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07第6章 県営住宅の役割と整備の方向
熊本県住宅マスタープラン 第6章 県営住宅の役割と今後のあり方 ■ 第6章 県営住宅の役割と今後のあり方 97 第6章 県営住宅の役割と今後のあり方 熊本県住宅マスタープラン 98 熊本県住宅マスタープラン はじめに 本章では、県営住宅がこれまでに果たしてきた役割、入居者の現状、既存ストックの現状等 を検証し、近年の県営住宅を取り巻く状況の変化を踏まえたうえで、本県における県営住宅の 今後のあり方について記載します。 【本章の構成】 1.県営住宅が果たしてきた役割と現状 1 2 3 4 5 県営住宅の果たしてきた役割(時代背景別) 入居者の現状 多様な入居需要への対応状況(セーフティネット機能の充実) 入居倍率と回転率の現状 県営住宅のストックの現状 2.県営住宅を取り巻く状況の変化 1 2 3 4 将来の入居需要 民間賃貸住宅の状況 立地する市町との役割分担 県営住宅のあり方見直しの方向性 3.県営住宅の今後のあり方 ~中長期的な展望を踏まえて~ 1 2 3 既存ストックの有効活用と長寿命化 社会ニーズに対応した運営 民間賃貸住宅の有効活用 99 第6章 県営住宅の役割と今後のあり方 本章の構成 熊本県住宅マスタープラン 第6章 県営住宅の役割と今後のあり方 1.県営住宅が果たしてきた役割と現状 1.県営住宅の果たしてきた役割(時代背景別) 県営住宅は、収入が相対的に低く、自力では居住水準の向上が困難な世帯で、現に住宅に 困窮する者を対象に供給することを基本に、戦後から施策展開してきたものです。これまで、 経済社会情勢の変化を踏まえつつ、時代の要請に応えて制度拡充や整備方針の見直しを重ね、 県民の生活の安定と福祉の増進を図る役割を担ってきました。その果たしてきた役割を時代 背景別に総括すると以下のとおりです。 ①昭和 25 年頃(1950) ~ 昭和 40 年頃(1965) 戦後における住宅の確保 終戦直後の住宅数の不足と、劣悪な住環境改善のための受け皿として建設してきました。 ②昭和 40 年頃(1965) ~ 昭和 55 年頃(1980) 高度成長期における住宅の確保 高度成長期の熊本都市圏への人口流入急増(広域需要)へ対応するため、主に核家族の子育て勤労者世 帯を想定した標準タイプの供給方式により、大量の県営住宅を建設してきました。 ③昭和 55 年頃(1980) ~ 平成 10 年頃(1998) 「量」から「質」への転換 住宅総数が総世帯数を上回る状況となり、公営住宅の整備目標を「量的供給」から「質的向上」へ転 換し、規模・設備水準の向上を図ってきました。また、高齢化社会に対応するため、高齢者等の単身入 居が可能となる制度改正を行い、バリアフリー配慮のモデル導入、既存ストック対策(建替・改善)を本 格的に開始し、平成2年には高齢化社会に対応した「シルバーハウジングプロジェクト」に取り組みました。 また、昭和 58 年から地域に根差した住まいづくり「くまもと型HOPE計画」を開始し、まちづくり と一体となった住まいづくりを展開、昭和 63 年からは、「くまもとアートポリスプロジェクト」として、 質の高い県営住宅を建設しました。 ④平成 10 年頃(1998) ~ 平成 20 年頃(2008) 福祉・セーフティネット機能の強化 平成 8 年度の法改正を受け、平成 10 年度から生活保護世帯、高齢者世帯、障がい者世帯等への入居優 遇策を実施し、また、第一種、第二種の公営住宅の種別を廃止するとともに、近傍の民間同種賃貸住宅 の家賃を上限とする応能応益型の家賃方式に変更しました。 平成 15 年から、福祉施策との連携を強化し、福祉施設の併設やグループホーム等を展開し、ユニバ ーサルデザインを標準とした整備を行ってきました。 ⑤平成 23 年(2011) ~ 地域主権・地域自主性の強化 平成 23 年に「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関す る法律」が施行され、高齢者や障がい者等の特に居住の安定を図る必要がある世帯への措置や入居者の 収入基準を地方公共団体が条例で定めることができることとなりました。 図 6-1■公営住宅の収入分位のカバー率の変遷(収入基準の上限の推移) 第2種 第1種 S26 ・・ S29-S36 ・・ S52-H8 48% → 28% → 16% 82% → 81% → 33% 制度の大改正 H9- 本来階層 裁量階層 ※ 25% 40% ※高齢者、障がい者等、特に居住 の安定を図る必要がある世帯 100 熊本県住宅マスタープラン 2.