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中国のLNG 輸入プロジェクト
JPEC レポート 2013 年度 第 11 回 平成 25 年 8 月 6 日 中国の LNG 輸入プロジェクト 中国の石油の対外依存度が 50%を突 1.天然ガス需要と LNG 輸入の拡大 p.1 破して久しいが、天然ガスの対外依存度 1-1.中国の天然ガス発展戦略 p.1 も急ピッチで上昇、約 30%に達している。 1-2.輸入天然ガスの拡大 p.4 2.主要 LNG 輸入ターミナル p.5 2006 年 6 月に中国海洋石油総公司 (CNOOC)の広東省深圳 LNG 輸入ター 2-1.CNOOC p.6 ミナルが操業を開始し、中国の天然ガス 2-2.PetroChina の LNG ターミナル p.11 輸入の歴史が始まった。 2007 年から本格 2-3.Sinopec の LNG ターミナル p.13 的な LNG 輸入が開始されたが、この年 2-4.その他企業 p.14 の天然ガスの対外依存度はわずか 2%だ 3. LNG 輸入契約 p.15 った。それ以降、CNOOC は 3 カ所でタ 3-1.CNOOC p.16 ーミナルを建設、中国石油天然ガス股份 3-2.PetroChina p.17 有限公司(PetroChina)も江蘇省と遼寧 3-3.Sinopec p.17 省に LNG ターミナルを建設した。LNG 3-3.その他企業 p.18 輸入拡大に加え、中央アジアからのパイ プラインガス輸入もスタート、中国の天 然ガス対外依存度は、2012 年に 28.9%まで上昇した。今後、CNOOC は広東省、海南省 などで続々と LNG ターミナルを建設する。また、PetroChina も同社 3 番目の LNG ター ミナルを建設し、中国石油化工集団公司(Sinopec)も山東省に同社初の LNG ターミナル を建設する。 こうした LNG 輸入ターミナル建設と並行して、中国国営石油企業 3 社は、インドネシ アやオーストラリア、マレーシア、カタールなどとの間で LNG 売買契約を締結するとと もに、安定供給を目指して海外 LNG プロジェクトへの積極的な参画を進めている。 ただ、中国の LNG 輸入には、輸入価格が販売価格を上回るという大きな問題が残され ている。LNG 輸入拡大に対応して中国政府は、LNG 輸入事業における付加価値税還付を 実施、さらに各地で価格改革を進めている。 新たな発展期を迎えようとしている中国 LNG プロジェクトの最新動向を紹介する。 1 JPEC レポート 1.天然ガス需要と LNG 輸入の拡大 1-1.中国の天然ガス発展戦略 中国は世界最大の石炭生産国であるとともに石炭消費国であり、今なお 1 次エネルギー 消費の 70.4%を石炭が占めている。これに比べれば、世界の原油を買い漁っているとまで 言われた石油でさえ 17.7%、世界最大の三峡水力発電所など巨大水力発電所が相次いで建 設された水力発電は 6.0%、急速に拡大していると言っても天然ガスは 4.5%、原子力に至 ってはわずか 0.8%しかない(図-1 参照) 。こうした過度の石炭利用が環境問題の大きな要 因となっている。 石炭燃焼に伴う環境問題に対処するには天然ガスの利用が効果的であり、中国政府はエ ネルギー発展 12・5 計画において、1 次エネルギー消費に占める天然ガスの比率を 2015 年 までに 7.3%に引き上げるよう提起している。しかし、国内の天然ガス供給能力には限界 があり、炭層メタンガス(CBM)やシェールガスなど非在来型ガスの見通しは明確ではな い。したがって、消費量の増加は多くは輸入に頼ることになり、今後、次々に建設される LNG 輸入ターミナル、今年完成するミャンマーからのガスパイプライン、中央アジアパイ 2 JPEC レポート プラインの増強、ガス価格交渉が難航しているロシアからのパイプラインが重責を担うこ とになる。 国内ガス生産に関して、米 Energy Information Administration(EIA)の 2011 年の報告に よれば、中国のシェールガスの技術的可採埋蔵量は、米国の 862 兆 cf(約 24.4 兆 m3)の 約 1.5 倍、1,275 兆 cf(約 36.1 兆 m3)に達するとされる。中国政府は、2015 年までにシ ェールガス生産量を年間 65 億 m3、2020 年までに 100 億 m3 とすることを目標に開発を促 進しているが、開発地域の地質構造や環境リスク、開発技術の問題など、解決すべき多くの 課題が指摘されている。中国は米国で開発に携わった企業などとの共同開発を進めようと しているが、四川の複雑な地質構造や、砂漠地帯の水資源不足が大きなハードルになる。 シェールガス開発では主に水圧破砕法が採用され、約 90%の水と砂(プロパント)および 特殊化学物質の混合物を地下の岩盤に高圧で吹き付け、岩盤を破壊して、ガスを採掘する という手法がとられるが、この方法では潤沢な水資源が必要になる。中国では、多くの地 域で水資源が不足しており、シェールガス開発と農業との水資源の奪い合いになる可能性 があると指摘されている。 シェールガス開発とともに注目されるのが、石炭由来の合成天然ガス(SNG:Synthetic Natural Gas)あるいは代替天然ガス(SNG:Substitute Natural Gas)である。SNG 生産 技術はすでに商業化のメドがついており、原料の石炭供給に関して問題はないため、生産 計画にカウントすることが容易である。 SNG はすでに産炭地で多くのプラントが計画され、 中国国家発展改革委員会(NDRC)が正式認可した案件だけで 4 件のプラント(年産合計 150 億 m3)があり、Sinopec の年産 80 億 m3 の計画など有力案件が目白押しで、計画は さらに増加するものとみられる。輸送インフラとして年間 300m3 の新疆–広東–浙江ガスパ イプラインや小型 LNG プラントも計画されている。 中国石油天然ガス集団公司(CNPC)経済技術研究院の生産予測では、まず 2013 年に 天然ガス生産 1,150 億 m3 のうち 19 億 m3 が石炭由来 SNG になるとしている。 中国は急増する天然ガスの安定供給に向け、1)国内の在来型天然ガス資源の探鉱開発 と輸送パイプラインの整備、2)CBM 開発と接続パイプラインおよび小規模 LNG プラン ト建設、3)シェールガス開発の促進、4)SNG 生産の拡大、沿岸部を網羅する LNG 輸入 ターミナル建設、5)パイプラインガス輸入を並行して進める方針。 