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エピジェネティクスによるレトロトランスポゾンの発現抑制機構

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エピジェネティクスによるレトロトランスポゾンの発現抑制機構
〔生化学 第8
2巻 第3号,pp.2
3
7―2
4
6,2
0
1
0〕
!!!
特集:タンパク質修飾がもたらす遺伝子発現調節
!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
エピジェネティクスによるレトロトランスポゾンの発現抑制機構
松
井
稔
幸,眞
貝
洋
一
レトロトランスポゾンの転写抑制には DNA のメチル化が重要であり,通常,LTR 部分
の DNA のメチル化レベルが低下するとレトロトランスポゾンの発現が上昇する.生殖系
列細胞では,DNA メチル化に加えて non-coding RNA による転写後調節がレトロトランス
ポゾンの発現抑制に寄与している.さらに,胚性腫瘍細胞(embryonic carcinoma:EC)や
胚性腫瘍細胞(embryonic stem:ES)などのような発生初期の胚から樹立された細胞株で
は特別なプロウイルス発現抑制機構が存在し,この制御にはヒストンリジンメチル化が重
要な役割を持つことが明らかになりつつある.本稿では,ヒストンリジンメチル化修飾に
よる新規プロウイルス発現抑制機構をはじめとして,エピジェネティックなレトロトラン
スポゾンの制御機構に関する最近の知見を紹介する.
1. は
じ
め
である.
に
哺乳類のように巨大なゲノムを抱える高等真核生物に
高等多細胞生物は多種多様な性質を持つ細胞から形成さ
は,生物の生存に有効に機能する遺伝子をコードしている
れているが,一部の特殊な例外を除き,それらの細胞は原
とは思えない DNA 配列,いわゆるジャンク DNA と呼ば
則同一のゲノムを有する.全く同一の情報源から,異なる
れる DNA がゲノムの大きな割合を占めている.特に転移
機能を有する細胞を作り出すことができるのは,それぞれ
因子はマウスの場合,ゲノム全体の4
0% 近くを占め,レ
の細胞がゲノムに組込まれている遺伝子のうち,必要な遺
トロウイルス由来の DNA はゲノム全体の約1
0% 近くを
伝子を必要なときにだけ使うという,遺伝子発現制御機構
)
占める1∼4(図1
)
.
を備えているからである.
このような DNA が生殖細胞系列で発現し転移すると,
真核生物には RNA ポリメラーゼ I(Pol I)
,Pol II,Pol III
ゲノムに変異を起こしそれが次の世代に伝達される可能性
と呼ばれる,三つの RNA ポリメラーゼが存在する.Pol I
がある.このようなゲノムの変化を引き起こす転移因子
はリボソーム RNA を転写し,Pol II はタンパク質をコー
は,生物の進化に大きな影響を与え,時には有効に機能す
ドしている遺伝子の転写を行い,Pol
III は tRNA などの
ることもあると推測される.例えば,胎盤形成に関わる遺
small RNA などの転写を行う.したがって,Pol II の活性
伝子にはレトロウイルス由来の遺伝子が複数存在すること
を制御することによって,必要な遺伝子のみを転写するこ
が判っており,哺乳類が現在の姿に進化するまでの過程に
とが可能であり,Pol II の転写活性を制御することは多細
おいては,レトロトランスポゾンの寄与は多大である5).
胞生物における発生と恒常性の維持において,非常に重要
京都大学ウィルス研究所ゲノム改変マウス研究領域(〒
6
0
6―8
5
0
7 京都府京都市左京区聖護院川原町5
3 京都大
学分子生物科学実験研究棟1F W1
0
4,W1
0
5,W1
0
6)
The epigenetic silencing mechanism of retrotransposons
Toshiyuki Matsui and Yoichi Shinkai (Experimental Research Center for Infectious Diseases, Institute for Virus Research, 5
3 Shogoin, Kawara-cho, Sakyo-ku Kyoto, Kyoto
6
0
6―8
5
0
7, Japan)
しかしながら,必須の遺伝子の領域に転移因子が挿入さ
れ変異が起これば,生物は生存できない.また,レトロト
ランスポゾンが体細胞においてがん化を引き起こす可能性
が示唆されており6,7),プロウイルスの発現を抑制しておく
ことは生物にとって非常に重要な問題である.
このため哺乳類ではレトロトランスポゾンの進入と増幅
を阻止する様々な機構が存在する.哺乳類ではレトロウイ
ルスが体内に入ると,自然免疫系,もしくは獲得免疫系の
2
3
8
〔生化学 第8
2巻 第3号
標的となり除外される.また,マウスの細胞においては,
胞内にウイルスが進入した後もウイルスの増幅を防ぐ機構
細胞表面のレセプターがグリコシル化されることにより,
が存在する.APOBEC3G はレトロウイルスの逆転写の際
ウイルスの進入が妨げられることが報告されている .細
に,シトシンからウラシルへの変換を触媒し,ゲノムに挿
8)
入したものは結果的にグアニンからアデニンに変わる.さ
らに,感染能のあるウイルスがゲノムに挿入された後も,
発現抑制機構によりウイルスの産生が阻止される.本稿で
はこの遺伝子発現制御機構によるレトロトラスポゾンの抑
制に焦点を当てる.特に,レトロトラスポゾンの抑制には
エピジェネティックな発現制御機構が重要である.はじめ
に,この調節に関わる DNA のメチル化,ヒストン化学修
飾,non-coding RNA などのエピジェネティックな遺伝子
発現制御機構を紹介し,次にレトロトランスポゾンの発現
抑制におけるこれらの制御系に関して最近の知見を紹介す
る.
2. DNA のメチル化
現在,DNA のメチル化酵素として,Dnmt1,Dnmt3a,
)
Dnmt3b,Dnmt2,Dnmt3l の 五 つ が 確 認 さ れ て い る9(図
図1 レトロトランスポゾンの構成
レトロトランスポゾンは long terminal repeat を含む LTR 型と,
long interspersed nuclear elements(LINE)や short interspersed nuclear elements(SINE)などのように LTR を持 た な い non-LTR
型に分類することができる.DNA トランスポゾンは RNA を介
さない cut & paste 型の方法で増幅されるが,レトロトランスポ
ゾンは RNA に転写されることが必要であり,ゲノムの挿入前
にその RNA が逆転写される.このため,LINE は DNA 配列中
に逆転写酵素を挿入する際に必要となるエンドヌクレアーゼを
コードしている.LTR 型には,Ty1/copia,Ty3/gypsy,内在性
レトロウイルス(ERV)などが含まれる.
