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総説細菌リポ蛋白質の生合成および分泌機構林滋・徳永正雄・神尾好是

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総説細菌リポ蛋白質の生合成および分泌機構林滋・徳永正雄・神尾好是
総説細菌 リポ蛋白質の生合成 および分泌機構林滋・徳永正雄
細 菌 リポ蛋 白質 は 細 胞 質 で未 修 飾 プ ロ リポ 蛋 白質 と して 合 成 され, 細 胞 質膜 を通 過 後, 所
定 の場 所 に 成熟 型と して 分子 集 合す る。こ の 過程 で修 飾 お よび プ ロセ シ ン グ 反 応 が 起 こ る。
リポ蛋 白 質 の 成 熱 過 程 は, プ ロセ シ ング の み で 成 熟 型 に な る 非 リポ 分 泌 蛋 白 質 とは 区 別 さ
Database Center for Life Science Online Service
れ る 。 リポ 蛋 白 質 の 生 合 成 お よび 分 泌機 構 は, グ ロボ マ イ シ ンの 使 用, プ ロセ シ ン グ酵 素
の ク ロー ニ ング,
大 腸 菌 分 泌 欠 損 変 異株 の 分 離 お よび 組 換 え 遺 伝 子 操 作 に よ る基 質 蛋 白 質
へ の 部 位 特 異 変 異 の 導 入 実 験 な ど に よ り明 らか に され た。 本 稿 に お い て, これ らに 関 す る
最 近 の 知 見 を 記 述 し考 察 した 。
は じめ に
の が, 1975年,
分 子 生物 学 の知 識 の集 積 と遺 伝 子 工 学 の技
Blobel ら に よっ て 真 核 細 胞 の 実 験 に基
術 の進 歩 に 伴 い, 今 日で は 細菌 お よび下 等真 核 生物 (酵
づ い て 提 唱 され た “蛋 白質 の膜 透 過 に関 す る シ グ ナ ル仮
母) で 異 種 生 物 の遺 伝 子 産物 を 生 合 成 させ る こ とは, ま
説” と, 同 じ く 彼 ら に よ る1981年
だ 解 決 す べ き問 題 は あ るに せ よ比 較 的 容 易 に な った 。 し
recognition
か し一 般 に は, 生 合 成 され た 産 物 は 菌 体 内 に 蓄 積 され る
近 ま で の研 究 か ら, こ の説 を支 持 す る多 くの結 果 が 出 さ
か, あ る いは 菌 体 内 で分 解 され て しま う。 も し生 産 物 を
れ, 彼 らの提 唱 した機 構 は 生物 種 を 越 え た 基 本 的 原 理 を
菌 体 外 で回 収 で きれ ば, 連 続 培 養 に よ り生 産 物 の収 率 を
導 く重 要 な もの で あ る こ とが 明 らか に な っ て きた 。 この
の SRP
(signal
particle) の 発 見 で あ る^<1,2)>。
この分 野 の最
モ デ ル は 細菌 に お け る蛋 白質 の膜 透 過 機 構 に お い て も基
高 め る こ とが 可 能 にな る し, か つ 培 地 か ら容 易 に 精 製 す
る こ とが 可 能 に な る。 そ のた め 菌 体 内 か ら外 へ の 物 質 の
本 的 に は 適 応 で き る。 細菌 は グ ラ ム陽 性 菌 と グ ラ ム陰 性
分 泌 を いか に効 率 よ く行 なわ せ るか が, この 分 野 の 研 究
菌 に 大 別 され る。 大 腸 菌 に代 表 され る グ ラム 陰 性 菌 の表
のひ とつ の課 題 と な っ てい る 。 生 体 膜 は 一般 に リン脂 質
層 に は, 内膜 お よび 外 膜 の二 層 の生 体 膜 が ペ プ チ ドグ リ
二 重 膜 層 と蛋 白質 か ら な る基 本 構 造 を と って お り, 親 水
カ ン層 を は さ ん で存 在 す る。 外 膜 を構 成 す る蛋 白質 や ペ
性 分 子 や 高 分 子 物 質 に 対 して透 過 障 壁 とな る。 した が っ
リプ ラズ ム に存 在 す る蛋 白質 は, い ず れ も分 泌 蛋 白質 で
て, これ ら の物 質 が こ の膜 を 透 過 す るに は 特 殊 な 透 過 機
あ り, か つ 高 能 率 に合 成 され る。 大 腸 菌 の もつ 二 重 膜 構
構 が 存 在 す る。
造 が 真 核 生物 の ミ トコ ン ド リア の そ れ と類 似 し, 分 泌 蛋
白質 の 内 膜 細胞 質 側 で の 合成 お よび そ の 膜 透 過 機 構 が,
分 泌 蛋 白質 や 膜 蛋 白質 の膜 透 過 機 構 に 関 す る研 究 は,
こ の10年
Shigeru
間 に急 速 な 進 歩 を遂 げ た 。 こ の発 端 とな った
Hayashi,
萬 有 製 薬 株 式 会 社 開 発 研 究 所
Banyu
Masao
Tokunaga,
Minamiooya,
Yoshiyuki,
School
The
真 核 生物 の粗 小胞 体上 の そ れ と類 似 して い る 点 な ど か
Pharmaceutical
Kamio,
Tokyo
Matsumoto
390,
Osato-gun,
(〒194
194,
玉 県 大 里 郡 妻 沼 町 大 字 西 成810)
Saitama
360-02,
東 京 都 町 田市 南 大 谷
11)
[Development
Research
Laboratories,
Japan]
[Mitsubishi-Kasei
Institute
of
Life
Sciences,
Japan]
信 州大 学 医学 部 細 菌 学 教 室
Medicine,
(〒360-02埼
Ltd.,
三 菱 化 成 生 命 科 学 研 究 所
Machida-shi,
of
Co.
(〒390
松 本 市 旭
3-1-1)
[Department of Bacteriology, Shinshu University
Japan]
Mechanism of Biosynthesis and Secretion of Bacterial LipoproteinKey word
【細 菌 リポ 蛋 白 質 】 【シ グ ナ ル ペ プ チ
ド】 【蛋 白 質 分 泌 】 【プ ロ セ シ ン グ 】
41
I
42
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 32
No.
1
(1987)
ら, 大 腸 菌 を これ らの モ デ ル系 と して分 子 生 物 学 的 に 研
究 が進 め られ るよ うに な った。 と くた 外 膜 に存 在 す る主
要 蛋 白質 の 代表 で あ る リポ蛋 白質 や OmpF
合 成 お よび分 泌機 構 の 硯 究 は, 目を 見 張 る も のが あ る。
リポ 蛋 白 質 の 生 合 成 機 構
図1に 現 在 まで に 確 立 され た リポ蛋 白質 の 生 合 成 経 路
原 核 生 物 は細 胞 内 小器 官 を 有 しな い た め, 分 泌 蛋 白質 は
を 示 す 。 生 合成 経 路 の研 究 は80年
糖 鎖 や 脂 肪 酸 が添 加 さ れ る こ とが な く, 現 在 まで の と こ
ん だ 。 そ の理 由 の ひ とつ は グ ロ ボ マ イ シ ンの 発 見 で あ
代 に な って 大 き く進
ろ リポ蛋 白質 が唯 一 の グ リセ リ ドお よび 脂 肪 酸 で 修 飾 さ
る^<3)>
(図2)。1978年
れ た 蛋 白質 の例 で あ り, あ る意 味 で, 真 核 生物 に お け る
質 の プ ロセ シ ン グを 特 異 的 に 阻 害 し, プ ロ リポ蛋 白質 が
糖 蛋 白質 や 脂 肪 蛋 白質 の非 常 に 原 始 的 な モ デ ル と して リ
処 理 菌 体 中 に蓄 積 す る こ とが 示 さ れ た^<4)>。
さ らに1980
ポ蛋 白質 を位 置 づ け る こ とが可 能 で あ ろ う。
年 に は, グ ロボ マ イ シ ン存 在 下 で 蓄 積 され る プ ロ リポ蛋
本 稿 では, こ の細 菌 リポ蛋 白質 の 生 合成 お よび 分 泌 機
構 を, 大 腸 菌 の 外 膜 主要 蛋 白質 の ひ とつ で あ る Braun
に, グ ロボ マ イ シ ンが プ ロ リポ蛋 白
白質 はす で に グ リセ リ ドで 修飾 され て い るこ とが 明 らか
に され, シ グナ ル ペ プ チ ドの切 断 よ り先 に グ リセ リ ドに
リポ蛋 白質 と, グ ラム陽 性 菌 の Bacillus licheniformis
よる修 飾 が 起 こ る こ とが示 さ れ, 図1の 経 路 が提 唱 され
の 分 泌 型 ペ ニ シ リナ ー ゼ リポ蛋 白質 を モ デ ル に して, ご
た^<5)>。
こ の経 路 は1982年,
く最 近 ま で の知 見 と筆 者 ら の実 験 結 果 に基 づ い て考 察 し
Database Center for Life Science Online Service
.
蛋 白質 の 生
た。
42
vitro で再 現 す る こ とに よ り証 明 され^<6)>,
また in vivoで
も,
図1.
