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LNG 取引条件の変化に関する調査 - 一般財団法人 日本エネルギー経済
IEEJ:2005 年 10 月掲載 ∗ LNG 取引条件の変化に関する調査 2. 取引条件に変化を及ぼす要因 産業研究ユニット 石油・ガスグループ 主任研究員 石賀 敬 産業研究ユニット 石油・ガスグループ 主任研究員 河端 伸一郎 産業研究ユニット 石油・ガスグループ 研究員 佐々木 慶治 本章では、従来の LNG 取引条件がどのような要因から変化してきているのかを分析する。 その要因を(1)規制緩和の進展、(2)LNG プロジェクトのコスト低減、 (3)LNG フローの 多様化、の 3 点に求め、各々について LNG 取引条件の変化に係わる観点からその内容を把 握する。 (1)規制緩和 近年の世界的な電力・ガス市場における規制緩和の進展により、これまで安定供給に大 きな役割を果たしてきたものの硬直的であった市場構造が変化しつつあり、新規参入者が 生まれている。これにより需要家がより合理的な価格で供給者を選択できる幅が広がって いる一方で、既存の事業者にとっては、需要想定の不確実性が増大してきている。 ①アジア(日本、韓国、台湾) A.日本 わが国では、1990年代の半ばから、電力・ガス市場における規制緩和が進行してきた。 電気事業においては、1995年の電気事業法改正により発電事業への競争原理の導入が図 られたが、1999年の改正において、新たな電気事業のカテゴリーとして、特定規模需要(特 別高圧受電で使用規模が原則として2,000kW以上:総消費電力量の約26%相当1)に対して電 力会社の所有する送電線を利用し電力を供給する特定規模電気事業者(PPS:Power Producer and Supplier)が追加され、2000年3月から小売市場の部分自由化が開始された。2003年6 月には再び電気事業法が改正され、2004年4月には自由化市場の範囲(契約電力容量)が 2,000kWから500kWの高圧需要家(電力量の約40%)に拡大されており、2005年4月には50kW 以上の高圧需要家を対象に拡大(同約63%)されることとなっている。 一方、ガス事業の規制緩和としては、1995 年に年間ガス使用量 200 万 m3 以上の大口需要 家(販売量シェア約 36%)へのガス販売が自由化され、同時に東京ガス、大阪ガス、東邦ガ スの大手 3 社が託送についてのルールを作成・公表したことにより、一般ガス事業者によ ∗ 本報告は、平成 16 年度に経済産業省から受託して実施した受託研究の一部である。この度、経済産業省 の許可を得て公表できることとなった。経済産業省関係者のご理解・ご協力に謝意を表するものである。 1 2001 年度数値。自家発電を含まない。 1 IEEJ:2005 年 10 月掲載 る供給区域外の大口需要家への供給や一般ガス事業者以外の事業者によるガス事業への参 入が可能になった。また、1999 年には自由化範囲が 100 万 m3 以上(販売量シェア約 40%) まで引き下げられ、同時に電力・ガス事業の兼業規制が廃止されたこともあり、電力事業 者によるガス事業への参入が促されることになった。さらに、2003 年の法改正により自由 化範囲が 2004 年に 50 万 m3 以上(販売量シェア約 44%)に拡大され、2007 年には 10 万 m3 以上(販売量シェア 50%)に拡大される予定である。また、LNG 受入基地を持つ事業者以外 の事業者はガス事業に参入することが困難であった点を踏まえ、LNG 受入基地の第三者利用 (TPA)を促進するために、LNG 受入基地を保有あるいは運営する事業者が自主的に要領を 作成し公表している2(表 2-1)。 表 2-1 ガス事業法改正による規制緩和の進展 1995 年 3 月施行 1999 年 11 月施行 2004 年 4 月施行 200 万 m3/年以上 100 万 m3/年以上 50 万 m3/年以上 自由化割合* 35.8% 40.0% 43.9% 卸供給制度 許可制 届出制 届出制の時限的廃止 自由化範囲 (年間契約ガス販売量) 託送ルール LNG 基地 その他 大手 3 社(東京、東邦、 大手 4 社(東京、東邦、大 大 部 分 の 事 業 者 に 約 款 大阪)託送ガイドライン 阪、西部)に約款義務 義務 作成 相対交渉による 規定なし 規定なし 第三者利用 大口ガス事業創設 兼業規制廃止 ガス導管事業創設 * %は平成 12 年度における需要家件数上位 10 社データ(全体の 85.4%)による自由化割合 (出所)日本エネルギー経済研究所作成 これら一連の規制緩和により、電力・ガス事業への新規参入が促進され、既存の LNG 買 主である電力・ガス事業者では、LNG の将来需要が不確実になるとともに、安価な燃料・原 料調達の要請が従来以上に増してきており、次章で詳しく触れるように取引条件面におい ても、短中期契約、数量オプション、FOB 化など契約面での工夫を行うようになってきてい る。 また具体的な参入事例としては、東京電力や関西電力が託送制度を利用してガス事業へ の参入を図っているほか、多くの電力会社が LNG を卸売する事業に進出している。一方、 東京ガス、大阪ガスが火力発電所を建設して天然ガス発電事業に参入を図っている。 B. 韓国 1999年に政府は、天然ガス事業再編計画(Restructuring Plan for Natural Gas Industry) 2 東京ガス、東京電力などが、それぞれ「LNG 基地利用取扱い要領」 、「LNG 基地利用の協議に関する要領」 (2004 年 8 月)などを公表。 2 IEEJ:2005 年 10 月掲載 を作成し、韓国ガス公社(KOGAS)の分割民営化等を盛り込んだ基本的なガス市場改革の骨子 を示したが、法改正は、反対勢力の存在および大統領選挙により中断され、実現できない 状態が続いた。 この状況下で政府は、2001 年に石油事業法(Oil Business Act)を改定し、認可制によ り自家消費目的の事業者に対して LNG の直接輸入を許可した。これに該当する新規参入者 は、少なくとも 100,000m3 の貯蔵能力を有することが規定されている。 以下は、LNG 直接輸入を計画している自家消費目的の事業者の具体例である。まず、POSCO と K-Power(SK と BP の合弁企業)は政府に対して LNG 直接輸入の許可を得ており、POSCO が 建設中の光陽(Gwangyang)LNG 受入基地へ、POSCO が 2005 年より、K-Power が 2006 年より、 それぞれ LNG の輸入を開始する予定である。この天然ガスは自家発電プラント及び製鉄所 で利用される。また、LG-Caltex Oil も、自社の精油所及び発電プラント向けに直接輸入 するための許可を得ている。さらに韓国電力公社傘下の発電 4 社(南部・中部・西部・東西 発電会社)は、燃料費の縮減を目的に KOGAS からの卸供給を 500 万トン/年規模の LNG 直接 調達に切り替える計画を発表、政府に対して LNG 調達提案書を提出している。 一方、2003年には政府から新しい事業再編計画案が立案され、LNG輸入・販売(卸売およ び小売)・設備の各セクターへの新規参入者を容認することと、KOGASの設備セクターを KOGASの管理下に置くことを発表している。この案をもとに政府はKOGASに対して事業改革 案を提出するよう要請したが、現時点でもKOGASの労使双方での合意が得られていない。 この事業改革の遅れは LNG 長期契約にも影響を及ぼした。KOGAS は、当初は事業改革問題 が解決してから 2008 年以降の輸入分に関する新規 LNG 契約を締結する計画であったが、改 革論議の決着の見通しが立たないことを受けて、政府への了解を取り付けたうえで 2005 年 2 月にようやく LNG 輸入に関する HOA を締結した。 C. 台湾 台湾の天然ガスの生産、LNG 輸入およびガス卸売は、中国石油有限公司(Chinese Petroleum Corporation; CPC)が事実上の独占状態にある。法律によって CPC の独占が認められている わけではないが、CPC が唯一の天然ガスインフラ(LNG 輸入基地、幹線パイプライン)およ びガス田所有者であることから新規参入が困難となっている。 エネルギー産業の規制緩和が世界的な傾向になっていることを受け、台湾でも国営エネル ギー企業の民営化やエネルギー市場の自由化政策が計画されているが、進展の見通しは立 っていない。第 2LNG 受入基地の建設計画においては、台湾電力が政府の指示により、火力 発電所に供給する LNG を入札方式で決定することとなった。入札には CPC のほか、現地企 業 Tung Ting Gas Corp.