(文献2)
,3)
,4)を
参照)
Gag: group-specific antigen, Pol: polylmerase, Env: envelope, PR:
protease, RT: reverse transcriptase, RH: ribonuclease H, IN: integrase, An: polyA
2)
.哺乳類の場合,DNA のメチル化は主に CpG 配列のシ
トシンで起きる現象であり,de novo メチル化活性を持つ
Dnmt3a,Dnmt3b によって触媒される10,11).このため哺乳
類では DNA のメチル化は二本鎖 DNA に対して必ず対称
に起こる.
また,二本鎖 DNA の複製の際には片方のシトシンのみ
がメチル化されている,いわゆるヘミメチル化 DNA が生
じるが,維持型メチル化酵素である Dnmt1によって常に
両鎖がメチル化されているように維持される12).Dnmt1が
どのようにしてヘミメチル化 DNA を認識しているのかは
最近まで不明であったが,2
0
0
7年に Dnmt1と結合 す る
UHRF1/NP9
5という SRA ドメインを持つ分子がヘミメチ
図2 哺乳類の DNA メチル化酵素
NLS:核移行シグナル,PWWP:DNA 結合ドメイン,Cys:システイン
リッチドメイン,¿∼Èは保存性の高いドメイン(文献9)を参照)
2
3
9
2
0
1
0年 3月〕
ル化 DNA を認識し,Dnmt1を導いていることが示され
メチル化と H3K2
7のトリメチル化という互いに相反する
た13,14).さらに,2
0
0
8年に三つのグループの結晶構造解析
効果を持つ修飾が同じ領域に存在することが示された.こ
の結果より,UFRF1はフリップアウトした5-メチルシト
のように二つの修飾が同じ領域に存在する bivalent ドメイ
シンを認識することが示された15∼17).
ンは発生系の遺伝子の転写開始点に多く,未分化能の維持
ヒトとマウスにおいて Dnmt2の DNA のメチル化活性は
ほとんど確認できないが,tRNA が Dnmt2によってメチル
化されることが報告されている
に関わっていると考えられる31).
メチル化修飾はエネルギー的に比較的安定な化学修飾の
.ゼブラフィッシュで
ため,細胞の長期記憶に適する修飾であり,能動的なヒス
は Dnmt2 をノックアウトすると DNA のメチル化レベル
トンの脱メチル化機構は存在しないと予想されていた.し
が低下し,発生に異常が生じることが報告されている .
かし,2
0
0
4年に初めて,ヒストンリジンの脱メチル化酵
DNA のメチル化は遺伝子発現制御において,主に転写
素が同定され,さらに2
0
0
6年に JmjC ドメインがヒスト
1
8,
1
9)
2
0)
の抑制に寄与していると考えられているが,これはメチル
ン脱メチル化活性を持つことが示され話題を集めた32,33).
化された DNA を認識するタンパク質が脱アセチル化酵素
さらに,最近 Allis らによってヒストン H3の N 末端が
を導き,転写の活性化を阻害するためだと一般的には考え
プロテアーゼの一つである,カテプシンによって切断を受
られている.ところが,マウスにおいてメチル化 DNA に
けることが報告された.この切断は ES 細胞のレチノイン
結合するタンパク質をノックアウトしても転写の脱抑制が
酸による分化誘導を行うと確認され,発生や分化の過程に
ほとんど確認されないことから
重要な役割を果たしていることが予想されている34).
,DNA のメチル化が
2
1∼2
3)
どのように転写の抑制に寄与しているのかは未だにはっき
りとは分かっていない.
3. ヒストン化学修飾
4. H3K9のメチル化について
Suv3
9h1,Suv3
9h2はペリセントロメアにおける H3K9
をトリメチル化するのに対し,G9a はユークロマチン部分
コアヒストンは H2A,H2B,H3,H4の四つのタンパク
の H3K9をジメチル化することが分かっている35).また,
質から構成される.これらのタンパク質のうち,
H2A-H2B,
H3K9のメチル化は HP1に認識され,ヘテロクロマチンの
H3-H4が二量体を形成し,H3-H4の二量体はさらに四量
形成と転写の不活性化に寄与すると考えられている36,37).
体を作る.そして生体内でコアヒストンは H2A-H2B の二
さらに,H3K9と HP1の結合は H3S1
0のリン酸化によっ
量体の二つと,H3-H4の四量体一つから構成される八量
て阻害されることが報告されている38).
体となって存在している.また,ヒストンはメチル化,ア
H3K9と DNA のメチル化との関係も報告されている.
セチル化,リン酸化,ユビキチン化,ADP リボシル化な
アカパンカビにおける H3K9のメチル化酵素である DIM-5
ど様々な化学修飾を受けることが分かっている.Allis ら
をノックアウトすると,DNA のメチル化レベルが低下す
によって2
0
0
0年に,それらの修飾の組み合わせがヒスト
る こ と が 報 告 さ れ て い る39).哺 乳 類 で は,Suv3
9h1,
ンコードを形成し,そのコードを読み取るイフェクター分
Suv3
9h2 のダブルノックアウト ES 細胞ではペリセントロ
子が生体内における機能を生み出すというヒストンコード
メア領域の DNA のメチル化レベルが低下することが確認
仮説が提唱された24,25).
されている40).同様に,G9a のノックアウト ES 細胞でも
ヒストンがメチル化されることは古くから知られていた
DNA のメチル化のレベルが低下することが確認されてい
が,2
0
0
0年に Jenuwein らのグループが哺乳類でヒストン
るが,興味深いことにヒストンリジンメチル化活性を失っ
H3の9番 目 の リ ジ ン 残 基(H3K9)を メ チ ル 化 す る
た G9a の変異体を G9a 欠損細胞に発現させても,DNA の
Suv3
9h1,Suv3
9h2を同定して以来26),ヒストンリジンの
メチル化レベルが野生型の ES 細胞と同程度まで回復する
メチル化の研究が精力的に行われるようになった.現在,
ことが報告されている41).
