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ロジスティクス・ アウトソーシング における価値の 創出
IBM Global Business Services IBM Institute for Business Value ロジスティクス・ アウトソーシング における価値の 創出 ロジスティクス・ プロバイダー業界の 将来 Supply Chain Management IBM Institute for Business Value IBM グローバル・ビジネス・サービスの IBM Institute for Business Value は企業経営者の方々に、 各業界の重要課題および業界を超えた課題に関して、 事実に基づく戦略的な洞察をご提供しています。 ロジスティクス・アウトソーシングにおける 価値の創出 ロジスティクス・プロバイダー業界の将来 要旨 ロジスティクス・サービスのお客様*は、そのサー ビスがグローバルなものであるか、地域限定的なも のであるかにかかわらず、低い総コストで一貫した 高い信頼性を求めています。しかし、優れた可視化 ツールにサポートされた、大規模なエンド・ツー・ エンドの統合によって、一層高いパフォーマンスが 達成可能になるにつれ、プロバイダーのアプローチ は多様化しつつあります。 多くのお客様が、アウトソーシングの潜在的なト レードオフを究極まで最適化するには、アウトソー スの範囲を広げる必要があると認識しています。つ まり、多数の輸送サービスやウェアハウジング・ サービスを個別に購入するのではなく、もっと広い 領域を対象とする、少数の大規模なプロバイダーと 契約しようとしています。 それに応えるように、ロジスティクス・プロバイ ダー業界は、より広い範囲でさらに複合的なソ リューションを提供するために成長してきました。 しかし、厳しい要求をするお客様セグメント、より 大規模な統合と高度なプロセスの適合を求めるお客 様の場合、バイヤーのニーズとプロバイダーの能力 との間にギャップが生じることが多々あります。プ ロバイダーは、まだ実践していない能力の売り込み や発表を行うことが多くあり、過剰な約束をしなが ら提供するサービスが不十分となっています。大部 分のプロバイダーのビジネス・モデルでは、提供 サービスの拡大・縮小が容易にできず、高度なプロ セスの適合を求めるバイヤーの期待に応えられるだ けの利益を生み出すことができないため、動きが取 れなくなっています。高度なプロセスの適合とは、 多くのお客様に対してエンド・ツー・エンドのサプ ライチェーンの統合と同期化を繰り返し実現し、デ ファクト・スタンダートとなるようなプロセスとテ クノロジーの標準を確立する能力です。 * 本書では、ロジスティクス・プロバイダーからサービ スを購入するお客様(バイヤー)を指す場合に、「お 客様」と「バイヤー」を同義で用いています。 プロバイダーはこうしたお客様の厳しい要求に対応 するために、モデルを改革する必要があります。プ ロバイダーは大規模なコモディティー・セグメント から、拡大しつつあるとはいえ、ますます要求の厳 しくなる高度なプロセスの適合を要求するセグメン トまで、可能な限り広いサービス範囲で利益を確保 しながら業務を行えるように、ますます革新してい かなければなりません。 プロバイダーにとっての報酬は、お客様のサプライ チェーンに一層緊密に統合され、より大きな価値を 提供して「揺るぎない(固定的な)」立場を築くこ とです。複雑性が増すほど、より高い利益幅を維持 できます。報酬については、総コストを下げた上で 信頼性と全体的なサービス・パフォーマンスをどの くらい高めたかという点で、お客様が判断します。 ロジスティクス・サービスを購入する際にますます 重要となる基準は、よりグローバルな供給ソースを 得られることと、製造も含めた多くの活動における アウトソーシング活用の可能性です。拡張されたロ ジスティクス・ネットワークでは、国外の製造業者 から最終消費までの可視性と、同期化および統合化 されたサービスの実現が必要になります。 プロバイダー間の競争は、プランニングや各種コン トロールを社内で行いながら戦術的にアウトソーシ ングを行う、厳しい要求をするバイヤーに対して繰 り広げられます。価値実現へ向けた道のりは、参入 するセグメントと収益を上げる方法を戦略として明 確に定義することから始まります。それには、以下 のような、プロバイダーの能力を強化するための一 連の活動が必要です。 • 戦略の明確さ - ターゲットとするセグメント と訴求する価値を、組織の文化、ビジネス・モ デル、コア・コンピテンシー、アセット計画、 およびパフォーマンス評価基準と整合させる必 要があります。 • 標準化と統合 - 社内外にわたるグローバルな プロセスを標準化・統合化し、サービスを共用 することの価値を強く訴求していきます。 1 IBM Global Business Services • コンポーネント化 - プロセス、情報、ワーク フローなど、標準化された付加価値のあるコン ポーネントを適時組み合わせ、カスタマイズし てソリューションを提供します。 • グローバル・ガバナンス - 取引の損益計算 (P&L)はグローバル・レベルで行い、国内で の損益計算は限定的に行うことにより、グロー バル取引の整合性を高めます。 • サービス・イノベーション - 可視化、サプラ イ・プランニングと管理、ビジネス・プロセス のダイナミックな同期化と最適化、仮想サプラ イチェーンの情報プラットフォームなどの新た な機能に投資します。 • 輸送プランニングとコントロール - 既存の能 力を高め、より広い分野へと拡大する必要があ ります。エンド・ツー・エンドのサプライ チェーン機能と可視性を実現するための、お客 様との深い統合が必要となります。 • チーム能力 - 新たに登場する「統合と同期化 を実現するプロバイダー」の場合 -チーミン グ・スキルへの投資が重要になります。パート ナーのネットワークが拡大するにつれ、チーミ ング・スキルがお客様に提供するサービスの価 値を左右します。 