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Ettienne Reinecke Dimension Data CTO

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Ettienne Reinecke Dimension Data CTO
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トップインタビュー
Ettienne Reinecke
Dimension Data CTO
戦略は至極シンプル.
お客さまが何を求め,市場が
どう変化しているかを十二分
に把握することである
1 9 8 3 年 に南 アフリカに設 立 された
Dimension Data社.ネットワークを中心と
した総合的な ITソリューション・サービスプロ
バイダとして,ワールドワイドにビジネスを展開.
2010年にNTTと手を結び,さらに高いパ
フォーマンスを追求しています.CTO(最高技
◆PROFILE:1991年Dimension Data入社,1998年CTOに就
任.1998年から2002年には Board of Dimension Data
Holdings( 取 締 役 会 ) メ ン バ ー . 2011年 に は Cloud
Business Unitの創設を主導.現在CTO/Group Executive
(執行役員)としてグループの新技術面を担当するとともに
ソリューション戦略をリード.また,NTTグループとの共
同開発プロジェクトの最高責任者も兼務.
術責任者)の Ettienne Reinecke氏に同社
の気質,変動する市場においての成長戦略,
今後の抱負を伺いました.
階の課題は何かをきちんと把握して,それに合わせたかた
至極シンプルでありながら,効果の高い戦略
を追求
ちで私たちのビジネスをどのように展開するかに重点を置
いてきました.
この10年あまりでビジネス環境は非常に大きく変化し
◆Dimension Data社のこれまでの戦略について教えてく
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ています.ICT業界は成熟し,お客さまはさらに新しいビ
ださい.
ジネスモデルを求めていますし,マクロ経済の動き,技術
私たちは,ターゲットマーケットを設定し,クライアン
革新,ビジネスの変化が融合し,私たちが挑んでいる市
トと非常に密にコミュニケーションをとりながら前進して
場や戦略に影響を与え続けています.私たち自身もこう
きました.クライアントのビジネスを十分に理解し,現段
した動きに合わせて変化することが重要であると考え,こ
NTT技術ジャーナル 2012.9
の動きをにらみながら常に進化しています.
繰り返しになりますが,お客さまのご要望におこたえす
るのが私たちの使命であり,最大のバリューをもたらすよ
う努力してきた結果,顧客満足度についても,ガートナー
社のマジック・クアドラントのように定評のあるリサーチ
において,高い評価をいただきました.
◆自らが提案するのではなく,お客さまが必要としている
ものを提供するという姿勢はどんな発想のもとに成り
立っているのでしょうか.
非常にシンプルでありながら,非常に効果のある戦略で
す.私たちのお客さまは,金融機関をはじめ,非常に多
め,テクノロジ・インテグレータとしてさまざまな新しい
岐にわたった業務内容やビジネスモデルをお持ちですが,
技術を収集,特定し,お客さまのニーズを把握し組み合
一貫して,いずれもコストについては高い関心を寄せてい
わせて提案するという段階を経て,システム・インテグ
ます.優れたICTを使って,マーケットに即したビジネス
レータへと成長しました.日々進化するICTを把握,精査
を展開したい,コストは明示的にコントロールしたいとい
し最適なシステムを包括的に提供していくのがシステム・
うのが共通の考えともいえます.高い技術力と投資コス
インテグレータです.さらに昨今では,サービスを中心と
トの削減.この2つはキーとなる要件です.だからこそ,
したビジネスモデルに着目してお客さまに提案していま
お客さまが何を求め,何を重要視しているかを把握できて
す.いずれのお客さまも特に人材,スキルの不足は著しく,
いなければ,お客さまの考えに見合う,解となるような
コスト・コントロールには厳しい要求がなされています.
ソリューションの提供は難しい.この2つのキーがマッチ
いうまでもなく,ワールドワイド,マクロ経済の状況をか
したとき,シンクロしたときに素晴らしいビジネスが展開
んがみても,さまざまなプレッシャーがお客さまにも私た
できると考えています.
ちにもあるということはお分かりと思います.こうした状
私たちが提供したいのは,お客さまがビジネスを遂行す
況下であっても,お客さまの状況を把握し,どんなサービ
るうえで,今まで経験したことのないようなソリューショ
スを提供すれば良いのかを考え,提供し続けることが息の
ンです.それを実感として得ていただきたいという考えが
長いビジネスを保つ秘訣ともいえますね.
根底にあります.この思考が,非常にシンプルでありなが
◆お客さまとのリレーションシップの中でどんなことに気
ら確実に効果を発揮しているので,お客さま方との長期
付かれましたか.
にわたる友好関係を生み出しています.
