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半固形化栄養法の検討 - 株式会社フードケア

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半固形化栄養法の検討 - 株式会社フードケア
特別編集
2013
経鼻胃管チューブ・PEGから注入できる
半固形化栄養法の検討
~とろみ調整食品を用いて~
三鬼 達人
藤田保健衛生大学病院 看護部
摂食・嚥下障害看護認定看護師
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提供:株式会社フードケア 発行:ゼネラルヘルスケア株式会社 〒111- 0053 東京都台東区浅草橋5 - 2 - 3 鈴和ビル7F 発行人:竹澤慎一郎
経鼻胃管チューブ・PEGから注入できる半固形化栄養法の検討
~とろみ調整食品を用いて~
三鬼 達人
藤田保健衛生大学病院 看護部
摂食・嚥下障害看護認定看護師
はじめに
近年、わが国では半固形化状の経腸栄養剤を投与する
「半固形化栄養法」が注目されている。半固形化栄養法は、経腸
栄養剤を液体から半固形状に調整したもので、寒天やゲル化剤を用いる方法、とろみ調整食品を用いる方法、すでに半
固形化状になった市販品を用いる方法などがある。効果としては、液体の経腸栄養剤に起因する胃食道逆流症
(Gastro
Esophageal Reflux Disease:以下GERD)や下痢、嘔吐などを予防・改善すると報告されている1-2)。
これは、経腸栄養剤の形状を液体から半固形状にすることによって、生理的な消化管運動を誘発するためと考えられて
いる。また、注入時間の短縮化により活動時間の確保ができ、ADLやQOLの向上にもつながるとされている3)。これらの
(以下NGチューブ)
を用いた報告はま
利点から半固形化栄養法に関する報告は数多くあるが4-9)、径の細い経鼻胃管チューブ
だ少ない。その理由として、GERDを予防できる粘度は20,000mPa・sと報告されているが、細いNGチューブでは物理的に
注入が困難、あるいはできないためである。そこで、細いNGチューブからでも注入できるよう、注入時に液状を保てるとろ
み調製食品を用いて、人工胃液内での形状変化および臨床での有用性についての検討を行ったので報告する10-11)。
研究の概要
1. とろみ調整食品を用いた半固形化栄養法の人工胃液内での検討
1-1.
1- 2.
1- 3.
入れるとどうなるか
高いと どうなるか
再現可能か
人工胃液に試料を
人工胃液のpH値が
目的
有用性の検討
どの経腸栄養剤でも
ブおよびPEGから注入できるか臨床での有 ドケア)を上記試料に対して0.5、1.0、2.0%
用性を確認する。
1. とろみ調整食品を用いた半固形化
栄養法の人工胃液内での検討
8Fr・NGチューブのような細いチューブ
からでも注入できるよう、注入時に液状で、
注入後人工胃液内において20,000mPa・s
2. 臨床での
1.‌とろみ調整食品を用いた
半固形化栄養法の
人工胃液内での検討
の粘度が得られるか以下3点を確認する。
(2.5、5、10g)使用
(2)人工胃液
第14回改正日本薬局方崩壊試験法、第1
液に準じ、以下の4種類を調製した。
人工胃液A:‌塩 化 ナ ト リ ウ ム2g、 希 塩 酸
を 精 製 水 で1,000mLに 調 製
(pH1.2)
試料及び方法
1-1.人工胃液に試料を入れるとどうなるか
1-2.人工胃液のpH値が高いとどうなるか
1-3.どの経腸栄養剤でも再現可能か
(1)試料
・‌ハイネ(株式会社大塚製薬工場)400mL
®
2.臨床での有用性の検討
+蒸留水100mL
