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JICA 公開セミナー 「HIV/AIDS と障害」報告書
JICA 公開セミナー 「HIV/AIDS と障害」報告書 協賛:世界銀行、DPI 日本会議 2006 年 10 月 独立行政法人国際協力機構 人間開発部 社会保障チーム 目 次 セミナーの様子 ---------------------- 3 開催日時及び会場 ---------------------- 4 プログラム --------------------------------- 4 講師略歴 --------------------------------- 5 概要と結論 --------------------------------- 6 議事録詳細 --------------------------------- 7 当日配布資料 ¾ Disability and HIV/AIDS ¾ The World Bank s Support to HIV/AIDS Programs in Africa ¾ Global Partnership on Disability and Development ¾ Excerpts from Inception Reports of JICA Trainees from Southern Africa: With a Focus on HIV/AIDS and Disability 2 セミナーの様子 多くの来場者 地域別研修「南部アフリカ 障害者の地位向上」研修員 による講演 世界銀行ワシントン事務 所にて講演する ジュディス・ヒューマン 3 1.開催日時及び会場 日時:2006 年 9 月 8 日(金)9:30∼12:00 場所:JICA 本部 新宿マインズタワー12 階 BC 会議室 世界銀行本部(ワシントン DC) 2.プログラム: 9:30∼9:35 開会挨拶 9:35∼9:45 小野 喜志雄 JICA 人間開発部 技術審議役 地域別研修「南部アフリカ地域障害者の地位向上」の紹介 参加者の紹介 9:45∼10:05 「アフリカにおける HIV/AIDS に対する取組み」 Ms. Elizabeth Lule, 世界銀行アフリカ地域テクニカルファミリー・ACTafrica 担当マネージャー 10:05∼10:15 10:15∼10:25 10:25∼10:45 質疑応答 ビデオメッセージ Dr. Federico Montero, WHO、障害とリハビリテーション部 部長 「障害と HIV/AIDS」 Ms. Judith Heumann, 世界銀行障害と開発のためのグローバル・パートナ ーシップ担当リード・コンサルタント 10:45∼11:25 「各国の事例紹介」 「南部アフリカ障害者の地位向上」コース研修員 レソト Ms. Lesoetsa Likopo, Lesotho National Federation of Organizations of the Disabled (LNFOD) マラウィ Ms. Kasasi Sigere, Federation of Disability Organization in Malawi (FEDOMA) ザンビア Mr. Chanda Moses, Zambia Federation of the Disabled (ZAFOD) ジ ン バ ブ エ Mr. Khupe Watson, Federation of Disabled people s Organizations in Zimbabwe 11:25∼11:35 「アジア太平洋の障害者コミュニティーにおける HIV/AIDS の啓発」 Mr. Topong Kulkhanchit,DPI アジア太平洋ブロック開発担当官 11:35∼11:55 質疑応答 11:55∼12:00 まとめと閉会挨拶 司会:木下 真理子 JICA 人間開発部 戸田 隆夫 JICA 人間開発部 社会保障チーム 4 第二グループ長 3.講演者紹介 Elizabeth Lule 世界銀行アフリカ地域テクニカルファミリー・ACTafrica 担当マネージャー ウガンダ アフリカエイズキャンペーンチーム(ACTafrica)における全体的な方針や業務調整、そして、 アフリカ地域の実施中の HIV/エイズ戦略を監督に責任を持っている。ACTAfrica のマネージ ャーとしてチームをリードし、アフリカのために多国間 HIV/エイズプログラム(MAP)の実 施を促進している。世界レベルまたは地域レベルのフォーラムでは、アフリカ地域のために HIV/エイズ課題のためのパートナーシップの発展を導き、国連エイズ合同計画(UNAIDS)、ユ ニセフや WHO のような重要な共同スポンサー、エイズ、結核やマラリアのための世界的基金、 二国間または多国間のドナー、市民社会、民間部門による HIV/エイズに関する主要なコンタ クトの役割を果たしている。 Judith E. Heumann 世界銀行障害と開発のためのグローバル・パートナーシップ担当リード・コンサルタント 米国 障害に関する全ての側面と開発発展途上国の貧困に関する内部コンサルタントである。彼女 は、できる限り部門に対する支援をしたり、政策書類や障害に関連したプロジェクトに対す る、対等な立場の評価者として勤めている。彼女は障害トラストファンドの実現のため監督 して、障害主問題に関して政府、障害 NGO や他のドナーとの連絡役となっている。 Topong Kulkhanchit, DPI アジア太平洋ブロック開発担当官 タイ 学歴: 1999文学修士、社会開発行政 (国立開発行政研究所 NIDA) 1982理学士、土木工学 (Chula- chomklao 王立陸軍士官学校 CRMA) 職歴: 1999-現在 1998-2005 1991-1997 1986 1984 1977-1986 DPI アジア太平洋ブロック開発担当 代表、 Nonthaburi 障害者協会(NSDP) 代表、タイ身体障害者協会(APHT) 副代表、タイ DPI 自動車事故により、せき髄損傷 米軍歩兵連隊学校 王立タイ軍 5 4.概要と結論 地域別研修「南部アフリカ地域障害者の地位向上」は、「アフリカ障害者の十年(2000-2009)」にちな んで、障害当事者団体の代表を日本に招き、当事者団体のキャパシティ・ディベロップメントを行う目的 で、日本 DPI 会議に事業を委託し実施している。 これまでの 4 年間の研修受入れの中から、「障害と HIV/AIDS との接点」が問題点として見えてきた。 感染率が軒並み 20%を超える域内各国では、政府による HIV/AIDS 教育やドナーによる啓発活動など 様々な取組みがなされている。ところが、そうした活動が障害者の手に届いていない、HIV/AIDS に対し ても障害者は脆弱な存在となっている、と研修員は指摘している。 本セミナーは、HIV/AIDS と障害との関係や今後の支援のあり方について、国際機関や障害当事者団 体とそれぞれの立場から意見交換が行われた。世界銀行のアフリカ地域における HIV/AIDS 対策や、障 害者と貧困、保健医療サービスへのアクセスに関する障害者の現状や、どのように障害者を HIV/AIDS 施策に巻き込んでいくのかなどについて話し合われた。 結論 HIV/AIDS の課題と、障害者の課題が重なることで、より課題の深刻さが再認識され、HIV/AIDS 感染と脆弱性、貧困と障害という問題点を確認した。その多くは、アクセスの問題に起因するもので あると言える。 1) 保健医療サービスへのアクセス 2) 情報へのアクセス 3) 意思決定過程へのアクセス これらの課題に対し、どのようなアクションをとるべきかは、3つの重要な点に分類できる。 1) 意識啓発と情報共有 2) 政策への反映 3) 各関係機関の連携 HIV/AIDS と障害に関するメディアやワークショップ等を通じた意識啓発、またその活動の情報共有を することが大切である。そして、国の政策に、HIV/AIDS 対策、障害者を反映させていくよう、NGO 等で声 をあげていくことも大事である。また、国際機関、関係省庁、HIV/AIDS 団体、障害団体などが連携して、 課題に取り組むことが重要である。 6 5.議事録詳細 開会挨拶:小野 喜志雄 人間開発部技術審議役 JICA を代表して、セミナーへの参加を歓迎するとともに、セミナーの開催に当たり、DPI 東京事務所と世界銀行の協力に感謝する。本セミナーのテーマ「HIV/AIDS と障害」は私たち にとって非常に新しい課題である。私たち JICA は HIV/AIDS 問題と障害問題に関するプロジ ェクトやボランティアの派遣を多数実施してきたが、それぞれが別々に実施され、両者を統 合して扱うことをしてこなかった。本日のセミナーでの議論は両分野の協力に有益となると 思っている。 プロジェクトを計画したり、政策を立案する際には、障害者について配慮することが必要 である。例えば、HIV/AID のためのシンボルマークとしてレッド・リボンが利用されている が、色覚異常のある人は赤色を認識することができない。そこで、シンボルとするためには、 色だけではなく、リボンの形を作った方が良いのである。これは小さなことだが、障害者に とって大事なことであり、政策立案者はこれらの点について気づいていなければならないと 考えている。 今日は「南部アフリカ地域障害者の地位向上」コースの研修員として 10 名出席いただいて いる。