の経済的自立は遅れているため、女性が家にい
ても経済的な自立を目指せる洋裁と刺繍コースを職業訓練で実施し、技術
を身につけて収入を得られるようにすることが効果的だと考えました。
しかし研修を開始してみると、女性たちが研修を受け始めても家庭の事
情により途中で研修を断念する女性たちが目立ちました。そこで、女性た
ちが最後まで研修を受けるためには何が必要なのか検討した結果、バング
ラデシュでは家族の理解と研修生本人の自覚を促すことが非常に重要な要
因になると考えました。実際に研修を受ける女性たちと保護者を対象に説
明会を行い、かつ研修生たちには研修奨励金を準備し、研修終了時に渡す
ことにしました。彼女たちが卒業後に奨励金を資金にして、仕立屋を行う
など各自が何らかの収入を得やすくしました。この奨励金が卒業時に支給
されることで、家族からも最後まで研修を受けさせることへの理解が得ら
れました。ただし、研修生本人にも入学後、安易に辞められないように入
学金を納めてもらい、参加意識を持つように配慮しました。
このように家族の協力体制をまず整えること、本人には何を目的に技術
を身に付けるのかを自覚してもらうこと、研修後すぐに活かせる技術を指
導することで研修生の研修に対するモチベーション維持に配慮しました。
99
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
バングラデシュ人民共和国
(ガジプール県コナバリ村)
2.実
3.実
施
施
期
機
関
間
1993年7月より現在も継続中
名
特定非営利活動法人 国際エンゼル協会
(IAA)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
職業訓練
5.ターゲットグループ
農村女性
6.プロジェクトの目的
社会的地位が低く就労機会が少ない農村女性
の社会進出を支援する
100
Q
A
5―4―A1
基本技術への興味を持たせる良い方法を
教えてください。
自動車整備における基本技術は主にエンジン整備、車体整備、電気系
統整備の3つの部門に分かれます。そこからさらにエンジンの種類や、ブ
レーキ、ハンドル等の整備というように細分化されていきますが、日常的
に作業量の多いものにタイヤの修理及び交換があります。そのため、基本
技術へ興味を持たせる方法として、私たちが実施したタイヤ交換コンテス
トの例を紹介します。
そのコンテストは、6月20日の世界難民の日におけるイベントの一環と
して開催しました。職業訓練を受ける元難民の若者が日頃学んでいる技術
を披露し、かつそれを競うということで、世界難民の日の当日を本戦とし、
それに参加する代表者を選ぶための予選会も実施しました。
形式はタイヤ脱着の速さを競うという単純なものです。1台の車の前輪
後輪4つのタイヤの内、1つのタイヤを選んで脱着し、何分何秒で作業を
終了できたか計測する、そのタイムトライアルを一人ずつ行います。これ
は訓練生にとっては過去に学んだことの復習にもなりました。また、他の
訓練生全員が注目する中で作業を実施するという、普段とは違う緊張感の
中で作業をすることで、自分の技術の確かさも確認できたようです。現地
は酷暑ということもあり、普段の訓練生の動きはどうしても緩慢に見えま
すが、タイムを計ることによって、初めて「全力で作業をする」姿が見ら
れました。
本戦の優勝者には、イベントの主催者である国連難民高等弁務官事務所
(UNHCR:Office of the U. N. High Commissioner for Refugees)より、表
彰状と賞品が贈呈されました。地道な日々の訓練の中で、時にこういった
イベントを催すことは一つの大きな刺激になったのではないかと思いま
101
す。
また、タイムトライアルでは日本人技術者もデモンストレーションを行
いました。訓練生たちの半分のタイムで作業を完了し、超えるべき良い目
標を示すことができました。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
スーダン共和国(ジュバ市)
2.実
間
2006年7月∼現在
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
日本国際ボランティアセンター(JVC)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
難民帰還支援プロジェクト
5.ターゲットグループ
帰還難民
6.プロジェクトの目的
車輌整備を通じて、難民帰還事業の技術的支
援を行うこと、また技術訓練によって帰還難
民の定住促進に寄与すること
102
Q
A
5―4―A2
基本技術への興味を持たせる良い方法を
教えてください。
労働安全衛生の技術指導では、現地の良い事例から学ぶ、少ない経費
で簡単にできることから始めるということを徹底すると同時に、労働安全
衛生の基本については日本のノウハウを、実際の改善は現地ですぐにでき
ることや始められることを取り入れた「中間技術」にすることが必要で
す。
国際労働財団(JILAF)が実施している労働安全衛生のプログラムでは、
①全員で現場を歩く、②グループ討議を行う、③全員が交代で討議結果を
発表する等の方法で「聴く」トレーニングではなく、参加を促す参加型ト
レーニングを行っています。
具体的には、労働安全衛生の基本である資材の運搬と保管、安全な機械
操作、作業場の人間工学、作業環境、福利厚生施設、環境保護の6分野に
ついて講義を行い、工場見学では分野ごとに良い点、改善点を実際に確認
し、良い点、改善点を3点ずつグループで討議・発表してもらいます。
その際には、現地の材料等を使い、可能であれば改善前と改善後の事例
写真を多用して低コストで実現できた改善、すぐにできる改善を上記の好
事例から学ぶようアドバイスします。わかりやすい事例を写真やイラスト
などで見てすぐわかる形で示すことにより、参加者が「これなら自分でも
できる、やってみよう」という気持ちになり、技術への興味も高まります。
103
写真1 改善前
写真2 改善後
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
アジア11カ国(東、東南、南アジア)
2.実
1994年∼
施
期
間
(各プロジェクトは基本的に1年単位)
3.実
施
機
関
名
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
財団法人 国際労働財団(JILAF)
労組教育プロジェクト、
社会開発プロジェクト
5.ターゲットグループ
各国労働組合のナショナルセンター
(一部産別)
6.プロジェクトの目的
労働者、労働組合への教育プログラムを通じ
てトレーナーを育成し、労働者の意識改革と
労働組合の組織強化を促進する
104
Q
A
5―5―A1
研修生の生活待遇条件に不満が出た場合、
どのように対処すればよいでしょうか。
異なる国の若者たちを相手とする研修活動では、問題や苦情が生まれ
たとき、直ちに適任者に対応してもらい、処理の方法については適任者を
信頼して判断を一任することが肝要です。人材の育成に強い関心を持ち、
「教えてやる、指導する、という意識ではなく、昔、私たちが受けた好意
への恩返し活動だ。一緒に学ぼう」という心を持った支援者が適任で、日
頃からこのような有志を発掘する努力が必要です。
BHNによる人材育成プログラムは、アジアの電気通信を支える若手関
係者を対象に1998年から毎年約10カ国弱、各国から1∼2名を招き実施し
ています。前期(2カ月)をマレーシアのマルティメディア大学(MMU)、
半年後の後期(1カ月)を日本の研修施設(AOTS)での合宿形式で行っ
ています。研修の狙いは、①テレコム(IT)分野の専門家としてのスキル
アップ、②専門外の多分野にわたる授業を実施し、将来の幹部に必要なバ
ランス感覚を涵養、③日本に対する好感、信頼感の醸成(合宿、日本人宅
へのホームステイの実施等)の3点です。2007年で第9回目となり、計12
カ国、66名が卒業しています。
5回目のマレーシアでの研修開始後間もなく、一部研修生からBHNの
支給する日当が少ないという苦情がありました。旅費、宿泊費等はすべて
BHN負担、食費などの手当として1日30リンギ(約千円)を支給してお
り、宿舎内にある大学の食堂を利用すれば十分な額であり、日本での研修
の際は、1日約4千円支給しています。不満の原因は、この回の研修生10
名の内3人が既に日本での研修経験があり、その際の処遇と比べてお粗末
だと大学にも訴え始めました。不満が広がらぬよう早期に彼らを納得させ
るため、本部で信頼できる幹部会議メンバー(ボランティア)会員を急遽
105
派遣することにしました。ボランティアで英語教師などを行っている、70
歳を超えた元企業経営経験者がこの役目を買って出てくれました。
これまで、日本から派遣する事務局員や講師は、大学の指定する近くの
ホテルに泊まり、そこから通っていましたが、彼は到着後、自らの判断で
大学と折衝し、研修生と同じ宿舎に泊まり込むことにしました。彼らと寝
食を共にしながら日本が戦後苦難の道を歩んできたことや、NGO活動の
意義(研修費用等は私たちの活動を支援してくれている日本の仲間たちが
負担している)などを話しました。彼は一週間滞在しましたが、研修生た
ちはこの間何の苦情も持ち出さず、熱心に嬉々として研修を続けました。
翌年、後期研修で来日した際は、彼らから不満の声は全く出ず、苦情の源
だった研修生とはすっかり親しくなって、今でもメールでの交流を続けて
います。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
アジア諸国(これまでの受入国:アフガニス
タン、バングラデシュ、カンボジア、インド
ネシア、ラオス、マレーシア、モンゴル、ミ
ャンマー、フィリピン、スリランカ、ウズベ
キスタン、ベトナム)
2.実
3.実
施
施
期
機
関
間
計3カ月間
名
特定非営利活動法人
BHNテレコム支援協議会(BHN)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
人材育成プログラム
5.ターゲットグループ
電気通信を支える若手関係者
6.プロジェクトの目的
途上国の情報通信に携わる若手人材に対し
て、将来の幹部に必要な資質を高めると共に
自主・自立の心を育む
106
Q
A
6―1―A1
指導した相手の理解度を把握する方法を
教えてください。
指導する内容が訓練生によって十分に理解され習得されて初めて役に
立つものとなります。それをチェックするのはできるだけ簡便な方法で、
定期的に行なうことが望ましいです。そこで、訓練生の講義の理解度を把
握するために折を見てテストを実施しています。テスト問題は日本人指導
者が作成しています。理解度が不十分な訓練生には補習を実施していま
す。
テスト問題を作成する際は、シンプルな表現を用いるよう留意していま
す。読解力を試すのではなく、あくまで講義の内容を理解しているかどう
かを確認するためのものだからです。テスト問題の意図がそもそも正確に
伝わっていないと見受けられる場合は、問題の意味を現地スタッフに改め
て口頭で説明してもらうこともあります。
講義をしっかり理解している訓練生が実技も上手とは限りません。実技
試験を実施したこともありましたが、実地研修の機会が多ければ実技のレ
ベルについては把握が可能です。
107
写真1 テストを受ける研修生
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
スーダン共和国(ジュバ市)
2.実
間
2006年7月∼現在
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
日本国際ボランティアセンター(JVC)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
難民帰還支援プロジェクト
5.ターゲットグループ
帰還難民
6.プロジェクトの目的
車輌整備を通じて、難民帰還事業の技術的支
援を行うこと、また技術訓練によって帰還難
民の定住促進に寄与すること
108
Q
A
7―1―A1
プロジェクト計画を途中で変更した例を
教えてください。
プロジェクトは、一定期間内に到達すべき目標を設定し、それを達成
するために実施される活動と、その「成果」の発現が重要な要素となりま
す。したがって、立案時にそれらが論理的な因果関係を持っていることが
重要です。しかしそうした要素は、外部要因の影響や時の経過とともに変
化していくものです。プロジェクト環境の変化やプロジェクト内部で発生
した何らかの問題・契機により、当初設定した目標を達成することが困難
または容易になった場合、対処すべき方法論として、ここでは3つ紹介し
ます。第一に、目標を達成するために採るべき戦略、手段を変更する、つ
まり目標−成果−活動の因果関係の枠組みを変更することです。第二に、
目標の達成具合に柔軟性を加え、達成すべき指標を現状に合わせ調整する
ことです。そして第三に、目標自体を変更する、つまり事業の全体像を変
えることです。もちろん、変更理由と変更後の見通しについては、事業規
模にかかわらず文書で明確にしなければなりません。
(特活)アムダは、ニアス島における震災後の復興支援の一環として、
国 連 難 民 高 等 弁 務 官 事 務 所 ( UNHCR: Office of the U. N. High
Commissioner for Refugees)から委託を受け、アクセスが困難な地域に
住む約300世帯に仮設住宅を提供する事業を、住民参加手法を用いて実施
することになりました。しかし他の地域で事業を実施している政府系団体、
他の国連機関、国際NGOなどが建築業者に委託するかたちで建設し、し
かも建築業者は住民を労働者として雇用し、賃金を払い出しました。その
ような状況下、住民が労力を無償で提供する当初の手法は通用せず、変更
を余儀なくされました。結局アムダは、希望者の住民に大工研修を行い、
実習というかたちで数世帯規模の建設を行いました。後日各裨益世帯の住
109
民は、誰を大工や助手として雇用するかを決定し、工事が進んだ場合、賃
金もその進捗度に応じて支払われるかたちの手法を採用しました。支出は
膨らみましたが、決定権は住民が持ち、住民自身が行う(建てる)という
参加型手法の基本線をかろうじて守ることができました。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
インドネシア共和国 北スマトラ州
2.実
間
2005年9月∼2007年2月
名
特定非営利活動法人 アムダ(AMDA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
ニアス島仮設住宅復興支援事業
5.ターゲットグループ
地震による被災民約300世帯
6.プロジェクトの目的
被災民のための仮設住宅建設、技術支援によ
る復興支援
110
Q
A
8―1―A1
最終評価の視点、次回への反映及び活用方法に
ついて教えてください。
最終評価の視点としては、数量的に測れるような事項の定点観測、具
体的な成功事例の収集、一回一回の活動の積み重ねを大事にしながら、そ
の活動の良かった点が次回以降により発展的に活かせるか、反省点をどう
改善し次回に反映させるか等の実践的な次回に向けた分析と、当事者、そ
のプロジェクトの関係者、周囲から見た評価等の多角的な視点が必要だと
思われます。
国際労働財団(JILAF)が厚生労働省から委託を受け実施している労働
安全衛生のプロジェクトの場合、一番わかりやすい最終評価の視点は、労
働災害が実際にどれぐらい減ったか定量的に成果を測ることです。途上国
においては、災害の重度率、頻度率を定期的に取ることはまだまだ難しい
ため、災害統計の取り方を研修の一環として教えています。労使での取り
組みの定着に合わせて災害統計を導入することなどが今後の課題となって
います。
次に重要な視点としては、労使で災害統計を共有し継続的な災害低減へ
の取り組みを測るために職場や労使での活動がどの程度増えたか、改善が
行われたかなどを集計するなどの定点観測です。具体的には、5つの指標
として定めた、1.労働安全衛生における労働組合の役割、2.労働安全
衛生システムの確立、3.職場の危険を把握すること、4.職場改善への参
加、5.研修活動をさらに5つに細分化した25の指標等を用いて研修前と
プロジェクト実施後の状況を確認します。これは労使での取り組みが継続
的に行われることがプロジェクトの一つの目的であるからです。
行動計画に対してどれだけの活動が行われ成果が上がったかも「評価会
議」で確認します。例えば労働安全衛生プログラムの場合、開始当初は研
111
