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知識創造型企業への変革を促す 次世代ITプラットフォーム

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知識創造型企業への変革を促す 次世代ITプラットフォーム
鍵 は、3つのストレージ仮想化の掛け算にある。
TCOの徹底的な削減。予測不能な変化への柔軟な対応。停止時間の極小化。
ストレージが、こうしたクラウドの課題にどれだけ応えられるかで、変革のインパクトが決まります。
日立のディスクアレイシステム
「Hitachi Virtual Storage Platform」
は、運用管理のフェーズに合わせて
3つのストレージ仮想化を用意。その機能の掛け算により、ストレージが自ら変化に即応。
日立のストレージ管理ソフトウェア
「Hitachi Command Suite 7」
により仮想化環境を
効率的に運用しTCOを削減。クラウドの課題をきわめて高いレベルで 解決します。
さぁ、ビジネスに確かなイノベーションを起こすクラウドを。
TCO:Total Cost of Ownership
機械工業
デザイン賞
5年連続 No.1
日経コンピュータ 2012年 2月 2日号
第14 回パートナー満足度調査
ストレージ部門 1 位
* 出典:IDC Japan,2011年 5月「国内ディスクストレージシステム市場2010年の分析と
2011年∼2015年の予測」
(J11420102) 1996年∼2010年による。
大切な情報を保存し、必要に応じて取り出す。 それは蔵のごとし。
Vol.
テクノロジ ー フォー カ ス
● Cloud on-Rampを活かした
災害復旧と事業継続計画の実現
先進事例
● NHN Japan 株式会社
●国立大学法人北海道大学 情報基盤センター
●中央研究院( Academia Sinica )
●テリティ・データセンター( Teliti Datacentres )
7
特 集
時代のニーズに応える
ストレージ、サーバ、ソフトウェアの
垂直統合ソリューション
Part1
知識創造型企業への変革を促す
次世代ITプラットフォーム
業務の自動化をテーマとしてきた“効率追求型”から、高度な洞察力によって市場に自社だけの付加価値や新たなビジネスモデルを提案して
いく
“知識創造型”への転換が求められている。その背景にあるのが、ビッグデータに代表される情報活用の新たなニーズである。ただし、
その取り組みを実現するには、ITプラットフォームがよりシンプルで全体最適化されていなければならない。
小山健治
効率追求型から知識創造型へ
待ったなしの変革が急がれる
げられるのが、既存システムに内在している“複雑性”であ
既存システムの維持管理に IT 予算全体の 70 %が費やさ
時代において、企業はさまざまな定型業務の効率化を急速
れている。これはよく見る調査結果である。実は、この状
に進めてきた。
況は日本に限った話ではなく、世界中で見られる現象だ。
ただ、これらのシステムのほとんどは、部門ごと、あるい
つまり、世界中の企業が、IT 予算全体の 70 %を占めるコス
は拠点ごとに導入されていった。いわゆる、個別最適のア
トの最適化を重点課題としている。
プローチである。その結果、企業内には多様なベンダーの
運用管理コストが大きくなってしまう背後の 1 つとして挙
ハードウェア、OS 、ミドルウェアなどの異種システムがサイ
2
Hitachi Storage Magazine Vol.7
る。
1990 年 代から 2000 年 代にかけてのオープンシステム
Part1
ロ化した状態で乱立・混在するとい
●「効率追求型」から「知識創造型」へ
う、極めて複雑な運用形態に陥って
今日
しまったのである。
こ のように 複 雑 なシ ス テ ム 環 境
は 、高コスト体 質を招くだけではな
い。経営や事業環境の変化への対応
も難しくする。そのままで巨額のコス
トをかけて維持し続けたとしても、結
知識創造型企業への変革を促す
次世代ITプラットフォーム
IT導入の目的
メインフレーム時代
オープン時代
将来
バックエンドの自動化
フロントエンドの自動化
知識創造・流通
ビジネス拡大のための
知識創造・流通の加速
(データリパーパス、新サービス)
定型業務の効率化
計算処理の自動化
(口座管理、鉄道運行管理など) (財務・管理会計、人事、生産、
調達、在庫、販売)
局は企業競争力の足かせとなってし
まいかねないのだ。
計算パワーをITに期待
業務効率化をITに期待
経営戦略の立案をITに期待
情報技術の洗練性
(ニーズは自明)
顧客の業務理解と
ITとのマッチング
(ニーズは調べると分かる)
情報技術を活用した顧客の
新事業モデル提案力
(ニーズは本質的に不明)
そこで、複雑なシステム環境を解
消するべく、SOA( Service Oriented
Architecture )や仮想化など、さまざ
競争力の源泉
まな取り組 み がされ てきた 。ただ 、
サーバの乱立というサイロ化が解消
スピード、効率追求型の業務
知識創造型の業務
され たとしても、サ ー バ やストレー
ジ、ソフトウェアのベンダーがバラバ
ラであることによるメンテナンスや運用の複雑性という問
題は残っている。
“待ったなし”の変革が急がれ
一方で今日の IT 部門には、
知識創造を支える
ビッグデータへの取り組み
ている。
具体的にどのような IT プラットフォームを目ざすべきかを
多くの企業の IT 戦略はこれまで、業務の自動化をテーマ
論ずる前に、まず、知識創造型企業への転換を目ざす企業
としてきた“効率追求型”にあった。そのため、IT 部門は現
の間で、急速に関心が高まっているビッグデータへの取り
場部門が必要とするシステムの構築に注力してきており、
組みについて紹介しておきたい。
必要とされる業務知識も、現場ニーズを把握する程度がほ
ソーシャル・メディアなどを通じて交わされるクチコミ情
とんどであった。極論すると、言われたことを形にすれば良
報、コールセンターに寄せられた問い合わせ情報、ニュー
く、その点では IT 部門がすべきことは明確だった。
スや株価変動などの社会的な情報、コンシューマーが持ち
ところが、IT 部門に今後求められるのは、経営戦略に積
歩いているモバイル端末から発信された位置情報など、多
極的にかかわることである。それは“効率追求型”から“知
種多様で膨大な非構造化データが世の中では生成されるよ
識創造型”への転換とも言うことができる。
うになった。これを分析することで、これまで把握できてい
もちろん、ビジネスに貢献する IT の重要性については、
なかった事実や傾向を把握し、ビジネスの意思決定に活か
以前から言われ続けてきた。そのため、何を今ごろと思わ
していくというのが、ビッグデータへの取り組みの 1 つだ。
れるかもしれない。ただ、どうだろう。これまで多くの IT 部
また、さらには、企業の製造ラインから社会インフラ(道路、
門が提供してきたシステムは、本当に知識創造型になって
橋梁、電力網、水道など)まで、至るところに設置されたセ
いただろうか。明確ではない現場ニーズに応えるような提
ンサーをはじめ、RFID( Radio Frequency Identification )タ
案をしていただろうか。
グ、スマートフォン、GPS( Global Positioning System )、IC
IT 部門が知識創造型へと変革を成し遂げるには、いつま
カードなど、さまざまなデバイスが自発的に発信する情報
でもシステムの運用管理にコストを割いてはいられない。
(ストリームデータ)に照準を当てたビッグデータの活用も模
今後の IT プラットフォームのあるべき姿をしっかり見定める
索されている。
時期を迎えているのである。
これまで多くの企業は、社内のデータベースなどに蓄積
Hitachi Storage Magazine Vol.7
3
特 集
時代のニーズに応える
ストレージ、サーバ、ソフトウェアの
垂直統合ソリューション
されたデータを分析することで、ビジネスに活かそうとして
調達できるようになったからといって、ビッグデータという
きた。しかし、それだけでは現在のビジネスを取り巻く複雑
名の新たなシステムを、他のシステムと切り離された個別
な環境変化に対応することが難しくなってきた。
最適の考え方で作ろうとしても決してうまくいかない。
世の中の情報から得られる多種多様なイベント(状態の
知識創造型企業におけるデータ分析およびそれに基づい
変 化 )をリア ルタム に分 析し、そこから何らか の“ 勝ちパ
た意思決定(スマート・ディシジョン)は、経営層も管理職も
ターン”を読み解くことができれば、企業は競合他社に対す
る圧倒的な優位性を獲得することが可能となる。
現 場 の 担 当 者も、す べ て 同じデ ータソースを起 点とする
(データの一元性・一貫性)を
“ Single version of the truth ”
もっとも、こうしたビッグデータの考え方そのものは、決
徹底することが大前提となる。要するに、同じ幹(データ)
して新しいものではない。
からそれぞれの立場や役割に適した枝葉(手段)を伸ばす
例えば、気象変動予測や災害予測、遺伝子情報の大規
のである。
模解析、医療・医薬分野の解析などの専門領域を中心に技
経営者はビジネスのビジョンに基づいて戦略を立て、目
術的チャレンジが行われてきた。また、ビジネスの分野で
標を設定する。そして、それを実現するために配分された
も、売上データや顧客の購入履歴などのデータを元に、売
経営資源を管理職である責任者がオペレーションに割り当
れ筋商品を予測したり、リコメンデーションにつなげたりす
て 、各 業 務 の 担 当 者 が実 行 する。この 結 果 はトラン ザク
る分析が行われている。
ションとして ERP( Enterprise Resource Planning )や CRM
ほかにも、これまで気づいていなかった事実や、新たな
( Customer Relationship Management )、SCM( Supply
ビジネスの価値に結び付く知識を見いだしたいという潜在
Chain Management )などのシステムに蓄積されていく。さ
的な欲求はどの企業にもあった。しかし、本当に実のある
らに、これらの生データは人間が知覚できる形の計数へと
成果を得られるかどうかも分からない中で、大きな IT 投資を
加 工され 、最 終 的な評 価 の ため のしきい 値を加えた K P I
することはできないというのが多くの経営者の本音だった。
( Key Performance Indicator )となってフィードバックされ
裏を返せば、ここにきてビッグデータへの関心が急速に
る。これにより経営者は的確な判断を迅速に下し、必要に
高まっているのは、こうしたコスト面のハードルが下がって
応じて戦略変更を行うことが可能となる。
きたからにほかならない。ここ数年のハードウェアコストの
データの一元性・一貫性をベースとしたスマート・ディシ
低下により、数テラバイトどころかペタバイト級の大規模な
ジョンを、上記のようなさまざまなフェーズや業務プロセス
データを一般企業で扱うことも十分に可能なレベルになっ
管理の観点から実行していくことで、環境変化に柔軟に対
てきた。
応する PDCA( Plan-Do-Check-Action )のサイクルを回すこ
さらに、Google が独自に開発し、活用してきたフレーム
とが可能となるのである。
(並列分
ワークをオープンソースで実装した「 Map Reduce 」
そうした中で、もう 1 つ押さえておかなければならない重
(分散ファイルシ
散処理基盤)や「 Hadoop Distributed FS 」
要なポイントが“スピード”だ。スマート・ディシジョンは、そ
ステム)が浸 透し、これまで 数 週 間もかかっていたビッグ
もそも動機にすぎない。何らかの意思決定を行ったならば、
データの分析を 1 時間、あるいは数十分といった短時間で
素早くアクションを起こして前に進まないかぎり、PDCA の
行うことが可能となった。
サイクルを回すことはできないのだ。実際、市場における
コンシューマーの購買行動は短期間で大きく変動するよう
知識創造型企業における
スマート・ディシジョン
になっており、そのスピードにいかに追随し、先手を打って
ビッグデータに関する説明が少々長くなってしまったが、
どんどん情報を発信し、そのクチコミ情報が売れ筋を左右
ここで訴えたいのは、これまでのやり方を踏襲してはならな
するといったことが当たり前のように起こっている。
いくかが多くの企業の重要な経営課題となっている。例え
ば、ソーシャル・メディアなどを通じてコンシューマー自身が
い、ということだ。
スマート・ディシジョンからアクションまでを一貫して実践
ハードウェアやミドルウェアなどの要素技術を低コストで
していくうえで、IT プラットフォームに求められるのは、爆
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Hitachi Storage Magazine Vol.7
Part1
発的に膨らんでいくビッグデータを妥協す
知識創造型企業への変革を促す
次世代ITプラットフォーム
●多様かつ大量な「情報」の集積と活用を一元的・効率的に実現
ることなく蓄積できるスケーラビリティと、
ストレスなく分析できる高速なパフォーマ
ビジネスに必要なあらゆるデータに、その利活用手段と
仮想化/統合化されたITプラットフォームを提供
ンスである。
構築負荷を最小限に抑える
ITプラットフォーム
RFIDデータ
環境センサー
衛星データ
交通状況
株価情報
…
スマート・ディシジョンを支える適材適所
のデータ分 析を実 現し、なおかつ 社 内 組
織の隅々まで展開していくためには何をす
データ収集基盤
べきなのか。また、意思決定の結果を迅速
