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既成市街地における道路景観特性のプロジェクト報告

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既成市街地における道路景観特性のプロジェクト報告
既成市街地における道路景観特性のプロジェクト報告
張 黎(M1)、徐暁艶(M1)、左雨平(M2)
背景と目的
屋外広告物は街路空間の様々な場所で現れ、
過度な露出は街路空間を悪化させる要素とし
て認識されている。また、街路空間を構成する
要素として建物とその付属する屋外広告物の
色が進出し、景観の調和性に阻害されている。
これらの要素が街路空間にある以上、建物や土
地利用との関係性も考える必要がある。広告物
問題で取り上げられる色に関する規制は、広告
物全体を対象としていて色の多様化を抑える
ことができないため、建物と広告物における色
の組み合わせが景観に対する阻害感や調和感
についての調査を行い、色譜の作成を提案し、
色譜によって、今後の景観事業の基盤を作成す
る。
A²:インチ►センチ
B²:図上定規長さ(センチ)
参考
http://www.doc88.com/p-495271139787.html
(4)樹木と植栽の高さと樹木間の距離の測量
(5)建物と広告物の色の測定
調査地---埼玉県八潮市市役所通り(図 1)
図2建物の正面面積の測量方法の例
①色の採取方法
色の調査方法としては現地で調査対象のデ
ジタルで写真を撮り、Photoshop を用いて色の
Lab 値の採取に行った。建物壁面の色は広告物
背後の色を採取した。広告物の*ベースカラー、
アソートカラーとアクセントカラー(文字の色)
図1
を採取した。(図3)
景観構成要素の調査
(1)樹木、電柱、ポールなどの沿道景観構成 *ベースカラー:基調色ともいう。全体のイメ
ージとなる土台の色のこと。配色の中で最も広
要素の位置を拡大地図に記入する。
い部分を占める色となる。この基調色にアソー
(2)建物と広告物の分類(表 1、表 2)
トカラーとアクセントカラーを組み合わせ、全
(3)建物と広告物の正面面積の測量
現地で対象物と 1mの定規の写真撮影をし、 体の配色を整える。
アソートカラー:ベースカラー(基調色)の次
撮影した写真を photo shop に取り込み、正面
に広い部分を占める色のことをいう。アソート
面積を測量する。(図 2)
カラーは、従属色、配合色とも呼ばれる。ベー
測量方法:S=(N÷X²×A²)÷B²
スカラーに、このアソートカラーとアクセント
S:建物実際面積(平方メートル)
カラーを組み合わせ、全体の配色を整える。
N:測量区域ピクセル
X²:画像解相度
アクセントカラー:まとまりある配色をほどこ
したものの、単調な感じがするときに対照的な
色を少し加えることで、全体を整えるのに使う
色のことをいう。アクセントカラーは強調色と
も呼ばれ、明度や彩度、対照的な色相を用いる
ことが多いようである。
図3 建物壁面と広告物のベースカラーの例
表1 八潮市市役所通りの建築物の分類
表2 八潮市市役所通りの広告物の分類
色相に対応するような値を得て図 4b のよう
今回の調査では完全な色空間を表現できる
に色を表現することができる。
Lab 表色系を用いた。これは国際照明委員会
(CIE)が策定した人間の見える色を全て記述
が可能である。Lab はマンセル表色系をはじめ、
他の表色系と同様に数値の変換が行える。
Lab 表色系は a、b 値について図4a のよう
に円形の形に色を上空から投影できる。a 値が
+側なら赤、-側なら緑の色合いになり、b 値
が+側なら黄、‐側なら青。L 値が+側なら白、
‐側なら黒となる。また図4b のように原点か
ら C 地点までの長さをメトリック彩度、水平か
ら OC までの角度をメトリック色相として扱
図 4a
うことができる。これによってマンセルの彩度、
a=0.1183686×L’+1.113367×a’-0.08741528
×b’- 3.306548
決定係数:0.93469
b=-0.1546563×L’-0.1249843×a’+1.168836
×b’+2.565850
決定係数:0.94100
以上の式によって、信頼度が高いと判断できる。
図4b
②色の補正
なお、撮影に使用したデジタルカメラと実色
空間の色の歪みがあるため、データ較正をする
ために色を補正しなければならない。
(1)デジタルカメラで色票を撮影する(図 5)
図 5 撮影した色票 5R
(2)色票に記されるマンセル値を Lab 値に変
換する
(3)撮影した色票画像を Photo Shop で Lab