修実施回数と育ったトレーナーの数が唯一の「成果」でしたが、次第に改
善事例の収集と分野別にどのくらいの数の改善が行われたかの集約を行
い、評価します。
反映と活用のためには、まず一回一回の研修やワークショップの際は毎
日ファシリテーターとの打合せを行い、さらに終了後に反省会を行って良
かった点と次回に向けての改善点を全員で確認します。
最終評価では、参加者には毎回アンケートを実施し、現地組織には自己
評価シートに記入してもらい、JILAFとしての評価をまとめます。厚生労
働省へは各段階で随時報告し、最後にJILAFの理事会・評議会に報告し確
認を得ます。このように、参加者、現地側実施者、JILAF、厚生労働省、
さらにはJILAF理事会・評議会という多方面からの評価を行い、これらの
報告はホームページにも掲載します。
一方、各段階での評価や反省は次回に活用していきます。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
アジア11カ国(東、東南、南アジア)
2.実
1994年∼
施
期
間
(各プロジェクトは基本的に1年単位)
3.実
施
機
関
名
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
財団法人 国際労働財団(JILAF)
労組教育プロジェクト、
社会開発プロジェクト
5.ターゲットグループ
各国労働組合のナショナルセンター
(一部産別)
6.プロジェクトの目的
労働者、労働組合への教育プログラムを通じ
てトレーナーを育成し、労働者の意識改革と
労働組合の組織強化を促進する
112
Q
A
9―1―A1
プロジェクトを定着させるには、どのようなことに
注意すればよいでしょうか。
パレスチナ難民女性の雇用と現金収入の向上を目指し、私の配属先の
訓練センターを訓練期間1年の洋裁・刺繍の訓練センター(Dressmaking
training centre) か ら 、 訓 練 を 数 種 類 抱 え る 訓 練 と 雇 用 セ ン タ ー
(Training and Employment centre)へと改善しています。この事業定着
のためには、経済的側面と制度的側面があると考えています。
まず経済面では訓練運営コストを人件費と材料費のみとし、ヨルダン外
務省パレスチナ局(DPA:Department of Palestinian Affairs)が継続可能
な額に抑えられるよう進めています。新しく導入される訓練は、訓練開始
当初は外部へ委託しコストがかかるため、新しい訓練導入後はその技術を
各センターの指導員へ取得させ、独自の訓練内容を専門家からアドバイス
を受けながら制作します。独自で訓練を運営できるようになったら、各種
訓練の専門家もしくは自営業者にアドバイザーとして訓練を側面からサポ
ートしてもらえるような体制を整えています。
次に、この新しく改善された訓練をどのように制度面の一機能として組
み込み、その機能を定着させるかが課題となります。訓練の管理・運営機
能を定着させることは当たり前ですが、組織にも管理・運営能力が必要で
す。しかし私が配属される以前は、DPA本部は各訓練センターの毎年の予
算の支払い及び備品の管理をするだけで訓練を積極的に管理・運営するこ
とはなく、DPA本部には各センターを運営する能力がありませんでした。
また、DPA本部にはモニタリング・評価システム(Monitoring and
Evaluation System:M&Eシステム)がなく、訓練の改善はありませんで
した。そこで、このM&Eシステムを導入し、業務がどのように流れてい
るかを図式化し、各業務をどのレベルで誰がいつ行うかなどの内容をプロ
113
ジェクトスタッフへ明確にしました。今後の取り組みとしては、各段階で
提出される書類をフォーマット化し、業務フローの明確化とモニタリング
体制の強化を行い、常に問題の改善ができるよう、DPA本部と各職業訓練
センターの機能を高めたいと考えています。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
ヨルダン・ハシェミット王国
2.実
間
2006年1月∼2009年1月
名
国際協力機構(JICA)/
3.実
施
施
期
機
関
ヨルダン外務省パレスチナ局(DPA)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
パレスチナ難民女性職業訓練改善計画
5.ターゲットグループ
ヨルダン国内のパレスチナキャンプ在住者
(主に女性)
6.プロジェクトの目的
女性の労働に対する社会の理解を深め、パレ
スチナ難民女性の雇用と現金収入の向上を目
指す
114
Q
A
9―1―A2
プロジェクトを定着させるには、
どのようなことに注意すればよいでしょうか。
最初に活動の継続性(Sustainability)についてよく検討することが必
要です。「日本人の誰それがいたからできた」ではなく、「自分たちでやっ
た」という相手側の自主性をなるべく引き出すようにし、徐々に現地へ移
管をしていくことが重要です。
国際労働財団(JILAF)がインドネシアで労働安全衛生プログラムを導
入するにあたって、導入前年度には安全衛生セミナーを実施し、現地の労
働安全衛生の状況について確認し議論をしました。次に実施初年度は、日
本から2名、フィリピンから1名(南南協力)の専門家とJILAFスタッフ
が現地に赴き、準備会議∼研修の実施∼反省会までを日本側主導で実施運
営しました。導入2年目は、全体の運営は日本側で主導しながら、実際の
研修部分は、現地のカウンターパートに任せ、アドバイスをするようにし
ました(日本側の派遣者は専門家、JILAFスタッフ各1名)。3年目には、
研修及び運営のすべてを現地のカウンターパートに任せ、JILAFは実施前
の打合せで準備状況を確認すること、運営中のフォローなどを中心に行い
ました。相手側の実施体制を確認しながら、適切な組織体制を整備しリソ
ースパーソンを育成することで、かなりの定着を図ることができました。
また、費用についても、日本からの支援に頼る比率が高ければ高いほど、
日本からの支援が終わった時点で活動そのものも終わってしまう場合が多
いため、現地で賄える部分はできるだけ現地で自己調達するようにします。
プロジェクトを実施する場合には、その必要性、重要性について現地のカ
ウンターパートとよく話し合って認識を共有し、受益者の負担を少しずつ
増やしていくことが、現地での自主的な取り組みにつなげるためには重要
です。
115
日本からの支援は永遠ではないことを理解してもらい、重要な取り組み
であれば仮に日本からの支援が減少、または打ち切られた場合でも、中長
期的な視点で研修とモニタリング、評価会議などを組み合わせることによ
り、彼ら自身で継続して取り組みが続けられるようにします。それと同時
に、資金面でも日本からの支援を減らして比率を変えていくと、本当の意
味でプロジェクトが定着すると思われます。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
アジア11カ国(東、東南、南アジア)
2.実
1994年∼
施
期
間
(各プロジェクトは基本的に1年単位)
3.実
施
機
関
名
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
財団法人 国際労働財団(JILAF)
労組教育プロジェクト、
社会開発プロジェクト
5.ターゲットグループ
各国労働組合のナショナルセンター
(一部産別)
6.プロジェクトの目的
労働者、労働組合への教育プログラムを通じ
てトレーナーを育成し、労働者の意識改革と
労働組合の組織強化を促進する
116
Q
A
9―2―A1
プロジェクトの終了時に効果の持続性を保つには
どのような準備が必要とされますか。
チュニジアは、1998年3月から12年以内に欧州との間で関税を撤廃す
る状況の中、国際競争力のある輸出産業として、電気・電子分野の育成を
重視し、2001年2月より5年間の協力が開始されました。電気・電子技術
職業訓練センターは、教育訓練省傘下である職業訓練事業団の管轄の下に
2年間の養成訓練を通じた技能者の育成や、短期間の向上訓練を通じて在
職者の技能向上を図るために必要な訓練コースの開発・実施を目的として
設立されました。
技能者数の拡充計画の下、2006年1月現在、7期生が入校し計24クラス、
約500名の学生に対して訓練が実施されていました。訓練生数の増加にと
もない、現地指導員の負担は増える一方でした。また、専任の倉庫管理人
が配置されていないので現地指導員が管理することになるのですが、彼ら
の意識付けから入らなくてはなりません。理想としては、プロジェクト終
了後は彼らだけで実施運営するので、彼らからの提案、実施なのですが、
そこまで育つには根気強く、時間をかける必要があります。
このような状況の中で、プロジェクト終了時に特に注意したのは、職業
訓練の質をいかに保つかということです。具体的には、工具管理、機材管
理、教材管理(消耗品、テキスト)を継続させるため、複雑な管理システ
ムは継続しにくいので目に見える管理が必要と考え、写真に示すように作
成実習テキストの集約(写真1)、工具の管理(写真2、3)、機材、工具
へのラベル付け(写真4、5)を提案実施しました。
プロジェクト終了後こうした管理方法が彼ら自身の手で、定着・改善さ
れていくことを期待しています。
117
写真1 作成実習テキスト
写真2 工具管理
写真3 工具管理
写真4 ラベル付け
写真5 ラベル付け
118
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
チュニジア共和国
2.実
間
2001年2月1日∼2006年1月31日
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
チュニジア電気電子技術者育成計画
5.ターゲットグループ
職業訓練実施者(管理職及び指導員)
6.プロジェクトの目的
養成訓練による技能者の育成と在職者の技能
向上に必要な訓練コースの開発・実施
119
プロジェクト終了後
121
Q
A
10―1―A1
プロジェクト完了後の運営は、どのように
フォローアップしたらよいでしょうか。
プロジェクトとは、外部からの様々な投入や介入が一定期間継続し、
相応の成果を伴い終了します。ここで重要なことは、立案時から「出口」
戦略を描いておくことです。事業期間が短ければ短いほどその重要度は高
くなります。3年から5年に及ぶ事業であれば、運営プロセスの中で事業
終了後の戦略を練り直すこともできますが、1年又はそれ以下の期間で実
施される事業であれば、第一歩を踏み出した時点で、出口に向かって歩い
ていく感覚が必要です。
「完了後」の定義については色々な考え方があると思いますが、ここで
は仮に外部者による投入と介入がほぼなくなった状態を示すとします。そ
して「フォローアップ」をプロジェクト終了後に、プロジェクト実施中に
得られた成果や、達成されたプロジェクト目標が維持されるために必要な
僅かな介入、もしくは組織や仕組みへの支援とします。何かが運営され、
活動が継続するためには、一般的に、良きリーダー、約束事(規則)や財
産を備えた組織の存在が必要です。また活動内容や議事録が記録されてい
く習慣が備わることが期待されます。外部者(プロジェクト実施者)は、
プロジェクト成果に適した評価項目を設け、半年後、1年後、あるいは3
年後などの節目にモニタリングを行うのが一般的です。そこでは、プロジ
ェクトでどんな成果が得られたか、ではなく、裨益対象者が現在何をして
いるか、そしてどんな波及効果が現れているか、という視点から評価する
こととなります。
アムダは、ミャンマーの中部乾燥地域の農村で、乳幼児を抱える貧困層
の母親を対象とした啓発と組織化に取り組みました。子どもの健康状態を
把握する、栄養バランスの取れた食事を作る、下痢や呼吸器感染症などへ
123
の対処方法を知るための研修を行い、少しずつ母親同士のつながりを強め、
組織化を進めました。彼女らは後に母親グループを形成し、自主的に貯蓄
し、それをメンバーに貸し出す、あるいは栄養給食を作り子どもたちに食
べさせるなどの活動を行っていました。プロジェクト終了後、上記で示し
たような評価項目を用いたモニタリング活動を通して、頻度は若干少なく
なったもののグループの活動は続いていることが確認されました。タイム
リーで思いやりのあるモニタリング活動は、一面において活動を継続する
裨益対象者の励みにもなります。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
ミャンマー連邦 中部地域
2.実
間
2006年9月∼2007年3月
名
特定非営利活動法人 アムダ(AMDA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
母と子どものプライマリーヘルスケア事業
5.ターゲットグループ
15カ村における母親グループ約200名
6.プロジェクトの目的
母子の健康状態の改善
124
Q
A
10―2―A1
職業訓練の修了生はどのように
フォローアップしたらよいでしょうか。
訓練修了生に対するフォローアップの選択肢としては、訓練後の動向
(就業状況など)について定期的に修了生から報告してもらう体制を整え
ておく、修了生の会(Alumni Association)などを作り定期的に集まり、
情報交換する機会を設ける、またトレーサー・スタディ(修了生の追跡調
査)を行うなどの方法が考えられます。修了生のフォローアップは、訓練
の成果としての就業状況や技能の適用の状況を把握することで、訓練効果
を測り、現在の訓練をどのように改善すべきか、また労働市場の需要の現
状などについての情報を得ることを可能にします。また、修了生が抱えて
いる問題の把握や追加的な支援についての方策を考える上でも役に立ちま
す。
JICAがスーダンで行っている木工、建築、金属加工、配管、電気の6
カ月の基礎的技能訓練では、訓練終了後6カ月程度の時期にアンケート用
紙を用い、本人に直接会った上でのインタビュー形式による訓練修了生の
トレーサー・スタディを行い、実際に訓練によって得たスキルを何らかの
形で使っているか、また実際に就業や収入向上につながっているのか、ま
たどのような問題に直面しているのか、など様々な側面について調査を行
いました。このトレーサー・スタディを行うには、あらかじめ訓練生の連
絡先や住所などの基礎情報について訓練中に収集しておくことが必要で
す。
上記のトレーサー・スタディでは、収入や就業という点では、成功した
ケースでは収入が以前と比べ倍増した修了生がいる一方、就業できていな
い修了生も見受けられました。また、収入に直接にはつながらないものの、
自分の家を建てたり、コミュニティのヘルスセンターを建設したりと、何
125
らかの形でスキルを使っている修了生が大多数を占めることも確認できま
した。
就業を促進するには、就職、自営を始めるためのガイダンスや、労働市
場の状況についての情報、また仕事を始めるために必要な初期投資のため
の資本へのアクセス方法、基本的なビジネスマネジメント、あるいは識字
や英語の能力などの追加的なサポートがさらに必要であり、修了生の会な
どで情報交換の機会を提供しています。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
スーダン共和国(ジュバ市)
2.実
間
2006年9月∼2009年8月
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
スーダン国基礎的技能、
職業訓練強化プロジェクト
5.ターゲットグループ
若者、国内避難民、ジュバおよび近郊の人々
6.プロジェクトの目的
南部スーダン住民が基礎的な職業技能を身に
つけ、起業・就業することにより生計の維
持・向上を図る
126
Q
A
11―1―A1
職業訓練の評価項目にはどのようなものがありますか。
職業訓練の評価の最終目的は、実施している訓練自体の価値を高める
ことにあります。したがって評価とは、それを達成するために各種の調査
や査定を行い、本来の訓練計画や訓練目標に到達させる活動を指します。
このことは、中間や最終及び事後の評価についても基本的な考え方は同一
であると言えます。職業訓練の評価には訓練施設の「内部での評価」と
「外部からの評価」があり、初めに訓練計画や到達目標に沿ってそれぞれ
の評価項目を決定しておく必要があります。
「内部での評価」には次のような項目が考えられます。
・応募者数(率)及び入所者数(率)の推移
・訓練の実施効果(訓練期間中のテスト結果、訓練生の自己評価、進級/
修了者数)
