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オブジェクト指向相談室
トピックス オブジェクト指向相談室 R&D IT プロジェクトセンターでは,本誌論文に示す ような研究開発業務とともに,横河電機グループ全体の ソフトウェア品質を向上させ,開発技術を向上させるた めの業務や活動を行っている。センター内の検証技術グ ループでは,事業部が開発するソフトウェアの品質 チェックのための第三者検証活動や,品質を向上させる ためのプロジェクト管理の相談を行っている。また,IT プロジェクトセンター主催の「情報技術フォーラム」を 年に数回社内向けに開催し,最新の情報技術や,社内に おける取り組み事例の紹介を行っている。社内における 新入社員や中堅社員の情報技術者育成活動もこの一環と して,IT プロジェクトセンターが主導で活動している。 図 2 OO デスク Q & A この他,情報処理学会を初めとする,学会やシンポジウ ムでの発表や協力活動も社外交流の場として活発に行っ ており,社内に最新の情報技術を普及浸透させるために ・ 質問,コンサルティング依頼(後述) 役立てている。 ・ 過去のコンサルティング実績紹介 本コラムで紹介するのは,これらの活動のひとつとし ・ チュートリアル(後述) て,ITプロジェクトセンターが中心となり,2000年4月 ・ オブジェクト指向関連書籍紹介や書評 に設立した,「オブジェクト指向相談室」 (通称「OOデス ・ メーリングリスト紹介| oofan,oofaq という社内の 2 ク」=おーおーですく;Object Oriented Desk) である。 つのメーリングリスト参加申し込み受付。oofan メー OO デスクは,横河電機グループ全体から募った,オブ リングリストは,2002 年 12 月現在で 200 名を超える ジェクト指向技術者のエキスパート約30名から構成され 参加者があり,イベント紹介や,出張報告,各種議論 るバーチャルな組織であり,社内ボランティアとして, 活発な活動を行っている。 OO デスクが行っているのは,主に最新のオブジェク が活発になされている。 ・ FAQ |よく聞かれる質問に対する回答集 (図 2) ・ ジョーク集 ト指向関連技術の紹介,情報交流活動,およびコンサル ・ 社外オブジェクト指向技術関連リンク ティングである。OOデスクでは,イントラネットでOO ・ 体験記|オブジェクト指向関連のテスト受験や,開発 デスクホームページ(図 1)を構築している。主なコンテ ンツは以下の通りである。 図 1 OO デスクホームページ 25 体験を紹介する。 ・ OO デスクメンバー紹介 図 3 OO デスクへの質問票 横河技報 Vol.47 No.1 (2003) 25 トピックス 図 4 チュートリアルの表紙ページ 質問依頼とは,OO デスクに対して,図 3 の質問依頼 ページを介して,誰もが質問やコンサルティングの依頼 を行えるものである。ページ上で質問をすると,OOデス 図 6 デザインパターン入門の中の 1 ページ て協力している。 図 4,5,6 に,OO デスクの Web ページに紹介してい るチュートリアルページを幾つか示す。 クメンバ全員にメールが届き,メンバ内で担当者を決定 図 4 には,チュートリアルページで紹介している目次 し速やかに対応する。実績としては,月に 1 ∼ 2 件の依 として,オブジェクト指向入門,UML入門,UML 部署 頼があり,設立当初は「オブジェクト指向入門セミナー 内普及事例紹介,デザインパターン入門,eXtreme Pro- 開催依頼」,「初心者のためのUML教育依頼」 という入門 gramming 要約(書籍の要約)があることを示している。 的なものが多かったが,最近は,オブジェクト指向分析 図 5 には,オブジェクト指向入門の中の最初のページ, 設計におけるモデリングのレビューや,UMLドキュメン 図 6 には,デザインパターン入門の中の,オブザーバパ テーションに関する依頼も多い。この他,JavaやC++に ターン紹介の 1 ページを示す。これらチュートリアルで 関する質問,コーディング規約,開発プロセスに関する 取り上げている技術はいずれも,現在のソフトウェア開 相談などがあげられる。 発技術者にとって必須のものであり,これらを技術者た OO デスクはあくまでボランティア組織であるため, 大きな工数を伴う開発協力はできないが,その場合でも 開発の相談や,プロジェクト立ち上げにアドバイザとし ちがブラウズすることをきっかけとして,さらなる技術 向上につながることを促進しようとしている。 OO デスク設立の目的には,社内オブジェクト指向技 術を強化することと,技術者間の情報共有によるレベル 向上がある。近年のプログラム開発,システム開発にお いては,オブジェクト指向が必須技術になっているが, この技術を使いこなすことは非常に難しく,経験や専門 家のサポートが必要である。当社では10年以上前からオ ブジェクト指向に取り組んでいる組織や,一部でスキル を蓄積する社員がいる一方で,技術導入に躊躇したり, オブジェクト指向開発に苦労している職場も多い。社内 に散在するオブジェクト指向技術者が,広く社内にコン サルタントとして貢献すると同時に,技術者同士の交流 による更なるレベルアップも図り,技術の普及を目指し ている。また,オブジェクト指向というキーワードを軸 にして,最近では組込み機器用の開発手法,Agileソフト ウェア開発など,開発プロセスの普及や実施など,広く ソフトウェア開発に関連する技術革新,レベル向上に取 り組んでいる。 図 5 オブジェクト指向入門の中の 1 ページ 26 横河技報 Vol.47 No.1 (2003) (記:R&D センター IT プロジェクトセンター 井上健) 26