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長野県地球温暖化対策戦略検討会 提言書(案) 平成 24(2012)年3月 日

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長野県地球温暖化対策戦略検討会 提言書(案) 平成 24(2012)年3月 日
資料 3
長野県地球温暖化対策戦略検討会
提言書(案)
平成 24(2012)年3月●日
1
目 次
はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
第1部 長野県の地球温暖化対策に係る諸要因の現状、展望、そして課題・・・・・・・・・・・・3
(1)長野県民の諸活動と暮らしの長期見通し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(2)地球温暖化と長野県への影響・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
(3)世界及び国内の地球温暖化対策と長野県への影響、長野県の果たすべき役割・・・・8
(4)エネルギーや資源、経済などのその他の動向と長野県への影響・・・・・・・・・12
(5)これまでの長野県の地球温暖化対策、その成果と課題・・・・・・・・・・・・・18
第2部 長野県の地球温暖化対策への提案・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
(1)自然、エネルギー、資源などの環境の視角から見た県民の活動や暮らしの長期ビジョン
・・・・26
(2)長野県の政策目標の考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
(3)長期ビジョン・目標を達成するための計画・条例・・・・・・・・・・・・・・・35
第3部 政策パッケージと政策オプション・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
(1)短中期で実施することが望ましい政策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40
(2)中長期的に検討・実施することが望ましい政策・・・・・・・・・・・・・・・・48
(3)検討した政策オプション・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50
第4部 県民・地域への期待・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52
(1)様々な立場の長野県民に期待される役割・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52
(2)県内の様々な地域に期待される役割・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・53
第5部 排出削減効果及び提案に係る経済その他の影響分析・・・・・・・・・・・・・・・・・55
(1)温室効果ガス排出量の将来推計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55
(2)経済影響評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・56
おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60
参考資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・61
2
はじめに
地球の気候が大きく変わりつつある。
地球温暖化問題は人類の喫緊の課題であり、政府は気候変動枠組条約京都議定書に定める温室効果ガ
スの排出削減目標に加え、すべての主要国による公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築などを前提
に、2020 年までに 1990 年比で 25%削減するとの中期目標も視野に入れて、政策を講じ、また一層の
強化に向けて検討を進めてきた。
こうした中、2011 年3月 11 日に発生した東日本大震災および福島第一原子力発電所事故によって、
これまでの大規模集中的なエネルギー供給の脆弱性があらわになった。そのため、政府はエネルギー政
策の全面的な見直しに着手している。
地球温暖化への対策については、前提としてきた従来のエネルギー政策ともども再検討が迫られてい
る。だが、それは、目標達成が困難になったという消極的な面から求められているだけではなく、原子
力発電所事故によるエネルギー制約状況を受け、省エネルギーの推進や自然エネルギーの導入拡大の緊
要性として、むしろ積極的な面からこそ強く迫られている。
国際情勢においては、経済成長著しい新興国を中心に資源・エネルギーの需要がますます高まってお
り、国際価格の高騰が予測されている。また資源・エネルギーの需要増大や貧富の格差拡大、気候変動
に伴う環境影響が相まって、国際社会のさらなる不安定化も強く懸念される。
交流や貿易を通じて、国際社会との関係が深まっている日本、そして長野県としては、国際社会の安
定と持続可能性を高めることに貢献しつつ、化石燃料の大量消費を軸とした 20 世紀型の社会から、省
エネルギーと分散・効率的なエネルギー利用に立脚した 21 世紀型の「持続可能な地域社会」へ移行し
ていくことが求められている。加えて、地球温暖化の影響が長野県においても顕在化しつつある可能性
があり、併せての対応が求められている。
世界のエネルギーや資源の大量消費がもたらす諸課題を賢く乗り越えることの意義は、持続可能な地
域社会への移行に寄与することだけにあるのではない。地域資源の活用によって、県経済の発展や雇用
の拡大、地域活性化をもたらし、いつまでも安心して暮らせる地域社会を創造することにもつながって
いくのである。
長野県地球温暖化対策戦略検討会は、以上の認識に立脚し、地球温暖化への足元の取組を糸口として、
地域の課題を克服していくための議論を行った。そして、これまでの地球温暖化対策全般を見直し、長
期ビジョンや戦略、効果的な政策について、提言書として取りまとめた。
提言は、長野県内の広範な関係者による真摯な議論を呼び込むための誘い水である。提言を踏まえ、
県庁各部局の連携の向上・政策の変革がなされること、県と市町村の連携が一層発展すること、そして
県と県民の信頼関係、協働関係が一層強化されることを目指した。
今後、提言を基盤として確固とした具体的な政策の体系を築き、県民こぞっての参加で実現していく
ことを切望する。
2012年3月●日
長野県地球温暖化対策戦略検討会
3
第1部 長野県の地球温暖化対策に係る諸要因の現状、展望、そして課題
第1部では、地球温暖化対策の戦略を検討するに際して、前提条件を明らかにするため、長野県を取
り巻く状況を多角的に考察する。
長野県は、人口・経済ともに縮小傾向にある一方で、地球温暖化の影響が顕在化しつつある可能性が
あり、エネルギー価格高騰の影響も受けやすい構造である。そのため地球温暖化対策およびエネルギー
対策が急務となっているが、県の政策は幅広に展開されているものの、実効性に乏しいという課題があ
る。
(1)長野県民の諸活動と暮らしの長期見通し
長野県は、人口・経済ともに縮小傾向にある。そのため、温室効果ガス排出量やエネルギー使用量の
総量が減少したとしても、それがエネルギー効率性の向上や地球温暖化対策の前進を伴っていない可能
性がある。効率性の向上を社会経済の活性化に積極的につなげていく政策が必要とされる。
〈人口・世帯〉(図表1−1)
現在の長野県の総人口は、214 万人(2012 年1月1日現在)である。
将来推計による長野県の総人口は、2001 年をピーク(222 万人)に減少し、2020 年に 202 万人、
2030 年に 186 万人になると予測されている。
現在の長野県の世帯数は、80 万世帯(2012 年1月1日現在)である。
将来推計による長野県の世帯数は今後、緩やかに減少し、2020 年に 77 万世帯、2030 年に 73.4 万
世帯になると予測されている。
現在の一世帯当たりの人数は、約 2.7 人(2012 年1月1日現在)である。将来推計から、今後は
2020 年に約 2.6 人、2030 年に約 2.5 人に減少すると予測される。
今後、長野県は人口、世帯数ともに減少をしていくと予測されている。人口に比べて世帯数の減少
は緩やかであることから、単身世帯、2人世帯の割合が増加していくと思われる。よって、現状の
ままでは、生活に要する1人当たりのエネルギー消費量が低減しないと考えられる。
〈経済・産業〉(図表1−2)
長野県の県内総生産は、2009 年度で名目7兆9千億円、実質9兆8千億円である。
同年度の県内総生産の生産側(名目)内訳は、第1次産業 1,595 億円(2%)、第2次産業2兆 5,234
億円(31.9%)、第3次産業5兆 5,167 億円(69.7%)である(その他 2,811 億円)。
2008 年度の県内総生産の経済活動別の内訳は、
製造業 25.8%、
サービス業 23.4%、不動産業 14.6%、
卸売・小売業 6.7%、運輸・通信業 5.6%、金融・保険業 4.6%、建設業 4.6%、電気・ガス・水道業
2.1%、農林水産業2%、鉱業 0.2%、政府サービス 12%、民間非営利サービス 1.9%であった。
2000 年度の県内総生産(名目)は8兆9千億円であり、過去 10 年間の経済規模は縮小傾向にあっ
た。
長野県の経済成長率は、実質成長率で年 0.6%平均(2007∼2020 年度)との試算がある。(社団法
人日本経済研究センター「都道府県別中期経済予測」2009 年4月)
今後、長野県の温室効果ガス排出量やエネルギー使用量の総量が減少したとしても、経済規模の縮
小による可能性があり、必ずしもエネルギー効率性の向上によるものでないことに留意すること。
4
【図表1−1
長野県の人口・世帯数の推移(実数+予測)】
人口
世帯数
2,500
2 ,1 57
2,210
2 ,219
2,22 0
2,215
2,196
2,1 94
2,182
2,17 9
2,16 4
2,201
2 ,216
2 ,1 61
2,215
2,215
2,214
2,189
2,188
2,17 1
2,173
2 ,1 52
2,095
2 ,0 21
1,941
2,000
1,85 8
千人・千世帯
1,500
1,000
668
6 79
657
726
70 0
751
784
770
762
740
713
689
775
758
799
793
780
792
791
798
7 88
763
794
778
734
500
20
30
20
25
20
20
20
15
19
90
19
91
19
92
19
93
19
94
19
95
19
96
19
97
19
98
19
99
20
00
20
01
20
02
20
03
20
04
20
05
20
06
20
07
20
08
20
09
20
10
0
年
*1990-2010 年の人口および世帯数(各年 10 月1日付)は長野県企画部資料、2015 年以降の人口および 2030 年の世
帯数は国立社会保障・人口問題研究所(2009 年推計)より作成。
【図表1−2 長野県の県内総生産(名目・実質)の推移】
一人当 たり県民所得( 名目)(千円)
県内総生産(名目) (億円)
県内総生産(実質) (億円)
13,000
6 ,00 0
12,000
4,944
5,261
12,0 4 2
11,821
5 ,00 0
県内総生産(億 円)
11,000
10,000
3,3 56
3,450 3,499 3,487
3,6 00
3,7 37
3,9 1 3 3,93 8 3,874 3,884
4,265
11,009
4,0 18
3,819
3,705 3,674 3,706
3,809 3,7 66 3,8 23
3,937
3 ,692 3 ,6 64
9 ,972
9 ,584 9 ,6 51
8,933
9,000
8,901
8,612 8,703 8,580 8,619
8,465
8,305 8,249
8,206
8,199 8,202
8,000
7,000
4 ,00 0
10,438
7,87
7,83 8
2
9,779 9,755
9,596
9,331
3 ,00 0
9,1 32
8,8 33
8,680 8,660
8,477
8 ,365
8 ,2 44 8 ,343
8,211 8,1 37 8,2 05
8,9 36
8,4 73
8,022
2 ,00 0
7,919
7,618 7,5 96 7,5 99
7,460 7,465 7,5 10 7,5 19
7,239
1 ,00 0
20
30
20
25
20
20
0
20
15
19
90
19
91
19
92
19
93
19
94
19
95
19
96
19
97
19
98
19
99
20
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20
01
20
02
20
03
20
04
20
05
20
06
20
07
20
08
20
09
20
10
6,000
年度
9,775
一人あたり県内総生産(千円)
4,61711,496
*1990-1995 年は長野県県民経済計算の平成 2-15 年度 93SNA 統計表、
1996-2009 年は長野県県民経済計算の平成 8-21
年度(93SNA)統計表、2010∼2030 年の予測は「地域の将来を踏まえた都道府県財政の予測と制度改革」(財団法人関西
社会経済研究所・2010 年 3 月・P30)実質県内総生産の期間中年平均成長率の予測(開放人口)より作成。
5
〈県土の特徴〉
長野県の総面積は 13,562.23k ㎡であり、全国第4位である。
林野面積は 1,022,013ha であり、全国第3位である。自然公園面積は 278,522ha であり、全国第3
位である。3,000m峰の数は 15 座であり、全国第1位である。
1住宅当たりの持ち家住宅の延べ床面積 157.2 ㎡であり、全国第9位である。通勤・通学総平均時
間は 25 分であり、短さは全国第7位である。
(2)地球温暖化と長野県への影響
過去 100 年間、世界の平均気温が上昇しており、そのほとんどが人為起源の温室効果ガス排出、すな
わち化石燃料などの使用による可能性が非常に高い。その影響は、長野県でも顕在化しつつある可能性
があり、社会・経済、人口の高齢化に伴う健康などに及ぼすことが懸念される。
〈地球温暖化の状況〉(図表1−3)
世界の平均地上気温は、1906 年から 2005 年の 100 年間に 0.74(0.56∼0.92)℃上昇し、20 世紀
を通じて平均海面水位は 17(12∼22)cm 上昇している。特に最近 50 年間の気温上昇の速度は、
過去 100 年間のほぼ2倍に増大しており、海面上昇の速度も近年ではより大きくなっている。
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書」(2007 年 11 月)は、気候シス
テムに地球温暖化が起きていると断定し、20 世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほと
んどは、人為起源の温室効果ガス濃度の観測された増加によってもたらされた可能性が非常に高い
としている。
〈長野県への地球温暖化の影響〉(図表1−4・5・6)(参考資料 14)
長野、松本、飯田、軽井沢、諏訪における年平均気温や冬日日数、最大積雪深などの経年変化を見
ると、いずれの地点においても昇温傾向が確認され、冬日は減少、夏日は増加傾向にある。ただ、
最大積雪深は年による変動が大きく、単調に増加あるいは減少の傾向はみられない。
長野県内での熱中症の疑いによる救急搬送人員は、2007 年(6月∼9月・以下同)274 人、2008
年 329 人、2009 年 169 人、2010 年 809 人、2011 年 700 人であった。
(長野県危機管理部調べ)
温室効果ガス排出抑制の措置が国際的に取られず、高い経済成長が続いた場合、日本全国および長
野県において、2100 年までに年間平均気温が2℃から5℃上昇すると予測されている。また世界
規模で最も厳しい緩和努力(排出抑制策)を行ったとしても、今後数十年間にわたって地球温暖化
の影響は避けられない。それに伴い、生物多様性や農林業、観光業、水利への影響のほか、災害の
発生状況の変化や新たな疾病の発生、熱中症などの健康への影響が懸念される。
長野県の社会・経済は広く国内外とつながっており、他地域での地球温暖化の影響がサプライチェ
ーン(供給連鎖)を通じて長野県に影響することも懸念される。
影響評価については精緻な研究が必要である一方、現在までの研究成果から、長野県の自然環境へ
の地球温暖化の影響は、既に顕在化しつつある可能性があるといえる。そのため、温室効果ガス排
出抑制への取組とともに、影響を回避するための対応(軽減・回避・補償・受容など)も重要性を
増している。
6
【図表1−3
過去 100 年間の世界の平均地上気温の推移】
*気象庁ホームページより転載。
【図表1−4 気温上昇量の将来予測(長野県を囲む領域と日本全域)】
長野県を囲む領域
] 6.0
[
ハ
ク
5.0
日本全域
] 6.0
ハ[
ク
MIROC-Nagano
RCM-Nagano
5.0
キ
C
フ 4.0
キ
C
フ 4.0
ゥ
l
マ 3.0
ス
N
ゥ
l
マ 3.0
ス
N
0 2.0
0
0
-2
1 1.0
8
9
1
0 2.0
0
0
-2
1 1.0
8
9
1
-
MIROC-Japan
RCM-Japan
2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100
2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100
年
年
左図:緯度・経度で区切った長野県がすっぽりと含まれる矩形の領域を設定。
1990年頃の気温を基準とし、その領域の平均気温の上昇量を計算。
右図:同じ予測を日本全域で実施。
MIROC:東京大学・国立環境研究所・海洋研究開発機構が共同開発している大気海洋
結合気候モデル。空間解像度約100km。IPCC A1Bシナリオを元に計算。
RCM:気象庁気象研究所が開発した水平空間解像度が20kmの地域気候モデル。
IPCCのA2シナリオを元に計算(2031∼2050年と2081∼2100年)。
*肱岡靖明氏(国立環境研究所主任研究員)提供。
7
【図表1−5
マツ枯れ危険域の予測(長野県)】
mb指数による温暖化時の長野県の松枯れリスクの評価 大丸裕武・中村克典(2008)マツ枯れ.地球温暖化「日本への影響」−最
新の科学的知見−, 温暖化影響総合予測プロジェクトチーム, 環境省地球環境研究総合推進費S-4報告書, p.28 を改変
*森林総合研究所・長野県環境保全研究所作成資料。
【図表1−6 リンゴ生育適地の将来予測(長野県)】
※ 高い経済成長が続くシナリオ(A1B)の中で、
気温上昇量が比較的大きいモデルの予測
緑色域が予測されたリンゴ生育適地
長野県の気温上昇量:
±0℃(基準)
+2.4℃
(b)∼(d) 凡例
:適地(リンゴ)
:より高温の地域
:より低温の地域
+4.6℃
(りんご栽培農家数)
333 単位:戸
100
33
10
3
1
りんご栽培農家数(2000年)
0
20km
(a) 実際の分布
リンゴ栽培農家数
2000年時点
(b) 1981-2000年の
リンゴ生育適地
(現状再現)
(c) 2031-2050年の
リンゴ生育適地
(予測)
(d) 2081-2100年の
リンゴ生育適地
(予測)
国立環境研究所などの全球気候モデルを利用、A1Bシナリオ、気温条件のみを考慮
*埼玉県環境科学国際センター・長野県環境保全研究所作成資料。
8
(3)世界及び国内の地球温暖化対策と長野県への影響、長野県の果たすべき役割
国際社会においては、地球温暖化対策の重要性が共有されている。国においても、同様の認識に立っ
た上で、エネルギー政策、地球温暖化対策の検討を行っている。長野県としては、国際社会や国の動き
を注視しつつ、地球社会の一員として積極的に取組を推進していく役割が期待されている。
〈国際社会における地球温暖化対策の動向〉(図表1−7)
1997 年の気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)において、先進各国の温室効果ガス排
出量について、法的拘束力のある削減量を定めた京都議定書が採択された。同議定書は、先進国が
2008 年から 2012 年までの各年の温室効果ガス排出量の平均を基準年(1990 年)から削減させる
割合を定め、日本は−6%となっている。
IPCC第4次評価報告書(第3作業部会報告第3章 Box13.7)は、気温上昇を 2.0∼2.4℃に抑え
るために先進国に求められる温室効果ガスの排出削減量について、2020 年に 90 年比−25∼−40%、
2050 年に 90 年比−80∼−95%と示している。また「今後、20 年から 30 年の間に実施される緩和
策の規模によらず、追加的な適応策が必要である」とも示している(統合報告書政策決定者向要約
[4.適応と緩和のオプション])。
2010 年に開催されたCOP16 では、気温上昇を産業革命期から2℃以内に抑制することが国際社
会の長期目標として合意された。
2011 年に開催されたCOP17 では、すべての主要排出国が参加する新たな枠組を 2015 年までに
作成し、2020 年に発効させる方針などについて合意された。
2013∼2014 年に公表される予定のIPCC第5次評価報告書では、今までの社会経済モデルに代
わり、新たなモデル(SPP:Shared Socio-economic Pathways)が開発され、そこに地球温暖化対策
の進捗程度が評価軸に採用されることになった。
一層の地球温暖化対策を進めていく必要があるとの認識が、国際社会で共有されており、長野県に
おいてもこの認識を広く共有していく必要がある。
〈国内における地球温暖化対策の動向〉(図表1−8)
政府は、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき京都議定書目標達成計画を定め、各主体の対
策や森林吸収、京都メカニズムの活用により、同議定書第1約束期間の目標を達成するとしている。
政府は 2009 年の国連気候変動首脳会議において、すべての主要国による公平かつ実効性ある国際
的枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提としつつ、2020 年までに 25%(1990 年比)の温室効
果ガスの排出削減を目指すとの中期目標、2050 年までに 80%(1990 年比)の温室効果ガスの排出
削減を目指すとの長期目標を示した。
政府は、地球温暖化対策に関しての基本原則や国、地方公共団体、事業者および国民の責務、温室
効果ガス排出量の削減に関する中長期的な目標、地球温暖化対策の総合的かつ計画的な推進を図る
ための基本計画、基本的施策などを盛り込んだ地球温暖化対策基本法案を閣議決定した。2012 年
3月現在、同法案は国会で継続審議中となっている。
政府の 2013 年度以降の方針および取組については、2012 年3月現在、エネルギー・環境会議およ
び中央環境審議会において検討中である。
長野県においても、国の動きや政策に対して積極的に提言することが重要である。
9
【図表1−7 地球温暖化対策に係る国際社会の主な動き】
1992
国際環境開発会議ブラジル・リオデジャネイ ロで開催。気候変動枠 組条約締結( 155カ国署名、1994年発効)
1995
ドイツ・ベルリンにてCOP1開催
1997
京都でCOP3開催、京都議 定書を採択。各国ごとに法 的拘束力ある温室効果ガス削減目標を設定 、日本は基準年比6% 減。
1998
アルゼンチン・ブエノスアイレスでCOP4開催。ブエノスアイレス行動計画採択。
1999
ドイツ・ボンでCOP5開催。日本及び欧州諸国が2002年ま での京都議定書発効の必要性 を主 張。ブエノスアイレス行 動計画の実施を再確認
2001
モロッコ・マラ ケシュで COP7開催。京都議定書の 運用細則に実質合意 (マラケシュ合意)
2002
インド・ニューデリーでCOP8開 催。デリー宣言を採択し、途上国を含む各国が 排出削減のための行動に関する非公式な情 報交換を促進することを宣言。
2005
EU域内排出量 取引制度(EU ETS)が開始。
2006
オーストラリア・シドニーでAPP第1回閣僚会議 を開催 。APPの枠組みを規定 する憲章 と8分野の タス クフォース立ち上げに合意。
京都議定書発 効 (アメリカ、オーストラリアなどが不参加)。
イギリス のスターン博士が 「スターン・レビュー」を発表。温暖化対策を早期 かつ強力に実施すれば経済的な 便益をもたらすと主張。
2007
ア メリカ・ニューヨークで国連気候変動に関 するハイレベル会合を開催。
アメリカ・ワシントンDCでMEM1を開催。アメリカが次期枠組 みへの関与を表明。
IPCCが第4次評価 報告書を提出。地球温暖 化が人為起 源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性が高いと結 論。
気温上昇を2.0∼2.4度Cに抑えるために先進国に求められる温室 効果ガスの 排出削減量は、2020年に90年比▲ 25∼40% 、2050年に同年比▲80∼
95%と示す。
2008
京都議定書の第一約束期 間開始。2012年まで5年間。
洞爺湖サミットを開催。
2010
メキシコ・カンクンでCOP16開催。気温上昇を産業革 命から2度C以内に抑制すること、気温上昇を1.5度C以内 にするための研究の必要性が確認 。
2011
南アフリカ・ダーバンで COP17(および京都議定書第7回締約 国会合(CMP7))開催。京都議定書に替わる新たな法的文書 の作成に向けて ダーバン・プラット
フォーム作業部会にて2012年前半に協議を開始し、2015年COP21で採択することを決定。第二約束期 間の設定に日本、ロシア、カナダが不 参加等。
【図表1−8 地球温暖化対策に係る国内(政府+他自治体)の主な動き】
1990
・地球温暖化防止行動計画を策定(地球環境保全に関する関係閣僚会議決 定)。
−温暖化対策を総合的・計画的に推進するための方針及び取り組むべき対策の全体像 を策 定
1998
・地球温暖化対策推進大綱を策定(地球温暖化対策推進本部決定)。
−環境と経済の両立、ステップ・バイ・ ステップアプローチ、各界各層の一体的な取組推進、国際的連携の確保などの方針提示。
・エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)を改正。
−トップ・ ランナー方式の導入。
−大規模エネルギー消費工場に省エネ計画作成提出の義務づけ 。
・地球温暖化対策の推進に関する法律( 地球温暖化対策推進法)を制定。国、地方公共団体、事業者、国民の責務を明記。
1999
・地球温暖化に関する基本方針を策定(閣議決 定)。
−地球温暖化対策推進法に基づく総合的・計画的な地球温暖化対策のた めの基本方針。
2001
・環境庁が環境省へ組織改組
2002
・省エネ法を改正。
−大規模工場に準ずる大規模オフィスビルなどにエネルギー管理義務。
・地球温暖化対策推進法を改正。
−京都議定書目標達成計画の策 定。
・地球温暖化 対策推進 大綱を見直し(地球温暖化対策推進本部決定)。
−温室効果ガス種類その他の区分ごとに目標・対策・実 施スケジュール。
・東京都「地球温暖化対策計画書制度」開始
2005
・京都議定書目標達成計画を策定(閣議決定)。
−地球温暖化防止行動計画、地球温暖化対策に関する基本方針を継承。
・省エネ法を改正。
−運輸、工場・事業所、住宅・ 建築物分野における対策を強化。
・地球温 暖化対策推進 法を改正。
−温室効果ガス算定・報告・公表制度の導入。
2006
・地球温暖化対策推進法を改正。
−京都メカニズム活用のための制度を導入。
2008
・京都議定書目標達成計画を改定(閣議決定)。
−対策・施策を追加。
2009
・温室効果ガス削減の中期目標( 2020年ま でに90年比▲25%削減)・長期目標を策定( 2050年までに90年比▲80%削減)。
2010
・東京都「総量削減義務」開始(「総量取引」は、2011年4月から)。
10
〈国内外動向の長野県への影響と長野県の果たすべき役割〉(図表1−9)
政府は、京都議定書第2約束期間への不参加を表明しているため、国全体における 2013 年度以降
の温室効果ガスの削減目標について、国際条約上の義務を負わないこととなる。2009 年に表明し
た中期目標についても再検討中である。
地球温暖化対策推進法(第4条)は、地方公共団体の責務として「区域の自然的社会的条件に応じ
た温室効果ガスの排出の抑制などのための施策を推進する」と定め、具体的には「自らの事務およ
び事業に関し温室効果ガスの排出の量の削減ならびに吸収作用の保全および強化のための措置を
講ずるとともに、その区域の事業者又は住民が温室効果ガスの排出の抑制などに関して行う活動の
促進を図るため」
「施策に関する情報の提供その他の措置を講ずるように努める」と定めている。
長野県地球温暖化対策条例(第3条)は、県の責務として「地球温暖化対策を策定し、および実施
する」ことならびに「事務および事業に関し、温室効果ガスの排出の抑制などのための措置を講ず
る」ことと定めている。
以上のとおり、長野県の法的な責務については、地球温暖化対策推進法および長野県地球温暖化対
策条例に根拠がある。国際社会や国が決めたからではなく、地球社会の一員として責任を果たして
いく観点が重要である。そのため、国の国際条約上の義務に係らず、積極的に先導的な取組やモデ
ルづくりを推進していく役割が期待されている。
11
【図表1−9
地球温暖化対策に係る長野県・県内の主な動き】
1996
「長野県環境基本条例」の制定
1997
「長野県環境基本計画」の策定
1998
「環境保全のための長野県庁率先実行計画」の策定
2001
ISO14001認証取得(対象:県庁舎)
「長野県環境基本計画」の改定
長野県地球温暖化防止活動推進センターの指定 (被指定団体:社団法人長野県環境保全協会)
「長野県庁率先実行計画」(第2次改訂版)の策定
2003
「長野県地球温暖化防止県民計画」の策定
2005
『地球温暖化防止「長野県職員率先実行計画」』(第3次改訂版)の策定
2006
「長野県地球温暖化対策条例」の制定、一部施行
2007
「長野県地球温暖化対策条例」の全面施行
−計画書などの作成、提出、公表
・排出抑制計画(大規模排出事業者、24 時間営業事業者、自動販売機設置管理事業者)
・自動車環境計画(一定のトラック事業者、バス事業者、タクシー事業者)
・建築物環境配慮計画(一定規模以上の建築物などの建築主)
・再生可能エネルギー計画(県内に電気を供給する事業者)
−駐車場利用者へのアイドリング・ストップ実施の周知
−自動車(新車)に関する温室効果ガス排出量、燃費の説明
−一定の電気機器への省エネラベルの掲出
環境管理システム「エコアクション21」の認証・取得(対象:全ての県機関)
2008
「長野県地球温暖化防止県民計画」の改訂
「ストップ温暖化!減CO2(げんこつ)アクションキャンペーン」の実施
長野県における地球温暖化現象の実態に関する調査研究報告書を出版(環境保全研究所)
2009
「第2次長野県環境基本計画」の策定
「信州エコポイント事業」の開始
「事業者向け省エネ診断事業」の開始
2010
「家庭向け省エネ診断事業」の開始
環境保全研究所が温暖化影響および適応策の立案を目的としたクールアース推進調査研究事業を開始
2011
『環境保全のための「長野県職員率先実行計画」』(第4次改訂版)の策定
産官学民連携の自然エネルギー推進のための全県ネットワーク(自然エネルギー信州ネット)への支援
12
(4)エネルギーや資源、経済などのその他の動向と長野県への影響
近年の化石燃料の国際価格の上昇傾向は、今後も続くと予測されている。一方、自然エネルギーの国
際市場は拡大傾向にある。経済構造を見ると、ドイツは経済成長してもエネルギー消費量などが増加し
ないが、日本では連動して増加する。長野県においても、エネルギー価格は経済・家計に直結している。
また東日本大震災後、日本はエネルギー制約の下にあり、電力需要の抑制が急務といえる。
〈エネルギー・資源の動向〉(図表1−10・11)
1998 年度の日本の化石燃料輸入総額は、4兆 7,620 億円(原粗油2兆 6,180 億円、ナフサ除く石油
製品 4,646 億円、LNG9,355 億円、石炭 7,439 億円)であった。原粗油の輸入量は 253,691 千k
l、単価は 10,319 円/klであった。(石油連盟「原油・石油製品輸入金額」より。以下同)
2008 年度の日本の化石燃料輸入総額は、23 兆 1,193 億円(原粗油 13 兆 6,400 億円、ナフサ除く石
油製品1兆 7,261 億円、LNG4兆 4,980 億円、石炭3兆 2,552 億円)であった。原粗油の輸入量
は 232,989 千kl、単価は 58,541 円/klであった。
2010 年度の日本の化石燃料輸入総額は、16 兆 8,933 億円(原粗油9兆 7,560 億円、ナフサ除く石
油製品1兆 3,462 億円、LNG3兆 5,361 億円、石炭2兆 2,550 億円)であった。原粗油の輸入量
は 215,013 千kl、単価は 45,372 円/klであった。
国際エネルギー機関は、現行のエネルギー政策が国際的に続いた場合、2009 年 60.4$/バレルの
石油価格が、2020 年に 110$/バレル、2030 年に 130$/バレルになり、今後も石油価格の上昇
傾向が続くと予測している。
世界の発電容量(2010 年で推定 4950GW)のうち、自然エネルギーの発電容量は 312GW(2010
年)あり、2009 年(推定 250GW)比の 25%増となった。
今後も化石燃料の国際価格の上昇が続くと予測されるため、化石燃料を大量に必要とする社会・経
済の脆弱性が高まると考えられる。一方、自然エネルギーの国際市場は拡大傾向にあり、化石燃料
価格の高騰から、市場の成長が続くと考えられる。
〈経済成長と温室効果ガス排出量〉(図表1−12・13)
1990 年度の日本の実質国内総生産(2000 年価格)は 453.6 兆円、温室効果ガス排出量は 1,261 百
万トン CO2、一次エネルギー消費量(石油換算)は 486.3 百万トンであった。
1998 年度の日本の実質国内総生産(2000 年価格)は 489.5 兆円、温室効果ガス排出量は 1,302 百
万トン CO2、一次エネルギー消費量(石油換算)は 544.9 百万トンであった。
2008 年度の日本の実質国内総生産(2000 年価格)は 539.5 兆円、温室効果ガス排出量は 1,281 百
万トン CO2、一次エネルギー消費量(石油換算)は 550.3 百万トンであった。
日本の経済構造は、経済成長(国内総生産)と温室効果ガス排出量・一次エネルギー消費量が連動
する傾向を有している。
ドイツの経済構造では、経済成長(国内総生産)と温室効果ガス排出量・一次エネルギー消費量が
連動していない。ドイツは 1990 年度以降、実質国内総生産を拡大させてきた一方、温室効果ガス
排出量・一次エネルギー消費量を削減してきた。
ドイツの事例は、経済成長と温室効果ガス排出量・一次エネルギー消費量の削減を両立させること
が可能であることを示している。
13
【図表1−10 化石燃料輸入総額の推移・国際石油価格予測】
実績
予測
$130
$135
125
$120
$110
20
10
0
100
$94
$78
5.3%
75
5
$62
3.6%
3.4%
$37
$29
1.2% 1.3%
0
1.5% 1.6%
2.7%
26.0
17.3
1.0%1.0%
2000
2.8%
1.7%
1.5%
13.4
2005
化石エネルギー
輸入額
18.7
16.2
13.4
2010
50
化石エネルギー
輸入額のGDP比
1.9%
9.7
7.7 7.9 7.6 8.6
6.1 7.0 5.2 5.2
1996
石油価格
3.4%
2015
2020 2025
2030
25
2035
化石エネルギー輸入額とそのGDP比は、石油連盟統計資料「原油・石油製品輸入金額」のより原油・粗油、
ナフサを除く石油製品、LNG、石炭の輸入額の合算から算出。石油価格の実績は、米国エネルギー情報局
資料より。石油価格の予想は、IEAのWEO2010の現行政策シナリオ。
*石油連盟統計資料、国際エネルギー機関資料、米国エネルギー情報局資料より作成。
【図表1−11 世界の電力供給における自然エネルギーの割合(2010 年)】
*『自然エネルギー世界白書 2011』より転載。
石油価格(USD/barrel)
化石エネルギー輸入額(兆円)
30
化石エネルギー輸入額のGDP比(%)
$100
14
【図表1−12 ドイツのエネルギー消費、GDP、温室効果ガスの推移】
*植田和弘・梶山恵司他『国民のためのエネルギー原論』日本経済新聞出版社より転載。
【図表1−13 日本のエネルギー消費、GDP、温室効果ガスの推移】
*前掲『国民のためのエネルギー原論』より転載。
15
〈長野県への影響〉(図表1−14・15)
2008 年度の都道府県別県内総生産の全国合計額は、505 兆 160 億円。うち長野県は8兆 350 億円
で、全国合計の 1.59%を占める。2008 年度の化石燃料輸入総額(23 兆 1,193 億円)に対し、長野
県の県内総生産割合で按分すると、3,676 億円となる。
2008 年度の長野県の主な経済活動別の総生産を見ると、農林水産業が 1,573 億円、建設業が 3,709
億円、金融・保険業 3,723 億円、卸売・小売業 5,407 億円、不動産業1兆 1,713 億円、サービス業
1兆 8,799 億円、製造業2兆 702 億円であった。
2008 年度の長野市(県庁所在地)の家計(1世帯平均1か月間の収支・勤労者世帯)を見ると、
実支出が 435,556 円であり、全国平均 409,374 円よりも 26,182 円高かった。うち光熱・水道費を
見ると、長野市の実支出が 24,588 円であり、全国平均 21,466 円よりも 3,122 円高かった。長野市
の家庭部門における用途別のエネルギー消費量では、暖房による消費が 27%を占める。
近年は、1人当たり県民所得が減少しているにもかかわらず、光熱水道費は比例して減少せず、高
止まり傾向があり、結果として家計を圧迫する要因となっている。
中部電力管内の家庭向け電力料金は近年、上昇傾向にある。
長野県は暖房などのエネルギー需要が高く、国際エネルギー価格が経済および家計に対して一定の
影響を与える構造となっている。逆にエネルギー費用を削減できる社会・経済構造に転換できれば、
それだけ県民の可処分所得が増加すると考えられる。
〈東日本大震災・福島第一原子力発電所事故によるエネルギー制約〉(図表1−16・17・18)
長野県内への電力供給はもっぱら中部電力が担っており、2011 年の浜岡原子力発電所の全面停止
に伴い、現在に至るまで電力需要の抑制が求められている。
近年は、家庭で熱を利用する機器(暖房器具など)の電化が急速に進んでおり、家庭での電力需要
を増加させる一因となっている。
長野県では 2011 年夏に、平日の昼間 13 時から 16 時の電力需要のピーク時間帯において、最大電
力を県全域で前年比5%削減することを目標に掲げ、日常生活や生産活動に影響のない範囲で、節
電・省エネの取組を推進した。その結果、最大電力(最大3日平均電力)は、前年の実績値(292.6
万kW)を 27.1 万kW下回る 265.5 万kW(前年比−9.3%)であった。
中部電力における 2010 年度の1時間単位の電力需要分布(電力ロードカーブ)を見ると、原子力
発電所1基分に相当する 100 万 kW 分が、年間(8760 時間)のうち 50 時間(年間時間の 0.57%)
の需要のために必要となっている。よって、節電対策(ピークカット・ピークシフト・電力から他
のエネルギー源への切替)は、ピーク時の発電余力を生むことから、費用対効果が高いといえる。
16
【図表1−14 長野県の県民所得と光熱・水道費の推移】
3,200
20
2,800
10
2,400
0
1990
2000
2009
*光熱・水道費は「県勢要覧」「家計調査年報」
、1 人当たり県民所得は「長野県の県民経済計算の概要」より
【図表1−15 中部電力管内の家庭向け電力料金の推移】
20
19
円/kWh
18
17
16
15
14
13
1
9
9
8
1
9
9
9
2
0
0
0
2
0
0
1
2
0
0
2
2
0
0
3
2
0
0
4
2
0
0
5
2
0
0
6
2
0
0
7
2
0
0
8
2
0
0
9
2
0
1
0
2
0
1
1
年
電力量料金
燃料費調整単価込料金
(注) 各年12月末における中部電力の電力量料金(最初の使用量120kWh/月まで)の推移
「燃料費調整単価込価格」は、電力量料金に燃料費調整単価を足した料金
*中部電力資料より作成。
1人当たり県民所得(千円)
光熱・水道費(千円/月)
30
17
【図表1−16 各部門の電力化率(電力消費量/最終エネルギー消費量)の推移】
*竹内恒夫氏(名古屋大学大学院環境学研究科教授)提供(総合エネルギー統計より作成)
。
【図表1−17 家庭において熱を利用する主な機器の世帯当たり普及状況】
*竹内恒夫氏提供(内閣府「消費動向調査」主要耐久消費財などの保有数量より作成)
。
18
【図表1−18 中部電力の1時間毎の電力分布(2010 年度)
】
電力(万kW)
100万kW
50時間
累積時間(時間)
*資源エネルギー庁資料『平成 22 年ロードカーブ(中部電力)』より作成。
(5)これまでの長野県の地球温暖化対策、その成果と課題
長野県での温室効果ガスの排出量(森林吸収を除く)は、2008 年度で 1990 年度から+6.3%となっ
ている。他方、全国の排出量は 2008 年度には 1990 年度比+1.6%であったので、長野県の排出増加傾
向は全国を上回った。排出量の内訳を見ると、全国平均に比べ、運輸、業務、家庭の割合が多く、大半
がエネルギー起源の二酸化炭素であるものの、二酸化炭素以外の排出量も多い。これに対して、長野県
の地球温暖化対策は、普及啓発の手法を多用し、実効性に課題がある。(図表1−19・20)