・教科の計画時間数と実施時間数との比較
・カリキュラムの計画内容と実施内容との比較
・資機材の使用計画と実際との比較
・教材の利用状況の把握
・修了生の感想や意見
・その他、関係者の意見
一方、「外部からの評価」には次のような項目が考えられます。
・求人数や就職率の推移
・雇用主の修了生への技術・技能的評価
・産業界からの訓練施設への評価(意見や要望)
・その他、訓練施設の社会的評価
これらの項目に従って調査や査定を行います。その際には、できるだけ
数値化する等、客観的に現状把握ができるように努める必要があることは
言うまでもありません。
127
Q
A
11―2―A1
訓練評価の基準の設定と分析をどのように行ったら
よいでしょうか。
訓練の評価項目では、訓練計画や到達目標に沿って数値化できるもの
については、その基準となる目標値を予め決定しておくと評価後の分析や
調整がしやすくなるという利点があります。
例えば、応募者数について基準の定員に満たない倍率である場合、その
問題点を分析する必要があります。この例では「広報の徹底」や「学校訪
問」等の項目を分析することによって改善を図ることができるからです。
また、数値化できないものについては上位と下位の評価を比較して、それ
らを分析することもできます。下表は、それぞれ評価の基準と分析の例を
示したものです。
図表1 評価の基準と分析(例)
項目
目標値
現状値
分析項目
□広報の徹底
応募者数(率)
□学校訪問
□職業訓練センターの公開
入校者数(率)
□その他
□出席率向上
□動機付けの徹底
訓練生の成績
□指導法の確認
(偏差値)
□指導員研修
□その他
128
図表2 評価の基準と分析(例)
項目
上位評価
下位評価
分析項目
□訓練時の成績
□本人の適性判断
□訓練内容と職種
雇用主の
□就職指導の徹底
修了者へ
□企業訪問
の評価
□OJTの的確化
□追指導の必要性
□その他
評価を単なる作業に終わらせるのではなく、次の改善や調整に生かすこ
とが必要です。評価結果の分析によっては、ニーズの再調査やコースやカ
リキュラム、教材の改定、指導員の再訓練等が必要である場合もあります。
下図に示すように訓練評価の活用を図ることは、訓練管理や指導の改善、
就職率の向上、訓練施設の社会的評価の向上に役立ちます。
図表3 訓練評価の活用
129
そ の 他
131
Q
A
12―1―A1
途上国のスタッフと親密な関係を構築するには
どうしたらよいでしょうか。(宗教面)
国際労働機関(ILO:International Labour Organization)の地域計画
実施のためアジア太平洋地域技能開発計画(APSDEP:Asian and Pacific
Skill Development Programme)の本部がタイのバンコクからパキスタン
のイスラマバードに移転しました。その本部に新たに現地スタッフとして
15名ほどのパキスタン人が事務所職員として採用されました。一方、バン
コクから移転したスタッフは専門家としての国際勤務経験があり、宗教に
関する話題はプライベートの集まりの際にのぼる程度でした。しかし、パ
キスタンは回教国であり、その宗教の力が日常の業務にも影響することに
なりました。宗教からくる習慣、風習もあり、国際経験のない現地スタッ
フは、少なからず新しい国際機関で働く戸惑いを抱いていました。
問題は戒律で決められている「お祈り」にあり、①午前中、国際電話が
かかってくる時間帯にスタッフがいなくなり、数台の電話の対応はその内
容がつかめないため的確な応対ができない、②会議の途中で中座してお祈
りに行ってしまうため、打合せの中断を繰り返す必要がある、③お祈りの
時間が不定期であるため、日常業務への影響が大きくそれらを指摘すると
日常業務に摩擦が生じてきたことから、以下のような対策を講じることに
しました。
①他の国際機関の慣習を見習うこと、②話し合いでお祈りの時間を設定、
都合の良い時間帯を決めておくこと、③国際電話、アポイントメント、会
議予定を十分想定して、業務に差し支えないよう代行者を立てる等してか
ら持場を離れること、④国際機関の業務を説明して、その重要性を啓蒙す
ること、⑤そのためプライベートの時間でもお互いの意思疎通の集いを多
くすることです。これらの対策により、不定期であったお祈りの時間があ
133
らかじめ決められた時間内に行われるようになり、また代行者によって業
務への支障も少なくなりました。また、何より重要であったのは、宗教を
論じることはタブーという通常の壁を打ち壊し、我々が回教を理解しよう
とする意欲が出てきたことにあります。
写真1 運転手、ガードマン等の現地スタッフ
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
パキスタン・イスラム共和国
2.実
間
1979年∼2000年
名
国際労働機関(ILO)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
アジア太平洋地域技能開発計画(APSDEP)
5.ターゲットグループ
アジア太平洋地域の技能労働者
6.プロジェクトの目的
アジア太平洋諸国による職業訓練の情報交換
と調査研究
134
Q
A
13―1―A1
プロジェクトについて対象者を含めた周辺の方に
理解してもらう何か良い方法はないでしょうか。
対象地域の住民の理解を得ることは、プロジェクトを実施する上で非
常に重要です。住民自身がプロジェクトの意義を理解することにより、活
動を実施する主体として、またその活動から提供されるサービスを利用す
る立場として、住民の積極的な参加が促進され、プロジェクトの有効性や
自立発展性が向上します。
ホンジュラス共和国は、中南米でも最も貧しい国の一つですが、人材・
予算の不足から公的な保健医療サービスが限られており、特に農村地域ま
では行き届いていません。当事業の対象地であるエルパライソ県トロヘス
市の村落では、保健所まで山道を数時間もかけて歩いて行かなければなら
ないという状況にあります。
そこで、当事業では、公的保健サービスを補完する形で、住民の中から
保健ボランティアを育成し、そのボランティアによって運営されるコミュ
ニティ薬局を支援しています。これにより、住民は、より近くでより安価
に医薬品を購入することができます。薬局はその収入で医薬品を補充する
ことができるため、持続的な運営が可能となります。
この事業の中で、参加者(保健ボランティア)と住民の理解を促進する
工夫として以下の3点が挙げられます。いずれも対象地域の慣習やシステ
ム、住民の考え方などを考慮したものです。
1.住民に保健ボランティアを推薦してもらう
住民会合を開き、保健ボランティア候補者を住民自身に選んでもらいま
す。これにより、住民には、自分たちの選んだ保健ボランティアを支えて
いこうという気持ちが生まれ、一方、保健ボランティアには、選ばれた誇
りと地域のために頑張ろうという意識が芽生えます。
135
2.住民集会の中で、コミュニティ薬局へ初期の医薬品を提供する
コミュニティ薬局の開設時に初期の医薬品を提供しますが、その際には、
地域住民に集まってもらい、そこで保健ボランティアに手渡します。これ
により、薬局がコミュニティのものであるという共通理解が生まれます。
3.地域の保健所と連携する
地域の保健医療サービスを担う保健所とは、計画段階から協議を重ね、
ニーズに沿った対象地域の選定等をともに行います。保健ボランティアは、
管轄の保健所に所属し、地域の保健活動のサポート等も行います。これに
より、公的保健サービスの一端を担うことが明確になり、行政と住民から
の理解が深まります。
写真1 薬局開設時に医薬品を
提供する様子
写真2 コミュニティ薬局
136
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
ホンジュラス共和国(エルパライソ県)
2.実
間
2001年∼(継続)
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
AMDA社会開発機構(AMDA-MINDS)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
コミュニティ薬局運営支援
5.ターゲットグループ
地域住民
6.プロジェクトの目的
医薬品の提供、保健衛生教育によりコミュニ
ティ薬局の運営を支援し、住民自身による自
立を目指す
137
Q
A
Q13―1―A2
プロジェクトについて対象者を含めた周辺の方に
理解してもらう何か良い方法はないでしょうか。
途上国でのプロジェクトというのは通常、特定の裨益者のために行わ
れるものですが、事業サイト周辺の地域住民が間接的な裨益者となる場合
も少なくありません。事業運営を円滑化し、またいろいろな面において協
力や便宜を得るためにも、地域住民への周知と理解の促進は欠かせません。
そうした観点からも、プロジェクトの実施・運営において、地域住民を巻
き込んだプロセスを展開することが重要となります。
具体的には、事業運営に関わるボランティアを地域住民から募り、事業
への参画を促すことが方法の一つとして挙げられます。ボランティアとい
う位置づけにはなりますが、何かしらのお礼(軽食や飲料・タバコ等)を
少しでも提供することにより、積極的な参加が見られるようになり、その
結果として地域住民間で事業の趣旨に関する理解が促されることも少なく
ありません。なお、その際には、事業に参加することによって地域や裨益
対象者にどのようなメリットがあるのかを明確に説明することなども同時
に求められます。
また、地域の問題などを定期的に話し合うことができる機会を提供する
ことも重要です。プロジェクトの活動内容が地域に根ざしたものであり、
彼ら自身のための活動であることを理解してもらう一助になるとともに、
皆が一丸となって積極的に活動を行っていくことの重要性に対する理解も
得られるようになります。さらに、可能な限り意思決定のプロセスに参加
してもらうことは、事業の趣旨に関する理解の促進のみでなく、現場レベ
ルでの事業運営の透明性を高めるという意味においても非常に効果的で
す。
138
写真1 地域のコミュニティリーダー
との会合
写真2 ボランティアによる作業の様子
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
東ティモール民主共和国
2.実
間
2006年∼(継続)
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
国境なき子どもたち(KnK)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
職業訓練プロジェクト
5.ターゲットグループ
騒乱の影響を受けた貧困家庭出身の青少年たち
6.プロジェクトの目的
騒乱の影響を受けて行き場を失った青少年ら
に活動の場を提供し、彼らの自立支援と健全
な成長を促すこと
139
Q
A
13―1―A3
プロジェクトについて対象者を含めた周辺の方に
理解してもらう何か良い方法はないでしょうか。
チュニジアの電気・電子関連産業は欧州自動車産業の下請け需要向け
の部品生産、国内需要向けの家電製品の生産が主体で、国際競争力を強化
し産業を担う人材の育成が急務となっています。また、若年労働者の高い
失業率も大きな問題となっています。そこで、職業訓練センターにて電
気・電子分野の質の高い人材を育成するためプロジェクトが実施されまし
た。
職業訓練プロジェクトでは修了生が就職し、産業界で活躍することによ
って波及効果が出てきます。センターをPRし広く知ってもらうことは、
意欲や優れた資質のある訓練生の確保、修了生の就職支援、在職者への技
術支援、産業団体との関係強化のために必要不可欠です。
展示会や見本市など多数の人が集まるイベントに参加することは、プロ
ジェクトを理解してもらうのに有効です。主催者側の組織的な活動が十分
できていない場合、開催日直前(例えば前日の夕方など)に参加・出展要
請が来て慌てることも少なくありません。作成した成果物、資料はいつで
もすぐに使えるよう、あらかじめ準備・整理しておく必要があります。
また、ネットワークのインフラ整備が進み、比較的容易にインターネッ
トに接続できる環境が整っていれば、ホームページを作成し公開すること
もプロジェクトを知ってもらう一つの方法です。言語は現地語を含めて複
数の言語により作成することになります。公開内容について相手国側と十
分な話し合いを行い、双方の合意が必要です。写真やロゴマークなどにつ
いては文書にて使用許可をもらい、著作権などのトラブルのないよう十分
注意する必要があります。
ホームページの公開に現地プロバイダを利用する場合には、ドメインの
140
取得、公開内容の承認に数カ月を要する場合がありますので、立ち上げま
で時間的に十分余裕を持って作業することが必要です。
写真1 電気・電子産業見本市での展示
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
チュニジア共和国(チュニス)
2.実
間
2001年2月1日∼2006年1月31日
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
チュニジア電気電子技術者育成計画
5.ターゲットグループ
職業訓練実施者(管理職及び指導員)
6.プロジェクトの目的
養成訓練による技能者の育成と在職者の技能
向上に必要な訓練コースの開発・実施
141
Q
A
13―2―A1
プロジェクトで実施するセミナーへの参加の促進を
図るには、どのようにしたらよいでしょうか。
国際労働財団(JILAF)のプロジェクトでは、実施するセミナーとし
て参加型のトレーナー育成研修を想定しています。したがって、参加者が
セミナーの最初から最後まで途中で抜け出すことなく出席すること、セミ
ナーの目的にあった参加者であること、例えば労働安全衛生プログラムの
場合、職場の労働安全衛生担当者や組織の教育・安全衛生の責任者・担当
者であることが重要です。そして、まずは現地組織の責任者や担当者、次
には参加者に、参加者のために実施するプロジェクトであることを丁寧に
説明し理解してもらいます。
プロジェクトの実施前に会場と周辺の交通事情を実際に確認し、それに
基づいてタイムスケジュールの設定などを行います。インフラの整備状況
や交通事情は日本より悪い、または著しく日本と違う場合があり、ちょっ
としたことでも半日以上の遅れが生ずることがあり注意が必要です。参加
者が途中で退席する、遅れるなどの課題に対しては、場所を隔離する、開
始時間を現地の交通事情に合わせて、夕方集合∼開会式、翌朝からトレー
ニングを開始するなど、トレーニングの開始時には全員の準備が整うよう
現地担当者と話し合いながら工夫します。地方からの参加者は都市部でプ
ロジェクトを実施すると、「買い物に行きたい」等でそわそわする、ある
いは時間に遅れる場合があるので、できれば郊外の会場でトレーニングに
集中できるよう合宿形式で開催すると効果的です。
文化的行事に重きを置く国が多いため、宗教的行事やお祭りなど相手国
の文化的・社会的に重要な行事と重なる、または時期を前後する場合は、
ターゲットとする参加者が家族や地域社会の中でも重要な役割を果たして
いるので参加者が集まりません。また、天候や何かの行事と重なることな
142
どにより、参加者が集まらない、または時間に間に合わず、予定どおりに
プログラムが実施できないこともあります。宗教的行事やお祭りなどは、
事前にインターネット等で調べた上で、現地と日程を調整する際に準備や
参加者募集等に無理のないスケジュールであるかを確認します。現地担当
者が直前まで行事を失念し、突然延期を求めてくる場合等もあるので日本
側での情報把握も必要です。
その他、参加が阻害される要因としては、セミナーの趣旨に合わない参
加者が別のプロジェクトの資金申請や日当等を目当てに参加することで
す。参加者のミスマッチについては、毎回の反省会等で次回に向けた改善
を促します。例えば、参加者募集要項やレターの内容を確認して改善しま
す。また、参加者名簿は、名前・組織だけでなく、どのような組織でどの
ような役職・役割を担当しているかなども記入し、現地の運営担当と話し
合う際に事情を聴き、工夫を促します。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
アジア11カ国(東、東南、南アジア)
2.実
1994年∼
施
期
間
(各プロジェクトは基本的に1年単位)
3.実
施
機
関
名
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
財団法人 国際労働財団(JILAF)
労組教育プロジェクト、
社会開発プロジェクト
