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中国におけるエネルギー需要及び 輸送状況に関する調査

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中国におけるエネルギー需要及び 輸送状況に関する調査
中国におけるエネルギー需要及び
輸送状況に関する調査
2007年3月
社団法人 日
本 舶 用 工 業 会
刊行によせて
当工業会では、我が国の造船関係事業の振興に資するために、競艇公益資金による日
本財団の助成を受けて、「造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業」を実施してお
ります。その一環としてジェトロ船舶関係海外事務所を拠点として海外の海事関係の情
報収集を実施し、収集した情報の有効活用を図るため各種調査報告書を作成しておりま
す。
本書は、当工業会が日本貿易振興機構と共同で運営しているジェトロ・上海・センタ
ー舶用機械部にて実施した「中国におけるエネルギー需要及び輸送状況に関する調査報
告書」の結果をとりまとめたものです。
関係各位に有効にご活用いただければ幸いです。
2007 年 3 月
社団法人
日 本 舶 用 工 業 会
は
じ
め
に
近年の国際海上輸送量の急激な増加は中国向けの資源エネルギーの伸びに支えられ
ていると言っても過言ではない。2006 年の中国の粗鋼生産量は 4 億 1880 万トン(前
年比約 18%増)と引き続き大きく伸び、これに伴い鉄鉱石の輸入量も約 3 億 2600 万ト
ン(前年比約 18%増)と過去最高となった。また、原油の輸入も 2006 年は 1 億 4500
万トン(前年比約 15%増)まで増加し、中国向け輸送の海運市場における影響度はま
すます大きくなっている。
一方、国民一人あたりのエネルギー消費量について見れば、世界平均と比べても約 3
分の 2 レベルにとどまっており、エネルギー利用効率の向上(即ち、単位 GDP あたり
の消費エネルギー量の抑制)という課題はあるものの、中国経済の成長に伴う上昇の余
地を十分に残している。
このような資源エネルギー需要の堅調な伸びを支える中国の経済成長に死角はない
であろうか。経済成長の牽引役は依然として固定資産投資であり、2008 年の北京オリ
ンピック、2010 年の上海万博までは、関連施設の整備、開催に合わせて進められる交
通インフラ整備等の大規模な建設投資に支えられて、現在の成長ペースが持続するとの
見方も多いが、都市経済と地方経済が全く独立して存在しているかのような大国におい
て、オリンピック、万博関連の需要が実際にどの程度の波及効果を及ぼすかは未知数で
あり、持続的な経済成長を維持するために一般消費の伸びが重要な要因であることは、
多くの経済専門家が指摘しているところである。
こうした視点で、中国上海の市民生活を見た場合、富の偏在と、その消費構造は多分
に偏っていると言わざるを得ない。大学を卒業した学生の 3 割程度が就職口がなかなか
見つからない、また見つかっても十分な待遇を享受できないという現実は、日本の高度
成長期の状況とは大分異なっている。こうした状況が改善されない限り、過度の建設投
資は投資バブルにつながるおそれが高く、高度経済成長路線の持続は早晩行き詰まる可
能性が高い。ただし、日本と比べて一般に中国国民の格差に対する許容度は高く、現状
ではこれが直ちに政治的な安定を脅かすことにつながる可能性は低いと思われる。
中国経済にとっては、今後、現在の急成長路線から安定成長局面にいかに円滑に移行
していくかが課題であり、そのためには、社会的なセーフティーネットの整備(失業者
対策、貧困層対策)、富(=税金)の再分配制度の整備等が課題となるであろう。中国
の政治・経済情勢から、当分、目が離せない状況が続く。
なお、本レポートは上海華鐘コンサルタントサービス有限公司に各種データの収集と
作成等を委託して作成したものであることを付記する。
ジェトロ上海センター
舶用機械部長
赤
星
貞
夫
目
次
1.中国経済の発展状況
1-1 中国経済の発展の現状
1-1-1 経済発展速度 ····························································· 1
1-1-2 産業構造と工業の発展 ···················································· 1
1-1-3 固定資産投資 ····························································
6
1-1-4 財政収支 ································································
7
1-1-5 市民生活 ································································
7
1-1-6 対外経済貿易 ····························································· 9
1-2 中国経済発展の前途 ·························································· 11
1-3 水上輸送業 ·································································· 12
2.中国におけるエネルギー消費状況
2-1 エネルギー消費総量及び一人当たりのエネルギー消費量 ······················ 22
2-2 中国のエネルギー消費構造
2-2-1 現状 ···································································· 26
2-2-2 中国におけるエネルギー構造の変化 ······································ 26
2-3 中国における各産業部門のエネルギー消費 ··································· 29
2-4 四大エネルギーの消費状況
2-4-1 石油 ···································································· 31
2-4-2 石炭 ···································································· 34
2-4-3 天然ガス ································································ 37
2-4-4 電力 ···································································· 40
3.中国四大資源輸入輸送の現状と発展動向
3-1 原油
3-1-1 中国における原油の輸出入量 ············································ 43
3-1-2 中国における原油の輸入元国/地域 ······································· 46
3-1-3 輸入原油の輸送状況 ····················································· 49
3-1-4 輸入原油の輸送動向予測 ················································· 59
3-2 鉄鉱石
3-2-1 中国における鉄鉱石の輸出入量 ·········································· 67
3-2-2 中国における鉄鉱石の輸入元 ············································ 70
3-2-3 輸入鉄鉱石の輸送状況 ··················································· 73
3-2-4 輸入鉄鉱石の輸送動向予測 ·············································· 81
3-3 石炭
3-3-1 中国における石炭の輸出入量 ············································ 85
3-3-2 中国における石炭の輸入元 ·············································· 87
3-3-3 輸入石炭の輸送状況 ····················································· 92
3-3-4 輸入石炭の輸送動向予測 ················································· 98
3-4 液化天然ガス(LNG)
3-4-1 中国における液化天然ガス(LNG)の輸出入量 ····························· 101
3-4-2 中国における液化天然ガス(LNG)の輸入元 ······························· 106
3-4-3 輸入液化天然ガス(LNG)の輸送状況 ······································ 108
4.中国政府の水運業に関する計画、政策
4-1 水運業の発展計画 ··························································· 112
4-2 水運業の発展関連政策 ······················································· 120
5.中国大型輸送企業の発展状況とその最新動向
5-1 中国遠洋運輸集団(COSCO)
5-1-1 企業概況 ································································ 128
5-1-2 船隊状況 ································································ 129
5-1-3 発展計画と最新動向 ····················································· 130
5-2 中国対外貿易運輸集団(SINOTRANS)
5-2-1 企業概況 ································································ 133
5-2-2 船隊状況 ································································ 134
5-2-3 発展計画と最新動向 ····················································· 134
5-3 中国海運集団
5-3-1 企業概況 ································································ 136
5-3-2 船隊状況 ································································ 138
5-3-3 発展計画と最新動向 ····················································· 141
5-4 中国長江航運集団
5-4-1 企業概況 ································································ 144
5-4-2 船隊状況 ································································ 145
5-4-3 発展計画と最新動向 ····················································· 147
6.調査結果のまとめ
6-1 中国四大資源国際貿易の海運概況 ············································ 149
6-2 中国国際水上輸送船隊の状況 ················································ 150
関連資料:
1:関連産業の発展―船舶産業 ····················································· 153
2:中国政府の船舶産業に関する計画及び関連政策 ································· 160
1.
中国経済の発展状況
1-1 中国経済の発展の現状
1970 年代末、改革開放政策を実施して以来、中国経済は急速に発展し、世界が注目
する経済的成就を得ている。本章では、中国の経済発展速度、産業構造及び工業発展、
固定資産投資並びに財政収入等の幾つかの分野における中国経済の発展の現状を報告
する。
1-1-1 経済発展速度
ここ 10 年来、中国の国内総生産値(GDP)は常に速い成長速度を維持しており、不変
価格計算(ある一定期間における同類製品の平均価格を固定価格として、各期間の製品
の価値を計算。目的は各期間の価格変動の影響を消去して、各期間の前後の期間、地区、
計画と実際のデータの間の指標的比較可能性を保証すること。)によれば、「第九次五ヶ
年計画(以下「九五」という。)」期間(1996 年~2000 年)における中国の GDP 年平均
成長率は、8.6%であり、「第十次五ヶ年計画(以下「十五」という。
)」期間(2001 年~
2005 年)においては、9.5%を達成した。2005 年の中国 GDP 規模は、18 兆 3,085 億元
である。2006 年は、「第十一次五ヶ年計画(以下「十一五」という。)」期間(2006 年~
2010 年)の最初の年であり、上半期の国民経済は依然として安定して成長しており、1
~6 月の GDP は、9 兆 1,443 億元に達し、同期比では、10.9%の増であり、その成長
速度は、昨年同期比で、0.9 ポイントの増である。
GDP 総量が拡大すると同時に、一人当たりの GDP 水準も常に向上している。物価
要因を排除しても「九五」期間(1996 年~2000 年)の年平均成長率は、7.6%であり、「十
五」期間(2001 年~2005 年)では、8.8%に達した。
2005 年の一人当たりの平均 GDP は、
14,009 元である。
表 1-1 1996 年~2006 年における中国の GDP と一人当たりの平均 GDP
項目
国内総生産値(GDP)
一人当たりの平均 GDP
年度
金額(億元)
成長率(%)
金額(元)
成長率(%)
1996 年
71,177
10.0
5,846
8.9
1997 年
78,973
9.3
6,420
8.2
1998 年
84,402
7.8
6,796
6.8
1999 年
89,677
7.6
7,159
6.7
2000 年
99,215
8.4
7,858
7.6
2001 年
109,655
8.3
8,622
7.5
2002 年
120,333
9.1
9,398
8.4
2003 年
135,823
10.0
10,542
9.3
2004 年
159,878
10.1
12,336
9.4
2005 年
183,085
10.2
14,009
9.3
91,443
10.9
2006 年(上半期)
-1-
出典:中国統計年鑑、2006 年上半期中国経済安定急速成長(2006.7)等に基づき作成
注:成長率は、不変価格にて計算されている。
GDP(億元)
成長率(%)
200,000
12
180,000
160,000
10
140,000
120,000
8
100,000
6
80,000
60,000
4
40,000
20,000
2
0
0
1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
出典:表 1-1 のデータに基づき作成
図 1-1 1996 年~2005 年における中国の GDP の成長の推移
一人当たりの平均GDP(元)
成長率(%)
16,000
10
14,000
9
8
12,000
10,000
7
6
8,000
5
6,000
4
3
4,000
2,000
2
1
0
0
1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
出典:表 1-1 のデータに基づき作成
図 1-2 1996 年~2005 年における中国の一人当たりの平均 GDP の成長の推移
-2-
1-1-2 産業構造と工業の発展
1)産業構造
ここ 10 年来、中国の産業構造は静かに変化している。第一次産業の国民経済に占め
る比率は徐々に低下し、これと同時に第三次産業の占める比率は常に拡大しているが、
第二次産業の占める比率の変化は大きくない。「十五」期間(2001 年~2005 年)末の 2005
年と「八五」期間(1991 年~1995 年)末の 1995 年を比較すれば、農業の増加値(増加値:
常住単位生産過程において創造された新規増設値及び固定資産移転価値。価値の角度か
ら見れば、国民経済各部門の増加値の和が即ち国内総生産値である)の占める比率は、
19.8%から 12.6%に低下し、7.2 ポイントの減である。
サービス業の増加値については、
33.1%から 39.9%に上昇し、7.8 ポイントの増である。これらのデータから、中国の産
業構造が高度化している事が分かる。
-3-
-4-
91,443
183,085
2006 年/上
159,878
2005 年
99,215
2000 年
2004 年
89,677
1999 年
135,823
84,402
1998 年
2003 年
78,973
1997 年
120,333
71,177
1996 年
2002 年
60,794
1995 年
109,655
48,198
1994 年
2001 年
35,334
GDP
1993 年
年度
8,288
23,070
20,956
17,068
16,239
15,516
14,716
14,548
14,618
14,265
13,886
12,020
9,471
6,887
第一次
産業
46,800
87,047
73,904
62,436
53,897
49,512
45,556
41,034
39,004
37,543
33,835
28,679
22,445
16,454
第二次
産業
39,680
76,913
65,210
54,946
47,431
43,581
40,034
35,861
34,018
32,921
29,448
24,951
19,481
14,188
工業
内:
総量(億元)
36,355
72,968
65,018
56,318
50,197
44,627
38,942
34,095
30,780
27,165
23,456
20,094
16,281
11,992
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
GDP
9.1
12.6
13.1
12.6
13.5
14.1
14.8
16.2
17.3
18.1
19.5
19.8
19.7
19.5
第一次
産業
51.2
47.5
46.2
46.0
44.8
45.2
45.9
45.8
46.2
47.5
47.5
47.2
46.6
46.6
第二次
産業
43.4
42.0
40.8
40.5
39.4
39.7
40.4
40.0
40.3
41.7
41.4
41.0
40.4
40.2
工業
内:
構造(%)
7.8
5.5
5.4
5.5
5.4
5.4
5.6
5.8
5.9
5.9
6.2
6.1
6.2
6.4
建築業
39.8
39.9
40.7
41.5
41.7
40.7
39.3
38.0
36.5
34.4
33.0
33.1
33.8
33.9
第三次
産業
出典:中国統計年鑑、2006 年上半期中国経済安定急速成長(2006.7)等に基づき作成
7,120
10,134
8,694
7,491
6,465
5,932
5,522
5,172
4,986
4,622
4,387
3,729
2,965
2,266
建築業
第三次
産業
表 1-2 中国における GDP の構成
第一次産業
第二次産業
第三次産業
47.3%
2005年
2000年
40.3%
12.5%
45.9%
39.3%
47.2%
33.1%
14.8%
1995年
0%
19.8%
20%
40%
60%
80%
100%
出典:表 1-2 のデータに基づき作成
図 1-3 中国における GDP 構造の変化
2)工業発展
ここ 10 年来、中国における工業の国民経済に占める比率の変化は大きくなく、工業
増加値の GDP に占める比率は、基本的には、39.0%~43.5%の間を維持している。た
だし、その総量規模は、国民経済の発展に伴って常に拡大している。名目価格(報告期
当年の実際価格)にて計算すれば、中国における工業増加値の年平均成長率は、「九五」
期間(1996 年~2000 年)では 9.9%に達し、「十五」期間(2001 年~2005 年)では 13.7%で
ある。2006 年上半期における工業増加値は、39,680 億元であり、同期比では 17.7%の
成長率である。
工業増加値(億元)
成長率(%)
80,000
20.0
70,000
18.0
16.0
60,000
14.0
50,000
40,000
12.0
10.0
30,000
8.0
6.0
20,000
4.0
2.0
10,000
0
0.0
1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
出典:表 1-2 のデータに基づき作成
注:成長率は、名目価格に基づき計算、物価の影響は考慮していない。
図 1-4 1996 年~2005 年の中国における工業増加値及びその成長率
-5-
1-1-3 固定資産投資
「九五」期間(1996 年~2000 年)の 1997 年~2000 年の名目価格による計算によれば、
全社会固定資産投資年平均成長率は 9.5%であり、「十五」期間(2001 年~2005 年)では
21.5%に達し、
特に 2003 年~2005 年における平均成長率は更に高く 26.7%であった。
2005 年の全社会固定資産投資は 8 兆 8,604 億元であり、2004 年比では 25.7%の増で
ある。うち、
、石炭採掘及び洗炭産業への投資は前年比では 65.5%である。電力、熱力
の生産及び供給産業に対する投資の成長率は 33.7%である。石油及び天然ガス採掘産
業への投資の成長率は 29.7%である。鉄道輸送業に対する投資の成長率は 45.7%であ
る。交通運輸設備製造業に対する投資の成長率は、51.1%である。2006 年上半期、中
国における固定資産投資の成長速度は引き続き急速であり、1 月~6 月の全社会固定資
産投資は 4 兆 2,371 億元で、前年同期比では 29.8%の成長率であり、その速度は、昨
年同期比よりも 4.4 ポイントの増である。うち、、石炭採掘及び洗炭産業への投資の成
長率は 45.7%であり、石油・天然ガス採掘産業の成長率は 30.3%、電力・ガス・水の
生産及び供給産業の成長率は 17.5%、鉄道輸送業の成長率は 87.6%である。
固定資産投資の成長速度が速すぎる事は、中国経済における最も注目すべき問題の一
つである。エコノミスト達によれば、投資の急激な拡大は原材料価格の高騰を呼び、通
貨インフレを刺激する。中国政府は既に固定資産投資規模に対する規制に着手している。
総投資額(億元)
成長率(%)
100,000
27.7
26.8
90,000
25.0
80,000
70,477
70,000
16.9
60,000
13.9
50,000
30,000 22,914
20,000
88,604
20.0
55,567
13.1
15.0
43,500
10.3
8.8
40,000
10,000
30.0
25.7
29,855
10.0
37,214
24,941 28,406
5.1
32,918
5.0
0
0.0
1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
出典:中国統計年鑑
注:上記データは名目価格にて計算、物価の影響は考慮していない。
図 1-5 1996 年~2005 年における中国の固定資産投資及びその成長の推移
-6-
1-1-4 財政収支
1995 年末迄、中国政府は計画主義経済から市場主義経済への過渡的政策を実行して、
大幅に政府の経済への干渉を低減させ、中国の財政収入の GDP に占める比率を年々低
下させ、1978 年の 31.2%から 1995 年には約 10%に下がった。財政収入の GDP に占
める比率が過度に低下する事で、政府の職能の効果的発揮に影響を及ぼした。1994 年、
中国は大規模な税制改革及び対応する経済政策を実施したので、当該指標は下げ止まっ
て回復基調となり、財政収入の成長速度は GDP の成長率を上回り、政府の財力は大幅
に増強され、経済的手段を用いてマクロ経済規制を実施するのに必要となる財力を拡大
した。2005 年、中国の財政収入は 3 兆 1,649 億元であり、前年同期比では 19.9%の成
長率であり、GDP に占める比率は 17.4%であった。2005 年の財政支出は、3 兆 3,930
億元で 2,281 億元の赤字であった。
年度
表 1-3 国家財政収支総額及び成長速度
成長率(%)
財政収入
財政支出
収支差額
財政収
財政支
(億元)
(億元)
(億元)
入
出
財政収入の GDP
に占める比率
(%)
1996 年
7,408.0
7,937.6
△529.6
18.7
16.3
10.4
1997 年
8,651.1
9,233.6
△582.4
16.8
16.3
11.0
1998 年
9,876.0
10,798.2
△922.2
14.2
16.9
11.7
1999 年
11,444.1
13,187.7
△1,743.6
15.9
22.1
12.8
2000 年
13,395.2
15,886.5
△2,491.3
17.0
20.5
13.5
2001 年
16,386.0
18,902.6
△2,516.5
22.3
19.0
14.9
2002 年
18,903.6
22,053.2
△3,149.5
15.4
16.7
15.7
2003 年
21,715.3
24,650.0
△2,934.7
14.9
11.8
16.0
2004 年
26,396.5
28,486.9
△2,090.4
21.6
15.6
16.5
2005 年
31,649.29
33902.28
△2,280.99
19.8
19.1
17.3
出典:中国統計年鑑 2005 及び 2005 年中央決算に関する報告(中国財政部)
注:財政収入の GDP に占める比率は、修正後の GDP にて算出しているため中国
統計年鑑 2005 のデータとは一致しない。
1-1-5 市民生活
1)市民収入及びエンゲル係数
「九五」期間(1996 年~2000 年)において、農村部市民世帯の一人当たりの純収入の年
平均成長率は、4.7%であった。「十五」期間(2001 年~2005 年)では、5.3%であった。
都市部市民世帯の一人当たりの可処分所得の「九五」期間における成長率は、5.7%であ
り、「十五」期間では、9.6%であった。同期間における GDP 年平均成長率は、各々8.6%
と 9.5%である。よって、都市部市民一人当たりの平均可処分所得は、「九五」期間にお
いては、GDP の成長率よりも低いが、「十五」期間においては、GDP と同歩調を維持し
-7-
ている。しかしながら、農村部市民世帯の一人当たりの平均純収入の成長率は、GDP
の成長率にはるかに及ばないだけでなく、都市部市民世帯の一人当たりの平均可処分所
得の成長率にもはるかに低い成長率となっている。中国の都市・農村の格差は縮まるど
ころか拡大傾向にある。
エンゲル係数から見れば、中国における都市部・農村部市民のエンゲル係数は共に下
降傾向にあるが、全体的に見れば先進国の約 20%の水準に比べてまだまだかなりの格
差が存在する。特に中国農村部市民のエンゲル係数は、45%以上と依然として高い。
2005 年末、中国農村部人口の総人口に占める比率は 57%であり、中国国民の生活状況
は全体的に見てまだまだ低い水準にある。
年度
表 1-4 中国国民一人当たりの平均収入とエンゲル係数
農村部市民家庭
都市部市民家庭
エンゲル係数(%)
一人当たりの純収入
一人当たりの可処分所得
数量(元)
成長率(%)
数量(元)
成長率(%)
農村部
都市部
1996 年
1,926.1
9.0
4,838.9
3.9
56.3
48.8
1997 年
2,090.1
4.6
5,160.3
3.4
55.1
46.6
1998 年
2,162.0
4.3
5,425.1
5.8
53.4
44.7
1999 年
2,210.3
3.8
5,854.0
9.3
52.6
42.1
2000 年
2,253.4
2.1
6,280.0
6.4
49.1
39.4
2001 年
2,366.4
4.2
6,859.6
8.5
47.7
38.2
2002 年
2,475.6
4.8
7,702.8
13.4
46.2
37.7
2003 年
2,622.2
4.3
8,472.2
9.0
45.6
37.1
2004 年
2,936.4
6.8
9,421.6
7.7
47.2
37.7
2005 年
3,255.0
6.2
10,493.0
9.6
45.5
36.7
出典:中国統計年鑑
注:成長率は比較可能価格で計算。(比較可能価格:異なる期間の価値指標を対
比する場合、価格変動要因を排除して、正確適切に物量の変化を反映させる)
2)社会消費財小売総額
「十五」期間(2001 年~2005 年)において、社会消費財小売総額の年平均成長率は
11.4%である。2005 年の通年における社会消費財小売総額は 6 兆 7,177 億元に達し、
前年同期比では 12.9%の増であり、価格上昇要因を排除した場合、実際の成長率は、
12.0%である。
-8-
社会消費財小売総額(億元)
前年同期比成長率(%)
25
80,000
67,177
70,000
50,000
20
59,501
60,000
52,516
48,136
43,055
15
13.3
11.8
40,000
30,000
12.9
10.1
10
9.1
20,000
5
10,000
0
0
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
出典:中華人民共和国 2005 年国民経済及び社会発展統計公報
注:成長率は名目価格にて計算、物価要因を考慮していない。
図 1-6 2001 年~2005 年における中国の社会消費財小売総額及びその成長の推移
1-1-6 対外経済貿易
「九五」期間(1996 年~2000 年)における中国の輸出入総額の年平均成長率は 11.3%で
あり、「十五」期間(2001 年~2005 年)においては 24%に達した。外資導入実績ベースの
「九五」期間における年平均成長率は 1.6%であり、「十五」期間では 8.2%であった。2005
年通年の輸出入総額は 1 兆 4,221 億米ドルであり、前年比では、23.2%の増である。う
ち、輸出額は 7,620 億米ドルで 28.4%の増、輸入額は 6,601 億米ドルで 17.6%の増で
あった。輸出入の貿易黒字は 1,019 億米ドルである。2005 年通年の外資直接投資プロ
ジェクトの認可件数は 44,001 件であり、前年同期比では 0.8%の増である。外資利用
実績ベースは 603 億米ドルで 0.5%の減であった。これらのデータから見れば、中国経
済の対外依存度は益々拡大しており、中国経済は日増しにグローバル経済に溶け込みつ
つある。
-9-
-10-
3,239.5
3,606.3
4,742.9
5,096.5
6,207.7
8,509.9
11,545.5
14,221.0
1998 年
1999 年
2000 年
2001 年
2002 年
2003 年
2004 年
2005 年
4,286.0
7,620.0
5,933.2
4,382.3
3,256.0
2,661.0
2,492.0
1,949.3
1,837.1
1,827.9
1,510.5
輸出総額(億米
㌦)
注:成長率は物価要因を考慮していない。
7,959.0
3,251.6
2006 年上半期
2,898.8
1997 年
合計
1996 年
年度
3,671.0
6,601.0
5,612.3
4,127.6
2,951.7
2,435.5
2,250.9
1,657.0
1,402.4
1,423.7
1,388.3
輸入総額(億米
㌦)
輸出入総額
614.0
1,019.0
320.9
254.7
304.3
225.5
241.1
292.3
434.7
404.2
122.2
貿易黒字(億米
㌦)
表 1-5 1996 年~2005 年の中国対外合作状況
284.0
603.0
606.3
535.1
527.4
468.8
407.2
403.2
454.6
452.6
417.3
金額(億米㌦)
△0.5
13.3
△0.5
1.4
12.5
15.1
1.0
0.5
△11.3
8.5
11.2
成長率(%)
出典:中国統計年鑑及び国家統計局データ
23.4
23.2
35.7
37.1
21.8
7.5
31.5
11.3
12.2
△0.4
3.2
輸出入総額
成長率(%)
外資直接投資利用実績ベ
ース
1-2 中国経済発展の前途
中国経済は、過去 10 年間で巨大な実績を残し、全世界の注目を浴びている。エコノ
ミストの多くが中国経済の前途は非常に明るいとし、中国政府も今後の発展に大きな自
信を持っている。中国政府が制定した「国民経済及び社会発展第十一五 5 ヶ年計画」では、
2006 年~2010 年の期間の中国の経済発展について以下の通り計画している。
表 1-6 「十一五」期間(2006 年~2010 年)における中国経済社会発展の主要計画指標
年平均成
区分
指標
2005 年 2010 年
属性
長率(%)
経済成長
経済構成
GDP(千億元)
18.2
26.1
一人当たりの GDP(元)
13,985
19,270
7.5 予測値
6.6 予測値
サービス業増加値比率(%)
40.3
43.3
[3] 予測値
43
47
[4] 予測値
130,756 136,000
<8% 拘束値
都市化比率
人口資源 全国総人口(万人)
環境
単位 GDP エネルギー消費削減(%)
市民生活
[20] 拘束値
4.2
5
都市部市民一人当たり可処分所得
(元)
10,493
13,390
5
農村部市民一人当たり純収入
(元)
3,255
4,150
5
都市部登記失業率(%)
予測値
予測値
予測値
出典:中華人民共和国国民経済及び社会発展第十一五計画綱領をもとに作成
注 1:GDP 及び都市部・農村部市民収入は 2005 年の価格。[
]の数値は 5 年間の累
計合計数値
注 2:予測値指標とは国家が期待する発展目標であり、拘束値とは政府の実現必須、
必達指標を指す
注 3:2005 年価格は不変価格である
「国民経済及び社会発展第十一五 5 ヶ年計画」に基づき、中国国内総生産値(GDP)
の「十一五」期間の規模予測数値は下図の通りである。
-11-
億元
300,000
210,695
195,995
250,000
226,497
243,484
261,745
200,000
150,000
100,000
50,000
0
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
出典:国民経済及び社会発展第十一五 5 ヶ年計画
図 1-7 2006 年~2010 年の中国の国内総生産値(GDP)予測
1-3 水上輸送業
1)水運業の発展の現状
「十五」期間(2001 年~2005 年)において、中国の水運の発展は迅速であり、かなりの
実績を残した。以下 3 つの分野における中国水運業の「十五」期間の発展状況を紹介する。
①建設投資
「十五」期間において、中国水運インフラ基盤の建設速度は、顕著に加速化され、水運
建設投資実績は 1,735 億元であり、うち、沿海港湾建設投資は 1,407 億元、内陸河川港
湾及び航路建設投資は 327 億元であった。沿海港湾の新規増設取扱能力は 4.8 億トン、
内陸河川港湾の新規増設取扱能力は 5,257 万トンであり、新規増設及び改善された内陸
河川航路は 4,195km であった。
これらの投資によって、港湾の能力不足は顕著に緩和され、環渤海湾、長江デルタ圏、
珠江デルタ圏の沿海港湾群の一応の整備がなされた。内陸河川港運も急激な進展を遂げ
た。内陸河川船舶の標準化を実施し、長江水運は急速に伸び、世界でも最も輸送量の多
い河川となっている。
-12-
表 1-7 「十五」期間における中国水運建設投資
項目
2001 年 2002 年 2003 年
2004 年
2005 年
2,968.00 3,941.50 4,136.00 5,314.07
6,445.04
道路建設投資(億元)
2,670.00
5,484.97
水運建設投資(億元)
174.00
169.80
294.40
407.81
688.77
その他建設投資(億元)
123.00
110.00
126.90
203.99
271.30
174.00
169.80
294.40
407.81
688.77
124.00
129.85
240.56
336.42
576.24
50.00
39.95
53.80
71.39
112.53
全国交通固定資産投資(億元)
水運建設投資(億元)
沿海港湾建設投資(億元)
内陸河川港湾・航路建設投資(億元)
3,211.70 3,714.90 4,702.28
6,066.00 4,630.00 6,656.00 9,603.00 21,192.00
沿海港湾新規増設取扱能力(万㌧)
内陸河川港湾新規増設取扱能力(万㌧)
479.00
329.00 1,026.00 1,332.00
2,091.00
新規増設・改善された内陸河川航路(km)
639.00
145.00 1,601.00
1,338.00
472.00
出典:2005 年道路水路交通業界発展統計公報(中国交通部)及び中国交通年鑑 2005
沿海港湾建設投資(億元)
沿海港湾新規増設取扱能力(万㌧)
700
21,192
600
25,000
20,000
500
400
300
6,066
200
100
15,000
9,603
576.24
10,000
6,656
4,630
124.00
336.42
5,000
240.56
129.85
0
0
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
出典:表 1-7 のデータに基づき作成
図 1-8 「十五」期間における中国沿海港湾建設投資及び新規増設取扱能力の推移
②輸送量及び取扱量
「十五」期間に中国の水運適応能力は顕著に増強された。水路貨物輸送量、貨物取扱量
は、引き続き急速な成長を遂げた。水運の全社会貨物取扱量に占める比率は約 60%で
あり、対外貿易貨物輸送量における比率は 90%以上である。2005 年の港湾貨物取扱量
は 48.6 億トンに、コンテナ貨物取扱量は 7,564 万 TEU に達し、「九五」期間末に比べて
港湾貨物取扱量では、2.1 倍、コンテナ取扱量では、3.2 倍となっている。
港湾で取り扱う主要な貨物の品種は、石炭及びその製品、石油・天然ガス及びその製
品、金属鉱石、鉱物建設材料、鉄鋼等である。
-13-
「十五」期間における水運輸送量及び取扱量の詳細データについては、次頁以降の表
1-8:「十五」期間における中国水運輸送量及び取扱量、図 1-9:「十五」期間における中国
沿海港湾貨物取扱量、図 1-10:「十五」期間における中国主要港湾貨物取扱状況、図
1-11:「十五」期間における中国沿海コンテナ取扱量及びコンテナ遠洋輸送量を参照され
たい。
-14-
-15-
全国コンテナ
輸送量(万 TEU)
3.30
2.40
2.40
1.00
1,403.40
1,231.70
934.80
3.10
2.00
1.90
0.80
1,115.60
1,057.20
842.60
石油・天然ガス及びその製品取扱量
金属鉱石取扱量
鉱物建材取扱量
鉄鋼取扱量
道路輸送量
水路輸送量
遠洋輸送量
1,163.70
1,522.80
1,662.80
1.36
2.73
3.06
3.84
1,207.43
1,605.00
2,087.00
1.70
3.39
4.31
4.52
7.20
33.25
26.74
5.75
498.00
5,662.00
6,160.00
0.99
10.56
11.55
16.34
25.38
41.72
62.10
41,428.70
11.20
18.70
412.00
4,455.00
4,867.00
0.87
8.84
9.70
12.33
20.64
33.00
53.32
28,716.00
10.12
15.80
2004 年
1,396.15
1,940.00
2,465.00
1.96
4.95
5.75
4.83
8.07
39.42
562.00
7,002.00
7,564.00
1.14
12.53
13.67
18.45
30.09
48.54
61.40
49,672.28
11.50
21.96
2005 年
出典:2005 年道路水路交通業界発展統計公報(中国交通部)及び中国交通年鑑 2005
5.00
4.50
石炭及びその製品取扱量
全国主要港湾貨物取扱状況(億㌧)
内陸河川港湾コンテナ取扱量
沿海港湾コンテナ取扱量
全国港湾コンテナ取扱量(万 TEU)
345.00
0.70
0.60
内陸河川港湾対外貿易貨物取扱量
279.00
7.10
6.00
沿海港湾対外貿易貨物取扱量
3,376.00
7.80
6.60
全国港湾対外貿易貨物取扱量(億㌧)
2,470.00
10.80
9.50
3,721.00
17.20
14.50
内陸河川港湾貨物取扱量
沿海港湾貨物取扱量
2,748.00
28.00
総合輸送体系における比率(%)
24.00
貨物
取扱量
54.50
9.60
9.70
55.70
14.20
13.30
27,510.60
総数(億 km)
総合輸送体系における比率(%)
総数(億㌧)
25,988.90
貨物
輸送量
全国港湾貨物取扱量(億㌧)
全国水路輸送量
項目
表 1-8 「十五」期間における中国水運輸送量及び取扱量
2001 年
2002 年
2003 年
沿海港湾対外貿易取扱量(億㌧)
沿海港湾国内貿易取扱量(億㌧)
35
30
25
17.56
20
14.82
15
10
5
6
0
11.8
10.1
8.5
2001年
7.1
8.84
2002年
2003年
12.53
10.56
2004年
2005年
図 1-9 「十五」期間における中国沿海港湾貨物取扱量
石炭及びその製品
石油・天然ガス及びその製品
金属鉱石
鉱物建材
鉄鋼
10
8
6
4
2
0
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
(単位:億㌧)
図 1-10 「十五」期間における中国主要港湾貨物取扱状況
沿海港湾コンテナ取扱量
8,000.00
7,000.00
6,000.00
5,000.00
4,000.00
3,000.00
2,000.00
1,000.00
0.00
コンテナ遠洋輸送量
7,002.00
5,662.00
4,455.00
2,470.00
3,376.00
842.60
2001年
2002年
934.80
1163.70
2003年
1207.43
2004年
1396.15
2005年
(万 TEU)
図 1-11 「十五」期間における中国沿海コンテナ取扱量及びコンテナ遠洋輸送量
注:以上、表 1-8 のデータに基づき作成した
-16-
③航路及び設備
船舶輸送力と水運構造が合理的に調整されて、船舶構造が更に優位化された。2005
年における輸送船舶総数は、20.73 万隻であり、2004 年の 21.1 万隻に比べてやや減少
したが、純積載重量トン数の純増は、1,561.34 万トンであり、1 億 0,178.64 万純積載
重量トンに達した。各種船舶の平均積載重量トンは、2001 年の 258.3 万トンから 2005
年には 491.0 万トンに増加した。具体的データは、以下の表 1-9 及び次頁の図 1-12~
図 1-14 の通りである。
-17-
-18-
2004 年
21.10
8,617.30
66.00
3,052.70
3,258.99
57.98
1,543.79
4.72
3,814.48
3.27
35,108.00
4,197.00
790.00
37.00
30,911.00
154.00
21.00
123,300.00
60,800.00
8,306.00
23,347.00
8,483.00
1,807.00
2005 年
20.73
10,178.64
80.72
3,639.93
3,649.40
66.97
2,047.76
8.46
4,481.49
5.29
35,242.00
4,298.00
847.00
49.00
30,944.00
187.00
30.00
123,300.00
609,200.00
8,631.00
23,659.00
8,483.00
未発表
出典:2005 年道路水路交通業界発展統計公報(中国交通部)及び中国交通年鑑 2005
表 1-9 「十五」期間における中国水運航路及び設備のデータ
項目
2001 年
2002 年
2003 年
水路輸送船舶
全 国 水 輸送船舶総数(万隻)
21.10
20.30
20.40
上 輸 送 純積載重量(万㌧)
5,449.50
5,705.60
7,061.60
力
コンテナ数(万 TEU)
50.60
48.60
57.10
パワー(万 kw)
2,088.50
2,199.60
2,615.70
遠 洋 輸 純積載重量(万㌧)
2,385.70
2,316.17
2,737.34
送船舶 コンテナ数(万 TEU)
47.90
45.09
51.12
沿 海 輸 純積載重量(万㌧)
918.10
977.91
1,289.51
送船舶 コンテナ数(万 TEU)
1.80
2.49
3.19
内陸河川 純積載重量(万㌧)
2,145.70
2,411.49
3,034.78
輸送船舶 コンテナ数(万 TEU)
0.90
1.01
2.79
全国港湾生産用埠頭バース数(ヶ所)
33,441.00
33,600.00
34,289.00
沿海港湾
3,718.00
3,822.00
4,274.00
万㌧級以上のバース
677.00
700.00
748.00
10 万㌧級以上のバース
22.00
27.00
31.00
内陸河川港湾
29,723.00
29,778.00
30,015.00
万㌧級以上のバース
133.00
135.00
151.00
5 万㌧~10 万㌧級以上のバース
4.00
14.00
全国内陸河川航路運行総距離(km)
122,000.00
121,557.00
123,964.00
等級航路
64,000.00
63,597.00
60,856.00
三級及び三級以上航路
8,000.00
8,222.00
8,053.00
五級及び五級以上航路
23,000.00
23,510.00
22,840.00
ヤードゾーン航路(km)
9,739.00
9,743.00
8,548.00
航行障碍水門等(ヶ所)
未発表
1,713.00
1,813.00
輸送船舶総数(万隻)
平均積載重量トン(トン/隻)
491.0
30
408.4
25
21.1
20.73
20.4
20.3
20
21.1
346.2
15
281.1
258.3
10
2001年
2002年
2003年
2004年
550.0
500.0
450.0
400.0
350.0
300.0
250.0
200.0
150.0
2005年
(単位:万隻、トン/隻)
図 1-12 「十五」期間における中国輸送船舶総数及び平均積載重量トン
遠洋輸送船舶
沿海輸送船舶
内陸河川輸送船舶
12,000
10,000
4,481.49
8,000
6,000
4,000
2,000
0
3,814.48
2,145.70
2,411.49
918.1
977.91
2,385.70
2,316.17
2001年
3,034.78
2002年
3,649.40
3,258.99
2,737.34
2003年
2,047.76
1,543.79
1,289.51
2004年
2005年
(単位:万トン)
図 1-13 「十五」期間における中国水上輸送能力純積載重量
遠洋輸送船舶
沿海輸送船舶
内陸河川輸送船舶
5.29
100
80
3.27
60
0
4.72
3.19
2.49
1.8
40
20
8.46
2.79
1.01
0.9
47.9
45.09
51.12
57.98
2001年
2002年
2003年
2004年
66.97
2005年
(単位:万 TEU)
出典:図 1-12~図 1-14 は、表 1-9 のデータに基づき作成
図 1-14 「十五」期間における中国水上輸送能力コンテナ数
-19-
2)中国水運業における問題点
①水運政策の過度に開放されている問題
中国国内の多くの研究機関が、中国での水運政策の開放度は、、APEC 加盟国に比べ
て過度であると認識している。こうした状況は水運業の発展に対して一定の積極的役割
を果たし、中国水運業改革の進捗及び管理モデルの刷新を加速化させたが、現在の中国
水運業のあるべき状況に適していないと考えている。中国の関連専門家は、水運業の過
度の開放について、具体的に以下の通り説明している。
(ⅰ)税制面
外商投資による水運業は、内国民待遇が適用されるだけでなく、優遇政策が適用され
る。「中華人民共和国企業所得税暫定条例」に基づき、中国資本企業の企業所得税率は
33%であるが、これは外資企業(運輸業を含む)に規定される最高税率である。「中華人
民共和国外商投資企業及び外国企業所得税法」の規定によれば、外商投資企業が特定地
区、例えば、沿海都市や経済特区に設立された場合、その適用税率は、沿海都市では
24%、経済特区では 15%となる。
(ⅱ)市場参入面
国際的に中国以外の多くの国は自国の運輸企業を守る為に、外資に対してある程度の
規制を設けているが、中国の運輸業は、外資に対して相当程度開放されており、中国地
場の運輸企業は、国際的運輸巨大企業の大きな圧力に直面している。
(ⅲ)政府支援
政府は中国資本水運企業に対して特殊な支援を実施していない。現在多くの国が自国
の水運業に対して政府の補助金や関連支援政策を実行している。例えば、借入金に対す
る優遇措置、運営補助金、税収優遇政策等である。先進国は更に顕著であるが、これに
反して中国では、水運業に対する補助金政策は実行されておらず、GATS(サービス貿易
協定)の中では、自国政府が調達した政府貨物を優先する事が出来るとあるが、中国で
はこの規定さえもなく、全ての商業貨物は市場の自由競争に委ねられて運ばれている。
従来あった貨物積載保留政策も 1998 年には正式に撤廃された。
②インフラ基盤施設建設の遅れ
主として中国の多くの港湾は水深が不足しており、船舶の超大型化の動向に根本的に
対応していない。
③水運企業の規模が小さく資源が分散
全体的に見て、中国の水運企業は、その規模において先進国の運輸企業に比べて明ら
かに小さく、企業数も過多である。2004 年 11 月のデータによれば、中国において国内
-20-
沿岸輸送に従事している船会社は 1,300 社余り存在し、内陸河川輸送に従事している船
会社は 5,700 社余り存在し、個人経営による輸送業者は 8 万社以上存在する。2005 年
の中国国内水運企業数は引き続き拡大しており、うち、国内水運に従事する企業数の純
増数は 171 社である。ただし、うち、総輸送能力が 50 万積載重量トンを超える企業は
10 社足らずである。
2
表 1-10 2005 年の中国運輸企業が経営する船隊規模のランキング
総輸送能力
自社輸送能力
賃貸輸送能力
会社名
積載重量㌧
積載重量㌧
積載重量㌧
隻
隻
隻
(万㌧)
(万㌧)
(万㌧)
中国遠洋運輸(集団)総公司
619.0 3,509.0
468.0 2,113.0 151.0 1,396.0
中国海運(集団)総公司
431.0 1,469.1
369.0 1,224.1
62.0
245.0
3
河北遠洋運輸股份有限公司
4
中国長江航運(集団)総公司
5
中国対外貿易運輸(集団)総公司
6
浙江遠洋運輸有限公司
7
№
1
42.0
512.0
41.0
391.0
503.4 2,137.0
456.0
14.0
47.4
176.0
448.2
62.0
223.2
114.0
225.0
17.0
110.2
17.0
110.2
0.0
0.0
福建冠海海運有限公司
18.0
81.0
17.0
75.7
1.0
5.3
8
浙江省海運集団
49.0
79.0
49.0
79.0
0.0
0.0
9
寧波海運(集団)総公司
29.0
60.7
24.0
53.9
5.0
6.8
10
新海豊集装箱運輸有限公司
42.0
40.2
18.0
13.6
24.0
26.6
合計
83.0
2,151.0
903.0
3,615.0 7,203.7 3,203.0 4,860.7
412.0 2,343.1
出典:2005 年道路水路交通業界発展統計公報(中国交通部)。2005 年 12 月 31 日現在のデータ
④中国運輸企業間の過当競争が著しい問題
巨大な競争圧力に直面し、水運企業の過多やここ数年の輸送能力拡大が急速である等
の原因で、中国国内水運企業間の過当競争は非常に激しくなっている。例えば、2006
年 9 月 21 日の中国中央電視台の報道によれば、上海~日本航路には 8 社の運輸企業が
互いに競争し、3 年前に運賃が 0 となり、現在ではマイナス運賃となっている。即ち、
荷送人が荷主に対して運賃を支払う状況であり、コンテナ 1 つの運賃は△210~△420
米ドルの間である。
ただし、ここで指摘しておかなければならないのは、これらの問題については、一部
は既に徐々に緩和されつつあることである。中国政府は、「二税統一」(中国資本企業に
対する企業所得税と外商投資企業に対する企業所得税の合併)を税収改革の既定目標と
している。同時にここ数年港湾建設に対する投入度を強化し、最近《中国沿海港湾配置
計画》を発表した。また、各船会社も輸送力拡大に力を入れて、船型構造の優位化を計
っている。
-21-
2.
