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男女共修「米飯」学習における消化実験の実践

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男女共修「米飯」学習における消化実験の実践
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
男女共修「米飯」学習における消化実験の実践
Author(s)
小山田, 了三; 玉利, 正人; 本村, 猛能
Citation
長崎大学教育学部教科教育学研究報告, 7, pp.85-95; 1984
Issue Date
1984-03-30
URL
http://hdl.handle.net/10069/29991
Right
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http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
85
男女共修「米飯」学習における消化実験の実践
小山田了三・玉利正人・本村猛能*
Experiments on Digestion A(1aptive to“Beihan”(Rice−cooking)Lessons
Ryozo OYAMADA,Masato TAMARI and Takeyoshi MOTOMURA*
Abstract
(Experiments on Digestion Adaptive to“Beihan”(Rice−cooking)Lessons)
Following the idea that homemaking education should be on the more scientific
basis,the contents of the present homemaking textbooks were discussed and experi−
mental studies were proposed.
The authors examined the cooking items which were practiced in junior high
schools。Among the items,“beihan”(rice−cooking)1eamed by all the students,was
chosen as an experimental item。
After the basic konwledge of the students conceming“beihan”(rice−cooking)was
examined the experiments aimed at correcting and supplementing the knowledge of
the students were conducted as follows:
1)Experiments to observe the phenomenon of gelatinization of starch.
2)Experiments to observe the digestion of starch with digestive enzymes.
It must be remarked here that these experiments were conducted in the mixed
class of boys and girls.And through the experiments it was assuredthatthescientific
bases of“beihan”including starch,taste,and digestion of boileCしrice cou1(i be under−
stood better than in the girls’class.
1 緒
目
筆者らは先報1)で,自然科学的な知識を基礎とする学問としての家庭科学習は,科学的思
考に基づくものでなければならないことを主張した。この考えに基づき中学校の食物領域
の米飯学習において,化学反応実験を取り入れた実習を行ったところ,従来得られなかっ
た良い学習成果をあげることができたので報告する。
一般に,自然科学に関する学習は,実証性をもちながら結果に到達するまでの論理的構
築を中心に行われているが,家庭科を科学的領域に位置づけようとするならば2),家庭科学習
においても同様な展開を行うことが望ましい。したがって,先報においても述べたように,
自然科学の知識を基礎とした内容をもつ家庭科学習であるためには,その内容に物理的・
*東京都荒川区立日暮里中学校教諭
86
長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第7号
化学的実験実習を積極的に取り入れることが必要であると考える。
