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平成22年 市民ネットワーク会派視察報告 ◎ 期 間: ◎ 視察先: 平成22年5月18日(火) ~ 5月22日(土) 1.長崎県(佐世保市) 2.大分県(別府市) 3.東京都(千代田区) ◎ 視察テーマ: 1.佐世保市:長崎次世代エネルギーパーク ○経済産業省(資源エネルギー庁)が整備・促進している事業「次世代エネ ルギーパーク」の一つである、長崎次世代エネルギーパークで実施してい る、低炭素社会実現に向けた取り組みを視察 ①NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の採択を受け事 業展開している、次世代型太陽電池、微結晶タンデム型太陽電池を採用した、 大規模太陽光発電設備について ②ソーラーシップやソーラーボート、天然ガスコ・ジェネレーションシステム の概要について ③その他、ハウステンボス内でエネルギーを創り、供給し、消費する「エネル ギーの地産地消システム」など、ハウステンボスで実施されている環境保全 の取り組み全般について 1 2.大分県別府市:観光協会観光案内所 ○別府市観光協会が実施しているインバウンドの取り組みを視察 ①外国人用の観光案内所の取り組みについて ②市内の多言語案内板などの設置の取り組みについて [別府駅内の総合観光案内所。] [国内・外からの観光客が大勢利用していました。] 2 3.東京都千代田区:全日通霞が関ビル ○ 観光地域づくり人材シンポジウムに参加 ①児童・生徒によるボランティアガイド普及促進モデル事業について ②持続可能な観光地域プラットフォームの先進事例について ③観光地域づくりを実践する組織による観光地域づくりをリードする担い手 の育成の取り組みについて [観光経済部次長も参加されました。] [会場には登別市のポスター・パンフレットも設置しました。] 3 1.長崎次世代エネルギーパーク (1)次世代エネルギーパークの目的 「次世代エネルギーパーク」とは、経済産業省が整備を促進しているもので、 太陽光発電などの新エネルギーを、実際に「見て、触れて、体験できる」機会 を増やすことを通じて、地球環境と調和した将来の次世代エネルギーのあり方 について広く理解の推進を図ることを目的としている。国において 2007 年度に 初めて、自治体を対象に次世代エネルギーパーク計画を募集し、6 つのパーク計 画が認定された。 (2)長崎次世代エネルギーパークの概要 「長崎次世代エネルギーパーク」は 2007 年 10 月に国が初めて認定した全国 6 カ所の次世代エネルギーパークのひとつで、ハウステンボス内に設置されてい る。基幹施設は 900kw の太陽光発電システムで、運営主体は長崎県や佐世保市、 九州電力、ハウステンボスなどでつくる「長崎次世代エネルギーパーク運営協 議会」である。関連施設としては、ソーラーシップやソーラーボートの他、天 然ガスコ・ジェネレーションシステムがある。 ①太陽光発電システム ・設置電池=微結晶タンデム型太陽電池 (次世代型太陽電池を採用した太陽 光発電システムとしては国内最大級である。) ・設置場所=ハウステンボス内に 10 ヶ所 ・設置規模=0.9 メガワット (年間発電量は一般家庭の約 250 世帯の電力消費 量に相当する。) ②天然ガスコ・ジェネシステム 大気に優しい天然ガスエネルギーを利用した、コ・ジェネレーションシス テムを導入している。コ・ジェネレーションシステムとは、1 種類のエネルギ ーから複数のエネルギーを取り出すシステムで、ハウステンボスの電力使用 量の約 30%にあたる電気を供給する能力を持つほか、廃熱から蒸気を作り出 し、熱供給システムを通じて給湯、冷暖房などに活用している。 ③ソーラーシップ 化石燃料を使用しないで近距離を運航できる遊覧船の試験船。 ④ソーラーボート 太陽光発電と商用電源を併用し免許がなくても操船可能なレジャーボート。 ⑤下水処理場 ハウステンボス内の汚水は全て下水処理場へ集めら、高度処理を施した上 4 で、 「中水」として、トイレの洗浄水樹木や花への散水用の水として再利用さ れている。さらに余った中水は土壌浸透装置を通じて大地に浸透させている。 [下水処理施設の模型。] ⑥共同溝 ハウステンボスの地下には全長3.2kmの共同溝が張り巡らされており、電力、 通信、熱供給、給排水など、街の営みに欠かせないあらゆる機能の動脈として、 景観を損なうことなく、常に安全で快適な環境をバックアップし続けている [地下共同溝の様子] ⑦熱供給システム 大気にやさしい天然ガスを燃料に、コ・ジェネレーションシステムやガスボ イラーによって蒸気を作り、それを熱源として暖房や給油に利用したり、吸収 5 式冷凍機を通じて冷暖房用の冷水を生産するシステムである。また試運転の際 に冷却塔補給水に中水を利用するなど水資源の保護にも努めている。 ⑧コ・ジェネレーションシステム コ・ジェネレーションシステムは、ガスタービン発電機と排ガスボイラーを 組み合わせて、都市ガス(天然ガス)による発電を行いながら、廃熱を利用し て高圧蒸気を作り出すシステムである。ここで生産された電力は、各施設内で 使われ、高圧蒸気は熱供給システムへ送られ、熱源として利用されている。 ⑨ビルディングオートメーション 電力制御、防災管理、空調、給排水の管理など、ハウステンボスの快適な環 境を 24 時間体制でコントロールしている。装置の負荷の分散を図るとともに障 害児などのバックアップを考慮して、監視施設は場内全体に分けて配置されて いる。 (3)所感 今回、ハウステンボスの内の長崎次世代エネルギーパークを視察し、環境面 でのムダ使いをしているかということを改めて感じた。 ハウステンボスは 1988 年に荒れた大地に森を再生することを目的に、環境先 進国である、オランダの国づくりを模範として土壌を入れ替え、40万本の樹 木を植え海水を引き込み、約5年の歳月をかけて街が形成された。 現在、樹木は生長し、運河にはクロダイやタツノオトシゴが泳ぎ、森には野 鳥たちが遊び、自然のリズムや生態系が回復していた。自然を生み出す植物の 恵みを取り入れることで、地球に負担をかけない、心地よい良質な暮らしへと 導くライフスタイルを提案している。 「森の家」という意味を持つハウステンボスは、自然を創造し、育み、持続 可能な循環型社会が構築されており、植物や生物たちとともに暮らせる環境の 中で、自然がもたらす豊穣の恵みに感謝しながら暮らせる環境が整備されてい た。 システムの導入には多額の費用が投入されたようだが、地球規模の課題であ る温暖化対策として、また成長産業のひとつとしての、再生可能エネルギーの 生産や効率的な電力網(スマート・グリッド)の技術開発・普及の必要性を考 えたとき、これらの技術を今後どのように生かし、成長させていくかが喫緊の 課題だろう。登別市は幸い、豊な自然に恵まれているが、将来に亘りこれらを 守り育てていくために、全市的な環境保全への意識の醸成と取り組みに今後も 力を注ぐ必要があると感じた。 6 2.大分県別府市 観光協会観光案内所 (1)別府駅総合観光案内所 別府駅構内にある、観光案内所にお邪魔したのは、朝の10時ころでしたが、 観光協会の大塚部長さんに訪問の依頼をお願いしておいたこともあり、お忙し い中丁寧な対応を頂きました。その間、汽車を降りてひっきりなしに訪れる外 国人観光客への対応の合間を縫っての落ち着かない視察ではありましたが、充 実したものとなりました。 お話しを頂いた方は、ボランティアの方で、この他に2名の観光協会職員の 方も含め3名で観光客への案内をされておりました。