中国におけるエネルギー消費状況
2-1 エネルギー消費総量及び一人当たりのエネルギー消費量
中国経済の発展に伴い、中国のエネルギー消費量も常に拡大している。次頁の表 2-1
や次々頁の図 2-1 で示す通り、エネルギー消費量は 1953 年の 0.54 億トン標準炭(中国
における熱量の単位。1kg 標準炭=7000kcal。)から、1978 年には 5.71 億トン標準炭
となり、2005 年には 22.25 億トンになり、年平均伸び率は 1953 年~1978 年で 9.9%、
1979 年~2005 年で 5.3%であった。「BP 世界エネルギー統計 2006」のデータによれば
(注:「BP 世界エネルギー統計 2006」のデータと「中国統計年鑑 2006」の中の中国エネル
ギー関連の統計データは一致していない)、2005 年、全世界のエネルギー消費総量は 105
億トン石油相当量であり、昨年同期比では 2.7%の伸び率である。うち、中国のエネル
ギー消費量は、15.18 億トン石油相当量であり、伸び率は 9.5%、世界エネルギー消費
総量の 14.46%を占め、米国に次ぐ世界第二のエネルギー消費大国である。世界的に見
て、この 2 年のエネルギー生産総量及びその伸び率は、エネルギー消費総量及びその伸
び率を上回っている。中国の動向を見た場合、これに反してエネルギーの生産量及びそ
の伸び率はエネルギー消費量及びその伸び率を下回っているのである。エネルギー消費
の伸び率だけで見れば、2004 年、中国は世界唯一の二桁成長を見た国家であり(15.11%)、
かつ増加量は最大であり、2005 年の中国のエネルギー消費量の伸び率は 9.5%であった。
2005 年の中国全国石炭消費量は 21.4 億トンで、前年比では 10.6%の伸び率であっ
た。原油は 3.0 億トンで同 2.1%、天然ガスは 500 億 m3 で同 20.6%であった。水力
発電は、4,010 億 kw/時で同 13.4%、原子力発電は 523 億 kw/時で同 3.7%であった。
中国のエネルギー消費総量の暦年度の具体的データは、次頁の表 2-1 や次々頁の図
2-1 の通りである。
図 2-1 より分かる事は、
中国のエネルギー消費の成長には幾つかの特殊段階があり、
具体的には以下の通りである。
①1958 年~1960 年:当該 3 年間の中国エネルギー消費量の成長は急速であり、その
主要原因は、当時の中国が実施した「大躍進」の経済発展戦略である。
②1997 年~1999 年:中国経済は、持続的成長を維持すると同時にエネルギー消費総
量は下降した。これは国際的に多くの争議を引き起こした。中国国内においては、
主として市場需要の疲弊軟弱化、エネルギー製品に対する需要の減少、一群のエネ
ルギー消費が多く汚染が酷い企業の相次ぐ閉鎖、産業構造の変化、技術の進歩等、
これらの幾つかの要因の相乗効果による結果であるとされた。
③2001 年以降、中国経済は新たな成長周期に突入し、固定資産投資は急速に伸び、
重工業の比率は拡大傾向を示し、製鉄、建材、電解アルミ等、エネルギー高消費産
業は急速に拡大して、エネルギー消費量は急速に増大し、経済成長速度を超え、
2003 年~2004 年の連続二年間、エネルギー消費弾性係数は 1 より大きくなった。
2005 年、中国政府のマクロ調整政策により、エネルギー消費弾性係数は 0.97 に戻
-22-
った。
年度
1953
1954
1955
1956
1957
1958
1959
1960
1961
1962
1963
1964
1965
1966
1967
1968
1969
1970
1971
1972
1973
1974
1975
1976
1977
1978
1979
1980
1981
1982
1983
1984
1985
1986
1987
1988
1989
1990
表 2-1 中国におけるエネルギー生産及び消費総量の統計データ
GDP
エネルギー生産量 エネルギー消費量 エネルギー消費量
エネルギー強度 エネルギー消費
(百万㌧標準炭) (百万㌧標準炭)
成長率(%)
成長率(%) (㌧標準炭/万元 GDP)
弾性係数
52
54
3.34
63
62
14.81
4.21
3.68
3.52
73
70
12.90
6.83
3.89
1.89
82
88
25.71
15.07
4.25
1.71
99
96
9.09
5.03
4.42
1.81
198
176
83.33
21.21
6.68
3.93
272
239
35.80
8.88
8.33
4.03
296
302
26.36
△0.35
10.57
△75.60
212
204
△32.45
△27.33
9.82
1.19
172
165
△19.12
△5.58
8.41
3.42
188
156
△5.45
10.20
7.22
△0.53
172
166
6.41
18.23
6.50
0.35
188
189
13.86
17.06
6.32
0.81
208
203
7.41
10.73
6.13
0.69
175
183
△9.85
△5.71
5.86
1.73
187
184
0.55
△4.10
6.14
△0.13
231
227
23.37
16.86
6.49
1.39
310
293
29.07
19.46
7.01
1.49
353
345
17.75
7.03
7.71
2.52
378
373
8.12
3.75
8.03
2.16
400
391
4.83
7.84
7.81
0.62
410
401
2.56
2.32
7.83
1.10
488
454
13.22
8.71
8.15
1.52
503
478
5.29
△1.63
8.73
△3.24
564
524
9.62
7.63
8.89
1.26
628
571
8.97
11.67
8.67
0.77
646
586
2.63
7.58
8.27
0.35
637
603
2.90
7.84
7.89
0.37
632
594
△1.49
5.24
7.39
△0.29
338
621
4.55
9.06
7.08
0.50
713
660
6.28
10.87
6.79
0.58
779
709
7.42
15.16
6.33
0.49
855
767
8.18
13.47
6.04
0.61
881
809
5.48
8.85
5.85
0.62
913
866
7.05
11.58
5.61
0.61
958
930
7.39
11.28
5.42
0.66
1,016
969
4.19
4.06
5.42
1.03
1,039
987
1.86
3.84
5.32
0.47
(次頁に続く)
-23-
エネルギー生産量 エネルギー消費量 エネルギー消費量
年度 (百万㌧標準炭) (百万㌧標準炭)
成長率(%)
1991
1,048
1,038
5.17
1992
1,073
1,092
5.20
1993
1,111
1,160
6.23
1994
1,187
1,227
5.78
1995
1,290
1,312
6.93
1996
1,326
1,389
5.87
1997
1,324
1,378
△0.79
1998
1,243
1,322
△4.06
1999
1,259
1,338
△1.59
2000
1,290
1,386
0.15
2001
1,374
1,432
9.90
2002
1,438
1,518
10.41
2003
1,638
1,750
10.69
2004
1,873
2,032
16.11
2005
2,061
2,233
9.89
GDP
エネルギー強度 エネルギー消費
成長率(%) (㌧標準炭/万元 GDP)
弾性係数
9.18
5.13
0.55
14.24
4.72
0.37
13.94
4.40
0.45
13.09
4.12
0.44
10.93
3.97
0.63
10.01
3.82
0.59
9.29
3.47
△0.09
7.83
3.08
△0.52
7.63
2.82
0.16
8.42
2.60
0.42
8.30
2.64
0.41
9.09
2.67
0.66
10.02
2.69
1.53
10.08
2.84
1.59
10.20
2.83
0.97
出典:新中国五十年統計資料総集編(国家統計局、1999)、2006 中国統計年鑑等の資料
を基に作成
注 1:1999 年以降、エネルギー消費総量のデータは、中国国家統計局の 2006 年の改正
後のデータであり、エネルギー消費総量のデータである。
注 2:上記表の GDP データは、1990 年は不変価格にて計算。現在価格にて計算した場
合、2005 年の全国万元 GDP エネルギー消費は、1.22 ㌧標準炭となる。
注 3:エネルギー消費弾性係数は、エネルギー消費成長速度と国民経済成長速度との間
の比例関係を表す指標である。その計算公式は以下の通りである。
エネルギー消費弾性係数=エネルギー消費量年平均成長速度/国民経済年平均速
度
注 4:中国のエネルギー消費は石炭が主であり、よって中国の公官庁のエネルギー統計
指標は㌧標準炭が基礎となる。国際的なエネルギー統計の多くは㌧石油相当量を
統計指標の基礎としている。
-24-
エネルギー生産量
エネルギー消費量
5000
4500
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
19
53
19
55
19
57
19
59
19
61
19
63
19
65
19
67
19
69
19
71
19
73
19
75
19
77
19
79
19
81
19
83
19
85
19
87
19
89
19
91
19
93
19
95
19
97
19
99
20
01
20
03
20
05
0
(単位:百万㌧標準炭)
出典:表 2-1 のデータに基づき作成
図 2-1 中国におけるエネルギー生産及び消費総量の統計データ
エネルギー消費総量の成長と同時に、中国における一人当たりの平均エネルギー消費
量も急速に伸びている。1953 年には 0.09 トン標準炭であったが、1978 年には 0.59 ト
ン標準炭となり、2005 年には 1.70 トン標準炭となった。2003 年の全国都市部市民の
一人当たりの年間平均電気使用量は 173.7kw 時であるが、1980 年にはわずか 10.7kw
時であった。ただし、先進国に比べて、中国の一人当たりの平均エネルギー消費量は依
然として低い。2004 年の世界の一人当たりの平均エネルギー消費量は 1.61 トン石油相
当量であるのに対し、中国は 1.07 トン石油相当量で、世界の一人当たりの平均水準の
66.46%であり、米国人一人当たり平均水準の 8 分の 1、日本・英国・ドイツ・フラン
ス等の国の一人当たりの平均水準の約 4 分の 1 である。
ここで注目すべきは、中国における一人当たりの平均エネルギー消費量は先進国に
比べて低いにも拘わらず、エネルギー強度(単位 GDP あたりの消費エネルギー量)
は世界平均水準を大きく上回り、米国・日本・英国・ドイツ・フランス等の先進国よ
りも更に大きい事である。2004 年、全世界のエネルギー強度は、2.5 トン石油相当量
/万米ドル GDP であるが、中国は、8.4 トン石油相当量/万米ドル GDP であり、世界
平均水準の 3.36 倍、米国の 4 倍強、日本・英国・ドイツ・フランスの約 8 倍である。
このため、中国政府は、エネルギー強度低減を「十一五」計画(2006 年~2010 年)中に
必ず達成すべき指標に規定、「十一五」計画終了時点で、単位 GDP あたりのエネルギ
ー消費を、「十五」期間(2001 年~2005 年)末に比べて 20%削減しなければならないと
している。
-25-
2-2 中国のエネルギー消費構造
2-2-1 現状
2004 年、全世界のエネルギー消費の構成は、原油:36.8%、天然ガス:23.7%、石
炭:27.2%、水力発電:6.2%、原子力:6.1%である。一方、中国におけるエネルギー
消費の構成は、原油:22.3%、天然ガス:2.5%、石炭:69.0%、水力発電:5.4%、原
子力:0.8%となっている。中国のエネルギー消費においては、石炭の比率が非常に高
く、天然ガス及び原子力の比率が低く、世界平均と大きく異なっている。
この原因は、中国は石炭資源が比較的豊富であるのに対し、石油は相対的に不足して
いることによる。
中国は世界最大の石炭消費国となっており、2005 年、中国の石炭消費量は世界の石
炭消費総量の 36.9%を占めている。環境保護対策が十分でない状況下で、環境負荷の
大きい石炭の大量消費が中国に厳しい汚染問題をもたらしている。
原油
天然ガス
石炭
水力発電
原子力
6.10%
世界
36.80%
23.70%
27.20%
6.20%
0.8%
中国
0%
22.3%
2.5%
20%
69.0%
40%
60%
5.4%
80%
100%
出典:中国発展・改革委員会能源局の発表データ
図 2-2 2004 年の中国及び世界のエネルギー消費構成比較
2-2-2 中国におけるエネルギー構造の変化
表 2-2 及び図 2-3 から、中国のエネルギー消費構造において、石炭はいまだその相当
部分を占めているものの、その比率は全体的にみれば下降傾向にある。1950 年代から
1960 年代初期において、石炭の比率は 90%以上に達していたが、その後 1970 年代初
期に 80%程度に、1970 年代から 1997 年頃迄は 70%台に、1990 年代末から 2000 年初
頭にかけての約 10 年間は 66%~69%の間で推移している。政府の計画に基づき、専門
家の予測によれば、2010 年の石炭の比率は引き続き下降し、約 61%前後迄下がるとさ
れている。
-26-
石炭の比率が下降する事に伴って、石油、天然ガス、電力等の品質の良いエネルギー
の占める比率が徐々に上昇している。うち、石油の消費比率は、1980 年代以前は急速
に伸びたが、その後は基本的に安定して推移し、現在は基本的に常に 20%~23%の間
で変化している。専門家の予測によれば、2010 年の石油消費の比率は約 4 ポイント上
昇する。
天然ガスと一次電力の消費比率は常に上昇しているが、総消費量に占める比率は依然
として低い。
表 2-2 中国におけるエネルギーの消費構造
年度
(単位:%)
再生可能エネルギー
(主として水力発電)
石炭
石油
天然ガス
1953 年
94.33
3.81
0.02
1.84
1955 年
92.94
4.91
0.03
2.12
1960 年
93.90
4.11
0.45
1.54
1965 年
86.45
10.27
0.63
2.65
1970 年
80.89
14.67
0.92
3.52
1975 年
71.85
21.07
2.51
4.57
1978 年
70.70
22.70
3.20
3.40
1980 年
72.20
20.70
3.10
4.00
1985 年
75.80
17.10
2.20
4.90
1990 年
76.20
16.60
2.10
5.10
1991 年
76.10
17.10
2.00
4.80
1992 年
75.70
17.50
1.90
4.90
1993 年
74.70
18.20
1.90
5.20
1994 年
75.00
17.40
1.90
5.70
1995 年
74.60
17.50
1.80
6.10
1996 年
74.70
18.00
1.80
5.50
1997 年
71.70
20.40
1.70
6.20
1998 年
69.60
21.50
2.20
6.70
1999 年
69.10
22.60
2.10
6.20
2000 年
67.80
23.20
2.40
6.70
2001 年
66.70
22.90
2.60
7.90
2002 年
66.30
23.40
2.60
7.70
2003 年
68.40
22.20
2.60
6.80
2004 年
68.00
22.30
2.60
7.10
2005 年
68.90
21.00
2.90
7.20
出典:中国統計年鑑及び中国発展・改革委員会能源局ホームページの関連資料をもと
に作成
-27-
石炭
石油
天然ガス
再生可能エネルギー
2020
2010
2005
1995
1985
1975
1965
1955
0%
20%
40%
60%
80%
100%
出典:2005 年迄のデータは表 2-2 による。2010 年のデータは専門家の予測値。
図 2-3 中国におけるエネルギー消費構造の変化
長期的に見て、中国では相当長期間、石炭がエネルギー消費の主力であり、水力発電
及び原子力の比率が徐々に上昇し、石油、天然ガスの比率はやや下降するであろう。現
在の中国におけるエネルギー消費構造の優位化戦略は、徐々に石炭の消費比率を落とし
てゆき、天然ガスの消費拡大を加速化させ、積極的に水力発電、原子力発電及び再生可
能エネルギーを利用して、20 年の期間を費やして徐々にエネルギー依存構造を多元化
し、良質のエネルギー利用の比率を引き上げる事である。中国政府の計画に基づき、
2020 年に中国は天然ガスの消費比率 10%を達成させるとともに、再生可能エネルギー
の消費比率を 16%、原子力発電の消費比率を 5%、石炭の消費比率を 60%以内に抑制
するとしている。
ただし、国家発展・改革委員会の政策決定補助機関の関連部門責任者の一人である国
家発展・改革委員会エネルギー研究所の韓文科副所長によれば、「長期的に見て、エネ
ルギー供給の政策は振れがあるので、構造調整の明確な方向は定まりにくい。環境問題
が厳しくなった場合、政策は石炭のエネルギー構造に占める比率を規制する方向に振れ
て、クリーンエネルギーが提唱されるが、国際石油価格が高騰する局面では、石炭の比
率拡大がまたもや政策的支持を得るだろう。」としている。
-28-
2-3 中国における各産業部門のエネルギー消費
国民経済の発展と市民生活水準の向上を、エネルギー消費と切り離す事は出来ない。
表 2-3 は、1996 年~2005 年の中国国民経済の各産業のエネルギー消費の全国一次エネ
ルギー消費総量(一次エネルギーとは、自然界の未加工の各種エネルギー及び資源を指
し、具体的には石炭、原油、原子力、太陽エネルギー、水力、風力、波浪エネルギー、
地熱、等をいう。)における比率を示したものである。
中国はまさに工業化の発展過程にあり、工業部門は常にエネルギー消費の大口ユーザ
ーである。工業部門エネルギー消費量の全国エネルギー消費総量に占める比率は常に
70%前後ある。1999 年の工業エネルギー消費比率はやや下降したが、2003 年には 70%
の水準に回復した。工業部門のなかでは、製造業のエネルギー消費量が最大であり、常
にエネルギー消費総量の 50%以上を占めている。うち、石油加工及び精錬コークス業、
化学原料及び化学製品製造業(化学工業)、有色金属冶金及び圧延加工業(製鉄工業)、非
金属鉱物製品業(建材工業)のエネルギー消費比率が比較的大きく、2005 年におけるそれ
ぞれのエネルギー消費総量に占める比率は 5.3%、10.1%、16.1%、8.4%であり、エネ
ルギー消費量は各々12.17、20.35、29.7、18.81 億トン標準炭である。電力、ガス及び
水の生産・供給業のエネルギー消費比率も比較的大きく、2005 年には全国エネルギー
消費総量の 7.7%を占めている。
工業部門以外では、交通部門のエネルギー使用の伸び率も大きく、全体に占める比率
は、1996 年の 4.3%前後から 2005 年には 7.5%に拡大した。中国における家庭用乗用
車保有台数の急速な拡大に伴い、交通部門のエネルギー消費比率は更に拡大するとみら
れる。
-29-
-30-
1997
年
4.3
72.4
8.0
56.4
5.3
11.3
13.2
8.9
4.1
72.2
7.1
58.4
2.6
14.5
13.1
9.9
農、林、牧畜、漁業、水利業
採掘業
製造業
石油加工及び精錬コークス業
化学原料及び化学製品製造業
有色金属冶金及び圧延加工業
非金属鉱物製品業
工業
0.9
5.5
1.7
3.4
11.9
1.0
4.3
1.6
4.0
12.8
建築業
交通運輸、倉庫保管及び郵政業
卸売、小売業及びホテル、飲食業
その他業界
生活消費
10.9
3.9
1.9
6.2
1.2
7.9
8.8
12.9
10.6
5.2
55.7
7.9
71.4
4.4
1998
年
11.2
4.2
2.2
7.1
1.1
8.3
8.4
13.0
9.9
5.5
54.4
7.1
69.8
4.5
1999
年
11.4
4.4
2.2
7.6
1.1
8.3
7.8
12.9
9.8
5.7
53.4
7.1
68.8
4.4
2000
年
11.4
4.5
2.4
7.6
1.1
8.0
7.4
12.7
9.6
5.8
53.3
7.1
68.5
4.6
2001
年
11.5
4.3
2.3
7.5
1.1
8.3
7.2
13.0
9.8
5.7
53.7
7.0
68.9
4.4
2002
年
11.3
4.0
2.4
7.5
1.0
8.4
7.4
14.1
10.0
5.3
54.5
7.1
70.0
3.9
2003
年
10.5
3.9
2.4
7.4
1.6
7.8
9.3
14.6
10.0
6.0
56.7
6.0
70.5
3.8
2004
年
10.5
3.9
2.3
7.5
1.5
7.7
8.4
16.1
10.1
5.3
57.2
5.9
70.8
3.6
2005
年
(単位:%)
注:
「水利業」とは水力発電やダム建設の関連業界のことをいう
出典:エネルギー経済データバンク(中国発展・改革委員会マクロ経済研究院)及び 2006 中国統計年鑑
8.0
6.7
電力、石炭、ガス及び水生産・供
給業
産業区分
1996
年
表 2-3 中国における各産業部門のエネルギー消費比率
2-4 四大エネルギーの消費状況
2-4-1 石油
中国における石油消費の特徴は、中国の石油資源は相対的に不足しているので、石油
消費のエネルギー消費総量に占める比率は、相対的に小かった(2005 年:21.24%、2000
年:歴史的最高水準であったがそれでもわずか 24.6%)。しかしながら、ほぼ 20 年間で、
石油消費量は急速に成長して、消費総量も拡大し、中国は現在既に世界第二の石油消費
国となっており、世界の石油消費総量の約 8%を占めている。
世界の原油生産量とその伸び率は共に消費量とその伸び率より上回っている事とは
逆に、中国の原油生産量及びその成長率は、消費量及びその成長率を明らかに下回って
おり、消費の増加量は大きく、その伸び率は高い。次頁の表 2-5 より分かる事は、1996
年~2006 年において、中国の石油生産量の年平均伸び率は 1.9%であったが、消費量の
年平均伸び率は、7.1%に達した。
専門家の予測によれば、2010 年には、中国石油消費総量は 3.8 億トン迄拡大し、当
年の国内原油生産量は、1.9 億トンであって、石油の対外依存度は 50%である。2020
年、中国の石油消費量は、4.5~5.0 億トンと予測され、国内生産量は 2 億トンであって、
対外依存度は 60%に達する。
表 2-4 2004 年の中国及び世界の石油生産、消費状況比較
比較項目
中国
世界
中国及び世界との比較
生産量
1.75 億トン
38.68 億トン
中国の生産量は世界の生産量の
4.51%
生産量の
伸び率
2.90%
4.45%
中国は世界よりも 1.55 ポイント
低い
消費量
3.09 億トン
37.67 億トン
中国の消費量は世界の 8.19%
消費量の
伸び率
1991 年~2003 年の 1991 年~2003
年平均:6.83%
年の年平均:
2004 年:15.83%
1.37%
2004 年:3.44%
1991 年~2003 年の年平均速度
は、中国は世界よりも 5.46 ポイ
ント上回る。
2004 年の中国成長率は世界よ
りも 12.39 ポイント上回る。
出典:中国発展・改革委員会能源局ホームページ
-31-
-32-
生産量
12,489.5
13,830.6
15,005.0
15,733.4
16,074.1
16,100.0
16,000.0
16,300.0
16,395.9
16,700.0
16,960.0
17,587.3
18,135.3
年度
1985 年
1990 年
1995 年
1996 年
1997 年
1998 年
1999 年
2000 年
2001 年
2002 年
2003 年
2004 年
2005 年
17,163.2
17,291.3
13,189.6
10,269.3
9,118.2
9,748.5
6,483.3
5,738.7
6,787.0
4,536.9
3,673.2
755.6
90.0
輸入量
2,888.1
2,240.6
2,540.8
2,139.2
2,046.7
2,172.1
1,643.5
2,326.5
2,815.2
2,696.0
2,454.5
3,110.4
3,630.4
輸出量
32,535.4
31,699.9
27,126.1
24,786.8
22,838.3
22,439.3
21,072.9
19,817.8
19,691.7
17,436.2
16,064.9
11,485.6
9,168.8
消費量
3.1
3.7
1.6
1.9
0.6
1.9
0.2
△0.6
2.2
4.9
生産量伸び率
(%)
表 2-5 中国における石油生産及び消費状況統計
44.6
47.5
39.3
32.8
31.0
33.8
23.0
17.2
20.2
10.6
7.6
△20.5
(単位:万トン)
輸入依存度
(%)
△38.6
注:中国統計年鑑 2006
0.9
16.9
9.5
8.5
1.8
6.5
6.3
0.6
12.9
8.5
消費量伸び率
(%)
消費量(万㌧)
消費成長率(%)
35,000
18
16
30,000
14
25,000
12
20,000
10
15,000
8
6
10,000
4
5,000
2
0
0
1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
出典:表 2-5 のデータに基づき作成
図 2-4 中国における石油消費量及びその成長速度の推移
農、林、牧畜、漁業、水利業
建築業
卸売、小売、ホテル、飲食業
生活消費
工業
交通運輸、倉庫保管、郵政業
その他
2005年
2000年
1995年
1990年
1985年
0%
20%
40%
60%
80%
100%
出典:中国統計年鑑
図 2-5 中国における石油消費の産業構造
-33-
2-4-2 石炭
中国の確認されている石炭資源埋蔵量は中国の全化石エネルギー量の 90%以上を占
めており、石炭は中国エネルギーの支配的地位を占めている。中国の石炭生産量及び消
費量は世界の比率の 3 分の 1 強を占め、世界で第 1 位である。
表 2-6 2004 年の中国及び世界の石炭生産、消費状況比較
項目
中国
世界
中国と世界との比較
生産量(億㌧)
成長率(%)
消費量(億㌧)
成長率(%)
19.56
55.38
中国の生産量は世界の 35.32%を占める
13.19
6.81
中国は世界に比べて 6.38 ポイント高い
19.17
55.64
中国の消費量は世界の 34.40%を占める
14.64
6.30
中国は世界に比べて 8.34 ポイント高い
出典:中国発展・改革委員会能源局ホームページに公表されたデータ。(中国統計
年鑑のデータと一部異なる)
1995 年、中国の石炭消費総量は 13.77 億トンであった。「九五」期間(1996 年~2000
年)に石炭消費量はやや下降し始め、1997 年~2000 年の年平均成長率は△2.3%であり、
期初の 1996 年の 14.47 億トンから期末の 2000 年には 13.20 億トンまで減少した。「十
五」期間(2001 年~2005 年)に、中国経済の急速な成長により電力供給不足となり、発電
所用石炭の需要が大幅に増加、中国石炭需要の年平均成長率は 10.4%に達し、2005 年
には 21.66 億トンとなった。
中国における石炭消費量は、石油天然ガス産業及び水力発電事業の発展に伴い、1990
年代末期には全体の消費に占める比率がやや低下したが、それでも 65%以上あった。
今後の相当程度の期間、石炭の中国エネルギー消費における主導的地位が取って代わら
れる事はないと見られるものの、中国政府の「エネルギー中長期発展計画綱領(2004 年
~2020 年)」によれば、2020 年に石炭消費比率を約 60%に抑えるとしている。
中国における暦年の石炭生産量及び消費量の推移については、表 2-7 及び図 2-6 の通
りである。
-34-
表 2-7 中国における暦年の石炭生産量及び消費量の推移
(単位:万トン)
61,009.5
生産量
成長率
(%)
―
消費量
成長率
(%)
―
81,603.0
40.7
―
△0.7
200.3
1,729.0 105,523.0
23.8
―
△1.4
136,073.1
163.5
2,861.7 137,676.5
26.0
―
△2.0
1996
139,669.9
321.7
3,648.4 144,734.4
137,282.0
201.0
3,073.0 139,248.0
4.9
△3.9
△2.3
1997
2.6
△1.7
1998
125,000.0
158.6
3,229.7 129,492.2
△8.9
△7.5
△2.4
1999
128,000.0
167.3
3,743.9 130,000.0
2.4
0.4
△2.8
2000
129,921.0
217.9
5,506.5 132,000.0
1.5
1.5
△4.0
2001
138,152.0
266.0
9,012.9 135,000.0
6.3
2.2
△6.5
2002
145,456.0
1,125.7
8,389.6 141,600.5
5.3
4.7
△5.1
2003
172,200.0
1,109.8
9,402.9 169,232.0
18.4
16.3
△4.9
2004
199,232.4
1,861.4
8,666.4 193,596.0
15.7
12.6
△3.5
2005
220,472.9
2,617.1
7,172.4 216,557.5
10.7
10.6
△2.1
年度
生産量
輸入量
輸出量
1980
62,015.0
199.0
632.0
1985
87,228.4
230.7
777.0
1990
107,988.3
1995
消費量
輸入依
存度(%)
△0.7
△2.1
出典:中国統計年鑑(上表の輸入量データは中国税関のデータと異なっている。)
生産量
消費量
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
(単位:万トン)
出典:表 2-7 のデータに基づき作成
図 2-6 中国における石炭生産量及び消費量の推移
-35-
中国の石炭消費を部門別に見れば、工業部門の消費量が最大であり、2005 年の
全国石炭消費総量の 93.5%を占め、その次に多いのは市民生活に消費される石炭で
あり、2005 年では全国石炭消費総量の 4%を占めている。工業分野では、電力、
冶金、建材及び化学工業の 4 つの産業が最も石炭を消費しており、中でも電力業界
の石炭消費成長率が最も高く、その消費量も多い。
農、林、牧畜、漁、水利業
建築業
卸売、小売業及びホテル、飲食業
生活消費
工業
交通運輸、倉庫及び郵政業
その他
2005年
2000年
1995年
1990年
1985年
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
出典:中国統計年鑑
図 2-7 中国における石炭消費分野の産業構造
-36-
2-4-3 天然ガス
2005 年、全世界の天然ガス生産量は 2 兆 7,589 億 m3 であり、前年比では 2.5%の増
であった。うち、中国の天然ガス生産量は 500 億 m3 で、前年比では 20.5%の増、世界
シェアの 1.81%を占める。
全世界の天然ガス消費量は 2 兆 7,512 億 m3 で、前年比では 2.3%の増であった。う
ち、
中国の天然ガス消費量は 478 億 m3 で、
前年比では 20.5%の増、
世界シェアの 1.73%
を占める。
表 2-8 2005 年の中国及び世界の天然ガス生産、消費状況比較
項目
中国
世界
中国と世界との比較
生産量(億 m3)
500
27,589
中国の生産量は世界の 1.81%を占める
成長率(%)
20.5
2.5
中国は世界に比べて 18.0 ポイント高い
m3)
478
27,512
中国の消費量は世界の 1.73%を占める
成長率(%)
20.5
2.3
中国は世界に比べて 18.2 ポイント高い
消費量(億
出典:中国統計局及びその他メディア発表データを基に作成
中国における天然ガスのエネルギー消費に占める比率は非常に低く、1990 年の 2.0%
から 2005 年の 2.88%に至る迄ほんのわずかしか伸びていない。世界のエネルギー消費
総量において天然ガスの占める比率は 25%あり、アジアの平均水準でさえ 8.8%である。
現在、世界の一人当たりの天然ガス消費量は 403m3/年であるが、中国はわずか 25m3/
年である。中国における天然ガスエネルギー利用の発展の余地は大きい。
中国における天然ガス消費はスタート段階にあり、1995 年の消費量は 177.4 億 m3、
2005 年においても 478 億 m3 にしか過ぎない。
ここ数年、地質埋蔵量の調査の進展に伴い、天然ガス産業の発展も加速し始めた。「八
五」期間(1991 年~1995 年)において、中国の天然ガス新規発見埋蔵量はわずか 0.7 億
m3 であったが、「九五」期間(1996 年~2000 年)では 1.2 億 m3 となり、「十五」期間(2001
年~2005 年)においては 2.47 億 m3 となった。
石油価格の上昇に伴い、中国は大規模に天然ガスを輸入して、石油の代替とする事を
計画している。1998 年、国務院は広東省を先行的トライアル地点としてその LNG(液
化天然ガス)の導入を認可して以降、中国では相次いで 18 件の LNG 導入プロジェクト
が計画された。ここ数年、天然ガス価格は急速に上昇しており、天然ガスの石油代替の
スピードは頓挫を余儀なくされているが、天然ガス産業の急速な発展のトレンドがは変
わる事はない。2006 年 6 月 28 日、中国がオーストラリアから輸入した初めての液化天
然ガス(LNG)が深圳市に到着した。
中国の「第十一次五ヶ年計画」綱領では石油天然ガスの発展を加速するとしており、
「十一五」期間(2006 年~2010 年)において、中国の天然ガスの計画需要がエネルギー需
要に占める比率を 2 倍にし、2010 年には 6%~8%を達成させ、年間消費量は 1,000 億 m3
-37-
に達するとの計画を立てている。
表 2-9 中国における暦年度の天然ガスの生産、消費状況
消費量
(単位:億 m3)
消費量成長率
(%)
年度
生産量
輸入量
輸出量
1980 年
142.7
0
0
140.6
1985 年
129.3
0
0
129.3
1990 年
153.0
0
0
152.5
1995 年
179.5
0
0
177.4
1997 年
227.0
0
0.3
195.4
1998 年
232.8
0
0
202.6
3.7
1999 年
252.0
0
33.8
214.9
6.1
2000 年
272.0
0
31.4
245.0
14.0
2001 年
303.3
0
30.4
274.3
12.0
2002 年
326.6
0
32.0
291.8
6.4
2003 年
350.2
0
18.7
339.1
16.2
2004 年
414.6
0
24.4
396.7
17.0
2005 年
499.5
0
21.5
478.0
20.5
出典:中国統計年鑑
消費量(億m3)
消費量成長率(%)
600
25
500
20
400
15
300
10
200
5
100
0
0
1998年
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
出典:表 2-7 のデータに基づき作成
図 2-8 中国の天然ガス消費量及びその成長率の推移
-38-
中国の現在の天然ガス消費を部門別に見れば、「十五」期間(2001 年~2005 年)では、
化学工業原料としての消費が天然ガス消費総量の 40.72%を、都市ガス消費が 40.57%
を占め、工業燃料消費が 15.21%、発電消費が 3.5%と続いている。
工業燃料
15.21%
発電
3.50%
化工原料
40.72%
都市ガス
40.57%
出典:広東石油ガス商会データ
図 2-9 「十五」期間(2001 年~2005 年)における中国の天然ガス消費の産業構成
中国における天然ガス消費を地域別に見れば、主として生産地における消費が主であ
り、西南地区、東北地区、西北地区に集中している。即ち、四川省、黒龍江省、遼寧省
及び新疆ウイグル自治区である。2003 年のこれらの地域の占める比率は全国消費総量
の 80%以上である。「西気東輸」プロジェクト(西部の天然ガスを東部に輸送するプロジ
ェクト)はあるものの、東部地区の天然ガス消費量は小さい。
ただし、天然ガスの輸入拡大に伴い、東部沿海地区の天然ガスの消費は急速に発展す
る見込みである。現時計画中の液化天然ガス受入センターは全て東部沿海地区に立地し
ている。
-39-
2-4-4 電力
2005 年、全世界の水力発電量は 29,209 億 kw 時で、発電量の増加幅は 4.2%であっ
た。うち、中国の発電量は 3,970.2 億 kw 時で、12.3%の増、世界発電量の 13.59%を
占める。米国発電量の約 2 分の 1 強で、世界第 2 位である。
表 2-10 2005 年の中国及び世界の一次性電力発電状況比較
項目
中国
世界
中国と世界との比較
水力
発電
発電量(億 kw 時)
原子力
発電
発電量(億 kw 時)
3,970 29,209 中国は世界の 13.59%を占める
12.3
4.2 中国は世界に比べて 8.1 ポイント高
い
成長率(%)
530 27,749 中国は世界の 1.91%を占める
5.2
0.6 中国は世界に比べて 4.6 ポイント高
い
成長率(%)
出典:中国統計局及びその他メディアに発表されたデータを基に作成
ここ数年、中国は電力供給能力を常に増強しているが、電力需要も常に急速に拡大し
ているので、中国は常に電力供給不足状況が続いているが、特に季節性、時間的(ピー
ク時)、地域的な供給不足問題が依然として大きい。中国の全国電力消費総量は 1995 年
の 10,023.4 億 kw 時から 2005 年には 24,940.4 億 kw 時に増大し、年平均増加量は
1,491.66 億 kw 時、年平均成長率は 9.5%である。
表 2-11 中国における暦年度の電力の発電、消費状況
年度
発電量
輸入量
輸出量
消費量
(単位:億 kw 時)
発電量成長率 消費量成長
(%)
率(%)
―
―
1980 年
3,006.3
―
―
3,006.3
1985 年
4,106.9
11.1
0.4
4,117.6
36.6
37.0
1990 年
6,212.0
19.3
0.9
6,230.4
51.3
51.3
1995 年
10,077.3
6.4
60.3 10,023.4
62.2
60.9
1998 年
11,662.0
0.2
71.7
11,598.4
15.7
15.7
1999 年
12,393.0
3.7
91.5 12,305.2
6.3
6.1
2000 年
13,556.0
15.5
98.8 13,471.4
9.4
9.5
2001 年
14,808.0
18.0
101.9 14,723.5
9.2
9.3
2002 年
16,540.0
23.0
97.0 16,465.5
11.7
11.8
2003 年
19,105.8
29.8
103.4 19,031.6
15.5
15.6
2004 年
22,033.1
34.0
94.8 21,971.4
15.3
15.4
2005 年
25,002.6
50.1
111.9 24,940.4
13.5
13.5
出典:中国統計年鑑
-40-
発電量
生産量
消費量
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000
0
1999年
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
(単位:億 kw 時)
出典:表 2-11 のデータを基に作成
図 2-10 中国電力発電及び消費の推移
中国における電力消費のうち、工業電力の使用量は 1995 年の 7,659.8 億 kw 時から
2005 年には 18,481.7 億 kw 時に増大し、その間の年平均増加量は 1,082.2 億 kw 時、
年平均成長率は 9.2%であった。ここ数年来、成長率は減少しているが、今後の相当長
期間に渡り、工業電力使用量は電力消費総量の主要部分を占める。
生活電力使用量は 1995 年の 1,005.6 億 kw 時から 2005 年には 2,824.8 億 kw 時に拡
大し、年平均増加量は 181.92 億 kw 時、年平均成長率は 10.9%であった。電力消費総
量に占める比率は上昇傾向にある。
農業電力使用量は 1995 年の 582.4 億 kw 時から 2005 年には 876.4 億 kw 時に増大
し、年平均増加量は 29.4 億 kw 時、年平均成長率は 4.2%である。
2006 年上半期の、電力消費総量は 1,311.23 億 kw 時であり、前年同期比では 12.89%
の増であった。
-41-
農、林、牧畜、漁、水利業
建築業
卸売、小売業及びホテル、飲食業
生活消費
工業
交通運輸、倉庫及び郵政業
その他
2005年
2000年
1995年
1990年
0%
20%
40%
60%
80%
100%
出典:中国統計年鑑
図 2-11 中国における暦年度の電力消費産業構造
-42-
3.