、Shell、United Resources が参加したが、既存事業者である CPC が落札した。その結果、LNG 輸入における CPC の独占体制は維持されている。 3 IEEJ:2005 年 10 月掲載 ②欧州 欧州における国営企業を中心とした独占的なガス市場への競争理念の導入は、イギリス では既に 1980 年代から行われていたが、EU レベルでは、1998 年の EU ガス指令(Gas Directive)により進められることとなった。1998 年 8 月に発効したこのガス指令では、加 盟国は 2000 年 8 月までに天然ガス年間消費量の 20%、2003 年 8 月までに 28%、2008 年 8 月 までに 33%を自由化することとされ、また、天然ガスパイプライン、LNG・貯蔵施設への TPA 制度の確立、天然ガス輸送・貯蔵・配給/販売部門における会計分離などが規定された。そ して 2000 年 8 月までに、当時の EU 加盟 15 ヶ国中、フランス、ドイツ、ルクセンブルクを 除く 12 ヶ国が国内法の整備を終え、市場の開放を開始した。 しかし各国間において履行の足並みが揃わず一元化が求められたこと、また TPA 適用規 則などの実践的な対応が求められたことなどによりガス指令の改正が求められることとな り、改正ガス指令が 2003 年 6 月に欧州議会で可決された。この改正では、 ・ 2004 年 7 月までに家庭用を除く自由化、および 2007 年 7 月までに全面自由化 ・ 輸送会社と配給会社の法人ベースでの分離(アンバンドリング)3 ・ ガス貯蔵システムへの TPA の促進 などが規定されている。 こうした規制緩和により、欧州の主要国においては、2004 年 7 月時点で、フランスとベ ルギーを除き、ほとんどの国で 100%の需要家が自由化対象となり、その供給者を選択する ことが可能になっている(表 2-2)。 表 2-2 欧州におけるガス市場開放のスケジュール(主要国) 98年ガス指令 改正ガス指令 イギリス ドイツ イタリア オランダ フランス スペイン ベルギー 2000年8月 2003年8月 20 28 100(*) 100 65 45 20 67 47 2004年7月 100(家庭用を除く) 100 100 100 100 100(家庭用を除く) 100 90 100 100 100 60 37 100 65 (%) 2007年7月 33 100 100 100 100 100 100 100 100 (*)イギリスでは 1998 年 5 月に全面自由化が完了している。 (出所)Activity Report June 2004、CRE(フランスのエネルギー規制機関) またこの改正ガス指令では、旧ガス指令において規制ベースか交渉ベースのどちらかを 選択できるとされていた LNG 設備への TPA について規制ベースのアクセスが定義された4。 3 4 異なる活動やサービスを同一の企業が所有する別法人に分離する。 スペインでは既に 1997 年から、イタリアでは 2001 年から規制機関の認可に基づくアクセス料金基準が 4 IEEJ:2005 年 10 月掲載 さらにその第 22 条において、ガスパイプライン、LNG 設備、地下貯蔵設備に関する新規の インフラ投資については、投資促進の観点から例外的に TPA の適用除外措置を設けている。 欧州ではこうした自由化過程を経て、それまでの「1 国 1 買主」主体の独占的な天然ガス 市場が変革され、LNG 輸入においても新規参入者が生まれている。 主要 LNG 輸入国のスペイン、イタリアのガス市場は 2003 年から全面自由化されている。 スペインのガス市場自由化は 1990 年代半ば以降既に進められていたが、1998 年の旧 EU ガ ス指令発効に伴い Hydrocarbon Act が成立し、ガス市場自由化のスケジュールが示された。 その後、自由化を加速させるため 2000 年には Real Derecto 23 が発効し、全面自由化を 2003 年より実施することや、2003 年からいかなるガス供給者も国内販売シェアが 70%を超えな いことが規定された5。スペインにおける LNG 事業への新規参入者としては、BP などのほか、 CCGT(Combined Cycle Gas Turbine)普及による発電部門での急速な天然ガス需要の増大 を反映し、Iberdrola、Union Fenosa といった電力会社の進出が目立っている。天然ガス輸 入の 6 割以上を LNG に依存するスペインにおいては、新規供給契約のほとんどは LNG によ るものである6。イタリアでは、スペイン同様、旧 EU ガス指令を受け、国内法(Decreto Legislativo n.164)が 2000 年 5 月に成立しており、その中で自由化範囲の拡大などにつ いて具体的な方式、スケジュール等に関する規定がなされた。事業者の国内ガス販売量の 上限設定については、2003 年から一企業が国内消費量の 73%以上のガスを供給(国産、輸 入を含め)することが禁じられている。この上限値は、毎年 2%ずつ切り下げていき、2009 年には 61%になる。また、一企業が最終需要家に対して 50%以上の供給はしてはならないと され、このシェア上限値も年毎に引き下げられることとなっている。イタリアでも、電力 会社の Enel、Edison やイギリスの BG グループなどにより LNG 輸入事業への新規参入が行 われている。 フランスでは、他の主要 EU 加盟国の中で市場開放や国内自由化法の整備が遅れた状態に なっていたが、2003 年 1 月には自由化範囲などを規定した国内法7が制定された。2004 年 7 月には家庭用以外の需要家が自由化対象となっている。Gaz de France では同グループ売上 の 70%にあたる 50 万件がそのガス供給者を変更することが可能となったとしている。フラ ンスにおいては Total が Gaz de France によりフランス南部に建設中の Fos-sur-Mer2 LNG 受入基地の 3 分の 1 の権益を確保し、新たな LNG 事業の競争者となっている。 さらに EU では競争を促進する観点から、LNG 契約における仕向地条項に関しその緩和に それぞれ公表されている。またフランスにおいても、2000 年から Gaz de France が自主的にアクセス料金 を公表してきたが、2003 年より規制機関の認可となっている。 5 スペインの自由化における特徴的な点として、市場は 100%自由化されているが、需要家は規制市場と称 される政府が価格を管理する市場にとどまることも出来ることが挙げられる。産業用等に天然ガスを使用 する大口需要家は、自由化市場において供給者同士で価格を競合させて天然ガスを購入する場合が多い。 6 パイプラインによる天然ガス供給においては Gas Natural グループが支配的であるという事情もある。 (The Players on the European Gas Market 2004 Edition、P94) 7 LOI n° 2003-8 du 3 janvier 2003 relative aux marches du gaz et de l'electricite et au service public de l'energie(「ガス・電力市場およびエネルギー公共サービスに関する法律」) 5 IEEJ:2005 年 10 月掲載 向けた動きもある。(3-(4)-①参照) なお今後 LNG 輸入国となるイギリスでは旧ガス指令発効以前から全面自由化が行われて おり、輸送設備の所有分離(非競争部門と競争部門の活動を資本関係のない別法人に分離) も行われている。また国内の主要高圧パイプライン網をカバーする概念上のハブ(Trading Place)として NBP(National Balancing Point)が存在し、現物のスポット取引、IPE (International Petroleum Exchange)の先物等が扱われる非常に流動性の高いガス取引 ハブが形成されている。 ③アメリカ アメリカガス産業の連邦レベルでの天然ガス市場の規制緩和は 1970 年代後半から進展し てきたが、1992 年、FERC(連邦エネルギー規制委員会)により発せられたオーダー636 号 でほぼ完了している。現在では進展度合いは様々であるが、各州レベルでも州内パイプラ イン会社や地域配給会社を対象とした規制緩和が進行中である。 オーダー636 号とは、 ・ オープンアクセス輸送を提供する州際パイプライン会社は、全ての需要家に対して、非 差別的な輸送・貯蔵設備のアクセスや、電子掲示板(Electronic Bulletin Board:EBB) などを通じた正確で即時的な情報のシステム提供を行う。 ・ オープンアクセス輸送を提供する州際パイプライン会社は輸送機能に特化し、販売機能 は関連会社に分割される。 