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波の干渉についての説明教具

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波の干渉についての説明教具
高
校
物
理
波の干渉についての説明教具
富山県立高岡高等学校 塚 本 利 明
目 的
波動現象は日常生活でも馴染みのある現象で、生徒
の関心も高い分野である。しかし、音波、光波とも目
に見えず、とりつきやすさの割には理解が困難な部分
もある。最近は、映像や演示用ソフトも充実してきた
が、利用にはそれなりの準備も必要で、毎回の授業に
気軽に利用できるものではない。
そこで、簡単に作製でき、日常の授業で手軽に利用
できる説明教具を開発した。
*
ているところがある。
)
⑸ 黒く塗っていない木材の上に、切り抜いた波型を
表が上になるようにして連続するように並べ、セロ
テープで固定する。
⑹ その上に黒く塗った木材を置き、タッカー(ホチ
キスでも良い)で 2 本の木材を固定する。
⑺ 両面にゴム磁石を 7~10 枚ずつ貼付する。
(白の波型では、10cm 毎に 10 枚、赤緑黄色の波型
では、15cm 毎に 7 枚ずつ貼付)
概 要
Ⅰ.教材・教具の製作方法
1.準備
⑴ 白および赤、緑、青の 3 色の色工作用紙 各 1 枚
⑵ 木材(90cm × 12mm × 3mm) 16 本
⑶ 粘着剤付ゴム磁石(1cm × 3 m) 1 本
⑷ 黒色ペンキ
⑸ はさみ、セロテープ、ハンドタッカー(ホチキス)
【補足】
⑴は文房具店で購入
⑵⑷はホームセンターで購入
⑶はホームセンターまたは百円ショップで購入
2.製作(各色、波型 2 本分)
⑴ 白の工作用紙には、波長 80cm、振幅 15cm の波型
(幅 2cm のサインカーブ)の 2 分の 1 波長分(長さ
40cm)を 4 枚描き(2 波長分)
、切り抜く(波長を
90cm にしないのは、10cm 分の持ち手を残すため)
。
⑵ 赤、緑、青の 3 色の色工作用紙に、赤は 30cm、
緑は 20cm、青は 15cm の波長で、振幅 5cm の波型
(幅 1cm のサインカーブ)を描き、切り抜く。
それぞれの枚数は、90cm の波型 2 本分となるよ
うに、赤は 1 波長分(長さ 30cm)を 6 枚、緑は 1.5
波長分(長さ 30cm)のものを 6 枚、青は 2 波長分
(長さ 30cm)のものを 6 枚とする。
⑶ 木材(90cm × 12mm × 3mm)8 本を黒く塗る。
⑷ ゴム磁石を長さ 2cm 程度に切る(150 枚)。
(ホームセンターによっては切られた物を販売し
写真 1 完成した白色の波型(2 枚を重ねてある)
写真 2 完成した波型(赤、緑、青)
【補足】
1.サインカーブを描くときには、表計算ソフトで 1
波 長 分 の y の 値(x の 値 1cm 毎 ) を 求 め て お き、
(注)塚本利明教頭は平成 23 年 4 月 1 日付で富山県総合教育センターに転任された。
*
つかもと としあき 富山県総合教育センター 企画調整部長 〒 930-0866 富山県富山市高田 525
☎(076)444-6161 E-mail [email protected]
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工作用紙の目盛りを利用して 1 波長分を描いて切り
出す。その 1 波長分の工作用紙を型紙として、必要
な分のサインカーブを描き、切り出す。
2.白い波型の 10cm 分の持ち手は、2 つの波型で左
右逆になるようにする。
3.ゴム磁石を貼付するとき、白の波型では、10cm 間
隔で貼付しておくことにより、波長の 8 分の 1 ずつ
波を進行させるときの指標となって、使いやすい。
Ⅱ.学習指導方法
1.波の進み方での指導
波が進むときには、波形が平行移動するように進む
ことを白の波型を用いて示す。どこか 1 点に着目して
波型を少しずつ進ませてみると、波が進むに従ってそ
の点が単振動していることを示される。
写真 6 実際には、A、C は節、B が腹である
(赤色が合成波)
3.反射波の位相変化
自由端反射した波は位相変化しないので山は山とし
て反射する。そのとき、自由端は腹になるが、反対側
からも同じ波型を少しずつ(8 分の 1 波長ずつ)進ま
せてみることで説明できる。また、固定端反射では位
相がπずれ、山が谷になる。これは、型形を上下に裏
返したものを少しずつ進ませることで示され、固定端
が節になることが説明できる。
写真 3 波形の進行に伴う振動の様子
2.重ね合わせの原理・定常波
左右から同じ波が逆向きに進むとき、ある瞬間に同
じ位相になる位置では常に位相が同じになり、重なれ
ば腹になることが示される。また、位相が逆転してい
る位置では常に逆位相になり、重なれば節になること
が示される。
写真 7 自由端反射では同位相で波が強め合う
写真 8 反射波の位相が反転するので、固定端は節になる。
写真 4 左右からの成分波
