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テキスト:マーケティング戦略 C-8 農山漁村地域ビジネス創出人材育成プログラム 財務会計・資⾦調達(2) 収支計画の⽴案とPDCA 講師 :三好 巧 有限責任監査法人トーマツ 公認会計士 最終更新日:2015年11月14日 講師略歴 三好 巧(みよし たくみ) 公認会計士 有限責任監査法人トーマツ シニアマネージャー 大手企業から中小企業まで幅広い会計監査業務を経験し たのち、事業再生およびM&Aに関するコンサルティング業 務に従事。 大手都市銀行への出向経験もあり、財務アドバイザリー業 務に関して豊富な経験を有する。 2 本講座の目的 金融機関等の外部から事業用資金を調達するためには、そ の前提として収支計画や借入金返済計画が必要不可欠で す。また一旦立案した計画は、実際に経営に活かさなけれ ば、意味がありません。 本講座では、収支計画の立案方法と実際の活用方法につ いて解説します。 3 本講座のゴール 1 収支計画の立て方を理解する 2 収支計画を活用したPDCAを理解する 4 収支計画の策定 5 収支計画の目的・効果 対外的:資金調達に必要不可欠 対内的: (計画策定時) 必要資金と借入可能額(≒返済可能額)の試算 ビジネスモデルとして成り立つかどうかの試算 (計画実行時) 事業活動を行う際の羅針盤 収支計画が必要なのはわかるが、何からどう手を つければよいのか? 6 収支計画の構造(財務三表連動表) 財務諸表は、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計 経営改善施策 算書から構成されます。 A.損益計画 B.貸借対照表計画 C.キャッシュフロー計画 売上高 現金預金 フリーキャッシュフロー a.売上計画 運転資金 売上原価・販管費 e.運転資金計画 減価償却費 営業キャッシュフロー 投資キャッシュフロー b.売上原価・販管費計画 固定資産 c.人員計画 f.設備投資計画 f.資産の取得・売却計画 財務キャッシュフロー 営業外・特別損益 法人税等 d.税金計画 g.借入金返済計画 支払利息 借入金 その他資産・負債 現金預金 7 収支計画の構造(簡便的な収支計画) 経営改善施策 簡便的な収支計画で代替が可能な場合もあります。 A.損益計画 D.簡易キャッシュフロー計画 売上高 フリーキャッシュフロー a.売上計画 経常利益 法人税等 売上原価・販管費 e.運転資金計画 b.売上原価・販管費計画 f.資産の取得・売却計画 f.設備投資計画 営業外・特別損益 借入金返済額 法人税等 g.借入金返済計画 d.税金計画 大きな設備投資や運転資金の変動等がないビジネスの場合は、貸 借対照表計画の策定を省略することもあります。 8 策定順序 ① 売上計画(ビジネスの3軸を意識しながらP×Qで) (⇒生産計画・人員計画) ② コスト計画(変動費・固定費を意識しながら) (⇒設備投資計画) ③ 借入金計画 ④ 税金計画 まずは収支計画の源となる売上計画から策定します 9 ○×株式会社(例) (現状) 事業 事業所 主な商品 主な設備 社員 (将来) 新規事業 新商品 新規設備 :農作物の加工・小売 :工場兼ショップが1箇所(賃借) :“あっさりジュレ” :ジュレ製造機械(自己所有) :社員・パート合わせて6名 :東京のとあるスーパーとタイアップの話あり 来期から新商品の卸売を開始予定 :“濃密ジュレ” :新たに加工機械と冷蔵設備が必要 (10百万円) 10 売上計画 売上計画がすべてのスタートです。 3つのビジネス軸とPrice×Quantityを意識しながら策定 します。 製造業 小売業 サービス業 (ex.部品メーカー) (ex.食品スーパー) (ex.