後ほど彼らに発表してもらうが、本日の意見交換が、ユニークで実りある経験となる ことを希望する。 「南部アフリカ地域障害の地位向上」研修について:齋藤 徹 東京国際センター 人 間開発チーム 南部アフリカ地域の国々は、 「アフリカ障害者の十年(2000 年∼2009 年) 」に際して、障害 者のエンパワーメント活動を推進してきたが、障害者に対する社会の偏見と差別は深刻であ り、教育、就労の機会も限られ、障害者は社会の隅に追いやられている状態である。このよ うな状況の下で、障害者支援対策を進める人材育成の分野で南部アフリカ地域を支援するこ とは意義のあることと考えられる。このような背景のもとで、JICA は 2002 年度に研修コー スをスタートさせ、現在、2006 年度の研修コースが SAFOD(Southern Africa Federation of the Disabled)に加盟している 10 カ国を対象に進行中である。この研修コースには SAFOD に 加盟している各国の障害者団体の障害者リーダーを招いている。研修の目的は、障害者を支 援する障害者団体の組織強化であり、研修終了後、研修員は障害者団体を強化するための能 力やスキルを活用していくことが期待されている。 「アフリカにおける HIV/AIDS に対する取組み」:エリザベス・ルール 世界銀行アフリカ地 域テクニカルファミリー・ACTafrica 担当マネージャー まず、JICA に、世界銀行が支援しているアフリカの HIV/AIDS 問題について語る機会を与 えていただき感謝する。アフリカ地域の中でも HIV/AIDS 罹患率が特に高く、深刻な問題を抱 えているアフリカ南部地域からの参加者が出席していることを嬉しく思う。また、多くのア フリカ諸国において HIV と障害との問題を一緒に取り上げることは今まで十分なされてこな かったので、今回は大変よい機会だと思っている。また皆さんの経験や障害者団体のすばら しい活動について伺うことも楽しみにしている。同時に世界銀行が各国に支援している HIV/AIDS 問題への取り組みや主流化などの政策についてのアドバイスを皆さんからいただけ ると幸いである。 7 (スライド 2)世界の HIV 感染地図を見ると、アフリカ地域は感染率が高く、特に南部アフ リカや東部アフリカは深刻である。研修員の皆さんの国は罹患率が高く、15%以上である。 スワジランド、南アフリカ、レソトやボツワナは非常に高い罹患率で、とくに若者や若い 女性の HIV 感染が顕著である。このことはそれぞれの国にとって非常に重大な問題で、世界 銀行もこのことに関して後ほど説明をしなくてはならない。統計上の数についてはご存知と 思うので、今は言及しない。 (スライド3)次に、障害と HIV の問題についていくつかの深刻な問題について手短かに述 べる。 アフリカには 6,000 万人の障害者がいると推定されている。研修員の発表にもでてくると 思うが、障害者は HIV 感染に関して高いリスクがある。障害者は身体的介助に依存する率の 高さ、施設での生活、法的権利の不足、低い教育レベルなどの理由で性的暴力、レイプなど の危険が高いからである。また、HIV についての情報とサービスが手に入りにくいことも、原 因の一つでる。私もアフリカについて知っているが、障害者はあまり人前には出て来ないの で、障害者は人に見られることはあまりない。障害者は障害を社会的不名誉と感じ、さらに HIV に感染していたら、なおさらそう感じるのである。 多くの国の国家エイズ委員会は障害者がプログラム作成に参加することを考えておらず、 HIV/AIDS 政策策定やプログラム作成において障害者の参加が難しいのが現状である。 (スライド4)1999 年に、世界銀行はアフリカの HIV/AIDS に対する戦略を開発した。その 1つは、アクション強化である。HIV/AIDS は社会的偏見もたらす病気であるため、多くの国々 は自国にとって HIV/AIDS が深刻な問題であることを否定してきた。そのため、世銀はアフリ カでのエイズ・キャンペーンを国別ではなく、アフリカ全体の一体化したキャンペーンにし た。2つめは、国内外の資源の動員利用である。3つめの HIV/AIDS についての情報共有につ いては、例えば AIDS が国のマクロ経済や家計経済レベルに及ぼす影響の分析などが挙げられ る。4つめは HIV/AIDS の主流化。HIV/AIDS を単に健康問題に限定せず、教育、輸送、エネ ルギー、ジェンダー、若者など全ての分野にわたり、HIV/AIDS 問題を主流化することにした。 5つめは、能力開発。ここでは国レベルの政策立案、分析、プログラミングなどをカバーす ることを目的とする。6つめは、パートナーシップ強化。各種のドナーは国レベル、地方レ ベル、さまざまなコミュニティレベルの機関や団体等との連携を強化する。 また、世銀は、2005 年のグローバル・アクション・プログラム(GHAP)を実施し、アフリ カの国々を支援している。 ¾ AIDS 問題に対する取組の強化として、国のコスト戦略、年間の行動計画を作成する。 ¾ HIV/AIDS 問題を貧困削減計画(PRSP)や中期支出枠組み(MTEF)の中に取り込む。 ¾ さまざまな分野でも HIV/AIDS 問題を主流化する。 • 他から資金支援を受けていない HIV/AIDS プログラム、グループ、活動に資金提供し、健 康に関するシステムを強化する。 • モニタリングと評価に焦点を当てる。 • パートナーシップを強化し、知識・情報を共有する。 現在のところ、世銀は世界のアクション・プログラムを調整するため、アフリカの戦略に 取り組もうとしている。障害当事者グループに助言を求めて、HIV/AIDS プログラムの中に、 どのように障害者の課題を主流化していくかについて取り組んでいる。 (スライド5)世銀が支援する HIV/AIDS プログラムに全ての国が参加することができる。世 銀は多国間エイズプログラム(Multi-Country-Program)を MAP と呼んでいる。 8 • • • • 参加資格の基準 HIV/AIDS に関する戦略的アプローチの必要性があること。 国家エイズ委員会(National AIDS Commission)を設立する。 プログラム実施において、例外も認める、柔軟性のある措置を選択すること。また、国家 のキャパシティが不足している場合は、仲介となる金融機関に資金運営を依頼し、民間団 体や地域の団体へ資金を供与するなど、HIV/AIDS 問題に取り組む色々な措置が選択できる こと。 国が民間の団体や地域のグループにすすんで資金供与する。 5年後には、多くの国がエイズ問題に対する戦略を持つことが出来ると思うが、国によっ ては戦略に基づく活動が不十分であるように思う。脆弱なグループはプログラムから除外さ れたり、資金がエイズ対策に使われない場合もあると思う。 国家エイズ委員会は閉鎖的、排他的に調整するというより、思い通りにプログラムを実施 することを望んでいる。 資金供与のペースは以前に比べ速くなったものの、必要以上に遅いこともあり、迅速に行 うべきである。 (スライド6)世銀の多国間エイズプログラムは、29 カ国と 4 地域のプロジェクトをカバー している。委託金は 11.2 億ドルで、そのうち 7 億 4400 万ドルはすでに分配されている。 資金は、50,000 以上の民間団体に協力して、コミュニティレベルにおける行動や習慣を改 善するためのプロジェクトに拠出されている。世銀は世銀以外の国際的ファンドや米国政府、 英国政府などから資金を得て、新規のプロジェクトの準備をしている。初期のオリジナル・ プロジェクトは終了したので、過去のプロジェクトからの教訓を活用し、第二段階目のプロ ジェクトを準備している。 (スライド7)これはアフリカの多国間エイズプログラムで、既に承認されたプロジェク トと、現在準備が進行中のものがある。以前から継続中のプロジェクトや、国境を越えて地 域をカバーしているプロジェクトもある。皆さんは驚くかもしれないが、南部アフリカの国々、 例えば南アフリカ、ボツワナ、ジンバブエ、アンゴラの一部、スワジランドでは世銀の支援 プロジェクトが実施されていない。 なぜならこの国々は他のアフリカ諸国よりずっと裕福だからである。つまり、国民一人当 たりの所得は他の諸国より高く、国際開発銀行から低利子のローンや、他からの交付金など を受けることができない。 ナミビアやスワジランドでは世銀は他の資金を利用して支援している。スワジランドでは 政府が行う能力開発(capacity-building)のためにモニタリングや評価の実施の支援、ナミ ビアではアミカルというグループが行っている HIV/AIDS 課題に関して主流化や能力開発の 事業を援助している。 世銀はスーダンやソマリアでも同様の支援をおこなっている。ジンバブエはこの数年間、 IMF からの資金を得る特別な地位を獲得したので、世銀の支援を受ける資格がない。 以上のように、世銀は支援を行うに当り、ジレンマを抱えている。世銀が HIV/AIDS の高い 罹患率の国へ支援事業を実施したくとも、上記のように世銀の援助対象国として資格のない 国々があるからである。 レソトでは世銀の多国間エイズプログラムは実施していないが、レソト政府のキャパシテ ィディベロップメントのために資金を供与し、 政府は国際的ファンドからの資金を HIV/AIDS、 9 結核、マラリアなどのプロジェクトに使っている。 (スライド8)多国間エイズプログラムにより達成された業績は以下の通りである。 • 全ての国が当局とプログラムを持つことができた。 • 金融、資金調達、M&E(金融と評価)システムが改善された。 • 調和が深められ、共同プログラムの見直し・検討が広まった。 • 多くのケースにおける体制をもとに、世界的なファンドが作られた。 重要なことは、市民社会との協働である。市民社会の活動だからこそ、脆弱なグループに うまく対処でき、障害者や政府の援助・支援を受けられない繊維産業などの労働者などの脆弱 なグループのために、役立つことができたことである。 (スライド9参照) すでに言及したが、資金の約 40%は市民社会を通じて利用された。コミュニティがその資 金を受益者に届くよう努力することを願っている。資金利用に腐敗がなく、複数の団体の資 金を合わせてプロポーザルを作成し、プロジェクト・マネジメント改善が可能になることを 望んでいる。 (スライド10参照) 教訓と今後の課題 • 各国が行動するための基金を創設する。 • 多くの国が HIV/AIDS 問題にコミットして、改善を約束する。 • 以下の三つの課題を促進する。( The Three Ones policy) 1.異なったドナー間の調和 2.色々なセクターへのアプローチ(Multi-sectorial Approach)を奨励 3.進行中のプロジェクトの応用とその体系的アプローチを奨励して、将来の新たなプロジ ェクト・デザインに役立てる。 (スライド11省略) (スライド12参照) 戦略上すべき方法や事柄は色々あるが、地方の状況、脆弱なグループに応じたプログラム を計画するべきである。 • 障害者を含む脆弱なグループの市民社会の参加の推進。 • 技術面での監督と指導。 • 各国の成功事例を各国間で活用・共有する。 • 貧しい人など脆弱なグループも医療サービスにアクセスできるようにする。 • ジェンダー問題をもっと明確にする。新たな感染が若い女性に蔓延している。ザンビ アやマラウィなどの国では、エイズ感染の男女比率は1:6であると言われている。 問題は若い女性がすでにエイズに感染した年上の男性と関係を持つ傾向があることで ある。 • 脆弱なグループに焦点をあてる。 • 保健セクターがエイズの検査や治療など、さらに推進する。 • 人的資源の課題に言及する。 10 (スライド13参照) 障害者のために何をする必要があるのか。効果的な政策論議の根拠となる分析研究の必要 性がある。障害者と HIV/AIDS 問題を十分に分析研究することが今までなく、世銀や各団体は この問題をしっかり視野に入れることを認識すべきである。エール大学が研究してまとめた レポートもある。 政治的コッミトメントを深めることも必要である。障害分野は長い間軽視されてきたため、 政府と政策について話し合いをもつことは容易ではないと思われるが、対話の中で言及して いくことが必要である。政府は障害者のために色々な約束をしており、国によっては障害者 の参加に関して大変よく対応しているところもある。しかし、ウガンダのように、国会の議 席の四分の一をも障害者が占めている国は、例外的なケースであり、ほとんどの国はそのよ うには対応していない。以上のことから、私たちはまだまだ努力しなければならないことが 多く、障害者の権利を獲得する為には、ネットワークの協力を強化し、政府のコミットメン トを強める必要がある。障害者も国レベルで障害者の権利を主張していくべきである。 また、効果的な提言と参加を高めるためのキャパシティビルディングが必要である。 障害者団体等は障害・エイズ問題に関して、そのキャパシティが不足しているため、意識啓 発とキャパシティビルディングを目的とした今回の JICA 研修は研修員の能力を高める上で 大変有用である。JICA 研修員は、帰国後、国家エイズ委員会の委員や議長に必ず会って、障 害・エイズ問題に対処するためには、キャパシティ・ビルディングが重要であることを指摘 してほしい。 さらに、障害・エイズ問題の取り組み方法や成果についての情報を普及させることも必要 である。プロジェクト実施のための手段や成果など、皆さんの活動について情報発信するこ とで、勇気付けられる人もおり、このような普及活動はキャパシィティビルディングにもな る。 そして、戦略的同盟関係の強化と連合の構築が必要である。アフリカの HIV/AIDS と障害の キャンペーンが異なる団体の連合から始まったことを、ご存知かどうか分からないが、私は ぜひ皆さんの組織が、連合に加盟する努力をしてほしいと思っている。連合は、皆さんの活 動の成果を宣伝するのを手伝ってくれ、その手段や立派な実践の情報を共有し、他の国々が この分野で何をしているか知ることが出来るからである。 (スライド14参照) 最後に、このグラフが示すように 1900 年代の初め、世銀の資金は非常に小額であった。世 銀が多国間エイズプログラムを始めて以来、多くの組織が加わり、その出入りもあった。 世銀は国際基金やエイズの治療を対象にした WHO の「3by5」の資金も得た。PEPFAR という アメリカ政府のプログラムでは、ナミビア、南ア、ボツアナを対象国とした。二米欧主要8 カ国(G8)は、エイズ問題に関してアフリカ援助の増額を約束してくれた。そして、治療費 のコストも下がったので、主流化のための資金を増額できないとか、障害者などの脆弱なグ ループに対応できないなどという弁解は、もはやできなくなった。 皆さんと協力し仕事を進めてきて、世銀は立派な基礎を築いてきた。しかしながら、やら なければならないことがまだまだある。世銀や、各団体、各国政府によって、またネットワ ークによって、HIV/AIDS と障害者問題に対し、情報やサービスなどが入手可能になるよう努 力していかなければならない。そうすれば、この写真のような幸せな家族になることができ る。 質疑応答 11 質問(ナミビア研修員) : 私はナミビアの核となる団体からの参加である。ご指摘の通り、ナミビアは HIV/AIDS の課 題で世銀の支援を受けてきた。特に障害者とエイズ問題のキャンペーンでは主流化や認識と 意識啓発をプログラムに盛り込んでいるが、どのような点で、ナミビアでは全てが円滑に行 われていると思われるのか。 エリザベス: 確かにナミビアはアフリカで南アに続き、二番目に所得の高い国である。ナミビアはエイ ズ、結核、マラリアのプログラムの為に、国際的ファンドから支援を受けている。さらにア メリカのブッシュ大統領の発議で大変大きなプログラムを実施している。しかし、ナミビア の一番の障害となっている問題はキャパシティの不足である。実際、能力不足のため、プロ グラムを中断している。 二番目に大きな問題は不平等である。平均すると所得は高いものの、平等に分配されてお らず、少数の非常に金持ちの人がいる一方で、多数の人々は大変貧しい暮らしをしている。 この不平等と貧困層を含む多数の脆弱なグループのニーズに対応することが大きなチャレ ンジだと思う。 世銀の支援額は他の大きな機関に比べ、非常に少ない額です。組織の能力を高めるよう世 銀は努力してきましたが、残念なことに、プロジェクトは私たちが期待していた程、うまく 機能せず、資金は使われなかった。 質問(南アフリカ研修員) : 南アフリカのエイズの罹患率は非常に高くなっているが、障害者のエイズに対して重きを 置いているとは思えないし、障害者の問題も減少してはいない。なぜなら障害者は貧困にも 関らず、自分自身で闘っているのである。 エイズ問題とは必ずしも関連のない障害者問題を、どのような条件があれば、他のプロジ ェクトの中に組み入れてもらえるのか。例えば、インフラ問題について言えば、情報やサー ビスを得るため、障害者は建物の中に入る必要があるが、それが出来ない場合もある。この ような状況も世銀の他のプロジェクトの中に含め、HIV/AIDS と共に障害者問題を主流化して 欲しい。 エリザベス: よい質問だと思う。実際に、世銀ができることはあまりない。南アフリカはアフリカで一 番裕福な国で、資源もあり、さらにブッシュ大統領の発議での援助も受けている。 南アフリカの問題は社会的偏見だと思う。政府が更に取り組まなければならない主な課題 は、社会偏見のためエイズ検査をためらう人々への対処や治療へのアクセスなどである。 世銀が南アフリカに対し行っているのは、技術支援を通じた、保健や社会問題などに限定 する分野での分析研究である。 主流化の面では成功している分野も、そうでない分野もある。教育分野では主流化がうま くいっている。教育を受けた人々、特に若い女性たちは障害者においても、教育のない人々 より上手に困難などを切り抜けている。 インフラの影響により、実際、世銀は交通事情の大変よいアフリカ西部で、アビジャン・ 回廊プロジェクト呼ばれるプロジェクトを実施している。高速道路がいろいろの国々を結ぶ ので、エイズ問題もそれに対応せざるをえない状況である。多くの交通整備やインフラはエ イズ問題を考慮に入れてデザインすべきである。 エイズ感染予防に関しては労働者をエイズから保護していく必要がある。なぜなら、労働 12 者はコミュニティからやってきて、コミュニティの住民と共に働くからである。 ジェンダーや青少年の課題については、世銀はあまり対応していない。なぜなら、これら の課題は難しく、敏感な社会的課題であるので、政府はかかわるのに熱心ではなかった。 しかしこれらの課題も主流化の流れに乗せていかなければならないと思っている。 ジュディ: エリザベスの回答に少し付け加える。アフリカではプロジェクト全般において、特に障害 者問題に焦点を当て、取り組んでいる。