リポ
リポ蛋 白質 の 成 熟 過 程 を in
グ ロ ボ マ イ シ ン非 存 在 下 に お い て短 時 間 の パ ル スー
蛋 白 質 の 成 熟 過 程
細菌 リポ蛋 白質 の生合成お よび分 泌機構
43
び脂 肪 酸 の 受容 体 と し て, 一 方, 2-3^H-グ リセ ロ ー ル あ
るい は3^H-パ ル ミチ ン酸 で ラベ ル した1^pp-(リポ 蛋 白 質
欠 損) 変 異 株 の 膜 を そ れ ぞ れ グ リセ ロ ー ル あ る い は パ ル
ミチ ン酸 の供 与 体 と して, 中性 界 面 活 性 剤 Nikkol
在 下 で in vitro
ニ ン と2-3^H-グ
の存
で反 応 させ た 。 そ の結 果, <35>^S-メ
チオ
リセ ロ ール あ る いは3^H-パ
ル ミチ ン酸
でそ れ ぞ れ 二 重 標 識 され た プ ロ リポ蛋 白質 お よび 成 熟 リ
ポ
蛋白 質 が 検 出 され た。 さ ら に成 熟 リポ蛋 白質 に 取 り込
まれ た3^H-パ ル ミチ ン酸 の 約1/3は,
で 遊離 せ ず, グ リセ リ ドのO-ア
1N
NaOH
処 理
シル 基 の み な らず,
シ
グナ ル ペ プ チ ドが 切 断 され た あ とに 転 移 され る ア ミ ド結
合 の ア シル 基 の 転 移 も起 こ って い る こ とが 示 され た 。 し
た が って この 実 験 系 で, (i)
ホ ス フ ァチ ジ ル グ リセ ロ
ー ル: 未 修 飾 プ ロ リポ蛋 白質 グ リセ ロー ル 転 移 酵 素,
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(ii)
リ ン脂 質: グ リセ リル リポ蛋 白質 ア シル 転 移 酵 素,
(iii) シ グナ ル ペ プ チ ダー ゼ, (iv)
図2.
リン脂 質:
グ リセ リ
ドリポ蛋 白 質 ア シル 基 転移 酵 素, の 活 性 が 検 出 され た こ
グ ロボ マ イ シン の 化 学構 造
とに な る^<6)>
(図1参
照)。
この 系は 通 常pH8.0で,
チ ェイ ス実 験 で上 記 の 事 実 が 証 明 され た^<7)>。
前 駆 体 蛋 白質 の成 熟 型 へ の プ ロセ シ ン グ (シ グ ナ ルペ
未 修飾 プ ロ リポ蛋 白質 か ら
成 熟 型 リポ蛋 白質 ま で の 全 過 程 が 進 行 す る が, pH5.0
プ チ ドの切 断) を in vitro で調 べ る系 は, まず 真 核 生 物
で反 応 させ る と反 応 は ま った く進 行 せ ず, 未 修 飾 プ ロ リ
に お い て Blobel らに よ って 確 立 され た^<1)>。
こ の系 では 前
ポ蛋 白質 の シ グナ ルペ プ チ ドの切 断 が 見 られ な い 。 これ
駆 体蛋 白質 の合 成 とそ の プ ロセ シ ン グの共 存 が 必 要 で,
はpH5.0で
cotranslational に反 応 が進 行 す る。 一 方, 原 核 生 物 で は
い るが,
Wickner
て い る。 この 実験 結果 か ら次 の事 実 が 明 らか に な っ た。
ら に よ り大 腸 菌 の 膜 画 分 で のM13フ
ァー ジ
の プ ロコ ー ト蛋 白質 の プ ロセ シ ン グを 検 討 す る 際, in
vitro の反 応 系 が 確 立 され た^<8)>。
こ の系 で は, 蛋 白質 合 成
(i)
は シ グナ ルペ プ チ ダ ー ゼ は活 性 を 保 持 して
グ リセ ロー ル転 移 酵 素 が 働 か な い こ とに 起 因 し
グ リセ リ ドに よ る 修 飾 が まず起 こ り, 続 い て シ グ
ナ ル ペ プ チ ドが 切 断 され る こ と, さ ら に (ii)
グ リセ リ
とプ ロセ シ ング の共 存 は 不 必 要 で, post-translational に
ドに よ る修 飾 が 起 こ らな いか ぎ り, プ ロ リポ蛋 白 質 の シ
反 応 が進 行 す る。 酵 素 の性 質 な ど を調 べ る に は, な るべ
グ ナ ルペ プ チ ドは切 断 され な い こ と, す なわ ち グ リセ リ
く単 純 な系 が望 ま しい。 大 腸 菌 にお い て も適 当 な条 件 下
ドに よ っ て修 飾 され た プ ロ リポ蛋 白質 が シ グナ ルペ プ チ
で post-translational に プ ロ リポ蛋 白質 の脂 質 に よる修
ダー ゼ の認 識 部 位 を 形成 して い るこ と。
飾 や シ グナ ル ペ プ チ ドの切 断 が 起 こ され れ ば, リポ蛋 白
質 の成 熟 過 程 に酵 素 学 的検 討 を 加 え る こ とが で き る。
グ リセ ロー ル転 移 酵 素 につ い て は, 若 干 の酵 素 化 学 的
知 見 が あ る^<10)>。
上 記 の粗 酵 素 レベ ル で の 系 に お い て は,
グ リセ ロー ル 転 移 酵 素 の至 適pHは7.8,
至適反応温度
と細 胞 質 酵 素 の β-ガラ ク トシ ダ
は37℃,
至適 界面 活性 剤 濃 度 は Nikkol
を用 い た とき
ーゼ との融 合 蛋 白質 の 合 成 を , 培 地 に マ ル トー スを 加 え
0.25%で
あ った 。 また この酵 素 は 一 般 的 に 膜 酵 素 が そ
1981年,
大 腸 菌 ペ リプ ラ ズ ム蛋 白質 で あ る マ ル トー
ス結 合 蛋 白質 (MalE)
て誘 導 させ る と, こ の融 合 蛋 白質 が 正 常 に 内膜 を通 過 で
うであ る よ うに, 膜 内 では 非 常 に安 定 で あ り, 膜 画 分 を
きず 分 泌 経 路 上 に蓄 積 し, さ らに 二 次 的 に 通 常 の分 泌 蛋
65℃
白質 も分 泌 され ず, 結 果 的 に前 駆 体 と して蓄 積 す る こ と
素, N-ア
が報 告 され た^<9)>。
こ の系 で リポ蛋 白質 は, グ リセ リ ド基 を
とん ど調 べ られ て い な い。 修 飾 プ ロ リポ蛋 白質 の シ グ ナ
有 しな い未 修 飾 プ ロ リポ蛋 白質 と して蓄 積 し, リポ蛋 白
ル ペ プ チ ドを特 異 的 に切 断 す る プ ロ リポ蛋 白質 シ グ ナ ル
質 の 無 細胞 系 に お け る 生合 成 機 構 の解 明 に基 質 と して利
ペ プ チ ダー ゼ に つ い て は, 次 節 で述 べ る。 シ グ ナ ル ペ プ
用 で き る こ とが 明 らか に さ れ た^<6)>。<35>^S-メ
チ オ ニ ンで ラ
チ ダー ゼ に よ って 切 断 され た シ グナ ル ペ プ チ ドの行 方 に
ベ ル した この 未 修 飾 プ ロ リポ蛋 白 質 を グ リセ ロー ル お よ
つ い て は, 少 な く と も3つ のペ プチ ダ ーゼ の 関与 が 報 告
で10分
処 理 して も失 活 しな い 。O-ア
シル 転 移酵
シル 転 移 酵 素 系 に つ い て は, そ の性 質 な どは ほ
43
44
蛋 白 質
核 酸
酵 素
さ れ て い る。 す な わ ち, 膜結 合性 ペ プ チ ダー ゼ (ペ プチ
Vol. 32
No. 1
(1987)
ド上 に ク ロ ー ニ ン グ す る こ と が で き れ ば,
そ の ク ロー ン
ダー ゼIV) の関 与^<11)>,
細 胞 質 性 の2つ の ペプ チ ダー ゼ
は SPase
(プ ロテ ア ー ゼSO,
耐 性 に な る は ず で あ る 。 筆 者 ら は こ の 仮 定 に 基 づ き,
オ リ ゴペ プ チ ダー ゼ) の 活 性 の 関
与^<12)>が
そ れ で あ る。
IIを
μg/mlの
過 剰 生 産 し,
親 株 よ りも グ ロボ マ イ シ ン
グ ロ ボ マ イ シ ン に 耐 性 を 示 す ク ロ ー ン を,
50
Carbon
コ レ ク シ ョ ンか ら ス ク リ ー ニ ン グ し, pLC3-13を
II.