様々なヒストンリジンメチル化の機能が明らかにされてい
る.リジン残基のメチル化には,モノ,ジ,トリメチル化
5. non-coding RNA について
状態が存在し,それぞれの状態が異なる機能を持つことも
RNAi とは small RNA によって特定の遺伝子が転写後遺
示されている.例えば,H3K4のトリメチル化は基本転写
伝子発現抑制を受ける現象で,1
9
9
8年に Fire と Mello ら
因子 TFIID に含まれる TAF3の PHD フィンガーに認識さ
によって線虫で初めて見出された42).シュウジョウバエで
れ,転写を活性化へと導く
は,short interfering RNA
(siRNA) は二本鎖 RNA(dsRNA)
.また,この転写活性化機
2
7,
2
8)
構は H3K9,H3K1
4のアセチル化により促進されるが,逆
が Dicer によって2
0―2
4ヌクレオチドに切断されることに
に H3R2のジメチル化により阻害されることが報告されて
より産生され,切断 さ れ た siRNA は RNA-induced silenc-
いる .H3K2
7のトリメチル化は転写の抑制に寄与してい
ing complex(RISC)に取り込まれる43).RISC には標的 RNA
ると考えられているが
を切断する AGO2という酵 素 が 含 ま れ,取 り 込 ま れ た
2
8)
,ES 細胞において H3K4のトリ
2
9,
3
0)
2
4
0
〔生化学 第8
2巻 第3号
siRNA と相補的な配列を持つ標的 RNA が切断される44).
雄の Dnmt3l ノックアウトマウスでは精原細胞から精母細
最近の研究により,non-coding RNA は転写後遺伝子発
胞への分化に異常が起こり,不妊になる.このマウスの精
現抑制に働くだけでなく,ヘテロクロマチンの形成に関わ
巣では,LTR 型と non-LTR 型の両方のレトロトランスポ
ることで,遺伝子の転写抑制に寄与することが明らかにさ
ゾンでの DNA のメチル化レベルが劇的に低下し,再活性
れている.分裂酵母では H3K9のメチル化酵素である Clr4
化が起こることが報告されている55).ところが,インプリ
と HP1のホモログである Swi6の局在に siRNA の経路が
ンティング遺伝子の DNA メチル化は影響を受けないこと
関与していることが報告されている .ショウジョウバエ
が分かっている.一方,雌の Dnmt3l ノックアウトマウス
でも,生殖幹細胞の維持に不可欠な遺伝子として同定され
では ERV の DNA のメチル化レベルには変化がないもの
た Piwi がコードするタンパク質が RNA 依存的に HP1α と
の,インプリンティング遺伝子の DNA のメチル化が低下
結合し,ヘテロクロマチン領域の H3K9のメチル化と HP1
し発現に異常が起こる56).
4
5)
の局在に重要であることが報告されている46,47).最近,マ
ショウジョウバエでは,発生初期に起こる DNA のメチ
ウスにおいても,インプリンティング遺伝子の一つである
ル化に Dnmt2が重要で,Dnmt2 をノ ッ ク ア ウ ト す る と
Air 領域への G9a の局在に,non-coding RNA が関与してい
ERV の DNA メチル化レベルと H4K2
0のトリメチル化レ
ることが報告されている .
ベルが低下すること,ERV の再活性化が起こることが報
4
8)
告されている57).
6. プロウイルスの発現抑制機構
6―2. non-coding RNA による ERV の抑制機構
6―1. ERV の発現抑制に関する DNA メチル化酵素の役割
マ ウ ス で は Dicer の 経 路 に 依 存 し て 産 生 さ れ る small
Dnmt1は前述したとおり,DNA のメチル化の維持に関
RNA が ERV の抑制に寄与することが報告されており,2
わる酵素であり,Dnmt1 のノックアウトマウスは体細胞
細胞期と,8細胞期の胚で Dicer をノックダウンすると
において,DNA のメチル化レベルが著しく低下する.ま
IAP の発現が上昇する58).また,Dicer のコンディショナ
た,胎 生9.
5日 前 後 に 発 生 が 停 止 し,intracis A particle
ルノックアウトマウスを使った解析により,Dicer を卵母
(IAP)の発現が再活性化することが報告されている .と
4
9)
細 胞 で 除 去 す る と mouse
transposon(MT)
,LINE-1,
ころが,Dnmt1 ノックアウト ES 細 胞 に 新 規 に Moloney
SINEB1,SINEB2の発現が上昇することが確認されてい
murine leukemia virus(MLV)を感染させても,効率よく
る59).
DNA がメチル化されることが確認されている .卵子で
2
0
0
3年には Tuschl らによってショウジョウバエで,転
は,Dnmt1のアイソフォームである Dnmt1o が発現してい
移因子に対応する repeat-associated small interfering RNA
るが,Dnmt1o を除去した卵子の IAP における DNA のメ
(rasiRNA)と呼ばれる small RNA が同定された60).同様に
チル化レベルは野生型のものと変化がないことが報告され
2
0
0
6年に,転移因子に対する新規の small
ている .
の精巣で確認された
5
0)
1
0)
RNA がマウス
.この small RNA はショウジョウ
6
1∼6
4)
Dnmt3a のノックアウトマウスは,生後4週間前後まで
に死亡し,クラス I の内在性レトロウイルス(endogenous
retrovirus:ERV)MLV と minor satellite repeats の DNA の
バエにおける,piwi-interacting RNA(piRNA)と同じ性質
を持つものと考えられている.
ショウジョウバエの X 染色体には,piRNA が転写され
メチル化が若干低下する .一方,Dnmt3b のノックアウ
ていると考えられている flamenco locus と呼ばれる領域が
トマウスは胎生致死で生まれてこない.また,体細胞にお
存在し,この領域に変異を入れると ERV の再活性化が起
いて IAP と MLV の DNA のメチル化レベルが若干低下す
こることが報告されている65,66).マウスでは piwi のホモロ
る .Dnmt3a と Dnmt3b のダブルノックアウトマウスは
グである RNA の MIWI2 と MILI をノックアウトすると精
5
0)
5
0)
Dnmt1 ノックアウトマウスとよく似た表現を示し,発生
巣で IAP と LINE-1の DNA のメチル化が低下し,それら
途中に異常が起きる50).また,Dnmt3a と Dnmt3b の単独
の発現が上昇すると報告されている67).このことから,
ノックアウト ES 細胞では DNA のメチル化はほとんど低
piRNA による抑制機構は転写前発現抑制に寄与している
下しないが,ダブルノックアウトの ES 細胞では長期培養
だけでなく,転写後の抑制にも関与していると考えられ
により,クラス II ERV の IAP,MusD などで DNA のメチ
る.また,Tudor ドメインを持ち Mili と結合する Tdrd1と
ル化レベルが低下する .