今後のロジスティクス・プロバイダー業界は、より グローバルになり、さらに集結し、お客様のタイプ を中心に一層セグメント化され、業務の実行におい ては例外なく能力向上していくものと思われます。 ビジネス・プロセスは標準化され、システムは統合 されていきます。エンド・ツー・エンドのサプライ チェーン情報に関する可視性と、パートナーやお客 様との統合が進みます。そして、プロバイダーはよ り多くのグローバルなお客様に関する単一のビュー (シングル・コンタクト)を開発することができま す。 これ以降、本報告書ではロジスティクス・プロバイ ダー業界の将来に関する当社の見解について、以下 の点を通して詳述します。 • なぜバイヤーのニーズが多様化しているのか • 将来の業界構造を形成するものは何か • 価値実現までの道のり、および価値の創出にお いてリードするのは誰か 2 業界の構造と課題 より優れた可視化ツールによって、エンド・ツー・ エンドの統合が現実味を帯びるにつれ、ロジスティ クス・サービス・プロバイダーへのお客様ニーズは 多様化しつつあります(図 1 を参照) 。 要求度の高い順に、4 つのお客様セグメントに分類 できます。 1. インソース型 - 独自に社内で大部分のロジス ティクス活動を管理運営します。社内運営は偶 然の結果として、あるいは目的を持って行われ ています。つまり、より戦略的に活動すること によって高い効力を発揮する可能性があること を認識せずに、それらの活動を「バック・オ フィス」の職務と見なし、社内で対応している のです。 2. コモディティー・アウトソース型 - ノンコ ア・プロセス、すなわち輸配送、ウェアハウジ ング、およびフォワーディングに絞って非常に 戦術的なアウトソーシングを行っています。こ のタイプのお客様は、良好な水準の運用効率を 期待しています。より多くのイノベーションを 求めているものの、それに対してコストを支払 う段階にまでは来ていません。基準は主にサー ビス・コストであり、ニッチなニーズに対して サービスを提供する多くのプロバイダーと契約 し、低料金であればすぐに他のプロバイダーに 切り替えたいと考えています。 3. 高度なプロセスの適合を求めるアウトソース型 - プロセスが非常に明確に定義され、フレーム ワークに基づき適合性を厳密に測定しながら経営 を行っています。そのため、このタイプのお客様 は、完成されたプロセス、高い適合性および一貫 性とともに、層の厚い人材を必要としています。 また、特殊な包装、陳列、リバース・ロジスティ クスなど、幅広いサービスを求めています。フレ イト・フォワーダーには、複数の業者を利用する 場合のデータの複雑性を解消することを期待して います。このセグメントでは、オペレーティン グ・モデルを決定するのはバイヤーであり、多く の場合、バイヤーが選択したシステムを利用する 必要があります。また、高い水準の運用効率だけ でなく、毎年、実証可能な効率の向上を要求して くるバイヤーもいます。このセグメントのバイ ヤーは、プロバイダーにオペレーティング・モデ ルとシステムをさらに高度化することを期待して います。継続的な向上に対する成果報酬を与える ために、収益に応じたゲイン・シェアリング(利 益分配)を行うことが、一層受け入れられる傾向 にあります。 Building value in logistics outsourcing 将来のお客様セグメント お客様セグメント サービス要件 主な特徴 幅広いサービスを 求めるアウトソース型 • 他のすべての特徴に加 え、規模の経済と範囲の 経済を求める • リスクと成果報酬の共有 プランニングと コントロール、 業務遂行とテクノロジー • 高いプロセス適合性 • 複雑性の低減とより良い 最適化のためのプランニ ングとコントロール • 「一元化」 高いプロセス 適合性を求める アウトソース型 • 高いプロセス適合性 • 複数のプロバイダーの利 用によるデータ複雑性の 解消 • サービス範囲の拡大 • 継続的な向上 • 追加機能(小売準備、リ バース・ロジスティクス など)と、毎年の効率向 上を求めるサービスを欲 する • 業務遂行への注力 • バイヤーによっては、オ ペレーティング・モデ ル、人材(スキル)のタ イプ、システムを指定し てくる場合がある • 継続的な向上に対して成 果報酬を与えるゲイン・ シェアリング方式(固定 または変動) • 固定および変動 • 良好な水準の運用効率と プロセス適合性 • 基本サービス(輸配送、 ウェアハウジング、貨物 輸送)の戦術的アウト ソーシング • 取引による コモディティー・ アウトソース型 インソース型 取引と料金設定 求められる要件と機能の増大 必要となる範囲と統合の拡大 図 1. • 社内で構築 出典:IBM Global Business Services analysis. 4. プロセス、プランニングと管理、実行、そして テクノロジーに関する幅広いサービスのアウト ソース型 -これらのバイヤーは、輸配送、保 管、在庫管理、サービス・レベル間のトレード オフを究極まで最適化するには、より大きな規 模で運営する、少数の大規模な業者と契約する 必要があると考えています。プロセスの向上や 複雑性の低減(プロバイダーの削減)のために は、適切なプロセス・インターフェース、プロ セスの簡素化および標準化が同時に必要です。 これらのバイヤーは、効果的なエンド・ツー・ エンドの統合、厳密に設計された同期化と最適 化、ならびに業界でこれまで培われてきた専門 的な技能によってもたらされる効果の実証を求 めています。 このセグメントでは、プランニング、管理、お よび実行を含む全プロセス(物理面とテクノロ ジー面)をアウトソースします。これは、アウ トソーシングの境界を戦術的な業務実行から戦 略的なプランニングと管理まで、移動させるこ とを意味します。特に、これらのバイヤーは一 元的な管理を求めています。もう 1 つの特徴 は、これらのバイヤーは、エンタープライズ・ バリュー・チェーン全体の中で自らのロジス ティクス業務が適合する部分を理解し、統合プ ロセスを推進する高い技能を持つパートナーを 選択することによって達成できる競争優位性を 重視している点です。 プロバイダー業界は、より広い範囲でより複合的な ソリューションを提供するために進化しつつありま す。