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ATKモデル
経済分析
第18号 昭和41年6月
☆ 巨視的計量モデルと時間にかんする
アグリゲイション
☆ 回帰分析による国民所得の早期把握
☆ 消費者物価モデルの計測
☆ 諸外国の国民所得統計
経済企画庁経済研究所編集
本 誌 の 性 格 に つ い て
本誌は,経済企画庁経済研究所が研究した成果の一部を掲載したものである。このなかには,二
つの違った性格のものが包含されている。
第1は,研究所が公式に発表したものである。ただし「研究シリーズ」は別に単行本として発刊
しているので本誌からは除かれる。
第2は,研究所員の研究試論である。この種の成果は研究所内部においても検討中のものである
が,同時に現在研究所でどういう研究が進行しつつあり,どういう考え方が生れつつあるかを外部
の方々に知っていただくと同時に,忌弾のない批判を仰ぐことを意図するものである。そのため
に,掲載は研究員個人の名儀であり,研究所としての公式の見解ではないことを含まれたい。
経
済
第
分
18
号
1966.6
経済企画庁経済研究所
目
<分
析
析 1>
次
巨視的計量モデルと時間にかんする
アグリゲイション
序 ································································································ ( 1 )
<分
I
単一方程式における期間についてのアグリゲイション ···················· ( 1 )
II
相互依存的動学体系での時間にかんするアグリゲイション ·············· ( 4 )
析 2>
回帰分析による国民所得の早期把握
―いわゆる事後的段階予測法―
I
経済政策と早期統計情報 ··························································· ( 9 )
II
事後的段階予測 ······································································· ( 9 )
III 推定手続き·············································································· (12)
IV
推定結果について····································································· (18)
参考式A 新国民所得統計 ······························································· (23)
参考式B 旧国民所得統計 ······························································· (32)
<分
析 3>
消費者物価モデルの計測
I
本分析の目的 ·········································································· (35)
II
消費者物価上昇の要因 ······························································ (35)
III 全都市消費者物価指数の組替 ····················································· (39)
IV
消費者物価変動要因の計測結果 ·················································· (40)
V
消費者物価モデルの外挿テスト··················································· (49)
補論・対前年同期比データによる計測 ··············································· (51)
参考文献・付表 ·············································································· (54)
<資
料>
諸外国の国民所得統計
―アメリカ,とくに1965年の改訂について―
I
序・アメリカ国民所得統計の現状 ··············································· (60)
II
1 9 6 5 年改訂の特徴 ································································ (61)