〈経緯〉
長野県の取組が始まったのは、1990 年に庁内各部局が連携して地球規模の環境問題に取り組む体
制(長野県地球環境問題連絡会議)ができてからである。2001 年に改定した長野県環境基本計画
では、地球環境問題への対応を施策の重要な柱として位置づけた。
総合的な取組としては、2003 年に長野県地球温暖化防止県民計画を策定し、2008 年に長野県地球
温暖化対策推進計画として改訂した。また 2006 年に長野県地球温暖化対策条例を策定した。
〈計画・全般〉
第一次長野県地球温暖化防止県民計画は、県民や事業者などに対する行動訴求型であり、県の施策
を推進する基礎としての面が弱かった。
第二次長野県地球温暖化防止県民計画は、総合的な取組を盛り込んだ行政計画となったが、広範に
わたる一方、県自身の施策を推進する基礎としての面は弱かった。
19
【図表1−19 全国および長野県の温室効果ガスの排出割合(2008 年度)】
*環境省資料「2008 年度の温室効果ガス排出量(確定値)について」より転載。
【図表1−20 長野県の温室効果ガス排出量の推移(1990-2009 年度)】
20
〈産業・業務部門(事業者対策)
〉(図表1−21)
2008 年度の産業・業務部門の総排出量は、9,003 千トン CO2(55.3%)であった。内訳は、産業部
門 4,048 千トン CO2(24.9%)
、業務部門 3,850 千トン CO2(23.6%)
、二酸化炭素以外(フロン類
等)1,105 千トン CO2(6.8%)であった。産業部門は 1990 年度比で−3.6%、業務部門は+49.3%
である。
産業部門では減少傾向にあるが、業務部門は大幅な拡大傾向にある。産業部門の減少については、
2000 年に 26,540 億円だった製造業の総生産が 2008 年に 20,702 億円に減少しており、エネルギー
利用の効率化が進んでいること以上に、事業活動の縮小による影響が大きいと思われる。
長野県の主要な事業者対策としては、大規模排出事業者に対する県条例に基づく事業者排出抑制計
画書制度(以下「排出抑制計画書制度」という)、省エネ診断事業、省エネ設備など導入事業補助
金、中小企業融資制度がある。
成果:排出抑制計画書制度について、大規模排出事業者が温室効果ガス排出量の把握や削減目標を
設定などすることにより、自主的な取組を促進している。中小規模排出事業者に対しては、省エネ
診断や補助金などの支援施策によって、事業者の具体的な省エネ取組を促進している。
課題:排出抑制計画書制度と省エネ支援施策をそれぞれ別に運用しているため、施策効果が見えに
くい。排出抑制計画書制度については、対象がエネルギーの使用の合理化に関する法律(以下「省
エネ法」という)よりも狭い、目標の設定(基準年・種類・水準)や対策手法は事業者に委ねられ
ており、計画や取組の実効性を高める仕組みが不十分である。中小規模排出事業者の排出削減を促
す仕組みが不十分である。フロン類等への対策を促す仕組みも十分でない。
【図表1−21 長野県における産業・業務部門のエネルギー使用量・
CO2排出量・県内総生産(名目)の推移】
90年代は、県内総生産増に比
例してエネ消費量が増加。
CO2は90年代半ばから原単位
の改善進む。
00年代は、県内総生産が増加しないにも係らず、エネ
消費量の増加傾向がある。CO2はエネ消費量の増減
に比例する傾向が見られる。
エネルギー消費量(TJ)
県内総生産(名目) (兆)
CO2排出量(産業・業務の合計) (千t-CO2)
年度
21
〈家庭部門〉(図表1−22)
2008 年度の家庭部門の排出量は、2,993 千トン CO2(18.0%)であった。1990 年度比で+26.6%で
ある。
家庭部門の排出量増減は、世帯当たりのエネルギー消費量と電力の排出係数による影響が大きい。
近年は世帯単位のエネルギー消費量が減少しているが、同時期に電気料金や石油製品などが値上が
りしており、その影響があると思われる。
長野県の主要な家庭対策としては、家電販売店などでの省エネラベルの掲示義務付け制度、省エネ
診断事業、信州エコポイント事業、減CO2アクションキャンペーンなどがある。
成果:省エネラベル掲示制度について、省エネ法の努力義務規定を補完・強化している。省エネ診
断事業は、個々の家庭における省エネ取組を促進している。信州エコポイント事業や減CO2アク
ションキャンペーンなどによって県民の環境意識が涵養されてきている。
課題:県の家庭対策は、診断事業の規模が小さく、普及啓発などを中心とするため実効性が十分で
ない。
【図表1−22 長野県における家庭部門のエネルギー使用量・CO2排出量・世帯数の推移】
05年のエネ消費の増加は厳冬
の影響によるもの。
50,000
近年は世帯当たりのエネ消費量が減
少傾向。08年、09年から顕著。
150
02年のCO2増は、浜岡原発1,2号
機の廃止に伴うもの。
45,000
40,000
140
90年代は、世帯数増に比例してエ
ネ消費量とCO2が増加。
130
35,000
120
30,000
110
25,000
100
20,000
90
15,000
80
10,000
70
5,000
60
電 力
都市ガス
石油ガス
軽質油製品
CO2排出量
世帯数
0
50
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09
22
〈運輸部門(運輸・交通・面的対策)
〉(図表1−23)
2008 年度の運輸部門の排出量は、4,177 千トン CO2(25.7%)であった。1990 年度比で+7.9%で
ある。
長野県の主要な運輸・交通・面的対策としては、県条例に基づく運輸事業者に対する自動車環境計
画書制度、自動車販売事業者に対する自動車環境性能説明制度および県民一般に対する駐車場にお
けるアイドリング・ストップ実施周知制度がある。またハイブリットバスの導入に対しての助成、
環境対策を目的に含む運輸事業振興助成補助金、県下一斉ノーマイカー通勤ウィーク、エコドライ
ブに係る普及啓発が行われてきた。地域公共交通については、地域ごとに関係者による協議会を設
置し、一体となって維持確保していく取組を進めている。低炭素街区や地域冷暖房システムなど、
面的な取組を進める施策はなされていない。
成果:自動車環境計画書制度について、対象事業者の自主的取組を促進している。自動車環境性能
説明制度やアイドリング・ストップ実施周知制度、普及啓発事業などによって、県民意識が涵養さ
れてきている。市町村を中心とした地域協議会による地域公共交通の確保維持への取り組みが拡が
ってきている。
課題:省エネ法に加えて自動車環境計画書制度独自で運用しているものの、当該制度により追加的
な取組を促進できておらず、県の対策も普及啓発を中心とするため、長野県内の地域公共交通は、
利用者の減少傾向が続いて厳しい経営環境にあり、廃止されるバス路線や鉄道路線があると同時に、
利便性が低下している地域がある低炭素型のまちづくりも十分に進んでいない。
【図表1−23 長野県における運輸部門のエネルギー使用量・CO2排出量・自動車保有台数の推移】
00年代は、県内の自動車保有台数、エネ消費量が高止ま
りしているにも係らず、CO2が減少傾向にある。
ただし統計上の問題である可能性に留意。
90年代は、県内の自動車保有台
数に比例してCO2が増加。
CO2排出量は、県内に本社のある石油製品販売会社のガ
ソリン、軽油、自動車向けLPガスの販売量から推計したも
のであり、90年代半ばからのCO2排出量の減少は、県外に
本社のある石油製品販売会社の販売シェアが高まったこと
も理由として考えられる。
2,000
エネルギー消費量(TJ)
1,000
500
年度
自動車保有台数 (千台)
CO2排出量 (千t-CO2)
1,500
23
〈建築部門〉
長野県の 2010 年度の新築件数(建築確認の件数)は、10,490 件となっている。
長野県の主要な建築分野の地球温暖化対策としては、県条例に基づく建築物環境配慮計画書制度、
信州型エコ住宅・環の住まい整備推進事業がある。
2012 年2月に長野県住生活基本計画が改定され、目標として「人と環境の共生する住まいづくり」
を掲げ、省エネ住宅や再生可能エネルギーを活用した住宅の普及が位置づけられている。
成果:建築物環境配慮計画書制度は、延べ床面積 2,000 ㎡以上の新築・改築・増築などを行う者を
対象とし、2010 年度の提出件数は 39 件であった。環の住まい整備推進事業では住宅認定と補助を
行い、2011 年度は新築 150 件、改修 30 件を募集している。なお省エネ法に基づく届出制度は、床
面積 300 ㎡以上の新築・改築・増築などを行う者を対象とし,2010 年度の届出件数は 531 件(うち
床面積 2,000 ㎡以上の第一種特定建築物 99 件、床面積 300 ㎡以上 2,000 ㎡未満の第二種特定建築
物 432 件)であった。
課題:建築物環境配慮計画書制度について、記載事項が定性的であり、事業者に委ねられているほ
か、定量的なエネルギー性能を客観的に評価、向上を促すような制度にはなっていないなど、実効
性が十分でない。
大半を占める住宅については、
300 ㎡以上の場合は省エネ法に基づく届出制度が、
環の住まい推進事業を利用する場合はCASBEE(建築環境総合性能評価システム)による環境
性能評価が行われるが、新築件数に占める割合は一部である。省エネ法に基づく届出制度について
は、建築物の省エネ性能を定量的に評価し、指導・助言を行う制度であり、事業者の理解が得られ
るよう、さらに粘り強く取り組んでいく必要がある。
〈自然エネルギー部門(太陽光・小水力・バイオマス・地熱・風力・グリーン熱)
〉(図表1−24)
長野県内の自然エネルギー発電設備の容量は 2011 年4月1日現在で、758,375kWと推計される。
内訳は、太陽光発電 96,047kW、小水力発電(30,000kW 以下の流込式/最大出力)658,938kW、
バイオマス発電 2,075kW、地熱発電 650kW、風力発電 665kWである。
以上の他、一般水力発電 1,028,200kW(小水力発電・揚水式発電を除く/最大出力)、廃棄物発電
4,954kWの設備容量が県内にある。よって、県内に所在する再生可能エネルギー(自然エネルギ
ー+一般水力+廃棄物)発電設備容量の合計は、1,791,529kWと考えられる。
長野県内の自然エネルギーのポテンシャル(潜在力)は、発電設備容量で 6,408 千kW、熱利用設
備容量で 28,198TJと推計される。
長野県の主要な自然エネルギー分野の取組としては、県条例に基づく電気事業者に対する再生可能
エネルギー計画書制度、設備導入への補助金、公共施設における率先導入がある。
産官学民連携の自然エネルギー推進のための全県ネットワーク(自然エネルギー信州ネット)の構
築支援やメガソーラーマッチングなど、県民や事業者による自然エネルギー供給事業の事業化、需
要側の積極的導入を支援・促進する取組を 2011 年度より開始している。
成果:再生可能エネルギー計画書制度では、計画達成率 90.8%、再生可能エネルギー電力量 4,455
百万kWhとなっている。自然エネルギー信州ネットについては、地域協議会や分野別の部会が順
次設置されてきている。
課題:再生可能エネルギー計画書制度を導入しているものの、電気事業者による新エネルギーなど
の利用に関する特別措置法(RPS法)に加えた、当該制度による追加的な取組が促進できていな
い。県内の事業者などによるビジネスとしての自然エネルギー事業を推進していく観点から、人材
育成、立地場所の確保、初期投資の資金調達などの課題がある。自然エネルギーの機器設備の開発、
サプライチェーン(供給連鎖)づくり、小水力やバイオマスの規制などの課題もある。住宅やビル
24
の新築・改築時などを捉えて、設備設置を促す仕組みもない。
【図表1−24 長野県の自然エネルギー導入量とポテンシャル】
電力
導入量
ポテンシャル
設備
設備数
設備容量
設備容量
太陽光発電
25,563 箇所
97,869kW
3,538 千 kW
小水力発電
(30,000kW 以下)
130 箇所
658,938kW
バイオマス発電
3 箇所
1,475kW
48 千 kW
地熱発電
0 箇所
0kW
599 千 kW
風力発電
44 箇所
666kW
300 千 kW
設備容量の合計
―
758,375kW
5,351 千 kW
866 千 kW
熱利用
導入量
ポテンシャル
設備
設備数
設備箇所数
年間利用熱量
太陽熱利用
21,449 箇所
575,100 箇所
8,195TJ
バイオマス熱利用
15,231 箇所
―
13,816TJ
地中熱利用
5 箇所
29,450 箇所
3,667TJ
設備容量の合計
―
―
28,152TJ
*長野県調べ(2012 年3月 13 日までの調査)
。詳細および根拠は参考資料を参照のこと。
〈廃棄物部門〉
2008 年度の廃棄物部門の排出量は、173 千トン CO2(1%)
、1990 年度比で+7.1%である。
一般廃棄物の発生量で見ると、2008 年度の総排出量は約 72 万2千トンである。県民1人1日当た
りの排出量は 907gで、全国5位の少なさ(全国平均 1,033g)である。内訳は、生活系が 71.5%、
事業系が 28.5%となっている。年度別の推移をみると、生活系・事業系ともに減少傾向にある。リ
サイクル率は 24.6%と全国6位の高さである。
産業廃棄物の発生量で見ると、2008 年度の総排出量は約 370 万9千トンである。種類別では、汚
泥 59%、がれき類 24%、ガラス陶磁器くず4%、鉱さい3%、廃プラスチック2%、木くず2%、
金属くず2%、その他4%となっている。最終処分量は約8万5千トン(排出量の 2.2%)であり、
大半は脱水などの減量化処理されるか、再生利用されるかしている。
長野県の主な廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)
、再生利用(リサイクル)の取
組としては、多量排出事業者の廃棄物処理計画(廃棄物処理法に基づく)の提出事業者拡大、事業
者との産業廃棄物減量化・適正処理実践協定の締結、信州リサイクル認定製品の率先利用、レジ袋
の削減啓発などリデュースやリユースに関する県民への普及啓発、環境学習の推進などがある。
25
課題:一般廃棄物・産業廃棄物のリデュースをより効果的に進めること、事業者自身による排出状
況の把握を促進すること、リターナブル容器の使用などリユースの取組を推進すること、リサイク
ルをより徹底すること、安心して使えるリサイクル製品を普及することなどの課題がある。
〈適応策部門〉
長野県は、環境保全研究所が信州クールアース推進調査研究事業により、国の先端研究に参加し、
現在入手しうる最高水準の科学的知見を活用できるネットワークを構築し、県内の山岳生態系や産
業への影響評価や県民参加の情報収集・普及啓発手法、適応策構築手法の開発を実施するなどの取
組を進めている。これらを同時に進める長野県は、適応策に取り組む自治体のトップランナーとし
て注目されている。
課題:一部の地域では、地域レベルの温暖化影響予測や地球温暖化対策計画などへの適応策の位置
づけ、適応策に該当しうる取組などが始まっているが、影響評価モデルや立案手法の開発などにつ
いてはなおも研究途上にある。長野県では、広範な観測体制の構築、影響評価研究の推進と研究成
果の普及、技術開発に関する専門機関の連携体制、適応策立案手法の研究、行政組織の体制構築、
県と市町村の連携による成果活用などの課題がある。
26
第2部 長野県の地球温暖化対策への提案
長野県民としては、将来に予想される内外の経済社会の激変や気候、自然環境の変化に対して、頑健
な地域社会や暮らしを築いていかなければならない。このような視点で見ると、前部で示された長野県
にとっての重要な課題は、化石燃料や電力への過度の依存から脱却するとともに、気候変動に対して柔
軟に適応できる、持続可能で低炭素な、環境エネルギー地域社会へ転換することである。
第2部では、前部での現状と課題を踏まえ、長野県の将来のあるべき姿(長期ビジョン)と政策の基
本原則を提示する。
長野県を取り巻く社会・経済の課題を乗り越え、実効性の高い政策を実現するには、現状からの出発
(フォアキャスティング)と同時に、将来のあるべき姿からの逆算(バックキャスティング)の両方が
必要である。また、政策の実現を担保するため、計画や条例を見直すことも必要である。
(1)自然、エネルギー、資源などの環境の視角から見た県民の活動や暮らしの長期ビジョン
長野県が掲げるべき長期ビジョンのコンセプト(概念)とイメージ(望ましい社会像)を今後の検討
のたたき台として提示する。
全体を貫くコンセプトは「持続可能で低炭素な環境エネルギー地域社会をつくる」ことである。
その趣旨は第一に、環境・経済・社会における将来的なエネルギー制約やグローバル化、より中長期
的な地球温暖化に伴う気候変動への耐性を備えるとともに、県民活動から排出される温室効果ガスを抑
制し、吸収・固定化を促進する社会構造へ転換を図ることである。
第二として、県民活動に必要とされるエネルギー利用を効率化すると同時に、使用するエネルギーを
輸入依存から地域資源で生み出される再生可能なものに転換し、それらが地域の活力と創造の源になる
とともに、県民の意識や生活・行動様式において、環境配慮と精神的な豊かさを大切にする姿勢が醸成
されるということである。
〈ライフスタイル〉
物質的な豊かさをひたすら求める暮らしではなく、豊かな人間関係とコミュニティ(地域社会)を
大切にする簡素な暮らしが実現している。
仕事最優先の生活、24 時間活動型のライフスタイルから、仕事・家庭・地域・学び・遊びというワ
ークライフバランスの取れた健康的な生活を送っている。子どもたちは、野外保育などにより身近
な土や緑、自然の恵みと触れあいながら成長し、心身ともに充実した日々を送っている。
知識を得ることや議論をすること、海外や他の地域との交流に積極的で、誰もが新たな知識を創造
し、地域の文化を発展させ、リスクマネジメント(リスク管理)への理解と取組ができ、自然環境
を守る担い手となっている。
米や野菜を育てたり(半農半X)、山の手入れをしたり(半林半X)、福祉活動をしたり(半福祉
半X)して、自らや地域で必要なものを少しずつでも自らつくり、提供している。
自然環境に対する知識や理解が広く共有され、地域の農産物を旬産旬消で楽しんだり、県産材の家
具を愛用したりするなど、日々の暮らしのなかで、強く意識しなくても環境と地域に配慮した行動、
製品、サービスを選んでいる。
地球温暖化に伴う疾病や熱ストレスなどの健康影響への理解が、行政や病院、事業者、研究機関な
どの専門的な機関から、一般県民にまで広く共有され、備えができている。
27
常に国際社会への思いと共感を馳せ、輸入品を買う際にはフェアトレード(公正な貿易)の産品を
選んだり、地球温暖化によって発生した海外の自然災害に救援の志を示したりする。
〈住まい〉
信州産の木製サッシや県産材などを利用した高断熱住宅が普及し、化石燃料をほとんど使わなくて
も、夏は涼しく、冬は暖かい家に暮らしができる。地域の技術、資源で建てられた住宅が増えてい
る。冬の浴室やトイレの寒さも心配することなく、倒れて救急車で運ばれる人もほとんどいない。
住宅で使う暖房および給湯の熱源は、たいていの場合、太陽熱、信州産の木質ペレットなどのバイ
オマス熱、地中熱をそれぞれ巧みに活用するようになっている。薪炊きの風呂や野菜の保存する室
など、伝統的な自然エネルギーや省エネの知恵も再評価され、新しい技術とも組み合わされて暮ら
しのなかに取り入れることも行われている。
エアコン(空調)や給湯器、コンロ、冷蔵庫、テレビ、パソコン、その他の家の設備や家電製品は、
どれもわずかなエネルギーで機能するようになっている。
どの家にも、スマートメーターが付いていて、エネルギーの使い方やムダが簡単に分かるようにな
っているだけでなく、電力供給が切迫した時には優先度の低い家電のスイッチが自動的に切れる設
定により電力料金が安く抑えられるなど、需要側対応のできるシステムが導入される。
駐車場に止めてあるEV(電気自動車)は、普段から家とプラグでつながっていて蓄電池の機能に
もなり、電気をあまり使わない時間帯に充電し、電気をたくさん使う時間帯は、電力会社の電気を
買うのではなく、電気自動車のバッテリーに蓄えた電気を使ったり、売ったりする。それにより、
電力のピークカットに貢献している。
〈ビジネススタイル〉
環境専門の企業だけでなく、すべての企業、事業者が、自らが製造、販売する製品・サービスが発
揮する環境性能に関心を払い、その向上によって利益を増進しようと試み、多くの企業が全国の模
範となる成功を収めている。長野県発の環境ビジネスが国内外で活況を呈して、長野県経済の牽引
力になっている。
ビルや施設・工場の建物は、化石燃料をほとんど使わないにもかかわらず、夏も冬も快適に仕事で
きる環境になっている。
職場の建物にはたくさんの窓があり、光がたくさん入ってくるので、日中に照明を使うことは少な
い。窓の外側にはひさしがあり、光は入ってきても直射日光は入ってこない。
地中熱/地下熱利用などにより、建物の屋上や側面にあった空調用の室外機や冷却塔はほとんどな
くなり、代わりに太陽光パネルが設置されたり、緑化がされたりしている。街なかの景観もすっき
りしたように見える。
事業者は環境配慮とコスト削減の観点から、工場での生産機械に高効率タイプを選択したり、トラ
ックから鉄道などへのモーダルシフトを進めたりするなど、原料生産段階から輸送・物流段階、そ
して廃棄段階までの環境負荷を最小化するよう努めている。地球温暖化の影響を考慮した事業活動
も普及している。
行政は、道路や河川・砂防施設の建設に当たって、環境に配慮した整備を推進するとともに、鎮守
の森、緑地公園、生け垣など、人の適切な維持管理により成り立った多様な環境を、つながりをも
って形成している。
職場の近くに住んでいる人は、徒歩や自転車で通勤している。郊外に住んでいる人の多くは、鉄道
やバスなどの公共交通を使っている。
28
長寿命で質の高い製品販売や修理ビジネス、サービスを提供するビジネスが盛んになっている。ま
た量り売りなどで商品の容器包装が少なく、飲料容器はリターナル瓶が増え、来客はマイバックを
持参し、ネオン広告は少なく、看板は地域の街並みと調和し、緑地が十分に確保された、地域に密
着した環境配慮型の店舗が増えている。
〈都市〉
公共施設や商業施設、オフィス街が、鉄道の駅やバスターミナルの近くに集約され、歩行者や自転
車利用者にとって安全・快適・便利につくられ、ところによっては車の流入が制限されたトランジ
ットモール(歩車共存道路)になっていたりし、賑わいのある街が形成されている。
都市の中心区域は、LRT(軽量軌道交通)やBRT(バス高速輸送交通)など公共交通機関の充
実、自転車道の整備、自転車環状道の整備などにより、通過交通がなくなり、自動車交通量も少な
くなる。ロードプライシング(道路課金)や通過交通を排除する道路体系などにより、中心部に流
入する自動車は少なくなっている。
都市の集合住宅に住む多くの人は、自家用車を持たず、車を住民同士で共有して、必要なときだけ
利用している。車はすべてEV、水素自動車、超低燃費車など低炭素なものになっている。
再開発やエネルギーを多消費するビルや施設、工場の建設の際に、コジェネ(熱電供給)などによ
る熱供給、エネルギーの相互利用、排熱などの未利用エネルギーの活用が導入されていく。
住宅やビルの屋根のほとんどに、太陽光発電パネルや太陽熱温水器が設置されており、公共施設や
オフィスビル、集客施設にはたいてい地中熱/地下熱空調システムが設置されている。道路には並
木が、敷地には緑地が確保されている。
ゲリラ豪雨や内水氾濫、斜面崩壊など、地球温暖化に伴う災害発生状況の変化に対し、行政や事業
者、県民の間で理解が進み、必要な対策が立てられている。
〈郊外・農山村〉
公共施設や商店、オフィス、住宅が、鉄道の駅やバス停の近くに集まり、買い物や用事を済ませる
にも、都市や他の地域へ行くにも便利になっている。また、通院や通学など生活に必要な公共交通
手段が地域内に確保されている。
多くの住宅が県産材で建てられ、リビングには薪ストーブがあり、庭には薪置き場と菜園がある。
駐車場には、低炭素な車と家族の人数分の自転車が置かれている。農を取り入れた食やエネルギー
面での自給自足的な暮らしを実践する人が増えている。
郊外や農山村に住む人が、低炭素な車で駅やバス停までやってきて、隣接した駐車場に車を止めて、
そこから公共交通で都市の中心部まで行く地域ができている。電車に自転車を持ち込めるようにな
り、郊外でも中心部でも自分の自転車が利用できる。
農業では化石燃料をあまり使わず、自然エネルギーを農山漁村の活性化に利用した形態が広がって
いる。林業は地域の主力産業となっていたり、必要な薪などを自ら調達する里山活動が活発になっ
ていたりするなど、木質バイオマス利用が盛んになっている。
地球温暖化に伴う松枯れ拡大や果樹環境変化などへの対策が進み、品種改良などによりそれに適応
した農林業が営まれ、地域全体で生物多様性も保全されている。
農山村集落において、利用する分に相当するエネルギーを生み出すことのできる「100%自然エネ
ルギーコミュニティ」が生まれている。
〈観光・交流〉
29
長野県には、身体と心の疲れを癒しに、国内の大都市だけでなく、アジアをはじめとする世界中か
ら、一年を通じて大勢の人が訪れ、長期滞在や個人旅行の人が多い。
豊かな自然環境、美しい景観、歴史を感じさせる街なみ、風情のある木造ホテル・旅館、伝統ある
祭り、人情と知性あふれる住民、地域の安全・安心な食べもの。それらが滞在者の魅力になってい
る。
滞在者のニーズに応える観点からも、宿泊や移動、買い物、食べものなど、県内のあらゆる観光関
係者は、エネルギー、廃棄物、自然保護、化学物質の分野で環境配慮を徹底している。温泉施設な
どでは、地域のバイオマス資源が活用されている。
県内の自然エネルギー先進地には、世界中からの視察者が訪れる。必要なエネルギーの 100%を自
然エネルギーで供給するスキー場や環境負荷のないゼロエミッションのホテルなど、環境をセール
スポイントにして世界中から観光客を呼び込んでいるところもある。
公共交通だけでなく、自然エネルギーを充電したEVなどの低炭素な車が利用でき、環境負荷を最
小限に抑えつつ、大自然を満喫できるエコな観光が定着している。
地球温暖化の影響による積雪の減少傾向について、スキー客を対象とした観光事業者が状況を理解
し、行政と協力して必要な対策を進めている。
〈エネルギー〉
ほとんどの建物の屋根には、太陽光発電パネルが設置され、たくさんの電力を供給している。昼間
のピーク時の電力は、高く買ってもらえるだけでなく、使用料金が高いので節電も進んでいる。太
陽熱温水器の普及も進んでいる。
用水路や河川、砂防ダムなどの落差を活用した小水力発電設備が各地に設置され、製材所では端材
や低質木を利用したバイオマスコジェネが稼動し、地域で使う以上のエネルギーを生み出している。
戸建て住宅の人は、太陽光パネルで発電した電気を売り、若干の収入を得ている。集合住宅の人は
マンションに自らの太陽光パネルを設置したり、太陽光や小水力などの市民発電所・市民ファンド
に出資したりしている。
自らが使う(買う)エネルギーは、複数のエネルギーサービス会社から自分に合った会社とメニュ
ーを選んでいる。少し割高だが、自然エネルギー100%のメニューが人気になっている。
電力市場が広域で需給を調整するなど、自然エネルギーによる電力を安心して全量売電できる制度
が整備され、県内では官民連携、企業、団体、NPO(非営利団体)、個人などによる小規模発電
事業が盛んになっている。
家庭および業務における暖房や給湯といった熱需要に対しては、太陽熱、バイオマス熱、地中熱に
よって賄われている。
30
(2)長野県の政策目標の考え方
持続可能で低炭素な地域社会を構築するためには、行政の施策だけでなく、広範な県民の取組がカギ
になる。長期ビジョンに向かって県民と行政が一体となって新たな地域づくりを進めるためには、それ
を円滑に支えて促進する有効な政策目標を提示することが必要である。
〈基本的な考え方〉
地球温暖化を受容可能な範囲にとどめるため、また県民のライフスタイルや価値観の変化を的確に
捉えるため、総合的な上位目標を設定する必要がある。
温室効果ガスの目標に加え、省エネや自然エネルギーの目標を設定することも重要である。
目標設定に際しては、県や県民の努力によって低減できる環境負荷やリスクを狙いとして、県の政
策・影響力が及ぶ範囲・バウンダリー(境界)を考慮すること。(図表2−1)
総合的な上位目標としては、次の指標を一つないし複数併用することが考えられる。
・温室効果ガス排出量(電力排出原単位変動型)
・温室効果ガス排出量(電力排出原単位固定型)
・最終エネルギー消費量
・自然エネルギー発電設備容量(+既存一般水力発電設備容量)
・環境、経済、社会の側面を統合しながら施策の進捗状況を評価する指標として、県民所得当たり
の排出量や可住面積当たりの排出量などを示すことが考えられる。定量的な目標に代え、夢やイ
ンパクトのある定性的な目標の設定や共有(例:100%自然エネルギーコミュニティづくり)す
ることが望ましい。
総合的な上位目標については、構造的な対策の息長い実施を促すためにバックキャスティング(将
来のあるべき姿からの逆算)の発想で設定する長期目標(2050 年)と、当面の対策を推進するた
めにフォアキャスティング(現状からの出発)の発想で設定する中期目標(2020 年)の2層制と
する必要がある。
総合的な上位目標については、県民が世界の中で先進国住民としての役割を発揮し、国内の良い模
範となる水準で定める必要がある。
総合的な上位目標を実現するため、重要な要素に関して下位目標として、定性的な施策目標および
具体的な施策の進捗を測る数値目標を多層的に設定することが望ましい。
自然エネルギーの自給率については、発電設備容量を基本として、基準年の最大電力需要から省エ
ネ分を差し引き、そこに占める既存の県内一般水力発電設備容量と自然エネルギー発電設備容量の
比率で示すことが考えられる。
【参考
国連気候変動枠組条約第 17 回締約国会議・京都議定書第7回締約国会議における京都議定
書第2約束期間に関する合意】
先進国全体の排出削減が 1990 年比で 2020 年に 25∼40%削減となること確保することを目指し、その関連で条
約の下の 2015 年までにレビューを終える
【参考
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書(2007 年 11 月)】
気温上昇を 2.0∼2.4℃に抑えるために先進国に求められる温室効果ガスの排出削減量について、2020 年に 90
年比-25∼-40%、2050 年に 90 年比-80∼-95%と示している。(第 3 作業部会報告第 3 章 Box13.7)
31
【図表2−1
区
分
長野県内の電力販売量と二酸化炭素排出原単位】
2007 年度
電力販売量(百万 kWh)
二酸化炭素排出原単位
(kg-CO2/kWh)
(カッコ内は排出権取引反
映前の原単位)
2008 年度
2009 年度
2010 年度
16,781
15,790
15,070
16,127
0.470
0.424
0.417
0.341
(―)
(0.455)
(0.474)
(0.473)
*中部電力資料より作成。
〈総合的な上位目標:2020 年〉(図表2−2・3・4・5)
温室効果ガス排出量(電力排出原単位変動型)
県の現行目標や国の地球温暖化対策基本法案、IPCCが先進国に求める水準を踏まえると、1990
年度比−6%から−40%幅の範囲内で検討することが妥当。
温室効果ガス排出量(電力排出原単位固定型)
県の現行目標や国の地球温暖化対策基本法案、IPCCが先進国に求める水準を踏まえると、1990
年比−6%から−40%幅の範囲内で検討することが妥当。排出原単位については、火力ベースによる
排出原単位から県内での自然エネルギー発電設備容量を差し引いたものを利用することも考えられ
る。
最終エネルギー消費量
2011 年度の県節電目標や国の電力使用制限令、地域社会への影響を考慮すると、最終エネルギー消
費・最大電力需要ともに、データを入手しうる直近年度比−5%から−15%幅の範囲内で検討するこ
とが妥当。
自然エネルギー発電設備容量
国の法令や経済産業省の導入見込み、県内の資源ポテンシャルを考慮すると、最大電力需要に占める
割合を、発電設備容量でデータを入手しうる直近年度比(現状)+5%から+15%幅の範囲内で検討
することが妥当。
自然エネルギー自給率
基準年の最大電力需要を分母とし、そこに占める自然エネルギー発電設備容量と既存の県内一般水力
発電設備容量の比率で示す場合、「自給率=(自然エネルギー発電設備容量+県内一般水力発電設備
容量)/基準年の最大電力需要」となる。
(2010 年の場合)
自給率 59%=(自然エネルギー発電設備容量 7.2 万 kW+既存小水力 62.8 万 kW+既存一般水力 102.8
万 kW)/2010 年長野県内最大電力需要 293 万 kW
(2020 年の場合) 自給率 64%∼74%
〈総合的な上位目標:2050 年〉
温室効果ガス排出量
県の現行計画や国の地球温暖化対策基本法案、IPCCが先進国に求める水準を踏まえると、1990
年度比−50%から−95%幅の範囲内で検討することが妥当。
最終エネルギー消費量
国の電力使用制限令や海外での目標、地域社会への影響を考慮すると、最終消費エネルギー・電力と
32
もに、データを入手しうる直近年度比−15%から−50%幅の範囲内で検討することが妥当。
自然エネルギー発電設備容量
国の旧エネルギー基本計画や県内の資源ポテンシャル、地域社会への影響を考慮すると、最大電力需
要に占める割合を、発電設備容量でデータを入手しうる直近年度比+15%から+50%幅の範囲内で検
討することが妥当。
自然エネルギー自給率
(2050 年の場合) 自給率 74%∼109%
33
【図表2−2 目標イメージ(温室効果ガス排出量)】
温室効果ガス排出量
15,311千トン/CO2
温室効果ガス
−6%∼−40%
温室効果ガス
−50%∼−95%
1990年度
2008年度
2020年度
2050年度
*黄緑色の部分は、本文で示した目標の幅を表している。この幅の中で目標を設定する。
【図表2−3 目標イメージ(最終エネルギー消費量)】
長野県内エネ
ルギー需要
19万TJ
運輸燃料
33%
省エネルギー
−5%∼−15%
熱
33%
省エネルギー
−15%∼−50%
電力
34%
2008年度
2020年度
2050年度
*黄緑色の部分は、本文で示した目標の幅を表している。この幅の中で目標を設定する。エネルギー組成別の割当は未検
討のため、示していない。
34
【図表2−4
目標イメージ(自然エネルギー電力供給設備容量)】
長野県内
最大電力
需要
293万kW
(2010年)
自然エネルギー
+5%∼+15%
既存小水力
自然エネ
ルギー
7.2万kW
2.5%
62.8万kW
既存小水力
21.4%
県内の一般
水力発電設
備容量
自然エネルギー
+15%∼+50%
既存小水力
既存一般水力
既存一般水力
2020年度
2050年度
102.8万kW
35.1%
2010年度
*黄緑色の部分は、本文で示した目標の幅を表している。この幅の中で目標を設定する。長野県のピーク電力に対して、
県内にどれだけの発電能力があるかを図示化したもの。
「自然エネルギー」とは太陽光発電・バイオマス発電・地熱発
電・風力発電と新設の小水力発電を指す。「既存小水力」とは3万kW以下の流込式水力発電設備を指す。「既存一般
水力」とは水力発電設備のうち、
「既存小水力」と揚水発電設備を除いたもの。図表2−5も同様。
【図表2−5
目標イメージ(自然エネルギー電力供給設備容量+省エネ・節電)】
省エネ・節電
−5%∼−15%
長野県内
最大電力
需要
省エネ・節電
−15%∼−50%
293万kW
(2010年)
自然エネルギー
+5%∼+15%
既存小水力
自然エネ
ルギー
7.2万kW
2.5%
62.8万kW
既存小水力
21.4%
県内の一般
水力発電設
備容量
自然エネルギー
+15%∼+50%
既存小水力
既存一般水力
既存一般水力
2020年度
2050年度
102.8万kW
35.1%
2010年度
*一次エネルギー消費の省エネ目標について、電力においても同じだけ省エネ・節電が必要になると仮定した上で、図表
2−4と組み合わせたもの。
35
(3)長期ビジョン・目標を達成するための計画・条例
「持続可能で低炭素な、環境エネルギー地域社会をつくる」ためには、県民各層の取組や努力が効果
的に組み合わされたものとなるよう、計画や法令が必要である。そこで、計画や条例を見直して、長期
ビジョンや目標、政策、取組などを体系的に反映させることが重要となる。
〈基本的な考え方〉
地球温暖化対策に係る地域の計画は、エネルギーを始めとした地域で使える各種資源を、気候を始
め県民の活動舞台たる環境を良好なものとして維持しつつ、県民の活動や暮らしに合理的に活用し
ていくための海図としての機能を有する。
県民の最高ルールとして機能する条例、県民それぞれの短期・中期・長期的な行動の海図となる計
画、県内のステークホルダー(利害関係者)の相乗効果を発揮するための仕組みや過程が重要。
従来の計画体系を安易に踏襲することなく、ゼロベース(白紙)で計画体系を構築すること。同時
に、計画および施策の実効性にも留意すること。
これまでの取組の延長線上に今後の施策などを設定するだけではなく、将来のあるべき姿・長期ビ
ジョンから目標を設定し、それを実現するための施策を検討するバックキャスティングの手法も併
せて採用すべき。
国の制度への上乗せ・横出しの条例や地域の実情に応じた柔軟かつ優れた取組を促す公害防止・環
境協定など、自治体環境行政がこれまで果たしてきた歴史的役割に鑑み、地球温暖化対策の分野に
おいても長野県が率先した取組を展開すべき。
長期ビジョンおよび目標を実現するために、政策イノベーションに力点を置いた効果的な施策を選
択し、集中的に取り組むための「戦略計画」として策定すべき。
施策については、パッケージとして総合的な効果が発揮されるようにすること。国や市町村の役割、
制度、施策を視野に入れた上で、全体での効果が発揮されるよう留意すること。県民に対する普及
啓発は、市町村や市民団体などが主体的に動くことが効果的であり、県は市町村や県民、事業者な
どの自主的な取組を促す仕組みづくりおよび情報提供、資金提供、人材育成などの支援を中心にす
べき。類似の施策については統合したり、実効性の低いものを廃止したりすることも重要。
短期的に導入する施策だけでなく、欧州諸国や東京都で採用されている市場メカニズムを活用した
手法など、中長期的な施策検討の方向性を盛り込むことにより、県民各層への早期の取組を促して
いくことも重要。従来型の技術・供給側への施策だけでなく、社会・市場側における施策、コミュ
ニティを中心とした施策、人材育成の観点も重要。
今日のエネルギー情勢に鑑み、自然エネルギーの導入目標や関係施策をとりまとめた県のエネルギ
ー政策体系(エネルギー自給戦略)としての側面を有することも重要。温室効果ガス削減の視点に
加えて、地域のエネルギー経済戦略、持続可能な地域づくりの推進、健康・安心への寄与に資する
ように考慮すべき。
広域的な取組が必要な場合は、他の都道府県との連携や国に対する提言などの取組も重要となる。
〈策定・実行・進行管理プロセス〉
計画や条例を検討するに当たっては、県内の市町村、事業者、市民団体、専門家などと意見交換を
行い、連携・協働関係を構築しながら進めていくことが必要である。例えば、広範な関係者との意
見交換の機会を持つことや、各地域で意見交換会を開催することが考えられる。
執行過程においても、市町村や県民などと積極的に連携・協働することが重要である。進捗状況に
36
ついては、環境審議会は当然のことながら、様々な機会を捉えて市町村や県民に説明し、意見を聞
くことが重要である。
予算に反映できる時点で点検作業を行うなど、効果的な進行管理の仕組みが必要。
縦割りではなく、部局を超えた総合政策を立案、推進していくことが重要。その手法として、部局
横断的な組織や統括職の設置を設置したり、首長による環境演説を実施したり、あるいは予算に特
別枠を設けたりすることも考えられる。
〈計画体系の考え方〉(図表2−6)
定性的なビジョン、総合的な上位目標、中位目標、政策と直結した下位目標が、体系的に配された
計画とする必要がある。地域の資源や資産を活用していく指針にもなることに留意。
計画体系を構築する視点としては、低炭素地域づくりの視点を含めた上で、環境エネルギー政策の
視点を重視した体系とすることが妥当である。
目指すべき定性的なビジョンとしては「持続可能で低炭素な、環境エネルギー地域社会をつくる」
ことが適当である。
上位目標と下位目標にそれぞれ進捗状況を把握するための指標を置く。
新しい「戦略計画」の体系案については、図表2−6を参照のこと。長野県の温室効果ガス排出量
の 90%以上がエネルギー起源であることから、「エネルギー需要のマネジメント」「再生可能エネ
ルギーの供給拡大」、エネルギー起源に対するもの以外の地球温暖化対策となる「持続可能な地域
社会のための地球温暖化対策」の3本柱とした。
〈条例改正の必要性〉
現行の「長野県地球温暖化対策条例」については、新しい「戦略計画」を策定し、効果的な施策を
位置づけるなかで、新しい計画体系の視点や施策実施の必要性に基づき、内容について全体的な見
直しが求められる。
条例を見直すに当たっては、地域エネルギー戦略や持続可能な地域づくり戦略としての性格も併せ
持たせることも検討すべき。
37
【図表2−6
新しい「戦略計画」の体系案】
38
第3部 政策パッケージと政策オプション
第3部では、前部で示した長期ビジョンや目標を実現するため、新しい戦略計画の体系案に基づき、
政策体系のたたき台を提案する。また今後の具体的な政策検討や制度設計に資するため、部門・分野別
に広範なオプション(選択肢)を提示した。
〈政策パッケージについての基本的な考え方〉(図表3−1)
計画体系の下位目標ごとに、短期に実施することが望ましい政策、中長期的に検討することが望ま
しい政策を示す必要がある。
計画体系の下位目標に連なる政策は、制度と個別の施策を組み合わせて相乗効果の発揮を期待する
「政策パッケージ」の集合体とすることが望ましい。
政策パッケージ案は図表3−1を参照のこと。なお実線で囲った政策パッケージは、もっぱら「新
しい戦略計画」を根拠とするものである。点線で囲った政策パッケージ(計画)は「新しい戦略計
画」以外の計画や条例などに主たる根拠を有するものである。
以下のほか、様々な政策のオプションについて検討を行った。今後の検討に際しては、提案に含め