プロバイダーは、大規模なコモディティー・セ グメントと、要求度が高くても急速に拡大しつつあ る、高度なプロセスの適合を求めるセグメントとの 間で選択を行う必要にますます迫られます。 3 IBM Global Business Services ロジスティクス・プロバイダーのビジネス・モデル は、より広い範囲でさらに深い統合を実現するため に発展を遂げてきました(図 2 を参照) 。過去 30 年 にわたり、この業界は範囲を拡大し、基本サービス (トラック輸送、ウェアハウジング)を提供する単 純な基盤サービスから、さまざまな実行能力を組み 合わせた「コア・サービス」組織へと移行し、より 幅広い機能をサポートする「拡張サービス」へと移 行してきました。この戦術的かつ実行に重点を置い たアウトソーシングにより、バイヤーのロジスティ クス・コストは通常 10%削減されます。1 幅広いサービスを求めるお客様が現れるのに従い、 リード・ロジスティクス・プロバイダー(LLP) や、最近では 1、2 社の「ビッグ・ブランド」が発 展してきました。ビッグ・ブランドは、自らの組織 内ですべての活動を遂行することができる、非常に 大規模なグローバル・ロジスティクス・グループ (対象とするお客様セグメントの 10%を超えるシェ アを占める)と定義されています。 図 2. LLPやビッグ・ブランドの出現にもかかわらず、今 日、ほとんどの組織は依然としてロジスティクス・ サービスを個別に調達しています。ほとんどの組織 は、サプライチェーンやトランスポート・チェーン のエンド・ツー・エンド・マネジメントによって実 現できる在庫維持コストの削減チャンスを先送りし ている可能性があります。これらのコストは、世界 規模で約 7,500 億ドルに上り、フレイト・ロジス ティクス・コストの 25%超に相当します。2 ロジスティクス・プロバイダー業界の利益率は不十 分であり、資本を集めることが比較的困難になって います(図 3 を参照)。 この業界では、ごく少数の企業のみが図 3 で強調さ れている枠内に到達し、約 11%超の資本利益率と 8%超の営業利益率を達成しています。3 ロジスティクス・プロバイダーのビジネス・モデルの進展 提供サービス アウトソーシング・ モデル リレーションシップ 料金設定 • 同期化されたプロバイダー • サプライチェーン・インテ グレーター • リード・ロジスティクス・ マネージャー • グローバル・トレード調 整者 • 契約上の関係以上に連携 • リスクと成果報酬の共有 リード・ ロジスティクス • リード・ロジスティクス・ プロバイダー(LLP) • ビッグ・ブランド • 契約上の関係 • 一部のリスク共有を伴う 一部固定の変動料金 コア・サービスと 拡張サービス • インバウンド中心のサー ド・パーティー・ロジス ティクス・プロバイダー (3PL) • フレイト・フォワーダー • アウトバウンド中心の 3PL • 契約上の関係 • 契約上の関係 • 契約上の関係 • 固定および変動 • 取引ごとの料金 • 固定および変動 基盤サービス • 輸配送、ウェアハウジン グ、税関貨物取扱 • 契約上の関係および スポット契約 • 取引ごとの料金 同期化された サプライチェーン 出典:IBM Global Business Services analysis. 4 この傾向が広まるにつれ、プロバイダーは極め て多様なニーズに対するアピール力を身に付け なければなりません。 Building value in logistics outsourcing 図 3. ロジスティクス・プロバイダー業界のファイナンシャル・リターン 平均営業利益率:8.1% 30 投下資本利益率(%) 25 20 15 加重平均資本コスト:10.9% 10 平均 ROIC:10.7% 5 0 0 5 10 15 20 25 -5 営業利益率(%) (EBITDA/総収入) 注:ROIC(投下資本利益率)と営業利益率は、過去 5 年間(主に 2004 年まで)について計算した平均値です。ROIC は、純利益/ 総資本として定義されます。平均値は、グラフ化されているすべての企業のサンプル平均です。加重平均資本コストは、米国の業 界平均に基づいています。 出典:IBM Global Business Services analysis. 財務データについては Thomson Financial、WACC データについては Ibbotson & Associates 歴史的に、株式評価額の 50%は、プロバイダーの成 長に関連しています。4 十分な利益のある収益(加 重平均資本コストの 2 倍など)に支えられた確かな 成長率により、競合他社よりも迅速に成長やイノ ベーションに資金を投入することができます。 一方、スケール(規模)に対して単なる範囲の拡大 を目指す場合は、範囲の拡大により総収入と利益額 は増加しますが、利益幅は同程度です。ウェアハウ ジングやユーザーの専用 3PL などは、数量の増大に よる利益幅の向上が非常に限られています。 利益幅はプロバイダー間で異なりますが、市場シェ アの拡大によってもたらされる最大の成果は、ス ケールメリットに見出される傾向があります。国際 宅配業者、多くのお客様に共有されるサード・パー ティー・ロジスティクス(3PL)、貨物を満載できる トラック業者などは、相対的な市場シェアの拡大に よって、利益幅が大きくなる可能性があります。 5 IBM Global Business Services 変化をもたらす 5 つの推進要因 • 高い信頼性 ロジスティクス・プロバイダー業界は、増大・多様 化しつつあるお客様の要求、グローバル・トレード の成長、継続的なアウトソーシング、テクノロ ジー、さらなる業界統合に推進され、急速に成長し ています。また、サプライチェーンは全社的な規模 でパフォーマンスを向上させる、より大きな競争優 位性の推進要因であるという認識がこの成長を後押 ししています。 • 低い総コスト • グローバルでのエンド・ツー・エンドの統合と 可視性 • 厳密に設計された同期化によって実現されるス ピード • 柔軟性 • グローバルで一貫した対応 1. さらに要求が厳しくなり、多様化しつつあるお 客様要件 ロジスティクス・サービスのバイヤーが期待するこ とは、バイヤーの業界、組織の成熟度、ビジネス・ モデル、および優先される経営スタイルに応じて異 なります。