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講演要旨「対話を重視した部活動指導について」(PDF:437KB)
講演要旨 『対話を重視した部活動指導について』 〜指導者としてのコミュニケーションスキルと感情コントロール〜 平成 25 年 7 月 31 日 松本市浅間温泉文化センター 福島大学人間発達文化学類教授 白石 豊 Ⅰ はじめに ~私がコーチとなった経緯~ ・昨年12月、松本の「体罰根絶の講演会」で話をさせていただいた5日後、大阪の桜宮高校の体罰問題が明 るみに出ました。その後、柔道女子監督のパワハラ問題にはじまり、続々と問題が噴出し、私たちのスポー ツ界が大変揺さぶられた。 ・私は大学で教師をやってはいるが、まだまだ現役のコーチ。今はメンタルコーチとして 25 年。プロ・アマ問 わず、医者や受験生などにも「どうやったら成果が出るか」をサポートしている。 ・恩師の金子明友先生は、世界中から「体操の神様」と言われたチャンピオンメーカー。今も日本の体操は世 界で1、2位を争うが、小野喬さんがローマで優勝し団体初の金メダルを獲ったのが 1960 年。ローマ、東京、 メキシコ、ミュンヘン、モントリオール、5大会連続、足かけ 20 年、日本は1回も金メダルを逃さなかった。 ・東京五輪で体操競技に憧れた私。はケガにも苦しみ、全日本ではよく失敗をするタイプ。 ・大学院の後、金子明友先生に「選手を辞めて、ヘッドコーチの加藤沢男氏(五輪チャンピオン)のアシスタ ントコーチで大学に残り、4ヵ月後の全日本選手権で優勝してみろ。 」と言われる。 ・当時、学園紛争もあり名門の東京教育大(現、筑波大)がインカレ最下位になったのが自分の 1 年の時。13 年タイトルから離れていたチームを 4 ヵ月で優勝に導く手立てもなく、 「えっ!」と思った。 Ⅱ 恩師、金子明友先生からの2つの教え 1「今日からお前は体操をやるな。やって見せるコーチは、お前には向いていない」 (1) 「見せて教えるコーチ」では、コーチ程度の選手しか育たない。 ・ 「人間は、歳をとる」かつて良いプレイができていても、体形は変わり、示範ができなくなる。 (2) 「運動が、観える人になれ。運動には、仕組みがある。 」 ・ 「運動(難しい、簡単に係らず)には、ポイントが3つ」ある。それが分かると、できるようになる。 ・ポイントが分からず、自分の経験で教えると、自分の体形やタイプが合う人にはいい。 しかし、多くの人には通用しない。そして、うまくいかないと「なぜ!」と言って、怒鳴る。 (3)私は、金子先生が「怒鳴った」のを聞いたことがない。いつも「選手と対話」をしていた。 ・運動の見方が分かると、指導が簡単になる。だから、怒鳴る必要がない。 2「生活をちゃんと正してみろ」 (1)筑波大が勝てなかった理由は… ・当時、筑波大は「五輪チャンピオンがコーチ、最新設備、インハイの上位がいる…何で勝てない?」 ・理由は、 「生活の乱れ」中学・高校時代管理されていたが、大学では、飲酒、夜更かし…自由奔放。 (2)初優勝の秘密は、 「朝の30分間の体の動かし方」を変えること。 ・金子先生がローマ五輪で初優勝した時、ロシアの生理学に基づき、朝の体の動かし方を変えた。 ・朝は、散歩、ジョギング、ストレッチ、本練習の 10 分の1くらいの刺激を筋肉・関節・靭帯に与える。 ・朝練習ではない。朝から激しい刺激は壊れる。まして、中学や高校生の場合、授業はどうするか? Ⅲ 初めてインカレを制して (1) 「勝つ」ことがエネルギーに ・13 年勝っていない。誰もが勝てると思っていない。東日本インカレでは日体大に競り、僅差の負け。