(一見、A、C が腹、B が節に見える)
写真 5 左右からの波を少し進ませる(黄色が合成波)
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【補足】
自由端、固定端とも、右側の波は存在しない。反射
しなければ山として進む波が、反射によってどのよ
うに変化するか(山のままか、谷になるのか)に注
意を向けさせる。
4.ヤングの実験
2 つのスリットから同位相で出た波は、スリットの
垂直 2 等分線上では常に強め合い、中央明線となる。
そこから、上下いずれかに傾いていくと少しずつ位相
がずれていき、傾きが大きくなるほどそのずれも大き
くなることが示せる。位相差が 2 π(1 波長分)になっ
たときに、1 波長分ずれた山同士、谷同士が重なって
強め合うことになり、そこが明線になることを示せる。
しかし、他の色(波長)の波では、同じ位置では位
相差が 2 πではなく、強め合うことができず、その位置
では特定の色だけが強め合って見えることが示される。
下の写真 9 で、青なら明線となる x1 の位置では、
写真 10 のように赤では暗線になる。
写真 11 石鹸膜の往復分の光路差が生じる
(図では 2 波長半)
写真 12 表面での反射波の位相が反転するので
強め合う条件になる 写真 9 傾いた方向で 1 波長の行路差(青の明線)
透過光の干渉では、位相変化が 2 度生じる場合があ
るが、これも 2 度裏返すことで元に戻ることが容易に
示される。薄膜の干渉でも、特定の色が強め合う条件
でも他の色では強め合う条件にならず、その厚さは特
定の色が強め合うことが示される。
【補足】
石鹸膜内では光の波長は短くなるが、この教具では
そのことは示すことはできない。口頭でそのことを
説明すると共に、そのために光路差は石鹸膜の厚さ
の 2 倍より大きくなっていることも補足しておく。
Ⅲ.実践効果
写真 10 同じ方向でも赤では弱め合う
5.薄膜による干渉
薄膜の表面と裏面で反射した光は膜の厚さの往復分
に相当する光路差がある。もし、反射の際に位相変化
がなければ、この光路差が半波長の偶数倍であれば強
め合い、半波長の奇数倍ならば弱め合う条件になる。
しかし、実際には石鹸膜の表面での反射の際に位相変
化がπ生じており、強め合う条件と弱め合う条件は逆
になる。これは位相変化が生じる側で反射した波を裏
返すことで劇的に示すことができる。
この器具を最初に作製してから 10 年以上になるが、
この間、一部に改良を加えながら一貫して授業で使用
してきた。学校を異動し、生徒の質も変わってきてい
るが、指導における効果は変わらず高い。また、手軽
に利用できる点が良い。波動の学習の時期になると、
職員室の机の横に貼り付けておき、授業に行く度に教
科書や出席簿と一緒に持って行ける。質問に来た生徒
にもその場で見せて教えることができる。
Ⅳ.その他補遺事項
開発のきっかけは、以前に勤務していた学校で、質
問に来た生徒が波の進み方について根本的な誤解をし
ていることが分かり、愕然とさせられたことである。
すなわち、波は波形を保ったまま平行移動的に進むの
ではなく、蛇のように波形が伸びていくように進むと
思いこんでいたのである。
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図 1 黒板に描くときのチョークの軌跡のように
波が蛇の進むように進んでいくと思う誤解
これは、波形を板書するときにそうせざるを得ない
ためであるが、授業内容と日常見る水波などとが結び
ついていないためでもある。この誤解は、水波を思い
起こさせることによってすぐに解けたが、同じように
誤解していると思われる生徒は他にもいるようであっ
なみがた
た。そこで、厚紙を切り抜いた 1 つの波型を作製し、
波の進み方についての説明で利用したところ、誤解を
招かないで指導することができ、波長や振幅などの波
の要素についても理解させやすかった。 そこで、この波型を発展させ、それまで指導に困難
を感じていた光波の干渉の指導に活用できるものを工
夫してみた。細かな波型をいくつか連ねたものを 2 本
用意することで、重なり合う波が、行路差によって強
め合ったり弱め合ったりすることや、両側から逆向き
に進んでくる波が重なって定常波ができることなど
を、説明しながらゆっくり観察させることができた。
また、ヤングの実験では、波の進行方向が変わると行
路差が少しずつ変化していく様子も視覚的に容易に理
解させることができた。さらに、薄膜による干渉で、
反射波にπの位相変化があると強め合う条件と弱め合
う条件が逆転することはなかなか理解できないところ
であったが、片方の波型を裏返すことで劇的に示すこ
とができた。この 2 本の波型を色によって波長を変え
て作製することにより、特定の色が強め合う条件が他
の色にとっては強め合う条件にならないことも示せる
ようになり、現在活用している形となった。
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