障害者にとってのインフラの問題が話題に取り上げ られたが、世銀は、現在のところ、建築や増改築におけるアクセスに対する明確な政策を持 っていない。しかし、世銀でもその課題について話し合いがもたれている。 各国が独自のアクセスのガイドラインを作成し、世銀がそのガイドライン作成の支援をす ることも考えられる。すでにガイドラインを持っている国もある。HIV/AIDS 予防の問題も含 めて議論すべきである。道路、学校、施設など新たなインフラを整備する際にはアクセスを 考慮に入れることは重要である。ドナーなど関係者と協議して政策を実施することになるだ ろう。 アフリカ障害者の十年を機にさまざまな問題が政府、市長、法律家などの間で議論され、 今次会合でも議論されている。 質問(ボツワナ研修員) : 現在のボツワナの状況に基づいて質問する。世銀は HIV/AIDS 課題において、障害者が意識 啓発や知識を得るために、障害者の人数、性別、教育レベル、障害の種類、HIV へのアクセ ス問題など各区分に対応した戦略を持っているのか。 エリザベス: 多国間エイズプログラムから分かるように、世銀は、ボツワナではプロジェクト支援をし ていない。しかし、世銀の調査団がボツワナを現在訪問中で、いろいろなセクター間の HIV/AIDS プロジェクト開発について政府と協議しているところである。現在実施中のプロジ ェクトが財政的に持続可能かどうか、またエイズの予防に資金を増額できるか注視している ところである。 政府はエイズと新たな感染を予防しないと、治療も持続できなくなると表明している。帰 国後、この課題を取り上げ、プロジェクト・デザインに意見を反映させてほしい。 エイズ問題のグループはネットワークを構築し、他の課題のグループと課題を共有してい る。現状では、エイズのグループの方が大きな声をあげて課題に取り組んでいるようである が、障害者のグループも、もっと大きな声で主張し、取り組みを強化していく必要があると 思う。 質問(スワジランド研修員): 私たちは障害者のためのプログラム作成を政府や資金提供者に働きかけているが、障害者 の問題はなかなか進まない。 なぜスワジランドでは HIV/AIDS 問題が非常にゆっくりと進行しているのか。スワジランド ではエイズが深刻な感染を引き起こしているのに、人々はその情報さえ入手していない。 エリザベス: 実は、私はスワジランドに 1980 年代に住んでいたことがある。当時大学で教えていたので、 スワジランドのことはよく知っている。スワジランドは豊な国であるが、裕福な国のグルー 13 プのうちの最下位であると思う。 憂慮すべきことは HIV/AIDS のために、国がどんどん貧しくなってきていることである。 HIV/AIDS に罹患した人の多くは生産に従事している年齢層で、特に技能を備えた人々である。 スワジランドの障害者に関して重要な問題は政府のコミットメントにある。皆さんの団体 がすべきこともたくさんある。たとえば、国際的な支援を受けて実施しているプログラムが 障害者に届いていないという証拠を収集することも政府のコミットメントを獲得するのに大 切なことである。 再度指摘したいことは、脆弱なグループや貧しい人々に必要な支援が届かないという不平 等が存在することである。このことはスワジランドに限らず、世界の至る所でも深刻な問題 となっている。 質問(南アフリカ研修員) : 現在、国際的ファンドから資金支援を得ているが、どのような方法で世銀から基金や支援 を得ることができるのか。政府、または障害者当事者団体を通じて得ることができるのか。 エリザベス: 団体への資金は通常、政府を通じて渡される。特に無償資金援助は政府を通じてのみ供与 される。典型的な例として、エイズ、マラリア、結核の三大疾患のプログラムに関しては厚 生省などを通じて資金が与えられる。 世銀は小規模の組織、例えば、アミカルを支援してきた。アミカルの実績はかなり事実と は異なっており、世銀はアミカルのプロジェクトを予定より早く終了した。資金が使われて いなかったからである。 ブッシュ大統領主導の資金は主に NGO のプログラムに使われているが、同時に、政府を支 援して保健分野を強化し、治療に援助を増やしている。 アメリカ大使館は一連のワークショップを支援しているので、皆さんの団体も支援を受け られるはずである。是非アメリカ大使館にコンタクトしてほしい。 私から研修員に質問であるが、国家エイズ委員会に実際に連絡を取っている人は何名いる か。さらに、南アフリカ、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエは別として何名の研修員が自国 の世銀支援プロジェクトを知っているのか。マラウィの研修員は自国で実施されている世銀 の多国間エイズプログラムを知っていると思う。 マラウィ研修員: マラウィはまだ世銀の多国間エイズプログラムにコンタクトしていない。世銀からの情報 がないと、何をすべきか、いつすべきかわからない。 ザンビア研修員: 私たちは国家エイズ委員会と緊密に協力して自国の HIV/AIDS 問題に対処している。 世銀の HIV/AIDS 問題で意識啓発のプロジェクトについて諮問委員会に連絡している。費用に ついては ILO と協力し、ワークショップの期間に HIV/AIDS の理解を促進する予定である。 ビデオメッセージ:フェデリコ・モンテロ WHO 障害・リハビリテーション部長 障害と HIV/AIDS 1. 障害者のための保健サービスへのアクセス 私は障害と HIV/AIDS との関係の重要性を認識している。またこの会議では HIV プログラム における障害問題の主流化、特に障害と HIV/AIDS に焦点が絞られることを明確に理解してい 14 る。私からのメッセージとして、1.障害者の保健サービスへのアクセスの欠如、2.貧困・ 保健・障害の関係に焦点を当てたいと思う。 元国連人権問題担当高等弁務官のメアリー・ロビンソンは最近、保健に関して、 「貧困との 戦いが注目を集めているにもかかわらず、エイズなどの病気を抱える人々のみならず、飲料 水、適切な食物、信頼できる保健制度へのアクセスを持たない人々も含め何百万もの人々に とって、健康への権利は依然として幻想にすぎない」と述べている。健康は軽視してよい問 題ではない。健康は生命と尊厳を確保するための最も基本的な権利である。 国連経済社会文化的権利委員会は一般見解第 14 号の中で、健康への権利の最も権威ある解 釈を規定している。この一般見解は、医療への権利、また健康の基本的決定要素、自由と権 利、非差別と平等、保健関連の政策決定への参加、説明責任など、健康への権利をいろいろ な面から強調している。 2. 貧困と障害 障害と貧困は複雑に絡み合っており、一方がもう一方の原因にもなり結果にもなるという 悪循環につながる。貧困を強いられる世界中のコミュニティは、事故と疾病のために不均衡 な割合で障害に影響されている。その結果、保健的ケア、社会的ケア、リハビリテーション サービスへのアクセスに不自由することから、障害者はますます貧困に対し脆弱となる。障 害者は教育、雇用、支援サービスでしばしば壁にぶつかり、地域での生活への完全参加の機 会や、自己決定することを否定される可能性がある。 異論はあるかもしれないが、地域の環境は貧困と障害を結びつける最も大きな要因になる。 都市の住民は農村の住民に比べて、疾病の蔓延、その他交通事故などを原因として大きな危 険に直面することから、障害者の数はより密集し、最も貧しい人々は、より安い、つまり安 全性の低い交通手段をしばしば強いられという状況がある。 また、トラコーマや小児麻痺、住血吸虫病の蔓延には適切な衛生の欠如が関与している。 世界では約 600 万人がトラコーマのために失明しており、住血吸虫病および土壌伝播蠕虫症 の感染者の数はおよそ 20 億人である。不適切な衛生状態は、もともと健康な人々にとって多 くの問題を引き起こしますが、特に影響を受けるのはすでに病気か負傷している人々である。 交通事故の死亡者数は毎年世界で 120 万人、負傷者数は 5000 万人と見積もられている。そ のうち低所得国と中所得国での死亡者が85%を占めている。さらに、外傷のうち交通関係 の負傷によるものが占める割合は、低所得国と中所得国でそれぞれ 30%と 86%である(WHO)。 貧困はしばしば不十分な、あるいは不健康な食生活の結果であり、これがさらに疾病と障 害につながる。健康的な食生活を送らないと回復の可能性が低くなり、影響を受けた人々は ますます貧しくなる可能性が高まる。 毎日 3 億人の子どもたちが飢えており、そのうち 90%は長期的な栄養失調と微量栄養素欠 乏症に苦しんでいる。栄養失調は結果的に発育の遅れと長期的な知的障害の主な原因となる。 単純な感染、疾病、負傷は、治療を受けなかったため、あるいは放置されたことが原因と なってしばしば恒久的な障害につながる。3700 万人の子どもたちは早期の死亡を簡単に防ぐ ことのできるはずのワクチンへのアクセスを持たず、毎日 3 万人の子どもたちが、予防可能 な疾病により命を落としている。 10 億人の人々、すなわち 5 人に 1 人が安全な水へのアクセスを持っていない。 豊かな国々では平均寿命が 80 歳にせまる一方、一部の最貧国では 40 歳を下回っている。 生まれる子ども 1000 人のうち 100 人超が生後 5 日目を待たずに死亡する国もある。また、1 分に 1 人の女性が出産により死亡し、毎分 5 人の女性が、すでに 2000 万人いる HIV/AIDS 患 者に加わっている。 