プ ロ リポ 蛋 白質 シ グナ ル ペ プチ ダー ゼ
の 性 質 と 遺 伝 子 (lsp)
の ク ロー ニ ング
得 た^<17)>。
一 方,
得 た 。lspの
シ グ ナ ルペ プチ ドを 切 断 す る シ グナ ル ペ プチ ダ ーゼ
は,
最 初 Wickner
M13の
ら の グル ー プ に よ っ て,
フ ァー ジ
プ ロ コー ト蛋 白質 の シ グナ ル ペ プチ ドを 切 断 し
コ ー ト 蛋 白質 に す る酵 素 活 性 と して精 製 さ れ た^<8)>。
この
Database Center for Life Science Online Service
精 製 酵 素 は LamB
蛋 白質, OmpA
蛋 白質, ロイ シ ン結
Yamagata
ら^<18)>は
SPase
変 異 株 を 相 補 す る ク ロ ー ン と し て,
遺 伝 子 座 は0.5分
lsp のDNA塩
と決 定 さ れ^<20,21)>,
同時に
あ る 構 造 が 明 ら か に な っ た 。 ま ず,
SPase
水 性 の ア ミ ノ酸 に 富 む 分 子 量18,144の
に よ る 精 製 SPase
Fasman^<24)>の
IIの
それ とよ く 一 致
し,
も の と 想 像 さ れ た^<22)>。
こ れ に 反 し SPase
ら
と
よ う に 深 く膜 に 埋 め こ ま れ た 構 造 を と っ て い る
Iは そ の 大 部 分
を ペ リプ ラ ズ ム に 露 出 し て い る^<25)>。SPase IIと
た^<13)>。
しか し, 菌 体 の グ ロボ マ イ シ ン処 理 に よる リポ蛋
と の ホ モ ロ ジー は な く,
白質 の前 駆 体 のみ の 特 異的 な蓄 積 現 象 や, プ ロ リポ蛋 白
る シ グ ナ ル ペ プ チ ド様 構 造 は な か っ た。
ま たN末
SPase
I
端 には 現 在 知 られ て い
遺 伝 子 構 造 で は 驚 い た こ と に, lsp
の 上流 にあるイ ソ
必 須 で あ る こ とが 明 らか に な る につ れ, プ ロ リポ蛋 白質
ロイ シ ン tRNA
合 成 酵 素遺 伝 子 (ileS) の2つ
に特 異 的 に作 用 す る 別 の シ グ ナル ペ プ チ ダ ー ゼ (以後
ドン TGATGA
中 の ATG
SPase II とす る) の 存 在 が 強 く予 想 され た 。SPase II活
Dev
Chou
方 法 に よ り二 次 構 造 を 解 析 す る と , 膜 中 で
白 質 の シ グナ ル ペ プチ ドを in vitro
質 の プ ロセ シ ン グに は前 も っ て グ リセ リ ドに よる修 飾 が
IIは 非 常 に 疎
分 子 で,
は 図3の
初 期 の報 告 で は プ ロ リポ蛋 白質 を も切 断 す る とされ て い
温度感受性
基 配 列 が 決 定 さ れ^<22,23)>,い くつ か の 興 味
合 蛋 白質, マ ル トー ス結 合 蛋 白質 な どの 多 くの前 駆 体 蛋
で 切 断 し, 彼 らの
IIの
同 じ くpLC3-13を
の終 止 コ
が, lsp の 開 始 コ ドン と して
使 わ れ て いた 。 す な お ち, ileS の終 止 コ ドン と lsp の 開
性 は, 修 飾 プ ロ リポ蛋 白質 を基 質 に して, 無 細 胞 系 にお
始 コ ドンが オ ーバ ー ラ ップ し, 両遺 伝 子 の 間 に は 転 写 の
け る シ グ ナ ルペ プ チ ドの切 断 活 性 で表 わ す こ と が で き
終 結 シ グ ナ ルが な く, 両遺 伝 子 は 上 流 の プ ロモ ー タ ーか
る。 基 質 で あ る修 飾 プ ロ リポ蛋 白質 は,
ら同 時 に読 まれ る1つ の オ ペ ロ ンを な して い る こ とが 推
i)
グロボマイ
シ ン処 理 菌^<14)>か
ら, ii) SPase II温 度 感 受 性 変 異株^<15)>か
定 され た 。 この 推 定 はlspの 上 流 部 分 を い ろ い ろ な 長 さ
ら, iii) 抗 体 に よ る ア フ ィ ニテ ィ カ ラ ムを 用 い た 高 度 精
で 欠 損 させ た プ ラ ス ミ ドや, Tn5を
製 法^<16)>の3手
段 で調 製 す る こ とが で き る。 これ らの 基 質
に よ る SPase II活 性 の発 現 実 験 に よ り確 か め られ た^<26)>。
を 用 い て SPase II活 性 測定 が確 立 さ れ お 時 点 で, SPase
IIが Wickner
らに よっ て見 い だ され た酵 素 (SPase I)
挿 入 した プ ラス ミ ド
また, この実 験 に よ り ileS の構 造遺 伝 子 中, lspの200400bp上
流 域 に弱 いlsp
の プ ロモ ー タ ー活 性 が 検 出 さ
と異 な る分 子 で あ る こ と が 免 疫 的方 法 で 確 か め ら れ
れ, そ の働 きに 興 味 が 持 た れ る。最 近 ileS の上 流 に さ ら
た^<14)>。
現 在 で は両 酵 素 とも遺 伝 子 の ク ロー ニ ン グが な さ
に も う1つ の遺 伝 子xが 見 いだ され (312ア
れ^<17,18)>,
異 な る遺 伝 子産 物 で あ るこ とが 明 らか に な って
な る蛋 白質 を コー ドす る), こ の遺 伝 子xも ileS
ミノ酸 か ら
と共 通
い る。 した が っ て大 腸 菌 に は少 な く とも2類 種 の シ グナ
ル ペ プ チ ダ ー ゼが 存 在 して い る こ とが 明 らか に な った 。
SPase IIは,
Dev
ら^<16)>に
よ って95%以
に ま で精 製 され た 。 こ の酵 素 はSDS-PAGEで
17,800を
上 均 一 な標 品
は分子量
示 し, グ ロ ボ マ イ シ ンで 非 競 争 的 に 阻 害 され
る。 な お, 詳 細 な 酵 素 学 的 諸 性 質 に つ い て は 原 論 文 を 参
照 してい た だ きた い^<19)>。
SPase II遺 伝 子 (lsp) は, 同 時期 に2つ の 異 な るス ク
リ ー ニ ン グ法 を 用 い て ク ロー ニ ン グさ れ た 。前 述 した よ
うに SPase II活
性 は グ ロボ マ イ シ ンに よ り特 異的 に 阻
害 さ れ る。 こ こで SPase II遺 伝 子 を 多 コ ピー プ ラス ミ
44
図3.
DNA塩
基 配 列 か ら予 想 され る SPase IIの 膜 内
で の構 造
A, B, Cお よびDは
SPase IIの4つ
の ドィ イン
を示す。
45
細 菌 リポ蛋白質の生合 成お よび分泌機 構
の プ ロ モ ー タ ー で 読 ま れ て い る こ とが 示 さ れ た^<27)>な ぜ
45
標 識 実 験 か ら, 外 膜 中 に4個,
内 膜 中 に2個
の新 しい リ
こ れ ら の 遺 伝 子 が1つ
の オ ペ ロ ンを形 成 して い る のか と
ポ蛋 白 質 が 見 い だ さ れ た^<35)>。1981年 に は, 独 立 し た3つ
い う 生 理 的 な 意 義 は,
今 の と こ ろ 不 明 で あ る。 面 白 い こ
の 研 究 室 か ら 同 時 に Bacillus licheniformis
と に,
SPase
Iも
そ の 上 流 に あ る 遺 伝 子 lepA
と オ ペロ
ン を 形 成 して い る こ と が 報 告 さ れ て い る^<28,29)>。
最 近,
イ ヌ膵 臓 か ら真 核 生 物 で は初 め て シ グナ ル ペ プ
チ ダ ー ゼ が 単 離 精 製 さ れ,
25K,
23K,
22K,
ニ ッ トか ら な り,
21K,
大 腸 菌 の そ れ ら と 異 な っ て,
18K,
12Kの6個
う ち22Kと23Kは
の サ ブユ
糖 蛋 白質 で あ る
の ペ ニ シ リ ナー ゼ が, N-ア
ン残 基 をN末
端 に持つ
た^<36∼38)>。
そ の 後,
由来
シ ル ジ グ リセ リ ドシ ステ イ
リポ 蛋 白 質 で あ る こ とが 示
E. coli に お け る, TraT蛋
さ れ
白 質^<39)>,コ リ
シ ン お よ び リ シ ス 蛋 白 質^<40∼43)>,
ペ ニ シ リ ン結 合 蛋 白 質3
番^<44,45)>も
リポ 蛋 白 質 で あ る こ とが 明 ら か に な っ た 。 グ
ラ ム 陽 性 菌 で は Staphylococcus aureus や Bacillus
cereus^<
46)>に お い て
と報 告 さ れ た^<30)>。
749/c株
,
また マ イ コプ ラズ マ に も この 種 の リ
ポ蛋 白 質 の 存 在 が 報 告 さ れ て い る^<47)>。
こ れ ら の 事 実 は,
III.
リポ 蛋 白 質 生 合 成 機 構 の 一 般 的 分 布I
, II節 で 述 べ た リポ蛋 白質 の 生合 成 機 構 は, 研 究 の
初 段 階 で は Braun
リポ蛋 白質 に 特 異 的 で あ る と 考 え
Database Center for Life Science Online Service
られ て い た 。 そ の後 Serratia marcescens^<31)>, Erwinia
amyloura^<
32)>
, Morganella morgani^<33)>な どで 同 様 の リポ
蛋 白質 の存 在 が 判 明 した 。1979年
に は E. coli に Braun
リポ蛋 白質 とN末 端 構 造 を 同 じ くす るペ プチ ドグ リカ ン
結 合 リポ蛋 白質^<34)>,
1981年 に は, SPase IIの 特 異 阻 害 剤
グ ロボ マ イ シ ン処 理 と3^H-パル ミチ ン酸 に よ る蛋 白質 の
表1.