なアクションに結び付けていくため、業務
プロセスを柔 軟に変 化させる B P M
( Business Process Management )と連動
させるにはどうすればよいのか。
こうした要求に応えるのが、ビジネスに
必要なあらゆるデータに対して、その集積
から利活用に至る手段をエンド・ツー・エン
多様・大量な
「情報」の収集・活用
コンテンツ
管理層
統合
ITインフラ層
ドで提供する、仮想化/統合化された IT プ
ラットフォームである。現実的なアプロー
データ、
コンテンツの
一元的な管理・処理
データ活用基盤(ミドルウェア)
サーバ
統合管理
ストレージ
システム構成、
データ量
などを意識せずに運用
ネットワーク
統合プラットフォーム
チとしては、プライベートクラウドやパブ
リッククラウド、さらにそれらを融合したハ
イブリッドクラウドの環境を活用し、ビッグデータを収集し、
で煩雑な手間を要していた作業からの解放が期待できる。
蓄積、分析できる基盤を構築していくということになる。
いずれにせよ、企業にとってはシステムを構築し、運用
ただ、そこで重要なのが、ハードウェアからミドルウェア
管理することが目的ではない。
(データ活用基盤)、アプリケーションまで多岐にわたる IT
自動車に例えるならば、エンジン、シャーシ、タイヤ、ス
の構成要素を、どのように調達するのかということである。
テアリングなどのパーツを個別に調達して自力で組み立て
結論を言うと、IT の構成要素は個別に調達しないという
るのではなく、キーを挿せばすぐに動かすことのできる完
ことだ。それにより、運用管理の一元性を確保しやすくなる
成車である。基本的には、自動車のパーツを気にしなくて
し、問題発生時の切り分けもしやすくなる。ただし、IT の構
もよい。同様のことを、今後の IT プラットフォームを実現す
成要素を一括で提供できるベンダーというだけでなく、そ
る手段として取り入れていくことが必要ではないだろうか。
れぞれの連携が最適化された形でソリューションを提供で
IT 部門は自動車を調達したら、いかに楽しいドライブにする
きるベンダーであるべきだ。そうでなければ、単に窓口を
かに注力できるのだ。
一本化しただけになり、結局、システムの柔軟性が確保で
もちろん、IT プラットフォームが特定のベンダーにロック
きない可能性が残されるからだ。
インされてしまうのは望ましいことではなく、さまざまな要
また、自力でインテグレーションを行う部分が少ない分、
素技術に関する選択肢はつねに手元に残しておく必要があ
アプリケーションを立ち上げるまでの時間や労力を最小化
る。そうしたオープン性を確保しつつ、インテグレーション
できるのが特長だ。システム構成設計・変更、キャパシティ・
を極力必要としない IT プラットフォームを目ざすことが、知
プランニング、パフォーマンス・チューニングなど、これま
識創造型企業への変革の早道となる。
Hitachi Storage Magazine Vol.7
5
特 集
時代のニーズに応える
ストレージ、サーバ、ソフトウェアの
垂直統合ソリューション
Part2
ストレージ、サーバ、ソフトウェアを統合した
日立の統合プラットフォーム販売推進本部
多くの企業が効率追求型から知識創造型業務へのシフトを進めている中で、ストレージやサーバ、ソフトウェアといった要素技術に分断され
たソリューション提案では、急速に変化する市場ニーズに対応することは難しい。そこで日立は統合プラットフォーム販売推進本部体制を発
足させ、これら事業部門を一体のものとして統合する組織改革に踏み切った。その狙いについて、統合プラットフォーム販売推進本部 本部
長に就任した家近 啓吾氏に伺った。
ストレージ、サーバ、ソフトウェアが
一体となって知識創造基盤を支える
レージ、サーバ、ソフトウェアの販売推進部門を統合し、一
──日立と聞くと、多くの人は高品質、高信頼のモノづくり
──日立としても大きな決断ですね。
を重視したメーカーといったイメージを浮かべると思います。
家近 統合プラットフォーム販売推進本部体制の発足は、そ
家近 実際、伝統的に日立は「良いものを作れば黙っていて
うした日立による日立自身の変 革 への決 意を明らかにし、
も売れる」という技術志向が根強く、不言実行を是とすると
お客さまに広く知っていただくためのメッセージでもあるの
ころがありました。もちろん、こうした日立の“職人かたぎ”
です。
は市場から高く評価されており、ストレージやサーバ、ソフ
昨今、多くの企業にとって IT をいかに活用し、変化に柔
体となってお客さまの知識創造基盤づくりを支えていくこと
を目ざしています。
トウェアの各事業においても、世界トップクラスの技術レベ
軟に対応し、ビジネス拡大を図っていくことが喫緊のテーマ
ルを維持し、強い競争力を発揮する源泉にもなっています。
となっています。ただ、そこでは信頼性の確保やコスト削減
──そうした中で統合プラットフォーム販売推進本部を発足
を大前提としつつ、仮想化やクラウドをはじめ多様なテクノ
させましたが、その背景について教えてください。
ロジーが登場しており、何が自社にとって最も有益なのか、
家近 計算処理の機械化を目的としてバックエンド業務の自
日々悩んでいる現実もあります。
動化を進めたメインフレーム時代や、定型業務のスピード
こうしたお客さまとの間で課題を共有し、最適なソリュー
化と効率化を求めたオープンシステム時代は、ストレージ
ションを提案することで、成長に寄与することが日立の使
やサーバ、ソフトウェアの各事業で競争意識を持ってビジ
命です。そのためにわれわれ自身の組織や業務のあり方を
ネスを推進していけばよかった。
大きく見直し、困った時の相談役として信頼されるパート
ところが、現在のお客さまは効率追求型から知識創造型
ナーとなるべく、日々改革を進めていきます。
への業務シフトを進めようとしています。そこで必要とされ
るのは、ストレージ やサーバなどの個 別の提 案ではなく、
総 合 的 な 提 案 で す 。そうした ニ ー ズ の 変 化 に 、日 立 が
100 %応えられていたかというと、必ずしもイエスとは言い
切れませんでした。同じ日立であっても、ストレージ、サー
組織再編の準備段階を終え
ソリューション提案の強化へ
──統合プラットフォーム販売推進本部体制による日立の
バ、ソフトウェアの各事業部門は独立色が強く、連携が十
構造改革は、大きく2 つのステップで進められているとのこ
分ではなかったのです。
とですが。
こうした各事業部間の“壁”を打ち崩し、日立自身の構造
家近 まず、統合プラットフォーム販売推進本部の発足とと
改革を推進していくため、組織再編・統合の要となったの
もに、2011 年 10 月 1 日よりスタートした準備段階の「ステッ
が、統合プラットフォーム販売推進本部です。ここではスト
プ 0 」では、見積もりプロセスの改善(窓口一本化)やさまざ
6
Hitachi Storage Magazine Vol.7
日立製作所
統合プラットフォーム販売推進本部
本部長
家近 啓吾氏
まな案件へのワンストップ対応(よろず相談窓口)などの取
用環境を提供しなければなりません。
り組みを通じて、プラットフォーム製品の統合的販売戦略を
こうした統合プラットフォームを構築するためには、サー
展開していくための基礎を固めました。これにより、急を要
バ 、ストレージ 、ネットワーク、仮 想 化 技 術 、デ ータベ ー
する案件や大規模な案件にも迅速に対応できるようになり
ス、Web アプリケーションサーバ、さらにそれらを束ねる運
ました。
用管理ミドルウェアなど、多岐にわたる構成要素について
──次のステップはどのような取り組みになりますか。
個別に検討を行うとともに、インテグレーションに対する事
家近 2011 年の 12 月上旬よりスタートした実行段階の「ス
前検証、チューニングなどを実施する必要がありました。
テップ 1 」では、統合事業戦略の立案とともに、ストレージ、
統合プラットフォーム販売推進本部では、その煩雑な作
サーバ、ソフトウェア一体のソリューションに強みを発揮す
業に費やされていた多大な時間やコストからの“解放”を実
る体制づくりを進めています。
現していきます。
統合プラットフォーム販売推進本部を核として、さらに日
──一体ならではのソリューションということですね。
立 の 情 報・通 信システム 社 全 体 、グル ープ 会 社 や パ ート
家近 ソリューションが垂直統合されることによって、あらか
ナー各社との連携強化を図りながら、コストパフォーマンス
じめ検証済みのシステム構成をメニュー化し、すぐに活用
に優れ、なおかつ全体最適化されたソリューションを提供し
可能な状態に設定したうえで提供することができます。さら
ていきます。
に 、 お 客 さ ま の 要 求 に 応 じ て 、ク ラ ウド サ ー ビ ス
「 Harmonious Cloud 」や節電対策、BCP(業務継続計画)な
シナジーをさらに強化し
日立の構造改革を前進させていく
どのオプションも用意しています。お客さまに対して、より
──具体的には、企業のどのような課題を解消することに
──お客さまの反応はいかがですか。
柔軟な選択肢を提供すべく、さまざまなソリューションの準
備を進めています。
なるのでしょうか。
家近 統合プラットフォーム販売推進本部体制はまだ立ち上
家近 例えば、ビッグデータの活用をベースとした知識創造
がったばかりですが、大規模な仮想化統合インフラのリプ
インフラの構築を考えた場合、ソーシャルメディア内のテキ
レースなど、すでにいくつかの案件で成果が現れ始めてい
ストデータやツイート、GPS(全地球測位システム)から発生
ます。
する位置情報、時々刻々と生成される POS データや RFID
専門領域で培った根を大切にしつつ、同時に他の技術分
データ、センサーデータなど、多種多様なデータやコンテ
野との連携を深めながら幹を太くし、枝葉を広げていくこと
ンツを一元的に管理・処理することが必要となります。ま
が、より質の高いソリューション提案のためには必須です。
た、ユーザーに対しては、複雑なシステム構成やデータ量
このシナジーをさらに強化すべく、日立は構造改革を前進
などを意識させることなく運用可能な、使い勝手の良い利
させていきます。
Hitachi Storage Magazine Vol.7
7
特 集
時代のニーズに応える
ストレージ、サーバ、ソフトウェアの
垂直統合ソリューション
Part3
ERP、データベース、仮想サーバと
日立ストレージのダイレクトな連携
ハードウェアとしてのストレージレイヤーのみでは、どれだけ最適化や自動化を追求したとしても、企業が本来求めているニーズとの間にあ
るギャップが生じてしまう場合がある。この課題を解決するため、日立は業界のリーディングカンパーとの協業を通じて、主要プラットフォー
ムとストレージ製品とのダイレクトな連携に取り組んでいる。この新たなストレージ戦略の狙いを、RAIDシステム事業部 事業企画本部の
本部長を務める熊沢清健氏に伺った。
依然として解消されない
ストレージ運用管理の課題
日立の「 Hitachi Virtual Storage Platform 」
(以下、VSP )や
(以下、AMS )をはじ
「 Hitachi Adaptable Modular Storage 」
め、今日の企業向けストレージ製品は、信頼性やパフォー
マンスを向 上しつ つ 、大 容 量 化も進 めて いる。また、F C
( Fibre Channel )や iSCSI などの多様な接続形態への対応、
ボリューム容量仮想化( Hitachi Dynamic Provisioning )や自
動階層化( Hitachi Dynamic Tiering )に代表される仮想化技
術の実装といった機能化も進化を続けている。
しかしながら、ハードウェアとしてのストレージレイヤー
において、どれだけ最適化や自動化を追求したとしても、
企業が本来求めているニーズとの間にあるギャップが生じ
ることがあった。この課題について熊沢氏は、次のように
語る。
「お客さまにとっての『プラットフォーム』とは、ストレージ
や サ ー バ な ど の ハ ード ウ ェ ア 製 品 群 で は な く、 E R P
( Enterprise Resource Planning )やデータベース、あるいは
多種多様なアプリケーションを稼働させる仮想マシンなど
の利用環境を指します。したがって、ストレージ単体の性能
をアピール するだけではなく、これらのプラットフォームを
日立製作所 RAIDシステム事業部
事業企画本部 本部長
熊沢 清健氏
支えるミドルウェアや仮想化ハイパーバイザー、さらにその
コントロールを司る管理体系とのより深いレベルでの直接
的な連携を強化し、システム全体としての最適化や調和を
実現するための仕組みを提供していく必要がでてきました」
8
Hitachi Storage Magazine Vol.7
Part3
ERP、データベース、仮想サーバと
日立ストレージのダイレクトな連携
アライアンスに基づいた
エンジニアード・システムの提供
ムのインテグレーションや運用管理の複雑な手間に煩わさ
現在、ERP やデータベースといったプラットフォームとス
ルに活用することが可能となります」
(熊沢氏)
れることなく、日立のストレージ製品が持っている高信頼性
や高パフォーマンス、先進機能のポテンシャルを容易にフ
(Storage Management
トレージ の 連 携には、「 S M I - S 」
Initiative - Specification )という業界標準のストレージ管理
インタフェースが一般的に用いられている。ERP やデータ
ベースから見れば、SMI-S インタフェースを介することによ
SAP® ERPやVMware vSphere™との
連携ソリューションの開発が進む
り、ベンダーごとの差異を吸収し、マルチベンダー環境によ
SAP ® ERP との連携に関しては、すでに実務的な動きが