ボランティアの方は、英 語が堪能な方でしたが、韓国人や中国人等についても英語やフレーズでの会話 でも十分対応可能だとの事でした。外国人とのトラブルについてもほとんどな く、たいへん紳士的で明るく振舞われる方が多いとのことでした。この点は、 むしろ日本人が反省しなければならない点ではないかと思いました。 「モンスタ ー○○」と呼ばれる耐性のない大人が増加してきていることは、たいへん残念 なことです。寛容な精神を是非今一度思い出して頂きたいものです。 このような、ボランティアの方々については、鉄輪地区にも配置されており、 英語、中国語、韓国語などを話される方数十人が活躍されているとの事でした。 また、別府市役所の方には、1階に別府外国人観光案内所があり、2階には国 際交流サロンがあり、ミーティングや勉強会、サークル活動に利用する外国人 の姿も見られるとのことでした。 別府を訪れる外国人で、最も多いのが韓国人のようですが、関釜フェリーで 来日し、別府までJRでやってくる方が多いことから、駅観光案内所が忙しい のだろうと思いました。登別は、韓国人より中国系の方々の方が多く、北と南 の違いというところかと思いました。外国人案内所とボランティアについては 登別市の課題ではありますが、観光庁を2008年に設置し観光立国を目指す 日本において、登別市の観光振興のためのボランティアを含めた人材育成は、 さらに大きな課題ではないかと思いました。 (2)外国人客に対する対応 ① 多言語での案内板の設置 登別でも、温泉や周辺の遊歩道などを、英語・韓国語・中国語の看板などで 情報の発信をしておりますが、別府でもバス停や地図など、至るところにハン グル文字や英語、中国語の案内がありました。 7 ② 多言語でのリーフレット・パンフレット 地獄めぐり、ひょうたん温泉、高崎山、大分マリーンパレス水族館「うみた まご」などのリーフレットを駅案内所からもらってきましたが、それぞれ、英 語、中国語、韓国語の3つの多言語で作られておりました。また、案内所には、 観光協会発行の「別府からの大分観光めぐりマップ(観光案内タクシーのモデ ルコース運賃表)」 「別府地獄めぐり定期観光バス」 「別府とり天」 「別府冷麺」 「B 級グルメ MAP」「るるぶ FREE」‥‥などの観光情報であふれておりました。 ただ、地図類には、英語の地名を書いたものもありましたが、これは日本人 向けのものが多かったようです。 ③ 両替への取り組み 外国人旅行客への便宜を図るために、 「外旅協」に加盟するホテルや旅館では、 韓国ウォン、中国元、台湾ドルをはじめとする外貨の両替が可能となっており ます。両替の契機となったのは、W 杯が開催された2002年ということです。 (3)オンパク 2001年に地域再生を目的として別府市で始まった、オンパクは、地域資 源・人材を生かした多彩な「体験交流型プログラム」で、140プログラム、 参加者4,000人、開催事業者250で実施されております。 参加者の70%は、別府・大分地域の住民で、30%が地域外からの 参加となっております。内容は、「地域の生活文化を知る散策プログラム」「農 村での食育プログラム」「歴史的空間での芸術系プログラム」「日本の文化を体 験するプログラム」「温泉での健康づくりプログラム」「温泉と自然を体感する プログラム」など多岐に渡った催しとのことでした。 この取り組みの中で、住民が地域の素晴らしさを体験・知ることで地 域資源は認知され、地域愛(=帰属意識)が醸成されるとの事でした。 この中で、文化が育まれ、自然や歴史の素晴らしさの発見・再認識につながり、 人材が育まれ、そして人材がネットワーク化されていくのだろうと思います。 登別にとっても、参考になる取り組みではないでしょうか。函館市の湯の川や 全国8箇所でオンパクが実施されております。 (4)別府温泉のインバウンド ① 組織的にデータを取り、正確な市場分析をする ② 外国人旅行者の立場になって想像してみる ③ 「良い」と思ったら多少のリスクは負ってもトライ ④ 地域ぐるみで外国人受け入れに取り組んでいく 8 との事のようです‥‥。 ※インバウンド(inbound)とは、外から入ってくる旅行、一般的に訪日外国人 旅行を指すようである。海外旅行はアウトバウンド(outbound)という。日 本ではアウトバウンドに比べ、インバウンド旅行者の数が著しく少ないこと から、2003 年に政府が「外国人旅行者訪日促進戦略」を掲げ、海外への訪日 宣伝活動(ビジットジャパンキャンペーン)を行っている。2010 年までに訪 日外国人旅行者 1000 万人の達成をめざしている。 別府市の旅館・ホテルや観光施設では、「ツイッター」を使って、観光施設 情報など別府の魅力を発信している。立命館アジア太平洋大学の学生らを雇い 入れて、海外からの問い合わせにツイッターで回答したり、ホテルの仲介など をしているようである 3.観光地域づくり人材シンポジウム 於:東京千代田区 全日通霞ヶ関ビル 国は観光庁を設置し、観光立国推進を図っている。今回は溝畑観光庁長官を 迎え 300 人以上のセミナー参加者で観光について学んだ。 〇観光立国推進にあたって 意識啓蒙として地域・民間の取組み 国の取組み 1地域独自の観光副読本の作成 ● セミナー、全国大会等への参加、後援 ②小中学校での観光立国教育 ● 長官表彰の実施 ③「旅育」出前授業の実施(TIJ) ● 産学官連携検討会議の開催 (産業界のニーズに応える教育の実践) ■ホテル専門学校等における教育の実 ・ 経営人材育成のためのカリキュラ 践 ム策定、大学での実践支援 大学観光学部教育等の実践 ・ 観光産業でのインターシップ促進 観光学部・学科の開設 9 魅力ある観光地づくりを担う人材の育成 ■地域独自の人材活用制度 【入門編】 (例:静岡県東伊豆町の稲取温泉観光協会 ● 観光カリスマ塾の開催 事務局長公募) (成功者ノウハウ普及による人材育成) 【自律的な人材育成を支援】 ■地域レベルでの観光まちづくり人材育成の ● 観光地域づくり人材育成支援事業 取組み (シンポジウムの開催、ML によるネットワーク (例:南房総観光カレッジ、やまがた観光ま 化、観光地域づくり人材育成支援 WEB の開設、 ちづくり塾など) 人材育成ガイドラインの策定) 【地域と外部人材のマッチング支援】 ● 観光地域プロデューサーモデル事業 【市場と地域をつなぐ窓口組織の一体化支援】 ●観光地域プラットフォームへの支援 リーダー(総合的に観光地域づくりをリードするまとめ役) 、企画・調整者(地 域の観光資源を発掘して地域づくりに活用するための専門知識を持って具体的 な事業を企画・調整する人材)オペレーター(地域を訪れる観光客に現場で接 する人材)の育成がカギである。 ①講演 「一期一会」の心で「一期百会」を! ~サービス競争時代を生き残るための切り札は「人」~ 九州旅客鉄道株式会社役員・YOKOSO!JAPAN 大使 町 孝氏 現代は著しいスピードで少子高齢化が進んでいます。20年後では全国では 東京都分、九州では福岡市分の人口が消滅されると言われています。生産年齢 人口の減少が大きな課題と言われこの難題を補うと期待されているのが、観光 産業と思われる。 観光産業の強化は、すべての産業の維持や定住人口の維持につながり、魅力 的な街づくりを実現するのではと考える。 JR 九州の考え方は、列車のデザインは一貫して水戸岡氏に依頼。地元素材、 地元イメージにこだわった。スピード・価格・頻度の3要素で他の輸送機関に 劣る観光列車が、単なる「移動手段」としてだけでなく「旅の目的の一つ」と 認めて頂けるように、沿線観光地と同じコンセプト・素材でプロデュースした。 10 車内販売は「売れるもの」「売りやすいもの」ではなく、「お客様が望まれる もの」を旅先へのプロローグ(エピローグ)となるよう車内に配置。 