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「栄養ドリンク市場に関する研究」
「下巻」の目次に戻る 「栄養ドリンク市場に関する研究」 指導教員 草薙信照 平成14年1月 経営情報学部 M985191 Q組23番 桝岡由紀子 はじめに : 研究目的・概要................................................................................................................................. 1 1章 栄養ドリンクとは? ................................................................................................................................ 1 1.1 栄養ドリンクの分類................................................................................................................................. 1 1.2 栄養ドリンクと法律、規制..................................................................................................................... 2 1.3 なぜ栄養ドリンクがコンビニで買えるようになったのか?................................................................ 2 1.4 健康ブームと栄養ドリンク..................................................................................................................... 2 2章 栄養ドリンクの歴史 ................................................................................................................................ 4 2.1 栄養ドリンクの歴史................................................................................................................................. 4 2.2 価格・容量から見たドリンク剤 ............................................................................................................. 6 2.2.1 価格・容量から見る医薬品系栄養ドリンク ........................................................................................ 6 2.2.2 価格・容量からみる非医薬品系栄養ドリンク..................................................................................... 6 2.3 様々な栄養ドリンク................................................................................................................................. 7 2.3.1 男性向け栄養ドリンク......................................................................................................................... 7 2.3.2 子供向けの栄養ドリンク..................................................................................................................... 7 2.3.3 女性向け栄養ドリンク......................................................................................................................... 