るストレージのインターオペラビリティ
(相互運用性)を担保
始まっている。日立は SAP AG 社との間で 1994 年に日本国
できるというわけだ。
内でのパートナーシップ契約を締結し、国内の SAP ® 創成期
ただし、業界標準ゆえの課題もある。
から協 業を進 め てきた 。また 、2 0 0 8 年 1 2 月に 締 結した
「 SMI-S の管理体系には、各ストレージが独自に持ってい
「 SAP グローバルサービスパートナー」契約により、ソリュー
る先進技術や固有機能まで、すべてが反映されているわけ
ション面でのグローバル展開を両社で推進してきた。この
ではありません。また、SMI-S の標準的な管理項目につい
協 業 関 係 をさらに 強 化 す るた め 、 2 0 1 1 年 4 月 2 8 日 に
ても、それをストレージ側でどう実装していくのかは、ベン
「 SAP グローバルテクノロジーパートナー」契約を締結した
ダーによって 大きく違って いるのが実 情なので す 」
(熊沢
のである。
氏)
このアライアンスに基づき、両社は「日立 SAP コンピテン
例えて言うなら、分厚いセーターやコートを着込んだ上か
スセンタ」を SAP ® 本社内に開設。日立のサーバやストレー
ら、背中のかゆいところを掻いているようなものだ。これで
ジ製品と SAP ® ERP の稼働検証をはじめ、日立と SAP ® がそ
は本当の意味での、システム全体としての最適化や調和を
れぞれ持つ独自技術の連携ソリューションを共同で開発し
実現することはできない。
ていく計画だ。
そこで日立が踏み出したのが、熊沢氏が語った「 ERP や
また、VMware ®との間でも、仮想サーバの稼働監視を行
データベース、仮想化ハイパーバイザーとストレージを直
うエージェント機能「 JP1/ PFM-Agent for VM 」をはじめ、日
接的に連携させる仕組みを実現し、提供していく」というア
プローチなのである。
立の「 JP1 」と VMware vSphere™ の管理コンソールである
「 vCenter 」を組み合わせたジョブ管理や性能監視、バック
具体的には、SAP ® ERP や Oracle Database 、VMware
アップ管理などの管理体系の連携がすでに実現している。
vSphere™ 、Microsoft ® Hyper-V™などのプラットフォーム
本 誌 6 号 の 新 機 能 紹 介 でも取り上げ たとおり、「 H i t a c h i
が それ ぞ れ 持って い る管 理 体 系と、ネイティブ なインタ
Virtual File Platform 」による vCenter プラグイン機能の提供
フェースを使って接続し、日立のストレージ製品のさまざま
も始まった。こうした実績をベースに、日立のストレージ製
な機 能を連 携させることで 、アプリケーション からミドル
品と VMware vSphere™ の間のより深いレベルでの連携を
ウェア 、ハ ードウェアまで 一 体 化した 最 適 構 成 によるパ
実現すべく、両社の協業が進んでいる。
フォーマンス向上や自動負荷分散、自律運用などを実現。
「 SAP ® ERP ならびに VMware vSphere™を対象とした連
システムを利 用 するユ ー ザ ーに 対 する Q o S( Q u a l i t y o f
携ソリューションについては、2012 年の夏ごろをめどに、
Service )を最大化していくことを目ざすという。
何らかの形で成果を発表したいと考えています。また、さま
「自社 製 品のみに閉じた囲 い 込み型の垂 直 統 合ではな
ざまなシステム環境でボトルネックになりがちなネットワー
く、プラットフォームの各レイヤーにおける業界のリーディ
クについても、主要な機器ベンダーとのアライアンスを推
ングカンパニーとのアライアンスを通じて、全体最適化さ
進し、日立のストレージ製品の管理体系との一体化を実現
れたエンジニアード・システムを構築し、提供していくとい
する連携ソリューションを拡充していきたいと考えていま
うイメージです。これによりお客さまは、ストレージシステ
す」と熊沢氏は、今後の展開に向けた意気込みを語る。
Hitachi Storage Magazine Vol.7
9
Technology Focus
Cloud on-Rampを活かした
災害復旧と事業継続計画の実現
これまでの災害復旧(以下、DR)や事業継続計画(以下、BCP)の取り組みは、1件の取引データの喪失も許
されない基幹系データベースを中心に行われてきた。しかし、現実的にはオフィス文書や設計書など、関連す
るファイルデータまでそろっていなければ業務の再開は難しい。この課題に対して日立が提唱しているのが、
仮想ファイルプラットフォーム「Hitachi Virtual File Platform」
(以下、VFP)ならびにバックアップ/
アーカイブ専用ストレージ「Hitachi Content Platform」
(以下、HCP)によって実現するCloud on-Ramp
の仕組みを活用したDRやBCPの構築である。
基幹系データベースだけが
DRやBCPの対象ではない
(以下、DB )を中心に行われてきました。
で自動 的に行われるため 、ユー ザー 側
しかし、実際の DR や BCP を考えたら、基
で意識する必要はありません。HCP に保
幹 系 DB だけを守っていても不 十 分で、
存されている元データに対して、オンデ
各拠点に分散配置した NAS( Network
ビジネスを支えるオフィス文書や手順書
マンドによる透過アクセスが即座に可能
Attached Storage )やファイルサーバの
などの 周 辺 デ ータまで そろって いない
となります」
(大枝氏)
データを、中央データセンターのコンテ
と、すぐに業務を再開することはできま
加えて日立 では、地 震 や 津 波などの
ンツクラウドに自動集約することにより、
せん。この課題に応えるソリューションと
広 域 災 害 で 被 災した企 業に対して 、優
多 種 多 様 で 膨 大 な 量 に なる 非 構 造 化
して、VFP や HCP が注目されているので
先的に VFP をはじめとする IT /ネットワー
データを一元的に保存・管理し、効率的
す。タワー型モデルの『 VFP50 』や 2U ラッ
ク機器を手配するなど、迅速な復旧支援
な運用や知識創造に向けた活用を実現
ク型 モデ ル の『 V F P 7 0 』といった エント
の体制を整えている。
する。また、各拠点のエンドユーザーに
リーモデルも登場し、比較的小さな拠点
一方、中央データセンター側の HCP に
対しては、データ集約の前後を問わず、
でも VFP を導入しやすくなったことも大き
おけるデータ保護はどうなっているのだ
必要なデータへのシームレスかつ高速な
な契機となっています」
ろうか。
「 HCP は、もともとコンプライアンス対
アクセス環境を提供する。
30分程度の作業時間で
ファイルサービスを再開
アーカイブストレージ であり、装置内で
専 用 ストレ ー ジ「 H i t a c h i C o n t e n t
VFP と HCP によって実現する具体的な
す。マルチバージョンリストア機能によ
(以下、HCP )を通じて日立が
Platform 」
提唱している Cloud on-Ramp(クラウド
DR の方法は、次のとおりである。
り、過去の世代までさかのぼってファイ
まず 、各 拠 点( エッジ 側 )が被 災して
ルを復元できるのもメリットです。また、
環境への入り口)のコンセプトである。
既存の VFP が大きなダメージを負った場
リモートレプリケーション機能により、遠
この仕組みが今、DR や BCP の観点か
合、新たな VFP に入れ替えて設定するだ
隔 地の DR サイトに設 置された HCP との
らも注目され始めている。RAID システム
けで業務を再開することができる。
間でリアルタイムに近いデータ保護をサ
事業部 事業企画本部 製品企画部の部
「 特に V F P 5 0 や V F P 7 0 では、簡 単な
(大枝氏)
ポートしています」
これは、仮想ファイルプラットフォーム
(以下、
「 Hitachi Virtual File Platform 」
VFP )ならびにバックアップ/アーカイブ
応 の た めに 設 計され た バックアップ /
デ ータを自動 的 に 多 重 化して 保 護しま
長を務める大枝 高氏は、次のように話
ウィザード形式の設定支援ツールを提供
先の東日本 大 震 災の経 験を踏まえれ
す。
しており、装 置のリプレースからファイ
ば、東京と大阪、太平洋側と日本海側と
「これまでの DR や BCP の取り組みは、
ル サ ービス の 再 開まで の 作 業 時 間 は 、
いったように地域をまたいで HCP を設置
金融 機関の勘定 系システムに代 表され
10~30 分程度もあれば十分です。HCP
し、電力網や鉄道、道路などの社会イン
る、1 件の取引データ(トランザクション)
から新たに設置された VFP へのデータ移
フラの被災リスクを避けてコンテンツク
の喪失も許されない基幹系データベース
行についても、すべてバックグラウンド
ラウドを運用するのが安心である。
10
Hitachi Storage Magazine Vol.7
なお、HCP の運用元が本番サイトから
てきた基幹システムデータを対象とした
DR サイトに切り替わった場合でも、各拠
「データマネージドサービス」
( RDB など
点で VFP を利用しているユーザーは、そ
高性能・高信頼ブロックストレージ向け
の変更を意識する必要はない。
サービス)に加え、新たに「ファイルスト
「グローバルネームスペースと呼ぶ機
レージ・アーカイブ・マネージドサービス」
能により、VFP からどの HCP に対してもシ
や「ファイルストレージ・システムバック
ング ル イメージ で アクセス できるの で
アップ・マネージドサービス」、「コンテ
す。これは災害時だけに限らず、例えば
ン ツ・マネージドサ ービス 」といった 、
データ量の増大によって HCP をスケール
HCP をベースとした新たなサービスの提
アウトで追加した際も同様です。各拠点
供を 開 始した 。これ により、各 拠 点 の
の VFP ごとに、HCP の物理的な装置の在
ント先を変更するといった操作はまった
VFP を Harmonious Cloud センターに接続
するだけで、簡単に DR や BCP を考慮し
た Cloud on-Ramp のメリットを享受する
く必要ありません」
(大枝氏)
ことができる。
パブリッククラウドを活用した
Cloud on-Rampの導入も可能
センターを国内に複数持っており、その
りかやファイルシステムを意識してマウ
「日立では、堅牢で災害に強いデータ
高信頼の基盤の上に成り立っているのが
た強固なコンテンツクラウドを構築する
Harmonious Cloud センターです。しか
も、利 用 量に 応じた 従 量 課 金 で C l o u d
on-Ramp サービスを利 用 することがで
ためには多額の投資が必要とされ、あら
き、情 報 資 産 管 理に必 要な初 期 投 資や
ゆる企業がその環境を整えられるわけで
もっとも、遠隔地の DR サイトまで備え
そうした事情も踏まえ、日立ではクラ
(大枝氏)
TCO の削減が可能となります」
それぞれの企業にとって最適な DR や
B C P の 構 築 を 可 能 と す る 、多 様 な ソ
ウドソリューション拠点の「 Harmonious
リューションの選択肢が拡充されている
Cloud センタ」を利用し、従来から提供し
というわけだ。
はない。
日立製作所
RAIDシステム事業部
事業企画本部 製品企画部
部長
大枝 高氏
●災害時にはデータを素早く回復
全データの回復を待たずに業務を迅速に再開、
ダウンタイムを削減
●最初にデータの管理情報のみを回復
●アクセスのあったデータをオンデマンドでリストア
●バックグラウンドでデータ移行
30分
データセンター
・・・
HCP
VFP装置リプレース後
ファイルサービス再開まで
災害時で破損
WAN
VFP
VFP
VFP
・・・
拠点・部門A
拠点・部門n
装置リプレース
HCP:Hitachi Content Platform VFP:Hitachi Virtual File Platform
Hitachi Storage Magazine Vol.7
11
T
O
アワード
P
I
C
S
2011年日経優秀製品・サービス賞 最優秀賞 日経産業新聞賞を
「Hitachi Virtual Storage Platform」が受賞
日立のエンタープライズディスクアレ
たる。生産財や消費財のみならず、金融
イシステム「 H i t a c h i V i r t u a l S t o r a g e
やレジャーなどのサービスも対 象とし、
率的かつ一元的に管理できる各種仮想
( VSP )が、日本経済新聞社の
Platform 」
「 2011 年日経優秀製品・サービス賞 最
今 回は日本 経 済 新 聞 社グループ のオン
化機能により、装置の使い勝手や性能を
ラ イン サ ービ ス で あ る「 日 経 テレコン
高 めたほか 、小 規 模にシステムを導 入
優 秀 賞 日経 産 業 新 聞 賞 」を受 賞した。
21 」の日経 4 紙記事データベースと日経
し、必要に応じて処理性能や容量などを
同賞は、日本経済新聞社の主催により、
新 製 品データベースに収 録された新 製
拡張できる「 3D スケーリング構造」を実
毎年 1 回、特に優れた新製品・新サービ
品・新サービス約 2 万点の中から選出さ
現し、導入・運用費の削減にも大きく貢
スを表 彰しており、今 年が 30 周 年にあ
れた。
献したことが評価された。
事例
国内最大規模の学術クラウドシステムで