また,その学習の対象とするものは,家庭科の内容にふさわしい,生活と生産技術にか
かわる基本的なものであることが望ましい。
これについて,本報で取り上げた「食物」を例とするならば,昭和56年実施の中学校指
導書に「食物」の学習内容を,単に技能の習得を目的とした食物実習にとどめることなく,
食物の調理中における食物材料の化学的・物理的変化の特徴をおさえて,科学的な態度で
調理実習ができるように指導することが望ましいと述べており,科学的学習の考えを取り
入れることが示されている。そこで本研究では先の結果を踏まえて,前回女子のみに行っ
た科学的思考を重視した米飯学習を男女共修学習に広げて実践し,その学習成果を現行の
学習内容のものと合わせて対比検討した。
2 男女共修と平等教育
2.1 男女共修
まず初めに,男女共修の意義について考えたい。
現代社会における家庭生活と,そのあり方は,現代社会に生きている人々のためのみな
らず,未来社会を構成していく子どもたちにとって,きわめて重要な課題であることは言
をまたない。社会の健全な発達にはまず健全な家庭生活が営まれていることが望まれるが,
そこに要望されるものは,生活についての男女の相互理解と協力,さらに生活・技術につ
いての一般的および科学的な知識の習得とそれについての理解があげられる。そのために
学校教育においては男女共修学習により,人間が生きていくうえで何が大切であるかを学
んで,人々が家庭という基本単位に根ざしつつ,地域社会から国際社会にいたるまでの幅
広い社会づくりに必要な価値観の形成を目指すことが望まれている。
男女共修について,欧州諸国およびアメリカ合衆国での家庭科教育における取り扱いを
概観すると,まずデンマークでは,小学・中学課程で4,5,6年は男女共修,その他の
学年では男女選択であるが,スウェーデンでは,男女の差異は設けられていない。フラン
ス,イギリスにおいては,技術・家庭は男女とも同じ学習内容であり,さらにアメリカ合
衆国でも,1972年の教育改正法によって,連邦政府の補助金を受けている学校には男女に
よる教科内容の違いを設けず,また州によって多少異なるものの家庭科については,男女
とも選択とするところがほとんどである。
一方,わが国においては,戦後教育課程の改訂が行われるごとに,家庭科の教科の本質・
内容に関する課題とならび,この男女共修の問題も論議されてきた。1976年12月に教育課
程審議会がまとめた「教育課程の基準の改善に関する基本方向について」では,技術・家
庭科の「男子向き」,「女子向き」に関して,「中学校の技術・家庭科については,男女相互
の協力と理解をはかるという観点から「男子向きと女子向きの学習系列を検討するととも
に,その履習方法の関連を一層密接にはかれるようにする」とされている。
このような家庭科教育における男女共修の考え方の基本には,一般普通教育としての家
庭科では,性差を問わず人間の全体的発達と人間が生きていくために必要な事柄を,教科
の内容に取り入れる必要があるとの考えによるものであるといえよう。
87
男女共修「米飯」学習における消化実験の実践
2.2 男女平等教育
元来,男女平等教育3〉は小学校,中学校および高等学校のそれぞれの学習指導要領に基づ
いて推進されるものであるが,特に中学校技術・家庭科と男女平等教育との関連について
は,男女相互の理解と協力を図ることを十分考慮して領域を選択すること,内容を弾力的
に取り扱うことなどが大切な目標であり,これらの意義を踏まえたものが,一般に男女共
修あるいは相互乗り入れといわれているものである。
したがって,共修実践に当たっては,特に次の3項目を十分考慮に入れなければならな
いとされている3)4)5)。
1)男女平等教育に関する内容3)としては,従前の「男子向き」「女子向き」の区分がな
くなり,内容が17領域で構成されている。各学校においては,地域や学校および生徒の実
態並びに男女相互の理解と協力を図ることを十分考慮して,17の領域の中から男女のいず
れにも7領域以上を選択して履習させること。題材選定や内容構成に当たっては,生徒の
実態を適確に把握し,男女の別なく学習できるものを取り上げるよう配慮する。
2)従前の「男子向き」女子向き」の場合を踏襲するのではなく,男女平等教育との関
連を配慮して見直しをすることが必要である4)5)。したがって,身近な事象を取り上げて学
習に関心を高め,実験・実習を十分体験させて,技術の習得とともに,積極的に生活に生
かすことのできる実践的な態度を育成することが大切である。そのため,教材開発や指導
内容・方法の工夫が望まれる。
3)習得した知識や技能を積極的に活用する能力を伸長するとともに,仕事の楽しさや
完成などの喜びを体得させるなどの勤労観の育成や家庭生活に関する理解をより深め,生
活を尊重する立場から「技術」をとらえ,我国における資源の重要性や環境保全の大切さ
に着目し,家庭生活や社会生活の充実向上を図ること,および技術と生活とのかかわりを