食堂) 製品/商品 サービス 製品(群)別 顧客/得意先 得意先別 顧客属性別 時間帯別 顧客属性別 時間帯別 拠点 工場別 店舗別 店舗別 商品カテゴリー別 メニュー(群)別 どこで、誰に、何を、何個、いくらで販売していくかを明確にします 11 売上計画(例) 既存ショップ売上と新規卸売上を分けました ショップと卸売で単価が異なります 数量は足元の状況等を踏まえ見込みます 科目 内訳 売上高 ショップ売上 単価(千円) 数量(個) 卸売売上 単価(千円) 数量(個) 数量計(個) 計 実績 着地見込 昨年 進行期 Y- 1 Y0 40,000 42,000 1.000 1.000 40,000 42,000 0 0 0.600 0.600 0 0 40,000 42,000 40 ,000 42 ,000 計画 1年目 Y1 46,000 1.000 46,000 1,200 0.600 2,000 48,000 47,2 00 2年目 Y2 48,000 1.000 48,000 3,600 0.600 6,000 54,000 51,6 00 3年目 Y3 50,000 1.000 50,000 数量増加 6,000 0.600 10,000 数量増加 60,000 56,00 0 12 コスト計画 売上計画が策定できれば、必要な生産・調達体制が明らか になります。 固定費と変動費を意識しながら策定します。 生産計画:いつ何を何個仕入れ、生産するか(仕入高) 人員計画:生産や販売に係る人員はどの程度か(人件費) 販促計画:どのように販促するか(広宣費・販促費) 売上計画を達成するのに必要なコストが算定されます 13 コスト計画(例) 既存ショップ売上と新規卸売上を分けます ショップと卸売で単価が異なります 計画数量は足元の状況等を踏まえ見込みます 科目 内訳 売上高 数量計(個) 原料・資材仕入(変動) 人件費(準変動) 広宣・販促費(政策費) 運賃(変動) 賃借料(準固定) 減価償却費(準固定) その他 計 売上原価 販管費 実績 着地見込 昨年 進行期 Y-1 Y0 40,000 42,000 12,000 12,600 20,000 20,000 2,000 3,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 2,000 2,000 39,000 40,600 計画 1 年目 Y1 48,000 14,400 21,000 4,000 1,100 1,000 1,000 2,000 44,500 2 年目 Y2 54,000 16,200 22,000 5,000 1,300 1,000 1,000 2,000 48,500 3 年目 Y3 60,000 18,000 24,000 5,000 1,500 1,000 1,000 2,000 52,500 仕入個数増加 パート増加 広告協賛金増加 卸売運賃増加 固定 償却計算 14 設備投資計画・借入計画 生産計画から、必要な設備投資額が明らかになります。 手元資金との関係で、必要資金調達額も明らかになります。 設備投資計画:いつ何にいくら投資するか (CF設備投資額/BS固定資産⇒PL減価償却費) 資金調達計画:いついくら調達するか、どう返済するか (CF借入金収入/BS借入金⇒PL支払利息) 売上計画を達成するのに必要な投資資金と調達資金、および関連 損益が算定されます 15 設備投資計画・借入計画(例) 今期末に新規設備投資10百万円を行います 手元資金に余裕がないため、8割を借入で賄うことにし ました。(借入条件:金利5%、4年間で元金均等返済) 毎期の借入金残高が決まれば、毎期の支払利息を算 定します。 科目 内訳 実績 昨年 Y- 1 着地見込 進行期 Y0 計画 1年目 Y1 2年目 Y2 3年目 Y3 投資CF 設備投資額 0 -10 ,000 0 0 財務CF 新規借入額 借入返済額 計 0 0 0 8,000 0 8 ,000 0 -2,000 -2,0 00 0 -2,000 -2,0 00 借入金残高 支払利息 0 0 8,000 0 6,000 400 4,000 300 0 0 -2,000 返済計画 -2,00 0 2,000 BSへ 200 PLへ 16 税金計画 すべての損益(売上・仕入高・人件費・広宣費・販促費・減価 償却費・支払利息等)がでたら、最後に税金を見積もります。 損益≒課税所得と見込むならば、経常利益×40%等と仮置 きします。 