日立のストレージシステムが稼働
北海道大学の学際大規模情報基盤共
11 月 1 日からサービス提供を開始した。
今 回 の 受 賞では、膨 大なデータを効
ハイエンドモデル「 BS2000 」114 台を演算
ノードに利用し、40 テラフロップスを超え
る総合理論演算性能を実現している。ま
た仮想ファイルプラットフォーム「 Hitachi
同利用・共同研究拠点である北海道大学
北海道大学アカデミッククラウドでは、
Virtual File Platform 」やミッドレンジディ
情 報 基 盤センターにおい て 、国 内 最 大
日立クラウドソリューション「 Harmonious
スクアレイ「 Hitachi Adaptable Modular
規模となる学術クラウドシステム「北海
Cloud」のプライベートクラウドソリューショ
道大学アカデミッククラウド」が完成し、
ンを活用している。そこでは、統合サービ
Storage 2000 シリーズ」をストレージシ
ステムに利 用し、760T バイトの実 効 総
主に全国の大学研究者向けに、2011 年
スプラットフォーム「 B ladeSymphony 」の
容量を備えている。
*本誌18ページに事例記事を掲載しています。
アワード
「2012 Storage Visions Award」を
日立データシステムズが受賞
プル にし、コスト削 減を実 現 するほか、
非構造化データの増加や多様化するア
プリケーションといった IT の課題を解消
日 立 デ ー タシ ス テ ム ズ( H D S )が 、
トレージソリューションを表彰する「 2012
するソリューションとして評価された。な
2012 年 1 月 8∼9 日に米国ラスベガスで
開 催され た「 2 0 1 2 S t o r a g e V i s i o n s
Conference 」において、先見性のあるス
Storage Visions Award 」を受賞した。受
賞 対 象 の ソリュー ション は「 H i t a c h i
( HCP )。IT 環境をシン
Content Platform 」
トによって行われており、今回で 9 年目
新製品
「Hitachi Virtual File Platform」に
中堅・中小企業向けモデルを追加
日立は仮 想ファイルプラットフォーム
「 Hitachi Virtual File Platform 」の中堅・
の入り口 Cloud on-Ramp 」としてデータ
センター内の「 Hitachi Content Platform 」
お、同賞の選出は専門家やジャーナリス
になる。
点である「 Harmonious Cloud センタ」か
ら提供している従量課金の「コンテンツ
マネージドサービス」をあわせて利用す
中 小 企 業 向けモデ ル「 H i t a c h i V i r t u a l
( HCP )に接続し利用することで、コンテ
( 以 下 、V F P 5 0 )を
Fi l e P l a t f o r m 5 0 」
年
月
日から販売を開始した。
2011 9 9
VFP50 は、100 万円を下回る価格と約
10 分間で装置の初期設定を完了できる
ンツクラウド構築での初期導入コストを
入コストをさらに低減できる。データの
低減でき、中堅・中小企業や中小規模シ
保存容量などを必要に応じ柔軟に拡張で
ステムにおけるデータ運 用 の負 担 軽 減
き、システム規模に応じた投資での運用
や効率化を実現する。
が可能となっている。なお、11 月には上
のが特長。同モデルを「クラウド環境へ
また、日立のクラウドサービス提供拠
位機の VFP70 も投入した。
12
Hitachi Storage Magazine Vol.7
ることで、コンテンツクラウドの初期導
体制強化
ショウデンデータシステムズ社の買収により
アフリカ大陸の販売・サービス体制を強化
収 することとした。今 回の買 収により、
金融機関や通信事業者、グローバル企
業など、ショウデン社が有する顧客基盤
日立データシステムズ(以下、HDS )は
れまで日立は、同社を通じてハイエンド
を獲 得し、南アフリカ共 和 国をはじめ、
2011 年 10 月 5 日、南アフリカ共和国の
IT 機器販売・サービス会社であるショウ
ストレージ製品やブレードサーバなどの
大きな成長が見込まれるケニア共和国、
IT 機器を提供してきた。同地域は、金融
ナイジェリア連邦共和国、ガーナ共和国
デンデータシステムズ社(以下、ショウ
や通 信などの分 野を中 心に IT 市 場が急
などのサハラ以南地域での販売・サービ
デン社)の買収を発表した。
速に成長しており、日立はストレージソ
ス体制を強化する。今後は、ハイエンド
南アフリカ共和国をはじめとするアフ
リューション事業のさらなるグローバル
ストレージ製品に加え、ミッドレンジスト
リカ大陸のサハラ以南地域において、こ
展開を推進するため、ショウデン社を買
レージ製品の販売も強化していく。
事例
法政大学が学内クラウドにおいて
日立のボリューム容量仮想化機能を採用
法政大学は、事務基幹システムと教務
ライベートクラウドソリューションを活用し
て いる。システム 基 盤 のサー バ 環 境に
は、日立の統合サービスプラットフォーム
ステムと比較してサーバ やストレージの
「 BladeSymphony 」を用いた。また、スト
システムの基盤である「新情報システム」
機器台数を約 50%削減し、さらに業務処
レージ環 境には、ストレージ 容 量の割り
を刷新し、学内クラウドコンピューティン
理量に応じて ITリソースの動的割り当て
当てを自動で行うボリューム容量仮想化
グ環境を実現する新システム基盤「情報
を可能にした。
システム 2011 」を構築した。同システム
情報システム 2011 では、日立クラウド
では、仮想化技術の適用により、従来シ
ソリューション「 Harmonious Cloud 」のプ
競争力強化
機能を搭載したミッドレンジディスクアレイ
ブルーアーク社の買収により
ビッグデータ対応ソリューションをより高度化
日立データシステムズ(以下、HDS )は
に増加する中、それらを管理するファイ
「 Hitachi Adaptable Modular Storage
2100 」を採用している。
アーク社を買収した。
これにより日立は、ブルーアーク社が
医療・ライフサイエンス分野やエンター
テインメント分野など、幅広い業界に提
2011 年 9 月 8 日、米国のネットワークスト
ルストレージやこれに関連するサービス
供している高信頼・高性能なファイルス
レージ事業会社のブルーアーク
の ニ ー ズ が 増 大して い る。そ の た め 、
トレージ技術および製品、顧客基盤を獲
( BlueArc )を買収したことを発表した。
ファイルストレージ分野における競争力
得した。また、ビッグデ ータ( 大 量デ ー
近年、スマートフォンや情報配信サイト
の向上が、ストレージソリューション事業
タ)に対 する確 実な蓄 積・検 索 、および
をはじめとした、インターネットを利用す
のさらなる拡大には不可欠となっている。
効率的な分析・利活用を行うための、新
る製品・サービスの普及などにより、メー
そこで HDS は、2006 年から戦略的 OEM
たなソリューション の開発をより高度化
ルや画像、映像といった非構造化データ
パートナーとして NAS( Network Attached
するなど、ストレージソリューション事業
を中心に企業が取り扱うデータ量が急激
Storage )製品の供給を受けてきたブルー
のグローバルな競争力を強化していく。
調査結果
「最も働きがいのある会社
ベスト100」に選出
──日立データシステムズ
アワード
日立のストレージが
パートナー満足度調査
5年連続No.1!
米フォーチュン誌が 2012 年度の「最も働きがいのある会社ベス
日経コンピュータ(発行:日経 BP )が 2012 年 2 月 2 日号で発表した
を発表、日立データシステムズ
(以下、HDS )
が 86 位となっ
ト 100 」
「パートナー満足度調査」において、日立がストレージ部門で No.1
た。同調査において HDS がランクインするのは初めてとなる。
に選ばれた。日経コンピュータは、企業の情報システムやネット
今回のランクインについて、同誌は「日本の大手企業の IT 子
ワークに携わる人を読者対象とする IT 総合情報誌。同アワードの
会社であり、
“和(信頼)”
と
“誠(誠実性と公正性)”
を従業員に
表彰は毎年行われており、日立の受賞は 5 年連続となる。
奨励している」と評価している。なお、同調査は、設立 5 年以上
日立は製品の安定性に加え、仮想化などの最新テクノロジーをい
で社員数 1,000 人以上の米国企業を対象としており、1998 年か
ち早く市場に投入しているほか、ワールドワイドで製品を展開して
ら毎年実施されている。
いることもあり、多くのパートナー企業に評価される結果となった。
Hitachi Storage Magazine Vol.7
13
日立ストレージソリューション 製品ラインアップ
ストレージシステム
SANストレージ
Hitachi Adaptable Modular Storage 2000
ボリューム容量の仮想化とMAID(Massive Arrays
of Inactive Disks)機能を全モデルに標準搭載する
エンタープライズストレージ
Hitachi Virtual Storage Platform
AMS2500
ストレージ階層の仮想化およびボリューム容量の仮
想化、
ストレージデバイスの仮想化という3つの先進
の仮想化ソリューションを同時に提供する
AMS2300
AMS2100
AMS2010
ストレージサービス
ストレージ管理ソフトウェア
ミッドレンジストレージ
Hitachi Virtual
Storage Service
AMS:Hitachi Adaptable Modular Storage 2000
ファイルストレージ
Hitachi Virtual File Platform
Hitachi Content Platform
従来のNASを超える仮想ファイルプラットフォーム
クラウド向けバックアップ/
アーカイブストレージ
ゲートウェイモデル
ストレージセットモデル
VFP2010
エントリーモデル
VFP50
VFP500N
VFP300N
VFP100N
Hitachi
Command
Suite 7
VFP2300
VFP2100
VFP70
Hitachi Virtual
File Service
VFP:Hitachi Virtual File Platform
ストレージ管理ソフトウェア Hitachi Command Suite 7
データセンターのストレージリソースを統合管理
運用効率向上により、増え続ける運用コストの削減を支援
ストレージ階層
ビジネス継続
情報の利用価値に合わせた
ストレージリソースの
有効活用を実現
業務データのバックアップと
ディザスタリカバリ運用の
一元化を実現
階層ストレージリソース管理
Hitachi Tiered Storage Manager
ストレージレプリケーション管理
Hitachi Replication Manager
ストレージ統合
データセンター全体のストレージの
構成・性能を統合管理
Hitachi Command Suite 7
とても使い易い
大規模環境でも安心
仮想化にも対応
14
Hitachi Storage Magazine Vol.7
ストレージシステム稼働管理
Hitachi Tuning Manager
ストレージハードウェア管理
Hitachi Device Manager
データ入出力パス管理
Hitachi Dynamic Link Manager Advanced
DATA D R I V E S O U R W O R L D A N D I N F O R M AT I O N I S T H E N E W C U R R E N C Y
新 機 能 紹 介
“大きな蔵”から“小さな蔵”へ ── 容量の小さなストレージにリプレース
■対象ストレージ
Hitachi Virtual File Platform 50
Hitachi Virtual File Platform 70
大切な荷物が増えるのにあわせて建増ししてきた“蔵”。どん
どん増える荷物に、慌てて大きな蔵を建ててしまったことも。
そのため、荷物を探すのも一苦労となってしまった。その大量
の荷物を1つの小さな蔵に収めることができたなら…。
クラウドストレージをより導入しやすく
既存NASよりも小容量のNASへの移行も可能
もっと多くの企業に、より多くのユーザーにクラウドストレージの
VFP50/VFP70 のリリースに合わせ、VFP 自体の機能アップも行わ
メリットを実感してほしい。そこで日立は、コンテンツクラウドへ自
れている。
動的にデータを集約する Cloud on-Ramp(クラウドへの入り口)を担
例えば、オンラインデータ移 行の機 能が強 化された。これは、
う「 Hitachi Virtual File Platform 」
(以下、VFP )のエントリーモデルと
VFP の 1 つのファイルシステム内で既存 NAS からのデータ移行と、
して、タワー型モデル「 VFP50 」と 2U ラック型モデル「 VFP70 」を新
HCP へのマイグレーションを同時に実行可能とするものである。
たにラインアップした。いずれの新モデルも、導入しやすいリーズ
一般に NAS をリプレースする際には、従来と同等もしくはそれ以
ナブルな価格設定がなされている。また、VFP50/VFP70 は次の魅
上の容 量を持ったストレージ装 置が必 要とされた。これに対して
力も備えている。
VFP の場合は、先に述べたボトムレスバックアップフリーの仕組み
例えば、ライセンスキーやネットワーク/時刻などのシステム設
