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E R M の 実 効 性

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E R M の 実 効 性
保険E R M 基 礎 講 座 《 第
連載
回》
(その2)
スク対策と同じ目線であ
されているコンダクトリ
しなかったが、現在論議
スクといった概念は存在
た。当時はコンダクトリ
応が進められている。英
IAISでの論議と並
行して各国でも種々の対
としている。
展する要因を作り出した
グローバル金融危機に発
コンダクトリスクへの
対応を怠ると、罰金、是
強く感じるものである。
ォワードルッキング性を
ニタリングを経営情報の
故、コンダクトリスクモ
と が 可 能 と な る。 そ れ
ら、信頼を積み上げるこ
り良く対応できることか
理解した上で、問題によ
ツやニーズをより明確に
級経営陣は顧客のウォン
照)。
さ れ て い る( 図 表 1 参
つなげていくことが期待
けられ、ERMの強化に
スクカルチャーと関連付
ムワーク(RAF)、リ
スクアペタイト・フレー
ーチが、ガバナンス、リ
る。組織としてのハイレ
下での判断が考えられ
トレード・オフの状況の
ビヘイビアへの違いが
表れやすい領域として、
く。
クカルチャーと結び付
ビアの追求は、人のリス
2. コ ン ダ ク ト
リスク対応の戦
略的意義
った。
スクを消費者に対する不
一つに加え、リスクカル
国当局は、コンダクトリ
コンダクトリスクへの
関心が低いと、日々の業
正措置、訴訟費用、風評
いった行為の温床とな
全性、有効な競争への悪
し、顧客保護、市場の健
) と 定 義
応は、保険会社の戦略性
いるコンダクトリスク対
しかし、昨今議論されて
があるのは事実である。
クへの対策といった側面
という意味で、純粋リス
被害などの悪影響を生む
を洗い出すというフォワ
されている。潜在的要因
ける戦略的思考が重要視
ルチャーの醸成と結び付
く影響を及ぼすリスクカ
RMの実効性向上に大き
されている。同時に、E
て組み入れることが期待
チャー醸成の枠組みとし
は、ビジネスプロセスに
ダクトリスクへの対応
った。これに対し、コン
主眼が置かれる傾向があ
類似の事故の再発防止に
故をトリガーとし、その
従来のオペレーショナ
ルリスク対応は重大な事
構成員それぞれの物の考
することは難しく、組織
ルでの具体的基準を提示
ついては、現場活動レベ
ダー間の利害調整などに
ーン判断、ステークホル
項に対するリスク・リタ
要がある。例えば、金融
あるかを十分理解する必
約者がどのような状況に
コンダクトリスクの有
無を洗い出す際には、契
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る。さらに極端な場合に
影響といった観点から、
にも言及している。つま
ードルッキングなアプロ
ベルのトレード・オフへ
公正な取扱いの結果に対
は金融危機につながる要
このリスクを超えてい
り、効果的なコンダクト
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いる。これまで、二つの
務品質の低下を招いた
ペーパーの中で、コンダ
因ともなる。IAISの
る。このスタンスは、従
リスク情報によって、上
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イ シ ュ ー・ ペ ー パ ー
基礎研修
コンダクトリスクリスク対応
事故に至らない顕在化した事象
いが生じる。保険会社に
・行動のスピードにも違
断は常に異なるし、判断
的な状況によってその判
困難な場合が多い。具体
は、文書化、ルール化が
故、ビヘイビアについて
れ る こ と が 多 い。 そ れ
くは自然な意識下で取ら
れる、あるいは当然もし
アは無意識のうちに取ら
らない。一般にビヘイビ
ビアを重視しなければな
その結果取られるビヘイ
中に介在する人の判断、
の場合、そのプロセスの
付加する必要がある。そ
クトリスク管理の視点を
制するプロセスにコンダ
クション)の仕組みを統
る。オペレーション(ア
ているものと考えられ
事前対応に主眼が置かれ
正な結果に至る要因への
着目し、消費者への不公
おけるヒヤリ・ハットに
映させる必要がある。
その成果を人事評価に反
つなげることによって、
付けは所属組織の目標と
である。研修による動機
実践(OJT)が不可欠
た階層別研修とその後の
内の役割・機能を意識し
華させるためには、組織
に処理する能力)へと昇
関する知識を知恵(直接
手段である。日常業務に
のような動機付けを行う
効果がある。研修は、こ
が考え行動できて初めて
の業務との関係で、自ら
判断に関わるため、自ら
ャーは日常業務の中での
る。しかしリスクカルチ
の中に組み込む必要があ
あろう。その意味で研修
を社内で認識する必要が
醸成には、まずその意義
ため、リスクカルチャー
で消化されている。その
いった、カルチャーの中
え方、行動の仕方などと
タとなったり、異常な保
的な不正販売を疑うデー
ていない商品設計や潜在
は、顧客の期待を満たし
大 量 の 契 約 失 効・ 解 約
傾向となる恐れもある。
をプッシュ型で販売する
わらず、売りやすい商品
ーズとは離れるにもかか
販売の仕組みが消費者ニ
した手数料ベースの保険
ば、販売量にのみリンク
られることもある。例え
は異なる販売誘因が課せ
た場合、顧客のニーズと
数料の設定に偏りがあっ
が必要になろう。販売手
グオフ期間への配慮など