WHO は現在世界には 140 万人の盲の子どもが存在し、そのうち 73%は低所得国に住むと見 15 積もられている。開発途上国では、子どもの失明の 70%までは予防または治療が可能な原因 によるものである。 WHO はまた、低所得国と中所得国では 2 億 220 万人が両耳に中度から重度の聴力障害を持 つものと推定している。 障害と開発のグローバル・パートナーシップ(GPDD):ジュディス・ヒューマン 世界銀行 GPDD 担当リード・コンサルタント 私が所属するグローバル・パートナーシップについてお話する前に、今日の本題でもある、 HIV/AIDS に関する問題の観点について触れたいと思う。保健医療システムの機能が効果的に働い ていないのは社会にとって、また障害者にとって深刻な問題である。 HIV/AIDS の問題は、一つの例として考えるべきである。障害者の HIV/AIDS 感染予防における 保健医療システムの失敗例として、障害者が AIDS に感染した場合、障害の違いによる適切な対応 がおこなわれていない、医療従事者が、障害者に対し、HIV/AIDS 感染防止を考慮に入れた適切な 対応をおこなえるような研修を受けていない、という問題点が挙げられる。 ご参加の皆さんが何らかの形で HIV に関する仕事に従事されているとしたら、国家レベルで、 これからどうすればいいのか、準備はできているか、と思われるだろう。この点について、国連 の会議を引き合いにして触れておきたいと思う。 国連における障害者の権利に関する会議は、2 週間ほど前におこなわれたが、まずは、障害と 開発のグローバル・パートナーシップ(以下、GPDD)、HIV/AIDS と障害についてお話しする。 GPDD について、すでにご存知の方もいらっしゃると思うが、これは障害者のための、障害と開 発のパートナーシップのことである。GDPP とは、障害者とその家族を、開発政策、政策策定・実 施への参加を促進する、というダイナミックかつ新しい提唱のことである。非公式の同盟関係で あり、開発に関する組織や機関との協力により、途上国における障害者の貧困削減、障害そのも のを排斥することを掲げている。 グローバル・パートナーシップは 2002 年に世界銀行主催の会議で初めて提唱された。それから 2 年の間に、南アフリカやイタリア、バンコク、ワシントンなどで会議が重ねられ、多くの関係 者、国際社会を取り込んできた。有効な協力関係を築くことにより、障害者の貧困削減、経済発 展を訴えていくことを目的としている。 こちらは、キャパシティ・ビルディングと研究についての資料で、3 つの原則がある。途上国政 府、NGO(非政府組織)、DPO(障害者組織)、国連、ドナー組織、大学、マスコミなどが関係者であ る。 この議論では、障害は、主要アジェンダに統合されることが認識され、様々な関係者が互いに 情報を共有することが重要だということがわかった。情報の共有における成功の秘訣は、現在学 んでいることを、互いに違う働き手としての関係者が、ともに分かち合えるか、という点にある。 GPDD における別の目的は、政策問題に関する報告書を作成することである。提供された情報を もとに、分析し、代替政策を考案する。また、組織の研修をしたり、キャパシティビルディング に関するイベントを普及させることである。 仲介的、サービス局的機能を持つ同盟が、アジェンダを推進し続けるのである。途上国の障害 関係者が協力関係を持ち、それを支援する。今日の話にもあったし、JICA でも話し合われている 16 と思うが、各障害当事者団体が連携し、その連携を支援し、組織同士の協力関係が強められるこ とは必要不可欠だと考えている。これがパートナーシップの目的の一つである。途上国の活動を まとめ、障害と開発に関する知識を共有できるようにする。そうすれば、多くの情報が共有され、 長期的に、目に見える結果が出るだろう。つまり貧困削減および経済発展という形であらわれる はずである。 (スライド4)GPDD の HIV/AIDS における役割について。2004 年 4 月、世界銀行は「人間の安全 保障と障害:障害者」を出版した。 (読んだことのある人はいるか尋ねるが、会場にはいなかった。 ) その報告書を配布できるようにしようと思う。これは世界中 1,200 社から集めたアンケート結果 である。身体的、先天的、精神的障害者について、障害者に何が起きているのか?彼らは HIV に 関する適切な情報を得ているか?情報を提供する側は、どのような対策を用いることができる か?という、障害者個人の生活にどのような現実があるのかを調べた。市民社会、障害団体は基 金を確保できているか?その成功例は?世界中の障害者から話を聞き、HIV/AIDS 感染予防につい て障害者に浸透させたい。しかし、障害者は適切な予防に関する情報を受け取っておらず、多く の場合、感染の可能性を自覚する障害者にも、適切な医療サービスは与えられていない。 HIV/AIDS は、世界中の障害者に大きな脅威となっている。この報告書は、多くの AIDS に感染 した障害者は阻害されている現状を物語っている。皆さんは驚かれないかもしれないが、このよ うな閉鎖的な情報の使われ方が、これまでの国際レベルの実情であった。 では、引き続き GPDD についてお話しする。HIV/AIDS 問題を障害者の問題に引き寄せて考えたい。 この報告書には、多くの発見があり、これらは国際的なフォーラムでも発表されている。GPDD は、 このような形で情報を共有するのにも役立っている。 (スライド 6)GPDD の活動結果について。JICA の課題別指針を読んで、私は興奮した。4 年前 なら、このような発行物は出版されなかったのではないだろうか。完全なものとは言えないまで も、同じ問題意識を共有していることは確かである。DPO および NGO が新たに基金をつのること なく複数のドナーが高い意識を持ち、協力関係が築かれている。 情報は、国際会議や専門誌をとおして発表され、障害者の現状が知られる機会を増やしている。 皆さんの中で、アフリカの貧困地域や障害者に関係する仕事をされている方は?障害者の HIV/AIDS のアドボカシーについてご存知の方は?Handicap International についてご存知の方 は?これらは情報共有というアジェンダに欠かせない点である。 (スライド7)Handicap International は、ご存知の方も多いと思うが、この数年、開発、 HIV/AIDS 問題などを問題提起し、地域、国家、国際組織がともに、HIV/AIDS に感染する障害者を 減らすような活動に取り組んでいる。自助努力、モニタリング、政府の HIV/AIDS に関する対策や プログラムを増やすなど、地域、国家、国際レベルにまで展開させた活動である。また、国際的 なドナーが HIV/AIDS を障害者問題に含めるようになった。しかし、これはあくまで一例で、国際 的なドナーには、障害者の健康の取り組みの一環として、HIV/AIDS をも含めた障害者の医療問題、 という捉え方をして頂きたいと思っている。 (スライド8)世界銀行から発信された他の例を紹介しよう。これは GPDD の急速な成長をあらわ している。世界銀行は、ラテン・アメリカやカリブ海地域で、障害者組織と厚生省や関係省庁と 連携して問題に取り組んでいる。関係省庁の中には、若者と障害者の両方に取り組むところもあ る。先ほどは、若者と HIV/AIDS の社会問題についての話があった。 アフリカでは、自助発展(セルフ・プログレス)が進められていることを聞いた。障害者を取り 17 込んだ政府の取り組みがおこなわれており、市民社会の中でキャパシティ・ビルディングが進めら れている。ワークショップやプログラム、テレビ会議などを通し、彼らは HIV と障害について、 政府機関、障害者の間で話し合われている問題に取り組んでいる。 (スライド9)国連の障害者の権利条約の中の健康の項についてご覧になった方はいるか。詳 しい内容を配布できればといいのだが、ここには抜粋されたものを提示した。2 週間前に出され たもので、国連総会で 11 月末までに可決される予定である。 国連総会で、この内容は事実上可決したため、加盟政府はこれに書名し、実行しなければなら ない。国家レベルで対処し、実行することになる。 この中で、重要な項目を見ていこう。健康に関する権利について書かれたものである。完全な 抜粋ではないが、政府は障害を持つ個人が、障害について差別されることなく生活する権利があ ることを認める、とある。 ここに HIV/AIDS を含むとするならば、政府は、感染した障害者を支援しなくてはならない。国 連総会で、障害者が、医療機関を利用することが義務付けられ、ジェンダー配慮を受け、特に女 性が差別されることなく病院を利用できるよう配慮することが義務付けられた。健康に関する権 利は、国連総会で今回決議された、最も重要な権利の一つといえるだろう。 適切な医療サービスを必要な障害者に提供することは、子どもや高齢者も含まれる。例えば、 脊髄を損傷した方は、さらなる適切な医療サービスが必要となり、治療に必要な器具、車椅子な ども提供されなければならない。特に子どもたちの問題をも含めると、さらに課題は広がる。ま た国連では「医療従事者が障害者に対して、健常者と同じサービスを提供すること・・・」とあ る。 ここで HIV/AIDS について考えると、障害者が地域社会、国家レベルで直面する問題点が挙げら れる。医療従事者の研修に関して、例えば障害者の障害の違いによる適切な対応ができるような 訓練を受けているか?