客室乗務員による、車窓の景観案内や観光案内、記念撮影の補助といった観 光列車ならではの人的サービスを徹底し「旅の魅力の一つを演出」する。 結果 NIKKEI プラス1(2010 年 4 月 10 日付)初夏に乗りたい観光列車ベスト 10 に4列車がランクインした。 人づくりの大切さとして JR 九州が取り組んだもの 【客室乗務員の活動】列車毎の委員会→常にブラッシュアップを図る。外国語 の習得。 【お客様の声・社員の声】意見集約→月1回のサービス改善委員会→商品・施 策に反映 【サービス宣言】社内各箇所で朝礼時などに唱和し、意識付けを行う。 【サービスランキング】年3回実施。社外の調査員(お客様)が覆面調査。調 査内容は整理、整頓、清掃、清潔+接遇。駅長会議でランク発表し競争意識を 持たせる。 結果 2003 年度最低点 35.3 最高点 69.3 点だったのが 2009 年度は最低点 70.7 点最高点 100.0 点に改善された。製造業で成功している会社は、誠実に手間隙 をかけているし、汗をかいている。マニュアルどおりのサービスでは心からの 感動は生まない。観光と旅行のビジネスモデルは激変し淘汰される。個人のリ クエストは千差万別。経営者自らお客様と接し目配り、気配りが出来る範囲で 受け入れる事。ビジネス成功の秘策は、「地元に愛されているか?」「地域に魅 力があるか否か?」が決めてである。 私達が目指すべきは「仁・義・礼・智・信」の五常の徹底=「おもてなしの 心でお迎え」それが何度も同じお客さまに出会えることに繋がることと考える。 ②児童生徒によるボランティアガイド普及促進モデル事業実施報告 観光庁課長補佐 久保 麻紀子氏 観光立国を実現し、次代の地域の担い手を育成するためには、子どもたちの 「旅をする心」 「地域を愛する心」を育む取り組みが必要と考えて事業化される。 【都道府県の取組み】 観光に対する興味及び理解を早い段階から促すために、各地域独自の観光副 読本を作成し、総合学習の時間などを利用し観光・交流の大切さについて理解 を深めている。 11 【観光関連団体の取組み】 (社)日本ツーリズム産業団体連合会では、平成 19 年度より、小中学校に観 光産業からパイロット等の講師を派遣し、実体験を通じた旅の魅力を伝える「旅 育」出前授業を実施。 ・ 平成 19 年度 10 校 11 回、平成 20 年度 13 校 17 回、平成 21 年度 8 校 9 回開 催。 【教員の自主サークル「TOSS」の取組み】 全国の学校教員自主サークル(TOSS)では、各地の小中学校で観光立国教育に 取り組み、指導内容や指導方法の向上に」努めている。 ・ 全国全市町村(1,810 市町村)の観光立国テキストを作成し、授業で活用し ている。 「観光立国教育全国大会」 平成 21 年 5 月 10 日静岡県三島市で開催され、小中学校教師、観光行政職員、 観光業界関係者 912 名が参加。主な内容は観光をテーマに地域学習の実践事例 を募集し、優秀事例を表彰。教育関係、観光関係のトップによる提言。観光立 国教育摸擬授業など 観光をテーマに、優れた教育を実践している事例を募集し、優秀な事例に観光 庁官賞ほか授与、全国から 222 件の応募があり、15 件を表彰。 「観光甲子園」 地域の自然や歴史、文化の理解を深め、異文化コミュニケーションを学ぶこと により、自発的な問題探求力やコミュニケーション能力を育成することを目的 に、全国の高校生による「観光プランコンテスト」を実施。 平成 21 年 8 月 23 日応募のあった 69 校の中から予選を通過した 10 校による発 表が行われ、優秀な事例に文部科学大臣賞、観光庁長官賞などを授与。平成 22 年度は 4 月 1 日~7 月 9 日で募集を行い、8 月 29 日に優秀作品の発表を行う。 