なかったオプションも含めて、社会状況の変化に応じて適切な政策を採用することが重要である。
39
【図表3−1 新しい「戦略計画」の体系案に基づく政策パッケージ案】
40
(1)短中期で実施することが望ましい政策
およそ 2020 年までの期間を目途として実施することが望ましい政策を示している。進捗状況を適宜
把握し、評価を行った上で、必要に応じて追加策や修正策を検討、実施することが重要である。今後、
一層の検討を進めることが望まれる。
〈事業者省エネ政策パッケージ〉
(図表3−2)
国内のエネルギー制約状況、新興国需要による国際原油価格の上昇傾向、国際情勢による市場の不
安定化などの要因から、県内産業・業務部門の省エネ・低炭素化を促進することは、温室効果ガス
削減の観点のみならず、地域経済の競争力を高める観点から見ても極めて重要。
排出抑制計画書制度は、他の自治体における運用実績および関係法の実効性補完の役割から意義あ
る制度だが、より実効性を高めるために、対象の拡大や指導・助言・評価の実施、事業者の環境活
動(グリーン電力証書の購入やノーマイカー通勤など)を促進する多様な評価ポイントを導入する
など、制度の充実が必要。中小事業者に対しては、排出抑制計画書制度への任意参加を認めるとと
もに、参加を促す省エネ診断や省エネ設備のモデル事例に関する情報提供などの支援策も必要。
事業者の自主的な取組を促進するため、意欲的な温室効果ガス削減目標を定めた事業者と協定を締
結し、取組を支援する仕組みも有効と考えられる。排出抑制計画書制度に加え、事業者の省エネ取
組を支援するための施策を組み合わせて行うことも有効。
国が地球温暖化対策税の税収を地方配分する際には、自治体ならではの先導的・意欲的施策を進め
るインセンティブ(誘因)方策として活用することが望ましい。東京都排出量取引制度における都
外クレジット制度などを活用して、県内事業者の温室効果ガス削減やエネルギーの地域間連携を促
進することも有効。
現行のエコアクション取組支援としての事業税減税の制度を発展させるなど、排出抑制計画書制
度・協定制度参加事業者への支援といった点からの税制の措置を検討することも有効。
県の公共事業や調達などの入札に当たり、排出抑制計画書制度における評価を参考とすることも有
効。県や域内市町村の公共事業や調達などにおいて、野心的な省エネ設備の設置を促す仕様を定め、
公募を行い、県内での省エネ技術開発、普及を促すことも考えられる。
全県的な環境技術に係る見本市の実施など、技術開発や異業種交流を推進する場づくりも有効。
〈家庭省エネ政策パッケージ〉
家庭部門について、寒冷地の長野県においては、個人レベルの省エネ取組に加え、住宅の断熱化や
高効率の冷暖房、給湯、照明などの設備導入が有効。
家庭(およびそれに準じる小規模な事業者)での対策は、住民に対して直接的な施策を行える市町
村が中心的となることが望ましく、市町村の実施する取組を支援することが県の主要な役割と考え
られる。
県は、長野県地球温暖化防止活動推進員や企業活動などで県民に接する者などにおいて、家庭の省
エネを助言できる人材を養成して、県民の家庭の省エネ診断や、市町村、自治会、各種団体が主催
する省エネ講習会に派遣できる仕組みを整えることが有効。
各家庭の省エネの診断事業について、市町村と連携して大規模で実施するとともに、受診を県の機
器補助などの資格要件にすることにより、各家庭の対策の提案と行動支援を効果的に連携すること
も考えられる。事業実施に当たっては、例えば、節電により供給設備投資を減らせる電力会社に事
業の経済的支援の協力を得つつ、事業を実施することも考えられる。
41
省エネラベル掲示制度は、努力義務にとどまっている国の制度を義務化によって補完するものであ
り、家電の効率化を促進することから、照明や電気便座などに対象を拡大した上で、継続すること
が妥当。代替製品が確立しており、明らかに省エネ性能の劣る製品が県内で販売されている場合に
は、小売り事業者との協定などにより、効率の悪い製品の販売自粛を要請することも考えられる。
県民の省エネ意識の向上に貢献した信州エコポイント事業は 2013 年度までの5年間の事業とし、
2014 年度以降は同事業に参加した設備機器協力店や協賛店舗などの省エネの取組を推奨していく
仕組みを検討・導入することが望ましい。
〈建築省エネ政策パッケージ〉
(図表3−3)
産業・業務部門および家庭部門のいずれにおいても、寒冷地という本県の地理的特性から、施設・
住宅の省エネ・断熱化の促進が極めて重要。
住宅の省エネ・断熱化の促進は、温室効果ガスやエネルギー使用量の削減のみならず、質の高い住
宅資産の形成、中小工務店の多い県内経済の活性化、雇用の場の確保という観点から見ても重要。
県内の施設・住宅について、建築物のエネルギー性能・燃費を客観的に「見える化」することが有
効。それに当たっては、県内の中小零細事業者においても円滑に運用できるよう、講習会のきめ細
かい開催、技術普及、制度周知などの支援策をパッケージで講じることが重要。
自然採光や夜間の外気を取り込む自然換気システムなど、エネルギーを使わず快適性を維持し、向
上させるパッシブな設計・技術・機能を高く評価する仕組みや促進策も重要。
国が建築物の断熱基準義務化を検討していることから、県による先行的な制度・施策の整備を通じ
て、県内事業者の省エネ建築に関する技術力・競争力を向上させることは、地域経済の観点から見
ても有効。
建築物環境配慮計画書制度は、建築物のエネルギー性能の「見える化」など、環境性能を定量的に
評価できる新たな制度に移行することが望ましい。環の住まい整備推進事業は、県産材利用という
従来の取組と新たな制度と組み合わせて最高品質の住宅(信州型パッシブハウス)への補助事業と
することが考えられる。
公共施設や公共事業において、省エネや自然エネルギー設備導入を検討し、環境部局と協議する仕
組みが必要。
〈面的対策〉
都市計画区域であって、人口・産業が高度に集積している地域においては、国の低炭素まちづくり
の支援枠組を活用し、市町村の面的取組を推進していくことが考えられる。都市の交通圏や国立公
園地域などにおいて、低炭素型の交通システムのモデル事業を実施することも有効。
都市計画マスタープランや都市計画などにおいて、見直しの機会を捉えて公共交通を軸としたコン
パクトなまちづくりや熱の面的利用などを適宜検討することが重要。
自然エネルギー100%自給型コミュニティや低炭素型まちづくりを目指す地域に対しては、モデル
地区としての指定や協議会、計画策定などの仕組みづくりを行い、当該の市町村や地域の面的取組
を助言・支援していくことが考えられる。
〈自然エネルギー政策パッケージ〉
(図表3−4)
温室効果ガス削減および地域活性化の観点から、一村一自然エネルギー事業による地域協働の自然
エネルギー事業を展開するとともに、自然エネルギー100%自給型コミュニティを創出し、自然エ
ネルギー自給率を高めることが重要。そのため、太陽光・小水力・バイオマスなど、豊かな自然資
42
源および地域資金を活かした、地域の主体による自然エネルギー事業の拡大促進は有効。
自然エネルギーの普及については、担い手の育成やビジネスモデルの創出、ファイナンス(事業資
金)の確保、立地の促進などのソフト面が極めて重要なことから、それらの支援策をパッケージで
講じるとともに、市町村や自然エネルギー信州ネットなどを通じた地域の関係主体との連携を積極
的に進めるべき。特に、金融機関との連携によるプロジェクトファイナンスの推進、市民の資金を
自然エネルギー分野にまわすグリーン電力基金、全県的な自然エネルギーファンドなどを関係者と
の連携による構築していくことが重要。
上記を進めていくためには、産官学民の連携により自然エネルギーの普及を促す全県的な中間支援
組織(自然エネルギー信州ネット)の活動を発展させていくことが必要。地域レベルで関係者間の
ネットワーク化を進め、具体的な事業の展開を促す地域協議会の立ち上げや活動を支援していくこ
とが重要。地域レベルでの自然エネルギーの事業化を支援・調整などを行う専門組織としての発展
をサポートしていくことも有効。
需要側の自然エネルギー導入を加速的に進めていくために、自然エネルギー設備の導入による効果
を「見える化」していくとともに、初期投資の負担なく売電収入などで支払いをする初期投資ゼロ
のビジネスモデルなどの確立・普及など、補助金に依存せず、新たなビジネスの展開により普及を
進めていくことは有効。
建築物への自然エネルギーの普及とコスト抑制を両立する観点および需要拡大の観点、他の自治体
での実績から見て、新築・改築時に併せて自然エネルギー設備導入の検討を義務づけする制度や導
入自体を義務付けする制度は有効。
熱利用に対するグリーン熱(太陽熱、地中熱/地下熱、木質バイオマスストーブなど)の供給拡大
は寒冷地におけるエネルギーの効率的利用という観点から見て、極めて重要。自然エネルギーの導
入を検討する制度においても、グリーン熱設備の導入を優先的に検討できるようにすべき。
電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(再生可能エネルギー促進
法)に基づく全量固定価格買取制度を活用した自然エネルギー発電事業を推進するとともに、公共
施設における自然エネルギーの導入を促す観点から、県有施設などの公共施設の屋根や未利用地を
事業者に貸し、太陽光などの自然エネルギー事業を促進することは有効。公共施設での電力調達の
グリーン化についても検討していくことが有効。
地域での自然エネルギー導入を促進する国の制度や規制のあり方(発送電分離や水利権の許認可な
ど)について、他の都道府県と連携して国に提案をしていくべき。
〈電力需要抑制対策〉
エネルギー消費の総量を抑制するだけでなく、エネルギー消費の時間的なピークを緩和することも、
エネルギーコストを削減する観点から、極めて重要である。特に、電力についてはピーク需要に合
わせて発電所を整備する必要があることから、ピーク抑制がエネルギーコストだけでなく、社会コ
ストの低減にも直結する。
電力需要のピーク抑制に対しては、カット(電力使用量を削減する)・シフト(需要の集中する時
間帯の利用を避ける、家電などの同時使用を避ける)・チェンジ(ガスや自然エネルギーなどの他
のエネルギー源を利用した機器に切り替える)ことが有効。チェンジについては、省エネやCO2
削減に逆行することも考えられることから、十分な情報提供を行い、適切な対策を促す必要がある。
カット・シフト・チェンジのためには、スマートメーターやHEMS(ホームエネルギー管理シス
テム)、BEMS(ビルエネルギー管理システム)
、CEMS(コミュニティエネルギー管理システ
ム)などによる電力消費量の見える化とデータ蓄積が重要となることから、中部電力に働きかけ、
43
県内のメーターを率先してスマートメーターにしていくことも考えられる。
効果的な電力需要抑制対策を進めるため、電力需給に関する正確な状況とその根拠、ピーク抑制の
有効な手法、電力の熱利用に際してのエネルギーロス(喪失)、家庭での省エネ手法など、県民へ
の的確な情報提供に努めることが重要。県民への情報提供および効果的な政策立案のため、電力事
業者を含むエネルギー供給事業者に対し、情報提供を適宜求めることも必要。
〈交通低炭素化政策パッケージ〉
現行の排出抑制計画書制度や自動車環境計画書制度について、ノーマイカー通勤の取組および大規
模集客施設における交通誘導取組の促進という面を加え、連携させることが適当。
現行の自動車環境情報の提供制度(販売事業者への義務)およびアイドリング・ストップ実施周知
制度(駐車場所有者への努力義務)は、販売した車の平均燃費の報告を行うようにするなど、事業
者によるエコマイスター(省エネ情報の説明を消費者に対して行う販売者)の取組などを通じて事
業者との連携を高め、継続・強化することが妥当。
本県の地理的特性から自動車利用からの完全な脱却は困難であり、EV、PHV(プラグインハイ
ブリッドカー)、超低燃費車などの低炭素型の自動車への転換促進やモビリティ・マネジメント手
法の活用、カーシェアリング(自動車共同使用)、パークアンドライドなどの自動車の賢い利用や
ードプライシングの検討、LRTなどのより地域に適した新しい公共交通システムの導入、自転車
利用の促進、交通流の円滑化も重要となる。自動車を持たない人や運転できない人にとっても、日
常生活に必要な移動を行うことができる公共的な交通手段が確保・維持される必要がある。
低炭素型の交通体系の構築に当たっては、商圏レベルで県と市町村が連携しながら取り組むことが
重要。交通誘導取組を追加した際の駐車場の付置義務の緩和も考えられる。
運輸部門において、郊外集配センター活用による商店街や市街地への共同輸配送や、買い物難民の
ための自動車交通に替わる宅配サービスの充実など、効果的な人流・物流対策が重要。物流事業者、
荷主および受け手となる着荷主の協同取組に対する表彰やマッチングの支援などを行うことは有
効。
化石燃料の需給逼迫により原油価格については将来的に価格の高騰が見込まれ、県内の生活者や事
業者の負担増に直結することから、EV、PHV、超低燃費車などへの買い換えによる税制優遇を
行うことが考えられる。
〈フロン類等対策〉
二酸化炭素以外の温室効果ガス(メタン/CH4、亜酸化窒素/N2O、ハイドロフルオロカーボン
/HFC、パーフルオロカーボン/PFC、六フッ化硫黄/SF6)は、少量でも温室効果を大き
く促進する。フロン類(HFC・PFC・SF6)について、国では特定製品に係るフロン類の回
収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収・破壊法)などを制定し、都道府県や関係団
体などと協力して対策を進めているが、冷媒フロンなどにおける使用時や廃棄時の漏えいが問題と
なっている。冷媒フロンの回収率は 30%前後にとどまっている。
フロン類等への対策は排出抑制計画書制度において対象としているが、フロン類等を大量に使用す
る事業者は比較的特定しやすいことから、特別な取組を行う事業者と協定を締結し、県が当該当事
者の取組支援を行うスキーム(枠組)が有効。
〈廃棄物対策〉
排出事業者自らが製品の製造工程において、製品の長寿命化や素材別に分離が容易な構造、残さ物
44
の発生量の少ない製造技術の開発などを一層進めることが重要。また廃棄物からのレアメタル(希
少金属)回収やリサイクルを進めるため、回収方法などについて研究を進めることが重要。
循環型社会の構築を図るとともに、廃棄物バイオマスの利活用、収集運搬の効率化、廃棄物の焼却
処分における熱回収・利用の徹底など、廃棄物処理システムにおける地球温暖化対策の取組を進め
ることが重要。
廃棄物のリデュースは事業者の取組に加えて、家庭での取組が有効な分野であることから、暮らし
の中にリデュース・リユース・リサイクルを定着させ、不用品の交換や分別の徹底などを広げるこ
とが重要。特に、レジ袋の削減や食べ残しの削減、生ごみの水切りの徹底、堆肥化の推進など、県
民をあげてリデュースに努めることが重要。
〈温暖化適応策パッケージ〉
地球温暖化による気候変動の影響が起きるとの観測・予測に基づき、それに適応するための対策を
進めることは重要。一方で長野県に限らず、自治体の政策現場レベルの影響評価モデルや影響評価
を踏まえた具体的な立案手法は必ずしも十分でないことに留意。
地球温暖化の県内への影響を把握するとともに、影響評価の精度を高める必要があることから、県
全域での恒常的モニタリング(観測)体制の構築、ならびに影響評価研究の成果を県民と広く共有
するためのリスクコミュニケーションを進めることが重要。
地球温暖化の影響に適応するための取組を推進するため、県環境保全研究所を核とした県内の研
究・専門機関との適応技術・手法開発ネットワークの構築、県内外の研究・専門機関と連携した適
応策立案手法の研究、さらには研究開発成果を踏まえて、県の各部局をはじめとする行政機関が各
行政計画や施策に適応の視点を盛り込むとともに、事業者や県民への情報提供を進めることが重要。
〈その他〉
産官学と金融機関の連携により、地球温暖化防止に資する企業の取組、住民参加型の自然エネルギ
ー事業などに対する金融支援や融資を行う仕組みづくりは、地域活性化の観点から見て有効。
地球温暖化対策を通じた産業育成の観点から、県の研究機関・試験場などにおいて、省エネや自然
エネルギーに関する低炭素部門を設置・強化したり、「環境人材コンソーシアム」との連携などに
より研究開発や人材育成を推進したりすることは有効。
省エネや自然エネルギーの取組を強力に推進するための地方税の活用や国からの交付金など、財源
確保の手法についても検討が必要。
現在、地球温暖化に関連する分野において、県では「中期総合計画」
「新交通ビジョン」
「廃棄物処
理計画」
「食と農業農村振興計画」
「森林づくり指針」などを策定している。これらの改定時期を捉
え、地球温暖化対策の視点を導入・強化することが重要。また関係する分野の政策企画および事務
執行に当たっては、地球温暖化対策の視点を十分に考慮すべき。
改訂作業中の「中期総合計画」および策定中の「新交通ビジョン」は、地球温暖化対策との関連性
および地球温暖化対策の視点を導入・強化に十分に留意すること。
公営水力発電事業のあり方検討に際しては、福島第一原子力発電所事故に端を発するエネルギー制
約状況および国の電力制度改革を踏まえ、多角的な検討を行い、公営事業が自然エネルギーの普及
に果たせる役割を十分に見極めることが望ましい。
45
【図表3−2 事業者省エネ政策パッケージ(イメージ)
】
事業者・県民の取組
制度・施策
備考
温室効果ガス排出抑制等の
目標と計画の作成
目標と計画の作成・提出
(排出抑制計画書制度)
対象事業者が排出抑制の目標と計画を作
成し、県に提出する。対象外の中小事業
者も任意で作成、提出できる。
対策の実施
取組支援
(省エネ対策支援事業)
排出抑制計画書を提出した事業者を対象
として、県が取組を支援できる。
対策の徹底
実地指導・助言
(排出抑制計画書制度)
対策指針に基づき、県職員と専門家によ
る実地での指導・助言を実施。
環境経営
経営者への情報提供
(事業者協議会等)
事業者協議会等を通じて、県内の企業経
営者たちに環境経営に資する情報を提
供。
環境エネルギー情報の把握
環境管理実施支援
(環境マネジメント促進施策)
事業者自らが、事業活動における環境エ
ネルギー情報を把握。
意欲的・特別な取組
協定締結と取組支援
(排出抑制/フロン協定制度)
野心的な目標等を設定したり、特別な取
組をする事業者と任意に協定を締結。
環境配慮行動
評価・表彰での考慮
(排出抑制計画書制度)
ノーマイカー通勤や来客等の交通誘導、
自然エネ普及、環境CSR活動等を評価に加
味。
進捗管理
報告書の作成・提出
(排出抑制計画書制度)
報告書を毎年作成し、県に提出。県は報
告書を公表する。
社会からの評価
評価・表彰
(排出抑制計画書制度)
計画の達成状況等を評価し、優良事業者
を表彰する。
(政策パッケージ)
*政策パッケージの図表については、条例事項となる制度と予算事項となる個別の施策との関係を説明するために付記し
ている。そのため、制度についての提言をしている「事業者省エネ政策パッケージ」
「建築省エネ政策パッケージ」
「自然
エネルギー政策パッケージ」について提示した。以下、図表3−3、図表3−4についても同じである。
46
【図表3−3 建築省エネ政策パッケージ(イメージ)
】
事業 者・県民の 取組
制度 ・施策
省エ ネ型 建築物の選 択・建 設
建築物の環境性 能の 定量評 価
(エネルギー性能 表示 制度な ど)
県が 指定する評 価手 法に基づき 、設計 ・
売買 時の 提示。
事 業者 のエネルギ ー性能
評 価能力の取 得
事業者へ の研 修
(エ ネ性能 表示制度運営)
各地 域で 研修会 を実 施し、研修 修了者 に
評価 ソフトを配 布。
エネ ルギ ー性能表示 への理 解
事 業者・ 県民への広報
(エネ性能表示 制度 等運営 )
広報 紙や 関係団 体、 窓口、住宅 展示場 等
を通 じて、県民 へ周 知。
事業 者の 省エネ 型建 築
能力の向上
事業者への 技術 研修
(技術力向 上施 策)
各地 域で 技術研 修会 を実施し、 中小零 細
事業 者等を中心 に技 術レベルを 底上げ 。
超 高性 能省エ ネ型
住宅の建設
信州型パッシブ ハウ スの認 証
( エコ住 宅推進施策)
ゼロ (プ ラス) エネ ルギー・県 産材利 用
の超 高性 能住宅 を認 証、補助。
リ フォームで の
エネル ギー 性能表 示の 活用
手法の 検討
中長 期的な検討 課題 として、専 門家等 に
よる 研究会を開 催。
( 政策パ ッケ ージ)
備考
47
【図表3−4
自然エネルギー政策パッケージ(イメージ)】
事業者・県民の取組
制度・施策
エネルギー供給事業への参入
(供給サイド)
担い手育成
(信州ネット・1村1エネ施策)
自然エネ関連事業への参入
(供給サイド)
県内バリューチェーン構築
(信州ネット施策)
県内事業者の関連事業(製造、調査、顧
問、設置、管理等)参入を促進。
地域での協働・合意形成
(供給サイド)
関係者の協働の場づくり
(信州ネット施策)
事業者、住民、行政等が連携・協働し、
自然エネ導入と地域活性化を促進。
事業資金の調達
(供給サイド)
ファンド・金融手法の確立
(信州ネット施策)
金融機関からの融資や市民・企業等の出
資を促進。
自然エネ電力の販売
(供給サイド)
電力会社の全量買取義務
(再生可能エネルギー促進法)
建物への設備設置
(需要サイド)
新築・改築時の導入検討
(自然エネ導入検討制度)
建物新築時の検討・オプション説明を義
務化し、自然エネ設備需要を拡大。
自然エネ熱設備の設置
(需要サイド)
新築・改築時の導入検討
(自然エネ導入検討制度)
熱設備の検討を優先する検討指針を策
定。
グリーン電力証書の利用
(需要サイド)
グリーン電力証書の購入促進
(排出抑制計画書制度)
(政策パッケージ)
備考
県民・事業者へ情報提供して参入を促
進、参入のためのビジネスモデルを構
築。
国の法律。2012年7月施行。
排出抑制計画書・報告書に、グリーン電
力証書の欄を設け、評価に加味。
48
(2)中長期的に検討・実施することが望ましい政策
短中期的に実施することが望ましいものとして提案した政策は、いずれも各主体の取組を促す枠組み
について規定したり、先進的な取組を推奨したりするものであり、目標レベルや達成の度合いについて
は取組主体の自主性に委ねるものである。
そのため、提案した政策が十分な成果をあげなかった場合あるいはより政策効果を早期に拡大する場
合、温室効果ガス、エネルギー消費量、自然エネルギー導入量などについて、一定レベルの目標や達成
を義務付ける制度の導入について検討し、実施する必要がある。特に、以下の政策について国の動向を
考慮しつつ、中長期的に検討・実施することが望ましい。
〈産業・業務部門〉
目標を自主設定し、目標達成を努力義務とする排出抑制計画書制度を強化しても、その実効性が不
十分である場合には、一定レベルの目標を設定、当該事業者の削減義務をつける制度の導入も、検
討すべき選択肢の一つである。排出量が目標を超過したときには、超過量に応じて賦課金を課した
り、削減目標を大幅に上回った他の事業者から排出枠を調達できるようにしたり、超過量に相当す
る分のグリーン電力証書を購入できるような仕組みと組み合わせることが考えられる。
汚染者負担の原則に鑑みると、温室効果ガスの排出や環境への影響に対するコストについて、製
品・サービスの生産者、それを享受した消費者が負担することが望ましい。エネルギー利用に当た
って、排出するCO2の量に課税する炭素税(環境税)など、市場メカニズムを活用した政策によ
って、環境へのコストを価格に含めることを通じて、省エネや自然エネルギーに取り組む者が経済
的に優位となるような経済システムづくりも、中長期的な検討課題である。
本来、事業者の削減義務をつける制度や排出するCO2の量に課税する炭素税は、国全体あるいは
大都市を中心とした広域で実施することがふさわしい制度であり、長野県のみで検討する場合は、
事業所への他県への移動のみで国全体での排出抑制に寄与しない可能性があり、県内経済への影響
に十分留意する必要がある。
〈家庭部門〉
短期的には県民の自主的な取組を促していくことが重要である一方、中長期的にはフリーライダー
(ただ乗り)の出ない仕組みを検討することが課題となる。その際、市場メカニズムの活用が重要
な視点となり、前述の炭素税(環境税)により、家庭の省エネ、自然エネルギーの取組に経済的イ
ンセンティブを与えていくことも重要。
直接的に市場メカニズムを活用しないものの、県民税の超過課税などを活用し、薄く広い課税によ
って税収を得て、それを環境用途に用いることにより、社会全体における環境対策への財の投入を
増大する手法もありうる。
〈運輸・交通・面的部門〉
公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりに転換することは、地域ごとの状況を踏まえた上で、
中長期的な継続的取組が必要である。その際、地域に適合した手法の研究、基本的な行政計画への
反映、市町村・県民との連携が重要。
交通需要を適正に管理するためには、個別の状況を仔細に検討した上で、地域ごとの特性に合った
手法を丁寧に導入することが重要である。手法検討に当たっては、公共交通や自転車道の整備や交
通流の円滑化などのハード的手法、トランジットモールの設置やカーフリーエリア(自動車を利用
49
しない都市空間)の設定などの規制的手法、ロードプライシングなどの経済的手法、モビリティ・
マネジメントなどの情報的手法をそれぞれ適切に組み合わせることが効果的。
未利用エネルギーを効率的に利用する低炭素街区や適切なエネルギー需要管理を行うスマートシ
ティなどの面的なまちづくりを促進するため、市町村との共同研究やモデル化支援など、中長期に
わたり市町村による取組を助言・支援していくことが重要。
2050 年には 2010 年に比べて全国平均で人口が現状の4分の3になると見込まれており、行政サー
ビスを県内全体になどしく行うことは困難になることが予想されることから、人口の減少に応じて、
居住する地域を戦略的に限定し、周辺市街地の都市計画による開発抑制及び非居住地域に自然エネ
ルギーを設置することなどにより、適切に管理を行っていくための地域計画やインセンティブづく
りに着手することも考えられる。
〈建築部門〉
新築建築物のエネルギー性能を「見える化」する制度について、定着に目途が立ったならば、既存
建築物の取引や改修に活用していく方策を検討する必要がある。例えば、賃貸や売買の際にエネル
ギー性能を提示したり、改修時に所有者へエネルギー性能を示したりすることなどが考えられる。
エネルギー性能を「見える化」する制度は、建主の選択肢を拡大するものの、必ずしもエネルギー
性能の高い建築を義務化するものではない。その実効性が不十分である場合、一定のレベルを設定
し、それ以上の性能を義務化する制度の導入も、検討すべき選択肢の一つ。
既築の賃貸住宅やテナントビルでは先行して、消費者へのラベリングの普及の後、改修の義務付け
を行うことも考えられる。
〈自然エネルギー部門〉
熱および燃料における自然エネルギーの導入拡大については、国内においてまだ政策手法が十分に
確立していない。そのため、引き続き検討を進めることが重要である。
新築・改築時に併せて自然エネルギー設備の導入を検討する制度は、建主に自然エネルギー設備の
有用性検討の機会を提供するものの、必ずしも自然エネルギー設備の導入を義務化するものではな
い。その実効性が不十分である場合、自然エネルギー設備の導入義務化や熱需要の一定以上を自然
エネルギーで賄うことの義務化も、検討すべき選択肢の一つ。
一定規模の事業者に限らず、市民が利用したい電気の種類を選べるグリーン電力料金の制度を国に
提案することも考えられる。
〈適応策部門〉
中長期にわたり、政策手法の研究を継続して進め、革新的かつ具体的な政策手法を構築・導入する
ことが重要。
地域ごとの温暖化影響の把握(リスク把握)、影響による被害のレベル・範囲と共に新たな発展・
開発の可能性の推定(リスク評価)、その結果を地域で共有しながら対策(リスク対策)を進めて
いくことが重要。それに当たっては、ワーキンググループや温暖化対策の関係庁内組織などを活用
した県の関係部局の連携、それらを実行していくためのリスクコミュニケーションが重要となる。
〈廃棄物部門〉
循環型社会の形成と廃棄物処理システムにおける地球温暖化対策の取組は、中長期にわたる継続的
かつ計画的な取組が重要。
50
(3)検討した政策オプション
政策提案に当たっては、国内外で実施されている地球温暖化対策・低炭素地域づくり・自然エネルギ
ー政策のオプションについて情報を収集し、検討の基礎とした。長期ビジョンおよび長野県の現状や資
源などからふさわしい政策を取捨選択し、改善点を加えた上で提案としているが、取り巻く状況や県民
意識などの変化により、新たな政策が必要になることも考えられる。よって、検討に付した主な政策オ
プションを示す。詳細については、参考資料6を参照されたい。
〈産業・業務部門〉
計画的な削減取組を促進する政策(排出抑制計画書制度、強化型排出抑制計画書制度、政府・事業
者間協定制度)
自主的な削減取組を促進する政策(省エネルギー診断、オフセット・クレジット化支援、優良事業
者認定)
排出量を規制する政策(排出量規制・取引制度)
排出に経済的負担を課す政策(炭素税)
省エネ設備の導入を支援する政策(補助金、税減免、低利子融資、利子補給)
環境に配慮した経営を促進する政策(環境経営講習、事業者協議会、環境マネジメントシステム導
入支援)
〈家庭部門〉
インセンティブを通じて環境行動を促進する政策(エコポイント、オフセット・クレジット化支援、
省エネ貢献家庭への認定)
自主的な削減取組を促進する政策(省エネルギー診断、エネルギー供給事業者による家庭の省エネ
推進制度、電力料金などの超過課金による省エネ推進機関の設置、環境家計簿の普及)
情報提供を通じて環境行動を促進する政策(省エネ家電ラベル掲示、アイドリング・ストップ掲示)
市民の環境意識を高める政策(環境教育、ライフスタイル転換の推進)
市場メカニズムを通じて環境行動を促進する政策(炭素税)
〈運輸・交通・面的部門〉
低炭素型街区(エネルギーを効率的に利用する街区)を整備する政策(地域冷熱供給システムの整
備、スマートグリッドの普及、面的対策のための地区指定)
交通需要を抑制する政策(コンパクトシティ、トランジットモール、大規模集客施設の適正立地、
交通流円滑化)
計画的な交通需要抑制取組を促進する政策(運輸事業者を対象とした排出抑制計画書制度、来客者
交通計画書制度、通勤交通計画書制度)
物流の効率化を促進する政策(モーダルシフト、グリーン物流)
自動車利用を抑制する政策(乗入れ規制、ロードプライシング、パーク&ライド、カーシェアリン
グ、自転車利用環境整備)
自動車単体の環境性能を向上させる政策(EVなどのインフラ整備、低炭素型自動車の購入支援、
低炭素型自動車の駐車場料金での優遇、購入者への環境性能情報の提供、エコドライブ講習、自動
車税・自動車取得税のグリーン化、自動車平均燃費規制)
51
〈建築部門〉
建築物のエネルギー性能を規制する政策(建築規制)
建築物のエネルギー性能を表示する政策(建築物エネルギー性能表示制度)
建築物の環境配慮を促進する政策(建築物環境配慮計画書制度)
環境に配慮した建築を支援する政策(補助金、技術普及)
〈自然エネルギー部門〉
エネルギー供給事業者による自然エネルギー利用を義務付ける政策(全量固定価格買取制度、固定
量買取制度)
エネルギー供給事業者の自然エネルギー利用を促す政策(エネルギー環境計画書制度)
自然エネルギー供給事業を促進する政策(プラットフォーム、事業検討支援、立地促進、資金調達
支援、固定資産税減免、技術開発支援)
自然エネルギー設備の設置を促進する政策(設置義務制度、導入検討制度、導入補助金、需要サイ
ドへの低金利融資)
自然エネルギーの需要を促進する政策(グリーン電力・熱証書化・クレジット化支援、行政による
率先導入・グリーン電力調達)
〈適応策部門〉
地球温暖化の状況や影響を把握する政策(モニタリング体制の構築、温暖化影響予測・評価の精度
向上)
地球温暖化に適応するための手法や技術を開発する政策(対策立案手法の開発と適応策の検討、対
策技術の研究開発)
地球温暖化に適応するための対策を促進する政策(リスクコミュニケーション)
52
第4部 県民・地域への期待
前部では、もっぱら県の取り組むべき政策についてパッケージとオプションの案を提示した。持続可
能で低炭素な、環境エネルギー地域社会をつくるには、広範な県民・地域の参加と取組が不可欠である。
第4部では、県民と地域に期待される役割について示す。
(1)様々な立場の長野県民に期待される役割
すべての県民が複数の立場を担っているものの、場面ごとにどのような役割が期待されるのかを分か
りやすく示すため、生活者や事業者など、12 の類型に分けて、それぞれへの期待される役割を示す。
【生活者】
家庭における小まめな省エネ行動、買い物のときのエコ製品(環境配慮型製品)・サービスの選
択、子どもへの環境教育、移動時の公共交通の利用など、日常生活におけるエコライフを期待した
い。住宅を建てるときには断熱と高効率機器、自然エネルギーの導入など、中長期の費用対効果を
踏まえた取組を実践する。自動車を購入するときには低炭素な車を選び、運転するときはエコドラ
イブを心がける。そして、地球温暖化の影響など環境について様々な機会を捉えて学び、地域の環
境活動に積極的に参加することを期待したい。
【事業者】
事業所における省エネ活動、調達の際の省エネ型機器やエコ製品・サービスの選択、従業員への
環境教育、ノーマイカー通勤の推奨など、事業活動における環境配慮を期待したい。自然エネルギ
ー発電事業や環境配慮型製品・サービスの企画開発など、環境ビジネスの積極的な展開も期待した
い。社屋や工場、施設を建てるときには断熱と高効率機器を導入するとともに、自然エネルギーの
導入を検討する。自動車を購入するときには低炭素な車を選び、運転者にはエコドライブ講習を実
施する。地球温暖化の事業への影響を理解し、事業活動において対応していく。経営者と従業員で
ともに環境について学ぶ機会を設け、環境活動に積極的に参加、支援することを期待したい。
【農業関係者】
ハウス栽培の燃料をバイオマスに転換するなど、生産や流通段階での省エネや自然エネの活用に
期待したい。未利用地や用水路、施設の屋根、副産物を活用し、売電収入などを副収入として経営
安定にかにつなげる「半農半エネ」を進めることも期待したい。地球温暖化の農業への影響を理解
し、対応していくことも期待したい。
【林業関係者】
林業生産の効率化と県産材の安定的供給による温室効果ガスの固定化促進を期待したい。林業生
産や製材の過程で発生する利用困難な低質材や端材、おが屑などを活用し、木質バイオマスによる
周辺地域への熱供給や系統への売電を経営の副収入とする「半林半エネ」にも期待したい。地球温
暖化の林業への影響を理解し、対応していくことも期待したい。
【学生・子ども】
家庭や学校における小まめな省エネ行動、買い物のときのエコ製品・サービスの選択、通学時の
公共交通の利用など、日常生活におけるエコライフを期待したい。幼少期から野外教育を受けると
ともに、理科、社会および科目横断的な視点から、地球温暖化の影響など環境について実践と知識
を習得するとともに地域における環境活動に参加することを期待したい。
53
【学校関係者】
家庭や学校における小まめな省エネ行動の方法、エコ製品やサービスを選ぶときの目安、通学路
の安全確保など、学生・子どもがエコライフを送るための手助けを期待したい。あらゆる授業科目
や地域活動への参加などを通じて、持続可能な社会を担う人材育成(ESD)を進めることを期待
したい。
【建築関係者】
建築・設計のときに、施主に対して省エネ型の建物や自然エネルギーの活用を積極的に提案する
ことを期待したい。省エネ建築やエネルギーに関する知識を積極的に取り入れ、あらゆる建築・設
計に際して活用することを期待したい。
【交通関係者】
公共交通の利便性・快適性・安全性の向上に向けて、さらなる積極的な取組を期待したい。また
鉄道・バス・タクシーなどの公共交通事業者と行政、住民の連携を強め、地域の特性に合った公共
交通を確保し、維持・発展させることを期待したい。
【自然エネルギー関係者】
できる限り多くの県内事業者が自然エネルギーに係る取組・事業に参画することを期待したい。
機器の供給を行う事業者には、県民との信頼関係を大切にし、自然エネルギーの最大活用に向けて
県民の良きサポーターとなることを期待したい。
【金融関係者】
事業者や県民が省エネや自然エネルギーに取り組むとき、要する費用(設備投資など)について
プラス面を積極的に評価し、事業や活動を後押しすることを期待したい。新たなファイナンスモデ
ルについても研究を進め、地域の要請に応えていくことも期待したい。特に、中小事業者に対する
与信問題があることから、一定数以上の中小事業者の省エネ投資に対するファンド設定により与信
リスクを軽減し、初期費用負担の軽減に協力することを期待したい。また地球温暖化の金融への影
響を理解し、事業活動において対応することも期待したい。
【研究者・専門家】
省エネ、自然エネルギー、温暖化への適応など、さらなる研究や技術開発を期待したい。県内の
研究機関や専門機関には、分野横断での情報交換・連携を強化し、長野県を先進地域にしていくた
めの牽引役となることを期待したい。
【公務員】
地域では県民の模範となるエコライフを送り、職場では自らの事務の環境負荷の低減に努め、地
球温暖化の影響も含めて、施策に環境の視点を盛り込むことを期待したい。行政機関は、地域の事
業者の模範となるよう、環境配慮型のビジネススタイルを確立することを期待したい。
(2)県内の様々な地域に期待される役割
長野県には、オフィスや工場、住宅が集中的に立地する都市部もあれば、集落が点在し、田畑や森林
の多い中山間部もある。人口密度が極めて低い山岳部もある。そこで、それぞれどのような地域づくり
が期待されるのかを示す。今後、計画や条例を検討するに当たっては、各地域の方針や戦略と整合させ
ていくためにも、県内の市町村、事業者、市民団体、専門家などと意見交換を行い、連携・協働関係を
構築しながら進めていくことが必要である。
地域づくりでは、県以上に市町村の取組がカギになる。とりわけ交通政策では、交通利用者のニーズ
54
(需要)を鑑み、市町村を越えて商圏単位での都市・交通計画を市町村と県が協働で検討していくこと
が求められる。
【都市部】
環境、快適さ、にぎわいが並び立つ街づくりを期待したい。環境では、個別の建物のエネルギー
効率を高めるとともに、電力や排熱を巧みに融通しあうスマートな街。快適さでは、公共交通や自
転車、徒歩での移動がしやすい街、景観の美しい街。にぎわいでは、街を歩く人がたくさんいる上
に、さらに地域や環境の活動が活発で、住民同士の絆が強い街。このような街は、魅力的な街とし
て国際的にも輝くことになるだろう。
【郊外・農山村部】
環境、美しさ、ゆとりの地域づくりを期待したい。環境では、地域の自然資源を活用してエネル
ギーを生み出す「100%自然エネルギーコミュニティ」や気候変動に適応した生活。美しさでは、
県産材を活用した住宅と田畑、森林が融合した日本の原風景。ゆとりでは、豊かな人間関係とコミ
ュニティ(地域社会)が大切にされ、地域で生産された食材を旬産旬消で楽しめる落ち着きのある
暮らし。このような地域は、住んでいる人の満足度が高いだけでなく、心と身体を癒せる地域とし
て、都市部や県外、国外から多くの人が訪れることになるだろう。
【山岳部】
生物多様性、持続可能な利用、厳粛さをコンセプトとした地域保全を期待したい。生物多様性で
は、温暖化影響予測にも配慮した希少な動植物や重要地域の厳格な保全。持続可能な利用では、循
環を損なわない範囲での資源活用や環境に配慮した観光・入山。厳粛さでは、自然・生き物への感
謝や次世代への継承。このような地域は、人と自然の共生が成立し、長野県の象徴として国内外に
発信されることになるだろう。
55
第5部 排出削減効果及び提案に係る経済その他の影響分析
県の長期見通しに基づく温室効果ガス排出量の将来推計と、第2部で示した中期目標を達成した場合
の経済影響評価について、それぞれ分析した。
(1)温室効果ガス排出量の将来推計
県の県内総生産や人口などの長期見通しに係る国内の研究データ、県の長期見通しの将来推測より推
計した温室効果ガス排出量推移を用い、温室効果ガス排出量の将来シナリオを作成し、中長期目標のレ
ベルとの分析を行った。
<シナリオ別将来推計>(図表5−1)
現状の県内総生産当たりの産業・業務部門の温室効果ガス排出量および人口当たりの家庭・運輸部門
の温室効果ガス排出量が現状(2001∼2008 年の平均)から変化しない場合、現状(2001∼2008 年度
の平均)比 10 年間で 10%削減の場合、同じく 20%削減の場合の3つのシナリオにおける将来の温室効
果ガス排出量推計を図表5−1に示した。
【図表5−1 長野県の温室効果ガス排出量の将来推計】
20,000
実績
推計
予想シナリオ
温室効果ガス排出量(千t-CO2)
森林吸 収分
15,000
10,000
5,000
実績排出量及びBAU
10年間で10%の活動原単位削減
10年間で 20%の活動原単位削減
1990
2000
2008 2013
2020
2030
2040
2050
(年度)
産業・業務・非 CO2 部門 の排 出量は、県 内総生産を活動量に取り、家庭・運輸・非エ ネCO2部門の排出量は、人口による
活動量に取り、 2001∼2008年の活動原単位が一定の場 合をBAUシナリオとした。また、活動原単 位がそれぞれ10年で
10%と20%のペースで進む 2つのシ ナリオを活動原単位削減シ ナリオとした。
〈推計における前提〉
2008 年度までの実績排出量は、長野県の公表値。
2009 年度と 2010 年度の推計排出量は、各年の県内総生産と人口に、次の数値を乗じたものを合計
した。ただし 2010 年度の県内総生産は未公表のため、内閣府経済社会総合研究所「国民経済計算
56
確報」における 2009 年度から 2010 年度への成長率(+1.1%)を 2009 年度県内総生産に乗じた
生産額を用いた。
・2001 年度から 2008 年度の県内総生産当たりの産業・業務と非CO2部門の温室効果ガス排出
量の平均値(以下「現状の県内総生産活動原単位」という)
・2001 年度から 2008 年度の県人口当たりの家庭および運輸、非エネルギーCO2 部門の温室効果
ガス排出量の平均値(以下「現状の人口活動原単位」という)
2011 年度以降のBAU(成り行き)シナリオは、現状の県内総生産活動原単位および現状の人口