中国四大資源輸入輸送の現状と発展動向
3-1 原油
3-1-1 中国における原油の輸出入量
この十数年来、中国経済の発展に伴い原油需要量は拡大しており、国内原油備蓄量及
び生産量は需要を満足させるには程遠く、輸入量は年々増大している。1995 年の中国
の原油輸入量は輸出量よりもやや少なかったが、1996 年より輸入量が輸出量を上回り
始め、それ以降、
輸出入量の差は年々拡大している。1995 年の中国の原油輸入量は 1,709
万トンであったが、2005 年には 12,708 万トンに達し、10 年間の年平均成長率は 22.2%
にも達しており、同期の経済成長率を遥かに超えている。
表 3-1 1995 年~2005 年の中国原油輸出入量の推移
(単位:万㌧、%)
1999 年
2000 年
年度
1995 年
1996 年
1997 年
1998 年
輸入量
1,709.0
―
2,262.0
3,547.0
3,661.4
7,013.4
32.4
56.8
2,732.0
△23.0
34.0
91.5
2,040.0
11.9
1,983.0
△2.8
1,560.0
△21.3
716.7
△54.1
1,030.6
成長率
1,822.7
―
純輸入量
△113.7
222.0
1,564.0
1,172.0
2,944.7
5,982.8
年度
2001 年
2002 年
2003 年
2004 年
2005 年
6,025.5
△14.1
6,940.8
9,112.6
12,281.5
12,708.2
成長率
輸出量
輸入量
15.2
31.3
34.8
3.5
766.5
813.3
1.5
6.1
549.2
△32.5
806.7
成長率
755.0
△26.7
純輸入量
5,270.5
6,174.3
8,299.3
11,732.3
11,901.5
成長率
輸出量
-43-
46.9
43.8
輸入量
輸出量
14,000.00
12,000.00
10,000.00
8,000.00
6,000.00
4,000.00
2,000.00
0.00
1995年 1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
(単位:万㌧)
出典:表 3-1、図 3-1 ともに中国税関データ
図 3-1 1995 年~2005 年の中国原油輸出入量の推移
これまでの中国原油輸出入の歴史を時系列で分析すれば、原油輸出入は 4 つの発展段
階に分けられる。
発展段階
1 1949 年~1963 年
輸入依存段階
2 1964 年~1972 年
自給自足段階
3 1973 年~1992 年
大量輸出段階
表 3-2 中国原油輸出入の 4 つの発展段階
具体的状況
中国原油は輸入依存度が非常に高く、例えば 1950 年の石油製
品輸入量が消費量に占める比率は 65%であった。
中国において原油と石油製品は基本的に自給自足状況にあっ
た。
この時期、中国はエネルギーの自給自足を強調し、石油燃焼を
圧縮し、石炭で石油を代替する等の一連の政策を取った。中国
は 1973 年、石油生産量が 5,000 万㌧以上となった時点で、原
油の輸出を開始し、1985 年の輸出量は過去最高となり、年間
輸出量は 3,115 万㌧に達した。1980 年代においては、毎年約
4 分の 1 の原油は輸出された。中国石油輸出の目的は主として
以下の 3 点である。
①石油による外貨獲得。1977 年~1985 年、石油輸出増加量が
新規輸出増加総収入の 3 分の 1 を占めた。1985 年以降、繊
維品及びその他工業製品の輸出量が徐々に拡大して、「石油
による外貨獲得」の戦略は徐々に弱体化した。
②いわば石油を技術に変えた。当時の中国が石油を輸出した目
的の一つは、日本に石油を輸出して、これにより外貨を獲得
して、日本から石油化学技術及び設備を導入した。(例:上
海金山石化)
③国際提携と互助。主として中国とキューバ、パキスタンとの
間の石油貿易。
-44-
4 1993 年~現在
大量輸入段階
①大量の輸入、かつ輸入石油への依存度が徐々に高まる。
②1990 年以降、中国重工業は急速に発展し、重工業の工業に
占める比率は 50%以上となり、現在では 70%に近づいてい
る。重工業の急速な発展の状況の下、工業部門のエネルギー
消費比率は急速に上昇している。また、中国輸出外貨獲得製
品も益々多くなってきているので、「石油を外貨に換える」
が強調されなくなり、中国のエネルギー輸出の任務は世界各
国とのエネルギー品種の交換に転換され、エネルギー供給構
造は調整された。これらの要因から、最終的に中国は 1993
年に石油の純輸出国から輸入国となり、1996 年には原油純
輸入国となり、石油の純輸入量は不断に上昇している。
③1996 年~2005 年では、中国石油消費の年平均成長率は
13.3%であるが、石油生産年平均成長率はわずか 1.84%で
ある。中国の石油の対外依存度は 1995 年の 10.6%から 2005
年には 43.7%と急速に上昇した。
④ここ数年、国際原油価格は上昇の一途であるが、経済の高度
成長と発電、運輸業の燃料に対する需要の激増によって、国
内石油の需給は極端な供給不足であり、中国は石油輸入量を
拡大せざるを得ず、2002 年~2004 年の原油輸入量は前年比
で各々15.2%、31.3%、34.8%の増であった。2005 年、連
続 3 年の二桁成長後、輸入速度は顕著に下落し、2005 年の
輸入量は 12,708.2 万㌧で、2004 年の 12,281.5 万㌧に比べ
てわずか 3.5%の増である。ただし、輸入平均価格は 36.4%
の増であるので、輸入額は 2004 年に比べて 41.1%の増で、
478.6 億米㌦に達した。
⑤2005 年、中国政府は高エネルギー消費産業の発展を厳格に
規制し、原油価格高騰の影響もあって、中国原油輸入量の成
長は鈍化した。
-45-
3-1-2 中国における原油の輸入元国/地域
中国原油の主要輸入輸入元国/地域の構成を見れば、中近東とアフリカが常に中国原
油輸入の主要地域となっている。
1999 年~2005 年において、中近東地区から輸入された原油数量が中国の原油輸入総
量に占める比率は常に 45%以上あり、2001 年には 56.2%にまで達した。アフリカは中
国の第二の輸入元であるが、アフリカから輸入される原油の総輸入量に占める比率は
20%~30%である。残りのその他の主要輸入元はアジア太平洋地域と欧州等である。
2000 年から 2005 年における輸入量上位 5 位の国からの原油輸入量合計は、中国の当
該期間の総輸入量において約 60%を占める。
中近東における中国の主要石油輸入元国はサウジアラビア、アンマン、イラン、イエ
メンである。アフリカでは、アンゴラ、スーダン、ザィール、赤道ギニアである。アジ
ア太平洋地域ではロシアが最大の石油輸入元国であり、以下ノルウェー、カザフスタン、
ブラジルと続く。
2000 年~2005 年の中国における原油輸入上位 5 位の輸入元国/地域からの輸入状況
については、表 3-3 の通りである。
-46-
表 3-3 2000 年~2005 年の中国原油輸入上位 5 位の輸入元国/地域からの輸入状況
年度
ランク 輸入国又は地域
輸入量(万㌧)
総輸入量に占める比率(%)
2000 年
1
アンマン
1,559.6
22.2
2
アンゴラ
863.7
12.3
3
イラン
700.0
10.0
4
サウジアラビア
573.0
8.2
5
インドネシア
457.5
6.5
4,153.8
59.2
1,084.7
18.0
上位 5 位合計
2001 年
1
イラン
2
サウジアラビア
877.8
14.6
3
アンマン
814.0
13.5
4
スーダン
497.3
8.3
5
アンゴラ
379.9
6.3
3,653.8
60.6
1,139.0
1,063.0
16.4
15.3
上位 5 位合計
2002 年
1
2
サウジアラビア
イラン
3
アンマン
804.6
11.6
4
スーダン
642.6
9.3
5
アンゴラ
570.5
8.2
4,219.7
60.8
上位 5 位合計
2003 年
1
サウジアラビア
1,517.6
16.7
2
イラン
1,238.9
13.6
3
アンゴラ
1,010.2
11.1
4
アンマン
927.7
10.2
5
イエメン共和国
699.7
7.7
5,394.1
59.2
上位 5 位合計
2004 年
1
サウジアラビア
1,724.4
14.0
2
アンマン
1,634.8
13.3
3
アンゴラ
1,620.8
13.2
4
イラン
1,323.7
10.8
5
ロシア連邦
1,077.7
8.8
7,381.4
60.1
上位 5 位合計
2005 年
1
2
サウジアラビア
アンゴラ
2,217.9
1,746.3
17.5
13.7
3
イラン
1,427.3
11.2
4
ロシア連邦
1,277.6
10.1
5
アンマン
1,083.4
8.5
7,752.5
61.0
上位 5 位合計
出典:中国税関データ
-47-
アンマン
インドネシア
アンゴラ
スーダン
イラン
イエメン共和国
サウジアラビア
ロシア連邦
2,500.00
2217.9
2,000.00
1724.4
1634.8
1,500.00
1559.6
1517.6
1238.9
1084.7
1,000.00
863.7
700.0
500.00
573.0
457.5
877.8
814.0
497.3
1139.0
1063.0
804.6
642.6
1,010.20
1,746.30
1,620.80
1427.3
1323.7
1,277.60
1,077.70
1083.4
927.7
699.7
570.5
379.9
0.00
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
(単位:万トン)
出典:中国税関データ
図 3-2 2000 年~2005 年の中国原油輸入上位 5 位輸入元国/地域からの輸入状況
長年にわたり、中国の輸入原油の多くはホルムズ海峡、スエズ運河、マラッカ海峡を
運ばれ、輸入原油の 90%以上は海上輸送されている。中国は常に輸入元の多元化を模
索、政治の不安定な中近東の原油依存を軽減しようとしてきている。この結果、近年、
中国の原油輸入元に以下の変化が現れている。
1)ロシア及び中央アジアからの原油輸入量が増大しており、既にロシアが原油輸入の重
要ソースとなっている。2005 年、中国がロシアから輸入した原油は 1,278 万トンに
達し、前年同期比では 18.6%の増、中国輸入原油総量の 10.1%を占めている。2006
年 8 月時点での商務部の予測では、2006 年通年の中国のロシアからの原油輸入楼は
1,500 万トンである。また、2005 年 10 月、中国石油天然気集団公司はカザフスタン
PK 石油社の買収に成功し、2006 年 3 月には中国・ロシア両国はタイシェット・ナ
ホトカパイプラインの中国支線の建設協議書に署名し、2006 年 7 月より中国・カザ
フスタンのパイプラインの建設が正式に着工した。これらの対策により、今後数年間
はロシア、カザフスタンからの原油の輸入比率が大きく増加するとみられる。
2)脱硫能力不足が中近東からの原油輸入量を抑制している。中近東地区の硫黄分の高い
原油の輸入コストは依然として競争力はあるが、中国は石油精製工場の硫黄含有原油
-48-
処理能力の制限によりて、中近東地区からの輸入を大きく増やす事が出来ない。中近
東原油の代替として輸入される原油はアフリカの原油である。アンゴラ原油及びスー
ダン原油を主とするアフリカ産原油は硫黄含有量が低く、中間蒸留石油製品の回収率
も高いので、中国の石油精製加工能力に適している。2004 年以降、アフリカ産原油
の輸入量の成長率は 52.1%に達しており、中国原油輸入に占める比率は、2003 年の
24.3%から 28.7%に上昇している。ただし、中国は現在石油精製工場の設備の改造、
更新を行っており、この種の状況は今後変わるであろうと予測される。
3) 輸入元の国/地域が益々多くなっている。ここ数年、中国の原油輸入元は 40 ヶ国以
上に達している。2004 年~2005 年の輸入量上位 5 位の輸入元国/地域から中国に輸
入される原油の量は全て 1,000 万トン以上である。中近東地区が依然として主要原油
輸入元であるが、当該地区の原油の輸入量の中国原油輸入総量に占める比率は既に
50%を割り込んで、2005 年では約 48%となり、アフリカ産原油及びその他地域産の
原油輸入量が徐々に増えて来ている。
3-1-3 輸入原油の輸送状況
1)中国輸入原油の輸送ルートと輸送方法
中国の原油輸入元の構造が中国輸入原油の輸送方法を決定するが、主として海上ルー
ト、鉄道ルートそして、ハイプライン輸送の三種類があり、これらの三種類の輸送方
法の中で、海上ルートが最も主たる輸送ルートである。表 3-4 に各種輸送ルートの主
要路線を纏めた。
表 3-4 中国の原油輸入輸送ルート
輸送方式
海上輸送
陸
上
輸
送
鉄道
パイプ
ライン
具体的ルート
中東航路:ペルシャ湾~ホルムズ海峡~
マラッカ海峡~台湾海峡~中国大陸
アフリカ航路:北アフリカ~地中海~喜
望峰~マラッカ海峡~台湾海峡~中国
大陸
東南アジア航路:マラッカ海峡~台湾海
峡~中国大陸
南米航路:パナマ運河~太平洋
その他
イルクーツク(ロシア)~満州里(中国)
カザフスタン~アララト山(中国新疆)
タイシェット・ナホトカパイプライン:イルクーツク州タイシ
ェット~スクユロジノ~大慶(中国)
中国カザフスタンパイプライン:アタッシュ(カザフスタ
ン)~アララト山(中国)~独山子
各輸送ルートに
占める比率
45.4%
各輸送方式に
占める比率
90.2%
28.7%
10.3%
2.2%
3.6%
8.8%
1.0%
―
9.8%
―
―
出典:中国各メディアの公表資料を基に作成
-49-
注 1:比率は 2004 年のデータ。
2:タイシェット・ナホトカパイプライン中国支線は建設中であり、2008 年末に
は引き渡され使用開始の予定。中国・カザフスタンパイプラインは既に 2006
年 7 月より正式に稼動して運営されている。
表 3-4 のとおり、海上輸送においては、中近東、アフリカ、東南アジアの三ルートで
輸送される石油が中国の輸入原油総量の多くを占めており、2004 年は約 84%であった。
中国の中近東、アフリカ及び東南アジア地区からの輸入原油は全て海上輸送であり、し
かも最後は必ずマラッカ海峡を通過しなければならない。よって、マラッカ海峡は、中
国の「喉元水道」とも呼ばれている。南米の石油も海上輸送にて中国に運ばれるが、太平
洋航路を使用する事が出来る。ただし、南米からの輸入量は少なく、2004 年では総輸
入量のわずか 2.2%を占めるに過ぎない。
陸上輸送の鉄道輸送ルートでは二路線あるが、主として、ロシア及びカザフスタンか
ら輸入される石油は鉄道輸送で中国に運ばれる。現在のシェアは少なく、約 10%であ
る。
陸上輸送では、鉄道輸送以外にも、2006 年 7 月に新しく中国・カザフスタンパイプ
ラインが増設された。中国・カザフスタン両国の協議に基づき、当該パイプラインは
2010 年迄は毎年中国に 1,000 万トンの原油を輸送する。また、タイシェット・ナホト
カパイプライン中国支線も既に 2006 年に建設工事が着工され、2008 年末には引き渡
し・使用開始の予定である。
2)中国原油輸入の主体
中国政府の規定では、認可された国営貿易企業及び非国営貿易企業以外、原油、石油
製品の輸入業務に従事する事は出来ない。中国において、原油輸入ライセンスを取得
している国営企業は 5 社存在するが、具体的には以下の通りである。
①中国石油化工集団公司(SINOPEC、略称:中石化)傘下の中国国際石油化工聯合有
限責任公司(UNIPEC)
②中国石油天然気集団公司(CNPC、略称:中石油)傘下の中国聯合石油有限責任公司
③中国中化集団公司(SINOCHEM、略称:中化)傘下の中国化工進出口総公司
④中海油中石化聯合国際貿易有限責任公司
⑤珠海振戎公司
上記 5 社の国営企業の原油輸入量は毎年中国原油輸入量の約 90%を占め、しかも
2004 年からは原油及び製品オイルのクォータ規制(輸入枠割り当て)が撤廃されてい
る。
また、19 社の非国営貿易企業が原油を輸入する事が出来るが、クォータの規制を受
-50-
けている。しかも規定に基づき、民営企業の輸入原油は二大石油メジャーである「中石
油」と「中石化」に対してのみ販売が許されている。2004 年の中国の計画に基づく非国営
貿易への原油輸入割当量は 1,095 万トン、2005 年は 1,260 万トン、前年比 15%増であ
った。2006 年のクォータは 1,450 万トンで、前年よりも 15%増えた(商務部公告 2005
年第 62 号)。2007 年の原油の非国営貿易への輸入クォータの割当量は 1,668 万トンが
予定され、前年比 15%の増となる(商務部公告第 78 号)。
中国原油輸入の主体である 5 社の国営企業及び 19 社の非国営企業のリストについて
は、表 3-5 の通りである。
-51-
-52-
電話番号
010-84645332
010-66227001
010-88078888
010-84521476
010-52025900
010-64999444
010-82310862
010-66227001
010-84521010
010-63529988
010-65664466
010-84891818
010-88079472
0756-3326897
0411-82825666
0631-5220730
021-38784777
0755-82137298
020-37857228
0716-8566160
0451-84859867
010-65003334
010-62670888
0731-4428859
0451-84859864
010-65004484
010-62670777
0731-4420179
FAX 番号
010-64990300
010-66227002
010-88078890
010-84521117
010-64982259
010-64999538
010-82310841
010-66227002
010-64602600
010-63540398
010-65663282
010-84891882
010-88079736
0756-3326355
0411-82691879
0631-5205638
021-68866900
0755-82137768
020-37857262
出典:中華人民共和国対外貿易経済合作部(現商務部)公告 2002 年第 50 号、第 51 号、中華人民共和商務部公告 2004 年第 46 号、2005 年第 12 号を基に作成
非
国
営
企
業
国
営
企
業
№
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
表 3-5 中国の原油輸入主体である企業のリスト
企業名
住所
中国国際石油化工聯合有限責任公司
北京市朝陽区惠新東街甲 6 号
中国聯合石油有限責任公司
北京市西城区成方街 27 号
中国化工進出口総公司
北京復興門外大街 A2 号中化大厦
中海油中石化聯合国際貿易有限責任公司
北京市東城区東直門外小街 6 号
珠海振戎公司
北京市朝陽区大屯里 121 号振戎大厦
中国石化国際事業有限公司
北京市朝陽区惠新東街甲 6 号
北京市海淀区北四环 中路 263 号
中国石化集団国際石油勘探開発有限公司
中国石油国際事業有限公司
北京市西城区成方街 27 号
中国海洋石油総公司
北京市東城区朝陽門北大街 25 号
中国北方工業公司
中国北京広安門南街甲 12 号
中国康力克進出口有限公司
北京市朝陽区建国門外大街 12 号 10 層
中国遠大集団公司
北京市朝陽区慧忠路 5 号遠大中心 B 座 25 層
中化国際実業公司
北京市復興門外大街 A2 号中化大厦 14 層
中芸華海進出口有限公司
広東省珠海市吉大海濱南路光大国際貿易中心 2112 室
大連海昌集団有限公司
遼寧省大連市中山区人民路 86 号
山東威海華岳建設発展有限公司
山東省威海市文化路櫻花小区 11 号 D 座
上海埃力生進出口股份有限公司
上海市浦東新区浦東南路 256 号華夏銀行大厦 34F、35F
深圳市中油通達石油有限公司
広東省深圳市福田区深南中路 19 号万德大厦 9 楼
広東省広州市天河区珠江新城華夏路 1 号信合大厦南翼 2303 室
広東振戎能源有限公司
湖北天発股份有限公司
湖北省荊州市江漢路 106 号天発大厦
黑龍江聯合石油化工有限公司
黑龍江省哈爾濱市道里区友誼路 501 号
保利科技有限公司
北京東城区東直門南大街 14 号保利大厦
中宝纳 資源控股管理公司
北京市海淀区半壁街南路 8 号匯景閣 1803 室
湖南新華聯国際石油贸 易有限公司
湖南省長沙市芙蓉中路二段 111 号華菱商厦 10 楼
3)中国輸入原油遠洋輸送の担い手
中国の原油輸入の 90%以上がタンカーによって中国に運ばれている。今後、ロシ
アやカザフスタンから輸入される原油の増加に伴い、海上輸送により輸入される原油
の比率は下がると見られるが、それでも中国の原油輸入のほとんどはタンカーにより
輸送される。
原油輸入における、中国のタンカーによる輸送比率は低く、中国の輸入原油の海上
輸送業務のほとんどが例えば、「国際油輪聯営体(Internatinal
(World-Wide
Pool)」、「環球航運
Shipping)」、「韓国現代」等の外国石油タンカー会社の傭船による輸送
である。中近東東周り航路及び西アフリカ東周り航路において、中国船籍の輸送シェ
アは更に小さい。しかも当該二航路は中国の原油輸入の主要航路であり、サプライチ
ェーンの角度から見れば、リスクが最も高い航路である。この事実は、中国にとって
石油の安定確保に対する脅威であり、「中国の石油は中国船が運ぶ」のスローガンを打
ち出す重要な要因となっている。最新データが無いので、2002 年の中国の輸入原油
における外国タンカーによる輸送比率を図 3-3、その他データを表 3-6 に示すので、
参考とされたい。直近 2 年においては、中国のタンカーによる輸入原油の輸送比率が
徐々に上昇してはいるが、根本的に外国のタンカーに依存する状況を打破するには至
っていない。
中国オイルタン
カー, 9.3%
鉄道部門, 7.0%
外国オイルタン
カー, 83.7%
出典:21 世紀経済報道(2006.06.16)に掲載されたたデータを基に作成
図 3-3 2002 年における中国の現有輸入の輸送主体
-53-
表 3-6 2002 年における中国の輸入原油の輸送状況
タンカー所属国
輸入量(万㌧)
輸入総量に占める比率(%)
地区
中近東
中国
130
3.78
外国
3,309
96.22
3,439
49.55
中国
0
0.00
外国
1,580
100.00
1,580
22.76
550
499
52.43
47.57
1,049
15.11
合計
西アフリカ
合計
東南アジア
中国
外国
合計
出典:招商局集団有限公司による情報
注:2002 年に中近東航路にて石油を輸送した中国船隊は「招商局集団有限公司」一
社のみである。
中国商船隊の輸入原油遠洋輸送に占める比率が低い主な原因は以下の通りである。
①
中国船主の輸送請負能力が不足している。コンテナ及びばら積み貨物輸送に比べて、
中国のタンカー輸送船隊の規模は小さく、船型構造も不向きである等の問題が顕著で
ある。
報道によれば、2003 年、中国石油輸送企業が保有する輸入原油輸送可能な 6 万ト
ン級以上のタンカーによる具体的輸送能力状況は以下の通りである。
「招商局」:306 万積載重量トン
「大連遠洋」:105 万積載重量トン
「中海油運」:60 万積載重量トン
「大連海昌」:40 万積載重量トン
「南京油運」:7 万積載重量トン
合計:518 万万積載重量トン
うち、大型タンカーVLCC(20~30 万積載重量トン)及び AFRAMAX(8~12 万積載重
量トン)は各々10 隻前後あり、これらが全て中国の輸入原油を運んだとしても、その年
間輸送能力は 3,000~4,000 万トンであり、2003 年の中国の輸入原油 9,113 万トンのう
ち 90%が海上輸送されるとの仮定で計算しても、2003 年中国がタンカー輸送で輸入し
なければならない原油量は 8,200 万トン以上となる。よって、中国船主の輸送能力は輸
入需要を満たす事は出来ない。
②
中国石油輸入企業とタンカー船主は長期的戦略に関する提携に欠き、能力と需要に
-54-
おいて重大なミスマッチが生じている。中国のほとんど全ての石油輸入は外国船主が
輸送を請負っている反面、中国船主の輸送能力の多くが国際市場に対するサービスに
振り向けられている。
「招商局」を例に挙げれば、1990 年よりタンカー船隊の経営を開始して以降、常に
主として国際原油輸送市場向けにサービスを提供している。2002 年の「招商局」タン
カー船隊は合計世界各国の顧客の 3,170 万トンの石油を輸送したが、うち、中国の輸
入原油の輸送はわずか 227.3 万トン、同社の船隊総輸送量の 7.32%を占めたに過ぎな
い。言い換えれば、「招商局」タンカー船隊の総輸送能力の 92.68%は国際市場のサー
ビスを担っているのである。
能力面から見れば、2002 年の「招商局」タンカー船隊の極東航路は日本/韓国の輸入
原油の輸送を担当し、合計 1,084.27 万トンの原油を輸送した。日本と韓国の航路は
中国の航路との類似性が高いので、「招商局」の VLCC タンカーが中近東や西アフリ
カ東周り航路を輸送する場合の能力は少なくとも 1,300 万トンが達成可能であり、
2002 年の中国の当該二航路の輸入石油総量の約 26%を運ぶ事が可能である。
ただし、
実際には中国船隊の中近東航路での輸送量はわずか 3.78%を占めるだけであり、しか
も西アフリカ航路では全て外国タンカーによる輸送である。
ここ数年、中国船主より「中国の石油は中国船で運ぶ」とのスローガンが発せられ、
中国船隊の整備が行われ、中国船主による輸送量はある程度増大している。2004 年
以前は、中国船主による輸入原油輸送比率は 10%以下であったが、2004 年には 14%
となり、2005 年には更に上昇して 31%となった。
現在、輸入原油の遠洋輸送に従事している中国国内企業は主として国有資産管理委
員会の監督管轄下にある五大公司であり、その詳細は表 3-7 の通りである。
また、ここ数年、数社の民営企業が輸入原油の遠洋輸送業務に参入している。
-55-
-56-
住所
010-62295901
中国対外貿易運輸(集団)総公司(略称:中国外運) 北京市海淀区西直門北大街甲 43 号金運大厦 A 座 010-62295900
5
021-68757929
0852-28151837
025-58801195
021-68757170
0852-25172128
0411-82634500
FAX 番号
025-58586114
江蘇省南京市中山北路 324 号
上海市浦東新区源深路 168 号
香港干諾道中信德中心招商局大廈 37 樓 3701 室
0411-82636161
電話番号
中国長江航運集団(略称:長航)の子会社である
中国長航南京長江油運公司(略称:南京油運)
中海発展股份有限公司油轮公司(略称:中海油運)
中国海運(集団)総公司(略称:中海)傘下の
香港明華船务有限公司(略称:香港明華)
招商局集団(略称:招商局)傘下の
中国遠洋運輸(集団)総公司(略称:中遠)に所属す 遼寧省大連市中山区七七街 29 号
る
大連遠洋運輸公司(略称:大連遠洋)
企業名
4
3
2
1
№
表 3-7 中国における輸入原油遠洋輸送に従事する主要国内企業
表 3-7 の五社の主要遠洋輸送企業の中で、「招商局」が 1980 年代末より国際石油輸
送市場に進出を開始したのを除き、その他は全てここ数年に中国輸入原油の輸送を担
い始めた「新船隊」である。「中国外運」と「長航」が輸入原油輸送市場への進出が最も遅
く、2004 年 7 月 24 日、「中国外運」の第 1 隻目の VLCC が中近東からの原油を中国
寧波港に運び、「中国外運」が実質的にオイルタンカー輸送分野に進出した。2005 年
8 月 20 日には、VLCC
FRONTSABANG が正式に中国長航集団南京輸運公司に引
き渡されて経営を開始し、中国長航集団南京輸運公司は正式に中国輸入原油輸送市場
に進出した。
輸入原油輸送は目的地別に通常は「一程運輸、二程運輸、三程運輸」の 3 つの段階に
分ける事が出来る。一程運輸とは、輸入国の沿海港湾迄の輸送を言う。二程運輸とは、
沿海港湾間の転送又は海上から長江河川港(長江では南京迄)迄の輸送を言う。三程運
輸とは、内陸河川中継港から河川沿いの各石油化工企業のユーザー迄の輸送を言う。
伝統的な「勢力範囲」で分ければ、「招商局」、「中遠」は一程運輸に強く、「中海」は二程
運輸が主力であり、「長航」は三程運輸に絶対的優位性がある。現在の状況から見れば、
「招商局」、「中遠」、「長航」及び「中国外運」は共に一程運輸に対応出来る。
ここ数年では、民営企業の輸入原油遠洋輸送分野への参入もあり、その発展は著し
い。代表的な企業としては、泰山石化集団有限公司、河北遠洋運輸股份有限公司、大
連海昌集団等である。これらの企業は輸入原油の一程運輸業務をテスト的に展開して
いる。
4)中国国内オイルタンカー船隊の現状
中国のオイルタンカーのここ数年の発展は急速であり、日進月歩と形容する事が出
来る。特に VLCC の保有隻数は各水上輸送企業のホームページや各メディアにて発
表されているデータによれば、2002 年のわずか 7 隻から 2006 年には 39 隻に増加し、
その成長速度の速さが注目を集めている。
各主要水上輸送企業のここ数年における VLCC 保有隻数については、表 3-8 の通
りである。また、2006 年 8 月時点の主要水上輸送企業が保有する大型オイルタンカ
ーの隻数をまとめたものが表 3-9 の通りである。
-57-
-58-
中遠集団
招商局
中国外運
中国海運
長江航運
泰山石化
河北遠洋
大連海昌
合計
企業名
招商局
中遠集団
中国外運
中国海運
長江航運
河北遠洋
大連海昌
泰山石化
合計
企業名
表 3-9 中国における各主要水上企業の保有する大型オイルタンカーの状況
(単位:隻、万トン)
VLCC
AFRAMAX 及びスエズ型
パナマックス型
合計
隻数
積載重量㌧
隻数
積載重量㌧
隻数
積載重量㌧
隻数
積載重量㌧
7
181.4
11
74.5
18
255.9
6
175.4
8
80.4
14
255.7
4
109.2
4
109.2
3
87.6
6
63.4
16
107.0
25
258.0
2
55.0
2
22.0
3
21.8
7
98.8
12
321.4
2
18.8
14
340.2
3
81.9
3
81.9
2
54.6
2
54.6
39
1,066.4
18
184.7
30
203.3
87
1,454.4
出典:各水上輸送企業のホームページ及び中国国内各メディアにて発表されたデータを基に作成(2006 年 8 月末時点)
(単位:隻)
2002 年末
2004 年 6 月
2004 年末
2006 年 8 月
7
8
9
6
3
5
7
5
5
4
2
3
2
3
3
3
2
2
2
2
11
12
7
23
37
39
出典:各水上輸送企業のホームページ及び中国国内各メディアにて発表されたデータを基に作成
表 3-8 ここ数年における中国の各主要水上輸送企業の保有する VLCC 隻数の推移
5)中国国内原油バースの現状
近年、中国の港湾事業は長足の進歩を遂げた。2005 年末時点において中国沿海港
湾には合計 57 の原油バースが存在し、2002 年の 23 バースから 34 バース増加した。
その荷役能力は約 2.5 億トンであり、2002 年の 1.02 億トンの 2.45 倍である。
環渤海湾地域には 13 の原油バースが存在し、
その荷役能力は 9,465 万トンである。
長江デルタ地域には 37 の原油バースが存在し、
その荷役能力は約 1.1 億トンである。
珠江デルタ地域には 5 つの原油バースが存在し、
その荷役能力は 3,600 万トンである。
福建省、広西チワン族自治区、海南省の沿海地区には 2 つの原油バースが存在し、そ
の荷役能力は 515 万トンである。以上のとおり、環渤海湾地域及び長江デルタ地域に
は原油バースが集中しており、中国原油バース総数の 88%を占め、中でも長江デル
タ地域の保有バース数が最多であり、中国原油バース総数の 65%を占めている。
また、20 万トン級以上の原油荷役バースは 6 バース迄増えており、舟山港、寧波
港、青島港、茂名港、湛江港、大連港にある。
表 3-10:中国の各主要沿海地域が保有する原油バースの状況
地域
バース数
荷役能力(万㌧)
環渤海湾地域
長江デルタ地域
13
37
9,465
11,000
珠江デルタ地域
5
3,600
その他の沿海地区
2
515
57
24,580
合計
出典:日照港科技ネット(http://www.rzgkj.net)にて 2006 年 8 月 16 日
付で発表された『沿海港湾建設史は常に刷新される』による。
それでも、中国の港湾事業は依然として原油輸送の需要を満足させる事が出来ない。
報道によれば、中国の重要な石油消費・加工基地である珠江デルタ地域では茂名港の
み係留バース設備があるが、その他の港湾の原油の荷役は依然として水上バージによ
る積み替え方式であり、一旦大風・大波の状態になれば、タンカーは停泊する事が出
来ない。港湾が比較的多く存在する環渤海湾地域においても、航路の水深が浅く、20m
以上の大水深航路が不足しているので、大型タンカーが接岸、停泊出来ず、水上バー
ジ積み替え輸送と言う時間も費用もかかる方式に依存せざるを得ない状況である。
3-1-4 輸入原油の輸送動向予測
関連情報を総合的に分析すれば、中国の輸入原油の輸送については、以下の 3 つの動
向を読み取る事が出来る。
1)原油の輸入元、輸送航路及び輸送方式の多元化
ここ数年、中国国内ではエネルギー安全保障問題への関心が高まっている。関連専
-59-
門家によれば、中国はエネルギー安全保障上主として以下の 3 つの問題点を抱えてい
る。
①原油輸入元が単一的であり、主要輸入元地域である中近東及びアフリカ地域の政情
が不安定であり、原油の安定的供給の保証が困難である。
②原油輸入元が単一的である事から、輸送航路も単一的になっている。マラッカ海峡
が中国原油の生命線である。ただし、海賊や国際関係等の理由から、この生命線も
安全ではない。
③中国原油の輸送は外国のオイルタンカーに大きく依存しているので、制約を受け易
い。
原油の安全確保を考えれば、中国は原油輸送の安全システムを緊急に構築しなければ
ならない。ここ数年、中国政府は原油輸入元の開拓及び新規輸送航路の開拓に力を注い
でいる。原油輸入元の開拓の主要方向はロシア及びカスピ海地域からの原油輸入を拡大
する事である。これら以外にも中国はスーダン、ベネズエラ等の国の原油輸入を行おう
としている。
原油輸送航路及び輸送方式においても中国は積極的に多元化を模索している。泛亜鉄
道は 2005 年 9 月に正式に着工、当該鉄道はシンガポールを始発として、バンコク、プ
ノンペン、ホーチミン、ハノイを経て、終着駅は昆明であり、中国の石油陸上輸送の新
ルートとなる。また、2006 年初め、国家発展・改革委員会はその『2005 年石油精製工
業発展概論』の中で、石油輸送保障水準を引き上げる為、輸入原油の四大輸送ルートを
構築しなければならないとし、即ち二つの陸上原油輸送ルート(中国・ロシア及び中国・
カザフスタンパイプライン)、二つの海上原油輸送ルート(マラッカ海峡及び中国・ミヤ
ンマー)である。当該四大輸送ルートについて表 3-11 にまとめた。
今後、中国の原油輸入元は分散化され、原油輸送航路及び輸送方式も相対的に多元化
される。カスピ海地域のパイプラインを通じて中国に輸入される原油が今後の中国の輸
入原油の増加量の大多数を占めると予測されている。海上輸送による輸入原油の絶対値
も減少する事はないが、原油総輸入量に占める比率はある程度減少するとみられる。
-60-
表 3-11 『2005 年石油精製工業発展概論』にて提示された
構築すべき輸入原油の四大輸送ルート
原油輸送ルート
具体的状況
①中国初の国際原油輸送パイプライン。既に 2006 年 7 月 29
日に正式に商業稼動している。
②西はカスピ海のアトラから東は新疆のアララト口迄、全長
3,088km、設計年間輸送能力は 2,000 万㌧であり、中国の
2005 年の原油輸入量の約 15%に相当する。カザフスタン
とロシアは各々50%の原油輸送量を提供する。
③カスピ海大陸棚には既に明らかになっている石油埋蔵量
は 24 億㌧であり、予想総埋蔵量は 70 億㌧であって、当
該地域は中近東地域以降の世界第二の大産油地域となる。
今後イラン等のカスピ海沿海国家の油田・天然ガス資源も
当該パイプラインを通じて、中国新疆に輸送される可能性
がある。
1
中国・カザフスタン
パイプライン
2
中国・ロシアパイプラ ①2006 年 3 月 21 日、12 年間の「世紀交渉」を経て、中国石
油天然気集団(略称:中石油)は、ロシアパイプライン輸送
イン(タイノール中国
支線)
公社と『中国石油天然気集団公司及びロシアパイプライン
輸送公社との覚書』を締結した。
②2006 年 4 月 28 日、タイノールラインは正式に着工され、
第 1 期工事はシベリア中部のタイシュタットから中国東
北部辺境に近いスコヨロジノスク迄、全長 2,400km であ
り、2008 年末には引き渡し使用の計画であり、この時の
年間輸送の能力は 3,000 万㌧に達する。
③タイノール石油パイプライン第 1 期工事はタイシュタッ
ト~大慶の支線を建設するが、年間輸送能力は 2,000 万㌧
であり、第 1 期工事の輸送能力の 2/3 を中国の大慶に振り
向ける。当該パイプラインは中国原油の輸入圧力及びリス
クを大幅に削減する。
3
マ ラ ッ カ 海 峡 海 上 輸 ①当該ルートは中国の現在の海上原油輸入主要ルートであ
送ルート
り、中近東地域及びアフリカ地域から輸入される原油のほ
とんどが当該ルートにて輸送されている。
②当該ルートの現在の主要航路は以下の 3 航路である。
航路名
具体的ルート
1 中東航路
ペルシャ湾~ホルムズ海峡~マラッ
カ海峡~台湾海峡~中国大陸
2 アフリカ航路
北アフリカ~地中海~喜望峰~マラ
ッカ海峡~台湾海峡~中国大陸
3 東 南 ア ジ ア 航 マラッカ海峡~台湾海峡~中国大陸
路
(次頁に続く)
-61-
原油輸送ルート
4
具体的状況
中国・ミヤンマー輸送 ①2006 年 4 月、
『中国経営報』の報道によれば、中国・ミャ
ルート
ンマー輸送パイプラインプロジェクトは 2006 年 4 月初旬
に国家発展・改革委員会の最終審議を通過して、「中石化」、
「中石油」の関連競争的実施案も既にエネルギー局に上申
された。この総投資額数十億米㌦のプロジェクトは 2006
年には着工を開始する。
②実証を経ていない説法によれば、中国・ミャンマー石油パ
イプラインの概要は、中近東及びアフリカの原油を遠洋オ
イルタンカーにてインド洋からミャンマーの Sittwe 港に
て陸揚げされ、900km のパイプラインを通じてミャンマ
ーの Manalalay、雲南省瑞麗を経て、昆明に直接運ばれ
る。
③当該ルートは、中国の中近東・アフリカ地域で調達した石
油を直接インド洋を経由してミャンマーを経て中国に運
ばれる。マラッカ海峡から原油を湛江港・寧波港に運ぶ「太
平洋航路」に比べて、当該「インド洋航路」は 1,200km 余り
も近い事を除き、安全度も高い。
出典:国家発展・改革委員会が 2006 年に発表した『2005 年石油精製工業発展概論』
を基に作成
以上の既に建設着工中又は竣工している原油輸送ルートの他に、中国とパキスタンと
の「エネルギー回廊」計画や中国とタイの「海陸複合輸送陸橋」及び「カラチ海峡運河」計
画等の構想がある。現段階において実現の可能性は低いと見られているが、ある意味で
は中国政府の原油輸送方式及び輸送ルートの多元化に対する努力を現すものと言える。
①中国・パキスタン「エネルギー回廊」
中国及びパキスタンの両国には以下の構想がある。パキスタン西部の省のマクラン
地域にあるグワダール港を起点として中国新疆への陸上石油パイプラインを建設し、
中近東及びアフリカからの石油を移送する事により、マラッカ海峡を回避する。グワ
ダール港からイラン国境迄の距離はわずか 72km であり、重要な戦略的意義のあるボ
ーズ湾の喉元付近に位置しているので、アフリカ、欧州~紅海、ホルムズ海峡、ボー
ズ湾を通って東アジア、太平洋地域に抜ける数本の海上重要航路の喉元を支配する事
になる。ただし、この構想は現在論証中である。コスト要因及びパキスタン・イラン
国境のテロ活動の頻繁な発生等の原因で、当該構想の実現には大きな不確定要素が存
在する。
②中国とタイの「海陸複合輸送陸橋」及び「カラチ海峡運河」計画
-62-
タイよりタイ南部沿海地域の「海陸複合輸送陸橋」及び「カラチ海峡運河」の建設を
提案しているが、現在は依然として一つの提案に留まっており、短期間内に実質的進
展のある可能性は低い。
2)中国船隊輸送能力の増強
中国オイルタンカー船隊の輸送能力が不足し、中国輸入原油の海上輸送需要に対応
する事が困難である事から、中国の政策決定部門は中国石油輸送安全システム構築に
対する検討を行うための作業グループを設立した。2003 年以降、中国政府の関連部・
委員会は、国内三大原油輸入企業である「中石化」、「中石油」及び「中海洋」並びに四大
国内主要原油輸送企業である「中遠集団」、「中国海運」、「招商局」、「長江航運」と何度
も会議を開いて、当面の発展計画を報告した。
当該計画には、以下が盛り込まれた。
・2005 年までに 5,000 万トンの原油を輸送可能な大型遠洋輸送船隊を建造、竣工
する。
・2010 年までに 7,500 万トンの原油を輸送する事が出来る大型遠洋輸送船隊を建
造、竣工させ、少なくとも 50%以上の輸入原油の輸送を担う事を保障する。
・2020 年までに 1.3 億トンの輸入原油を輸送する船隊を建造、竣工する。
・政府は主として輸送企業と石油輸入元企業との長期提携契約の締結を促進して、
「中国の石油は中国船が運ぶ」を実現し、「中国の船舶は中国が建造する」を推進す
る。また、造船所の大型オイルタンカー建造を支援するため、国家財政は造船所
に全額利子補填貸付を提供する。(利子補填貸付けは、現時点で未実施)
この様な政府の奨励推進の下、「招商局」、「中遠集団」、「中国海運」、「長江航運」
等の原油輸送企業と主要原油輸入企業、例えば「中石化」は、原油輸送協議に合意して、
「泰山石化」と「珠海振戎」も長期輸送協議を締結した。
実際、中国と日増しに拡大する原油需要がもたらす「石油危機」を緩和して、原油輸
送の安全を保障する為、中国は各主要輸送企業と期せずしてオイルタンカー拡張運動
の振興で一致したのである。よって、ここ数年、中国船隊が保有する超大型オイルタ
ンカーVLCC の隻数は急増している。輸送能力も輸入原油輸送の 60%以上を担う迄
に至っている。
不完全統計データによれば、2006 年 8 月時点における中国が運航している 30 万ト
ン級超大型オイルタンカーVLCC は 39 隻存在するが、各タンカーの積載重量トンを
25 万トンとして計算し、1 年に 8 回航行すると仮定すれば、中国の VLCC の年間輸
送能力は 7,800 万トンとなり、既に中国の海上輸入原油総量の 64%を占める事にな
る。当該輸送能力は、中国政府の 2010 年における 7,500 万トン輸入原油輸送船隊建
造竣工の目標を既に達成している。また、この計算には 18 隻の 10 万トン以上のス
エズ型及び AFRAMAX 型大型オイルタンカーの輸送能力を含んでいない。現在、各
主要大型遠洋輸送企業は皆その船隊規模を拡大しており、既に発注済で未竣工の
-63-
VLCC が 30 隻以上存在する。今後、こられのタンカーが全て運航開始されれば、「中
国の石油は中国船で運ぶ」というスローガンを達成する事になる。
これに対して、既に業界関係者は VLCC 投資過熱に対して警告を発している。
表 3-12 各大型水上輸送企業のタンカー輸送能力拡大の為の発展計画
水上輸送企業
タンカー輸送能力拡大の為の発展計画
1
招商局
①2008 年迄には以下の隻数を増加する計画である。
スエズ型
アフラ型
VLCC
6隻
2隻
6隻
②「招商局」は上記輸送能力拡大と同時にタンカー構造の合理化
を更に進めて、タンカーの総輸送能力を 2005 年初の 340 万
積載重量㌧から 500 万~600 万積載重量㌧に拡大する計画で
ある。
③「招商局」はタンカー資産を再編中であり、独立したタンカー
会社を設立すると言う情報がある。「中石化」と「中化油」がこ
の会社の戦略的パートナーであり、「中石化」は 15%の出資権
を保有する予定である。
2
中遠集団
約 15 隻の VLCC を購入する計画であり、今後のタンカー船隊
規模は 400 万積載重量㌧を達成させる。
3
中国海運
①今後 2 年間で 6~8 隻の VLCC を建造して、2010 年迄には別
途 15 隻の VLCC を建造する。
②計画によれば、2010 年のタンカー船隊は 750 万~850 万積載
重量㌧の能力を備え、中国輸入原油市場の 15~20%のシェア
を確保する。
4
中国外運
2006 年 7 月、「中国外運」と日本の商船三井は合弁にて 31 万積
載重量㌧の VLCC を建造する事を決定し、当該船舶は 2008 年
