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個々の乗用馬における速歩の対称性に対する 前肢不同蹄の運動機能へ
(337) 文 献 紹 介 個々の乗用馬における速歩の対称性に対する 前肢不同蹄の運動機能への影響 Functional Locomotor Consequences of Uneven Forefeet for Trot Symmetry in Individual Riding Horse Nathan Wiggers, Sandra L. P. Nauwelaerts, Sarah Jane Hobbs, Sophie Bool Claudia F. Wolschrijn, Willem Back PLoS One, 2015. 10(2): e0114836. 競走馬総合研究所 運動科学研究室 高橋 之 要旨 より柔軟な球節の動きを示した。Steep(蹄角度が 左右対称な肢遠位部の形は、良好なパフォーマ 大きい)な蹄では、蹄角度と制動力と推進力の切り ンスに必要な重要な前提条件であり、非対称また 替わるタイミングが直線的な関係を示した。 は不同蹄は跛行を起こす重要な増強因子だとしば 個々の馬における個々の蹄の形状よりも、両前 しば仮定される。集団として考えた場合、不同蹄の 肢間の形態的な相違は荷重特性に対してより重要 ウマは、上級レベルの試合から早期に引退するこ であった。不同蹄の前肢蹄間における垂直方向力 とが示されているが、バイオメカニクス的な影響 と制動力の相違は、病的な要素のない非対称な荷 については知られていない。この研究の目的は、不 重パターン、もしくはsteepな(蹄角度の大きい)蹄 同蹄のウマにおける機能的な動作の非対称性を均 における病的な潜在的な跛行であると解釈でき 等な蹄のウマと比較することである。 る。 蹄における力および肢遠位部の動作は速歩にお 蹄の形状については、得意とする馬場の種類や いて34頭のウマから集められた。背側蹄壁角度 馬場状態との関係性がいわれることもあるが、力 は、ウマを不同蹄(前肢蹄の角度が1.5°以上異な 学的な特性についての報告は少ない。この論文で る)と均等な蹄の群に分けること、および個々の蹄 は、着地時における蹄の力学的特性および球節沈 をfla( t 蹄 角 度 5 0 ° 未 満 )、m e d i u m( 蹄 角 度 下の程度などについて、不同蹄における左右差や 50-55°)、またはupright(蹄角度55°以上)に分 個々の蹄の蹄角度による影響などの比較を行って かることに利用された。機能的な力学の数値を いた。その結果、個々の蹄の形状により、蹄の力学 MANOVAおよびANOVAにより、不同蹄および均 的特性に差は見られなかったが、不同蹄のウマで 等な蹄の間で比較した。機能的な力学の数値に対 は有意な左右差が見られた。著者らは、不同蹄によ する前肢蹄間の蹄角度の相違および蹄角度の絶対 る左右差を病的でない非対称性または疾患に繋が 値による相対的な影響については、重回帰分析に る跛行のどちらの可能性もあると考察していた。 より分析した(P < 0.05)。 しかし、不同蹄において見られた左右差は、有意で 不同蹄のウマにおいては、flatな方の蹄において はあるが相違の程度は非常に小さいこと、測定対 有意に大きな最大水平制動力および最大垂直床反 象となった34頭のうち、均等な蹄のウマは7頭し 力を示し、有意に大きな球節垂直方向変位および かいなかったことから、私は病的な状態ではなく、 (338) 馬の科学 Vol.52(4)2015 通常見れらる非対称性ではないかと考えた。また、 形状の左右差が対称性に影響することから、跛行 蹄にかかる垂直方向床反力や左右動作の非対称性 診断を実施する際には、不同蹄に注意する必要が などを指標として跛行診断を行うシステムは多数 あると考えられた。 開発されているが、不同蹄のウマの割合が高く、蹄