5.ターゲットグループ
各国労働組合のナショナルセンター
(一部産別)
6.プロジェクトの目的
労働者、労働組合への教育プログラムを通じ
てトレーナーを育成し、労働者の意識改革と
労働組合の組織強化を促進する
143
Q
A
13―3―A1
女性向け職業訓練を実施するための
留意点は何でしょうか。
ヨルダンでJICAが実施中のパレスチナ難民女性職業訓練改善計画で
は、就業支援訓練(wage employment section)と起業家育成訓練(selfemployment section)を行い、カウンターパートのヨルダン外務省パレス
チナ局(DPA:Department of Palestinian Affairs)がパレスチナキャンプ
に有している職業訓練センターを拠点に活動を進めています。本プロジェ
クトを実施する上で、ジェンダーに関連して留意することは以下のとおり
です。なお、これは女性向け職業訓練全般に言えることではなく、本プロ
ジェクトの社会・文化的な背景を踏まえての留意点です。
1.家族男性の理解
本プロジェクトにおいては、就業支援及び起業家育成訓練の両方に言え
ることは、女性の訓練参加に対して夫もしくは父親などの家族の男性の理
解を得て訓練に参加しているかを確認することが重要です。
1日4時間の訓練で5日間程度の訓練のため外出することを夫から許可
されずに訓練を辞めざるを得ない、若い女性が働く意志を持ち訓練に参加
して縫製工場へ就職が決まり働きだしたが、父親もしくは親族の男性から
辞めさせられた、未亡人が自分で自由になる収入がほしいと訓練に参加し
就職したが、娘婿から反対され辞めざるを得ない、などの事例があります。
これらは決して少なくありません。
2.女性職業訓練という既成概念からの離脱
ヨルダンでは、労働市場や製品のマーケティングなどを考慮せずに、女
性向けの職業訓練というと洋裁指導、フラワーアレンジメント(造花)、
144
バスケット制作などが訓練職種として選ばれる傾向があります。これらの
女性のための職業訓練という既成概念に捕われないことが重要です。市場
のニーズ、競争力を踏まえて訓練も計画、実施されるべきだろうと考えま
す。
3.初期投資額が低い職種
女性でも始められる現金収入活動は、まず初期投資額が高くないものを
選定する必要があります。その理由としては、上記「家族男性の理解」で
も記したように、家庭内の女性の意思決定権が低いことです。特に金銭的
な決定権は男性が握っています。そのため、訓練を通じて技術を習得し女
性が現金収入活動を始めるとしても、初期投資額が大きい場合は、家族の
男性からの同意が得難いことが挙げられます。
4.難易度が高くなく、複雑ではない作業
難易度に関しては、本プロジェクトの対象となるパレスチナ人女性は、
全般に教育レベルが低く、働いた経験がほとんどありません。このことを
考慮し、難易度の高い、複雑な訓練は適さないと考えています。例えば、
携帯電話修理訓練なども候補に挙がりましたが、初期投資額が高いこと、
そして作業が複雑なことから、現時点ではこの訓練を行っていません。
145
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
ヨルダン・ハシェミット王国
2.実
間
2006年1月∼2009年1月
名
国際協力機構(JICA)/
3.実
施
施
期
機
関
ヨルダン外務省パレスチナ局(DPA)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
パレスチナ難民女性職業訓練改善計画
5.ターゲットグループ
ヨルダン国内のパレスチナキャンプ在住者
(主に女性)
6.プロジェクトの目的
女性の労働に対する社会の理解を深め、パレ
スチナ難民女性の雇用と現金収入の向上を目
指す
146
Q
A
14―1―A1
現地語に通訳してもらう場合に、気を付けることは
何でしょうか。
ASEANに比較的、後年参加したカンボジア、ラオス、ミャンマー、
ベトナムに対し、厚生労働省は海外職業訓練協会(OVTA)を通して人的
資源開発(HRD:Human Resources Development)の分野で職業訓練に
関する人材の育成を行っています。その方法は、まず日本がASEANで先
輩国となったインドネシア、タイ、フィリピン等で研修を実施し、参加者
はノウハウを持ち帰り、自国で国内セミナーを開催して職業訓練分野の関
係者・専門家に新しい情報と知識を伝授するという新しい技術協力方式で
す。
ベトナムで行われたナショナルセミナーに講師として参加した時、言語
に関して下記の問題点が見受けられました。プレゼンテーションは通常の
ナショナルセミナーで見られる1節ごとの説明を通訳が訳す方法をとりま
した。問題点とその解決法は以下とおりです。
1.オープニングの際、ただ一人の通訳はスピーチの通訳のため壇上にい
て、スピーチを行う外国人来賓に小声で説明を行います。そのため講
師席にいる他の外国人講師はベトナム語がわからないため、内容が把
握できず、その後の話し合いに支障が出ました。この問題は、通訳に
オープニングのスピーチ内容の要点メモを作成してもらうことにより
解決できます。
2.プレゼンテーションの最中、参加者のあくびが目立ってきたため、通
訳に「声に強弱をつける」、
「間をおく」
、
「ゆっくりはっきりしゃべる」、
「大きな声で」とアドバイスをしました。そのことにより、その後の
プレゼンテーションがスムースに行えました。
3.専門用語が誤訳されている場合があり、例えば「指導員」を論じてい
147
る時、リーダーと訳して、共産党の指導的立場の人間と理解されてい
ました。この解決方法は①専門的知識を持つ通訳を雇う、②不可能の
場合、内容を把握できる関係者を招きリハーサルを行う、③用語集を
予め作成することにより解決できます。
結論として、通訳を行う者に対して、通訳の立場は演者より重要である
ということを認識させることが肝要です。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
アセアン(ASEAN)
2.実
間
2004年∼2006年
名
厚生労働省/OVTA
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
アセアン人的資源開発(ASEAN/HRD)
5.ターゲットグループ
訓練に携わる指導員・教材開発関係者・行政官
6.プロジェクトの目的
職業訓練に関する人材の育成
148
Q
A
15―1―A1
他の援助機関と事業内容が重なった場合の対処の
仕方について教えてください。
他の援助機関と事業内容が重なった場合、その対策として、①情報収
集、②意見交換を通してお互いの立場を理解する、③受益者からの意見を
取り入れる、④新規協力分野の模索、⑤人的交流の促進、⑥施設の共同利
用、⑦費用の共同出資等が考えられます。
JICAはトリニダード・トバゴにおいて広域人的資源開発(HRD:
Human Resources Development)及び職業訓練教育の調査を実施し、
HRDの分野でカリブ海地域の15カ国に日本はどのような協力が可能か、
各国のニーズの把握、現状分析を行いました。国際労働機関(ILO:
International Labour Organization)の地域事務所カリブ共同体も同様の
HRD分野で幅広く協力を行っていました。
ニーズを把握するため、各国を訪問する前にアンケート調査で職業訓
練・人的資源開発の大体の傾向を調べました。そして、各国のニーズを基
にプロジェクトとして可能だと思われる関連セミナーの開催、日本での研
修、情報及び文献センターの設置等のプロポーサルのドラフトを用意しま
した。ここで、既に協力を開始している国際機関の存在が大きな懸案事項
となりました。そのため、調査の前に特に協力分野が重複すると思われる
ILO地域事務所を訪問して意見交換を行い、今後のILOの展開の分野、重
点とする国等を知ることができました。また、同様の意見交換、関係分野
での事業活動状況調査を他の国際分野でも行い、資料を入手しました。
二国間協力を念頭において調査を行いましたが、各国とも国際機関重視
の意見が強く、オーバーラップを避けるため以下のような対策を取りまし
た。第一に、まだ国際機関が行っていない分野の中で今後成果を上げられ
ると思われるのは、情報センター、放送大学等で比較的費用がかかる分野
149
でした。第二に、国際機関と協力して、セミナー、訓練コース、ワークシ
ョップを開催するにあたり、専門家・講師の交流を提案しました。第三に、
日本から遠い地であることから、日本に変わるセミナー・訓練等の実施場
所の提供を受けることです。第四に、実施予算の軽減のため共同開催とす
る事業の展開です。
しかし、実施にあたっては現場関係者だけでは決められないため、各機
関の政策、規約の確認、本部の意向確認等の調整に膨大な時間がかること
から、受益者側から非難を受けることもあります。
写真1 トリニダード・トバゴにおける女性訓練
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
トリニダード・トバゴ共和国
2.実
間
2003年9月∼2003年11月
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
カリブ広域人的資源開発形成調査
5.ターゲットグループ
青少年及び一般技能労働者
6.プロジェクトの目的
カリブ諸国の職業訓練分野におけるニーズを
調査し、セミナーや訓練を提案する
150
Q
A
15―2―A1
他国援助団体、国際機関との関係はどのように
構築すればよいでしょうか。
他機関との関係構築には次のような方策が考えられます。
・どのような機関が、関連分野でどのような活動、プロジェクトを行って
いるかの情報収集
・補完しあえる部分あるいは重複することが考えられる部分についての調整
・ドナー間のセクター会合への参加や、関係機関同士の定期的ミーティン
グの開催
・合同調査や合同でのワークショップの開催
・協力関係をより組織的なものにするために、協力に関する覚書などを交
わす
ウガンダの場合は、ドイツ技術協力公社(GTZ:Deutsche Gesellshaft für
Technische Zuzammenarbeit)が職業訓練分野で包括的な国全体の職業訓
練システムの能力強化のためのプログラムを行っており、この分野でのリ
ードを取っています。一方、JICAウガンダは、長年にわたり公的職業訓
練所を支援してきた実績があり、さらに指導員、管理者の能力向上を目指
したプロジェクトを開始しています。特にこの指導員・管理者の能力向上
のために、GTZ、JICAはそれぞれコンサルタントを活用し、指導員資
格・養成制度などのコンセプト形成を目的とした合同調査を実施しまし
た。また、調査結果を踏まえて、教育省や職業訓練諮問委員会のメンバー
など主要な関係者を集めて合同ワークショップを開催しました。
そのほか、定期的なミーティングを持ち、お互いの指導員、管理者訓練
プロジェクトについての情報交換を行うとともに、それが国の資格制度な
どとの整合性をもつように調整を行っています。また組織レベルでも、
JICAウガンダとGTZウガンダはフィールドレベルでの協力関係を深める
151
ための、パートナーシップ協定を結んでおり組織レベルでのバックアップ
のもと、それぞれの分野での協力関係を強めています。
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
ウガンダ共和国
2.実
間
2007年6月より3年間
名
国際協力機構(JICA)
3.実
施
施
期
機
関
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
職業訓練指導員養成プロジェト
5.ターゲットグループ
職業訓練校の指導者、管理者
6.プロジェクトの目的
職業訓練指導員、管理者の養成
152
Q
A
16―1―A1
プロジェクト活動の広報を促進するには、
どのような方法が有効でしょうか。
プロジェクト活動の広報は、日本国内では主に、助成金や寄付をいた
だいているドナー機関や民間企業、支援者の方々への説明責任という観点
から重要となります。また、事業実施国では主に、周辺の地域住民の理解
や活動への参加の促進、及び関係者とのネットワーク構築を通じたプロジ
ェクト実施運営の円滑化という観点から非常に重要となります。今回は特
に後者に関して、現地における広報の事例を紹介します。
現地レベルでは、事業紹介の簡易パンフレットを作成したり、事業対象
地域において宣伝用のポスターを作成・配布・掲示したりすることが有効
な方法となります。途上国においては、必ずしも情報伝達の手段がインタ
ーネットや電話などではないため、新聞や市内の広報掲示板を利用した広
報活動も非常に効果的です。
また、事業内容を紹介できる機会やイベントを設けることも一つの方法
です。例えば、職業技術を通じて実際に製作された作品および製品の展示
会を行うことも可能です。その際には、地域住民やコミュニティリーダー、
政府機関、関連団体などに対して幅広く周知して招待することが効果的で
す。特に、ドナー機関や政府関連機関などの職員の訪問が実現すれば、現
地レベルでプロジェクトへの理解が深まるなどの効果も期待され、その後
の活動への支援を得られる可能性も非常に高くなります。
153
写真1 実際に使用した
広報ポスターの例①
写真2 実際に使用した
広報ポスターの例②
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
東ティモール民主共和国
2.実
間
2006年∼(継続)
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
国境なき子どもたち(KnK)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
職業訓練プロジェクト
5.ターゲットグループ
騒乱の影響を受けた貧困家庭出身の青少年たち
6.プロジェクトの目的
騒乱の影響を受けて行き場を失った青少年ら
に活動の場を提供し、彼らの自立支援と健全
な成長を促すこと
154
Q
A
17―1―A1
衛生環境の悪い地域で活動を行う場合に、
気を付けることは何でしょうか。
本プロジェクトを計画通り進める上で障害となっているのは、病気の
多い環境です。特に帰還難民である訓練生は、援助により提供された資材
で即席に作った住居に住んでいるケースも多く、衛生環境はとても良いと
は言えません。1日3回食事を取れるケースはまれで、1日1回という人
も多い状況です。その1回の食事は家族皆で夜に取ることが普通なので、
日中は何も食べないまま働くことになります。それでは作業をする上で力
が入りませんし、また栄養不足から病気にかかるケースも多くなります。
本プロジェクトにおいても雨季には常に、訓練生の誰かがマラリアで休ん
でいるような状態でした。
そこで私たちはまず昼食を支給することにしました。日中に行う実地研
修としての作業は力仕事なので、何も食べない状態で臨むことは作業効率
にも影響します。昼食代という名目で現金を支給すると、自分で食べずに
家族の家計に入れたりすることがあるので昼食そのものを支給するように
しました。全員分の食材を購入し調理人を雇い入れていますが、それらの
費用は訓練生への奨学金から差し引く形にしています。
またマラリアの多い地域なので、訓練生に国連から支援を受けた蚊帳を
支給する、医療機関に無料の健康診断を依頼するなど、健康を維持するた
めにできる限りの対策を取っています。
155
基 礎 情 報
1.対 象 国 ( 地 域 )
スーダン共和国(ジュバ市)
2.実
間
2006年7月∼現在
名
特定非営利活動法人
3.実
施
施
期
機
関
日本国際ボランティアセンター(JVC)
4.プ ロ ジ ェ ク ト 名
難民帰還支援プロジェクト
5.ターゲットグループ
帰還難民
6.プロジェクトの目的
車輌整備を通じて、難民帰還事業の技術的支
援を行うこと、また技術訓練によって帰還難
民の定住促進に寄与すること
156
第2部
新たな職業訓練実施マニュアルの
開発に向けて
157
新たな職業訓練実施マニュアルの開発に向けて
昭和33年に我が国初の職業訓練法が制定され、事業主が行う事業内職業
訓練と公共の職業訓練施設が行う職業訓練に体系化された訓練が実施され
てから、今年(2008年)で50年になる。この間、幾多の法律改定によって、
国と訓練を実施する機関の役割分担、並びに実施される訓練の種類と訓練
課程についても見直しが行われ、今日に至っている。それに対応して、訓
練を担当する指導員の役割も変容してきている。
一般に、職業訓練活動は、図表1に示す「Ⅰ.訓練ニーズの把握」、
「Ⅱ.