3 月~5 月に引渡し使用開始であり、「中国外運」と商船三井の合
弁企業である「海安油運公司」が保有する。
5
長江航運
2006 年 3 月、中国長江南京油運公司は大規模な造船計画に着手
し、10 隻の大型タンカーを建造するとした。具体的には VLCC2
隻及び 4+2+2 隻の MR(5 万㌧級)オイルタンカーであり、契約
総額は 5 億米㌦、人民元換算総額は約 40 億元である。既に建
造発注している 6 隻の VLCC を加えれば、この会社の大型タン
カー保有隻数は 10 隻となり、国際大型水上輸送企業の仲間入り
となる。「十一五」期間(2006 年~2010 年)における「南京油運」
の輸送能力規模は 500 万積載重量㌧以上となる。
出典:各種メディア報道を基に作成
3)原油バース等水上輸送インフラ基盤施設の大幅な改善
2006 年 8 月、中国国務院は審議を経て、『全国沿海港湾配置計画』を原則通過させ
-64-
た。各沿海港湾グループにおける原油バース計画については、表 3-13 の通りである。
表 3-13 中国沿海五大港湾グループ原油バースの発展計画
港湾グループ
発展計画
1
渤海湾港湾グループ
①2010 年迄に、大連港、天津港、青島港を主と
した輸入原油中継システムを確立して、原油荷
役能力を新たに 3,000 万㌧拡大する。
②環渤海湾地域の建設中、建設予定の大型原油バ
ース概況
港湾名
規模(万㌧)
着工日
1
青島港
30
2006.04
2
天津港
30
3
威海港
30
2006.03
計画中
4
煙台龍口港
20
計画中
計画中
5 大連港
50
注:『中国水運報』に発表されたデータを整理
して作成した。
2
長江デルタ地域港湾グループ
主として寧波港~舟山港を重点とし、原油荷役能
力を新たに 2,500 万㌧拡大する。
3
珠江デルタ地域港湾グループ
惠州港、深圳港、珠海港の輸入原油及び製品オイ
ル・天然ガス荷役バースを主として、広州港、東
莞港等の製品オイル・天然ガスの中継輸送機能を
発展させる。
4
東南沿海港湾グループ
主として泉州港の輸入原油・天然ガス荷役システ
ムを発展させる。
5
西南沿海港湾グループ
主として湛江港、海口港、広西チワン族自治区沿
海港湾等により石油・天然ガス中継備蓄輸送シス
テムを発展させる。
(関係者によれば、広西チワン族自治区北海シ圍洲
島西北側海域の天然水深は 22~25m であり、
30 万~50 万㌧の原油バースを建設する事が出
来、西南沿海大水深海岸線における貴重な大型
原油バースとなる。
)
-65-
大 连
天 津
青 岛
舟 山
宁 波
泉 州
港 江
惠 州
茂 名
出典:国家発展・改革委員会総合運輸研究所の資料
図 3-4 中国政府の原油輸送システム計画図
注:石油化学企業の分布に基づき、石油輸送システムの建設・発展専業化により輸入
原油一程・二程中継備蓄輸送施設及び製品オイル・天然ガス中継備蓄輸送施設が
整備される。20 万トン級以上の原油荷役バース及び鉱石バースが建設される。
-66-
3-2 鉄鉱石
3-2-1 中国における鉄鉱石の輸出入量
改革開放以降、中国経済は急速な発展速度を維持し、鉄鋼生産量も急速に伸びた。中
国の鉄鋼生産量は 1996 年に 1 億トンを突破して以来、連続 10 年間世界第一位を維持
している。2004 年の鉄鋼生産量は 2.73 億トンで世界の鉄鋼生産量の 26%、2005 年の
中国鉄鋼生産量は初めて 3 億トンを突破、3.49 億トンとなり世界の鉄鋼生産量の 31%
を占めた。さらに、中国鋼鉄工業協会の最近の発表では、2006 年の粗鋼生産量は 4.18
億トンに達したとされている。
こうしたなかで、中国の鉄鉱石の生産量も 2001 年以降、
引き続き成長してはいるが、
鉄鉱石の増産能力には限りが有り、また、国産鉄鉱石の品質が相対的に低い為、国内鉄
鋼生産の需要を満足する事が出来ず、中国は毎年大量の輸入鉄鉱石により国内生産需要
を賄っている。中国の鉄鉱石生産量については、表 3-14 の通りである。
表 3-14 中国の国産鉄鉱石生産量の推移(1996 年~2006 年)
国産鉄鉱石の生産量
年度
生産量(万㌧)
前年比成長率(%)
1996 年
25,228
△3.68
1997 年
26,861
1998 年
24,689
6.47
△8.09
1999 年
23,723
△3.91
2000 年
22,256
△6.18
2001 年
21,702
△2.49
2002 年
23,143
6.64
2003 年
26,108
12.81
2004 年
31,010
18.78
2005 年
42,000
35.44
2006 年
54,000
28.57
出典:1996 年~2005 年のデータは、
『海運情報』に発表されたデータを整理した。
2006 年のデータは中国鋼鉄工業協会執行董事である鄒健氏の予測データ。
一方、中国鉄鉱石の輸入量も、2000 年以降急速に伸びており、2003 年の中国鉄鉱石
輸入量は 1.48 億トンで、日本を抜いて世界一の鉄鉱石輸入大国となった。2005 年の輸
入量は更に拡大して 2.75 億トンとなり、2003 年の 1.9 倍となった。最近の発表によれ
ば、2006 年の中国鉄鉱石輸入量は 3.26 億トンに達したとされている。
最近の中国による鉄鉱石の輸出入量は、表 3-15 の通りである。
-67-
-68-
9,239
11,149
14,819
20,808
27,524
32,500
2001 年
2002 年
2003 年
2004 年
2005 年
2006 年
18.07
32.28
40.41
32.92
20.67
32.04
26.60
前年比成長率(%)
0.19
―
0.59
0.14
0.07
0.06
0.06
輸出量(万㌧)
―
321.43
△67.80
100.00
16.67
0.00
--
前年比成長率(%)
鉄鉱石輸出量
69,524
―
51,817
40,927
34,292
30,941
29,253
見かけ消費量(万㌧)
注:見かけ消費量=国内生産量+輸入量―輸出量
出典:2000 年~2005 年のデータは中国税関データ、2006 年のデータは中国鋼鉄工業協会執行董事である鄒健氏の予測データ。
6,997
輸入量(万㌧)
鉄鉱石輸入量
2000 年
年度
表 3-15 中国鉄鉱石輸出入量の推移(2000 年~2005 年)
輸入量
輸出量
30,000
27,524
0.59
0.6
25,000
20,808
20,000
0.5
0.4
14,819
15,000
0.3
11,149
9,239
10,000
5,000
0.7
4,387
5,511
5,177
6,997
5,527
0.06
0.19
0.2
0.14
0.06
0.1
0.07
0
0
1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
(単位:万トン)
出典:中国税関データ
注:輸出量は右 Y 軸の数値による。
図 3-5 中国鉄鉱石輸出入量の推移(1996 年~2005 年)
69,524
70,000
51,817
60,000
40,927
50,000
40,000
29,253
30,941
34,292
30,000
20,000
10,000
0
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
(単位:万トン)
出典:中国税関データ
注:見かけ消費量=生産量+輸入量―輸出量
図 3-6 中国の鉄鉱石見かけ消費量の推移(2000 年~2005 年)
-69-
表 3-14~表 3-15 及び図 3-5~図 3-6 から以下のことが言える。
1)輸入の絶対量が大きい
中国は世界第一の鉄鉱石消費大国であり、輸入大国であって、2005 年の世界の鉄
鉱石海運取引量の増加量のほとんどが中国向けであり、2005 年の中国鉄鉱石輸入量
は 2.75 億トンに上り、世界の鉄鉱石海上取引量の約 43%を占めた。2006 年 1 月~6
月の中国鉄鉱石輸入量は 1.61 億トンであり、
前年同期比で 3,010 万トンの増である。
最近の発表では 2006 年通年の鉄鉱石輸入量は 3.26 億トンとされている。
2)輸入量の伸び率は急速である
1990 年~2000 年の中国鉄鉱石輸入量の年平均伸び率は 17.3%であり、
『十五』期
間(2001 年~2005 年)の年平均伸び率は更に高く 31.5%に達した。ただし、中国政府
の製鉄産業に対するマクロ調整実施、さらに鉄鉱石輸入価格の高騰、国内鉄鉱石増産
等のの要因で、鉄鉱石の需要の増大傾向は抑制され、2005 年の中国鉄鉱石輸入の伸
び率は大幅に下がり、2006 年も引き続き下がると予測されている。
3-2-2 中国における鉄鉱石の輸入元
中国の輸入鉄鉱石は主としてオーストラリア、インド及びブラジルからの輸入である。
オーストラリア産鉄鉱石の品質は高く、海上運賃は安く、1 トン当たりの平均運賃は約
17 米ドルであり、船舶往復期間は約 30 日強であって、中国製鉄企業の輸入鉄鉱石の第
一選択肢となっている。ブラジル、ペルー等の南米諸国からの輸入鉄鉱石の海上運賃は
比較的高く、1 トン当たりの平均運賃は約 35 米ドルであり、CIF 価格はオーストラリ
ア産鉄鉱石よりも高く、船舶往復期間は約 70~75 日である。ここ数年来、オーストラ
リア産鉄鉱石は供給不足であり、加えて中国国内の中小製鉄企業の鉄鉱石需要が拡大し
ている事から、供給不足の問題を解決する為、中国はブラジル及びインド産鉄鉱石の輸
入量を拡大させており、中国輸入総量におけるこれらの比率は徐々に上昇している。ま
た、南アフリカ及びペルーも中国輸入鉄鉱石の輸入ソ-スとして一定のシェアを獲得し
ている。
2005 年、中国がオーストラリアから輸入した鉄鉱石は 11,217.9 万トンであり、中国
輸入総量の 40.8%を占める。第二位はインド、輸入量は 6,857.5 万トンで中国輸入総量
の 24.9%を占める。第三位はブラジル、5,474.3 万トンで、19.9%を占める。
ここで注目すべき事は、世界鉄鉱石海上取引は主としてブラジルの CVRD、オース
トラリアの BHP 及び Rio
Tinto の三社の国際的超大型企業に独占され管理されてい
る事である。インド等のその他の国はわずか 20%強のシェアを占めるに過ぎない。国
際的超大型企業である三社が採用する「長期契約」による供給システムとインド等の国
家の「現物スポット」供給システムとでは全く異なり、国際的超大型企業三社の「長期契
約」供給による「硬直化」と中国の輸入需要の激増とが、ここ数年のインドからの輸入比
-70-
率拡大の原因の一つである。
なお、ロシア、ベトナム、北朝鮮、モンゴル等の国々はそれぞれ中国東北、広西、吉
林、内モンゴルと隣接しており、鉱山からの陸上運賃も比較的低いので、その CIF 価
格は遥か遠くから運ばれる海運鉄鉱石よりも安価であり、少量の鉄鉱石が中国に輸入さ
れている。中国輸入鉄鉱石の輸入元は徐々に多元化の方向に向かっている。
オーストラリア
ブラジル
インド
南アフリカ
ペルー
ロシア連邦
12,000.00
11,217.90
10,000.00
8,000.00
7,813.70
6,857.50
6,000.00
5,474.30
5,817.20
5,017.20
4,278.40
4,000.00
3,839.60
4,603.50
3,803.20
3,275.00
2,977.40
2,453.90
2,253.20
2,000.00
1,698.40
1,481.50
1,099.60
897.2
173.3
183.9
804.0
3,230.10
1029.8
197.7
956.0
1109.9
350.2
219.8
1055.3
428.3
0.00
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
(単位:万トン)
出典:中国税関データ
図 3-7 中国鉄鉱石輸入元上位 5 位からの輸入状況
-71-
表 3-16 2000 年~2005 年の中国鉄鉱石輸入元上位 5 位からの輸入状況
年度
ランク 輸入国又は地域
輸入量(万㌧)
総輸入量に占める比率(%)
2000 年
1
オーストラリア
3,275.0
46.8
2
ブラジル
1,481.5
21.2
3
インド
1,099.6
15.7
4
南アフリカ
804.0
11.5
5
ペルー
173.3
2.5
6,833.3
97.7
上位 5 位合計
2001 年
1
オーストラリア
3,803.2
41.2
2
ブラジル
2,453.9
26.6
3
インド
1,698.4
18.4
4
南アフリカ
897.2
9.7
5
ペルー
183.9
2.0
9,036.6
97.8
上位 5 位合計
2002 年
1
2
オーストラリア
ブラジル
4,278.4
2,977.4
38.4
26.7
3
インド
2,253.2
20.2
4
南アフリカ
1,029.8
9.2
5
ペルー
197.7
1.8
10,736.4
96.3
上位 5 位合計
2003 年
1
オーストラリア
5,817.2
39.3
2
ブラジル
3,839.6
25.9
3
インド
3,230.1
21.8
4
南アフリカ
956.0
6.5
5
ペルー
219.8
1.5
14,062.7
94.9
上位 5 位合計
2004 年
1
オーストラリア
7,813.7
37.6
2
インド
5,017.2
24.1
3
ブラジル
4,603.5
22.1
4
南アフリカ
1,109.9
5.3
5
ペルー
350.2
1.7
18,894.3
90.8
11,217.9
6,857.5
40.8
24.9
上位 5 位合計
2005 年
1
2
オーストラリア
インド
3
ブラジル
5,474.3
19.9
4
南アフリカ
1,055.3
3.8
5
ロシア連邦
428.3
1.6
25,033.3
90.9
上位 5 位合計
出典:中国税関データ
-72-
3-2-3 輸入鉄鉱石の輸送状況
1)中国海運鉄鉱石の国際海運市場に対する影響
中国は世界第一位の鉄鉱石輸入大国であり、特にここ数年は、中国製鉄能力の急速
な成長の為、国内の鉄鉱石資源が相対的に不足して、鉄鉱石の輸入量は急増し、ブラ
ジル、オーストラリア、インド等の国の鉱石輸出港湾の繁忙につながった。中国輸入
鉄鉱石の海上輸送量は世界の鉄鉱石輸送量において大きな地位を占めている。2005
年、世界の鉄鉱石海上取引量は約 6.4 億トンであり、中国鉄鉱石の輸入量は 2.75 億
トンであって、世界鉄鉱石海上取引量の 43%をも占め、2006 年の鉄鉱石海上取引量
の増加量のほとんど 100%が中国向けである。中国鉄鉱石輸入量の増加が世界のケー
プタウン型船舶の市場需要を好転させ、ばら積み貨物海上輸送市場に対するてこの役
割を果たした。
中国国内において、輸入鉄鉱石は中国外貿ばら積み貨物輸出入商品の中では最大の
貨物品種であるとともに、中国沿海主要港湾の荷役貨物の主要品種でもあり、港湾取
扱量の中で非常に大きなウエートを占めている。
表 3-17 中国の鉄鉱石輸入量と世界の鉄鉱石海上取引量の推移(2000 年~2005 年)
(単位:百万トン)
中国鉄鉱石
年度
世界の鉄鉱石
輸入量
増加量
海上取引
量
2000 年
70.0
14.7
454
2001 年
92.4
22.4
2002 年
111.5
2003 年
増加量
中国鉄鉱石輸入量の世界鉄
鉱石海上取引量に占める比
率(%)
15.4
452
43
△2
19.1
481
29
23.2
148.1
36.6
524
43
28.3
2004 年
208.1
60.0
574
50
36.3
2005 年
275.3
67.2
640
66
43.0
20.4
出典:2006 年 4 月 12 日~14 日、青島海天大酒店において中国鋼鉄工業協会及び
インド鉱業連盟が共同で主催した『中印鉄鉱石サミット』における発表データ
と中国税関データ等を基に作成
-73-
世界海上取引量
中国輸入量
700
640
574
600
500
524
481
452
454
400
275.3
300
208.1
148.1
200
70.0
111.5
92.4
100
0
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
(単位:百万トン)
出典:表 3-17 を基に作成
図 3-8 中国の鉄鉱石輸入量と世界の鉄鉱石海上取引量の推移(2000 年~2005 年)
2)中国輸入鉄鉱石の輸送状況
①輸入鉄鉱石の輸送方式と輸送地域
中国の輸入鉄鉱石は主として沿海、長江沿い地域の製鉄企業に供給される。少量の
鉄鉱石が陸上ルート(広西チワン族自治区の河口、新疆ウイグル自治区のアララト山
口等)で運ばれるのを除き、約 98%以上の輸入鉄鉱石は船舶で中国国内に運ばれる。
中国の鉄鉱石輸入状況は、概ね北方地区、華東・長江沿線地区、南方地区の三大地
域に分けて整理することが出来る。
-74-
地域
表 3-18 中国輸入鉄鉱石の輸送地域
地域概況、主要港湾、各主要港の鉱石荷役能力、当該地域の鉱石輸送方式
北 地区概況
方
地
区
①北方地区は中国の重要な製鉄生産基地であり、首都鋼鉄、鞍山鋼鉄、唐山鋼鉄、
邯鄲鋼鉄、包頭鋼鉄等の国家重点企業が立地している。
②2003 年の北方地区港湾が荷役した輸入鉄鉱石は 8,045 万㌧であり、
全国の 53.3%
を占める。幾つかの 20 万㌧級鉱石バースの建設竣工に伴い、北方地区港湾の輸
入鉄鉱石輸送に占める地域は更に重要になってきている。
主要港湾
①現在の北方地区鉱石荷役港は青島港、天津港、大連港、営口港、秦皇島港、曹妃
甸港、日照港、煙台港、連雲港等である。
②専業化埠頭の状況から見れば、現在の北方地区のほとんどの港には 20 万㌧級以
上の鉱石バースがあり、中国の最重要鉄鉱石荷役港グループとなっている。
各主要港の
具体的状況
輸送モデル
1
主要港
青島港
2
日照港
3
大連港
4
5
営口港
曹妃甸港
6
天津港
7
煙台港
8
秦皇島港
9
連雲港
鉱石荷役能力
20 万㌧級及び 5 万㌧級鉱石兼業化荷役バース。設計能力は
各々1,500 万㌧と 600 万㌧であり、鉱石備蓄能力は全国最大
で 1,043 万㌧。
2004 年 5 月、25 万㌧級鉱石バースが操業を開始。2006 年 1
月には 35 万㌧級鉱石バースも試運転開始。
2004 年、当時全国最大の 30 万㌧級鉱石専用バースが竣工、
設計能力は 3,000 万㌧。
2005 年、20 万㌧級鉱石バース操業開始。
2005 年 11 月 10 日、河北省曹妃甸港の 2 つの 25 万㌧級鉄
鉱石バースが正式に操業を開始。
2006 年 8 月 28 日、天津港南疆 12 号に 20 万㌧級兼 25 万㌧
級、設計年間取扱能力 1,000 万㌧の大型鉱石バースが竣工・
操業を開始。また、2009 年には年間設計能力 2,000 万㌧の
20 万㌧級専業化鉱石バースの建設を計画し、2012 年竣工予
定。
計画によれば、鉄鉱石バースは 2008 年中に操業を開始。年
間取扱能力は約 1,000 万㌧。
10 万㌧級の鉱石荷役バース有り。年間設計能力は 400 万㌧。
鉱石ヤードの面積:9.4 万㎡、備蓄量:84 万㌧。
現在 1 万㌧級の鉱石・石炭専用バース有り。設計年間取扱能
力は 275 万㌧以上。「十一五」期間(2006 年~2010 年)には 25
万㌧級鉄鉱石バース建設工事を計画。
まず 10 万㌧以上の大型船舶は主として青島港、大連港に寄港し、一部の輸送は鉄
道、道路を通じて背後地の各製鉄工場に運ばれる。また一部は二次中継輸送にて北
方地区又は華東地区のその他の港に運ばれた後、各製鉄工場に着く。なお、10 万
㌧以下の船舶又は極一部の大型船舶の積載重量減少後、北方地区のその他の港に輸
送する。営口港、曹妃甸港、天津港等の大型鉱石バースの竣工後は、大型鉄鉱石輸
送船舶は直接これらのバースに接岸して荷役する事が出来る。
(次頁に続く)
-75-
地域
華 地区概況
東
・
長 主要港湾
江
沿
線
地
区 各主要港の
具体的状況
地域概況、主要港湾、各主要港の鉱石荷役能力、当該地域の鉱石輸送方式
長江中流・下流地域は中国製鉄産業の重点的分布地域であり、当該地域には「宝山
鋼鉄」、「武漢鋼鉄」、「馬鞍山鋼鉄」、「南鋼」、「重慶鋼鉄」、「沙鋼」等の大型製鉄企
業が集中している。
①現在。華東地区の外貿鉄鉱石荷役港は寧波-舟山港(中国浙江省寧波港と舟山港の
二つの大水深港は既に合併して、新しい港の名は寧波-舟山港)、上海港、南通港、
南京港、鎮江港等の港である。
②既に鎮江港、寧波-舟山港を主とし、その他の港を従とする体系が構築されてい
る。
1
2
3
主要港
鉱石荷役能力
寧 波 - 舟 ①寧波港は中国水深条件の卓越した天然の良港であり、20 万㌧
山港
級及び 10 万㌧級の鉱石専業化荷役バースがあって、各々の
設計能力は 1,200 万㌧及び 1,000 万㌧である。2004 年の寧
波港の輸入鉱石荷役量は 3,079 万㌧であり、2005 年の鉄鉱
石輸入量は 3,300 万㌧である。報道によれば、寧波北侖港鉱
石 1 号バースを正式に 20 万㌧級に改造し、2006 年 6 月 25
日、主体工事は既に竣工した。
②舟山馬迹山港:上海宝鋼集団が投資建設。1997 年にプロジェ
クト建設開始し、2002 年 5 月 30 日より操業開始。2004 年
12 月に正式に対外開放したが、主として「宝鋼」向サービス。
1)第 1 期のエンジニアリング設計:年間取扱量 2,000 万㌧の
鉱石専用バース。主として 30 万㌧級の積卸バースと 3.5 万
㌧の積荷バース並びに容量 108 万㌧の鉱石ヤードで構成さ
れ、現在の中国最大の鉱石中継ばら積み貨物バースである。
操業開始以降、2005 年末時点で合計 451 隻の荷役を行い、
二程中継船舶 1,835 隻の荷役を実施して、累計で 7,013 万
㌧の取扱量を完成させている。
2)2006 年、「宝鋼」は馬迹山港第 1 期工事の拡張工事を実施し
て、2007 年竣工後、年間輸入鉄鉱石荷役量は 2,500 万㌧、
取扱量 5,000 万㌧以上の中継能力を確立して、アジアで最
重要鉱石中継要衝の一つとなる予定。
上海港
全国的な多機能要衝港であり、中国大陸最大の港である。2005
年の上海港の外貿輸入鉄鉱石は 9,527 万㌧、大型鉱石バースの
荷役能力は 5,100 万㌧である。
南通港
2005 年、南通港の 2 つの 10 万㌧級鉱石バースが竣工し、これ
により南通港鉄鉱石取扱量は長江沿い港の 60%以上となり、作
業効率は 2.5 万㌧/晴天労働日となって、長江沿いの多くの製鉄
所や貿易業者は南通港を中継するようになった。
(次頁に続く)
(次頁に続く)
-76-
地域
華 各主要港の具体
東 的状況
・ (続き)
長
江
沿
線
地
区
輸送モデル
地域概況、主要港湾、各主要港の鉱石荷役能力、当該地域の鉱石輸送方式
4
主要港
南京港
5
鎮江港
鉱石荷役能力
南京港は中国において率先的に億㌧級の河川・海型内陸
河川港となった港の一つであり、海上輸送鉄鉱石が長江
沿いに運ばれる二程荷役・中継港のひとつであって、鉄
鉱石取扱量は長江沿い二程中継港鉄鉱石取扱量の 20%以
上を占め、この中の約 50%は中流上流企業の為にサービ
スしている。統計データによれば、2005 年南京港の輸入
鉄鉱石は 2,549 万㌧に達している。
鎮江港には鉄鉱石専用バースが 2 ヶ所あり、2005 年の鎮
江港のバースの総合取扱能力は長江沿い港の中で第 4 位
であり、貨物取扱量実績は 3,304 万㌧で、うち、鉄鉱石
取扱量は 1,000 万㌧を突破した。
現在華東地区の港の輸入鉄鉱石の一程運輸では多くが大型船舶を利用し
ているが、長江口の水深条件の規制を受けて、輸送方式は以下の幾つかであ
る。
①15 万~30 万㌧級大型鉱石船の一程運輸で寧波北侖港、馬迹山港、緑華山
港に運び、2 万~3.5 万㌧級船舶にて上海港、南通港、鎮江港、南京港等
の二程荷卸港に中継して、三程運輸では河川バージを利用して長江沿いの
製鉄所に運ぶ。
②15 万~25 万㌧級大型鉱石船にて寧波港迄運び、鉄道輸送にて「杭鋼」、江
西省、湖南省等の製鉄所に運ぶ。
③10 万~20 万㌧級大型鉱石船の一程運輸で長江口の外の寧波港、馬迹山港、
緑華山港にて積載量を減少させ(25%~50%)、積載量を減らした後の大型
船を直接上海宝鋼や羅涇バースに着けて、外海で荷卸した鉱石は二程運輸
船にて「宝鋼」及び長江沿いのその他製鉄所に運ぶ。
④一部のインドからの鉄鉱石、オーストラリアからの鉄鉱石は 4 万~5 万㌧
級船又は 7 万㌧級船に減量積載して、直接南京港、南通港、鎮江港、上海
港に運ぶ。
華 地区概況
南
地
区
華南地区は中国において経済発展が最も急速な地域の一つであり、地域内の
製鉄企業は分散しているが、大型製鉄企業としては、「広鋼」、「韶鋼」、「柳
鋼」があり、西南地区には、「攀鋼」、「水鋼」、「昆鋼」等の大型製鉄企業が存
在する。
主要港湾
現在華南地区の外貿手鉱石一次荷卸港は主として湛江港、防城港、広州港等
の港である。
(次頁に続く)
-77-
地域
華 各主要港の具体
南 的状況
地
区
輸送モデル
地域概況、主要港湾、各主要港の鉱石荷役能力、当該地域の鉱石輸送方式
1
主要港
湛江港
2
防城港
3
広州港
鉱石荷役能力
2006 年 6 月、湛江港 20 万㌧級鉱石バースが正式に操業
を開始して、湛江港が華南地区の輸入鉄鉱石の主要集散
地である事の象徴となった。バース設計荷役効率能力は
4,500 ㌧/時であり、後方の専用ヤード面積は 20 万㎡以上
であり、1 回の備蓄能力は 150 万㌧以上であって、年間
取扱量は 1,200 万㌧、現在華南地区における㌧数最大、
最も専業化された自動化水準最高の鉄鉱石バースであ
る。2005 年の鉄鉱石輸入量は 1,090 万㌧に達し、前年比
では 3.96%の増であった。
現在、中国沿海上位 5 位鉱石輸入港の一つであり、2005
年 7 月、防城港の 20 万㌧級鉱石専用バースが試運転に入
り、バース設計年間中継能力は 1,000 万㌧である。
華南地区総合的要衝港であり、2005 年の全港貨物取扱量
は中国沿海地区港湾第 3 位である。現在、広州港の鉱石
荷役規模はほとんどが小規模であり、その荷役㌧数は 5
万㌧から 7 万㌧であるが、計画によれば、珠江デルタ地
域は広州港を主として輸入鉱石輸送システムを建設す
る。
華南地区には、2005 年 7 月に操業を開始した湛江港の 20 万㌧級鉱石バー
スを除き、専業化された鉱石バースは無く、主として汎用のばら積み貨物用
バースにて荷揚げされている。輸入鉄鉱石の輸送方式は主として以下の 3 方
式である。
①10 万~20 万㌧級鉄鉱石船舶が湛江港の鉱石専用バースに接岸して荷揚げ
するか又は 5 万㌧級の汎用バースに運んで荷揚げして、その後鉄道で直接
背後地の製鉄企業に運ぶ。
②3 万~5 万㌧級鉄鉱石船舶が直積湛江港の汎用バースに運んで荷揚げして、
鉄道を通じて背後地の各製鉄所に運ぶ。
③3 万~5 万㌧級鉱石船舶が防城港、広州港の両港に運ぶが、3 万㌧級の船舶
は満潮を利用して接岸し、5 万㌧級船舶は積載量を減らして接岸し、その
後、鉄道で後背地の各製鉄所に運ぶ。
-78-
②輸入鉄鉱石の輸送業者
中国輸入鉄鉱石輸送市場は対外開放されており、輸送船舶は世界各国の船舶である。
中国の鉄鉱石輸送船隊は主として「中遠集団」、「中国海運」そして「中国外運」等の幾つ
かの大型海運企業に集中している。2005 年初めより「長江航運」がドライバルク貨物
遠洋輸送へ参入し、20 万トンのケープ型輸送船隊を整備して、インド、南アフリカ、
オーストラリアの一程運輸鉱石輸送市場のシェア獲得に乗り出した。また、一部の地
方海運企業の中には一部の船舶を鉄鉱石の海上輸送に導入し始めている。
この十数年間、中国船隊の整備は数量の上で大きく発展したばかりでなく、船舶技
術面でも大型化、高性能型化が進み、大型バルク貨物船舶の比率が上昇している。
2005 年末時点で、中国国際ドライバルク貨物輸送船舶能力は(リース船舶を含まず)
ほぼ 4,000 万積載重量トンに達し、世界ドライバルク貨物輸送船舶総能力の 12%を
占めるに至っている。
③中国輸入鉄鉱石輸送船舶の現状
中国外貿鉄鉱石一程運輸船型は主として 8~20 万トン級のばら積み貨物船舶であ
る。うち、南米、南アフリカ航路は 20 万トン級以上のばら積み貨物船舶、15 万トン
級船舶が多い。オーストラリア航路では 15 万~20 万トン級の Capesize 型船舶が主
であり、次に 10 万トン級が続き、インド航路では 8 万トン級の Panamax 型船舶が
主である。
④中国輸入鉄鉱石輸送における問題点
中国輸入鉄鉱石輸送においては、中国船舶の鉄鉱石輸送市場に占めるシェアが低い
事、港等の輸送施設が需要を満足出来ない等の問題がある。
ⅰ)中国船舶の鉄鉱石輸送市場に占めるシェアが低い
統計データによれば、2003 年、中国の全輸入鉄鉱石のうち、中国船隊で輸送さ
れるのはわずか 25%で、しかもそのうちの半数近くが利益率の低い二次下請輸送
契約である。すなわちわずか 10%強の輸送量が利益率の比較的高い一次契約輸送
である。その主な原因は、海外企業が資源独占の手段を通じて配船の権利を管理
していること、中国の遠洋輸送船隊の輸送能力が不足していることにある。
A) 少数の多国籍企業の合併再編により、これら企業に国際鉄鉱石輸送市場は管理
され、売り手独占の状態となっている。海外の荷主は資源保有の優位的立場を
利用して、配船権利を握り、中国輸入鉄鉱石の大部分の海上輸送契約は海外の
輸送企業との契約となっている。
B) 中国遠洋船隊の輸送能力は依然として不足しており、船隊構成も良くない。
-79-
2006 年 8 月現在、中国最大のドライバルク貨物遠洋輸送船隊である「中遠
集団」でさえもわずか 14 隻のケープタウン型ばら積み船(平均積載重量トンは
16.5 万トン)、68 隻のパナマ型ばら積み船(平均積載重量トンは 7 万トン)を保
有しているだけである。「招商局」は主としてオイル製品及び LNG 輸送に従事
し、基本的にバルク貨物輸送には関わっておらず、わずか 2 隻のパナマ型ば
ら積み船を保有するのみで、その平均積載重量トンは 7.4 万トンである。も
う一社の海上輸送の大手企業である「中国海運」が運営管理するばら積み貨物、
雑貨、荷役機械付貨物船の合計は約 140 隻であり 450 万以上の積載重量トン
を誇り、年間輸送量は 1.2 億トンを超えているが、石炭輸送だけで 1.1 億トン
に上り、しかも主として沿海輸送に従事している。
ⅱ)港湾等の施設が需要に対応出来ない
A) 港の鉱石バースの荷揚げ能力不足
2005 年末現在、中国沿海の港には合計 59 の鉄鉱石バースがあるが、設計上
の荷役能力は約 2.6 億トンであり、うち、万トン級以上の大水深バースが 34
ヶ所、20 万トン級以上の大型鉄鉱石専用バースが合計 8 ヶ所(2006 年 8 月現在
では 10 ヶ所になっている)ある。これらの荷役能力は 1 億トンで、大多数の港
湾は 10 万トン級以下の鉄鉱石輸送船の荷役にしか対応していない。しかも鉱
石の荷役を行うバースのほとんどが汎用バースであり、専用化レベルは低い。
鉱石輸送では何度にも及ぶ積み替えや大型船舶の積載重量の制限等の問題が
生じている。
2005 年、青島港と寧波-舟山港の鉄鉱石年間取扱量は、何れも 3,000 万トン
を超えたが、この二大港の鉄鉱石荷役量の成長速度ですら中国の鉄鉱石輸入量
の成長速度には及ばない。
寧波-舟山港の 20 万トン級鉄鉱石バースの主要ユーザーは従前の 4~5 社か
ら、2005 年には 30 数社に増え、2005 年の鉄鉱石荷役数量は 3,000 万トンを
超えて、過去最高を記録した。ただし、関連施設が不足している為、当該港湾
面積 27 万㎡(ヤード備蓄能力 270 万トン)の鉄鉱石ヤードは満杯となり、輸入
鉄鉱石輸送船は列を成して接岸荷役を待ち、海運企業のみならず、製鉄所にも
大きな経済的損失をもたらした。業界関係者の情報では、2005 年の寧波-舟山
港における 20 万トン級鉄鉱石バースの沖待ち時間は平均 10 日間である。
B) 鉱石到着後の流通運搬体系が整備されていない
現在、中国の港湾における輸入鉄鉱石の流通運搬体系は水運から水運又は鉄
道輸送への積み替えが主である。ここ数年の輸入量の急増により、鉄道の輸送
能力も不足しており、国内輸送の 40%の需要を満足出来るだけである。これ
が輸入鉄鉱石の輸送を大きく制約しており、一部港では鉄道輸送能力の制約に
-80-
より、鉱石輸入港での船舶の滞留現象がしばしば発生している。中国交通部の
統計データによれば、2006 年 6 月の全国港湾鉄鉱石在庫量は 4,000 万トンに
達し、全国平均 1 ヶ月間の鉄鉱石輸入量を大きく上回っている。日照港内に積
上げられた鉄鉱石の総量は 900 万トン余りに達しており、これは、この港の 1
ヶ月分の総取扱量に匹敵する数量である。ちなみに 2005 年 6 月の日照港の在
庫鉄鉱石は 480 万トンであるので、ほぼ倍増している。
3-2-4 輸入鉄鉱石の輸送動向予測
1)中国船隊の輸入鉄鉱石輸送市場でのシェアの増加
ここ数年、中国では遠洋船隊整備が急ピッチで進められており、各水上輸送企業は
続々と大型ばら積み貨物船を購入、発注している。
「中遠集団」は大量のばら積み船の購入を計画中である。現在、既に「宝鋼」及び「鞍
鋼」向けの各々2 隻合計 4 隻の 30 万トン級のばら積み船の購入計画がある。「中国海
運」は 2010 年迄に 9.96 億米ドルを投資して 39 隻のばら積み船を購入する予定であ
る。2005 年初頭より「長江航運」はドライバルク貨物の遠洋輸送を開始して、期間リ
ースにより 7.5 万トン級の「東亜海」丸を調達し、自社にて購入した「耀海」丸、リース
した「靖馥」丸に加え、20 万トン級の「ケープ型」輸送船隊を構築して、インド、南ア
フリカ、オーストラリア等の一程運輸鉄鉱石輸送市場(注:海外から中国の最初に入
港する沿岸港までの間の輸送)のシェア奪取を図ろうとしている。
国有大型水上輸送企業のみならず、民営企業もドライバルク貨物の遠洋輸送に力を
入れている。例えば、「河北遠洋」のドライバルク貨物船隊は 1999 年の 32 万積載重
量トンから 2005 年末には 512 万積載重量トンに拡大している。
中国ばら積み貨物船隊の整備の一方で、中国の海上輸送企業は鉄鉱石荷主との提携
(例えば、「中遠集団」と「鞍山鋼鉄」及び「宝鋼」の長期輸送契約締結)にも力を入れて
いる。これは中国船隊の市場シェアの拡大の大きな推進力となっている。
2)港等のインフラ基盤施設が鉄鉱石輸入輸送の制約を解消・減少させる
ここ数年、中国の港湾投資は活況を呈している。2004 年末の中国沿海港湾におけ
る 10 万トン級以上の大型鉱石専用バースは 5 ヶ所のみであり(青島港:1、寧波港:2、
大連港:1、舟山港:1)、設計荷役能力は 7,700 万トンであってが、2005 年末では
20 万トン級及び 20 万トン級以上の大型鉄鉱石専用バースが 8 ヶ所となり、その水上
輸送能力は 1 億トンとなった。2006 年 8 月末では更に 2 ヶ所の 20 万トン級及び 20
万トン級以上の鉄鉱石専用大型バースが竣工した。
中国交通部総合計画司の任建華副司長の予測では、2010 年の中国の沿海港湾貨物
総取扱量は 45 億トンを超えるとしており、中国国内の鉄鉱石生産量が約 2.5 億トン
を維持出来るとの前提の下で、輸入鉄鉱石の一次荷役量(バージ等への積替荷役量)
は約 3.5 億トンであり、こうした一次荷役量を含む中国港湾の荷役取扱量は約 5 億ト
-81-
ンとみている。増大する輸入鉄鉱石の運送コストを出来るだけ低減させる為、沿海港
湾は今後主として 20 万トン級以上のバースを建設し、接岸 1 回で荷役が完了出来る
か又は喫水線を考慮せずに荷役が可能となるようにする計画である。2010 年には、
沿海港湾において鉄鉱石荷役の大型専用バースの総合能力は約 3.5 億トンに引き上げ
られると考えられる。
中国政府は冶金産業の配置状況及び沿海港湾の条件を考慮して、重点的に環渤海湾
地域、長江デルタ地域、珠江デルタ地域、東南沿海地域、西南沿海地域の 5 つの地域
に重点的に輸入鉄鉱石輸送システムを整備する。これらの 5 つの地域の今後の発展計
画については、表 3-19 の通りである。
-82-
表 3-19 中国輸入鉄鉱石 5 地域の今後の発展計画総括
地域
今後の発展状況総括
1
環渤海湾地域
①大連港、唐山港、青島港に 20 万㌧級以上の大型鉱石バー
スを建設する。
②営口港、秦皇島港、天津港、日照港等に 20 万㌧級以上の
大型バースを建設し、短期計画では航路条件により積載重
量を荷役減少させ喫水線を上げた 20 万㌧級鉱石船と二程
運輸中継バージとを結合させ、長期的には港湾航路の建設
状況に基づき、各港湾の荷役輸送船舶の㌧数と中継能力を
引き上げる。
2
長江デルタ地域
①長江口の外の寧波-舟山港 20 万㌧級以上のバースを主と
しえ鉱石荷役中継基地とし、長江口航路の 2010 年での
12.5m 水深を実現する輸送条件に基づき、長江口の内側の
上海港、蘇州港、南通港等の港に大型鉱石中継バースを建
設し、寧波-舟山港にて積載重量を減らして長江に入った
大型鉱石船の荷役を行う。
②鎮江港、南京港等の港に一定㌧数の功績専用輸送バースを
建設して、二程運輸船舶の荷役を実施する。
③連雲港港は産業配置状況に基づき、大型鉱石専用荷役バー
スを建設して、隴海鉄道沿線の冶金企業にサービスを提供
する。
3
珠江デルタ地域
広州港を主として輸入鉱石輸送システムを配置し構築する。
4
東南沿海地域
冶金産業の配置状況に基づき、港湾施設を建設する。
5
西南沿海地域
①湛江港、防城港を主として外貿輸入鉱石荷役港湾を配置
して建設する。
②湛江港、防城港の優良な港湾資源を活用して、大型大水
深バースを建設して、西南地区等の背後地に鉱石専門輸
送サービスを提供し、当該地区の大型製鉄企業の配置に
条件を提供する。
-83-
营 口港
大连 港
青岛 港
上海港
舟山港
宁波港
湛江港
出典:中国国家発展・改革委員会総合運輸研究所資料
図 3-9 中国政府の鉄鉱石輸送システム計画図
-84-
3-3 石炭
3-3-1 中国における石炭の輸出入量
中国は石炭資源が相対的に豊富な国であり、エネルギー自給自足路線に基づき、改革
開放前は基本的に石炭の輸入は無かった。改革開放後、中国はオーストラリア等の国か
ら少量のコークス炭及び動力炭を輸入しているが、その輸入量は多くなく、1996 年~
2001 年の毎年の輸入量は基本的には 158 万トン~322 万トンで安定している。2002 年
以降、中国石炭輸入量は大幅に成長して、2002 年では 1,081 万トンとなり、前年比で
は 3.33 倍の増であった。2003 年の石炭輸入量はやや減少したが、2004 年及び 2005
年ではそれぞれ 72.8%増、40.5%増となった。近年の中国石炭輸入量の推移は以下の表
3-20 及び図 3-10 の通りである。
項目
表 3-20 中国石炭輸出入量の推移(2000 年~2005 年)
2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 2004 年
輸入量(万㌧)
成長率(%)
211.68
26.53
2005 年
249.33 1,081.10 1,076.03 1,859.71 2,612.80
△0.47
17.79
333.60
72.83
40.50
5,505.45 9,094.78 8,388.38 9,392.70 8,661.14 7,172.48
成長率(%)
―
△7.77
△7.79 △17.19
65.20
11.97
輸出量(万㌧)
出典:中国税関データ
輸入量
3000
輸出量
10000
9,392.70 2,612.80
9,094.78
9000
8,388.38
8,661.14
8000
2500
2000
5,505.45
1500
7000
1,859.71 7,172.48
6000
5000
1,081.10
1,076.03
4000
1000
500
3000
321.7
2000
201
158.6
167.3 211.68 249.33
1000
0
0
1996年 1997年 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年
(単位:万トン)
出典:中国税関データ
図 3-10 中国石炭輸出入量の推移(2000 年~2005 年)
-85-
近年のの中国石炭輸入量の大幅な増加の原因は主として以下のとおりである。
①中国(特にその沿海地域)の経済発展が急速であり、電力需要が大きく増加、動力炭の
需要が直線的に上昇した。鉄道にて北の石炭を南に運ぶコストは大型貨物船で輸入炭
を運ぶコストよりも高いので、多くの沿海地域の発電所は輸入炭で国産炭の代替とし
ている。
②国際市場における石炭価格の低迷も石炭輸入量が倍増した一つの理由である。2002
年において、広東の港から輸入された石炭の平均価格は 29.55 米ドル/トンであり、
2001 年の 38.66 米ドル/トンより 23.6%も下がった。
③ここ数年、中国は乾燥少雨の天候が続き、一部の水力発電所は水不足に陥り、水力発
電所の発電能力は下降し、不足電力は火力発電所にて補充するほか無かった。このた
め石炭の需要が増加した。
④2002 年、国際市場のコークス炭の市場価格は上昇するとの判断から、中国コークス
炭の輸入は急速に増加した。
⑤国内石炭供給不足を緩和する為、中国政府は石炭輸入奨励対策を取り、2005 年の動
力炭の輸入関税は従来の 6%から 3%に引き下げられた。
石炭の輸入量の増加と同時に、石炭の輸出量は 2002 年及び 2004 年ではマイナス成
長となり、特に 2004 年では 7.8%も下がった。2004 年の石炭輸出量は 8,661 万トンで
あり、純輸出量は 6,801 万トンである。
2006 年第 1 四半期では、中国石炭貿易取引は引き続き「輸入量の急成長、輸出量の急
降下」の状況にある。税関の統計データによれば、2006 年第 1 四半期の石炭輸出量は
1,676 万トンであり、前年同期比では 16.4%の減である。石炭輸入量は 890.1 万トンで
あり前年同期比では 65%の増である。
中国石炭経済研究会が発表した『石炭経済《十五》の回顧と《十一五》の展望』によ
れば、《十五》期間(2006 年~2010 年)における中国の石炭の輸出量は徐々に減少し、石
炭の輸入量は徐々に増加している。2010 年の石炭の純輸出量は 2,000~3,000 万トンに
なる見込みとしている。
-86-
3-3-2 中国における石炭の輸出入元
中国の石炭の主要輸入元の国及び地域はベトナム、オーストラリア、インドネシア、
ロシア、北朝鮮、モンゴル、南アフリカ等である。
2000 年~2005 年、中国石炭輸入量上位 5 位の国からの総輸入量は 2003 年にやや下
降した事を除き、基本的には常に増加傾向にあり、しかも上位 5 位の国からの石炭輸入
総量が、全体の輸入量に占める比率は基本的に 90%以上を維持してきたが、直近では
その比率はやや下がる傾向にある。
ここ数年、中国南方地区のベトナムやインドネシア等の国からの石炭の輸入量が激増
している事である。税関統計によれば、2005 年の中国の石炭輸入量は 2,618 万トンで
あり、うち、ベトナムより輸入された石炭は 1,019 万トンに達し、輸入総量の 38.9%、
2004 年に比べて 60%の増であった。インドネシアから輸入された石炭も 240 万トンに
達し、2004 年に比べて 87%の増であった。
国際原油価格が高止まりする中、中国国内の石炭価格も上昇する状況にあって、ベト
ナム炭、インドネシア炭は数々の方式で、中国エネルギー需要の旺盛な広東省、広西チ
ワン族自治区及び東部沿海地域に浸透している。
これと同時に、モンゴルのコークス炭も日増しに中国コークス化企業の注目を集める
新たなホットスポットとなって来ている。これらの輸入石炭の一部は辺境地域に存在す
る中小規模の貿易会社を通じて、陸路で中国に輸入されている。
ここ数年の中国石炭輸出入上位 5 位の国からの輸出入状況については、表 3-21、図
3-11 及び表 3-22、図 3-12 の通りである。
-87-
表 3-21 中国石炭輸入上位 5 位の輸入元国/地域からの輸入状況
年度
ランク
輸入国又は地域
輸入量(万㌧) 総輸入量に占める比率(%)
2000 年
1
オーストラリア
129.0
59.2
2
ニュージーランド
23.0
10.6
3
インドネシア
21.3
9.8
4
ベトナム
26.7
12.2
5
南アフリカ
17.0
7.8
217.0
99.6
上位 5 位合計
2001 年
1
インドネシア
84.3
31.7
2
オーストラリア
67.0
25.2
3
ベトナム
52.0
19.6
4
ニュージーランド
23.3
8.8
5
ロシア連邦
17.9
6.7
244.6
92.0
上位 5 位合計
2002 年
1
2
オーストラリア
ベトナム
448.9
239.6
39.9
21.3
3
インドネシア
222.6
19.8
4
ロシア連邦
115.2
10.2
5
南アフリカ
40.7
3.6
1,067.1
94.8
上位 5 位合計
2003 年
1
オーストラリア
510.2
46.3
2
ベトナム
268.2
24.3
3
インドネシア
85.0
7.7
4
北朝鮮
74.5
6.8
5
ロシア連邦
72.4
6.6
1,010.3
91.6
上位 5 位合計