<分 析 1>
巨視的計量モデルと時間にかんするアグリゲイション
序
リゲイトされると,(2)式が得られる。
(2)
現在,経済予測を目的のひとつとして作られた
=
計量モデルは数多くあるが,その多くは年次モデ
+
k-1
ここで
ルか四半期モデルである。最近になって半年次モ
=Σ
・k -i
i=0
デルが作成された。異なる期間に基づいた計量モ
k-1
デルは,異なるタイム・ラグの構造をもち,した
; =1,2,……,
+
=Σ
・k -i
i=0
がって異なる動学的性質をもつけれども,それら
k-1
=Σ
はしばしば経済予測という共通の目的のために用
・k -i
i=0
いられる。
この最も簡単な例においては,アグリゲイショ
そして,
予測結果をみると,
一年間の予測に関す
る限り,年次モデルのほうが四半期モデルよりも
ンによって失われるものはパラメーター推定値の
有効性だけである。
(1)式と(2)式に対する最小二乗推定値 ̂ 1の分散
よい結果を生ずることがある。さらに,四半期や
半年次モデルから予測された変数の系列は年間の
はそれぞれ次のように与えられる。
数字にアグリゲイトされて初めて意味をなすとい
E ( ̂ 1-c 1)2=
(1) 式に対し
う場合がしばしば起こる。これらの事実は何に起
(2) 式に対し E ( ̂ 1-c 1)2=
因するのであろうか?推定しようとする計量モデ
ルを期間に関してアグリゲイトすることにより,
われわれは原データのもつ情報の一部を失う。
Tk
Tk
=
+ Σ Σ (
t k =1 i, j
・k -j
- ) (
・k -i
-
Tk
t k =1 i, j
Tk
+k (k -1)
Σ (
t k =1
Tk
k (k -1)
的性質
単一方程式における期間についてのアグリゲ
イション
=
もっとも単純化されたモデル
) (
- )
・k -j
)
-
- )2
- )2
Σ (
t k =1
1
Tk
Σ
-
t k =1
1
=
故に次式が得られる。
次の方程式において,説明変数A t は非確率的
(3)
変数と仮定する。
=
Tk
+k Σ Σ (
(1) C t =c 0 +c 1A t +u t ;t =1,2,…,T
t k =1 i, j
・k -i
-
) (
・k -j
-
)
そこで,もしA t がアグリゲイトされるk期にお
ここでu t は平均値が0で一定の分散σ2をもち,自
己相関のない攪乱項である。
・k -i
上の関係式の右辺の第3項を書き直すと,
(2) 推定されたモデルが再現する変動径路の動学
1
-k )2
t k =1
+ Σ Σ (
(1) アグリゲイションに関連するパラメーター推
I
=Σ (
=
る。
定値の性質
t =1
てられるべきだとすれば,期間に関してのアグリ
本論文では次の2点に注意を向けることとす
=Σ ( A t - )2
その上,真の構造が短い期間に基づいて組み立
ラーを避けることができない。
T
ここに
ゲイションは方程式のスペシフィケイション・エ
いてあまり変化しないように与えられれば,(2)式
更にT =k T k と仮定しよう。k とT k はいずれも
に対する推定値は(1)式に対してと殆んど同じ位有
効性をもっていることは明らかである。
整数である。
次にこの方程式が連続するk 期間についてアグ
- 1 -
A t が線型のトレンドをもつように与えられれば
に対する
の比率は
=
-
ここで,p 1 は
At k -m / k =p 0 +p 1 At k -1 +
-1
となるようなパラメーターである。
となり,これはkよりも小さい。
しかし,十分な数の観察値に対しては,アグリ
ゲイションによってあまり多くの情報は失われな
いように思われる。
2
(7) 式に対しては,P 1は次式によって与えられる。
At k -m / k =p 0 +p 1 At k +
A t が線型のトレンドをもつならば,(6)式と(7)式におけ
るE ( ̂ 1 )はc 1と等しくなることは明らかである。
ラグ付変数について
更にもしA t がr の成長率で指数関数的に成長するなら
(1) 式にタイム・ラグを導入すると
(4) C t =c 0+c 1A t -m +u t ;1≦m ≦k
アグリゲイトすると,次式を得る
(5) Ct k =k c 0+c 1At k -m / k +
ば,
*
さて,ここで(1)式のA t をラグ付内生変数C t-1で
置き代えて,アグリゲイションによって起こる問
題は何かを考察してみよう。
(8) C t =c 0+c 1C t -1 + アグリゲイトした後の関係式は
2
1
1
ここで,C (t =o) の初期値は与えられており,
非確率的であると仮定する。
k の大きな値に対して,上式は1となることは
明らかである。
下の表はc 1とk のいくつかの例示的な値に対す