平成 20 年度は、関係団体への調査を実施すると共に、全国4地域(北海道・松 前、青森県・八戸、滋賀県・湖北、鹿児島県・鹿児島)において「児童・生徒 によるボランティアガイド普及促進モデル事業」を実施し、」成果と課題等につ いて検討を行った。 平成 21 年度には、全国 16 地域において、モデル事業を実施するとともに、モ デル事業から得られた知見を体系化し、「指導者向け」及び「児童・生徒向け」 手引き書を作成した。 12 ③児童生徒によるボランティアガイド普及・促進モデル事業報告 発表者:日本橋女学館中学校・高等学校 明治 38 年日本橋区教育会(区内の有志により設立)地元の女子の中等教育を 目的に「日本橋女学校」として開学。学校独自のキャリア教育を展開。 「にほん ばし学」と銘打って社会に出て必要となる3つの力を(①コミュニケーション 能力②問題発見・解決能力③チャレンジ精神)を日本橋美人推進協議会に参加 し「チーム日本橋美人」として活動し、日本橋マップ作り、職業人インタビュ ー、企業とのコラボレーションによる商品開発などのプログラムを展開して養 っている。 実施の流れ NPO 法人東京中央ネット、日本橋美人推進協議会、江戸日本橋観光めぐり事務局、 日本橋女学館中学校、高等学校で会議を開き応募を検討、決定、役割分担。8 月応募9月認可受ける ボランティア生徒募集→5名が応募。勉強会実施。ガイドコースの選定、決定、 ツアー参加者の募集。留意点として、傷害保険加入、お客様がガイドを判別出 来るよう、生徒は制服、腕章を着用「日本橋女学館」名入りバッグを持った。 参加者にもバッグを配布。 生徒は先頭、中間、最後尾につき、それをフォローするように教員3名、江 戸日本橋観光めぐりの3名の計6名の大人がついた。 (他にも何点か留意点があ った) 配布資料は本や現地でいただいた資料にインターネットで調べたことを加え、 オリジナル資料を作成。 参加者は初日9名、2回目10名。アンケート実施。 参加者の声では、一生懸命さが好感持てた。初回声が聞き取りづらかった。 もっと実体験を話して欲しかった。歴史の勉強になった。楽しかったなどがあ った。 生徒の反省では、楽しい経験だった。お客様にどう喜んでいただくか工夫す るのは大変だったがやりがいがあったととのこと。 ボランティアガイドを終えて今後の展望として ボランティア後、さらに今回の関係者から韓国の教育関係者のツアーガイド 依頼され通訳つきではあったが温かい国際交流が経験でき生徒の意識も高まっ た。 今後は外国の方々にもガイド実施できるようにし、国際交流に発展させられ たらと考えている。 13 ④山の楽校ボランティアガイド育成事業 発表者:八戸中沢中学校 【事業概要】 八戸観光コンベンション協会 ・事業企画 ・連絡調整 ・講師手配 ・検定事業者 協力依頼 協力依頼 連絡 中沢中学校 ・ ガイド希望者の募 集 ・ 講義会場準備 ・ 父兄への承諾願い と連絡 山の楽校 ・会場提供 ・ 体験指導 連絡 送迎 保 護 ・学校、受け入れ施設の協力 ・ 保護者の協力 ・地域一帯での人材育成 者 八戸市の南部,南郷区、増田地区に位置し、平成 15 年3月に閉校となった増 田小中学校の校舎、体育館を活用した体験観光交流施設。 平成17年に観光エリアの拠点「山の楽校」として生まれ変わる。体験メニ ューは蕎麦打ち、豆腐、味噌作り、炭焼き、野菜作りなど多彩。 迎える側として、南郷に関する学習(食文化、歴史)やおもてなしセミナー の受講、そして南郷ジュニア検定(講義の知識習熟度の確認、地元への興味、 再確認やなにかひとつ自慢できるものを作る)を受けてガイドとなる。 事業の成果として体験したお客様に伺ったところ子どもたちがお客様に心を 打つような接遇が出来ていたということ。子どもたちの受け答えの技術が向上 14 したことを感じる事が出来た。 (相手の気持ちを考えた言動、行動が出来るよう になった)自分で考えて行動することが出来るようになったことが挙げられる。 