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コンピュータの歴史-1 黎明期

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コンピュータの歴史-1 黎明期
コンピュータの歴史-1
黎明期
和田俊和
人はなぜ計算をしたのか?
約25000年前,後期旧石器時代
•
•
•
•
•
•
•
獲物の頭数,農産物の収穫量の勘定・計算
分配量の決定
租税の計算
川の氾濫と面積計算
航路の決定(天文学,暦)
数表(主に三角関数)
時間の見積もり
人はなぜ計算をすることを拒んだか?
• 「機械的」計算を人が行うのは
– 苦痛である
– 間違いが起きる
– 時間がかかる
• 「機械的」計算は機械に行わせるべきである.という
発想は自然.
– チャールズ・バベッジが「数表の危機」を解決しようとした.
– コンラッド・ツーゼが「30元連立方程式を解く機械を作ろ
う」と提案し,上司に拒まれ,会社を辞めた
加減算の道具:アバカス・そろばん
BC1000~500
• 加減算だけなら,石を並べればできる.しかし,
大きな数の加減算には多数の石が必要.
• ⇒位取り記法(10進数)の利用.さらに,5進
数とも組み合わせる.
• ⇒この結果,0-99の数を10個の石で表現でき
るようになった.
• 問題点:各桁の計算と桁上がりは人が行う.
乗算の道具:ネピアの骨・算木
1550~1617
• 九九を書いた棒を用いて任意桁と一桁の数
の乗算を行う.桁上がりの加算は人間が行う.
479×8の例
ネピア:対数の発明者
でもある.
=
3
8
3
2
歯車を使った計算機:1
• レオナルドダビンチ(1452~1519)は歯車式
計算機を設計していない
• この歯車では計算できない.
歯車を使った計算機:2
• シッカートが最初.(原理はネピアの骨)
ケプラー:1571~1630
シッカート:1592~1635
この背面にネピアの骨を円柱上に記した棒
が6本入っている.加減算とメモリは独立
機械的な歯車計算機
• パスカル(1623~1662)のパスカリーヌ.税務
官吏の父を助けるために18歳の時に制作.
加算専用(減算は補数を使用.)
• ライプニッツ(1646~1716),5桁×12桁の16
桁の積,除算が計算できた.但し,積は加算
,除算は減算の繰り返し.
数表の危機19世紀
• 船の航路を決定するには天文観測に基づく
自己位置の決定が必要.
• この計算には,三角関数が用いられたが,当
時出版されていた数表には誤りが多数存在
したため,正誤表が出版され,さらにその正
誤表が出版されるというほど混乱していた.
• 何が正しい値かを誰も把握できなくなり,これ
が原因で船の座礁等の事故も起きた.
歯車を使った計算機:2
チャールズ・バベッジ(1791~1871)の夢
• 階差機関
– 数表の自動的計算と自動組版
• 解析機関とジャガード織機
– プログラムに従って計算する歯車
計算機
バベッジの構想1:階差機関
人手によるコピーの誤りも無くすため,活版印刷の原版を組むとこ
ろまで,全自動化を試みた.
バベッジの構想1:階差計算の原理
ほとんどの関数は,多項式に展開できる.
多項式関数の値を加算だけで求めることができる.
x
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
y
14
41
98
197
350
569
866
1253
1742
2345
第一階差 第二階差 第三階差
27
57
99
153
219
297
387
489
603
30
42
54
66
78
90
102
114
12
12
12
12
12
12
12
M
例
y = 2 x3 + 3x 2 + 4 x + 5
階差機関は未完成に終わった
• 英国最高の機械工作技術者クレメントへの依頼
• 英国からの17000ポンドの政府助成金+バベッ
ジのほぼ同額の拠出金(蒸気機関車は当時784
ポンド.約40台分以上)
• クレメントは不満,確執が起きた.
• 政府助成金の打ち切りとともに計画は中断し,
部品は溶かされた.
• 1/7モデルのみが完成
• その後,スウェーデンのシュウツ親子が完成
バベッジの構想2:解析機関
• パンチカードで指定した模様を織
るジャーガード織機にヒントを得
,プログラムで指定した通りに計
算を行う計算機を作ろうとした.
• しかも,条件分岐等のジャンプ命
令まで備えていた.
⇒機械式ではあるものの,現代の
計算機と同じ構造
バベッジの構想2:解析機関
• 右は,解析機関の中心部「
ミル」
• 機械式メモリと,演算制御
部(CPU)が分離する構成(
現在の計算機とほぼ同じ)
最初にプログラムが動いた機械式計算機
コンラッド ・ツーゼ
1910~1995
• 新入社員として入社した会社で,
計算する機械を作るよう提案した.
• しかし,聞き入れてもらえず,退職
し,自宅でプログラムに従って動く
機械式計算機Z1を完成させる.
• その後演算部をリレー式にしたZ2,
メモリ部もリレー式にしたZ3,条件
分岐やサブルーチンを入れたZ4
他,200を超える計算機を作った.
コンラッド ・ツーゼ
リレー
NOT回路
NAND回路
ばね
コイル
真空管
二極真空管
三極真空管
真空管とメモリドラム:ABCマシン
• 真空管をリレーの代わりに使う.
⇒高速化
• メモリ⇒コンデンサに蓄えられた
電荷を使う.リーク(電荷の漏
れ)は再チャージすることで補う
(ダイナミックメモリ)
ジョン アタナソフ
1903~1995
1939年10月
試作機完成
実用的プログラム内蔵型計算機
ASCC⇒ハーバード・マークI
• 3000個のリレーと2200個の歯車から
成る電気機械式計算機
• 紙テープからプログラムを読み込む汎
用計算機
• 条件分岐は後に組み込まれた.