あらゆるバイヤーのタイプを検討する と、主な購買基準は重要度が高い順に以下のとおり となります。 • 業界の専門知識 • 最適化とデータウェアハウジング • バイヤーやパートナーとのより深い統合 ロジスティクス・アウトソーシング - 主な購買基準 • バイヤーが在庫を削減し、お客様により高いサービス・レベルを提供できる、高い信頼性(納期遵守)。 • 低い総コスト。旧来型のお客様は個々のロジスティクス取引に重点を置いています。その結果、コストは独立した 取引ごとに最適化されますが、全体的には高額になってしまう可能性があります。 • グローバル・エンド・ツー・エンドでの統合と可視性。効果的なエンド・ツー・エンドの統合を達成することは、 より高い信頼性を実現するもう 1 つの要因です。ワークフローと組み合わせて自動的に可視化を行うことにより、 主要なイベントに対して例外レポートを作成しアラートを発行し、必要な介入を促します。 • 厳密に設計された同期化によって実現されるスピード。優れたデータ統合と自動センシングにより、プロセスの同 期化と自動応答を実施できるようになります。これには、多様なグローバル・ネットワーク内で情報面と物理面で のロジスティクス取引量を同時に管理するために、ロジスティクス・サービス・プロバイダー(LSP)による大規 模な調整が必要となります。結果、時間、配送、コストのパフォーマンス基準を満たしながら、スピードと物理 面・財務面でのフロー効率の向上などを実現することができます。 • 需要と供給ソースの変化にシームレスに対応する柔軟性。 • グローバルで一貫した対応は、より高い信頼性を実現する要因です。プロバイダーの成長モデルは、主に買収によ るものでした。買収後のプロセスとシステムの統合に関する課題は、組織的および文化的な調整に比べればまだ簡 単と言えます。組織的な調整では、配送パフォーマンス、プロセス、ビジネス・ルール、およびシステムの面で、 大幅な自由度と多様性を許容する必要があります。より厳しい要求をするバイヤーは、プロセスの調和を求めてい ます。 • 業界の専門知識。お客様は、ますます専門知識を重視しつつあります。 • 最適化とデータウェアハウジング。優れた同期化を実施していても、さらに最適化できる余地があります。効率的 にドリルダウンできるデータウェアハウジング機能により、定期的および随時の原因分析やパフォーマンス分析を 行います。 • バイヤーやパートナーとの深い統合。ロジスティクス・データや情報にアクセスするために、お客様はサービス・ プロバイダーとの深い(ただし簡単な)統合を求めており、プロバイダーの輸配送パートナーまで同様に接続され ることを期待しています。 6 Building value in logistics outsourcing 2. グローバル・ソーシングが定着 - ただし課題 は増大 各国の政策は、一般に自由取引を奨励しています。 グローバル・ソーシングの直接的な動機付けは、格 差のある賃金レート、スキルの活用、および有利な 税制です。課題の 1 つとして、長距離の輸配送の管 理の難しさが挙げられます。インフラの能力が需要 の変化に追いつかず、ボトルネックとなっていま す。標準化が進まず、機能は整合性に欠けていま す。こうした変化が在庫コスト、およびソーシング 経済全体を大幅に変えつつあります。 一般的に、グローバル・ソーシングでは、調達場所 を頻繁に変更します。そのため、供給を中断させな いように、プロセスを標準化してシームレスな切り 替えを可能にすることが要求されています。また、 輸送コストの情報を素早く正確に提供することも要 図 4. 求されています。つまり、輸送業者が提供する日々 のレート表や輸送時間にアクセスできなければなり ません。 3. 最終的にアウトソーシングの枠組みが徐々に 拡大 近年、ロジスティクスにおいてアウトソーシングを 行う機会が徐々に拡大していますが、出資者が確約 していたほど迅速ではありません(図 4 を参照)。 最近まで、製造業者と小売業者のアウトソーシング は、ノンコア・プロセス(輸配送、コンソリデー ト、ウェアハウジング、およびフレイト・フォワー ディング)に限定された戦術的なものにとどまって いました。 アウトソーシングの領域の緩やかな拡大 製造業の例 カスタマー・リレー ションシップの連係 お届け (Fulfillment) 流通 (Distribution) 製造 (Manufacturing) 供給 (Supply) 製品開発 ネットワークと 資産の構成 ネットワークと 資産の構成 製造戦略 戦略的ソーシング 製造の監視 サプライヤーとの 関係管理 製品管理 ロジスティクスの監視 小売マーケティング の実施 需要のプランニング と予測 店内在庫管理 お客様へのお届け お客様アカウント・ サービス ロジスティクス・ プランニング 主要 輸送 製品移動データ サプライヤー・ プランニング ライン・ スケジューリング 工場在庫管理 流通センターの運営 製品/コンポーネント の製造 輸送リソース 製品の組み立て/ 包装 製品ディレクトリー お客様 ディレクトリー インバウ ンド輸送 製造プランニング お客様 製品ディレ ディレクトリー クトリー MES データ 戦略/ 方向性 プランニングと コントロール/ マネジメント 実行 製造調達 サプライヤー/材料 ディレクトリー データ 製品移動 パフォーマンス測定 コアと認識され続ける業務:アウトソーシング対象外 従来のコア業務:変革のためのアウトソーシング拡張範囲の候補。複数のサービス提供元から構成されるチーム(社内および外部サービス) または全面的なアウトソースのいずれか ノンコア業務:すでにアウトソーシングされている可能性あり 出典:IBM Global Business Services analysis. 7 IBM Global Business Services 2 つの大きな流れが発生しています。第一に、低コ ストを達成しようとするために、バイヤーがこれま で前提としてきた条件を一部再検討する結果となっ ています。