人工胃液内での結果をもとに、NGチュー ・‌ネ オハイトロミールⅢ®(株式会社フー
2
人工胃液B:‌人 工胃液A+消化酵素ペプシ
ン1g/L
人工胃液C:‌塩化ナトリウム2gを精製水で
1,000mLに調製(pH6.0)
人工胃液D:‌人 工胃液C+消化酵素ペプシ
ン1g/L
(3)基本調製方法
場合を想定し、人工胃液C,Dにて試料の粘
ふるい
経腸栄養剤の種類によって人工胃液内で
1)‌ハ イ ネ 400mL+蒸 留 水100mLを 半 量 度上昇を検討したが、篩から試料が通り抜 の粘度上昇に差があった。18種類中13種
®
(250mL)に分け、一方にネオハイトロ けてしまった。これらから、胃内環境下の 類が20,000mPa・s以上の粘度上昇が得ら
ミールⅢ®を必要量
(0.5、1.0、2.0%)添 pHが高いと粘度上昇がほとんど得られな れた。
加 し て30回 撹 拌 し、50mLカ テ ー テ ル いことが分かった。
(右側)は、篩から通り抜け
チップで8Fr・NGチューブから人工胃 ※pH6.0の数値
液AあるいはC(20mL)
に注入する。
2.臨床での有用性の検討
てしまった試料を測定したものである。
2)
残
‌ り半量にも同処理を行い、追加注入
1-3. どの経腸栄養剤でも再現可能か 人工胃液での結果をもとに、実際の臨床
3)2)に 人 工 胃 液Bあ る い はD(280mL)を (表 1)
現場での効果を検討した。本検討は、大学
する。
加える。
とろみ調整食品としてネオハイトロミー 倫理委員会の承認を受け、全事例に同意を
4)
以
‌ 後、5分毎に30回ゆっくりと撹拌する。 ル Ⅲ®1.0%を 使 用 し、18種 類 の 半 消 化 態 得て実施した。
5)20分後、16メッシュの試験篩にて試料 栄養剤について検証した。試料は全量を
をろ過、その後5分静置する。
6)
メ
‌ ッシュの上の残渣の粘度測定をする。
※測定条件:B型回転粘度計 12rpm、測
500mLとし、適宜水を加えた。
表1. 各試料の人工胃液内注入後の粘度
試料
定開始30秒後の値を測定値とする。
商品名
結果
1-1. 人工胃液に試料を入れるとどう
なるか(図 1)
とろみ調整食品の添加量が 1.0%以上で
あれば、pH1.2の人工胃液環境下でGERD
34,650
CZ ポチ 375mL
125mL
28,134
®
アイソカル RTU 400mL
100mL
24,385
アイソカル 2K 400mL
100mL
23,710
テルミール 2.0 α 400mL
100mL
22,103
CZ-Hi 400mL
100mL
20,314
-
18,944
L-7 500mL
®
エフツーアルファ 400mL
100mL
7,324
MA-R2.0 400mL
100mL
6,911
®
とろみ調製食品を加えて常温下で2時間静
ラコール ® 500mL
医薬品
-
29,388
エンシュア・リキッド 500mL
-
24,359
エンシュア・H 500mL
-
35,622
グルセルナ 500mL
-
59,433
®
インスロー 400mL
100mL
20,158
®
リーナレン LP 500mL
-
16,134
リーナレン MP 500mL
-
測定限界以上 *
レナウェル 3 500mL
-
10,726
®
®
工胃液内で得られた粘度上昇は人工胃液に
1-2. 人工胃液の pH 値が高いとどう
なるか(図 3)
-
®
の常温下での粘度を経時的に測定したが、
分かった。
ハイネ ® 500mL
®
なお、同試料の人工胃液内に注入する前
注入することで得られた反応であることが
20,133
®
の粘度を得られることが分かった。
は得られなかった
(図2)
。したがって、人
100mL
®
を予防できるとされる20,000mPa・s以上