LNG 輸入に関しては、アジア・豪州・中東に加えカナダや米国、ロシア、さらにモザンビ ークなどアフリカや南米なども視野に入れている。また、パイプラインガスについては、 中央アジアおよびミャンマーに続いてロシアからの輸入に取り組み、イラン–パキスタン (IP) パイプラインの中国延伸なども検討していく可能性がある。 さらに生産に関しては、 長期的戦略として、南シナ海北部大陸斜面およびチベット高原羌塘盆地を中心とする高山 永久凍土地帯でのメタンハイドレート開発に向けて調査を進めている。 3 JPEC レポート 1-2.輸入天然ガスの拡大 中国は、急速な経済発展を背景に。1992 年に石油製品の輸入が輸出を上回り、1993 年 時点で石油(原油と石油製品合計)の純輸入国に転じた。そして、1996 年に原油も純輸入 に転じた。 中国が天然ガスの輸入を検討するようになったのは、 この頃からで、 すでに 1998 年 10 月には、中国初の LNG 輸入プロジェクトである CNOOC の広東省深圳 LNG 輸入タ ーミナルの実施計画が策定され、中国政府に認可申請が提出された。同プロジェクトは、 国際的にも大きな関心を呼び、外資パートナーの選定商談には、日本商社やガス事業者、 メジャーなど 10 グループ・計 21 社が参加した。その結果、BP が同プロジェクトの 30% の権益を取得して、CNOOC と共同で計画を進め、2006 年 6 月に、豪州 North West Shelf LNG(NWS LNG)プロジェクトからの第 1 船が深圳ターミナルに到着し、中国の LNG 輸入の歴史がスタートした。 続いて CNOOC は、2008 年 4 月に福建省莆田、2009 年 10 月に上海市洋山深水港、2012 年 9 月に浙江省寧波でそれぞれ LNG 輸入ターミナルを開業、中国 LNG 産業を牽引してい る。 先行する CNOOC を追って、PetroChina は、まず 2011 年 5 月に江蘇省南通市如東洋口 港で最初の LNG 輸入ターミナルの試験操業を開始し、同年 11 月から正式操業に入った。 さらに同年 11 月には遼寧省大連のターミナルも完成した。 LNG 輸入開始から 3 年後の 2009 年 11 月には、トルクメニスタンからウズベキスタン とカザフスタンを経由して中国国境のコルガス(霍爾果斯)で中国国内の西気東輸パイプ ライン第 2 ルートに接続する中央アジア天然ガスパイプライン(中亜天然気管道)フェー ズ 1 が竣工、 中国は 2010 年からパイプラインガスの本格的な輸入を開始した。 これら LNG 輸入ターミナルと国際パイプラインにより中国の天然ガス輸入は急速に拡大した(図-2 参 照) 。 4 JPEC レポート NDRC が 2013 年 2 月に発表した天然ガス業界概況によれば、中国が本格的な LNG 輸 入を開始した 2007 年の天然ガス対外依存度はわずか 2%だったが、その後急激に上昇し、 2010 年に 11.8%、2011 年に 24.3%と 2012 年には 28.9%に達した。NDRC によれば、中 国の 2012 年の国内天然ガス生産量は前年比 6.5%増の 1,077 億 m3、LNG を含む天然ガス の輸入量は同 31.1%増の 425 億 m3 で、見掛け消費量は同 13.0%増の 1471 億 m3、これに より天然ガスの対外依存度が 28.9%となった(図-3 参照)。 2013 年については、CNPC 経済技術研究院が、中国の天然ガス輸入量は前年比 23.8% 増の 530 億 m3、生産量は同 6.8%増の 1,150 億 m3 で、対外依存度は 31.5%になると予測 している。 また、中国の天然ガス第 12 次五カ年計画(12・5 計画)は、2015 年の天然ガス消費を 2,300 億 m3、うち輸入天然ガスが約 800 億 m3 と予測しており、2015 年段階で、天然ガ ス対外依存度は 34.8%に達する見通しだ。 2.主要 LNG 輸入ターミナル 2006 年に中国初の LNG 輸入ターミナルとして CNOOC が広東省大鵬に LNG ターミナ ルを建設、操業を開始した。それ以降、CNOOC は福建省莆田、上海、浙江省寧波に LNG ターミナルを建設、さらに PetroChina も江蘇省南通市如東に同社初の LNG ターミナルを 建設し、続いて遼寧省大連でもターミナルを建設した。 今後、CNOOC は中国初の浮体式 LNG ターミナルとなる天津ターミナルを始め、広東 省珠海、海南省洋浦、広東省掲揚などで続々とターミナルを建設する。また、PetroChina 5 JPEC レポート も河北省唐山で同社 3 番目となる LNG ターミナルを建設している。さらに Sinopec も、 山東省青島に同社初の LNG ターミナルを建設しており、今年 11 月に完成する。 (図-4 参 照) 2-1.CNOOC の LNG ターミナル 1)広東省深圳大鵬 LNG ターミナル 中国初の LNG 輸入事業で、2006 年 6 月に正式操業を開始した。当初計画ではフェーズ -1 で年間 300 万トン、フェーズ-2 で年間 500 万トンとされていたが、計画途上でのガス 需要拡大と 2002 年末に承認された珠江発電所へのガス供給などを加味した結果、LNG は 年間 370 万トンとなり、フェーズ-2 の数量も引き上げられて年間 620 万トンとなった。 事業主体の広東大鵬液化天然気有限公司には、CNOOC が 33%、地元の深圳市投資管理 公司、広東省電力集団公司、広州市煤気公司、東莞市燃料工業総公司、佛山市燃気総公司 が合計 31%、香港の香港中華煤気有限公司と香港電灯集団有限公司が各 3%、外資パート ナーとして BP が 30%を出資している。 LNG 調達に関しては、豪州 NWS LNG コンソーシアムと 2002 年 10 月に年間 325 万ト 6 JPEC レポート ン×25 年間の売買契約に調印した。その後、年間 370 万トンに引き上げた。NWS からの LNG 購入に伴い、CNOOC は広東 LNG 向け供給会社である中国液化天然気合資企業 (CLNG JV :China LNG Joint Venture)に 25%の出資比率で参加するとともに(NWS のパートナー6 社は各 12.5%を出資) 、NWS の上流権益の約 5.3%を 3 億 4,800 万ドルで 買収した。 