選 手の目の色が急に変わる。 「勝てるかも…」8月の北海道インカレで、最終種目で大逆転をして優勝。 ・私のコーチ人生 33 年のエネルギーとなった優勝。 「勝つ」とは、こんなに素晴らしいことか。 (2)ゴールをどこに置くのか?そのゴールは、誰のゴールなのか? ・ 「勝つ」ことをゴールにするのか、 「みんなで楽しむ」ことをゴールにするのか。 ・ 「ゴールが違えば、活動が変わる。 」 ・先生だけ「勝ちたい」では、だめ。みんなが「勝ちたい」と思って、チームが変わり、人が変わる。 Ⅳ 佐保田鶴治先生との出会い (1)結果が思い込みを生む ・当時の私は鬼と呼ばれスパルタ。選手の失敗に怒鳴る。今の私なら、 「教え方が悪い」と言える。 ・4 ヵ月でインカレ制覇、5年間でインカレ3回優勝(2位2回) 。自分の方法が正しいと思い込む。 (2) 「教育とは引き出す」こと ・著書「ヨーガ禅道話」に感銘を受け、佐保田鶴治先生(大阪大学名誉教授)と出会う。 ・佐保田先生から習ったこと「ヨーガ」と「教育の考え方」 ○「教育とは英語で何というの?」 「education」 「では、ドイツ語は?」 「ausbildung」 「原語のラテン語はね、"educare"(教育する) 。 『引き出す』という意味があるんだよ。 」 ○「人間の中には素晴らしいものがあり、それを引き出すのが教育。手助けするのが、教育者(educator) 」 (3)詰め込みは、調教 ・先生方は、生徒を「空のコップ」と思って、詰め込もうとしていないか? ・スポーツ指導者は、 「飴と鞭」を使って、選手に技を教え込んでいないか。それは、サーカスでライオン に火の輪をくぐらせる「調教」と同じこと。 Ⅴ 筑波大学での教員専攻の生徒に教えること ○指導者は、 「最新の運動の技術構造」を学び、それに応じた「指導法」を学ばなければならない。 ・筑波大の生徒には「できる」だけでは単位を与えない。 「教え方」をマスターして、単位を与える。 ・ 「上手、下手」は関係ないが、できること。特に、体育教師は小・中・高の技ができなければ困る。 ・ 「教師としての立居振舞、表情、身振り、手振り、声の出し方、その運動の教え方、補助、声のかけ方」 Ⅵ メンタルトレーニング (1) 「心・技・体」の全てがチューンナップしなければならない ○目標を達成するメカニズムとして、その成果を左右する要素は、 「心・技・体」の3つ。 ・練習では、80~90%が、 「技術」の練習。また、それを支える体(=体力)に 10~20%の練習。 ・試合の時に、必要な『心』はどこで鍛えるのか?メンタルトレーニングの必要性。 (2)指導者も「自分のメンタルをコントロールする手立て」を学ばなければならない ・なぜ、指導者は叱責し、体罰をするのか?誰もがしたくはないはず。 ○選手がメンタルトレーニングをするだけでは足りない ・体罰問題で桑田真澄が「もっと現場の先生方は勉強してくれないと」と言うが、何を勉強するのか? (3)私からの具体的な提案として「指導者が学ぶべき3つ」のこと ○「技が観えるようになりましょう」 ○「コミュニケーションスキルを上げましょう」 ○「自分の心(感情)をコントロールできるようにしましょう」 Ⅶ ビジネスコーチング学 (1) 「どうすれば、人は、やる気をもつのか」 ・1960 年代、高度経済成長の日本は、働けば賃金が上がり、 「指示・命令・恫喝」でも動く。 ・一方、戦勝国のアメリカは、ベトナム戦争やソビエトとの宇宙開発競争で疲弊。 ・優秀な若者に気持ちよく仕事をしてもらうため、 「上司のコミュニケーションスキル向上」に資するコー チング学が誕生する。 ・ 「どうすれば人はやる気をもつのか」 「どうすれば集中して、よいパフォーマンスを発揮できるか」 ・バブル崩壊後、日本にもビジネス「コーチング学」が入る。教育や部活動指導に役立つ要素が多い。 (2)目標達成のフローチャート ○『GROWモデル(目標達成のフローチャート) 』 (J.ウイットモア(英) ) ①G ②R ③O ④W GOAL(目標の明確化) RECALITY(現状把握) OPTIONS(目標の達成の方法) WILL(目標達成の意思) (3)スポーツの現場での「GROWモデル」 ・ 「インターハイで勝つ」という目標が、監督と選手 の間で共有できているのなら、問題はない。 ○目標(G)から見て、現状分析(R)をすると、ギャップが大きく達成への方法(O)がないのに、 「目 指せ、甲子園!」と掲げる野球部が日本には山ほどある。 ・もっと現状(R)に沿ったリアリティーのある目標(G)を立てるべき。 ・ 「みんなで楽しく」これも目標(G) 。自分のエゴで(G)を押し付けると悲惨なことが起こる。 (4)自著「夢をかなえるコツ」 ・下柳剛(野球) 、田中賢介(野球) 、田畑真紀(スケート) 、萩原美樹子(バスケットボール)の4人への メンタルトレーニングの実録。 ・東大現役合格と甲子園を目指す 2 人の高校生が目標に向かうまでのコーチングを行う架空の物語。 ・タイムラインで「過去と現実と目標と現実」を描写。自分のストロングポイント(長所)は何か、未来 のゴールに向かって足りないものは何か?やるべきことが、よく見える。 Ⅷ サッカー日本代表岡田武史監督と 1 リミッティング ビリーフ (1)サッカー日本代表 岡田武史監督 との共著「日本人を強くする」 ・ 「リミッティング(制限している) ビリーフ(思い込み) 」 (心理学の言葉) ○自分や自分たちの可能性を制限する「誤った思い込み」 (2)岡田監督のリミッティング ビリーフ ・ 「個人技術でブラジルやスペインに勝てないから組織やチーム力で勝つというが、あれは、何か?」 ・ 「そんなことは当り前じゃないですか。日本人がブラジル人に個人技術では絶対に勝てない。だから、組 織で勝とうと何十年も苦労してやってきているんですよ。 」 ○もっともの話に聞こえるかもしれないが、私には、そう思えない。 ・なぜなら、日本男子体操は、20 年も世界制覇。それは、私たちの先輩方が工夫をしたから。 (3)勝ちたかったら、工夫をする ○人に勝ちたいなら、まず、その人と同じレベルに。 (=「モデリング」 )そのため、あらゆる分析をする。 ○常に勝ちたかったら、相手の上をいく。技術、練習方法、食べ物、何でもいいから、工夫して、必ず相 手の上をいく。 ・私が関わってきた一流のプロスポーツ選手も最初は、 「リミッティング ビリーフ」にとらわれていた。 2 対話を重視したチーム作り (1)それは、チームの目標ですか? ・私と出会う前の岡田監督は、選手と1対1で話し合いをするのを拒否。 ・代表監督に就任の際、口にした目標は「ベスト4」国民周知の事実が、選手たちとの共有は0。 ○それは、 「あなたの目標であり、チームの目標ではない。 」 ・ 「まず、主要な 3 人をピックアップして、話し合いをしてくれ!」 「南アフリカで、こんなサッカーがしたい。お前たちはどうだ?」 。 ○選手が、監督と同じ意識レベル、目標レベルに到達すること。それには対話が必要。上から「こうだ!」 と言ってもだめ。人は、それでは動かない。 ・先生方は、もっと小さで身近な組織。それを上から目線で「こうだぞ!」では、だめ。 ○コーチング学を勉強し直すと「指示・命令・恫喝」でなく、 「対話をする」ことが必要と分かる。 (2)選手と対話をするために、コーチとして8つの視点が必要 ① 「最新の技術認識」はもっているか 最新の技術 ② 的確な「運動観察能力」はもっているか 認識 10 ③ その観察力に基づいた「技術指導力」をもっているか 人間力(人 運動観察能 8 脈、笑顔、 ④ 「体力トレーニング」の指導力はあるか 力 6 カリスマ… ⑤ 「メンタルトレーニング」の指導力はあるか 4 2 ⑥ 「コーチとしてのメンタルスキル」の調整はできているか 独創性と先 技術指導力 0 取性 ⑦ 「独創性と先取性」はあるか ⑧ 「人間力」を備えているか コーチとし 体力トレー てのメンタ ニングの指 ○レーダーチャートで自分を知る。足らなかったら、磨く。 ルスキル 導力 メンタルト レーニング の指導力 Ⅸ 運動観察能力を磨き、対話によるコーチングを行う (1)運動観察能力 ・ 「運動観察能力」とは、運動学では「他者観察能力」あるいは「客観観察能力」と言う。 ○「結果の違いを生み出す違い」が観えることが、運動観察能力 ・DMD(Difference That Makes Difference)=「違いを生み出す違い」 ・体操競技で着地の瞬間に「着地」と怒鳴る人がいる。 「何で、着地を止められねぇんだ!」と言うが、着 地が止まるかどうかは、それ以前に決まっている。 「結果しか観えない人」は暴言団。 (2)対話によるコーチング ○対話による指導を受けてきた選手は「自己観察能力」が高い。 「どうすれば上手くいくか」が分かる。 ○「指示・命令・恫喝」でやられてきた選手は、それが分からない。 「ものを考える選手が育たない」 ・良いコーチは、選手の結果に「今のは、どこにポイントを置いたの?僕にはこう見えた」と問う。 ・鋭い他者観察能力を持つコーチは、選手に聞きたくなる。それだけで対話になる。 Ⅹ コーチ(指導者)としてのメンタルスキルチェック (1)8項目で自分のメンタルスキルをチェック ① 意欲 ② 自信 ③ 感情コントロール能力 ④ イメージ想起能力(視覚化) ⑤ 集中力 セルフコ ミュニ… コミュニ ケー… 10 8 6 4 2 0 意欲 自信 感情コン トロール ⑥ リラックス ⑦ コミュニケーションスキル ⑧ セルフコミュニケーションスキル イメージ 想起能力 リラック ス 集中力 (2)指導者である限り、一生、 「自分のバージョン」を上げていくことが必定。 ・歳をとっても、体育教師はできる。 「教えること」ができれば、 「体育教師の命」はもっている ・ 「技術」は、自分がやるものではなく、教えるもの。 「身体」も、選手の身体をよくすること。 (3) 「自分の感情コントロール術」は、いつ習うか? ・昨年の大阪桜宮高校のバスケットボール部での事件。 ・激戦区、大阪でインターハイに出続けている。顧問の先生は熱心。休みもなく熱心に教える。 ・1 番目の項目の意欲は 10 点。2 番目の自信も 10 点。 ・しかし、3 番目の感情コントロール能力、そして、コミュニケーションスキルも低かったと言う。 ・ 「これだけ教えているのに…」気持ちは分かるが、言葉に出す、手を出す、それは、自分の心(感情)の コントロールができていないこと。 「教える術」を知らないということ。 ○自分の感情のコントロール術をいつ習うのか、いつ身につけるのか? 実は、習っていない。 (4)最年長の最多勝ピッチャー誕生 ・44 歳で引退した下柳剛投手(引退時は楽天) 、32 歳までは、やんちゃ坊主。 ・33 歳でメンタルトレーニング。37 歳で 15 勝 3 敗(当時阪神)最年長の最多勝ピッチャー。 ・課題は、 「感情のコントロール」すぐに文句。