2004 年
1
ベトナム
637.1
33.6
2
オーストラリア
535.2
28.2
3
カナダ
181.6
9.6
4
モンゴル
160.1
8.4
5
北朝鮮
157.1
8.3
1,671.2
88.2
1019.4
588.5
38.9
22.5
上位 5 位合計
2005 年
1
2
ベトナム
オーストラリア
3
北朝鮮
280.4
10.7
4
モンゴル
253.9
9.7
5
インドネシア
240.0
9.2
2,382.2
91.0
上位 5 位合計
出典:中国税関データ
-88-
オーストラリア
ベトナム
北朝鮮
ニュージーランド
南アフリカ
カナダ
インドネシア
ロシア連邦
モンゴル
1200.0
1019.4
1000.0
800.0
637.1
600.0
588.5
535.2
510.2
448.9
400.0
280.4
239.6
222.6
200.0
253.9
240.0
268.2
181.6
160.1
129.0
0.0
84.3
67.0
26.7
52.0
23.0
23.3
21.3
17.9
17.0
2000年
2001年
115.2
85.0
157.1
74.5
40.7
2002年
72.4
2003年
2004年
2005年
(単位:万トン)
出典:中国税関データ
図 3-11 中国石炭輸入上位 5 位の輸入元国/地域からの輸入状況
-89-
年度
2000 年
表 3-22 中国石炭輸出上位 5 位の輸出先国・地域への輸出状況
ランク 輸出国又は地域
輸出量(万㌧)
総輸出量に占める比率(%)
1
韓国
2,111.76
38.36
2
日本
1,622.39
29.47
3
台湾省
907.6
16.49
4
香港
198.43
3.60
5
インド
192.11
3.49
5,032.29
91.41
上位 5 位合計
2001 年
1
韓国
2,938.05
32.30
2
日本
2,655.71
29.20
3
台湾省
1,598.21
17.57
4
フィリピン
381.25
4.19
5
香港
351.64
3.87
7,924.86
87.14
上位 5 位合計
2002 年
1
2
日本
韓国
2,799.32
2,538.74
33.37
30.26
3
台湾省
1,424.99
16.99
4
香港
296.4
3.53
5
フィリピン
287.87
3.43
7,347.32
87.59
上位 5 位合計
2003 年
1
日本
3,127.48
33.30
2
韓国
2,972.31
31.64
3
台湾省
1,711.76
18.22
4
フィリピン
290.84
3.10
5
ブラジル
238.8
2.54
8,341.19
88.81
上位 5 位合計
2004 年
1
日本
2,892.06
33.39
2
韓国
2,451.43
28.30
3
台湾省
1,985.67
22.93
4
インド
308.38
3.56
5
フィリピン
292.75
3.38
7,930.29
91.56
上位 5 位合計
2005 年
1
2
日本
韓国
2,317.80
2,122.22
32.32
29.59
3
台湾省
1,623.07
22.63
4
インド
385.53
5.38
5
フィリピン
202.76
2.83
6,651.38
92.73
上位 5 位合計
出典:中国税関データ
-90-
韓国
インド
日本
フィリピン
台湾省
ブラジル
香港
3500
3127.48
2938.05
3000
2799.32
2655.71
2500
2972.31
2892.06
2538.74
2317.8
2451.43
2111.76
1985.67
2000
2122.22
1622.39
1500
1623.07
1711.76
1598.21
1424.99
1000
907.6
381.25
500
296.4
290.84
308.38
385.53
198.43
351.64
192.11
287.87
238.8
202.76
292.75
0
2000年
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
(単位:万トン)
出典:中国税関データ
図 3-12 中国石炭輸出上位 5 位の輸出先国/地域への輸出状況
-91-
3-3-3 輸入石炭の輸送状況
1)輸入石炭の輸送
2002 年頃まで、中国の石炭の輸入量は少なく、1996 年の 320 万トンを除き、その
他の年は 250 万トン未満であった。2002 年以降、輸入量は増加し、2005 年では 2,617
万トンに達したが、原油の 12,677.4 万トン、鉄鉱石の 32,500 万トンの輸入量に比べ
れば、ドライバルク貨物外貿海運市場に占める比率は小さい。
中国の石炭輸入の主要輸入元国はオーストラリアを除いて、ベトナム、インドネシ
ア、ロシア連邦、北朝鮮等、その多くが中国の隣国であるので、中国輸入石炭の輸送
方式は近距離海上輸送が約 65%を占め、次に陸上輸送、そして遠洋輸送となる。業
界関係者によれば、2005 年、中国輸入石炭の遠洋輸送量は約 600 万トンであり、主
としてオーストラリア炭である。この部分の輸入石炭の輸送業者は主として外国商船
隊であり、中国の「中遠集団」、「中国海運」等の遠洋船隊も少量ながらオーストラリア
炭の海上輸送を担当している。近距離海上輸送を通じて中国に輸入される石炭は約
1,600 万トンであり、主として、ベトナム、北朝鮮、インドネシア等の国から輸入さ
れる。この部分の輸入石炭の輸送業者は近距離海上輸送に従事する中国船主が主であ
る。
中国石炭の輸出量が大きいのは日本、韓国、中国台湾であり、2003 年のこれらの
三国・地域に輸出された石炭の合計数量が石炭総輸出量に占める比率は 83.8%であり、
これらの輸出石炭も海上輸送されている。
陸上輸送
25%
遠洋輸送
8%
近距離海上輸
送
67%
注:中国税関のデータを整理して作成した。
図 3-13 2006 年 1 月~3 月の中国輸入石炭の輸送方式
-92-
2)中国石炭の全体的輸送体系
中国の石炭資源の分布は「北に多く南に少ない、西は豊かで東は乏しい」状況にあり、
石炭の主要消費市場は東部地区に集中しており、生産と供給は中西部地区に集中して
いる。この様な生産と消費地域が一致していない分布状況が中国石炭輸送を基本的に、
「西の石炭を東に運ぶ」、「北の石炭を南に運ぶ」との状況を生み出している。中国国内
石炭の主要輸送方式は鉄道、水路、道路輸送の三方式であり、実際の輸送過程におい
ては、単一方式の直接輸送や又は鉄道、道路、水運の複合輸送方式である。国内石炭
輸送市場シェアから見れば、鉄道輸送量が全石炭輸送量の 60%を占め、水運は 30%
であり、道路輸送は約 10%である。長年に渡り中国国内石炭輸送は常に輸送能力不
足状態にあった。ここ数年では水陸輸送のインフラ基盤施設が強化され、石炭輸送能
力不足は緩和されつつあるが、依然として地域的、品種的、季節的に輸送能力の不足
という状況が出現している。
①鉄道輸送
鉄道は中国国内石炭輸送の主要方式であり、石炭は中国鉄道輸送の最主要貨物で
もあり、中国鉄道貨物輸送総量の約 40%以上を占めている。石炭の中国国内輸送
において、鉄道輸送は常に 60%以上の比率を占めている。現在、中国の「西の石炭
を東に運ぶ」及び「北の石炭を南に運ぶ」の鉄道輸送路線では北路、中路、南路の三
本の主要輸送幹線があり、これらについては表 3-23 の通りである。
表 3-23 中国石炭鉄道輸送の主要路線
北路
大秦鉄道(主幹線)
北同堡線-京原線-京山線
石太線-京広線-京山線
京大-京塘高速道路ガス輸送
路線
1.3
長期的石炭
輸送能力(億
㌧)
4.3
中路
神朔線-朔黄線-黄驊港(主幹
線)
京九線-霸津線-天津港
(補助鉄道線)
1
―
黄驊港
天津港
南路
兖 石線-日照港
1.5
―
日照港
連雲港港
輸送
幹線
現段階の石炭
輸送能力(億㌧)
幹線ルート
隴海線-連雲港港
候月線
対応港湾
秦皇島港
京唐港
天津港
出典:港口経済(2005.5)
-93-
②水路輸送
ⅰ)石炭水路輸送概況
中国石炭水路輸送は海運と内陸河川輸送である。石炭の海上輸送はまず鉄道又
は道路輸送にて石炭を生産基地から北方沿海中継港湾に輸送して、海上用船舶に
て環渤海湾、華東地区、華南地区及び海外に運ばれる。内陸河川輸送は主として
長江及び京杭運河輸送であり、主として山西省、河北省、河南省、安徽省、山東
省、江蘇省等の産地の石炭及び沿海港湾で荷役、内陸河川船舶に積み替えられた
石炭を運ぶ。長江や京杭運河からの石炭は中継港又は主要支流港で積み替えられ、
バージにて華東地区や長江沿いや京杭運河沿いのユーザーに運ばれる。
2005 年の中国通年の石炭水路出荷輸送量は 3.7 億トンであり、2004 年に比べ
て 3,000 万トン増加したが、うち、国内取引出荷輸送量が 3.0 億トンで 81%を占
める。外貿出荷輸送量は 7,200 万トンで 19%を占める。沿海港湾である錦州港、
秦皇島港、京唐港、天津港、黄驊港、青島港、日照港、連雲港港等の北方地区の
九大港湾における総出荷輸送量は 3.4 億トンを超えた。
ⅱ)石炭水路輸送インフラ基盤施設、設備
2005 年末、石炭の荷役も行うことができるバースが 189 あり、荷役能力は約
2.8 億トンである。
荷卸バースは沿海の 34 の港湾に分布しており、1 ヶ所のバースが 10 万トン級
である事を除き、その他のバースのトン数は全て 7 万トン級以下である。
荷揚バースは中国沿海の 14 の港湾に分布しており、その中で環渤海湾地域の荷
揚バースが中国初の荷揚専用バースであり、長江デルタ地域の荷揚バースは主と
して水上中継輸送の任務を担っている。珠江デルタ地域の荷揚バースは主として
大型海洋港湾の周辺小型港湾や内陸河川港湾向の石炭中継輸送任務を担っている。
中国の主要石炭荷卸港及び荷揚港の輸送状況については、表 3-24 の通りである。
中国の沿海港湾の中で、秦皇島港、天津港、黄驊港の石炭出荷輸送量が上位 3
位であり、2005 年のこれら三大港湾の出荷輸送量合計は中国石炭総出荷輸送量の
4 分の 3 を占めている。うち、秦皇島港の出荷輸送量は 1.4 億トンであり、各大港
湾の中でも最大で、中国石炭総出荷輸送量の 39%を占めている。2005 年、秦皇
島港より出荷輸送された石炭 14,474 万トンの内、国内貿易取扱量は 11,013 万ト
ン(中国全国国内貿易取扱総量の 37%)で、海外貿易取扱量は 3,460 万トン(中国全
国海外貿易取扱い総量の 48%)である。2005 年の中国石炭出荷輸送量及び出荷輸
送量上位 3 位の港湾の石炭出荷輸送状況については、表 3-25 の通りである。
-94-
表 3-24 中国石炭水上輸送における主な荷卸港と荷揚港の状況
石炭中継能力
輸送方式 輸送路線
港湾
石炭バース
(万㌧/年)
区分
又は地域
荷揚港
(仕出港)
沿海輸送
北路
秦 皇 島 18,700(2006 年)
港
天津港
8,500(2005 年)
黄驊港
8,000(2005 年)
京唐港
700(2005 年)
(2008 年前後では 3,000 達成)
中路
青島港
*2,300
南路
日照港
*4,500
(2007 年初二期工程検収後 6,000 達
成)
連 雲 港 2,600(2005 年)
港
内陸河川
輸送
荷卸港
(仕向港)
沿海輸送
南京港
*1,200
武漢港
*400~500
蕪湖港
*1,000
枝城港
1,000(2005 年)
京杭運河
徐州港
2,000(2005 年)
珠江水系
貴港
700(2005 年)
華東地区
上海港
*3,000
寧波港
*2,300
広州港
江陰港
2,000(2006 年)
1,300(港全体の 2005 年の中継能力、
石炭は約 2 万㌧)
南通港
220(2005 年)
鎮江港
100(2005 年)
杭州港
300(2005 年)
長江水系
華南地区
内陸河川輸送
馬 鞍 山 鋼材が主、石炭は非常に少ない
港
出典:関連港湾のホームページ、関連ニュース報道にて発表されたデータ、港湾関係責任
者からの情報を基に作成(斜字体のデータは、港湾関係責任者より入手したデータ)
注:*のあるデータは、ホームページ上で具体的年月日が発表されておらず、何時時点のデ
ータであるかは不明である。
-95-
表 3-25 2005 年の中国石炭出荷輸送量及び出荷輸送量
上位 3 位の港湾の石炭出荷輸送状況
累計出荷輸送総量(万㌧)
港湾
内訳
出 荷 輸
送総量
国内取引
海外貿易
14,473.6
6,894.3
11,013.2
5,929.7
3,460.4
964.6
6,688.5
5,612.8
三港合計
28,056.4
中国全体
37,086.1
秦皇島港
天津港
黄驊港
占める比率(%)
中国出荷輸送総
量に占める比率
内訳
国内取引
海外貿易
39.0
18.6
36.8
19.8
48.3
13.5
1,075.7
18.0
18.8
15.0
22,555.7
5,500.7
75.7
75.4
76.8
29,920.5
7,165.6
100.0
100.0
100.0
出典:2005 年石炭輸送状況分析(中国煤炭網)
③沿海、近距離海上石炭輸送の船隊
統計データには制限があるので、石炭輸送に従事しているばら積み船舶の専門デー
タを入手する事は出来ず、しかも石炭の輸送を請負う船舶は往々にしてその他貨物の
輸送も請負うので、ばら積み貨物船隊の状況しか把握できない。中国において、沿海、
近距離海上輸送に従事するばら積み貨物船隊は数多く存在しているが、比較的規模は
小さく、船令も高い等の特徴がある。
ⅰ)船隊の数が多く、規模が小さい
沿海及び近距離海上輸送に従事している水上輸送企業の数は数百社に上り、そ
の総積載重量トンは中国総積載重量トンの約 20%を占めているが、船隊規模は小
さい。2003 年の輸送能力 100 万トン以上の企業はわずか「中国海運」と「長江航運」
の二社のみである。海南省の 131 社の水上輸送企業のうち 1 隻のみ船舶を保有す
る企業が 41%を占め、福建省では 75 社の水上輸送企業のうち 1 隻のみ船舶を保
有する企業が 33%を占め、山東省では 1 隻の船舶のみ保有する企業の占める比率
は 64%と更に高い。この数年間、中国ドライバルク貨物輸送市場の需要が増加す
るのに伴い、各大型水上輸送企業が続々とばら積み貨物船の投入を増やしている。
1 隻の船舶のみ保有する企業の比率は下降しているが、水上輸送企業の数は多く、
過小過多という業界構造を変えるには至っていない。
ⅱ)船隊の船舶構造は不合理であり、船舶年令が高い
中国国内の統計データによれば、2005 年の中国沿海ばら積み貨物船の平均積載
重量トンは 4,450 トンであり、老朽船の比率も 69%と高く、主力型のばら積み貨
物船の平均船舶令は 20 年を超えている。現在この局面は改善されつつある。
ⅲ)中国沿海及び近距離海上ばら積み貨物輸送船隊の構成
中国の現在のばら積み貨物輸送船隊は、主として大型の中央直属海運企業、地
-96-
方の基幹海運企業、荷主が所有する船隊、地方の小型船隊等の四種類に区分する
事が出来る。
表 3-26 中国の主要乾ばら積み貨物水上輸送企業の概況
組織区分
代表的企業
乾ばら積み貨物輸送船隊の概況
①2005 年、中国海運は沿海石炭輸送市場の 37%
シェアを獲得した。
②長江航運の乾ばら積み貨物輸送業務に関わる
各種貨物船、曳航船、バージ等の営業船舶は合
計 665 隻有り、この内貨物船は 17 隻、河川・
海上曳航船は 99 隻、バージ 447 隻、各種補助
船舶 102 隻を保有しており、主として金属鉱
石、石炭、建材、化学肥料、穀物、鋼材等の輸
送を担っている。
1 大型中央直属
水上輸送企業
①中国海運
②長江航運
2 地方基幹
水上輸送企業
①寧波海運公司
①寧波海運公司の経営管理船隊規模は約 60 万積
載重量㌧である。
②福建省輪船総公
司
②福建省輪船総公司は各種輸送船舶 30 数隻、30
③廈門輪船公司
万積載重量㌧を保有しているが、うち、ばら積
み 貨 物 船 は 10 隻 で 積 載 重 量 ㌧ は 8,000 ~
26,000 ㌧であって、総積載重量㌧は 17 万㌧。
③廈門輪船公司は現在 4 万㌧級 2 隻、5 万㌧級 1
隻、6.5 万㌧級 1 隻のばら積み貨物船を保有。
3 荷主船隊
宝山鋼鉄股份
有限公司
①現在、中国国内の大型荷主はコスト低減、企業
競争力増強の為、そして同時に経営の多元化
を実現する為、自社の石炭輸送船隊を続々と
構築している。
②例えば、2004 年時点では、華東地区 8 社の石
炭大型ユーザーの中の 7 社が自社の船隊を構築
し、「中国海運」の華東地区での市場シェアを従
来の 80%から約 50%に減少させた。
4 地方小型船隊
―
①地方小型船隊の規模のほとんどが 5 万㌧以下
であり、多くが 1 隻船舶のみを保有する企業で
ある。これらの船隊は規模が小さいが数は多
い。競争手段が臨機応変であるので、中国沿海、
近距離海上石炭輸市場ではかなりのシェアが
ある。
②ベトナムから広西チワン族自治区、広東省、福
建省等に輸入される石炭のかなりの部分がこ
れらの小型船隊による輸送である。
-97-
3)中国石炭輸送の問題点
①鉄道輸送能力が不足し、季節的な輸送能力不足の問題が特に大きい
2004 年の中国鉄道営業距離は 7 万 km 余りであり、世界の鉄道総営業距離のわ
ずか 6%を占めるのみであるが、世界の 24%の輸送量を完了させ、その平均負荷は
世界平均水準の 4 倍である。2004 年の鉄道・貨車輸送引受満足率(=鉄道貨車の
貨物輸送総量/鉄道貨車の貨物輸送需要量×100)はほとんどが 35%程度であり、
10 月には 30%迄下がった。同時に多くの鉄道線、特に石炭輸送線路の輸送能力は
早くから飽和状態か、超飽和状態に陥っている。例えば 2004 年の鉄道大秦線(山西
省大同市~河北省秦皇島市)の輸送能力利用率は 120%に達し、鉄道石太線(河北省
石家庄市~山西省太原市)の輸送能力利用率は 114%に達している。
②港湾の石炭輸送能力システムの改善が待たれる
主として大水深埠頭、大型専用埠頭、バースの不足が現在の過負荷状態を惹起し
ており、石炭輸送の制約要因となっている。
例えば、環渤海湾地域は中国の「北の石炭を南に運ぶ」、輸出入石炭の主要集中地
であるが、石炭専用埠頭が少ない為、2003 年の石炭荷揚能力は約 2 億トンである
が、実際の取扱量は 2.7 億トンとなって能力オーバーとなっており、この結果、港
湾における船舶滞留、貨物滞留が生じた。
2005 年、東南沿海地域の 10 万トン級の荷卸バースは漳州、台州(純 10 万トン級)
に各 1 ヶ所あるのみで、5 万トン級バースが 12 ヶ所、その他の 56 ヶ所は全て 3.5
万トン級以下のバースであり、これらのバースが全体の 80%を占めている。
3-3-4 輸入石炭の輸送動向予測
1)鉄道輸送能力のボトルネック問題は大幅に改善される
国家エネルギー戦略に基づき、鉄道部は十大鉄道石炭輸送ルートの計画と建設に着
手しており、大同(内モンゴル西部を含む)、神府、太原(晋南を含む)、晋東南、陜西、
華南、兖 州、両淮、貴州(雲南、四川の一部を含む)、黒龍江東部等の十大石炭基地を
中心として、旅客輸送専用線を拡幅建設し、既存の線路の能力拡大と改造により、十
大石炭輸送ルートを構築、年間輸送能力約 20 億トンを達成して、石炭の海外輸送需
要に対応する。現在、鉄道部は鉄道大秦線(山西省大同市~河北省秦皇島市)の能力拡
大と改造を実行中であり、最終的には年間輸送能力 4 億トンを備える。
2006 年 7 月、国家発展・改革委員会は鉄道部、交通部、国家発展・改革委員会総
合運輸研究所、国家開発投資公司、大唐国際発電股份有限公司、神華集団、華能集団
等を組織して共同で『北部地区石炭海外輸送システム研究総合報告書』を編集作成し
て、全国石炭輸送の中長期計画を明確にして、北・中・南の 3 つの鉄道線路網を通し
て、「三西」(山西省、陜西省、内モンゴル西部)の石炭を華東地区、華南地区、華中地
-98-
区の各地域に輸送するとした。中国石炭中長期輸送計画については、表 2-27 の通り
である。
表 3-27 中国石炭輸送における中長期計画
石炭輸送
ルート
1 北路
2 中路
3 南路
計画石炭輸送総量(億㌧)
主要鉄道線
2010
年
2020 年
5.60
6.84
0.90
1.30
南北方向の鉄道輸送線、主として湖南省、湖北 1.85
省の石炭ユーザーに供給。
①太焦線
②侯月線
2.70
8.35
10.84
①大秦線(第一ルート)
②神朔黄線(第二ルート)
③新規建設予定の集寧~曹妃甸線(第三ルート)
①石太線
②邯長線
合計
出典:北部地区石炭海外輸送システム研究総合報告書(鉄道部、交通部等が共同作成)
2)埠頭等のインフラ施設の建設が進み、石炭海上輸送の発展を促進
2005 年末、北方地区の 7 つの港では建設中の石炭埠頭は 11 ヶ所であり、その内訳
は 3.5 万トン級:2、5 万トン級:4、7 万トン級:1、10 万トン級:2、15 万トン級:
2、である。
『十一五』期間(2006 年~2010 年)に沿海石炭荷役埠頭の建設を加速し、
3.5 万~15 万トン級の石炭埠頭を 10 ヶ所建設する予定である。2010 年には、秦皇島
港、唐山港、天津港、黄驊港、青島港、日照港、連雲港を主とする北方地区 7 港で
5.27 億トンの荷揚能力を形成し、これにより石炭荷揚能力が 2.14 億トン増加する。
総投資額が約 150 億元の唐山曹妃甸石炭専用埠頭の工事建設は 2006 年 8 月に正式着
工し、曹妃甸石炭専用埠頭には 5 万~10 万トン級の石炭バース 16 が建設され、年間
石炭荷揚能力は 2 億トンとなり、竣工後は世界でも最大の石炭専用埠頭となる。第 1
期の初期工事建設では 5 つのバースの建設が予定され、概算総投資額は 48.5 億元、
設計年間荷揚能力は 5,000 万トンで、2007 年末に第 1 期が竣工する。
また、国家発展・改革委員会は 29.83 億元を投資して京唐港区石炭埠頭の建設を認
可しており、当該プロジェクトは京唐港区を主体として、10 万トン級、5 万トン級、
3.5 万級の石炭船荷揚バースを各 1 ヶ所建設、バース岸壁長は 770m、設計荷揚能力
は 3,000 万トン、工期は 2 年である。
-99-
出典:国家発展・改革委員会総合輸送研究所の資料
注:中国政府の計画では、中国石炭輸送は主として北方沿海港湾である秦皇島、唐
山、天津、黄驊、青島、日照、連雲港、龍口等の荷揚港を整備するとともに、
華東地区、華南地区等、沿海地域の電力企業専用の荷卸専用埠頭及び汎用荷役
港湾区石炭荷役輸送施設を整備する。
図 3-14 中国政府の石炭輸送システム計画図
-100-
3-4 液化天然ガス(LNG)
3-4-1 中国における液化天然ガス(LNG)の輸出入量
1998 年、国務院は広東省の液化天然ガス(以下「LNG」という)プロジェクトを認可
した。これ以降、中国は相次いで 19 ヶ所の LNG 受入施設(具体的には表 3-29 参照)の
建設を計画したが、現在正式に稼動しているのは、中海油及び BP グローバル投資有限
会社、深圳市燃気集団有限公司の合作による深圳大鵬プロジェクトのみである。2006
年 6 月、当該プロジェクトは正式に操業を開始、オーストラリアから中国に初の LNG
が輸入された。深圳大鵬プロジェクトを除き、現在既に着工している LNG 受入施設プ
ロジェクトは福建省の莆田プロジェクト、浙江省の寧波プロジェクト、上海市の洋山プ
ロジェクトである。これらの 3 つのプロジェクトは 2008 年に操業開始・稼動の予定で
ある。これらのプロジェクトの概況については表 3-28 の通りである。
表 3-28:現在竣工・建設中の LNG プロジェクト
1
プロジェクト
名称
深圳大鵬
2
福建莆田
3
上海洋山
4
浙江寧波
計画輸入量
(万㌧/年)
370(竣工)
(総規模:700)
260(第 1 期)
(総規模:500)
300(第 1 期)
(総規模:600)
300(第 1 期)
(総規模:600)
輸入元国
輸入契約期間
建設状況
オーストラリア
2006~2030 年 竣工
インドネシア
2007~2031 年 建設中
(枠組協議)
2009~2033 年 建設中
(枠組協議)
未定
建設中
マレーシア
未定
(イランの可能性有)
出典:
『ガス産業エネルギー構造解析』、
『中国 LNG プロジェクト分布』及びその
他関連報道を基に作成
19 のプロジェクトの内、上記の 4 プロジェクトを除いた 15 のプロジェクトのうち、
珠海振戎プロジェクト(イラン)及び南通洋口プロジェクト(インドネシアの予定)の 2 つ
のプロジェクトを除く 13 のプロジェクトは LNG 供給元が確実で無い為、2010 年迄の
建設竣工操業開始は難しい。専門家が予測する 2007 年~2009 年の中国 LNG 輸入量に
ついては、図 3-15 の通りである。
-101-
深圳
福建
上海
寧波
1400
1200
300
1000
300
800
600
260
260
370
370
370
2007年
2008年
2009年
400
200
0
(単位:万トン)
出典:現在計画されている LNG 施設の建設進捗度を基に予測
図 3-15 専門家が予測する 2007 年~2009 年の中国 LNG 輸入量について
現状から見れば、関連専門家が指摘しているように 2007 年時点では中国では深圳大
鵬 LNG 施設のみが LNG を輸入可能であり、その輸入量は 370 万トンである。2007
年末には福建省のプロジェクトも正式に稼動するので、2008 年では 260 万トン増加し、
その総輸入量は 630 万トンに達すると見られる。寧波、上海の受入プロジェクトが計
画通り 2008 年に完成すれば、2009 年の中国 LNG 輸入量は約 1,200 万トンとなる。
今後の中国の天然ガスの輸入量については諸説があるが、ある専門家の分析によれば、
2020 年では中国の天然ガス年間生産量は 1,200 億 m3 に拡大する、需要量は 1,500~
2,500 億 m3 に増加する為、仮に 2,000 億 m3 とすれば、800 億 m3 が不足、輸入天然ガ
スによる補填が必要となる。
一方、中国が現在計画している LNG 陸上・海上受入施設の設計能力から見れば、
(既
に第 1 期及び第 2 期の規模・数量が発表されている)15 の受入施設の第 1 期の輸入能
力は合計 4,530 万トンであり(天津、連雲港、温州及び珠海振戎のプロジェクトは含ま
ず)、第 2 期の 3,220 万トンを加えると、計画輸入能力は 7,750 万トンに達する。また、
一部の業界関係者の予測では、中国の海運輸入 LNG の数量は 2010 年には 1,900 万ト
ンとなり、2015 年では更に上昇して 3,300 万トンとなる。ただし、業界内では、今後
の中国の LNG 輸入では比較的大きな不確定性が存在するとの見方も強い。即ちこの主
の不確定性とは、主として、中国の陸上パイプ輸送による輸入 LNG の数量が決定出来
-102-
ないことによる。これは気体天然ガスと液化天然ガスの量を予測することが、二種類の
天然ガスの輸入コストの問題だけでなく、中国のエネルギー戦略の外交交渉結果にも左
右されるからである。実際、2006 年 9 月に開催された「アジア太平洋天然ガス国際サミ
ット」の分析によれば、ここ数年の LNG 価格の急速な上昇が LNG の輸入数量に今後大
きな影響を与えると見られている。
2006 年 3 月、中国・ロシアにて締結された『ロシアの中国向天然ガス供給の了解に
関する覚書』によれば、2011 年、世界でもトップクラスの天然ガス輸出国であるロシ
アは、パイプラインを通じて中国への天然ガス供給を開始、中国の毎年の輸入量は 600
~800 億 m3 に達する。2006 年 4 月には中国と中央アジアのトルクメニスタンとで『ト
ルクメニスタン・中国の両国政府によるトルクメニスタンから中国に至る天然ガスパイ
プライン敷設に関する総協議』を締結したが、当該協議では、「2009 年より毎年中国に
対して 300 億 m3 の天然ガスを輸出し、契約期間は 30 年とする」と規定されている。
この 2 つの協議が順調に実施されれば、ロシアとトルクメニスタンの二国だけでも
2020 年迄には毎年中国向として 900~1,100 万億 m3 の天然ガスがパイプラインを通じ
て輸入される。
表 3-29 に中国における竣工、建設中、建設予定の輸入 LNG 受入施設プロジェクト
の基本的状況を紹介するが、当該表は『広東油気商会 LNG コンサルティング』及び『中
国燃気設備網』等の資料を整理して作成した。
-103-
-104-
中海油
中石油
主要
投資者
中石化
370
260
300
BP 全球投資有限公司
深圳市燃気集団有限公司
福建投資開発総公司
8
10 上海申能(集団)有限公司
(次頁に続く)
9
300
広西壮族自治区政府
7
200
大連市政府
6
600
北京控股集団
5
4
3
1
2
№
300
340
330
―
200
400
100
防城港、欽州、北海
鉄山より選定
深圳大鵬湾東岸秤
関角
福建湄洲湾北岸莆
田秀嶼港区
上海国際航運中心
洋山深水港区
45.9
145
72
52
大連新港(第 1 選択) 68
河北省曹妃甸
竣工済
認可待ち
成立認可済
認可待ち
第 1 期 2007 年テスト 着工済
生産予定
第 1 期 2008 年 6 月竣 着工済
工・操業開始
第 1 期工事遅くとも
2010 年にはガス供給
第 1 期計画では 2008
年ガス供給
2010 年供ガス供給予
定
2006 年 6 月操業開始
表 3-29 中国における竣工、建設中、建設予定の輸入 LNG 受入施設プロジェクトの基本的状況
規模(万㌧/年)
総投資額
合作投資者
場所
操業開始予定日
進捗度
(億元)
第1期
第2期
中国華能集団
山東省青島市
2007 年竣工・稼動予定 成立認可済
300
200
45
中 国 海 洋 石 油 総 公 司 認可待ち
中海油
受入施設、300 万㌧埠 天津市
5
(埠頭建設) と 天 津 市 人 民 政 府 は
頭、ガス輸送パイプの
2004 年 3 月に合作建
建設
設の基本協議書締結
中 国 石 化 と 江 蘇 省 政 認可待ち
江蘇省政府
埠頭、受 LNG 発電 江蘇省連雲港市
50
府は 2005 年 5 月に関
入設備、 所 1 ヶ所
輸送パイ の建設
連協議書を締結
プライン
第 1 期は 2009 年竣工 成立認可済
江蘇省南通市
江蘇国信・シンガポール 350
150
250
操業開始予定
洋口港西太陽沙
金鷹国際集団
マレーシア石油公司
インドネシア東固プロジェクト
オーストラリア ALNG 集団
未決定
未決定
未決定
(業界内関係者はインド
ネシアを予測)
未決定
未決定
イランと意向書に合意
未決定
資源供給者
-105-
珠江
振戎
主要
投資者
中海油
合作投資者
19 珠海振戎公司
17 中国電力投資集団公司
秦皇島市政府
18 遼寧省政府
16 塩城市政府
15 温州政府
14 海南省政府
浙江省能源集団有限公司
寧波市電力開発公司
12 粤電集団、広州市政府、
粤港投資控股公司
13 汕頭市政府
11
№
総投資額
(億元)
142
操業開始予定日
未決定
認可待ち
2004 年 3 イラン国家天然ガス輸出
月 輸 入 会社
LNG 合作
協議書締
結
未決定
未決定
未決定
認可待ち
認可待ち
認可待ち
未決定
認可待ち
認可待ち
未決定
認可待ち
資源供給者
未決定
(イランの可能性有り)
未決定
着工済
進捗度
出典:『広東油気商会 LNG コンサルティング』及び『中国燃気設備網』等の資料を基に作成
浙江省寧波市北侖区
場所
第 1 期建設 2011 年竣
工予定
300
700
広東省珠海市高欄港 60( 第 1 2008 年 9 月に第 1 回
期)
ガス供給予定
250
計画無、た 広東省汕頭市
45( 第 1 中海石油天然気・発電
だし大きな
期)
有限責任公司と汕頭
保留地取得
市政府は 2004 年 10
済
月に関連協議書締結
200
100
海南洋浦(第 1 候補
第 1 期 2009 年竣工操
地)、八所(第 2 候補
業開始、第 2 期 2015
地)
年竣工予定
LNG 受入施設・付帯設 浙江省温州市
40~50
中海石油天燃气・発電
備、主要幹線パイプラ
有限責任公司と温州
イン(受入施設から温州
市政府は 2005 年 4 月
分岐点迄)、関連 LNG
に関連協議書締結
発電所の計画・建設
300
未計画
江蘇省塩城市
150
中海石油天然気・発電
有限責任公司と塩城
市政府は 2004 年 9 月
に関連協議書締結
200
100
山海関港又は秦皇島 136
第 1 期 2010 年前後に
ガス供給予定
300
未計画
遼寧省営口市
50
中国海洋石油総公司と
遼寧省政府は 2004 年
10 月に関連協議書締結
契約関連 2008 年よりイランから
250+250
広東省珠海市
金額は巨 250 万㌧/年の LNG
大 で る を輸入。2013 年より
が、対外 輸入量を 500 万㌧/年
的には未 拡大。期間 25 年
公表
規模(万㌧/年)
第1期
第2期
300
300
3-4-2 中国における液化天然ガス(LNG)の輸入元
中国輸入天然ガスの輸送方式は主として海上輸送と陸上パイプライン輸送の二種類
であり、以下各々の輸送方式に基づき、天然ガスの輸入元の国/地域について説明する。
1)海上輸送天然ガスの輸入元国/地域
2006 年 6 月時点において、中国の「中海油」、「中石化」及び「中石油」の三大企
業は既に 18 の中国国内 LNG プロジェクト計画を発表しているが、各プロジェクト
の第 1 期総設計能力は約 4,500 万トン以上であり、多くのプロジェクトがその計画書
の中では 2010 年迄には供給を開始するとしている。計画中の LNG プロジェクトの
多くは経済の発達した、人口が密集している東部沿海地域に集中している。
現在、
既に決定しているか基本的に決定している LNG 輸入元国はオーストラリア、
インドネシア、マレーシア及びイランの四国家である。これらの四国家の中国向け天
然ガス輸出計画は以下の表 3-30 及び図 3-16 の通りである。
表 3-30 中国の現在初歩的に決定している LNG 輸入元国及び輸入計画
中国の
輸入量
輸入元国
契約期間
契約形態
輸入元
(万㌧/年)
オーストラリア
中海油
370
2006 年~2030 年
正式契約
インドネシア
中海油
260
2007 年~2031 年
意向書
マレーシア
中海油
300
2010(又は 2011)年~2039(又は 2040)年
意向書
イラン
中石化
1,000
2010 年~2034 年
意向書
250
2008 年~2032 年
意向書
珠海振戎
2,180
合計
出典:中国国内の各メディアの報道を基に作成
注 1:「珠海振戎」とイラン側の意向書によれば、2013 年より年間輸入量は従来の 250
万トンから 500 万トンに拡大するとしている。
注 2:現在正式に締結されているのはオーストラリアと「中海油」とのプロジェクト
のみであり、残りのプロジェクトは全て意向書であるので、変更がある場合
もある。
注 3:上記プロジェクトの輸入契約は全てノンアットサイト契約であるので、その
発効は 2008 年以降となる。今後数年間で中国はその他の LNG 輸入契約を締
結する可能性がある。
なお、中国とイランとの間の年間 1,250 万トンの天然ガス輸入については、「中石
化」とイランは 30 年間の 2.5 億トン LNG 供給契約を締結し、中国国有石油貿易商
である「珠海振戎」とイランとで 25 年間の 1.1 億トン LNG 供給契約を結んでいる。
ただし、これらの契約は全て意向書の段階である。しかも、イランは最近の核開発
-106-
問題等で、国際的に多くの国より譴責を受けているので、天然ガスの安定供給にも
影響が及ぶ可能性がある。
オーストラリ
ア
17%
インドネシア
12%
イラン
57%
マレーシア
14%
出典:表 3-30 のデータに基づき作成
図 3-16 中国の今後の可能性のある LNG 輸入元国の構成
2)陸上パイプライン輸送天然ガスの輸入元国
中国が現在計画している陸上パイプライン輸送天然ガスプロジェクトで既に意向書
段階にあるプロジェクトはロシア・中国天然ガス陸上パイプライン輸送及びトルクメ
ニスタン・中国天然ガス陸上パイプライン輸送の二大プロジェクトである。
①ロシア・中国天然ガス陸上パイプライン輸送プロジェクト
2006 年 3 月、中国とロシアは『ロシアの中国向天然ガス供給に関する了承の覚書』
を締結し、この中でロシア・中国両国天然ガス合作プロジェクトの供給日、数量、
ルート(東ラインと西ライン)及び価格構成公式原則を規定して、現在当該プロジェク
トは正式な商業交渉段階に入っている。当該プロジェクトは東ラインと西ラインの
2 つのパイプラインが計画されている。
ⅰ)西ライン:ロシアの西シベリアからアルタイ辺境区を経て中国新疆に入り、最終
的には中国の「西気東輸」(西部地区のガスを東部地区に輸送)パイプラ
インに接続されて、中国沿海地区に運ばれる。
ⅱ)東ライン:東シベリアのイルクーツク州クエルクチュガス田からガスを供給して
中国東北地区迄パイプラインを敷設して運ぶ。
-107-
ロシアと「中石油」、「中石化」との共同最新決定によれば、2008 年より先ず全長
約 3,000km の西ラインを建設して、5 年内に竣工させてガスを通し、2011 年には
ガス輸送量を 300 億~400 億 m3 に到達させる。
②トルクメニスタン・中国天然ガス陸上パイプライン輸送プロジェクト
2006 年、中国とトルクメニスタンは『トルクメニスタン・中国両政府のトルクメ
ニスタンから中国迄天延ガスパイプラインを敷設する事に関する全体協議書』を締結
し、当該協議の中で、中国・トルコは陸上天然ガス輸送パイプラインを 2009 年迄に
竣工させ、中国に天然ガスを送ると規定している。2009 年より毎年中国向に 300 億
m3 の天然ガスを輸出し、契約期間は 30 年である。協議にある当該天然ガスパイプラ
インはウズベキスタン及びカザフスタンの領土を経て中国国内の新疆及び「西気東
輸」パイプラインに接続される。途中経由する両国は天然ガスが豊富な国家であり、
しかも中国への天然ガス供給を希望している。
3-4-3 輸入液化天然ガス(LNG)の輸送状況
中国の LNG の輸入は開始されたばかりである。2006 年 5 月 26 日、オーストラリア
を出発した 6 万トンの液化天然ガスを満載した「西北海鷹」号専用輸送船が深圳市大鵬
湾秤頭角の LNG 受入バースに接岸した。これが中国国内輸入の初の液化天然ガスタン
カーの入港である。接岸した「西北海鷹」の総トン数は 106,283 トンであり、長さ
262.44m、幅 47.20m で、英国船籍の船であった。
1)中国 LNG 輸入の輸送システム
2001 年、当時の国家計画委員会(現在の国家発展・改革委員会の前身)は、中国が
LNG 運搬を担当する事を基本原則として、LNG 船舶の中国国内建造という目標を推
進、実現させ、国内造船所の LNG 船舶建造の事業化調査研究を主として、LNG 船
舶建造の準備作業を開始する事を明確に決定した。そして、「中遠集団」、「招商局」
に広東省の LNG 輸送プロジェクトの入札を担当させた。よって、中国以外の船会社
や造船所が中国輸入 LNG 海上輸送業務に参与する事は非常に難しい。
現在中国で、
稼動しているのは、
まだ深圳大鵬の輸入 LNG 受入施設のみであるが、
その輸入 LNG 輸送システムは次頁の図 3-17 に示す通りである。
-108-
ガス
購入契約
ガス
LNG ユーザー 売却契約
広東大鵬 LNG 有限公司
輸送契約(5 年)
契約期間(25 年)
リース契約(5 年)
中国液化天然気船務
(国際)有限公司
粤鵬液化天然気運輸有限公司
粤港液化天然気運輸有限公司
船建造契約
貸付契約
滬東中華造船
(集団)有限公司
オーストラリア
液化天然ガス
有限公司
監理サービス契約
国家開発銀行
米 Shell 国際貿易
運輸有限公司
技術サービス契約
BP 航運有限公司
技術サービス契約
仏大西洋造船所
図 3-17 深圳大鵬 LNG 受入施設の輸入 LNG 輸送システム
受入施設(広東大鵬 LNG 有限公司)と粤鵬液化天然気運輸有限公司(以下略称:粤鵬)
及び粤港液化天然気運輸有限公司(以下略称:粤港)は液化天然ガス船舶のリース契約
を締結している。「粤港」と「粤鵬」は 2004 年 8 月に滬東中華造船厰と二隻の LNG 船
舶建造契約を締結して、オーストラリアから広東省の LNG 受入施設迄の LNG 運搬
に使用することとし、別途 1 隻のオプションを付した。滬東中華造船厰が建造した初
の LNG 輸送船は、2007 年に竣工、引渡される。
なお、「粤鵬」、「粤港」も中国液化天然気運輸(控股)有限公司(以下略称:CLNG)の
子会社である。その具体的な出資権構成については、図 3-18 の通りである。
-109-
中遠集団
招商局集団
50%
50%
UHI
CLNG
8%
SMC
51%
8%
粤鵬液化天然気運輸有限公司
粤港液化天然気運輸有限公司
3%
ETG
5%
5%
BHP
BP
5%
CTCL
5%
5%
MIMI
SHELL
5%
WoodSide
図 3-18 「粤鵬」、「粤港」の出資権構成
注:上記図の各公司の社名は以下の通りである。
中文全称
英文略称
1
中国液化天然気運輸(控股)有限公司
CLNG
2
超康投資有限公司
UHI
3
深圳航運総公司
SMC
4
ETG 天然気公司
ETG
5
BHP Billlion(西北大陸架)有限公司
BHP
6
雪佛龍運輸有限公司
CTCL
7
英国全球投資有限公司
BP
8
星牌運輸公司
MIMI
9
壳牌発展(オーストラリア)有限公司
SHELL
10
伍德賽德広東運輸公司
WOODSIDE
CLNG は 2004 年 4 月に設立された「中遠集団」と「招商局」との国内合弁企業であり、
海外から LNG を中国に輸送するための海上輸送任務の専門会社である。当該公司は
中国南方地区の輸入 LNG の輸送主体であり、深圳大鵬 LNG 受入施設の為の輸入
LNG を輸送する外、
「中海油」が参与している福建省の LNG 受入施設、
浙江省の LNG
受入施設及び上海市の LNG 受入施設向けの LNG 輸送も担当している。なお、福建
省 LNG 輸入プロジェクトの為に、CLNG が管理している閩榕液化天然気運輸有限公
司及び閩鷺液化天然気運輸有限公司は、既に滬東中華造船厰に 2 隻の 14.7 万 m3 の
-110-
LNG 船を発注し、別途オプション 1 隻を付している。
2006 年 1 月、国家発展・改革委員会能源局の指導の下、CLNG は上海市及び浙江
省の LNG 運輸プロジェクト弁公室と合同で、『上海及び浙江 LNG プロジェクト船舶
建造入札実施案』を検討して制定し、当該案では「滬東」、「大連」、「江南」、「南通」
の 4 社の造船所に入札参加要請状を出した。落札対象は、1、1+1、+2、+1 の合計
6 隻の 13.8~16.5 万 m3 の LNG 船である。即ち、2009 年下半期及び 2010 年に各 1
隻、2010 年に追加 1 隻のオプション、2011 年に追加 2 隻のオプション、20102 年に
は追加 1 隻のオプションとなる。
外国の船会社や造船所は CLNG の入札対象には入っていないが、今後数年内には、
中国国内のこれらの大型造船所が続々と LNG 船の重要設備の調達を行い、その入札
対象は、日本、韓国、フランス等の国家となると見られる。
2)中国輸入 LNG 輸送の基本施設
LNG 輸送の基本施設は主として LNG 輸送船と LNG 輸送船専用埠頭、
バースである。
①LNG 輸送船
「滬東中華造船厰」が広東省 LNG プロジェクト及び福建省 LNG プロジェクトの
為に建造する 4 隻の LNG 船舶は全て薄膜型設計であり、各船舶の積載能力は 14.7
万 m3 (長さ 292m、船幅 43.35m、航行速度 19.5 ノット)であり、各船舶の建造価
格は 1.6 億米ドルである。予定では第 1 船は 2007 年末に引渡し就航である。オー
ストラリアから深圳迄の海上航行距離は 2,771 海里であり、
一回の往復は 15 日間、
毎回の輸送能力は LNG:6.5 万トン、各船舶の年間航海数は 22 回であるので、1
隻当たりの年間輸送能力は LNG:143 万トンである。
②埠頭、バース
表 3-31 に既に建設又は着工された LNG 受入施設プロジェクトの LNG 船用バー
スの状況を示す。
表 3-31 中国の LNG 船舶専用埠頭、バースの建設状況
プロジェクト
LNG 専用バース
1
2
広東省
福建省
受入施設港内に 14.5 万 m3 の LNG 輸送船が接岸可能な主要バース:1
埠頭工事は主として陸域形成工事(海上埋立、陸側より埋立で造成)、LNG 輸送
船バース:1(8~16.5 万 m3 の LNG 輸送船、長期的には 21.5 万 m3LNG 輸送
船の接岸も可能)、作業船舶用バース:2 及び相応の付帯施設、航路、港湾区内
の浚渫工事等。
第 1 期の規模は 260 万㌧/年の LNG 受入施設と輸送ガスパイプライン幹線、
LNG 輸送発電所、五都市の天然ガス供給。第 2 期の規模は 600 万㌧/年。
3
寧波市
第 1 期工事では 8~16.5 万 m3LNG 輸送船が接岸する荷役埠頭:1 を建設。
4
上海市
LNG 受入施設、LNG 専用埠頭及び海底輸送ガスパイプライン幹線を含む。
-111-
4.