いう分子をノックアウトすると,精巣で LINE-1の DNA
5
1)
Dnmt3l は DNA のメチル化活性が確認されていないが,
のメチル化レベルが若干低下し,LINE-1の再活性化が起
Dnmt3a の構造に変化を与え Dnmt3a が DNA に結合しやす
こる68).同様に,Miwi2と結合する Tdrd9のノックアウト
くするという報告がある
マウスの精巣で LINE-1の DNA のメチル化レベルが劇的
.また,2
0
0
7年に Dnmt3l は
5
2,
5
3)
メチル化されていない H3K4と結合し, Dnmt3a を誘導し,
DNA のメチル化に寄与しているとする報告がなされた54).
に低下し,LINE-1の発現が上昇する.
しかしながら,なぜ piRNA の形成に関わる分子をノッ
2
4
1
2
0
1
0年 3月〕
クアウトするとレトロトランスポゾンの DNA のメチル化
これらの現象の説明として,MLV の LTR に結合する転
が低下するのか,その詳しい機構は分かっていない.ま
写因子が ES 細胞や EC 細胞で発現していないためとする
た,興味深いことに,rasiRNA と piRNA の産生は Dicer に
報告もあるが78),その後の転写が幹細胞特異的な何らかの
依存しないと考えられており ,small RNA によるレトロ
抑制機構によって抑えられているのか,あるいは全く別の
トランスポゾンの抑制機構の解析に加えて,これらの
原因によるものなのかは最近まで謎のままであった.とこ
small RNA がどのように生み出されるのか,その詳細な機
ろが近年になり,LTR 型のレトロウイルスの primer bind-
構についても今後の解析が期待される.
ing site(PBS)と呼ばれる領域に ZFP8
0
9という分子を介
6―3. クロマチンリモデリング因子によるERVの抑制機構
して KAP-1/Trim2
8が結合しレトロウイルスの抑制に寄与
6
2)
Lsh1はクロマチンリモデリング関連因子の一つで,
ATP の加水分解のエネルギーを使って,クロマチンの構
造を変化させる69).Lsh1 のノックアウトマウスは腎臓と
リンパ系の発育に異常が起こっており,出生後24時間以
内に死ぬ70).Lsh1 を欠損させた繊維芽細胞において,IAP
と major
するということが報告された79∼81).
7. ES 細胞におけるプロウイルスの発現抑制には ESET
が必要である
7―1. ESET/Setdb1について
satellite での H3K4のジメチル化とトリメチル化
ESET は double tudor ドメイン,methyl-CpG-binding do-
のレベルが上昇する71,72).また,DNA のメチル化レベルが
main(MBD)と SET ドメインを持つ分子(図3)で,Zhang
ゲノム全体で低下していることが確認されている.ところ
らによって2
0
0
2年に ERG 転写因子に結合するヒストンの
が,Lsh1 を欠損させた繊維芽細胞ではペリセントロメア
メチル化酵素として同定された82).SET ドメインはヒスト
での H3K9のトリメチル化と DNA のメチル化のレベルは
ンリジンのメチル化酵素において非常によく保存されてお
野生型の細胞と変化がない73).今のところ,Lsh1の標的遺
り,ヒストンメチル化活性に重要なドメインである.この
伝子として単一遺伝子のものは見出されておらず,Lsh1
ほぼ同時期に Rauscher らによって ESET が H3K9のメチル
は繰り返し配列の制御に関わっていると考えられる.
化酵素であり,KAP-1/Trim2
8と結合することが報告され
シロイヌナズナのクロマチンリモデリング因子である,
た83).彼らは ESET の SET ドメインを大腸菌によって発現
DDM1 をノックアウトすると,通常通り生育し形態も野
させた組換えタンパク質にはヒストンメチル化活性はな
生型ものとほとんど変わらないが,DNA のメチル化が劇
く,全長を昆虫細胞に発現させたもので in vitro で活性が
的に低下することが報告されている74).さらにシロイヌナ
あると報告している.ESET は,先ほど述べた KAP-1に加
ズナでは DDM1 ノックアウト株において,レトロトラン
えて DNA のメチル化を認識する MBD1という分子と結合
スポジションが起こり,ゲノムに変化を与えていることが
し,DNA のメチル化に依存して標的に局在するという報
示されている75).
告もある84).また,ESET ノックアウトマウスは胎生5日
6―4. 幹細胞における MLV の発現抑制機構
前後で致死となり,ES 細胞の生存にも ESET が必須であ
DNA のメチル化が ERV の抑制に重要であることは明ら
ることが報告されている85).さらに,ヒトがん細胞におけ
かであるが,幹細胞においては DNA のメチル化に非依存
る ESET のノックダウンの実験から,ES 細胞だけでなく
的なレトロウイルスの抑制機構が存在することが古くから
あらゆる細胞の生存に必須の遺伝子であるという可能性が
知られていた .繊維芽細胞などの分化した細胞に,MLV
示唆されている86).
7
6)
が感染すると,細胞中のゲノムウイルス DNA が挿入さ
ごく最近,ESET が ES 細胞の全能性の維持に関与する
れ,その後感染能のあるウイルスが産生されるようにな
というたいへん興味深い報告がなされた87∼89).Surani,
る.
Ng,Young らは,ES 細胞において ESET をノックダウン
ところが,EC 細胞や ES 細胞などの発生初期のマウス
すると,ES 細胞が trophoblast stem(TS)細胞系に分化し
から得られた細胞株では,MLV を感染させてもゲノムへ
やすくなることを示している.また,Ng と Young らのグ
の挿入は通常通りに起こるが,ウイルスがほとんど産生さ
れないことが分かっている77).また,DNA の脱メチル化
を誘導する薬剤である5-アザシチジン(5-azadC)を分化
した細胞株に投与すると MLV の発現が上昇するが,未分
化な細胞株に投与しても MLV の発現レベルはほとんど変
化しない76).我々も H3K9のメチル化酵素の一つである
G9a のノックアウト ES 細胞で ERV の DNA のメチルが
低下しているにも関わらず,ERV の発現レベルは野生型
の ES 細胞と変化がないことを確認している41).
図3 H3K9のメチル化酵素の構造
Chromo:クロモドメイン,ANK:アンキリンリピート,SET:
SET ドメイン
2
4
2
〔生化学 第8
2巻 第3号
ループは ESET の ChIP-Seq 解析を行い,ES 細胞における
ES 細胞では数日後に細胞の増殖速度が急激に低下した.