8 3章 栄養ドリンクの成分 ................................................................................................................................ 9 3.1 含有成分とその効用................................................................................................................................. 9 3.2 成分と値段の関係 .................................................................................................................................. 10 3.3 アルコールとカフェイン....................................................................................................................... 11 4章 各メーカーの栄養ドリンク .................................................................................................................. 12 5章 まとめ ...................................................................................................................................................... 14 【参考文献】 ...................................................................................................................................................... 15 栄養ドリンク市場に関する研究 はじめに : 研究目的・概要 近年、 「食」に関する生活スタイルは大きく変化し、それとともに健康ブームに関する意識も高まってき ている。その「食」や「健康ブーム」と関係があると思われるのが、 「栄養ドリンク」である。最近、 「栄 養ドリンク」は薬局・薬店のみならず、コンビニやスーパーなどでも販売されるようになり、より身近な物 になっている。なぜこれほどまでに、栄養ドリンクが身近なものになったのか、その実態について調べる。 そして、なぜ今までは薬局にしかなかったドリンク剤が、急にコンビニに並ぶようになったのか?とい う疑問を含めて、 「栄養ドリンク」の実態を、健康ブーム、歴史、範囲、種類、ターゲット、効用、法律、 規制などとの関係を中心に考察する。 1章 栄養ドリンクとは? 1.1 栄養ドリンクの分類 栄養ドリンクには、滋養強壮、虚弱体質、肉体疲労、病後の体力低下、食欲不振、栄養障害などを効用 として掲げているものが多いが、その他にビタミンなどを独自に配合して様々な特色を出している商品が 沢山あり、一言に「栄養ドリンク」といっても、用途や目的も様々である。したがってまず最初に、栄養 ドリンクを図1-1のように分類した。 まず、薬事法の規制を受ける①医薬品系栄養ドリンクと、食品衛生法の規制を受ける②非医薬品系栄養 ドリンク2つに区分することができる。その中で、医薬品系栄養ドリンクはさらに2つに分かれる。1つ は、50ml以下のミニドリンク剤で、 「ユンケル」がその例である。2つ目は、100mlのドリンク剤 で「リポビタンD」などがある。 非医薬品系栄養ドリンクというのは、清涼飲料水や炭酸飲料などのことである。一般に飲料は、乳清飲 料や果実飲料、炭酸飲料と3つに大別することができるが、非医薬品系栄養ドリンクでは、この区分を超 えて様々な商品が登場しているので、目的別に3つに分類している。1つ目は、機能性栄養ドリンクであ る。 「ファイブミニ」がその例で、生体調節などの機能を持つもののことである。 「ファイブミニ」は食物 繊維の成分としての機能を強調している。2つ目は、栄養飲料で医薬品系栄養ドリンクから広がってきた タイプの商品で、 「オロナミンC」がそれである。3つ目は、美容飲料で美容をコンセプトとしたドリンク である。