置しても、20,000mPa・sまでの粘度上昇
ハイネ ® 400mL
®
標準タイプ
®
糖尿病用
腎疾患用
®
®
胃酸分泌がない、もしくは極端に少ない
図1 pH1.2 人工胃液内注入後の粘度
30,000
25,000
20,000
15,833
20,133
22,233
15,000
10,000
5,000
0
0.5%
1.0%
2.0%
とろみ調整食品の添加濃度
粘度(mPa・s)
水
*65,000mPa・s以上の粘度が推測される
図2 人工胃液に入れない場合の粘度の経
‌
時変化
1,000
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
0.5%
1.0%
2.0%
図3 ‌人工胃液のpHが与える影響
(ネオハイトロミールⅢ1.0%)
25,000
20,133
20,000
15,000
10,000
5,000
0
20 40
60 80 100 120 140
時間(分)
0
pH1.2
228
pH6.0
人工胃液のpH
3
PEG の場合
研究方法
結果
・‌注 入容器からの自然滴下および手押し
注入
(1)対象
経管栄養中に下痢
(症 候 性 下 痢 症 を 除
く)、GERDを合併した17例
(下痢11例、GERD4例、下痢+GERD2例)
(2)検討事項
(1)下痢の有無について(図 7、8)
注入手順(ハイネ の場合)
®
準備:
下痢13例中12例は、とろみ調整食品を
用いた半固形化法導入後に下痢が消失し
た。下痢が治まらなかった1例については、
精査にて病原性大腸菌が検出された。なお、
リクライニング位30°以上にし、チュー
下痢が消失するまでの期間は、1日で消失
1)‌下痢の有無
(目視での観察および後方
ブの先端が胃内に挿入されていることを確
したのが 6名、ついで2 , 3日であった。
視的にカルテ記録から評価)
認する。また、先に投与された経腸栄養剤
(2)GERD の有無について(図 9)
2)GERDの有無
(食前と食後の咽頭内容
物を吸引し、尿糖テストテープ法を が胃内に残留していないかも確認をする。
用いて糖反応で評価)
今回、検討した6例とも、半固形化導入
STEP1:
後に糖反応が(-)となった。
STEP3:
を投与する経管栄養法が用いられる。経管
~30分間安静にする。
法の合併症としては、GERDや下痢、嘔吐
アルブミン値の変動について
(図10)
ハイネ®200mL+水50mLに対し、ネオハ (3)
定期的にアルブミン値の測定を行なって
(3)除外基準
イトロミールⅢ®1包2.5g(1.0%)を添加し、
いた15事例を後方視的にカルテより検討
・‌胃 酸分泌抑制剤
(プロトンポンプインヒ 30回撹拌する(図5)。
ビター:PPI)を服用中で胃酸分泌が少な ※攪拌しながら添加するとダマができにく した。1事例のみ開始時に比べ終了時に低
下するといった結果になったが、この事例
いと予測される患者
く、均等に混ざりあう。
は病原性大腸菌が検出され下痢が治まらな
※PPIを胃粘膜保護剤に変更した場合は
STEP2:
かった事例であった。
実施可能とする。
ただちにカテーテルチップで約5~10分
・‌胃酸の分泌が少ない患者
(胃切除術後など)
以内に注入する。残りの半量も同様に行う
・‌チューブの先 端 が十二指腸 のトライツ靱
考察
(図6)
。
帯を超えた位置に留置されている患者
※注入に力を要する時は、30mLカテーテル
経口からの食事摂取が困難になった場
(4)必要物品(図 4)
チップなどに変更すると注入しやすくなる。 合、体外から直接チューブを介して流動食
3)アルブミン値の変動
(5)注入方法
NG チューブの場合
・‌8Frと10Fr:50mLカテーテルチップで