基本設計(FEED:Front End Engineering Design)は KBR と日揮、パイプラインの事 業可能性検討(FS)は PetroChina 傘下の廊坊管道研究所が担当、設計・調達・建設(EPC: Engineering, Procurement and Construction)は欧州 4 社連合の Saipem /Technigaz /Technimont /Sofregaz(STTS)が実施した。 2)福建省莆田 LNG ターミナル 中国 2 番目の LNG 基地として 2008 年 4 月に操業を開始した。 LNG 輸入規模は年間 500 万トンで、うちフェーズ-1 は同 260 万トン、LNG ターミナルと 360km のパイプラインを 建設した。事業主体の中海福建天然気有限責任公司には、CNOOC が 60%と福建投資開発 総公司が 40%を出資している。 この計画では中国初の LNG 冷熱を利用した空気分離プラントが 2010 年 11 月に操業を 開始した。中海石油基地集団有限責任公司が 51%と Air Products and Chemicals(China) Investment が 49%を出資して合弁会社を設立、液体酸素と窒素を日量各 300 トン、アル ゴンを 10 トン生産する。 LNG は、インドネシアの Tangguh LNG プロジェクトと 25 年間にわたり年間 260 万ト ンの売買契約に調印した。LNG 購入に伴い、CNOOC は、Tangguh LNG のオペレーター である BP から上流ガス田権益の 12.5%を 2 億 7,500 万ドルで買収した。同事業は、BP、 BG、三菱商事/国際石油開発帝石(Inpex) 、JX 日鉱日石開発、LNG ジャパン(双日/住友 商事)が推進していたが、2004 年 1 月に BG が保有していた権益を CNOOC と LNG ジ ャパンに売却したため、CNOOC の権益は 16.96%となった。 FEED は Sofregaz(Tecnimont が 66%と Gaz de France が 34%出資)が実施した。タ ンクは CB&I が成達化学工程公司と協力して建設、CB&I はターミナルの EPC 業務も担当 した。 3)上海市洋山深水港 LNG ターミナル 事業主体の上海液化天然気有限公司には CNOOC が 45%、 申能集団が 55%を出資した。 2009 年 10 月にフェーズ-1 が竣工、年間受入量 300 万トンの LNG ターミナルが操業を開 始した。 LNG は、マレーシア LNG 第 3 プロジェクト(MLNG Tiga)と 25 年間の売買契約に調 印、供給量は年間 110 万トンから徐々に増やし、2013 年以降は同 300 万トンとする。 LNG ターミナル、貯蔵タンク 3 基、ガス気化設備などの EPC 業務は、IHI をリーダー 7 JPEC レポート に丸紅、台湾中鼎工程股份有限公司(CTCI)および中国武漢設計院からなる国際コンソー シアムが担当した。日本企業が中国 LNG ターミナルの EPC を受注したのはこれが最初で ある。 4)浙江省寧波 LNG ターミナル 2009 年 6 月に NDRC が同プロジェクトを正式認可し、 同年 10 月より建設が開始され、 2012 年 9 月に竣工、Qatargas の LNG が入った。 事業主体となるのは中海浙江寧波液化天然気有限公司で、 出資比率は、 CNOOC が 51%、 浙江省能源集団有限公司が 29%、寧波市電力開発公司が 20%。フェーズ-1 で年間受入量 300 万トンの LNG ターミナルを建設、フェーズ-2 で同 600 万トンとする。 CNOOC は 2003 年 10 月、胡錦濤主席の豪州訪問を機に、Gorgon LNG の権益 12.5% を取得するとともに、総額 300 億豪ドルに達する LNG 購入の事前契約に調印したが、原 油価格が高騰するなか Chevron との価格交渉は 2006 年春の段階で決裂した。結局、LNG は、2008 年 6 月に契約した Qatargas や 2009 年 1 月に契約した Total から購入すること になった。 FEED は、三井物産の協力を得て受注した東京ガス・エンジニアリングが実施。EPC は TGE Gas Engineering と成達工程有限公司が担当した。TGE は、中国国際海運集装箱(集 団)股份有限公司(CIMC)が傘下に収めたガス貯蔵設備やターミナル建設の EPC 企業。 5)広東省深圳迭福 LNG ターミナル CNOOC が広東省で計画している広東省深圳迭福LNG ターミナル建設プロジェクトは、 2012 年 7 月に NDRC の正式承認を取得した。LNG 受入能力は年間 400 万トンで、16 万 m3×4 基の LNG タンクと再ガス化設備、バースなどを建設する。総投資額は 80 億元で、 事業主体の中海石油深圳天然気有限公司には CNOOC が 70%、深圳能源集団股份有限公 司が 30%を出資している。建設場所は深圳大鵬湾の大鵬新区で、CNOOC が 2006 年から 操業している広東 LNG ターミナルに隣接している。操業開始は 2015 年の予定。 同 LNG ターミナルは、第 12 次 5 カ年計画期における深圳市の重点エネルギープロジェ クトで、年間 50 億 m3 の新たな天然ガス供給能力をもたらす。また、広東省天然ガスパイ プライン計画の一翼を担い、CNOOC の沿海天然ガス大動脈の重要部分を構成する。 6)福建省漳州市龍海 LNG ターミナル CNOOC が福建省漳州市龍海で計画している LNG 輸入ターミナルで、2011 年 8 月に龍 海市政府との協定に調印した。龍海は福建省南部の漳州市に位置する県級市。総投資額は 70 億元で、受入能力は年間 600 万トン。龍海市政府によれば、計画は 2 段階に分けて進 められ、フェーズ-1 の LNG 受入能力は年間 300 万トンで、2015 年の完成を目指してい る。 8 JPEC レポート 7)広東省珠海金湾 LNG ターミナル CNOOC は広東省珠海市高欄港経済区平排山で LNG 輸入ターミナル建設を計画してい る。