主に女性をターゲットとしている商品である。資生堂の「アペリオf」がその例である。 図1-1 栄養ドリンクの分類 栄養ドリンク 非医薬品系栄養ドリンク 機能性飲料 美容飲料 医薬品系栄養ドリンク 栄養飲料 ドリンク剤 ミニドリンク剤 <出典> 片岡寛 「拡大する栄養ドリンク市場」 1 栄養ドリンク市場に関する研究 1.2 栄養ドリンクと法律、規制 次に、ドリンク類に関する法律や規制、効果を表1-1に整理してみた。この表を見て分かるように、 「清涼飲料水」は食品衛生法のカテゴリーに含まれるので、食品衛生法で食品添加物と認められている成 分しか使用できない。販売制限はないが、効能書きを付けることは出来ない。つまり「疲労回復」などと いう効果は宣伝できないように決められている。 「清涼飲料水」はその名の通り清涼感を与え、喉の渇きを 潤す飲み物である。 「医薬部外品」は、薬事法のカテゴリーに含まれる。販売制限はないので、清涼飲料水と同じくコンビ ニやスーパーなどでも買うことが出来る。 「医薬部外品」は「人体に対する作用が穏やかで、使用目的が定 められており、何に効果があるかはっきりしているもの」と定義されており、薬に準じるものと考えられ る。 「医薬品」は薬事法のカテゴリーに含まれ、薬局・薬店でしか買うことが出来ないが、効能書きを付ける ことが出来る。しかし、清涼飲料水のような清涼感を想像させるようなすっきりした飲み心地を表現して はいけないことになっている。 表1―1 ドリンク類に関する法律、規制 分類 法律 清涼飲料水 医薬部外品 医薬品 販売規制 効果 食品衛生法 制限なし あまりない 薬事法 制限なし 穏やかな作用 薬事法 薬局、薬店 治療や予防効果 <引用> http://allabout.co.jp/family/medicine/closeup/CU20010713A/ 「薬について」 1.3 なぜ栄養ドリンクがコンビニで買えるようになったのか? 表1-1を見ても分かる通り、医薬品は薬局・薬店でしか販売できないことになっている。よって数年前 まではコンビニやスーパーなどでは見かけることもなかった。しかし、平成11年3月31日の『医薬品 販売規制緩和に係る薬事法の施行令の一部改正』施行によって、一部のビタミン類が医薬品としての分類 から規制緩和され、医薬部外品の分類になったのである。これによって医薬部外品の栄養ドリンクがコン ビニやスーパーなどでも販売されるようになったのである。 1.4 健康ブームと栄養ドリンク 栄養ドリンクの種類がこれほどまでに増えてきたのには、健康ブームと関係があると考えられる。私た ちの食生活が、インスタント食品や冷凍食品によって簡便化されるようになった反面、カロリーや塩分の 過剰摂取などによる健康不安や、バランスある食の追及、美容への憧れなど、食に対する欲求があるので はないだろうか。 現代の食品市場では、ビタミンやミネラルを多く含んだ製品や、低カロリー、低糖、無糖、減塩、低コ レステロールをうたい文句にした商品、栄養補助食品、美容をコンセプトにしている商品がいたる所で目 2 栄養ドリンク市場に関する研究 につく。近頃よく聞くのは、モロヘイヤ、クロレラ、アガリクス茸、イチョウエキスという言葉である。 いずれも健康を意識したものばかりである。雑誌やテレビでも特集が組まれたり、コンビニエンスストア でも「サプリメント」を見かけるようになった。食品では、 「カロリーメイト」 (大塚製薬) 、 「バランスオ ン」 (江崎グリコ) 、 「毎日果実」 (江崎グリコ) 、 「ザカルシウム」 (大塚製薬) 、 「ヘルシーバランス」 (山之 内製薬) 、 「ピュアインミネラルバランスソフトクッキー」 (ハウス食品) など健康を意識したもので溢れて いる。それほどまでに消費者は、健康に役立つ製品に高い関心を持っているのである。そこで「健康」を どれだけ手軽に、どう手に入れるか?ということで、栄養ドリンクが健康食品や栄養補助食品などと同じ ような役割として、身近なものになってきたのではないだろうか。しかし、健康といっても人それぞれに ニーズがあり、健康の回復であったり、維持や増進、美容であったりと人それぞれである。その結果、ド リンク剤、ミニドリンク剤、栄養飲料、機能性飲料、美容飲料という多種多様な栄養ドリンクがでてきた と考えられる。 3 栄養ドリンク市場に関する研究 2章 栄養ドリンクの歴史 2.1 栄養ドリンクの歴史 栄養ドリンクの歴史を表にすると表2-1のようになる。1950年代後半に、液体タイプの大衆薬で あったアンプル剤がブームになったことが、ドリンクタイプの医薬品誕生の契機になり、ドリンク剤市場 が誕生した。1962年に「リポビタンD」が発売されて以降、次々に他のメーカーも参入してきている が、市場規模が12億2千万円になった1966年時点では、 「リポビタンD」が圧倒的なシェアを誇って いる。