Braun
に よ り見 い だ さ れ た E. coli
主 要 外 膜 蛋 白質 の ひ
と つ で あ る ム レ イ ン リポ 蛋 白 質 が,
こ れ ら一 群 の リポ 蛋
白 質 の プ ロ トタ イ プ で あ る こ と を 示 唆 し て い る 。 こ れ ら
に 共 通 し て い る ヒ と は,
Braum
シ グ ナ ル 配 列 のC末
リポ 蛋 白 質 の グ リセ リ ド修 飾,
端 近 傍 に,
プ ロセ シ ン グお
よ び ア シ ル 化 部 位 に 見 い だ さ れ る コ ン セ ンサ ス ア ミ ノ 酸
配 列, Leu-Ala-Gly-Cys
あ る い は そ れ と 非 常 に よ く類 似
し た ア ミ ノ 酸 配 列 が 存 在 す る こ と (表1参
照),
シ ス テ イ ン 残 基 は 修 飾 お よ び プ ロ セ ス さ れ たN-ア
化 さ れ る こ と で あ る 。 表1に
細菌におけ る リポ蛋 白質前駆体 のシグナルペ プチ ド配列
末端 の
シル
現 在 ま で 判 明 した リポ 蛋 白
46
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 32
No. 1
(1987)
質 の シ グナ ル配 列 と コ ンセ ンサ ス配 列 を ま とめ た 。 この
に lpp を 配 した プ ラ ス ミ ド PSYC
表 か ら明 らか な よ うに, グ ラ ム陰 性 菌 の ム レ イ ン リポ蛋
lpp の発 現 は エ リス ロマ イ シ ンの存 在 に よ り誘 発 さ れ
820が
得 られ た^<49)>。
白 質間 に は非 常 に類 似 す る シ グナ ル 配 列 が 存 在 す るが,
る。こ の プ ラス ミ ドをB. subtilis に形 質 転 換 した 結果,
これ らを除 き各 蛋 白質間 に お い て コ ンセ ンサ ス配 列 以 外
E. coliで見 られ る シ ス テ イ ン残 基 の グ リセ リ ドに よ る
に 顕 著 な類 似 性 は見 い だ され 得 な い 。 これ らの事 実 は,
修 飾, プ ロセ シ ン グ, N-ア シル化 お よび グ リセ リ ドで修
こ の コ ンセ ンサ ス配 列 が修 飾 お よび プ ロセ シ ン グ酵 素群
飾 され た前 駆 体 の蓄 積 が 認 め られ た 。 以 上 二 方 向か ら の
に とっ て基 質 認 容 部 位 で あ る こ とを 示 唆 して い る。
実 験 に よ り, グ ラム陽 性, 陰 性 にか か わ らず 前 節 で述 べ
グ ラ ム陽 性 菌 と グ ラム陰 性 菌 は細 菌 分 類 学上 二 大 別 さ
た 生 合 成 系 が広 く細 菌 種 に存 在 す る こ とが 証 明 され た 。
れ, 細 胞 壁 構 造 を は じめ と しさ ま ざ ま な 点 で異 な っ て い
るが, 前 述 した よ うに リポ蛋 白 質 が Bacillus 属 やStaphylococcu
IV.
属 に 見 いだ され た こ とに よ り, グ ラム陽 性
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菌 に もI, II節
基 質 特 異 性 か ら 見 た リポ 蛋 白 質 の
修 飾 お よ び プ ロセ シ ング
で記 述 した リポ蛋 白質 生 合 成 系 とそ の機
能 面 にお い て 同 じか, あ る い は非 常 に類 似 した反 応 系 が
III節 で述 べ た よ うに, リポ蛋 白質 の修 飾 お よび プ ロ セ
存 在 して い る こ とが 示 唆 され た。 こ の 点 を確 証 す るた め
シ ング反 応 は, グ ラム陽 性, グ ラ ム陰 性 菌 を問 わ ず, 基
に2つ の方 向か ら 検 討 が 加 え られ た 。 そ の 第1は,
質 とな る蛋 白質 に コ ンセ ンサ ス ア ミノ酸 配 列 が 存 在 す る
B.
licheniformis由 来 のペ ニ シ リナ ーゼ が グ ラ ム陽 性 菌 お よ
び 陰 性 菌 中 で, E.coli Braun
リポ蛋 白質 同様, グ ロボ マ
と い う点 で統 一 性 が 見 いだ され た 。 そ こ で筆 者 らは, 基
質 特 異 性 の解 析 を行 な う 目的 で,
B. licheniformis 由来
イ シ ン処 理 に よ り, グ リセ リ ド修 飾 を受 け た 前 駆 体 と し
のペ ニ シ リナ ー ゼ を用 い検 討 を加 えた 。in vitro 部 位 特
て 細 胞 内 に蓄 積 す る か ど うか の 検討 で あ る^<48)>。
ク ロー ン
異 変 異 を行 な い, 修 飾, プ ロセ シ ング の活 性 中 心 で あ る
化 され た B. licheniformis 749/c由
N末 端 よ り27番
来 のペニ シ リナ ーゼ
遺 伝 子 を含 む プ ラ ス ミ ドを, Bacillus subtilis お よびE.
目に 位 置 して い る シ ス テ イ ン残 基 を 中
心 に, 4つ の変 異 ペ ニ シ リナ ーゼ 遺 伝 子 を 持 つ プ ラ ス ミ
coli 両 菌 に形 質 転 換 し, そ れ ぞ れ の菌 を実 験 に供 した 。
ドを 作 製 した 。 正 常お よび これ ら4つ の 変 異 ペ ニ シ リナ
対 数 増殖 期 に あ る 両 菌 を5分
ーゼ の ア ミノ酸 配 列 を表2の 下 段 に , そ れ と 同 時 に,
し, そ の後5分
間 グ ロ ボ マ イ シ ンで処 理
間<35>^S-メ
チ オ ニ ンで標 識 し, ペ ニ シ リナ
ー ゼ 前 駆 体 の 菌 体 内蓄 積 度 合 を 免 疫 抗 体 沈 殿 法
PAGE後
, SDS-
の フル オ ロ グ ラ フ ィ ー で分 析 した 結 果, グ ラ ム
現 在 ま で単 離 され た あ る いは 系 統 的 に作 製 さ れ た 変 異
Braun
リポ蛋 白質 のN末 端 ア ミノ酸 配 列 を 上段 に 示 し
た 。 詳 細 な 遺 伝 子 操 作 に 関 しては, 原 論 文^<50,51)>を
参照 し
陽 性菌 の リポ蛋 白質 生 合 成 系 が 陰 性 菌 同 様 グ ロボ マ イ シ
て い た だ きた い。
ンに よ り阻 害 され, グ リセ リ ド修 飾 を受 け た ペ ニ シ リナ
⊿pen
P2327は,
ペ ニ シ リナ ーゼ 構 造 遺 伝 子 のN末
端
ー ゼ前 駆 体 が 細 胞 内 に 蓄 積 す る こ と, さ ら に グ ラ ム陽 性
よ り23位
菌 で の前 駆 体 の成 熟 体 へ の プ ロセ シ ン グ の速 度 が 陰 性 菌
を, 欠 損 変 異 に よ り取 り除 い た もの であ る。 正 常 ペ ニ シ
の それ に 比 し著 し く遅 い こ とが 明 らか に な った^<48)>。
第2の 方 法 は, E. coli 由 来 の Braun
リポ蛋 白 質 の構
の ア ラ ニ ンか ら27位
リナ ーゼ は 表2の 中 のpenPで
の シ ステ イ ン残 基 まで
示 され, +1位
で表示 さ
れ る シ ステ イ ン残 基 が グ リセ リ ド修 飾 を 受 け た の ち,
造 遺 伝 子 (lpp), をB. subtilis に 形 質 転 換, 発 現 させ, そ
Gly-Cys^<+1>間で プ ロセ ス され, そ の後 シス テ イ ンの遊 離
の生 合 成 に検 討 を 加 え る こ とで あ る。 前 述 した よ うに,
の ア ミノ基 が 脂 肪 酸1モ ル で ア シル 化 さ れ る。 そ の 結
陽 性菌 が 陰 性 菌 と同 様 も しくは 類 似 の生 合 成 系 を 有 して
果, N末 端 構 造 はN-ア
い る な ら, こ の形 質 転 換 され たlppは
あ る。⊿penP2327で
そ れ が 発 現 した後
E. coli で見 い だ され た と 同 様 に 正 し く修 飾 され プ ロセ
シル ジ グ リセ リ ドシ ステ イ ンで