障害者は健常者と同じ水準の医療サービスが適用されているか?答えは 「ノー」である。では、どうすればいいのか。 多くの国では、医療制度は国民全体の問題であることがわかっているが、障害者が健常者と同 じ水準に達すれば解決するような問題ではないのである。しかし、関係組織は、政府と連携して 改善することが求められている。地域、国家レベルで互いに対話を持つことから始め、有効な医 療サービスとは何かを探るのである。障害者自身が、医療従事者となる訓練を受けることも選択 肢としてあるのではないだろうか。大学や教育機関とも連携し、障害者へ医療サービスを提供す ることが、医療従事者の間で常識となるとよいと考えている。それが実現すれば、HIV/AIDS の問 題は最優先課題となるはずであるが、現実は、依然、障害者が犠牲になっている。しかし、この ように、障害者と HIV/AIDS に関する問題は、アフリカ地域を始め世界中で取りあげられ、関連し た活動も増加している。 では、GPDD に戻ると、相互の同盟関係とは、国家が考案した競争原理を用いない同盟である。 様々な関係者、政府機関、国連組織、市民社会がともに携わり、情報を共有するのである。 ドナーの基金は 70 万ドル集まり、活動資金が必要ならば、どのような組織でも応募することが できる。 では、市民社会、研究、キャパシティ・ビルディングの強化について、現在私たちが活動してい ることを報告する。 コーディネート・タスク・フォースというものがあり、南アフリカ、ルワンダ、ウガンダ、ザ ンビアなどが 12 カ国参加している。2004 年に設立され、国連機関、障害者組織、非政府組織、 18 ドナー、途上国政府などが同盟に加わっている。 現在、1.教育グループ、2.貧困削減および障害グループ、3.災害、緊急事態および紛争 グループ、4.プラニングおよびコーディネーション・グループの 4 つのワーキンググループが ある。 教育グループは、支援政府およびドナーに認可され、教育問題について、国家、地域、世界レ ベルで取り組んでいる。ご存知のとおり、多くの障害児は学校へ通っていない。政府の中には、 障害児が学校へ通うことを方針にしているところもあるが、すべての政府がそうとは限らない。 そこで教育グループでは、市民社会とともに、方針を開発し、その方針を実行させ、数多くの障 害児を学業に専念させ、修了させることを目標にしている。 貧困削減および障害グループは、PRSP(貧困削減戦略報告書)に重点をおいている。JICA でも PRSP に取り組んでいると聞いている。これは途上国では特に必要不可欠である。青写真として捉 えることもできるので、 政府の声明をこの 3 から 5 年にかけて注目してみていてほしい。PRSP は、 世界銀行、EU、その他のドナーでも共有している。仮に障害が PRSP に含まれていなければ、政府 をとおして障害の方針やサービスを展開を期待することは、さらに厳しくなるといわざるを得な い。 つまり、ドナーは、障害について、政府の取り組み方をここから見るのである。可能であれば、 世界銀行のウェブサイトから、各自、自国の政府が PRSP を持っているか、確認されることをお推 めする。南アフリカは持っていないが、他の国は持っているかもしれない。世界銀行からの資金 がなかなか入らない国は、この PRSP を持たない国である可能性が非常に高いであろう。 PRSP の詳細についてはウェブサイトからご覧いただけると思う。貧困グループでは、基金を研 修に当てており、すでにタンザニアでフィールドテストがおこなわれ、ドイツ政府がこの基金を 他の国の研修に適用することを検討している。また、貧困と障害との関係についても話し合われ、 ワークショップや研修もおこなわれている。 災害、非常事態および紛争グループでは、緊急対策、再建について話し合う。 次に、異なる障害者グループにおける HIV/AIDS 予防における活動、有効な対策について知識を 強化する活動について、重要なのは成功例を共有することである。そうすれば、他の組織が始め から土台を作り上げる手間がなくなる。有効だったものは何か、どうすればその情報が引き出せ るのか?その方法は世界銀行、また GPDD をとおして情報共有が可能である。障害者を含む、 HIV/AIDS のコミュニティを支援し、その活動を支援することが重要である。 各国の事例紹介(研修員4名) マラウイ:Ms. Kasasi Sigere, Federation of Disability Organization in Malawi (FEDOMA) マラウイ障害者組織連盟(FEDOMA)はカナダ国際開発庁(CIDA)の支援を得て 2003 年から現在 まで、「障害者のための HIV/AIDS および生殖の有効な健康情報」に関する事業を実施している。 この事業の狙いは、障害を持つ男女が国の HIV/AIDS 政策に考慮され、情報へのアクセスを持ち、 HIV/AIDS 認識・改善プログラムに積極的に参加することを確実にすることです。 事業には HIV/AIDS の障害者への影響に関する研究が含まれ、その研究の中で、最も脆弱なのは この流行病に関する情報を持たないろうあ者であることがわかった。研究の結果は、ほとんどの 障害者はラジオを通じて HIV/AIDS に関する情報を得ていることを示している。 この事業のもと、女性は教育者となるための、そして最終的にはそれぞれの障害者組織におけ る HIV/AIDS デスクの職員となるための研修を受けた。研修を受けた女性たちはまた、国の HIV/AIDS 政策を見直すために障害関連のステークホルダーとともに研究会を組織した。見直しの 結果、政策の中で障害が明確に触れられていないこと、ニーズについて政策担当者と会う必要が あることがわかった。 19 プログラムの中に障害者を含むことの必要性について、デモンストレーションを通じて HIV/AIDS のステークホルダーに訴えるための研究会も組織された。多くのステークホルダーは障 害者の参加を始めること、必要に応じて障害問題について連盟に助言を求めることを誓約した。 この事業にはまた、HIV/AIDS プログラムと改善策に障害者を含む必要性についてコミュニティ の認識を促進するためのキャンペーンを組織する女性たちもいた。キャンペーン活動の一環とし て、障害者によるデモンストレーション、詩、ドラマや、障害者の参加についてのメッセージを 載せたコミュニティ活動などがあった。 障害者と政策担当者に、このような HIV/AIDS 業務と障害者の HIV/AIDS プログラム参加の必要 性をそれぞれ訴えるためのラジオ番組が組織された。 FEDOMA は、カナダ国際開発庁(CIDA)とのパートナーシップを通じ、障害と HIV/AIDS に関す る発表を行うためにパートナーシップ会議にしばしば招かれている。これは通常、HIV/AIDS プロ グラムにおいて障害を主流化するための提唱として、正しい基礎作りである。 ザンビア:Mr. Chanda Moses, Zambia Federation of the Disabled (ZAFOD) 私はザンビアに限定せず、南部アフリカ全体を視野に入れて、障害者と HIV/AIDS 問題をテ ーマに、障害者が抱えている問題について述べたいと思う。 ご存知のようにアフリカ南部、特にサハラ砂漠以南は HIV/AIDS の蔓延している地帯であり、 940 万人が感染している。ジンバブエ、ボツワナ、レソト、スワジランドの諸国がこの地帯 に含まれている。成人の罹患率は 30%に達している。 ザンビアでは一年に HIV/AIDS で 98,000 人の死亡を記録している。私はこのような統計を 余り心配してはいないが、国際機関、政府、各団体が HIV/AIDS 問題のプログラムを用意して いるにも関らず、障害者はそのプログラムの枠外にいることが心配である。 どのようにしたら障害者もその対象に含めてもらえるのか。障害者には HIV/AIDS プログラ ムの情報が不足しているのである。ザンビアでは昨年から今年の初頭にかけて、生活状態を 調査し、その調査結果から、ザンビアの 9.1%の障害者は全く HIV/AIDS 情報から遮断されて いることが分かった。約 47%は HIV/AIDS の存在は良く知っていたが、感染の原因やその恐 るべき結果について、何の知識も持ち合わせてはいなかった。 HIV/AIDS 団体は印刷物で HIV/AIDS に関する知識の普及を図っているが、視覚障害者のた めの点字、オーディオ・カセット、拡大印刷などの用意が極めて不十分である。聴覚障害者 のための手話についての準備は、ほとんど皆無である。障害者用のアクセス補助が不足して いるので、結局は情報入手不可能となっている。HIV/AIDS 情報へアクセスするためには、南 部アフリカ地方で入手するしか手段はないが、視覚障害者にとって長距離の移動は困難であ る。 HIV/AIDS センターは障害の種類に考慮することはないし、手話通訳者も準備していない。 通訳者はカンセラーの言葉を通訳するので、プライバシーの問題もでてくる。結局のところ 障害者の HIV/AIDS 情報へのアクセスは困難な状況となっている。 女性障害者は HIV/AIDS に感染していないと思われ、セクハラの対象となり、 HIV/AIDS に感染しがちである。特にザンビアのように貧しい国ではなおさらである。 障害者にとっては国立 HIV/AIDS センターはその役目を効果的に担っていないし、障害者の ニーズを十分配慮していない。