• 15年間も使用された実用的計算機
ハワード・エイケン
1900~1973
1943年完成,1959年まで使用
「バグ」の正体
• ハーバードマークIがあるとき,停止した.
• 原因:蛾がリレーに挟まっていた.
• これ以来プログラムの間違いを「バグ(虫)」と
呼ぶようになった.
ENIACは最初の実用的電子計算機
• ゴールドスタイン将校が弾道計算用の機械を模索
中,電子計算機を作ろうとしていたモークリとエッ
カートに目をつけた.
• 完成は終戦後1946年
ENIAC
• 真空管17468本リレー1500個を用いた計算機
• 10進数10桁の固定小数点による数値表現
• 一般数値記憶用メモリ20個,πやe,三角関数
等の定数記憶メモリが300個.
• 加減算200[μs],乗算2800[μs],除算24000[μs]
• プログラムは配線とスイッチで表現.条件分岐
はない.
• 完成は第2次大戦後1946年.弾道計算には使
われなかった.稼働期間は10年間
ENIACは最初の実用的電子計算機
もどき
• モークリとエッカートは「電子的にかつディジタル
に計算を行う方法」について特許を持っていたが,
スペリーランド社が買い取っていた.
• どの会社もスペリーランド社に特許使用料を支
払っていたが,ハネウェル社だけは払わなかった.
• スペリーランド社は,ハネウェル社を訴えたが,逆
に,当該特許は無効であるとハネウェルから訴え
られた.
ENIAC裁判の結果
• 6年間に及ぶ裁判の結果,1973年「モークリと
エッカートは自ら最初の電子計算機を発明し
たのではなく,その基本原理はアタナソフの
ABCマシンから受け継いだものである.」との
判決が下り,特許は無効となった.
• 実際に,1941年モークリはアタナソフを訪れ,
ABCマシンの原理を聞いていた!ついでにア
タナソフに礼状まで送っていた.
• しかし,ABCマシンは最初の電子計算機とは
呼べない.(未完成であったため)
ENIACのプログラムは,ワイヤー
• ENIACにはプログラムはあったが,それらはす
べて,ワイヤーの結線によって表わされてい
た.
• 簡単なプログラムを組むのにも1週間以上も
かかった.
• つまり,プログラムを電子的に表現するという
ことはできていなかった.
プログラム内蔵式電子計算機へ
EDSACではない!1948年
• SSEM(Baby)が最初
• ManchesterMark1
• FerrantiMark1
命令数が7個と少なく,メモ
リも非常に少ない(32語)
が,プログラムが動いた.
フレデリック・ウイリアムズ,
トム・キルバーンによる.
ウイリアムズ・キルバーン管がメモリとして使え
ることを確認するための装置?
EDVAC(1951)
• モークリとエッカートは,ENIACのワイヤーを用いたプログ
ラミングは修正すべきであると考えていた.
• この二人が,プログラム内蔵型電子計算機を発案し,
EDVACの設計に取り組んだ.(EDVACの完成は1949年しか
しトラブルが多く1951年から稼働)
• しかし,ペンシルベニア大は,天才数学者として有名であ
ったフォン・ノイマンに「EDVACに関する最初の草稿」を発
表させた(1945年).
• この結果,プログラム内蔵式の計算機は「フォン・ノイマン
型計算機」と呼ばれるようになった.
• EDVACはこの草稿で有名になったが,歴史上は特に重要
な計算機ではない.
しかし,フォン・ノイマン型計算機は
フォン・ノイマンとは無関係である
• エッカートは,後
に,フォン・ノイマ
ンのことを「アイ
デア泥棒」と呼ん
でいる.
• ノイマンはこのこ
とに対して肯定も
否定もしていない.
EDVACとフォン・ノイマン
EDSAC(1949年)が実用的な本当の
意味での計算機
• プログラム内蔵型の計算機で,実用的に使えるも
のは,イギリス,ケンブリッジ大のEDSACが最初で
ある.(SSEMはあくまで実験機)
• 真空管3000本,メモリには水銀遅延管(水銀を充
填した管の両端に水晶振動子を取り付け,増幅
回路で繋いだもの.)
• サブルーチンの本格的利用
「計算のための道具を作る」
という夢は果たされてしまった!
次に何が待ち受けていたのだろうか?
• 小型化?高速化?
• 製品化?
• 金儲け?
• 使いやすさ?
• 計算とはどういうことかを示す?
• 人と同等の知能を持つ機械の実現?
コンピュータの多面的発展
待ち受けていたもの
• 小型化?高速化?⇒トランジスタ⇒IC⇒LSI⇒…
• 製品化?⇒電卓,マイコン,ミニコン,メインフレーム
• 金儲け?
⇒ソフトウエア産業の勃興
• 使いやすさ?
⇒言語処理系,OS,UI,
• 計算とはどういうことかを示す? ⇒計算科学
• 人と同等の知能を持つ機械の実現? ⇒AI
• ...
レポート,下記の中から2つ選び自分
の考えを述べよ.A4用紙1枚
1. なぜチャールズ・バベッジは階差機関,解析機関を完
成させられなかったか?また,なぜコンラッド・ツーゼ
は多くの計算機を作れたか?
2. 世界初の電子計算機は何か?
3. なぜフォン・ノイマンが偽の業績で歴史上に名前を残
せたか?
4. なぜEDSACよりも先に制作に取りかかったEDVACの完
成が遅れたか?
次週の予告
• 第2次世界大戦中に開発され,戦争に用いら
れてきた「電子計算機」コロッサスが存在して
いた.
• その存在や内容は近年まで明らかにされてこ
なかった.
• どのような目的でコロッサスが作られ,歴史
の闇に葬り去られてきたかについて述べる.
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