正しく理解し,生活の見方や考え方,行動の仕方などを実践を通して身にうけることをね
らいとする必要がある4)。
2.3 生徒の望む共修の内容
以上,男女共修の必要性とその意義・目標について考えてみたが,実際に生徒が共修で
どのような学習を考えているのかを知るために,以下のようなアンケートによる,調査を
行った。対象は,東京都荒川区立日暮里中学校(1年男子45,女子41,計86名)(2年男子
35,女子53,計88名)の合計174名である。
①現在までの技術・家庭科の授業で,特に興味があり理解できたのはどのようなときか。
1位 実験・実習のある授業 174人(100%)
2位 自分自身が作業して,うまくいった時 140人(80.5%)
3位 授業に関連するおもしろい話 70人(40.2%)
1位
2位
3位
4位
物服居育
食被住保
②被服,食物,住居,保育の領域では,どれを最も学習したいか。
94人(54.0%)
45人(25.9%)
28人(16.1%)
7人(4.0%)
③②で選んだ領域を学習する場合,どのような内容のものを学習したいか。
88
長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第7号
1位実験・実習を含む学習174人(100%)
2位実際に生活の中で役立つ学習153人(87.9%)
3位 自分の将来に役立つ学習86人(49.4%)
以上のことから,生徒は共修授業においても,ただ単に知識の習得や物作りではなく,
製作を通して実際に自分に役立つ技術を学ぶことを望んでいることがわかった。また2年
女子の大半は調理実習の感想として「単なる調理だけでは満足できず,どうして熱処理を
したり,あるいは水分を加えたりするのか」をくわしく知ることを希望していることがわ
かった。
2.4 実験の目的と班編成
本報告では,上の結果を踏まえて米飯学習をとりあげることとし,次のような点を考慮
して観察を中心とする基礎化学反応の実験を組み立てた。
①炊飯に伴う米の物性の変化を見る。
② 試料はあくまでも米を主体として用いる。
以上の2点は,これまでの実験が調理操作中の現象に関するものであったり,米そのも
のを用いていない場合がある点に留意したものである。
そして,「おいしい飯とすること(糊化)がどのような科学的意味をもつか」を思考させ
ることを目標とした。
ここで,共修授業実践では,以下に示す理由から男女2名ずつ計4名を1グループとす
る班編成を行った。一般に,男女の性差により,男子は作業が手早いが慎重さに欠け,女
子は慎重にすぎて作業時間がかかる傾向がある。そこでお互いの欠点を補わせるため男女
2名を1組とし,実験の慎重度を高めさせた。その上で,炊飯は米を炊く(水を加えて加
熱する)ことによりでんぷんが糊化して,細胞膜が崩壊すること,咀しやくにより,でん
ぷんは消化酵素を含んだ唾液と混じりやすくなり,これが消化吸収を進めるものであるこ
とを理解させようとした。
そこで,上記の欠点を補って指導するためには,①糊化を確かめる実験,および②糊化
でんぷんは消化酵素により速く消化されることを確かめる実験を行なうことが必要である
と判断した。そこで筆者らは以下の実践を行ないその成果を確めることとした。
3 実験計画と手順
3.1 米でんぷんの糊化を確かめる生徒実験
目的)米を炊いて飯にするのは米でんぷんを糊化させるためであること。糊化とは,でん
ぷんが熱と水で膨潤し,容易につぶれて糊のようになる状態であることを理解させる。
操作)皿にしんのある飯と良く炊けた飯をとり,両方を指でつまんで押しつぶさせ,紙を
貼らせる。またつぶした飯と水で練った米の粉を指でさわらせ,やわらかさの違いを
気づかせる。
内容)良く炊けた飯が容易につぶれて糊のようになっている状態がでんぷんの糊化である
ことを教える。
89
男女共修「米飯」学習における消化実験の実践
3.2 飯のでんぷんの水溶性を確かめる教師実験
目的)飯から水に溶け出すデンプンの量が,米からのものよりはるかに多いことをヨード
ヨーソ液を数滴加えた反応によって確かめる。
薬品)ヨードヨーソ液(市販品またはヨードチンキでも可能)
操作)①ミキサーの中に水200m2を入れ,これに米30粒を加えて2分間撹搾し,ビーカーに
移す(試料①)。
②ミキサーを洗い,飯を同様に撹絆する。これをビーカーに移しておく(試料②)。
③試料①,②とも,5∼10分後に液の上部が透明に近くなり,下の方に固形物がた
まる。そこで,飯と米の上澄み液を試験管に5ccずつ入れる。
④試験管にとった各上澄み液にヨードヨーソ液を数滴加える。
内容)でんぷんが酵素によって消化するためには,でんぷんが水に溶ける必要がある。飯
は炊くことによってでんぷんの膨潤化が起こり,水に溶けやすくなる。
3.3 消化酵素を用いて,生煮えの飯と良く炊けた飯の消化の速さを比較する教師中
心の実験
目的)良く炊けた飯の方が生煮えの飯より速く消化されることを,実際にでんぷん消化酵