ESET の標的遺伝子を見出している.その中には,TS 細
一方,Dnmt1, 3a, 3b トリプルノックアウト(Dnmt TKO)
胞で発現の高い,Cdx2,Gata2,Tcfap2a が 含 ま れ て お
ES 細胞における ERV の発現レベルについても調べたが,
り,ESET はこれらの遺伝子の発現を抑制することにより
若干の再活性化しか確認されなかった.逆に,non-LTR 型
ES 細胞の未分化能の維持に関わっていると考えられる.
に分類される LINE-1の発現について は,ESET CondKO
さ ら に,Surani と Ng ら は ESET が Oct4と 結 合 し,Oct4
ES 細胞では若干の再活性化が確認されただけなのに対し
によってこれらの標的遺伝子に ESET が導かれると報告し
て,Dnmt TKO ES 細胞では強く発現が誘導されていた.
クロマチン免疫沈降法によって,IAP,MusD,MLV に
ている.
7―2. ESET ノックアウト ES 細胞において ERV の再活
おいて KAP-1と ESET の局在が確認され,ESET KO ES
細胞でこれらの ERV における H3K9のトリメチル化のレ
性化が起こる
KAP-1が幹細胞で外来性レトロウイルス(XRV)の発
ベルが著しく減少していることが明らかとなった(図5)
.
現抑制に寄与しているという報告から79∼81),ESET がプロ
この結果は Bernstein らが ChIP-Seq 解析により明らかにし
ウイルス抑制機構に寄与していることが予想された.そこ
た,ES 細胞とマウス繊維芽細胞における H3K9メチル化
で筆者らは ESET のコンディショナルノックアウトマウス
状態の比較結果と酷似していた90).さらに,H3K9のトリ
および ES 細胞を樹立し,ES 細胞における ESET によるプ
メチル化と同様に,ERV では ESET 依存的に H4K2
0のト
ロウイルスの発現抑制機構について解析を行った(現在投
リメチル化状態が亢進しており,これはすでに報告のあっ
稿中)
.
た H3K9と H4K2
0のトリメチル化 の 分 布 と 一 致 し て い
その結果,ESET コンディショナルノックアウト(ESET
た91).しかしながら,H4K2
0のトリメチル化酵素である
CondKO)ES 細胞では,IAP,MusD,MLV の発現が著し
Suv4-2
0h1,Suv4-2
0h2の両方を欠失したダブルノックアウ
く上昇していることが見出された(図4)
.また,ESET
ト ES 細胞の解析の結果,これら二つの酵素と H4K2
0の
ノックダウン細胞の表現型86)と同様に,ESET を除去した
トリメチル化は ES 細胞における ERV の抑制に必ずしも
図4 ESET Cond KO ES 細胞における ERV の発現解析
3
3#6は ESET Cond KO ES 細胞であり,タモキシフェンを加えることによ
り,ESET が除去される.タモキシフェンを加えた3
3#6では野生型と比べ
て,およそ2
5倍程度,IAP の発現が上昇している.
WT:野生型, DKO:ダブルノックアウト, TKO:トリプルノックアウト,
3
3#6TG+:3
3#6に外来性 ESET を発現させた株,MEF:mouse embryonic fibroblast,OHT:タモキシフェン
2
4
3
2
0
1
0年 3月〕
図5 ESET の局在と H3K9me3の状態
a)ESET の局在と H3K9me3の状態
b)Bensterin らの H3K9me3の ChIP-Seq の結果(文献9
0)より転載)
H3K9me3:H3K9のトリメチル化
必須ではないことが分かった.
DNA のメチル化についても調べたところ,ESET を除
7―3. なぜ ES 細胞で ESET がプロウイルスの発現抑制に
関与するのか
去した ES 細胞では MLV と MusD における DNA のメチル
以上の結果より,ESET が ES 細胞でプロウイルスの発
化レベルが低下していたが,IAP については野生型とほと
現抑制に寄与していることが明らかとなったが,ESET が
んど変わらないレベルにあることが確認された.
幹細胞においてだけプロウイルスの転写抑制機構に寄与す
ることにどのような意味があるのかは不明なままである.
一つの可能性として,生殖細胞へ分化する可能性のある多
2
4
4
〔生化学 第8
2巻 第3号
図6 ESET によるプロウイルスの発現抑制機構
能性細胞において,プロウイルスが転写された後に,別の
かっている.抑制機構を使い分けることにどのような意味
領域へ挿入されることを防ぐことが考えられる.これはつ
があるのか,また他のレトロトランスポゾンの抑制機構は
まり,生殖系列細胞においてウイルスが増幅されて,世代
存在しないのか,今後の報告が期待される.
を越えて遺伝してしまうことを防ぐためである.また,発
生初期の細胞では DNA の脱メチル化が起こっていると考
謝辞
えられており,IAP の DNA のメチル化レベルも一時期的
本稿で取り上げた筆者らの研究報告は The University of
に低下することが確認されている92∼94).以上のことから,
British Columbia の Matthew Lorincz 博士のグループとの共
ESET は DNA のメチル化レベルが不安定な状態にある細
同研究によるものであり,この場を借りてお礼申し上げま
胞で ERV の転写抑制のバックアップ制御として機能して
す.
いる可能性も考えられる(図6)
.
8. お
わ
り
に
本稿では主に哺乳類におけるエピジェネティックなレト
ロトランスポゾンの抑制機構について述べた.しかしなが
ら,これまでの研究で種によってレトロトランスポゾンの
抑制機構がかなり異なることが明らかになっている.ま
た,マウスには現在も転移している ERV が存在している
と考えられているが95),ヒトにおいてはほぼ全ての ERV
が不活化していると考えられており96),なぜこのように種
によってレトロトランスポゾンの抑制機構に違いが生まれ
たのかはほとんど分かっていない.
さらに,マウスでは現在確認さ れ て い る だ け で も,
DNA のメチル化,ヒストン化学修飾,non-coding RNA と
複数の抑制機構を細胞種によって使い分けていることが分
文
献
1)Waterston, R.H., Lindblad-Toh, K., Birney, E., Rogers, J.,
Abril, J.F. et al .(2
0
0
2)Nature,4
2
0,5
2
0.
2)Stocking, C. & Kozak, C.A.(2
0
0
8)Cell. Mol. Life Sci., 6
5,
3
3
8
3.
3)Goodier, J.L. & Kazazian, H.H., Jr.(2
0
0
8)Cell ,1
3
5,2
3.