その理由の1つにCMの効果がある。1963年のCMに王貞治を起用した翌年には、 「後楽園で王 選手がホームランを打つごとに、近くの薬屋さんのリポビタンDが売り切れる」という伝説が生まれたほ どである。 表2-1 栄養ドリンクの歴史 アンプル剤ブーム 1957年 ベルベ内服液(アジア製薬) 1960年 6月 グロンサン内服液(中外製薬) 1962年 3月 〃 年12月 1963年 4月 ドリンク剤市場の 〃 年 7月 誕生 1964年 〃 年 2月 1965年 1966年 第1次ブーム 1967年 1973年 1976年 ミニドリンク市場 の成長 1979年 1980年 1981年 1982年 第2次ブーム 1985年 1986年 1987年 1988年 1990年 医薬系栄養ドリンク リポビタンD(大正製薬) 新グロモント(中外製薬) エスカップ(エスエス製薬) グロンサン強力内服液(中外製薬) エスカップC(エスエス製薬) チオビタドリンク(大鵬製薬) 非医薬系栄養ドリンク オロナミンC(大塚製薬) 売上1,700万本 オロナミンCの売上 3,300万本 市場規模12億2千万円 リポビタンD 6割以上のシェア エスカップ 2%のシェア チオビタドリンク 6.8%のシェア ユンケル黄帝液(佐藤製薬) オロナミンCの売上 5,000万本 〃 1億本 リポビタンA グロンサンシリーズ(中外製薬) エスカップシリーズ(エスエス製薬) アルギンZ(味の素) タフマン(ヤクルト) オロナミンCの売上 10億本 バイオミン(サントリー) リアルゴールド(コカ・コーラ) ユンケル皇帝液が爆発的にヒット ユンケル 売上高が100億円を超える アリナミンドリンク(武田薬品) リゲイン(三共) チョコラBBドリンク(エーザイ) アルフェ(大正製薬) 片山寛 「拡大する栄養ドリンク市場」を参考に作成 ミニドリンク市場が成長したのには、1968年「薬監153号」によって、非医薬品系ドリンク剤と 医薬品系栄養ドリンク剤との混合を防ぐために、100ml以上のドリンク剤に物品税を導入したことに 4 栄養ドリンク市場に関する研究 より、これ以降は50mlのミニドリンク剤が市場に多く出回ったからである。 1985年に「ユンケル皇帝液」が爆発的にヒットのは、タモリを起用したユンケルのCMが消費者に 評判になったからである。 「疲れがタモレば、ユンケルだ」 「ユンケルでガンバるんば!」などのキャッチ フレーズが印象的である。また、タモリが司会をしている「笑っていいとも」でたびたび話題になり、タ モリが広告塔になったことが、よりヒットにつながったのである。1986年には、 「ユンケル」の売上高 が100億円を超えた。その後、他のメーカーも次々に参入してきており、これが第2次ブームである。 第2次ブームの頃になると、女性をターゲットにした、 「チョコラBBドリンク」や「アルフェ」も登場し てきている。これらのコンセプトは「美容」であり、栄養ドリンクが男性をターゲットにしたものだけで はなくなったのである。 表2-2を見て分かる通り、ミニドリンク剤は1985年には257品目と種類は多いものの、売上高 が270億円であり、ドリンク剤より売上高が低かった。しかし売上高は伸び続け、1989年にはドリ ンク剤市場の売上高を抜き、1991年にはミニドリンク剤の売上高は1,000億円を超えた。 2-2 ドリンク剤とミニドリンク剤の市場規模 ドリンク剤の市場規模 ミニドリンク剤の市場規模 年度 売上高(億円) 総商品数(個) 売上高(億円) 総商品数(個) 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 573 ― 96 96 96 96 96 96 96 118 ― 715 751 815 820 800 270 380 520 660 810 970 1040 1000 (57社参入) 257 ― ― ― ― ― 421 441 (139社)参入 <出典>片岡寛 「拡大する栄養ドリンク市場」 図2-1 ドリンク剤とミニドリンク剤の売上高の推移 ド リン ク 剤 とミニ ド リン ク 剤 の 売 上 高 億円 1200 1000 800 600 400 200 0 1985 1986 1987 1988 ドリン ク剤 1989 1990 1991 1992 年 ミニ ド リン ク 剤 <出典>片岡寛 「拡大する栄養ドリンク市場」の表を元に作成 5 栄養ドリンク市場に関する研究 2.2 価格・容量から見たドリンク剤 2.2.1 価格・容量から見る医薬品系栄養ドリンク 医薬品系栄養ドリンクを価格と容量という2つの視点に基づいて分類したのが、表2-3である。価格 帯だけを見ても分かるように、200円以下のものから1500円以上のものまで様々である。一般に価 格が高くなるにつれて、生薬が配合されている割合が高くなる。 