ことなどを規定したものであり、これによりあらゆるガス配給事業者が同等の条件で州際 パイプラインの輸送サービスを利用できるようになり、また伝統的なパイプライン会社の 天然ガス輸送・販売一体型サービスが分離され、需要家は供給、貯蔵、輸送、バックアッ プ等といった機能単位に分離したサービス毎に契約・使用できるようになっている。 先に述べたとおりアメリカにおける連邦レベルでの自由化は概ね完了しており、売主は 需要脱落のリスクを抱えてはいるものの、アジアや、イギリスを除く欧州と異なり市場の 流動性が極めて高いため、需要が脱落した場合にも売主は市場で代替の買主を見つけるこ とが容易で、結果として買主は需要脱落のリスクを考慮する必要はほとんどない。(3(2) ①参照) また自由化の過程においてアメリカの LNG 受入基地は州際パイプラインと同一視されて 概ね TPA の対象とされてきた。しかし、基地投資への事業者のインセンティブを阻害する として、FERC は、2002 年 12 月に Dynegy による Louisiana 州 Hackberry における LNG 受入 基地建設計画を仮承認した際に、LNG 受入基地を従来の規制適用対象から外しその運用を当 事者間の相対交渉に委ねることとした(Hackberry Decision)。こうした措置の影響もあり、 現在、アメリカでは数多くの LNG 受入基地が計画されている。 6 IEEJ:2005 年 10 月掲載 (2) LNG プロジェクトコストの低減 液化基地や LNG 船、受入基地といった一連の LNG インフラの初期投資額は、基地および船 舶の大型化や各インフラにおける要素技術の進展、さらに要素技術を有する企業間および コントラクター間の競争激化に伴い、低減する傾向にある。IEA によると、LNG 年間液化能 力 1 トンあたりの初期投資額は 1990 年代半ばに約 700 ドル/トンであったものが、2002 年 には約 500 ドル/トンとなっており、今後もさらに低減していくものと予測している(図 2-1)。 図 2-1 LNG インフラの初期投資額の変遷/見通し (ドル/トン) …液化基地、 …輸送、 …受入基地 (注)輸送コストは、航行距離 4,000km を対象としている。 (出所) IEA, World Energy Investment Outlook, 2003 図 2-1 から、この 10 年間で液化基地および LNG 輸送におけるコスト縮減が著しいことが わかる。 本節ではこれら LNG インフラを構成する要素、すなわち液化基地、LNG 船および受入基地 のコストの傾向とその要因について示し、および今後のコスト見通しについて概観する。 ① 液化基地 液化基地の建設費は近年、減少の一途をたどっている。1983 年に運転開始した 260 万ト ン/年×3 トレインの Malaysia LNG(Satu) では、LNG 年間液化能力 1 トンあたりの EPC コス トは 433 ドル/トンであった8。これが 1990 年代以降には、EPC コストは急激に減少してき 8 Poten & Partners 調べ。 7 IEEJ:2005 年 10 月掲載 た。図 2-2 は、最近約 10 年間に稼働した主な液化プロジェクトの EPC コストを年間液化能 力 1 トンあたりのコストで整理したものである。液化基地の低コスト傾向は現在建設中の 液化プロジェクトにおいても新規・拡張の別を問わず続いており、このうち 2005 年完成予 定で液化能力 720 万トン/年の Egyptian LNG(Train-1,2)新規建設の場合は 220 ドル/トン、 2006 年完成予定で 520 万トン/年の Atlantic LNG 拡張(Train-4) の場合は 178 ドル/トンと なっている9。 図 2-2 新規 LNG 液化基地の EPC コスト 液化能力1トン あたりの建設費 (ドル/トン) 400 (1999年) (1996年) 300 (2000年) 200 100 0 Qatargas Bonny Island Atlantic LNG RasGas Qalhat LNG (注 1)カッコ内は、運転開始年次を指す。 (注 2)上記コストには、仮設費、パイプラインなど付帯設備建設費、港湾浚渫費などは含まれていない。 (出所)Oil & Gas Journal, 2003 年 4 月 14 日 このようなコストダウンの要因は、①技術革新による LNG プラントの大型化およびエネル ギー効率の向上、②ライセンス企業の増加による適用技術の多様化、③コントラクター間 の競争激化、④プラント建設期間の短期化、等である。 図 2-3 は、液化基地におけるトレインあたりの液化能力を時系列的に整理したものである。 最近 10 年間では、わずかではあるが液化プラントの大型化が進行していることが読み取れ る。また、現在建設中もしくは HOA、SPA が締結されている新規液化基地においては、液化 プラントの大型化が顕著になることがわかる。 9 Gas Strategies 調べ 8 IEEJ:2005 年 10 月掲載 図 2-3 トレインあたり液化能力の推移 トレインあたり液化能力 (万トン/年) 800 600 400 200 0 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 稼働年次(年) 1995 2000 2005 2010 (出所)各社プレスリリースなどをもとに日本エネルギー経済研究所作成 液化プラントの大型化および高効率化が実現した主な背景には、プラントの中核をなす冷 凍機の駆動形式の進展を挙げることができる。冷凍機は、古くは蒸気タービン駆動であっ たものが 1980 年代にはガスタービン駆動となり、1990 年代にはガスタービンの大型化が図 られた。近年では高効率の大型可変速電動機による駆動方式が実用化されている。 また液化技術については、1970 年代以降の大部分の液化プラントにおいて Air Products & Chemicals Inc.(APCI) の液化技術が採用されてきたが、1999 年に Phillips/Bechtel が液 化プラント市場に復帰したことや、Shell が SakhalinⅡで、Linde が Snohvit LNG で、それ ぞれ新規液化技術を開発して参入したことにより、ライセンス企業間の受注競争が本格化 している。 ただし、今後数年の傾向を見た場合に、陸上液化プラントにおいては、この 10 年間で実 現した技術革新は起こりにくいことが考えられる。先に述べた冷凍機の駆動形式の場合、 電動機の超大型化、さらにはコンバインドサイクル発電との組み合わせによるコストダウ ン等が考えられるが、これらはいわゆる技術融合であり、大幅なコストダウンをもたらす ような技術革新は未知数である。そのため、鋼材などの素材価格の急騰などがない限りは、 液化基地コストはさらに低減するものと考えられるが、その低減率は鈍化するものとみら れる。 一方、新規の沖合天然ガス田における液化プロジェクトでは、Floating Production 9 IEEJ:2005 年 10 月掲載 Storage and Offloading System(FPSO)10の適用が考えられるが、適用対象として中小ガス 田11が有力といわれていることに加えて、実用化にはさらに技術的検証が必要なことから、 今後数年間での LNG 市場へのインパクトはないものとみられる。 ② LNG 船 A. LNG 船の大型化と建造費 1960 年代以降、おもに欧米の造船会社によって建造されてきた LNG 船は、1980 年代を迎 えると川崎重工(現在は川崎造船に分社化)、三菱重工、三井造船など日本の造船会社が参 入するようになり、その後 1990 年代半ばまでは日本の造船会社が LNG 船市場のシェア首位 を獲得することとなる。1990 年代後半に韓国の造船会社(現代重工、三星重工、大宇造船、 韓進重工)が LNG 船市場に参入してからは、LNG 需要の拡大や LNG 船が建造可能な造船会社 数の増加に伴い、世界の造船業界は LNG 船建造費のコストダウン競争にさらされることと なった。韓国の造船会社はこの市場では後発的であったが、市場獲得を成功裏に進め、現 在では LNG 船市場の重要なプレイヤーとなっている。 2004 年末現在、LNG 船は 175 隻が稼働中であり、韓国の造船会社が LNG 船建造に参入した 1990 年代後半から建造数が急増している。また、すでに造船契約済みの LNG 船も含めると、 2008 年までは LNG 船新造ラッシュが継続し、かつ大型化する傾向が見られる(図 2-4)。 10 浮体式 LNG 生産・貯蔵・払出し設備。LPG 生産設備において実用化されている技術を LNG に応用しようと するもので、ガス田から液化プラントまでのパイプラインと陸上での液化プラント用地が不要となる。