を活かすことで、既存の NAS からデータを取り込むかたわら、重要
定 からネットワ ーク接 続 、コン テン ツクラウド 側 に 設 置 され た
度の低いデータをどんどん HCP 側へ退避(アーカイブ)させていけ
「 Hitachi Content Platform 」
(以下、HCP )への接続、ファイルシス
るわけだ。これにより、従来よりも小容量の VFP をターゲットに NAS
テム、認証などのサービス設定までの一連の作業を、わずか 10 分
統合を実現することも可能となるのである。
程度で完了できる簡単ウィザードが標準で提供されている。
もちろん、HCP にアーカイブされたデータに対しても保存場所を
さらに、従来から VFP が特長としているボトムレスバックアップフ
意識しない透過アクセスが保証されており、エッジ側は利便性を
リー(底なし自動バックアップ)などの機能はしっかり継承。よく使う
まったく損なうことがない。
データのみを手元(エッジ側)に残し、バックアップ やアーカイブ
また、ファイルシステムあたりで保存可能なスナップショットの世
データをコンテンツクラウドに移行することが可能だ。
*
代数が、従来の 124 世代から 378 世代(
VFP50/VFP70 、シングル構
中堅・中小規模の企業、あるいは店舗や営業所などの少人数の
成の場合)に拡張された点にも注目したい。これにより、任意の過
拠点においても、手間をかけずに運用していけるクラウドソリュー
去バージョンを簡単に復元できることから、ファイルデータを思う
ションなのである。
存分に活用できるようになった。
*上位モデルのVFPシリーズでは992世代
●データ移行がとっても簡単
クライアント
VFP
●データ移行機能を内蔵しており、移行用に専用のアプライアンス等を用意する必要なし
●VFP経由で移行元NAS /ファイルサーバのデータに透過アクセス可能
●バックグラウンドでデータ移行
●未移行データもアクセス要求
に従いオンデマンドで移行
事前
従来方式
(専用装置) 準備
LAN
データ移行処理
(業務停止)
移行後
作業
効果
VFP
事前
準備
データ移行中も
業務停止不要
移行後
作業
移行開始作業
移行元NAS /ファイルサーバ
VFP:Hitachi Virtual File Platform
NAS:Network Attached Storage
Hitachi Storage Magazine Vol.7
15
先
進
事
例
NHN Japan株式会社
http://www.nhncorp.jp/
超大作オンラインゲーム「TERA」を支える
日立のハイエンドストレージシステム
インターネットゲームポータルサイト「ハンゲーム」を運営するNHN Japan株式会社 (以下、NHN Japan)は、2011年 8月から正式
サービスを開始した超大作 MMORPG*1「TERA」のインフラ構築プロジェクトにおいて、日立のハイエンドストレージ「Hitachi Virtual
Storage Platform(以下、VSP)」を導入。最大同時接続者数 8万人オーダーにも対応するハイスペックなコントローラ性能と、リソー
ス利用効率の最大化を実現するボリューム容量仮想化機能などにより、世界最高水準のオンラインゲームに適したストレージ基盤を構築し
ました。
同時接続者数5万人を
記録した超大作
*1 Massively Multiplayer Online Role-Playing Game:多人数同時参加型オンラインRPG
されたクローズドベータテスト*2 では約 3
ラに NHN Japan が選定したのが、日立の
万人、8 月のオープンベータテスト*3 では
ハイエンドストレージ VSP です。
同社の個別ゲーム史上最高となる、最大
「 TERA のストレージ選定は、サービス
韓国最大のインターネットサービス会
同時接続者数約 5 万人を記録しました。
インまで、あまり時間がない中で開始さ
社 NHN の日本法人として 2000 年に設立
*2 開発中のベータ版製品に対して、限られた人や団体のみを対
象に試用してもらうテスト
れました。このため、まずは登録者数が
された NHN Japan 。同年スタートしたイン
ターネットゲ ー ム ポ ータル サ イト「 ハン
*3 開発中のベータ版製品を、インターネットなどを通じて広く募集し
た参加希望者に試用してもらうテスト
ゲーム」は、現在登録 ID 数が 4,500 万を
急激に増えてもサービスを止めない“安
定性”
という観点から、市場で定評のある
製 品を選ぶことが重 要だと考えました。
ハイスペックな
ゲーム基盤を支える「VSP」
では、すでに VSP の前機種である Hitachi
の日本向けサービスも開始するなど、国
24 時間 365 日ノンストップのオンライン
盤に採用しており、その性能や拡張性が
超える国内最大級のゲームサイトへと成
長しました 。また 、2 0 0 9 年には 韓 国 で
No.1 のシェアを持つ検索サイト「 NAVER 」
当社の韓国本社である NHN Corporation
Universal Storage Platform Vをゲーム基
内でもインターネットビジネス全般に分野
ゲームでは、ゲーム内でのプレイ記録や
非常に優れているとの評価を伝えてくれ
を広げた事業展開を進めています。
設 定 記 録などのセーブデ ータを個 人 の
ました。これが大きな決め手になったの
そのハンゲームの豊富なラインアップ
PC に保存するのではなく、参加者全員で
です」と IT サービスセンター IT 運営室 シ
に 2011 年 8 月から加わったのが、開発期
共 有しなければなりませ ん 。このため、
ステム運営チームの李 埈成氏はその理
間 4 年、開発費用 30 億円を超える超大作
数 万 人 規 模の参 加 者が予 想されるゲー
由を語ります。
“The Exiled Realm of
「 T E R A 」で す 。
ム基盤には、大規模なデータベースを支
同じく IT サービスセンター IT 運営室
Arborea( 追放された世界アルボレア)”の
えるストレージシステム が必 要となりま
頭文字をタイトルとした同作品は、実写
す。また、急激に増加するユーザー数に
「 TERA はプレイする際にも従来以上にハ
と見まごうばかりの美麗なグラフィックの
応じてシステムを柔軟に拡張できること
イパフォーマンスな PC 環境が必要とされ
もと、神話の世界で繰り広げられる臨場
も不可欠な要件といえるでしょう。
る超大型オンラインゲームです。同時接
感あふれる戦闘を、プレイヤーがリアル
こうした圧倒的な信頼性と高負荷運用
続者数も既存ゲームの 3 倍以上に設計さ
タイムに体感できる魅力から、7 月に実施
が求められる「 TERA 」のストレージインフ
れているため、そのデータベース基盤を
シ ス テ ム 運 営 チ ー ム の 李 承 昱 氏 も、
支えるサーバ やストレージにも最高クラ
ス のシ ステム 性 能 が 求 められ て いまし
●グラフィックが美しいTERAのゲーム画面例
た。その点 VSP は、われわれが最大 8 万
人 の 同 時 接 続 時 に 必 要 と 算 定し た
20,000IOPS * 4という要件を SAS( Serial
Attached SCSI)ディスクで実現できるコン
トローラ性能を持っており、高負荷時にも
ボトルネックとなる不安がないことから、
安心して導入できると考えました」と当時
を振り返ります。
Copyright© Bluehole Studio Inc. All rights reserved.
16
Hitachi Storage Magazine Vol.7
*4 Input Output per Secondの略。1秒間で処理できる入出力
データ回数
NHN Japan 株式会社
ITサービスセンター
IT運営室
システム運営チーム
李 承昱氏
NHN Japan 株式会社
ITサービスセンター
IT運営室
システム運営チーム
李 埈成氏
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
エンタープライズビジネス第2本部
メディアサービス営業部
メディアサービス営業第4課
森 康英氏
柔軟な拡張性を支える
ボリューム容量仮想化機能
スクドライブを容易に増設することが可
これらの要 件を取りまとめ、日立から
質向上に役立つと考えています。また、
合にも、システムを停止することなくディ
能になるため、お客さまへのサービス品
NHN Japan へのスムーズな VSP 導入を支
VSP に付属する運用管理ソフトウェアの
援した伊藤忠テクノソリューションズ株式
操作性も、他社製ソフトウェアに比べて
ハ イス ペックなオンラ イゲ ー ム
基盤を支える Hitachi Virtual
Storage Platform
なパートナーシップを組みながら、NHN
会社(以下、伊藤忠テクノソリューション
非常に使いやすくできており、われわれ
Japan さんをはじめとする幅広いお客さ
「今回のストレージに
ズ)の森 康英氏は、
の運用負担軽減に役立っています」と李
まに、高信頼な日立のストレージシステム
は信頼性と可用性、高速性を最高レベル
承昱氏は語ります。
を継 続 的に 提 案して いきた いと思 いま
で兼ね備えていることが必須要件となっ
ていました。その点、お客さまからの事
前 評 価も高く、日本 市 場でも 15 年 連 続
トップシェアを獲得している日立さんの製
す」と笑顔を見せます。
省スペース性と省電力性にも
高い評価
「日
今後の展開について李 埈成氏は、
立のストレージは大型オンラインゲーム
のインフラとして、非常に使いやすく安
品ということで、自信を持ってお勧めでき
7 月 1 日に行われたクローズドベータテ
定性に優れたシステムであることを実感
ました」と語ります。
ストから 8 月 18 日の正式サービス開始を
しました 。T E R A に限らず 、今 後 新 たな
NHN Japan の手によって構築された今
経た現在まで、
「利用者数が急激に推移
ゲームをリリースする際にも、引き続き
回のデータベースシステム基盤は、20TB
した過程でも、ストレージシステムがトラ
の物理ディスクを内蔵した VSPと、Game/
ブルを起こしたことは一度もありません。
VSPをストレージ基盤に採用したいと思い
ます」と期待を寄せます。VSP は、ポート
Log/Common データベースそれぞれの
役割を持つデータベースサーバ 12 台が FC
( Fibre Channel )で SAN( Storage Area
N e t w o r k )接 続 され て い ま す 。また 、
G a m e デ ータベ ースと C o m m o n デ ータ
ベースの情報は ShadowImage によって
スピード、レスポンスともに満足していま
やプロセッサーといった各コンポーネント
す。前評判は本当でした」と李 埈成氏は
の独立性が高く、トータルな処理を担うコ
VSP の信頼性とシステム性能に太鼓判を
ントローラ 2 台の連 結も可 能なため、ス
押します。さらに「当社ではインフラシス
ケールアップ / スケールアウト / スケール
テムの導 入 時 、省スペース性や電 力 使
ディープといった「 3D スケーリング」での
用量も厳 格に算定・評価しています。こ
柔軟な性能・容量拡張が実現可能です。
オンライン業務を継続しながらのバック
の点でも VSP は、これまで当社が導入し
このため、一 般 的なビジネス用途から、
アップ取得が可能となっているほか、VSP
てきた大 型ストレージシステムの中で、
複雑な要件への対応が求められるオンラ
が 備 え る ボリュー ム 容 量 仮 想 化 機 能
最も省スペース性と省電力性に優れたモ
インゲームの世界でも、お客さまのニー
「 Hitachi Dynamic Provisioning 」の適用に
デルとなりました」と李 埈成氏もデータセ
ズに応じた最 適なストレージインフラを
より、各サーバには物理容量の約 1.5 倍
ンターにおけるユーティリティコストの低
構築することができます。
となる仮想ボリュームが割り当てられて
減にも効果が高いことを評価します。
常に斬新で良質なコンテンツとコミュ
います。
こうした NHN Japan からの反響に対し
ニティを提供する PC オンラインゲームや
「オンラインゲームでは会員数や同時
伊藤忠テクノソリューションズの森氏も、
携 帯 電 話 向け サ イトに 加え、検 索 事 業
接続者数がダイナミックに変動するため、
「日立のストレージ製品は、グローバル市
システム拡張の柔軟性が重要なポイント
場でも競合力のある評価の高い製品であ
NAVER など、グループ全体で意欲的な新
規事業の展開を図る NHN Japan 。日立は
になります。今回のシステム構 築では、
りながら、国内生産である安心感と、手
これからも同社の持続的な成長を、スト
ボリューム容量の仮想化機能を使うこと
厚いサポート体制を兼ね備えており、安
レージシステムのさらなる信頼性向上と
で、初期導入時のディスク容量を適正化
心してお客さまに提案できるのがうれし
機能強化によって力強くサポートしていき
できただけでなく、実容量が不足した場
いですね。日立さんとはこれからも密接
ます。
Hitachi Storage Magazine Vol.7
17
先
進
事
例
国立大学法人北海道大学 情報基盤センター
http://www.iic.hokudai.ac.jp/
国内最大規模の学術クラウドを
日立クラウドソリューションで構築
大規模な情報基盤の共同利用・共同研究などの拠点である北海道大学 情報基盤センターは、国内最大規模となる「北海道大学アカデミック
クラウド」を構築し、2011年 11月 1日よりサービスを開始した。同クラウドは、170テラフロップスを超える演算性能を有するスーパー