活動原単位が 2011 年度以降も変化しなかった場合の排出量。
2009 年度以降の温室効果ガス排出量は、森林吸収分として、−1,756 千 t-CO2(2009 年度の実績
値)を算入。
2035 年までの県内総生産額は「地域の将来を踏まえた都道府県財政の予測と制度改革」
(財団法人
関西社会経済研究所 2010 年3月)の実質県内総生産の期間中年平均成長率の予測(開放人口)を
用いた。2036 年から 2050 年までの県内総生産額は 2035 年の県内総生産額の水準とした。
2035 年までの県人口は「日本の市区町村別将来推計人口(2008 年 12 月推計)」
(国立社会保障・
人口問題研究所)を用いた。2036 年から 2050 年までの県人口は、国連人口部推計の日本人口から
算出した 2035 年に対するこの期間(2040 年・2045 年・2050 年)の人口削減率を用い、県内の
2035 年の推計人口を基点として算出。
2013 年度以降の活動原単位削減シナリオは、県内総生産活動原単位及び人口活動原単位が現状
(2001 年から 2008 年の平均)比で、10 年間で 10%もしくは 10 年間で 20%のペースで削減した
場合の排出量。
<本提言における目標値の分析>
3つの活動原単位削減シナリオにおける温室効果ガス排出量の将来推計より、本提言における目標の
レベルについて、以下のことが言える。
2050 年の温室効果ガス排出量目標「−50%∼−95%」は 10 年間での活動原単位の削減率が 8.2%
∼16.6%となり、削減のペースとしては不可能なものではない。ただし、約 40 年にわたり継続的
な削減が必要である。
2020 年の温室効果ガス排出量目標「−6%∼−40%」は 10 年間での活動原単位の削減率が 4.2%∼
32.8%となり、高い目標の場合は従来の延長線上ではない大胆な対策が必要となる。
(2)経済影響評価
中期目標を達成するために必要となる取組が行われた場合の経済波及効果と就業誘発効果について
分析を行った。
〈分析方法〉
本報告書の経済影響分析では、本報告書で示されている目標を達成するために必要な取組を、一定の
条件で仮定し、算出した3つの対策取組と化石燃料などの消費量削減についての最終需要の変化を、長
野県が作成した「平成 17 年長野県産業連関表経済影響分析表」に投入することで、一次波及効果まで
の経済波及効果と就業誘発効果を求めた。
3つの対策取組と化石燃料などの消費量削減による最終需要の変化を求める上で設定した計算条件
57
については、以下にその概要を示す。
化石燃料などの消費量削減のための省エネ設備投資による需要額増加
省エネ設備投資については、最終エネルギー消費量の削減量のうちの半分を省エネ設備による削
減で、5年で追加コスト回収できる設備が導入されると仮定する。
家庭、企業、行政などにより導入される省エネ設備そのものの需要額総額。設備が県外産か、県
内産化は区別が困難であり、設備投資総額全体で算出。
自然エネルギー発電設備増加による需要額増加
自然エネルギー発電設備は、目標の範囲である「2020 年までに 2010 年の最大電力需要の5∼
15%」に合わせ、113∼340kW の設備の普及と仮定する。内訳は、太陽光発電 100∼300 千 kW、小
水力発電 47∼140kW とする。
家庭、企業、行政などにより導入される太陽光発電及び小水力発電の設置工事に係る費用および
小水力については維持管理に係る運用に係る費用が含まれている。自然エネルギー発電事業者の売
電収入については電力事業者による再投入になるため含めていない。発電設備については、太陽光
発電設備及び小水力発電設備そのものの需要額は、県内で生産している企業があまりないことから、
すべて県外産として、需要額には含めていない。
自然エネルギー熱利用機器増加による需要額増加
自然エネルギー熱利用は、2020 年までに年間利用熱量で、太陽熱利用 2,000TJ、バイオマス熱利
用 1,800TJ、地中熱利用 1,000TJ の普及と仮定する。これは、2009 年度の年間エネルギー消費量の
2%に相当。
家庭、企業、行政などにより導入される設備に係る需要総額を算出。太陽熱利用設備については、
現在の県内産シェア(27.5%)で設備そのものの県内産額を算出し、設備工事に係る費用を含めて
いる。ペレットストーブなどのバイオマス熱利用設備は、すでに県内生産も多いことから、すべて
県内産として算出し、運用コストとして使用するペレットのコストを含めている。地中熱利用につ
いては、井戸掘削コストで算出している。
化石燃料などの消費量削減による需要額減少
目標案として示された「最終エネルギー消費量を5∼15%削減」より、2009 年の最終エネルギ
ー消費量の「5%」と「15%」の2ケースとする。このときの「化石燃料など」は、石炭製品、石
油製品、都市ガス、電力とする。
〈経済波及効果〉
(図表5―2)
分析の結果、地球温暖化対策による 2020 年までの経済波及効果は 17∼332 億円となった。この額は
県内企業で増加する生産額であり、対策により増加した直接的な生産額と、その生産によって他の部門
へ1回波及したことによる生産額の増加(一次波及効果)を合算したものである。
化石燃料などの消費量削減による生産額のマイナス分を除けば、省エネや自然エネルギーによって新
たに 177∼812 億円の需要が生まれることとなり、きのこ出荷額 475 億円(2008 年度)と比べても遜
色のない長野県の産業となりえる。
58
【図表5−2
地球温暖化対策による経済波及効果】
〈就業誘発効果〉
(図表5−3)
分析の結果、地球温暖化対策による 2020 年までの就業誘発効果は 1179∼5548 人となった。就業誘
発効果においては、化石燃料などの消費量削減による就業者数の減少は比較的小さく、自然エネルギー
発電と自然エネルギー熱利用による就業者数増加によって補って余りある。
【図表5−3
地球温暖化対策による就業誘発効果】
59
〈自然エネルギー利用による就業創出〉
(図表5−4)
自然エネルギー発電および自然エネルギー熱利用によって創出される就業者数は、2020 年目標最大
ケースで、5,558 人との見込みである。
【図表5−4
自然エネルギー利用によって創出される就業者数】
職 種
土木工事
(小水力発電所、地中熱交換井掘削など)
機器設置工事
(太陽光発電機器、地中熱利用ヒートポンプシステムなど)
バイオマス燃料製造
(ペレット、薪など)
機械製造
(太陽熱利用システム、ペレットストーブなど)
発電所運転員
(小水力発電)
機器販売
(太陽光発電、太陽熱利用)
就業者数
2,944 人
1,442 人
423 人
351 人
225 人
173 人
60
おわりに
この提言は、長野県の地球温暖化対策全般を見直し、長期ビジョンや戦略、効果的な政策について助
言するよう、知事からの依頼に基づいて作成された。このため、もっぱら県の政策や取組に対する分析・
意見で構成されている。だが、地域における地球温暖化対策とは本来、行政だけで完結するものではな
く、むしろ行政だけで実現できることは小さい。
なぜならば、地球温暖化対策ではあらゆる地域活動に伴う温室効果ガス排出量を大幅に減少させるこ
とが課題となり、現在と異なる考え方や仕組みが必要とされるからである。すなわち、地球温暖化対策
とは、もはや資源・エネルギーの大量消費が文明発展の象徴でなくなったことを認識し、様々な機会で
資源・エネルギーの消費を大幅に削減し、化石燃料から自然エネルギー利用に転換し、循環型社会の構
築によって資源の浪費を防ぎ、気候変動に伴う影響に備えることなのである。
そのためには、地域の政策から事業活動、「暮らし」の仕方、街の構成・基盤、移動の仕方に至るま
でが大きな転換を遂げ、思想と実践が貫かれる必要がある。地球温暖化対策とは、大量消費に象徴され
る文明のあり方を変え、人はもちろん、生きとし生けるこの「地球の乗組員」皆が支え合う新しい文明
のあり方への大転換を意味する。地球の法(のり)にかなった文明への大転換である。
この大転換の主役となるのは、生活者としての県民一人ひとりである。
「暮らし」の中には、日常の衣食住に関わるものから、自らの預金・資産の運用という行動もあるだ
ろう。「暮らし」での行動は、住宅の中で発生する環境負荷を増減させるだけでなく、地域の他の場所
で発生する環境負荷も増減させる。
また「暮らし」の中には、地域社会への参加を通じた地域づくりも含まれる。それは単に土木工事や
街区形成、インフラ整備を指すのではない。土地利用の変更も、施設の整備も、それ自体が目的ではな
い。地域づくりとは、そこに暮らし、活動し、生業を営む住民の幸せを高める手段である。地域づくり
のあり方次第で、環境への負荷は大きく左右される。
そして、地域に不可欠の要素となるのが住民間の信頼関係のネットワーク、すわなち「ソーシャル・
キャピタル(社会関係資本)」である。低炭素型の地域づくりをするにしても、自然エネルギーによる
コミュニティビジネスを始めるにしても、あるいは気候変動に伴う災害や影響に備えるにしても、基礎
となるのは信頼関係である。
社会の主人公である生活者の、足元の「暮らし」からこそ、この大転換を始めることが望ましい。
とはいえ、地球規模の問題解決で長野県の果たせる役割は極めて小さく、どのような取組も取るに足
らないことだと思う人がいるかもしれない。そのときは、様々な公害対策などの環境政策、自然エネル
ギー普及の仕組み、環境配慮のライフスタイルが、国の「中心」ではなく、地域という「周縁」から生
まれ、他の地域や国、国際社会に影響を与えてきたことを思い起こしてほしい。
地域では、課題が目の前の現実として存在し、関係する人の顔も見え、議会や行政が近くにあり、決
定の仕組みも国よりはシンプルである。自らが課題解決に取り組むことが比較的容易で、課題の解決を
きっかけとして、新しい考え方や政策、スタイルが生まれやすい。新しい試みに挑戦しやすい条件が揃
っているともいえる。
そうした挑戦は知識と経験のかたまりとして、地域を越えて広がっていく。一つの地域で実践される
と、失敗も含めたノウハウや経験が「政策知」として蓄積され、他の地域、国、世界へと広がっていく。
これが政策イノベーションである。
つまり、地球温暖化対策における長野県の役割は、地域を低炭素化し、気候変動に備えることはもち
ろんのこと、政策イノベーションや新たなライフスタイルの創造を通じて、他の地域や国際社会に貢献
していくことも含まれる。
「世界の中での長野県」として、すべての長野県民の挑戦に期待したい。
61
参考資料
【参考資料1】 長野県地球温暖化対策戦略検討会設置要綱・・・・・・・・・・・・・・・・・62
【参考資料2】 長野県地球温暖化対策戦略検討会委員名簿・・・・・・・・・・・・・・・・・64
【参考資料3】 長野県地球温暖化対策戦略検討会タスクフォース構成名簿・・・・・・・・・・65
【参考資料4】 地球温暖化対策戦略再構築事業スキーム・・・・・・・・・・・・・・・・・・66
【参考資料5】 検討経過概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67
【参考資料6】 政策オプション・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71
【参考資料7】 県民からの政策提案の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・97
【参考資料8】 中規模排出事業者の省エネ取組などに関する調査結果・・・・・・・・・・・101
【参考資料9】 中規模排出事業者に対する従業員の通勤交通に関する調査結果・・・・・・・105
【参考資料 10】 地球温暖化対策に係る県民意識・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・106
【参考資料 11】 建築物エネルギー性能評価ツール比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・114
【参考資料 12】 県内自然エネルギー導入量・ポテンシャル・・・・・・・・・・・・・・・・116
【参考資料 13】 家庭のエネルギー消費に関するアンケート結果概要・・・・・・・・・・・・126
【参考資料 14】 温暖化影響評価・適応政策に関する研究状況・・・・・・・・・・・・・・・129
【参考資料 15】 用語集・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・139
【参考資料 16】 参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・143
【参考資料 17】 本文図表一覧・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・150
参考資料1
62
長野県地球温暖化対策戦略検討会設置要綱
平成23年9月8日
(設置)
第1条 これまでの地球温暖化対策全般をより実効性の高い施策に再構築するため、温室効果ガスの削
減目標の設定とそれを達成するための政策手段・手法を検討し、もって地球温暖化対策のさらなる推
進に資することを目的に、地球温暖化対策戦略検討会(以下「検討会」という。)を設置する。
(所掌事項)
第2条 検討会は、次に掲げる事項について協議、検討及び助言する。
(1) 現行の温暖化対策に係る施策の評価及び課題に関すること。
(2) 将来の低炭素社会に向けた社会経済ビジョン及び自然エネルギーに関わるビジョンに関すること
(3) 温室効果ガス排出量の削減目標に関すること
(4) 削減目標を達成するための政策手段・手法に係るオプションに関すること
(5) その他今後講じていくことが必要な温暖化対策に関すること
(組織)
第3条 検討会は、長野県地球温暖化対策戦略再構築事業の委託先である株式会社リサイクルワンが長
野県と協議の上委嘱する委員8名以内をもって組織する。
(任期)
第4条 委員の任期は、平成23年9月8日から平成24 年3月31日までとする。
(座長など)
第5条 検討会に座長を置き、委員の互選により決定する。
2 座長は、検討会を代表し、会務を総理する。
3 座長に事故あるときは、あらかじめ座長が指名する委員がその職務を代理する。
4 委員は、職務上知り得た情報を他に漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
(会議)
第6条 座長は、検討会を招集し、会議を主宰する。
2 座長は、必要があると認めるときは、委員以外の者の出席を求め、その意見若しくは説明を聴き、
又は必要な資料の提出を求めることができる。
3 検討会の会議は、原則公開とする。ただし、検討会において公開が適当でないと認める場合は、そ
の全部又は一部を非公開とすることができる。
(タスクフォース)
第7条 検討会に、特定の事項について調査検討するタスクフォースを置くことができる。
2 タスクフォースの構成員は、調査検討する事項に関連する業務を所掌する部局の長野県職員のうち
別に定める者をもって充てる。
63
(庶務)
第8条 検討会の庶務などは、株式会社リサイクルワンにおいて処理する。
(その他)
第9条 この要綱に定めるもののほか、検討会の運営に関し必要な事項は、座長が別に定める。
附則
この要綱は、平成23年9月8日から施行する。
参考資料2
64
長野県地球温暖化対策戦略検討会委員名簿
所属・役職
NPO 法人環境エネルギー政策研究所 所長
大阪大学大学院法学研究科 教授
慶應義塾大学大学院政策メディア研究科 教授
信州大学工学部 教授
法政大学大学院政策科学研究科 教授
信州大学経営大学院 教授
NPO 法人いいだ自然エネルギーネット山法師 事務局長
国立環境研究所社会環境システム研究センター 主任研究員
氏
名
いいだ
てつなり
飯田
哲也
おおくぼ
のりこ
大久保 規子
こばやし
ひかる
小林
光
たかぎ
なおき
高木
直樹
たなか
みつる
田中
充
ひぐち
かずきよ
樋口
一清
ひらさわ
かずと
平澤
和人
ふじの
じゅんいち
藤野
純 一
(敬称略、50 音順)
参考資料3
65
長野県地球温暖化対策戦略検討会タスクフォース構成名簿
タスクフォース
タスクフォース構成課(室)
産業・民生部門
・総務部(税務課)
タスクフォース
・健康福祉部(健康福祉政策課、医療推進課、地域福祉課、介護
支援室、障害者支援課、こども・家庭課)
・環境部(環境政策課、温暖化対策課)
・商工労働部(産業政策課、経営支援課、ものづくり振興課)
・観光課(観光企画課)
・農政部(農業政策課)
・林務部(森林政策課、森林づくり推進課)
・教育委員会(教学指導課)
運輸・交通・面的部門
・企画部(土地対策室、交通政策課)
タスクフォース
・総務部(税務課)
・環境部(環境政策課、温暖化対策課、水大気環境課)
・建設部(道路建設課、都市計画課)
建築物部門
・環境部(環境政策課、温暖化対策課)
タスクフォース
・林務部(県産材利用推進室)
・建設部(住宅課、建築指導課)
自然エネルギー部門
・企画部(企画課、土地対策室)
タスクフォース
・総務部(税務課)
・環境部(環境政策課、温暖化対策課、水大気環境課、生活排水
課、自然保護課、廃棄物対策課)
・農政部(農業政策課、農業技術課、農地整備課)
・林務部(県産材利用推進室)
・建設部(技術管理室、河川課)
・企業局
適応策部門
・危機管理部(消防課、危機管理防災課)
タスクフォース
・健康福祉部(健康福祉政策課)
・環境部(環境政策課、温暖化対策課、水大気環境課、自然保護
課、環境保全研究所)
・観光部(観光企画課)
・農政部(農業技術課)
・林務部(信州の木振興課)
・建設部(技術管理室、河川課、砂防課)
参考資料4
66
地球温暖化対策戦略再構築事業スキーム
地球温暖化対策戦略検討会
飯田 哲也 NPO法人環境エネルギー政策研究所所長
大久保 規子 大阪大学法学部教授
地球温暖化防止県民計画の改
定や地球温暖化対策条例の改
正等に反映(環境審議会に諮問)
小林 光 慶応大学大学院教授
高木 直樹 信州大学工学部教授
田中 充 法政大学社会学部教授
H24年度
樋口 一清 信州大学経営大学院教授
平沢 和人 NPO法人いいだ自然エネルギーネット山法師事務局長
藤野 純一 国立環境研究所主任研究員
調査・分析結果
法政
等策
の手
素段
々 ・
案手
プア
ウ
ト ト
ッ
助
言
・
提
案
等
※敬 称略・50音 順
温暖化対策の目標案とそれを達成す
るための施策オプションの論点整理
下部組織
産業・民生部門タス クフォース
・総務部 ・健康福祉部 ・環境部
・商工労働部 ・観光部 ・農政部
・林務部
運輸・交通・面的部門タスクフォース
・企画部 ・総務部 ・環境部
・建設部
建築物部門タス クフォース
・環境部 ・林務部 ・建設部
◎主な内容
・有識者からのヒアリング・意見交
換
・関係部局による政策手段・手法等
の検討
◎組織等
・庁内関係部局により構成
・平成23年度中に4∼5回程度開催
※タスクフォースにより異なる
自然エネルギー部門タスクフォース
・企画部 ・総務部 ・環境部
・農政部 ・林務部 ・建設部
・企業局
・各タス クフォースの長は温暖化対
策課長が務める
・各タス クフォースの庶務は、温暖
化対策課が処理
適応策部門タス クフォース
・危機管理部 ・健康福祉部 ・環境部
・観光部 ・農政部 ・林務部
・建設部
連携
ク ールアースWG
(信州クールアース推進調査研究事
業)
参考資料5
67
検討経過概要
〈地球温暖化対策戦略検討会〉
第1回(2011 年9月8日)
県から県政の概要と温暖化対策の現状などについて説明を行った。アウトプットイメージと調査方針
と今後の長野県における温暖化対策の方向性について議論が行われ、県としての目標は県内主体の努力
が反映される範囲とすべきといった意見などが出された。
第2回(2011 年 11 月 18 日)
樋口委員から消費者や企業の自主的取組を促す情報的手法について、藤野委員から低炭素社会シナリ
オを実現するために必要なポイントについて、それぞれプレゼンテーションがなされた。その後、産業・
業務部門に関して集中的な議論の時間を取り、排出抑制計画書制度など長野県の事業者対策などについ
て議論を行った。
第3回(2011 年 12 月 22 日)
飯田委員から中長期における長野県の目標などの提案など、高木委員から事業者対策や建築物対策で
の規制的手法の必要性など、田中委員より緩和策と適応策の両輪での推進の必要性などについて、それ
ぞれプレゼンテーションがなされた。自然エネルギー政策に関する議論では、地域経済の観点、人材育
成、ビジネスモデル支援、地域金融機関との連携などについて議論がなされた。建築物部門に関する議
論では、住宅のエネルギー性能について「見える化」していくことの重要性について議論を行った。
第4回(2011 年1月 27 日)
平澤委員から県主導での普及啓発・人材育成及び経済的手法・規制的手法の活用の必要性など、大久
保委員から全国の自治体の温暖化対策の現状分析と協定制度や規制的手法の必要性など、小林座長から
温室効果ガス削減にとどまらない低炭素社会づくりと条例化の必要性などについて、プレゼンテーショ
ンがなされた。その後、運輸部門、家庭部門、適応策部門について議論を行った。
〈産業・民生部門TF(タスクフォース)〉
大規模排出事業者及び中小規模排出事業所に対する対策に関し、全国の排出量削減計画書制度の動向
や東京都と横浜市の計画書制度などについて学び、長野県における産業・業務部門における温暖化対策
の方向性について議論した。
第1回(2011 年 10 月 14 日)
県温暖化対策課企画幹の田中信一郎より、自治体の気候変動政策のあり方について、①産業・業務部
門における排出抑制計画書制度の実効性強化、②運輸部門における交通環境計画書制度の導入及び事業
者によるモビリティ・マネジメント実施支援、③家庭部門・小規模産業・小規模業務における市町村に
よる省エネ相談実施の支援、④建築部門におけるエネルギー性能評価制度の導入、④自然エネルギー部
門における導入検討制度の導入、支援枠組の構築、再生可能エネルギー法などに関して私見を提示。
第2回(2011 年 10 月 24 日)
東京都環境局都市地球環境部の千田敏排出量取引担当課長などから、東京都の排出総量削減義務・排
出量取引制度と家庭の省エネ診断員制度に関して、ヒアリングを行った。排出総量削減義務・排出量取
引制度などについては、反対意見との調整や合意をいかに円滑にすすめていくのか、対象者事業者に対
して必要な手続をどうわかりやすく伝えていくのかなどがポイントとの説明であった。家庭の省エネ診
断については、事業者と一定期間、合同で試行するなど、協力関係を築いていくことで省エネ診断の質
の統一性や効果の担保を図ることができることがポイントであるとの説明であった。
第3回(2011 年 11 月8日)
68
財団法人電力中央研究所社会経済研究所の馬場健司上席研究員から排出削減計画書制度の全国的な
動向と波及の促進・阻害要因についてヒアリングした。省エネの余地がないと思い込んでいる事業者に
対して、東京都の制度では立入調査を実施し、省エネにつなげることができている。排出削減計画書制
度について自治体ならではの取組としては、指導助言を充実させることが有効であるとの意見が示され
た。
第4回(2011 年 12 月 14 日)
横浜市環境創造局環境影響評価課の越智洋之担当係長(前地球温暖化対策事業本部担当係長)から、
横浜市の地球温暖化対策計画書制度(排出抑制計画書制度)についてヒアリングした。制度強化に際し
て事業者への徹底的な説明を行ったこと、指針に基づいて受理や立入調査を行っていること、調査は3
年計画で一巡していること、制度設計に際して運営による行政コストを十分に勘案したことなど、主に
制度改正に当たっての知見の提供を受けた。
第5回(2012 年1月 13 日)
名古屋大学大学院環境学研究科の竹内恒夫教授から、産業・民生部門における熱需要対策の重要性に
ついてヒアリングした。名古屋市での 2050 年ロードマップ作成を通じて、マイナス 75%が可能である
ことが示された。また長野県を含む中部電力管内の各県が連携し、中部電力に対して熱電供給の推進や
CO2対策推進について働きかけていくべきとの提案が示された。
〈運輸・交通・面的部門TF〉
具体的な事例として富山市のコンパクトシティ戦略、モビリティ・マネジメントについて学び、長野
県としてできる運輸部門の温暖化対策の方向性について議論した。
第1回(2011 年 10 月 14 日)
産業・民生部門TFと合同開催した。
第2回(2012 年1月 16 日)
富山市都市政策課の高森長仁参事から、富山市における公共交通を中心としたコンパクトシティ戦略
と低炭素都市政策についてヒアリングした。コンパクトシティ戦略の基礎にあるのが、人口減少や高齢
化に伴う都市の低密度化と行政コストの増加に対する危機感であることが示された。それを受けて、富
山市が公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりの実現を目指したこと、戦略が公共交
通の活性化・公共交通沿線地区への居住促進・中心市街地の活性化を3本柱とすること、既存の公共交
通を活用しながら機能集約型のまちづくりを進めていることなどの知見が示された。
第3回(2012 年2月6日)
筑波大学大学院の谷口綾子講師から、モビリティ・マネジメントについてヒアリングした。この手法
はコミュニケーションに主眼を置き、自動車を利用する人々に対して公共交通などへの転換を効果的に
促すものであり、それを通じて過度な自動車への依存から脱却していくことを促すものであるとの知見
が示された。またワークショップも行い、長野・須坂エリアを題材に公共交通利用を促進するための手
法について参加者間で議論を行った。
〈建築物部門TF〉
建築物のエネルギー性能評価に関し、その評価ツールである建築環境総合性能評価システム(CASBEE)
やエネルギーパスを活用した施策とその実例のほか、ドイツでの住宅の省エネ化に対する考え方、他県
の建築物環境配慮計画書制度の動向とその効果について学び、長野県での建築物における温暖化対策の
方向性について議論した。
第1回(2011 年 10 月 14 日)
69
産業・民生部門TFと合同開催した。
第2回(2011 年 10 月 27 日)
財団法人建築環境・省エネルギー機構建築研究部の吉澤伸記課長から、自治体版CASBEE(建築
物総合環境性能評価手法)についてヒアリングした。吉澤課長との質疑応答で、エネルギー性能評価に
特化した形では使用できないこと、CASBEEでは評価員の判断による評価であり、規制的手法には
馴染まないことなどが明らかになった。
第3回(2011 年 11 月8日)
産業・民生部門TFと合同開催した。
第4回(2011 年 12 月 21 日)
一般社団法人日本エネルギーパス協会の早田宏徳代表理事および同協会の今泉太爾理事から、ドイツ
のエネルギーパスについてヒアリングした。ドイツでは実証に基づく省エネルギー住宅の技術確立があ
り、その後に性能基準の遵守義務化によって確実な省エネルギー住宅ストックを増やしていったこと、
そのカギとなったのが建築物のエネルギー性能を客観的に示すエネルギーパスであったとの知見が示
された。
第5回(2012 年1月 19 日)
エコセンターNRW(ドイツ)のマンフレッド・ラウシェン(Manfred Rauschen)代表取締役から、ドイツ
の省エネ建築政策についてヒアリングした。ドイツでは新築・既築ともに取引時の建築物に対するエネ
ルギーパス表示が義務化されていること、建物の燃費「見える化」が既築改修に効果をあげていること、
消費者としても住宅のランニングコストの削減効果が分かることなどの知見が示された。また省エネ改
修によって、地元工務店の建設単価が増え、雇用も創出できるという地域経済への相乗効果も期待され
ることが示された。
〈自然エネルギー部門TF〉
地域における自然エネルギー普及政策に関し、永続地帯研究、東京都の需要プルによる再生可能エネ
ルギー政策を学び、国の再生可能エネルギー特別措置法(全量固定価格買取制度)の状況についても把
握したうえで、長野県での自然エネルギー推進策の方向性について議論した。
第1回(2011 年 10 月 14 日)
産業・民生部門TFと合同開催した。
第2回(2011 年 10 月 31 日)
千葉大学大学院人文社会科学研究科の倉阪秀史教授から、永続地帯研究と再生可能エネルギー普及施
策の提案をヒアリングした。木質バイオマスの供給などによる地域への副次的効果もあることから、地
域資本の参加や地方債の活用した施策が重要であるとの意見が示された。
第3回(2011 年 12 月 13 日)
東京都環境局計画調整課の小林省二係長から、都の再生可能エネルギー政策についてヒアリングした。
全量固定価格買取制度を踏まえ、再生可能エネルギーの普及について、補助金だけに頼らない工夫が必
要であること、都の排出量取引制度がグリーン電力証書の市場形成に一定の役割を果たすだろうこと、
再生可能エネルギー設備の導入検討制度が普及を後押しすることなどの意見が示された。
第4回(2011 年 12 月 19 日)
経済産業省関東経済産業局エネルギー対策課の松本めぐみ新エネルギー係長から、再生可能エネルギ
ー特別措置法の詳細についてヒアリングした。東京都環境局都市計画調整課の谷口信雄主任から、地方
自治体に求める地球温暖化対策と自然エネルギー政策についてヒアリングした。谷口主任からは、地域
で再生可能エネルギーを進める意義があること、自治体から発信した政策が国の制度に影響を及ぼす可
70
能性があることなどの意見が示された。
〈適応策部門TF〉
適応策に関し、日本に対する気候変動の影響と適応策及び全国の自治体の温暖化影響適応策の動向と
課題について学び、地球温暖化への適応において、現段階で長野県に必要な取組について議論した。
第1回(2011 年 11 月2日)
茨城大学地球変動適応科学研究機関長の三村信男教授から日本に対する気候変動の影響と適応策、法
政大学大学院政策科学研究科の田中充教授(検討会委員)から全国の地方自治体の温暖化影響適応策の
動向と課題について、それぞれヒアリングした。緩和策と適応策の両輪が政策に必要であること、適応
策は地域が主体になって行われること、避けられない影響に対して後追いに対応するのではなく、地域
戦略に基づいて考える必要があること、気候変動によるネガティブな影響だけではなく、ポジティブな
側面についても検討することが有効であるとの意見が示された。
第2回(2012 年1月 20 日)
国立環境研究所持続可能社会システム研究室の肱岡靖明主任研究員から、気候変動への適応に関する
研究状況と自治体が使える温暖化影響・簡易推計ツールについてヒアリングした。開発中の解析ツール
が完成すれば、温暖化の影響予測を自治体の施策に反映することが容易になること、既存の施策の中で
気候変動の影響やリスクを踏まえることが適応策であること、その際は開発中の適応策ガイドラインを
用いるのが有効であることなどの知見が示された。
参考資料6
71
政策オプション
〈産業・業務部門〉
計画的な削減取組を促進する政策
政 策 排出抑制計画書制度
強化型排出抑制計画書制度
政府・事業者間協定制度
名
概要
排出量が一定規模以上の事業
対象事業者に対して、温室効果 政府が事業者もしくは事業者団
者に対し、温室効果ガス削減の ガスの排出量削減のための計 体と協定を交わし、削減の数値
計画書提出を義務付けるもの。
画書の提出を義務化し、計画書 目標を設定して、事業者が自ら
提出された計画書を行政が市 の提出に当たって、十分な削減 排出量削減を行う。企業の自主
民に公表することで、事業者の 取組ができるように指導・助言を 性を尊重、政府の規制・課税を
取組を促進する。
行うもの。
牽制するための自主協定と、政
府の規制・課税の緩和とセットに
する交渉型協定がある。
導 入 ■国内動向
事例
■国内の動向
■イギリス「気候変動協定」
28 道府県のほか、京都市や横 東京都(2005∼2009 年)、横 野心的な削減目標の達成と引き
浜市などの基礎自治体でも導 浜市、京都市で実施。
換えに、気候変動税の 80%減免
入されている。罰則は、計画書 ■東京都「地球温暖化対策計 が得られる交渉型協定。
や報告書の不提出、虚偽に対 画書制度」
■オランダ「ベンチマーク協定」「長
する勧告・公表。目標達成にお 対象事業者に削減可能な取組
期省エネ協定」
ける取得クレジットの考慮など、 を具体的に選定させて削減目 エネルギー多消費型の企業を対象
多様な工夫がされている。
標を立てさせ、提出に際しては とした「ベンチマーク協定」では、効
具体的にデータによって検証で 率改善の数値目標の達成が義務化
きるような提出資料を合わせて され、目標達成度に応じて、排出量
求めた(例:煤塵測定または定 取引(EU-ETS)での施設割当が増え
期点検記録、冷・温水の設定 る(最大+15%)。中小企業を対象
表、室内の温度・湿度や CO2 濃 とした「第二次長期協定」(2001 年
度の測定結果など)。
∼)では、効率改善の数値目標はな
く、省エネ計画の提出と取組遵守の
義務と協定に参加していない企業は
施設割当が 15%減らされる。
効果
事業者による省エネへの取組み
東京都の場合、事業者が提出し 規制によらず、より高い削減目標
に関する実態把握の精度が高ま た計画書案に対し、専門知識を の設定と達成を促すことができ
り、事業者の取組検討の動機づ 持つ職員がさらなる削減の取組 る。
けとなりうる。
につい て指導・助言を行うこと
で、効果をあげた。
課題
計画書や報告書の受理だけでは 指導・助言などを行う行政側の より高い削減目標の設定を促す
追加的な対策の実施面での実効 執 行 体 制 の 強 化 が 必 要 不 可 交渉プロセスや目標達成に対
性が低い。
欠。
する効果的なインセンティブ方
策が重要。
72
自主的な削減取組を促進する政策
政 策 省エネルギー診断
オフセット・クレジット化支援
優良事業者認定
名
概要
事業者に個別に訪問し、具体的
中小企業でも国内クレジットなど 温暖化対策において優良な事
な省エネ取組とその効果につい を創出できるよう、その取組を支 業者を認定するもの。
て診断を行うもの。
援するもの。
導 入 ■名古屋市「省エネルギー指導 ■京都市「DO YOU KYOTO?ク ■東京都「優良特定地球温暖
員・省エネルギーアドバイザーに レジット」
化対策事業所(トップレベル事
事例
よる省エネ診断」
2011 年度より、「わかりやすさ」 業所)」
省エネルギーの専門知識を有 「取り組みやすさ」「低コスト」を追 地球温暖化対策の推進の程度
す る 者 を 「 省 エ ネ ル ギ ー 指 導 求した京都独自の制度「DO YOU が特に優れた事業所「優良特定
員」、「省エネルギーアドバイザ KYOTO?クレジット」を運営。国 地球温暖化対策事業所」 とし
ー」として委嘱し、省エネの助言 のクレジット制度において対象と て、認定基準に適合すると知事
やアドバイスを無料で実施。省 ならない、またはクレジット化が困 が認めた場合、当該事業所の
エネルギー指導員は、「地球温 難な排出削減事業を対象として 削減義務率を軽減する。トップレ
暖化対策計画書」を届出してい
おり、削減主体は中小企業者の ベル事業所の場合は削減義務
る大規模の事業所を順次訪問
ほかに、家庭、商店街にも広げ 率を 1/2 に、準トップレベル事業
し、省エネルギーをはじめとした ている。クレジットについては市が 所の場合は 3/4 に減少してい
地球温暖化対策の取り組み状 認証を行い、環境共生センター る。
況や設備の管理状況を現場で が実地検証を行うことで担保さ
確認し、より効果的な取り組みな れている。中小事業者の省エネ
どについて、意見交換、助言な を総合的にサポートする民間事
どを行っている。省エネルギーア 業者グループ「低炭素化支援パ
ドバイザーは、「省エネ対策虎の ートナー事業者」に関する登録
巻」を活用して、中規模の店補
制度も実施することで、民間の
を中心に個別訪問し、省エネに 省エネサービス事業者とも協働
ついてアドバイスを行っている。
している。
効果
事業者自身が気づいていなかっ 削減効果に対する経済的インセ 積極的に取組む事業者の差別
た取組を実態に即した内容で提
課題
ンティブとなり、やる気のある中 化を図れる。過去より先進的に
案することで、取組が促進され 小企業の取組を促進できる。
取組んできた事業所の取組を
る。
評価できる。
省エネ診断のできる専門的なス
クレジットの需要側の購入の動 事業者の経営に対し、直接的な
タッフの費用がかかる。
機付けとなる仕組みが必要。認 影響を与えず、効果は限定的で
証などの手続に係る行政コスト ある。実効性を高めるためには、
が多大となる可能性がある。
認定を受けた事業者に実質的
なメリ ッ トを与 える仕組み が必
要。
73
排出量を規制する政策
排出量に経済的負担を課す政策
政 策 排出量規制・取引制度
炭素税
省エネ設備の導入を支援する政策
補助金
名
概要
排出量が一定規模以上の事業
温室効果ガス排出を伴うエネル 省エネや自然エネルギー設備
者に対し、温室効果ガス排出量 ギー消費などに課税するもの。
の 購入費の一部を補助するも
を制限するもの。削減コストを最
の。
小化できるよう排出量を取引す
るための枠組みも同時に整備さ
れる。
導 入 ■欧州連合「EU−ETS」
事例
■スウェーデン「二酸化炭素税」
■愛媛県「愛媛県民間施設者
EUによる排出量取引制度。EU CO2 排出量に比例した燃料利 エネ・グリーン化推進事業補助
の温室効果ガス排出量合計の 用課税。産業部門には免税措 金」
40%となるエネルギー部門や工 置があり、主に地域暖房と輸送 太陽光発電設備、省エネルギ
業部門の1万を超える施設が対 部門に対する施策となっている。
ー冷暖房設備、LEDなど省エ
象。
ネルギー照明設備、二重サッシ
■イギリス「気候変動税」
■東京都「総量削減義務と排 燃料ごとに決められた税率によ
出量取引制度」
る課税。産業部門は 、協定締
対象事業者の過去の排出量か 結、EU-ETS 参加によっては大
ら原則6%の削減を義務化。罰 幅な免除がある。
則は、違反事実の公表、最大 ■ボルダー市(アメリカ)「気候
などの遮熱設備、高遮熱性塗
料などを2つ以上組み合わせて
導入する事業または地域におい
て一体的に整備する事業を行
い、6ヶ月以上継続して現事業
を行っており、県税の滞納がない
50 万円の罰金、都によるクレジ 行動計画税」
事業者に対して補助金を供与す
ット調達費用の請求。グリーン電 市独自のエネルギー税で、電力 るもの。補助率は、補助対象経
力証書や都外クレジットの購入 会社が電力使用量に応じて徴 費の1/3以内で、補助額は1事
による目標達成(後者は購入量 収するもの。財源はすべて市の 業者当たり100万円以上1000
に上限あり)も認めており、都外 気候行動計画に基づく温暖化 万円以下(2011年度予算額 :
への影響を有する制度となって 対策に使われる。
7600万円)
いる。
効果
社会全体の追加コストを最小化 温室効果ガス排出に対し、最も 確実な効果が見込める。
しながら、排出削減できる手法 対象範囲が広く、公平に削減の
(省エネの取組に対して経済的 動機付けできる。また、使途を温
なインセンティブが働く)。
室効果ガス削減にすることで二
重の配当として効果が高まる。
課題
景気動向にも左右されるととも 景気動向にも左右されるととも 十分な効果を得るためには、財
に、経済政策との関連性を考慮 に、経済政策との関連性を考慮 政支出が大きくなる。
する必要がある。
する必要がある。
74
省エネ設備の導入を支援する政策
政 策 税減免
低利子融資促進
利子補給
名
概要
省エネや自然エネルギー設備 金融機関との協働によって、行 省エネや自然エネルギー設備
の購入費額の一部を事業税な
政が認める事業者の設備購入 の導入の際の金融機関からの借
どから控除するもの。
などに対して低利子融資できる 入に対し、利子の当たる額を補
ようにするもの。
助するもの。
導 入 ■東京都 「中小企業者向け省
■愛媛県「環境保全資金融資」
■札幌市 「札幌エネルギーec
事例
エネ促進税制」
中小企業者や中小企業団体を oプロジェクト」(札幌市エネルギ
資本金の額が1億円以下の保
対象として、環境保全に関する ーeco資金融資・補助制度)
資金を低利で融資するもの。利 地球温暖化対策を促進するた
険業法に規定する相互会社を
除く法人で「地球温暖化対策報
告書」を提出している事業者を
対象とし、省エネ設備の取得額
の1/2(上限1千万円)を取得年
度の税額から減免。減免額は当
期税額の1/2を限度(減免しき
れない額は翌年度に繰越可)。
用可能者は、愛媛県内に工場ま めに、札幌市が金融機関、エネ
たは事業場を有し、6ヶ月以上 ルギー事業者と連携して、中小
継続 して事業 を営んでい る者 企業者に対し、機器導入費用の
で、一定の要件を満たしている 無利子融資及び機器導入費用
者 に 対 し て 、 融 資 限 度 額 は の一部を補助するもの。市が提
5,000 万円。期間 10 年以内で 携金融機関に対して利子補給
分割弁済。利率 2.00%。必要な を行うことにより、機器導入費用
保証・担保については、取扱金 を無利子で融資されることにな
融機関(伊予銀行と愛媛銀行)
る。
による。
効果
省エネ設備などを導入した企業 省エネ設備などを導入した企業 補助金と同じように、直接的な
に対する再配分ができる。
の負担が軽減できる。行政コス 経済的利点があり、中小企業に
トも少ない。
課題
とっても分かりやすい。
所得に対する課税の場合、赤字 多くの 利用数が見込 め なけ れ 金利が低くなっている場合、イン
企業が多い場合は利用率が低く ば、金融機関として実施しにく センティブとして小さい。
なる可能性がある。
い。
75
環境に配慮した経営を促進する政策
政 策 環境経営講習
事業者協議会
支援
名
概要
環境マネジメントシステム導入
講演会の実施によって事業者あ 環境経営に取り組む事業者を集 事業者の環境マネジメントシス
るいは団体を温室効果ガス削減 めて、相互の情報交換と連携を テム(EMS)導入を支援するも
活動につき啓蒙するもの。
目的にしたネットワークづくりを行 の。
う場としてつくられるもの。
導 入 ■京都市「事業所向け環境学
事例
■鳥取県「環境推進企業協議 ■広島県福山市「ISO14001 及
習セミナー」
会」
びエコアクション 21 認証取得費
事業所における取組について環
ISO認証取得企業と連携しなが 補助制度」
境やエネルギー管理の担当者
ら、県内の事業所における環境
間で情報交換を行うことで、互
活動の一層の普及を図るため、 ISO14001 およびエコアクション
