...

高効率ビル用マルチエアコン 「スーパーモジュールマルチ」

by user

on
Category: Documents
24

views

Report

Comments

Transcript

高効率ビル用マルチエアコン 「スーパーモジュールマルチ」
日本機械学会誌 2005.7 Vol.108 No.
1040
565
高効率ビル用マルチエアコン
「スーパーモジュールマルチ」
1. はじめに
近年,空調機業界では,オゾン層保
護のため,従来の HCFC(Hydro Chloro Fluoro Carbons)冷 媒 か ら オ ゾ ン
率化を実現した.
3.1 要素部品の高効率化
図 2 に室外機の要素部品と開発内容
を示す.
室内機
層を破壊しない HFC 冷媒への転換が
① オゾン層破壊係数ゼロかつ省エ
進められている.また同時に,地球温
ネ効果最大の新冷媒 R410A を採用した.
暖化防止の観点から業務用エアコンに
②
コンプレッサに新開発の高効率
対しても改正省エネ法によるトップラ
DC モータを搭載し,また圧縮効率も
ンナー方式が導入され,高効率化商品
改善した.
が強く求められている.
業務用エアコンの分野では,比較的
③
と高速演算の RISC を搭載した.
能力の小さい店舗用エアコンはここ数
④ 室外送風機でファン形状の改
年の間に高効率化が大きく進んでいる
善,ファンの大口径化とベルマウス形
が,能力の大きいビル用のマルチエア
状の改善を行った.
コンの高効率化はあまり進んでいない
のが現状である.
しかしながら,ビル用のマルチエア
⑤
ファンモータに新開発の高効率
⑥
空気と冷媒の熱交換器に新開発
の高熱伝達率の螺旋溝伝熱管と過冷却
全体の約30%とかなりのウエイトを占め
パスを採用した.
ており,ビル用マルチエアコンの効率は
3.2 システムの高効率化,信頼性確保
このような背景のもとに,当社は,
および高調波対策
ム(図 3)を採用し,部分負荷効率を
率ビル用マルチエアコン「スーパーモ
大幅に改善した.
2. 開発機の概要
図 1 にスーパーモジュールマルチの
外観とシステム構成を示す.室外機の
開発のコンプレッサの均油技術を採用
3) 高調波低減技術として新開発の
10,12 馬力の 5 機種を最大 4 台組み合
て準備した.
室外機の冷暖房平均のエネルギー消
⑥ 過冷却,高効率
室外熱交換器
② 高効率DCモータ
駆動ツインロータリ
コンプレッサ
(2台)
① 冷媒:R410A
図2 室外機の要素部品と開発内容
高効率インバータ
高効率DCモータ
駆動ツインロータリ
コンプレッサ
図3 AI デュアルインバータシステム
した.
クリーンコンバータをオプションとし
システム構成ができる.
⑤ 高効率DC
ファンモータ
③ 高効率インバータ
(2台)
2) 室外機内と室外機間における新
モ ジ ュ ー ル 方 式 を 採 用 し,5,6,8,
わせることにより,5 ∼ 48 馬力までの
④ 大口径新形状
プロペラファン
④ 高性能新ベルマウス
1) AI デュアルインバータシステ
東芝キヤリア(株)殿と共同で,高効
ジュールマルチ」を開発した.
図1 スーパーモジュールマルチの外観と
システム構成
DC モータを搭載した.
コンの消費電力量は,業務用エアコン
エネルギー消費に大きな影響を与える.
室外機
インバータに低損失 IGBT 素子
3.3 COP
表 1 に今回開発した機種と従来機種
表1 開発機と従来機の COP 比較
室外機冷暖平均 COP
省エネ法基準
達成率
開発機 従来機 改善率
開発機
8 馬力機
4.1
2.5
64%
130%
10 馬力機
3.8
2.44
56%
121%
20 馬力機
3.65
2.63
39%
−
との COP の比較を示す.
費効率(Coefficient of Performance;
従 来 機 種 と 比 較 し て,冷 暖 平 均
COP:冷・暖房能力を消費電力で除
COP(室外機単独)は 8 馬力で 64%,
した値)は,ビル用マルチエアコン分
10 馬力で 56%,20 馬力で 39% と大幅
野トップレベルの 3.80(10 馬力機:1
な向上を実現した.これは,2007 年
なお,この「スーパーモジュールマ
馬力は 2.8kW の冷房能力に相当)を
から施行される改正省エネ法基準値
ル チ(MMY-MAP1401H ∼ MMY-AP
達成しており,従来機種(東芝キヤリ
(3.07:10 馬力以下が対象)に対し,8
1350H の 28 機種)
」は(財)省エネル
ア殿製)に比べ 1.6 倍もの効率向上を
馬力で 130%,10 馬力で 121% と大幅
ギーセンター主催の平成 15 年度省エ
実現した.
にクリアした.
ネ大賞資源エネルギー庁長官賞を受賞
3. 開発機に採用した技術開発
4. おわりに
した.
開発機は以下の技術開発により高効
開発機は,2003 年 10 月に東芝キヤ
― 33 ―
リア(株)殿より発売した.
(原稿受付 2005年3月22日)
〔渡邉澂雄,永松克明 中部電力(株)〕
Fly UP