事業主体の広東珠海金湾液化天然気有限公司は、広東省粤電集団有限公司が 30%、 CNOOC が 25%、広州発展燃気投資有限公司が 25%、広東粤港能源発展有限公司が 8% および佛山市天然気高圧管網有限公司、珠海経済特区電力開発集団有限公司、中山中匯投 資集団有限公司、江門城建集団有限公司の 4 社が各 3%を出資して 2007 年 12 月に設立さ れた。 LNG の輸入規模はフェーズ-1 で年間 350 万トン、フェーズ-2 で同 700 万トン、マカオ へのガス供給も視野に入れている。LNG ターミナルとともに、珠海から分岐して江門から 佛山への東ルート、中山から広州への西ルートのトランクパイプライン、横門へのブラン チラインも建設される。 FEED は東京ガス・エンジニアリングが実施し、2008 年 5 月に完了した。16 万 m3×3 基のタンクに関する EPC およびターミナルの設計は、Tecnicas Reunidas と中国天辰工程 有限公司(TCC)のコンソーシアムが約 2 億ドルで受注した。2010 年 10 月から建設が開 始されており、2013 年内に完成する予定。 8)海南省洋浦 LNG ターミナル CNOOC は、2011 年 7 月に NDRC の認可を取得し、2014 年 8 月の操業開始を目指し てターミナル建設を開始した。事業主体の中海油海南天然気有限公司には、CNOOC が 65%と海南省発展控股分別持有合資公司が 35%を出資している。 総投資額は 65 億 2,300 万元、受入能力は 2014 年 8 月までに年間 200 万トン、2016 年 までに同 300 万トンとする計画。海南省における第 12 次 5 カ年計画の重点項目に指定さ れており、埠頭、受入ターミナル、パイプラインの 3 セクションから構成される。16 万 m3×2 基の LNG タンク、26 万 7,000m3 の LNG タンカーと 3,000 トン級の作業船が接岸可 能な港湾、さらに海南島の環状ガスパイプラインと接続する総延長 122km のパイプライ ンを建設する。また、完成後は、南シナ海の崖城 13-1 ガス田や東方 1-1 ガス田、楽東ガス 田などとガス補完システムを構築して、安定したガス供給を実現する。 CNOOC は同ターミナルを核として、海南島に LNG の貯蔵・流通センターを構築する 構想を進めており、将来的には海南ターミナルに 18 基のタンクを建設し、受入能力を年 間 1,500-2,000 万トンという巨大な規模に引き上げる構想を進めている。 FEED はSofregaz が実施。 EPC は、 IHI および台湾CTCI、 中国五環工程有限公司 (WEC) が丸紅の協力を得て受注した。 9)広東省掲揚粤東 LNG ターミナル CNOOC は、広東省掲揚市で粤東 LNG ターミナルの建設を計画しており、2013 年 3 月 9 JPEC レポート に着工した。投資額は 112 億元で、フェーズ-1 の受入規模は年間 200 万トン、16 万 m3×3 基のタンクをもつ LNG ターミナルと最大 26 万 7,000m3 の LNG 船が接岸可能なバース、 170km のパイプラインなどで構成される。広東省の天然ガスパイプライン計画の一翼を担 うもので、CNOOC にとっても東南沿海天然ガス大動脈の重要部分を形成する。ターミナ ルの詳細設計は CNOOC 傘下の山東化学工程有限責任公司が担当している。 2020年頃までに16万m3×2基のタンクを追加し、 年間受入量を400万トンに増強する。 10)天津港南疆港 LNG ターミナル CNOOC は、天津港集団、天津市燃気集団と協力して、天津港南疆港区で LNG ターミ ナル建設を計画、2012 年 2 月に作業を開始した。フェーズ-1 の投資額は 57 億元で、中国 初の浮体式LNG ターミナルとし、 再ガス化設備を搭載したLNG 船 (LNG-SRV:Shuttle and Regasification Vessel)で年間 220 万トンの LNG を輸入する。操業開始は 2013 年内を予 定している。 フェーズ-2は陸上ターミナルとする計画で、 受入能力は年間600万トン以上、 16 万 m3×4 基のタンクを建設し、2015 年頃の操業開始を目指す。設計は、CNOOC 山東 化学工程有限責任公司が担当している。 GDF Suez は 2010 年 10 月、CNOOC との間で計 260 万トンの LNG 中期売買契約を交 わしており、LNG を 2013 年から 4 年間にわたって 44 カーゴに分けて LNG を供給する。 また、GDF Suez は 2013 年 4 月のオランド仏大統領訪中を機に、2013 年 10 月から 5 年 間にわたりLNG-SRV としてGDF Suez Cape Ann をCNOOC に提供する契約に調印した。 11)江蘇省塩城濱海 LNG ターミナル CNOOC は 2004 年 10 月、江蘇省発展・改革委員会との間で江蘇省 LNG 利用プロジェ クトに関する原則合意文書に署名するとともに、塩城市との間で江蘇濱海 LNG プロジェ クトを共同で推進することに合意した。しかし、江蘇省では 1990 年代から PetroChina が 如東洋口港 LNG ターミナル建設で先行しており、CNOOC の計画は進展しなかった。そ の後、2010 年 6 月になり、塩城市との間で LNG ターミナルとパイプラインおよびガス火 力発電所からなる総額 120 億元のプロジェクトに関して合意文書に調印した。 受入能力はフェーズ-1 で年間 300 万トン、ガスパイプラインの延長距離は 328km、発 電プラントは 240 万 kW(30 万 kW×8 基) 。江蘇省によれば、この計画は江蘇省沿海 1,000 万トン級 LNG 受入基地の重要な構成要素で、江蘇省北部の重要ガス供給源になるととも に、江蘇省のピーク時ガス供給を確実なものにする。 12)CNOOC のその他計画 ・広東省汕頭市:CNOOC と広東省汕頭市政府は 2004 年 10 月、汕頭 LNG 受入ターミナ ルおよびパイプラインプロジェクトに調印した。フェーズ-1 の規模は、LNG が年間約 250 万トン、トランクパイプラインが約 200km で、総投資額は 45 億元程度とされている。 10 JPEC レポート ・遼寧省営口市:CNOOC は 2004 年 10 月、遼寧省政府との間で LNG プロジェクト合作 枠組みに調印した。また、CNOOC と営口市政府は LNG プロジェクト共同建設の枠組み 合意に署名した。受入規模は年間約 300 万トン、ガスパイプライン敷設距離は約 400km。 ・河北省秦皇島市:CNOOC は 2005 年 4 月、中国電力投資集団公司(CPI)および秦皇 島市人民政府との間で LNG 輸入ターミナルおよびガス火力発電所建設を推進するための 合意文書に調印した。フェーズ-1 は LNG 受入埠頭、ターミナル、ガスパイプライン、ガ ス火力発電プラントを建設、LNG 受入能力は年間 200 万トン。フェーズ-2 で LNG 受入能 力を年間 300 万トンに引き上げる。埠頭は山海関港あるいは秦皇島港に建設される。 2-2.PetroChina の LNG ターミナル 1)江蘇省如東 LNG ターミナル PetroChina 初のLNG ターミナルで、 2011 年11 月にフェーズ-1 の開業式典が行われた。 事業主体の中石油江蘇液化天然気有限公司は、PetroChina 傘下の昆侖能源有限公司(旧 CNPC HK)が 55%、金鷹国際集団(RGM International)傘下の Pacific Oil & Gas が 35%、 江蘇省政府の投資会社である江蘇国信資産管理集団有限公司(Guoxin)が 10%を出資し て設立した。EPC は、PetroChina 傘下の寰球工程公司(HQCEC)が担当、2011 年 5 月 に竣工し、カタールからの第 1 船で LNG を受け入れて試験操業を実施していた。 フェーズ-1 で 16 万 m3×3 基のタンク、港湾設備などが建設され、LNG 年間 350 万トン を受け入れ、同 48 億 m3 の気化ガスを供給することができる。西気東輸パイプラインに接 続しており、10 日分に相当するピークセービング能力をもつ。フェーズ-2 の工事も 2008 年 1 月にスタート、2013 年末には年間 650 万トン、ガス供給能力は同 87 億 m3 に達する 予定である。最終的には年間 1,000 万トン規模に拡張することが可能とされる。 PetroChina は、Shell との間でカタール Qatargas の第 4 プロジェクトから年間 300 万 トンの LNG を 25 年間にわたって受け取る契約を結んでいる。 2)遼寧省大連 LNG ターミナル PetroChina にとって 2 番目の LNG ターミナル。PetroChina は 2004 年 9 月、大連港集 団有と原油、LNG、石油製品の埠頭やタンクヤードの建設に関する戦略枠組み協定に調印 して計画をスタートさせた。2007 年 9 月から大連市大孤山半島で整地作業を開始し、2008 年 4 月から本格的な建設を開始した。2011 年 11 月に完成し、カタールから LNG 船が到 着、 操業を開始した。 事業主体の中石油大連液化天然気有限公司には、 PetroChina が75%、 大連港公司が 20%、大連港子会社の大連市建設投資公司が 5%を出資している。 埠頭とターミナル、 パイプラインからなり、 フェーズ-1の受入規模は年間300万トンで、 ガス供給能力は年間 42 億 m3 から最大 50 億 m3。フェーズ-2 で年間 600 万トンとし、ガ ス供給能力も 84 億 m3、最大 100 億 m3 まで引き上げる。389km の大連-瀋陽ガスパイプ ラインと大連および撫順のブランチラインが敷設され、東北パイプラインに接続する。 11 JPEC レポート LNG は主にカタールと豪州から輸入する。また、遼寧省の主要ガスユーザー22 社とガ ス売買に合意している。 FEED は東京ガス・エンジニアリングが、EPC は HQCEC が担当した。 3)河北省唐山曹妃甸 LNG ターミナル PetroChina の 3 基目の LNG ターミナルとなり、2010 年 10 月に政府認可を取得、2011 年 3 月から建設を開始した。北京市政府および河北省政府との間で枠組み合意文書に調印 しており、PetroChina が 51%、北京控股集団が 29%、河北省建設投資公司が 20%を出資 し、北京、天津、河北省に気化ガスを供給する。LNG は主に豪州とカタールから輸入する。 フェーズ-1 で 2013 年 8 月までに年間 350 万トンの受入能力を構築し、16 万 m3×3 基の タンクと 8 万-27 万 m3 の LNG 船が接岸可能な港湾、パイプラインなどを建設する。投資 総額は84億元。 パイプラインは、 ガス輸送能力が年間90億m3 のトランクラインを129km、 同 35 億 m3 前後のブランチラインを 28km 敷設し、永唐秦(河北省廊坊市永清–唐山–秦皇 島)パイプラインと結ぶ。 EPC は 2010 年 11 月に HQCEC が受注した。 4)広東省深圳 LNG ターミナル PetroChina が 51%と深圳市燃気および中電控股有限公司(CLP Holdings Ltd.)が 24.5% を出資して、深圳の大鏟湾に年間受入量 320 万トンの LNG ターミナルを建設しようとい うもので、2008 年 11 月に政府承認を取得した。しかし、大鏟湾南端に LNG ターミナル を建設することは、この海域の輸送業務に大きな障害を与えるとの懸念が、交通部、深圳 市政府、招商局集団からだされ、専門家のミーティングでも不適格との判断が下されたと いう。 PetroChina は、中央アジアガスパイプラインや西気東輸第 2 ルートで中国各地への天然 ガス輸送事業を進めているが、 この一環としてバックアップのLNG ターミナルを建設し、 ガス安定供給を図る。 5)PetroChina のその他の計画 ・広西自治区欽州市:PetroChina は 2004 年 11 月、広西自治区における LNG プロジェク トに合意した。投資額は 59 億 2,000 万元で、遼寧省大連や江蘇省如東との事前合意文書 に続くもの。PetroChina 傘下の広西石化分公司によれば、ターミナルの建設予定地は、北 部湾に面する欽州市の欽州港経済開発区で、製油所が建設されたエリアだという。 ・広東省江門市:江門市のファインケミカル工業団地である銀洲湖精細化工園区に LNG ターミナル建設を検討している。受入規模は最終的に年間 600 万トンとされ、工事は 2 段 階に分けて進められる。フェーズ-1 では、珠江デルタ地域への供給をターゲットに 2 基の タンクを建設し、その後さらに 2 基のタンクを増設するとされている。 12 JPEC レポート 2-3.Sinopec の LNG ターミナル 1)山東省青島 LNG ターミナル Sinopec にとって初の LNG 輸入ターミナル。