値を測色する。色票のマンセル値を変換した
Lab 値を(L、a、b)とし、撮影画像 Lab を(L’、
a’、b’)とする(図 6)
Photo Shop で測色した Lab 値
図6
(4) (L、a、b) 値と(L’、a’、b’)値
の間でエクセルの重回帰分析を行い、補正式
(重回帰式)を算出する。(L’、a’、b’)
値と撮影した(L、a、b) 値を補正する、イコ
ール実際の値。
算出した補正式:
L=0.9956100×L’+0.03586117×b’+2.30942
決定係数:0.96191
中間報告
建物壁面の色と広告物のベースカラーの関
係の分析には分布図を作成した。作成した分布
図(図 7)の分類と基準は表3となる。分布図
に建物と広告物のベースカラーを採取した。L
は L1~L3、a は a1~a5、bはb1~b5 になる。
それぞれの中間値を基準として作成した。
表3 分布図に建物と広告物のベースカラー
の Lab の分類と基準範囲、中間値。
中間報告の結果
今回の調査地が八潮市のため、縦に表す建物
壁面の色はほぼ低彩色になり、横に表す広告物
が鮮やかな色を使う広告物があまりなく、ほと
んどが灰色に近かった。また、建物と建物に付
属している広告物の組み合わせの数が少ない
ため、明度や彩度の変化と色のばらつきや偏り
の傾向が評価できなかった。
中間報告のまとめ
建物壁面の色と広告物のベースカラーの分
布図で、壁面と広告物の色を実際の色に表現で
きるために、横(広告物)75 色、縦(建物)9
色を作り、色取りの基準範囲の中間値を決めて
いたから、実際の色と多少誤差があったが、今
後基準範囲をもっと細かくすれば、実際の色に
近づける事が出来、正しく分析と評価できる。
今回の分析の結果からみると、壁面とベースの
組み合わせ色の関係性を評価できるために、も
っとデータを増やす事が必要だと判断した。
図 7 中間報告の分布図
色譜の作成の提案
道路景観の色彩構図を色彩構成要素ごとに
表したものである。色の色彩構成が悪ければ
(よければ)見る者に不快感(快感)を与える。
この不快感(快感)を記譜化して表現しようと
するものが色譜となる。
ば、突出広告は歩行者の視点から見るときは片
面しか見えないので、色譜に表記する時矢印を
付き加えた。屋上看板も実際見える範囲も同じ
く矢印付き加えた。
表4 色譜に景観要素のイメージ図
色譜を作成する方法
実際撮影した写真の建物を色譜で表記する
時は図 8 のように、建物の正面をそのまま倒し
て表記する。
表5 広告物の種類によって、色譜に表記する
時のイメージ図
図 8 写真上の建物を色譜への表記方法
実際撮影した広告物を色譜に表記する時の例
は図9ようになる。
わかりやすく見るために、実際の写真と作成
した色譜の例が図10のように対照しながら、理
解できる。
図9 写真上の広告物を色譜への表記
色譜に用いる景観構成要素のイメージ図形は
表4になる。今回の色譜に出た景観要素は建物、
広告物、自動車道路、植栽、電柱、照明ポール、
信号機がある。なお、広告物の種類によって表
記し方が違うため、表5にように表記する。例え
図10 実際の写真と色譜の例の対照
図11は実際作成した埼玉県八潮市市役所通り
の色譜の一部の拡大図。図12は市役所通りの全
体の色譜の完成版となる。
図11 実際に作成した色譜の一部を拡大した図
図12を見る時は
順番になる。出発は市役所、到着地は駅付近の高速道路である。
図12 埼玉県八潮市市役所通りの色譜の完成版
まとめ
今回の調査から、八潮市市役所通りの景観
要素(建築物、広告物、電柱、照明ポール、
植栽、自動車道路)の分布傾向を把握するこ
とができた。また、建物は住まう(居住施設)、
癒す(医療、福祉施設)、働く(業務施設)、
その他の分類によって、住宅と工場が多数を
占めることが分かった。広告物の分類に関し
て、壁面広告と電柱に巻いている広告が多数
を占め、屋上広告が極めて少数であった。
建物と広告物の色の測色やデザイン手法、
調査した各景観要素の物理特性を加えること
によって、色譜の作成を完成し、市役所通り
全体の建物と広告物の色の分布傾向、建物と
建物に付属している広告物の関係と使用され
る色の傾向を把握することができた。
今後の課題としては、市街地の整備する際、
色譜によって、建物と広告物の属性の違い
と色の分布傾向の関係の検討することや今後
規制する際、色彩の調整を基に適切な色の使
用を明らかにする。また色の配色も街路全体
の雰囲気に影響を与えるため、指標としての
検討を行っていく必要がある。
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