中国政府の水運業に関する計画、政策
4-1 水運業の発展計画
中国政府は交通運輸業の発展を重視しており、一連の関連発展計画を制定した。この
中で水運業界に関する主要なものは表 4-1 に列記した 11 の発展計画である。
表 4-1 中国水運業の 11 の主要発展計画
公布日
概要
№
名称
1
全国沿海港湾発展戦略
2001 年
沿海港湾の発展戦略の位置付け、戦略目標と六大
発展戦略が提出され、21 世紀初期の中国沿海港湾
発展計画と建設の指導に使用される。
2
全国内陸河川港運発展 2001 年
戦略
内陸河川港運発展の戦略的位置付け、戦略目標と
四大発展戦略が提出され、21 世紀初期の全国内陸
河川港運発展計画と建設の指導に使用される。
3
長江デルタ圏、珠江デ 2004 年
ルタ圏、渤海湾三区域
沿海港湾建設計画
(2004~2010)
建設計画範囲は長江デルタ地域、珠江デルタ地域
及び環渤海湾地域の 3 つの地域における沿海港湾
であって、石炭、原油。鉄鉱石及びコンテナの四
大貨物が主である。
4
道路水路「十一五」発展 2004 年
計画綱領
「十一五」期間の中国道路水路交通の発展に対す
る予測を基礎として、「十一五」の道路水路交通発
展の目標と重点を制定し、実施保障対策を配置し
た。
5
道路水路交通科技発展 2005 年
戦略
交通発展の目標と任務に基づき、交通科学技術発
展の指導方針、戦略目標及び重点分野を明確にし
て、交通科学技術刷新体系建設の政策措置の強化
と整備を提案して、科学技術発展の戦略性、全方
位性、前向きな手配りを実施。
6
道路水路交通中長期科 2005 年
技 発 展 計 画 綱 領 (2006
~2020)
国民経済、社会発展及び国家安全の需要から出発
して、交通科学技術自身の発展の特長と規律を結
合させ、中長期交通科学技術作業の発展目標と重
点任務を決定して、具体的計画実施案を制定し、
交通科学技術発展を促進する保障対策を提案し
て、交通産業の科学技術活動と科学技術資源の配
置を指導する。
7
道路水路交通「十一五」 2006 年
科技発展計画
今後 5 年の交通科学技術発展の指導方針、発展目
標、重点任務及び保障対策を提案している。
(次頁に続く)
-112-
№
名称
公布日
概要
8
全国内陸河川船型基 2006 年
準化発展綱領
内陸河川水上輸送及び港湾発展需要を根
拠として、2020 年には中国内陸河川船型
の基準化を基本的に実現する事を目標と
して、全国内陸河川船型基準化の指導思想
と原則を決定し、全国主要内陸河川及び通
航水域船型基準化の段階的目標を実現す
る事を提案して、関連政策及び措置を制定
する。
9
道路水路交通情報化 2006 年
「十一五」発展計画
「十一五」期間の道路水路交通情報化の指
導思想及び目標を決定し、主要任務及び建
設内容を明確にして、計画実施に対する提
案と保障対策を提出。
10 全国沿海港湾配置計 2006 年
画
11
各々の地域の経済発展情況及び特徴に基
づき、地域内港湾の現状及び各港湾間の輸
送関係と主要貨物類別輸送の経済的合理
性によって、全国沿海港湾を環渤海、長江
デルタ、東南沿海、珠江デルタ、西南沿海
の 5 つの港湾群に区分して、各群の総合性、
大型港湾の主体的役割を強化して、石炭、
石油、鉄鉱石、コンテナ、穀物、商品自動
車、陸島 Ro/Ro 輸送、旅客輸送等の八大輸
送体系を配置する。
全国内陸河川航路及 2006 年 上
び港湾配置計画
半期に草稿
完成、2007
年上半期に
国務院批准
全面的に中国内陸河川輸送資源を棚卸し
て、近年の内陸河川輸送発展の成果及び問
題点を分析して総括し、中国地域経済の協
調的発展、節約型社会の建設と総合交通輸
送システム構築の要求に基づき、全国範囲
における 1,000 ㌧級船舶通航の三級及びそ
れ以上の航路を主として、500 ㌧級船舶通
航航路を従とする計画案を提出。
以上の 11 の発展計画のうち、『道路水路交通「十一五」発展計画綱領』が中国の水運業
に対する全面的な計画を展開しているので、その水運関連内容について、次頁以降の表
4-2 に纏めたので、ご参考とされたい。
-113-
名称
表 4-2 『道路水路交通「十一五」発展計画綱領』の水運関連内容
道路水路交通「十一五」発展計画綱領
公布日
2004 年 12 月
制定部門
交通部総合企画司
制定目的
主として業界発展方向を明確にし、市場主体行為を誘導して、政府の作業重点を明
確にする為
主要内容
①「十五」の回顧と評価
②「十一五」の情勢と需要
③「十一五」の目標と重点
④計画実施保障
水運業の今後の発展予測
水路輸送
量予測
①貨物輸送量
1)2010 年では水路貨物輸送量は 27.3 億㌧に達すると予測され、年平均成長率は
6.3%であり、うち、内陸河川、沿海、遠洋貨物輸送量は各々13.5 億㌧、8.1
億㌧、5.7 億㌧に達し、『十一五』期間における平均成長速度は各々5.8%、
8.1%、5.3%である。
2)水路貨物中継積換え量は 5 兆 4,600 億㌧ km に達し、年平均成長率は 6.2%で
あり、2010 年の内陸河川、沿海、遠洋貨物中継積換え量は各々3,100 億㌧ km、
1 兆 500 億㌧ km、4 兆 1,000 億㌧ km に達し、
『十一五』期間における平均成
長速度は各々6.7%、9.9%、5.3%である。
3)内陸河川水上輸送は更に発展し、2010 年の長江幹線航路(河川から海への直接
輸送を含む)、西江幹線航路、京杭運河蘇南区間の貨物輸送量は各々5.8 億㌧、
1 億㌧、2.4 億㌧に達する。長江デルタ地域内陸河川貨物輸送量は 6.67 億㌧に
達する。
②旅客輸送量
2010 年、水路旅客輸送量はのべ約 2.35 億人に達し、年平均成長率は 4.5%で
ある。2010 年では全国主要港湾旅客取扱量はのべ 1 億 2,200 万人に達し、年平
均成長率は 5.6%となる。
港湾主要
2010 年では全国港湾取扱量は 60 億㌧以上に達すると予測され、うち、沿海は
貨 物 取 扱 40 億㌧以上(この内、外貿取扱量:約 20 億㌧、総取扱量の 50%)であり、内陸河川
量予測
は約 20 億㌧であって、全国・沿海・内陸河川港湾の 2005 年~2010 年の年平均成
長率は各々7.2%、8.2%、5.6%である。主要貨物取扱量の予測は以下の通りであ
る。
①石炭:水運による石炭輸送需要量は成長を持続して、2010 年では沿海主要港湾
での石炭一次荷卸は 4.8 億㌧、取扱量は 9.5 億㌧に達し、
『十一五』期間の年平均
成長率は 7.2%である。
②原油:外貿海運輸送量及び港湾取扱量は急速に伸びて、2010 年では全国港湾外
貿輸入原油 1.9 億㌧、2005 年~2010 年の年平均成長率は 4.6%である。2010 年
の全国港湾原油取扱量は 3.2 億㌧に達し、2005 年~2010 年の年平均成長率は
4.8%である。
(次頁に続く)
-114-
港 湾 主 要 ③鉄鉱石:2010 年には約 3.0 億㌧に達し、年平均成長率は 6%である。取扱量は
4.5 億㌧以上に達し、2005 年~2010 年の平均成長率は各々5%及び 2%である。
貨物取扱
量予測(続 ④コンテナ:2010 年では沿海主要港湾のコンテナ取扱量は 1.25 億 TEU に達し、
2005 年~2010 年の年平均成長率は 14%である。内陸河川コンテナ輸送は急速
き)
発展期に入り、
『十一五』期間の年平均成長率はほぼ 20%となり、2010 年の内
陸河川コンテナ取扱量は 1,500 万 TEU に達する。
水運業発展目標
輸送
サービス
目標
①海上輸送サービス
1)中国船籍船舶輸送能力規模を適度に拡大し、構造の合理化を図る。
2)専業化船隊及び大型専業化埠頭の構築を基礎として、液体ばら積み貨物(石油)、
乾ばら積み貨物(鉄鉱石、石炭、穀物)、コンテナ及び特種物資専業化輸送シス
テムを確立して、全体的に高い国際的競争力を備える。
3)コンテナ遠洋直接輸送率を更に引き上げる。コンテナ幹線港と高速道路または
都市高速道路を繋いで、全工程輸送のシームレス接続を実現する。
②内陸河川輸送サービス
長江幹線航路及び主要支線航路並びに長江デルタ地域水路ネットワーク地区、
西江幹線航路及び珠江デルタ地域水路ネットワーク地区のコンテナ専業化輸送
システムを基本的に確立して、石炭、鉄鉱石、建材、金属鉱石類輸送システムを
整備して、LNG、自動車 Ro/Ro 荷役輸送を急速に発展させ、観光旅客輸送を流
行に乗せて、水上輸送収益の顕著な向上を目指す。
インフラ
基盤施設
建設及び
輸送装備
の発展目
標
①沿海港湾
1)2010 年、沿海港湾インフラ基盤施設の有効供給能力を顕著に引き上げ、構造
を更に合理化し、適応度の 1.1:1 を達成する。
『十一五』期間の新規増設大水
深バースは約 350 とし、新規増設取扱能力は 19 億㌧、総取扱能力は 44 億㌧
を達成させる。20 万㌧級以上の原油輸入荷役埠頭の能力を外貿輸入量 80%・
20 万㌧級以上の船舶輸送需要に対応させ、10 万㌧級以上の鉄鉱石輸入荷役埠
頭の能力を外貿輸入量 85%・10 万㌧級以上の船舶輸送需要に対応させ、コン
テナ幹線港はスーパーパナマクス型コンテナ船の全天候荷役停泊の需要に対
応させる。
2)沿海港湾は段階的に配置を更に改善して、コンテナ、原油、鉄鉱石、石炭、穀
物等の輸送システムの大型専業化埠頭の配置を基本的に形成する。
3)港湾集中分散輸送システムの構築を顕著に進展させる。
4)主要港湾の入港航路を基本的に船舶大型発展要求に対応させる。
5)陸と島との間の交通を更に改善して、島の Ro/Ro 荷役、旅客フェリー輸送に重
点を置く。
(次頁に続く)
-115-
インフラ
基盤施設
建設及び
輸送装備
の発展目
標(続き)
②内陸河川航路及び港湾
2010 年、全国内陸河川水路輸送全体を経済社会発展要求に基本的に対応させ
る。内陸河川ハイレベル航路の建設を顕著に進展させ、珠江デルタ地域ハイレベ
ル航路網を基本的に完成させ、長江デルタ地域ハイレベル航路網の建設を全面的
に展開して、長江幹線航路の上流・中流・下流航路を系統的な整理段階に組み入
れて、主要支流航路建設を更に進展させ、航路基準及び通航能力を更に引き上げ
て、船舶航行安全を保障する。インテリジェント水上輸送モデルプロジェクトの
建設を開始し効果収益を発揮させる。三級以上の内陸河川航路里程を 1 万 km 以
上にし、
五級航路を 3 万 km 以上にする。水運主要航路計画里程基準達成率を 70%
とする。内陸河川コンテナ埠頭航行能力を顕著に向上させ、基本的に河川から海
への直接輸送及びコンテナ輸送の発展需要に対応する。
③支持保障システム
効果的な水上交通安全予防監督管理システムを基本的に構築し、事故の予防及
び管理能力を常に引き上げて、通航環境及び水上航行秩序の顕著な改善を図り、
国際公約を履行して、国家権益維持能力を顕著に増強させる。重点海域及び内陸
河川重要区間では、全方位をカバーし、全天候航行可能、急速反応能力を備えた
近代的水上安全管理システムを初歩的に確立する。50 海里内重要海域応急到達時
間は 150 分以内とし、主要内陸河川区間は 90 分以内とする。人命救助有効率は
93%以上とする。重点水域及び港湾一次オイル漏れ制御清掃除去能力は 200 ㌧を
達成する。海上有効監督管理範囲は 100 海里を達成させる。
④輸送装備
1)海運船隊は大型ばら積み貨物船、大型オイルタンカー、コンテナ船、Ro/Ro 船、
LNG 船を重点とし、大型化、専業化の方向に発展させ、船隊総積載重量㌧及び
コンテナ船隊輸送能力規模を世界の上位にランクインさせる。
2)15~30 万㌧級大型原油輸送船を重点的に発展させ一定規模を達成させる。
3)ばら積み貨物船隊の構造を調整し、ばら積み貨物船隊の規模を適度に拡大して、
15 万㌧以上のケープタウン型船を重点的に発展させ、液体ばら積み貨物船隊の
規模を顕著に引き上げて、輸送能力規模の世界ランキングを大きく引き上げる
事に注力して、石油輸送の国家経済安全輸送需要を満足させ、乾ばら積み貨物
輸送船隊規模の世界第 3 位を維持する。
4)コンテナ船隊を発展させ、スーパーパナマックス型コンテナ船を重点的に発展
させる。
5)内陸河川船舶については、内陸河川自力航行船、先頭引き船船隊、河川・海上
直接輸送船、コンテナ船、Ro/Ro 船を重点的に発展させ、旅客船を適度に発展
させる。技術的に遅れた船型を徐々に淘汰して、総量規制を通じて、輸送能力
更新を加速化させ、基準化・系列化・大型化・近代化の方向に発展させる。平
均船舶年令をある程度引き下げて、船隊構造の合理化を図り、旅客輸送船舶と
観光産業を緊密に結合させて、快適化・リクレーション化の方向に発展させる。
2010 年の貨物輸送船舶の平均㌧数 270 ㌧を達成させる。
(次頁に続く)
-116-
発展の重点
水 路 輸 送 ①コンテナ輸送を大きく発展させ、幹線航路輸送を奨励して、内陸河川支線航路輸
送を推進して、コンテナ化水準を常に引き上げる。石油製品及び液体化学工業製
サービス
品、石炭を主とした専業化ばら積み輸送と自動車 Ro/Ro 荷役輸送を発展させる。
複合一貫輸送を推進する。
②河川・海上直接輸送及び幹線・支線航路直接輸送を大きく発展させ、中間段階を
減少させて、輸送効率を向上させる。
③常軌的旅客輸送の観光化、高速化、旅客・貨物フェリー化の方向への発展を加速
化させる。
④港湾建設と経営分野における企業間の合同経営、合作緊密化を奨励して、長期的
安定した合作関係を確立する。資本を紐帯として地区を跨った、業際の、所有制
を越えた大型企業及び企業集団を基に、水上輸送企業の規模化、専業化、集約化
経営を実現して、大型中堅企業のコンテナ、ばら積み貨物、危険品輸送における
主導的地域を引き続き発揮する。水上輸送企業経営効果収益とリスク抵抗能力を
向上させる。
インフラ
基盤施設
建設及び
輸送装備
の発展の
重点
①沿海港湾
沿海主要機軸港湾の建設を強化し、コンテナ埠頭、大型兼業化石炭・原油・鉄
鉱石接岸荷役埠頭の建設を重点として、埠頭配置構造を調整する。新規建設、技
術改造、資源統合を通じて、沿海港湾の貨物構造を変化させて専業化・大型化・
集約化の輸送発展要求に対応させ、一部の老朽港湾地域の機能調整を推進する。
主要な海へ出る航路及び主要港湾出入港航路の通航条件を引き続き改善する。地
域的に重要な港湾を相応に発展させ、地方中小型港湾を適度に建設して、島との
間の交通条件を改善する。
1)上海国際水上輸送の中心であるコンテナ機軸港の洋山、外高橋港区、寧波港北
侖(穿山、大榭島)、舟山金塘港区、蘇州太倉港区の大型コンテナ埠頭の建設を
加速化させる。深圳塩田、大鏟湾港区、広州南沙港区等の華南コンテナ機軸港
湾の大型コンテナ埠頭の建設を加速化させる。大連大窑湾、天津北港池、青島
前湾港区等の環渤海地域大型コンテナ埠頭を重点的に建設する。沿海のその他
機軸港においては、新規建設及び能力拡大を通じてコンテナ中継能力を増大さ
せる。
2)大連、津冀沿海(天津)、青島の 25~30 万㌧級原油埠頭の建設を加速化させる。
国家石油戦略備蓄に合わせて、舟山冊子島の大型原油埠頭を建設し、寧波大榭
島大型原油埠頭を拡張建設する。南方地区の石油精製工場の需要に合わせて、
泉州、恵州、茂名、湛江等の港湾及び珠江口大型原油接岸荷役バースを建設す
る。
3)鉄鉱石輸送システムを整備し、大連、曹妃甸、青島、天津、日照、蘇州、舟山
等の港湾の 15~30 万㌧級鉄鉱石埠頭の建設を加速化させ、馬迹山鉱石埠頭に
第 2 期工事を建設して、湛江、防城大型鉄鉱石埠頭の建設・改造を行う。
(次頁に続く)
-117-
インフラ
基盤施設
建設及び
輸送装備
の発展の
重点
(続き)
4)石炭輸送システム建設を整備する。新規建設、拡張建設、改造を通じて、秦皇
島、天津、黄驊及び青島、日照、連雲港等の北方石炭荷卸港湾の荷揚能力を引
き続き拡大して、上海、嘉興(乍浦)、舟山及び広州等の石炭埠頭を建設するか
又は改造し、南方港湾の石炭荷役能力を拡大する。北の石炭を南に運ぶ能力の
拡大に関連する港湾建設問題の検討を開始する。
5)長江口大水深航路第 2 期工事の期日通り竣工を確保する事を基礎として、引き
続き第 3 期工事を実施する。珠江口大水深航路建設を加速化させ、広州港の出
海航路第 3 期工事、深圳港銅鼓航路工事を実施する。その他沿海主要機軸港湾
の大水深航路条件を改善する。
6)Ro/Ro 荷役輸送システムの建設を強化して、沿海の陸と島及び島と島の間のカ
ーフェリーシステムを発展させる。重量物 Ro/Ro 荷役埠頭と観光客輸送埠頭を
適度に発展させて、水上観光、娯楽を主要特長とした新型旅客輸送インフラ施
設を初歩的に確立する。
7)港湾の物流サービスの開発を奨励し、倉庫保管・物流企業の物流センターの建
設を誘致し、港湾の優位性を発揮させて、臨港工業を大きく発展させ、石油・
電子・自動車等の業界の港湾での生産基地建設を奨励して、積極的に港湾と産
業の結合を推進し、港湾を新産業及び物流園区とならしめて、港湾近代化の速
度を推進する。
②内陸河川航路と港湾
1)長江水系
ⅰ)長江幹線:下流では水利水流管理工事に合わせて、全面的に長江口大水深航
路の上流延伸発展動向に対応する。南京から瀏河口迄の区間及び安徽河区間
の河川整備工事を実施して、海洋船舶の河川水上輸送需要に対応する。中流
では引き続き中流域における主要航行障碍の整備事業に注力する。上流で
は、三峡ダムの貯水の 156m、175m の需要に対応した必要措置を講じて、
引き続き重慶から上流の航路の整備を実施する。南京から瀏河口迄のインテ
リジェント水上輸送モデル工事を実施する。
ⅱ)長江デルタ地域:三級航路基準に基づき高等級航路網を建設し、上海国際水
上輸送センターの主要コンテナ港区に通じる内陸河川コンテナ輸送航路の
建設に重点を置く。
ⅲ)主要支流:嘉陵江広元から下流の全河川堤防化工事を実施して、多種類の方
式による段階的開発目標を実現する。湘江衡陽から下流の航行と発電を結合
させて、段階的開発目標を完成させる。漢江の航行と発電を結合させて、段
階的開発建設工事を開始する。
2)珠江水系
ⅰ)珠江デルタ地域:海洋船舶航路、コンテナ輸送航路及び輸送船舶が頻繁に往
来する区間の航路建設工事を全面的に開始して、近代化、高等級幹線航路網
を構築する。
ⅱ)西江幹線:引き続き通航条件を改善して、能力拡張工事を実施する。
(次頁に続く)
-118-
インフラ
基盤施設
建設及び
輸送装備
の発展の
重点
(続き)
ⅲ)主要支流:右江航路と発電を結合させて、段階的開発建設工事を開始し、全
面的に紅水河航路復興工事を推進する。
③その他河流
水利整備工事に合わせて、淮河水系の主要河川航路の建設速度を加速化させ、
引き続き松花江の段階的開発建設工事を実施して、非水路ネットワーク地域の水
上輸送の発展を支援する。
④内陸河川港湾
コンテナ等の専業化バースの建設と港湾技術改造に重点を置いて、長江及び珠
江水系の主要港湾建設を強化する。石炭、鉱石、穀物等の輸送システムを建設・
改造・整備する。都市建設の有利な機会を利用して、内陸河川埠頭の機能転換と
技術改造を進展させる。辺境港湾埠頭施設の建設を支援する。
-119-
4-2 水運業発展の関連政策
1)管理体制
中国水運業の管理体制は国家交通部の統一的管理の下、各省・市・自治区交通庁及
び黒龍江、長江、珠江航務管理分局が水上輸送行政管理を実施している。中国水運業
管理体制図については以下の図 4-1 の通りである。
中華人民共和国交通部
①水運インフラ基盤施設建設、水路輸送の行政政策・規定規則及び技術基準の制定
②水路交通産業の公平競争秩序の維持
③水運インフラ基盤施設建設関連プロジェクトの管理
④水運施設の維持と管理
⑤水運規定費用検査徴収と国際国内水路輸送、港湾、船舶代理、外国船舶貨物荷役及びその他水運サービス業の管理
⑥国家水路重点物資輸送及び緊急輸送の組織実施
各省、市、自治区
交通庁
黑龍江航務
管理局
長江航務
管理局
珠江航務
管理局
地方水路輸送関連管
理業務を担当
黒龍江水系の水上輸
送の行政管理を実施
長江水系の水上輸送
の行政管理を実施
珠江水系の水上輸送
の行政管理を実施
航港管理局
航務管理局(処)
図 4-1 中国水運業管理体制図
2)市場参入認可政策
中国は水運業を展開する企業に対して許認可制度を実施しており、水運業を展開す
る企業は、実施する水運業展開計画に基づく営業範囲に対応した許可証書の申請が必
要である。その具体的内容については、表 4-3 の通りである。
-120-
経営範囲
管理部門
表 4-3 中国水上輸送企業許可制度の具体的内容について
国内水路輸送
国際船舶輸送
①各部門、各事業単位が水路運輸企業又 交通部。
は運輸船舶経営により沿海、内陸河川 交通部が国際船舶輸送業務申請審査認可時
省(自治区、直轄市、以下同)の間を跨 には、中国及び国際海上輸送業発展政策と
いで輸送する水路運輸企業の設立を申
国際海上輸送市場の競争状況を考慮する。
請する場合、交通部に認可申請する。
その中で長江、珠江、黒龍江水系幹線
運輸を経営する場合(国際旅客観光輸
送専門経営を除く)、交通部派遣駐在各
水系航務(運)管理局に認可申請する。
②各部門、各事業単位が水路運輸企業又
は運輸船舶経営により省内(市)間を輸
送する水路運輸企業の設立を申請する
場合、省交通庁(局)又はその授権した
水上輸送管理部門に認可申請する。地
(市)内運輸の場合、所在地の地(市)交通
局又はその授権した水上輸送管理部門
に認可申請する。
③個人(複数個人)船舶にて省を跨ぐ、省
内地(市) 間を輸送する水路運輸企業
の設立を申請する場合、所在地の省交
通庁(局) 又はその授権した水上輸送
管理部門に認可申請する。地(市)内運
輸の場合、地(市)交通局又はその授権
した水上輸送管理部門に認可申請す
る。
④「三資企業」が中国沿海、河川、湖沼、
その他通航水域内の旅客及び貨物の輸
送経営を申請する場合、交通部に認可
申請する。
許可証書
運輸許可証
国際船舶運輸経営許可証
法規根拠
『中華人民共和国水路運輸管理条例』
『水路運輸管理条例実施細則』
①営業範囲に相応する輸送船舶を保有し
ている事。
②比較的安定した旅客源及び貨物源があ
る事。
③旅客輸送を経営する場合、客船沿線の
停泊港(駅)名を確実にして、相応のサ
ービス施設を具備している事。
④経営管理組織機構及び責任者を配備し
ている事。
⑤輸送業務に対応する自社流動資金を保
有している事。
『中華人民共和国国際海運条例』
必須条件
-121-
①国際海上輸送業務経営に対応した船舶が
有り、その中に中国船籍が含まれている
事。
②経営に投入する船舶は国家が規定する海
上交通安全技術基準に符合している事。
③BL、切符又は複合一貫輸送 B/L がある
事。
④国務院交通主管部門が規定してい就業資
格を持つ高級業務管理人員が在籍してい
る事。
3)産業政策
中国水運業界の健全で秩序ある発展を促進する為に中国政府は一連の産業発展関
連政策を制定したが、この中の主要なものとしては、『2001~2010 年道路水路交通業
界政策及び産業発展序列目録』、『産業構造調整指導目録(2005 年版)』等があるが、こ
れらの他に中国政府は『外商投資産業指導目録(2004 年改定)』において、外資企業の
中国水運業への投資に対して特別の関連規定を設けている。以下これらの 3 つの主要
産業政策について紹介する。
①『2001~2010 年道路水路交通業界政策及び産業発展序列目録』
2001 年、交通部は『道路水路交通業界政策及び産業発展序列目録』を発表した。
当該行政施策及び産業発展序列目録は運輸の生産、基本建設、交通装備、技術進歩、
技術改造、運輸省エネ及び環境保護、交通情報化等の八大分野において、具体的に
奨励項目と制限項目とを明確にした。当該目録は中国政府交通主管部門が初めて全
面的勝系統的に発表した道路、水路交通行政政策である。その詳細内容は以下の表
4-4 の通りである。
表 4-4 『2001~2010 年道路水路交通業界政策及び産業発展序列目録』の主要内容
1.運輸生産
奨励
貨物
制限
1
海上国際コンテナライナー輸送
2
海上ばら積み貨物、原油、液化天然ガス(LNG)輸送
3
沿海コンテナ、石炭、鉄鉱石、原油・その製品、穀物等大量貨物輸送
4
沿海液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、化学品、液状ピッチ等の
専業化輸送
5
内陸積換バージ・推進船隊輸送、機動バージ・推進船船団輸送
6
河川・海上直接輸送、幹線支線直接輸送、内陸支線輸送
7
内陸河川国内取引コンテナ輸送
8
一貫輸送、複合一貫輸送及び近代的物流機能開拓
9
国防、洪水防止、危険回避、救済重点物資輸送
10 Ro/Ro 船輸送
1 隻船舶保有輸送主体の水運主要航路での旅客輸送従事を規制する
1
2
1 隻船舶保有輸送主体の水運主要航路での危険品輸送従事を禁止する
3
「三無」(無船名・船舶番号、無船舶証書、無船籍港)船舶の輸送従事を禁止
する
(次頁に続く)
-122-
2.基本建設
奨励
港湾
航路
制限
1
上海国際航運中心
2
コンテナ要衝港埠頭バース及びコンテナ中継センター、貨物仕分センター
3
沿海大水深原油、鉄鉱石、バルク穀物専用埠頭バース
4
沿海製品オイル、液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、化学品専用埠頭
バース
5
液状ピッチ専用埠頭バース
6
Ro/Ro 船荷役埠頭
7
内陸河川主要港湾ばら積み貨物専用埠頭バース、コンテナ多用途埠頭バース
8
企業専用埠頭バース
9
1,000 人以上の島の陸島交通埠頭
1
内陸河川幹線航路建設、直近では「両横一縦両網」の幹線航路及び西部地区の
長江から海に至る水運主要航路の建設に重点を置く
2
要衝港湾入出港大水深航路
3
河口大水深航路の整備
4
西部地区及び旧区、少数民族地区、辺境地区、貧困地区の航路建設
5
等級航路を妨害する水門・堤の撤去航路修復工事
6
水上輸送を主とする河流水路化工事
7
航路・発電結合要衝工事
8
国際河川、境界河川の航路建設
9
企業専用航路建設
1
直近では沿海の雑貨及び中小埠頭の建設を規制する
2
全体計画に入っていないインフラ基盤施設建設を禁止する
3
大水深海岸線を占有する中小バースの建設を禁止する
4
等級航路上に航行不能となる建築物(堤・水門等)を建設する事を禁止する
3.交通運輸関連設備
奨励
船舶
1
海上大型コンテナ船、大型原油船、大型鉄鉱石船、大型液化天然ガス(LNG)
船、液化石油ガス(LPG)船、化学品船、沿海相応船型船舶
2
Ro/Ro 船、旅客 Ro/Ro 船(客船/フェリー)、高速客船
3
内陸河川コンテナ船、Ro/Ro 船
4
内陸河川バージ推進輸送船隊
5
大トン数機動バージ及び機動バージ推進船群
6
河川海上直接輸送船舶
7
新型、省エネ、高効率、安全、環境保護型の輸送船舶
8
内陸河川標準化船型
9
工事船舶
(次頁に続く)
-123-
3.交通装備(続き)
奨励
港湾
設備
制限
1
大型コンテナ用ガントリークレーン
2
コンテナヤード用トランステナー
3
大型ばら積み貨物荷役船設備
4
港湾「三内」(船腹内、上屋内、コンテナ内)荷役設備
5
港湾自動化管理装備
1
直近では新増海上雑貨船舶を適度に規制する
2
直近では新増内陸河川常軌雑貨船、一般客船及び長江就航豪華客船を規制す
る
3
コンクリート船、エンジン付手漕ぎ船を規制する
1
要衝港湾及び水運主要航路建設重要技術
2
港湾埠頭改造及び水準向上技術
3
コンテナ埠頭知能情報システム技術
4
大量ばら積み貨物輸送組織管理技術
5
船舶輸送制御情報システム技術
6
港湾新型機械設計及び製造技術
7
港湾荷役機械稼動状況検査技術
8
港湾生産作業優位化・自動化制御技術
9
港湾管理情報技術
4.技術進歩
奨励
水路
10 近代物流技術
安全
環境
保護
11
河川堰化プラント技術
1
水運環境保護及び安全保障システム技術
2
港湾重大危険事故管理システム技術
3
水上船舶オイル漏れ監査及び応急清掃除去システム
4
代替エネルギー及び省エネ型輸送機器
1
沿海コンテナ主要要衝埠頭バース及び大型原油、鉄鉱石専用バースの能力拡
張改造
2
沿海ばら積み貨物雑貨バース専用化改造
3
内陸河川老朽埠頭バース専業化改造及び設備更新
4
都市港湾旧港湾地域機能調整及び移転
5
Ro/Ro 荷役埠頭の改造
1
内陸河川主要航路通航能力向上整備
2
適度の船舶高速化に対応した航路技術改造
5.技術改造
奨励
港湾
航路
(次頁に続く)
-124-
6.安全保障
奨励
安全
航行
支援
通信
制限
1
水上安全監督、救助センター基地及び付帯施設
2
グローバル海上危険遭遇・安全システム
3
船舶交通管理システム
4
救助船、巡視船、航路標識・航路観測船、海上探査救命ヘリコプター
1
レーダー通信標識、電子海図、グローバル位置認識システム
2
航路標識及び航行支援施設管理情報システム
3
視覚航路標識、無線電子航路標識
1
水上交通通信設備
1
無線電信位置認識システムを規制する
2
年度検査を受けていない車・船舶及び年度検査不合格の車・船舶の営業投入
を禁止する
7.輸送省エネと環境保護
奨励
制限
1
道路、水路インフラ基盤施設建設における生態環境の保護
2
省エネ及びクリーンエネルギーを使用する輸送装備
3
全国海上重点海区、海域、重点港湾船舶オイル漏れ、危険品応急反応システ
ムの構築
4
船舶廃棄物処理施設、港湾粉塵低減施設、有害気体汚染処理施設の構築と整
備
1
国家の関連公害防止基準に不合格である車輌、船舶による営業輸送は一切禁
止する
2
国家が淘汰を命じたエネルギーを使用する製品及び設備の使用を禁止する
1
道路、水路通信インフラ基盤施設の建設
2
交通情報資源開発及び享受享有技術
3
交通行政管理情報システム
4
道路管理情報システム
5
道路輸送管理情報システム
6
水路管理情報システム
7
水路輸送管理情報システム
8
水上安全監督情報システム
9
交通企業管理情報システム
8.交通情報化
奨励
10 旅客・貨物輸送情報システム
11
旅客乗船・下船情報システム
12 情報標準化システム
制限
1
情報システム低水準の重複建設
-125-
②『産業構造調整指導目録(2005 年版)』
2005 年 12 月 2 日、国務院は『「産業構造調整促進暫定規定」の公布に関する決定』
を発表し、国家発展・改革委員会は『産業構造調整指導目録(2005 年版)』を公布し
た。当該暫定規定では産業構造調整の枠組みとその方向が明確にされ、奨励、制限
及び淘汰の三分類の枠組み及び原則に基づき産業構造を調整する事を要求してい
る。奨励類、制限類、淘汰類に区分されず、国家関連法律、法規及び政策規定に基
づき判断されるものは、許可類に区分される。許可類は『産業構造調整指導目録』
には記載されていない。
『産業構造調整指導目録』は原則として中国国内の各種企業に適用される。当
該目録の中で水運分野に関連している領域は合計 14 項目あるが、全て奨励類プロ
ジェクトに区分される。具体的には以下の表 4-5 の通りである。
№
表 4-5 『産業構造調整指導目録』の中の水運業関連内容
奨励類プロジェクト
1
大水深バース(沿海万トン級、内陸河川 1,000 トン級)の建設
2
海に出る大水深航路及び内陸河川幹線航路の建設、航行建築物建設
3
大型港湾荷役自動化工事
4
海運電子データ交換システム開発
5
水上安全保障システム及び救助引き上げ装備建設と開発
6
内陸河川水上輸送及び船型標準化
7
港湾、大水深航路及び航行通信要衝建設に必要な特殊工事機械設備の設計製造
8
コンテナ複合一貫輸送及び水上コンテナ輸送
9
水上高速旅客輸送
10
原油、製品オイル、天然ガス船舶輸送
11
船舶オイル漏れ観測及び応急消滅除去システム建設開発
12
水上 Ro/Ro 荷役複合一貫輸送及び水路大量ばら積み貨物輸送
13
水運業界情報システム建設
14
国際郵便定期船輸送
規定に基づき、奨励類投資プロジェクトについては、総投資額内での自社用設
備の輸入において、財政部が公布した『国内投資プロジェクトの免税が適用され
ない輸入商品目録(2000 年改定版)』に記載されている商品を除き、関税及び輸入
増値税が免除される。
③『外商投資産業指導目録(2004 年改定)』
外資の中国における水運業投資については、『外商投資産業指導目録』の関連規
定が適用される。現行の『外商投資産業指導目録(2004 年改定)』における水運分野
に関わる内容は表 4-6 の通りである。
-126-
表 4-6 『外商投資産業指導目録』における水運業関連内容
区分
№
プロジェクト
1
2
フェリー施設の建設、経営(合作、合弁のみ可)
港湾公共用埠頭施設の建設、経営
3
定期、不定期国際海上輸送業務
4
国際コンテナ複合一貫輸送業務
5
石油専用埠頭の建設、経営
制限類する
外商投資産業プロジェクト
1
水上輸送企業
合弁、合作や出資比率に
対する規制
1
2
定期、不定期国際海上輸送業務:外資出資比率 49%以下
水上輸送企業:外資出資比率 49%以下
3
船舶代理企業:外資出資比率 49%以下
4
外国船舶貨運代理企業:合弁、合作のみ可
奨励する
外商投資産業プロジェクト
④ その他
現在ほとんどの水上輸送国は自国の水運業に対して政府補助や関連支援政策を
付与している。例えば、優遇借入、経営補助金、税制優遇等である。発展途上国で
は当該状況が更に顕著であるが、中国は水運業に対しては補助金政策を取っておら
ず、GATS(貿易サービス一般協定)の中では自国政府調達の政府貨物は優先的に考
慮するとあるが、中国にはこの規定すら無く、全ての商業貨物は市場自由競争に委
ねられて輸送されている。過去に行われていた貨物積載保留政策も 1998 年には正
式に撤廃された。
-127-
5.