素を用いて確かめる。ここでは,でんぷんの消化(分解)の進行程度をベネジクト反
応によって確かめる。
薬品)酵素:αアミラーゼ,H20100m1,酵素濃度2mg/緩衡液mI
リン酸緩衡液
論11認㎞l/岬
操作)①500ml容のビーカーに350mlの水を入れ,これに熱湯を加えて浴温を38。Cに調節す
る。
②ベネジクト液約5m1ずつを20本の試験管に入れて用意する。
③別の試験管を4本とり,2本には生煮えの飯を30粒,残りの2本には良く炊けた
飯を30粒それぞれ添加し,これに酵素液15m1(α一アミラーゼ45mg/リン酸緩衡液
15ml)をそれぞれ加え,十数回振とうして酵素分解を行う。
④③の試験管を①のビーカーの38。Cの湯浴(この温度で酵素は活発にはたらく)に
つける。
⑤5分後に,ビーカーの試験管のうち生煮えの飯と良く炊けた飯の試験管を1本ず
つ取り出し,用意しておいた②のベネジクト液(5m1)に,この試料液を1m1ず
つ静かに加える。(決して振りまぜない。)
⑥⑤の試験管を1000Cの湯浴の中に静かに入れ,3分間加熱して取り出すと呈色反応
が現われる。
⑦その後,経時的(4分おき)に⑤⑥の操作を行う。途中で1本の試験管の液がな
くなったら,他の1本の試験管のものも用いる。
内容)でんぷんが酵素により消化される。
4 授業実践
本研究で用いた指導案を以下に示す。
90
長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第7号
技術・家庭科 食物1領域
項目)米飯の消化実験を通して,飯の糊化と米飯の消化の速さを比較し理解させる。あわ
せて,糊化の内容やそれに伴う飯の味覚や消化の速さなどの科学的基礎事項を理解さ
せる。
目標)飯の糊化の意味を理解させる。
米飯の消化の速さを比較し理解させる。
飯の糊化および米飯の消化の速さなどの科学的事項を理解させる。
対象)1年生 男46人,女40人,計86人(東京都荒川区内中学校)
時間)2時間
準備)あらかじめ,日常生活の食事の中で,生で食べるもの,加工(熱加工,水加工)し
て食べるもの,その両用でもよいものをそれぞれ米と飯とに対比させながらノートに
まとめさせておく。
91
男女共修「米飯」学習における消化実験の実践
〔指導細案〕
時間
0.1.
学 習 指 導
1.2,
本時の学習目標
o飯の糊化の意味を理解
る。
米飯の消化の速さを理
はつぶして,米ではかんで
較する。
0 0ー ハ乙
3.4.5.
アンケート調査
1.生徒に興味を持たせるよう
,まず各自の日常生活の食
を導入部とする。
する。
飯と米を10粒程各班に配り,
実 験 1
展
指導上の留意点
START
2.
導 入
0
学習の流れ
3.米の飯への変化による糊化
消化についての知識を実践後
の理解度と比較するために調
,ここでは,どうして飯にベ
トツキがあるのか,その点に
味を持たせる。
3.4∼5人1グループの授業
であるが,必ず1人で回答さ
せる。
査用紙を各自に配布し回答させる。
.アンケート及び実験1によ
C1
り,糊化・消化の理解の不確
.2∼3人に実験1及びアン
ケートの疑問点を発表させる。
かさを確認させる。
飯のデンプンの水溶
を確かめる実験H
.まず実験の概要を理解させ,
米と飯のデンプンの水に溶け
出す量を比較させる。
.各自のノートに,米と飯の
拝水の上澄み液のヨーソ反
による色の変化を考えさせる。
このとき,あらかじめ水にヨ
説明
ードヨーソ液を1滴加え,原
① ミキサーに,水200m尼と米
(30粒),飯(30粒)をそれ
ぞれ入れて,2分間撹伴する。
米,飯の撹梓水をビーカー
6.7.8.
に入れ,5分後それぞれの上
実 験 H
ン量を実験1を前提に各自に
考えさせる。
る。
※2∼3のグループに発表さ
結果
の上澄液…白っぽい
の上澄液…青紫色
に溶け出すデンプン量は,
の方が多い。
35
米と飯の消化
験皿(酵素反応)
説明
※
で,この時に米と飯のデンプ
ヨードヨーソ液を1滴加え
7.
開
.撹梓後5分程時問があるの
澄液を試験管に5祀ずつとる。
.上記の③を行う。
C2
を確認させておく。
8.実験の概要を理解させる。
米30粒,飯30粒をそれぞ
れ2本の試験管に酵素液15
謡を含めて入れ,30回振っ
てまぜる。
せる。
.デンプンが酵素によって消
するためには,デンプンが
に溶ける必要がある。米を
いて飯にするのは,これに
よってデンプンの膨潤化が起
こり,水に溶けやすくするた
めである。
a[亜華ヨ
a ①では,試験管の口を親
の腹でおさえて30回振る。
②では,常に37∼38℃に
っておく。
92
長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第7号
② 500m君ビーカーに水350
※
m君(37∼38℃)を入れ,先の
4本をビーカー中に入れる。
③ 試験管18本にベネジクト
液を5謡ずつ入れる。
9.