ご存じのとおり,私たちは南アフリカの企業として出発
しましたので,最初に手掛けたのは新興市場でした.こう
本物のリレーションシップは長く続く
いう市場では,まずはインフラづくりから取り掛からねば
なりません.リソースがない中でどうインフラを構築して
◆長期的な関係を築くというのは,息の長いビジネスを展
いくか,四苦八苦している事例を数多く目の当たりにし
開するのには大切なことなのですね.
てきました.時代は進んでグローバル化を迎え,私たちも
私たちの30年あまりのビジネス上の足跡を振り返ってみ
それに伴いビジネスをグローバル展開していきました.と
ましょう.私たちは非常に小規模なコンサルタント会社と
いうよりも,私たちのお客さま方がグローバル化を強いら
して出発しました.お客さまも,当時は ITを使うビジネ
れる時代に突入し,その変化に対応するためには私たちも
スの黎明期だという認識はおありだったのでしょうけれ
変化し,何を提供していくべきかを把握しなければなりま
ど,どう理解し,活用したら良いかを考えあぐねていた時
せんでした.グローバル化とは,そもそも何を指すのか.
代ともいえます.こうしたITを利活用したいがどうしたら
そこからどんな教訓を得られるのか,今後はどんな展望を
良いか分からないお客さまにご提案をするというかたちの
持って臨むべきなのかを,お客さまに添ってビジネスを展
ビジネスから私たちの歴史が始まりました.そして,さま
開しながら学び続けてきました.もちろん,間違い(選択
ざまなベンダから適切な製品を集めるプロダクト・イン
ミス)も多々繰り返していますが,修正を繰り返し,そ
テグレータとして,お客さまのご要望に合わせて提案を始
れをも教訓にして今日に至っています.要するに,技術だ
NTT技術ジャーナル 2012.9
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けを知っているのではなく実際のビジネスを知り,お客さ
なして生活を豊かにしようと努めています.可能であれば,
まとともに現場で動いていくというスタンスで,参画する
オフィスに赴かずに,ホームオフィス,つまり家で仕事を
ことにより非常に多くのソリューションを携えることがで
して発信するスタイルも利用しています.さらに健康管理,
きたと実感しています.市場,産業というのはある1つの
体力づくりにも気を配っています.今回の日本滞在中も,
分岐点に立たされることがままあります.この分岐点で革
皇居の周りをジョギングしたりしてコンディションを整え
新的な出来事が起きるのは常であり,これに合わせていわ
ようと努力しています.
ゆる「イノベーション」が創造されるのも目の当たりにし
多くの方がこうしたバランスのとれた生活ができると良
てきました.そのたびに市場や産業は大きな変貌を遂げて
いと思いますが,忘れないでいただきたいことがあります.
いくわけですが,まさに今その時代を迎えていると思って
技術の進歩によって遠隔地とのコミュニケーションは確か
います.例えばクラウドサービス.これまでと,利活用の
に容易にとれるようになりました.しかし,根底には直接
方法やボリュームは大きく変化していますし,移動系端末
的なコミュニケーションが築けているという信頼関係のも
の爆発的な躍進も顕著ですね.これは大きな波である,
とに,遠隔地とのコミュニケーションが成り立っていると
変貌期であるといえるでしょう.
いうことです.同僚,社員にもこれは常々話していること
ですが,コミュニケーションを図るのは人間どうし,それ
ICTはツールであって,主役ではない.あくま
でも人にフォーカスすべき
を助ける道具がICTであるということ.当たり前のようで
すが,誤解をしてしまいがちな部分です.
◆社内ではその考え方が浸透していますか.
◆確かにこうした技術の発展によって市場はボーダレスと
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ありとあらゆるテクノロジを駆使してコミュニケーショ
なり発展のスピードが加速している中で,私たちはどの
ンを図っています.当社はグローバル展開をしているので,
ようにICTを利用していけばよいのでしょうか.