中国大型輸送企業の発展状況とその最新動向
中国の主要水上輸送企業は、中国遠洋運輸集団(COSCO)、中国対外貿易運輸集団
(SINOTRANS)、中国海運集団、中国長江航運集団等の大型中央直属企業である。本章
ではこれらの企業の概況とその発展動向について紹介する。各社の発展計画については、
商業機密に関わる部分もあるので、完全な内容は入手不可能であり、各社の URL で発
表されている情報や各メディアの関連報道に基づき、今後の発展動向についてまとめた。
5-1 中国遠洋運輸集団(COSCO)
5-1-1 企業概況
沿革
表 5-1 中国遠洋運輸集団総公司の概況
①中国遠洋運輸集団総公司の前身は 1961 年 4 月に設立された中国遠洋運輸公司で
ある。
②設立当初はわずか 4 隻の船舶を保有するのみであり、2.26 万積載重量㌧の単一
型水上輸送企業であった。
③1993 年 2 月 16 日、中国遠洋運輸集団総公司の核心企業である中国遠洋運輸集団
が組織された。
営業範囲
主経営業務は水上輸送、物流である。
同時に船舶及び貨物代理、船舶工業、埠頭、貿易、金融、不動産及び IT 等の多く
の業界のサービスに従事している。
組織機構
①全世界に約 1,000 社のグループ事業単位があり、従業員数は 8 万人余り。
②アジア:中国を含め 46 社、欧州:18 社の持株支配会社又は子会社、米州:9 社
の地域性企業、アフリカ:5 社の地域性企業、オーストラリア:4 社の持株支配
会社や地域性企業。
発展現状
①600 隻余りの近代化商業船舶を保有し、4,000 万積載重量㌧強、年間貨物輸送量
は 3 億㌧以上である。2005 年の利益実績は 200 億元。
②「中遠集団」は水上輸送と物流を主業務とする多元化経営の多国籍企業集団であ
る。全世界のユーザーに水上輸送、物流等の優れたサービスを提供すると同時に
船舶代理、貨物代理、船舶工業、埠頭、貿易、金融、不動産、IT 等多くの業界
のサービスを提供する。
③中国本土では、広州、上海、天津、青島、大連、廈門、香港等の地に全額出資船
会社を設立してコンテナ、ばら積み、特殊輸送、オイルタンカー等の各種船型の
遠洋輸送船隊を経営管理している。
④海外では、日本、韓国、シンガポール、北米、欧州、オーストラリア、南アフリ
カ及び西アジアの八大地区を放射状の中心として、船舶航路で結び世界各主要地
域で多国籍経営ネットワークを普及構築している。その管理する船舶及びコンテ
ナは世界の 160 以上の国や地域の 1,300 以上の港湾を往来している。
出典:中遠集団の公開情報を基に作成
-128-
5-1-2 船隊状況
Containerisation International の発表データによれば、2006 年 6 月 1 日現在、「中
遠集団」のコンテナ船隊は中国国内では第 1 位にランクされ、世界では第 5 位である。
当該集団は同時に世界最大のばら積み貨物船隊を保有している。「中遠集団」のエネル
ギー資源輸送船隊の発展と「保有から管理への転換」戦略の実施により、2006 年 9 月の
「中遠集団」支配船隊は 680 隻以上、4,010 万積載重量トンに達した。うち、「中遠集団」
のコンテナ水上輸送業務は主として「中遠集装箱運輸有限公司」が経営し、ばら積み貨物
は主として「中遠散貨運輸有限公司」が経営し、「大連遠洋運輸有限公司」はエネルギー輸
送を担う主要企業である。当該集団船隊は主としてコンテナ船、乾ばら積み貨物船、オ
イルタンカー、雑貨貨物船、特殊船舶の五大分類の船舶を保有しており、2006 年 12
月現在の各種船舶の主要保有数量については、以下の表 5-2 の通りである。
表 5-2 中遠集団の船隊概況
船型
数量
(隻)
№
区分
1
コンテナ船
2
スーパーパナマックス型
28
187,929 TEU
パナマックス型
19
68,234 TEU
その他
91
115,310 TEU
16
2,646,893
66
4,643,944
134
5,644,189
8
12
2,112,538
820,434
バルチック型
6
241,815
液化ガス船
7
22,554
バルク化学品船
3
8,774
多用途船
60
1,145,716
雑貨船
34
468,544
化学品船
1
2,999
半潜水船
3
48,399
アスファルト用船
6
29,556
Ro/Ro 船
6
57,046
500
17,893,401 積載重量㌧+371,473 TEU
乾ばら積み ケープタウン型
貨物船
パナマックス型
バルチック型
3
4
5
オイルタン VLCC
カー
パナマックス型
雑貨船
特殊船舶
総積載重量㌧(又は TEU)
各種船舶合計
出典:中遠集団の公開情報を基に作成(2006 年 12 月時点のデータ)
-129-
5-1-3 発展計画と最新動向
中遠集団による公開情報をベースとして、中国国内の各メディアによる中遠集団発展
計画及び発展動向に関する最新報道を収集、まとめた。
1)発展計画
①中遠集団全体の発展戦略
水上輸送企業から近代的大型グローバル物流サービス企業へと転換する。
中遠集団の近代物流発展の基本的コンセプトは水上輸送能力を強化拡大して、豊
富なグローバル物流資源を充分に利用して、顧客満足度を中心に顧客に対するサー
ビスを輸送から倉庫保管、加工、配送に拡張して、更には製品の生産、流通、仕分、
消費のほとんどのサプライチェーンに加わる事であり、付加価値サービスを展開す
る事で、利益獲得力と市場競争力を高めて、中遠のグローバル輸送企業としての地
位を強固にして、中遠をグローバル物流経営企業に徐々に変えて行く事である。
②集団経営転換戦略
2001 年、中遠集団は、
『二つの転換戦略』を制定した。具体的には以下の通りで
ある。
ⅰ)過去、「中遠」は輸送企業として、貨物の船へ荷揚から港湾で荷卸迄のリスクの
みを負担していたが、現在ではドアからドア迄の全行程のリスクを負担する事
に転換すべきである。
ⅱ) 多くの国で事業展開する企業であっても多国籍企業ではなかったので、本当の
意味での多国籍企業に転換すべきである。
③船隊発展計画
「中遠集団」の船隊発展においては、「船舶保有から船舶管理へと転換する」を引き
続き実行する事を経営理念として、現時点での船隊発展計画は以下の通りである。
ⅰ)コンテナ船隊:重点的にスーパーパナマックス型及びパナマックス型のコンテ
ナ船を整備する。構造の優位化、船舶リース経営を加える事を基礎として適度
にその規模を拡大する。2007 年のコンテナ船船隊の規模は 45 万 TEU とし、
2010 年には 80 万 TEU に増やす。
ⅱ)ばら積み貨物船隊:「長期輸送請負契約向の専用船型船舶注文建造」の発展モデ
ルを推進する。現有船隊の構造調整を主として、リース船舶の比率を常に引き
上げる。
ⅲ)タンカー船隊:2010 年に 15 隻の VLCC を保有する。
-130-
ⅳ) その他:雑貨船やアスファルト用船の輸送能力増加及び半潜水船、自動車船、
木材船等の特殊船隊の発展業務を確実に素早く実施する。雑貨船隊の発展につ
いては、「特」の文字、即ち特殊専用貨物を中心に、工夫を凝らして調整して
発展させる。
「中遠集団」の計画以外に、内部の子会社も夫々自社の計画を制定している。例えば、
「中遠航運股份有限公司」の「十一五」期間の全体船隊発展計画は、「特殊雑貨船隊の構造
を調整して、持続的発展を維持する事、半潜水型重量物運搬船の船隊の規模を大きくし
て市場シェアを拡大する事、自動車専用船隊を適度に発展させて中国国内沿海自動車輸
送を開拓する事、その他特殊船隊を開拓する事」であるとしている。中でも、ケープ型
船隊は重点的に発展させる分野の一つとなっている。
2)最新動向
最新動向は以下の通り。
①2006 年 2 月初旬、「中遠集団」と「中国石油化工股份公司」は協議書を締結し、2006
年において、「中遠集団」は「中国石油化工股份公司」の為に 600 万トンの原油及び製
品オイルを輸送し、今後数年以内に当該輸送量を 3,000 万トン迄に引き上げると約
定した。
②2006 年 6 月 26 日、「中遠香港航運有限公司」と「南通中遠川崎」との間で 2+2 隻 30
万トン大型鉱石砂船(VLOC)の契約が締結され、「宝山鋼鉄」のオーストラリアから
の輸入鉄鉱石を専門に輸送する事が約定された。第 1 隻は 2008 年に就航予定。
③2006 年 6 月 26 日、「中遠集装箱運輸有限公司」及び「中国船舶工業集団公司」並びに
その傘下の「江南造船厰」は合同で 5,100TEU コンテナ船 8 隻の協議書を締結した。
この中の 2 隻は 2009 年 6 月 30 日迄に引き渡される。残りの 6 隻は各々2009 年
10 月 31 日、2010 年 2 月 28 日、2010 年 6 月 30 日迄に 2 隻づつ引き渡される。
④「中遠集団」の王富田副総裁は 2006 年 7 月、「国際海運(中国)年次総会 2006」のプレ
スプレビューにおいて、「中遠集団」は水上輸送業務を大幅に強化する事を目標に定
め、ばら積み貨物船、コンテナ船、超大型オイルタンカーの建造を多数発注する事
を準備中であると発表した。現在、「中遠集団」は日本等の造船所に 8 隻の大型コン
テナ船、4 隻の 30 万トン級ばら積み貨物船及び数隻の 30 万トン級の VLCC の建
造を発注している所である。うち、、コンテナ船は 8,500TEU コンテナ船 4 隻、
9,500TEU コンテナ船を 4 隻発注する計画であり、ばら積み貨物船は「宝山鋼鉄」
及び「鞍山鋼鉄」の特注仕様各 2 隻である。王富田副総裁は VLCC の建造発注計画
数量を発表せず、会社として VLCC 発展計画がある事を明確にしたが、その建造
は日本の造船所及び「中遠集団」傘下の「南通中遠川崎」に発注する予定であるとし
-131-
ている。
⑤2006 年 7 月、「中遠集団」は「中船集団」に 7.6 万トン級ばら積み貨物船 4 隻の建造
を発注した。
⑥2006 年 8 月 17 日、「中遠集団」は一汽、東風、長安、福田、哈飛、奇瑞、江淮、吉
利、長城、中興、江陵、宇通、金龍旅行、金龍聯合、重汽、中通、比亜迪等の 17
社の自動車メーカーと個別に 15 年間の戦略的合作協議書を締結して、「中遠集団」
は各自動車メーカーの全体的輸送需要に基づき、自動車専用船隊の発展を加速させ
るとした。
-132-
5-2 中国対外貿易運輸集団(SINOTRANS)
5-2-1 企業概況
沿革
表 5-3 中国対外貿易運輸集団総公司の概況
①1950 年、中国対外貿易運輸集団総公司設立。中国の対外貿易輸出入貨物輸
送の総代理。
②1973 年、日本の定期船運航企業との合作により、中国初のコンテナ輸送試
験運航航路を開設して、中国コンテナ輸送の先陣を切った。その後、長年の
発展を経て、海運航路、鉄道複合輸送サービスを打ち出して、欧州輸送航路
を開拓し、海外に現地法人を登記設立した。
③1980 年、日本の OCS との合作により中国に率先して航空速達配送業務を導
入した。同年、ハンガーコンテナを初めて試行して、荷主の個性化需要分野
を満足させる第一歩を踏み出した。
④1986 年、国際的にも著名である多国籍企業の DHL と合弁企業を設立し、中
国初の中外合弁航空速達配達企業となった。その後、UPS 等の国際的知名
度の高い速達配送企業と合弁会社を設立して、中国全国に国際空輸ネットワ
ークを普及させた。
営業範囲
主として海運、陸運、空輸による国際貨運代理、水路輸送(コンテナ定期船、
ばら積み貨物輸送を含む)、船舶経営及び管理、船舶リース、コンテナリース、
複合一貫輸送、航空貨物輸送、航空速達配送、陸路輸送、備蓄埠頭、総合物流
等の業務に従事。これら以外に輸出入貿易、対外役務輸出、不動産開発、金融
及び投資等の分野に関わる業務に従事するが、うち、、最も得意とするのは貨
運代理及び速達配送業務である。
組織機構
2005 年末現在、中国国内には全額出資子会社 40 社、持株支配会社 8 社があ
り、香港上場企業 1 社(中国外運股份有限公司)、国内 A 株上場企業 1 社(中外
運空運発展股份有限公司)があって、その国内経営実体は 1,000 社余りである。
海外に 8 つの代表処、16 の海外企業を設置しており、海外 400 社余りの輸送
企業と業務代理関係を締結しており、中国全国をカバーし、全世界に普及する
輸送サービスネットワークを構築している。
発展現状
①2005 年末時点における、従業員総数は 34,000 人、集団資産総額は 333 億元、
主営業業務収入は 426 億元である。
②遠洋船隊総輸送能力 840 万積載㌧余り、国際国内航路 54 路線、うち、国際
航路は 41 路線、香港航路 3 路線、台湾航路 2 路線、国内沿海・長江沿い航
路は 8 路線である。
③137 社の倉庫企業を保有し、敷地面積は 1,000 万㎡以上、倉庫保管総面積は
490 万㎡、倉庫建屋総面積は 300 万㎡であり、69 の保税・税関監督倉庫を
持ち、59 のコンテナヤードがあり、荷役設備は 1,200 台余り、鉄道専用線
は 77、総延長は 69km である。
④自営、共同経営埠頭は 20 ヶ所、56 バース、海岸河岸総延長は 3,797m であ
る。
出典:中国外運の公開情報を基に作成
-133-
5-2-2 船隊状況
「中国外運集団」には 7 社の国際船舶輸送企業があり、船舶合計保有数は 102 隻、183
万積載重量トンで、この内コンテナ船は 70 隻、ばら積み雑貨貨物船は 26 隻、多用途
船は 4 隻、LPG/LNG 船は 2 隻である。
「中国外運集団」と日本「商船三井」(MOL)との合弁企業である「海安油運」は早期から
「商船三井」より 26.1 万積載重量トン級のオイルタンカー1 隻を購入し、同時に「商船三
井」より 28.1 万積載重量トンスーパーオイルタンカー1 隻をリースした。これら 2 隻の
オイルタンカーは共にシングルハル構造であり、ペルシャ湾から中国に輸入される原油
を運んでいる。当該 2 隻を含めて、「中国外運集団」は中国国内にて共同経営及び自営方
式にて合計 4 隻のシングルハルスーパーオイルタンカーを管理している。
5-2-3
発展計画と最新動向
1)発展計画
「中国外運集団」が制定し実施している 21 世紀に向かっての企業発展戦略、即ち『中
国外運集団戦略発展要綱』に基づき、当該集団は伝統で期な外貿輸送企業から、多数
の物流主体で構成された、統一サービス基準フロー及び規範化された体系で運営され
る、国際的、総合的大型物流企業集団に転換する事を目標としている。
現在、「中国外運集団」は戦略的調整期間にある。2005 年 12 月、国家資産管理委員
会は、中国五砿集団の苗耕書(元)総裁を「中国外運集団」の董事長に任命し、招商局の
趙滬(元副)総裁を「中国外運集団」の総裁に任命した。業界内関係者の分析によれば、
「中国外運」の従来の重点的戦略は貨運代理と速達配送であったが、新しい指導者の任
命はその重点的戦略を海運に転換するという暗示であるかもしれないとしている。
「中国外運集団」は海運業務分野の投資を拡大する可能性があり、主として埠頭及び乾
ばら積み貨物(主にエネルギー性物資)輸送市場を攻める。苗耕書董事長は 1997 年~
2004 年は中国五砿集団の総裁であった。中国五砿集団が毎年輸送を必要とする石炭、
コークス炭、鉄鉱石、酸化マグネシウム等の資源性物資は 8,000 万トンに達する。報
道によれば、2006 年の苗耕書董事長のタスクは 2 年以内に企業発展戦略の主体、支
持体系及び発展戦略の管理フローを制定する事である。マッキンゼー社の「中国外運
集団」の為の戦略報告書はほぼ完成している。
また、注目すべきは、2005 年に「中国外運集団」のトップ層が中国国内 LNG 船輸
送市場業務の参入に興味があると発表した事であり、既に英国の資源探査輸送コンサ
ルティング会社を顧問に迎えて、どの様に戦略を策定すべきか詳細に検討していると
の事である。
2)最新動向
最新動向は以下の通り。
-134-
①2006 年 4 月 12 日、「中国外運集団」と「中海壳牌石油化工有限公司」とは『ポリアル
ケン(Polylefine)及びドラム缶入り液体製品物流サービス契約』を締結した。こ
れは「中海壳牌石油化工有限公司」が石化プラント工場操業開始後に締結した金額
が最大の稼動期間中の物流サービス契約であり、「中国外運集団」が契約した物流業
務が石化分野で重大な突破を切り開いた象徴でもある。契約に基づき、「中国外運
集団」は今後 5 年間、当該集団の配送ネットワークを通じて、「中海壳牌石油化工有
限公司」の為に輸送、倉庫保管、製品輸送状況管理等の物流サービスを提供し、毎
年 70 万トン余りのポリアルケン及びドラム缶入り液体製品を全国各地のユーザー
に配送する。
②2006 年 4 月末、「中国外運集団」が 2.3 億元を投資した天津コンテナヤードが正式
に稼動開始した。「中国外運股份有限公司」の張建衛総裁は、2006 年は 25 億元を投
資するが、その半分はヤード及び埠頭の建設や買収に使用すると発表した。
③2006 年 7 月 5 日、「中国外運集団」と日本「商船三井」(MOL)との合弁企業である「海
安油運」はダブルハル VLCC1 隻の建造を発注し、三井造船株式会社千葉造船所で
建造するが、2008 年 3 月か 5 月に竣工予定である。
-135-
5-3 中国海運(集団)総公司(China
Shipping)
5-3-1 企業概況
沿革
表 5-4 中国海運(集団)総公司の概況
1997 年 7 月 1 日に設立された。
営業範囲
主たる営業業務はコンテナ、石油輸送、貨物輸送、旅客輸送、特種輸送であ
る。関連業務では埠頭経営、総合物流、船舶代理、グローバル空輸、船舶修
理建造、船員管理、コンテナ製造、貿易手続、金融投資、情報技術等の産業
分野。
組織機構
①世界の 85 の国や地域において、北米、欧州、香港、東南アジア、韓国、西
アジアの 6 社の持株支配会社、日本には株式会社 1 社、オーストラリアに
は代理有限会社 1 社を設置している。海外では産業分野における 90 社余り
の企業、代理店、駐在員事務所を設置して、営業拠点は合計 300 ヶ所以上
である。
②中国海運(集団)公司が持株支配する中海集装箱運輸股份有限公司(略称:「中
海集運」)、中海発展股份有限公司(略称:「中海発展」)及び中海(海南)海盛船
務股份有限公司(略称「中海海盛」)は各々香港及び上海で上場している。う
ち、「中海発展」は集団内の最主要構成企業であり、「中海集団」のほとんど
のオイルタンカー及び乾ばら積み貨物船を管理している。
発展現状
①主営業業務船隊は各種船舶約 440 隻余りを保有し、約 1,500 万積載重量㌧
で、年間貨物輸送量は 2.7 億㌧以上である。260 社余りの海外企業、事務
所及び代理拠点を保有する。
②2005 年、「中海発展」の年間石油製品輸送取扱量(積替え量を含む。
)は 800.2
億㌧海里で、同期比では 51.0%の増、輸送収入実績 46.82 億元、同期比で
は 24.9%の増であった。
石炭輸送取扱量は 564 億㌧海里、
同期比では 20.4%
の増、輸送収入は 30.96 億元、同期比では 55.8%の増であった。その他輸
送取扱量は 228.2 億㌧海里、同期比では 15.8%の増、輸送収入は 9.23 億元、
同期比では 22.9%の増であった。
③「中海」集団傘下の「中海発展」は石油製品輸送及び石炭輸送市場ではかなり
高い市場シェアを占めている。
④「中国海運」は中央が直接指導し管理する国有基幹企業の一社であり、水上
輸送を主営業業務とする多国籍経営、業際、多地区を跨り、所有制を跨る
超大型総合企業集団である。
出典:中海海運の公開情報を基に作成
-136-
表 5-5 「中海発展」の主営業業務の構造
2005 年
2004 年
項目
2003 年
収入(万元)
比率(%)
収入(万元)
比率(%)
収入(万元)
比率(%)
309,557
468,194
35.6
53.8
198,737
374,857
30.6
57.8
128,020
331,215
24.7
64.0
92,294
10.6
75,102
11.6
58,428
11.3
870,045
100.0
648,696
100.0
517,663
100.0
石炭輸送
石油輸送
その他輸送
合計
注:「中海発展」の暦年度の公告のデータを整理した。
項目
表 5-6 2005 年における「中海発展」の石油製品輸送構造
輸送量
輸送売上高
輸送量
全体の比率
売上高
全体の比率
(億㌧海里)
(%)
(億元)
(%)
外貿石油輸送
国内取引石油輸送
604.70
194.80
75.63
24.37
25.15
21.59
53.80
46.20
内
訳
海洋リグ石油
108.00
13.51
10.58
22.64
輸入中継石油
43.60
5.45
6.93
14.83
国内製品オイル
43.20
5.41
4.08
8.73
799.50
100.00
46.74
100.00
合計
出典:「中海発展」の 2005 年度公告
外貿石油輸送
100%
国内取引石油輸送
国内取引石油輸
送, 24.30%
国内取引石油輸
送, 46.20%
外貿石油輸送,
75.63%
外貿石油輸送,
53.80%
80%
60%
40%
20%
0%
輸送中継量
輸送売上高
出典:表 5-6 のデータを基に作成
図 5-1 2005 年における「中海発展」の石油製品輸送構造
-137-
5-3-2 船隊状況
「中海集団」のコンテナ船は主として「中海集装箱運輸股份有限公司」に集中しており、
オイルタンカー及び乾ばら積み貨物船は主として「中海発展股份有限公司」にて集中管
理されている。これら以外にも「中海(海南)海盛船務股份有限公司」の船隊もかなりの輸
送能力がある。以下これら三社の船隊の具体的状況を紹介する。
①「中海集装箱運輸股份有限公司」の船隊概況
当該公司は 86 隻のコンテナ船を保有しており輸送能力は 293,320TEU である。具
体的には表 5-7 の通りである。
-138-
表 5-7 「中海集装箱運輸股份有限公司」のコンテナ船隊
個数(TEU)
船舶数(隻)
総個数(TEU)
個数級別
8,000TEU 以上
5,000~8,000TEU
3,000~5,000TEU
2,000~3,000TEU
1,000~2,000TEU
1,000TEU 以下
合計
9,600
2
19,200
8,468
5
42,340
5,754
2
11,508
5,688
4
22,752
5,668
8
45,344
5,551
2
11,102
5,447
1
5,447
5,117
2
10,234
4,253
1
4,253
4,250
1
4,250
4,051
4
16,204
4,050
8
32,400
2,681
1
2,681
2,672
5
13,360
2,466
3
7,398
2,452
3
7,356
2,159
2
4,318
1,799
1
1,799
1,677
2
3,354
1,434
4
5,736
1,270
2
2,540
1,020
2
2,040
1,004
1
1,004
1,002
11
11,022
996
1
996
740
1
740
614
2
1,228
582
2
1,164
522
1
522
514
2
1,028
86
293,320
比率(%)
20.98
36.27
19.47
11.97
9.37
1.94
100.00
出典:中海集装箱運輸股份有限公司の公表データ(2006 年 12 月時点)
-139-
②「中海発展股份有限公司」の船隊概況
2006 年 8 月時点での当該公司の船隊の保有輸送能力は 800 万積載重量トン余りで
ある。うち、オイルタンカーは 83 隻、総積載重量 380 万トンであり、ばら積み貨物・
雑貨・荷卸設備付貨物船は 140 隻余り、総積載重量 480 万トン余りである。
ただし、船舶年令データから計算すれば、船隊の中の 40 隻余りのばら積み船の平
均船舶年令は 27 年であり、9 隻のレギュラーオイルタンカーの平均船舶年令は 30 年
に達しており、当該部分の船舶輸送能力は約 100 万トン弱になり、4~5 年内には次々
に淘汰される。
この会社のオイルタンカー船隊の概況及び今後 3 年の新規増加オイルタンカー輸
送能力は以下の通りである。
船型
表 5-8 「中海発展股份有限公司」のオイルタンカー船隊概況
パナマ型
AFRAMAX 型
バルチック型
汎用型
VLCC
合計
3
16
6
24
34
83
総積載重量㌧
876,248
1,069,775
634,391
912,857
337,726
3,830,997
平均〃
292,083
66,861
105,732
38,036
9,933
46,157
数量(隻)
出典:中海発展股份有限公司油輪公司の公表データ(2006 年 12 月時点)
表 5-9 「中海発展股份有限公司」の
今後 3 年間の新規増加オイルタンカー輸送能力
年度
新規増加
輸送能力
2007 年
49.75 万㌧
引渡年月
4.2 万㌧級
製品オイル/原油タンカー
5.25 万㌧
原油タンカー
2007/06
1
2007/09
1
2007/10
1
2007/11
2008 年
9.45 万㌧
2009 年
127.6 万㌧
1
2007/12
1
2008/04
1
2008/12
1
2009/06
2009/08
1
1
2009/09
2009/11
29.8 万㌧
原油タンカー
1
1
2009/12
1
1
出典:「中海発展股份有限公司」の公告及び関連報道を基に作成
-140-
③「中海(海南)海盛船務股份有限公司」の船隊概況
当該公司の船隊の具体的状況は以下の表 5-9 の通りである。
表 5-10 「中海(海南)海盛船務股份有限公司」の船隊概況
船舶区分
船舶数(隻)
積載重量㌧
13
3
433,875
14,917
化学工業品専用船
6
33,065
オイルタンカー
1
67,730
23
549,587
ばら積み船
アスファルト専用船
合計
出典:「中海発展股份有限公司油輪公司」の公表データ(2006 年 12 月時点)
5-3-3 発展計画と最新動向
1)発展計画
「中海集団」の『十一五計画』(2006 年~2010 年)は既に 2006 年 2 月に制定されて
いるが、当該計画の正本を入手する事が出来なかった。よって、本調査過程において
当該集団の多くの関係者より聴取した情報に基づき、当該集団の『十一五』の主要内
容を以下の表 5-10 の通り纏めた。
全体計画
貨 乾ばら積み貨物
物
輸 輸送
送
発
展
計
画
表 5-11 「中海集団」の発展計画
①「沿海を掌握し、海洋を開拓する及び一業を主とし多元的発展」
戦略を堅持する。コンテナ船隊への継続投資を実施しながら、
ばら積み貨物及びオイルタンカー輸送を強化する。
②自動車専用船/化学品専用船及び LNG 船分野の輸送を開拓す
る。2010 年には 2005 年末の輸送規模の 80%増とする。
③同時に近代的物流を発展の重点及び柱産業として、水上輸送の
コアとして船舶代理、貨運代理、倉庫備蓄ヤード、コンテナシ
ャーシー、バージ、空輸、海上鉄道複合輸送等の業務を確立し
て物流業務を大きく発展させる。
①発電所用石炭をコアとした乾ばら積み貨物輸送を堅持して、石
炭輸送市場のシェアを積極的に強固・発展させて、沿海石炭輸
送船舶の購入設置を強化し、5 年後の市場シェアを現在の 37%
から 50.%に引き上げる。
②2010 年迄に 9.96 億米㌦を投資して 39 隻の石炭輸送に使用す
るばら積み船等を購入し、船隊の輸送能力を 220 万積載重量㌧
に拡大して、輸送能力を 17%引き上げる。
(次頁に続く)
-141-
貨 石油製品輸送
物
輸
送
発
展
計
画
「オイルタンカー船隊の中小型から大型化へ、石油輸送市場の沿
海から遠洋へ」の「二つの転換」を実現して、「大型化、規模化、専業
化」の要求に照らし、「建造、購入、リース、合作、買収」等の多種
類の効果的方法を通じて、世界級のオイルタンカー船隊建設推進速
度を強化して、2010 年迄には 10~12 隻の 30 万積載重量㌧オイル
タンカー(VLCC)の船隊規模を構築して、中国輸入原油市場の 15%
のシェアを獲得し、世界のオイルタンカーセンター上位 10 位にラ
ンクインする。
コンテナ輸送
コンテナ輸送能力は 2005 年初の 28 万 TEU より 2010 年には 65
万 TEU に拡大する。
続 LNG 輸送
き
①自前の船舶で「中石油」、「中石化」と合作し、独立して国内 LNG
輸送を展開して、「中遠集団」や「招商局」の合弁で設立された「中
国 LNG 運輸控股公司」には参加しない。
②2005 年 5 月、青島 LNG プロジェクトに参加する為、「中海 LNG
投資公司」を設立した。
埠頭建設プロジェクト
発展計画
①2004 年 12 月、「中海集団」の李克麟総裁の発表では、埠頭産業
を「中海集団」の新たな発展の重点プロジェクトとし、この為、
傘下の「中海碼頭発展有限公司」に再度 50 億元を投資を計画し
て、国内外の重要コンテナ埠頭プロジェクトの投資に使用し、
借入金等のルートで「中海碼頭発展有限公司」の資金調達を検討
した。
②業界内関係者の分析によれば、「中海集団」の船隊が徐々に拡大す
るに伴い、当該集団はその港湾の収益から資金を生み出して、
同時に船会社の発展に利用する事を希望している。
造船プロジェクト
発展計画
「中海集団」は船舶製造業の発展を計画している。2005 年 6 月の
報道によれば、「中海集団」は韓国の「三星重工」と中国で合弁による
造船所の設立を交渉中である。「中海集団」より提出された造船所の
設計能力は 500 万積載重量㌧であり、「三星重工」が造船所経営に
必要な技術を提供する。当該造船所は液化天然ガス(LNG)船を建造
する可能性がある。
2) 最新動向
最新動向は以下の通り。
①2006 年上半期、「中海発展股份有限公司」は総投資額 5.57 億米ドルで「大連船舶重工」
に対して 4 隻の 30 万トン級 VLCC を発注し、その引渡しは 2009 年 6 月から 12 月
とした。そして、「広州船舶国際」に対しては 4 隻の 4.2 万トン級原油/製品オイル兼
用船を発注し、2007 年と 2008 年に各 1 隻を引き渡す事とし、2009 年には 2 隻を
引き渡す事とした。
-142-
②2006 年 7 月 20 日、「中海発展股份有限公司」と「中国石化」は中国輸入原油長期輸送
契約を締結した。契約有効期間は 2006 年 7 月 1 日より 2016 年 6 月 30 日迄であり、
契約期間は 10 年間である。契約有効期間において、「中国石化」は「中海発展股份有
限公司」が保有する自社輸送能力に基づき輸入原油を提供し、その数量は 2006 年~
2007 年では 350~450 万トンとし、2010 年には 1,000~1,200 万トンに拡大する。
「中国石化」の輸入石油輸送量の増加と「中海発展股份有限公司」の輸送能力の発展が
共に許す状況において、「中海発展股份有限公司」が VLCC を 1 隻追加投入する毎に
「中国石化」は契約数量を 100~200 万トン追加する。これにより推算すれば、「中国
石化」との契約により「中海集団」は今後の新規増設 VLCC の 50%~100%の輸送能
力をカバーする事が出来る。尚、当該契約では有効期間内での市場輸送価格の変動
に基づく調整メカニズム規制をも取り入れている。
③2006 年 8 月、中国工商銀行及び招商銀行、農業銀行、深圳発展銀行により組織され
た銀行団は「中海集団」に融資を実行し、大連の新造船所で 4,250TEU のコンテナ船
の建造に充てた。融資金額は 14.8 億元である。
-143-
5-4 中国長江航運集団(China-CSC)
5-4-1 企業概況
沿革
表 5-12 中国長江航運集団の概況
①中国長江航運集団の前身は清朝末期の「官督商」が興した長江水上輸送企業に遡
る事が出来、既に 130 年余りの歴史がある。
②1950 年、長江区航運局が設立され、初めて「長航」と称された。1984 年、「長江
航運」は管理体制改革を実行し、交通部長江輪船総公司を設立して、1991 年に
社名を中国長江輪船総公司に変えた。1993 年 3 月、この会社を中核として中国
長江航運集団が設立され、1996 年中核企業の社名を中国長江航運(集団)総公司
に変更した。
営業範囲
主として水上輸送、船舶製造及び修理、物流及び関連付帯サービスを経営するが、
水上輸送がコア業務である。これら以外に不動産開発、自動車サービス、レスト
ラン飲食、対外経済技術合作及び輸出入貿易、コンピュータネットワーク開発等
の関連多元化業務を経営する。
組織機構
全額出資子会社 18 社、持株支配会社 1 社、海外子会社 1 社があり、長江沿岸の江
蘇省、安徽省、江西省、湖北省、湖南省、四川省、上海市、重慶市の 6 つの省、2
つの市及び深圳、珠海の 2 つの経済特区に分布しており、長江沿い、沿海の各大
型港湾及び米国、ドイツ、シンガポール等の国や香港地区に子会社、合弁会社、
海外駐在員事務所を設置している。
発展現状
①中国内陸河川最大の基幹水上輸送企業集団であり、国務院国有資産監督管理委
員会が管理する大型企業集団である。2005 年末時点での資産総額は 222 億元、
従業員数は約 6 万人である。
②2005 年の貨物取扱量は 1.2 億㌧であり、
貨物輸送中継積換え量は 126.2 億㌧/km
であって、主経営業務収入は 160.6 億元、利益総額は 2.76 億元である。
③主要業務は水上輸送であり、各種輸送用・補助用船舶 2,800 隻余りを保有・管
理し、貨物積載重量㌧は 520 万㌧余り、5,300TEU、保有フェリーには 4,000
車の駐車空間があり、主として石炭、鉱石、建材、非金属鉱石、鋼鉄等の乾ば
ら積み貨物、石油、コンテナ輸送を行い、液化天然ガス、Ro/Ro、ばら積みセ
メント及びアスファルト等の特殊輸送に携わっている。航路は長江幹線及び主
要支流を網羅し、沿海、近海、遠洋をカバーして、既に専用石油グローバル輸
送及び乾ばら積み貨物遠洋輸送航路を開通している。現在海上輸送中積換え量
が既に集団総量の 60%以上を占め、長江を基礎として、長江から海への直接輸
送、長江から海への複合輸送等を特色として、沿海、遠洋を結び、地区、国を
跨った外向型発展の局面を迎えている。
④「中国長航」の造船産業は 7 ヶ所の大型中型造船所があり、年間造船能力は約 50
万総合㌧であり、年間生産値は長江沿岸造船企業総生産値の 20%以上を占め、
5 万㌧級以下の各種船舶を建造する能力を持ち、主として欧米市場に輸出して
いる。
出典:中国長江航運集団の公表情報を基に作成
-144-
5-4-2 船隊状況
①オイルタンカー船隊概況
「中国長航」の石油輸送業務は主として「南京長江油運公司」が担当している。「南京
長江油運公司」は専門に石油及びその製品の輸送に従事しており、既に各種営業船舶
380 隻余りを保有し、約 200 万積載重量トンに達している。原油輸送は主として近海
及び遠洋原油輸送、国内沿海原油輸送、長江原油輸送等である。原油輸送の船舶は
283 隻あって、うち、オイルタンカーは 45 隻であるが、1,000 トン級から 300,000
トン級迄まちまちである。オイルタンカー船隊としては、主として、期間リースによ
る VLCC:1 隻、11 万トン級オイルタンカー:2 隻、7 万トン級オイルタンカー:3
隻、4.6 万トン級オイルタンカー:6 隻である。沿海輸送は 2~3 万トン級の大慶 419、
大計 436 系列オイルタンカーが主力船型であり、合計 19.45 万積載重量トンの輸送能
力規模を有し、沿海市場、海から長江に向かう輸送市場を含め約 3 分の 1 の輸送量を
担っている。
また、当該公司には大出力タグボート:42 隻、オイルバージ:196 隻がある。1.4
万トン及び 2 万トン級の新型曳航船隊が長年に渡り、長江沿いの各大型精錬工場に入
る原油を保証する唯一のルートである。
表 5-13:「中国長航」の主要オイルタンカー船隊
船舶区分
船舶数(隻)
積載重量㌧
VLCC
11 万㌧級
1
2
265,994
220,000
7 万㌧級
3
218,154
4.6 万㌧級
6
274,938
1~4 万㌧級
10
288,597
1 万㌧級以下
8
40,251
出典:南京長江油運公司の公表データを基に作成
②特種石油製品輸送船隊概況
「中国長航」の特種石油製品輸送は主として、長江、沿海及び国際化学工業製品、液
化ガス、アスファルト等の液体貨物輸送業務である。化学品、液化ガス、アスファル
ト輸送業務において、「中国長航」の船隊規模及びその市場シェアは中国国内同業界で
は首位に位置付けられている。
-145-
表 5-14 「中国長航」の特殊石油製品輸送船隊
船舶区分
船舶数(隻)
積載重量㌧(㌧級)
化学品専用船
液化ガス専用船
12
5
1,000~10,000
600~1,500
アスファルト船
11
1,000~4,000
出典:南京長江油運公司の公表データを基に作成
③コンテナ輸送船隊概況
「中国長航」のコンテナ輸送は主として、「上海長江輪船公司」、「重慶長江輪船公
司」、「珠海長航船務有限公司」が担当しているが、保有船舶数は 40 数隻であり、
年間コンテナ取扱個数は 15 万 TEU のコンテナ船隊である。
④乾ばら積み貨物船隊概況
「中国長航」の乾ばら積み貨物輸送業務は主として、「長航鳳凰股份有限公司」が
担当している。当該公司の保有する各種技術による運営船舶数は 1,550 隻余りで
あり、定額積載重量トンは 208.6 万トン、主機関最大出力は 30.5 万 kw であって、
船舶輸送能力は中国内陸河川水上輸送企業の中の首位に位置する。各種輸送路線
100 航路余りを保有して、遠洋から長江内陸河川の一程・二程・三程運輸を担い、
その業務範囲は国内長江沿岸、沿海の 50 余りの港湾から東南アジア、南アフリカ
の主要港湾に至り、顧客に海から河川に入る貨物、ドアからドアへの物流サービ
スを提供する事が出来る。
表 5-15 「長航鳳凰股份有限公司」の乾ばら積み貨物船隊
ばら積み貨物船
5 万㌧、2 万㌧、1 万㌧及び
沿海及び近海
1 万㌧以下
海上引き船
海上バージ
1,228kw
3,000 ㌧
河川から海への直接輸 ばら積み貨物船
送
5,000 ㌧
長江沿岸輸送
引き船
4,413kw、1,942kw、1,103kw、
883kw、596kw、397kw
バージ
1,800 ㌧ シ ン グ ル 連 結 甲 板 、
1,500 ㌧甲板、300 ㌧甲板、1,000
㌧貨物バージ、5,000 ㌧ダブル連
結甲板、同 3,000 ㌧、同 2,000
㌧、同 1,000 ㌧、1,000 ㌧シング
ル連結甲板
その他
長交、長電、長供等の 23 長江沿岸の 40 ヶ所の船舶基地
隻の機動補助船舶
出典:長航鳳凰情報ネット
-146-
5-4-3 発展計画と最新動向
1)発展計画
中国長江航運(集団)総公司の総経理によれば、「中国長江航運集団」は企業の内部外
部環境変化に基づき、特に国際水上輸送の発展動向に対応して、国家マクロ調整及び
三峡ダム竣工後の水上輸送市場の変化に応じて、初歩的に『十一五』(2006 年~2010
年)期間の発展戦略及び 2020 年の長期計画を制定し、これらに付帯した乾ばら積み貨
物輸送、オイル輸送、旅客観光等の産業発展サブ戦略を構築している。以下、「中国
長江航運集団」の幹部人員との各種情報交換によって得られた情報を基に、その発展
計画を以下の通りに纏める。
①「長江航運」としては全体的に「三つの転換」を実現する。第一として、内向型の長江
輸送企業から外向型の河川・海上輸送企業に転換する。第二に単一の水上輸送企業
から総合物流企業に転換する。第三に伝統的国有独資企業から所有権主体の多元化、
混合所有制の近代的企業に転換する。コア主経営業務の長期的目標は「世界の内陸
河川第一、河川・海上物流のトップ」とする。
②「長江航運」『十一五』(2006 年~2010 年)発展計画に 2 つのサブ目標を設定する。
ⅰ)急速発展目標を確実に実現する。即ち『十一五』期末営業収入、保有・管理資産
及び利益総額等の主要経済指標を『十五』(2000 年~2005 年)計画に比べて 50%
増とし、うち、
、「南京長江油運公司」の保有・管理総輸送能力を 500 万トン以上に
させる。
ⅱ)ホップステップジャンプ式発展目標を実現する。即ち『十一五』期末、集団主要
経済指標を『十五』(2000 年~2005 年)計画に比べて 2 倍を達成する。うち、
、集
団の原油輸送『十一五』期間(2006 年~2010 年)において 45~65 億元の投資を敬
悪し、収入は 40~50 億元、利益は約 3 億元を達成させる。
③今後の「長江航運」の水上輸送のコア業務を原油輸送及び乾ばら積み貨物輸送とし、
河川・海上複合輸送及び河川・海上直接輸送をコア事業として、「河川・海上直接
輸送の優位性、輸送能力規模の優位性、コスト管理の優位性、営業ネットワーク
の優位性、科学技術研究の優位性、安全品質の優位性」等の分野でコアの競争力の
向上を育成する。更に具体的には以下の通りである。
ⅰ)ばら積み貨物輸送:「長江に立脚して沿海に発展し、遠洋を目指す」を戦略として
位置付ける。三程運輸を強固にしてその規模を保持する。二程運輸を発展させて
特色を堅持する(河川・海上直接輸送)。一程運輸を満足に行い、サービスを延伸す
る。全行程を一貫して繋げて、物流を発展させる。
ⅱ)原油輸送:近海、遠洋輸入原油、国内海洋石油、外貿クリーンオイル及び化学工
-147-
業品、アスファルト、液化ガス等の特殊輸送に重点を置いて、長江原油輸送は徐々
に取り止める。
2) 最新動向
最新動向は以下の通り。
①2005 年初、「長江航運」は乾ばら積み貨物の遠洋輸送分野への進出を開始し、20 万
トンの「パナマ型」輸送船隊を確立して、インド、南アフリカ、オーストラリア等の
一程運輸鉄鉱石輸送市場のシェアを奪取して、全行程物流化輸送を実現した。
②2006 年 6 月 7 日、「長江航運」は招商銀行と総額 37 億間の銀行与信合作契約を締結
し、与信限度額を利用して「長江航運」の『十一五』期間(2006 年~2010 年)の乾ば
ら積み貨物輸送、原油輸送、船舶工業、貿易及びその他関連産業の発展を実現する
とした。
③2006 年 6 月 15 日、「長江航運」傘下の「南京長江油運公司」と中国銀行江蘇省分行は
契約を締結して、銀行は今後 5 年間において「南京長江油運公司」及びその傘下の子
会社n総額 40 億元の新規増額有し及び与信枠を与え、3 つの主力原油輸送船隊の
発展を支援し、これらにはクリーンオイルタンカー船隊、遠洋輸入原油船隊、特殊
輸送船隊が含まれるとした。これらの 3 つの主力船隊のほとんどが 2009 年末迄に
は営業輸送を開始する。2006 年 9 月時点において、「南京長江油運公司」が営業輸
送を開始し建造契約を締結した VLCC 超大型オイルタンカーは既に 10 隻(新規建
造発注分の 8 隻は「中船集団」及び「中船重工」が建造する)に達し、MR 型オイルタ
ンカーは 38 隻に達している。
④2006 年 7 月 25 日、「長江航運」と「中石化集団」は正式に輸入原油長期輸送契約を締
結し、「中国の石油は中国が運ぶ」の進捗は更に一歩前進した。
⑤2006 年 8 月 18 日、「南京長江油運公司」と同じく「長江航運」傘下の「金陵船厰」は 6
隻の MR 型オイルタンカー建造契約を締結し、ここに至って、「南京長江油運公司」
が「金陵船厰」に建造を発注した MR 型オイルタンカーは合計で 10 隻となった。
2006 年 9 月 10 日、「金陵船厰」が建造した第 1 隻目の 4.6 万トン MR オイルタン
カー:長航勇士号は順調に進水式を迎えた。
⑥2006 年 8 月、「南京長江油運公司」の超大型オイルタンカーFRONT
SA-BANG が
初めてシェル(BP)の 26.1 万トンの原油を中東からシンガポールに輸送した。これ
は「南京長江油運公司」の超大型オイルタンカーが国際オイルメジャー市場に正式
に進出した事の象徴である。
⑦2006 年 9 月 6 日、「南京長江油運公司」と「渤海船厰」は MR 型オイルタンカー4 隻
の建造契約を締結した。
-148-
6.