手押し注入
・‌12Fr以上:注入容器からの自然滴下注入
チューブの閉塞予防のため白湯を20mL 栄養法は、腸管機能が正常で、経口からの
注入し、30~45°のリクライニング位で20 摂取が困難な場合に適応となる。経管栄養
などが挙げられる1)。そこで近年では、こ
図4 必要物品
③
れらの合併症を予防、改善する目的で、半
④
①経腸栄養剤
(ハイネ®:株式会社大塚製薬
工場)400mL+水100mL
⑤
①
は、経腸栄養剤の形状を液体から半固形に
③撹拌する容器
誘発するためと考えられている2)。実際に
④50mLカテーテルチップ
⑤撹拌するスプーンもしくは泡だて器
図5 撹拌
STEP1
・容器にハイネ®200mL+水50mLを入れる。
・撹拌しながらネオハイトロミールⅢ®をまぶすように添加し、30回撹拌する。
4
化栄養法が合併症を予防する理由として
‌②とろみ調整食品
(ネオハイトロミールⅢ :
株式会社フードケア)2包
②
固形化栄養法が注目されている。半固形
®
することによって、生理的な消化管運動を
GERDや下痢、嘔吐が改善したとする報告
も多数ある4-9)。そして、GERDや下痢、嘔
図6 注入
STEP2
・‌50mLカテーテルチップで5回に分けて
約5~10分以内に注入する。
図7 下痢の症例
14
12
10
8
6
4
2
0
図8 下痢消失までの期間
13
14
12
10
8
6
4
2
0
1
導入前
導入後
とろみ調整食品を用いた半固形化栄養法
図9 GERDの症例
6
1日
3
3
2日
3日
下痢消失までの期間
g/dL 4.5
n=15
上昇:14例
4.0
アルブミン
6
導入前
0
導入後
とろみ調整食品を用いた半固形化栄養法
の種類によって20,000mPa・sに達しない
図10 アルブミン値の推移 ・最小:+0.3mg/dl
・最高:+3.5mg/dl
・平均:+0.8mg/dl
3.5
3.0
下降:1例
・- 0.6mg/dl
2.5
2.0
1.5
7
6
5
4
3
2
1
0
場合があることが分かった。原因ははっき
りとは断定できないが、経腸栄養剤に含ま
れるタンパク質の種類が影響している可能
性が高く、比較的タンパク源としてカゼイ
ンや大豆タンパクの配合が高いものの方が
胃酸との反応が良い傾向があった。一方、
タンパク源として乳清の割合が高いものは
酸との反応が低い傾向が示された。乳清
は、ヨーグルトの上澄み液でよく説明され
開始時
2
3
4
5
終了時
採血日
・半固形化開始前の測定値を0日とし、終了時は退院時に一番近い測定値とした。
・中間点は、ランダムに4時点を選び出した。
・Alb値の測定日数・回数は、事例により間隔は異なる。2~10日間隔で測定。
・上昇、下降は、最初と最後の測定値からの数値の差とした。
るが、酸では凝固しないタンパク質として
知られるため、おおよそ説明がつく。また、
窒素源が、アミノ酸オリゴペプチドの消化
態栄養剤やアミノ酸の成分栄養剤は、タン
パク凝固反応は起こらないため、胃内では
吐以外にも、半固形化栄養法を行うことに 以上の粘度が得られた。これは、経腸栄養 増粘しないと推測される。よって、消化態
よって得られるメリットはいくつかあり、 剤に含まれるタンパク質が、低pH下でタン 栄養剤および成分栄養剤に本法を用いても
これらはADL・QOLの向上にもつながる パク凝固を示した結果と、とろみ調整食品 半固形化栄養法の効果は期待できない。
とされている3)。
に含まれる増粘多糖類
(キサンタンガム)によ
これらの人工胃液内での結果をもとに、
このように、様々な利点がある半固形化 る水分の増粘により得られたものと推測され 実際の臨床現場での効果を検討した。対象
(症候性下