コンピュータシステムとともに運用されるもので、オンデマンドで利用できる仮想サーバやオンラインストレージなどの利用環境を提供す
る。そのストレージ基盤を支えているのが、日立の仮想ファイルプラットフォーム「Hitachi Virtual File Platform」とミッドレンジディス
クアレイ「Hitachi Adaptable Modular Storage 2000シリーズ」である。
国内最大規模となる
学術クラウドシステム
ドの構築にいたった狙いを次のように語
「 SR16000 モデル M1」により、170 テラフ
る。
ロップスを超える演算性能を実現してい
「これまでも情 報 基 盤センターでは、
る。北海道大学 情報基盤センター 大規
北海道大学は、全国の大学研究者の
汎用コンピュータシステムを統合情報環
模計算システム研究部門 教授の大宮 学
学術用途ならびに研究支援を目的とする
境の中核として位置づけ、ホスティング
氏は、この基盤によって提供されるサー
「北海道大学アカデミッククラウド」を構築
サービスやプロジェクトサービスを展開し
ビスの先進性を次のように語る。
し、2011 年 11 月 1 日よりサービス提供を
てきました。しかし、それらのサービスは
(物理コ
「 1 ジョブあたり最大 128ノード
開 始した。同クラウドの利 用 希 望 者は、
基本的にブレードサーバを物理貸しする
ア数 4,096 )を使用した大規 模分散メモ
情報基盤センターのポータルページから
形態であったため、リソース利用の制約
リー型の並 列 処 理が可 能となりました。
利用申請をすることで、研究に必要な仮
が大きく、ユーザー数の増加や多様化す
これほどまでに大規模な計算サービスは
想サーバ の利用を簡単かつ迅速に始め
るニ ー ズ に 十 分 に 応えられませ ん でし
過去に例がなく、スーパーコンピュータシ
ることが可能となる。
た。そこで 仮 想 化 技 術を最 大 限に活 用
ステムにおける最大の特長となっていま
北海道大学 情報基盤センターのセン
し、モノ志向からサービス志向への質的
す」
ター長を務める髙井昌彰氏は、同クラウ
転換を図ることを目ざしたのです」
北 海 道 大 学アカデミッククラウドもま
こうして、2,000 を超える仮想サーバを
た 、こうした H P C( H i g h Pe r f o r m a n c e
運用する国内最大級の北海道大学アカ
Computing )に対するニーズを補完する
デミッククラウドが完成した。
とともに、多様な研究活動を支援する情
報環境を提供している。具体的には、オ
大規模な仮想サーバ環境が
1時間程度で利用開始可能に
Hitachi Storage Magazine Vol.7
ンラインストレージなどの利用環境をクラ
ウドサービスとして提供する。
北海道大学では、170 テラフロップス
同大学 情報基盤センター 大規模計算
を超える演算性能を有するスーパーコン
システム研究部門 准教授の棟朝雅晴氏
ピュータシステムを保 有しており、北 海
は、これによって得られた効果を次のよう
道 大 学アカデミッククラウドとあわせて
に語る。
「学際大規模計算機システム」と呼んで
「ポータルページから利用申請をする
いる。そのスーパーコンピュータシステ
と、わずか 10 分程度で必要な仮想サー
ムは、日立のスーパーテクニカルサーバ
バを立ち上げることができます。例えば
北海道大学アカデミッククラウドのストレージ
基盤を支えるHitachi Virtual File Platform
とHitachi Adaptable Modular Storage
2000シリーズ
18
ンデマンドで利用できる仮想サーバ、オ
256 個の仮想サーバをまとめた大規模な
HPC クラスタシステムを構築することも
可能となっており、この場合でも 1 時間程
度ですべての設定が完了します。さまざ
まなビジネスと同様、今日の研究活動に
北海道大学
情報基盤センター センター長
情報ネットワーク研究部門 教授
髙井 昌彰氏
北海道大学
情報基盤センター
大規模計算システム研究部門 教授
大宮 学氏
北海道大学
情報基盤センター
大規模計算システム研究部門 准教授
棟朝 雅晴氏
北海道大学
情報環境推進本部
情報推進課 課長 兼 IT推進グループ長
伊藤 和彦氏
とっても施策を速やかに実行に移すこと
( Storage Area Network )環境で接続。加
が強く求められています。これまで場合
えて、VFPと AMS2000 シリーズを組み合
「情報基盤センターの運用を熟知して
によって は 半 年 以 上も要して い た I T リ
わせた合計 500T バイトの NAS( Network
おり、ユーザーが使いやすいポータル画
ループ長を務める伊藤和彦氏である。
ソースの調達が、このような短時間で可
Attached Storage )を共有ストレージとし
面の設計など、日立が有益なノウハウや
能になったことは、クラウドならではの最
て 導 入し 、アプリケ ーション 利 用 時 の
サポートを提供してくれたこともあり、最
ユ ー ザ ー 領 域 、オンラ イン ストレ ージ
先端のクラウド環境を構築することがで
サーバ、仮想サーバの追加利用領域とし
きました」
大の成果であると考えています」
ストレージに求められるのは
極めて高い信頼性と安定性
て利用しているのである。
「非常に重要な研究データが集約され
るだけに、北海道大学アカデミッククラウ
北 海 道 大 学 ア カデミッククラウド の
ドを支えるストレージには極めて高い信
ベースとなっているのが、日立のプライ
頼性と安定性が求められるのですが、日
インタークラウドに向けた
取り組みを積極的に推進
北海道大学の学際大規模計算機シス
ベ ートクラ ウドソリュー ション で あ る
立の VFP や AMS2000 シリーズといったス
テムへの取り組みは、今後も前進してい
「 Harmonious Cloud 」だ。統合サービスプ
トレージ製品は、私たちの期待に十分応
く。特に北海道大学アカデミッククラウド
ラットフォーム「 B ladeSymphony 」のハイ
えてくれています。また、クラウド上に HPC
については、大 学の機 能 別 分 化の戦略
(以下、BS2000 )
エンドモデル「 BS2000 」
( High Perfomance Computing )
クラスタ
的視点からもキャンパス全体の情報基盤
ブ レ ー ド シ ン フ ォ ニ ー
114 台を演算ノードとして活用し、40 テラ
システムを構築する際に、ストレージ の
をクラウドに集約する動きが加速してお
フロップスを超える総合理論演算性能を
I/O がボトルネックにならないための適切
り、システムとしてどれだけスケール で
実現している。これにより、システム全体
な仮想サーバやデータの分散方法を設計
きるかが 1 つのポイントとなっている。
として 2,000 以上の仮想サーバの稼働を
してもらいました。もちろん、システム稼
「いかにクラウドとはいえ、北海道大学
可能としているのである。
働中の性能調整を自動化するダイナミッ
だけの取り組みでは、提供できる物理リ
そして、このクラウド環境における大
クロードバランスコントローラや、必要に
ソースにもパフォーマンスにも限界があり
規模なストレージプールの運用基盤とし
応じたストレージ容量の割り当てを自動
ます。そこでインタークラウド、すなわち
て 採 用されたのが、日立 のミッドレンジ
で行う「 Hitachi Dynamic Provisioning 」と
複数の大学や研究機関が保有するクラウ
ディスクアレ イ「 H i t a c h i A d a p t a b l e
いった先進的なストレージ仮想化機能が、
ドシステムのグローバルな連携や相互運
(以下、
Modular Storage 2000 シリーズ」
AMS2000 シリーズ)ならびに仮想ファイ
ルプラットフォーム「 Hitachi Virtual File
(以下、VFP )で構成されたスト
Platform 」
クラウドサービスの設計と運用を容易に
用のための技術開発が重要になると考え
してくれています」と棟朝氏は高く評価す
ています。各地に分散しているコンテン
る。
ツデータを自動的にセンターに集約して
さらに、北海道大学アカデミッククラウ
いくVFP の Cloud on-Ramp の日立のコン
レージシステムである。
ド構築のプロジェクトマネジメントやイン
セプトもよいと思います。課題解決に向
各仮想サーバの起動用ストレージとし
テグレーションの観点から日立の貢献に
けた他 大 学や研 究 機関との共同研 究を
て、合計 260T バイトのファイルシステム
言及するのは、同大学 情報環境推進本
積極的に進めています」と髙井氏は今後
容 量を持 つ A M S 2 0 0 0 シリー ズ を S A N
部 情 報 推 進 課 の 課 長 で あり I T 推 進グ
を見据えている。
Hitachi Storage Magazine Vol.7
19
先
進
事
例
中央研究院( Academia Sinica )
http://www.sinica.edu.tw/
分散するストレージを仮想化で統合し
信頼性の高いバックアップ環境も構築
創立から80年以上の歴史を持つ中央研究院は、台湾における学術研究機関として、最先端の学術研究、最高レベルの人材育成という役
割を担っている。中央研究院では組織の規模が大きいこともあり、膨大かつ多様なデータを日常的に処理しているが、メーカーの異なる複
数のストレージが点在していた。そのため、データ活用や運用管理などにおいてさまざまな課題を抱えていたのである。
バラバラなストレージ環境
央研究院の IT 部門長を務めるチェンミン・
フェースに接 続 可 能なゲートウェイによ
ヤン氏。同氏は現状ではデータ保護に問
り、ストレージの統合環境を提供する。つ
中央研究院の計算センターは、高度な
題があると知りつつも、コストの問題によ
まり、中央研究院のネットワーク上に点在
計算処理用の HPC( High Performance
Computing )環境、計算センター管理シス
り対策できずにいた。
する SATA( Serial Advanced Technology
とはいえ、そのままでは中央研究院が
A t t a c h m e n t )ディスクドライブ や S A S
( Serial Attached SCSI )ディスクドライブ
テム 、電 子メー ル 、地 理 情 報シ ステム
抱えるシステム環境の信頼性は低いまま
( GIS )、マルチメディアおよびデータシス
であり、何らかの理由でシステムが正常
を統合的に利用することが可能になる。
テムなど、アプリケーションごとにスト
に機能しなければ、日々の運営に大きな
リモートサイトのストレージ環境では、本
レージ 環 境を用意してきた。そのため、
影響を及ぼしかねない。それは潜在的な
番環境(ローカルサイト)
と同じ機器をそ
メーカーもモデルもバラバラという複数
リスクそのものであった。
ろえる必要がない。
のストレージ環境を抱えている。また、そ
もちろん、中央研究院ではバックアッ
のデ ータ量は 膨 大 で 、19 9 4 年からスト
プを実行するための努力はしてきた。し
データの格納先は「 Hitachi Dynamic
Provisioning 」により、ストレージプールと
レージ容量は増え続け、現在では 1,213T
かし、複数メーカーのストレージを活用し
してまとめて管理されるため、各ストレー
バイトを確保している。さらに、データ量
ていることから、完全なバックアップを実
ジを意識する必要がない。そのため、課
の増加は毎年 100T バイトになるという。
現 す るには 、リモ ートサ イトに 置くスト
題となって い たストレ ージ の 未 使 用 ス
そこで 中 央 研 究 院 は 、分 散 するスト
レージのメーカーおよびモデルを統一し
ペースも有効活用することができる。さ
レージを一括管理したいと考えていた。
なければならない。これでは非常に高額
ら に 、ストレ ー ジ 階 層 を 仮 想 化 す る
というのも、同研究院では、データアク
な投資になるだけではなく、ストレージご
「 Hitachi Dynamic Tiering 」により、要件
セスおよびストレージの効率を高めるた
とに運用管理が必要なことから、システ
に応じて最適なストレージを割り当てるこ
を導入
めに SAN( Storage Area Network )
ム管理者にとって大きな作業負荷となっ
とができ、
「 3D スケーリング構造」機能に
したが、サーバごとにハードディスクを接
てしまう。
よって処理性能や容量なども自在に拡張
続していたことから、ハードディスク同士
こうした状況の中で、中央研究院の課
できるようになる。
は接続されていなかった。そのため、1 台
題を解消したのが、日立データシステムズ
VSP を遠隔地のリモートサイトにも配置
のハードディスク容量を大きくする必要が
(以下、HDS )が提案したエンタープライ
す ることにより、ロ ー カ ル シ ス テ ム の
あり、未 使 用 部 分 が 多 いという状 態に
ズ 仮 想 化 ストレージ「 H i t a c h i V i r t u a l
データをリモートサイトに同期できる。リ
なっていた。
(以下、VSP )
を中心と
Storage Platform 」
モ ートサ イトへ の バックアップ は 、スト
こうした分散ストレージ環境では、シス
するソリューションであった。
レージ機器に依存しない。ローカルシス
テム全体の可用性を上げることが難しく、
テムが何らかの理由で機能しなくなった
ストレージの導入計画も
仮想化のメリットを享受
場合でも、リモートシステムにすぐに切り
用性を実現する環境を作り上げるのに大
VSP は、SAN や NAS( Network Attached
こうして中央研究院は、VSP の仮想化