4)Gogvadze, E. & Buzdin, A.(2
0
0
9)Cell. Mol. Life Sci., 6
6,
3
7
2
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5)Suzuki, S., Ono, R., Narita, T., Pask, A.J., Shaw, G., Wang, C.,
Kohda, T., Alsop, A.E., Marshall Graves, J.A., Kohara, Y.,
Ishino, F., Renfree, M.B., & Kaneko-Ishino, T.,(2
0
0
7)PLoS
Genet.,3, e5
5.
6)Callahan, R. & Smith, G.H.(2
0
0
0)Oncogene,1
9,9
9
2.
7)Howard, G., Eiges, R., Gaudet, F., Jaenisch, R., & Eden, A.
(2
0
0
8)Oncogene,2
7,4
0
4.
8)Eiden, M.V., Farrell, K., & Wilson, C.A.(1
9
9
4)J. Virol ., 6
8,
2
0
1
0年 3月〕
6
2
6.
9)Cheng, X. & Blumenthal, R.M.(2
0
0
8)Structure,1
6,3
4
1.
1
0)Lei, H., Oh, S.P., Okano, M., Juttermann, R., Goss, K.A.,
Jaenisch, R., & Li, E.(1
9
9
6)Development,1
2
2,3
1
9
5.
1
1)Okano, M., Xie, S., & Li, E.(1
9
9
8)Nat. Genet.,1
9,2
1
9.
1
2)Jeltsch, A.(2
0
0
6)Epigenetics,1,6
3.
1
3)Bostick, M., Kim, J.K., Esteve, P.O., Clark, A., Pradhan, S., &
Jacobsen, S.E.(2
0
0
7)Science,3
1
7,1
7
6
0.
1
4)Sharif, J., Muto, M., Takebayashi, S., Suetake, I., Iwamatsu,
A., Endo, T.A., Shinga, J., Mizutani-Koseki, Y., Toyoda, T.,
Okamura, K., Tajima, S., Mitsuya, K., Okano, M., & Koseki,
H.(2
0
0
7)Nature,4
5
0,9
0
8.
1
5)Arita, K., Ariyoshi, M., Tochio, H., Nakamura, Y., & Shirakawa, M.(2
0
0
8)Nature,4
5
5,8
1
8.
1
6)Avvakumov, G.V., Walker, J.R., Xue, S., Li, Y., Duan, S.,
Bronner, C., Arrowsmith, C.H., & Dhe-Paganon, S.(2
0
0
8)
Nature,4
5
5,8
2
2.
1
7)Hashimoto, H., Horton, J.R., Zhang, X., Bostick, M., Jacobsen,
S.E., & Cheng, X.(2
0
0
8)Nature,4
5
5,8
2
6.
1
8)Goll, M.G., Kirpekar, F., Maggert, K.A., Yoder, J.A., Hsieh, C.
L., Zhang, X., Golic, K.G., Jacobsen, S.E., & Bestor, T.H.
(2
0
0
6)Science,3
1
1,3
9
5.
1
9)Jurkowski, T.P., Meusburger, M., Phalke, S., Helm, M., Nellen,
W., Reuter, G., & Jeltsch, A.(2
0
0
8)RNA,1
4,1
6
6
3.
2
0)Rai, K., Chidester, S., Zavala, C.V., Manos, E.J., James, S.R.,
Karpf, A.R., Jones, D.A., & Cairns, B.R.(2
0
0
7)Genes Dev.,
2
1,2
6
1.
2
1)Guy, J., Hendrich, B., Holmes, M., Martin, J.E., & Bird, A.
(2
0
0
1)Nat. Genet.,2
7,3
2
2.
2
2)Hendrich, B., Guy, J., Ramsahoye, B., Wilson, V.A., & Bird,
A.(2
0
0
1)Genes Dev.,1
5,7
1
0.
2
3)Martin Caballero, I., Hansen, J., Leaford, D., Pollard, S., &
Hendrich, B.D.(2
0
0
9)PLoS One,4, e4
3
1
5.
2
4)Strahl, B.D. & Allis, C.D.(2
0
0
0)Nature,4
0
3,4
1.
2
5)Turner, B.M.(2
0
0
0)Bioessays,2
2,8
3
6.
2
6)Rea, S., Eisenhaber, F., O’
Carroll, D., Strahl, B.D., Sun, Z.W.,
Schmid, M., Opravil, S., Mechtler, K., Ponting, C.P., Allis, C.
D., & Jenuwein, T.(2
0
0
0)Nature,4
0
6,5
9
3.
2
7)Bernstein, B.E., Kamal, M., Lindblad-Toh, K., Bekiranov, S.,
Bailey, D.K., Huebert, D.J., McMahon, S., Karlsson, E.K., Kulbokas, E.J., 3rd, Gingeras, T.R., Schreiber, S.L., & Lander, E.
S.(2
0
0
5)Cell ,1
2
0,1
6
9.
2
8)Vermeulen, M., Mulder, K.W., Denissov, S., Pijnappel, W.W.,
van Schaik, F.M., Varier, R.A., Baltissen, M.P., Stunnenberg,
H.G., Mann, M., & Timmers, H.T.(2
0
0
7)Cell ,1
3
1,5
8.
2
9)Francis, N.J., Kingston, R.E., & Woodcock, C.L.(2
0
0
4)Science,3
0
6,1
5
7
4.
3
0)Plath, K., Fang, J., Mlynarczyk-Evans, S.K., Cao, R., Worringer, K.A., Wang, H., de la Cruz, C.C., Otte, A.P., Panning,
B., & Zhang, Y.(2
0
0
3)Science,3
0
0,1
3
1.
3
1)Bernstein, B.E., Mikkelsen, T.S., Xie, X., Kamal, M., Huebert,
D.J., Cuff, J., Fry, B., Meissner, A., Wernig, M., Plath, K.,
Jaenisch, R., Wagschal, A., Feil, R., Schreiber, S.L., Lander, E.
S.(2
0
0
6)Cell ,1
2
5,3
1
5.
3
2)Shi, Y., Lan, F., Matson, C., Mulligan, P., Whetstine, J.R.,
Cole, P.A., & Casero, R.A.(2
0
0
4)Cell ,1
1
9,9
4
1.
3
3)Tsukada, Y., Fang, J., Erdjument-Bromage, H., Warren, M.E.,
Borchers, C.H., Tempst, P., & Zhang, Y.(2
0
0
6)Nature, 4
3
9,
8
1
1.