ま た、ガス田が枯渇すれば液化プラントを搭載したまま新規ガス田に移設することができる。現在は、液化 能力 100∼500 万トン/年、タンク容量 240,000m3 が提案されている。 11本稿では、可採埋蔵量が数 Tcf 程度のものを「中小ガス田」とする。 10 IEEJ:2005 年 10 月掲載 図 2-4 LNG 船隻数および累積容量 (万m 3 ) (隻) 300 4,000 3,500 250 2004年末現在 175隻, 2,086万m 3 3,000 200 2,500 150 2,000 LNG船舶数(隻) 1,500 100 1,000 50 500 累計容量(万m 3 ) 0 0 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 (年) (出所)各社プレスリリースなどをもとに、日本エネルギー経済研究所作成 従来、LNG 船の国際標準サイズは 125,000m3 級とされてきた。その後、LNG 船内に収納さ れる LNG タンクの防熱技術の進歩などにより、国際標準の船型を維持しつつタンク容量を 増加させる傾向が見られるようになった。韓国の造船会社が市場参入した 1990 年代半ばに は、タンク容量は 137,000m3 に増加し、現在では最大容量 145,000m3∼147,000m3 が国際標準 サイズとなっている。さらに、現在発注済みの LNG 船のうちタンク容量が 150,000m3 を超え るものも出現している(図 2-5)。 11 IEEJ:2005 年 10 月掲載 図 2-5 LNG 船容量の推移 (隻) 120 200,000m 3 ∼ 100 150,000∼200,000m 3 80 100,000∼150,000m 3 60 ∼100,000m 3 40 20 5∼ 20 0 0∼ 20 20 0 5∼ 19 04 99 94 19 9 19 8 19 9 0∼ 19 89 5∼ 19 84 19 8 0∼ 19 79 5∼ 19 19 7 0∼ 19 19 7 ∼ 19 69 74 0 就航開始年次(年) (出所)各社プレスリリースなどをもとに、日本エネルギー経済研究所作成 日本が LNG 船造船産業に参入した 1980 年代前半から、韓国勢が市場参入した 1990 年代半 ばまでの約 10 年間は、LNG 船は貨物船舶の中で最も高価なものであり、1993 年時点の国際 標準サイズ 125,000m3 級の建造費は 2 億 5,000 万ドルであった。それが、韓国勢の参入によ り建造費は大きく急激に低減し、2000 年には国際標準クラスで 1 億 5,000 万ドルとなった。 すなわち、LNG 船の単位容量あたり建造単価は 2,000 ドル/m3 から 1,200 ドル/m3 と大幅に低 減した。また、現在発注済みの LNG 船には、容量が 150,000m3 を超えるものがあり、大型化 も建造単価低減の主因となっている。 最近の LNG 建造費の例として、BP が現代重工に発注したインドネシア Tangguh∼メキシコ /韓国向けの LNG 船(容量 155,000m3)8 隻の建造費は 1 隻あたり 1 億 8,000 万ドル(約 1,160 ドル/m3)、Teekay, Tsakos, 日本郵船コンソーシアムが大宇造船に発注した LNG 船(同 151,700m3)の建造費は 1 億 7,000 万ドル(約 1,120 ドル/m3)であった(図 2-6)。LNG 船建造 費の低減傾向は現在も続いている。たとえば、QatargasⅡが現代重工に発注した LNG 船(同 151,700m3)の船価は、1 隻あたり 2 億 3,500 ドル(約 1,090 ドル/m3)といわれている。 12 IEEJ:2005 年 10 月掲載 図 2-6 LNG 船建造費の推移(1997 年以降) 260 240 $ million 220 200 180 160 140 100 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 120 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 (出所)Gas Strategies 今後の建造費については、2003 年に IEA が、建造船台(ドック)不足が生じることがなけ れば、2030 年までにさらに 20%のコスト低減が見込まれる、との見解を示している。しか し、現在は LNG 船需要が急増しており、建造費はここ 1 年間で 17%上昇している。加えて、 2004 年にみられた世界的な鋼材価格急騰が影響し、造船業界では短期的に LNG 船価が上昇 するものと見ている。韓国 大宇造船では 2005 年の鋼材価格が前年比 20%増になるのに伴い、 2005 年契約分の LNG 船の建造費は 150,000m3 級で 2 億ドル超になると予測している12。 B. 傭船料の低減 LNG 船は通常、特定の液化プロジェクト向けに長期傭船される。特に、傭船期間はプロジ ェクト期間全体であることが多い。傭船料については LNG 船の需給状況、建造時点のコス ト(建造費等)、船齢や契約期間(短・中・長期)によって定められる部分が大きく、需要 逼迫時には建造後 20 年を経過したような中古 LNG 船でもプレミアムが加わることがある。 しかし、最近の傭船の傾向としては、新しい船主が傭船料低減を企図して LNG ビジネス に参入していること、また定期傭船方式を採用していることが挙げられる。この傾向は傭 船料低減の要因と捉えることができる。 最近の定期傭船料は世界標準クラスの LNG 船の場合で約 60,000 ドル/日程度、スポット・ 12 大宇造船プレスリリース”Predictions for this year’s shipbuilding industry”、2005 年 1 月 11 日 13 IEEJ:2005 年 10 月掲載 短期契約での傭船料は約 100,000 ドル/日といわれている。このように定期傭船が可能な LNG 船が増加するにつれて、買主側から定期傭船費の低減へのさらなる圧力がかかるものとみ られる。 ③ 受入基地 LNG 受入基地建設コストは、それが設置される地域、立地条件により異なってくる。図 2-7 は、1999 年末時点の再気化能力 MMBtu あたりの受入基地建設費を地域ごとに整理したもの である。これによると、欧米の受入基地の建設費よりも東アジア地域、特に日本での建設 費が相対的に高くなっていること、また同じ地域でも建設費に幅があることがわかる。 建設費の地域間格差の主な要因は、以下のとおりであると考えられる。 ①相対的に東アジアは、欧米に比べて地価が高水準である。 ②欧米では幹線ガスパイプライン網が発達しているため、需要地から離れた場所での受入 基地の立地が可能である。一方、東アジア、特に日本では、大需要地である都市部の近 傍であって、かつ幹線ガスパイプラインの沿線近傍に整備せねばならない。 ③日本・台湾は大規模地震を受ける頻度が高く、そのため LNG タンクは耐震性に優れた地 下式が多く設置される。 ④また東アジアでは LNG 輸入依存度が高いため、供給セキュリティの観点からタンク容量 あるいは基数を多く設置する必要がある。 また、地域とは無関係に発生する建設費格差は、基地ごとの港湾工事の程度、すなわち防 波堤・浚渫工事の有無や、再気化能力に無関係に着船桟橋が必要なことに依存するものと 考えられる。 図 2-7 地域ごとの LNG 受入基地建設費(1999 年末時点) 7 US$/MMBtu 6 5 4 3 2 1 0 US Europe Korea Taiw an Japan (出所)Gas Strategies 上述の建設費格差のため、受入基地のコストダウン要因を定量的に分析することは困難で あるが、LNG タンクの大型化が受入基地の建設単価低減の主因になっているものと思われる。 14 IEEJ:2005 年 10 月掲載 日本の受入基地を例に、現在設置されている LNG タンクの容量を時系列的に整理したもの が図 2-8 である。これによると、1990 年代に 3 大都市圏以外で 30,000kl のタンクが設置さ れているが、それ以外は LNG タンクが大型化している傾向が見られる。 図 2-8 日本の LNG タンク容量の変化 (kl) 250,000 200,000 150,000 100,000 50,000 0 1965 1970 1975 1980 1985 1990 完成年次 地下式 1995 2000 2005 2010 地上式 (出所)各社プレスリリースをもとに日本エネルギー経済研究所作成 なお、IEA は、今後の受入基地の建設単価については LNG タンクなどの大型化により低減 するとの見解を示しており、現行の 8,600 万ドル/bcm/年(2.39 ドル/MMBtu)から、2010 年 には 7,700 万ドル/bcm/年(2.14 ドル/MMBtu)に、2030 年には 6,500 万ドル/bcm/年(1.81 ド ル/MMBtu)に低減する、と予測している13。 (3)LNG フローの多様化 これまで単一地域間同士の流れが主流であった LNG フローが、新規の液化基地および受 入基地の増加、LNG 船新造ラッシュ、傭船契約を満了した LNG 船の出現により多様化する傾 向にある。 本節では、LNG フローが多様化している要因を、LNG チェーンの構成要素である①液化基 地、②LNG 船、③受入基地の各動向に沿って整理する。 ①液化基地の増加 A. 建設中、および SPA・HOA が締結されているプロジェクト 13 IEA, World Energy Investment Outlook, 2003 15 IEEJ:2005 年 10 月掲載 i. 新規液化基地の分布 LNG フローが多様化する要因としては、まず既存液化基地の拡張や新規基地の増加による 輸出ポイントの増大がある。こうしたプロジェクトの内、現在建設中、および SPA、HOA が 締結済みであるものに関して、図 2-9 にそれらの分布状況を示す。 図 2-9 新規 LNG プロジェクト(建設中、および SPA・HOA 締結済み) 既存基地 建設・計画中基地(*) (*)既存基地を含めた新基地建設後の液化能力。 (注)各国におけるプロジェクトの液化能力をイメージ的に集約したものであり、各プロジェクトの正確な液化能力、 プロジェクト毎の位置を表しているものではない。 (出所)日本エネルギー経済研究所作成 ii. 新規液化基地(建設中、および SPA・HOA 締結済み)の概要 1.(1)②において示した通り、既存の液化基地においては、アジア・太平洋地域が最大 の生産地域であるのに対して、新規の液化基地においては、中東が最大の生産地域となっ ている。そしてエジプト、イエメン、ロシア(サハリン)といったこれまで液化基地のな かった国が新たな輸出国として出現し始めている。仕向地に関しても、既存の液化基地に おいては、アジア・太平洋地域が最大の仕向地(消費地)であったのに対して、新規の液 化基地においては、欧米市場が最大の仕向地(消費地)となっている。 また後述するように、これらのプロジェクトが締結した SPA・HOA において、従来の LNG 取引には見られなかった近年の新たな動向として、売主と買主の双方を兼ねる事業者の存 在が顕著になってきたことがあげられる。2005 年 3 月現在でこれらの契約数量は 1 億 1,960 万トンだが、その中で売主が買主の役割を果たしている契約は、7,914 万トンであり、新規 契約の 66.2%に達している。 新規に計画されている LNG 輸出プロジェクトの内、既に建設中、および SPA・HOA が締結 済みであるものに関して、表 2-3 にそれらの概要を示す。 16 IEEJ:2005 年 10 月掲載 表 2-3 建設中、および SPA・HOA 締結済みのプロジェクト 地域 国名 ナイジェリア ア フ リ エジプト カ 赤道ギニア プロジェクト名 (Train名) 2005 NLNG (NNPC, Shell, スペイン, ポルトガル Total, ENI) アメリカ、イタリア NLNG (Train 6) 410 2007 NLNG (NNPC, Shell, アメリカ、欧州、 Total, ENI) メキシコ Damietta LNG 550 2005 Egyptian LNG (Train 1) 360 2005 Egyptian LNG (Train 2) 360 2006 Bioko LNG 340 2007 Marathon, GEPetrol アメリカ 2006 オマーン政府、 オマーンLNG、 Union Fenosa 欧米、アジア 2005 Ras Laffan LNG Company Limited II (Qatar Petroleum, ExxonMobil) 欧州 2007 Ras Laffan LNG Company Limited II (Qatar Petroleum, ExxonMobil) 欧州 アメリカ SEGAS (Union Fenosa Gas, EGAS, スペイン EGPC) BG, Petronas, EGAS, フランス、欧州 EGPC, Gaz de France BG, Petronas, EGAS, アメリカ、イタリア EGPC 2,840 Qalhat LNG (Train 3) RasGas (Train 5) イエメン 予定仕向地 820 RasGas (Train 4) 中 東 カタール 出資者 NLNG (Train 4, 5) 小 計 オマーン 液化能力 生産開始予定 (万トン/年) (年) 370 470 470 RasGas (Train 6, 7) 1,560 2008 Ras Laffan LNG Company Limited II (Qatar Petroleum, ExxonMobil) Qatargas II (Train 1, 2) 1,560 2007 Qatar Petroleum, ExxonMobil, Total イギリス、フランス、 アメリカ Qatargas 3 750 2008-2009 Qatar Petroleum, ConocoPhillips アメリカ Qatargas 4 780 2010-2012 Qatar Petroleum, Shell 欧米 670 2008 Total, Yemen Gas Corp, Hunt, SK アジア、欧州 Yemen LNG (Train 1, 2) 小 計 6,630 次項に続く 17 IEEJ:2005 年 10 月掲載 地域 国名 プロジェクト名 (Train名) オーストラリア Darwin LNG ア ジ ア ・ インドネシア 太 平 洋 ロシア 欧 ノルウェー 州 Tangguh (Train 1, 2) Sakhalin II (Train 1, 2) 小 計 Snohvit LNG 小計 合 計 液化能力 生産開始予定 (万トン/年) (年) 出資者 予定仕向地 2006 ConocoPhillips, Eni, Santos, Inpex, 東京 電力, 東京ガス 760 2008 BP, MI Berau, CNOOC,日石Berau , アジア・太平洋 KG Berau Wiriagar, LNG JAPAN 960 2007 Shell, 三井物産, 三菱商事 2007 Petro, Statoil, Total, Gaz de France, アメリカ、欧州 Amerada Hess, RWE 350 アジア アジア・太平洋 2,070 420 420 11,960 (出所)LNG Trade and Infrastructures、各事業者ホームページ等より日本エネルギー経済研究所作成 C. 事業化が検討されているプロジェクト i. 新規液化基地(事業化検討中)の概要 新規に計画されている LNG 輸出プロジェクトの内、SPA・HOA 締結に至っていないが事業 化検討中のものも多数あり、表 2-4 にそれらの概要を示す。 これらの全てが実現に至るわけではないが、オーストラリアやペルー、ボリビアといっ た太平洋地域でアメリカを主な仕向先とした液化基地が完成すれば、これまでの LNG フロ ーに新たな流れが加わることになる。 18 IEEJ:2005 年 10 月掲載 表 2-4 事業化検討中のプロジェクト 地域 国名 アルジェリア プロジェクト名 (Train名) 液化能力 (万トン/年) 開始予定年 Skikda 400 N.A. Sonatrach アメリカ、欧州 Gassi Touil (Arzew) 400 2010 Sonatrach アメリカ、欧州 West Niger Delta LNG 900 N.A. Brass River LNG (Train 1, 2) 1,000 2008-2009 Angola LNG (Train 1) 400 2007 Angola LNG (Train 2) 600 N.A. ChevronTexaco, Sonangol アメリカ、欧州 West Damietta 400 N.A. Shell, EGPC N.A. 600 N.A. BP, ENI アメリカ、欧州 2013 Gazprom アメリカ ナイジェリア ア フ リ カ アンゴラ エジプト 欧 ロシア 州 中 イラン 東 Port of Damietta (Train 1, 2) 小 計 4,700 Shtokman LNG 1,400 小 計 出資予定者 予定仕向地 ChevronTexaco, ConocoPhillips, N.A. ExxonMobil NNPC, ConocoPhillips, アメリカ、メキシコ ChevronTexaco, ENI ChevronTexaco, Sonangol, BP, Total, アメリカ、欧州 