調査結果のまとめ
6-1 中国四大資源国際貿易の海運概況
石炭、原油、鉄鉱石は中国水上輸送量最大の貨物種類である。うち、原油及び鉄鉱石
の国際貿易は輸入が主である。石炭は輸出が主であったが、近年来、石炭の国際貿易で
は輸入量が常に増加し、輸出量は年々減少傾向にある。全体的に見れば、国際貿易取引
において中国の輸入鉄鉱石の 98%、輸入原油の 90%以上、輸出入石炭の約 90%が海上
輸送に依存している。
これらの三品目のばら積み海上輸送市場は巨大であり、近年来、その拡大速度は迅速
化している。
液化天然ガス(LNG)の輸入は中国では開始されたばかりであるが、現在中国が計画中
の LNG 輸入受入センタープロジェクトは 18 件あり、不完全統計データによれば、こ
れらの計画中の受入センターの第 1 期工事だけでもその輸入能力は 4,500 万トン以上と
なる。専門家の予測によれば、2020 年における中国の海運による輸入 LNG は約 6,000
万トンに達し、輸入 LNG の輸送市場は充分に魅力に満ちている。
表 6-1 中国の原油、鉄鉱石、石炭の国際貿易概況
原油輸入
鉄鉱石輸入
石炭輸入
石炭輸出
輸入量
年成長
輸入量
年成長 輸入量 年成長 輸出量 年成長
(万㌧)
率(%)
(万㌧)
率(%)
(万㌧)
率(%)
(万㌧)
率(%)
年度
1995 年
1,709.0
1996 年
2,262.0
32.4
4,387.0
6.6
321.7
1997 年
3,547.0
5,511.0
1998 年
2,732.0
56.8
△23.0
5,177.0
25.6
△6.1
1999 年
3,661.4
34.0
5,527.0
2000 年
7,013.4
2001 年
6,025.5
91.5
△14.1
2002 年
6,940.8
15.2
2003 年
4,115.0
163.5
2,861.7
3,648.4
201.0
96.8
△37.5
3,073.0
27.5
△15.8
158.6
△21.1
3,229.7
5.1
6.8
167.3
5.5
3,743.9
15.9
6,997.0
26.6
217.9
30.2
5,506.5
47.1
9,239.0
32.0
266.0
22.1
9,012.9
11,149.0
20.7
1,125.7
8,389.6
9,112.6
31.3 14,819.0
32.9
1,109.8
323.2
△1.4
63.7
△6.9
2004 年
12,281.5
34.8 20,808.0
40.4
1,861.4
67.7
8,666.4
12.1
△7.8
2005 年
12,708.2
3.5 27,524.0
32.3
2,617.1
40.6
7,172.4
△17.2
9,402.9
注:原油、鉄鉱石の外貿取扱は輸入が主であり、石炭の外貿取引は輸出が主である。た
だし、近年来、石炭輸入が急速に増えているので、上表では石炭輸出量のデータを
併記した。
-149-
石炭輸出
石炭輸入
原油輸入
鉄鉱石輸入
10,000.00
30,000.00
9,000.00
25,000.00
8,000.00
7,000.00
20,000.00
6,000.00
5,000.00
15,000.00
4,000.00
10,000.00
3,000.00
2,000.00
5,000.00
1,000.00
0.00
0.00
1995年1996年1997年1998年1999年2000年2001年2002年2003年2004年2005年
(単位:万トン)
注:原油、鉄鉱石の外貿取扱は輸入が主であり、石炭の外貿取引は輸出が主である。た
だし、近年来、石炭輸入が急速に増えているので、上表では石炭輸出量のデータを
併記した。
図 6-1 中国の原油、鉄鉱石、石炭の国際貿易概況
6-2 中国国際水上輸送船隊の状況
2005 年末現在、中国にて国際海上輸送サービスに従事している船会社は 268 社あり、
定期船航路の船会社は 176 社ある。近年来、中国国際海運船隊の構造は常に改善され、
その実力は常に増強されているが、総輸送能力は 10 万積載重量トンを超えるのは十数
社しか存在せず、中国のエネルギーや乾ばら積み貨物等の輸送需要を完全に満足させる
には程遠い。総積載重量トンが 10 万トンを超える中国の主要水上輸送企業の概況につ
いては、表 6-2 の通りである。
-150-
3
表 6-2 中国主要水上輸送企業国際水上輸送船隊の状況
総輸送能力
自社輸送能力
会社名
積載重量㌧
積載重量㌧
隻
隻
(万㌧)
(万㌧)
3,311.0
542
391
1,915.0
中国遠洋運輸(集団)総公司
(100%) (100%) (72%)
(58%)
258
1,125.3
216
916.6
中国海運(集団)総公司
(100%) (100%) (84%)
(81%)
81
902.2
40
511.2
河北遠洋運輸股份有限公司
(100%) (100%) (49%)
(57%)
4
中国対外貿易運輸(集団)総公司
5
中国長江航運(集団)総公司
6
浙江遠洋運輸有限公司
7
福建冠海海運有限公司
8
新海豊集装箱運輸有限公司
9
江蘇遠洋運輸有限公司
№
1
2
10 山東煙台国際海運公司
11
福建省輪船総公司
12 寧波海運(集団)総公司
13 広東海運股份有限公司
合計
150
(100%)
46
(100%)
17
(100%)
9
(100%)
34
(100%)
16
(100%)
457.5
(100%)
132.6
(100%)
110.2
(100%)
47.9
(100%)
37.5
(100%)
35.0
(100%)
55
(37%)
45
(98%)
17
(100%)
9
(100%)
15
(44%)
16
(100%)
221.1
(48%)
104.0
(78%)
110.2
(100%)
47.9
(100%)
12.2
(33%)
35.0
(100%)
31
(100%)
24
(100%)
6
(100%)
2
(100%)
1,216
(100%)
29.0
(100%)
27.4
(100%)
16.0
(100%)
13.6
(100%)
6,245.2
(100%)
11
(35%)
24
(100%)
5
(83%)
2
(100%)
846
(70%)
7.9
(27%)
27.4
(100%)
15.2
(95%)
13.6
(100%)
3,937.3
(63%)
賃貸輸送能力
積載重量㌧
隻
(万㌧)
151
(28%)
42
(16%)
41
(51%)
95
1,396.0
(42%)
208.7
(19%)
391.0
(43%)
(63%)
1
(2%)
236.4
(52%)
28.6
(22%)
-
-
-
-
19
(56%)
25.3
(67%)
-
-
20
(65%)
21.1
(73%)
-
-
1
(17%)
0.9
(5%)
-
-
370
(30%)
2,308.0
(37%)
出典:2005 年中国水上輸送発展報告(交通部)
-151-
添付資料 1:
関連産業の発展―船舶産業
「十五」期間(2001 年~2005 年)において、中国船舶産業の発展は迅速であったが、本
調査報告書では、建造量、輸出、生産値と利益、事業運営における主要な特徴等の面か
ら、中国船舶産業の現状について説明する。
1)建造量
1995 年、中国の造船建造量は初めてドイツを抜き、世界市場シェアの 5%を占め、
韓国、日本に次ぐ世界で第 3 位の造船大国となった。「十五」期間(2001 年~2005 年)
において、中国船舶産業は急速発展し、造船建造量の年平均成長率は 28%に達し、
特に 2003 年以降の 3 年間では、造船建造量の年平均成長率は 45%に達した。2006
年上半期、中国船舶産業は引き続き急速に発展している。2006 年 1 月~6 月の中国
全国新規受注造船量は 1,608 万積載重量トン、同期比では 113%の増であり、手持ち
の造船生産受注残量は 5,092 万積載重量トン、同期比では 43%の増である。造船竣
工量は 528 万積載重量トン、同期比では 15%の減であった。中国及び英国クラーク
ソン研究会社の世界造船総量に関する統計データによれば、中国の造船竣工量の世界
市場シェアは 15.3%であり、新規受注造船量は同 27.1%、手持ちの造船生産受注残
量は同 20.3%である。手持ちの造船生産受注残量から見れば、「大連船舶重工集団有
限公司」及び「上海外高橋造船有限公司」は、各々世界の造船企業の中で第 5 位及び第
10 位に位置している。積載重量トンから見れば、2005 年の中国の新規受注造船建造
量は初めて日本を抜いて世界で第 2 位となった。
表 1-11 2001 年~2005 年の中国船舶産業の主要生産指標
(単位:万積載重量トン、%)
項目
造船竣工量
新規造船受注量
年度
手持ち造船受注残
量
数量
成長率
数量
成長率
数量
成長率
2001 年
390
―
585
―
1,250
―
2002 年
417
7
656
12
1,314
5
2003 年
605
45
1,850
2,659
102
2004 年
855
41
1,579
182
△15
3,359
26
2005 年
1,212
42
△15
1,699
8
3,963
18
1,608
113
5,092
43
2006 年 1 月~6 月
528
出典:中国船舶工業行業協会発表資料
-153-
中国
日本
韓国
40
38
40
36
35
33
35
30
23
25
20
22
18
17
15
10
5
0
造船竣工量
新規造船受注量
手持ち造船受注残量
(単位:%)
出典:中国船舶工業行業協会発表資料
図 1-15 2005 年における中国、日本、韓国の造船三大指標の世界市場シェア
2)輸出
2006 年 1 月~6 月において、中国の一定規模以上の船舶工業企業の輸出取引高実
績(即ち、実際の輸出貨物引渡金額)は 347 億元であり、同期比では 63%の増である。
輸出船舶竣工量は 430 万積載重量トンであり、同期比では 14%であって、造船竣工
総量の 81%を占めている。税関統計データによれば、船舶製品(浮動構造体を含む)
の輸出額は 34 億米ドルであり、同期比では 70%の増である。船舶製品は 111 の国及
び地域に輸出され、その輸出額が 1,000 万米ドル以上の国及び地域は 26 に上る。
2005 年、シンガポール、ドイツ、香港が中国船舶輸出先国上位 3 位であり、そ
の輸出総額に占める比率は、シンガポール:12.9%、ドイツ:12.8%、香港:11.7%
である。
表 1-12:2002 年~2005 年の中国船舶輸出データ
項目
年度
2002 年
輸出積載重量㌧
数量
成長率
(万積載重量㌧)
(%)
―
332
輸出取引高
金額 成長率
(億元)
(%)
―
227
輸出額
金額
成長率
(億米㌦)
(%)
△3
19
2003 年
413
24
259
14
30
62
2004 年
561
36
332
28
32
5
2005 年
752
34
478
44
47
47
2006 年 1 月~6 月
430
14
347
63
34
70
出典:中国船舶工業行業協会発表資料
-154-
3)生産値と利益
2005 年、中国全国における一定規模以上の船舶工業企業(国有企業及び年間売上高
500 万元以上の非国有企業)全 806 社の工業総生産値実績は、初めて 1,000 億元の大
台を突破して、1,256 億元に達し、同期比では 38%の増であった。工業増加値実績は
272 億元で、同期比では 37%の増である。中国全国における一定規模以上の船舶工
業企業の売上高実績は 1,198 億元であり、同期比では 42%の増で、利益総額実績は
47.5 億元であって、同期比では 24.8 億元の増加である。業界区分から見れば、船舶
製造企業の工業総生産値実績は 889 億元で、同期比では 38%の増である。船舶付帯
設備製造企業の工業総生産値実績は 191 億元で、同期比では 43%の増である。船舶
修理及び船舶解体企業の工業総生産値実績は 171 億元で、同期比では 34%である。
船舶工業製品売上高及び利益総額は共に大幅な成長を実現し、経済収益総合指数
は 122 ポイントに達し、同期比では 21 ポイントの増であり、中国全国工業経済収
益総合指数との格差は前年度の 64 ポイントから 52 ポイント迄縮められた。
船舶製造業、船舶付帯設備製造業、船舶修理・船舶解体業の各々の経済収益総合
指数は順に 125 ポイント、124 ポイント、140 ポイントであり、その同期比成長率
は順に 25%、18%、8%である。船舶製造業の進歩拡大が最も顕著であり、総合指
数では初めて船舶付帯設備製造業を超え、その全従業員労働生産率は 105,839 元/
人・年であり、船舶付帯設備製造業の 1.6 倍、船舶修理・船舶解体業の 1.7 倍とな
ったのである。
表 1-13 中国造船業の生産値と利益
(単位:億元)
総生産値
項目
利益
船舶修
理・解体 合計
業
105
5
船舶
製造業
船舶付帯
設備製造業
―
―
船舶修
理・解体
業
―
10
―
―
―
149
19
5
5
8
171
―
48
―
23
―
9
―
14
―
合計
船舶
製造業
船舶付帯
設備製造業
2002 年
530
367
59
2003 年
687
461
102
124
2004 年
903
612
131
2005 年
1,256
889
―
191
―
年度
2006 年 1 月~6 月
775
出典:中国船舶工業統計年鑑、中国船舶工業行業協会発表資料
注:統計の発表時期の違いにより、数字が異なる場合もある。
-155-
船舶修理・船舶
解体業, 13.7%
船舶付帯設備製
造業, 15.3%
船舶製造業,
71.1%
出典:中国船舶工業行業協会発表資料
注:統計の発表時期の違いにより、数字が異なる場合もある。
図 1-16 2005 年の中国船舶工業総生産値の構成
4)経済運営における主要な特徴
①産業構造
中国造船業界を大別すれば、「中国船舶工業集団公司」及び「中国船舶重工集団公
司」の二社の中央造船企業と、その他の造船企業、「地方造船」とに分けられる。「地
方造船」の範囲は十分に広範であって、主としてⅰ)「中遠集団」、「中海集団」、「長
航集団」等の中央企業傘下の造船工場及び船舶用設備製造企業、ⅱ)関連省・市が管
理する造船工場及び船舶用設備製造企業、ⅲ)中外合弁・合作又は外商独資の造船
工場及び船舶用設備製造企業、ⅳ)集団及び民営の造船工場及び船舶用設備製造企
業等である。
二大中央造船企業集団は中国造船業の最大勢力である。政府発表の統計データに
よれば、2005 年の当該二大集団の造船竣工量、新規造船受注量、手持ち造船受注
残量の全国総量に占める比率は順に、66%、71%、68%である。しかしながら、
業界内関係者によれは、政府発表統計データは、「地方造船」や民営造船の能力を低
く見積もっている。その原因は、ⅰ)政府発表統計データには一定規模以下の造船
工場は含まれていないが、ここ数年の一定規模以下の民営造船企業の発展は急速で
ある事、ⅱ)数の非常に多い漁船、形式が多様である観光遊覧船は中国造船総量の
統計データ範囲内に含まれていない事、である。
ここ数年、中国造船業界における産業集積度はある程度高まった。造船竣工量で
計算すれば、中国国内の上位 5 位の造船企業の産業集積度は 2000 年の 30%から
2004 年には 52%に向上したが、その後 2005 年には 58%迄到達した。うち、、「大
連船舶重工集団有限公司」、「上海外高橋船舶有限公司」の造船竣工量は共に 200 万
-156-
積載重量トンを突破して、前者は 232.8 万積載重量トン、後者は 217.0 万積載重量
トンを達成して、全国総量の各々前者は 19.2%、後者は 17.9%を占めている。
2
表 1-14 2005 年における中国造船企業造船竣工量ベスト 10
造船竣工量
全国造船竣工総量に
企業名
(万積載重量㌧)
占める比率(%)
大連船舶重工集団有限公司
232.8
19.2
上海外高橋造船有限公司
217.0
17.9
3
滬東中華造船(集団)有限公司
117.0
9.7
4
江蘇新世紀造船股份有限公司
76.0
6.3
5
江南造船(集団)有限責任公司
59.4
4.9
6
渤海船舶重工有限責任公司
46.7
3.9
7
南通中遠川崎船舶工程有限公司
41.8
3.4
8
広州広船国際股份有限公司
40.1
3.3
9
上船澄西船舶有限公司
39.3
3.2
25.1
2.1
895.2
73.9
№
1
10 中国長江航運集団総公司金陵船厰
合計
出典:中国船舶工業業界協会発表資料
②技術の進歩
「十五」期間(2001 年~2005 年)において、中国船舶工業の技術分野での達成され
た成果は主として以下の通りである。
ⅰ)オイルタンカー、ばら積み貨物及びコンテナ船の三大主流船型分野において、中国
は既に自主ブランドを確立している。17.5 万トンの「ケープタウン」型ばら積み貨物
を開発して、その国際市場でのシェアは 40%を超えている。超大型オイルタンカ
ー(VLCC)の設計建造重要技術のブレイクスルーを果たし、累計で 27 隻の造船受注
を獲得した。大型コンテナ船の重要設計技術を掌握して、8,530 コンテナ積載の大
型コンテナ船の自主設計建造を実現し、10,000 コンテナ級積載能力を持つコンテ
ナ船市場へも参入への準備を行った。
ⅱ)ハイテク新技術船舶のブレイクスルーを果たした。LNG 船建造プロセスの困難な
問題を克服解決して、既に 5 隻の 14.7 万 m3 の LNG 船の建造契約を受託して第一
隻目の船は 2007 年末に引き渡される。また、海洋エンジニアリング装備の設計建
造面でもブレイクスルーを果たし、400 フィード水深自動昇降式オイルリグプラッ
トフォームでは同類製品の国際的先進水準を達成した。超大型フロート式生産オイ
ル貯蔵装置(FPSO)の全体的配置、水動力性能、係留システム等の重要技術を基本
的に掌握して、
米国 Conoc Phillips 社の 30 万トン FPSO プロジェクトを受注した。
-157-
ⅲ)重点船舶用設備の国産化の空白が解消された。具体的には直径口径 800mm、
900mm 等の大出力低速ディーゼルエンジン装置生産製造過程における技術問題を
解決し、7S80MC 及び 7K90MC を研究製作し、VLCC の国産化設備装船率を 2003
年の 5%未満から 2005 年には 29%に引き上げた。大型船舶用クランクシャフト生
産の粗加工軸材からシリンダー、精細加工迄の全工程プロセス技術を掌握して、長
年に渡り中国船舶産業発展のボトルネックとなっていた問題を解決した。
先進的建造技術が生産効率向上を促進した。近代的造船モデルの応用研究を通じて
重要建造技術を掌握、情報化応用水準も向上した。基幹造船工場は基本的にロット
生産受注を実現し、専業化及び造船スケールメリットを享受して、主要船型の進水
時の完成度及び艤装工期を日韓の先進的水準に近付けた。2005 年は 80%以上の船
舶で納期前引渡しの実現し、船舶製造企業全従業員労働生産率を 10 万元/人・年に
到達させ、2000 年比では、ほぼ 2 倍に引き上げた。
5)船舶産業に存在する主要問題
①人民元高の船舶産業に与える影響は大きい
ここ数年の人民元高が造船業界に及ぼす影響はかなり大きい。船舶製品は生産周
期が長く、米ドル建を主とする長期的契約であり、分割延払い決済方式等の特徴が
あり、しかも外貨管理制度等の面の規制をも受けるので、船舶産業は為替交換レー
トの変動に対して非常に敏感であり、その受ける影響はその他の産業よりも更に厳
しく、直接売上高や利益総額の減少を引き起こす。
②企業規模は依然として小さく、規模化経済が確立出来ない
2003 年における中国の造船工場各社の平均建造量は 1 万トン未満であり、韓国
の造船工場の平均規模のわずか 20 分の 1 に過ぎない。2004 年に至り、浙江省には
凡そ 500 社余りの造船企業が存在するが、うち、一定規模以上の造船企業はわずか
76 社余りである。2005 年末では、中国全国には合計約 3,050 社の造船工場が存在
するが、うち、一定規模以上の造船企業の数は約 800 社であり、造船竣工量は 1,212
万トン、平均造船竣工量もわずか 1.5 万トンである。
③経済運営品質は向上が待たれる
関連資料によれば、2003 年の年間一人当たりの平均造船トン数、年間一人当た
りの平均生産値及び生産効率の 3 つの指標において、中国の造船工場は海外の先進
造船工場に比べて 5~7 倍の格差が存在する。予測によれば、日本の生産効率を 1
とした場合、韓国は 3 分の 2 であり、中国はわずか 7 分の 1 から 5 分の 1 である。
中国の一隻当たりの建造工数、1 ドック当たりの年間船舶建造数、造船労働生産率
を日本の場合と比べて場合、建造工数では 5 倍、建造数では 20%、労働生産率で
-158-
は 10%とその格差は非常に大きい。同時に、中国造船企業の 1 万米ドル生産値当
たりの平均電力消費量は日本の 10 倍であり、図面審査送付期間は、日本・韓国に
比べて 3 倍~4 倍である。2005 年、船舶産業経済運営品質は顕著に改善されたが、
中国全国工業全体の水準に比べて依然として大きな格差が存在する。船舶産業経済
収益総合指数は 122 ポイントであり、全国工業経済収益総合指数に比べて 52 ポイ
ント低い。船舶産業全従業員労働生産率は 11.93 万元/人・年であり、全国産業全従
業員労働生産率に比べてその差は約 2 万元/人・年である。中国造船業界の規模は
大きいが、利益は低い。
④技術水準は依然として相対的に遅れている
ⅰ)船舶用設備自給率が低い
現在、中国船舶用設備はほぼ 80%を輸入に依存しているが、日本・韓国の自給
率は共に 85%以上である。中国国内で建造される、大出力低速船舶用ディーゼル
エンジン(例えば 3,500TEU 以上のコンテナ船に搭載されるもの)の輸入依存体
質は依然として改善されていない。超大型船舶発電装置用に搭載される中速ディ
ーゼル機の生産能力も市場需要を満たせない。
ⅱ)船型開発能力が弱い
現在、中国は既に大部分の船型を受注出来、ハイテク技術、高付加価値船舶の
建造力も向上しており、ばら積み貨物、コンテナ船、製品オイルタンカーの優位
化設計能力も備わったが、船型開発分野では、依然として主に海外設計会社に依
存する局面を打破出来ていない。中国の船舶設計技術、設計手段も遅れており、
設計期間が長く、例えば、中国が設計した大型船舶の船体重量は、国際的先進造
船国が設計する船体重量に比べて 1,000 トン以上重い。
-159-
添付資料 2:
中国政府の船舶産業に関する計画及び関連政策
(1)船舶工業発展計画
中国政府は一貫して船舶工業の発展を重視しており、2006 年 3 月 14 日、
『国民経
済及び社会発展第十一次 5 ヶ年計画要綱』において、「十一五」期間(2006 年~2010
年)では「船舶工業の実力を壮大にする」事を明確に打ち出している。これは船舶工業
が初めて国家 5 ヶ年発展計画要綱に単独で明記された事を意味する。当該『要綱』の
中では、「船舶の自主設計能力、舶用装備配備能力及び大型造船設備建設を強化して、
ばら積み貨物船、オイルタンカー、コンテナ船の三大主力船型を優位化し、ハイレベ
ル技術、高付加価値の新型船舶及び海洋エンジニアリング装置を重点的に発展させる。
環渤海湾、長江口、珠江口等の地域に造船基地を建設して、その他地域の造船企業は
合理的配置を行って集中的集積的に発展させる」と強調している。
当該『要綱』発表以降、2006 年 9 月に中国政府は再度『船舶工業中長期発展計画』
を発表して、今後の中国船舶工業の発展方向を明確にした。また、「中国船舶工業業
界協会」の鄧副秘書長によれば、『「十一五」船舶付帯産業発展計画』は未だ編集中であ
り、2007 年上半期には発表される。同時に国防科学技術工業委員会は現在『遊覧船
業界「十一五」発展計画』を組織制定中である。
1)『船舶工業中長期発展計画』
『船舶工業中長期発展計画』は 2006 年 8 月 16 日、国務院常務会議にて審議さ
れ原則通過して、2006 年 9 月 18 日、国家発展・改革委員会、国防科学技術工業
委員会が共同で正式に通知した。何らかの理由で当該『発展計画』の全文は正式
に対外公布されていないので、今回の調査では、『中国船舶報』2006 年第 38 期の
報道に基づき、当該『発展計画』の主要内容を以下の通り整理して纏めて紹介す
る。
『船舶工業中長期発展計画』の全体目標に基づき、2010 年において、中国は自
主開発、建造した主流船型の基準化、ブランド化を実現して、自主設計ハイテク
技術船舶及び海洋エンジニアリング装備能力を具備し、大出力舶用エンジン等付
帯製品の生産能力不足、自主開発能力不足等の弱点としてのボトルネックを突破
して、主流船型現地化(国産)付帯設備船舶装着率を 60%に引き上げ、造船建造量
の世界シェアを 25%以上とし、日本に近接するか日本を追い越す。2015 年では、
ハイテク技術船舶開発建造能力を確立して、国際的先進水準を達成し、現地化生
産(国産)舶用設備の平均船舶装着率を 80%に引き上げ、造船建造量の世界シェア
を 35%以上とし、韓国に近接するか韓国を追い越して、世界でも一流の造船大国
となる。2020 年前後では、全体的技術水準及び自主刷新能力を国際的上位に入る
事で、中国は世界の造船大国となるべく努力するだけでなく、世界の造船強国と
なる。表 4-1-1 は、
『船舶工業中長期発展計画』の主要内容である。
-160-
名称
表 4-1-1 『船舶工業中長期発展計画』の主要内容
船舶工業中長期発展計画
公布日
2006 年 9 月 18 日
制定部門
国家発展・改革委員会、国防科学技術工業委員会
制定目的
船舶工業発展の重要な時期にあって、本計画を制定する事を通じて、船舶工業の
発展を誘導、指導、支援及び調整管理して、船舶工業の発展機会を促進して、急
速、健全、持続可能な発展を実現する。
主要内容
全体目標
①2010 年には、自主開発・建造した主力船舶を国際的先進水準に到達させ、年間
造船能力 2,300 万積載重量㌧とし、年間建造量を 1,700 万積載重量㌧とする。
舶用低・中速ディーゼルエンジンの年間生産能力を各々450 万 kw、1,100 台と
し、基本的に同期における中国国内造船需要を満足させる。一群の国際的競争
力を持つ舶用設備専業化生産企業を確立して、国産の舶用設備平均船舶装着率
(価格に基づき計算)の 60%以上を達成する。船舶工業組織構造を合理化し、大
型船舶企業集団に比較的高い国際的競争力を備えさせ、三大造船基地では四歩
的規模化を達成し、造船業と付帯産業とを協調的に発展させる。船舶工業の全
面的近代化企業制度、近代化フル装備造船モデル及び企業情報化管理を実行す
る。船舶修理(改装を含む)技術水準を大幅に引き上げて、大型・多品種船舶修理
を担う事を可能にして、中国を主要船舶建造修理国となさしめる。
②2015 年には、ハイテク・高付加価値船舶の開発・建造能力を確立して、年間造
船能力 2,800 万積載重量㌧とし、年間建造量 2,200 万積載重量㌧として、中国
を世界の造船強国とする。舶用低・中速ディーゼルエンジンの年間生産能力を
各々600 万 kw、1,200 台とし、国産の舶用設備平均船舶装着率(価格に基づき計
算)の 80%以上を達成して、大型企業集団の舶用設備国際販売サービスネットワ
ークを構築する。基幹造船企業の生産効率を 1.5 作業時/修正総㌧を達成させ、3
万積載重量㌧以上の常軌船舶平均建造期間の 9 ヶ月を達成させ、一人当たりの
平均年間売上高を 200 万元到達に努力する。
技 術 発 展 ①船舶工業は船舶の安全、環境保護、省エネ、快適性要求を常に向上させる市場
の重点
要求に対応しなければならず、船舶の大型化・高速化・知能化の技術発展方向
に基づき、「優位性を強固にし、重点を突出させ、秩序を守って徐々に前進し、
全面的にレベルを上げる」と言う技術発展方針を遵守して、製品の優位化設計、
開発刷新、製造・企業管理水準を向上させる。
②国際技術発展動態の追跡研究を密接に行い、自主開発・中外共同設計・技術導
入等の多種類の方式を採用して、市場需要量の多い主力船舶を全面的に掌握し、
同時に海洋エンジニアリング装備の優位化及び設計技術を把握して、ハイテク
技術・高付加価値船舶及び海洋エンジニアリング装備設計並びに製造能力を育
成する。
③船舶技術の発展方向に対応して技術導入と自主開発を結合させて、舶用設備の
設計・製造水準を向上させ、コア技術を徐々に掌握して、品種規格を増やす。
(次頁に続く)
-161-
技 術 発 展 ④基礎技術・重要汎用技術の研究を強化し、技術の備蓄を増強する。船舶機能と
の重点
構造データバンクを構築して、船舶ライナー及び総合機能急速優位化設計シス
(続き)
テムを開発して、推進・操縦・振動削減・騒音低下・構造設計計算等の技術研
究を強化して、製品開発プラットフォームを構築する。
⑤健全な中国船舶工業技術基準体系を確立する。国内外船舶工業発展需要に対応
して、中国の技術基準を適時制定し改定する。国際技術基準の交渉・制定作業
に積極的に参加して、中国技術基準と国際基準との全面的同一化を推進する。
今後短期間内に国際船級社協会のばら積み貨物船、オイルタンカー共同構造規
則 (CSR)の枠組みの下、中国同類製品の基準体系の研究確立を早急に推進して、
中国の基本船型を打ち出す。
⑥近代的管理技術の利用を重視し、国外の成功体験を借りて、近代的造船モデル
を急速に普及させて、全面的に企業の管理水準を向上させる。情報技術改革に
よる製品設計・生産及び経営管理方式を充分に利用して、情報化水準及び急速
反応能力を引き上げて、船舶建造期間の短縮に努力して、造船コストを低減す
る。
製 品 発 展 ①国内外船舶市場の主流需要を満足させる事を目標として、大型ばら積み貨物船、
方向
オイルタンカー、コンテナ船等の主力船舶の市場シェアを重点的に引き上げて、
基準化、系列化、ブランド化を徐々に実現し、中国船舶工業のリード製品を生
み出す。
②国内重点需要状況に対応して、国内外の二つの市場をターゲットとし、技術導
入・共同建造等の方式を採用して、液化天然ガス(LNG)船、高速大型コンテナ
船、Ro/Ro 船、豪華客船等のハイテク・高付加価値船舶を発展させる。
③海洋資源開発に合わせ、資源探査・採掘・加工・備蓄輸送・総務サービス等分
野の海洋エンジニアリング装備研究製造水準を引き上げて、大水深化・大型化・
系列化分野に発展させる。中国海洋管理需要を満足させる事に努めて、海洋調
査観測及び海洋法執行管理等の装備の研究製造能力を増強する。
④中国の水上安全、漁業、浚渫、洪水防止危険救助、観光リクレーションの需要
に対応して、救助引き上げ装備、遠洋漁船、大型エンジニアリング船、個性化
遊覧船等の製品を大きく発展させる。
⑤計画的、重点的に舶用設備の発展を支援して、舶用設備生産の国産化水準を向
上させる。優先的に舶用動力装置・甲板機械等の既に一定の基礎及び優位性を
備えた製品を優先的に発展させる。低速ディーゼルエンジン用クランクシャフ
ト、舶用大型鋳造品、ボイラー、発電装置等の産業発展に比較的大きく影響す
る製品を大いに発展させる。対外合作を強化して、エンジンルーム、荷役及び
航路観測誘導等の自動化システム製品の地場(国産化)生産を促進する。
⑥関連業界と協同で舶用鋼材、溶接材、塗料、ケーブル等の関連製品を発展させ、
船舶工業発展需要を満足させる。製鉄産業は自身の発展と結合させて、対応性
のある技術改造を実施して、製品品種規格を増やし、舶用鋼材の中国国内自給
率を向上させる。
⑦大型船舶企業集団は製鉄、水上輸送等の関連産業の企業集団と提携して、市場
リスク抵抗力を向上させる。
(次頁に続く)
-162-
対 外 合 ①多くの階層・回数にて国際合作及び交流活動を展開する。OECO との新造船協
定の交渉作業を組織的に発展させて、中国船舶工業の為の経営建造に関する良
作:
好な外部環境を整える。中国船級社は国際船級社協会が組織する技術交渉及び
人材技術
交流に積極的に参加して、中国船舶工業の合法的権益を維持し、ばら積み貨物
の導入、
船、オイルタンカーの共同構造規則(CSR)の協調、普及作業を確実に実施する。
多国籍経
②船舶研究開発機関は共同設計、技術コンサルティング等の方式にて新製品の研
営支援
究開発を行い、世界船舶工業の技術、法規及び基準の発展方向を掌握する。
③造船企業は艤装のモジュール化、高効率溶接能力、カッティング等の船舶建造
重要技術及び近代化造船生産管理技術を重点的に導入・消化・吸収して、生産
方式を転換し、建造技術水準及び生産効率を引き上げて、国際先進的水準に到
達する。
④積極的に海外先進舶用設備製造技術を導入し、国際的に実力のある舶用設備製
造企業の中国への投資を奨励する。舶用設備基幹企業は国際市場開拓度を強化
して、優勢製品の国際市場シェアを拡大する。大型船舶企業集団は統一計画を
実施して、舶用設備国際販売・修理サービスネットワークを確立する。
⑤海外企業が中国国内に船舶、海洋エンジニアリング装備、舶用ディーゼルエン
ジン及び付帯製品の専門研究開発機関を設立する事を奨励する。
⑥大型船舶企業集団の海外投資を支援し、技術が優勢な、製品が優勢な発展の潜
在力を持つ専門の設計会社、舶用設備生産企業及び営業サービスネットワーク
拠点の買収、資本参加を実施して、多国籍経営を展開する。
重 大 プ ロ ①三大造船基地計画
ジェクト
1)環渤海湾地区
大連、葫芦島、青島等の地区の船舶工業構造調整と一部企業の移転を結合
させて、重点的に大連船舶重工及び渤海船舶重工の拡張建設を実施し、青島
海西湾造船基地及び中遠旅順造船基地を建設する。2010 年及び 2015 年、環
渤海湾地区の船舶建造能力を各々900 万積載重量㌧、1,100 万積載重量㌧に到
達させる。
2)長江口地区
上海地区船舶工業構造調整と黄浦江両岸の一部造船工場の移転とを結合さ
せて、重点的に長興造船基地を建設し、中遠南通川崎船舶工程公司の拡張建
設を実施する。2010 年及び 2015 年、長江口地区の船舶建造能力を各々900
万積載重量㌧、1,000 万積載重量㌧に到達させる。
3)珠江口地区
広州地区船舶工業構造調整とを結合させて、重点的に龍穴造船基地を建設
する。2010 年及び 2015 年、珠江口地区の船舶建造能力を各々200 万積載重
量㌧、300 万積載重量㌧に到達させる。隣接地域においては、重点的に福建
泉州造船プロジェクトを計画して建設する。
(次頁に続く)
-163-
重 大 プ ロ ②造船能力を大幅に引き上げる
ジェクト
1)滬東重機股份有限公司、大連船用柴油機厰及び宜昌船舶柴油機厰等の 3 つの
(続き)
低速ディーゼルエンジン生産企業、鎮江中船設備公司、安慶船用柴油機厰、
陜西柴油機厰及び新中力動力機厰等の 4 つの中速ディーゼルエンジン生産企
業に重点を置き、改造及び(場所がある場合)拡張建設を実施して、低・中速デ
ィーゼルエンジン生産能力を引き上げる。
2)2010 年及び 2015 年迄に、新規増加舶用低速ディーゼルエンジン生産能力を
各々290 万 kw、200 万 kw と計画して、新規増加舶用中速ディーゼルエンジ
ン生産能力を各々700 台、100 台と計画する。プロジェクト完了後、舶用低
速・中速ディーゼルエンジン生産能力は基本的に中国造船付帯設備の需要を
満足する事が出来る。
③研究開発センターの建設
大型企業集団に依存委託して、各分野の人材資源を集めて、多元的投資、業
際的連合等の方法を通じて、2~3 ヶ所の民用船舶研究開発センターを設立し、
1~2 ヶ所の海洋エンジニアリング装備研究開発センターを設立する。
④修理及び改装能力の拡大
渤海湾、長江下流、閩浙(福建省、浙江省)沿海、珠江口、北部湾地区において、
大型港湾埠頭建設に合わせて、大型船舶修理用ドッグを改造・拡張建設するか
又は新規建設し、船舶修理及び改装能力を拡大して技術水準を向上させる。
投 資 管 理 ①新規建設大型造船施設プロジェクトでは以下の条件に符合する事。
及び発展
1)プロジェクト総投資額は通常 20 億元以上であり、プロジェクト資本金の固定
政策
資産投資に占める比率は 40%以上である事。
2)近代的全装着造船モデル方式要求に基づき工場を設計しプロセスを配置して
いる事。
3)新規設立造船企業の主要技術経済指標は基幹造船企業の生産経営目標に到達
している事。
②新規設立の造船及び舶用低・中速ディーゼルエンジン及びクランクシャフト中
外合弁企業の場合、外国側出資比率は 49%以下である事。合弁企業は技術セン
ターを設立して、外国側から移転される技術を消化吸収する事。これらを除き、
外国企業が投資して設立される製品研究開発機関及び舶用設備生産企業等は持
株支配比率の規制は受けない。
③現有の舶用低・中速ディーゼルエンジン生産企業の改造拡張建設を重点的に支
援し、原則新規の舶用低・中速ディーゼルエンジン生産企業プロジェクトを計
画しない。
④海外企業、国内外商独資企業、外資持株支配の合弁企業の国内造船企業及び舶
用低・中速ディーゼルエンジン生産企業の再編合併は合弁企業新規設立プロジ
ェクトと見なす。
⑤多元化資金調達方式を採用する建設プロジェクトを導入する。新規建設プロジ
ェクトに対し、プロジェクト実行単位は積極的にその他投資主体との共同建設
を吸収して、新規設立企業は近代的企業制度に基づき運営する。
⑥国家の許可を取得していない大型造船施設建設プロジェクト及び舶用低・中速
ディーゼルエンジン生産プロジェクトについて、関係部門は認可せず届出を受
付けない、土地管理、金融、工商等の部門は相応の手続を受付けない。
-164-
(2)船舶工業管理体制及び市場参入許可政策
1)管理体制
1998 年、国家政府機構改革は国防科学技術工業委員会(COSTIND)が船舶工業の
生産及び技術政策、発展計画、業界管理を実施すると決定した。船舶工業の業界管
理作業を強化する為、2004 年、国防科学技術工業委員会は船舶管理の専門機関で
ある「船舶業界管理弁公室」を設立したが、その主要職能は船舶工業の業界管理を実
施して、業界の全面的、協調性のある持続可能な発展を指導して促進する事であり、
具体的には業界発展計画、産業政策、業界法規、業界基準を制定し、国際交流及び
合作並びに市場監督及びサービス分野の業務を展開する事である。現在、中国全国
の 27 の省市が船舶業界管理部門を決定しており、一応、中央及び地方の二段階で
の業界管理体系が確立されている。
2)市場参入許可政策
①『船舶生産企業生産条件基本要求(試行)』
2005 年 10 月 13 日、国防科学技術工業委員会は『船舶生産企業生産条件基本
要求(試行)』を作成して、船舶生産企業の営業許可証の取得、登録資本金、生産
施設、生産設備、計量検査、人員、管理等の分野の規定を作成した。
②『船舶生産許可証管理条例』(計画中)
中国政府は船舶生産許可証管理制度の実施を計画中である。船舶生産許可証
を取得していない企業が勝手に生産した船舶に対して、各級海事管理機関、船
舶検査機関、漁業船舶検査機関、水上輸送管理機関、船舶辺境防御治安管理機
関、漁業主管部門は船舶の検査、登記、運営等の申請手続を受付けない。船舶
生産許可証未取得であるか又は偽造、第三者の許可証を偽って使用して勝手に
船舶を生産した企業に対して、船舶生産許可証交付管理機関、工商行政管理部
門は法に則り処罰を与える。非法に生産された船舶は公安、海事、漁業行政等
の法執行部門により没収される。
2006 年 9 月 5 日、国防科学技術工業委員会は『船舶生産許可証管理条例』(草
案)を起草して既に 2006 年国務院立法計画に組み入れた。同時に国防科学技術
工業委員会は船舶業界基準である『船舶生産企業生産条件基本要求及びその評
価方法』を編集制定して、
『船舶生産許可証管理条例』の付帯基準としたが、現
在、『船舶生産企業生産条件基本要求及びその評価方法』(意見聴取稿)はネット
上で正に意見を求めている段階であり、正式には未公布である。
③『船舶工業中長期発展計画』
表 4-7 においてもその主な内容を説明しているが、新規建造大型造船施設プ
-165-
ロジェクトに関する必須条件をここで以下の通り再度紹介する。
(ⅰ)プロジェクト総投資額は通常 20 億元以上であり、プロジェクト資本金の固
定資産投資に占める比率は 40%以上である事。
(ⅱ)近代的全装着造船モデル方式要求に基づき工場を設計しプロセスを配置し
ている事。
(ⅲ)新規設立造船企業の主要技術経済指標は基幹造船企業の生産経営目標に到
達している事。
3)船舶工業の産業政策
船舶工業の持続的発展を推進する為、中国政府は一連の関連産業政策を制定した。
主として『2001~2010 年道路水路交通業界政策及び産業発展序列目録』、
『装備製
造業の振興を加速させる事に関する若干の意見』、
『産業構造調整指導目録(2005 年
版)』及び『外商投資産業指導目録』等であるが、以下その具体的内容について説
明する。
①『2001~2010 年道路水路交通業界政策及び産業発展序列目録』
『2001~2010 年道路水路交通業界政策及び産業発展序列目録』の中の船舶工
業の発展に関する部分では、重点的発展奨励分野として 6 分野、発展規制分野と
して 3 分野が説明されているが、その具体的内容は表 4-1-2 の通りである。
表 4-1-2 『2001~2010 年道路水路交通業界政策及び産業発展序列目録』の中の
船舶工業の発展に関する内容
プロジェクト
区分
№
重点的
奨励分野
1
海上大型コンテナ船、大型オイルタンカー、大型鉄鉱石船、大型液
化天然ガス(LNG)船、液化石油ガス(LPG)船、化学品専用船、沿海相
応船型の Ro/Ro 船、旅客 Ro/Ro 船(旅客/カーフェリー)、高速客船内
陸河川コンテナ船、Ro/Ro 船内陸連結バージ先頭引き船輸送船隊
2
大型トン数機動バージ及び機動バージ先頭引き船船団
3
河川・海上直接輸送船舶
4
新型、省エネ、高効率、安全、環境保護型の輸送船舶
5
内陸河川基準化船型
6
工事用船舶
1
新規建造海上雑貨貨物船を適度に規制
2
新規建造内陸河川常軌雑貨貨物船、一般客船、長江豪華客船を規制
3
コンクリート製船舶、エンジン付手漕ぎ船
制限分野
-166-
②『装備製造業の振興を加速させる事に関する若干の意見』
2006 年 6 月 28 日、国務院は『装備製造業の振興を加速させる事に関する若干
の意見』を公布して、一群の国家経済安全及び国防建設に重要な影響を及ぼし、
国民経済の持続的発展を促進して顕著な効果を上げ、構造調整・産業水準向上に
積極的作用して、自主装備市場シェアを急速に拡大する事の出来る重大技術装備
及び製品を重点的に選択する事を提唱し、政策的支援と指導力を強化して、関連
重要分野の重大な突破を実現するとした。うち、船舶工業に関係するプロジェク
トとしては、大型海洋石油エンジニアリング装備の開発、30 万トン鉱石及び原
油輸送船・海上浮動生産貯蔵オイルタンカー(FPSO)・10,000 万 TEU 以上のコ
ンテナ船・LNG 輸送船等の大型ハイテク技術及び高付加価値船舶の開発、大容
量パワーディーゼルエンジン等の付帯設備の開発である。
③『産業構造調整指導目録(2005 年版)』
2005 年に国家発展・改革委員会が公布した『産業構造調整指導目録(2005 年
版)』の中では船舶工業産業構造調整においては、ハイテク、高性能、特殊船舶
を初めとする七大類のプロジェクトの発展を奨励すると明確に規定され、同時に
『船舶工業中長期発展計画』に入っていない民用大型造船施設及び舶用ディーゼ
ルエンジンの製造プロジェクトは規制する事が明確になった。その具体的内容は
以下の表 4-1-3 の通りである。
表 4-1-3 『産業構造調整指導目録(2005 年版)』の中の
船舶工業の発展に関する内容
プロジェクト
区分
№
奨励類
1
ハイテク、高性能、特殊船舶及び 10 万㌧級以上の大型船舶の設計・製造
2
万㌧級及びそれ以上の客船、旅客・Ro/Ro 船、Ro/Ro 船、旅客・コンテ
ナ船、鉄道用フェリーの製造
3
5,000m3 及びそれ以上の液化石油ガス(LPG)船、液化天然ガス(LNG)船の
製造
4
3,000TEU 及びそれ以上のコンテナ船の製造
5
舶用動力システム、発電所、特殊補助マシンの製造
6
大型遠洋漁船及び海上油井掘削船、海上リグ、海上浮動式生産備蓄オイ
ルタンカー等の海洋エンジニアリング装備の設計製造
7
船舶制御・自動化、通信航路誘導、計装計器等舶用設備の製造
1
国家『船舶工業中長期発展計画』に入っていない民用大型造船施設プロ
ジェクト(船舶建造ドッグ、幅が 42m かそれ以上の船台、10 万積載重量
㌧かそれ以上の船舶を建造出来るドック、船台及び付帯造船設備を指す)
2
国家『船舶工業中長期発展計画』に入っていない舶用ディーゼルエンジ
ン製造プロジェクト
制限類
-167-
④『外商投資産業指導目録』
外国企業の中国での船舶工業分野への投資に対して、中国政府は『外商投資産
業指導目録(2004 年改訂版)』の中で規定しているが、船舶製造関連では 4 項目が
奨励類プロジェクトとして挙げられ、制限類及び禁止類には船舶工業関連の記載
は無い。具体的には以下の表 4-1-4 の通りである。
表 4-1-4:『外商投資産業指導目録』の中の船舶工業の発展に関する内容
区分
奨励類
№
プロジェクト
備考
1
舶用低速ディーゼルエンジンのクランクシャ
フトの設計と製造
2
特殊船、高機能船舶の修理、設計と製造
3
舶用中高速ディーゼルエンジン、補助エンジ 中方マジョリティ
ン、無線通信、航路誘導設備及び部品類の設 ー
計と製造
4
FRP 製漁船、遊覧船の製造
中方マジョリティ
ー
なお、2006 年 9 月、商務部外国投資管理司の騫麗芳副司長によれば、中国は
更に『外商投資産業指導目録』を調整して、外国投資者の合弁・合作方式による
ハイテク技術・高付加価値船型及び舶用付帯設備分野への投資を誘致して、中国
造船業の更なる拡大と強化を推進するとしている。
⑤その他の財政税収政策
中国船舶工業の発展を支援する為、中国政府は以下の表 4-1-5 に纏めた税収優
遇政策も制定している。
表 4-1-5:中国政府の船舶工業に対する主要財税関連政策
税区分
流転税
( 消 費
税、増
値税等
の 総
称)
優遇内容
関連文書
2004 年 1 月 1 日より、船舶及びその重要部品類等 『財政部、国家税務総局の輸出貨物税還
に対し、貨物輸出税還付率は 17%を変えない。
付率に関する通達』(財税[2003]222 号)
国内販売遠洋船舶用設備の輸入に対する減税。 『税関総署の「十五」期間における国内販
2002 年 1 月 1 日より 2005 年末迄、認可を経た国 売遠洋船舶用設備の関連税収政策に関す
内販売遠洋船舶の建造に必要な国内では生産出来 る通達』(署税発[2002]153 号)
ないか又は機能が要求を満足出来ない重要な部品
及び設備の輸入に対し、1%の税率で輸入関税を徴
税し、関税率が 1%よりも低い場合は実際の適用税
率で徴税する。
(次頁に続く)
-168-
税区分
所得税
優遇内容
関連文書
『財政部、国家税務総局の企業技術進歩
特定機器設備の減価償却を加速出来る。
船舶工業の機器設備は二倍残高逓減法又は年数総 関連財務税収問題に関する通達』
(財工字[1996]41 号)
和法にて減価償却を短縮する事が出来る。
『国家税務総局の固定資産減価償却加速
審査認可プロジェクトの管理下放後の管
理作業に関する通達』
(国税発[2003]113 号)
財 政 補 中国船舶工業集団公司及び中国船舶重工集団公司 『国内販売遠洋船舶の財政政策に関する
助
傘下の企業に対し、1999 年 12 月 1 日~2005 年 通達』
12 月 31 日迄の期間、中国遠洋運輸(集団)総公司、 (財税字[2000]54 号)
中国対外貿易運輸(集団)総公司、中国海運(集団)総
公司と国内販売遠洋船舶建造契約を締結した場
合、船舶を引き渡して規定通りに増値税納税後、
中央財政は国内販売遠洋船舶の増値税抜き価格の
17%を中国船舶工業集団公司及び中国船舶重工集
団公司に対して補助金として支給する。補助金は
中国船舶工業集団公司及び中国船舶重工集団公司
より造船所に返還される。
国内販売遠洋船舶財政補助金の計算公式:
国内販売遠洋船舶財政補助金
=販売される船舶の増値税抜き価格(又は販売され
る船舶の増値税込み価格/1.17)×17%
-169-
この報告書は競艇の交付金による日本財団の助成金を受けて作成しました。
中国におけるエネルギー需要及び輸送状況に関する調査
技術開発動向調査
2007 年(平成 19 年)3 月発行
発行
社団法人
〒105-0001
日本舶用工業会
業務部
東京都港区虎ノ門 1-15-16 海洋船舶ビル
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ISBN978-4-9903018-9-7
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