2010 年 9 月に着工、2013 年内に竣工す る。 同社は 2004 年 5 月に山東省との間で青島 LNG プロジェクトに関して契約、2005 年 4 月には華能集団との間で、第 1 期で年間 300 万トンの LNG 基地と 150 万 kW のガス火力 発電プラントを建設することに合意した。しかし、建設サイトを当初予定していた地点か ら南方約 50km の董家口に移すよう政府の指示を受けたほか、イランやカタール、オース トラリアなどとの LNG 売買交渉が不調に終わり、計画は仕切り直しとなった。 董家口への変更に伴い、Sinopec は FS 修正とともに、鉄山、大場、海青など 9 つの町 を経由する膠州−日照のガスパイプライン建設計画を提出した。さらに、2009 年 12 月、 傘下の聯合石化(亜洲)有限公司(Unipec Asia)を通じて、ExxonMobil が計画している パプアニューギニアの LNG プラントから 20 年間にわたり年間 200 万トンの LNG を輸入 する長期売買契約を結んだ。こうして山東 LNG ターミナルの基盤が整い、2010 年 7 月、 NDRC は同プロジェクトの第 1 期計画を承認した。 総投資額 96 億 6,000 万元、16 万 m3 のタンク 3 基、8–27 万トンの LNG タンカー埠頭 を建設する。第 1 期の LNG 受入量は年間 300 万トン、第 2 期で同 500–600 万トンに引き 上げる。 政府認可を受け、 2010 年9 月に Sofregaz が FEED およびEPC に関して正式契約した。 2)広西自治区北海 LNG ターミナル Sinopec は、南シナ海北部湾に面する広西自治区北海市鉄山港区で年間受入能力 300 万 トンの LNG 輸入プロジェクトを計画、2013 年 7 月に建設を開始した。事業は Sinopec 天 然気分公司が担当し、建設期間は 3 年で、総投資額は 177 億 7,500 万元、環境対策に 12 億 6,500 万元が充当される。埠頭と 16 万 m3 のタンク 4 基からなるターミナルおよび総延 長 2,125 km のガスパイプラインの 3 セクションから構成され、広西自治区の 12 都市と広 東省の 2 都市に天然ガスを供給し、ミャンマーからのガスパイプラインと西気東輸パイプ ライン第 2 線のバックアップ機能を果たす。第 2 期計画で、16 万 m3 のタンク 2 基を増設 し、年間受入能力を 600 万トンに引き上げる。 Sinopec は、豪 Australia Pacific LNG(APLNG)と LNG 売買契約に調印している。 3)浙江省温州 LNG ターミナル 浙江省温州市の洞頭県小門島で計画している LNG プロジェクトは、2013 年 4 月に NDRC の承認を得た。ターミナル建設は、2014 年初頭から開始する予定だという。 同事業では LNG ターミナルとともにパイプラインも建設する計画で、LNG の受入能力 は 1 フェーズ-1 で年間 300 万トン、投資額は約 116 億元と見積もられている。 13 JPEC レポート 4)Sinopec のその他の計画 ・広東省珠海市黄芽島:2006年7月にマカオ行政府がマカオ向けガス供給者としてSinopec を選定、Sinopec とマカオ天然気有限公司(Companhia de Gas Natural de Macau)が広 東省珠海黄芽島にフェーズ-1 で年間 200 万トン、フェーズ-2 で同 500 万トンの LNG ター ミナルを建設する。2007 年 7 月には中国商務部が両社折半出資の中天能源控股有限公司 の設立を承認した。気化ガスは海底パイプラインでマカオに輸送、主に発電所向けに供給 する。 ・広東省茂名市: Sinopec は茂名に原油や LNG などを取り扱う港湾および貯蔵・流通タ ーミナルを建設する計画で、うち LNG については 50 万 m3 規模の貯蔵設備を検討してい る。 ・江蘇省連雲港市:Sinopec は連雲港で年間 300 万トン規模の LNG 輸入ターミナル建設 の検討を開始している。 2-4.その他企業 1)広匯能源股份有限公司(Guanghui Energy) 広匯能源傘下の広匯能源総合物流発展有限責任公司と Shell の中国法人である壳牌(中 国)有限公司は 2013 年 6 月、江蘇省南通市啓東での LNG 輸入ターミナル建設に向けて趣 意書(LOI)に調印した。広匯能源は、3 期に分けて LNG ターミナルを建設する計画で、 フェーズ-1 は年間 60 万トン、フェーズ-2 で同 150 万トン、フェーズ-3 で同 350 万トンに 引き上げる。うちフェーズ-1 は、国家発展・改革委員会(NDRC)の支持と江蘇省能源局 (エネルギー局)の原則的同意を取り付けているという。 Shell はフェーズ-2 から同プロジェクトに参画する意向をもっているという。 2)中油潔能集団有限公司(SinoGas) SinoGas は、広東省汕頭市沖の南澳島に位置する南澳県雲澳鎮の布袋澳湾に LNG 受入 ターミナルを建設し、汕頭、汕尾、潮州、掲陽の粤東地区(広東省東部)4 都市および梅 州を中心にガス供給を開始するという計画を進めている。2009 年前半に汕頭南澳 LNG の FS を完了、同年末の基本設計と専門家による論証を経て、2010 年 1 月には広東省政府の 承認を取得した。LNG ターミナルの受入能力は、フェーズ-1 で年間 120 万トン、フェー ズ-2 で同 300 万トンとする。16 万 m3×2 基のタンクを建設、ガス供給は、年間輸送能力 80 万トンのパイプラインをメインに、トラック輸送で同 10 万トン、船舶輸送で同 30 万 トンを捌く。フェーズ-1 で 8km の海底パイプラインと 23km の陸上パイプラインを敷設 する。 SinoGas 傘下の汕頭中油潔能天然気有限公司(Shantou Sinogas Energy)は 2011 年 3 月に豪州のCBM 開発会社である Icon Energy との間で、 20 年間・合計4,000 万トンのLNG 長期売買契約に調印した。これにより SinoGas の LNG 輸入プロジェクトが大きく前進す 14 JPEC レポート ることになり、同事業には中国国電集団公司も参加する。 