る ̂ 1 の期持値を示している。
0.1
0.5
0.20
0.77
0.82
0.75
0.88
0.95
+
T が十分に大きいとして,この相関を考慮に入
れた ̂ 1 の最小二乗推定値の期待値は次式によっ
て与えられる。
第1表 自己回帰方程式におけるアグリゲイシ
ョン: ̂ 1の期待値
-1 / k
である。
しかし,自己回帰の場合には,説明変数Ct k -1/k
は と相関をもつ,
1
1
1
=k c 0+c 1
(9) 1
̂ = +
2
4
8
((7)式に対し)
自己回帰型モデル
3
(6) 式に対し,
k
c1
となる。
この場合は,どちらの方程式もスペシフィケイ
ション・エラーをおかしている。
ミス・スペシフィケイションによる係数推定値
の偏りの公式を使うと,われわれは c 1 の推定値
を求めることができる。
1
((6)式に対し)
= (1+r )
(7) Ct k =k c 0+c 1At k +
E ( ̂ 1 ) = (1+r )k-mc 1
-m
もし,方程式の真の型の推定が可能であるような
データが利用できるならば,推定値の有効性のほ
かに問題はない。
しかし,実際にはデータの利用可能性の制約か
らわれわれはしばしば(5)式の代わりに次式を推定
せざるを得なくなる。
(6) Ct k =k c 0+c 1At k -1 +
c1
E ( ̂ 1 ) =c 1 p 1
*
+
1
1
* (10) +
=c' 0+c'
1
1
1
-1
+
この型の方程式は(8)式から次のようにして導く
ことができる。
C t =c 0+c 1 C t-1+ut
(1+c 1) C t-1= (1+c 1) c 0+c 1 (1+c 1) C t -2+
(1+c 1) ut-1
(1+c 1+c 12 ) C t-2= (1+c 1+c 12 ) c 0+c 1
(1+c 1+c 12 ) C t-3+(1+c 1+c 12 ) ut-2
(1+c 1+…+c 1k-1) C t-k+1= (1+c 1+…+c 1k-1)
c 0+c 1 (1+c 1+…+c 1k-1) C t-k+
(1+c 1+…+c 1k-1) ut-k+1
以上の方程式を辺々加えることによって次式が得ら
れる。
しかし,われわれは通常(9)式の代わりに(10)式を
推定しようとする。
*
- 2 -
k-1
Σ C t-i=c 0
i =0
1
1
1
巨視的計量モデルと時間にかんするアグリゲイション
1
1
+
=
1
1
1
1
(12)
Σ
・
T k→∽
Σ
1
1+
2 1
1
= +
=
+1/ -k= +
・k
そして,T を大きくすれば,次の関係が成立する。注1)
1
1
2 1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
ストック変数にかんして期間のアグリゲイショ
ンが意味することは系列の内ある数の観察値を規
則的に無視することによって情報が失われるとい
うことだけである。
この節では次の方程式についてこの問題を考察
することとしよう。
(13) I t =a 0+a 1r A t-a 1K t-1+u t
を無視できる程度にk が大きいとすれば,上式は
1
1
1+
=
2 1
2 1
となる。
ところで
1
+
1
と書けるから,上式を代入すれば,
E (c' 1 ) =
E (c' 1 ) =
に大きなT に対してp1 の値を求めることができる。
1
を加えると次式が得られる。
上式の両辺に
1
1
1
=
1
1
C t は簡単な静態的確率過程から生じているので,十分
しかし,もし第3項を無視できなければ,*
plim
1
1/
+
1
+
1
1
1/ +
ここで,右辺の第3項を無視することができれば,
1
(10)式におけるc 1' は
に等しい。
1
+
ここに,p1は次式の回帰係数である。
書き直すと
(11) 1
*E (c 1' ) =
1
ここで A t は外生のフロー変数であり, K t-1は(t -1)
期末における在庫ストックで, I t は在庫の変化分であ
る。
2 故にこの式は次のような型の自己回帰方程式である。
を得る
(14) K t =a 0+a 1r A t+(1-a 1) K t-1+u t
パラメーター r は望ましい(限界)売上・在庫比率であ
り,その大きさは期間の長さに依存することに注意す
る必要がある。
今c 1=0.2,k=4とすると
0.2
E (c 1' ) =
≒0.058
3.44
またc 1=0.5,k=8とすると
0.5
E (c' 1 ) =
≒0.10
5.0
次のような手順に従って,
を得る。
もし,短かい期間に基づいた自己回帰モデルで
注1) (12)式の導出の基礎となるのは 次 の 関 係 式 で あ
る。
i )E {
・ ・ = 〔1+ 1+
合には上の(12)式によるほかない。