障害者も HIV/AIDS プログラムに含めるべきである。 障害者がプログラムの代表者であれば、障害者の利益は守られるであろう。 そこで、最後にお願いしたいのは、世銀、世界保健機構(WHO)などの国際機関がアフリカ 諸国に援助をする際は、援助額の何割かは障害者に割り当てるとする規定を設けて欲しい。 そうすることによって、HIV/AIDS プログラムにおいても、障害者も援助プログラムの対象と なり、プログラムへのアクセスが可能となる。 20 ジ ン バ ブ エ : Mr. Khupe Watson,Federation of Disabled people s Organizations in Zimbabwe ジンバブエの HIV/AIDS の状況は危機的な状況を呈している。昨夜インターネットでジンバ ブエの新聞を読んだところ、ジンバブエの HIV/AIDS の罹患率は 21%から 18%に下がったと いう保健大臣の発表があったが、私はこの割合は障害者には当てはまらないのではないかと 思った。障害者の HIV/AIDS 感染率はデータがないのでわからないが、平均より高率なのでは ないかと思っている。ジンバブエの人口は 1300 万人、障害者の占める割合は約 10%で、相 当の部分を占めている。 ジンバブエの問題は政治や社会分野ばかりに人員配置が集中している構造にあり、障害者 の分野は視野から除外されている。政府は保健省から任命されたメンバーで構成される国家 エイズ・カウンシルを設立したが、メンバーには障害者は含まれていない。 地域等の下部組織には障害者のメンバーが進出しているが、HIV/AIDS 問題に対処するには 資金が不足している。そのような状況なので、ジンバブエでは他からの支援に依存する以外 に、自力では障害者の HIV/AIDS 問題に対処することは不可能である。 ジンバブエでは国家委員会が設立され、HIV/AIDS の検査が実施されている。障害者も検査 を受けることができるが、障害があるためコミュニケーションの問題があり、障害者は差別 され、検査を受ける機会を失っている。 ラジオ、ドラマ、広告にも HIV/AIDS の情報はあるが、英語を読めない障害者もいる。障害 者の中には就学したことのない人もいて、障害者の教育レベルは小学 3、4 年生の程度であり、 そのため、情報へのアクセスは非常に困難となっており、障害者は不利な状況に置かれてい る。 HIV/AIDS 情報にしても技術的な問題もあり、四年間も情報をアップデイトしていない。聴 覚障害者にはテレビの情報があるが、手話通訳がつくのは土、日のみである。 私が所属する障害者団体連合は HIV/AIDS については人的資源や資金不足のため活動を進 めることができない。さらに、長期の闘争(紛争?)のため国際機関はジンバブエ政府と協 力して働くことを望んでいない。そのことが間接的には障害者団体にも悪影響を及ぼしてい る。 なぜなら障害者団体が HIV/AIDS や他の課題で国際機関にローンなどの資金支援のプロポ ーザルは受け入れられてはいない。このような問題も HIV/AIDS 問題に対処する時に、考慮に 入れなければならない。 HIV/AIDS 問題に悪影響を及ぼすもう一つのネガティブな面はジンバブエの文化である。 HIV/AIDS に感染した男性は女性障害者と接触すれば、感染が消えると一般的に信じられてい る。このような文化を払拭するには時間がかかり、私たちにとって大きなチャレンジである。 他の問題は地方の人々が HIV/AIDS はウイルス感染ではなく、単に運が悪かったのだと信じて いる。迷信をなくすキャンペーンがあるのは、良いことである。 レソト:Ms. Lesoetsa Likopo, Lesotho National Federation of Organizations of the Disabled (LNFOD) 在レソト・アメリカ大使館からの支援を得て、障害者を対象に一連の研究会が開かれ レソトの HIV/AIDS 問題はアメリカ大使館によって支援されている。障害・エイズ問題のワーク ショップ゚が開催されており、その経験から、障害の種類と障害者のニーズに合わせてワークショ ップを実施することが良いとわかった。 例えば、聴覚障害者にとって言語は障害となっている。レソトには二種類のまったく異なる言 語があり、そのため、私たちの仲間が通訳をするため一日中勉強している。 21 HIV/AIDS 問題に関する、多くのテレビ番組では手話通訳がついておらず、放映されても、教育 程度が低い障害者は理解できない状態である。また、聴覚障害者は手話通訳なしでは、HIV/AIDS 問題の情報を入手することができない。 カウンセリングもひとつの課題である。例えば、相談や検査に行く必要がある時は、ろうあ者 は通訳をつけなければならないのである。しかし、個人的な理由で、通訳をつれず、一人で行く 場合もある。検査の結果などはデータで提供されている。 視覚障害者は点字などで作成された情報がないと、情報にアクセスできないので、点字がない ときは、他の人に読んでもらっている。 知的障害者はエイズの資料は読めるが、ワークショップが終われば、そこで得た知識や情報は すぐ忘れてしまうので、彼らのためには、何もできない状態である。 保健省の役人から HIV/AIDS の情報を得ても、それが誰の情報かはわからない。しかし、エイズ について何も知らないうちに、感染しているのである。 ワークショップよりもテレビやラジオから情報を得ている人もいるが、地方の人々はその情報 にも接することがない場合もあり、HIV/AIDS に関するどんな活動にも参加する必要があるのであ る。障害・エイズ問題の統計はないが、以前に比べ状況が悪化している場合もある。エリザベス の発表にもあったが、障害・エイズ問題でしなければならないことが沢山ある。 現在のところ、エイズは見えにくいが、キャパシティを広げ、移動が容易になれば、エイズと は何かが障害者にも見えてきている。 ビデオメッセージ「アジア太平洋障害者コミュニティーにおける HIV/AIDS の啓発」:トッポ ン・クルチャンチト DPI アジア太平洋ブロック開発担当官 全般的に、途上国の障害者は常に教育、社会的スキル、経済的独立、情報へのアクセス、 および物理的環境が不適切あるいは欠如している状態にある。こういった条件が原因となり、 彼らは HIV/AIDS のことをよく認識していない。 アジア太平洋地域において、私は HIV/AIDS と障害者との関連性を具体的に研究、あるいは 報告することはできない。しかしながら、数は少ないが、国家計画ではなく障害者組織によ る小規模な事業と活動が見られる。障害者コミュニティの間ではろうあ団体、続いて盲人団 体が最も活発であることがわかった。知的障害者、行動障害を持つ人については報告が見当 たらない。この地域では、HIV/AIDS に関する国の報告書で、障害者に言及しているものも見 つけることができない。 HIV/AIDS に関して障害者組織によって行われている事業や活動は見られる。例えば、メデ ィアの製作物(点字、テープ、VCD)、セミナー、研究会、研修などである。 インドでは視覚障害者協会が、視覚障害者に HIV/AIDS の認識を呼びかけるため、点字・大 活字によるキャンペーン素材を採用、製作した。ヒンズー語と英語の点字版 5,000 部、大活 字版 10,000 部が、2004 年から 2005 年にかけて、インド国内 100 以上の視覚障害施設に配ら れた。ムンバイの視聴覚障害者のために、ヘレン・ケラー協会によって IEC 素材も印刷され た。2004 年 3 月、HIV/AIDS の意識啓発に関するワークショップが開かれ、ムンバイとその郊 外に住む 125 人の視覚障害者がそのワークショップに参加した。盲人協会も 2005 年 2 月、一 日ワークショップ研究会を開催した。全インド盲人連盟とアジア盲人組合は「AIDS Kee Chunautiyan(エイズの挑戦)」と題される本を製作し、この本は要請に応じて施設と個人に 送られている。これは、価格の定められた、インド国立書籍トラストの出版物である。 パキスタンでは、パキスタン聴覚障害協会(PAD)がろう者のために開いた意識啓発プログ ラムがあった。25 人の参加者のうち、HIV/AIDS に関する認識を持っていたのはわずか 2 人で あった。 22 タイでは、タイろう連盟(NADT)がこの 3∼4 年に全国 4 地域で HIV/AIDS に関する研修セ ミナーを行った。研修コースを開発、改訂している。研修コース受講するための研修も、選 ばれたろう者を対象に提供された。キャンペーンのために VCD とポスターが製作され、ろう 者のコミュニティに配られた。若年層のろう者については、NADT は短い舞台パフォーマンス を製作し、すべてのろう学校を訪問した。NADT の会員には、カウンセリングサービスも提供 しており、通訳は NADT 所属の手話通訳が担当している。そのデータはすべて秘密厳守で保管 されている。しかしながら、非公式のおおまかな数字によると、何千ものろう者が HIV/AIDS に感染し、何百人もが死亡している。 ろう者のおかれた状況 • ろう者はコミュニケーションの問題のために適切な知識と情報がないことを恐れて いる。 • ろうコミュニティでは、パートナーの交代は広く容易に起こる。 • 彼らはコンドームの使用の重要性を認識していない。 • 彼らは手話通訳がいないため既存の定期サービスに申し込むことができない。 等々 この状況は、障害者は HIV/AIDS 感染の高いリスクを負っていることを示している。 