は, こ の27位
消 失 に よ り, 正 常 な 修 飾,
の シス テ イ ン残 基 の
プ ロセ シ ン グは 不 可能 に な
ス され る はず で あ り, ま たプ ロセ シ ン グの速 度 の 遅 い こ
り, ペ ニ シ リナ ーゼ前 駆 体 と して 膜 お よび 細 胞 質 可溶 画
とか ら, リポ蛋 白 質 前駆 体 の 蓄 積 が E. coli の そ れ に 比
分 に 存 在 した 。 ペ ニ シ リナ ーゼ 構 造遺 伝 子 は, シ グナ ル
し容 易 に検 出 され るは ず で あ る。lpp の み を 含 む430bp
配 列 中N末 端 よ り21位
断 片 と Staphylococcus
して い るた め, ⊿penP2327で
由来 の エ リス ロマ イ シ ン耐性 遺
伝 子 プ ロモ ー タ ー 領 域 を 含 む310bp断
お よびE. coli
2326に
46
導 入 され,
に も う1個 シス テ イ ン残 基 を 有
は こ れ が保 存 され て お り,
片 とが, B. subtilis 選 択 的 経 路 と して細 胞 内 に蓄 積 した ペ ニ シ リナ ー ゼ前 駆
で 作 動 す る シ ャ トル ベ ク タ ーPOG
エ リス ロマ イ シ ンプ ロモ ー タ ー下 流
体 中 わ ず か8%が,
こ の21位
の シス テ イ ンで グ リセ リ
ド修 飾 を受 け て い た が, プ ロセ シ ン グは起 きて い な か っ
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細菌 リポ蛋白質 の生合成お よび分泌機構
47表2. リポ蛋白
47
48
蛋
白 質
核 酸
酵 素
No. 1
(1987)
た^<50)>。21位付 近 の ア ミ ノ酸 配 列 を 見 る と Leu-Leu-Phe-
以 上 の実 験 よ り, 変 異 ペ ニ シ リナ ーゼ を 用 いた 基 質 特 異
Ser-Cys
性 と修 飾, プ ロモ シ ン グに 関 して 次 の よ うに ま とめ られ
と な っ て お り, お そ ら く フ ェ ニ ル ア ラ ニ ン 残 基
が 立 体 的 に 障 害 と な り, 修 飾,
プ ロセ シ ン グを 妨 げ て い
る も の と推 定 さ れ る 。
一方
, penPS27
ー ル基
(SH)
が ヒ ドロキ シ ル基
で あ る (表2)。SH基
S27ペ
の シス テ イ ン が
(OH)
のOH基
チオ
に 変 わ った も の
へ の 変 換 に よ り, penP
ニ シ リナ ー ゼ は グ リセ ロ ー ル 転 移 酵 素 の 基 質 と
は な り得 ず,
ま た Gly_<26>-Ser_<27>間
での
プ ロ セ シ ン グ も 認 め ら れ な か っ た。
Asn_<29>とAla_<34>-Ser_<35>の2ヵ
見 い だ さ れ,
る。
i)
は 反 応 中 心 の27位
セ リ ン 残 基 に 変 換 した 変 異 ペ ニ シ リ ナ ー ゼ で あ り,
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Vol. 32
SPase IIに
よ る
そ の か わ り Ala_<28>-
所 で 新 た な プ ロ セ シ ン グが
こ の プ ロ セ ス さ れ た2種
類 の ペ ニ シ リナ ー
リポ蛋 白質 とな るた め の分 子 修 飾 や プ ロセ シ ング
の反 応 に と っ て, シ グナ ル 配 列 同 様 コ ン セ ンサ ス配 列 中
の シ ス テ イ ン残 基 が 決 定 的 役 割 を果 してお り, SH基
OH基
へ の変 換 が グ リセ ロ ー ル転 移 酵 素 活 性 を抑 制 した
(penPS27)。
Braun
の
同様 の 現 象 は Inouye
リポ蛋 白質 の21位
ら に よ り作 製 され た
の シ ス テ イ ンを グ リシ ン残 基
へ 変 換 したlppG21^<55)>(表2) 変 異 蛋 白質 で も見 いだ され
た。⊿penP2327で
の21位
の シ ス テ イ ンのわ ず か な修
飾 は, シ グ ナ ル配 列 中 の適 当 な位 置 に存 在 す る シ ス テ イ
ン残 基 が 潜 在 的 に グ リセ リ ド修 飾 部 位 とな る可 能 性 を示
ゼ は ペ リプ ラ ズ ム に 局 在 して い た^<50)>
(正 常 ペ ニ シ リ ナ ー
唆 して い る。 こ の こ とは表1に 示 した コ ンセ ンサ ス配 列
ゼ は,
が+1位
Braun
リポ 蛋 白 質 同 様 外 膜 に 存 在 す る^<52)>)。
これ
ら の プ ロ セ シ ン グ 部 位 は,
SPase
Iの
反 応 基 質 と して の
プ ロ セ シ ン グ 部 位 と して 一 般 化 さ れ た Ala-X
ざ ま な ア ミ ノ 酸 と な り得 る)
ニ ン残 基 の 重 要 性 が,
(Xは
さま
に 一 致 して い る。 こ の ア ラ
原 核 お よび 真 核 細 胞 全 体 にわ た る
の シ ステ イ ンお よび-3位
のロ イ シ ンを除 き,
他 の部 位 には か な りの ア ミ ノ酸 間 のバ ラ ッキ が 見 い だ
され る こ とか ら も裏 づ け ら れ る。 しか しlpp⊿20は
Leu-Leu-Ala-Cys
とい う 配 列 を 有 し, 今 ま で知 られ て
い る コ ンセ ンサ ス配 列 と比 較 検 討 した 結 果, なん ら問 題
シ グナ ル配 列 プ ロセ シ ング部 位 の 分 析 お よび そ の一 般 化
とな る ア ミノ酸 を含 まな いに もか か わ らず, 修 飾, プ ロ
理 論 か ら 明 ら か に さ れ て い る^<53,54)>。
セ シ ングが 行 なわ れ ず, IPTGに
ま た ⊿penP2327
に お い て,
で はAla_<34>-Ser_<35>)
の 潜 在 的 プ ロセ シ ン グ部 位 が 保 存 され
て い た に も か か わ ら ず,
た こ と か ら,
何 ら プ ロセ シ ングを 認 め なか っ
こ の 欠 損 部 位 に よ り生 じ た 撹 乱 が 蛋 白 質 の
高 次 構 造 に 影 響 を 与 え た か,
あ る い は 第2の
酵素認容部
位 と し て 作 用 し て お り, そ の 破 壊 に よ り プ ロ セ シ ン グ が
抑 制 さ れ た 可 能 性 が あ る。 そ こ で 次 の ス テ ッ プ と し て
pen
PS27
の プ ロ セ シ ン グ 部 位28位
リ ンヘ 変 換 し た も の (penPS27P28)
を 有 した ジ ペ プ チ ド Pro-Aspを,
位 と24位
の 間 に 挿 入 した
の ア ラ ニ ン をプ ロ
と, マ イ ナ ス 電 荷
修
飾, プ ロセ シ ン グに 関 し温 度 感 受 性 で あ り, こ れ に さ ら
に20位
の グ リシ ンを ア ラ ニ ンに 替 え た lppA20I23I
24で は 反 応 が ま った く抑 制 され た 点 を考 慮 す れ ば, ま
だ わ れ わ れ が 知 り得 てい な い 未 知 の要 因 が こ の修 飾, プ
ロセ シ ング に含 まれ てい る こ とが 示 唆 され る (表2)。
ii) penPS27およ
びpenPS27P28で
得 られ た 実 験
結 果 は, 非 リポ蛋 白質 の プ ロセ シ ング に おけ る ア ラ ニ ン
残 基 の重 要 性 を示 す と同 時 に, Ala-Xと
一 般 化 され る プ
ロセ シ ング部 位 間 に も, プ ロセ シ ン グ酵 素 との親 和 性 の
シ グ ナ ル 配 列 中 の23
(penPP23D24S29)
よ り蛋 白質 生 産 に誘 発
をか け る と菌 が 致 死 的 に な る点, またlppI23I24が
Ala_<29>-Ser_<30>
(penPS27
2種
違 いが 存 在 す る こ とを示 す 。 す なわ ち, 推 定 され る プ ロ