展
各班で,
C ⑤では,アルコールラン
プの上に置き100℃に保つ。
d ⑥の操作は後半の5回く
らいは生徒に行わせる。
e ⑥の時間(20分程度)
④ 5分後,各試験管から1
実験の
予想を立てる。
は,
デンプンの分解反応に応じ
て説明,補足を行い,班ご
とに「米・飯・消化酵素反
応」の速さ,色の変化につ
m尼ずつ取る(連続9回)
⑤ 米,飯の液を各1本ずつ
100℃の湯に入れる(2分
間)
いて検討させる。
⑥ 米,飯の入った酵素液を
1m尼ずつ2分おきにベネジ
10.
10.
実
験 皿
クト液の上にそっと入れる。
上記の①∼⑥を行う。
10.米と飯のデンプンの分解反
応を注目させる。
11.
11. ・麦芽糖の還元性のために
11.
C3
結果
飯透明→うす黄色一レからし
色→榿色
米透明 明
米より飯のデンプンが水に
けやすいゆ分解反応速い
デンプンー一一一ゆ麦芽糖
開
一アミラーゼ(酵素)
12。
80
12.
アンケート用紙配布
実践前と同じアンケートを
配布し,その理解度を確かめ
る。
整
ベネジクト液を加えて加熱す
ると榿色に着色する。
・赤い底の沈殿物などはデン
プンの分解反応が進んでいる
ことを示す。
米より飯のデンプンが水に
溶けやすいため,消化酵素に
るデンプンの分解は飯の方
速くおこる。
12.アンケート用紙の内容
1.米の主な成分は何か。
2.米を炊いて食べるが,
それはなぜか。
13.
90
3.米を炊くと飯になるが,
それは成分の何がどのよ
13.
うに変化したのか。
技術・家庭科
例 木材加工,食物)
(実習)(講義) 一一(実験)
.糊化とは何か。
デンプンの消化は何の
助けによるか。
5.
社会生活との
関連性
.米を炊いて飯にすると
生活に役立つ技術
消化がよくなるのは。
(産業)
社会に役立つ技術
14。
14.
本時のまとめ
次回予告
理
質問を受け,本時の学習内
をまとめる。
7.感想
13.食物の実験を通して科学的
な物の見方をすべき事を教え
る。
14.o糊化
o飯のデンプンの水溶性
・消化(酵素反応)
の質問が出る予想のもとにま
100
END
とめる。
93
男女共修「米飯」学習における消化実験の実践
5.結果と考察
中学1年生男女86人(昭和58年9月荒川区公立中学校)を対象に上記の実験を行った。
また,昨年は同1年生女子297人(杉並区公立中学校2校)を対象に実験を行っている。こ
れにより,目的とする学習について共修と女子のみの学習効果および実験導入の有無によ
る成果を比較検討した。
結果の検討に用いた質問は次の通りである。
①米の主な栄養成分は何か。②米を炊いて飯にする理由を選べ(四選択肢)。③飯は成分
の何がどのように変化したものか。④糊化とは何か。⑤でんぷんの消化は何の助けによっ
て進むか。⑥米を飯にすると消化が良くなるのはなぜか。⑦授業後の感想。
実験の前と後に,これらの質問を行い,両者の結果について比較し,さらに感想では,
実験1,II,IIIについての感想および気付いた点について書かせた。これらによって実験
の指導効果について考察した。
実験前後における結果を図1,2に示した。
100
100
100
92.9
85.7
88.1
幽
︶0
彩0
︵−
(彩)
85.7
実実
践践
前後
正
66.7
50
答 50
35.7
30.9
率
19.0
167
がよくなるのは
飯にすると消化
るか
は何の助けによ
デンプンの消化
糊化とは
したのか
どのように変化
飯は成分の何が
る理由
米を炊いて食べ
米の主成分
0
16.7
0
図1 「米飯」学習の共修実践前後のアンケート回答(正答率)
図1は,共修授業の実践前後のアンケートの回答である。
まず,①米の成分について,期待した「炭水化物(でんぷん)」が,実験前の66.7%か
ら,後100%に増加した。
次に,②米を炊いて飯とする理由について(四選択肢),期待した「消化をよくする」
「でんぷんを変化させる」が,実験前の30.9%(前者23.8%,後者7.1%)から,後100%
(前者50.0%,後者50.0%)に増加した。
次に,③飯は成分の何がどのように変化したのかについては,期待した「でんぷんが糊
94
長崎大学教育学部教科教育学研究報告 第7号
化する」が,実験前の16.7%から85.7%となり,でんぷんの変化について理解が高まって
いることが推定できる。
また,④糊化とは何かについて,「のりのようになる」「消化しやすくなる」という解
答は,実験前の35.7%が88.1%となり,糊化の現象が実験を行うことによりほぽ理解され
たといえる。
同じく,⑤ でんぷんの消化は何の助けによるものかについて,「唾液あるいは消化酵素」
という解答が,92.9%となり,これも実験によりほぽ理解されたことがわかった。
そして,⑥飯にすると消化がよくなるのはなぜかについて,期待した「でんぷんが唾
液とまじりやすい」という解答が85.7%となり,約9割近くが,でんぷんの変化によって
消化がよくなったことを理解するようになった。
(%) 100100
100
100
(%)
92.
