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O(N,R)
テンソル模型における スカラー・テンソル重力理論の創発と 更なる可能性 笹倉直樹 京都大学基礎物理学研究所 2011年1月5、6日 場の理論・量子重力研究会@立教大学 量子重力とは? の量子化? Einstein-Hilbert作用は繰り込み不可 そもそも場の理論では不十分では。 トポロジーや次元の変化を扱いにくい。 時空間 自体をダイナミカルなものとしたうえで、 量子化が必要では。 Emergent spacetime, Emergent gravity 時空間 & 重力 粗視化、繰り込み変換 摂動、揺らぎ 真空 基本的自由度 研究の長期的目標 • 熱力学的アナロジーの理解 ブラックホールエントロピーなど • 宇宙項問題 空間自身の持つエネルギーとして吸収できるかもしれない • 物質場(フェルミオン)、ゲージ理論の起源 場の理論的見方とは違った解釈 Emergent fermion, Emergent gauge theory Friedman-Sorkin, Phys.Rev.Lett.44, 1100, 1980 • 古典重力への影響(一般相対論+α) 宇宙の加速膨張、銀河の回転速度の異常な振る舞い、 パイオニア・アノマリー、天文単位の異常な増加傾向、… Turyshev, Living Rev.Rel.13:4,2010 • 量子重力の観測可能性―長距離長時間の天文学的観測 ガンマ線バーストGRB090510によるローレンツ対称性の破れの制限 et al, Nature 462, 重力波干渉計による時空的不確定性関係の観測可能性 Abdo 331-334 2009 Amelino-Camelia, Nature 398:216-218,1999. Hogan, 0706.1999 量子重力の様々なアイディア 行列模型 非可換時空 GroupFieldTheory テンソル模型 格子理論、格子量子重力 お互いに密接に関連 ループ量子重力 行列模型の拡張としてのテンソル模型 複数行列模型(BFSS、IKKT、AdS/CFTなど) 行列模型(2次元量子重力ー2次元動的単体分割模型) テンソル模型 テンソル模型は、3次元以上の動的単体分割模型を記述する方法 として提案された。 Ambjorn et al, Mod.Phys.Lett.A6:1133-1146,1991 Sasakura, Mod.Phys.Lett.A6:2613-2624,1991 Godfrey-Gross, Phys.Rev.D43:1749-1753,1991 しかし、困難が多く、現時点では、量子重力の動的単体分割模型を 記述するものとしては、成功していない。 cf. Gurau, 1011.2726 この講演では、全く別の解釈のもとで、テンソル模型が、量子重力の 面白い模型となっていることを示す。 ファジー空間のダイナミクスを記述する理論としてのテンソル模型 非可換幾何 Connes’s triple : 空間上の関数 の代数。結合則を満たす。 3階テンソル C で定義 3階テンソル C をダイナミカルな変数とするような模型(テンソル模型) は、(ファジー)空間のダイナミクスを記述する理論とみなせないか。 しかし、非可換幾何においては、幾何学的性質はラプラシアンΔ に 含まれているが、代数 A には含まれていない。 よって、テンソル 模型は量子重力にはなり得ない? Wedderburn’s theorem 代数に幾何的情報を入れる方法を考えてみる。 ・Moyal空間 幾何学的情報は含んでいない ) (エルミート性の一般化: ・ガウシアン配位 Sasai-Sasakura, JHEP 0609:046,2006 対称 正数 αは に吸収可能だが、便利のため導入 ガウシアン配位は、可換非結合代数を定義 非結合的代数は、時空間の物理において、しばしば現れてきた。 閉弦の代数 Witten 1986 様々な次元のファジー球面 上のDブレーン M2ブレーンの記述 Ramgoolam 2001 Cornabla, Schiappa 2002 Bagger, Lambert 2006 ガウシアン配位 は、任意次元D のファジー平坦空間を表す ・座標表示 (運動量の添え字をフーリエ変換) B:正数 ・D次元ポワンカレ対称性を持つ ・局所性 ぼやけ具合 ・通常の空間の代数を、ガウシアンで「ぼやけ」させたもの 通常の空間: 一般座標変換に対して共変な形のガウシアン配位 正数 幾何的背景 上での2点間の測地線距離 添え字の縮約に対して一般座標変換不変性を持つ β-1の展開について任意性がある: 例 量子重力のアイディア Sasakura, Mod.Phys.Lett.A21:1017-1028,2006 空間 一般相対論 テンソル模型 ? 問い: テンソル模型から出発して ・ 空間を真空(古典解)として生成できるか? ・ 一般相対論は、真空(古典解)周りの摂動を記述する有効理論か? 