類 の 変 異 ペ ニ シ リナ ー ゼ 遺 伝 子 を 持 つ プ ラ ス ミ ドが 作 製
セ シ ング酵 素 (群) に とっ てペ ニ シ リナ ーゼ を基 質 と し
され た
た 際, (1)Ala_<34>-Ser_<35>,
Ala_<28>-Asn_<29>,
(2)
Ala_<25>-Gly_<26>の
(3)
順
Proへ
(表2) ^<51)>。penPS27P28に
お い て は, Alaか
ら
の 変 換 に よ りPro_<28>-Asn_<29>のプ ロ セ シ ン グ は 抑 制
さ れ た が,
Ala_<34>-Ser_<35>は
影 響 を 受 け ずPro_<28>-Asn_<29>のか
で基 質 認 容 部 位 と して の 親 和 性 が あ る。 しか し⊿penP
2327お
よびpenPP23D24S29で
見 た よ うに, 23位 か
わ り に 新 た にAla_<25>-Gly_<26>でプ ロ セ シ ン グ が 起 き て い た 。
ら24位
こ の プ ロ セ ス さ れ た2種
な 蛋 白質 高 次 構 造 の変 化 に よ る物 理 的 障 害 に よ る抑 制 な
の 場 合 と 同 様,
の ペ ニ シ リナ ー ゼ も penPS27
ペ リ プ ラ ズ ム に 局 在 化 して い た 。
一 方 , penPP23D24S29に
お い て は,
のか,
マ イナ ス電 荷
付 近 の撹 乱 に よ る プ ロセ シ ング の抑 制 か, 単 純
あ るい は23-24位
付 近 が2次 的 な 酵 素 の 認 容 部
位 と して 作 用 して い るか ど うか は不 明 で あ る。 よ り多 く
を 有 した ジ ペ プ チ ドの 挿 入 に よ りい か な る プ ロ セ シ ン グ
の さ ま ざ まな 基 質 を 用 い, よ り系統 的 な 変 異 の導 入 が こ
も 生 じ得 ず ペ ニ シ リナ ー ゼ 前 駆 体 と し て 検 出 さ れ,
の 点 を 解 明 す る うえで 必 須 で あ る。
膜,
可 溶 お よ び ペ リ プ ラ ズ ム 画 分 よ り回 収 さ れ た^<51)>。
この 事
実 は⊿penP2327
48
で 見 い だ さ れ た 結 果 と よ く一 致 す る 。
iii)Ala-X
部 位 は 正 常 ペ ニ シ リナ ーゼ で も 保 存 され
て お り, これ ら の部 位 が シ グ ナ ルペ プ チ ダ ー ゼ (SPase
細菌 リポ蛋 白質 の生合成お よび分泌機構
I) で プ ロセ ス さ れ な い理 由 は 次 の よ うに考 え る こ と が
白質 が SPase Iで
で き る。SPase I系 とグ リセ ロー ル転 移 酵 素 SPase II酵
間 (リポ 蛋 白質 に 比 較 して) 細 胞 膜 内 にN末 端 シ グナ ル
素系 とは, 基 質 をめ ぐっ て競 合 状 態 に あ る。penPS27,
配 列 を有 した形 で と どま る必 要 性 が あ る の で あ ろ う。 お
pen
PS27P28の
減 期は 約2.5分
そ ら く, SPase Iの
で あ っ た^<50,51)>。
そ れ に 反 し, 正 常 ペ ニ シ
Iの ペ リプ ラズ ム側 に集 合 して い る部 位 に 活 性 が あ る と
リナ ー ゼ (penP) の前 駆 体 は10秒
体 は約40%ほ
プ ロセ ス され る た め に は, か な り長 い
速 度 論 的 解 析 の結 果 か ら, 前 駆 体 の半
の パ ル ス ラベ ル で も検
出 で き な か っ た。 同様 の 条件 で, Braun
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49
リポ蛋 白質 前 駆
ど認 め られ たが, 続 く15秒
の チ ェイ ス
プ ロセ ス を受 け るた め に は, SPase
仮 定 す る と, 基 質 蛋 白質 の少 な く と も Ala-X
部位が一
時 的 にペ リプ ラズ ム側 に露 出 さ れ る必 要 が あ る。 こ の こ
とが, 速 度 論 的 解 析 を行 な っ た 際 SPase I系 酵 素 に よ る
中消 失 した^<48)>。
この こ とは, グ リセ ロー ル 転 移 SPaseII
プ ロセ スが 遅 い こ と (penPS27, penPS27P28)
系 の反 応 速 度が SPase I系 のそ れ に比 較 す る と極 端 に速
と も関
係 して い る可 能 性 が あ る。Braunリポ
い こ とを示 して い る。 基 質 とな る分 泌 蛋 白質 が 膜 に嵌 入
セ スを 受 け る には 分 子 量 が 小 さす ぎ, 翻 訳 終 了後 た だ ち
して きた 際, そ れ が Leu-Ala-Gly-Cys
蛋 白質 は この プ ロ
あ るい は 類 似 の
に 外 膜 へ 移 動 して しま うか, あ る い は シ グナ ル配 列 と蛋
コ ンセ ンサ ス配 列 を 有 して い る場 合 , た だ ち に グ リセ ロ
ー ル転 移 お よび SPase II系 の酵 素群 が反 応 し
, シ ステ
が ペ リプ ラ ズ ム側 へ 露 出 で き な いた め SPase Iの プ ロセ
イ ン残 基 を 修 飾 しジ グ リセ リ ド修 飾 前 駆 体 を 形 成 しプ ロ
ス を受 け 得 な い 可 能 性 が あ る。 た だ し β-ラ クタ マ ー ゼ
セ スす る。 この一 連 の反 応 に よ り, 基 質 の 高 次構 造 が 大
(ペ リプ ラ ズ ム局 在 蛋 白質 で Braun
白質 そ れ 自身 の親 脂 性 に よ り一 時 的 に で も Ala-X
部位
リポ蛋 白質 に比 較 す
き く変 化 し (グ リセ ロー ル や 脂 肪 酸 な どに よ る立 体 障 害
る とは るか に 親 水 性 であ る) を 融 合 させ る と, 分 子 量 の
で あろ う), SPase I系 の酵 素 が 作 用 で きな くな る。変 異
増 大 に 伴 い シ グナ ル 配 列 部 分 は 細 胞 膜 内 に留 ま るが, そ
に よ りSH基
れ に 引 き続 くポ リペ プチ ド部 分 の親 水 性 に よ り Ala-X
がOH基
に変 化 し グ リセ ロー ル転 移 部 位
が 失 わ れ た と きに の み は じめ て, SPase I酵 素系 が これ
部 位 が 一 時 的 にせ よペ リプ ラ ズ ム側 に露 出 され る で あ ろ
を基 質 と して プ ロセ ス で き る。基 質 で あ る分 泌蛋 白質 が
う。
Leu-Ala-Gly-Cys
な どの コ ンセ ンサ ス配 列 を有 し な い
場 合 は, SPase Iに よっ て適 当 な Ala-X
部 位 に よ りプ ロ
こ の よ うに考 え る と, 同 じN末 端 シ グ ナル 配 列 を持 つ
lpp G21, lpp⊿G20
と lppG21bla, lpp⊿G20bla
の間
セ ス さ れ, そ れ ぞ れ の コ ンパ ー トメ ン トヘ分 子 集 合 す
で見 い だ され た 矛 盾 が解 釈 で き る。 これ はpenP, penP
る。
S27, penPS27P28で
こ の仮 説 に よる と, 表2に 示 した い くつ か の変 異 リポ
蛋 白質 群, lppD14, lppD9, lppA20I23I24, lppG
21, lppDG20は,
い くつ か の Ala-X
得 られ た 仮 説 と も よ く一 致 す る。
な お B. subtilisに お け る ⊿penP2327, penPS27
の 発 現,
プ ロセ ス は, E. coli で得 られ た の と同 様 で あ った (未 発
部 位 を持 ち な が ら
表 デ ー タ)。
SPase I系 酵 素 の プ ロセ ス を 受 け て お らず 矛 盾 す る。 と
こ ろが 同 じ変 異 リポ 蛋 白質N末 端 に β-ラク タマ ーゼ を
含 む267ア
V.