これまで、多くのバイヤーが持っていた 保守的な傾向が変化しつつあります。仕事の習熟に よってアウトソーシングを検討することは容易にな りましたが、多くのバイヤーは、より管理的なプラ ンニングと調整についてアウトソーシングを実施す ることには一線を画していました。この状況が変わ りつつあります。 第二は、単位当たりのコストが最低であっても、そ れが自動的に最も低い総コストにつながるとは限ら ない点です。最も低い総コストを実現するには、輸 送、ウェアハウジング、および在庫管理のトレード オフを調整する必要があります。個別のアウトソー シングでは、これらのトレードオフの最適化はでき ません。多くの企業は、ビジネス上のトレードオフ の調整により得られるであろう最大限の価値を調査 し、金額では測れない部分にまで焦点を合わせ、さ まざまな職務領域の関係者をまとめる真の能力を備 えていません。すなわち、非常に複雑な統合分析と 「自社で行うか購入するか」の判断を行う知識が不 足しているのです。 プロバイダーにとっての課題は、「チャンス到来」 までにできるだけ早く能力を向上させることです。 アウトソーシング拡大におけるエレクトロニクス、自 動車、アパレル業界の役割 エレクトロニクス、アパレル、自動車業界は、アウト ソーシングの拡大において牽引役となっています。す でに需要データの分析や需給バランスの調整に慣れて いるエレクトロニクスの委託製造業者とアパレルの調 達スペシャリストは、サプライチェーンにおける新た な集約拠点となる可能性があります。自動車業界は、 TIER1 サ プ ラ イ ヤ ー の 枠 を 越 え て Manufacturing Resource Planning:製造資源計画(MRP II)の拡大を率 先して行ってきました。これらグローバルに有力な業 界が現在、プランニングと管理活動の一部をアウト ソーシングすることに一層前向きになっています。 4. 同期化された需要主導型(デマンド・ドリブ ン)のサプライチェーンには標準化と普及テクノロ ジーが必要 シームレスなインターフェース、迅速な対応、およ び複合的なトレードオフのバランスが求められるサ プライチェーン戦略には、3 つの関連する課題があ ります。 1. 主要なサプライチェーン機能の緊密な結合 - 計画、調達、製造、配送、修理/返品 8 2. より迅速に対応する能力 - 予測(計画)主導 ではなく、実需主導型へのビジネス変化への対 応 3. サービス目標達成へのプレッシャーにより、お 客様が複数のサプライチェーンを運用しなけれ ばならなくなったこと。一方で、コスト削減の 必要性から、資産の共有が推し進められてお り、これは、サービス目標の間でいくつかのト レードオフが発生することを意味しています。 同期化と可視化の課題 • プランニングは、断片化された情報という課題を抱 えており、需要と供給を効率的に同期化することが 困難になっています。 • 調達は、グローバルなパイプラインにおける製品の 可視性がないために複雑になっています。多くの場 合、製造業者のシステムと統合されていないため、 注文品の配送状況の情報を受信することがほとんど 不可能です。 • セールス・チームは、製品の在庫情報不足により、 販売の最適化(クロスセル、アップセル、供給に基 づく提案販売)を妨げられています。 5. 統合と集約の増大 - ただし、効率的に統合す るための課題も増大 株式を上場しているプロバイダーは、自社の株価を 上昇させるために「成長ストーリー」を伝える必要 があります。「同じことを今以上」に行うというこ とは、よりグローバルに活動し、このニーズの各部 を満たすことを意味します。輸配送、コンソリデー ト、ウェアハウジング、フォワーディングなどの サービスの結合によるインバウンドおよびアウトバ ウンド・ロジスティクスの集約は、依然として利益 幅の低いままです。バリュー・チェーンを高める能 力、プランニングと管理の活動を追加することによ りお客様の固定化と利益幅の改善が期待されます。 資産プロファイルとコア・コンピテンシーの点で は、従来からの 4 つのプロバイダーの活動は極めて 異なっています(図 5 を参照)。各プロバイダーの 優先順位付けやマネジメント・スタイルは大きく異 なります。したがって、一貫した収益を実現する ポートフォリオを管理することはお客様へ提供する ソリューションのインターフェースを標準化するの と同じくらい困難です。 Building value in logistics outsourcing 図 5. ロジスティクス・プロバイダー・セグメントの 主な特徴 3PL/ プロバイダー・ カスタマイズ セグメント された流通 相対的な 資産 プロファイル ポイントツー フレイト・ ネットワーク ポイント輸送 輸送: フォワー および パッケージ ディング チャーター および LTL 輸送 高 コア・ お客様との コンピテンシー 密接な関係 低 高 中 購入 収益管理 キャパシティー 管理 出典:IBM Global Business Services analysis. 今日のお客様セグメント 新たに登場 図 6. 将来の展望 市場の規模は、より戦略的なバイヤーに有利な形で 変化する 5 番目のお客様セグメントである「戦略的なアウト ソース型」が、前述の 4 つのセグメントに加えて進 展する可能性があります(図 6 を参照)。以下に、 これらのセグメントが 2015 年までの期間にどのよ うに進展していくか、また各セグメントの市場シェ アの変化について当社の見解を記述します。 1. インソース型多くの調査と業界の動向から、あ らゆる業界および規模の企業が、ますます多くのロ ジスティクス機能をアウトソーシングしつつあるこ とが示されています。 