一般座標変換不変性とテンソル模型 Sasakura, Mod.Phys.Lett.A21:1017-1028,2006 通常空間の一般座標変換 空間上の関数の完全系 非線形、複雑 で表せば、単なる線形変換 ・ 関数の間の線形変換を、ファジー空間上の一般座標変換と考える テンソル模型での一般座標変換 不変なテンソル模型 ・ 不変なテンソル模型 g,C 2つのダイナミカル変数 例 一般的に、作用S は有界でなく、ユークリッド的な取り扱いができない。 この講演では、この種類の模型は扱わない。 ・ 不変な模型 C のみがダイナミカル変数 例 この種類の模型は、容易に有界にできる。 今後は、簡単のため 完全対称 後で詳しく見るように、メトリック が創発される場合には、 対称性により一般座標変換不変性が実現される。 微調整されたテンソル模型 Sasakura, Int.J.Mod.Phys.A23:693-718,2008. ガウシアン配位を古典解として持つように微調整されたテンソル模型 O(N,R) 対称性 この特殊な模型を調べる目的 ・一般相対論が古典解周りの摂動の有効理論として創発されるか? ・O(N,R) 対称性により、正しく一般座標変換不変性が創発されるか? ガウシアン配位を古典解としてもつようなテンソル模型は無数に 作ることができる。 Sasakura, Int.J.Mod.Phys.A23:3863-3890,2008; Prog.Theor.Phys.119:1029-1040,2008. 例: ガウシアン配位は を満たし、古典解になる。 ただし、一般に、複雑で不自然な模型 次元D がパラメータとして入っていないので、任意の次元の 平坦空間が古典解として得られる。 S (概念的イラスト) D=1 D=33 D=3 D=5 D=445 一般相対論は、各古典解周りの摂動の有効理論として得られるか? 結果: 任意の次元において、一般座標変換不変性も含め、 一般相対論が正しく創発される。 実際の数値計算では、N を有限にするため、D 次元 平坦ファジートーラスの解を考える。 運動量保存・並進対称性 整数 紫外カットオフ L が十分に大、かつ、 であれば、実質的に解 トーラス解周りの二次の摂動のスペクトルを数値的に解析する 固有値 スペクトル 固有ベクトル モードの形 スペクトルは大まかに3つのクラスに分かれる。 1.ゼロスペクトル → ゲージモード(一般座標変換) 2.質量ゼロの軌跡 → 一般相対論(メトリック)のモード 3.他のモード → 重い、又は、高周波のモード 固有値 拡 大 摂動の運動量の大きさ トーラス解の並進対称性により、固有値問題は、 各運動量のセクターごとに解析して良い。 ゼロスペクトル トーラス解が O(N,R) 対称性を(自発的に)破るために生じるゼロモード。 トーラス上で局所的なモードも含まれる。 古いアイディアと一致している 局所ゲージ変換は、局所的対称性が自発的に破れて生じたものであるため、 場について非線形な変換になっている。 Ferrari-Picasso 1971, Borisov-Ogievetsky 1975 テンソル模型のゼロスペクトルの物理的解釈: ゲージモード 一般座標変換のモード Sasakura, Prog.Theor.Phys.122:309-322,2009. 2次元ファジー平坦トーラス解周りのBRSTゴーストのスペクトル テンソル模型において、 O(N) 対称性に対してBRST型のゲージ固定 一般相対論において、一般座標変換不変性に対するBRST ゲージ固定によるゴースト場と同等なものが創発 ゼロ質量の軌跡 2次元平坦トーラス解まわり L=10, α=1.5/L2 p=0 では3つのモード p≠0 では、各運動量セクター ごとに1つのモード 各運動量ごとのモード数は、一般相対論と正確に一致 2次元平坦トーラス上のメトリックの摂動は3自由度 ゲージ変換 メトリック/ゲージ変換 p=0 3 p≠0 3-2=1 軌跡の運動量依存性により、有効作用はR2 3次元平坦トーラス解周りの摂動スペクトル L=4, α=1.5/L2 3 3 6 3 3 3 3 モード数は、やはり、一般相対論と一致 p=0 6 p≠0 6-3=3 5×10-5 p4 4次元平坦トーラス解周りの摂動スペクトル L=2, α=1/L2 一般相対論と一致 3×10-4 p4 6 6 10 6 6 6 1×10-3 p2 テンソル模型と一般相対論のモード形の比較 Sasakura, Prog.Theor.Phys.119:1029-1040,2008 ガウシアン配位 測地線距離 テンソル模型 固有モード 一般相対論 一致するか? 簡単のため、添え字の少ないテンソルK で比較 一般相対論 一般相対論のモードを代入 一致するか? テンソル模型 ガウシアン配位 固有ベクトル 2次元トーラス解での比較 L=10,α=1.5/L2 p=0セクターでのδK の等高線プロット 固有値 1.56944×10-6 6.4288×10-6 6.58267×10-6 対角モード トレースレス対角 テンソル模型 一般相対論 非対角モード p=(1,0) セクター 1.5×10-5 テンソル模型 ゲージ変換との直交性 一般相対論 対角モード テンソル模型と一般相対論の測度の関係 テンソル模型の積分測度 DeWitt supermetric 物理的方向 ゲージ方向 3次元トーラス解での比較 p=(1,0,0) セクター テンソル模型 L=4,α=1.5/L2 一般相対論 0.0000323533 トレースレス対角モード 0.0000395432 非対角モード 0.0000666353 対角モード 4次元トーラス解での比較 テンソル模型 一般相対論 一般座標変換と直交変換の関係 仮定: 主張: が存在 の一般座標変換は、直交変換。 