入居者の現状 近年の厳しい経済情勢を受け、県営住宅の現在の入居者は、最も低い収入分位(月額収入 104,000 円以下)の世帯が全体の約 77%を占めています。また、直近の新規入居者を見ても、 月額収入 104,000 円以下の世帯が全体の約 94%を占めています。 入居期間については、10 年以上の入居者が全体の約 2/3、なかでも 20 年以上の入居者が約 1/3 を占めており、入居期間の長期化が進んでいます。 これらの状況から、県営住宅の性格が以前のような「住み替えステップの一時的住まい」か ら「長期的な定住の住まい」にシフトしていることがうかがえます。 図 6-2■県営住宅 入居者の月額収入の状況 図 6-3■県営住宅 入居者の入居期間 (1)H23 年度全入居者=8,034 世帯の状況 10 年以上の入居者が約 2/3 を占め るなど、長期入居者が増加 21.4万円~ 6% ~21.4千円 6% ~15.8万円 3% 30年以上 16% 25~30年未満 8% ~13.9万円 3% ~12.3万円 5% 最も低い収入の世帯が全体の 77%を占める状況 5年未満 5~10年未満 10~15年未満 5~10年未満 16% 20~25年未満 10% ~10.4万円 77% 5年未満 20% 20 年以上 15~20年未満 20~25年未満 25~30年未満 10 年以上 30年以上 10~15年未満 15% 15~20年未満 15% (2)H23 年度の新規入居者=340 世帯の状況 ~12.3万円, 3% ~13.9万円, 1% ~10.4万円, 94% 0% 20% 40% 60% 80% ~15.8万円, 1% 100% 15.8万円~, 1% ②高齢化の進展 県営住宅の入居者の高齢化は、社会全体に比べて急激に進展しています。高齢世帯の増加 に伴い入居期間が長期化し、若年世帯の入居機会が相対的に低下することによって、入居者 の年齢構成に偏りが生じています。その結果、団地の活力が低下し、防犯性の低下や自治活 動への影響も懸念されます。 ③単身・2人世帯の割合が増加 いわゆるファミリー世帯(4人世帯)が減少し、高齢者のみの世帯や母子世帯等の特に居住の 安定を図る必要のある世帯の新規申込みが増加しており、入居者の 63.6%が2人以下の世帯 となっています。 図 6-4■県営住宅入居者の世帯構成 2人以下の世帯が63.6% 31.3% 32.3% 18.4% 12.6% 4.5% 0.9% うち高齢単身者25.9% うち高齢者夫婦のみ19% 0% 20% 単身 2人 40% 3人 4人 60% 5人 80% 100% 6人以上 県住宅課調べ H24.5 月現在 101 第6章 県営住宅の役割と今後のあり方 ①入居期間が長期化し、低い収入分位の世帯が増加 熊本県住宅マスタープラン 第6章 県営住宅の役割と今後のあり方 3.多様な入居需要への対応状況(セーフティネット機能の充実) ①様々な住宅困窮者・要配慮者への対応 社会情勢の変化により、多様化する住宅困窮者に対応するため、現在、ひとり親世帯、多 子世帯、子育て世帯、DV被害者、犯罪被害者世帯等を対象として、入居時の倍率優遇措置 を実施しています。また、障がい者や生活保護対象者については、単身での入居も可能とし ており、さらに、高齢者、障がい者等の特に居住の安定を図る必要がある世帯については、入 居収入基準を緩和しています。 このように、県営住宅は、住宅困窮者や要配慮者に対するセーフティネットとしての機能 を果たしており、また、県内市町村の公営住宅が、同様の機能を果たしていくための先導的 な役割も担っています。 図 6-5■県営住宅の応募者の属性(H23 後期) 世帯の種類 応募世帯数 割合(%) 心身障害者世帯 97 世帯 12.1% うち重度身障者世帯 38 世帯 4.8% 倍 191 世帯 23.9% 率 高齢者世帯 優 ひとり親世帯 111 世帯 13.9% 遇 DV被害者世帯 0 世帯 0.0% 世 多子世帯 9 世帯 1.1% 帯 子育て世帯 165 世帯 20.6% 犯罪被害世帯 0 世帯 0.0% 一般世帯(単身) 39 世帯 4.9% 一般世帯(2人以上同居) 188 世帯 23.5% 合 計 100% 800 世帯 図 6-6■県営住宅の入居者 (特に配慮を要する者) 世帯属性 心身障害者世帯 生活保護法被保護世帯 ハンセン病療養所入所者等 世帯数 割合(%) 960 11.9% 719 8.9% 1 0.0% 総入居世帯数=8,034 世帯 県住宅課調べ(改良住宅は除く)(H23.4 現在) 4.