栄養法ではあるが、細い径のNGチューブ る。なお、とろみ調整食品の添加濃度は、 は、経管栄養中にGERD、下痢
を用いた報告はほとんどない。その理由と 注入の際に手にかかる負荷を考えると1.0% 痢症を除く)を合併した症例としたが、後
して、GERDを予防できる粘度として報告 程度で十分と考える。
されている20,000mPa・sの半固形化栄養
に病原性大腸菌が検出された1例を除いて
次に、PPIなどの制酸剤を服用している は、改善に向かい、大きな問題なく実施で
剤を、細いNGチューブから注入するには 症例では、胃酸の分泌が少なく24時間平 きた。また、栄養状態の改善もみられた。
困難なためである。そこで、
細いNGチュー 均胃内pHが4 ~ 6で推移しているため12- ただし、実施件数が少ないのが現状である。
、pH6.0の人工胃液内で粘度上昇が得ら よって、とろみ調整食品を用いた半固形化
ブからでも注入できる半固形化栄養法につ
14)
いて検討を行った
れるか検討を行った。これは、腸瘻栄養法 栄養法の適応については、医師の指導下で
。
10-11)
本検討では、経腸栄養剤としてハイネ® や胃全摘を行い、胃酸の分泌の影響が得ら 慎重な判断のもと検討していただきたい。
(株式会社大塚製薬工場)
を、とろみ調整食 れない症例も想定した。結果、pH1.2の人
品としてネオハイトロミールⅢ®(株式会 工胃液内で行った時のような半固形状のも
社フードケア)を用い、とろみ調整食品を のは見られず、液状だったため、篩を通り
1.0%添加したものを試料として用いた。
抜けてしまった。よって、胃酸の分泌が少
結論
経腸栄養剤にとろみ調整食品1.0%を添
胃の環境下で半固形 状になっていれば、 ない若しくは無い症例については、除外す 加 す る 半 固 形 化 栄 養 法 は、 径 の 細 いNG
GERDおよび下痢は防げるのではないかと るまたは慎重に進める必要があるものと考 チューブを用いて注入することができ、
考え、pH1.2の人工胃液に上記試料を8Fr・ えられた。
NGチューブで注入する検証を行った。人工
ふるい
胃内環境下でGERDを予防するとされる
ここまでの検証は、経腸栄養剤としてハ 20,000mPa・s以 上 の 粘 度 が 得 ら れ る こ
胃液に浮遊する半固形状のものを篩 でろ過 イネ®のみを用いてきたが、他の経腸栄養 とが分かった。また、十数例ではあるが、
し、篩の上の残渣の物性を測定した結果、 剤
(半消化態栄養剤)についても同様の結果 GERDおよび下痢の改善が見られ、半固形
とろみ調整食品1.0%以上で20,000mPa・s が得られるか検証したところ、経腸栄養剤 化栄養法としての効果が期待された。
5
とろみ調整食品を用いた半固形化栄養法のQ&A
Q1.半固形化栄養法の効果は
どのようのものがありますか。
A.右記にまとめた表の通りです。
半固形化栄養法の効果
● 注入時間の短縮
ADL・QOL
の向上
●便性の改善
●‌胃瘻周囲の漏れなどによるスキントラブル
の予防
●褥瘡の予防、改善
Q2.とろみ調整食品を用いた
半固形化栄養法のメリット ・
デメリットは何ですか。
A.右記にまとめた表の通りです。
メリット
デメリット
●経腸栄養剤の選択肢が広がる
●調整・注入の手間
● 8Fr
●粘度調整が必要
以上の NG チューブで実施可能
●経腸栄養剤によってはコストが軽減できる
●
‌チューブの閉塞の可能性
●栄養状態の改善
●
‌便秘の可能性
●下痢・GERD・嘔吐の予防
*
*便秘傾向になる場合は、とろみ調整食品
の添加量を調整する必要があります。
Q3.除外基準はありますか。
A.あります。右記の点に注意して
ください。
とろみ調整食品を用いた半固形化栄養法の除外基準
●