3
4)Duncan, E.M., Muratore-Schroeder, T.L., Cook, R.G., Garcia,
B.A., Shabanowitz, J., Hunt, D.F., & Allis, C.D.(2
0
0
8)Cell ,
1
3
5,2
8
4.
2
4
5
3
5)Tachibana, M., Sugimoto, K., Nozaki, M., Ueda, J., Ohta, T.,
Ohki, M., Fukuda, M., Takeda, N., Niida, H., Kato, H., &
Shinkai, Y.(2
0
0
2)Genes Dev.,1
6,1
7
7
9.
3
6)Lachner, M., O’
Carroll, D., Rea, S., Mechtler, K., & Jenuwein,
T.(2
0
0
1)Nature,4
1
0,1
1
6.
3
7)Nakayama, J., Rice, J.C., Strahl, B.D., Allis, C.D., & Grewal,
S.I.(2
0
0
1)Science,2
9
2,1
1
0.
3
8)Fischle, W., Tseng, B.S., Dormann, H.L., Ueberheide, B.M.,
Garcia, B.A., Shabanowitz, J., Hunt, D.F., Funabiki, H., & Allis, C.D.(2
0
0
5)Nature,4
3
8,1
1
1
6.
3
9)Tamaru, H. & Selker, E.U.(2
0
0
1)Nature,4
1
4,2
7
7.
4
0)Lehnertz, B., Ueda, Y., Derijck, A.A., Braunschweig, U.,
Perez-Burgos, L., Kubicek, S., Chen, T., Li, E., Jenuwein, T.,
& Peters, A.H.(2
0
0
3)Curr. Biol .,1
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1
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2.
4
1)Dong, K.B., Maksakova, I.A., Mohn, F., Leung, D., Appanah,
R., Lee, S., Yang, H.W., Lam, L.L., Mager, D.L., Schubeler,
D., Tachibana, M., Shinkai, Y., Lorincz, M.C.(2
0
0
8)EMBO
J .,2
7,2
6
9
1.
4
2)Fire, A., Xu, S., Montgomery, M.K., Kostas, S.A., Driver, S.E.,
Mello, C.C.(1
9
9
8)Nature,3
9
1,8
0
6.
4
3)Hammond, S.M., Bernstein, E., Beach, D., Hannon, G.J.
(2
0
0
0)Nature,4
0
4,2
9
3.
4
4)Hammond, S.M., Boettcher, S., Caudy, A.A., Kobayashi, R.,
Hannon, G.J.(2
0
0
1)Science,2
9
3,1
1
4
6.
4
5)Sadaie, M., Iida, T., Urano, T., & Nakayama, J.(2
0
0
4)EMBO
J .,2
3,3
8
2
5.
4
6)Pal-Bhadra, M., Leibovitch, B.A., Gandhi, S.G., Rao, M.,
Bhadra, U., Birchler, J.A., & Elgin, S.C.(2
0
0
4)Science, 3
0
3,
6
6
9.
4
7)Brower-Toland, B., Findley, S.D., Jiang, L., Liu, L., Yin, H.,
Dus, M., Zhou, P., Elgin, S.C., & Lin, H.(2
0
0
7)Genes Dev.,
2
1,2
3
0
0.
4
8)Nagano, T., Mitchell, J.A., Sanz, L.A., Pauler, F.M., FergusonSmith, A.C., Feil, R., & Fraser, P.(2
0
0
8)Science,3
2
2,1
7
1
7.
4
9)Walsh, C.P., Chaillet, J.R., & Bestor, T.H.(1
9
9
8)Nat. Genet.,
2
0,1
1
6.
5
0)Okano, M., Bell, D.W., Haber, D.A., & Li, E.(1
9
9
9)Cell ,
9
9,2
4
7.
5
1)Chen, T., Ueda, Y., Dodge, J.E., Wang, Z., & Li, E.(2
0
0
3)
Mol. Cell Biol .,2
3,5
5
9
4.
5
2)Chedin, F., Lieber, M.R., & Hsieh, C.L.(2
0
0
2)Proc. Natl.
Acad. Sci. U.S.A.,9
9,1
6
9
1
6.
5
3)Gowher, H., Liebert, K., Hermann, A., Xu, G., & Jeltsch, A.
(2
0
0
5)J. Biol. Chem.,2
8
0,1
3
3
4
1.
5
4)Ooi, S.K., Qiu, C., Bernstein, E., Li, K., Jia, D., Yang, Z.,
Erdjument-Bromage, H., Tempst, P., Lin, S.P., Allis, C.D.,
Cheng, X., & Bestor, T.H.(2
0
0
7)Nature,4
4
8,7
1
4.
5
5)Bourćhis, D. & Bestor, T.H.(2
0
0
4)Nature,4
3
1,9
6.
5
6)Bourćhis, D., Xu, G.L., Lin, C.S., Bollman, B., & Bestor, T.H.
(2
0
0
1)Science,2
9
4,2
5
3
6.
5
7)Phalke, S., Nickel, O., Walluscheck, D., Hortig, F., Onorati, M.
C., & Reuter, G.(2
0
0
9)Nat. Genet.,4
1,6
9
6.
5
8)Svoboda, P., Stein, P., Anger, M., Bernstein, E., Hannon, G.J.,
& Schultz, R.M.(2
0
0
4)Dev. Biol .,2
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9,2
7
6.
5
9)Murchison, E.P., Stein, P., Xuan, Z., Pan, H., Zhang, M.Q.,
Schultz, R.M., & Hannon, G.J.(2
0
0
7)Genes Dev.,2
1,6
8
2.
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0)Aravin, A.A., Lagos-Quintana, M., Yalcin, A., Zavolan, M.,
Marks, D., Snyder, B., Gaasterland, T., Meyer, J., & Tuschl, T.
(2
0
0
3)Dev. Cell ,5,3
3
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6
1)Girard, A., Sachidanandam, R., Hannon, G.J., & Carmell, M.A.
(2
0
0
6)Nature,4
4
2,1
9
9.
6
2)Aravin, A.A., Hannon, G.J., & Brennecke, J.(2
0
0
7)Science,
2
4
6
3
1
8,7
6
1.
6
3)Watanabe, T., Takeda, A., Tsukiyama, T., Mise, K., Okuno, T.,
Sasaki, H., Minami, N., & Imai, H.(2
0
0
6)Genes Dev., 2
0,
1
7
3
2.