入居倍率と回転率の現状 ①入居倍率と回転率 入居倍率は、平成 20 年度前期募集時の 8.85 倍をピークとして、依然として高い水準となっ ている一方で、近年は若干の低下傾向も見られています。年間の退去者数は約 320 世帯(スト ック全体における回転率=約 4%)と低い水準で推移しており、その理由としては、特に収入 の低い世帯が入居者の大部分を占め、入居期間が長期化していることが挙げられます。 図 6-7■県営住宅における公募倍率の推移 年度 平成9年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 管理戸数 前期 後期 前期 後期 前期 後期 前期 後期 前期 後期 8,268 戸 8,423 戸 8,446 戸 8,446 戸 8,446 戸 応募者 A 入居した者 B(補充空き家) 442 世帯 752 世帯 1,106 1,027 1,168 1,005 1,013 950 912 800 世帯 世帯 世帯 世帯 世帯 世帯 世帯 世帯 県住宅課調べ(改良住宅は除く)(H23.4 現在) 102 入居倍率 A/B 285 世帯 293 世帯 1.55 倍 2.57 倍 125 162 169 178 147 149 175 165 8.85 6.34 6.91 5.65 6.89 6.38 5.21 4.85 世帯 世帯 世帯 世帯 世帯 世帯 世帯 世帯 倍 倍 倍 倍 倍 倍 倍 倍 熊本県住宅マスタープラン 5.県営住宅のストックの現状 図 6-8■県営住宅(改良住宅含む)が立地する市町村 県営住宅の総管理戸数の約 80% が熊本市内に立地しています。 これは、前述のとおり、高度成 長期の熊本都市圏への人口流入急 増(広域需要)に対応するため、県 営住宅を熊本市を中心として供給 してきたことに起因します。 立地位置 熊本市 熊本 都市圏 団地数 37 棟数 278 (5) (7) 1 1 1 1 1 42 8 49 6 20 4 365 うち改良住宅 合志市 菊陽町 荒尾市 宇土市 水俣市 上記 以外 合計 戸数 戸数割合 6,836 80.1% (264) 130 1,298 132 84 50 8,530 1.5% 15.2% 1.5% 1.0% 0.6% 100.0% ②ストック状況 平成 24 年4月時点の県営住宅の管理戸数(改良住宅を含む。)は 8,530 戸であり、そのうち、築 後 35 年(法定建替要件年数)を経過したストックが 40.8%を占め、特に高度成長期に整備したス トックが一斉に老朽化を迎えています。 (そのほとんどが耐火構造の中高層住宅) 一方、平成 23 年 4 月時点の改良住宅を除く県営住宅のUD対応住戸数は 1,390 戸であり、 県営住宅全体に占める割合は 16.8%に過ぎない状況です。 図-103■県営住宅ストックの状況 図 6-9■県営住宅(公営住宅、改良住宅)ストックの状況 500 築35年以上 3,485戸 (全体の40.8%) 450 県営住宅ストック数 改良住宅: 264戸(上段) 公営住宅:8,266戸(下段) (H24.4月現在) 400 築40年以上 1,648戸 (全体の19,3%) 350 300 250 200 150 築35年以内 100 50 図 6-10■改良住宅を除く県営住宅のUD対応戸数 (築年) 0 500 ~S40 216 S41~S50 269 S51~S60 275 S61~H7 H8~ 1,500 2,000 2,500 3,000 2010 2008 2006 2004 (戸) 3,500 2,545 3,013 560 286 1,000 2002 2000 1998 1996 1994 1992 1990 1988 1986 1984 1982 1980 1978 1976 1974 1972 1970 1968 1966 1964 1962 1960 0 821 281 UD対応戸数 特に昭和 40~50 年代の UD対応が不十分 未対応戸数 103 第6章 県営住宅の役割と今後のあり方 ①立地状況 熊本県住宅マスタープラン 第6章 県営住宅の役割と今後のあり方 2.