変なコストがかかってしまいます」と、中
S t o r a g e )、i S C S I といった 各 種 インタ
ソリューションによって効率的に既存スト
遠隔地のリモートサイトにデータをバック
アップすることの障害にもなっていた。
「分散ストレージ環境の下では、高可
20
Hitachi Storage Magazine Vol.7
替わるため、安定した運用という目標も
達成される。
●VSPを中心とした統合ストレージ環境
WAN
サーバ
NAS
ファイバチャネル
スイッチ
サーバ
サーバ
サーバ
NAS
NAS
Bare Fiber
Optics
ファイバチャネル
スイッチ
NAS
ファイバチャネル
スイッチ
データ
レプリケーション
AMS2500
他社製ストレージ
他社製ストレージ
●ストレージプール
VSP
本番環境(ローカルサイト)
VSP
AMS2500
●ストレージプール
バックアップ環境(リモートサイト)
NAS:Network Attached Storage
AMS2500:Hitachi Adaptable Modular Storage 2500
VSP:Hitachi Virtual Storage Platform
巨大容量のデータ移動時も
優れたパフォーマンスを発揮
なのです。また、今回導 入した
『 Hit achi
に書き込まれる。しかも、障害発生時に
中 央 研 究 院では、IT 機 器の購 入にあ
たとえ故障が起きたとしても交換がしや
はリモートサイトに切り替わるという高い
たって十分な調査を行っている。当然な
すいという点で運用管理負荷が軽減でき
可用性も実現した。
がら、複数メーカーの製品を比較するこ
ると期待しています」
V S P の 仮 想 化ソリューション は 、スト
とは、必須の検討事項だ。そうした中で
ヤン氏はまた、ストレージ環境を設計
レージを運 用 管 理 できるようになった。
ローカルサイトに書き込まれたデータは、
リモートサイトのハードディスクにも同時
管理システムに慣れるための労力が不要
では、
Adaptable Modular Storage 2500 』
レージの導入計画にも良い影響を与えて
中央研究院は、HDS が提案したストレー
するためのサポート力も大きな決め手と
いる。それは、仮想化により物理的なスト
ジソリューションに次のアドバンテージを
なったという。
レージを意識する必要がなくなったため、
見いだした。
「多くの IT 管理者には、システム性能
通常どおり、2 年および 4 年のライフサイ
「データ転送の速度および信頼性は、
を向上させる方法を考えるときにアプリ
クルでハードディスクをリプレースできる
競合他社を凌駕しています。例えば、同
ケーションの視点に立つ習慣があります。
というものだ。リモートサイトについても、
じカテゴリーの他社製品では大量のデー
そ の た め 、パフォーマンス 低 下 の 原 因
6 年のライフサイクルで切り替えていく予
タ送信においてレスポンスの悪化が見ら
が、ストレージに起因するという可能性
定である。
れました。しかし、VSP は 1,000T バイトを
を見落としてしまいがちです。HDS はそ
「 VSP のアーキテクチャーの下では、つ
超える巨大容量のデータを移動させよう
のことを熟知しており、私たちの既存環
ねに最高レベルのストレージを導入する
とした場合でも、非常に安定した性能を
境における問題の特定をサポートしてく
ことができます。そのため、今後はデー
見せてくれました」
(ヤン氏)
れました。そして 、必 要なストレージ 容
タアクセスのレスポンス向上を強く意識
さらに、ヤン氏は管理ツールについて
量、データ保護の方法、システムバック
したストレージの導入を考えています」と
も高く評価している。
アップの運用などにおいて抱えていたす
ヤン氏は述べている。
「日立のストレージ製品は、エントリー
べての問題を効率的に解決する優れたソ
各ストレージの統合管理が可能になっ
モデルからハイエンドモデルまで、シン
リューションを提供してくれたのです」
たことにより、中央研究院ではバックアッ
プルかつ統一された管理インタフェース
ヤン氏は現在、中央研究院の計算セン
プ に関 する投 資も抑 制 することができ
を採用しています。これはストレージ製品
ターに導入したストレージ環境に非常に
た。ヤン氏によれば、VSP の導入により、
を選 択 する過 程で 持ち上がる運 用管 理
満足しているという。ストレージ環境が盤
計算センターの既存ストレージを同一製
負荷の増大という問題をすんなり解決し
石となったことから、次の目標として、ク
品にそろえて統合管理環境を構築するよ
てくれます。今後、ストレージシステムを
ラウドストレージやネットワーク仮想化な
り、約 20%も削減できたという。
アップグレードすることになっても、新しい
どの導入を検討し始めている。
Hitachi Storage Magazine Vol.7
21
先
進
事
例
テリティ・データセンター( Teliti Datacentres )
http://www.teliti.com/
クラウドサービスをマレーシアから世界へ
仮想化技術で最適化したデータセンターを構築
マレーシアのテリティ・データセンターは、最新の環境配慮型データセンターをクアラルンプール国際空港近くのバンダル・エンステック
(Bandar Enstek)に建設している。完成は 2012年前半の見込みであり、規模はアジアで最大級になるという。これにより、同社はク
ラウド経由のマネージドサービスを含むクラウドサービスを、マレーシア国内のほか、海外の企業や公的機関などにも提供していく予定だ。
急激に増加するデータと
データセンターへのニーズ
いう事業会社になり、世界中の顧客に対
なコロケーションサービスだけではなく、
して、ハウジングサービス、ネットワーク
それ以上のものを提供しようとしている。
サービス、マネージドサービス、セキュリ
そこでまず、テリティはデータセンター
金融危機からいまだ回復途上にある世
ティサービスなどを提供し、さまざまなア
のサービスへの需要に関する徹底的な市
界経済において、データセンター事業の
ウトソーシング・ニーズに対応している。
場 調査を行った。その結 果、テリティが
分野においても、コスト削減は重要なミッ
ションとなっている。とはいえ、世界中の
企業でデータが爆発的に増加しているた
め、データ管 理が不 可 欠となっており、
データセンターへのニーズも日々増して
注力することにしたのは、マネージドサー
目ざしたのは
世界レベルのデータセンター
テリティがバンダル・エンステックに建
ビス で ある。この サ ービス には 、I a a S
( Infrastructure as a Ser vice )、SaaS
( Software as a Service )、PaaS( Platform
as a Service )、そしてストレージ・アズ・
ア・サービス( Storage as a Service )や
アーカイブ・アズア・サービス( Archive as
a Service )も含まれる。
きている。こうした背景により、マレーシ
設しているデータセンターは、2 棟のビル
アを含む新興国では、低コストというアド
で構成され、施設総面積は 37 万 5,000 平
バンテージを武器に、主要なデータセン
になった。
方フィート
( 34,838㎡)である。テリティは
2012 年の前半、まず初めに 4 万 5,000 平
をオープンする予定
方フィート
( 4,180㎡)
マレーシア の 大 手 サービスプロバ イ
であり、またオープンに先立ち、このス
ダーのテリティ・インターナショナルも、
ペースの 40%についてすでにテナントを
「ストレージやサーバ の仮想化を有効
同 様にデ ータセンター 事 業を展 開 する
確保している。
活用したクラウドコンピューティングや、
チャンスととらえ、2007 年にデータセン
テリティが目ざしたのは世界に通用す
必要に応じてハードウェア資源を割り当
ター 事 業を立 ち上げ た 。現 在 で はテリ
るデータセンターであり、マレーシア の
てられるシンプロビジョニング技 術を採
ティ・データセンター(以下、テリティ)
と
一般的なデータセンターが提供するよう
用することにより、お客さまは現状の事
ター管理会社がサービスを提供するよう
マネージドサ ービ ス に つ い て 、テリ
ティ・データセンターの CEO ムサ・モハメッ
ド・ラジィム氏は次のように考えている。
HDSのソリューションは、信頼性こそが最大の特長だと思います。HDS
のサポートはすばらしく、これまでのソリューション提供において問題が
起こったことはありません。他のシステムおよびハードウェアとの統合は、
HDSの説明どおり、シームレスなものでした。実際、展開が非常に簡単で
あり、時間はかかりませんでした。おかげで、私たちは世界中のどこにでも
サービスを提供できるようになりました
テリティ・データセンター CEO
ムサ・モハメッド・ラジィム氏
22
Hitachi Storage Magazine Vol.7
業規模に最適な IT 環境を利用することが
サービスにおいて、容量拡張性に優れて
レーシア国内や海外の企業や教育機関、
できます。また、当社が IT 環境を運用管
いる HCP を活用する。HCP はコスト面で
医 療 機 関 、政 府 などに 対してクラウド
理するため、お客さまは事業活動に集中
優 位なこともあり、確 実なバックアップ
サービスを提供したいと考えている。
し、イノベーションを行い、競争力を維持
サービスの提供を求めている中小規模の
サービスを提供しやすい環境は、テリ
することに注力できます」
企業にとって有益なソリューションになる
ティにとっても大きなメリットとなる。例え
というわけだ。
ば、ストレージ の増設といった対応が容
利用ニーズに応じて
オンデマンドでサービス提供
VSP は異機種が混合する環境の統合化
易であり、データセンター内の複雑化を
を実現するだけでなく、オープンな技術
最小限に抑えることが可能だ。また、1 つ
を採用しているため、どのようなプラット
の管理ツールで統合管理が可能なため、
テリティはマネージドサービスを提供す
フォームにも直接かつシームレスに接続
運用管理者の作業負荷も軽減される。テ
るにあたり、異機種のストレージ が混在
できる。そのため、テリティでは同社の
リティのデータセンターはまだ建築途上
する環境を統合管理でき、階層化と非階
データセンターで保有するシステム環境
であることから、こうしたメリットは今後も
層化に対応するストレージ環境を構築で
を容易に統合することができた。
享 受 す ることになる。な お 、H D S のソ
きるソリューションを必要としていた。
ストレージとサーバで仮想化技術を採
リューションはまた、テリティの顧客のた
これらの要件を踏まえ、テリティが採用
用したことにより、テリティでは利用ニー
めだけに導入されるのではなく、同社内
したのは、エンタープライズ 仮 想 化スト
ズに応じてオンデマンドでサービスを提
部のストレージとして、同社のデータ管
レージ「 Hitachi Virtual Storage Platform 」
供 で き るように なって い る 。加 え て 、
理ニーズに応えている。
(以下、VSP )、大容量ファイルストレージ
「 Hitachi Dynamic Provisioning 」で提供さ
ストレージソリューションを適切に配備
(以下、HCP )
「 Hitachi Content Platform 」
れるシンプロビジョニング技 術により、
し、データセンターの最適化を実現した
を中心とする日立データシステムズ(以
データの増加に合わせて自動的に領域を
テリティは、顧 客 拡 大を目ざすことに注
下、HDS )のストレージソリューションで
拡張するといった対応も可能になった。
力できるようになった。とりわけ同社は、
あった。
実際、VSP を中心とするソリューション
は、テリティに大きな効果をもたらした。例
現地のマレーシアだけではなく、多国籍
海外顧客にもサービスを開始
企 業や公的機関を中心に世 界 へと顧客
を求めている。多国籍企業は事務所所在
えば、パフォーマンス、柔軟性、消費電力
ストレージとサーバの両方を仮想化で
地から離れた場所にデータを配置する傾
および TCO(Total Cost of Ownership)削減
きる環境は、テリティにとって重要な優先
向があるため、テリティは顧客の約 60 %
が挙げられる。また、非階層型のストレー
課題であった。
∼70 %が海外から獲得することになると
ジ環境や仮想化されていないストレージ
「例えばお客さまが年末にバックアップ
予想している。
環境と比べて、階層化と仮想化の機能を
用のストレージを 1P バイト欲しいという場
「 HDS が設計したストレージ環境は、柔
持つ VSP では、ストレージの購入コストは
合でも、即座にストレージを供給すること
軟性と効率性に優れており、世界に通用
約 70%も削減できた。導入後の 1 年間で
が できます 。これ は 私 たちが 提 供 す る
するデータセンターを設立するという私
1T バイトあたりの TCO を 33%まで削減可
サービスの 1 つで、お客さまがオンデマン
たちのビジョンを実現することができまし
能という試算もされている。さらに、冷却
ドでアクセス できるセキュアなクラウド
た。クラウドベースのマネージドサービス
のための電力やフロアスペースにおいて
サービスとして提供しています」とムサ氏
を提 供 するには、最 適なソリューション
30%を超えるコスト削減が実現できる。
は言う。
だったと確信しています」と、ムサ氏は高
テリティはアーカイブとバックアップの
こうした環 境を整えたテリティは、マ
く評価している。
Hitachi Storage Magazine Vol.7
23
読者の疑
問に答え
る!