‌胃酸分泌抑制剤(プロトンポンプインヒビター:PPI)を服用中で胃酸分泌が少ないと予測される患者
*PPI を胃粘膜保護剤に変更した場合は実施可能とする。
●胃酸の分泌が少ない患者(胃切除術後など)
●‌チューブの先端が十二指腸のトライツ靭帯を超えた位置に留置されている患者
チューブの内筒に抵抗がかかり、負担が
A.カテーテルチップを強く押し過
断すると、粘度が付き過ぎてしまうので、 ブ油を付けたり、カテーテルチップのサ
ぎないこと、注入を開始したら中
断せず連続注入することです。
大きくなります。また、注入を途中で中
連続的に注入します。
ことを心掛けてください。
注入に力を要するときは、内筒にオリー
イズを小さいもの
(30mL)
に変更したりす
目安としては、250mLのとろみをつけ
ると注入が容易になることがあります。
人工胃液内での増粘効果は認められま
ペプチドのためです。
Q5.消化態栄養剤や成分栄養剤
にも使用することができますか。
せんでした。
A.本方法では、使用できません。
凝固反応の起こらないアミノ酸やオリゴ
Q6.水分の注入方法とタイミ
ングはどうしたらよいですか。
水分は経腸栄養剤と比較して胃からの
ちなみに、水分にとろみ調整食品を添
排泄が早いためです。また、経腸栄養剤
加しても人工胃液内では増粘効果が認め
A.原則的に、とろみをつけない水を経
なぜならば、浸透圧等が崩れてしまうか
腸栄養剤投与30分前位に注入します。
6
カテーテルチップを強く押しすぎると、 た経腸栄養剤を5 ~ 10分以内に注入する
Q4.注入時における注意点は
ありますか。
栄養剤に含まれる窒素源が、タンパク
に水分を混ぜることは推奨できません。 られないことを確認しています。
らです。
Q7.経鼻胃管以外の胃瘻栄養
にも使用できますか。
チューブの先端が十二指腸に留置され
ている腸瘻栄養は、胃酸の影響を受けに
(PEG)
でも本法は実施できます。
Q8.注入バックからの自然滴
下は可能ですか。
調整など注意が必要です。なお、右表は
A.チューブのサイズ、とろみ調整食
剤の種類によって粘度が異なるため、目
自然滴下の場合は、注入スピードが
速くなりすぎるときがあるので滴下
Q9.費用はどれぐらいかかりますか。
A.経腸栄養剤にかかる費用に、とろ
み調整食品の費用が加算されます。
に注入できます。
くいので使用ができませんが、胃瘻栄養
A.使用できます。
品の添加量によっては可能です。
PEGの場合は、径が太いためより簡単
投与経路
とろみ調整食品(ネオハイトロミールⅢ®)を
1.0%添加した場合になります。経腸栄養
安として下さい。また、自然滴下が途中
10Fr チューブ以下
12Fr チューブ以上
で止まる場合は、手押し注入に切り替え
てください。
PEG
投与方法
カテーテルチップで
の手押し注入
注入バックからの
自然滴下が可能
注入バックからの
自然滴下が可能
具 体 的 に は、 分 包 タ イ プ の 場 合1包
医薬品扱いの経腸栄養剤では医療保険
(2.5g)20円、500g入りは2.5gあたり約
の適応となるため1 ~ 3割負担+とろみ調
10.68円、2kg入りは2.5gあたり8.31円と
整食品の費用を加算します。
なります。
引用文献
1)
Haynes-Johnson V:Tub feeding complications:Causes、prevention、and therapy.Nutritional Support Services、6:17-24、1986.
2)
合田文則:胃瘻からの半固形短時間摂取法ガイドブック―胃瘻患者のQOL向上をめざして―:医歯薬出版、11-14、2006.
3)
東口髙志他:半固形化栄養法ガイドブック-PEGからNGチューブまでできる!-、株式会社メディカ出版、2012.