訓練コースの設定」、「Ⅲ.訓練カリキュラムの設定」、「Ⅳ.訓練実施に向
けた準備」、「Ⅴ.訓練の実施」及び「Ⅵ.訓練の評価」の6つのプロセス
から成る訓練システムを構成している。
昭和50年代の前半まで、職業訓練指導員は訓練指導の専門家として「Ⅳ.
訓練の準備」、「Ⅴ.訓練の実施」及び「Ⅵ.訓練の評価」のプロセスを担
当することが主要な役割であった。
その後、訓練施設の裁量で訓練コースを開発し、実施するようになると、
指導員も訓練ニーズの把握やカリキュラム開発に関するプロセスにも深く
係わることが求められるようになった。また、国際協力で職業訓練の専門
家として開発途上国へ派遣された場合、訓練コースの立ち上げから訓練の
実施、評価までの全プロセスを指導しなければならないケースが多くある。
したがって、派遣専門家には、訓練活動を訓練システムとして捉えて、シ
ステムを構成する全プロセスを管理・運営するプロジェクト・マネジメン
トの手法についても精通していることが求められる。
このように、指導員の役割が非常に多様化してきており、当然、その状
況に対応するための能力開発が必要不可欠となっている。ところが、6つ
のプロセスを展開する上で必要な能力を身につけるために、あるいはブラ
ッシュアップするために資する訓練技法等に関する教材を探してみると、
159
図表1 職業訓練活動のプロセス
該当する書籍が意外に少ないことに気づかされる。
そこで本稿では、職業訓練指導員の指導能力を高めるために開発された
訓練技法に関する既存教材を取り上げてその役割等考察し、併せて職業訓
練を通じた国際協力の視点で派遣専門家(指導員等)に求められる訓練技
法も加味し、新たな職業訓練実施マニュアルを作成するにあたっての指針
を述べることとする。
1.職業訓練指導技法等に関する既存教材
今日、職業訓練指導技法等に関する教材として活用されている代表的な
ものに、「TWI仕事の教え方(Job Instruction)マニュアル」、「職業訓練
における指導の理論と実際」、「PROTS(指導技術訓練システム)教材」
160
及び「プロセス管理手法による職業訓練の展開に関する手引書」がある。
以下、それぞれの教材の開発に至った背景や特徴等について、その概要を
述べる。
(1)TWI*1仕事の教え方(Job Instruction)マニュアル
TWIは、第二次世界大戦当時、アメリカ合衆国の技術者たちによって開
発され、普及した訓練方式の一つである。当時のアメリカでは、企業の現
場において製品の品質を確保し、生産性を高めることが緊急の課題であっ
た。そして、この課題をクリアするためには、従業員(ラインワーカー)
の訓練に重要な役割を担っている監督者の管理・指導能力を高める必要が
あった。このような背景の中で開発されたのがTWIである。
監督者の教える技能を高めることを目的としたTWI「仕事の教え方」は
昭和25年に日本に導入され、監督者訓練(TWI)の1コースとして広く実
施されてきた。
TWI「仕事の教え方」マニュアルは、TWI「仕事の教え方」の基礎訓練
(10時間訓練)のテキストとして作成され、当該訓練だけでなく企業内の
監督者及び一般指導者の訓練教材としても広く活用されている。
その主な内容は、以下のような構成となっている。
①監督者に必要な5つの条件(仕事の知識、職責の知識、改善する技能、
人を扱う技能、教える技能)
*1 TWIとはTraining Within Industry(企業内の訓練)の略である。
TWIには「仕事の教え方(Job Instruction)」、「改善の仕方(Job Method)」及び
「人の扱い方(Job Relation)」の3つがあり、監督者訓練(TWI)で実施される訓練
コースを構成していた。今日では、その後の法律改正(昭和60年労働令23号、平成
5年労働令1号・12年41号)を経て管理監督者コースの短期課程の普通職業訓練と
して「仕事の教え方(10時間)」、
「改善の仕方(10時間)」、
「人の扱い方(10時間)」、
「安全作業のやり方(12時間)」、「訓練計画の進め方(40時間)」及び「問題解決の
仕方(40時間)」の6コースが設定されている。
161
②用意の仕方(訓練予定表を作る、作業を分解する、すべてのものを用意
する、作業場を整備する)
③教え方の4段階(第1段階:習う準備をさせる、第2段階:作業を説明
する、第3段階:やらせてみる、第4段階:教えたあとをみる)
とりわけ、「教え方の4段階」は、作業を教える際の手順を4つの段階
に区切って、それぞれの段階で行うべき事項とポイントを要領よくまとめ
ている。
その構成は、以下のようになっている。
<教え方の4段階>
第1段階:習う準備をさせる
①気楽にさせる
②何の作業をするかを話す
③その作業について知っている程度を確かめる
④作業を覚えたい気持ちにさせる
⑤正しい位置につかせる
第2段階:作業を説明する
①主なステップを一つずつ言って聞かせ、やって見せ、書いて見せる
②急所を強調する
③ハッキリと、ぬかりなく、根気よく
④理解する能力以上に強いない
第3段階:やらせてみる
①やらせてみて、間違いを直す
②やらせながら、作業を説明させる
③もう一度やらせながら、急所を言わせる
④わかったとわかるまで確かめる
第4段階:教えたあとをみる
①仕事につかせる
162
②わからぬときに聞く人を決めておく
③たびたび調べる
④質問するようにしむける
⑤だんだん指導を減らしていく
この「教え方の4段階」による指導方法は、公共職業訓練施設において
訓練指導する指導員を対象とした研修コースの一翼を占める時期もあっ
て、広く普及した経緯がある。その意味で、教え方のプロトタイプ的存在
であるといえる。
(2)職業訓練における指導の理論と実際
昭和30年代の後半から昭和40年代にわたって、経済の高度成長を支える
ために大量の技能者の養成が職業訓練に課せられた大きな課題であった。
この状況に対処するために、全国に多くの公共職業訓練施設が設置された。
しかし、訓練を担当する指導員を確保する上で、職業訓練指導員免許を有
している指導員の数が著しく不足していた。そのため、訓練職種に関して
充分な専門知識、技能を有している者に対して、職業訓練指導員に必要な
指導方法等に関する能力を付与するための講習を実施し、職業訓練指導員
免許を有する指導員を養成する必要に迫られていた。
当該講習は、職業能力開発促進法施行規則第39条第1号に規定されてい
る厚生労働大臣が指定する講習(以下「48時間講習」という。)である。
48時間講習の実施要領(昭和45年労働省告示第39号)には、目的、実施
主体、講習方法、講習資料、講習を担当する講師、試験、講習の修了に係
る事項が明記されており、とりわけ、講習資料の項目には、教科書として
労働省編纂「職業訓練における指導の理論と実際」を使用することと規定
している。
この実施要領に示されている48時間講習の講習科目、科目の内容及び時
間数は、図表2に示す構成になっている。
163
図表2 48時間講習の講習科目、科目の内容及び時間数
講習科目
時間数
1.職業訓練原理
4
職業訓練の沿革、意義、目的、職業訓練の担当者等
2.教科指導法
16
訓練実施計画、指導の準備、指導の進め方、教材の活用、
3.労働安全衛生
3
安全管理、安全の確保、衛生管理、衛生と作業環境等
4.訓練生の心理
7
訓練生の選抜、訓練生の特質の理解、技能の習得等
5.生活指導
6
生活指導の分野、生活指導の方法等
6.関係法規
4
職業訓練法、職業安定関係法、労働基準関係法等
7.事例研究
6
作業分解、指導案、訓練実施計画、指導記録等の事例研究
科目の内容
訓練評価等
(確認テスト)
2
計
48
「職業訓練における指導の理論と実際」は、図表2の科目内容を網羅し
た48時間講習用テキストとして昭和45年に開発されたものである。
以下に、講習科目の中で重きを置かれている「教科指導法」に関する部
分の記述内容の項目を紹介する。
<訓練計画>
・訓練における「計画」の構成
・訓練課程に対応した訓練実施計画
・実技訓練の計画
・職務分析:カリキュラム開発の手法としてではなく、訓練課題を決める
科学的な手法として紹介している。例えば、作業に含まれる要素作業
(オペレーション)の数、共通する要素作業の数によって課題の配列や
実技指導を行う場合の「教える順序」を決める際に、職務分析は有効で
あるとして、その具体的なやり方を説明している。
<指導の準備>
・指導環境の準備(学科指導の準備、実技指導の準備、作業環境の整備)
・指導案の作成(学科指導案、実技指導案)
164
・作業分解表の作成
<指導の進め方>
・指導の基礎
・学科指導の進め方(学科指導における指導の4段階)
・実技指導の進め方(実技指導における指導の4段階)
・態度指導の進め方
・指導する上での指導員の基本技術
・指導方法の工夫
<教材の活用>
・教材の役割、教材研究
・職業訓練教科書及び実技教科書の特徴と活用の仕方
・視聴覚教材等の特徴と活用の仕方
<訓練評価>
・訓練評価の目的、訓練評価の対象、訓練評価の時期、訓練評価のレベル
・訓練評価の方法(学科試験、実技試験)
・訓練評価の活用
「職業訓練における指導の理論と実際」は、上記のように、指導法に関
する項目について詳細に、かつ具体的に例示を示して記述されており、単
に48時間講習用テキストにとどまらず、職業訓練に携わる者にとっては、
指導技法教材のバイブル的存在となっている。
また、当該教科書は、かつて国際労働機関(ILO:International Labour
Organization)の機関であるアジア太平洋地域技能開発計画(APSDEP:
Asian and Pacific Skill Development Programme)によって英訳版が作成
され、APSDEP加盟諸国に提供され、好評を博した経緯がある。
(3)PROTS*2(指導技術訓練システム)教材
B型訓練*3の実施によって、訓練施設のスタッフや指導員には、訓練ニ
165
ーズの把握やカリキュラム開発に関するノウハウや手法を身につけること
が強く求められるようになった。その結果、カリキュラム開発等に係る業
務を具体的にどのように進めたらよいのかといった問題が、日常の訓練現
場では多々あった。
また、国際協力で職業訓練分野の専門家として開発途上国へ派遣された
場合、「Ⅰ.訓練ニーズの把握」から「Ⅵ.訓練の評価」までの全プロセ
スを担当しなければならないことが多い。そのため、訓練ニーズの把握、
カリキュラムの設定といった個々のプロセスを展開する上での能力はもち
ろんのこと、全プロセスを訓練システムとして捉えて、訓練評価の結果を
関係するプロセスへフィードバックして訓練の効果・効率を高める視点も
派遣専門家には求められていた。しかし、これまで、このような問題や要
求を意識してまとめられた指導技術に関する教材は発刊されてこなかっ
た。
このような状況を考慮して1990年に開発されたのがPROTS教材である。
そして、このPROTS教材(テキスト)を用いて、OVTA(海外職業訓練
協会)において指導者養成訓練(研修)が実施された。当該研修は、訓練
ニーズの把握とコース設定の進め方、カリキュラム開発の進め方、訓練の
進め方(講義の進め方、実習の進め方)、訓練評価の進め方等の内容を講
義と演習で進めることによって、訓練技法に係る能力を付与することをね
らいとした。
図表3にPROTSの研修内容の構成と研修方法を、そして、図表4に
PROTSテキストの概要と学習主題を示す。
PROTS(指導技術訓練システム)とは、Progressive Training System for
Instructorの略称である。
*3 B型訓練とは、訓練施設が地元の産業界の人材ニーズ、企業や労働者の訓練ニー
ズ等を把握・分析して設定した訓練コースやカリキュラムを訓練実施計画としてと
りまとめ、国へ申請し、承認を得て実施される訓練をいう。
*2
166
図表3 PROTSの研修内容の構成と研修方法
領 域
A 技能・技術教育と
A
コース名及びテキストのタイトル
主な研修方法
時間
技能・技術教育と指導員の役割
講義
3
指導員の役割
B 訓練プログラムの B1 訓練ニーズ把握とコース設定の進め方 講義・演習
3
B2 訓練プログラム編成の方法
6
編成と評価
B3 訓練評価の進め方
C 授業を展開する
スキル
6
C1 学習指導の基本
講義・演習
C2 講義の進め方
6
C3 実習の進め方の基礎
3
C4 感覚運動系技能実習の進め方
6
C5 知的管理系技能実習の進め方
9
D 指導の実例
指導の実例集
(ブック)
E 訓練生の行動理解 E1 訓練生の行動理解とガイダンス
に基づくガイダンス
F 訓練管理の進め方
6
講義・演習
E2 カウンセリングの進め方
F
−
3
6
訓練管理の進め方
講義・演習
6
63
合 計
図表4 PROTSの概要と学習主題
コース名及び
A
セッションの学習主題
概 要
テキストのタイトル
(テキストの主な内容)
技能・技術
PROTSの学び方を示す。
1.PROTSとは
教育と指導
技能・技術教育の考え方と指
2.技能・技術教育とは何か
員の役割
導員の役割を学習する。
3.指導員の役割
B1 訓練ニーズ把 訓練ニーズとは何かを示し、 1.訓練ニーズの把握とコース設定の概要
握とコース設 その把握の仕方について演習
2.訓練ニーズの把握の方法
定の進め方
する。
3.コース設定の進め方
B2 訓練プログ
カリキュラムとは何かを理解
1.カリキュラム編成とは
ラム編成の
し、カリキュラム開発の手法
2.カリキュラム開発の進め方
方法
を演習によって習得する。
3.訓練計画の作成と指導案
B3 訓練評価の
訓練評価の意義を理解し、評
1.訓練評価のねらいと機能
進め方
価の具体的な進め方を演習に
2.技術的知識理解の評価の進め方
よって学ぶ。
3.技能評価の進め方
167
コース名及び
テキストのタイトル
セッションの学習主題
概 要
(テキストの主な内容)
C1 学習指導の 学習指導の目的と原則を理解
1.