Icon は、クイーンズランド州 Cooper Basin の ATP 626P、ATP 855P、ATP 849P や南 豪州の PEL 218 を開発して、CBM を液化して輸出する。液化には Queensland で計画中 のLNGプラントやSouth AustraliaのLNGプラントを使うことを検討、 複数あるGladstone LNG プロジェクトの 1 つとの契約を進める。 3)新奧能源控股有限公司(ENN Energy Holdings Ltd.) ENN Energyは、 中国初の非国営ガスパイプライン企業で、 LNG輸入の認可も得ており、 同時に浙江省温州あるいは台州、広東省湛江で LNG ターミナル建設を検討してきた。 2010 年 11 月、傘下の ENN Energy Trading を通じて米国 Cheniere Energy Partners の 米国ルイジアナ州 Cameron の Sabine Pass LNG ターミナルから年間 150 万トンの LNG を 20 年間にわたって引き取ることに合意した。 2011 年 12 月には、InterOil Corp(IOC)と Pacific LNG Operations がパプアニューギニ アで推進している Gulf LNG プロジェクトから、 年間 100–150 万トンの LNG を 2015 年か ら 15 年間にわたって引き取ることに合意した。 4)上海申能(集団)有限公司(Shenergy Group) LNG 輸入を主目的としたものではないが、上海申能傘下の上海燃気(集団)有限公司 (SGG)が、上海市浦東新区の五号溝(Wuhaogou)にピークセービング用の LNG ター ミナルを保有している。上海のガス供給は、東シナ海の平湖ガス田と西気東輸パイプライ ンが中心だが、緊急時に対応するため、1999 年に平湖ガス田が稼働した時点で 2 万 m3 の タンク1基を建設した。 2008年に5万m3 のタンク2基を東京ガス・エンジニアリング (TGE) と中国の中冶焦耐工程技術有限公司が共同で建設し、11 月にマレーシア Petronas からス ポット契約で初の LNG を受け入れた。次期増設として 10 万 m3 のタンク 2 基を建設する ことを決定、2013 年 7 月にベルギーTractebel Engineering(GDF SUEZ Energy Services) にプロジェクト・マネジメント・コンサルタント(PMC)業務を発注した。 3.LNG 輸入契約 2006 年に年間約 69 万トンから始まった中国の LNG 輸入は、2012 年には 1,470 万トン にまで拡大している。輸入ソースも当初は豪州のみであったが、カタール、インドネシア、 マレーシアなどとの長期売買契約、さらにスポットでアフリカから南米に至るまでソース を拡大している(表-1 参照) 。中国各社は、今後の輸入ターミナル新増設に対応し、さら なる長期規売買契約の確保を進めている。 15 JPEC レポート 3-1.CNOOC 広東にはオーストラリアの North West Shelf(NWS)から、福建にはインドネシア Tangguh、 上海にはマレーシア MLNG Tiga から LNG が供給されている。 浙江については、 オーストラリアの Gorgon LNG との間で事前契約に調印したが、価格交渉に失敗した。そ の後、CNOOC は Qutargas や Total などから購入することに合意した。特に、Qatargas とは、 25 年間にわたって年間 200 万トンの LNG について長期売買契約に調印していたが、 Qatargas は 2013 年より供給量を 300 万トン増やすとともに、200 万トン引き上げること についても検討することになった。これにより、CNOOC が Qatargas から受け取る LNG は年間最大 700 万トンに増えることになる。 在来型の天然ガス液化事業以外に、CNOOC は、BG がオーストラリアで進めている Queensland Curtis LNG(QCLNG)プロジェクトの第 1 フェーズ(第 1 トレイン)に 10% の権益で参加するとともに、操業開始から 20 年間にわたって年間 360 万トンの LNG を購 16 JPEC レポート 入することに合意した。2013 年 5 月には、BG との間で 2015 年から 20 年間にわたり年 間 500 万トンの LNG 追加供給に合意した。これにより、既契約分である年間 360 万トン と合計で年間 860 万トンの LNG を BG から購入することになった。また、CNOOC は、 QCLNG プロジェクトの第 1 トレインに関して、権益 40%を追加取得して 50%とするこ とにも合意した。 2010 年 10 月には豪州 Bonaparte 洋上 LNG(FLNG)計画を進める GDF Suez と合計 260 万トンの中期契約を交わした。これに関連して、GDF Suez は 2013 年 10 月から最 大5年間にわたり再ガス化設備を搭載したLNG輸送船 (SRV) であるGDF Suez Cape Ann を CNOOC が天津港で計画している中国初の LNG 浮体式ターミナル向けに提供する。 3-2.PetroChina 豪州 Browse LNG プロジェクトと LNG 売買に基本合意していたが、期限を迎えても最 終合意に至らなかった。ただ、Browse LNG の上流鉱区権益を BHP から買収するなどし て、LNG 購入に動いていたが、Browse LNG プロジェクトは計画の見直しが決まった。 Qatargas の第 4 プロジェクトから年間 300 万トンの LNG を輸入する契約を交わしてい る。2010 年 9 月には、Chevron との間で豪州 Wheatstone プロジェクトからの LNG 購入 とガス田開発への参加に基本合意した。さらに今後の需要拡大に対応するため、Shell や三 菱商事、韓国 Kogas と協力してカナダ Kitimat のシェールガス液化事業を計画している。 Shell との間では豪州クイーンズランド州のCBM を液化して輸出するためGladstone 市 沖合の Curtis 島で LNG プロジェクトを進めている Arrow Energy の買収に成功した。 PetroChina は、傘下の EPC コントラクターである寰球工程公司を通じて Liquefied Natural Gas Limited(LNG Ltd.)を買収した。