いの取組や知識を吸収し,事業
「鳥取県環境推進企業協議会」 21 認証取得に対して、予算の
所における環境に関する課題解
を設立。同協議会は企業相互 範囲内で認証取得費用の補助
決の手法などを学び合う取組。
の情報交換、今後環境活動を を実施。補助対象は、市内に事
実際に取組を実施している事業
推進しようとする企業への支援 業所又は事務所を有する中小
所への見学会も行っている。セミ
および行政や消費者と連携した 企業者等で、2011 年度内にす
ナーの終了者に京都市長名の
グリーン購入や環境教育など、 べての手続きを完了することが
修了書を、修了者の所属企業
環境立県に貢献するべく活動し でき、市税を完納していることが
に認定書を授与している。
ている。
中小規模の事業者などによる
条件となる。補助金額は、
ISO14001 は、補助対象経費の
2分の1以内の額(50 万円上
限)、エコアクション 21 は、補助
対象経費4分の1以内の額(10
万円上限)。
効果
事業者が削減活動についての 民間事業者の自主的な取組を ISOなどのEMS導入のインセン
知見を得て、活動を検討する契 促すまたは意識を高める場づくり ティブになる。
機となる。
課題
となる。
関心のない事業者の参加を促 各事業者の排出削減につなが EMSの導入だけでなく、排出削
すのが困難。
るような実質的な活動が展開で 減などの環境効果の達成を促す
きるか、運営が課題。
仕組みも必要。
76
〈家庭部門〉
インセンティブを通じて環境行動を促進する政策
政 策 エコポイント
オフセット・クレジット化支援
省エネ貢献家庭への認定
名
概要
家庭における温暖化対策をポイ 排出量抑制計画制度に反映で 省エネに関する普及啓発をはか
ント化し、家庭に対して、対価を きるクレジットとして企業に買い るため、自ら省エネに取り組む市
配分供与することによってインセ 取ってもらうなど、クレジットの流 民に対して認定を行なうもの。
ンティブを与えるもの。
通を促進するもの。
導 入 ■京都府・京都市「CO2 削減バ ■広島市『市民参加の CO2 排出 ■神戸市「省エネの匠」の認定
事例
ンク」
量取引制度』
夏季(7月∼9月)の電気使用
家庭での省エネや太陽エネル 市民が電気・都市ガス使用量の 量 に つ い て 、 前 年 同 月 比 で
ギー 利用設備の 設置などよる 報告により、CO2 削減分に応じた 15%以上削減した市内の家庭
CO2 排出削減量に応じたエコア お金や地域通貨を、市の設けた を対象に、「省エネの匠」として
クションポイントを 「京都 CO2 削 事務局から受け取る。削減分は 認定する制度を実施。「省エネ
減バンク」が発行し、協力店舗 クレジット化し、事務局が市内企 の匠」に認定されると、オリジナ
などで利用可能とする。削減分
業に売却し、企業は CO2 削減分 ルデザインの「スルッと KANSAI
はカーボン・クレジット化され、府 として削減計画書・実績報告書 カード」による認定証を市から交
内の事業者がカーボンオフセット へ反映することができる。
付される。
に活用できる。
効果
削減分の環境価値をポイント化 企業との連携により家庭の取組 市民に削減インセンティブを与え
して使えるようにすることで、市
にインセンティブを与えることが ることができる。
民に削減インセンティブを与える できる。
ことができる。
商店街などでポイントを使うこと
で、地域経済活性化につなげる
ことができる。
課題
ポイント原資の出所についての クレジット化などの手続にコストを 原資の確保が必要。
仕組みづくりが必要である、
要する。より多くの市民の継続的
な参加を促す工夫が必要。
77
自主的な削減取組を促進する政策
政 策 省エネルギー診断
名
概要
家庭における地球温暖化防止
対策や省エネ機器などの知識を
もった専門家を行政が家庭に派
遣(斡旋)し、省エネ・節電対策
を提案するもの。
導 入 ■東京都「家庭の省エネ診断
員制度」
事例
都が認定した企業・団体(統括
団体)と連携し、家庭の省エネに
関して専門的な知識を有する人
材として都の登録を受けた診断
員を家庭に派遣し、効果的な省
エネ手法をアドバイス(2010 年
度実績 200 件)。
エネルギー供給事業者による家 電力料金などの超過課金による
庭の省エネ推進制度
省エネ推進機関の設置
電力事業者やガス事業者など 電力料金などに超過課金を設
のエネルギー供給事業者に対し け、それを活動資金とし、家庭の
て、家庭部門などにおける省エ 省エネ活動を支援するもの。
ネ ル ギー 措 置 を義 務づ け る も
の。
■イギリス「Carbon Emissions
Reduction Target」
エネルギー法において、5万件
以上の顧客を有するエネルギー
供給事業者に対して、一般家庭
における CO2 の削減の取組を支
援することを要求している。エネ
ルギー供給事業者は、家庭に対
して省エネ機器の設置などの支
援を行う。
■デンマーク「Danish Energy
Saving Trust」
デンマーク気候エネルギー省の
後援の下に独立した機関で、運
輸部門以外の省エネを消費者
と公的部門や事業部門に対して
推進する。当基金は、家庭と行
政が支払う電気料金のうち、
0.006DKK/kWh を特別省エネ
料金として徴収し、その費用で
賄われている。
効果
家庭の自主的な省エネの取組
の効果を高めることができる。
エネルギー供給事業者による専 課金および支援策により家庭の
門家の観点から、家庭でのエネ 省エネを推進可能。
ルギー削減の取組の支援が行
われるようになる。
課題
申込方式の場合には、意識の低 エネルギー供給事業者の理解 低所得者への負担軽減など家
い家庭には助言できない。
を得ることが困難。
庭の理解を得られる仕組みが必
要。
78
自主的な削減取組を促進する政策 情報提供を通じて環境行動を促進する政策
政 策 環境家計簿の普及
省エネ家電ラベル掲示
アイドリング・ストップ掲示
名
概要
家庭で使う電気、ガス、水道、
灯油、ガソリンなどの消費量を
記録し、家庭からの CO2 排出量
を算出。各家庭が自身の環境
負荷を認識することで、無駄な
エネルギー消費の削減に結びつ
けるもの。
エネルギー消費の多い家電製 駐車中の自動車によるアイドリン
品(エアコン・冷蔵庫・テレビな グ・ストップをお願いする掲示を
ど)について、省エネ性能の違い 義務付けるもの。
が一目でわかる評価と、電気料
金を販売店で表示することによ
り、消費者の省エネ意識の向上
と省エネ 製品の 選択を促す も
の。
導 入 ■横浜市「環境家計簿」
2008 年度から、環境家計簿の
事例
普及に取り組んでいる。環境家
計簿リーフレットの配布を区役
所、図書館、市民・区民活動支
援センター、子育て支援拠点な
どで行い、ホームページからもダ
ウンロードできるようにしている。
■東京都「省エネラベリング制 ■大阪府「アイドリング規制」
度」
大阪府では、「生活環境の保全
東京都は、2002 年より、家電製 などに関する条例」で、府外から
品販売店と協力して家電製品 の車も含めた全ての自動車(対
省エネラベルキャンペーンを実 象外あり)の運転者が駐車をす
施し、2005 年7月に環境確保 る場合に、アイドリング停止の責
条例において、家電量販店など 務を課している。また、事業者の
での省エネラベルの表示を義務 使用人などへの原動機停止に
化。(現在、全国省エネラベル 関する指導義務、駐車場の管
協議会が発足し、全国 23 の都 理者に関する周知義務も課して
道府県の地域において実施)
いるが、違反した場合は、知事に
よる勧告がある。
効果
CO2 見える化により、日頃の省 消費者に省エネ情報を提供し、
エネ 行動に対す る意識が高ま 省エネ製品を選択しやすいよう
る。
にすることで、省エネ製品の普
指導義務や周知義務を課すこ
とにより、アイドリング停止への意
識づけを喚起することができる。
及拡大及び技術開発を促進さ
せる。
課題
温暖化防止の取組に積極的で ラベルの対象商品の拡大、消 義務の履行を徹底させることが
ない市民が参加する工夫が必 費者に訴求する分かりやすい表 難しい。
要である。
示が必要。
79
市場メカニズムを通じて
市民の環境意識を高める政策
政 策 環境教育
環境行動を促進する政策
ライフスタイル転換の推進
炭素税
名
概要
市民に開放された環境や地球 エネルギー多消費型ライフスタ 温室効果ガス排出を伴うエネル
温暖化に関する講座などを開催
イルの転換を促すため、商業施 ギー消費などに課税するもの。
し、または環境学習活動をサポ 設の 24 時間営業の見直しや自
ートし、学びの場を作り出すこと 動販売機規制などを行うもの。
で、市民のより深い理解や行動
に結びつけるもの。
導 入 ■横浜市「ヨコハマ・エコ・スク
■京都市「エコ・コンビニみやこ ■スウェーデン「炭素税」
事例
スタイル」
ール(YES)」
1991 年に既存の燃料税(ガソリ
環境・地球温暖化問題に関連 京都市はコンビニエンスストアの ンなど)に上乗せして、新たに二
する講座や事業、情報などを提 深夜営業の禁止を検討していた
酸化炭素税を導入。税率は炭
供す る市民、市民団体、事業 が、業界の反対もあり、断念。一
素含有量に比例しており、産業
者、大学(学校)、行政などが講 方「エコ・コンビニみやこスタイ
用には大幅な減税措置があり、
座などの主催者として「YES協 ル」としてLED照明や天然ガス
主な税負担部門は、輸送部門
働パートナー」に登録し、各所で 配送車の使用、マイボトル・マイ
と地域暖房部門であり、これによ
講座を開催する仕組み。2010 バッグなどの取組を行うコンビニ
っ て燃料転換が促進さ れてい
年度は 298 講座に約 32,000 人
を市庁舎に設置。
る。
が参加。
■軽井沢市
「軽井沢町の善良なる風俗を維
持するための要綱」
要綱で午後 11 時から午前6時
までの間の営業(静穏を損なうよ
うな行為)を禁止。
効果
温暖化対策の重要性を市民に 低炭素型のライフスタイルの実 温室効果ガス排出に対し、最も
認識してもらうことにより、中長期
課題
践を促すことができる。
対象範囲が広く、公平に削減の
的に温室効果ガス削減に対す
動機付けできる。使途を温室効
る社会的土壌を作ることができ
果ガス削減にすることで二重の
る。
配当として効果が高まる。
温暖化対策に積極的でない市 24 時間営業規制などライフスタ 低所得者やエネルギー集約産
民が参加する工夫が必要であ イル変革を求める施策について 業の事業者などの経済的な負
る。
は多角的な検討が必要。
担に配慮する必要がある。
80
〈運輸・交通・面的部門〉
低炭素型街区(エネルギーを効率的に利用する街区)を整備する政策
政 策 地域冷熱供給システムの整備
スマートグリッドの普及
面的対策のための地区指定
名
概要
熱供給設備から配管を通じて温
電力の流れを供給側・需要側双 面的対策を講じていく必要性の
水・蒸気・冷水などを供給し、地 方から制御し、最適化すること 高い地区を指定し、面的対策を
域単位でエネルギーの供給を で、電力使用を抑制したり、自 進めていくもの。
行うもの。
然エネルギーを有効活用したり
するもの。
導 入 ■札幌市真駒内地区「地域熱
■ボルダー市(アメリカ)「スマー ■千代田区「温暖化対策促進
事例
供給」
トグリッドシティ」
地域の指定」
清掃工場から集合住宅や公共
ボルダー市では、4つのスマート
千代田区地球温暖化対策条例
施設へ約4kmの導管を敷設
変電所を配備し、1万5千∼2
に基づき、再開発地区などを温
し、ごみ焼却排熱を主要熱源と
万5千個のスマートメーターを設 暖化対策促進地域に指定し、関
した熱の長距離輸送を行ってい
置し、リアルタイムで機能するス
係者による地域協議会を設置
る。当地区は当初、重油専焼で
マート電力網を構築。
し、中期目標の達成に向け、エ
効果
あったが、熱源に対するごみ焼
ネルギーの面的利用などを進め
却廃熱の依存率は約60%程度
る「アクションエリアプログラム」
となっている。
を策定する。
地域内でエネルギーの高効率 地域でエネルギー需給の最適 地区の関係者が連携した面的
利用を行うことができる。
化を図ることができる。また、今 取組を促進することができる。
後導入が見込まれる自然エネル
ギーの供給を有効活用すること
ができる。
課題
熱輸送導管の設置に大きなコス 現時点では、技術開発は実証 財政面、制度面での支援策を
ト負担がかかる。
段階。スマートメーターの設置、 組み合わせなければ実効性に
ITシステムの構築に大きなコス 欠ける。
トがかかる。
81
交通需要を抑制する政策
政 策 コンパクトシティ
トランジットモール(歩車共存道 大規模集客施設の適正立地
名
路)
概要
市街地の範囲を小さく保ちなが 中心街の通りを、一般の車両通 都市機能の集積動向に大きな
ら、LRTや小型バスなどの公共 行を抑制した歩行者専用の空 影響を与える大規模集客施設
交通や自転車を利用できる範 間とし、バスや路面電車などの の立地を適正な場所へ誘導す
囲を生活圏と捉え、コミュニティ 公共交通機関だけが通行できる るもの。
の再生や住みやすいまちづくりを ようにした街路を設置するもの。
目指すもの。
導 入 ■富山市「公共交通を軸とした ■ミネアポリス市(アメリカ)
事例
コンパクトなまちづくり」
■鳥取県「大規模集客施設立
メインストリートをトランジットモー 地誘導条例」「大規模集客施設
鉄道をはじめとする公共交通の ルとし、バスとタクシーのみを通 適正立地広域ビジョン」
活 性 化 とそ の 沿線 に居 住 ・商 行可として、バス停を約 120m コンパクトなまちづくりの推進に資
業 ・ 文化 な どの 諸機 能 を集 め 間隔で配置している。都心来訪 することを目的として、大規模集
て、街なかや沿線の人口密度を 者は公共駐車場に駐車し、バス 客施設の立地について、立地誘
効果
高める計画(「富山市環境モデ に乗り換えるシステム。
導、事前協議のルール化を図る
ル都市行動計画」)を策定し、計
とともに、地域貢献活動の推進
画を実行中。
を定めるもの。
都市機能の向上と低炭素化を 公共交通機関の利用が促進さ 商業施設の立地を地域全体の
総合的に行うことができる。
れる。
都市機能を考慮して、誘導する
ことができる。
課題
都市整備の財政的な負担が必 周辺道路の渋滞を招く可能性が 出店計画地が不適切な場合の
要である。
ある。
代替地の調整が必要になるな
ど、事業者にとって事業計画上
のコストとなる。
82
計画的な交通需要削減を
交通需要を抑制する政策
促進する政策
政 策 交通流円滑化
運輸事業者を対象とした排出抑 来客者交通計画書制度
名
制計画書制度
概要
公共交通機関の整備、交通量 一定の規模以上の運輸事業者 大規模荷主や大規模集客施設
に関する情報提供、普及啓発を
に対して、温室効果ガス排出量 などの事業者に対し、物流事業
組み合わせて、都市交通の円 削減計画書の提出・公表を求め 者や来客者などの自動車排出
滑化を図るもの。
るもの。
温室効果ガスの排出抑制に対
す る 計画書の 提出 を求 める も
の。
導 入 ■福山市「福山市都市圏交通
■埼玉県「自動車地球温暖化 ■埼玉県「自動車地球温暖化
事例
対策計画」
円滑化総合計画」
対策実施方針」
都市交通の渋滞緩和と環境改 県内で 30 台以上自動車を使用 大規模集客施設で、その用途
善 を 目 的 とし 、 交通 情報 の 提 する事業者に対して、温室効果 面積が1万㎡以上である施設の
供、時差出勤の促進、中心部ル ガス削減計画書によって CO2 の 所有者または運営者に対して温
ープバスの整備などを行なって 削減目標を掲げさせている。低 室効果ガス排出量削減計画書
いる。学校、企業、居住地にお
い削減目標値であった場合は、 の提出を義務付け。
けるマイカー利用の見直しにつ 書類の受け取りの際や事業所訪
いての普及啓発にも力を入れて 問の際に、県職員が個別に質問
いる。
効果
や助言をする。
渋滞の緩和による CO2 排出量を 事業者が自主的な取組につい 事業者が来客者の交通手段に
抑制することができる。
て検討する機会を設けることが ついて検討する機会を設けるこ
できる。自治体が、事業者の取 とができる。自治体が、事業者
組を把握できる。
課題
交通機関や警察など多くの関係
の取組を把握できる。
国の制度に基づく義務以上に、 地域によってはマイカーの代替
者の調整が必要である。渋滞の 追加的な取組を誘導する制度と 手段の導入が困難な可能性が
緩和により交通量が増える可能 はなりにくい。
性がある。
ある。
83
計画的な交通需要削減を
促進する政策
政 策 通勤交通計画書制度
物流の効率化を促進する政策
モーダルシフト
グリーン物流
名
概要
一定の規模以上の事業者に対 トラックや貨物機による輸送を貨 共同配送を行う、ルートの最適
して、従業員の通勤にかかる温 物列車や貨物船による輸送に 化を行うなどにより、物流の効率
室効果ガス排出量削減計画書 代替するもの。
化を図り、運搬に係るCO2 を減ら
の提出を求めるもの。
すもの。
導 入 ■静岡県「自動車通勤などに係
■神戸市「モーダルシフト補助 ■千代田区「グリーン物流シス
事例
制度」
る地球温暖化対策」
テム促進事業」
従業員 1000 人以上で6割以上 神戸港で船舶への揚げまたは積 都外に貨物の集配基地を設け、
がマイカー通勤である事業者に みが行われるコンテナ貨物で、 低公害車トラックによる共同配
対し、3年間の対策計画の提出 輸送時に発生する CO2 排出量 送をすることで、都心への走行
を義務付け。
を削減するため、海上、鉄道、 車両を減らすグリーン物流シス
陸上輸送距離短縮、コンテナラ テムを構築。
ウンドユースによるモーダルシフ
トについて、上限 1000 万円の補
助をするもの。
効果
事業者がノーマイカー通勤の促 物流に伴うCO2の削減につなが 物流に伴うCO2の削減につなが
進について検討する機会を与え る。
る。
ることができる。自治体が、事業
者の取組を把握できる。
課題
公共交通機関が不便な地域で 輸送全体のコストアップや輸送 複数の事業者の協力による、貨
は代替手段がなく、実効性が低 時間の長時間化の可能性があ 物量の確保が必要である。
くなる。
る。
84
自動車利用を抑制する政策
政 策 乗入れ規制
ロードプライシング(道路課金)
パークアンドライド
名
概要
一般車両の地域への乗り入れを 交通量を制限するため、公道利 郊外の駅やバス停に駐車場を
規制し、バス、タクシー、自転車 用を有料化するもの。
整備するなど、パークアンドライ
などでの利用を促すもの。
ド利用を促進するもの。
導 入 ■岐阜県「乗鞍山頂マイカー規 ■シンガポール「ロードプライシ ■フライブルク(ドイツ)
事例
制
ング」
マイカー規制や駐車場整備と同
山頂へ向かう道路におけるマイ 都心部において、料金自動徴 時に、市内の路面電車とバスの
カーの乗り入れを規制し、シャト 収システム(ERP)を導入し、ゲ 全路線を利用できる「環境定期
ルバス、観光バス、タクシー、 ートを通行する際に車載器に課 券」の発行を行なっている。
自転車及び許可車両の通行に 金される方式で料金徴収を行な
限定している。
効果
っている。
一般車両の特定地域への利用 一般車両の特定地域への利用 一般車両の利用を抑制し、公共
を抑制し、公共交通機関の利用 を抑制し、公共交通機関の利用 交通機関の利用を促すことがで
を促すことができる。
課題
を促すことができる。
きる。
代替の公共共通や駐車場の整 利用料徴収のための行政コスト 駐車場の確保が必要となる。
備などと一体的な取組が不可 が高い。低所得者への配慮が必
欠。
要。
85
自動車単体の環境性能を
自動車利用を抑制する政策
政 策 カーシェアリング(自動車共同使
向上させる政策
自転車利用環境整備
EV(電気自動車)などのインフ
ラ整備
名
用)
概要
登録した会員間で特定の自動 自転車専用道を設置し、自転車 EVの充電設備設置などインフ
ラ整備を促進するもの。
車を共同利用するシステムを促 交通の促進を行うもの。
進するもの。
導 入
■京都市「EVカーシェアリン
■ポートランド市(アメリカ)「バイ ■ドイツ「e-mobility」
事例
グ」
クレーン」
電気自動車の公用車7台をカ
ーシェアリング用として貸し出し、
電気自動車の普及と、自家用
車利用の抑制を同時に取り組ん
全国に8つの e-mobility モデル
市内に総延長 400kmのバイク 地区を指定し、2020 年までに充
電スタンド 75 万台の設置を行
レーンを整備し、市バス、市電に
う。ベルリンでは約 500 台の充
おいても自転車の持ち込みを行
電施設を設置。
えるようにしている。
でいる。
効果
不必要な自動車保有を抑制す 都市部において、自動車の利用 航続距離が少ないというEVの
デメリットを解消し、普及を促すこ
ることで比較的必要のない自動 を抑制することができる。
とができる。
車利用を抑制することができる。
課題
隣接住宅が離れている郊外や 物理的にバイクレーンを設けられ 高速充電器の設置コストが高価
農村での利用は困難。
ない道路も多い。新たな道路整 であり、課金システムの確立も
備により、財政的な支出が必要 必要。
となる。
86
自動車単体の環境性能を向上させる政策
政 策 低炭素型自動車の購入支援
名
概要
低炭素型自動車の駐車場料金 購入者への環境性能情報の提
での優遇
供制度
低炭素型自動車(EV、PHVな 低炭素型自動車に対し、公共施 自動車販売者が、新車購入者
ど)への購入支援(補助金)を行 設の利用などを優遇するもの。
に対し、排出ガスなどの環境情
うもの。
報を説明することを行うように促
すもの。
導 入 ■京都府「クリーンエネルギー自 ■神奈川県「有料駐車場の割 ■東京都「環境確保条例」
事例
動車など導入促進対策費補助 引」
自動車販売者に対し、新車販売
金」
EVの使用者に交付される電気 時に、販売する新車の自動車排
京都府内のタクシー事業者、レ 自動車認定カー ド を提示する 出ガス量、燃料消費量、CO2 排
ンタカー事業者がクリーン自動 と、県立施設の有料駐車場で 出量などを記載した書面などの
車を導入する際の補助。EVの 50%程度の料金割引を行う。
場合は上限 60 万円。
備え置き、購入者への書面交
付・説明を義務づけ。
■「環境マイスター認定制度」
日本自動車販売協会東京支部
や神奈川県支部、山形県支部
などが行政やNPOと連携して環
境に対する総合的な知識を持っ
た自動車販売員を配置し、自動
車ユーザーに対して、より環境
負荷の少ない商品を適切に選
択できることを促す仕組み。
効果
購入者に対して、直接的な経済 ク リ ー ン 自 動 車 所 有 者 に 対 し 新車購入者が燃費などの環境
メリットを与えることができる。
て、経済的メリットを与えることが 性能を考慮して購入検討するこ
できる。
課題
とを促せる。
財政的負担が大きく、また補助 民間駐車場の取組を促すため 新車購入時には、必ずしも環境
金がなくなると需要が落ちる可 には、行政による財政的支援な 性能のみで購買の選択が行わ
能性がある。
どが必要。
れるわけではない。
87
自動車単体の環境性能を向上させる政策
政 策 エコドライブ講習
名
概要
自動車税・自動車取得税のグリ 自動車平均燃費規制
ーン化
車両を保有している事業者など 排出ガスや燃費性能の優れた 自動車製造企業ごとに企業平
が、エコドライブを推進するため 自動車税の免除・減免などを行 均の燃費を算定し、その燃費が
の取組を支援するもの。
い、燃費の悪い自動車には税率 基準値を下回らないように義務
を上げるもの。
付けるもの。
導 入 ■神奈川県「運行管理者向け ■国「グリーン化税制」
事例
■ ア メ リ カ 「 CAFE ( Corporate
講習会」
自動車税のグリーン化税制は、 Average Fuel Efficiency)規制」
かながわエコドライブ推進協議 2001 年度に導入され、自動車 ガソリンおよびディーゼルの自動
会(神奈川県トラック協会、神奈 や軽自動車に対して毎年科せら 車を製造している企業すべてに
川県)が運行管理者向けエコド れる自動車税について、ある一 対して米国国内で販売される乗
ライブ講習会を定期的に開催。 定の 環境性能を満た してい れ 用車とトラックについて燃費基準
また、エコドライブ推進マニュア ば、減税される税制。
を定め、それぞれ自社製の平均
ルを公開。
■長野県「低公害車導入に対 燃費を算出し、基準を達成でき
する優遇制度」
なければ罰金が科される。
2007 年から 2008 年にかけて、
国のグリーン化税制に上乗せし
て電気自動車などに対して自動
車税を 25%、低排出車に対して
12.5%、25%軽減。
効果
大きな負担なく実施することが 一定の環境性能を満たす車の 販売される自動車の平均燃費を
でき、さらに燃料費のコスト削減 購入を誘導できる。
確実に下げることができる。
につながることができる。
課題
個別事業者の取組徹底に左右 県で実施する場合は、軽自動 一自治体のみでの義務づけは
される。
車に対応できない。
執行面、制度の実効性の観点
で課題が多い。
88
〈建築部門〉
建築物のエネルギー性能を
建築物のエネルギー性能を
建築物の環境配慮を
規制する政策
表示する政策
促進する政策
政 策 建築規制
建築物エネルギー性能表示制 建築物環境配慮計画書制度
名
度
概要
新築・増改築などの行われる建 新築・増改築などの行われる建 一 定 規 模 以 上 の 建 築 物 を 新
築物に対し、エネルギー性能を 築物に対し、エネルギー性能の 築・増改築などをする建築主に
一定規模以上にすることを義務 評価や表示を義務づけるもの。
対し、建築物の省エネ対策など
づけるもの。
を記載した環境配慮計画書の
提出を義務づけるもの。
導 入 ※ 多くの先進国で建築物のエ ■ イギリス「建築基準法」
事例
■愛知県「CASBEEあいち」
ネルギー性能の最低要求基 すべての建築物の建設、売買、 建築主がCASBEEあいちを用い
準の遵守が義務化されてい
賃貸借時を対象にエネルギー て建築物の総合的な環境性能
る。
性 能 評 価 証 書 の 取 得 を 義 務 を評価した結果を計画書として
■ドイツ「省エネルギー法」
化。
年間一次エネルギー消費量を ■ドイツ「省エネルギー法」
県に提出。
■東京都「東京都建築物環境
指標とした省エネ基準の遵守義 すべての建築物の建設、売買、 計画書」
務。
賃貸借時を対象にエネルギー 建築物の新築・増築を行う建築
■イギリス「建築基準法」
パス取得を義務化。
主は、東京都建築物環境配慮
熱貫流率などの基準値を満たす ■米国カルフォルニア州「グリー 指針が設定する環境配慮の段
設計でなければ、建築許可が下 ン建築物標準」
階に従って、自らの建築物の適
りない。
建築物の 売買・賃貸借に 際し 合度合いを評価し、計画書の作
■ スウェーデン「建築計画法」
て、エナジースター制度に基づ 成と都知事への提出を行うこと
建 築 基 準 に て 建 築 物 の 部 位 く省エネ性能評価結果の提示を を義務づけている。
(床、壁、窓など)ごとに最大熱 義務化。
貫流率を規定。
効果
新増築での高断熱化を確実に
消費者が断熱性能を考慮して 建築主の環境配慮を促すことが
図れる。
建築物を新築、購入することを でき る可能性がある。CASBEE
促すことができる。
課題
では総合的な評価が可能。
建築コスト増につながる可能性 評価を義務化するため、評価に 計画書の提出義務だけでは、エ
があり、段階的な対応が必要。
係るコストの最小化、第三者評 ネルギー性能を向上させるイン
価の仕組み構築、小規模工務 センティブは低い。CASBEE 評価
店でも評価可能なツールの開 では、評価項目が多く(約 80 項
発が必要。
目)時間がかかり、また、エネル
ギー性能を高めるようなインセン
ティブとしては十分でない。
89
環境に配慮した建築を支援する政策
政 策 補助金
技術普及
名
概要
環境に配慮した建築や購入に
住宅づくりにおける地球温暖化
対して、補助金などの財政支援
対策を推進するため、建築主の
を行うもの。
環境に配慮した住宅に対するニ
ーズを喚起するとともに、ニーズ
に対応できる地元工務店などを
養成するもの。
導入
■鳥取県「環境にやさしい木の
■鳥取県「鳥取エコハウス普及
事例
住まい助成事業」
促進事業」
環境保全や地域の産業振興な
地域における地球温暖化対策
どを図るため、「県産材活用住
などの取組の一環として、省
宅」の建設や購入に対して、県
CO2、省エネなど環境負荷の低
産材の使用状況に応じた助成を
減に配慮した住宅づくりを推進す
実施。「CASBEEとっとり戸建」
るため、建築環境総合性能評
の評価結果がAランク以上、「C
価システム(通称CASBEE戸建)
ASBEEとっとり戸建」の重点評
をベースに、①CASBEE戸建評
価項目の得点が 15 点以上など
価員養成講習会②鳥取エコハ
の一定の環境性能を満たす「環
ウス研究プロジェクト③環境にや
境配慮住宅」については、さらに
さしい住まいづくりセミナーを開催
上乗せの助成(1戸につき7万
(2009 年度)。
円)をしている。
効果
対象者に対して、直接的な経済
建築物のエネルギー性能を高め
メリットを与えることができる。
ていく制度との組み合わせで、よ
り効果が高まる。
課題
財政的負担が大きく、また補助
単発のセミナーなどではなく、継
金がなくなると需要が落ちる可
続的に技術力の向上を支援して
能性がある。
いく仕組みづくりが必要。
90
〈自然エネルギー部門〉
エネルギー供給事業者による
エネルギー供給事業者による
自然エネルギー利用を義務付ける政策
自然エネルギー利用を促す政策
政 策 全量固定価格買取制度
固定量買取制度
エネルギー環境計画書制度
名
概要
自然エネルギーによって発電さ 自然エネルギーによって発電さ 供給電力の CO2 排出係数の低
れた 電力などを全量、一定期 れた電力などを一定量もしくは一 減や再生可能エネルギー導入
間、一定価格で買い取ることを 定割合以上買い取ることを電気 拡大に関する計画書および報
電気事業者などに義務づけるも 事業者に義務づけるもの。
告書の提出を義務づけるもの。
の。
導 入 ■ドイツ「固定価格買取制度」
事例
■日本「RPS制度」
■東京都「東京都エネルギー環
制度導入によって再生可能エネ 電気事業者に新エネルギーなど 境計画書制度」
ルギーによる発電が増加し、発 から発電される電気を一定割合 都内に電気を供給している一般
電量の 15.1%を占める。
以 上利 用す る こ と を義務 づけ 電気事業者および特定規模電
2009 年時点での買取価格は、 る 。 2011 年 度 の 義 務 量 は 気事業者に対してエネルギー環
以下のとおり。
13,150 百万 kWh。
・太陽光発電:44.6∼58.1 円
境計画書及びエネルギー状況
報告書を毎年作成、提出させ
/kWh
■イギリス「固定量買取制度の る。CO2 排出係数の抑制と再生
・風力:12.4 円/kWh
オークション方式」
・地熱:14.2∼21.6 円/kWh
再生可能エネルギー電力を証 の向上を目指している。
・バ イオマ ス :8.3∼27.9 円
書価値と合わせて供給事業者
/kWh
にオークション販売。
可能エネルギーによる電力供給
・水力:10.3∼17.1 円/kW
効果
発電事業者にとって経営計画が 導入量の目標設定により一定量 自治体が電気事業者の取組を
立て易く、事業参入や投資が盛 の自然エネルギーの着実な導 把握できる。
んになる。
課題
入が期待できる。
事業収益性を確保する適切な 売電価格が電気事業者との相 電気事業者に対して、国の制度
固定価格の設定がなされなけれ 対取引で決定されることになり、 に基づく義務以上に、追加的な
ば、導入促進につながらない。
発電コストの低い大規模事業が 取組を誘導する制度とはなりにく
優先される。
い。
91
自然エネルギー供給事業を促進する政策
政 策 プラットフォーム
事業検討支援
立地促進
名
概要
自然エネルギーに関わる事業 発電事業者などが事業の検討 発電事業者などが自然エネル
者、市民、NPO、行政、研究機 を行うにあたり、事業可能性調 ギー事業を開始するに当たり、
関などが普及に向けた協力を行 査や事業設計などに係る経費に 行 政 機 関 が規 制 改 革や 補助
う場をつくるもの。知識および技
対して補助を行うもの。
術 を向上 さ せる 講座 など を行
金、情報提供などの面で支援
し、立地促進を行うもの。
い、地域での具体的な普及活
動の担い手を育成する。
導 入 ■環境省「地域主導型再生可
■総務省「緑の分権改革」
事例
国から採択された都道府県およ ルギー振興特区構想」
能エネルギー事業化検討事業」
■岐阜県「環境対応型・新エネ
地域の団体に委託して、地域の び市町村が、再生可能エネルギ 政府の進める「総合特区制度」
関係者の組織化や地域コーディ ーなどの事業化に向けた調査や を活用し、小水力発電に関わる
ネーターなどの人材育成により 実証事業を行う。
規制に関する特例措置を申請し
地域住民の参画による再生可
ている。
能エネルギー事業の立ち上げを
支援している。長野県では、自
然エネルギー信州ネットが受
託。
効果
実践的なノウハウを持つ人材を 地域資源を活かした事業モデル 事業者にとっては、事業化が容
増やすことで、草の根的に普及
の構築や事業可能性の検討を 易になる。産業誘致策の一環と
活動を行うことができる。相互協
推進し、事業化に発展させるこ して、地域経済への貢献を期待
力により、新たなビジネスモデル とができる。
できる。
構築につなげることができる。
課題
ノウハウを持つ人材が具体的な 事業検討結果が他の事業や政 産業誘致の観点からは、小水力
活動できる仕組みづくりが重要。
策立案に活かされるとは限らな 発 電 や 太 陽 光 発 電 事 業 な ど
い。
は、必ずしも大きな雇用を生み
出すとは限らない。
92
自然エネルギー供給事業を促進する政策
政 策 資金調達支援
固定資産税減免
技術開発支援
名
概要
自治体が金融機関、事業者、 自然エネルギー関連事業を進 自然エネルギー関連技術の開
住民と協力しながら、発電事業 めている事業者へ対する固定資 発 や 技 術 実 証 へ の 費 用 の 補
者などの資金調達を支援するも 産税などの減免をおこなうもの。
助、地域の事業者や研究機関
の。
などのコーディネートなどをおこ
なうもの。
導 入 ■静岡県「環境保全資金貸付
■東京都「東京風ぐるま」
事例
化石燃料に依存しない自然エネ オ・プロジェクト」
金利子補給制度」
■岡山県「おかやまグリーンバイ
静岡県と地域金融機関の共同 ルギーの利用促進を図ることを 県・市町村、研究機関、民間企
により、中小事業者の自然エネ 目的とした事業。東京臨海部の 業などが協力して、再生可能エ
ルギー導入を含めた環境保全 埋立地に出力 850kW の風力発 ネルギーを利用した木質バイオ
対策に、長期・低利融資の紹介 電機を 2 基建設し、運転。本事 マス高度利用の技術開発を実
と利子補給を実施。
業は東京都と民間企業による共 施。
■東京都「環境金融プロジェク
同事業で、都は風車建設用地
ト」
の準備および固定資産税の減
23 の金融機関などが参加し、都 免措置を行った。
から金融商品などの開発につい
て要請し、協議を行う「環境ファ
イナンス東京会議」を開催。多
数の機関が関連商品販売など
を実施。
効果
自然エネルギー発電事業者の 事業のキャッシュフロー向上に効 事業者の実験的な取り組みを促
資金調達を円滑にし、事業を進 果が高く、事業化を進めることが すことができる。
めることができる。
課題
できる。
低利融資、利子補給は、金利が 市町村が主体的に取組むことが 支援対象とする技術開発に対
低くなっているため、インセンティ 必要。
する専門性を行政が十分に持っ
ブとして小さい。
ていない。
93
自然エネルギー設備の設置を促進する政策
政 策 設置義務制度
導入検討制度
導入補助金
名
概要
新築の建設物などに対し、一定
新築の建設物などに対し、自然 自然エネルギー設備を導入する
規 模 以 上 の 太 陽 熱 温 水 器 な エネルギー利用設備導入の検 民間事業者などに対して、設備
ど、自然エネルギー利用設備の 討を求めるもの。
導入にかかる費用の一部を助
導入を義務付けるもの。
成するもの。
導 入 ■スペイン「ソーラーオブリゲー ■横浜市「再生可能エネルギー ■宮城県「新エネルギー設備導
事例
ション」
導入検討報告制度」
入支援事業」
建築基準法の一環として、一定 延べ床面積 2000 ㎡以上の建 工場、倉庫、店舗、事務所な
割合の太陽熱利用を義務化。 築物の建築に際し、建築主が再 ど、県内の事業所に新エネルギ
既設建築物の改修においては、 生可能エネルギーの導入につい ー設備を導入する民間事業者
中央政府と地方政府折半の補 て検討し、報告することを求めて などに対して、設備導入にかか
助金が整備されている。
いる。
る費用の一部を助成。補助率
は、一定の補助対象経費の 1/3
以内(上限 1000 万円、太陽光
発電については1kWあたり 20
万円以内)。
効果
需要施設に一定量の自然エネ 建築主が設計段階で検討を行 自然エネルギーの導入を誘導
導入が行われる。自然エネルギ うことで、自然エネルギー導入 することができる。
ー利用設備の市場規模が大きく の可能性が高くなる。
なり、設備コストが下がる。
課題
建築物の設計における自由度を 設計者が自然エネルギーに関 大幅な普及を図る場合、行政の
低下させる可能性がある。
する十分な知識や技術を持って 財政支出が膨大になる。
いるとは限らない。
94
自然エネルギー設備の
設置を促進する政策
自然エネルギーの需要を促進する政策
政 策 需要(設置)サイドへの低金利融 グリーン電力・熱証書化・クレジ 行政による率先導入・グリーン電
名
資
ット化支援
力調達
概要
地域金融機関による太陽光発 自然エネルギー利用によって創 自然エネルギーを公共施設へ
電設備導入への低利融資を促 出されたグリーン電力証書や熱 率先導入、グリーン電力を率先
進するもの。
証書化、取引を活用して自然エ して購入することで、市場形成
ネルギー導入を支援するもの。
を図るもの。
導 入 ■神奈川県「金融機関の太陽 ■東京都「太陽エネルギー導入 ■埼玉県「太陽光発電の率先
事例
光発電設備対象ローン」
促進制度」
導入」
神奈川県が進める太陽光発電 住宅用太陽光発電設備や太陽 県立高校、県営住宅、警察署
普及計画「かながわソーラープ 熱利用設備の導入補助金を交 など 130 施設に設置。発電容量
ロジェクト」の検討を受けて、賛 付した家庭に対しては、当該設 合計は約 2550kWとなってい
同した複数の地域金融機関が、 備による環境価値をグリーン電 る。
太陽光発電設備の購入に対す 力証書・熱証書化し、当該証書 ■東京都「グリーン電力調達」
る無担保・低利のローンを導入。
を東京都が引き取り、取引する 東京都では、電力の入札時の
仕組み。
電力グリーン購入規程として、電
■東京都「グリーン購入ガイド」
力 供 給 の CO2 排 出 係 数 を
グリーン購入品目の一つとして、 0.392kg-CO2/kWh 未満とする
グリーン電力の調達を含めてい と共に、RPS法の新エネルギー
る。RPS法による新エネルギー など電気相当量とグリーン電力
など電力相当量とグリーン電力 証書を合わせて5%以上の環
証書の合計を都の電力予定使 境価値を確保することを定めて
用量の5%以上にすることとして いる。
いる。
効果
多額の初期投資の調達を円滑 自然エネルギー設備導入に関 行政が率先してグリーン電力を
にし、導入を促進する。
する採算性を向上させることが 購入することで、電気事業者の
できる。また自然エネルギー発 自然エネルギー供給を促したり、
電事業者、自然エネルギー熱 グリーン電力証書の市場をつくり
創出者などの採算性を向上させ 出すことができる。
ることができる。
課題
利用者が少ないと金融機関にと グリーン電力・熱証書の取得に 全量固定価格買取制度の導入
って採算が見込めない事業とな コストを要する。証書の市場づく に伴う自然エネルギー電気の環
ってしまう。
りと併せて、取組を実施すること 境価値の帰属先については整
が必要。また熱量計などの設置 理が必要。
など証書の取得にコストを要す
る。
95
〈適応策部門〉
地球温暖化の状況や影響を把握する政策
政 策 モニタリング体制の構築
温暖化影響予測・評価の精度
名
向上
概要
温暖化の進捗や影響をモニタリ 温暖化による地域への影響予
ングするための体制を構築する 測や影響評価を推進するもの。
もの。
導 入 ■国「温暖化影響評価・適応政
■気候変動に関する政府間パ
事例
策に関する総合的研究(S−
ネル(IPCC)
8)」
「気候変動への適応推進に向け
温暖化適応策検討のためのモ
た極端減少及び災害のリスク管
ニタリングについて研究。
理に関する特別報告書」にて、
■長野県「信州・温暖化ウォッチ 極端現象による災害に着目した
ャーズ」
気候変動適応策に関する科学
市民モニタリングの先進的取組 的視点や見解を取りまとめた。
みとして、季節の指標と思われる ■国「温暖化影響評価・適応政
事象の観測日を調査報告する 策に関する総合的研究(S−
「長野県地球温暖化観察特派 8)」
員」による一定期間(概ね5年程 温暖化適応策検討のための影
度)の観察・報告及びデータの 響評価を研究している。
集計・分析を実施(∼2010 年3
月)。県民からの情報提供によ
り、長野県の自然環境への温暖
化の影響を把握。(2011 年 12
月∼)。
96
地球温暖化に適応するための
地球温暖化に適応するための
手法や技術を開発する政策
対策を促進する政策
政 策 対策立案手法の開発と適応策 対策技術の研究開発
リスクコミュニケーション
名
の検討
概要
適応策の立案手法を開発し、具 温暖化による影響に対応するた 適応策の事例など、対策情報の
体的な適応策を検討するもの。
めの技術の研究開発を促進する 提供や そ の 活用を促進す るも
もの。
の。
導 入 ■イギリス「省庁ごとの適応計
■内閣府総合科学技術会議
■農林水産省「品目別適応策
事例
画」(2010 年 3 月)
「気候変動に適応した新たな社
レポート」(2007 年6 月)
■ドイツ「気候変動への適応戦
会の創出に向けた技術開発の
品目別の主な現象に対応する
略のための行動計画」(2011 年
方向性」(2010 年1月)
当面の適応技術、短期・中長期
8月)
気候変動への適応を技術革新
的な研究開発課題などを取りま
■オランダ「国家気候適応・空
や社会変革の機会と捉え、幅広
とめ。
間計画戦略」(2007 年 11 月)
い分野の関係者がイノベーショ
■国土交通省「気候変動に対
■欧州連合「気候変動適応白
ン能力と企業家精神を発揮しう
する具体的な適応策について