損益と資金収支が明らかになりました 計画策定に利用した前提条件は明記しておくことが有用です 17 損益計画(例) 科目 ① ② ③=①-② ④ ⑤=③-④ ⑥ ⑤-⑥ 内訳 ショップ売上 単価(千円) 数量(個) 卸売売上 売上高 単価(千円) 数量(個) 数量計(個) 計 原料・資材仕入(変動) 人件費(準変動) 広宣・販促費(政策費) 運賃(変動) 売上原価 販管費 賃借料(準固定) 減価償却費(準固定) その他 計 営業利益 営業外費用 法人税等 支払利息(5%) 経常利益 40%と仮定 税引後利益 実績 着地見込 昨年 進行期 Y- 1 Y0 40,000 42,000 1.000 1.000 40,000 42,000 0 0 0.600 0.600 0 0 40,000 42,000 40 ,000 42 ,000 12,000 12,600 20,000 20,000 2,000 3,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 2,000 2,000 39 ,000 40 ,600 1 ,000 1,4 00 0 0 1 ,000 1,4 00 400 560 600 8 40 計画 1年目 Y1 46,000 1.000 46,000 1,200 0.600 2,000 48,000 47,2 00 14,400 21,000 4,000 1,100 1,000 1,000 2,000 44,5 00 2,7 00 400 2,3 00 920 1,3 80 2年目 Y2 48,000 1.000 48,000 3,600 0.600 6,000 54,000 51,6 00 16,200 22,000 5,000 1,300 1,000 1,000 2,000 48,5 00 3,1 00 300 2,8 00 1,120 1,6 80 3年目 Y3 50,000 1.000 50,000 6,000 0.600 10,000 60,000 56,00 0 18,000 24,000 5,000 1,500 1,000 1,000 2,000 52,50 0 3,50 0 200 3,30 0 1,320 1,98 0 数量増加 数量増加 仕入個数増加 パート増加 広告協賛金増加 卸売運賃増加 固定 償却計算 18 キャッシュフロー計画(例) 科目 営業CF 経常利益 減価償却費 法人税等 計 投資CF 設備投資額 ① ② ①+② フリーキャッシュフロー 財務CF ③ ④=①+②+③ ⑤ ④+⑤ 内訳 新規借入額 借入返済額 計 CF合計 現金期首残高 現金期末残高 実績 着地見込 昨年 進行期 Y-1 Y0 1,000 1,400 1,000 1,000 -400 -560 1,6 00 1,84 0 計画 1年目 Y1 2,300 1,000 -920 2,38 0 2年目 Y2 2,800 1,000 -1,120 2,68 0 3年目 Y3 3,300 PLより 1,000 PLより -1,320 PLより 2,98 0 0 - 10,00 0 0 0 0 1,600 -8,160 2,380 2,680 2,980 0 0 0 8,000 0 8,00 0 0 -2,000 -2,00 0 0 -2,000 -2,00 0 1,6 00 1,000 2,6 00 -16 0 2,600 2,44 0 38 0 2,440 2,82 0 68 0 2,820 3,50 0 0 -2,000 返済計画 -2,00 0 98 0 3,500 4,48 0 19 貸借対照表計画(例) 科目 内訳 資産 現金預金 有形固定資産 既存設備 新規設備 計 負債 長期借入金 純資産 負債・純資産計 実績 着地見込 昨年 進行期 Y-1 Y0 2,600 2,440 1,000 10,000 1,000 0 0 10,000 3,600 12 ,440 0 3,600 3,600 8,000 4,440 12 ,440 計画 1年目 Y1 2,820 9,000 0 9,000 11,8 20 2年目 Y2 3,500 8,000 0 8,000 11,5 00 3年目 Y3 4,480 CFより 7,000 0 7,000 PL・CFより 11,48 0 6,000 5,820 11,8 20 4,000 7,500 11,5 00 2,000 CFより 9,480 PLより 11,48 0 • 現金残高はキャッシュフロー計算書と一致しているか? • 純資産の増減がPL税引後利益と一致しているか? • 貸借がバランスしているか? 20 結果検証 (チェックポイント) 財務資料間の数値が整合しているか? 