ExxonMobil, Norsk Hydro 1,400 LNG 1: Iran LNG (Train 1, 2) 800 N.A. NIOC, Reliance インド、欧州 LNG 2: Pars LNG (Train 1, 2) 1,000 N.A. NIOC, Total, Petronas インド、欧州 LNG 3: Persian LNG (Train 1, 2) 1,400 2010 NIOC, Shell, Repsol アジア、欧州 LNG 4: NIOC LNG 1,000 N.A. NIOC アジア、欧州 小 計 4,200 アメリカ North Slope (Train 1-4) 900 N.A. Yukon Pacific アメリカ ベネズエラ Mariscal Sucre (Train 1) 470 N.A. PDVSA, Shell, 三菱商事 アメリカ Peru LNG 440 2008 Hunt Oil, SK アメリカ Pacific LNG 660 N.A. Repsol-YPF, BG, BP アメリカ Atlantic LNG (Train 4) 520 2006 Atlantic LNG (BP, BG, Repsol, NGC, Tractebel) 北 中 ペルー 南 米 ボリビア トリニダード・ トバゴ 小 計 2,990 次項に続く 19 アメリカ, 欧州 IEEJ:2005 年 10 月掲載 地域 プロジェクト名 (Train名) 液化能力 (万トン/年) 開始予定年 400 N.A. Shell, ConocoPhillips, アジア・太平洋 大阪ガス, Woodside 420 2008 Woodside, BHP Billiton, BP, ChevronTexaco, Shell, MIMI 中国、アジア・太平洋 1,000 2008 ChevronTexaco, Shell, ExxonMobil アメリカ, 中国 250 2010 Methanol Australia アジア 1,000 2011 Woodside, ChevronTexaco, BP, アジア・太平洋 BHP Billiton, Shell Scarborough 600 2008 BHP Billiton, ExxonMobil アメリカ Bongtang (Train I) 300 N.A. Pertamina アジア・太平洋 Bongtang (Train J) 300 N.A. Pertamina アジア・太平洋 Sulawesi N.A. N.A. Pertamina, Medco アジア・太平洋 Natuna N.A. N.A. Brunei LNG拡張 400 N.A. 国名 Greater Sunrise NWS (Train 5) オーストラリア Gorgon (Train 1, 2) Tassie Shoal ア ジ ア ・ オ セ ア ニ ア Browse インドネシア ブルネイ 小 計 合 計 出資予定者 予定仕向地 ExxonMobil, アジア・太平洋 Pertamina Brunei LNG (ブルネイ政府, Shell, アジア・太平洋 三菱商事) 4,670 17,960 (出所)LNG Trade and Infrastructures、Cedigaz および各事業者ホームページ等より日本エネルギー経済研究所 作成 ② LNG 船の増加 A. LNG 船市場の現状 2004 年末現在、LNG 船は 175 隻が稼働中であり、1990 年代後半から建造数が急増してい る。また、2008 年までは LNG 船新造ラッシュおよび大型化の傾向が見られる(図 2-4 参照)。 このうち、2001 年以降に運航を開始した LNG 船の数量およびその内訳を表 2-5 に示す。 この 4 年間で LNG 船は 48 隻が運航を開始しており、そのうち 28 隻(約 58%)が韓国の造船会 社、15 隻(約 31%)が日本の造船会社によるものである。また、売主が所有する LNG 船は 13 隻となっている。さらに、売主・海運会社・買主が共同出資会社を設立しない状態で共同 所有する LNG 船が 3 隻みられる。 従来は、運航航路を確定させてから LNG 船発注が行われてきた。しかし、売主・買主や 海運会社が、将来の LNG 市場拡大の潜在需要を見越して LNG 船ビジネスへの投資効果があ 20 IEEJ:2005 年 10 月掲載 ると判断し、運航航路を確定させないまま LNG 船を発注している事例が見られる。表 2-5 で、発地点(液化プロジェクト)と着地点(受入れ先)の双方が確定している LNG 船は 26 隻と なっている一方、運航航路が未確定であるか自主運航となっている LNG 船が 12 隻存在して いる。 表 2-5 2001 年以降に運航を開始した LNG 船の内訳 数量(隻) 2001年以降に運航開始したLNG船 48 船主 売主 13 海運会社 30 買主 2 その他(複数者所有を含む) 3 造船会社 韓国 28 日本 15 その他 5 傭船者 売主 21 買主 18 その他(不明分含む) 9 管理会社 売主 15 海運会社 21 (不明) 2 主な 発着とも確定 26 運航航路 発または着のみ確定 10 未確定または自主運航 12 (出所)LNG Japan ヒアリングをもとに日本エネルギー経済研究所作成 また、2005 年 2 月末時点で造船契約済みの LNG 船は 109 隻である(表 2-6)。2001 年以降 に就航している LNG 船と比較すると、自家運航あるいは主な航路が未確定である LNG 船の 比率がさらに高くなっていることがわかる。このことは、従来よりも LNG 輸送の柔軟性が 増す可能性があることを示しており、LNG フローの多様化に寄与しうる要因であるといえる。 21 IEEJ:2005 年 10 月掲載 表 2-6 2005 年以降に運航予定の LNG 船の内訳 数量(隻) 2005年以降に運航開始予定のLNG船 109 船主 売主 14 海運会社 73 買主 8 その他(複数者所有を含む) 14 造船会社 韓国 75 日本 27 その他 7 傭船者 売主 41 買主 6 その他(不明分含む) 62 主な 発着とも確定 40 運航航路 発または着のみ確定 22 未確定または自主運航 47 (注)管理会社については、確定しているデータ数が少ないため、本図表から除外した。 (出所)LNG Japan ヒアリングをもとに日本エネルギー経済研究所作成 B. 中古 LNG 船の活用 柔軟な LNG 取引を行うためには柔軟な輸送が必要であるが、そのためにはある程度、稼 働率低下のリスクを織り込んだ短期取引用の LNG 船が必要であろう。償却の終了した中古 LNG 船を短期取引用の LNG 船として使用することは有効な手段と考えられる。 2005 年以降 2010 年までに、傭船契約が満了する LNG 船は 25 隻にのぼると予測される(表 2-7)。こうした中古船を単体で保有、管理していくことも考えられるが、固定費の負担が 大きく、需要がなければ事業の継続が困難となる。一方、大規模な船団の一部として保有、 管理するとコストメリットがあるものと思われる。大規模な船団の一船として運用される 場合には固定費が割安になり、長期売買契約にコミットする他 LNG 船のバッファーとして の役割を担うこともできる。安全性の確保が前提にはなるが、中古船の活用は LNG 輸送の 観点から LNG フローの多様化に寄与するものと考えられる。 表 2-7 2010 年までに傭船契約の満了する LNG 船 満了年次 2005 Dewa Maru Ecjigo Maru Kotowaka Maru Tenaga Tiga Wakaba Maru 2006 Tenaga Lima Tenaga Satu 2007 2008 2009 Edouard LD Larbi B M'Hidi Arctic Sun Galeomma N.W. Sanderling Dwiputra Golar Spirit N.W. Sandpiper Polar Eagle Hoegh Gandria N.W. Seaeagle Mourad Didouche N.W. Shearwater N.W. Snipe N.W. Stormpetrel N.W. Swallow N.W. Swift (出所)Poten&Partners 22 2010 Ekaputra IEEJ:2005 年 10 月掲載 C. 受入基地との整合性 その一方で、LNG 輸送の柔軟性を阻害する要因として、受入基地と LNG 船の整合性を挙げ ることができる。表 2-8 は、日本の大都市圏および韓国の LNG 基地について LNG 船との整 合性を整理したものである。