また子どもたちの姿勢に現役のガイドも刺激を受けガイド全体のスキルアップ にも繋がった。 今後として総合学習の延長として、地域に関する学習を取り入れ、それを発 表できる場としてガイド事業を広めてもらいたいし、子どもの育成と言う観点 からも、教育機関との連携を全国的に検討して欲しいと考える。 ⑤持続可能な観光地域プラットフォームの先進事例 NPO 法人グローバルキャンパス理事長 大社 充氏 【住んでよし・訪れてよしのまちづくり】 情報化の進展が進み顧客のマーケットニーズが変化してきている。観光関連 事業者からの発信だけでなく住民や他産業も含めた地域全体を巻き込んだ観光 が人気を博している。 住民参加の観光まちづくりは住む人の暮らしの質の向上にも繋がっている。 今までは農業、観光とも小規模市町村から中間組織を通って大都市そして世 界へという消費の流れだったが、今は地域内で資金を還流させ、グローバル化 に対抗する経済サイクルの確立が望まれる。 地域資源を活用して高付加価値商品(サービス)を開発し、交流人口を増や すと共に、産業の地域内垂直化を目指しグローバル市場をマーケットとする考 え方。 地域ベースの組織による商品開発と流通機構づくり DMP(観光まちづくりプラ ットフォーム) 【観光による地域振興のための新たなプラットホーム】 従来の観光協会 機関決定を行う構成員 地方公共団体との関係 サービス志向 事業活動の範囲 主な業務内容 法人格 観光関連業者 行政補完型 構成員・来訪者・地域住民 行政エリア内 定期イベント運営/広報 一般社団(任意) 観光まちづくりプラットホーム 複合的産業界と地域住民 パートナーシップ型 顧客志向 顧客ニーズに対応したエリア 多角的事業 株式会社~公益法人 地域のワンストップ窓口「観光まちづくりプラットホーム」 15 大都市マーケットおよびセグメントされた グローバルマーケット 観光まちづくりプラットホーム(事業体) 地域 ⑥パネルディスカッション「観光地域づくりをリードする担い手の育成」 ○パネリスト ・蛯子良子氏(OEC 観光ガイドおおまエスコートクラブ代表) 地元の主婦5人でスタートした生活改善グループにより地域の果実を 使ったジャムづくりに始まり、大間魚組内の水産物直売所にて町内飲食 店を10~15店舗出店「浜のチャレンジ市」としてデビュー。同時期 にテレビ番組でまぐろ漁師が人気となり、観光客からの要望もあり、浜 周辺の案内をスタート。大手旅行業者と提携し「おおまエスコートクラ ブ」を結成。現在ガイド3名、主婦10名の協力体制で、まぐろ料理の 開発など、将来の夢である「浜の駅」をつくり町の雇用拡大、さらには スーパー主婦の手作り観光を目指し奮闘中である。 ・高砂樹史氏(NPO 法人おぢかアイランドツーリズム協会専務理事) 自給生活をめざし実家のある奈良から、小値賀町へ移住。「ながさき・ 島の自然学校」職員で民泊事業推進組織の立上げに携わり、その後、民 泊団体、自然学校、観光協会の3組織が合併した「NPO 法人おぢかアイ ランドツーリズム協会」の設立に参加し現職に至る。アメリカ高校生の 国際交流事業など「島ぐるみによる観光まちづくり」の取組みが高く評 価されオーライニッポン内閣総理大臣賞をはじめ数々の賞を受賞。今年 から小値賀観光まちづくり公社を立上げ、古民家再生レストランなど新 しい観光事業を手掛けている。 16 ・野上康生氏(NPO 法人ハットウ・オンパク理事) 別府八湯竹瓦倶楽部の代表として地域づくりを開始。地域体験型ウォー ク「竹瓦かいわい路地裏散歩」は「長崎さるく」のお手本になる。「別 府八湯温泉博覧会(オンパク)」を大分県の支援で開始。オンパクは地 域の魅力発掘と人材育成に効果的な事業として定着。現在、オンパク手 法を日本各地に伝える「ジャパン・オンパク」事業の責任者として活躍 中。 ○コーディネーター ・清水愼一氏(立教大学観光学部 特任教授、株)JTB 常務取締役) JR東日本 取締役仙台支社長をはじめ、 日本観光協会東北支部長を 兼任など、現在までに 内閣府、国土交通省、経済産業省の委員を多数 歴任。交流人口の増加こそが地域の活性化につながるとの考えでまちづ くりや温泉地再生にかかわる勉強会に参画。数々のまちづくりイベント、 キャンペーンの要職を務め、現在も精力的に活動中。全国各地のまちづ くりファシリテーター、シンポジウム等の講師を務める。 ○所 感 この4者によるディスカッションでは、それぞれの活動が紹介され、地域と の関わりや組織、人材について、さらには、抱えている課題や問題点について など、第一線で活動している方だからこそ、語れる内容であった。 その中で、皆、それぞれが、地元を愛し、いかに地域の魅力を発信し、地域の 資源を生かすことを考え、なんとか若者が地域を支える構造、環境を作りたい。 そしてそれを地域経済に波及させたい。という強い思いを持った人たちにより 実践されていることを感じた。 大間の蛯子さんからは、役場の任意団体としてスタートした主婦の集まりが、 何のノウハウも持たず、観光協会の協力も得られない中で、地域の方や主婦仲 間そして組合長さんからの助言や協力により試行錯誤を繰り返しながら、観光 ガイドの仕事や直売所の運営が軌道に乗りつつ、現在に至っているとのこと。 テレビ番組収録時のエピソードやテレビ放映ではモザイクのかかったマグロ釣 り秘伝の仕掛けがここに来たら見れる話しなど、蛯子さん(エビちゃん)のユ ーモアたっぷりの説明とエネルギー溢れるカリスマ性を感じたのは私だけでは なかったと思います。特に印象的だったのは、エビちゃんが苦労したことは・・ の質問に、 「自分はこの仕事が好きだし、この大間も好きです、マグロは止まっ たら死ぬんです。自分もマグロと同じで走り続けないと終わってしまうので、 立ち止まれないんです。自分も生きたいし、まわりの人も生かしたいんです。 だから苦労だとは思っていません。」との言葉が蛯子さんという人間像をストレ 17 ートに表しているように感じました。 他の方についても、地域への強い思いや、人との繋がりをひじょうに大切にし ているのが感じられました。 総括でも述べられていましたが、3 人の苦労や努力が垣間見える。その困難を どう乗り越えてきたのか気になるところである。頑張る人一人に負担が偏って はいけないし、地域の中では、足を引っ張る存在もあるようであり、追い風ば かりではないとのことである。しかし、この人たちには、しっかりとした目標 と、揺るがない志し、そして強い影響力があります。周囲の人たちを巻き込ん で、良い流れ、良いネットワークを作ろうとしているところであり、特に若い 人材が育っていくことを熱望しています。 最後のテーマ 行政への要望、については、縦割りの弊害、窓口の一本化、 たらい回し等、過去からの問題点を指摘しつつ、今後の新しい取り組みについ て、コンプライアンスは重要だが、慣例にとらわれずに前向きな姿勢で対応し て欲しい、また、相談時に共に頑張ろうという気構えや声かけも大切。今回の ようなシンポジウムには業務命令で職員の参加を促すくらいのことをやってほ しい。また、志しを持った若者たちを応援する仕掛け、育てて回収するしくみ を共に築いていきたいとのことでした。 今回のシンポジウムでも、地域や集団の中でリーダーシップを発揮し、ネット ワークを築き、その中で協調しながら良い流れを作っていく、また、ムードメ ーカーであり、司令塔でもある、そのような人的資源、人材育成の重要性をひ しひしと感じました。当市にも当てはまる課題であり、人的資源の発掘、人材 育成については将来のまちづくりを見据え、官民共に真剣に、戦略的な取り組 みをし、良い流れに乗っていくことが重要であると感じたシンポジウムでした。 18