A
Q&
ストレージ
Q1
A1
Hitachi Storage Magazine編集部では、本誌Vol.6に関する
読者アンケートを2011年9月に実施した。今回も数百の回答が集
まり、ストレージの最新技術や活用方法、市場動向などに関する疑
問・質問が数多く寄せられた。本企画では、そこからピックアップし
た疑問・質問に対し、日立の技術者が明快に答える。
情報が漏えいする事件が起きたりしていますが、どのようなセキュリティ対策をストレージで行うことが可能でしょうか?
情 報 処 理システムはさま
ム設定の変更は不要です。
ざまなセキュリティの脅威
に さらされ て おり、スト
レージもその例外ではありません。盗難、
■ロールベースの管理者アクセス制御
セキュリティ事件・事故の防止目的のた
不正アクセス、改ざん、データ消失(故意
めに、1 人の管理者に権限を集中させる
/事故による)
などの脅威に常日頃から備
のではなく、権限を複数の役割(ロール)
えておく必要があります。例えば、日立の
に分割し、それぞれ別の管理者に権限を
ディスクアレイシステムでは、下記のよう
委譲することを可能にする機能です。
なセキュリティ向上の機能に対応していま
ロールには、セキュリティ管理者(ユー
す。
ザーアカウント管理および暗号鍵管理操
■ストレージ内データ暗号化
装置の構成変更操作が可能)、監査ログ
作が可能)、ストレージ管理者(ストレージ
ディスクアレイ装置にデータを格納す
管理者(監査ログ関連の設定変更操作が
る際に、ディスクアレイ装置側で自動的に
可能)、保守員(保守操作が可能)などが
データを暗号化し、暗号文としてドライブ
あります 。例えば、ストレージ 管 理 者の
に保存します。
ロールのみを与えられた管理者は、アカ
万が一、ドライブが盗難されたり、持ち
ウント設定、監査ログ設定などの操作を
出されたりした場 合でも、ドライブ内の
行うことはできません。
成情報の変更操作)
における、時間、ログ
データを意味のある形で読み出すことは
できません。暗号鍵の管理はストレージコ
■監査ログ出力
オンユーザー名、操作名、操作の成功/
ントローラで行われ、持ち出されたドライ
「いつ、誰が、何の操作をしたか」とい
失敗、および操作の詳細情報などが含ま
ブだけでは不正なデータ解析が困難であ
う情報を記録し、監査ログを生成します。
れます。
り、セキュリティレベルの高いデータ漏え
セキュリティ事件・事故の発生時に責任の
い対策を実現します。
所在や原因を明らかにするための証拠目
上記のような機能を利用することによ
ストレージ装置自体が暗号化・復号化
的や、セキュリティ事件・事故の抑止のた
り、セキュリティ上の脅威、攻撃からスト
処理を行うため、サーバ やスイッチなど
めに使用されます。
レージ装置を防御して大切なデータの安
の上位側リソースの使用や新たなシステ
監査ログには、ストレージ管理操作(構
全性を高めることができます。
24
Hitachi Storage Magazine Vol.7
Q2
A2
爆発的に増加するデータへ対応として、容量の小さなストレージを導入して必要に応じて段階的に増やしていく
には、どのような良い方法があるでしょうか?
ボリューム容 量の 仮 想 化
台のサーバ(業務)に対して 15T バイトず
を利 用 する方 法 がありま
つ、トータルで 60T バイトの仮想容量を設
す。ボリューム容量の仮想
定するといったことが可能です。
化 により、初 期 導 入 時 の 容 量を 抑 え 、
データ量の増加にあわせ容易かつ最適な
■プール
コストで、容量を増やしていくことができ
これを実現するのは「プール」という仕
ます。日立のディスクアレイシステムで
組みです。物理容量をプールで一元管理
は、ボリューム容量仮想化機能を標準搭
し、各サーバの仮想容量への割り当てを
載しています。
管理します。仮想容量へは、実際のデー
ボリューム容量仮想化機能は、ストレー
タ書き込みに応じて自動的に物理容量が
ジの「物理容量(実搭載容量)」と、ホスト
割り当てられていきます。また、書き込ま
サーバに「見せる容量」を分離し、実搭載
れていたデータが削除され空きとなった
しまうといったことがありません。
している以上の容量を仮想的にサーバに
物理容量を開放し、他のサーバへ割り当
■ドライブの追加
割り当てることを可能とします。例えば、
てなおすことも可能です。このため各々
データ量が増え、プールの物理容量の
物理容量が 10T バイトしかない場合でも 4
のサーバが不必要に物理容量を占有して
空きが少なくなってきた段階で、物理容
量を追加します。プールへの物理容量の
追加はディスクドライブ 1 台単位で行うこ
●ボリューム容量の仮想化
とができ、データ量の増加にあわせ必要
■ Hitachi Dynamic Provisioning
なときに必要な分だけを最適なコストで増
ボリューム容量仮想化機能により、
容量設計・性能設計を簡便化し、
管理者の負担を軽減します。
また、
ファイルシス
テムに事前確保された領域から、
無効データ格納領域の開放機能をサポートし、
ストレージ投資の効率化を拡大し
ています
ファイルサーバ、
開発環境 など
業務サーバ群
割り当て
ボリューム
設することが可能です。また、プールで
管理されるドライブ へのデータ書き込み
は全ドライブに分散されるようになってお
り、新規ドライブを追加した場合も既存ド
ライブとのデータ配置の偏りが自動的に
仮想ボリューム
物 理 構 成にとらわ
れない任意容量の
ボリューム割り当て
使用容量
解消されるので、性能設計や性能チュー
ニングなどを行わなくても安定した性能を
発揮することができます。
サーバから見える仮想的な容量と物理
容量とは分離されているので、仮想容量
への物理容量の割り当てやプールへの物
プール
データ書き込みに応じ
て、
実ストレージ 領 域
を割り当て
理容量の追加をサーバ側が意識する必要
はなく、システムを止めることなく通常ど
おりの運用を続けることができます。この
ため容量増設にかかわるシステム管理者
の作業・運用コストを低減できます。
実ストレージボリューム群
書き込まれたデータを分散配置
このように、ボリューム容量の仮想化を
利用することで、初期導入時の容量・投
資を抑え、段階的かつ効率的なストレー
ジ投資を行っていくことができます。
Hitachi Storage Magazine Vol.7
25
●HDSのマーケティングチームと
国内外のチームがひとつになって
世界に向けたメッセージを発信
そこで私が学んだのは、まず相手の意
見を良く聞くということです。一度相手の
column
立場に立って考えてみます。そのうえで、
日立製作所
RAIDシステム事業部
事業企画本部
事業戦略室 室長
今度はこちらの意見をしっかり言います。
つたない英語であっても日本の事情や理
真田 明美
由を明確にし、 真摯に伝えれば相手は理
解してくれるということがわかりました。
この繰り返しにより、信頼関係が生ま
れてきました。今では、お互いが納得す
るまで議論できるようになり、その中で最
世界がとても近くなりました。日本企業
いる私は、これをきかっけに HDS の広報・
適解を見つけられるようになっています。
の海外進出は珍しいことではありません
マーケティングチームと緊密に仕事をす
ワールドワイドで通用するメッセージを
し、海外出張もかつての国内遠距離出張
ることになります。
発信するという意味では、HDS の意見は
の 感 覚 で 行く人 が増えたのではない で
日本と海 外 で 一 緒に戦 略を練ること
とても貴重です。例えば、
「 DATA DRIVES
しょうか。つまり、グローバル化がどんど
は、とにかく大変でした。言葉と文化が
OUR WORLD 」の原案は HDS です。なかな
ん進んでいるということなのですが、皆
異なるうえ、HDS のメンバーにとっては、
か日本人では思いつかないし、思いつい
さんはどのように海外の方と接している
米 国 市 場 が 先 端 だという自負 がありま
たとしても、ワー ルドワイドで 通 用 する
でしょうか。
す。自分達のペースで会議を進めていき
メッセージに仕上げるのは簡単ではあり
日立はグローバルで 100ヵ所以上の国
ますし、そのスピードも半端ではありませ
ません。HDSと 1 つのチームになることに
と地域でストレージソリューション事業を
ん。しかも、英語での会議に慣れていな
よって、より進んだ市場動向を盛り込ん
展開しています。海外市場での販売は日
い私ですから、思うことを主張するのは
だメッセージングができるのです。
立製作所の 100 %子会社である Hitachi
至難の業でした。
大変なことはたくさんありましたが、現
Data Systems( 以下、HDS )が担っていま
す。2007 年には、それまで日本と海外で
日本の会議であれば参 加者が空気を
在では、1 つのチームとして機能している
読んで、自分の発言タイミングをうかがう
と実感できますし、1 つのチームになって
別々だったストレージ製品のブランド名、
ようにしますが、海外では「ちょっと待っ
本当によかったと思っています。これから
そして製品デザイン、メッセージなどを
た!」という感じで割り込まないと、自分の
も私たちの世界に向けたメッセージにご
統一しました。マーケティングを担当して
意見は言えません。
期待ください。
26
Hitachi Storage Magazine Vol.7
V o l . 7
DATA DRIVES OUR WORLD
AND INFORMATION IS THE NEW CURRENCY
〜データは世界を動かす
そして、情報は新しい価値を生み出す〜
データは世界を動かす力を持っています。データに息吹を吹き込むことで、情
報に生まれ変わります。そして、情報は通貨のように世界中で交換され、格納
され、使われることで新しい価値を生み出します。
データと情報は、企業にとって最も重要な資産といえるのです。
DATA DRIVES OUR WORLD
AND INFORMATION IS THE NEW CURRENCY
このビジョンの下、日立ストレージソリューションは、企業が膨大なデータから
価値ある情報を生み出すことを支援していきます。
編集後記
さっぽろ雪まつりとビッグデータ
冬の札幌といえば、雪まつりですよね。
今回は取材で札幌にお邪魔しましたが、残
念ながらさっぽろ雪まつりの開催前でした。
さっぽろ雪まつりは、地元の中高生が札
幌の大通りに6つの雪像を作ったのが始ま
りで、1950 年のことだそうです。その雪像
[発 行]
株式会社アイ・ディ・ジー・インタラクティブ
Hitachi Storage Magazine編集部
〒108-0074 東京都港区高輪2-18-10
日石高輪ビル8F
[企画協力]
株式会社 日立製作所 RAIDシステム事業部
〒140-8573 東京都品川区南大井六丁目26番2号
大森ベルポートB館
本誌に記載している会社名・製品などは、それぞれの会社の商標または登録商標です。
本誌記載の内容について社外からの寄稿や発言は、必ずしも当社の見解を示している
わけではありません。画面表示をはじめ、製品仕様は改良のため変更することがあります。
今年は東京でも雪が積もりました
が評判を呼び、参加者が年々増え、その
対応が何かと話題になっています。いわゆ
発展の過程では札幌オリンピックもあり、国
る、ビッグデータです。ところが、管理の視
際 色 豊かなイベントとして発 展していきま
点では膨大なデータ量は邪魔モノに感じが
す。現在も進化を続けるさっぽろ雪まつりで
ちなのではないでしょうか。
すが、その起源は小さな遊び心にあったの
ビッグデータの考え方で重要なのは、管
ですね。
理が大変ということよりも、いかに活用する
多くの場合、雪は邪魔モノです。しかも、 べきかにあるとも言われています。 雪像を
雪国では遠慮なく積もります。その邪魔モノ
作るには、まず大きな木枠を作り、そこに雪
が芸術となって、地域の活性化に貢献する
を詰め込んでいきます。雪を固めたら木枠を
ことになる。素晴らしいじゃないですか。最
外し、削り出す。そして、細部を整えたら完
近では、雪を冷 却に使う雪 冷データセン
成です。なんとなく、ビッグデータにおける
ターがエコであるということで注目されるなど、 データ活用に似ていませんか。ビッグデータ
利用価値も出てきました。
の本質はさっぽろ雪まつりにあり。そんな思
ITの分野では、急増するデータ量への
いを抱いて、札幌を後にしました。
Hitachi Storage Magazine Vol.7
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