質疑応答 質問(森 壮也アジア経済研究所) : レソトの研修員に質問する。先ほどの発表の中で、レソトでは異なった障害のグループごとに、 ワークショップを実施し、視覚障害者には点字などの配布資料を準備していると報告された。そ れぞれの障害ごとに、各々のニーズに合わせて情報を用意すると、コストも増えるのではないか。 費用はどのように捻出しているのか。 Ms. Lesoetsa Likopo(レソト研修員): 視覚障害、聴覚障害、知的障害など異なる障害を持つ障害者グループのワークショップを実施 し、手話通訳などで聴覚障害者は十分情報にアクセスできる。費用に関してはアメリカ大使館が 援助している。 質問(南アフリカ研修員): ジュディさんへ質問する。南部アフリカ諸国では、障害者の活動のための資金が不足している。 社会の不平等により、障害者は通常の人と同じようには社会に受け入れていない。調査の重要性 を指摘されていたが、南アフリカでも私たち障害者団体は障害者に焦点を合わせた調査をしたい と考えている。しかしそれには資金が必要なので、資金調達のアドバイスをお願いしたい。 ジュディス・ヒューマン: 外国の政府や世界銀行などの国際機関から資金援助を受けられない国は、その国の政府に 財政的余裕があるからである。従って、中央政府や地方政府がエイズ問題に費やしている収 支を調べ、障害者も含めて、エイズ問題に取り組むことを提言することが必要である。 例えば中央レベル、地方レベル、地域レベル、さらに村の委員会レベルなどの各事業団体 の施策の策定過程に、障害者が参加することを提言する。障害・エイズ問題は、一般社会に 深刻な影響を与えるので、障害・エイズに関する調査は必要である。障害・エイズの情報を 一般社会に効果的に発信することで、エイズ感染予防に貢献し、ひいては、さまざまな機関 23 が実施している調査のへの障害者の参加が可能となる。保健・医療関係者、大学、さらに政府 とも協働して、障害者の参加の必要性を提言することができる。つまり、大学など色々な機 関との協働によって、資金調達も可能になり、障害・エイズの調査・研究を継続することがで きるのである。 また、政府、保健省、国会など協議事項に障害者も組み込まれているかを確認することが 重要である。南アフリカでは 16∼18 人の障害者が国会議員になっているので、法案や協議事 項の中に確かに障害者が含まれているか確認できる。 皆さんが、新たに作成した障害者に関するレポートや資料を拝見したいと思う。資料の評 価が必要な場合は、世銀で評価することができる。障害者のための研修プログラムを作成す る時に有用性が認められた正確な資料は、研修コースにも利用できる。 質問(ボツワナ研修員) : ボツワナでは障害者に関する政府の政策が行政に反映されていない。政策の実施を政府に 求めるには障害者団体はどうすればよいのか。 ジュディス・ヒューマン: 政府の政策をモニターし、評価することが必要である。障害者は一般社会では少数派なので、 政府の施策に不満もあり、差別もあるだろう。政府が国会の協議事項を実施しない時は、法律家 に相談し、裁判に訴えることもできるし、国会でその問題を取り上げてもらうように要請するこ ともできる。現在、 「アフリカ障害者の十年」キャンペ−ンが展開されているので、障害者団体が 政府へ障害者施策についての提言ができると思う。 質問(ナイジェリア感染予防対策研修員): 質問ではなく、いくつかの課題に焦点を絞り、コメントしたい。 大学生を対象とした、マカト財団のよるエイズ感染予防プログラムに参加した時の感想を述べ る。大学生のために5つのワークショップを開催したが、その目的は大学生に教えるのではなく、 エイズ対するピア研修であった。 しかし、障害を持つ学生の為に、コミュニケーション手段のための十分な機器を大学には備え ていなかった。別のワークショップでは、聴覚障害を持つ数名の学生のためにピア研修受講を可 能にするよう取り計らった。修了証書授与の際に、このプログラムがナイジェリアの全学生を対 象としないで、障害を持つ学生に限定するのかの理由を質問された。このように、障害を持つ学 生に対して、エイズ感染予防の積極的なキャンペーンを色々なレベルで増やすことが必要である と感じた。 現在、エイズ問題も含めてリプロダクティブヘルス教育を国中の学校で行っている。しかし、 この教育プログラムには障害者の問題が第一には取り上げられてはいないと思う。その上、障害 を持つ学生は本日の会合のように、通訳を連れて参加しなくてはならない。極秘にしたい事柄も 手話通訳に話さなくてはならず、秘密保持が難しくなる。 ナイジェリアでは手話通訳付のテレビ番組はほとんどなく、唯一、大都市のラゴスで字幕付の テレビ番組があるだけである。従って、テレビドラマで、エイズプログラムを放送する際は、障 害者も考慮にいれる必要がある。 ナイジェリアの障害者数や障害者のエイズ感染罹患率の統計は持ち合わせていないが、国全体 のエイズ罹患率は 4.4%である。 ジュディス・ヒューマン: ナイジェリアの大学で障害者を含めたエイズプログラムを実施していることは大変よいことで 24 ある。このように研究者と障害者が協働する調査研究を今後とも行うべきである。データについ ては、E-mail で世銀に問い合わせてくれれば、データ発行先をお教えする。ほとんどの国は正確 なデータをもっていないが、ナイジェリアでは最近、国連の特別委員会に属し、政府が国勢調査 の際に、障害者の人数、障害の種類などのデータを利用できるような調査票を開発していると思 う。 まとめと閉会の挨拶:戸田隆夫 人間開発部 第二グループ長 非常に基本的な点、状況認識とアクションについて述べさせていただく。 状況認識について、皆さんはエイズと障害者の課題の重大さと深刻さを認識していると思 う。 エイズ課題も障害者課題も真新しい課題ではないが、両方の課題が交わる時、課題の深刻 さを再認識する。ザンビアのチャンドさん、ジンバブエのクペさんがこの課題について自国 の深刻さを語ってくれた。 構造的見地から二重の脅威を確認した。エイズの感染と脆弱性、貧困と障害である。 このような問題は具体的に三つの問題にまとめられる。すなわち 1)サービスへのアクセス の問題、2)情報へのアクセスの問題 3)意思決定過程へのアクセスの問題という三つのア クセスの問題に多くが起因するものとも言える。 2)についてはレソトのレセタさんが、3)についてはタイのトッポンさんがアジアの障害者 とエイズの政策について十分説明した。 アクションについて要約しますと、三つの重要な点に分類される。 第一の点は意識啓発と情報共有です。マラウィの研修員のペンダさんは大変興味深い事例 を紹介した。ラジオで HIV/AIDS プログラムに参加するよう呼びかける活動は是非継続すべき である。勿論、HIV/AIDS の障害者への影響に関する研究も継続する必要がある。 第二の点は政策である。グローバルレベルでは 10 月 25 日にニューヨークで開催されたイ ベント、国連定期総会での障害者の権利条約の重要性は認識されているが、まだ十分とは言 えない。国の政策としては、ジュディさんが言及していたが、PRSP は途上国の国家レベルの 政策のフレームワークとなると思う。ドナーの戦略について、ザンビアのチャンドラさんが、 各ドナーは障害・エイズ課題の取り組みの概要やシェアーを公開すべきであると提言した。 第三の点は各関係機関のコーディネーションと連帯(Multi-Actor Coordination/ Alliance)についてです。ジュディさんが GPDD の活動の中で適切に述べられていたが、各方 面からの連帯が必要である。市民社会と事業の実施者との連携である。障害者とエイズ専門 家の連携、特に、エイズ関連事業における障害者の参加は必要である。上記についてはチャ ンドラさんの言及もあった。研究についてはメディアと大学等の連携も不可欠である。意識 啓発の面ではメディアの役目が大切である。 最後に、アプローチについて述べる。 アプローチにはエンパワーメントと保護の双方への対応が必要です。エリザベスさんが言 及していましたが、各種事業を実施するためのキャパシティが重要です。お金の問題も重要 であるが、それを活用して事業を遂行する専門知識、意欲など総合的な能力が必要である。 ジュディさんも人材育成に言及していたが、エイズ分野で働く保健・医療ワーカーの安全 と保護のため、ワーカーに対する研修は必要である。 つぎに「保護」 、つまり、女性の障害者などエイズ感染の高い危険に晒されている、より困 難な状況にある障害者への対応が急務である。 エイズ問題は、障害者の保健問題の中の一つと位置づけられるので、全体像を持ちつつ焦 点を当てていくことが必要である。 25 ジュディさんが述べていたが、成功事例を共有すること、障害者とエイズ対策関係者が協 働することが重要である。 ナイジェリアの研修員からの指摘があった通り、予防も重要な点である。ジュディさんの 言及にもあったが、政策実施過程の監視・評価も不可欠である。 この課題の取り組みを進めるに際し、本会合のような機会は、基本的な知識と取り組み意 欲を共有し、相互に学習し、具体的な事業を考えていく上で有益と確信している。 最後に、この会合の参加者に貴重な時間を割いていただき感謝する。特に DPI の中西さん、 DPI アジア太平洋事務局(タイ)のトッポンさん、世銀のジュディさん、大森さん、WHO のフ ェデリコさん、アフリカ各国から JICA の研修プログラムに参加して頂いている方々に感謝す る。 26