6
4)Grivna, S.T., Beyret, E., Wang, Z., & Lin, H.(2
0
0
6)Genes
Dev.,2
0,1
7
0
9.
6
5)Sarot, E., Payen-Groschene, G., Bucheton, A., & Pelisson, A.
(2
0
0
4)Genetics,1
6
6,1
3
1
3.
6
6)Brennecke, J., Aravin, A.A., Stark, A., Dus, M., Kellis, M., Sachidanandam, R., & Hannon, G.J.(2
0
0
7)Cell ,1
2
8,1
0
8
9.
6
7)Kuramochi-Miyagawa, S., Watanabe, T., Gotoh, K., Totoki, Y.,
Toyoda, A., Ikawa, M., Asada, N., Kojima, K., Yamaguchi, Y.,
Ijiri, T.W., Hata, K., Li, E., Matsuda, Y., Kimura, T., Okabe,
M., Sakaki, Y., Sasaki, H., & Nakano, T.(2
0
0
8)Genes Dev.,
2
2,9
0
8.
6
8)Reuter, M., Chuma, S., Tanaka, T., Franz, T., Stark, A., & Pillai, R.S.(2
0
0
9)Nat. Struct. Mol. Biol .,1
6,6
3
9.
6
9)Peterson, C.L. & Workman, J.L.(2
0
0
0)Curr. Opin. Genet.
Dev.,1
0,1
8
7.
7
0)Geiman, T.M., Tessarollo, L., Anver, M.R., Kopp, J.B., Ward,
J.M., & Muegge, K.(2
0
0
1)Biochim. Biophys. Acta, 1
5
2
6,
2
1
1.
7
1)Yan, Q., Huang, J., Fan, T., Zhu, H., & Muegge, K.(2
0
0
3)
EMBO J .,2
2,5
1
5
4.
7
2)Huang, J., Fan, T., Yan, Q., Zhu, H., Fox, S., Issaq, H.J., Best,
L., Gangi, L., Munroe, D., & Muegge, K.(2
0
0
4)Nucleic Acids Res.,3
2,5
0
1
9.
7
3)Dennis, K., Fan, T., Geiman, T., Yan, Q., & Muegge, K.
(2
0
0
1)Genes Dev.,1
5,2
9
4
0.
7
4)Vongs, A., Kakutani, T., Martienssen, R.A., & Richards, E.J.
(1
9
9
3)Science,2
6
0,1
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2
6.
7
5)Tsukahara, S., Kobayashi, A., Kawabe, A., Mathieu, O., Miura,
A., & Kakutani, T.(2
0
0
9)Nature,4
6
1,4
2
3.
7
6)Niwa, O., Yokota, Y., Ishida, H., & Sugahara, T.(1
9
8
3)Cell ,
3
2,1
1
0
5.
7
7)Teich, N.M., Weiss, R.A., Martin, G.R., & Lowy, D.R.(1
9
7
7)
Cell ,1
2,9
7
3.
7
8)Linney, E., Davis, B., Overhauser, J., Chao, E., & Fan, H.
〔生化学 第8
2巻 第3号
(1
9
8
4)Nature,3
0
8,4
7
0.
7
9)Wolf, D. & Goff, S.P.(2
0
0
7)Cell ,1
3
1,4
6.
8
0)Wolf, D., Cammas, F., Losson, R., & Goff, S.P.(2
0
0
8)J. Virol .,8
2,4
6
7
5.
8
1)Wolf, D. & Goff, S.P.(2
0
0
9)Nature,4
5
8,1
2
0
1.
8
2)Yang, L., Xia, L., Wu, D.Y., Wang, H., Chansky, H.A.,
Schubach, W.H., Hickstein, D.D., & Zhang, Y.(2
0
0
2)Oncogene,2
1,1
4
8.
8
3)Schultz, D.C., Ayyanathan, K., Negorev, D., Maul, G.G.,
Rauscher, F.J.,3rd(2
0
0
2)Genes Dev.,1
6,9
1
9.
8
4)Sarraf, S.A. & Stancheva, I.(2
0
0
4)Mol. Cell ,1
5,5
9
5.
8
5)Dodge, J.E., Kang, Y.K., Beppu, H., Lei, H., & Li, E.(2
0
0
4)
Mol. Cell Biol .,2
4,2
4
7
8.
8
6)Wang, H., An, W., Cao, R., Xia, L., Erdjument-Bromage, H.,
Chatton, B., Tempst, P., Roeder, R.G., & Zhang, Y.(2
0
0
3)
Mol. Cell ,1
2,4
7
5.
8
7)Yeap, L.S., Hayashi, K., & Surani, M.A.(2
0
0
9)Epigenetics
Chromatin,2,1
2.
8
8)Yuan, P., Han, J., Guo, G., Orlov, Y.L., Huss, M., Loh, Y.H.,
Yaw, L.P., Robson, P., Lim, B., & Ng, H.H.(2
0
0
9)Genes
Dev.,2
3,2
5
0
7.
8
9)Bilodeau, S., Kagey, M.H., Frampton, G.M., Rahl, P.B., &
Young, R.A.(2
0
0
9)Genes Dev.,2
3,2
4
8
4.
9
0)Mikkelsen, T.S., Ku, M., Jaffe, D.B., Issac, B., Lieberman, E.
et al .(2
0
0
7)Nature,4
4
8,5
5
3.
9
1)Schotta, G., Lachner, M., Sarma, K., Ebert, A., Sengupta, R.,
Reuter, G., Reinberg, D., & Jenuwein, T.(2
0
0
4)Genes Dev.,
1
8,1
2
5
1.
9
2)Kim, S.H., Kang, Y.K., Koo, D.B., Kang, M.J., Moon, S.J.,
Lee, K.K., & Han, Y.M.(2
0
0
4)Biochem. Biophys. Res. Commun.,3
2
4,5
8.
9
3)Lane, N., Dean, W., Erhardt, S., Hajkova, P., Surani, A., Walter, J., & Reik, W.(2
0
0
3)Genesis,3
5,8
8.
9
4)Reik, W.(2
0
0
7)Nature,4
4
7,4
2
5.
9
5)Dewannieux, M., Dupressoir, A., Harper, F., Pierron, G., &
Heidmann, T.(2
0
0
4)Nat. Genet.,3
6,5
3
4.
9
6)Stoye, J.P.(2
0
0
1)Curr. Biol .,1
1, R9
1
4.
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