LNG Ltd.は豪州 Gladstone で Fisherman's Landing LNG プロジェクトを進めている。さらに、LNG Ltd.子会社の Magnolia LNG (MLNG)は国ルイジアナ州の Lake Charles で、シェールガスから年間 800 万トン(同 200 万トン×4 系列)の LNG プロジェクトを計画している。 また、2013 年 3 月、イタリア Eni の東アフリカ子会社である Eni East Africa の株式 28.57%を 42 億 1,000 万ドルで取得すると発表した。Eni East Africa はモザンビーク Rovuma 盆地 Area 4 の権益 70%を保有しており、株式取得により CNPC は Area 4 の権 益 20%を間接的に買収する。Rovuma 盆地では巨大な天然ガス埋蔵が発見されており、 2018 年操業開始をめざして LNG プラントが建設される見込み。 2013 年 6 月には、ロシアの独立系天然ガス企業である Novatek が Total と共同で計画し ている年産能力 1,650 万トンの Yamal LNG プロジェクトへ 20%の権益で参加するととも に、年間 300 万トンの LNG を購入することに基本合意した。 3-3.Sinopec 2009 年 12 月に子会社の聯合石化(亜洲)有限公司を通じて、ExxonMobil 傘下の Esso 17 JPEC レポート Highlands がパプアニューギニアで開発する LNG プラントから年間 200 万トンの LNG を 輸入する長期売買契約に調印、青島ターミナルで受け入れる。 これに続いて、ConocoPhillipsとOrigin Energyが豪州クイーンズランド州で推進する CBMからのLNG生産事業であるAustralia Pacific LNG(APLNG)のシェアから年間760万 トンのLNGを受け取ることになった。SinopecはAPLNGに25%の権益で参加する。これに 関連し、2013年4月、商船三井が、中国の滬東中華造船(集団)有限公司(Hudong) の 建造する6隻の新造LNG船の保有および船舶管理業務について参画することが決まった。 商船三井の持ち分は20%で、残りの80%は中国海運(集団)総公司(China Shipping (Group) Company)とSinopec。LNG船は、2016年初めから2017年後半にかけて順次竣工する。 また、Sinopec は、カナダの石油ガス探鉱開発会社である Daylight Energy の全株式を買 収することに合意した。Daylight の中心的な資産は、アルバータ州北西とのブリティッシ ュ・コロンビア州北東における 69 の油ガス田で、シェールガスをカナダ西海岸の LNG 輸 出プロジェクト向けに供給することが期待されている。 このほか、 Sinopec は、 カナダ西海岸でマレーシアPetronas が推進するPacific Northwest LNG プロジェクトに参画することについて話し合っているもようである。同事業には日本 から石油資源開発(JAPEX)が参加しており、インド Indian Oil Corp(IOC)も参加の意 向を示しているという。 3-4.その他企業 ・SinoGas:2011 年 4 月、豪州 Icon Energy との間で、20 年間・合計 4,000 万トンの LNG 長期売買契約に調印した。 ・ENN Energy:2010 年 11 月、米国 Cheniere Energy の Sabine Pass LNG から年間 150 万トンの LNG を 20 年間にわたり受け取る契約に調印した。 参 考 Statistical Review of World Energy 各年版(BP) 中国海関統計(中国海関総署) 各社年次報告書 ASEAN 諸国で相次ぐ LNG 輸入プロジェクト 1/2(JPEC レポート 2012 年 3 月/4 月) 中国の石油産業と石油化学工業 2012 年版(東西貿易通信社) East & West Report 各号(東西貿易通信社) 18 JPEC レポート 略語一覧 CBM:Coalbed Methane(石炭層とその周辺に賦存するメタンガス、炭層ガス) CLNG JV :China LNG Joint Venture(中国液化天然気合資企業) CNOOC:China National Offshore Oil Corporation(中国海洋石油総公司) CNPC:China National Petroleum Corporation(中国石油天然ガス集団公司) CTCI:台湾中鼎工程股份有限公司 EIA:Energy Information Administration(米国エネルギー情報局) EPC:Engineering, Procurement and Construction(プラントの設計・調達・建設) FEED:Front End Engineering Design(プラントの基本設計) FS:Feasibility Study(事業可能性検討) HQCEC:寰球工程公司、PetroChina 傘下 LNG-SRV:LNG-Shuttle and Regasification Vessel (液化基地で搭載した LNG を受け入れ地点まで輸送し、甲板上で再ガス化し て陸上のパイプラインへガスを送り出す形態) NDRC:The National Development and Reform Commission(中国国家発展改革委員会) NWS:North West Shelf (豪州北西部の大規模 LNG プロジェクト) SNG:Synthetic Natural Gas(合成天然ガス) または Substitute Natural Gas(代替天然ガス) 本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析 したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは[email protected] ま でお願いします。 Copyright 2013 Japan Petroleum Energy Center all rights reserved 次回の JPEC レポート(2013 年度 第 12 回)は 「台湾の石油・ガス産業」 を予定しています。 19