学習指導の目的と原則
し、学習の種類に応じた指導
2.学習の種類と指導方法
方法を学ぶ。実演を通して具
3.指導の基本ステップと留意点
体的な指導方法を習得する。
4.講義モードの展開法
講義法の特徴を理解し、その
1.講義法とは
基本
C2 講義の
進め方
C3 実習の
計画と準備の進め方を学ぶ。 2.
講義の計画と準備(講義案の作成)
具体的な講義の方法を演習に
3.講義の計画と準備(理解の援助)
よって習得する。
4.講義の展開とまとめ
実習指導の仕方に含まれる重
1.実習の進め方の基礎
進め方の
要事項を理解し、実習指導の
2.モデル実習による実習展開の実際
基礎
体験を通して学習する。
3.実習指導案と進め方の検討
感覚運動系技能の特徴を理解
1.感覚運動系技能の特徴と学習指導
C4 感覚運動系
技能実習の し、これに対応した指導方法
3.感覚運動系技能の教材研究と指導案
知的管理系技能の特徴を理解
1.知的管理系技能の特徴と実習の進め方
技能実習の し、これに対応した指導方法
2.モデル実習による実習展開の実際
C5 知的管理系
を習得する。授業の準備から
3.実習指導案の作成と授業演習
評価までを演習する。
4.授業研究発表による授業の検討
指導の
PROTSによる指導実例集を
1.訓練ニーズ把握の実例
実例集
集約して提供する。また、海
2.訓練ニーズおよびプログラムの実例
外の実例を収集している。
3.施設設備計画の実例
学習指導にあたって問題とな
1.授業の中の訓練生―問題とその理解―
進め方
D
2.感覚運動系技能の指導の実際
を習得する。
進め方
E1 訓練生の
行動理解と る訓練生の行動を理解し、ガ
2.訓練生の行動の原理を考える
イダンスの仕方を学ぶ。
3.ガイダンスの概要と役割
E2 カウンセリ
ガイダンスに必要な個人理解
1.訓練生理解の進め方とカウンセリング
ングの
の方法を習得し、カウンセリ
2.カウンセリングの進め方
進め方
ングの具体的な進め方を演習
3.カウンセリングの展開
によって習得する。
4.カウンセリング課題演習
ガイダンス
F
訓練管理の 指導員として必要な管理の概
進め方
1.訓練管理とは
念を理解し、日常の訓練生管
2.訓練生管理の進め方
理、指導管理、施設管理など
3.指導管理、教材と施設管理の進め方
の進め方を習得する。
4.PROTSのまとめ
168
PROTS教材の特徴は、
「Ⅰ.訓練ニーズの把握」から「Ⅵ.訓練の評価」
までの全プロセスを訓練システムとして捉えて、内容が構成されているこ
とである。そして、指導員に対して各プロセスを展開する上で必要な能力
を付与することをねらいとして、図表4に示すテキストで構成されている
(図表4「PROTSの概要と学習主題」参照)。
また、PROTSの中で特徴的なものとしてCUDBAS(a method of
Curriculum Developing Based on Ability Structure(能力資質の構造に基
づくカリキュラム開発手法)の略称である。
)を挙げることができる。
CUDBASはDACUM*4の手法を日本の実状に応用して開発されたカリキ
ュラム開発手法である。この方法は、訓練カリキュラムの対象と見なされ
る職務について詳しく知っている者をメンバーとする集団の討議等によっ
て、当該職務を遂行するために必要な能力や資質を抽出する方法である。
テキストでは、CUDBASによるカリキュラム開発の進め方が具体的に記
述されており、初めてカリキュラム開発に携わる者にとっても理解しやす
いものとなっている。また、「訓練の評価」に関しては、訓練生の評価に
焦点をあてて詳しく記述されており、評価の結果を指導技法の改善に資す
る工夫がされている。しかし、訓練コースの改善に向けて訓練コースその
ものを評価するという視点での記述はない。
(4)プロセス管理手法による職業訓練の展開に関する手引書
B型訓練が展開されて以後、訓練施設では訓練コースを立ち上げ、実施、
*4 DACUMとは、カナダで開発されたカリキュラム開発手法でDEVELOPING A
CURRICULUMの略称である。その後、米国オハイオ州立大学職業教育研究センタ
ーにおいて改定と実践が重ねられた結果、その有効性が実証され広く普及した。
DACUMは、職務に精通した専門家集団(6∼8人で構成)がブレーンストーミン
グによって、短時間に当該職務に含まれるコンピテンスを明らかにすることを特徴
としている。
169
評価するという、一連の職業訓練活動を実施してきている。
近年、公共職業訓練施設で実施されている職業訓練について、単に訓練
結果だけに評価の視点を置くのではなく、実施する訓練の品質保証に視点
を置いた評価についても重視する考え方が強くなっている。このような状
況の中で、2003年、職業能力開発総合大学校能力開発研究センターにおい
てプロセス管理手法による職業訓練の展開を目指した調査研究が実施され
た。そして、研究結果を訓練の現場で試行し、以下の3つの報告書がまと
められている。
①職業能力開発総合大学校 能力開発研究センター2005『公共職業訓練
のプロセス管理に関する調査研究―職業訓練コースの設定、運営に係
るプロセス管理の精緻化―』調査研究報告書No.129
②職業能力開発総合大学校 能力開発研究センター2006『公共職業訓練へ
のプロセス管理の普及に関する調査研究―プロセス管理手法によるモデ
ルカリキュラムの策定に関する調査・研究―』調査研究報告書No.117-1
③職業能力開発総合大学校 能力開発研究センター2006『公共職業訓練へ
のプロセス管理の普及に関する調査研究―プロセス管理を活用した公共
職業訓練コースの設定と運営管理の手引書―』調査研究報告書No.117-2
職業訓練におけるプロセス管理とは、結果だけを見て原因の追及や改善
策を議論する管理ではなく、訓練活動を構成する全てのプロセスを重視し、
各プロセスでの課題や問題点に対して即時に対応し、訓練の品質を確保す
るという方法である。
当該手引書では、訓練ニーズの把握から訓練カリキュラムの設定、訓練
の実施、評価・改善までの業務の流れを7つの段階(プロセス)に分割し、
段階ごとに課題・問題点を整理し、解決する方法を提示している。
ここでは、この7つの段階(プロセス)を訓練コースの設定、運営に係
る基本プロセスとし、このプロセスを一般的な「企画(Plan)」、「実施
(Do)」、「評価(Check)」、「改善(Action)」というPDCAサイクルに区分
170
図表5 PDCAサイクルと訓練コースの設定、運営に係る基本プロセスの関係
PDCAサイクル
企画(Plan)
訓練コースの設定、運営に係る基本プロセス
訓練ニーズの把握
実施訓練分野の選定
訓練カリキュラムの設定
実施(Do)
訓練実施に向けた準備
訓練の実施
評価(Check)
訓練コースの評価
改善(Action)
訓練コースの改善
して検証するために、全体の流れを図表5のように関係づけて整理してい
る。そして、基本プロセス全体(「訓練ニーズの把握」から「訓練コース
の改善」までの7つのプロセスをいう。)にPDCAサイクルを適用するこ
とと併せて、個々の基本プロセスごとにPDCAサイクルを適用することも
重要であることを提示している。
以下に、当該手引書の構成内容の概要を示す。
当該手引書は、図表6に示すように、訓練コースの設定、運営に関する
流れを構成するプロセスごとにその目的を示している。そして、目的を達
成するために各プロセスにおいて取り組まなければならない主な項目を具
体的に取り上げて説明している。
例えば、「訓練ニーズの把握」のプロセスでは、取り組むべき主な項目
として、①地域の産業概況等の把握、②人材ニーズの把握、③求職者ニー
ズの把握及び④把握したニーズの分析、という4つの項目を提示し、それ
ぞれの項目を達成するために必要な事項を具体的に説明している。以下に
その内容を例示する。
<訓練ニーズの把握>
このプロセスでは、様々な情報(各種報告書、統計データ及び団体・企
業等へのヒアリング結果等)などにより、人材ニーズ等を分析し、訓練コ
171
図表6 訓練コースの設定、運営に関する流れ
172
ースを設定する地域ごとに訓練ニーズの質及び量を的確に把握する。なお、
訓練ニーズとは、企業が必要とする職業能力を有した人材(以下「人材ニ
ーズ」という。)と、求職者が希望する職業(職種)及びその職業(職種)
に関連する訓練コース(以下、「求職ニーズ」という。)のことを指してい
る。
【主な取り組み項目】
①地域の産業概況等の把握
¡.地域の産業政策、企業誘致計画、産業育成策、労働政策等の情報を収
集する。
™.地域の産業動向に係る情報を収集する。
£.地域の産業別技術動向に関する情報を収集する。
¢.情報源:
(a)国、都道府県及び市町村が発行している報告書、統計資料
(b)商工会議所、銀行の調査部、新聞社等が発刊している地域の産業
実体、技術動向等に関する報告書及び調査資料
(c)地域の経営者協会、事業主団体、中小企業連合会、代表的な企業
等へのヒアリング調査等を実施
②人材ニーズの把握
¡.地域の労働市場に関する情報を収集する(求人状況及び動向、業種
別・職種別の求人状況と今後の予測等)。
™.代表的な企業の求人状況(職種別従業員の過不足状況、今後の見込み
等)
£.事業主団体、企業等に対する人材ニーズに係るヒアリング調査(現在
不足している人材、今後必要な人材に関する具体的な職務とその内容
及びレベル、必要な職業能力、実務経験等)。
¢.産業別、職種別求人状況を把握する。
∞.情報源:地域の労働局、公共職業安定所が把握する有効求人数、職種
173
別求人数、求人票等の求人データ、民間の職業紹介会社のデータ、商
工会議所及び事業主団体等による調査資料、求人情報誌。
③求職者ニーズの把握
¡.地域の労働局、公共職業安定所が把握する有効求職者数、新規求職者
数、職種別求職者数等を把握する。
™.相談窓口での求職者の職業志向を把握する。
£.民間調査機関等による求職者の職業志向を把握する。
¢.求職者アンケートによるニーズ把握。
∞.都道府県、市町村が調査した求職者の状況に関する情報を収集する。
§.情報源:地域の労働局、公共職業安定所の求職票等、民間の職業紹介
会社のデータ、求職情報誌。
④把握したニーズの分析
上記①∼③の情報、データを分析し、次のことを明らかにする。
¡.産業別(業種別)、職種別の労働者数
™.今後成長が見込まれる業種、職種
£.今後伸びが予測される技術分野、技能分野
¢.職種別の求人数の変化、職種別の年間求人数、求職者数の推移
∞.職種別の職務内容
§.職種別に求められる職業能力、実務経験
以下、「実施訓練分野の選定」、「訓練カリキュラムの設定」、「訓練実施
に向けた準備」、「訓練の実施」、「訓練コースの評価」及び「訓練コースの
改善」のプロセスについても同様な構成となっており、当該プロセスで取
り組むべき主な項目を具体的に提示し、説明している。
この手引書の特徴は、これまで訓練施設においてプロセスごとの訓練業
務に関して、暗黙知の形で蓄積されてきたノウハウの部分を洗い出し(明
確化して)、系統的に整理したことにある。それゆえ、この手引書に基づ
174
いて訓練業務を展開すれば、見落としや抜けはなくなり、訓練施設や担当
者(施設のスタッフや指導員等)が変わっても一定の訓練の品質が確保さ
れるとしている。
2.職業訓練活動をめぐる指導員の役割と指導技法教材
(1)A型訓練*5の展開と指導員の役割及び指導技法教材
公共職業訓練施設では、昭和50年代の始め頃まで中学卒業者や高校卒業
者を対象とした養成訓練(専修訓練課程(中学卒業者を対象とした1年間
の訓練及び高校卒業者を対象とした6カ月間の訓練をいう。)と高等訓練
課程(中学卒業者を対象とした2年間の訓練及び高校卒業者を対象とした
1年間の訓練をいう。)の2つの訓練課程がある。)が主体的に実施されて
いた。そして、養成訓練に係る訓練基準(訓練科、訓練の対象となる技能
及びこれに関する知識の範囲、教科、教科の細目、訓練期間及び訓練時間、
設備(種別、名称))は国が作成し、訓練施設ではその基準に基づいて訓
練を実施することが一般的であった。したがって、国にとっては、図表1
に示す「Ⅰ.訓練ニーズの把握」、「Ⅱ.訓練コースの設定」及び「Ⅲ.訓
練カリキュラムの設定」までのプロセスに関する作業を行って訓練基準を
設定し、広く提示することが重要な役割の1つとなっていた。
①訓練施設(組織)の役割
一方、訓練施設は、国が定めた訓練基準に従って訓練を実施する役割を
担っていた。具体的には、公共職業安定所と連携した訓練生の募集をはじ
めとして、図表1に示す「Ⅳ.訓練の実施に向けた準備」、「Ⅴ.訓練の実
施」、「Ⅵ.訓練の評価」の訓練プロセスを展開し、訓練生の就職活動を支
援して就職に結びつけるまでの一連の業務を実施することである。そして、
*5
A型訓練とは、国が定めた訓練基準(設備基準やカリキュラム等)に基づいて実
施される訓練をいう。
175
これらの一連の業務を効果的にかつ効率よく進めるためには、施設内に各
種の委員会を組織し、機能的に運営することが非常に重要な意味を持って
いた。訓練生の募集から訓練生の就職までの業務には、指導員が主体的に
担当するもの、他の課や関係機関と連携して実施するもの及び施設全体で
取り組むべきものがあり、それぞれに課せられた役割を果たすためには、
組織横断的に構成されたこれらの委員会を活用した訓練施設の主体的な取
り組みと調整能力が重要であった。
②指導員の役割
職業訓練指導員は、図表1に示す「Ⅳ.訓練の実施に向けた準備」
、
「Ⅴ.