県営住宅を取り巻く状況の変化 近年の社会情勢の変化に伴い、県営住宅を取り巻く状況も大きく変化しています。県営住 宅の今後のあり方については、これらの状況変化を十分踏まえたうえで、一定の見直しを行 う必要が生じています。 1.将来の入居需要 ①低額所得者の増加(短期的な視点) 近年の厳しい経済情勢により、県内の低額所得者の割合が増加しています。これに伴い、 県内の公営住宅の入居需要の短期的な見通しとしては、引き続き高い水準で推移することが 予想されます。そこで、県内の公営住宅総戸数の約2割を構成する県営住宅については、県 内の入居需要を適切に見据えながら、一定のストック数を確保しつつ、真に住宅に困窮する 世帯に対して、効率的かつ公平に住宅を提供していくことが求められます。 図 6-11■1世帯当たり年間収入(熊本県) 全世帯 H11 5.3% H16 5.6% H21 7.3% 9.3% 14.5% 0% 10% 200万未満 13.2% 14.8% 16.9% 13.5% 15.3% 20% 200-300万円 11.2% 48.2% 10.3% 18.1% 30% 40% 300-400万円 44.4% 13.5% 50% 11.7% 60% 400-500万円 70% 26.9% 80% 500-600万円 90% 100% 600万円以上 ②将来世帯数の減少(長期的な視点) 少子化の進展等を受けて、県内の総世帯数は、今後 10 年で 4.1%、20 年で 8.5%が減少すると 予測されています。これに対応して、長期的な視点での住宅供給のあり方としては、ストッ クの維持管理に重点を置き、集約型の運営をすることが求められます。 (世帯) 図 6-12■将来世帯数の推計(熊本県) 800,000 <現在> 700,000 688,106 647,216 ▲4.1% 659,753 ▲8.5% 629,513 600,000 500,000 2000年 (H12) H12・H22:国勢調査 104 2010年 (H22) 2020年 (H32) 2030年 … H32・H42:国立社会保障・人口問題研究所の推計値 熊本県住宅マスタープラン 2.民間賃貸住宅の状況 平成20年の住宅・土地統計調査では、県内の民間賃貸住宅には約 48,000 戸の空き家が発 生しており、うち県営住宅が主に位置する熊本市内では、家賃月額4万円未満の住宅が約 11% 存在しています。今後、公営住宅の入居需要をすべて公営住宅ストックでまかなうことは現 実的に困難であるため、民間賃貸住宅市場の状況を踏まえ、適切な役割分担を図っていく必要 があります。 図 6-13■民間賃貸住宅の空き家数(熊本県内) ■空き家の家賃月額(熊本市内・1R/1DK 住戸を除く) 2万円以下, 0.0% 2~3万円, 0.3% 3~4万円, 10.5% 民間賃貸住宅総数 うち熊本市内で 募集中の空き家 221,000 戸 空き家 48,000 戸 空き家率:約 21.7% 5万円以上, 62.2% 4~5万円, 27.0% 約 9,000 戸 ※S56 以降に建築 ※2K 以上 平成 20 年住宅・土地統計調査をもとに、県住宅課で推計 H23.8 月現在の空き家物件情報と 複数の宅建事業者へのヒアリング をもとに、県住宅課で推計 3.立地する市町との役割分担 ①県営住宅が立地する市町と県の役割分担 現在、県営住宅が立地する市町は、熊本市、荒尾市、宇土市、水俣市、合志市及び菊陽町 の5市1町であり、総管理戸数の約8割が熊本市内に存在しています。各地域において公営 住宅の入居需要、整備状況、市町の財政事情も異なりますが、公営住宅の供給は地域住民の 生活に密着したサービスであり、基礎自治体である市町村が主体的に果たすべき施策である ことから、適切な役割分担のもとで、対応していくことが必要となります。 4.県営住宅のあり方見直しの方向性 以上の県営住宅を取り巻く状況変化を踏まえて、県営住宅のあり方について、以下の方向性 で見直すこととします。 取り巻く状況の変化 あり方見直しの視点 1将来の入居需要 1 既存ストックの有効活用と 長寿命化 2民間賃貸住宅の状況 2 社会ニーズに対応した運営 3立地する市町との役割分担 3 民間賃貸住宅の有効活用 105 第6章 県営住宅の役割と今後のあり方 ①民間賃貸住宅に大量の空き家が発生 熊本県住宅マスタープラン 第6章 県営住宅の役割と今後のあり方 3.県営住宅の今後のあり方~中長期的な展望を踏まえて~ 1.