世界中どこにいても,ICTで各オフィスをつないでコンタ
現代人は仕事のストレスなどを感じながら,日々が目
クトをとれるようにしています.私は自宅にもこうした設
まぐるしく変わる環境を生き抜いていくためにワークライ
備を整えておりますので,必要とあらばいつでもコミュニ
フバランスをいかに図るかを強いられています.こうした
ケーションをとることが可能です.一方で,直接顔を合わ
状況下では,自分の環境だけに目を向けるのではなく,
せてのミーティングの重要性も十分に理解しておりますか
世の中がどのように変動しているのかにも着目し,その波
ら,四半期に一度でも顔を合わせてのミーティングを開い
にいかに乗るかも,見極めていかなくてはなりません.非
ています.仕事上のコミュニケーションにICTを活用する
常に厳しい挑戦を強いられていると思います.しかし,一
ことはもちろんなのですが,私は,社内の同僚や仕事を離
方でこの波は技術の革新も促していますから,新しい技
れた社外の友人などとも,より親しい関係づくりができる
術をいかに活用するかというのも,ストレスフルな厳しい
ようにICTを利用してほしいと奨励しています.趣 味や文
環境を生き抜く,1つの方法だと思います.身近になり
化的な活動もともに楽しむことによって,他者を認め合う
つつあるクラウド,タブ
ことができよりよい人間関係を築くことができます.これ
レット,スマートフォン
らは良いチームワークを生み出すことには必要なのだと考
などを使いこなすのが具
えています.
体的な例として挙げられ
◆文化の違いなどについて理解を深めるというお話があり
ますね.合わせて,技術
ましたが,御社とNTTでは成り立ちも文化も大きく違い
だけではなく,ご自身が
ます.多くのICT関連企業が存在する中でなぜNTTと手
お持 ちの知 恵 を投 入 し
を組もうと思われたのでしょうか.
て直 面 する事 態 に備 え
南アフリカの企業である私たちのDNAともいうべきで
ることも,いうまでもな
しょうか,私たちはカルチャー(文化)を重んじています.
く重要です.私自身に
想像していただければお分かりになるように,アフリカに
とっても,この社会を生
は多様性に富んだ独特の文化があふれています.こうした
き抜くのは大変難しいこ
環境のせいか南アフリカ人は異文化,そして多文化に対
とですが,ICTを使いこ
して鷹揚です.お互いの文化の違いを尊重しているのです.
NTT技術ジャーナル 2012.9
NTTとの交渉の途中でも,文化の違いが障壁になること
はありませんでした.
NTTとの関係について最終的な決定が下されるまでに
3年余りをかけて,お互いの考えを咀嚼することができま
した.これが功を奏したと思います.当時,他社からも
オファーをいただきましたが,これほどじっくりと時間を
かけて理解し合おうという姿勢はありませんでした.
ご存じのとおり,私たちは物理的に何かを創造し提供
していく企業ではありません.お客さまにとって必要な
サービスを提供していく企業です.このことからも分かる
ように,事業の根幹にあるのはサービスを創造する人です.
このサービスを創造する人,つまりスタッフが幸せでない
にお客さまとの関係を強固なものにすることができると確
と充実したサービスの提供は難しいと考えています.この
信しています.これまで私は,クラウドのさらなる発展,
考え方はNTTも同じでした.ゆえに私たちはともに手を結
モビリティ,Dimension Dataのかじ取りの3点に注力し
んだのです.
てきました.最近の世の中の動きをみていると,これまで
◆今後はともに手を結んで何を成し遂げようとなさってい
の経験が生きているのか世の中のニーズの見通しが立つよ
るのでしょうか.
うになってきました.こうした着眼の確かさにも磨きをか
私たちにとっては,これまで持ちえなかったR&Dの能
けていきたいと思っています.
力,通信サービスを携えることができました.私たちの役
(インタビュー:外川智恵/撮影:村岡栄治)
割として,これらNTTの技術を背景として,今まで以上
インタビューを終えて
NTT技術ジャーナル誌上初の外国人トップの登場.取材現場もおのずと国際
的な雰囲気になり, 英 語が飛び交 います.美しいイギリス英 語を話される
Reinecke氏.そんな現場に颯爽と現れてスタッフ全員と握手を交わされました.
通訳者をはじめスタッフ1人ひとりに心配りを忘れないReinecke氏は,3人のお
子さんの父親でもあります.仕事柄出張などが多いため,出張先では,子どもた
ちなどとコミュニケーションを図るためにTV電話機能を利用したり,ドキュメン
トシェアリングなど利用して宿題を手伝う,さらには動画機能を使って「おやす
み」など,挨拶だけでも残されているとか.物理的に離れていてもできるだけ
「父親はそばにいる」という安心感を子どもたちにと話されるReinecke氏のぬく
もりに触れました.現在は,オーストラリアにお住まいとのこと.忙しい合間
を縫って,ランニングとサーフィン,ヨットレースへの参加なども楽しんでいらっしゃいます.「仕事と同じくらい重
点を置いて人生を楽しむべき.楽しむためのスケジュールはきちんとコントロールしたほうが良い」と,アドバイス
してくださいました.
人生を満ち足りたものにしようとすれば,おのずとツール,ICTの使い道が見えてくる,それがReinecke氏の目指
す目標なのだと実感しました.
NTT技術ジャーナル 2012.9
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