リポ 蛋 白 質 群 の 分 泌 機 構
ミノ酸 ポ リペ プ チ ドを連 結 した 際, リポ蛋 白
質N末 端 部 位 に 存 在 す る Ala_<25>-Cys_<26>部
位 で プ ロセ シ ン
グが 起 き てい る (表2. lppG21bla, lppDG20bla)。
れ ら の 矛 盾 は Inouye
こ
ら も lppG21bla, lppDG20bla
真 核, 原 核 細 胞 に お け る蛋 白質 の膜 透 過 機 構 を シ グナ
ル 仮説 や 他 の モ デ ル 系 で解 説 した 総 説 は数 多 く あ る の
で,
こ れ らに 関 して は,
そ れ を参 照 し て い た だ き た
作 製 の 際 指 摘 して お り, お そ ら く分 泌蛋 白質 の分 子 量 に
い^<57∼60)>。E.にcoli
お け る蛋 白質 の膜 透 過 機 構 の解 明 は主
起 因 す るの で あ ろ う。 リポ蛋 白質 は シ グナ ル配 列 を加 え
に非 リポ分 泌蛋 白質 群 (LamB
て も78ア
Randahl
蛋 白質, MalE
蛋 白質 な
ミノ酸 残 基 で分 子 量10,000そ
こそ こ で あ る。
ど) で行 なわ れ て き て お り, 本 節 で 問題 に した い のは 前
ら^<56)>に
よる と, 分 子量38,500の
マ ル トー ス結
節 ま で に述 べ て きた よ うに, リポ蛋 白質 群 は そ の 生 合 成
合 蛋 白質 の シ グナル 配 列 は, 蛋 白質 合 成 が 行 な わ れ そ の
機 構 が 他 の非 リポ分 泌 蛋 白質 に比 較 して, グ リセ リ ド修
伸 長 途 上 期 の ポ リペ プ チ ドが 分 子 量33,000に
達 す る前
飾, プ ロセ シ ン グ, N-ア シル 化 とい う複 雑 な経 路 を と る
部位 で プ ロセ シ ン グが起 きな い こ とを報 告
た め, は た して 他 の 非 リポ 蛋 白質 群 と 同 じ膜 透 過 機 構 を
してい る。 またI節 で 述 べ た SPase Iの 大 部 分 が ペ リプ
経 るの か, あ るい は 独 自の そ れ を 有 す る のか ど うか とい
ラ ズ ム側 に 存 在 し, ご く一 部N末 端 部 分 が 細胞 膜 に埋 め
う点 で あ る。
に は Ala-X
込 ま れ て い る事 実^<25)>な
どを 総 括 的 に 判 断 す る と, 分 泌 蛋
現 在 ま で蛋 白質 の分 泌 (膜通 過) 機 構 に 変 異 を生 じた
49
50
蛋 白 質
い くつ か の E. coli 変 異 株 が 単 離 され,
核 酸
酵 素
そ れ ぞ れ sec
No. 1
(1987)
質 と接 触 させ 分 泌 を うな が す 作用 を して い る 可 能 性 が
A^<61)>, secB^<62)>, secY^<63)>と
命 名 され て い る。secAとsecY
1984年12月
は細 胞 の生 育 に必 須 で あ り, 温 度 感 受 性 変 異 株 (ts) と
ー に お い て 提 示 され た 。 ま たI節 で 述 べ た よ うに Mal
して単 離 され た。secBは
E-LacZハ
F蛋 白質 (OmpF),
マ ル トー ス結 合 蛋 白質, 外 膜
λファ ー ジ 受 容 体 蛋 白 質 (LamB)
蛋 白質, た とえば リボ ー ス結 合 蛋 白質, アル カ リホ ス フ
ァ ター ゼ に は 影 響 を与 え な か った^<62)>。
そ の後,
の 米 国NIHに
お け る Beckwith
の セ ミナ
イ ブ リ ド蛋 白質 の誘 導 に よ り, 分 泌機 構 の 目
詰 りを 生 じ, 非 リポ蛋 白質 同様 Braun リポ蛋 白質 もそ の
の分 泌蛋 白質 の 膜通 過 を 若 干 抑 え るが, 別 の一 部 の 分 泌
分 泌 阻 害 を 受 け, 菌 体 内に 前 駆 体 を 蓄 積 した^<9)>。
これ らの 実 験 事 実 を 総 合 的 に 判 断 す る と, リポ蛋 白質
この遺 伝
群 も非 リポ蛋 白質 群 も膜 嵌 入 の初 期段 階 に お い て は 共 通
子 が 生 育 に 必 須 で は な く, ま た 影 響 を 受 け た 蛋 白質 で も
の 分 泌 機 構 を 利 用 して い る と い うこ とが い え よ う。 こ の
sec A以
前 の分 泌 の非 常 に 早 い段 階 で,
こ の遺 伝 子 産 物
機 構 は 前 述 した よ うに, secA
お よび secY
変異が分泌
が 関 与 して い る こ とが 明 らか に な った^<64)>。
リポ蛋 白質 群
蛋 白質 全 般 に対 し著 しい影 響 を与 え てい た こ とか ら, 内
の 膜 透 過 に 関 して前 述 した 疑 問 に答 え るた め, これ ら変
膜 蛋 白質 で あ る secY
異 の リポ蛋 白質 群 へ の影 響 を, 非 リポ蛋 白質 を指 標 と し
表 され る可 溶 性 蛋 白質 が, こ の機 構 の中 心 的 役 割 を 果 し
て 検 討 され た 。 リポ蛋 白質 と して は Braun
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Vol. 32
産 物 と secA
(お よびsecB)
に代
リポ蛋 白 質
て い る の で あ ろ う。 リポ蛋 白質 群, 非 リポ蛋 白質 群 の分
と B. licheniformis ペ ニ シ リナ ーゼ が, 非 リポ蛋 白質 と
岐 が 生 じる の は こ の初 期 嵌 入 段 階 終 了 後 で あ り, IV節 で
しては 外 膜 蛋 白質A
見 て きた とお り Leu-Ala-Gly-Gys
よび secY
はtsで
(OmpA)
が 用 い られ た 。secAお
あ るた め, 両菌 を30℃
と42℃
で数
の コ ンセ ンサ ス配 列
あ る い はそ れ に類 似 の配 列 を有 す る分 泌 蛋 白質 群 は, グ
時間 処 理 した の ち, 2分 間<35>^S-メ
チ オ ニ ンで パ ル ス標 識
リセ ロー ル修 飾 を受 け る。 こ の こ とは secA, secY
後, 大 過 剰 の非 放 射 性 メチ オ ニ ン存 在 下 で チ ェイ ス実 験
で蓄 積 した Braun
を行 な い, Braun
を受 け て い なか った こ とで裏 づ け られ る。
リポ蛋 白質 と OmpA
討 が加 え られ た 。30℃
た が, 42℃
の 生 合 成 量 に検
培 養 細 胞 で は 見 い だ され な か っ
で数 時 間 細 胞 を処 理 す る と OmpA,
Braun
一 方 , secA
リポ蛋 白質 前 駆 体 が グ リセ ロ ー ル修 飾
や secY
異 (secA: ssa
変異
ts 変 異 に対 す るサ プ レ ッサ ー変
シ リー ズお よび secC, secY: ssy
ズ) や MalE
た^<65)>。
こ の事 実 は, 1984年 の Ito ら に よ っ てsecY株
変 異 に 対 す るサ プ レ ッサ ー変 異 株 (prl シ リー ズ, prlA
得 られ た 結果^<63)>や,
1986年の
Liss ら のsecAで
で
行 なっ
は secY
蛋 白 質 や LamB
シ リー
リポ蛋 白質 が とも に 多量 に前 駆 体 の型 で菌 体 内 に蓄 積 し
蛋 白 質 の シ グナ ル配 列 中 の
と同 じ遺 伝 子 で あ る) が 多 数 単離 され, 上 記 の
た 追試 実験^<66)>の
結 果 とよ く一 致 して い る。 さ らに この蓄
3因 子 以 外 に も多 くの 蛋 白質 が この機 構 に 含 ま れ て い
積 され た Braun
る。 しか し secA 産 物, secY 産 物 の分 泌 の 中 で の 中心 的
リポ蛋 白質 は グ リセ リ ド修 飾 を 受 け て
い な い 前 駆 体 で あ り, OmpA
前 駆 体 とも ど も E. coli 内
膜 に 局 在 して い た^<65)>。
役 割 は 広 く認 め られ て お り, 前 述 した リポ蛋 白質, 非 リ
ポ蛋 白質群 の 分 泌 機 構 初 期段 階 の共 有 性 は変 わ らな い で
正 常 な ペ ニ シ リナ ーゼ遺 伝 子 を 保 有 す る プ ラ ス ミ ドを
あ ろ う。 この 内 膜 嵌 入 の初 期段 階 に 比 して リポ 蛋 白質,
これ ら両 菌 に 形 質 転 換 し, 高 温 処 理 に よ る影 響 を 検 討 し
非 リポ蛋 白質 を問 わ ず, プ ロセ ス後 の 内 膜 か ら外 膜 へ の
た ところ, Braun
分 子 集 合 す な わ ち 分 泌 の後 期 段 階 は あ ま りよ くわ か って
リポ蛋 白質 同 様 ペ ニ シ リナ ーゼ 前 駆 体
の 蓄 積 が 認 め られ た (未 発 表 デ ー タ)。secB
い て は, 少 量 の OmpA
変異株にお
前 駆 体 は 蓄 積 した が, Braun
リ
ポ蛋 白質 前 駆 体 は 蓄 積 しなか った^<65)>。
最 近 の研 究 に よ る と, secY
い な い。
ペ リプ ラ ズ ム局 在 蛋 白質 の分 泌 後 期段 階 に 関 しては,
IV節 のPenPS27, penPS27P28
産 物 は 膜 蛋 白質 で 内膜 内
SPase Iに
で の 実験 事 実 か ら
よ る シ グナ ル 配 列 の除 去 が 重 要 な 役 割 を 担 っ
に 埋 め 込 まれ てお り^<67)>,
真 核 細 胞 粗 小 胞 体 膜 に存 在 して
て い る こ とは容 易 に推 定 で き る。 蛋 白質 が と くに 強 い 親
い る分 泌 蛋 白質 受 容 体 で あ る ドッキ ング蛋 白質 に匹 敵 す
脂 性 の官 能 基 (た とえ ばN-ア
る も の と考 え られ て い る。 前 述 した よ うに secB
産物 は
イ ンや 変 異 に よる プ ロセ シ ング阻 害 に よ る残 留 シ グ ナ ル
産物 よ りも分泌 過程 の 前段 階 で 影 響 し, secA 産 物
配 列 な ど) を 含 ん で い な い場 合, 親 脂 性 の シ グ ナ ル配 列
secA
シ ル ジ グ リセ リ ドシ ス テ
産
が プ ロセ ス さ れ蛋 白質 か ら取 り除 かれ る こ とに よ り, 蛋
物 が (一部 の分 泌 蛋 白質 に と って は secB 産 物 と と も
白質 それ 自身 の親 水性 に よ り脂 質 二 重 膜 で あ る 内膜 に 留
は可 溶 性 蛋 白質 で あ るた め, E. coli にお い て は secA
に) 真 核 細胞 に お け る SRP
の よ うに ペ プ チ ド伸 長期 の
ま る こ とが で きず, 水 溶 性 の ペ リプ ラズ ムヘ 必 然 的 に分
シ グナ ル 配 列 を認 識 し, リボ ソ ー ム複 合 体 を secY 蛋 白
子 集 合 す る。一 方, 同 じ蛋 白質 で あ りな が ら, 正 常 ペ ニ
50
細菌 リポ蛋白質の生合成 お よび分泌機構
シ リナ ー ゼ は27位
51
の シ ス テ イ ン残 基 ゆ えN末 端
に 強 力 な 親 脂 性 のN-ア
シル ジ グ リセ リ ドシ ス テ
イ ン基 を持 ち, 外 膜 に局 在 す る^<52)>。
表2に 示 したlppD14変
グ ナ ル配 列 中14位
異 リポ蛋 白質 は,
シ
の グ リシ ンが ア ス パ ラ ギ ン酸
に 変 化 し, マ イ ナ ス電 荷 を得 る こ とに よ り, 修 飾,
プ ロセ シ ン グが 抑 え られ,
て 存 在 し, そ の60%が
リポ蛋 白質 前 駆 体 と し
外 膜 に移 行 して いた^<68)>。
外 膜 と内 膜 の 間 に は 水溶 性 の ペ リ プ ラ ズ ムが存 在
し, シ グナ ル配 列 を 持 った 変 異 リポ蛋 白質lppD
14, 正 常 リポ蛋 白質 お よび ペ ニ シ リナ ーゼ は 内膜
中 で修 飾 プ ロセ スを 受 け, そ のN末 端 に 非 常 に親
脂 性 の基 を 有 して お り, これ らが い か に して ペ リ
プ ラ ズ ムを 横 断 す る のか, 親 脂 性 の内 膜 に 在 る こ
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れ ら親 脂 性 基 を持 った 蛋 白質 が いか に して外 膜 へ
分 子 集 合 す る のか, これ らは大 き な疑 問 で あ り,
蛋 白質前駆 体
現 在 ま だ未 解 決 で あ る。 しか しなが ら ミ トコ ン ド
図4.