これをみると、LNG 船の全長・幅・喫水等により受入基地への 着桟が不可能となる場合があること、および日本の受入基地が韓国の受入基地に比べて整 合度が概ね低いことがわかる。 表 2-8 LNG 船の仕様(例)と日本、韓国受入基地の整合性 容量 m3 形式 全長 m 満載幅 m 満載喫水 m 最大高さ(空載時) m 日本(15基地)受入可能率 韓国(3基地)受入可能率 Vessel A 137,000 Vessel B 138,000 Vessel C 138,000 Vessel D 145,000 Vessel E 145,000 MOSS GTT No.96 TG MKⅢ MOSS GTT No.96 288.6 48.1 11.31 53.00 27% 100% 277.0 43.4 11.41 44.90 87% 100% 278.8 42.6 11.35 44.65 87% 100% 290.0 49.0 11.40 53.00 20% 60% 291.0 43.5 11.50 53.00 47% 20% (出所)Poten&Partners 資料をもとに日本エネルギー経済研究所作成 LNG 船の大型化は LNG 輸送単価を低減させるという効果がある14が、その一方で、大型 LNG 船を受け入れるためには、桟橋の補強、防舷材の補強・移設、桟橋周辺や航路の浚渫、な どが必要となり、状況によっては LNG タンクの増設が必要となる。今後、輸送費の削減効 果、桟橋等受入関連設備の改造費の発生、オペレーション上の問題、他基地の動向等を勘 案して、LNG 取引に関わる当事者が LNG 船のサイズを決定していくことになるが、既存受入 基地の改修については、欧州で近年実施されているように我が国でも検討の余地はあるも のと考えられる。 ③受入基地の増加 A.建設・計画中の LNG 受入基地プロジェクト ⅰ.新規受入基地の分布 既存の受入基地については基地数の 6 割が日本、韓国、台湾に、2 割程度が欧州に存在し ているが、新規の受入基地計画については、北米の東西両岸で数多く計画が発表されてい るほか、世界各地で多くの LNG 受入基地が建設、計画されている(図 2-10)。ただし、これ らのプロジェクトの実現性はプロジェクトにより大きく異なり、全てが実現するわけでは ない。 14 IEA の試算では、200,000m3 級の LNG 船の場合、140,000m3 級に比べて、輸送単価は 10%程度減少する可能 性があるとしている。 23 IEEJ:2005 年 10 月掲載 図 2-10 既存および建設・計画中の LNG 受入基地の分布 既存基地 建設・計画中基地(*) (*)既存基地を含めた新基地建設後の基地数 (注)各国毎のプロジェクト件数をイメージ的に集約したものであり、各プロジェクトの正確な数、位置を表している ものではない。北米(アメリカ、メキシコ、カナダ)は東西両岸毎に、またイギリスを除く欧州は一括して記載。 (出所)日本エネルギー経済研究所 ⅱ.新規 LNG 受入基地プロジェクト(建設・計画中)の概要 従来の LNG 輸入国での新たな建設計画に加え、北米、イギリスや、アジア地域で新たに LNG 輸入国となる中国、インド、さらに東南アジアやオセアニアなどで受入基地建設の動き がある(表 2-9)。ことに、今後 LNG 需要の大幅な増加が予想される北米では、実現可能性 は大きく異なるが、アメリカ本土だけでも 40 件を越える LNG 受入基地が計画されている。 また本章(3)①A.でも触れたように新規の LNG プロジェクトにおいて、 ExxonMobil、 Shell、 BG などの国際石油/ガス企業を中心に、売主/買主を兼ねる事業者が増加しており、アメリ カ東海岸の既存受入基地に加え、東西両岸に新設される受入基地の容量を確保しているほ か、イギリスなどの新設基地でも同様に容量を保持している。これらの LNG 売主/買主事業 者による自社契約についての詳細は次章で述べるが、こうした契約のうち、国際石油企業 など、自社で LNG を消費しない、つまり必ずしも実需要を持たない事業者によるものにつ いては、契約量に対する余剰あるいは不足が生じる可能性が相対的に高く、これらの契約 による LNG は当初想定された仕向地以外へ供給される可能性がある。 24 IEEJ:2005 年 10 月掲載 表 2-9 建設・計画中の LNG 受入基地プロジェクト 国名 地域 北 米 アメリカ 建設予定地 Cameron, LA Port Pelican (Offshore), LA Freeport, TX West Cameron, (Offshore), メキシコ湾 Sabine, LA Gulf Landing (Offshore) LA Fall River, MA Logan Township, NJ Providence, RI LI Sound, NY Corpus Christi, TX Corpus Christi, TX Corpus Christi, TX Sabine, LA 東 Port Arthur, TX 海 岸 Pascagoula, MS (Off-shore), LA (Off-shore), Gulf of Mexico (Off-shore), Gulf of Mexico (Off-shore), Gulf of Mexico Somerset, MA Pleasant, ME (Off-shore) Boston, MA Philladelphia, PA Cameron, LA Galveston, TX Port Lavaca, TX Long Beach, CA Cabrillo Port (Offshore), CA 西 (Off-shore), CA 海 Coos Bay, OR 岸 St. Helens, OR Astoria, OR (Off-shore), CA 出資予定者 Sempra Energy 受入能力 完成予定(年) (万トン/年) 1,150 2008 ChevronTexaco 1,226 2007 Cheniere Energy, ConocoPhillips 1,150 2007 El Paso Excelerate 383 2005 Cheniere Energy N.A. N.A. Shell 767 N.A. 613 920 383 767 1,993 767 767 767 1,150 767 767 2007 2009 N.A. 2006 2007 2008-2009 N.A. N.A. N.A. 2009 N.A. 767 N.A. 1,150 N.A. 2,146 N.A. 498 383 N.A. N.A. Excelerate Energy 613 N.A. Freedom Energy Center-PGW Creole Trail LNGCheniere Energy BP Calhoun LNGGulf Coast LNG Partners 三菱商事, ConocoPhillips 460 N.A. 2,529 N.A. 920 2009 767 N.A. 537 2007-2008 1,150 2008 383 100 537 767 575 N.A. N.A. N.A. N.A. N.A. Hess LNG Crown Landing LNG BG, KeySpan TransCanada, Shell Cheniere Energy ExxonMobil Ingleside Energy ExxonMobil Sempra Energy Gulf LNG McMoran Compass PortConocoPhillips Beacon PortConocoPhillips Pearl CrossingExxonMobil Somerset LNG Quoddy Bay BHP Billiton Crystal Energy Energy Projects Development Port Westward LNG Skipanon LNG - Calpine ChevronTexaco 次項に続く 25 IEEJ:2005 年 10 月掲載 国名 地域 建設予定地 出資予定者 St. John, NB Point Tupper, NS 東 海 岸 カナダ 西 海 岸 東 海 岸 北 米 メキシコ バハマ 中 南 米 Irving Oil Bear Head LNG - Anadarko Project RabaskaQuebec City, QC Enbridge, Gaz Met, Gaz de France Cacouna EnergyRiviere-du-Loup, QC TransCanada, PetroCanada Goldboro, NS Keltic Petrochemicals Kitimat, BC ホンジュラス ブラジル チリ フランス イタリア 欧 州 スペイン イギリス 383 N.A. 383 N.A. 767 N.A. 261 