訓練の実施」及び「Ⅵ.訓練の評価」の訓練プロセスを展開する上で重要
な役割を担っており、彼等が行う業務を定めているものとして、職業訓練
指導員業務指針(昭和37年8月6日付労働省職業訓練局長通達)がある。
当該業務指針は、職業訓練指導員の行う訓練生指導業務の適正な運営を
図るために、訓練生指導に関する基本的事項に関して、指導員が理解して
いなければならないこと及び業務に関する具体的な項目を規定している。
そして、公共職業訓練を担当する職業訓練指導員はこの指針に準拠して業
務を行うよう求めている。
業務指針の内容は、次の(¡)∼(ª)の9つの項目で構成されてい
る。
(¡)職業訓練のしくみ
職業訓練の目的、職業訓練の内容、職業訓練の担当者
(™)訓練計画
訓練過程、訓練計画の作成(学科訓練の計画、実技訓練の計画、訓練
課題の選定)、訓練計画表の作成、訓練計画の調整
(£)指導の準備
準備すべき事項、指導案の作成、実技指導のための作業分解、作業環
境の整備
176
(¢)指導の進め方
指導の基礎、学科指導の進め方、実技指導の進め方
(∞)教材の活用
教科書、作業指導票、視聴覚教具、訓練生日誌、指導日誌
(§)試験
試験の目的、試験の時期、試験の要件、実技試験、学科試験、試験結
果の評価
(¶)安全衛生
(•)訓練生の把握
訓練生の把握の意義、訓練生の選抜、訓練生の特質の理解、訓練生の
扱い方
(ª)生活指導
生活指導の意義、生活指導の分野、生活指導の方法
上記の業務指針内容を図表1に示す訓練プロセスに対応させて整理した
ものを図表7に示す。
訓練プロセスと指導員が取り組むべき業務内容を対比させてみると、A
型訓練では、訓練計画の作成、指導の準備、訓練の指導、訓練の評価(訓
練生の評価)といった業務を実施し、訓練プロセスを展開することが指導
員の主要な役割であることがわかる。
③訓練を進める上での指導技法教材
A型訓練の場合、指導員は「Ⅳ.訓練実施に向けた準備」、「Ⅴ.訓練の
実施」及び「Ⅵ.訓練の評価」に係るプロセスを展開する上でのキーパー
ソンであることは、上で述べた通りである。そして、彼等の行うべき業務
内容は図表7に示されているものである。これらの業務を遂行する上で必
要な知識やノウハウについては、「職業訓練における指導の理論と実際」
に詳しく説明されており、指導員が業務遂行能力をつける上で、あるいは
自身の指導技法に係る能力を一度振り返ってみる上でも、当該テキストは
177
図表7 訓練プロセスと取り組むべき業務内容
取り組むべき業務内容
訓練プロセス
Ⅳ.訓練実施に向けた準備
<™.訓練計画>
・学科訓練の計画
・実技訓練の計画
・訓練課題の選定
・訓練計画表の作成
・訓練計画の調整
<£.指導の準備>
・指導案の作成
・作業分解表の準備
・作業環境の整備
・教材の準備
Ⅴ.訓練の実施
<¢.指導の進め方>
・学科指導
・実技指導
<∞.教材の活用>
<¶.安全衛生に関する指導>
<ª.生活指導>
Ⅵ.訓練の評価
<§.試験>
・学科試験の実施
・実技試験の実施
・試験結果の評価
訓練生の習得度の評価と確認
訓練生の到達度の評価と確認
適切な教材となっている。
また、TWI仕事の教え方(Job Instruction)マニュアルについては、
「指導の進め方」とりわけ「実技指導の進め方」のプロトタイプといわれ
るものであり、監督者訓練の技法を職業訓練の実技指導へ取り入れた考え
方や両者の違い等を知る上で意義深く、古きをたずねて新しきを知るとい
178
う視点で利用すると大変参考となる指導技法教材の一つであるといえる。
(2)B型訓練の展開と指導員の役割及び指導技法教材
昭和53年職業訓練法の一部改正によって、国と都道府県等が実施する職
業訓練の見直しと分担等によって実施体制が再編された。すなわち、従来、
公共職業訓練は、新規学校卒業者に対する養成訓練を主体に実施されてき
たが、進学率の上昇等によりその面での公共職業訓練ニーズが減少してお
り、一方、今後、能力再開発訓練(離職者・転職者を対象とする訓練)、
向上訓練(企業等で働く労働者を対象とする訓練)及び高度の養成訓練
(専門訓練課程)の実施体制を拡充する必要があることに対処するために、
従来の養成訓練の実施については都道府県が分担し、雇用促進事業団(現
在の雇用・能力開発機構)については、従来実施してきた養成訓練を廃止
し、能力再開発訓練、向上訓練及び高度の養成訓練を分担することとし
た。
離転職者を対象とした能力再開発訓練の場合、訓練修了後の就職が円滑
にいくためには、就職の受け皿である地域の産業界や企業の人材ニーズを
把握することが必要不可欠である。また、向上訓練に関しては、産業構造
の変化や技術革新の進展に対して地域の事業主や労働者個人がどういった
訓練ニーズをもっているのかを把握し、訓練カリキュラムに反映させ、訓
練を展開することが強く求められる。
これらの訓練コースの訓練期間は比較的短く(能力再開発訓練では6カ
月間のコースが多く、向上訓練では20時間前後のコースが大多数を占めて
いる。)、地域の訓練ニーズに柔軟かつ迅速に対応することが求められてい
る。
したがって、従来の訓練のように国が一律に訓練基準を設定するのでは
なく、地域の産業や企業の実態をよく把握している訓練施設がカリキュラ
ムを開発し、訓練を展開することが適当とされた。そして、訓練施設の裁
179
量で訓練ニーズを把握して訓練カリキュラムを作成した後、これを訓練実
施計画として国へ申請し、承認を得て訓練を実施する方式になった。
①訓練施設(組織)の役割
B型訓練では、訓練施設が独自にカリキュラムを開発し、訓練を展開す
ることが求められる。そのため、これまでは国が行ってきた「Ⅰ.訓練ニ
ーズの把握」、「Ⅱ.訓練コースの設定」及び「Ⅲ.訓練カリキュラムの設
定」のプロセス(図表1参照)に係る業務も訓練施設で行うことが必要と
なった。「Ⅰ.訓練ニーズの把握」から「Ⅲ.訓練カリキュラムの設定」
までの一連の業務は、地域の雇用状況、産業界、事業主団体、企業及び在
職労働者等の訓練ニーズを把握することが訓練の成否の鍵を握っている。
そのため、訓練施設では、訓練企画委員会、カリキュラム開発委員会、あ
るいは開発援助課と訓練課(指導員等)によるチームを編成して、訓練ニ
ーズに関する情報を収集・分析してカリキュラムを構築するといった組織
的な取り組みがこれまで以上に重要な業務となった。
②指導員の役割
B型訓練では、「訓練ニーズの把握」から「訓練の評価」までの全プロ
セスを訓練施設の責任で実施することが求められる割合が高くなった。こ
れに対応して、指導員も従来のように訓練指導の専門家としての役割に留
まらず、施設内の訓練企画委員会やカリキュラム開発委員会等のメンバー
の一員として、訓練ニーズの把握やカリキュラム開発のプロセスにも深く
関わることが求められるようになった。
そのため、指導員にとっては、「Ⅰ.訓練ニーズの把握」、「Ⅱ.訓練コ
ースの設定」及び「Ⅲ.訓練カリキュラムの設定」に係る業務を進める上
でのノウハウを身に付けることが緊急の課題となった。
③訓練を進める上での指導技法教材
B型訓練を展開するにあたって、開発援助課のスタッフや指導員等を対
象とした、B型訓練の実施に向けた研修や検討会が数多く開催された。そ
180
の主要なテーマは、訓練ニーズ把握の進め方、カリキュラム開発の手法と
その進め方等に関するものであった。これらの内容は、研修用資料等の形
でまとめられたものはあるが、出版物として取りまとめられたものは存在
していない。
しかし、これらの研修後、各施設で取り組んだ訓練事例が実践報告とし
て「技能と技術」誌等に時々掲載され、訓練ニーズの把握やカリキュラム
開発に係る当該訓練施設の経験やノウハウを知る上での貴重な情報となっ
ていた。
訓練施設においてB型訓練の実施を重ねることによって、訓練ニーズを
把握して訓練カリキュラムを設定するという一連の業務の進め方に関する
ノウハウは、個々の指導員やスタッフに経験知として蓄積されていった。
しかし、これらのノウハウや技法をテキストやマニュアルの形式で体系的
にまとめることには至らなかった。
「Ⅰ.訓練ニーズの把握」から「Ⅵ.訓練の評価」までを系統的にまと
めたテキストは、1990年にPROTSが発刊されるまで待たなければならな
かった。
(3)プロセス管理手法を取り入れた訓練の展開
工場や事業所の品質管理システムそのものを検査し、品質保証システム
が適切に機能していることを制度的に保証する規格としてISO9000シリー
ズがある。当該規格は、生産活動のプロセスの評価を重視し、結果として
アウトプットである製品の信頼性を確保するという考え方に基づいてい
る。
職業訓練においても、訓練結果のみに視点を置いた評価ではなく、訓練
活動をシステムとして捉え、それを構成するプロセスを評価することによ
って適切な訓練コースの管理・運営を図り、実施される訓練の品質を確保
するという取り組みが広まっている。いわゆる、プロセス管理手法による
181
職業訓練の展開である。プロセス管理による訓練の展開を図るためには、
組織的な取り組み、担当部門間の緊密な連携による取り組み及び目標管
理・スケジュール管理等が極めて重要であり、これまで訓練施設で蓄積さ
れてきた訓練活動に係るノウハウを整理し、関係者の役割を明確にして取
り組むことが求められる。
①訓練施設(組織)の役割
訓練施設においてプロセス管理手法を用いて訓練を展開するねらいは、
「訓練ニーズの把握」から「訓練コースの評価」及び「訓練コースの改善」
までの全プロセスを担当して提供する訓練の品質を保証し、訓練効果の高
い訓練コースを運営することである。そのためには、各プロセスで行うべ
き業務項目とその指針を関係者全員に明示することが求められる。そして、
各プロセスの業務を扱う委員会を組織し機能させること、担当部門、担当
者、連携する部門等を決め、業務項目をいつまでに、誰が、どのレベルま
で完了させるのかといった目標管理・スケジュール管理をし、調整を図る
ことが大切な役割となる。また、訓練生の募集や就職に関する業務、訓練
ニーズの把握に関する業務を進める際に協力を得なければならない外部の
団体や機関及び企業等との連携や調整をとることも重要な役割である。
②指導員の役割
個々の指導員には、「訓練の準備」、「訓練の実施」、「訓練の評価」のプ
ロセスにおいて、従来果たしてきた訓練指導の専門家としての役割はもち
ろんのこと、個々のプロセスにおいて実施すべき業務項目を関係する指導
員とチェックし協働で取り組むこと、及び進捗度と結果を評価し、改善に
つなげる工夫をすることが求められる。「訓練ニーズの把握」や「カリキ
ュラムの設定」及び「訓練コースの評価」に関するプロセスについても、
当該プロセスで取り組むべき業務項目を委員会のメンバーとして主体的に
実施する役割を担っている。
いろいろな部門との連携、他課のスタッフとの協働で進めなければなら
182
ない項目も当然あるわけで、いつまでに、何を、どのレベルまで行うのか
といった目標管理・スケジュール管理を念頭に置いた取り組みが必要とな
る。
③訓練を展開する上での訓練マニュアル
プロセス管理手法で訓練を展開する場合、「訓練ニーズの把握」、「実施
訓練分野の選定」、
「訓練の準備」、
「訓練の実施」及び「訓練コースの評価」
といったプロセスにおいて、これまで、訓練施設や指導員等によって暗黙
知の形で蓄積されてきた訓練業務のノウハウを形式知化し、取り組むべき
業務項目や要点として具体的に提示し、施設全体で確実に実施できるよう
にしておくことが大切である。
また、プロセス管理では、業務ごとの適切な目的・目標の設定が重要で、
目標管理・スケジュール管理(誰が、いつまでに、何を、どのレベルまで
するのか等の管理)が訓練の成否に係わってくる。それゆえ、施設の役割、
担当部門間の連携、指導員等スタッフの役割を明確にした上で業務を展開
することが、これまで以上に求められる。
「プロセス管理手法による職業訓練の展開に関する手引書」は、プロセ
ス業務の進め方や考え方が具体的にまとめられているので、プロセス管理
手法を用いた訓練の実施に係るノウハウの会得を切望する者にとっては必
読書といえる。
一方、訓練技法等に関する能力のブラッシュアップを図るには、「職業
訓練における指導の理論と実際」及び「PROTS教材」が有効であり、今
後、訓練効果や訓練の品質保証を意識した職業訓練を進める上で、これら
の教材とプロセス管理手法による手引書を組み合わせて活用することが必
要不可欠であるといえる。
3.新たに開発する職業訓練実施マニュアルのコンセプト
職業訓練においても実施した訓練の結果だけではなく、訓練の品質を保
183
証するための訓練プロセスについても重要視されるようになってきてい
る。そのため、結果だけを見て原因の特定や改善策を検討する訓練管理で
はなく、訓練活動を構成するプロセスに着目して、各プロセスを進める上
での業務の最適化や、各プロセスでの課題・問題点を把握して即時に対応
することによって訓練の品質を確保するといった管理手法が求められる。
また、職業訓練の専門家として諸外国へ派遣された場合は、訓練活動の
全プロセス(「Ⅰ.訓練ニーズの把握」から「Ⅵ.訓練の評価」までの6
つのプロセスをいう。)を訓練システムとして捉えて、指導しなければな
らないケースが多くある。このように指導員にとっては、単に訓練指導の
役割にとどまらず、訓練システムをプロセス管理手法で展開するための知
識と能力が求められている。
このような状況を踏まえて、新たな職業訓練実施マニュアルを開発する
際に、考慮しなければならないことや考え方について述べる。
(1)PMC(Process Management Cycle)の考え方を取り入れた職業訓
練実施マニュアルとする
訓練活動を訓練システムと捉えて、システムを構成するプロセスを評価
することによって訓練の品質を確保するという考え方は、広く普及し、公
共の職業訓練施設で実施されているところである。また、プロセス管理手
法は、職業訓練分野の国際協力で派遣専門家として開発途上国において指
導する場合、とりわけ重要である。派遣専門家にとっては、訓練ニーズの
把握から訓練の評価までの全プロセスを担当し、訓練コースの改善や訓練
効果を高めるためのシステムの改善に係る指導までを行うケースが多々あ
るからである。
そのため、彼等にはプロセス管理手法を用いて訓練を展開する能力が必
要不可欠となっている。こういったことを踏まえて、新たに開発する職業
訓練実施マニュアルは、PMCの考え方を取り入れた内容とする。
184
(2)PROTS等の既存教材とPMC手法を組み合わせた構成とする
「カリキュラムの設定」、「訓練の準備」、「訓練の実施」及び「訓練生の
評価」に関する内容については、「職業訓練における指導の理論と実際」
やPROTS等の既存の教材を再編集することで十分にカバーできる。しか
し、訓練活動の全プロセスを訓練システムとして捉えて、それに係る業務
を進めるための方法や留意事項等に関する内容はカバーすることはできな
い。したがって、PROTS等の既存の教材を再編集したものに、訓練活動
の6つのプロセスにおいて取り組まなければならない項目や要点を付加し
た構成にする。
例えば、第一部はプロセス管理手法による訓練の進め方として、①プロ
セス管理の考え方、②プロセス管理の進め方、③各プロセスにおいて取り
組まなければならない項目とその要点等で構成し、第二部は「職業訓練に
おける指導の理論と実際」やPROTS等で扱っている指導技法や不足して
いる分野(訓練ニーズの把握や訓練コースの評価)を追加したもので構成
する。
(3)PMCは組織的な取り組みが必要
訓練活動を訓練システムと捉えて、プロセス管理手法を適用していくた
めには、訓練施設における組織的な取り組みが必要不可欠である。指導員
が重要な役割を担うことは論を待たないところであるが、各種の委員会を
機能的に活用した業務の進め方、外部の関係機関との連携、開発援助課等
のスタッフとの協働等が極めて重要となる。そのため、組織の役割、スタ
ッフの役割及び指導員の役割等を明確に記述しておく。