表2-3 価格・容量から見た医薬品系栄養ドリンク 200円以下 201~300円 301~799円 800~999円 1,000~ 1545円以上 1,544円 グロンサン内服液 20ml グロンサン 強力内服液 30ml 50ml 100ml リゲインR ALFE B-in ALFE MINI 新グロモント J-リゲイン リポビタンD エスカップ アリナミンV チオビタドリンク ローゼリー ユンケル皇帝液 ユンケル ゴールド内服液 ユンケルL 皇帝ゴールド ツデイL ユンケル スーパー黄帝液 グロンサンDX ビタシーゴールド ギネスゴールド ビタシーゴールドEX ユンケルD リゲインDX アリナミンe ユンケルローヤル ゴールド スパークユンケル ビタシーゴールドD リポビタンゴールド リゲイン エスカップW ショコラBBドリンク ALFE EX エスカップC エスカップキング 新グロモントエース リポビタン11 リポビタンDスーパー ファンテユンケル エスカップE エスカップC1000 ユンケルスター ユンケルグラント 片岡寛 「拡大する栄養ドリンク市場」を参考に作成 2.2.2 価格・容量からみる非医薬品系栄養ドリンク 非医薬品系栄養ドリンクを分類したのが、表2-4である。非医薬品系栄養ドリンクは、医薬品系栄養 ドリンクに比べると価格が安く、容量が多めである。低価格なので子供でも買いやすい。ほとんどの商品 はビタミンや、カルシウム、食物繊維、鉄分などの成分を強調している。 6 栄養ドリンク市場に関する研究 表 2- 4 価 格 ・容 量 か ら 見 た 非 医 薬 系 栄 養 ドリン ク 150円 以 下 151円 以 上 ア セ ロ ラビ タミン C 50~ 75m l 100~ 200m l ファイブ ミニ ファイブ ミニ プ ラス カル シウムパ ーラー オ ロナ ミンC ビ タミン パ ー ラ ー 140 ベ ジータベ ータ アセロラドリンク アペリオ カ ル シ ウ ム パ ー ラ ー 140 チオ ビタC 201~ 350m l 片岡寛 「拡大する栄養ドリンク市場」を参考に作成 2.3 様々な栄養ドリンク 元々は男性をターゲットにした栄養ドリンクが多かったが、最近では子供向けの栄養ドリンクや、女性 向けの栄養ドリンクも多数販売されている。ここではターゲット別にどのような栄養ドリンクがあるのか を挙げてみる。 2.3.1 男性向け栄養ドリンク 栄養ドリンクの最初の主なターゲットは男性、特にサラリーマンであり、現在でもサラリーマンを対象 にしたドリンク剤は、過度の仕事からの疲労やストレスからパワーを取り戻す、というコピーをかかげて いるものが多い。 代表的なものには 「ユンケルシリーズ」 (佐藤製薬) 、 「リポビタンシリーズ」 (大正製薬) 、 「24時間戦えますか?」というコピーが印象的だった「リゲイン」 (三共)などがある。いずれも15才 以上が対象である。 2.3.2 子供向けの栄養ドリンク 今や栄養ドリンクは大人だけの物ではなくなっている。受験戦争や、食生活の乱れなどで子供たちにも 栄養ドリンクは身近な物になりつつある。エスエス製薬からは「エスカップ小児用」が発売されており、 その特徴は、ビタミン・カルシウム・タウリンを配合し、飲みやすいようにレモン風味になっている。ユ ンケルシリーズからは子供用の「ユンケルジュニア」 (佐藤製薬)が発売されている。受験勉強やスポーツ による疲れ、育ち盛りの栄養補給、風邪をひいた時の栄養補給として飲まれるようで、大人用と違ってカ フェインが含まれていないのが特徴である。その他にも「リポビタンJr.」 「リポビタン小児用」 (大正製 薬)などが発売されており、大人用との違いはカルシウム、ローヤルゼリーが含まれていることである。 いずれも5才から14才を対象としており、飲みやすいようにフルーツ系の味になっている。 7 栄養ドリンク市場に関する研究 2.3.3 女性向け栄養ドリンク 女性向けの栄養ドリンクには、不足がちの栄養素を補うための商品や美容をアピールしている商品が多 い。女性に不足がちな鉄分を補う「アルフェ」 (大正製薬)や、食物繊維を摂取できる「ファイブミニ」 (大 塚製薬)などである。 「アルフェEX」は、ラ・フランス味、 「アルフェ・ミニ」はアップル味、と子供用と 同じく飲みやすくしたものがほとんどである。 「アペリオ」 (資生堂)はグレープフルーツ味で、コラーゲ ン、ビフィズス菌を含んでいる。女性向けの栄養ドリンクは飲みやすく、カロリー控えめなのが特徴であ る。 「美容」を目的とした女性向けの栄養ドリンクは、化粧品会社が参入してくるなど、今後も拡大すると 考えられる。 8 栄養ドリンク市場に関する研究 3章 栄養ドリンクの成分 3.1 含有成分とその効用 医薬品系栄養ドリンクには、表3-1にあげる7つの成分が主に含まれている。 