証明: 一方、 直交変換の生成子 微調整されたテンソル模型のまとめ ・任意の次元の平坦空間を古典解としてもつように微調整された模型 ・ゼロ質量の軌跡上のモードは、一般相対論のモードと正確に一致 任意の次元で成立 一般座標変換不変性の創発は O(N,R) で実現 (GL(N,R) は不要) ・有効作用は、曲率の2乗の形 この模型の良くない点 : 作用が複雑、かつ、不自然 以降では、より一般的な模型に対して、粗視化によりアプローチする。 テンソル模型における粗視化・繰り込み 格子系 物性系 場の理論 粗視化 繰り込み 主張: テンソル模型 スカラー・テンソル重力理論 ガウシアン配位の一般化 (一般的な) スカラー・テンソル重力理論 場: ・Brans-Dicke 1961 マッハの原理 ー 物質場の分布で重力定数が決まる。 ・弦理論におけるディラトン場 ・宇宙論的観測結果の説明 暗黒物質、暗黒エネルギー、… 格子・物性系における粗視化と量子重力 ・Kadanoff-Wilson 流の繰り込み ブロックスピン変換 ある「距離」内にあるダイナミカル変数の全体的な振 る舞いを捉えるような新たなダイナミカル変数を定義 量子重力での難しさ 「距離」は、量子重力では、ダイナミカル。 一般には、トポロジーや次元の変化などもある。 テンソル模型での粗視化 仮定: 背景解とその周りの揺らぎの局所性 x1 x3 x2 程度拡がっている 粗視化の3階テンソルをO(N)共変に定義。様々なものがある。 粗視化の繰り返し 3回 より広い範囲の粗視化 証明されること: ガウシアン配位は、先にあげた粗視化に対して、 アトラクターになっている。 Cの配位空間 ガウシアン配位 粗視化プロセス 粗視化の繰り返しによって、以下の一般形に近づく スカラー場 任意性: 主張 テンソル模型が、空間を表す古典解を持つ場合、 その周りの局所的摂動を記述する有効場の理論は、 スカラー・テンソル重力理論により与えられる。 粗視化変数を使っての摂動スペクトルの解析 簡単かつ、微調整されていないテンソル模型 自由なパラメータ: 数値的古典解 : 任意次元Dの平坦ファジートーラス ならば、存在する。 数値解の条件 ・D個の並進対称性 (保たれる対称性の選択) ・整数値の運動量 (保たれる対称性の表現の選択) ・局所性 (物理的要請) 2次元ファジートーラス古典解の粗視化 ガウスシアンに近づく 粗視化3回 粗視化された変数によるスペクトル解析 粗視化された変数 で、偏微分 2次元平坦ファジートーラス解周りの摂動のスペクトル 粗視化3回 ギャップ下部を拡大 Spin 2 スピン2のモード数も一般相対論と一致 Spin 0 スピン2 3つ スピン0 (*、0)のスペクトルが高く出る傾向 スピン0部分を拡大 分散関係は見られない パラメータの変更に対して、結果は本質的に変わらない 粗視化3回 まとめ ・テンソル模型は、空間と一般相対論を創発する興味深い模型 ・空間と一般相対論を、古典解とその周りの摂動の有効理論として 創発。任意の次元を単一の枠組みで実現。(古典解の選択) ・一般座標変換不変性が正しく組み込まれている。 有効理論のDiffeoが自動的 ・粗視化 スカラー・テンソル重力理論 ・粗視化変数によるスペクトルの解析(2次元トーラス) ■スピン2のゼロ質量の軌跡 ■ゼロに近い平坦なスピン0スペクトル パラメータの微調整なし 対照的 通常の格子系では、2次相点移点へのパラメータの微調整が必要 今後の課題 ー 他の場はどうか ? ゲージ場 ・Kaluza-Kleinに似たセットアップ “有限個数の点”で構成された余次元 ・軽いモジュライ・スカラー場は出ないだろう。 現象論的に望ましい フェルミオン場 Friedman-SorkinのGeonのアイディアが使えるかもしれない。 Friedman and Sorkin, Phys.Rev.Lett. 44:1100-1103 (1980) 一般に Diffeo の対称性がある理論において 運動量拘束条件 無限遠で identity となる Diffeo のうち identity と連結なものの集合 一般に2π回転は が存在 であるが、 とは限らない。 フェルミオン場 が存在 Geon 3点の模型 作用: 回転対称な配位から少しずらして、 断熱的に配位を回転 摂動のスペクトルは、 回転角の変化に対して ほとんど変わらない 固有値問題は変わらなくても、固有ベクトルは2π回転後に 符号を変える可能性がある。 整数スピン 周期2π 半整数スピン 周期4π 他の課題 ・3次元以上やダイナミクスの数値解 ・曲がった空間、球面の解など。 ・スカラー場の性質、役割、意味、有効作用 ・3階テンソルによる空間の記述の一般論 ・時間の導入 ・テンソルC の複素化 ・Einstein-Hilbert作用の導出 ・複数行列模型の埋め込み 弦理論と関係?