現金残高がマイナス(または極端に少なく)なっていないか? 黒字化までの期間が短期間か? 借入金返済までの期間が適当か? 結果として算定された収支計画がビジネスとして成り立っ ているかを検討します。もし黒字化しない、あるいは資金 繰りに無理があるなどの難点がある場合には、再度ビジ ネスプラン自体の見直しが必要になります。 21 収支計画とPDCA 22 収支計画を利用したPDCA(ありがち例) (ありがち例) (ありがち例) 収支計画のみを とりあえず策定 とにかく日々がんば る!! ① Plan (予算) ② Do (実行) ④ Action (軌道修正) ③ Check (進捗把握) (ありがち例) (ありがち例) 当初の収支計画と大 きな差がでたけど気 にしない!来年はが んばるぞ! 決算は年1回。税理 士に任せているので 詳細はよくわからな い 23 収支計画を利用したPDCA(良い例) (良い例) 収支計画とともに行 動計画も策定 (“KPI”も設定) (良い例) 計画の達成に向けて 、タイムリーに軌道 修正できる! (良い例) 行動計画に基づいて 日々がんばる! ① Plan (予算) ② Do (実行) ④ Action (軌道修正) ③ Check (進捗把握) (良い例) “KPI”を設定している ので、月次で行動計 画や収支計画の達成 状況がわかる! 24 キーワードは”KPI” KPI Key Performance Indicator(重要業績評価指標) ⇒定量的なものさし 収支計画におけるKPI (例)売上高=客数×客単価 ={(名簿客数×来店頻度)+(新規客数)}× (買上点数×平均単価) (例)売上高人件費率=人件費÷売上高 =(人件費÷時間)÷(売上高÷時間) =(時間当たり平均人件費)÷(人時売上高) 行動計画におけるKPI (例)店周での声かけ回数、イベント回数etc 25 収支計画におけるKPI 収支計画におけるKPI 売上計画の内訳分解 決算が確定しなくとも、業績の良し悪しが判断できる 項目 ショップ売上高(千円) 計画 客数(人) 客単価(円) ショップ売上高(千円) 実績 客数(人) 客単価(円) … … 6月 5,000 フェア実施 7月 6,000 8月 5,500 … … … … 2,000 2,500 3,333 1,800 2,200 2,500 … … … 4,200 … … 1,500 2,800 合計 46,000 18,400 2,500 原因は?対策は? 月次決算を行えば損益を適時にチェックを行うことは 可能ですが、それなりに手間がかかります。より効率 的にPDCAを行うためには、日次でも把握可能なKPIを 設定しておくことが有用です。 26 行動計画におけるKPI 行動計画におけるKPI アクションプラン(いつ、だれが、何を、どうするか) 結果的に、やったか・やってないかが明確にわかる指標 KPIを達成しても成果がでないときは、仮説の再設定が必要 8 月の課題 客数の増加 行動計画 新規客の呼び込み(ビラ配り) 店舗での試食体験 KPI 毎日100枚 毎日20組 行動計画(アクションプラン)のなかで、定量的な行動 KPIを設定しておくことで、収支計画の実現可能性を高 めることが可能です。 27 具体例(小売) 収支計画でのKPI(例) 新規顧客数の増加により、売上高増加を見込む(収支計画) その場合のKPIは来店客数・新規購入客数など 行動計画でのKPI(例) 潜在客:ビラ配り回数・周辺施設訪問回数 来店客:デモンストレーション回数 購入客:次回フェア等のご案内回数 既存客 既存客 新規 新規 潜在客 (店周) 来店客 (上顧客) (2度⽬〜) 購入客 28 財務・会計・資金調達Ⅱ まとめ 1 • 収支計画は、まず売上計画から策定します。その際、 三つの軸やP×Qを意識することが重要です。 • 算定された収支計画を評価し、ビジネスとして成り 立っているかどうかを検討することが有用です。 2 • 収支計画は、事前にKPIを設定しておくことでPDCA を短いサイクルで効果的に行うことが可能です。 • 収支計画の実現可能性を高めるためには、行動計 画のKPIも設定しておくことが有用です。 29 本講座のゴール 1 収支計画の立て方を理解する 2 収支計画を利用したPDCAを理解する 30