85.7
77.1
77.8
881
・醐
88.9
100
85.7
女共
77.1
の修
正
み 66
7
答 50
50
率
がよくなるのは
飯にすると消化
るか
は何の助けによ
デンプンの消化
糊化とは
したのか
どのように変化
飯は成分の何が
る理由
米を炊いて食べ
米の主成分
0
0
図2 「米飯」学習後の共修および女子のみの授業比較
ところで,本実践の目的は従来の女子のみの食物学習に対して共修の学習効果をみることを
ねらいとしたものである。前報において,①糊化の意味,②飯にすると消化がよくなる理
由,③消化酵素の3点について,科学的な基礎に基づいた実験導入が効果的である結果が
得られている。そこで,以下に女子のみで行った前回の実践の場合と今回の共修実験の場
合について比較検討した。図2に示すように,共修では,アンケート回答で正答率がすべ
て85%以上であった。これを女子のみのものと比較してみると,図のように理解度がほぼ
10∼30%高まっている結果がえられた。
①②③④
また,女子のみの実践と共修における男子の理解度を比較すると次のようになる。
米の主成分=女子100%,男子100%
米を炊いて食べる理由:女子77.1%,男子100%
飯は成分の何がどのように変化したのか1女子77.8%,男子86.4%
糊化とは何か:女子77.1%,男子86.4%
95
男女共修「米飯」学習における消化実験の実践
⑤ でんぷんの消化は何の助けか:女子88.9%,男子90.9%
⑥飯にすると消化がよくなるのは:女子66.7%,男子81.8%
このように,共修授業実践後は,すべての質問に対して女子のみの実践より高い正答率
を示したことから,本実験による効果は大きいと考えることができる。さらに,共修での
女子の正答率も従来より上回っていることから,共修では女子も女子のみの授業より興味
を示し,班内の協力で男女の理解が進んだことが推察でき,共修授業による教育的効果は
大きいと言える。
以下に実践後の感想を示す。
○私達が米を炊いて食べるのは,消化を良くし,吸収しやすくするためだということが
わかった。
○技術・家庭科で「米飯実験」を行ったことは,おもしろかったし,米と飯の消化の違
いがわかった。
6 結
目
本研究は,前報に引き続いて食物学習に不足している科学的,理論的内容を導入し,こ
れを男女共修に適するものとするための新しい試みである。学習に基礎実験を取り入れる
ことで,科学的基盤を与えるという見地から,ここでは,中学校技術家庭科の食物学習「米
飯」に糊化・消化実験を導入し実践を行った。この実験によって,米でんぷんの糊化の内
容や,それに伴う飯の味覚や消化の速さなどの科学的基礎事項の理解にきわめて良い結果
を得ることができた。
さらに,男女共修授業において実験を導入することにより,積極的な男子の参加が認め
られ,また女子の学習効果が高まり,男女の協力もみられ,この効果がより実験能率を高
め充分な成果をあげることができた。今後,他教材分野への応用実践を行って,さらにこ
のことの確認を深めてみたい。
参考文献
1)小山田了三,本村猛能:日本家庭科教育学会,第27巻1号(1984)掲載予定
2)石沢吉磨:「家事実験法」,目黒書店,大正14年
3)東京都教育庁指導部=「男女平等教育推進のための資料」,p.4,23∼30(1982)
4)杉並区公立中学校:「技術・家庭科における題材の開発と共修領域の指導のあり方」,p.1∼22,
30(1980)
5)神門顕:日本産業技術教育学会誌,第24巻3号(1982)
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