1+ +
+……+
たとえばc 1=0.5,k=4のとき,
E (c' 1 ) =0.226となる。
=
また c 1=0.8,k=4でも
4 ストック調整型モデルにおけるアグリゲイション
ii)E {
体系の中の経済変数を時間にかんしてアグリゲ
イトする際には,フロー変数とストック変数を区
〔1
1
- 3 -
+…… +
1
1
1+ 〕
1+
・
1
1
1
1
T k→∽なるとき
+
)〕+
1
+
E (c' 1 ) =0.238とそれほど変わらない。
別して考えなければならない。
+
自己相関係数が高く,k がそれほど大きくない場
・
=
1
+
1
1
2
1
1
・
K t =a 0+b 1A t+b 2K t-1+u t
b 2K t-1=a 0 b 2+b 1 b 2A t-1+b 22K t-1+b 2u t-1
b 2k-1K t-k+1=a 0 b 2 k-1+b 1 b 2 k-1A t-1+b 2kK t-k
性に関係するにすぎない。
連立方程式体系におけるアグリゲイションに特
有な問題は,それがしばしば体系の中の変数の相
+b 2 k-1u t-k+1
辺々相加えると次式を得る。
K t =a 0( 1+b 2+b 22+……+b 2 k-1 )+b 1(A t
+b 2A t-1+……+b 2 k-1A t-k+1 ) +b 2 kK t-k+wt k
ここで比率λi を次のように定義しよう。
k-1
・
λi =
At k=Σ At k・k-i
互依存関係の構造に重大な変化を引き起こすこと
である。
ひとつの典型的な事例は逐次決定型のモデルがア
グリゲイションの結果相互依存型モデルに変化
する場合にみられる。これまでの議論に見られた
i=0
ように時間にかんするアグリゲイションは方程式
すると,
At k・k+b 2 ・k -1 +……+b 2
・k -k+1
k-1
=At k・(λ0+b 2λ1+……+b 2 λk-1 )
のシステマティックな部分にスペシフィケイショ
k-1
=At k
1
( 1+b 2+……+b 2
k-1
) +λ0-
ン・エラーをともなうか,さもなければ攪乱項の
1
自己相関の問題を起こす。いずれにしろスペシ
フィケイション・エラーをまぬかれないといって
1
1
+b 2(λ1-
)+……+b 2 k-1 (λk-1-
)
1
=
1
よいであろう。
1
1
At k+ λ0-
+b 2 (λ1-
)
+……+b 2 k-1(λk-1-
1
)
連立方程式モデルでは,これらの問題はパラ
メーター推定値の大きさばかりではなく,モデル
At k
全体の動学的性質にも関連してくる。この章で
Σλi=1であるから,上式の第2項は無視し得るかも知
れない。
よって次式が得られる。
(15) =b 0 +
1-( 1-a 1 )k
-a 1 )
は,われわれは簡単な例を用いてこれらの問題を
研究することとしよう。
1
+( 1
次のようなモデルを考えよう。
2.1)
C t =c 0+c 1Y t+c 2C t -1+c 3C t -2+ut
k
Y t=C t +A t
この関係式はアグリゲイトされたモデルにおけるパ
ラメーターの大きさをてっとり早く求めるための便利
な法則である 注 2) 。しかし,次節の実験の結果に見られ
るように,この近似の度合いは全くあらいものである。
II 相互依存的動学体系での時間にかんするアグ
リゲイション
=
ここでA t は次式で与えられる独立支出である。
π
A t =10sin
+100
10
そしてc 0=30,c 1=0.5,c 2=0.25,c 3=0.15 で
あり,t は1から48まで動き,攪乱項 ut は正規分
布N(0.1)に従うものとする。
複数個の方程式からなる体系を扱うとき,体系
の中にラグ付内生変数がある場合にだけ,時間に
かんするアグリゲイションはいくつかの問題を引
き起こす。
もし体系からラグ付内生変数が除かれれば,ア
グリゲイションはただパラメーター推定値の有効
注1)つづき 1
Σ
iii)
tk
短いラグをもつ相互依存型フロー・モデル
・
=
この体系をそれぞれ2期と4期にアグリゲイト
すると,次式が得られる。
1
2.2)
C t 2 =2c 0+c 1Y t 2 +c 2C t 2 - 2 +c 3C t 2 -1
+ut 2
2.3)
Y t 2 =C t 2 +A t 2
C t 4 =4c 0+c 1Y t 4 +c 2C t 4 - 14 +c 3C t 4 -
2
4
+ut 4
Y t 4 =C t 4 +A t 4
1
Σ
t
1
注2) ムンドラークはフロー変数のモデルの場合に対
して同様な公式を得ている。
Mundlak, Y., “Aggregation over Time in Distributed Lag Models”,I.E.R., May, 1961.