将来のお客様セグメント アウトソーシングが 行われる市場シェアの 指標(2015 年) サービス要件 主な特徴 • 「方向性の共有」によ る戦略的関係 • リスクと成果報酬の 共有 5~10% 戦略的な アウトソース型 • 在庫要件の計画と実現 • サプライチェーン戦略 の共同策定 • エンド・ツー・エンド の範囲 • 他のすべての特徴に加 え、規模の経済と範囲 の経済を求める • リスクと成果報酬の 共有 20~25% 幅広いサービスを 求めるアウトソース型 • 高いプロセス適合性 • プランニングとコント ロール、実行、テクノ ロジー • 複雑性の低減 -「一元 化」 • 高いプロセス適合性 • 複 数のプ ロバイダ ーの 利用によって起こる データの複雑性の解消 • より広いサービス範囲 • 継続的な向上 • 追加機能(小売準備、リ バース・ロジスティクス など)と、毎年の効率向 上を求めるサービスを欲 する • 実行への注力 • バイヤーによっては、オ ペレーティング・モデ ル、人材(スキル)のタ イプ、システムを指定し てくる場合がある • 一部のリスク共有を 伴う固定および変動 料金 • 固定および変動 30% • 高 水準の 運用効率 、十 分なプロセス適合性 • 基盤サービス(輸配 送、ウェアハウジン グ、フォワーディン グ)の戦術的アウト ソーシング • 取引ごとの料金 40% 高いプロセス適合性を 求めるアウトソース型 コモディティー・ アウトソース型 インソース型 取引と料金設定 • 社内で構築 出典:IBM Institute for Business Value. 9 IBM Global Business Services 2. コモディティー・アウトソース型 現在多くあ るアウトソーサーとほぼ同様の行動を取るようにな るでしょう。比較的効率の低いお客様は、3PL とフ レイト・フォワーダーを利用しますが、同時により 低い料金を獲得するために切り替えを行う準備も整 えています。パイプラインの可視性やプロバイダー の能力に理解を示すより優れたコンピテンシーを有 するお客様は、基盤サービス・プロバイダーを直接 利用して、3PL を排除する可能性があります。コン トロールタワー的な機能を実装して各プロバイダー を管理するものと思われます。いずれの場合にも、 ブランドは問題になりません。 指標として、このタイプのお客様は全体的なアウト ソーシング量の約 40%を占めるものと予想されま す。 3. 高度なプロセスの適合を求めるアウトソース型 現在とほぼ同様の活動を継続するでしょう。多くの お客様は継続的な向上に対して成果報酬方式をより 広く採用するものと思われます。このセグメント は、アウトソーシング量の 30%を占める可能性があ ります。 4. 幅広いサービスを求めるアウトソース型 - プ ロセス、プランニングと管理、実行、テクノロ ジー。このグループのお客様は拡大するものと予想 されます。このセグメントを構成するのは、サプラ イチェーン・マネジメントで卓越していると言われ る大企業(通常はグローバル企業)です。このタイ プのお客様にとって、ブランドは重要です。アウト ソーシング量の 20~25%までを占める可能性があり ます。 5. 戦略的なアウトソース型 「方向性の共有」に よる戦略的関係を求めるバイヤー。このタイプのお 客様は、1 つ以上のサプライチェーンにおいて在庫 の計画と実現をパートナーに委託する態勢を整えて います。範囲としては、全体的なサプライチェーン のプランニング、管理および実行の大規模なアウト ソーシングとともに、サプライチェーン戦略の共同 策定が独自に含まれます。実行については、あらゆ るロジスティクスが対象となり、調達責任や製造が 一部含まれる可能性もあります。範囲はエンド・ ツー・エンドで、需要と供給のバランス調整が含ま れ、サプライチェーンの物理面とテクノロジー面を 網羅します。このセグメントは、一元化されたサプ ライチェーン・マネジメントを行う組織に限定され るものと考えられます。自社のビジネス・ポート フォリオの多様性と需要の変動に対応するには、並 外れた(接続するだけですぐに使用できるプラグ・ 10 アンド・プレイのような)柔軟性、すなわちオンデ マンド・ビジネス構造が必要になります。 これらのバイヤーは通常、設計とマーケティングの みに直接従事することを戦略とするグローバルな大 企業か、業績が上位 4 分の 1 に入らず、最高の人材 を引き付けることが困難な重要企業のいずれかにな ります。このグループは、市場の 5~10%までを占 める可能性があります。 競争は中間に位置するバイヤーに向けて繰り広げら れる:高度なプロセスの適合を求めるバイヤー これまでに述べたセグメントに対応する上で必要と なるビジネス・モデルと組織的価値は、それぞれ まったく異なったものです。2015 年までの期間 に、プロバイダー業界は淘汰され、5 つのプロバイ ダー・タイプを構成するようになるでしょう。 • 基盤プロバイダー この大規模なグループは、 引き続き成功するものと考えられます。従来は 大部分が小規模でしたが、規模の経済を達成す る新たな方法が見つかるにつれ、特に輸送にお いては非常に大規模な企業が出現するものと予 想されます。商品の差別化は非常にわずかなも のですが、極めて専門化したニッチ市場のプロ バイダーが存在するようになるでしょう。地理 的な範囲は主に国内になりますが、それに限定 されるわけではありません。 • コア・サービス・プロバイダー コモディ ティー・バイヤーに重点を置く、インバウン ド・ロジスティクス中心の 3PL、フレイト・ フォワーダー、およびアウトバウンド中心の 3PL。これらのプロバイダーは特定の能力に重点 を置き、「より絞り込んだ能力」で評判を得るよ うになります。 • 拡張サービス・プロバイダー インバウンド・ ロジスティクス中心の 3PL、フレイト・フォ ワーダー、およびアウトバウンド中心の 3PL は、特殊パッケージ構成、陳列、リバース・ロ ジスティクスなど、幅広いサービスの提供を行 うものと考えられます。これらのプロバイダー は、追加機能を獲得するでしょう。コア・サー ビス・プロバイダーよりも質の高い実行能力に より、宣伝した内容を「確実に実現」していき ます。 Building value in logistics outsourcing • リード・ロジスティクス・プロバイダーとビッ グ・ブランド これらのプロバイダーは、幅広 いサービスを求めるアウトソース型(プロセ ス、プランニングと管理、実行、テクノロ ジー)のセグメントに重点を置きます。