N.A. Price Rupert, BC WestPac Terminals 230 N.A. Altamira, Tamulipas Shell, Total, 三井物産 858 N.A. Shell, Sempra 767 2007 1,073 2007 996 2008 383 2007-2008 644 N.A. Costa Azul, Baja California Coronado Island 西 (Off-shore), Baja 海 California 岸 Puerto Libertad, Sonora Lazaro Cardenas 東 海 岸 Galveston LNG 受入能力 完成予定(年) (万トン/年) 767 N.A. 767 2007 Bahama ChevronTexaco DKRW Energy Tractebel FPL Resources, Tractebel, El Paso Bahama AES Ocean Express 644 2006-2007 Puerto Cortes Suape Quintero Bay Fos-sur-Mer 2 Rovigo Brindisi Taranto Vado Ligure Muggia Livorno Rosignano Trieste Taranto Syracuse Sagunto AES Shell ENAP Gaz de France, Total ExxonMobil, Edison BG, Enel Enel Enel Enel OLT, Falck Edison, Solvay, BP Gas Natural Gas Natural Shell, ERG Union Fenosa, Iberdrola, Endesa Endesa, Union Fenosa, Sonatrach Endessa National Grid Transco Petroplus, BG, Petronas ExxonMobil, Qatar Petroleum 190 160 40 600 370 600 350 350 350 220 220 584 584 584 370 2005 N.A. 2009 2007 2008 2008 N.A. N.A. N.A. N.A. N.A. N.A. N.A. 2010 2006 210 2007 N.A. 330 876 1,400 2008 2005 2007 2007 Reganosa Gran Canaria Isle of Grain Milford Haven Milford Haven 次項に続く 26 IEEJ:2005 年 10 月掲載 国名 地域 建設予定地 広東省深圳 福建省莆田 山東省青島 上海 浙江省寧波 ア ジ ア ・ オ セ ア ニ ア 江蘇省如東 遼寧省大連 中国 天津 広東省珠海 広東省汕頭 広西壮族自治区 香港 遼寧省営口 江蘇省濱海 Kochi Hazira インド Dabhol Ennore Mangalore 堺 水島 和歌山 日本 上越 坂出 沖縄 光陽 韓国 群山 台湾 台中 フィリピン Bataan インドネシア Cilegon シンガポール シンガポール タイ N.A. ニュージーランド N.A. 出資予定者 CNOOC, BP他 CNOOC, 福建中閩公司 SINOPEC CNOOC,Shenergy CNOOC,浙江能源集団公司, 寧波電力公司 PetroChina PetroChina CNOOC CNOOC CNOOC PetroChina CLP(中華電力有限公司) CNOOC CNOOC Petronet Shell, Total Petronet, NTPC, Gail IOC, Petronas HPCL, Petronet, MRPL 堺エルエヌジー 中国電力, 新日本石油 関西電力 中部電力, 東北電力 四国電力 沖縄電力 POSCO LG-Caltex Oil CPC GN Power PLN Gas Supply Pte, PowerGas PTT Contact Energy, Genesis Energy 受入能力 完成予定(年) (万トン/年) 370-670 2006 260-500 2007 300-500 2008 300-600 2008 300-600 2008 300-400 200-400 300 300 250 300 300 300 300 250 250 500 250-300 250 270 300 N.A. N.A. N.A. N.A. 170 150 450 N.A. 300 N.A. 300-500 90-108 2008 2008 2010 2010 2010 2010 2011 N.A. N.A. 2007 2005 N.A. 2007-2008 N.A. 2005 2006 N.A. N.A. 2010 2010 2005 2008 2008 N.A. 2007 N.A. 2010 2011 (注)網掛部分は認可面等で 2010 年頃までの実現可能性が相対的に高いと思われるもの。 (出所)LNG Trade and Infrastructures、Cedigaz および各事業者ホームページ等より日本エネルギー経済研究所 作成 アメリカの天然ガス価格は、1990 年代末頃までは概ね$2.00/MMBtu 台であったが、2000 年以降は国内需給の逼迫により平均で$4.00/MMBtu から$5.00/MMBtu に上昇しており、今後 も 2020 年代後半までの長期にわたりこうした高価格が維持されると見られている15。この ような高水準のガス価格の続く市場に LNG を受け入れるため、また先に触れた Hackberry Decision の影響などにより、天然ガス市場の発達した東海岸を中心に多くの基地計画があ る。さらにこれまで受入基地が存在しなかった西海岸での基地建設および計画が進んでお り、これにより輸送コストの関係で東海岸に供給できなかったアジア・太平洋地域の LNG 15 Gas Strategies 27 IEEJ:2005 年 10 月掲載 供給者が北米市場へ参入することが容易になる。そしてアメリカと並んでガス市場の流動 性が高いイギリスでも、減退が見込まれる国内生産への対応やエネルギー供給ルートの多 様化などを目的に現在 3 基の受入基地プロジェクトがあり 2005 年にはそのひとつが操業開 始するなど、大西洋を挟んだ LNG 取引が活発化することが予想される。 さらに、インドでは既に 2004 年から LNG の受入を開始しており、中国においても広東省、 福建省で受入基地の建設が進んでいる。こうした新興需要国の登場も新規の液化プロジェ クトの立ち上げと世界の LNG 需要の拡大を促すものとなる。 ④LNG フローの多様化 前述のように新規の液化/受入基地プロジェクトが立ち上がりつつあり、従来の LNG フロ ーとは異なる、例えば太平洋を挟んだ新たなフローも生まれる見込みであり、これまで、 単一地域から単一地域への供給が主流であったものが、今後はひとつの地域から複数の地 域へ、または複数の地域から複数の地域へとその供給の流れが多様化することが予想され る(図 2-11) 。 図 2-11 LNG フローの多様化 現在のLNGフロー 実現可能性の高いLNGフロー 潜在的なLNGフロー (注)「実現可能性の高い LNG フロー」には現在既に LNG フローが存在するが今後拡大が見込まれるものも含 む。 (出所)Cedigaz、日本エネルギー経済研究所 こうした LNG フロー多様化の要因は、これまで述べた新規基地の建設による輸出・輸入 28 IEEJ:2005 年 10 月掲載 ポイントの増加、柔軟に運用できる LNG 船の増大がある。また実需要を持たない売主/買主 事業者による自社契約による LNG 供給も LNG が当初想定された仕向地以外へ供給され、LNG フローが多様化する要因のひとつとなると考えられる。中東地域から欧米への供給が飛躍 的に増大するなど量的な変化も注目され、LNG 輸出の増大を図る中東地域の生産者がアジア と欧米市場を比較し、より高収益が期待される市場への販売を企図することも予想され、 フロー多様化を促進するものになる。 こうした LNG フローの多様化は、LNG 事業に関する経営資源(液化基地、LNG 船、受入基 地)を豊富に保有する石油/ガス事業者等にとっては、LNG ビジネスをグローバル化させ LNG トレーディングを発達させる機会になり得る。また世界最大の天然ガス消費国で、流動性 の高い天然ガス市場が形成されているアメリカが本格的な LNG 市場となり、またその他の 新たな LNG 市場も登場することで、地域の異なる LNG 市場間(北米市場、欧州市場、アジ ア・太平洋市場)の価格差を利用する裁定取引の活発化など非在来型の LNG 取引を生み出 す土壌となる。 お問い合わせ:[email protected] 29