パラメーター推定値は下表のとおりであるが,
数字はそれぞれ標本平均値であり,かっこ内の数
字は標本標準偏差である。
実験の繰り返しは30回行なった。
アグリゲイトしたモデルに対する推定値は攪乱
項 ut k における自己相関の影響を受けており,こ
の影響は単純最小二乗法におけるよりも二段階最
- 4 -
巨視的計量モデルと時間にかんするアグリゲイション
小二乗推定値において著しい。
ついでながら,均衡限界消費性向 1
が二段階よりも単純最小二乗法の場合のほうが妥
当な値をとっていることは興味深い。
k= 4
e1
e2
2
実験の結果が示すように,期待に反して,単純
最小二乗法と二段階最小二乗法との差はアグリゲ
パラメーター推定値
OLS
c1
c2
c3
TSLS
.5485(.023)
.1129(.051)
.2363(.035)
.8428
.8467(.183)
c 1/ ( 1-c 2-c 3 )
2
.7174(.0120)
.2469(.0154)
69.754(32.6)
みることとしよう。
第2表 アグリゲイトしたモデルにおける
原モデル
.7198(.0104)
.2449(.0132)
5.558(2.721)
イション後は消えてしまった。そして,その小さ
.4998(.0311)
.2534(.083)
.1450(.0556)
.8308
3.8046(1.000)
な差は k が2から4にふえるとともにますます小
さくなるように思われる。
第2表の結果と対照的に,短期の限界消費性向
は k とともに大きくなっている。
k= 2
パラメーター推定値の間には有意な差がないの
c1
c2
c3
c 1/ ( 1-c 2-c 3 )
2
.4551(.050)
.4116(.114)
.0268(.114)
.8104
1.7927(.565)
.3685(.058)
.6975(.193)
-.1661(.137)
.7864
5.3373(1.675)
で,最終テストの結果は同じである。
さて,ここでアグリゲイションの異なるレベル
において行なった最終テストの成績を比較してみ
よう。以下で
t k はY t k の最終テストにおける計
算値を示している。
k= 4
c1
c2
c3
c 1/ ( 1-c 2-c 3 )
2
.4380(.063)
.4683(.240)
.0011(.472)
.8255
2.0814(.600)
.3261(.029)
.8508(.337)
-.2721(.233)
.7740
10.497 (4.710)
成績は偏差(Y t k -
t k )の分散によって比較
される。k =2に対しては,偏差の系列は次の二
つが得られる。
(1)
しかし,上のアグリゲイト・モデルは実際には
利用価値が少ない。例えば,最終テストなどでモ
k =1とした時の原モデルから得られる偏差
をアグリゲイトした系列。
(2)
k =2としてアグリゲイトしたモデルから得
デルを「動か」すことはこのように分数のタイム
られる偏差の系列。
・ラグがあると不可能となる。
同様にしてk =4に対しては,三つの偏差の系
その代わりにわれわれは通常次のいずれかのモ
デルを使う。
2.4)
2.5)
列が得られる。
(1)
る偏差の系列をk=4としてアグリゲイトした
C t 2=d 0+d 1Y t 2+d 2C t 2-1+v t 2
もの
Y t 2=C t 2+A t 2
(2)
C t 4=e0+e1Y t 4+e2 C t 4-1+w t 4
するとモデルはシステマテイックな部分でスペシ
フィケイション・エラーをおかし,モデルの動学
(3)
第4表 異なるレベルのアグリゲイ
ションの比較:偏差の分散
値を比較し,第2に最終テストの成績を比較して
k =2
アグリゲ
原モデ イト・モ 原モデ
ル
デル
ル
(k =2)
第3表 ミス・スペシファイルされたモデルの推定値
TSLS
k= 2
2
.5748(.0128)
.3222(.147)
13.362(3.55)
k =4としてアグリゲイトしたモデルを推定
して得る偏差の系列。
そこでわれわれはまず第1にパラメーター推定
.5795(.0116)
.3180(.0145)
2.4058(.712)
t 2)
をさらにアグリゲイトしたもの
的性質が本来のものである保障はなくなる。
d1
d2
k =2としてアグリゲイトしたモデルを推定
しそれより得られた偏差の系列(Y t 2 -
Y t 4=C t 4+A t 4
OLS
k =1とした時の原モデルを推定して得られ
OLS
k =4
アグリゲイト・
モデル
k =2
k =4
19.441
20.327
62.885
67.360
81.040
TSLS 18.732
19.718
61.703
65.605
65.274
- 5 -
第4表はそれぞれの偏差の分散の標本平均値を
結果は第5表に示されている。
示している。
第5表 (2.7)に対する推定値
この表からわかることは,
(1)
2段階最小二乗法は明らかに単純最小二乗法
a 1'
より優れている。
(2) アグリゲイトしたモデルはアグリゲイション