4)
爲季清和:粘度調製食品REF-P1と経腸栄養剤メイバランス1.5を用いた胃食道逆流に伴う誤嚥性肺炎の予防効果、静脈経腸栄養、23(2):263-266、2008.
5)
合田文則:半固形化栄養剤
(食品)による胃ろうからの短時間注入法、臨床栄養、106(6):757-762、2005.
6)
‌金岡俊治、小松建次、溝渕健介:粘度調製食品を用いた経腸栄養の胃食道逆流に伴う誤えん性肺炎の予防と患者のQOLに対する長期的影響、静脈経腸栄養、20(1)
:
65-69、2005.
7)
足立香代子:栄養剤短時間短時間注入法、月刊ナーシング、27(3):70-75、2007.
8)
永口美晴、幣憲一郎:経腸栄養法のピットフォール 増粘剤と胃内での変化、臨床栄養、110(6):696-701、2007.
9)
伊藤由妃、今高多佳子、小林一信:とろみ剤を用いた半固形経腸栄養剤と寒天を用いた固形経腸栄養剤の物性比較、静脈経腸栄養、21(3):77-83、2006.
10)
三鬼達人、馬場尊:細いチューブからでも検討できる半固形化栄養法:エキスパートナース Vol.25 NO.9 July:32-37,2009.
11)
三鬼達人:ハンディマニュアル 摂食・嚥下障害のケア.才藤栄一、馬場尊監、152-158、メディカ出版,2010.
12)
秋山純一、藤澤智雄、大和滋:胃食道逆流症患者におけるOmeprazole長期投与中の酸分泌抑制効果の検討、Therapeutic Research、24:5、2003.
13)
杉本光繁、吉田隆久、梶村昌良:Rabeprazole、Famotidine投与におけるCYP2C19遺伝子多型に応じた酸分泌抑制効果の検討、胃分泌研究会誌、36:2004.
14)
吉田隆久、白井直人、杉本光繁:CYP2C19遺伝子多型のLansoprazoleによるGERD治療への影響、Therapeutic research、25:4、2004.
参考文献
1)
蟹江治郎:胃瘻PEG合併症の看護と固形化栄養の実際、日総研出版、2004
2)
合田文則:半固形食品短時間注入法による胃瘻からの短時間注入法の適応に関する検討、静脈経腸栄養、2004;19;154
3)
合田文則:胃瘻とバイオエシックス:半固形栄養材短時間摂取法-胃瘻患者のQOL向上を目指して-、消化器医学、2007;5;26-36
4)
合田文則:胃瘻からの半固形化栄養材をめぐる問題点とその解決法、静脈経腸栄養、2008、23(2)
5)
永口美晴:増粘剤と胃内での変化、臨床栄養、2007;110(6);696-701
6)
‌岡田晋吾:
「投与デバイス」
「粘度」
「追加水」
「チューブ汚染対策」をどうする?変わった!新しい!PEG(ペグ)半固形化栄養法の工夫、エキスパートナース、2010;26(2)
、
95-103
Profile
み
き
たつと
三鬼 達人
・藤田保健衛生大学病院 看護主任
・日本看護協会 摂食・嚥下障害看護認定看護師
・日本摂食・嚥下リハビリテーション学会認定士
・日本摂食・嚥下リハビリテーション学会評議員
主な著書
・あなたが始める!摂食・嚥下・口腔ケア:照林社、2011.監修・執筆
・半固形化栄養法ガイドブック:メディカ出版、2012.編集・執筆
・摂食・嚥下障害リハ第2版:医歯薬出版、2007.分担執筆
・摂食・嚥下ベストナーシング:学研メディカル秀潤社、2010.分担執筆
・ハンディマニュアル 摂食・嚥下障害のケア:メディカ出版2010.分担執筆
・歯科衛生士のための摂食・嚥下リハ:医歯薬出版、2011.分担執筆
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