既存ストックの有効活用と長寿命化 県営住宅の入居需要は依然として高く、今後しばらくは高い入居倍率で推移することが予想さ れることから、既存ストックの長寿命化を図り、有効活用します。 施策方針と対応策 ①耐用年数まで有効活用 鉄筋コンクリート造(耐火構造)の公営住宅の耐用年数は70年であり、既存ストック については、特別な場合を除き、この年数に達するまで適切に管理する必要があります。 高い入居需要に対応するためにも、既存の県営住宅ストックは、耐用年数に達するまで 有効活用します。 ②計画的な維持・改修工事等の実施 県営住宅を耐用年数まで良好な状態で使用し、建築物のライフサイクルコストの縮減 を図るため、定期的な点検、予防保全的な視点に立った修繕、耐久性向上のための改修 工事等を計画的に行い、ストックの長寿命化を図ります。 また、防災上の問題がある箇所については、計画的に改修を行います。 ③UD化の推進 長寿命化と併せて、既存住戸のUD改修工事を進めることで、高齢者や子育て世帯と いった多様な入居需要に対応できる良質なストックを形成します。 ④建替事業等 公営住宅の供給は市町村が主体的に果たすべき役割であることから、今後、新規の公営 住宅建設や建替えによる供給は、市町村に委ねます。ただし、過疎地域・人口減少地域へ の対応や、熊本都市圏の熊本市周辺地域の移住・定住促進等のために、特に必要とされる 場合は、市町村を支援します。 2.社会ニーズに対応した運営 県営住宅の運営にあたっては、各種の社会ニーズに的確に対応します。 施策方針と対応策 <ソフト面> ①指定管理者制度の活用 多様化する住民ニーズに効果的・効率的に対応するため、民間ノウハウを活用した指定管理 者制度を採用します。 ②福祉施策との連携 福祉施策と連携して、県営住宅をグループホームやサービス付き高齢者向け住宅とし て活用することを検討します。 ③高齢者、障がい者等に対する入居優遇 高齢者、障がい者、ひとり親世帯等には、引き続き入居時の倍率優遇措置を行います。 106 熊本県住宅マスタープラン ④入居収入基準 入居者の収入基準については、今後の社会情勢の変化や入居倍率等の動向を見定め、必 要に応じて対応します。 ⑤災害被災者への対応 災害で住宅を被災し、住宅に住めない状況にある世帯については、一定期間、県営住宅 での受入れを行います。 ⑥外国人留学生の受け入れ 外国人留学生の受け入れについては、入居ニーズ、高校・大学等と団地の位置関係、入 居待機者数の状況を見ながら、必要な措置について検討します。 ⑦入居世帯と住戸規模等とのミスマッチの解消 入居世帯の世帯人数の変化や加齢に伴う身体機能の低下等に伴い、入居する住宅の規 模・設備仕様・家賃がその世帯に不相応となった場合は、入居待機者との公平性の確保に 留意しながら、別の住戸への住み替えを誘導します。 ⑧高齢入居者への対応 指定管理者による電話での声かけサービス等により、高齢者の見守りを行います。 <ハード面> ⑨県産木材・畳表の利用促進 県産木材や県産畳表の利用促進を図るため、既存県営住宅の改修工事等において、使用 量を増加させる取組みを行います。 ⑩省エネ化・新エネルギーの導入 低炭素化社会の実現に向けた取組みの一環として、各県営住宅の特性等を踏まえ、省エ ネ化や新エネルギーの導入について検討します。 3.民間賃貸住宅の有効活用 県内の民間賃貸住宅には多数の空き家が存在し、住宅確保要配慮者や低額所得者の入居が可能 なストックも形成されつつあることから、市場状況を踏まえながら、これらを有効活用します。 施策方針と対応策 ①住宅確保要配慮者への対応 県営住宅に入居できない住宅確保要配慮者に対しては、「熊本県居住支援協議会」の活 動や国の「民間住宅活用型住宅セーフティネット整備推進事業」を通して、民間賃貸住宅 の確保を積極的に行うとともに、「熊本県あんしん賃貸支援事業」を活用して物件情報の 提供を行います。 ②収入超過者の民間賃貸住宅への誘導 県営住宅に入居する世帯が収入超過者となった場合には、対象世帯にその旨を通知し、 ①に示した各種事業による住み替えを促進することで退去を促し、入居待機者の新規入居 機会の拡大を図ります。 107 第6章 県営住宅の役割と今後のあり方 また、高齢者、障がい者、生活保護受給者等には、引き続き単身での入居を可能とする措 置(同居親族要件の緩和)を行い、さらに、高齢者、障がい者等の特に居住の安定を図る必 要がある世帯については、引き続き入居収入基準を緩和し、配慮を図っていきます。 第6章 県営住宅の役割と今後のあり方 熊本県住宅マスタープラン 108