のレベルが高くなるほど成績が悪くなる。
(3)
原モデル
しかし,k =4における二段階最 小 二 乗 推
.3018
(.0097)
.3015
(.0136)
a 2'
a 1' /a 2'
1.00
定値の場合を見ると,アグリゲイトしたモデル
b 1'
デル(k =2)よりもいく分よい結果を示して
2
いる。
これらの観察からわれわれは次のように推論す
ることができる。
(1) もし原モデルが真の構造のとおりにスペシフ
ァイされていれば,アグリゲイトしたモデルの
合,アグリゲイションのレベルが低いモデルも
高いモデルもともにスペシフィケイション・エ
ラーをともなっており,一様な判定は不可能で
ある。
2 短いラグをもつ相互依存的フロー・ストック・モデル
さて,次にわれわれのモデルを在庫投資が内生
変数となるように拡張しよう。
J t =a 0+a 1Y t-a 2H t-1+u 1t
C t =b 0+b 1Y t-1+u 2t
2.6)
.3593
(.0711)
1.3038
(.1251)
.533
.276
6.739
(1.639)
45.369
(15.665)
.7984
(.0091)
.7608
(.0144)
.957
(.165)
1.881
(.485)
.5588
(.0320)
435.98
(155.15)
もし,1.3から引き出された公式が適用できると
すれば,a 2' の推定値は次の数字の近辺にあると
期待される。
1-(1-a 2) k =0.51(k=2の場合)
成績は原モデルより劣る。
(2) 2つのアグリゲイト・モデルを比較する場
k =4
.3474
(.0169)
.6517
(.0131)
2.128
(.228)
2
(k =4)はアゲリゲイションのレベルが低いモ
k =2
=0.76(k=4の場合)
しかし,結果は期待とはかけはなれている。
ただ在庫―所得比率 ̂ =a 1' / a 2' の推定値はお
のおのの場合真の値の近くにある。
異なるレベルのアグリゲイションの間で最終テ
ストの結果を比較しようとするとき,第4表と同
様に作られた第6表の結果だけをみるのでは十分
ではない。
第6表 異なるレベルのアグリゲイション間の
比較
Y t=C t +J t
H t=J t +H t-1
―フロー・ストックモデル―
このモデルでは体系の中に外生変数がなく,そ
の動学的過程は攪乱項を除いては完全に自生的で
ある。
われわれはまず第1に異なるレベルのアグリゲ
ィションにおけるパラメーター推定値の性質をし
らべ,続いてモデル全体の動学的性質をしらべよ
う。真のパラメーターはそれぞれ次のように与
えられる。a 0=0,a 1=a 2=0.3,b 0=30.0,b 1 =
0.8,u 1とu 2は独立で,分散は1である。
前と同様にして,(2.6)から生ずるデータは2
期と4期にわたってアグリゲイトされ,これらの
データに対して次の方程式が推定される。
J t k =a 0' +a 1' Y t k -a 2' H t k -1
2.7) C t k =b 0' +b 1' Y t k -1
k =2
アグリゲィ 原モデ
原モデル
ト(k =2) ル
43.05
173.26
k =4
アグリゲィト
(k =2) (k =4)
145.98
520.64
516.82
Y t k の観察値と計算値との偏差の系列はランダム
な変数の系列ではなく,動学的過程における組織
的な偏りをもっている。これは
t 1, t 2, t 4
の
ひとつの標本系列を描いた第1図を見れば分る。
t 1はこの体系の本来の動学的経路をありのま
まに描いている。一方
t2
は
t1
よりも長い周期
の循環をもっているようにみえる。
t 4は循環的要素をもっているようにはみえな
い。
k =2と4
- 6 -
Y が均衡水準から乖離すると,体系は均衡水準
巨視的計量モデルと時間にかんするアグリゲイション
に向かって単調にもどっていく。アグリゲイトし
ゲイションはスペシフィケイション・エラー
たモデルでは原モデルよりも収れんするスピード
を避けることができず,それはまた推定された
が早い。
モデルの動学的過程において有意な誤差を生ず
る。
以上の結果は次のようなわれわれの推論を支持
(2) 異なるレベルのアグリゲイションをもつ競合
するように思われる。
(1) 相互依存的動学モデルにおける期間のアグリ
的なモデルが時々予測の観点から分析され,よ
第1図 異なるレベルでアグリゲィトされたモデルの動学的過程
り高いレベルでアグリゲイトしたモデルのほうが
つのモデルがいずれもミス・スペシファイされて
一年といった一定の長さの期間についての予測に
いる場合に起こり得るということである。
かんするかぎり優れている場合がよくある。
この事実に対するわれわれの説明は,これは2
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森口 親司・中沢 拓生
土志田征一
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