このことは、職務記述(Job description)によって、各人の責任と業務
分担が明確に示されている諸外国で指導にあたる場合は、特に重要な項目
であるといえる。
また、限られた期間内にプロセス業務を達成させる観点から、目標管
185
理・スケジュール管理(誰が、いつまでに、何を、どのレベルまでやるの
か等)に関する項目も盛り込むことが必要である。
(4)訓練活動のプロセスごとに取り組むべき項目の明確化
訓練活動のプロセスごとに取り組むべき項目については、「プロセス管
理手法による職業訓練の展開に関する手引書」に記述されている内容、項
目を活用して再構成する。
当該手引書では、各プロセスを展開する上で取り組まなければならない
項目が総花的に盛られているように見受けられる。また、項目を提示する
順序についても、項目の内容については適切であるが、どのプロセスで取
り上げることが適切であるか、再度、検討してみる必要があるように思わ
れるものもある。
公共職業訓練施設では、当該手引書に基づいて訓練を実施した経験をも
っている所が多くある。これらの経験やノウハウを踏まえて、各プロセス
で取り組むべき項目の内容やシーケンス(提示する順序)について精査し、
再構成する。
そして、職業訓練施設において暗黙知の形で蓄積されてきたノウハウの
部分を明確化・客観化し、系統的に整理することによって、特別な能力を
持った専門家や集団によって進められる訓練活動でなくても、一定の訓練
効果や訓練の品質が確保されるように作業の標準化を狙った内容とする。
(5)PROTSを含めて既存教材では、「訓練ニーズの把握」及び「訓練の
評価」に関するプロセスについての記述が薄いのでここを充実させる
「訓練ニーズの把握」のプロセスでの目的は、各種の情報や資料及びデ
ータに基づいて、①就業者数の多い産業、業種、職種、当該職種に含まれ
る職務、②就業者数の伸びている産業、業種、職種、当該職種に含まれる
職務、③就業者数の増加が予測される産業、業種、職種、当該職種に含ま
186
れる職務を把握する、④安定的に求人が見込まれる職種とその職種に必要
とされる具体的な職業能力を把握する、⑤求職者が希望する職業及びその
職業に必要な能力を把握するといった一連の作業を通して訓練コースとし
て設定する分野の範囲や大枠をつかむことである。
そのためには、国レベルで、そして、地域レベルでどのような情報が何
処にあるのかをつかんでおかなければ作業を進めることは不可能である。
したがって、収集すべき情報の種類(各種の白書、報告書、地域の産業
動向に関する資料、雇用状況・動向に関する資料、求人票・求職票に記述
されている職務等)、情報の収集先である情報源(国の機関、地方自治体、
商工会議所、公共職業安定所、銀行の調査部等)、収集の方法等について、
具体的に取り組まなければならない事項を詳細に記述する。
また、「訓練の評価」については訓練生の評価と訓練コースの評価を区
分し、訓練技法の改善に資するものと訓練コースの改善に資するものとに
評価項目を分類して記述する。以下に、それぞれの評価項目について例示
する。
①訓練生の評価
評価項目として訓練生の習得度、到達度がある。
「習得度」は、訓練で習得することになっている専門知識及び技能・
技術を訓練生がどの程度習得しているのか、訓練課題(訓練成果物)
ごとに評価し、確認するものである。
「到達度」は、教科の科目ごとの目標や到達水準に対して訓練生がど
のレベルまで習得(到達)しているのかを評価し、確認するものであ
る。
これらの評価結果は、追指導の必要性、指導法の工夫、課題の見直し
(課題の内容、課題を提示する順序等の再検討)、訓練教材の工夫等の
ための判断材料となる。
187
②訓練コースの評価
訓練コースの評価については定量的にできるものと定性的にできるもの
とがあるので、両方の視点で行う必要がある。
以下に、定量的な評価項目及び定性的な評価項目として使われているも
のを例示する。
<定量的な評価項目>
応募率(応募者数/定員)、入所率(入所者数/定員)、修了率(修了者
数/入所者数)、資格取得率(資格取得者数/修了者数)、就職率(就職
者数/修了者数)、起業率(訓練で習得した技能を生かして、なりわい
を業としている人の割合。起業者数/修了者数で示される。)、定着率
(1年以上同一に勤務している数/就職者数)
<定性的な評価項目>
訓練内容に対する満足度(修了生)
訓練内容の現在の仕事への活用度(修了生)
訓練内容への要望(修了生)
修了生の定着状況(事業主)
修了生を採用する際に重視した点(事業主)
仕事への貢献度(生産性、品質等)(事業主)
同年齢の従業員と比較した相違点(事業主)
採用した修了生を見て、訓練内容に付加すべき点、改善点(事業主)
訓練内容への要望(事業主)
訓練生の評価に関しては、これまでの指導技法教材で詳しく述べられて
いるので、それらを再編集するなどの方法で今日的な内容にまとめること
が可能である。しかし、訓練コースの改善に向けた訓練の評価に関する記
述が比較的薄いので、本マニュアルでは、訓練コースの評価についても具
体的に詳述する必要がある。
188
以上のことを総括すると、新たに開発する職業訓練実施マニュアルの内
容は、
①今日的視点に立って、既存の教材の内容を精査し、再編成する。
②既存の教材では扱われていない内容、あるいは扱い方(記述)が比較
的薄い部分を追加する。
③プロセス管理手法による訓練の進め方に関する内容を盛り込む。
という3つの点を考慮して取りまとめることが適切であるといえる。
【参考文献】
1.第一法規『現行職業能力開発ハンドブック』
2.雇用問題研究会『TWI仕事の教え方(Job Instruction)マニュアル』
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5.職業能力開発総合大学校 能力開発研究センター2005『公共職業訓練
のプロセス管理に関する調査研究―職業訓練コースの設定、運営に係
るプロセス管理の精緻化―』調査研究報告書No.129
6.職業能力開発総合大学校 能力開発研究センター2006『公共職業訓練
へのプロセス管理の普及に関する調査研究―プロセス管理手法による
モデルカリキュラムの策定に関する調査・研究―』調査研究報告書
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7.職業能力開発総合大学校 能力開発研究センター2006『公共職業訓練
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公共職業訓練コースの設定と運営管理の手引書―』調査研究報告書
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8.The National Center for Research in Vocational Education, The Ohio
State University『DACUM Handbook』
189
参考資料
団体連絡先(五十音順)
団 体 名
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連 絡 先
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特定非営利活動法人
〒700-0807
AMDA社会開発機構(AMDA-MINDS) 岡山県岡山市南方2-13-1 ゆうあいセンター内
http://www.amda-minds.org/
TEL:086-232-8815
[email protected]
FAX:086-232-8816
財団法人
〒168-0063
オイスカ(OISCA)
東京都杉並区和泉3-6-12
http://www.oisca.org/
TEL:03-3322-5161
[email protected]
FAX:03-3324-7111
特定非営利活動法人
〒664-0862
国際エンゼル協会(IAA)
兵庫県伊丹市若菱町6-10
http://www.angel-ngo.gr.jp
TEL:072-784-7504
[email protected]
FAX:072-784-4608
財団法人
〒101-0051
国際労働財団(JILAF)
東京都千代田区神田神保町3-23-2 錦明ビル5階
http://www.jilaf.or.jp/
TEL:03-3288-4188
[email protected]
FAX:03-3288-4155
特定非営利活動法人
〒161-0033
国境なき子どもたち(KnK)
東京都新宿区下落合4-3-26
http://www.knk.or.jp/
TEL:03-6279-1126
[email protected]
FAX:03-6279-1127
193
団 体 名
連 絡 先
特定非営利活動法人
〒162-0824
ジェン(JEN)
東京都新宿区揚場町2-16 第二東文堂ビル7階
http://jen-npo.org/
TEL:03-5225-9352
[email protected]
FAX:03-5225-9357
特定非営利活動法人
〒659-0093
地球ボランティア協会(GVS)
兵庫県芦屋市船戸町3-25-502
http://gvs.jp
TEL:0797-34-0078
[email protected]
FAX:0797-34-1061
特定非営利活動法人
〒141-0021
難民を助ける会(AAR)
東京都品川区上大崎2-12-2 ミズホビル5階
http://www.aarjapan.gr.jp
TEL:03-5423-4511
[email protected]
FAX:03-5423-4450
特定非営利活動法人
〒110-8605
日本国際ボランティアセンター(JVC) 東京都台東区東上野1-20-6 丸幸ビル6階
http://www.ngo-jvc.net/
TEL:03-3834-2388
[email protected]
FAX:03-3835-0519
特定非営利活動法人
〒169-0074
BHNテレコム支援協議会(BHN)
東京都新宿区北新宿1-5-1 NTT新宿ビル3階
http://www.bhn.or.jp/
TEL:03-5348‐2221
[email protected]
FAX:03-5348‐2223
独立行政法人
〒151-8558
国際協力機構(JICA)
東京都渋谷区代々木2-1-1
http://www.jica.go.jp/
新宿マインズタワー6∼13階
[email protected]
TEL:03-5352-5311
194
索 引
プロジェクト実施国別 索引
国 名
事例番号
執筆団体
掲 載
NGO等 JICA等 ページ
インド
4−2−A2
○
072
インドネシア共和国
3−1−A4
○
052
7−1−A1
○
109
ウガンダ共和国
15−2−A1
○
151
エリトリア国
1−2−A1
○
009
カンボジア王国
2−5−A2
○
032
3−2−A1
○
056
2−1−A1
○
011
2−1−A5
○
019
2−2−A2
○
024
2−3−A1
○
026
2−6−A1
○
037
3−1−A2
○
047
ス−ダン共和国
○
3−2−A4
062
4−1−A1
○
066
4−5−A2
○
086
5−4−A1
○
101
6−1−A1
○
107
10−2−A1
○
125
17−1−A1
○
155
スリランカ民主社会主義共和国
2−7−A1
○
041
チュニジア共和国
3−2−A2
○
058
4−3−A1
○
076
4−3−A2
○
078
197
事例番号
執筆団体
掲 載
NGO等 JICA等 ページ
5−2−A1
○
093
5−2−A2
○
095
5−3−A1
○
097
9−2−A1
○
117
13−1−A3
○
140
トリニダード・トバゴ共和国
15−1−A1
○
149
バーレーン王国
1−1−A2
○
007
3−1−A3
○
050
パキスタン・イスラム共和国
12−1−A1
○
133
バングラデシュ人民共和国
5−3−A2
○
099
東ティモ−ル民主共和国
2−2−A1
○
022
3−1−A1
○
045
4−2−A1
○
070
13−1−A2
○
138
16−1−A1
○
153
2−5−A3
○
035
3−1−A5
○
054
国 名
チュニジア共和国
フィリピン共和国
ブータン王国
2−1−A3
○
015
2−1−A4
○
017
3−2−A3
○
060
ホンジュラス共和国
13−1−A1
○
135
ミャンマ−連邦
4−2−A3
○
074
4−5−A1
○
084
10−1−A1
○
123
ヨルダン・ハシェミット王国
1−1−A1
198
○
005
国 名
事例番号
執筆団体
掲 載
NGO等 JICA等 ページ
ヨルダン・ハシェミット王国
2−4−A1
○
028
2−5−A1
○
030
3−2−A5
○
064
9−1−A1
○
113
13−3−A1
○
144
アジア
2−1−A2
○
013
2−6−A2
○
039
4−1−A2
○
068
4−3−A3
○
080
4−4−A1
○
082
5−1−A1
○
091
5−4−A2
○
103
5−5−A1
○
105
8−1−A1
○
111
9−1−A2
○
115
13−2−A1
○
142
アセアン(ASEAN)
14−1−A1
その他(無記入)
11−1−A1
127
11−2−A1
128
199
○
147
NGO団体別 索引
団 体 名
掲載ページ
7 アジア・アフリカ国際奉仕財団(AIV)………………………………… 72
O 特 アムダ(AMDA) ………………………………………………… 109、123
O 特 AMDA社会開発機構(AMDA-MINDS)……………………………… 135
7 オイスカ(OISCA) …………………………………………… 52、54、74
O 特 国際エンゼル協会(IAA)………………………………………………… 99
7 国際労働財団(JILAF)………………………… 13、39、68、80、82、91
103、111、115、142
O 特 国境なき子どもたち(KnK)……………………… 22、32、45、70、138
O 特 ジェン(JEN)……………………………………………………………… 41
O 特 地球ボランティア協会(GVS) ………………………………………… 35
O 特 難民を助ける会(AAR Japan)……………………………………… 56、84
O 特 日本国際ボランティアセンター(JVC)……… 11、19、24、26、37、47
66、86、101、107、155
O 特 BHNテレコム支援協議会(BHN)……………………………………… 105
200
JICAほかプロジェクト名別 索引
プロジェクト名
掲載ページ
アジア太平洋地域技能開発計画 …………………………………………… 133
アセアン人的資源開発(ASEAN/HRD) ……………………………… 147
カリブ広域人的資源開発形成調査 ………………………………………… 149
国家技能検定制度策定 ……………………………………………………… 017
職業訓練校拡張計画 ………………………………………………………… 009
職業訓練指導員養成プロジェクト ………………………………………… 151
人的資源開発(HRD)マスタープラン策定 ………………………… 7、50
スーダン国基礎的技能、職業訓練強化プロジェクト ……………… 62、125
チュニジア電気電子技術者育成計画 ………………… 58、76、78、93、95
97、117、140
農業機械技術者養成コース …………………………………………… 15、60
パレスチナ難民女性職業訓練改善計画 ………… 5、28、30、64、113、144
201
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