書」(2009 年)
る技術開発と社会変革の進む
【事例集】」
気候変動に対する適応力を高
べき方向を提示。
具体 的な適応 策事例集 を公
めるために必要な対策をまとめ、
■農林水産省「農林水産省地 表。
公表。
球温暖化対策総合戦略」
■ルイス市(アメリカ)
(2007 年6月)
自治体としては世界初の防災と 農業生産、森林・林業、水産資
気候変動への適応策の策定プ 源・漁業・漁港などにおける気象
ロセスを統合する行動計画を策 被害などの発生状況を踏まえた
定(2011 年8月)。
適応策、今後の予測研究や技
■環境省「気候変動適応の方
術開発の方向性などを整理。
向性について」(2010 年 11 月)
■都道府県
適応策の立案・実施の手順と計
多くの都道府県立農業試験場
画と対策を例示。S−8にて温
では、農作物への温暖化の影
暖化適応策立案手法を研究。
響やそれに対する栽培方法や品
■長野県「信州クールアース推 種の研究を実施。
進調査研究事業」
参考資料7
97
県民からの政策提案の概要
(1)県民からの政策提案の募集
〈募集概要〉
期間:2011 年 11 月 16 日∼12 月 15 日
方法:長野県ホームページにて募集を行い、電子メール及びFAXにて受付。
件数:24 者からのべ 28 件の提案
(2)政策アイデアの概要
〈制度の創設・改善に関するアイデア〉
事業所における温室効果ガス総量削減義務と排出量取引制度の創設
一定規模のエネルギー排出事業者を対象に、温室効果ガス削減義務を課す。当該事業者は温室効果ガ
ス排出量の算定を行い、計画書の作成及び削減に取り組む。当該事業者は、自らの削減努力に加え、
グリーン電力証書や国内クレジットなどを削減分に活用することができることとする。
地球温暖化防止管理者制度
事業者の温室効果ガス排出削減を管理する責任者を制度化し、設置を義務化する。自動車の安全運
転管理者制度と同様に設置を制度化して、管理者講習会を開催し、出席を義務化する。活動努力の報
告書を提出してもらい、削減優秀事業所の公表・表彰や、税制面でのメリットを与える。
住宅(家庭部門)エネルギー消費量のみえる化によるエネルギー削減
「ふるさと信州・環の住まい」を基本とした高断熱・高気密・パッシブソーラー住宅の指針を策定
し、県民への啓蒙活動を行う。年間消費エネルギー計算システムの構築と届出の義務化を行うと共に、
優良住宅に対する税制や補助金などによる支援を行う。
コンパクトシティづくりによる都市のエネルギー消費量とCO2削減
郊外への拡大を続けてきた市街地エリアを見直し、コンパクトな都市づくりにより、温室効果ガス、
熱、運輸部門のエネルギー消費の削減を図る。県がコンパクトシティの指針を作成し、市町村が温室
効果ガス削減に配慮したまちづくりを行うよう誘導・要請する。50 年程度の長期的なスパンで取り組
んでいく。
温泉地における地下熱利用技術開発の有効性立証実験と普及のための制度整備
温泉熱利用のために事業化や規制緩和などに対する調査を実施する。土地の利用権利や利益配分に
ついてのルール作りを検討する。
〈仕組みの創設・改善に関するアイデア〉
ごみの削減による温室効果ガスの削減
エコポイントの仕組みを活用したごみの削減をする。マイバックを必ず使用させる仕組みを設ける。
子どもたちの将来を守る森林整備
各市町村に森林ボランティア登録窓口や森林教室を設置する。また、森林の林地残材などの循環シ
98
ステムをつくる。
土木工事などにおける間伐材の利用促進と「信州CO2固定情報バンク」の創設
県が発注する公共建築物や公共工事において、県内の間伐材を利用し、森林整備によるCO2固定
化に寄与する。「信州CO2固定情報バンク」を構築し、各地域・分野のCO2固定量を数値化して
情報公開する。
地球温暖化防止対策計画制度(森林所有者の森林整備技術的育成)
森林所有の境界把握や整備技術指導を実施する。県、市町村の連携で詳細に森林の現状調査を行い、
NPO、森林組合などを含めた協議会を設置し、中心となるコーディネーターと共に森林整備を実行
する。
環境マイスター
自動車販売業界として、従業員に環境問題に対する知識を習得させ、一定の知識を有する者を環境
マイスターとして認定する。環境マイスター取得者は、顧客に対してエコドライブの方法や環境負荷
の少ないEV(電気自動車)・PHV(プラグインハイブリッド)などへの買い替えについて普及促
進を行う。
〈事業の創設・改善に関するアイデア〉
家庭用省エネ・自然エネ設備への補助金創設
「家庭用燃料電池コジェネレーションシステム」「家庭用太陽熱給湯器システム」
「高効率給湯器」
についての補助金の創設。
環境対応車補助金制度
温室効果ガス排出量が少ない自動車に対して、県独自の補助金を出す。これにより、県内での環境
対応自動車のさらなる普及を目指す。
減CO2ローン補助事業
太陽光発電施設の導入について、ローン金利の一部を補助することにより、手持ち資金が 100 万円
以下の県民でも設置可能にする。これにより、年間1万基以上の増加を期待する。耕作放棄地への適
用も可能なものとする。
NPOなどへの補助事業
NPOなどの環境保護活動に対する補助。
〈施策の実施・改善に関するアイデア〉
地球温暖化対策アイディアコンテスト
実際的で効果的な温暖化対策について、個人や団体のアイデアを募集し、効果的なアイデアを選出
し、表彰する。受賞アイデアは、実際の政策として採用することを前提とする。
温泉地における住民への分湯を可能とする温泉供給のメーター制システム
県内に豊富に存在する温泉を、ICT技術の活用により有効活用する。温泉供給のメーターシステ
ムを導入し、最新技術による温泉使用量の削減と、余剰温泉量の地域へ供給を実施する。
「わかりやすい〔地球温暖化対策〕の手引きと好適事例」の冊子の発行、及び活用・普及
行政、事業者、消費者、専門家の協力の下で、各部門別に「わかりやすい〔地球温暖化対策〕の手
引きと好適事例」を作成し、公表する。これにより、温暖化対策に疑問・問題を有する現場における
99
現状把握や対策に活用してもらう。
自然エネルギーの活用
事業所や家庭で実用的に使える効果的な自然エネルギーを発見しそれを実現できる設備を考案し
普及させる。一般市民からアンケートによって募集した意見を取り入れる。イベント、学校授業など
を活用し環境に対する意識向上を図る。
外灯に要する電気エネルギーの節約
外灯のセンサーの整備や、適切な保全により、電気消費量を節約する。
二酸化炭素を沢山吸収する木の研究、開発、植林
遺伝子組換えにより、多くの CO2 を吸収する木の研究、開発、植林。
植生利用による温室効果ガス削減事業
NPOなどが森林バイオマスの炭化やエネルギー利用を促進していく。
自給自足が出来る温暖化防止対策
薪ストーブの有効利用により、エネルギーの自給自足と里山管理を実現する。
信州アースキッズ事業(小学生の総合学習を活用した家庭の省エネプログラムの実施)
「地球温暖化の状況とその解決のために自分でできること」を小学校の総合学習において実施。小
学生が自宅のエネルギー使用量をチェック表に記載・結果を取りまとめることで、各家庭のエネルギ
ー使用量を把握する。子どもの省エネ意識の向上から、家庭の省エネリーダーとなり、大人への実践
を促す。
生活様式の転換
省エネ性能を高めたモデル住宅の建設。24 時間タイプの生活様式を夜間活動休止型へと転換。自転
車を安全に気軽に使える環境整備。幼稚園や小学校からのエネルギー教育、自然の中で遊ぶ機会づく
り。
エネルギー実証実験
ソーラーエネルギーでの暖房・給湯システムのデータ収集の実施。
米づくりの一方法「冬季湛水不耕起移植栽培」
米づくりのエコ農法である「冬季湛水不耕起移植栽培」は、トラクターを使用しない。これにより、
稲作におけるトラクターの動力燃料、ガソリンや重油の消費を削減することができる。また、有機物
を鋤き込まないので、メタンガスの発生を抑制できる。
(3)経済関係団体との意見交換
〈開催概要〉
日時:2012 年2月7日(火)
出席者:社団法人長野県経営者協会事務局、長野県中小企業団体中央会事務局、社団法人長野県商
工会議所連合会事務局、長野県商工会連合会事務局(全4名)
長野県:環境部温暖化対策課
〈主な意見〉
100
企業は規制のゆるい場所に行く。政策のあり方は、長野県では大都市のようにはいかないのではな
いか。
運輸関係について支援策があれば、企業は活用する。
24 時間営業店は地方では効率が悪い。10 時とか 11 時で閉店するようにすれば省エネにつながる。
中小企業関係の設備の補助金について、これからも続けてほしい。
(4)県民との意見交換
〈開催概要〉
日時:2012 年2月 14 日
出席者:政策アイデア提案者(全 12 人)
長野県:環境部温暖化対策課
〈主な意見〉
長野県は森林が多いので木材の有効利用が良いのではないか。
手っ取り早い温暖化対策は太陽光発電ではないか。
コンパクトシティのようにするために、高速電車などを導入してみるのが良いのではないか。
現在の子どもたちのためにも人材教育に力を入れるのも有効と考える。
温暖化対策として、自分で出来ることをすることが大事であると思う。
日本の約 65%は森林であることから、森林に目を向け、里山管理が大事であると考える。
現在の生活を維持しつつCO2を削減する対策が必要ではないか。
ペンションは森林の中にあり、冬は暖房費がかかってしまうので、山の資源のファンド活用制度な
どがあれば良いのではないか。
効果が目に見えてこないので、CO2削減や温暖化対策は実感がわかない。
子どもたちへの環境教育が重要であると考える。
県は各部署と連携して温暖化対策に取組ことが大事であると考える。
参考資料8
101
中規模排出事業者の省エネ取組などに関する調査結果
(1)調査概要
長野県内において、業種別に比較的多く温室効果ガスを排出していると想定される中規模事業者(温
室効果ガス排出抑制制度の対象となっている大規模排出事業者を除く)に対し、エネルギーの使用状況
や省エネ・地球温暖化対策に関する取組の状況に関する調査を実施した。留置法によるアンケート調査
である。調査方法の概要は図表参8−1のとおり。また、2012 年2月 20 日現在における回収状況は、
図表参8−2のとおり。
なお、対象の抽出方法としては、調査協力を得られる事業者に限られるため、必ずしも全体的な取組
状況を網羅しているものではない。結果として、省エネルギー・地球温暖化対策に比較的積極的に取り
組んでいる事業者が抽出されている可能性がある。
【図表参8−1 調査方法概要】
項目
調査対象
内容
温暖化対策条例に規定されている大規模排出事業者を除いた、温室効果ガス排
出量が比較的大きいと想定される事業者
①東京商工リサーチに登録されている企業情報を活用し、長野県に本社を持つ事
業者のうち、業種別に 2010 年度の売上高が上位 25 位以上のものをリストアップ
対象抽出方法
する。
②温暖化対策条例に規定されている大規模排出事業者を除く。
③調査員が電話にて調査への協力依頼を行い、調査協力が得られる事業者を調
査対象とする。
①調査員が電話にて調査への協力依頼を行う。同時にFAX、メール、郵送のいず
調査方法
れかにより調査依頼書と調査票を送付し、事前に調査票への記入を依頼する。
②後日、専門の調査員が事業者を直接訪問し、記載された調査票を元にヒアリング
を行いながら、調査票を完成させる。
エネルギーおよびCO2排出量など管理、地球温暖化対策など推進体制
エネルギー使用状況(事業者単位)
調査内容
地球温暖化対策の実施状況(通勤以外)
従業員の通勤状況
ノーマイカー通勤などの通勤に関する地球温暖化対策
長野県の事業者に対する地球温暖化対策施策に関する認知度・評価
目標件数
300 事業者以上(1業種あたり8∼10 程度)
102
【図表参8−2 業種別の事業者訪問・回収件数(2012 年2月 20 日時点)
】
業種
食品
金融・保険業
建設
化学
クリーニング
繊維
電気・ガス・水道
農林・水産
窯業
精密機器
機械
浴場・温泉
不動産
非鉄・金属製品
小売業・飲食店
卸売業
パルプ・紙
輸送用機器
医薬品
電気機器
鉱業
石油
ホテル・旅館
鉄鋼
通信
その他製造業
ゴム
その他サービス業
総計
集計
17
14
12
11
9
9
8
8
8
8
8
7
7
7
7
7
7
6
6
5
5
4
4
4
2
2
2
2
196
(2)調査結果概要
調査結果および調査員の見解を総合すると、次のとおりである。
〈事業者の温暖化対策意識・対策状況〉
調査対象のうち、およそ半数程度が比較的高い温暖化対策の意識の高い事業者であった。
地球温暖化対策に対する意識が高い事業者は、総じて事業規模が大きい事業者であったり、売上げ
に対するエネルギー使用割合が大きい事業者であったりする場合が多かった。取り組む理由として
は、省エネによる経費削減の観点からによるものが多かった。
上記に当てはまらなくても、本業における取引の関係上、環境マネジメントシステムの取得が進ん
でいる業種においても、温暖化対策意識が高い場合が多かった。
業種や事業者規模に関わらず、経営者層が省エネルギーや温暖化対策意識の高い事業者では、取組
103
が進んでいた。
省エネ法におけるエネルギー管理指定事業者になる使用量のボーダーライン手前である場合
(1,500kl(2種)
、3,000kl(1種)
)に、管理指定とならないように省エネ努力をしている場
合があった。同様に、電気使用量が多く、電気使用契約基本料が上がらないように省エネ努力をし
ている場合も見受けられた。
大企業の子会社や関連会社であったりする場合には本社からの指示であったり、業界によっては業
界団体からの指示で温暖化対策に取り組んでいる事業者も存在した。
〈事業者におけるエネルギー使用量や費用の把握状況〉
訪問調査の1∼2週間前にエネルギー使用量の提出を求めてから訪問したところ、70%程度の事業
者は直近のエネルギー使用量は把握し、調査票に記入済みであった。
ただし、調査時に調査員が伝票を求めてその場で集計することにより、ほぼ全ての事業者において
エネルギー使用量を把握することは可能であった。
調査当日まで把握できていなかった事業者は、事業規模が小規模であったり、エネルギー使用量が
少なったりする場合が多かったが、担当が決まっていなかったり、人員に余裕がなかったりする場
合も多かった。
エネルギー使用量や費用として取りまとめ、何らか改善に活かそうとしていた事業者は半数程度で
あった。多くの場合、上述の温暖化対策意識の高い事業者が当てはまった。
エネルギー使用量を把握しているが、自社に活かすことを検討していない事業者では、経理、総務
部門などで事務的に処理しており、担当者しか知らない場合が多かった。またそのような事業者の
場合、他社や他業種と比較することはなく、自社のエネルギー使用量が多い・少ないといった認識
は持っていない場合が多かった。
なお、省エネルギー意識の高い事業者においても、本業に関連の薄いエネルギー消費については関
心が薄い事業者も多かった(例:運輸業における事務所のコスト、製造業における社用車の燃料な
ど)
。
〈調査員の所見〉
調査において、エネルギー使用量を全事業者に求めた結果、初めてエネルギー使用量を把握・認識
した事業者が存在した。本調査中にエネルギー使用量を認識したことで、調査員の省エネアドバイ
スに対しても真剣に耳を傾けることが多かった。
200 社程度訪問した中で、長野県の無料の省エネ診断の受診を希望した事業者が 10 社程度存在し
た。
エネルギー使用量を把握していない事業者においては、費用削減効果のあるような省エネの取組が
十分に取り組まれていない場合が散見された。取り組んでいない要因としては、省エネが経営改善
につながるというイメージを持ってない、人員的な余裕が少なく具体的な取組方法がわからないと
いったものが大きいと想定される。
そのため、まずはエネルギー使用量の見える化ができていない事業者に対して、エネルギー使用量
の見える化を普及させていくことが重要だと考えられる。見える化ができれば、無駄や改善点を明
確に把握でき、省エネに取り組むインセンティブ、説得材料につながると考えられる。
省エネが経営改善につながるといったイメージを広く普及させると同時に、一般的な省エネ手法だ
けではなく、その事業者が取り組める具体的な省エネの取組を事業者に伝えていくと良いと考えら
れる。
104
具体的には、経営者をターゲットにした説明会の開催や個別訪問によるアドバイス・省エネ診断が
効果的だと考えられる。その際には、業種ごとの省エネに関するパンフレットなどを作成して、配
布するとなお良いと考えられる。
業種ごとのパンフレットにおいては、得られるコストメリットを強調し、該当業種では平均何%が
削減できたといったことを伝えると良いと考えられる。
事業者は周囲の事業者の取組については敏感である場合も多いため、省エネに取り組んでいる事業
者を県が積極的に表彰するなどにより、事業者間の省エネの取組を競い合うような土壌を作ってい
くことも重要であると考えられる。
費用対効果の高い取組を積み重ねていった上で、投資回収年数が長い温暖化対策についても取組が
進んでいくものと考えられる。そのような取組を進めるためにも、ごく身近な温暖化事例(長野県
の平均気温が上昇しており、農作物が凶作など)から温暖化対策意識を向上させることも効果的と
考えられる。
事業者から、県の温暖化対策施策を知りたいが、把握できていない場合が多く、周知の方法を検討
してほしいという意見が多く出た。事業者に対するより一層の施策の周知も必要であると考えられ
る。
県や市町村から企業担当者に直接メールなどで情報発信してもらいたいといった意見も2割程度
の事業者から挙げられた。
参考資料9
105
中規模排出事業者に対する従業員の通勤交通に関する調査結果
(1)調査概要
長野県内において、業種別に比較的多く温室効果ガスを排出していると想定される事業者に対し、従
業員の通勤交通に関する調査を実施した。調査方法の概要や調査対象については、図表参8−1と同じ
である。
(2)調査結果概要
調査結果の概要は、図表参9−1のとおりである。
【図表参9−1 中規模排出事業者に対する従業員の通勤交通に関する調査結果】
調査項目
(1) 事業者における従業
調査結果
従業員の通勤手段については、ほぼ全ての事業者が把握している。
員の通勤手段の把握状況
(2) 従業員の通勤手段割
事業者が通勤手段を把握している従業員のうち、82.8%はマイカー通勤であった。
合
(3) 事業者における従業
従業員の通勤距離については、ほぼ全ての事業者が把握している。
員の通勤距離の把握状況
(4) 従業員の通勤距離の
事業者が通勤距離を把握している従業員のうち、6 割以上は通勤距離が 10km 未満
割合
であった。
(5) 事業者による自動車 事業者による自動車通勤者への支援内容については、ほぼ全ての事業者が、支援
通勤者への支援内容
措置があると回答した。その具体的な支援措置として、ほぼ全ての事業者が手当を
支給していた。一方で、駐車場の確保をしていない事業者は、25.0%存在した。
(7) 事業者におけるノーマ
事業者におけるノーマイカー通勤の実施状況については、実施済み・実施中の事業
イカー通勤の実施状況
者は 10.2%であり、実施する意向がある事業者を含めても、18.9%程度に留まった。
(8) 従業員に対するノーマ
従業員に対するノーマイカー通勤の支援状況については、従業員への教育・普及が
イカー通勤の支援状況
最も多く 77.8%であり、公共交通機関の交通費を全額支給している事業者は 50.0%
存在した。
(9) ノーマイカー通勤を実
ノーマイカー通勤を実施するに当たっての課題については、「公共交通機関が不便」
施するに当たっての課題
が 94.8%と圧倒的に多く挙げられていた。また、「従業員の理解が得られない」も
33.9%と比較的多く挙げられていた。
(10) ノーマイカー通勤を
ノーマイカー通勤を実施しやすくなる施策については、運行本数の増加、路線廃止
実施しやすくなる施策
の取りやめ、無料もしくは安価にて利用できる巡回バスを通勤時に運行するなど、公
共交通機関の整備・充実という意見が最も多く挙げられた。
(11) ノーマイカー通勤以 ノーマイカー通勤以外の通勤に関する温暖化対策については、エコドライブやアイド
外で取り組んでいる通勤に リング・ストップの推進など、環境負荷の低い運転方法の導入などが多く取り組まれて
関する温暖化対策
いた。
参考資料 10
106
地球温暖化対策に係る県民意識
(1)調査概要
2012 年3月、長野県民に向けた地球温暖化に関する意識調査を実施した。調査方法の概要は、図表
参 10−1のとおり。
【図表参 10−1
項目
内容
調査対象
20 代以上の長野県在住者
調査方法
インターネットリサーチ
調査方法概要】
1.インターネットリサーチ会社に登録している会員のうち、長野県に
対象抽出方法
在住の会員に対して、調査協力を依頼した。
2.各分類の目標取得票数に到達するまで回答を受け付けた。
年齢層(20 代、30 代、40 代、50 代、60 台以上):5 分類
取得票数
および性別(男性、女性)
:2 分類を掛け合わせた 10 分類において、各
52
実施時期
2012 年 3 月上旬
属性、地球温暖化への関心・配慮行動、長野県の温暖化対策施策の認知
調査内容
度・満足度・情報取得元、温暖化対策への取り組み状況、住宅の選定時
に参考にする情報、自然エネルギー設備設置状況・設置意向、温暖化対
策に対する経済的負担支払い意思額、長野県へ期待すること
107
(2)調査結果
【図表参 10−2 回答者属性】
[Q1]あなたが現在お住まいの地 域を、
以下の中からひとつだけお選びください。
※複 数地域にお住まいの方は、主にお住みの地 域をお選びください。
(n=520)
その他町村
13.7%
長野市
24.4%
松本市
12 .7%
その 他市合計
42.7%
上田市
6.5%
[Q2]あなたの世帯年収(税込)について、あてはまるものをひとつお選びください。
(n=520)
わからない/答えたくな
い
16.5%
1,200万円以上
2.1%
200万円未満
9.0%
1,000∼1,200万円未
満
3.1%
200∼400万円未満
26.7%
800∼1,000万円未満
5.6%
600∼800万円未満
12.3%
400∼600万円未満
24.6%
108
【図表参 10−3
地球温暖化への関心・配慮行動】
[Q3]省エネルギー・自然エネルギー・地球温暖化について、あなたはどの程度関心を持っていますか。
(n=520)
まったく関心がない
1.9%
あまり関心がない
12.7%
非常に関心がある
16.0%
ある程度関心がある
69.4%
[Q4]あなたは、普段の生活の中で、地球温暖化防止のために、どの程度環境に配慮していますか。
(n=520)
まったく配慮していない
2.7%
常に配慮している
9.0%
あまり配慮していない
20.8%
少し配慮している
67.5%
109
【図表参 10−4 長野県の地球温暖化対策施策の認知度・満足度・情報取得元】
[Q5]長野県の、以下の省エネルギー・自然エネルギー・温暖化対策施策について、あなたはどの程度ご
存知ですか。
あてはまるものをそれぞれ1つずつお選びください。
よく知っている
ある程度知っている
(n=520)
あまり知らない
0%
まったく知らない
20%
工場や事務所などの省エネ対策の推進(条例による計画書制度、事業者向
2.7
け省エネ診断、中小企業融資など)
40%
60%
30.8
家庭の省エネ対策の推進(家庭向け省エネ診断、環境家計簿に基づくポイ
6.3
ント交付、テレビなどへの省エネラベルの掲出義務、環境教育など)
48.8
44.0
公共交通機関の利用促進(県下一斉ノーマイカー通勤ウィーク、バス・電車
ふれあいデーなど)
7.5
電気自動車や低燃費車の普及促進(電気自動車のシェアリング、温暖化対
策次世代自動車推進協議会の設置など)
7.1
太陽光発電などの自然エネルギーの導入促進(条例による計画書制度、自
然エネルギー信州ネットへの支援など)
11.0
80%
17.7
36.9
56.2
10.2
30.4
51.0
11.7
26.9
30.2
森林の整備の促進(里山の間伐、森林(もり)の里親促進事業など) 6.0
12.7
26.2
50.8
建築物の環境性能の向上促進(条例による計画書制度、信州型エコ住宅
5.2
への助成など)
11.2
47.5
42.9
100%
17.1
39.0
12.1
[Q6]長野県の、以下の省エネルギー・自然エネルギー・温暖化対策施策について、あなたは満足してい
ますか。
あてはまるものをそれぞれ1つずつお選びください。
(n=520)
満足
やや満足
やや不満
不満
0%
工場や事務所などの省エネ対策の推進(条例による計画書制度、事業者向
1.2
け省エネ診断、中小企業融資など)
判断できない
20%
18.3
40%
21.0
5.4
家庭の省エネ対策の推進(家庭向け省エネ診断、環境家計簿に基づくポイ
1.5
ント交付、テレビなどへの省エネラベルの掲出義務、環境教育など)
24.8
26.3
公共交通機関の利用促進(県下一斉ノーマイカー通勤ウィーク、バス・電車
1.9
ふれあいデーなど)
24.0
27.5
電気自動車や低燃費車の普及促進(電気自動車のシェアリング、温暖化対
2.1
策次世代自動車推進協議会の設置など)
23.8
太陽光発電などの自然エネルギーの導入促進(条例による計画書制度、自
2.9
然エネルギー信州ネットへの支援など)
建築物の環境性能の向上促進(条例による計画書制度、信州型エコ住宅
1.5
への助成など)
森林の整備の促進(里山の間伐、森林(もり)の里親促進事業など) 2.7
26.3
8.1
21.0
39.2
13.8
11.9
21.5
21.2
80%
54.2
25.0
28.7
21.9
60%
32.7
37.1
12.7
8.8
34.2
46.5
7.9
42.1
100%
110
[Q7]長野県の省エネルギー・自然エネルギー・温暖化対策施策について、普段あなたは、どこから情報を
得ていますか。
あてはまるものをすべてお選びください。
(n=520)
0%
20%
40%
100%
5.4
12.3
県のホームページ
37.9
市町村の広報誌
47.7
新聞記事
61.7
テレビ(ニュース・番組)
19.6
テレビ(コマーシャル)
9.4
ラジオ・有線放送
13.3
人伝え(クチコミ)
その他【 】
80%
36.7
広報ながのけん
県作成のパンフレット・リーフレット
60%
2.7
【図表参 10−5 地球温暖化対策への取り組み状況】
[Q8]省エネルギー、自然エネルギー、地球温暖化対策を進めるために、あなたが個人で取組んでいること
は何ですか。
あてはまるものをすべてお選びください。
(n=520)
0%
20%
40%
こまめな省エネ
35.0
29.6
省エネルギー性能の高い家電製品に切替える
給湯器などの設備を高効率なものに切替える
9.8
21.7
住宅の断熱性能を向上させる
9.2
自然エネルギー設備(太陽光発電パネルなど)を導入する
13.7
公共交通機関で移動する
自転車や徒歩で移動する
33.5
10.6
エコカーや次世代自動車(電気自動車など)を購入・利用する
0.8
できるだけ自動車の相乗りをして移動する
その他【 】
特に何もしていない
80%
80.8
LED照明などの高効率照明に取替える
カーシェアリングをしている
60%
7.3
3.1
9.8
100%
111
[Q9]前問で、「特に何もしていない」とお答えの方にお聞きします。
その理由として、あてはまるものをすべてお選びください。
(n=51)
0%
20%
40%
取組の必要性がわからない
60%
80%
100%
27.5
何をすればよいのかわからない
37.3
33.3
公共交通や自転車・徒歩を利用して、安全・容易に移動するのが難しい
省エネルギー性能の高い照明・機器、自然エネルギー設備、エコカーな
どの価格が高い
47.1
その他【 】
15.7
[Q10]あなたが、地球温暖化防止のための取組みを進める(始める)にあたり、
どのようなものがあれば役に立つと思いますか。
あてはまるものをすべてお選びください。
(n=520)
0%
20%
40%
60%
80%
100%
80%
100%
59.8
節電や省エネルギー、自然エネルギーに関する情報
50.0
個々の住宅での具体的な省エネルギーアドバイス
35.8
商品やサービスに関する環境性能の情報
住宅や建物の光熱費やエネルギー性能に関する情報
40.6
5.4
その他【 】
10.4
特にない
【図表参 10−6
住宅の選定時に参考にする情報】
[Q11]あなたが、住宅を新築、購入、リフォーム又は転居をする時に、参考としたい情報は何ですか。
あてはまるものをすべてお選びください。
(n=520)
0%
20%
40%
60%
63.1
初期費用(工事費など)の額
56.3
居住費用(光熱費など)の額
45.0
自然エネルギー(太陽光パネルなど)設備の有無
16.2
長野県産の木材利用の有無
50.8
費用などを比較できる情報
その他【 】
新築、購入、リフォーム又は転居をするつもりはない
1.5
18.7
112
【図表参 10−7 自然エネルギー設備設置状況・設置意向】
[Q12]あなたは、自然エネルギー設備をご自宅に設置していますか。
※自然エネルギー設備とは、太陽光発電パネル、太陽熱温水器、薪ストーブ、
ペレットストーブなど、自然エネルギーを活用する設備のこと。
(n=520)
設置している
12.9%
設置していない
87.1%
[Q13]前問で、「設置している」とお答えの方にお聞きします。
あなたのご自宅に設置している自然エネルギー設備は何ですか。
あてはまるものをすべてお選びください。
(n=67)
0%
20%
40%
60%
太陽光発電パネル
100%
58.2
太陽熱温水器
17.9
25.4
薪ストーブ
ペレットストーブ(おが粉などを小さな円筒状に圧縮成形したものを燃料と
するストーブ)
80%
1.5
その他【 】
11.9
[Q14]前問で、「設置していない」とお答えの方にお聞きします。
その理由として、あてはまるものをすべてお選びください。
(n=453)
0%
20%
19.0
建物が古く、屋根に太陽光パネルを設置できない
8.6
街中で薪ストーブやペレットストーブは使いにくい
初期の設置費用が高い
その他【 】
60%
25.6
集合住宅に住んでいる
設備の使い方がわからない
40%
55.8
4.6
9.7
80%
100%
113
[Q15]Q12で、「設置していない」とお答えの方にお聞きします。
もし、あなたが一戸建ての住宅に住んでいると仮定した上で、前問でお答えになった課題が解決されると
したら、
あなたは自然エネルギー設備をご自宅に設置したいですか。
(n=453)
設置したいと思わない
16.3%
設置したい
83.7%
【図表参 10−8 地球温暖化対策に対する経済的負担支払い意思額】
[Q16]国や自治体が、省エネルギー、自然エネルギーの導入、地球温暖化対策を進めるために、
県民や事業者に経済的負担を求めることも考えられますが、
それに対するあなたの考え方に最も近いものを1つお選びください。
(n=520)
まったく負担したくない
11.2%
かなりの負担(例えば、月
500円超∼1,000円前後
の程度)であっても、まっ
たくかまわない
7.3%
あまり負担したくない
30.8%
ある程度の負担(例えば、
月100円∼500円以下の
程度)であれば、やむを得
ない
50.7%
参考資料 11
114
建築物エネルギー性能評価ツール比較
ツール名
概要
省エネルギー基準
エネルギーパス
■日本における住宅のエネルギー性能基準。基準 ■建築物の冷暖房などによる年間エネルギー消費
遵守の義務化はない。
量の算出ツール。
■住宅の断熱性能を上げることで、段冷房、給湯 ■建築物の年間エネルギー需要を明確にすること
のエネルギー消費を抑制することが目的。
評価項目
が目的。
■性能基準(年間冷暖房負荷の基準値、熱損失 ■冷暖房、換気、給湯、照明などの床面積 1 ㎡当
係数の基準値、夏期日射取得係数)
たりの年間一次エネルギー消費量。
■仕様基準(屋根・天井・壁・床・開口部・土間床
などの熱貫流率と熱抵抗値)
評価方法
■性能基準、仕様基準のいずれかにのっとって設 ■建築物の設計情報を入力し、年間エネルギー需
計されていれば住宅の省エネルギー性能は基準ク 要を算出。計算ソフトあり。
リア。
■評価結果の数値により建物の性能ランクをA∼I
の9つになど級分け。
国内外の 利 ■日本においては、省エネ法に基づき、対象となる ■ドイツでは全ての新築住宅に、年間のエネルギ
用状況
建築物は、年間冷暖房負荷の基準値、熱損失係 ー消費量、CO2 の排出量の表示を義務付ける「エ
数の基準値、夏期日射取得係数などの省エネ基 ネルギーパス制度」があり、現在EU各国でも採用
準に関する項目を含む計画書の届出が義務。
が拡大。
■性能基準は、建築主など及び特定建築物の所 ■石川県庁で試行実績あり。日本エネルギーパス
有者の判断基準として、仕様基準は、設計指針と 協会が日本版ソフトを作成。日本で普及させるた
して利用されている。
めの評価員養成講座を開講予定。
評価の 専門 ■設計図を読めるレベルの人(設計者や現場監督 ■設計図を読めるレベルの人(設計者や現場監督
性
など)であれば評価可能。
効果
■性能基準と仕様基準があり、設計者の事情に応 ■必要なエネルギー量というシンプルな指標により
じ利用可能。
課題
など)であれば評価可能。
解り易い。
■指標がエネルギー消費量ではないため、どれだ ■一次エネルギー消費量という1つだけの指標で
けの省エネになるのか、さらに計算する必要があ は、住まい方によって異なる効果的な対策までは見
る。
出すことが難しい。
115
ツール名
概要
PHPP(Passive House Planning Package)
CASBEE(建築環境総合性能評価システム)
■パッシブハウス条件のための指標を算出するツ
ール。
■1991 年にドイツのパッシブハウス研究所によっ
て確立。
■室内快適性や景観配慮なども含めた建物の総
合的な環境性能評価。
■2001 年に国土交通省が主導で開発。
■優良な建築物のストックを日本に増やすことが目
的。
評価項目
■床面積1㎡当たりの年間一次エネルギー消費量 ■環境品質:室内環境、サービス性能、室外環境
■年間冷暖房負荷
■環境負荷:エネルギー、資源・マテリアル、敷地
■気密性能
外環境
評価方法
■建築物の設計情報を入力し、評価項目を算出。 ■評価者が項目ごとにレベル1∼5で評価し、重
PHPPソフトあり。
み係数を乗じた合算値で最終的にS、A、B+、B
-、Cにランク付け。
■エネルギー評価は、省エネルギー基準のレベル
を下にレベル付け。
国内外の 利 ■ドイツなどでは、パッシブハウス基準として、PH ■自治体により所管行政庁への届出義務がある。
PPソフトによって算出された指標が一定の基準以
用状況
下の場合、認定機関より認定証を付与され、補助
金などの対象となる。
■ドイツでは 2020 年にパッシブハウス基準のレベ
ルのエネルギー性能基準が導入される予定。
■日本ではPHPPを基にした計算ソフト「住宅燃費
ナビ」として販売されている。
評価の 専門 ■設計図を読めるレベルの人(設計者や現場監督 ■主観的な評価ポイントが多いため、判断基準を
など)であれば評価可能。
性
身につけるための研修が必要。
効果
■補助金の対象基準としての活用が可能。
■建築物の環境性能評価の結果を統合的に示す
ことが可能。
課題
■一次エネルギー消費量という1つだけの指標で ■評価項目が多く(約 80 項目)、評価コストが大き
は、住まい方によって異なる効果的な対策までは見 い。
出すことが難しい。
■評価者によって結果が異なる。
■評価基準が数年で更新される。
■エネルギーなど特定の部分での評価に利用不
可。
参考資料 12
116
県内自然エネルギー導入量・ポテンシャル
(2012 年3月 13 日までの調査)
導入量
(1)自然エネルギー導入量
〈電力〉
設備数
太陽光発電
小水力発電
(30,000kW 以下)
設備容量の合計
97,869kW ・平成 22 年度市町村アンケート。
・平成 22 年度設置分は、太陽光発電普
及拡大センターの補助件数。
658,938kW ・ 「 包 蔵 水 力 」 ( 経 済 産 業 省 ) よ り
30,0000kW 以下の流込方式の水力発電
設備。
・関係団体へのヒアリング(2 箇所追加)
・県農政部把握分(7 箇所追加)
1,475kW ・平成 22 年度市町村アンケート。
・メタンガス発電を含む。
0kW ・平成 22 年度市町村アンケート。
25,563 箇所
130 箇所
バイオマス発電
3 箇所
地熱発電
0 箇所
風力発電
44 箇所
データ根拠
666kW ・平成 22 年度市町村アンケート。
〈熱利用〉
設備数
太陽熱利用
バイオマス熱利用
地中熱利用
データ根拠
21,449 箇所 ・住宅向けは、過去 15 年間の販売量。ソーラーシステム販売事
業者にヒアリングの合計。
・非住宅は、平成 22 年度市町村アンケート。
15,231 箇所 ・平成 23 年度市町村アンケート
・ペレットストーブは県林務部把握台数。
・住宅の薪ストーブは県林務部推計値。
5 箇所 ・平成 23 年度市町村アンケート
・地中熱利用促進協会
(2)その他の再生可能エネルギーの導入量
〈電力〉
設備数
一般水力発電
設備容量
データ根拠
42 箇所
994,240kW
4 箇所
4,954 kW
廃棄物発電
・「包蔵水力」(経済産業省)より揚水発
電と 30,0000kW 以下の流込方式を除
いた水力発電設備。
・発電設備容量の合計に長野市と松本
市の平均バイオマス比率を乗じ、バイオ
マス分の設備容量とした。
〈熱利用〉
設備数
データ根拠
8 箇所 ・平成 23 年度市町村アンケート
廃棄物熱利用
バイオマス由来
廃棄物熱利用
8 箇所 ・平成 23 年度市町村アンケート
〈液体燃料〉
設備数
BDF
年間生産量
9 箇所
データ根拠
61,366L ・設備所有者にヒアリング。回答した 7
箇所の平成 22 年度の生産量合計。
117
自然エネルギー導入導入量計算書
1.主な自然エネルギーの導入量
1-1 電力
1-1-1 太陽光発電
〈住宅〉
平成 20 年 12 月まで・・・県がとりまとめていたデータ:17,315 戸 平均設備容量 3.678kW/戸
平成 21 年 1 月∼平成 23 年 3 月・・・太陽光発電普及拡大センター(JPEC)のデータ
平成 21 年 1 月∼平成 22 年 3 月 64 戸
平均設備容量 4.23kW/戸
平成 21 年 4 月∼平成 22 年 3 月 2,929 戸
平均設備容量 4.06kW/戸
平成 22 年 4 月∼平成 23 年 3 月 5,880 戸
平均設備容量 4.19kW/戸
〈非住宅〉
平成 23 年度市町村アンケートより:556 件 合計設備容量 8,392kW
1-1-2 小水力発電(30,000kW 以下・流込式)
「包蔵水力」
(経済産業省)より 30,0000kW 以下の流込方式:121 箇所
658,193kW
関係団体へのヒアリング:2 箇所追加 740kW
県農政部把握分:7 箇所追加 4.8kW
1-1-3 バイオマス発電
平成 23 年度市町村アンケートより:3 箇所
1,475kW
1-1-4 地熱発電
平成 23 年度市町村アンケートより:該当無し
1-1-5 風力発電
平成 23 年度市町村アンケートより:44 箇所
666kW
1-2 熱利用
1-2-1 太陽熱利用
〈住宅〉
過去 15 年間の販売量。
平成 16 年 1 月∼平成 23 年 3 月 ソーラーシステム振興協会:16,605 戸
平成 8 年 1 月∼平成 15 年 12 月 メーカーヒアリング:4,803 戸
合計 21,408 戸 集熱器面積は、1 戸平均 3m2 と仮定し、64,224m2。
〈非住宅〉
平成 23 年度市町村アンケートより:41 箇所
集熱器面積 6,125m2
1-2-2 バイオマス熱利用
〈ペレットストーブ・ボイラ〉
県林務部把握のペレットストーブ台数:学校 292 台、公共施設 335 台、個人 621 台(合計 1,248
台)
118
平成 23 年度市町村アンケートより:ペレットボイラ 6 台
1-2-3 薪ストーブ・ボイラ
県林務部試算値: 住宅の薪ストーブ 14,000 台
平成 23 年度市町村アンケートより:非住宅の薪ストーブ・ボイラ 7 台
1-2-4 地中熱利用(温泉熱利用含む)
平成 23 年度市町村アンケートより:3 箇所
地中熱利用促進協会の実例リストより:2 箇所
2.その他の再生可能エネルギーの導入量
2-1 電力
2-1-1 一般水力発電
「包蔵水力」
(経済産業省)より揚水発電と 30,0000kW 以下の流込方式を除いた水力発電設備:
42 箇所
994,240kW
2-1-2 廃棄物発電
平成 22 年度市町村アンケートより:4 箇所
発電設備容量 8,270kW
バイオマス比率については、平成 22 年度の長野市と松本市の平均バイオマス比率(それぞれ、68%、
53.8%)をそれぞれの年間処理量(97,311 t、80,996t)で加重平均したバイオマス比率 59.9%を乗
じ、4,954kW。
2-2 熱利用
2-2-1 廃棄物熱利用
平成 23 年度市町村アンケートより:8 箇所
2-2-2 バイオマス由来廃棄物熱利用
・平成 23 年度市町村アンケートより:8 箇所
2-3 液体燃料
2-3-1 BDF
平成 22 年度市町村アンケートより:9 箇所
生産量は、設備所有者にヒアリング。回答のあった 7 箇所の平成 22 年度の生産量合計:61,366L
119
自然エネルギーのポテンシャル
〈発電〉
設備容量
太陽光発電
計算条件
3,538 千 kW
3,088 百万 kWh
住宅
1,953 千 kW
非住宅
1,585 千 kW
1,759 百万 kWh 戸建住宅の 95%に 3kW システム、
集合住宅の 80%に 10kW システムを
設置。
1,329 百万 kWh 環境省平成 22 年度ポテンシャル調
査より(耕作放棄地は除く)
4,916 百万 kWh 発電容量 30,000kW 未満
小水力発電
合計
年間発電量
合計
河川部
866 千 kW
837 千 kW
農業用水路
10 千 kW
未利用落差
19 千 kW
バイオマス発電
4,766 百万 kWh 環境省平成 22 年度ポテンシャル調
査より
57 百万 kWh 環境省平成 22 年度ポテンシャル調
査より
93 百万 kWh 経済産業省平成 20 年度中小水力
開発促進指導事業基礎調査(未利
用落差発電包蔵水流調査)より*
48 千 kW
381 百万 kWh
ボイラ発電
35 千 kW
メタンガス発
13 千 kW
279 百万 kWh 長野県バイオマス総合利活用マスタ
ープランの資源発生量より算出