審判だけでなく、味方のエラーに対しても…。 ・ 「審判に文句を言って、尐しは感情が収まるかもしれないが…それでは…。 」 ・メンタルトレーニングをしてから、良くても悪くても淡々と投げる。感情は、出したら負け。 Ⅺ 意欲を育てるコーチング (1)コーチングは、コミュニケーションスキルを高めること ・コーチングは、コミュニケーションの技術、1970 年代アメリカで生まれたビジネスコーチング。 ・ 「あなたは、普段どんなコミュニケーションスキルを使っていますか?」 ・どの国の人も困る。生まれてから自然に日本語(母国語)が身につく。これは「暗黙知」 ○コミュニケーションスキルを、 「意図的に」高め、身につけていかなければならない。 (2)指導者としてコミュニケーションスキルを高めること ・私も大学卒業時は持っていない。10 分の卒論発表会が嫌で、会場が燃えないかと思っていた。 ・大学の講義ノートは師匠の講義のノートのみ。単位を取るため勉強をしたが、授業のイメージはない。 ・でも、 「分かって、楽しい授業」を大学でやろう。それには、コミュニケーションスキルを高めること。 ・講演が多く授業をやっていないと勘違いされそう。1 週間 12 コマ。中学、高校の感覚では 1 週間 24 コ マ。32 年間 1 回も休まない。 「授業を提供する」 「課題を抱えた選手を助ける」それが私の役目。 (3)意欲を損ねるコーチング ・この反対をやれば、良いコーチングとなる。 ① 選手に完全を要求する ② 欠点を探しては指摘する ③ 達成不可能な無理な目標を持たせる ④ 常に他の選手と比較する ⑤ プロセスより結果を重視する ⑥ 自発性を損なう言葉かけ(どうせ、ほらごらん、やっぱり) ⑦ 人の前で恥をかかせる ⑧ 「かくあるべし」を強調する Ⅻ コミュニケーションの3つのスキル ○「聴く」 「質問する」 「誉める」この3つ。 ・まず選手の考えを聞く。 「今、どんな感じだった?」 ・指導者が選手から話を聞くとき「聞くべき」距離がある。長机 2 つ分(2m?) ・大勢の前で講義をするにも適切な距離がある。前も後ろにも等しく聞こえるようにマイクを使う。 ・この講演会でも、私がしょっちゅう前や後ろ、右から左と目を配っているの。これも技術。 ・立ち方、身振り、手振り、表情、声の質…全部がコミュニケーションスキル(技術) 。 1 聴くスキル ○悩みを聞くときにも、それに適した距離、位置、姿勢がある。 ・相談相手に圧迫感を感じさせない距離と位置。真っ直ぐ向き合わず、あえて、左に外す。 ・ノートを広げて、やや前かがみでメモをとる姿勢。世界共通(宗教にも関わらず)で「あなたのことを 受け入れますよ」の姿勢。 ・椅子にふん反り返り、足を組み、斜に構えて「お前は何が言いたいんだ、言ってみろ」これは最低。 ・先生方も私の話を聞き、うなずいたり、首を傾げたりのリアクションを示す。だから、私も話を続けら れる。先生方が5分も無表情だったら、私も立っていられない。 ・現代の日本の子どもは、リアクションがすごく下手。これは問題。 2 質問するスキル ○クローズド クエスチョン…「はい(イエス)か、いいえ(ノー) 」 問答が閉ざされてしまう。 ○オープン クエスチョン(5W1H)…「グローブをどうやって使った?」 「バウンドのどこで取ろうとし た?」→疑問詞を多用すると、質問が豊かになる。質問力を上げる。 3 誉める(承認)スキル ・誉めるは難しい。 「先生、誉めてばっかりでは選手が甘えてダメでしょう。 」 (岡田監督) ・指導者は、厳しくあるべき?「叱る」はいいが、 「怒る」はだめ。 ○「叱るは、for you」 「誉める」の反対に「叱る」は、あっていい。 ○「怒るは、for me 」 「怒る」は、自分の感情コントロールができていないこと。 ⅩⅢ 先生たちよ、腰をひかず、叱るときは叱ろう (1)教えることの復権 ・ 「ゆとり教育」 (2002 年 4 月施行)の問題題。 「教える」ことを奪う。 「指導」ではなく「支援」? ・学習指導要領の改定しかし、 「新学力観」について総括はまだされていない。 ・ 「あの子は跳び箱、跳べないけど、一生懸命やっているから、いいんじゃない。 」 ・ 「頑張っているから、いい?」それはインチキ。跳べないなら指導者は跳ばせるようにしろ。 ○『教えることの復権』 (大村はま先生と苅谷剛彦先生の共著)まさにその通り。 (2) 「先生たち、腰引かないでね」 ○福島大付属中で副校長の時、先生方へのお願い「叱る時はきちんと叱り、誉める時はちゃんと誉めよう」 ⅩⅣ 感情コントロールのテクニック (1)感情を昂らせない基礎トレーニング(インスタント・リラクゼーション・テクニック) ①リラックス PART‐1 ・椅子にゆったり腰を掛け、目を閉じ、私が言う順番通り、筋肉に力を入れ、自分でモニター。 ・ 「足、ふくらはぎ、太もも、お尻、お腹、背中、胸、肩、上腕、前腕、手、首から顔面まで全身硬直」 (1、 2、3、4、5 はい止めて、目を閉じたままストン、緩めて…) ・最大緊張から、最大リラックスになった筋肉の感覚をモニターして下さい。 ・1 回目よりも 2 回目、2 回目よりも 3 回目、リラックスが広がります。 (3 回繰り返し) ②リラックス PART‐2 ・目を閉じたまま、鼻から静かに息を吸ってお腹を膨らませ、倍の時間をかけ、口と鼻の両方で、フゥー と息を吐き、お腹をへこませます。5 秒吸ったら 10 秒かけて吐きます。どうぞ。 ③リラックス PART‐3 ・静かな呼吸に、 「言葉とイメージ」をのせます。 ・ 「吸う息に合わせて、太陽の暖かいエネルギーが、全身に満ちわたった。 」 ・ 「吐く息に合わせて、身体の疲れや硬さ、心の不安やイライラ感は全て、出ていく。 」 ○実際の心理療法では 30 分かかる。これは、わずか 2~3 分でリラックス。 ・短い時間でないと現場では使えない。インスタント・リラクゼーション・テクニック (2) 「不動体」をつくる ・姿勢は真っ直ぐ、おへそを触る。おへその真後ろにある骨が「腰椎の 3」番という骨。 ・ 「腰椎の 3 番」を後ろに引くと、背中が曲がり悪い姿勢になる。これは「あきらめの姿勢」 ・ 「腰椎の 3 番」を前に押し出す。力まない。肩を挙げて落とす。目線は水平よりちょい上。 ・ベルトのラインから下にはコンクリートが詰まっている。足の裏には根っこが生えている。ベルトより 上の上半身はユルユル、 「チャッポン、チャッポン」 ・立っていても、座っていても。これで、素晴らしい姿勢になる。 「不動体」 (3)顔は「笑顔」 ・笑顔は強い。 ・アトランタ五輪女子バスケットボール部のチーム「苦しい時こそ、笑顔で」楽しい時には誰でも笑顔。 (4)ポジティブ・セルフトーク ・選手を励ます言葉も持つと同時に、自分を励ます「言葉」も持っていること。 ・下柳投手(阪神)のポジティブ・セルフトークは、「前後際断」 ・「投手に大切なものが、『不動智神妙録』(沢庵禅師)という本の中あるから、読んでみろ。」 ・ 「前は、終わった過去のこと。後は、これから起こる未来のこと。 」 ・沢庵禅師「人間だけが、過去を思い出し悲しくなったり、未来のことに不安を覚えたりする存在」だが 「過去も未来も裁ち切り、今にのみ集中せよ」 ・宮本武蔵に与えたというのは、吉川英治氏のフィクション。柳生但馬守宗矩に与えている。