表3-1 医薬品系栄養ドリンクに含まれる主な成分 ①ビタミン ②アミノ酸 ③グルグロン酸 ④生薬 ⑤ミネラル ⑥カフェイン ⑦アルコール 主にビタミンB1、B2、B6が含まれている。 ビタミンB1は糖などを利用するのを助け、目、肩、腰などの筋肉疲れに効果的である。 ビタミンB2はアミノ酸の利用を助け、皮膚や粘膜の病気の予防に効果的である。 栄養ドリンクが黄色なのはこのビタミンB2が含まれているからである。 ビタミンB6は様々な生体物質を作ったり、免疫系に影響し大切な働きがある。 代表的な成分はタウリンである。タウリンは、血中コレステロール値を下げる働きをし、 肝臓機能を強化する働きがある。 ビタミンの活性化や解毒効果がある。 動物性生薬と植物性生薬に大別できる。 現在では約150種類の漢方生薬が健康保険の適応を受けている。 ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄分などがこれである。 コーヒーやお茶にも含まれているカフェインである。 中枢神経に働いて、興奮作用を起こす。 医薬品として市販されているドリンク剤は課税対象除外のため、比較的高濃度の アルコールを含有する傾向がある。 <参考文献> http://www.sunny-net.co.jp/a6siken/s2kenkou/juice/juice.htm http://allabout.co.jp/family/medicine/closeup/CU20010720A/index2.htm 「薬について」 非医薬品系栄養ドリンクでは、医薬品系栄養ドリンクで説明した成分以外で含まれているものを、表3 -2にあげる。 表3-2 非医薬品系栄養ドリンクに含まれる主な成分 ①食物繊維 ②オリゴ糖 ③ベータカロチン ④乳酸菌 整腸作用や便秘防止の作用がある。女性の関心が高い。 ビフィズス菌を増やし腸内環境を健全にする働きがあり、便秘や下痢の改善、免疫力を 高める。低カロリーで栄養素として分解されないため、ダイエット効果もあるといわれている。 ベータカロチンは、体内でビタミンAに変わる。ビタミンAは目や喉の粘膜を正常に保つ 働きがあり、不足すると目は潤いをなくし、呼吸器に細菌やウイルスが侵入しやすくなり 風邪をひきやすくなる。 乳酸菌とは腸内で糖を分解して大量の乳酸を作り出す細菌の総称である。 ビフィズス菌やアシドフィルス菌などがあり、乳酸菌は腸内環境を整えてくれる。 <参考文献> http://www.sunny-net.co.jp/a6siken/s2kenkou/juice/juice.htm http://allabout.co.jp/family/medicine/closeup/CU20010720A/index2.htm 「薬について」 9 栄養ドリンク市場に関する研究 3.2 成分と値段の関係 栄養ドリンクの値段が様々なことは2-2で述べた。高価格なものほど生薬が入っている場合がほとん であるが、どんな生薬が入っているのか、高くなるにつれて生薬の種類も増えるのか、他の栄養ドリンク と比べ高価格な「ユンケルシリーズ」を取り上げ比較してみる。比較するのは、 「ユンケル黄帝液」30m l=800円と、 「ユンケル黄帝ロイヤル」50ml=1,942円、一番値段の高い「ユンケルスター」 50ml=3,884円の3つで、全て医薬品である。3つの栄養ドリンクの成分は表3-3の通りであ る。 表3-3 「ユンケルシリーズ」の成分比較 ユンケル黄帝液 ユンケル皇帝ロイヤル ユンケルスター 30ml 800円 50ml 1,942円 50ml 3,884円 全配合成分・分量(1瓶30ml中) 反鼻(ハンピ)チンキ シベットチンキ ゴオウチンキ ニンジン乾燥エキス セイヨウサンザシエキス ジオウ乾燥エキス ローヤルゼリー ビタミンB1硝酸塩 ビタミンB2リン酸エステル ビタミンB6 ビタミンB12 ビタミンE酢酸エステル ニコチン酸アミド パントテニールアルコール コンドロイチン硫酸ナトリウム 無水カフェイン 全配合成分・分量(1瓶50ml中) 100mg 250mg 250mg 10mg 3mg 30mg 100mg 10mg 5mg 10mg 50μg 10mg 5mg 10mg 120mg 50mg エレウテロコック流エキス オウセイ流エキス イカリソウ軟稠エキス シベットチンキ ゴオウチンキ ハンピチンキ 酢酸d-α-トコフェロール ビタミンB2リン酸エステル γ-オリザノール 無水カフェイン 全配合成分・分量(1瓶50ml中) 500mg 2,000mg 400mg 250mg 900mg 200mg 10mg 10mg 10mg 50mg コウジン流エキス ロクジョウチンキ イカリソウ流エキス ゴオウチンキ ハンピチンキ カシュウエキスーA ガラナエキス サンヤク流エキス