102 百万 kWh 長野県バイオマス総合利活用マスタ
ープランの資源発生量より算出
電
地熱発電
599 千 kW
風力発電
300 千 kW
3,673 百万 kWh 環境省平成 22 年度ポテンシャル調
査より
131 百万 kWh 環境省平成 22 年度ポテンシャル調
査より
合計
5,351 千 kW
12,189 百万 kWh
* 報告書でリストアップされている水力のうち、長野県内の未開発の河川維持用水、利水放流水、農業用水、砂防え
ん堤を利用した水力発電の合計。
〈熱利用〉
設備箇所数
太陽熱利用
年間利用熱量
575,100 箇所
計算条件
8,195TJ すべての戸建住宅で利用。
バイオマス熱利用
―
13,816TJ
薪・ペレット
―
直接燃焼
―
メタン発酵
―
1,805TJ 長野県森林づくり指針のチップ用・バ
イオマス用生産量の目標から算出。
10,618TJ 長野県バイオマス総合利活用マスタ
ープランの資源発生量より算出
1,393TJ 長野県バイオマス総合利活用マスタ
ープランの資源発生量より算出
3,667TJ すべての集合住宅と商業施設の暖
房・給湯需要で利用。
地中熱利用
29,450 箇所
合計
―
28,152TJ
〈液体燃料〉
設備容量
BDF
45,000L/日
年間生産量
計算条件
13,400kL 耕作放棄地すべてでナタネ栽培を行
い、BDF 生産した場合。
120
自然エネルギー導入ポテンシャル計算書
1.発電
1-1 太陽光発電
設置する場所で住宅と非住宅に分け、住宅設置のポテンシャルは、住宅戸数の一定割合に設置され
た場合と仮定し、非住宅設置のポテンシャルは、環境省の平成 22 年度再生可能エネルギーポテン
シャル調査の結果を用いて求める。
結果のまとめは、以下のとおり。
設備容量
年間発電量
住宅
1,953 千 kW
1,759 百万 kWh
非住宅
1,585 千 kW
1,329 百万 kWh
合計
3,538 千 kW
3,088 百万 kWh
1-1-1 住宅の PV 導入可能量
〈計算条件〉
戸建住宅の 95%(5%は日照条件が悪い環境と仮定)に 3kW(設置面積 9m2)を設置。
共同住宅と長屋の 80%(20%は屋上や壁面が他の用途で利用できない)と仮定に 10kW(設置面積
30m2)を設置。
総務省 H20 住宅土地統計より、長野県の一戸建て 575,100 軒、共同住宅 27,400 軒、長屋 11,900 軒。
稼働率は、
環境省 H22 年度再エネ導入ポテンシャル調査の非住宅 PV の平均稼動率 10.28%を採用。
〈計算〉
戸建て:575,100 軒×3kW×95%=1,639 千 kW
共同住宅及び長屋:
(27,400 軒+11,900 軒)×10kW×80%=314 千 kW
⇒設備容量:1,639 千 kW+314 千 kW=1,953 千 kW
年間発電量:1,953 千 kW×24 時間×365 日×10.28%=1,759 百万 kWh
1-1-2 非住宅の PV 導入可能量
平成 22 年度再エネ導入ポテンシャル調査報告書(環境省)の長野県の太陽光発電ポテンシャルの
うち、耕作放棄地を除いたポテンシャルを採用し、設備容量 1,585 千 kW、年間発電量 1,329 百万
kWh。
1-2 小水力発電
未利用落差、河川、農業用水の 3 つの設置場所ごとにポテンシャルを求めた。
河川と農業用水については、平成 22 年度再エネ導入ポテンシャル調査報告書(環境省)の長野県
の水力発電ポテンシャルのうち、設備容量 30,000kW 未満の水力発電を対象とした。
未利用落差については、平成 20 年度中小水力開発促進指導事業基礎調査(未利用落差発電包蔵水
力調査)報告書(財団法人新エネルギー財団)より、既存構造物(ダム、水路)における遊休落差
や余剰水圧(未利用落差)を利用した包蔵水力のリストから長野県所在で 30,000kW 未満のものを
ピックアップした。
結果のまとめは、以下のとおり。
121
設備容量
年間発電量
河川部
837 千 kW
4,766 百万 kWh
農業用水路
10 千 kW
57 百万 kWh
未利用落差
19 千 kW
93 百万 kWh
合計
866 千 kW
4,916 百万 kWh
1-2-1 河川部
〈計算条件〉
平成 22 年度再エネ導入ポテンシャル調査報告書(環境省)より長野県の河川部における設備容量
10,000kW 未満のポテンシャルは、合計で設備容量 837 千 kW。
年間発電量の計算においては、環境省 H22 年度再エネ導入ポテンシャル調査報告書で、小水力の設
備稼働率を 65%で仮定して、事業採算性を計算しており、この稼働率を採用。
〈計算式〉
年間発電量:837 千 kW×24 時間×365 日×65%=4,766 百万 kWh
1-2-2 農業用水路
〈計算条件〉
平成 22 年度再エネ導入ポテンシャル調査報告書(環境省)より長野県の農業用水路におけるポテ
ンシャルは、合計で設備容量 10 千 kW。
年間発電量の計算においては、環境省 H22 年度再エネ導入ポテンシャル調査報告書で、小水力の設
備稼働率を 65%で仮定して、事業採算性を計算しており、この稼働率を採用。
〈計算式〉
年間発電量:10 千 kW×24 時間×365 日×65%=57 百万 kWh
1-2-3 未利用落差
〈計算条件〉
平成 20 年度中小水力開発促進指導事業基礎調査(未利用落差発電包蔵水力調査)報告書より、長
野県所在の未利用落差のまとめは、以下のとおり。
出力(kW)
発電電力量(MWh)
河川維持用水利用(未開発)
1,917
10,917
利水放流水利用発電(未開発)
14,890
71,740
農業用水利用発電(未開発)
606
2,920
砂防えん堤利用発電(未開発)
1,614
7,777
合計
19,027
93,354
*平成 20 年度中小水力開発促進指導事業基礎調査(未利用落差発電包蔵水力調査)報告書のうち農業用水路
は、環境省再生可能エネルギーポテンシャル調査と重複するため、合計に含めない。また、上下水道は、ポ
ンプアップされた水力も含まれるため自然エネルギーポテンシャルから除く。
1-3 バイオマス発電
バイオマス発電は、含水率の比較的低いバイオマスをボイラ発電(ボイラ−蒸気タービンプロセス)
122
にて、含水率の比較的高いバイオマスをメタンガス発電(メタン発酵−内燃機関発電プロセス)に
て発電する想定とする。
家畜排泄物(発生量 1,1142,000t)については、牛糞尿及び豚糞尿はメタンガス発電、鶏糞はボイ
ラ発電とすることから、その内訳については、県資料(畜産課調べ)の県内家畜排泄物の発生量(平
成 13 年)の家畜別の排泄物の割合(牛 74.6%、豚 19.6%、鶏 5.5%)から算出。
結果のまとめは、以下のとおり。
設備容量
年間発電量
ボイラ発電
35 千 kW
279 百万 kWh
メタンガス発電
13 千 kW
102 百万 kWh
合計
48 千 kW
381 百万 kWh
1-3-1 ボイラ発電
〈計算条件〉
・長野県バイオマス総合利活用マスタープランより、各種バイオマスの年間発生量は、稲わら 240,231t、
もみがら 41,731t、果樹剪定枝 71,409t、木質(間伐材等)245,200t。また、鶏糞は、家畜排泄物 1,142,000t
のうちの 66,236t(5.8%)
。
・間伐材等、木くず、果樹剪定枝、もみがら、鶏糞については、「バイオマスエネルギー量の推計方法
(改訂版)」
(2009 NEDO)の発熱量を用いる。
・稲わら及びきのこ廃培地については、その含水率を稲わら:0.3、きのこ廃培地 0.5、乾燥物の発熱量
を 4,500kcal/kg と仮定して計算する。
・設備容量は、稼働率 0.9 と仮定し、割り戻して算出する。
〈計算式〉
ボイラ発電の合計:169,198kWh+109,378kWh=278,576kWh
設備容量:278,576kWh÷0.9÷365 日÷24 時間=35,334kW
1-3-3 メタンガス発電
〈計算条件〉
長野県バイオマス総合利活用マスタープランより、各種バイオマスの年間発生量は、家畜排泄物
1,142,000t、動物性残渣 99,094t、生ごみ 288,210t。家畜排泄物の内訳は、牛 851,932t(74.6%)、
豚 223,832t(19.6%)。
各バイオマスのメタンガス発電の発電量に必要なデータは、「バイオマスエネルギー量の推計方法
123
(改訂版)
」
(NEDO 、2009)の有機物分解率及びガス発生量等を用いる。
下水道等汚泥については、含水率等の含水率等の性状が不明なため、算出しない。
設備容量は、稼働率 0.9 と仮定し、割り戻して算出する。
〈計算式〉
設備容量:101,826kWh÷0.9÷365 日÷24 時間=12,916kW
1-4 地熱発電の年間発電量
〈計算条件〉
平成 22 年度再エネ導入ポテンシャル調査報告書(環境省)より長野県の地熱発電ポテンシャルは
599 千 kW。
一般的に地熱発電の設備利用率は、70%以上と言われており、ここでは稼働率 70%を用いる。
〈計算式〉
599 千 kW×24 時間×365 日×70%=3,673 百万 kWh
1-5 風力発電の年間発電量
〈計算条件〉
平成 22 年度再エネ導入ポテンシャル調査報告書(環境省)より長野県の風力発電ポテンシャル 300
千 kW。
年間平均風速 5.0m/s のウインドファーム立川(山形県立川町)の実績設備利用率 4.8%
(100kW 基)
、
5.7%(400kW 基)から鑑み、平均風速 5.5m/s 以上の風力発電設備における平均設備利用率を 5%
と仮定。
〈計算式〉
長野県の風力発電ポテンシャル 300 千 kW×24 時間×365 日×5%=131 百万 kWh
2.熱利用
2-1 太陽熱
〈計算条件〉
戸建住宅の 95%(5%は日照条件が悪い環境と仮定)に標準規模 3m2 を設置。
長野県内での平均的な年間集熱量を 15,000MJ(ソーラーシステム製造販売事業者ウェブサイトよ
り)とする。
総務省 H20 住宅土地統計より、長野県の一戸建て 575,100 軒。
〈計算式〉
575,100 軒×0.95×15,000MJ/年=8,195TJ/年
2-2 バイオマス熱利用
バイオマス熱利用については、薪やペレットのストーブやボイラでの熱利用、薪やペレット以外の
124
直接燃焼での熱利用、メタン発酵による熱利用に分けて、ポテンシャルを算出する。
2-2-1 薪やペレットのストーブやボイラでの熱利用
〈計算条件〉
製材所木屑に関しては、今後、木材乾燥等による所内利用が進むことから、製材所外での利用はな
いものとする。
「長野県森林づくり指針」
(長野県、平成 22 年)のチップ用・バイオマス用生産量の目標量(217
千 m3)から算出。
薪の主な樹脂であるナラ及びペレットの主な樹種であるカラマツ、アカマツのうち、素材体積(m3)
当たりの発熱量が低いカラマツ(J-VER デフォルト値:容積密度 0.404dry-ton/m3×単位発熱量
20.6GJ/dry-ton=8.32GJ/m3)の単位熱量を採用。
ペレット製造における歩留まりは、100%と仮定。
〈計算式〉
県のチップ用・バイオマス用生産量の目標量 217 千 m3×カラマツ 8.32GJ/m3=1,805TJ
2-2-2 バイオマス熱利用(直接燃焼)
〈計算条件〉
バイオマス発電(ボイラ発電)のポテンシャル計算で得た 11,798TJ(バイオマス発熱量から計算し
た分 7,166TJ と含水率から計算した分 4,632TJ の合計)にボイラ効率 90%(
「バイオマスエネルギ
ー量の推計方法(改訂版)
」
(2009 NEDO)より)を乗じて算出。
〈計算式〉
11,798TJ×0.9=10,618TJ
2-2-3 メタン発酵
〈計算条件〉
バイオマス発電(メタンガス発電)のポテンシャル計算で得た 1,466TJ に効率 95%(潜熱回収型給
湯器)を乗じて算出。
〈計算式〉
1,466TJ×0.95=1,393TJ
2-3 地中熱利用
〈計算条件〉
戸建住宅における熱需要は、太陽熱やバイオマス利用がよりコストが安く利用できることから、地
中熱利用は、比較的低コストで工事可能な共同住宅とオフィスビルや商業施設等の大規模建築物
(2,000m2 以上)の冷暖房にて利用されるという仮定でポテンシャルを算出する。
利用熱量は、暖房及び給湯の熱需要から算出する。
総務省 H20 住宅土地統計より、長野県の共同住宅の 27,400 戸で平均延べ床面積 45.82m2。
平成 20 年法人建物調査より、長野県の延べ床面積 2,000m2 以上の建築物は、合計 2,050 棟(2,000
∼5,000 ㎡未満:1,490 棟、5,000∼10,000 ㎡未満:370 棟、10,000∼20,000 ㎡未満:110 棟、20,000
∼50,000 ㎡未満:60 棟、50,000∼100,000 ㎡未満:20 棟)
。総延べ床面積の計算では、延べ床面積
の範囲の小さい面積に棟数を乗じて合計したものとする(8,130 千 m2)
。
共同住宅の単位面積当たりの冷暖房負荷は、次世代省エネルギー基準のⅢ地域の基準値 460MJ/m2
125
とする。
大規模建築物の単位面積当たりの冷暖房負荷は、次世代省エネルギー基準の物品販売業を営む施設
の基準値である 380MJ/m2 とする。
この冷暖房熱需要のすべてを地中熱で供給できるとする。(
「緑の分権改革」推進事業(平成 22 年
度群馬県「地中熱利用可能量調査」)での群馬県における地中熱腑存量調査では、すべての地域で
建築物の冷暖房需要に対し、それを上回る腑存量があった。)
〈計算式〉
集合住宅戸数の床面積 27,400 戸×平均延べ床面積 45.82m2/ 戸×単位面積当たりの暖冷房負荷
460MJ/m2=578TJ
大規模建築物の床面積 8,130 千 m2×単位面積当たりの暖冷房負荷 380MJ/m2=3,089TJ
合計:578TJ +3,089TJ=3,667TJ
3.液体燃料
3-1 ナタネ BDF
〈計算条件〉
1ha で 2∼3t のナタネが採取可能で、300kg のナタネから 100L の油が絞れ、植物油から BDF への
改質では歩留まり 5%がある(
「現代農業 2009 年 1 月号」より)
。
県内の耕作放棄地面積は、15,151ha(緑+黄+赤)
。
〈計算式〉
15,151ha×2∼3t×(100L/300kg)×0.95=10,632∼15,948kL
⇒この中間値をとって、13,400kL とする。
参考資料 13
126
家庭のエネルギー消費に関するアンケート結果概要
長野県環境保全研究所
1.目的
県内家庭でのエネルギー消費量を把握し、地域やライフスタイルによる違いを分析することによ
り、増加傾向にある家庭からの二酸化炭素排出量を効果的に削減するための施策を企画・立案する
ための基礎資料を得る。
2.調査方法および回収状況
・調査地域
長野市、松本市、上田市、飯田市、諏訪市、伊那市、大町市、飯山市、
佐久市および木曽町の計 10 市町
・調査対象・対象世帯数
上記 10 市町各 200 世帯
合計 2,000 世帯
・抽出方法
住民基本台帳より層化2段無作為抽出
・調査方法
訪問留置調査
・調査期間
平成 21 年 12 月∼平成 22 年1月
・回収状況
有効回収数 979 世帯(49.0%)
3.調査項目
・使用しているエネルギーの種類
・電気、都市ガス、プロパンガス、灯油の過去1年分の月ごとの消費量
・自動車(二輪車含む)の過去1年分の年間燃料消費量
・省エネに対する意識、省エネの取り組み状況
・居住市町村、住居の構造、同居人数等の属性項目
4.主な調査結果
(1)使用エネルギーの種類
○ 9割の世帯が暖房に灯油を使用.電気との併用も7割
○ 給湯は半数以上の世帯が灯油を使用
127
図1
暖房・給湯・コンロでの使用エネルギー(世帯の割合)
○ 太陽熱温水器は9%、太陽光発電は3%の世帯で使用.今後の普及促進が望まれる
○ 薪ストーブと薪風呂はいずれも4%.木質バイオマスの利用が一定割合を占める
表1 再生可能エネルギー・高効率給湯設備使用世帯割合(複数回答)
単位:%
新エネル
ギー設備
ペレッ
エコ
エコ
太陽熱 太陽光
薪ス
や高効率
回収
トス
薪風呂 キュー ジョー その他 給湯設備 無回答
温水器 発電
トーブ
世帯数
トーブ
ト
ズ
は使用し
ていない
TOTAL
長野市
松本市
上田市
飯田市
諏訪市
伊那市
大町市
飯山市
佐久市
木曽町
8.6
5.6
5.3
14.8
18.8
3.6
8.3
7.0
1.9
16.2
2.8
2.7
1.6
4.0
1.7
5.0
6.0
1.7
1.0
0.0
6.7
0.0
0.2
0.0
0.0
0.9
0.0
0.0
1.7
0.0
0.0
0.0
0.0
4.2
2.4
4.0
0.9
1.0
1.2
6.7
3.0
5.6
4.8
13.0
3.9
7.3
2.7
3.5
5.9
0.0
13.3
4.0
1.9
2.9
0.0
8.0
7.3
4.0
9.6
8.9
9.6
6.7
11.0
5.6
11.4
4.6
0.5
2.4
0.0
0.9
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.9
4.4
4.8
4.0
7.8
3.0
3.6
5.0
4.0
0.9
5.7
4.6
56.0
54.8
61.3
48.7
53.5
68.7
50.0
58.0
60.2
47.6
59.3
17.0
21.0
20.0
15.7
11.9
13.3
11.7
16.0
25.9
12.4
18.5
979
124
75
115
101
83
60
100
108
105
108
(2)エネルギー消費量
○ エネルギー消費量は冬季に大きなピークあり.冷房よりも暖房など冬季の対策が重要
図2
電気・都市ガス・プロパンガス・灯油の月別消費量の世帯平均
128
(3)エネルギー消費に伴う CO2 排出量
○ 家庭のエネルギー消費に伴う CO2 排出量のうち3分の1が自動車から
○ 一人当たり排出量は同居人数が少ないほど多い
○ 県内でもより気温の低い地域で CO2 排出量が多い傾向にある
○ 回答世帯の一人当たり CO2 排出量は全国平均より 26%多い
世帯当たり
7,700kg-CO2/年
1 人当たり
2,500kg-CO2/年
図3
回答世帯の CO2 排出量
図5
図4 同居人数別の年間 CO2 排出量
市町別の一人当たり年間 CO2 排出量
(4)省エネに対する意識
○ 省エネの必要性はほとんどの人が認識.その理由は「家計の節約」が一番
地球温暖化への対策になるから
家計を節約できるから
限りある資源を有効利用するため
エネルギー自給率を上げるため
みんながやっているから
楽しいから
その他
0
20
40
60
80
100
%
図6
省エネが必要な理由(3つ以内選択)
参考資料 14
129
地球温暖化影響評価・適応策に関する研究状況
長野県環境保全研究所
はじめに(背景及び経緯の概要)
1.
地球温暖化による影響はすでに各地で現れており、今後最大限の温室効果ガス削減策を実施しえたと
しても、これまで人為的に排出され、今後も排出される温室効果ガスによる気候変動とその影響への対
応準備及び措置は各地で早急に実施していく必要がある1)2)。気候変動に関する政府間パネル(IPCC:
Intergovernmental Panel on Climate Change)第4次評価報告書(統合報告書・政策決定者向け要
約)は、
「適応策と緩和策のどちらも、その一方だけでは全ての気候変動の影響を防ぐことができな
い」ことを指摘している。
従来、適応策は主として気候変動の影響に脆弱な途上国、例えば南太平洋の島嶼国(ツバル・フィジ
ー等)やアジア・アフリカのデルタ地帯などの温暖化対策として注目されてきた。しかし、近年の世界
的な温暖化影響の顕在化により、欧米でも取組がはじまっている(参考資料A・B)。2009年に発表さ
れた『地球温暖化「日本への影響」』では、洪水氾濫による影響、土砂災害による影響、ブナ林の適
域、マツ枯れ危険域、コメ収量、海面上昇による砂浜喪失、高潮浸水被害、熱ストレス死亡リスク
等の分野において、今後、日本においても温暖化の影響が予測されること、将来の温室効果ガス濃
度を450ppmに安定化した場合でも一定の被害が生じることは避けられないことが指摘されている
2)。
適応策は、地域の特性に応じて異なる影響や脆弱性に対して実施する必要があり、そのためには、地
域ごとの影響予測と評価が重要になる。現在、日本における影響予測は、環境省地球環境研究総合推進
費「S-4 温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響の総合評価に関す
る研究」
(2005年∼2009年)の成果などがあるが、2010年からは「S-8 温暖化影響評価・適応政策に関
する総合的研究」
(以下、S-8)がさらに詳細な地域スケールでの精度の高い情報と、適応策の立案手法
の開発へ対応すべく実施されている3)。S-8では、都道府県レベルでの温暖化影響を予測する研究ととも
に、地域におけるモニタリング手法の開発及び適応策立案手法開発も目的に掲げられている。この自治
体レベルでの影響評価と総合的適応政策に関する研究では、長野県がモデル自治体に選ばれ、その適応
策立案への取組状況がケーススタディとして扱われている。長野県環境保全研究所(以下、研究所)は
S-8へ参加し、2010年から「信州クールアース推進調査研究事業」を長野県環境部の主要事業として位
置づけ、長野県での適応策の立案に向けた研究を実施している。
同事業では、 1.長野県における温暖化の実態および予測、 2.温暖化影響予測に基づく脆弱性評価、
3.市民参加型の温暖化影響モニタリング手法の開発、 4.長野県における適応策立案手法の開発を主
要なテーマとし実施している。
地方自治体への適応策に関するアンケート調査結果4)によると、66自治体のうち、条例で適応策を位
置づけているのは3自治体のみであった。また、実際に適応策として実施している事業は、農業分野の
「高温等への耐性のある品種等の開発・導入支援」22%、
「畜舎環境の制御(噴霧・送風システム等)」
12%などで高く、農業の他の項目や他分野においてはほとんど取組がなかった。その要因として、「情
報が不十分」「技術・ノウハウが不十分」「予算が未確保」「部局間の連携・協力が不十分」等の回答が
よせられている。
地方自治体における適応の方向性については、環境省がすでに2010年に「気候変動適応の方向性」を
発表している5)。そこでは、行政組織が適応策を立案する際の配慮事項及び導入の手順について整理さ
れている。
130
参考文献
1)
2)
3)
4)
5)
IPCC 第 4 次評価報告書第 2 作業部会報告,2007.
温暖化影響総合予測プロジェクトチーム:地球温暖化「日本への影響」−長期的な気候安定化レベル検討のための温
暖化影響の総合的評価に関する研究 第 2 回報告書,2009.
環境省:環境研究総合推進費 S-8 温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究
http://www.env.go.jp/policy/kenkyu/suishin/kadai/kadai_ichiran/pdf/S-8.pdf(2012 年 3 月 1 日閲覧)
法政大学地域研究センター:自治体レベルでの影響評価と総合的適応策に関する研究報告書(2011 年 3 月 31 日)
,
2011.
気候変動適応の方向性に関する検討会(環境省):気候変動適応の方向性,2010.
参考資料(表 A)適応策の取り組み状況(世界・日本・自治体)
諸外国の状況(例)
国における適応策の
検討経緯と今後の取
り組み
自治体レベルの動き
参考資料
・イギリス:2008 年「英国の気候変動適応 - 行動枠組」
「気候変動法」
2010 年「省庁ごとの適応計画」
・ドイツ:2008 年「気候変動へのドイツ適応戦略」
2011 年「気候変動へのドイツ適応戦略のための行動計画」
・オランダ 2007 年「国家気候適応・空間計画戦略」
・EU 2009 年「気候変動適応白書」「影響評価∼気候変動適応」
・アメリカ 2009 年「省庁間気候変動適応タスクフォース」
・ニューヨーク市 2008 年「ニューヨーク市気候変動専門家委員会」
「気候変動適応に関する特別委員会」
・オーストラリア 2010 年 「オーストラリアにおける気候変動適応」
・カナダ 「カナダにおける気候変動適応の促進」
・2005 年:
「S-4 温暖化の危険な水準及び温室効果ガス安定化レベル検討のための温暖化影響
の総合的評価に関する研究」
(環境省)を開始(∼2009 年)
。
・2007 年:
「農林水産省地球温暖化対策総合戦略」
(農林水産省)を開始。
・2008 年:
「気候変動への賢い適応」
(環境省ほか)を作成。
・2010 年:
「地球温暖化対策基本法案」閣議決定。
・2010 年:
「気候変動適応の方向性」
(環境省)を作成。
・2010 年:
「S-8 温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究」(環境省)を開始(∼2014
年)。
・2010 年:
「RECCA 気候変動適応研究推進プログラム」
(文部科学省)を開始(∼2014 年)。
・2011 年:気候変動影響統計の整備(環境省)
。
・2012 年以降:①第 4 次環境基本計画(平成 24 年 3 月予定)の重点課題(温暖化対策)にお
いて適応策の検討・実施の必要性が明記(案)
。
② 京都議定書目標達成計画の後継計画に「適応戦略」の組み込みを行う
よう、国レベルの適応方針の検討を 24 年度から開始
③「(仮)適応への挑戦 2012」
(環境省)を作成予定。
・自治体の状況(法政大実施:全国自治体への温暖化影響把握・適応策の動向調査による)
・適応策を条例や計画に位置づけている:3団体
・一部の分野で計画に位置づけがされている:12団体
・2011 年:「地域適応フォーラム」
(S-8:法政大)キックオフ会合。→全国 150 名参加
・熊本県、三重県、埼玉県などモデルスタディの動きあり。
・環境省ほか(2010)気候変動適応の方向性。
・EIC ネット(http://www.eic.or.jp)
131
参考資料(表 B)海外の適応策事例
国
概
要
イギリス
「気候変動法(Climate Change Act)
」
策定年月:2008 年 11 月
(1)2050 年における二酸化炭素排出量を 1990 年比で 60%削減する法定目標を厳格化
(2)イギリスの炭素管理の枠組みを透明化し、責任の所在を明確化
(3)気候変動委員会を設置∼役割及び独立性を強化
(4)包括的な内容∼炭素削減コミットメントの導入、廃棄物削減及びリサイクルの奨励、再生可能燃料導入義
務制度の改正等
(5)気候変動の影響に適応する
既に発生した又は発生しつつある気候変動によって生じるリスクを定期的に予測し、議会に報告する義
務を政府に課する。また、それらのリスクに対応するプログラムを発表し、これを定期的(5 年)に更新
する義務も政府に課する。
ドイツ 1( )
「気候変動へのドイツ適応戦略」
(Deutsche Anpassungsstrategie an den Klimawandel)
策定年月:2008 年 12 月
◇連邦による取り組み
・予期される気候変動とその影響に関する現在の知見
冬の降水量が 40%(地域によっては最大 70%)増加し、夏の降水量は 40%減
→農林業や洪水対策への影響、アルプス地域の生物多様性や水資源への影響、自然
能性
・15 の対策分野、特定の地域における気候変動の影響と対策オプション
・国際関係や、他国での適応対策へのドイツの貢献
災害のリスクの可
ドイツ 2( )
「気候変動へのドイツ適応戦略のための行動計画」
(Aktionsplan Anpassung zur Deutschen Anpassungsstrategie an den Klimawandel)
策定年月:2011 年 8 月
◆目的
ドイツ適応戦略において定められている連邦政府の活動に関する目標の達成を実現すること
◆4 つの柱で構成
1)情報伝達や研究情報インフラの拡大、対話や参加、ネットワーキングの支援を行う連邦政府のイニシアテ
ィブ
2)気候に配慮した都市開発の設計原則の導入、土地誘導計画(B プラン)や土地利用計画(F プラン)にお
ける気候変動の影響の考慮に対する自治体の権限の緩和、自然災害における設備安全分野における技術規
則に気候変動の視点の導入といった法的・技術的枠組みや支援政策の改善
3)連邦政府が所有者や施行主である土地や不動産、インフラストラクチャーにおける連邦政府による気候変
動に対する責任のある活動
4)国連気候変動会議での決定の実行や開発途上国支援、研究における共同活動など国際的に責任のある活動
◇2020 年ハイテク戦略や国家生物多様性戦略、国家森林戦略といった他の国家戦略とも連携
◇2014 年までに、ドイツ適応戦略と行動計画の評価報告書を作成し、改善案を提出する
ニューヨーク市
「ニューヨーク市気候変動専門家委員会」
(New York Panel on Climate Change)
2008 年 4 月着手 招集者 ニューヨーク市長
・気候研究者、法律家、保険関係者などから
構成され、適応策における科学的知見やツール
の提供を担う。
・「知見の集積」
「基本理念の明確化」
「全体的
アプローチの設計」
「戦略策定ツール」など
の策定を担当
市 長
OLTPS & SAB; 部局横断
型組織「持続可能性オ
フィス」(市長室設置)
ステークホルダ
- 市役所各部局
- 州政府
CCATF; ステー
クホルダータ
- 民間
ハイレベルの
コミットメント
調整機能
A
B
専門家:
NPCC; 専門
家パネル -気候変動科学
-法律
D
E
-保険
セクター別ワーキンググループの統合
スクフォース
C
「気候変動適応に関する特別委員会」
(CCATF)
・NPCC(上記専門委員会)の戦略策定ツールを基礎にして、具体的な適応計画を策定
・行政から民間セクターまで幅広い層の参加による検討
132
その他
2.
「オーストラリアにおける気候変動適応」(Adaptation to Climate Change in Australia: An Australian
Government Position Paper)
2010 年策定
策定者 気候変動・エネルギー効率推進部
・気候変動影響への適応に関する政府のビジョン及びビジョンを実現するための実践的なステップについて述
べられている。
・適応におけるオーストラリア政府の役割;地域社会のレジリアンスを築き人々の適応に向けた正しい状態を
確立するための処方が示されている。
「カナダにおける気候変動適応の促進」
策定者 カナダ気候変動影響及び適応課
・影響から適応へ;カナダの影響と適応に関する最新の評価報告
・カナダの地域社会が気候変動適応にどのように取り組んだかのケーススタディ
・適応ツール
・地域レベルで適応の計画と決定を進めるプログラム
長野県における温暖化の実態および予測
2-1.気温
信州クールアース推進調査研究事業において、温暖化実態の把握のため
に、独自の気象観測や気候復元のための調査研究を実施している。
気象観測は、既存の観測点が無い山岳地域 8 ヶ所(木曽駒ヶ岳・乗鞍岳・
八ヶ岳・飯綱高原・霧ケ峰・茶臼岳・八方尾根・高峰高原)での観測を実
施している(図 1)
。
図 1 独自の気象観測地点
6
気候復元については、
木曽駒ヶ岳のハイマツの年枝成長の計
世界、
日本の年平均気温はこの 100 年間で上昇しているが、
4
3
よっても同様の検討を実施する予定である。
年枝伸長量 (cm)
量は有意な増加傾向を示した(図 2)
。同時に、年輪の解析に
5
測を実施した。その結果、過去 30 年間のハイマツの年枝伸長
2
長野県内でも近年気温は上昇傾向にある。県内の観測所で記録
された気温も各地で上昇傾向にあり、特に最近 20 年のみの傾
向をみると、
10 年あたり約 0.4∼0.6℃の上昇となっている。
S-4 の成果から、日本全域及び長野県(長野県及び長野県
1 980
19 85
199 0
1995
2 000
2 005
20 10
年
年
図 2 ハイマツの年枝伸長量
過去 30 年間に有意な増加傾向有り
を囲む領域)を切り出した場合の計算結果を示すと以下のようになる(図 3・4)
。グラフは、1981∼2000
年の平均値を 0 とした上昇量を 2001∼2100 年まで示したものである。
2 つのモデルを合わせてみると、
この間に 2∼5℃の気温上昇が予測されている。
長野県を囲む領域の気温上昇量は、日本全体の平均と比較して若干高めの値を示している。一般に、
北半球では北に行くほど、標高が高くなるほど上昇量が高めとなる傾向があるが、それを反映したもの
である。
6.0
1981-2000年平均値からの気温上昇量[℃]
1981-2000年平均値からの気温上昇量[℃]
133
MIROC-Japan
5.0
RCM-Japan
4.0
3.0
2.0
1.0
-
6.0
MIROC-Nagano
RCM-Nagano
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
-
2000
2010
2020
2030
2040
2050
年
2060
2070
2080
2090
2100
2000
2010
2020
2030
2040
2050
2060
2070
2080
2090
2100
年
資料提供:国立環境研究所 肱岡靖明主任研究員
図 3 日本全域の気温上昇量の予測(2001∼2100 年)
図 4 長野県を囲む領域の気温上昇量の予測(2001∼2100 年)
*社会経済シナリオ
IPCC は第 4 次評価報告書にて、将来の社会の変化を大きく分けて大きく分けて 4 つのシナリオで示し、
シナリオごとに将来の温室効果ガスの排出量の変化、平均気温の変化、海面上昇量を予測した。上記の予測
では、そのうち A1B:高成長社会シナリオ(各エネルギー源のバランスを重視)と、A2:多元化社会シナリオ
を利用している。A2 シナリオは、4 つの中でもっとも温室効果ガスの排出量が多いシナリオであり、A1B シ
ナリオはそれに次いで多い。
*日本を対象とした気候モデル
日本を対象とした主な気候予測モデルは、主に以下の 2 つがある。
・RCM20
(Regional Climate Model 20km)
:文部科学省気象庁気象研究所が開発した水平空間解像度が 20km
の地域気候モデル。ここでは、A2 シナリオを元に計算。計算は、2031∼2050 年と 2081∼2100 年の
2 つの期間に分けて実施。
・MIROC(Model for Interdisciplinary Research on Climate):東京大学・国立環境研究所・海洋研究開発
機構が共同で開発を行っている大気海洋結合気候モデル。空間解像度は約 100km。ここでは、A1B シ
ナリオを元に計算。MIROC は世界の他の全球気候モデルより高めに気温が予測される傾向がある。
2-2.積雪
長野県(中北部)と周囲の地域(日本海側)について、最大積雪深が今後どのように変化するかを予
測した(図 5・6)
。
図 5 は、2030 年代と 1990 年代の最大積雪深の差を示した分布図である。雪の深い山岳部では最大
90cm の最大積雪深の減少が予測されているところもあり、総じて減少量が大きい傾向が認められる。
図 6 は、最大積雪深の 1990 年代に対する 2030 年代の変化の割合を示している。長野県内では、標
高の高い場所と平地で最大積雪深の変化の割合が小さく、両者の間となる山の斜面で最大積雪深の変化
の割合が大きい。最大積雪深の減少率が大きい標高は、北信では標高 500∼1000m 付近、中信・南信で
は標高 1000∼1500m 付近となる傾向が読み取れる。これは、気温が 0 度となる標高が、北側で低く南
側で高いことを反映していると想定される。
出典
独立行政法人海洋研究開発機構地球環境変動領域次世代モデルプログラム陸面課程モデリング研究チーム。
本研究は、気候変動適応研究推進プログラム RECCA(Research Program on Climate Change Adaptation)
と、環境省環境研究総合推進費 S-8「温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究」の共同研究の成果で
ある。
134
最大積雪深の変化率(2030年代/1990年代)
2030年代と1990年代の最大積雪深差
増
加
増
加
富山県
長野県
日本海沿岸域における温暖化に伴
う積雪の変化予測と適応策のため
の先進的ダウンスケーリン グ手法の
開発 (代表:木村富士男)
図提供: 海洋研究開発機構
減
少
IPCC第4次報告書でも引用されている全球気候モデルMIROC(A2シナリオ)
による温暖化情報を用いたダウンスケーリングの結果(2030年代の気候場:
2020∼2049年平均)。予測の不確実性は考慮されていないことに注意。
図5
RECCA
灰色実線・点線は等高線
日本海沿岸域における温暖化に伴
う積雪の変化予測と適応策のた め
の先進的ダウンスケーリン グ手法の
開発 (代表:木村富士男)
図提供: 海洋研究開発機構
灰色実線・点線は等高線
減
少
IPCC第4次報告書でも引用されている全球気候モデルMIROC(A2シナリオ)
による温暖化情報を用いたダウンスケーリングの結果(2030年代の気候場:
2020∼2049年平均)。予測の不確実性は考慮されていないことに注意。
図 6 1990 年代に対する 2030 年代の最大積雪深
2030 年代と 1990 年代の最大積雪深差
の変化の割合
3.
温暖化影響予測に基づく脆弱性評価に関する研究
3-1 山岳生態系
気候変動の長野県内への影響を把握するために、長野県環境保全研究所は、山岳地域における独自の
調査結果の他に、S-8【テーマ 1】影響予測研究からの予測情報を入手している。
独自調査では、①生物分布情報を利用した温暖化影響予測・評価(希少植物及び湿原の分布、訪花昆
虫)②高地生物への温暖化影響予測・評価(高山植物・ライチョウ・開花フェノロジーとマルハナバチ・
山地渓流魚への影響)を実施しているが、現在調査を継続中である。
3-2 森林生態系
3-2-1 ブナ林
長野県及びその周辺域における
2031~2050 年及び 2081~2100 年の
ブナ林の分布適域の変化を予測した
(図 7)。(A)現在の実際の分布と(B)
現在の気候に基づく分布確率を比較
すると、図中の赤色の部分(分布確
率が 0.5 より大きい箇所)がほぼ現在
のブナ林と重なる。(C) (E)は RCM20
による予測、(D)(F)は MIROC による
予測である。RCM20 と MIROC の両
モデルともに時間が経過するほど、
赤色の箇所が減少していることがわ
かる。今後気温上昇が進むことでブ
(A)実際のブナ林の分布、(B)∼(F)は各気候条件におけるブナ林分布確率の予測
図7
ブナ林の分布適域(長野県周辺)資料提供:森林総合研究所
ナ林の分布適域が縮小し、より標高の
高い部分のみが適域として残ることが予測されている。
135
出典
松井哲哉, 田中信行, 八木橋勉, 小南裕志, 津山幾太郎, 高橋潔 (2009) 温暖化にともなうブナ林の適
域の変化予測と影響評価. 地球環境, 14(2), 165-174,松井哲哉主任研究員・田中信行主任研究員(森林
総合研究所)提供
3-2-2 マツ枯れ
長野県内のマツ枯れ危険域の変化を、
気温の変化に合わせて予測した(図 8)
。
現状では県内の平地とその縁辺部に限
られるマツ枯れ危険域が、気温が上昇
するにつれ分布域をより標高の高い場
所へと広げてゆくという結果が得られ
た。平均気温が 6℃上昇すると県内の標
高約 1700m 未満の地域は、ほぼ全域が
マツ枯れ危険域となると予測される。
※予測結果利用上の注意点
県内の全メッシュがマツ枯れの自然抑
制域・移行域・危険域のいずれかに分類
されているが、実際にはマツが生育して
いない場所も含まれている。本図は、
図 8 マツ枯れ危険域の予測(長野県)資料提供:森林総合研究所
気温条件からみたマツ枯れ危険域の
推移の予測図で、気象庁のメッシュ気
候値 2000 による現状の気候データ(1971∼2000 年の平均値)を利用して作成されており、水平解像度は約
1km である。
出典
MB 指数による温暖化時の長野県の松枯れリスクの評価 大丸裕武・中村克典(2008)マツ枯れ.地球温
暖化「日本への影響」−最新の科学的知見−, 温暖化影響総合予測プロジェクトチーム, 環境省地球環境研究
総合推進費 S-4 報告書, p.28 を改変
3-3 産業
3-3-1 スキー産業への影響
積雪深の予測(図 5・6)は、地球温暖化が長野県のスキー産業にいくつかの点で影響を及ぼす可能
性があることを示唆している。その影響をまとめると以下の項目のようになる。
・2030 年代に県内の多くのスキー場で最大積雪深が現在より 15∼30%程度減少する。
・県内では南信のスキー場で減少率が高めになる傾向がある。
136
3-1-2 農業への影響(リンゴの生育適地の変化)
今世紀中ごろ(2031∼2050 年)
と今世紀末(2081∼2100 年)に
リンゴの生育適地がどのように変
化するかについて予測を行なった
(図 9)。
リンゴ生育適地の変化
(a) は、リンゴ栽培農家の分布
(2000 年農林業センサス、2000
年時点のリンゴ栽培農家数、旧市
区町村単位)である。(b)は、1981
∼2000 年時点のリンゴ生育適地
分布の推定である。気象庁アメダ
スデータをもとに農林水産省の農
図9
リンゴ栽培適域の将来予測(長野県)
業環境技術研究所が開発したアメ
ダスフメッシュ化データに、下記気温条件を適用した。以降は気候モデルを利用した将来のリンゴ生育
適地の予測であり、(c)は 2031∼2050 年の生育低地の予測、(d)は 2081∼2100 年の生育適地の予測であ
る。予測結果は、今世紀末の気温上昇量が概ね 4℃以上になると、現在の品種・栽培方法では現在の場
所で現状通りの品質のリンゴを栽培することが難しくなることを意味する。上昇温度がより低く抑えら
れ、高温抑制技術・高温耐性品種の開発・導入・普及などの温暖化適応策が実施されれば、被害は回避
される可能性がある。
リンゴの生育適地に関する気象条件
予測は、果樹指導指針(長野県・全国農業協同組合連合会長野県本部, 2006)で示された、長野県の
リンゴの生育適地の気温条件に基づき予測を行った。果樹の栽培条件には、気温以外の気象要素や地
形・土壌などの条件も関係する。しかしながら、上記文献では気温以外の気象要素に関する定量的な記
述がないため、予測は気温条件のみで行っている。
4.
