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子供の自転車事故と道路の関連性について ~さいたま市浦和区を例に
子供の自転車事故と道路の関連性について ~さいたま市浦和区を例に~ R09063 野々村 駿作 指導教員 作山 康 1.研究背景と目的 厚生労働省によると 5~9 歳の死因の 1 位は不慮の事故 (「偶然性」 、 「急激性」 、 「外来性」が認められた事故)と なっている。現在日本ではどんどん少子高齢化が進んで いるため児童の交通事故というのは対策しなければなら ないことであると考えた。この研究では事故が起こりや すい場所を分析し、子供の事故数を減少させるための道 路の改善を検討することを目的とする。 2.研究方法 次のフローチャートで研究を進めていく。 3.対象地区の概要 ・児童数の推移 埼玉県は小学校の在学数が全国 5 位、さいたま市も平 成 17 年以降毎年約 7 万人の生徒数がいる。その中で浦 和区は南区に次いで 2 番目の児童数である。 ・浦和区における自転車事故の現状 平成 23 年度浦和区では 198 件の自転車事故が起こっ ている。小・中学生はその中の 13%で 25 件であり、そ の中で自転車対自動車の事故数は 8 割以上を占めている。 これは無視することのできない数値である。 ・交通事故の原因 出会い頭、右折時、左折時の3つで全体の 8 割以上に なっている。この3つの要因はすべてが交差点で起こる と言える、交差点での事故を防ぐことができれば全体の 事故数を多く減らすことできると考えられる。 ・子供の特性 子供の特性からどのような危険性があるのか調査した。 小学生の自転車事故のうち 「自転車側が違反していた」 というのが全体の 4 分の 3 にもなっているがこれは上記 の「大人のまねをする」という特性の影響ではないかと 考えられる。 4.浦和区における小学生の自転車事故のパターン分析 平成 20-22 年で小学生の自転車事故だと断定することが できたのは 40 件であった。それらを全 12 校の小学校の 学区ごとにまとめ、半径 200m と 500m の円を記した。 小学校 事故現場 図:小学校の位置と学区、事故現場位置 4-1 小学校までの距離によるパターン分析 小学校から自転車事故があった場所までの距離を 100m ごとに分け表にまとめた。 表:小学校から事故現場までの距離と事故数 小学校からの距離(m) ~99 100~199 200~299 300~399 400~499 500~599 事故数(件) 2 10 4 3 3 3 小学校からの距離(m) 600~699 700~799 800~899 900~999 1000~1099 1100~ 事故数(件) 3 3 3 2 2 2 小学校から 100m~200m の数が一番多く、小学校か ら 200m 以内が全体の 4 分の 1 を占めている。問題があ るのは小学校の付近という普段使い慣れている道路にも かかわらず事故が起きているということであり、現在の 道路環境では交通事故を防ぐ対策が不十分であると言え る。 図:子供の特性とそれにより考えられる危険 4-2 道路構造によるパターン分析 事故現場を調査し様々なパターン分けを行った。 (1) 道路の種類 事故現場の道路を主要幹線道路、幹線道路、補助幹線 道路、その他に分類し、種類ごとの数を比べた。 表:道路の種類別の事故件数 道路の種類 主要幹線道路×補助幹線道路 幹線道路×幹線道路 幹線道路×補助幹線道路 補助幹線道路×補助幹線道路 補助幹線道路×その他 合計 件数 2 1 5 27 5 40 補助幹線道路での事故が半数以上であり、大通りより も小さい道路同士のほうが事故が起こりやすいことがわ かる。 (2)道路の幅員 歩道や停車帯のない道路を車道幅員別にわけると 4m 以 下が全体の半数以上である。 表:歩道及び停車帯の無い車道幅員別の事故件数 自転車側の幅員 2m~2.99m 3m~3.99m 4m~4.99m 5m~5.99m 6m~ 合計 件数 3 10 3 4 1 21 その中でも 3m~3.99m が特に多いのは、普通乗用車の 全幅はおよそ 1.7m 前後なので自動車が道路の中心を走 ると、片側には 1m 弱しか隙間ができない。子供の自転 車の横幅は 60cm ほどであるため、そこで子供は行ける と思い事故が起こるということが考えられる。 (3)要素の有無 事故現場にある道路の要素となるものの有無を調べて、 各要素ごとにまとめた。 表:各要素別の事故件数 路側帯や歩道の有無 件数 信号の有無 有り 19 有り 件数 7 無し 21 無し 33 合計 40 合計 40 角きりの有無 件数 障害物の有無 件数 有り 17 有り 19 無し 23 無し 21 合計 40 合計 40 「路側帯や歩道」 、 「角きり」 、 「障害物」の有無による 数字の違いはあまり見られなかった。しかし信号の無い 交差点は有る方の 5 倍近い事故件数となっている。 これは信号がないところでは子供がそもそもその場所 が交差点だということに気づかないことがあり、安全確 認や一時停止を怠り事故が起こるなどが考えられる 5.結論 分析結果や子供の特性などから ①道路の構造設計の改良 ②子供に交差点を意識させる ③子供や大人にマナーを再確認させる 以上のことを踏まえて提案を行うことが必要である。 5-1 ハード面の提案 車道幅員の改善・・・① 車道幅員を 4m 以上か 3m 以下の極端にする。4m 以 上であれば自転車側に十分な空間が取れ、3m 以下であ れば自動車が来れば、空間ができず通ることを諦め別の 道を通ることを期待できる。 道路への障害物設置の改善・・・① 車道幅員を 4m 以上であっても道路に自動販売機(奥 行約 80cm)などを設置すると幅員が狭くなるだけでなく 子供の視界を塞ぎ向こうから来る自動車に気づかないこ とが考えられる。そのため自動販売機などは幅員が広い 道路に設置するか私有地からはみ出さないようにする。 交差点の強調化・・・①、② 信号を取り付けることのできないような場所は交差点 やその周りに色などを付けて視覚的に危険を知らせる。 特に子供にとって危険を連想する赤色や夜中でも認識し やすい黄色などで色をつける。また光を反射するチップ を混ぜることで色だけでなく光でも交差点だと意識でき るようにする。 また 「止まれ」 だけでなく大きく平仮名でよ り単純な言葉にすることで子 供にも理解し注意を引きやす くする。 写真:赤い道路標示 道路の材質の改善・・・① 上記の塗装は骨材や塗料に柔軟性を持たせることで滑 りにくくする効果もある。 5-2 ソフト面の提案 自転車運転免許の周知化・・・③ 自転車運転免許とは埼玉県の子供と高齢者が対象の免 許である。だが特典が子供と高齢者だけのため大人から の認知度が低く、取り組んでる小学校も 50%ほどである。 そこで講習を受けた大人にも「駅近の駐輪場を優先的に 貸し出す」などをすることで親子での参加を促し、また 特典により放置自転車など別の問題にも貢献できる可能 性がある。 事故マップの配布・・・③ インターネットだけでなく小学校などで全生徒に配布 を行い生徒や保護者に情報と常に身近に危険があるとい う危機感を再認識させる。 7.参考文献 埼玉県警察ホームページ 浦和区・南区交通事故マップ 公益財団法人 交通事故総合分析センター