クコシ流エキス サンザシエキス ジオウ乾燥エキス ゴミシ流エキス サンシュユ流エキス トチュウ流エキス トシシ流エキス ブクリョウエキス-N トウキエキス バクモンドウエキス オンジエキス カンゾウ流エキス オウギ流エキス ローヤルゼリー タウリン ビタミンB6 ビタミンE酢酸エステル ニコチン酸アミド 1,500mg 1,000mg 1,000mg 400mg 100mg 40mg 150mg 300mg 300mg 30mg 120mg 300mg 200mg 300mg 300mg 10mg 60mg 250mg 30mg 600mg 300mg 150mg 1,000mg 10mg 10mg 40mg <引用>http://www.yunker.org/ 「ユンケルワンダーランド」 価格が高くなるにつれて生薬の量や種類が増加している。一番安い800円のドリンク剤にはビタミン が多く含まれているが、価格が高くなるにつれてビタミンの種類が減少している。 では、その生薬にはどんな効用があるのか。 「ユンケル黄帝ロイヤル」に多く含まれている「オウセイ流 エキス」には、滋養、強壮や 血圧降下、血糖降下がある。 「ユンケルスター」に多く含まれている「コウ ジン流エキス」には、強壮、強心、鎮静、 健胃補精、消化不良、嘔吐、弛緩性下痢に効果があり、食欲不 10 栄養ドリンク市場に関する研究 振に応用できるようである。他にも多くの生薬が含まれているが、これら全ての生薬の効用を知って購入 する人はほとんどいないだろう。しかしこれだけ多種の生薬が含まれていれば、どれか1つくらいの生薬 の効用がこれを飲んだ人の症状にあてはまり、元気になる確率は高くなることもあるだろう。 「~エキス」 や「生薬」という言葉にひかれ、効きそうだと思い、4000円もする栄養ドリンクを買う人、4000 円もするのだからよほど効くのだろう、と逆に値段から考える人もいるだろう。 3.3 アルコールとカフェイン 栄養ドリンクには本当に効き目があるのだろうか。栄養ドリンクを使用する目的は人それぞれなので、 効き目も様々だろう。しかし、栄養ドリンクを飲んですぐに元気になった、と感じるのにはアルコールと カフェインによる覚醒効果があると思われる。 市販されている栄養ドリンクの4分の1にはアルコールが含まれているといわれている。ドリンク剤に 含まれるアルコールは、酒税法により基準濃度は1%以下でなければならない。しかし、医薬品として販 売されているドリンク剤は、アルコール含量の表示があれば1%以上でも酒税法の規制は受けない。 中枢神経興奮剤・強心剤であるカフェインは、医薬品として100~300mg用いられているが、医 薬品の栄養ドリンクでは200mgまで許可され、眠気防止には400mgまで許可されている。医薬部 外品の栄養ドリンクには、1本あたり50mg以下の規定がある。 生薬などによる効用には即効性がないため、すぐ元気になった、と感じるのにはこの2つの効果と心理 的な効果があると考えられる。 11 栄養ドリンク市場に関する研究 4章 各メーカーの栄養ドリンク 図4-1は2000年度の国内出荷額のシェアを表わしたものである。1位は大正製薬で4割を占め、 他社を圧倒的に引き離している。2位は佐藤製薬で1割を占めている。それ以下の武田薬品、大鵬薬品工 業、エスエス製薬はそれぞれ大きな差はない。この 5 つの各メーカーがどんな商品を発売し、どんな特徴 をもっているかそれぞれ挙げることにする。 図4-1 国内出荷額シェア(2000年度 2500億円) その他 26.7% 大正製薬 44.4% エスエス製薬 5.6% 大鵬薬品工業 6.0% 武田薬品工業 6.1% 佐藤製薬 11 2% <引用> http://www.nikkei.co.jp/report/ 『NIKKEI NET』 ①大正製薬 知名度、実績ともに圧倒的であり、4割のシェアを占めている。大正製薬では、 「リポビタンシリーズ」 、 「ゼナシリーズ」 、 「ALFE シリーズ」を発売している。 「リポビタンD」のCMは、かつて王貞治を起用 したことによってヒットし、その後のCMでも「ファイト一発!」というキャッチコピーが消費者にイン パクトを与えたのが売上につながったのは明らかである。 「リポビタンD」 は146円と低価格でコンビニ でも販売されているので、消費者には手軽に飲めるものになっている。ミニドリンク剤である「ゼナシリ ーズ」は「リポビタンシリーズ」と違い、800円~2,000円と高価格で薬局・薬店などでしか買う ことが出来ない。また、女性をターゲットにした「ALFE シリーズ」には、コンビニで買える商品と薬局・ 薬店でしか購入できない商品の両方がある。他にも子供向けの「リポビタン jr.」や「リポビタン小児用」 などもあり、大正製薬の栄養ドリンクは幅広い層を獲得できるよう様々な種類がある。 ②佐藤製薬 佐藤製薬が発売してるのは「ユンケルシリーズ」である。タモリのCMで爆発的にヒットし、現在でも CMにタモリを起用し続け、タモリがユンケルの顔となっている。 「ユンケルシリーズ」は全部で28種類 あり、そのうちコンビニで買えるものは5種類だけである。他のメーカーと比較すると高価格の商品が多 いが、 それは生薬が多く含まれているからである。 高価格なために手軽に飲める栄養ドリンクではないが、 「効きそうだ」というイメージを持っている消費者も多いだろう。知名度は高いがシェアが11%に留ま 12 栄養ドリンク市場に関する研究 っているのは、高価格なために手軽に飲むことが出来ないことが原因だと考えられる。最近では、低価格 な「ユンケルローヤルB3」 (190円)や「ファンテユンケルゴールド」 (250円)と気軽に飲める商 品が発売されている。女性向けの「ユンケルクイーン」や子供向けの「ユンケルジュニア」もあるが、全 部で28種類もあり商品名も似ているので、それぞれの商品にどんな特徴や効用があるのか区別がつきに くい。 ③武田薬品工業 武田薬品工業が発売しているのは「アリナミンシリーズ」で、全5種類のうち4つがコンビニや駅売店 などでも買うことが出来る。CMではかつてアーノルド・シュワルツネッガーを起用し話題になった。ま た、女性をターゲットとした「ハイシーCEtime」も発売しており、コンビニなどでも買うことが出来る。 ④大鵬薬品工業 大鵬薬品工業では「チオビタシリーズ」を発売しており、全部で3種類である。3つのうちコンビニな どで購入できるのは「チオビタドリンク」だけである。 「チオビタシリーズ」は低価格なので手軽に買うこ とができ、種類が少ないので商品名も分かりやすい。 ⑤エスエス製薬 エスエス製薬では「エスカップシリーズ」を発売しており、全部で16種類ある。そのうち約半分はコ ンビニなどでも買うことが出来る。 「エスカップ」 、 「エスカップE」 、 「エスカップW」 、 「エスカップL」 、 「エスカップEC」や「エスカップ小児用」 、 「小児用エスカップ」など種類が多くなってくると商品名が 似ているようなものもあり、それぞれの区別が分かりにくい。 13 栄養ドリンク市場に関する研究 5章 まとめ 栄養ドリンクは薬事法と食品衛生法という2つのカテゴリーにまたがる商品であり、その区別によって 含有成分や効能書きの表示などの制限がある商品であることが分かった。そして、平成11年3月31日 から新しく栄養ドリンク剤に医薬部外品という分類ができ、よりいっそう複雑になってきている。各メー カーはシリーズで似たような商品名を使用していることが多く、それぞれの効用の違いや、どれが医薬品 で医薬部外品であるかの区別が紛らわしいものになってきている。特に医薬部外品には、医薬品や清涼飲 料水のように効能書き表示の制限がはっきりないので、今後、効能書き表示の規制が考えられる。 また、薬事法の規制が徐々に緩和されていき、今までは病院での処方しか許可されていなかった薬が、 栄養ドリンクとなって販売が許可されるようになってくることも考えられる。 健康志向は今後も続いてくと考えられ、子供向けドリンク剤の種類も増え、女性向けのドリンク剤も「美 容」を売りにした商品がますます登場してくると考えられる。そして高齢化社会の現在においては高齢者 向けの栄養ドリンクも出てくる可能性がある。 14 栄養ドリンク市場に関する研究 【参考文献】 1)片岡寛「拡大する栄養ドリンク市場」 (株)中央経済社 平成10年3月発行 2)食品流通情報センター「健康と美のライフスタイルデータ集 2001」 食品流通情報センター 2001年2月発行 3)五十嵐 脩「からだとビタミンの知識」 オ-ム社 2000年5月発行 http://www.ibmkenpo.or.jp/prog/higoro/ 「ひごろ役立つ健康情報」 http://www.alles.or.jp/~masa1835/drink.htm/ 「24 時間戦ってますか?」 http://www.yunker.org 「ユンケルワンダーランド」 http://www.ssp.co.jp/ 「エスエス製薬」 http://www.chugai-pharm.co.jp/ 「中外製薬」 http://www.taiho.co.jp/ 「大鵬薬品工業株式会社」 http://www.takeda.com/ 「武田薬品工業」 http://www.otsuka.co.jp/ 「大塚製薬」 http://www.sankyo.co.jp/menu.html 「三共」 http://www.eisai.co.jp/ 「エーザイ株式会社」 http://www.shiseido.co.jp/index.htm 「資生堂」 http://www.nikkei.co.jp/report/ 「NIKKEI NET」 15