Comments
Description
Transcript
持たないビジネス ファブレス企業
☆ トピックス 持たないビジネス ファブレス企業 作成者:笹原 勇人 ◆ファブレス企業とは ファブレス(fabless)とは fab(fabrication facility「工場」 )を持たない(less)という意味で、 「ファブレス企業」とは、工場を所有せずに製造業としての活動を行う企業を指します。生産を外部の 工場に委託することにより、経営資源を企画開発に集中。製造設備の資産や人員を保有することなくタ イムリーに製品を生産できるというメリットがあります。特に市場の変化が激しく、自社で生産設備を 保有することがリスクになる業界で有効であり、毎年トレンドが変わるアパレル業界や、技術革新のス ピードが速いデジタル機器業界や半導体業界、新商品の入れ替わりが激しい清涼飲料業界に代表例が見 られます。 一方、ファブレス企業が製造を委託する先は「ファンドリ」と呼ばれ、他社からの委託による生産を 専門に手掛けています。最近は製造技術の水準も高く多くの企業の製品をまとめて生産(受託生産に特 化)していることや、営業経費が少なくてすむことから、低コストで生産を可能にしています。 ファブレス企業はこのファンドリ企業に委託して生産した製品を自社ブランドの製品として販売しま す。高付加価値の企画開発に特化することで高い利益率を誇る企業も多く、ファブレスというビジネス モデルが今後も注目されそうです。 委託生産の仕組み 設計やマーケティング、販売に特化 自社のブランドとして販売 Rei 他のファブレス企業 生産委託 生産委託 ファブレス企業 生産委託 複数 企業から 受託す る ため 大量生産 でコス ト を下げることができる 生産委託 価格・品質・ 価格・品質・納 納期などで競争 期などで競争 ファンドリA 価格・品質・ 価格・品質・納 納期などで競争 期などで競争 ファンドリB ファンドリ C ファンドリC ※ファンドリには EMS(電子機器受託生産サービス)などの受託生産企業を含む。 ファブレス企業が生産を委託するのはファンドリ企業であることが多いですが、自社製品を生産しているメーカーに委託する場合もあります。 ◆ファブレス形態のメリット・デメリット メ 設備投資が最小限で済み、小資本のベンチャーでも市場参入しやすい リ 身軽であり市場の変化に素早く対応できる ッ ト 複数の工場に発注することで競争が生じ、納期短縮やコストダウン、品質向上を同時に達成できる デ 情報漏えいや模倣されるリスクがある メ リ 品質管理が難しい ッ ト 生産過程でのノウハウが得られない このレポートは投資の判断となる情報の提供を目的としたものです。銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身の判断でなさるようにお願い致し ます。なお、株式は値動きのある商品であるため、元本を保証するものではありません。 ☆ トピックス ◆日米のファブレス企業 米国企業ではスポーツ用品メーカーのナイキや IT 機器大手のアップルがファブレス企業として有名で す。ナイキは納品の 5~6 か月前に開催する展示会等で、小売店がその時点における一定の価格で発注す る「フューチャーオーダー方式」を採用しており、それに応じて生産を委託するため売れ残りのリスク が低く効率的であると言えます。 アップルは基本的に自社工場を保有していませんが、設備投資に一定金額を計上しています。アップ ルは自社の技術者が設計した仕様を実現させるために必要な加工設備を自社で購入し委託工場へ貸し付 けています。その際、生産マニュアルを作成し、品質、デザイン、加工後の検品機器など、生産現場に 必要なハード、ソフトをパッケージングすることで高い品質を維持している点が特徴的です。 国内企業では任天堂が有名。爆発的にヒットしたニンテンドーDSやWiiも各部品は汎用性のある もので組み立てられています。ファブレス化によって得た資金と時間を企画に費やすことでヒット商品 を生み出す事を可能にしたとも言えます。 また、1975 年の創業以来ファブレス経営を行っているダイドードリンコは、商品開発と高品質な自販 機オペレーションに経営資源を集中し、製造・物流をアウトソーシングするだけでなく、自販機もリー スで調達しています。そのため、設備投資などで大きな投資リスクを発生させることなく、安定した成 長を可能にしています。 下表にファブレス企業の一部を示しました。今後、銘柄を選定する際にファブレスというビジネスモ デルに着目してみるのも良いのではないでしょうか。 日米のファブレス企業 日本 キーエンス(6861) FA センサーなど検出・計測制御機器を中心に展開。3Dプリンターも販売。 任天堂(7974) 世界的 TV ゲームメーカー。ソフト開発力に強み。 ダイドードリンコ(2590) 清涼飲料大手。自販機の台数や缶コーヒーの販売量で業界 3 位。 メガチップス(6875) 顧客専用 LSI、システム主力。任天堂向け主体。 エレコム(6750) パソコン周辺機器大手。マウス、家具、記憶媒体など企画開発。 米国 アップル(AAPL) IT 機器大手。スマートフォン「iPhone」、タブレット「iPad」を生産する。 クアルコム(QCOM) 携帯電話向け半導体で世界最大手。アップルやサムスン電子が主要顧客。 ナイキ(NKE) スポーツ用品メーカー最大手。 「NIKE」ブランドでシューズ、衣類等を販売。 このレポートは投資の判断となる情報の提供を目的としたものです。銘柄の選択、投資の最終決定は、ご自身の判断でなさるようにお願い致し ます。なお、株式は値動きのある商品であるため、元本を保証するものではありません。