市民参加型の温暖化影響モニタリング手法の開発
温暖化影響の現れ方が地域特性に応じて異な
ることから、適応策は地域の実情に合った形で
実行に移される必要がある。その際、地域住民
の積極的な参加の有無が、適応策の社会への実
装がうまくいくかどうかの鍵になる。
長野県の適応策に市民の参加を促すための一
つの方法として、長野県への温暖化影響モニタ
リングを市民参加で実施する仕組みを構築す
ることとした(図 10)
。
「モニタリング指標の選択」と「情報収集・
図 10
市民参加型温暖化影響モニタリング手法の仕組み
市民参加によるモニタリング手法を構築し、そのデータを県
内の影響予測に利用すると共に、普及啓発にも活用する。
発信の仕組み構築」のために、9 名の外部委員と長野県環境保全研究所職員からなる市民参加型温暖化
影響モニタリング手法検討委員会を研究所内に設置し、検討を行っている(図 11)。モニタリングは、
137
一般市民の参加によるものと、野鳥の会など一定の知識を持つ方々からなる市民団体との連携によるも
のとの 2 種類で実施することとした。また、データ比較のために、研究所による独自調査も実施してい
る。
検討委員会で出された意見は、
「参加の呼び
かけ方や他団体との連携」
「観察対象」
「デー
タの精度」
「継続性を高める工夫」に関するこ
となどであった。
検討会での検討を元に、現在、インターネ
ットでアクセス可能なeコミュニティプラッ
トフォーム上に、ウェブサイト「信州・温暖
化ウォッチャーズ」を設置し、環境保全研究
所のホームページ経由でアクセスできるよう
にし、市民からの情報収集と発信に関する試
行を実施している。なお、このWebサイトの
図 11
構築と運用にあたっては、中部大学中部高等
学術研究所国際GIS センターのご協力をいた
だいている。
5.
市民参加型温暖化影響モニタリング手法検討予定
検討委員会で手法構築と評価をしつつ、一般市民、市民団体の
連携によりモニタリングを実施。また、データ比較のために研
究所による独自調査を実施。
適応策立案手法の開発
5-1 長野県での検討状況
「信州クールアース推進調査研究事業」の中で、
2010年、県庁内において、関連部局からなる適応策
に関する検討会(以下、適応検討会)が設置された。
表1 県庁に設置した適応策検討会での作業内容
日時
2010/10/20
この適応検討会は、S-8で位置づけられている適応
分野に対応する7部18課の参加を得て、長野県が適
2011/1/14
内容
勉強会
(講演会)
第1回
検討会
応策を立案するために必要となる情報の収集並びに
立案手法の開発のための検討を目的としている。
適応検討会を中心にしたこれまでの取り組みを表
2011/1/14
∼2/14
1に示す。立ち上げは2011年1月であるが、それに先
立ち、
「総合的な温暖化対策について、組織内で一定
2011/6/22
温 暖 化
情報アン
ケート
第2回
検討会
レベルの理解を共有する」1) ための勉強会(講演会)
を2010年10月に開催した。第1回の検討会(2011年
1月)の際には、各課が保有する適応策関連情報の
収集に着手し、第2回検討会では、県有情報及び予
測情報の提供並びに適応策立案へ向けたスケジュ
表2 適応策部門タスクフォースでの作業内容
日時
2011/11/2
内容
第1回
会議
2011/12/23
∼
2012/1/13
2012/1/20
情 報 照
会
ールについて検討を行った。
研究所は適応検討会、及びS-8に参加する他の研
究機関の協力を得ながら、適応策を導入するために
必要な情報収集と提供のノウハウ、ならびに適応策
を県の政策として立案する際の諸課題の検討を行
概要
適応策とは何かに関する専門家
による講演
検討会の設置目的及び業務,各
課の情報及び温暖化影響情報等
の取扱,温暖化情報アンケート
依頼等
各課で保有する関連情報,2010
年夏の猛暑影響情報,各課の影
響予測希望項目と関連情報等
検討会の設置目的確認, 作業ス
ケジュール, 気候変動適応の方
向性, アウトプット概要,長野
県の温暖化影響予測の現状等
第2回
会議
概要
基調講演2題、長野県における気
候変動適応への取組事例、タス
クフォースの成果見通し
各課の温暖化適応策関連事業、
及び温暖化影響予測への対応に
ついて
基調講演1題、気候変動への適応
に関する研究の状況について
138
っている。
なお、この適応策検討会は、長野県温暖化対策戦略再構築事業において「適応策部門タスクフォース」
が設置されたことにともない、継続の検討を同タスクフォースにて行った(表2)
。
これまでの情報収集によると、既存の適応策(短期的適応策)として位置づけられる事業として、農
政部の一連の異常気象対応策が挙げられる。これらは温暖化適応策として位置づけられているものでは
ないが、事実上の適応策と考えられる。
その他にも、適応策に資する事業は各部局で実施されており、その一端が収集され始めている。これ
らは「適応策」と呼ばれてはいないが、近年の異常気象への対応策として実施してきた事業であったり、
温暖化影響が想定される下での事業であったりする。今後、適応策への理解が広がり、適応策に関して
条例等で位置づけられることにより、さらに多くの関連事業がリスト化されるものと考えられる。
参考文献 1) 気候変動適応の方向性に関する検討会(環境省):気候変動適応の方向性,2010.
5-2 今後の課題
今後の地方自治体の適応策導入に
向けた課題として、1)情報・知識に
関する障壁(適応策に関する情報が一
元化されていない)
、2)法制度に関す
る障壁(法や条例での位置づけがなく
部局間での連携や予算措置が困難)
、
3)人材育成・ノウハウに関する障壁
(適応に関する意識・認識が不足して
おり、専門的な知見のノウハウが不
足)
、4)庁内調整や合意形成における
障壁(異常気象対応等として対応して
いる部局とそうでない部局の認識の
差や不確実性への対応方法が不明確)
などが挙げられる。
これらの課題の解決に向けた努力
をし、適応策を温暖化対策の重要な一項
図 20
地球温暖化対策の全体像:緩和策と適応策
(作成:田中 充 法政大学教授)
目として位置づけていくことが重要で
ある。その際、従来から実施されている温室効果ガス削減のための緩和策との組み合わせにより、安全・
安心な地域社会を維持していく仕組みの構築が求められる(図 20)
。
参考資料 15
139
用語集
用語
解説
アイドリング・スト 自動車の駐車、客待ち、荷物の積みおろし等の時に不必要なアイドリング(エンジンのかけっぱな
ップ
し)をやめ、エンジンを停止させること。燃料の節約や排出ガス削減となる。
一 次 エ ネ ル ギ 一次エネルギーとは、石炭、石油、天然ガス等の化石燃料や、薪、水力、風力、潮流、地熱、太
ー 、 二 次 エ ネ ル 陽エネルギーなど自然エネルギー等のこと。二次エネルギーとは、石炭、石油などの一次エネル
ギー
オフセット・クレジ
ット
ギーを転換して得られるエネルギー(電力、ガス、各種石油製品)のこと。
環境省によるオフセット・クレジット(J-VER)制度に基づいて発行される国内の自主的な温室効果
ガス排出削減・吸収プロジェクトから生じた排出削減・吸収量(クレジット)。カーボン・オフセット等
に活用が可能で、市場における流通が可能であり、金銭的な価値を有するクレジット。
二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N20)、代替フロン(HFCS・PFCS)、六フッ化硫黄
温室効果ガス
(SF6)の 6 種類が温室効果ガスとして定義されている。大気中に存在するガスで、この太陽放射
に対しては比較的透明で赤外線を吸収する一方、地表からの赤外線放射に対しては不透明なた
め、地球に反射して逃げ出そうとする熱を温室のように閉じ込めてしまう特性を持つ。
レンタカーと類似するが、レンタカーが不特定多数の利用者を対象に貸出しを行うのに対して、会
カーシェアリング
員にのみ貸出しを行うもの。一般にレンタカーよりも短時間の利用を想定しており、その場合、利用
者にとってはレンタカーより便利で安価になるように価格設定がなされていることが多い。
カーフリーエリア
歩行者天国など車両規制によって一般車両の進入が規制されている区域。
自主的、積極的に環境保全のために取る行動を計画・実行・評価する一連の手続きのこと。世界
環境マネジメント 共通の規格等を設定する非政府間国際機関である ISO(国際標準化機構)が環境管理に関する
システム
規格として ISO14000 シリーズを定めて規格化しているほか、国内ではエコアクション 21、エコステ
ージ、KES など中小企業が取り組みやすい規格もある。
英語名は、Intergovernmental Panel on Climate Change(略称:IPCC)。気候変動を評価する国際
的な機構で、気候変動に係る科学的な知見の評価や環境的・社会経済的な潜在的影響の評価
気候変動に関す を世界に向けて提供するため、国連環境計画(UNEP)及び世界気象機関(WMO)の共催により
る政府間パネル
1988 年 11 月に設置された。現在の参加国は 195 カ国で、数千の専門家が従事し、政策決定者
に対して厳格でバランスのとれた科学的情報を提供し、気候変動に関連しながらも、政策的には
中立で規範的ではない報告を行っている。
大気中の温室効果ガスの濃度の安定化を究極的な目的として国際的な枠組みを定めた条約で、
1994 年 3 月 21 日に発効した。条約においては、1)締約国の共通だが差異のある責任、2)開発
気候変動枠組条 途上締約国等の国別事情の勘案、3)速やかかつ有効な予防措置の実施等の原則のもと、先進
約
締約国に対し温室効果ガス削減のための政策の実施等の義務が課せられおり、この条約の交渉
会議に、最高意思決定機関である気候変動枠組条約締約国会議 (Conference of the Parties、
COP) がある。
サプライチェーン
原材料の調達から生産・販売・物流を経て最終需要者に至る、製品・サービス提供のために行わ
れるビジネス諸活動の一連の流れのこと
140
用語
解説
1997 年に京都で開催された気候変動枠組条約第 3 回締約国会議(COP3)で締結され、先進国
の温室効果ガス排出量について法的拘束力のある削減目標を各国毎に設定したもの。対象とな
京都議定書
るガスは、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)の合計6種
類で、基準年を 1990 年とし(代替フロン等3ガスは 1995 年でも良い)、目標期間を 2008 年∼
2012 年の5年間とした。各国の数値目標は、日本▲6%、EU▲8%など、先進国全体では少な
くても▲5%削減を目指した。
グリーン電力証
書
グリーン物流
原粗油
自然エネルギーから発電された電気の環境付加価値を取引可能な証書にしたもの。
環境に優しい物流の呼称で、低公害車の開発普及、モーダルシフトやトラック輸送の共同化・大型
化による積載効率の向上などの物流システムの改善などによる手法を取り入れた物流。
一般には未精製の原料油の総称として使用され、関税法上の揮発油、灯油、軽油、重油、潤滑
油は除かれるとともに、原油とも別に扱われている。
大企業等による技術・資金等の提供を通じて、中小企業等が行った温室効果ガス排出削減量を
国内クレジット
認証し、自主行動計画や試行排出量取引スキームの目標達成等のために活用できる制度。中小
企業のみならず、農林(森林バイオマス)、民生部門(業務その他、家庭)、運輸部門等における排
出削減も広く対象としている。
固定価格買取制 再生可能エネルギーによって発電された電気を、一定の期間・固定価格で電気事業者が買い取
度
ることを義務付けるもの。
徒歩で移動できる範囲を生活圏として捉え、健康的で住みやすい街づくりを目指そうとする考え
方。都市の様々な機能を都市の中心部にコンパクトに集積し、都市郊外への無計画な拡張開発
コンパクトシティ
を抑制し、車利用に伴う排気ガスの排出を制限して温暖化を防ぐ。また、車など「足」のない世代の
ための生活圏の確保と都市中心部を活性化して経済効果を高めるシナジー効果を生もうとするも
の。
消費しても比較的短期間で自然的に再生され、枯渇することがないエネルギー資源のこと。資源
再生可能エネル の総量が限られており、いずれ枯渇するエネルギーに対比する語として用いられる。主な再生可能
ギー
エネルギーとして、太陽光、風力、水力、波力、地熱、太陽熱などが挙げられる。バイオマスも植
物の育成による比較的短期間での再生が可能であるため、再生可能エネルギーに含まれる
市場メカニズム
市場原理を活用して、温室効果ガスの排出削減・抑制を図る方策の一つ。京都議定書において
は、国家間の国際排出量取引制度が導入されている。
自然現象から採集できるエネルギーの総称。太陽光や風力など。石油をはじめとする、枯渇が危
自然エネルギー
惧される資源との対比で用いられることが多い。「再生可能エネルギー」とほぼ同義だが、大規模
水力発電は含まない。
市民ファンド
市民からの出資や寄付による基金。
従来からの集中型電源と送電系統との一体運用に加え、電力網と IT 技術を組み合わせた情報
スマートグリッド
通信ネットワークによって分散型電源や需要側の情報を統合・活用し、高効率、高品質、高信頼
度を実現しようとする電力供給システム。
141
用語
解説
最新技術を利用して都市における電気、水、通信、交通、建物、行政サービスなどのインフラ全体
スマートシティ
を垂直統合して、エネルギー効率を高め、省資源化を徹底した環境配慮型の街づくりを実現し、持
続的成長を促しながら、市場や雇用を創出しようとする都市。
スマートメーター
通信機能をはじめとする高度な機能を搭載した電力量計。消費電力量を記録し、通信回線を利
用して定期的に電力事業者へとデータを送るという基本的仕組みを持つ。
石油精製の過程を経て原油を蒸留処理して作られる物質全般のことで、沸点の低いものから順
石油製品
に、LPG、ナフサ、ガソリン、ジェット燃料、灯油、軽油、重油、アスファルト等に分類される。沸点の
高いものほど、硫黄濃度が高く、粘度も高い。
産業活動により発生する環境汚染物質、廃棄物、排熱など、すべての排出物を可能な限り最小化
ゼロエミッション
しようという取組。企業自らによる排出物の抑制に加えて、企業間による再利用をうまく組み合わせ
ようとしている点が特徴である。
地域冷熱供給シ 一定地域内の建物群に熱供給設備から冷水・温水・蒸気などの熱媒を地域導管を経由して供給
ステム
トランジットモール
適応策
し、冷房・暖房・給湯などを行うシステム
主に市街地において、自動車の進入を禁じるかあるいは大幅に規制し、バスや路面電車など公的
輸送機関、自転車や人のみの通行を許可する通り、または街並み。
気候変動による自然環境、社会環境への様々な影響に対して、生活・行動様式の変更や防災投
資の増加といった自然・社会システムの調節を通じて温暖化による悪影響を軽減する対策。
原油の蒸留によって得られる、ガソリンなどを含む低沸点の部分。また原油の重質部分を分解して
ナフサ
得る低沸点炭化水素の混合油。自動車や航空機の燃料として、また、溶剤や石油化学製品の原
料として利用される。
熱電併給(コジェ
ネ)
パーク&ライド
コジェネは、「Cogeneration」の略称で熱と電力を同時に供給(generation)すること。石油や天然ガ
スを燃焼して発電を行う際に、従来は大気中に放出していただけの排熱を回収し、冷房や給湯に
利用して、総合エネルギー効率を高める、新しいエネルギー供給システムのひとつである。
自宅から最寄の駅やバス停まで自家用車を利用して移動し、車を駐車した後、バスや電車などの
公共交通機関に乗り換えて目的の駅やバス停まで移動すること。
バ ック キャ ス テ ィ 目標となる将来の社会の姿を想定し、その姿から現在を振り返って今何をすればいいかを考えるや
ング
り方。
ビジネスモデル
企業において経済的利益をもたらすビジネス手法の雛形。
ファイナンス
金融、融資、資金調達。
フェアトレード
適正な報酬での取引。安全で安心できる物を反復・継続して生産できる適正価格や賃金を生産
者に保障する取引。
フォアキャスティン 過去のデータや実績に基づいて、その上に少しずつ物事を積み上げていくやり方。また、その方法
グ
プラットフォーム
フリーライダー
で将来を予測すること。
国や県など公共機関間あるいは民間団体や企業間での情報共有、意見交換を行い具体的な取
組における連携・協力を模索する場。
他人が費用負担したものを、対価を払わずに利用するだけの人。
142
用語
プロジェクトファイ
ナンス
解説
金融の貸手が、融資の対象となるプロジェクトからのキャシュフローのみを担保として融資を行う形
態で、借手の総合的な信用力に基づいて融資を行うコーポレートファナンスに対比するファイナン
ス手法。
クロロフルオロカーボン(CFC)などと称されるフッ素を含む炭化水素などで、不燃性、非爆発性、
フロン類等
無毒。大気中に放出された場合、殆ど分解されず上空の成層圏まで達し、ここで放出された塩素
原子が成層圏中のオゾンを破壊していくが、近年は、フロン類の代わりに使用できてオゾンの破壊
能力がない相対的に小さい物質が開発されており、これらを代替フロンと呼んでいる。
モーダルシフト
モニタリング
輸送方式を転換すること。環境を保全し、また労働力不足を補うために、トラックから鉄道・船舶な
ど大量一括型の方式への移行をいう。
予め設定しておいた計画や目標、指示について、その進捗状況を随時チェックすること。
モビリティ・マネジ 1人1人のモビリティ(移動)が、社会的にも個人的にも望ましい方向(過度な自動車利用から公共
メント
交通等を適切に利用する等)に変化することを促す、コミュニケーションを中心とした交通政策。
リ ス ク コ ミ ュニ ケ リスクに関する情報について、リスク管理者が影響を受ける可能性のある広範な関係者と共有し、
ーション
リスクの回避・抑制・受容に至るために、広範な関係者と意味ある応答を重ねること。
希少金属。非鉄金属のうち、特に流通量が少ない金属の総称。地球上の存在量が少なく、純物質
レアメタル
として取り出すにはコストが高いなどの特徴がある。液晶パネルの透明電極の材料となるインジウ
ム、高性能磁石の原料となるディスプロシウムなど、先端産業に不可欠な材料とされている。
特定の道路や地域、時間帯における自動車利用者に対して課金することにより、自動車利用の合
ロー ドプラ イシン 理化や交通行動の転換を促し、自動車交通量の抑制を図る施策で、TDM(交通需要マネジメン
グ
ト)施策の一つ。交通渋滞や大気汚染の著しい地域に導入することにより、渋滞緩和と大気環境の
改善に資することが期待される。
ワークライフバラ 仕事と生活の調和(バランス)という意味で用いられ、仕事「ばかりでなく家庭や趣味その他の活動
ンス
にも重点をおいて様々なライフステージごとに多様な生き方が選択できることを表す。
「Bus Rapid Transit」の略称で、通常のバス路線よりも、バス専用道路の設置などのインフラの整
BRT
備や公共車両を優先する交通規制などによって、より大量かつ高速で効率的なサービスが提供
可能なバスによる交通機関。
「Education for Sustainable Development (持続可能な開発のための教育)」の略称。世界の人々
ESD
や将来世代、または環境との関係性の中で生きていることを認識し、行動を変革していくための教
育。
EV
電気自動車。電池をエネルギー源とする車。
「Liquefied Natural Gas(液化天然ガス)」の略称。メタンを主成分とする天然ガスを、水分、硫黄
LNG
化合物、二酸化炭素などの不純物を除いて摂氏マイナス 162 度に冷却、加圧して液化したもの
で、原油に比して埋蔵量が多く、排出する二酸化炭素が石炭や石油よりも少ないため環境負荷が
低い。
LRT
PHV
「Light Rail Transit」の略称で、軽快電車あるいはライトレールとも呼ばれ、軽量・小型の電車を頻
繁運転することが可能な中量輸送の新しい交通機関。
「Plug-in Hybrid Car」の略称で、ハイブリッドカーのうち、電気プラグを自動車に差し込んで充電す
ることが可能なタイプの自動車のこと。
参考資料 16
143
参考文献
<書籍>
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飯田哲也・鎌仲ひとみ『今こそ、エネルギーシフト』岩波書店、2011 年
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年
飯田哲也編『自然エネルギー市場』築地書館、2005 年
植田和弘・梶山恵司他『国民のためのエネルギー原論』日本経済新聞出版社、2011 年
宇都宮浄人他『LRT-次世代型路面電車とまちづくり』成山堂書店、2010 年
大井尚司他『交通政策入門』同文舘出版、2011 年
大内孝子『住まいと環境』彰国社、2010 年
大串卓矢他『
「国内クレジット制度」の仕組みと実務』中央経済社、2010 年
大久保規子他『要説環境法第4版』有斐閣、2009 年
大島堅一『再生可能エネルギーの政治経済学』東洋経済新報社、2010 年
大西隆他『広域計画と地域の持続可能性』学芸出版社 、2010 年
大橋 弘・明城 聡『太陽光発電の普及に向けた新たな電力買取制度の分析』文部科学省科学技術政
策研究所第1研究グループ、2009 年
岡村久和『最先端ビジネスがひと目でわかるスマートシティ』アスキー・メディアワークス 、2011
年
小澤英明他『東京都の温室効果ガス規制と排出量取引』白揚社、2010 年
柿沼整三『建築断熱の考え方』オーム社、2004 年
柏木孝夫・日経エコロジー『スマート革命』日経 BP 社 、2010 年
片野優『ここが違う、ヨーロッパの交通政策』白水社、2011 年
加藤敏春『節電社会のつくり方スマートパワーが日本を救う!』角川書店、2011 年
金山公夫他『ソーラーエネルギー利用技術』森北出版、2011 年
亀山康子他『気候変動と国際協調』慈学社出版、2011 年
菊池隆他『太陽熱エネルギー革命』日本経済新聞出版社、2011 年
小林紀之編『森林吸収源、カーボン・オフセットへの取り組み』全国林業改良普及協会、2010 年
小林彰『王道省エネ推進』
、日刊工業新聞社、2010 年
小林光他『低炭素都市』学芸出版社、2010 年
椎川忍『緑の分権改革』学芸出版社、2011 年
杉山大志他『省エネルギー政策論』
、エネルギーフォーラム、2010 年
鈴木邦成『グリーンサプライチェーンの設計と構築』白桃書房、2010 年
高木直樹『ながの発コペルニクス的エコ宣言』川辺書林、2001 年
高橋洋『電力自由化』日本経済新聞出版社、2011 年
144
竹内恒夫・倉坂秀史『環境−持続可能な経済システム』勁草書房、2010 年
竹ケ原啓介『環境格付』金融財政事情研究会、2010 年
田中俊六他『建築環境工学』井上書院、2006 年
田中充他『事例に学ぶ自治体環境行政の最前線』ぎょうせい、2008 年
鶴蒔靖夫『なぜ、いまカーシェアリングなのか』 IN 通信社、2011 年
寺島実郎・飯田哲也他『グリーン・ニューディール』NHK 出版、2011 年
中島清隆『気候変動問題の国際協力に関する評価手法』北海道大学出版会、2012 年
西岡秀三他『日本低炭素社会のシナリオ』日刊工業新聞社、2008 年
西宮晶他『CO2 削減に向けた次世代エネルギー技術ハンドブック』リアライズ理工センター、2001
年
野池政宏『省エネ・エコ住宅設計究極マニュアル』エクスナレッジ、2011 年
ハンス・ディーター・ヘグナー『ドイツ省エネ住宅の背景』特定非営利活動法人外断熱推進会議
伴ひかり『グローバル経済の応用一般均衡分析』晃洋書房、2011 年
樋口一清他『サステイナブル企業論』中央経済社、2010 年
広井良典他『
「環境と福祉」の統合』有斐閣、2008 年
深井有『気候変動とエネルギー問題』中央公論新社、2011 年
福田遵『改正省エネルギー法とその対応策』日刊工業新聞社、2009 年
藤井良広『進化する金融機関の環境リスク戦略』金融財政事情研究会、2011 年
藤野純一他『低炭素社会に向けた 12 の方策』日刊工業新聞社、2009 年
松岡 憲司『風力発電機とデンマーク・モデル』新評論、2004 年
水口剛他『環境と金融・投資の潮流』中央経済社、2011 年
南雄三『次世代省エネルギー基準』建築技術、2009 年
南雄三『断熱・気密のすべて』日本実業出版社、2004 年
宮台真司・飯田哲也『原発社会からの離脱』講談社、2011 年
向井憲一『温室効果ガスの算定と報告』省エネルギーセンター、2010 年
村上周三『CASBEE すまい(戸建)入門 』建築技術、2007 年
諸富徹・山岸尚之他『脱炭素社会とポリシーミックス』日本評論社、2010 年
森みわ『世界基準のいい家を建てる』PHP 研究所、2009 年
ヨアン・S. ノルゴー他『エネルギーと私たちの社会』新評論、2000 年
和田武『飛躍するドイツの再生可能エネルギー』 世界思想社教学社 、2008 年
和田武他『地域資源を活かす温暖化対策』学芸出版社、2011 年
科学技術振興機構研究開発戦略センター編『グリーン・ニューディール・オバマ大統領の科学技術
政策と日本』丸善プラネット、2009 年
「環境・持続社会」研究センター編『カーボン・レジーム』オルタナ、2010 年
環境法政策学会編『気候変動をめぐる政策手法と国際協力』環境法政策学会、2011 年
空気調和・衛生工学会編『給排水衛生設備計画設計の実務の知識』オーム社、2010 年
月刊環境ビジネス『東京都キャップ&トレード制度』宣伝会議、2010 年
原子力安全廃絶研究会編『Q &A で一気にわかる脱原発の教科書』洋泉社、2011 年
建築規定運用研究会編『建築法規ハンドブック』ぎょうせい、2009 年
GRI 日本フォーラム 2020 年の日本を創る会編『未来をスケッチ Vision2020』麗澤大学出版会、2006
年
自然エネルギー政策プラットフォーム編『自然エネルギー白書 2011』環境エネルギー政策研究所
145
2011 年
財団法人省エネルギーセンター『オフィスビルの省エネルギー』2009 年
財団法人省エネルギーセンター『工場の省エネルギーガイドブック 2011-2012』2011 年
財団法人省エネルギーセンター『商業施設の省エネルギー』2006 年
財団法人省エネルギーセンター『ビルの省エネルギーガイドブック 2011-2012』2011 年
財団法人省エネルギーセンター『ホテルの省エネルギー』2009 年
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構『スマートグリッド』アスキー・メディアワー
クス、2010 年
太陽光発電普及拡大センター『太陽光発電システム手引書<基礎編>』2011 年
東京都環境局『地球温暖化対策報告書作成ハンドブック[地球温暖化対策メニュー編]
(平成 23 年
2 月改訂版)
』2011 年
東京都環境局『地球温暖化対策報告書作成ハンドブック[本編]
(平成 23 年 3 月改訂版)
』2011 年
鳥取県『鳥取県環境白書 平成 22 年度版』
日刊工業新聞特別取材班編『スマートグリッド解体新書』日刊工業新聞社、2010 年
日本エネルギー経済研究所編『エネルギー・経済統計要覧』省エネルギーセンター、2011 年
日本建築学会『コンパクト設計資料集成』丸善、2005 年
日本建築学会『設計のための建築環境学』彰国社、2011 年
一般社団法人日本サステナブル建築協会編『CASBEE 新築評価マニュアル』財団法人建築環境・省
エネルギー機構、2010 年
一般社団法人日本サステナブル建築協会編『CASBEE 既存評価マニュアル』財団法人建築環境・省
エネルギー機構、2010 年
一般社団法人日本サステナブル建築協会編『CASBEE 改修評価マニュアル』財団法人建築環境・省
エネルギー機構、2010 年
一般社団法人日本サステナブル建築協会編『CASBEE 戸建-新築評価マニュアル』財団法人建築環
境・省エネルギー機構、2010 年
一般社団法人日本サステナブル建築協会編『CASBEE 戸建-既存評価マニュアル』財団法人建築環
境・省エネルギー機構、2011 年
一般社団法人日本熱供給事業協会『熱供給事業便覧 平成 23 年版)』2011 年
農山漁村文化協会『現代農業』2009 年 1 月号
東近江市『東近江緑の分権改革研究会報告書』2011 年
みずほ情報総研『カーボン・オフセット入門』中央経済社、2010 年
Fossil-fuel import price assumption by scenario (Current Policies Scenario), World Energy Outlook 2010,
IEA
REN21(Renewable Energy Policy Network for the 21st Century)編『自然エネルギー世界白書 2011』
環境エネルギー政策研究所、2011 年
<報告書>
青森市『青森都市計画マスタープラン』2003 年
飯田市『緑の分権改革推進事業報告書』2011 年
上田市上下水道局『平成 21 年度「緑の分権改革」推進事業に係るクリーンエネルギー導入検討業
務委託報告書』2010 年
小布施町『小布施町における新エネルギーに関する研究報告書』2011 年
146
神奈川県地方税制等研究会『環境税及び自動車関係諸税のあり方に関する中間報告』2010 年
神奈川県『神奈川県独自の炭素税等の税制に関する県民意識調査』2009 年
神奈川県地方税制等研究会『低炭素社会の実現に貢献する神奈川県独自の税制に関する検討結果報
告書』2009 年
環境省「環境技術実証事業平成 21 年度実証試験結果報告書の概要ヒートアイランド対策技術分野
(オフィス、住宅等から発生する人工排熱低減技術)地中熱・下水等を利用したヒートポンプ空調
システム」2010 年
環境省「高効率ごみ発電施設整備マニュアル」2010 年
環境省「J-VER 方法論 No.E007Ver.2.0 薪ストーブにおける薪の使用」
環境省『自主協定検討会 報告書』2001 年
環境省『諸外国における地球温暖化対策のための国内制度の検討状況(産業部門)』国内制度小委
員貝第5回会合(平成 13 年 6 月 8 日)資料、2001 年
環境省『地球温暖化対策地方公共団体実行計画(区域施策編)策定マニュアル、参考資料
地方公
共団体における施策事例』2009 年
環境省『地方公共団体による地球温暖化対策関連策∼施策実施状況と施策紹介∼』2008 年
環境省『2008 年度の温室効果ガス排出量(確定値)について」2010 年
環境省『平成 22 年度再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査』2011 年
環境省『無償割当(グランドファザリング及びベンチマークについて』国内排出量取引制度検討会
(第2回)資料、2008 年
財団法人関西社会経済研究所『地域の将来を踏まえた都道府県財政の予想と制度改革』2010 年
群馬県『群馬県緑の分権改革推進事業(地中熱利用)調査等業務報告書』2011 年
経済産業省「国内クレジット方法論 016 太陽熱を利用した熱源設備の導入」2011 年
経済産業省『住宅・建築物の低炭素化に向けた現状と今後の方向性』2010 年
経済産業省『省エネルギー技術戦略』2008 年
経済産業省『我が国の省エネルギー政策について』2011 年
経済産業省資源エネルギー庁『平成 21 年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書 2010)』
2010 年
経済産業省資源エネルギー庁・財団法人新エネルギー財団『ハイドロバレー開発計画ガイドブック』
2005 年
国土交通省『住宅・建築分野における省エネルギー対策について』2007 年
国土交通省中国運輸局『モーダルシフト事例集』2007 年
国家戦略室エネルギー・環境会議コスト等検証委員会『コスト等検証委員会報告書』2011 年
小諸市『小諸市緑の分権改革推進事業「森林バイオマスを燃料とする熱電併給事業の実行可能性調
査」成果報告書』2011 年
埼玉県『ストップ温暖化・埼玉ナビゲーション 2050』
財務総合政策研究所『環境問題と経済・財政の対応に関する研究会報告書』2007 年
札幌市『札幌市都市計画マスタープラン』2004 年
滋賀県『持続可能な滋賀社会ビジョン』
財団法人新エネルギー財団『平成 20 年度中小水力開発促進指導事業基礎調査(未利用落差発電包
蔵水力調査)報告書』2009 年
独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構『中小水力発電ガイドブック(新訂5版)
』2004
年
147
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構『NEDO 再生可能エネルギー技術白書―新たな
エネルギー社会の実現に向けて―』2010 年
独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構『バイオマスエネルギー量の推計方法(改訂版)
』
2009 年
信州木材認証製品センター『県散在の LCA(ライフサイクルアセスメント)調査報告書』2011 年
全国小水力利用推進協議会『小水力発電事例集 2009・2010』2011 年
茅野市『茅野市クリーンエネルギー(森林)調査業務報告書』2011 年
茅野市『茅野市クリーンエネルギー(太陽光)調査業務報告書』2011 年
茅野市『茅野市クリーンエネルギー(地熱)調査業務報告書』2011 年
千葉大学倉阪研究室・NPO 法人環境エネルギー政策研究所『永続地帯 2011 年版報告書』2011 年
WWF ジャパン『脱炭素社会と排出量取引』2007 年
中央環境審議会地球環境部会英国調査団『英国気候変動政策調査報告』2001 年 10 月
中央環境審議会地球環境部会中長期ロードマップ小委員会『中長期の温室効果ガス削減目標を実現
するための対策・施策の具体的な姿(中長期ロードマップ)(中間整理)
』2010 年
総合資源エネルギー調査会省エネルギー部会(第4回)資料『民生部門における省エネルギー対策』
2004 年
富山市『富山市都市マスタープラン』2008 年
長野県『長野県県産材利用指針』2009 年
長野県『長野県森林づくり指針』2010 年
長野県『長野県第 8 次県営林管理経営計画』2007 年
長野県『長野県バイオマス総合利活用マスタープラン』2004 年
長野県『平成 21 年度「緑の分権改革」推進事業報告書再生可能エネルギー導入可能性調査(小水
力発電)
』2011 年
長野県『平成 21 年度「緑の分権改革」推進事業報告書再生可能エネルギー導入可能性調査(地下
熱利用)
』2011 年
長野県環境保全協会・長野県林務部県産材利用推進室『薪ストーブ利用実態調査結果』2011 年
長野県環境保全研究所『長野県における地球温暖化減少の実態に関する調査研究報告書』2008 年
長野県環境保全協会『家庭のエネルギー消費に関するアンケート結果の概要』2010 年
長野市『長野市都市計画マスタープラン』2007 年
長野市『長野市地域省エネルギービジョン』2004 年
長野市『長野市地域新エネルギービジョン』2005 年
長野市『長野市地球温暖化対策地域推進計画』2009 年
長野市『ながのバス交通プラン』2010 年
「2050 日本低炭素社会」シナリオチーム『2050 日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス 70%削減
可能性検討』2008 年
財団法人日本エネルギー経済研究所『地球温暖化対策関連データ等に関する調査』平成 16 年度地
球温暖化対策技術開発等委託調査、2005 年
財団法人日本エネルギー経済研究所『地球温暖化対策関連データ等に関する調査―経済産業省委託
調査―』2005
財団法人日本エネルギー研究所『温暖化防止自主協定の評価に関する調査‐オランダ、ドイツ、イ
ギリスの事例研究』2007 年
農林水産省『平成 21 年度の荒廃した耕作放棄地の現状調査の結果について』2010 年
148
松本市『松本市次世代交通政策基本方針』2011 年
松本市『松本市総合都市交通計画』2011 年
松本市『松本市地域新エネルギービジョン』2004 年
松本市『松本市地域省エネルギービジョン』2003 年
松本市『松本市都市計画マスタープラン』2010 年
松本市『松本市バイオマスタウン構想』2011 年
全都道府県の地球温暖化対策推進計画
Edgard Bossoken (1999)
agreements policỳ
́
Case study, A comparison between France and The Netherlands of the voluntary
Study carried out in the frame of the MURE project financed by the SAVE programme,
̀
European Commission, Directorate General for Energy (DG 17)
Signe Krarup, Stephan Ramesohl (2000)
Efficiency
̀
Voluntary Agreements in Energy Policy-Implementation and
AKF Forlaget
Lynn Price (2005)
̀
́
́
Voluntary Agreements for Energy Efficiency or GHG Emissions Reduction in Industry
Proceedings of the 2005 ACEEE Summer Study on Energy Efficiency in Industry
Anual Energy Outlook 2011, U.S. Energy Information Administration
European Solar Thermal Industry Federation「Best practice regulations for solar thermal」
、2007 年
Intergovernmental Panel on Climate Change「IPCC, 2007: Climate Change 2007: The Physical Science Basis.
Contribution of Working Group I to the Fourth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate
Change」
、2007 年
Intergovernmental Panel on Climate Change「IPCC, 2007: Climate Change 2007: Impacts, Adaptation and
Vulnerability. Contribution of Working Group II to the Fourth Assessment Report of the Intergovernmental
Panel on Climate Change」
、2007 年
Intergovernmental Panel on Climate Change「IPCC, 2007: Climate Change 2007: Mitigation. Contribution of
Working Group III to the Fourth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change」
、
2007 年
International Energy Agency「World Energy Outlook 2010」
、2010 年
Inter Panel on Climate Change「Contribution of Working Groups I, II and III to the Fourth Assessment Report
of the Intergovernmental Panel on Climate Change(AR4 Synthesis Report)」、2007 年
Inter Panel on Climate Change「Special Report on Renewable Energy Sources and Climate Change Mitigation
(SRREN)」
、2011 年
Inter Panel on Climate Change「Managing the Risks of Extreme Events and Disasters to Advance Climate
Change Adaptation (SREX)」
、2011 年
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、2011 年
<統計データ>
経済産業省『包蔵水力』2011 年
国民経済計算結果(内閣府)
(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/menu.html)
『住宅用太陽光発電補助金交付決定件数』(太陽光発電普及拡大センター)
(http://www.j-pec.or.jp/information/data.html)
総務省『平成 20 年 住宅土地統計』2011 年
総務省『平成 20 年法人建物調査』2011 年
『電力統計情報』
(電気事業連合会)
(http://www5.fepc.or.jp/tok-bin/kensaku.cgi)
149
『都道府県別将来推計人口』
(国立社会保障・人口問題研究所)
(http://www.ipss.go.jp/pp-fuken/j/fuken2007/t-page.asp)
『日本の市区町村別将来推計人口(2008 年推計)
』
(国立社会保障・人口問題研究所)
(http://www.ipss.go.jp/pp-shicyoson/j/shicyoson08/t-page.asp)
『日本の世帯数将来推計(都道府県) 』
(国立社会保障・人口問題研究所)
(http://www.ipss.go.jp/pp-pjsetai/j/hpjp2009/t-page.asp)
『長野県の統計情報』
(長野県)
(http://www3.pref.nagano.jp/)
『長野県の県民経済計算』
(長野県)
(http://www3.pref.nagano.jp/toukei1/syotoku/syotok_1.htm)
長野県『県勢要覧』1992∼2011 年
長野県『民有林の現況』2011 年
日本エネルギー経済研究所『エネルギー・経済統計要覧』2011 年
『保有台数統計データ』
(財団法人自動車検査登録情報協会)
(http://www.airia.or.jp/number/index.html)
『平成 22 年ロードカーブ(中部電力)』経済産業省
(http://www.meti.go.jp/setsuden/pdf/performance_04.pdf)
林野庁『森林・林業統計要覧 2011』2011 年
『林業統計書(平成 20 年度)
』
(長野県)
(http://www.pref.nagano.lg.jp/rinmu/rinsei/03toukei/toukei/H20/20toukei.htm)
『United Nations Population Division Home Page』(国連人口部)(http://www.un.org/esa/population/)
(主な参考書籍、報告書、白書、統計データを記載)
参考資料 17
150
本文図表一覧
図表1−1
長野県の人口・世帯数の推移(実数+予測)
図表1−2
長野県の県内総生産(名目・実質)の推移
図表1−3
過去 100 年間の世界の平均地上気温の推移
図表1−4
気温上昇量の将来予測(長野県を囲む領域と日本全域)
図表1−5
マツ枯れ危険域の予測(長野県)
図表1−6
リンゴ生育適地の将来予測(長野県)
図表1−7
地球温暖化対策に係る国際社会の主な動き
図表1−8
地球温暖化対策に係る国内(政府+他自治体)の主な動き
図表1−9
地球温暖化対策に係る長野県・県内の主な動き
図表1−10
化石燃料輸入総額の推移・国際石油価格予測
図表1−11
世界の電力供給における自然エネルギーの割合(2010 年)
図表1−12
ドイツのエネルギー消費、GDP、温室効果ガスの推移
図表1−13
日本のエネルギー消費、GDP、温室効果ガスの推移
図表1−14
長野県の県民所得と光熱・水道費の推移
図表1−15
中部電力管内の家庭向け電力料金の推移
図表1−16
各部門の電力化率(電力消費量/最終エネルギー消費量)の推移
図表1−17
家庭において熱を利用する主な機器の世帯当たり普及状況
図表1−18
中部電力の1時間毎の電力分布(2010 年度)
図表1−19
全国および長野県の温室効果ガスの排出割合(2008 年度)
図表1−20
長野県の温室効果ガス排出量の推移(1990-2009 年度)
図表1−21
長野県における産業・業務部門のエネルギー使用量・CO2排出量・県内総生産(名
目)の推移
図表1−22
長野県における家庭部門のエネルギー使用量・CO2排出量・世帯数の推移
図表1−23
長野県における運輸部門のエネルギー使用量・CO2排出量・自動車保有台数の推移
図表1−24
長野県の自然エネルギー導入量とポテンシャル
図表2−1
長野県内の電力販売量と二酸化炭素排出原単位
図表2−2
目標イメージ(温室効果ガス排出量)
図表2−3
目標イメージ(最終エネルギー消費量)
図表2−4
目標イメージ(自然エネルギー電力供給設備容量)
図表2−5
目標イメージ(自然エネルギー電力供給設備容量+省エネ・節電)
図表2−6
新しい「戦略計画」の体系案
図表3−1
新しい「戦略計画」の体系案に基づく政策パッケージ案
図表3−2
事業者省エネ政策パッケージ(イメージ)
図表3−3
建築省エネ政策パッケージ(イメージ)
図表3−4
自然エネルギー政策パッケージ(イメージ)
図表5−1
長野県の温室効果ガス排出量の将来推計
図表5−2
地球温暖化対策による経済波及効果
図表5−3
地球温暖化対策による就業誘発効果
図表5−4
自然エネルギー利用によって創出される就業者数
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