リア で見 い だ され る よ うな 内膜 と外 膜 の融 合 部 位
がE. coli
に お い て も報 告 され, 発 見 者 に ち なみ Bayer
の 結合 部位 と称 さ れ て い る。 こ の Bayer
の結合部位を
想 定す る と, 内膜 で修 飾 ・プ ロセ ス を受 け, 親 脂 性 の官
能 基 で あ るN-ア
シ ル ジ グ リセ リ ドシス テ イ ン残 基 や 未
切 断 の親 脂 性 シ グナ ル配 列 に よ り蛋 白 質 が膜 に保 持 さ れ
た 状 態 で Bayer
お わ りに
蛋 白 質 の 分 泌 機 構
以 上 リポ蛋 白質 群 の 生 合 成 系 お よび そ の分
泌 機構 な どを 中 心 に 話 を 進 め て きた が, これ ら を模 式 図
と して 図4に 示 した 。 伸 長 期 の ポ リペ プ チ ドは, secY,
se cA
(お よび secB)
産物 に よ って 形 成 され る分 泌機 構
に よ りシ グ ナル 配 列 が 認 識 され, 細 胞 質 膜 に 嵌 入 して 行
の 結 合 部 位 を 通 過 す る こ とで外 膜 へ 分
く。 こ こ まで の段 階 は分 泌 初 期 段 階 で あ り, シ グナ ル 配
子 集 合 す る と解 釈 で き, 前 述 した 矛 盾 を解 決す る こ とが
列 を 有 す るす べ て の分 泌 蛋 白質 に とっ て共 通 で あろ う。
で き る であ ろ う。
この後 た だ ち に リポ蛋 白質 群, 非 リポ蛋 白質 群 の 間 で分
最 近, Inouye
岐 が 生 じる。 内 膜 に嵌 入 した 分 泌 蛋 白質 が, シ グナ ル 配
らや Mizushima
新 しい リポ蛋 白質 の1つ
らに よ り見 い だ され た
リポ蛋 白質-28の 全DNA塩
基
配 列 が 決 定 され, ア ミノ酸 配 列 が 推 定 され た^<69)>。
リポ蛋
白 質-28は
内 膜 蛋 白質 で あ り, 成 熟蛋 白質N末 端 シス テ
イ ン よ り42位 か ら49位
まで と, 81位 か ら95位
までの
2ヵ 所 に, そ の ア ミノ酸 組 成 か らみ て 非 常 に 親 脂 性 の 部
列 の 適 当 な部 位 に Leu-Ala-Gly-Cys
あるいは類似 の コ
ンセ ンサ ス ア ミノ酸 配 列 を有 して い る場 合,
た だ ち に
リポ蛋 白質 修 飾 酵 素 群 に よ り グ リセ リ ド修 飾,
SPase IIに よ る シ グナ ル 配 列 の切 断 とN-ア
そ の後
シル 化 が 起
き, 成 熟 蛋 白質 とな り外 膜 へ 分 子 集 合 す る。 一 方, 嵌 入 し
位 を含 み, この 部 分 で 内 膜 に 保 持 され, 一 部 は 細胞 質 内
た 分 泌 蛋 白質 が Leu-Ala-Gly-Cys
に露 出 し, また そ のN末 端N-ア
シ ル ジ グ リセ リ ドシ ス
を 有 して い な い場 合 は, そ の ま ま蛋 白質 合 成 が 続 き, シ
の コ ンセ ンサ ス配 列
テ イ ン部 分 は外 膜 に嵌 入 して い る こ とが 推 定 さ れ て い
グ ナ ル配 列 を持 った 状 態 で, あ る程 度 の大 き さを 有 す る
る^<69)>。
内膜 外 膜 間 に 結 合 部 位 が な く水 溶 性 ペ リプ ラ ズ ム
ま で合 成 途 中 の ポ リペ プ チ ドが 内 膜 中 に存 在 し, そ の後
が 存 在 して い る と, こ の リポ蛋 白質-28の
Ala-X
構造体を理解
部 位 で SPase Iに
よ り認 識 され,
シ グナ ル 配 列
の結 合 部 位 を想 定
が 切 断 され る。 そ の後 これ らの蛋 白質 は, ペ リプ ラ ズ ム
す る と, 修 飾 ・プ ロセ ス を受 け たN末 端 部 位 が こ の結 合
部 位 を経 由 して外 膜 に達 し, 一 方, 親 脂 性 の部 位 は そ の
あ る い は外 膜 へ分 子 集 合 す る。
一方
, Braun リポ蛋 白質 の よ うな小 さ な分 子 量 を有 す
ま ま 内膜 に留 ま る こ とに よ り何 ら 矛 盾 な くこ の現 象 を解
る も の は, 変 異 な どに よ り リポ蛋 白質 と して の修 飾, プ
す るの に非 常 な 困難 を伴 うが, Bayer
釈 す る こ とが で き る。
ロセ ス を受 け な い場 合, SPase Iの プ ロセ スを 受 け ず に
未 切 断 シ グナ ル配 列 の親 脂 性 に よ り二 重 膜 に保 持 され つ
つ (おそ ら く Bayer
の結 合 部 位 を経 て) 外 膜 へ 移 行 す る
51
52
蛋 白 質
(lppD14)。
一 方,
核 酸
酵 素
こ う した 変 異 蛋 白質 が 比較 的 大 きな
分 子 量 を有 す る場 合, 翻 訳 終 了 ま で Braun
Vol. 32
14)
リポ蛋 白質
在 化 す る (penPS27, penPS27P28, lppG21bla,
びlppDG20bla)。い
およ
16)
17)
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22•z
(文献番号を太字にしたものは特に重要な文献であることを示す)
B.:
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9922-9925
1163-1168
Loranger,
Letters,
研 究者の方々は, 各論文 に連名にな ってお り, その方々にも同
時に謝意を表す る。最後に本稿 の本誌へ の掲載 の機会 を与 えて
852-862
P.
258,
Yamagata,
Dev,
C.,
152,
M.,
Chem.,
Loranger,
Blobel,
257,
(1984)
Tokunaga,
げ る。われわれ とともに仕事を し, 協 力 して くれた 方々や 協同
1•z
Wolfe,
Chem.,
Ippolite,
Ray,
B. A.,
21)
献
H.,
Chem.,
ろ う。
文
J. M.,
Biol.
Bacteriol.,
FEBS
い くつ も の切 断面 の積 み重 な りの 上 に 成 り立 つ も ので あ
くれた北海道大学医学部 の牧 田章教授 に感謝 の意 を表す る。
Loranger,
J.
Yamagata,
ま た別の 像 が生 じて く るで あ ろ う。 真 実 の 姿 は そ う した
われわれ にこれ らの仕事 を行 な う場 を提供 し, 論議 し指導 し
て くれた米 国国立 防衛医科大学 の Henry Wu 教 授に感謝を捧
C.:
Biol.
ち見 た 分 泌 蛋 白質 の分 泌 機 構 で あ る。 筆 者 ら は, リポ蛋
見 て きた 。 異 な った ナ イ フで 別 の 切 断 面 を 切 った と きに
M.,
H.
11114-11120
くつ か の仮 説 を導 入 し リポ蛋 白質
白質 を1つ の 切 断 面 と考 え, 膜 蛋 白質 の生 合 成, 分 泌 を
(1987)
(1982)
15)
群 か ら のみ 検 討 した 点 に お い て議 論 が 粗 く, また 偏 向 し
て い る との批 判 は 免 れ 得 な いが, 以 上 が リポ蛋 白質 群 か
1
Tokunaga,
Wu,
に比 較 して時 間が かか り, そ の間 に SPase Iに よ りAlaX 部 位 で シ グナ ル 配 列 の切 断 が 起 き, ペ リプ ラズ ム に 局
No.
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