しか し、十分な規模の優位性を得るには、戦術的 な、高度なプロセスの適合を重視するバイ ヤー・セグメントを中心とする相当大きなシェ アを必要とします。これらのプロバイダーは、 コモディティー・バイヤーのシェアを維持しよ うとするでしょう。業界の統合をさらに推進し ていくほか、世界の新たな地域での規模と範囲 を獲得していきます。簡単に真似できない、 シームレスなサービスや情報サービスによっ て、グローバルに統合されたサービスの実現を 目指します。「グローバル・コントロールの機 能」を配置することにより、サプライチェーン のパフォーマンス評価、主要イベントの状況、 およびアラートを世界規模でお客様に提供する ことを目指します。優れた継続的な向上性が必 要です。お客様のプロセスおよびシステムとの 統合にかなり熟達していない限り、基盤プロバ イダーや付加価値サービス・プロバイダーとの 競争に巻き込まれます。これらのプロバイダー は、「マス・カスタマイズ」ロジスティクスを目 標とします。 • 同期化したプロバイダー サプライチェーンを 統括する能力を持つ少数の「同期化したプロバ イダー」:Synchronized Provider(SP)が出現する 可能性があります。このプロバイダーは、方向 性の共有による戦略的関係を求めるバイヤーに サービスを提供するものと考えられます。在 庫、需要と供給のバランス調整をエンド・ ツー・エンドで管理することを目標とします。 エンド・ツー・エンドのサプライチェーン統 合、可視化、同期化、および広範囲にわたるビ ジネス・プロセス機能をグローバルなお客様に 提供します。これを複数のお客様に対して繰り 返し実施し、事実上のプロセスとテクノロジー の標準を確立します。あるいは、既存の標準の 受け入れを強化します。プロセスには、サプラ イヤー・マネジメント、調達、委託製造、ロジ スティクス・サービス、グローバル・トレード の財務管理と税管理、パフォーマンス管理、お よびお客様サービスなどが含まれる可能性があ ります。提供されるサービスは標準化され、容 易な統合を実現しながらも、カスタマイズ面で 柔軟性を提供するものとなるでしょう。ソ リューションはコンポーネント化されたプロセ スによって拡張可能であり、お客様の成長また は変化に対して「プラグ・アンド・プレイ」で 対応できるようになります。このカテゴリーの プロバイダーは、継続的なイノベーションを求 め、それに対し成果報酬を与える社内文化も示 すほか、お客様向けのソリューションの一部と して活用できる既存の知的財産を豊富に備えて います。 同期化したプロバイダーの不確実性 SP がどのように出現するかは、あまり定かではありま せん。将来の SP は、リード・ロジスティクス・プロバ イダーと「ビッグ・ブランド」から登場する可能性が あります。最も可能性が高いのは、少数の有力プロバ イダーの積極的な「変革の継続」から生まれるという ものです。このタイプのプロバイダーは、銀行(取引 やプロジェクト資金の調達目的)、プロセス向上に関連 する企業、およびグローバルなテクノロジー企業と提 携することによって、提案を強化していかなければな らない可能性があります。 SP が出現するスピードは、バイヤーとプロバイダー間 に横たわる不信感によって鈍っていました。より多く のバイヤーが、相応の能力を備えたプロバイダーを信 頼すれば、一元化されたサプライチェーンに移行する と考えられます。反対に、プロバイダーは市場での十 分な確証を得られないために、能力の向上に投資する ことを躊躇しています。ビッグ・ブランドの出現が、 この閉塞状態を打破する可能性があります。 各プロバイダーは、1 つのバイヤー・セグメントを 優先するものと思われます。すなわち、「定評を得 たい」セグメントです。しかし、あらゆるセグメン トの企業は、規模の経済を達成するために、高度な プロセスの適合やコモディティーを重視するお客様 を求める可能性があります。コア・サービス・プロ バイダーも、より大きな利益幅のあるシェアを求 め、市場を「略奪」し始めるでしょう。したがって、 拡張サービス・プロバイダー、リード・ロジスティ クス・プロバイダー、ビッグ・ブランド、および同 期化したプロバイダーは、それぞれ差別化された市 場でのメッセージングと位置付けを明確にしていか なければならないのです。 11 IBM Global Business Services 価値実現までの道のり ロジスティクス・サービスで収益を上げるには、複 数の方法があります。セグメントとしてどのセグメ ントにフォーカスした場合でも、開発力と実行力を 伸ばすことにより競争力が強化され、最終的にどの 程度の価値を株主に対して生み出すことになるかが 決まります。 • 効果的なチーム能力を開発する(同期化したプ ロバイダーとなることを目指す少数のプロバイ ダーには必要です) 。 価値実現の手順 1. 戦略的に優先順位を付けることによって、優先順位 や投資がまったく異なってきます。 2. 標準化と統合はコンポーネント化の前に実施すべき です。コンポーネント化のコストは実現されている 標準化のレベルに応じて大きく変わります。 より戦略的かつ高度なプロセスの適合を重視するお 客様にフォーカスするプロバイダーの場合、成功へ の道のりには通常、以下の活動を通して、その能力 を高める必要があります(図 7 を参照) 。 3. コンポーネント化はグローバル・ガバナンスの前に 実施すべきです。グローバル・ガバナンスがコント ロールに大きな変動をもたらします。また、当社で はコンポーネント化によるキャッシュフローの影響 の方が早く現れるものと判断しています。そのため の対処が必要になります。 • コスト競争力を身に付けるためにプロセスとシ ステムを標準化して統合し、スケールメリット のあるプラットフォームを提供する。 • サービス・ポートフォリオのコンポーネント化 により、カスタマイズされたソリューションを より大きな利益幅で提供する手段を開発する。 4. リーダーシップを得るためにサービス・イノベー ションへの投資が必要です。標準化、統合、コン ポーネント化が事前に実現されていなければ、投資 によってもたらされる利益も低くなる可能性があり ます。 • グローバル・ガバナンス・プロセスを確立する ことにより、グローバルで大きなお客様と同じ レベルで関係を持つことが可能にする。 • リーダーシップを維持し続けるために、サービ ス・イノベーションに継続的に投資を行う。 生み出された累積キャッシュ 図 7. 価値実現までの道のり 異なる能力や全体的なビジョンを持つ 各プロバイダーは、さまざまな時点で この変革を開始する可能性があります チーム能力 サービス・ イノベーション グローバル・ ガバナンス コンポーネント化 標準化と統合 戦略の明確性 コスト削減と一貫性 厳密な整合 時間 出典:IBM Global Business Services analysis. 12 リーダーシップの維持 確実な実行と信頼 柔軟性と高い利益 規模の利用 Building value in logistics outsourcing 現在、このトランスフォーメーションを「単一のプ ロジェクト」として実現できるプロバイダーはいま せん。実現へ向けた戦略が必要です。スケジュール を明確に定義した上で、比較的低リスクで実現でき る、処理しやすい規模にステップを分割する必要が あります。その出発点は各プロバイダーのビジネス 目標、市場からのプレッシャー、および既存の能力 レベルに応じて異なります。 グループ内にパッケージ事業(DHL や UPS など) を持ち標準化の能力を利用できるプロバイダーは、 ベストプラクティスを共有するという文化が熟成で きれば、価値の創出において容易に他社をリードで きるはずです。また、変革を阻害する要因に立ち向 うために、パッケージに関する成功体験、成長率、 およびスケールメリットなどの論理的裏付けも必要 です。 今後のロジスティクス・プロバイダー業界は、より グローバルになり、さらに集中化し、お客様のタイ プに合わせて一層セグメント化されるほか、業務遂 行能力はさらに世界的に向上していくものと思われ ます。ビジネス・プロセスは標準化され、システム は統合されていきます。エンド・ツー・エンドのサ プライチェーンに関する可視性と、パートナーやお 客様との統合がより向上します。業界は、継続的に パフォーマンスを測定するための効果的な共通の測 定基準を開発し、ビジネス・ルールにより結合され たイベント・モニターによって一層容易に例外に対 応できるようになります。そして最後に、プロバイ ダーは、多くのグローバルなお客様に対して単一の ビュー(シングル・コンタクト)を開発することが できるようになります。 著者について Karen Butner:IBM グローバル・ビジネス・サービ スのアソシエイト・パートナー 連絡先:kbutner@ us.ibm.com Derek Moore:IBM グローバル・ビジネス・サービ スのアソシエイト・パートナー 連絡先:derek. [email protected] 協力者 Chris David:IBM グローバル・ビジネス・サービス のアソシエイト・パートナー 連絡先:chris.david@ uk.ibm.com Naresh Hingorani : IBM グ ロ ー バ ル ・ ビ ジ ネ ス ・ サービスのアソシエイト・パートナー 連絡先:naresh. [email protected] 監訳者について 毛利光博:IBM グローバル・ビジネス・サービスの アジア・パシフィック地域のロジスティクス・コン ピテンシー・リーダー 連絡先:mouri@ jp.ibm.com また、本書の作成に当たり、多大なご協力をいただ いた次のコンサルタントおよび同僚の皆様にも謝意 を表します。Tony Barsham 氏、Gary Cross 氏、John Drury 氏 、 Charlie Hawker 氏 、 Stefan Henze 氏 、 Anand Janardhan 氏、Ann Murray 氏、Henrik Anker Olesen 氏、Steve Peterson 氏、Gary S. Smith 氏、 Colin Taylor 氏 参考文献 1 IBM Global Business Services estimate. 2 IBM Global Business Services analysis. 3 IBM Global Business Services analysis; Thomson Financial for financial data; WACC data from Ibbotson & Associates. 4 IBM Global Business Services estimates this to be typically up to 50 percent. IBM グ ロ ー バ ル ・ ビ ジ ネ ス ・ サ ー ビ ス について IBM グローバル・ビジネス・サービスは、世界 160 カ国以上において、業界知識と洞察、そして高度な 研究成果とテクノロジーの専門知識を組み合わせる ことにより、お客様のビジネスの分析、最適化、そ して変革を可能にします。私たちは、お客様のパ フォーマンスとプロセスの向上のため、そしてお客 様が競争優位性を確立し、ビジネスで成功するため に貢献することを目標としています。 お問い合わせ IBM ビジネスコンサルティング サービス株式会社 〒100-6318 東京都千代田区丸の内 2-4-1 丸の内ビルディング 18 階 Tel. 03-6250-8500(代) http://www.ibm.com/bcs/jp/ E-mail: [email protected] 13 〒100-6318 東京都千代田区丸の内 2-4-1 丸の内ビルディング 18 階 09-06 Printed in Japan © Copyright IBM Corporation 2005, 2006 All Rights Reserved IBM、IBM ロゴは、IBM Corporation の商標。 他の会社名、製品名およびサービス名等はそれぞれ 各社の商標。 掲載されている製品・サービスは IBM がビジネスを 行っているすべての国・地域でご提供可能なわけで はありません。 当資料に記載の肩書きや数値、固有名詞等は英語版 掲載時のものであり、変更されている可能性があり ます。