の質、さらにはクーリン
ロージャーやアドバイス
雑な場合には、ディスク
さらに提供する商品が複
での対応が必要になる。
の非対称性を意識した上
い顧客の場合には、情報
知識をあまり持っていな
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(5面へつづく)
とっての望ましいビヘイ
されているが、個別の事
RAFの中で調整・提示
の対処方針については、
クトリスクは、当該保険
ペーパーは金融危機を引
来オペレーショナルリス
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M
コ ン ダ ク ト( 事 業 行
為)は、さまざまな要素
(注)が発表されてい
す る リ ス ク(
会社のレピュテーション
き起こしたサブプライム
クで取り扱っていたオペ
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に影響を受けている。企
る。健全な保険セクター
り、不適正販売事件やベ
のみならず、個別の保険
住宅ローン問題について
レーションの失敗やコン
有限責任監査法人トーマツ
業活動は、個々の組織構
の形成をを促進し、保険
3. ビ ヘ イ ビ ア
への注目
市場、さらに保険市場全
も言及している。当時の
プライアンス違反に伴う
後藤 茂之
体に対する消費者からの
見境ないサブプライムロ
損失を防止する考えより
図表2 リスクカルチャー醸成の枠組み
ディレクター 信頼失墜を招くものとし
ーンの販売といった不適
は明らかに広く、かつフ
PDCA の効果的活用とリスクカルチャー向上の実態を
確認
ンチマークの不正操作と
て、その影響の大きさが
切なマーケティング(低
モニタリングと経験から学ぶ文
化の強化
4. コ ン ダ ク ト
リスクのモニタ
リング
指摘されている。
質な事業行為)の結果、
プロセスとしての RAF(リスクアペタイト・フレーム
ワーク)が、行動面で担保できているかを確認
OJT
日本においては、20
07年3月「保険金の支
トップから現場までの各階層の
行為の整合性
階層別研修
払いに関する金融庁の行
個人の利益と組織の利益の調整
リターンの源泉としてのリスクテイクに関する責任の
明確さと透明性の確保、組織構成員のインセンティブ
と報酬との関係、組織の価値創出への貢献との関係を
整理
AIS(保険監督者国際
成員の行為の総体であ
契約者を保護するために
RAS の内容を実現するための主要な指標の抽出とその
統制、モニタリング体制の構築
機構)に設置された専門
る。意図する行為に反す
必要な保険監督にあたっ
リスクアペタイト・フレームワー
ク(RAF)の構築
グループ(
る結果が起こり、その原
ステークホルダー間のリターン、リスク、資本の調整の
考え方の明示
政処分事案(不適切な不
リスクアペタイトステートメン
ト(RAS)の明確化
1. コ ン ダ ク ト
リスクに関する
国際論議
因が究明されるたびに、
ての基本原則を定めた監
払い事案と支払い漏れ事
案、 請 求 勧 奨 漏 れ 事
取締役会によるリスクカルチャーのけん引
)の中で進められて
われわれの意思決定や行
督文書として、ICPs
オペリスク対応
顕在化した事象
スタッフ層
案)」が発生した。この
問題に対し、各社はゼロ
トレランスという目線で
保険金支払いプロセスに
関する業務品質向上へと
徹底した対策を実施し
RM関連パネルに参
加。現職にて、ERM
高度化関連コンサルに
従事。
大阪大学経済学部卒
業、コロンビア大学ビ
ジネススクール日本経
済経営研究所・客員研
数千
(ハザード)
(
:保険基本
(仲介者)、 9 (監督レ
ペタイト・フレームワ
課長層
為は検証されてきた。各
行為を組織として統合
原 則 ) が あ る。 こ の 中
とは容易ではない。保険
ビュー及び報告)の各規
ーク、ORSAプロセ
300
(ヒヤリ・ハット)
組織構成員の意思決定・
し、 一 つ の 目 標 に 収 斂
で、
のコンダクトリスクに関
定とも関連している。同
(事業行為)、
(しゅうれん)させるこ
する国際的な論議は、I
保険交渉、合併・経営
統合に伴う経営管理体
制 の 構 築、 海 外 M &
A、 保 険 E R M の 構
築、グループ内部モデ
【後藤茂之氏プロフィ
29
(軽微な事故)
RAF、
経営目標
・計画、
部門方針
・計画 部長層
ルの高度化、リスクア
ル】
究員、中央大学大学院
総合政策研究科博士課
程修了。博士(総合政
策)。
1
(重大事故)
■ ORSAプロセス
■ リスク管理委員会
■ 3本の防衛線
■ 業務活動報告
およびリスク
管理関連報告
Tone
at
the Top
経営層
ス整備に従事。IAI
S、Geneva A
ssociatio
大手損害保険会社お
よび保険持ち株会社に
て、企画部長、リスク
n、EAICなどのE
トップの姿勢
ERMの実効性
24
18
ERM・リスク
カルチャー醸成研修
ハザード状況
ERMモニタリング
方針・計画
組織
19
管理部長を歴任。日米
図表1 ERM 枠組みにおけるリスクカルチャー
2 0 1 6 年(平成 2 8 年)9 月 1 5 日(木曜日) ( 4 )
(第 3 種郵便物認可)
になる。例えば、特定の
に近づく)な監視も可能
で、迅速(リアルタイム
作業を自動化すること
ある。データの収集分析
ス技術を活用する必要も
め、データアナリティク
クを浮き彫りにするた
膨大なデータ量の陰に
隠れる可能性があるリス
を疑う必要がある。
分なディスクロージャー
て、不適切な販売や不十
険金請求の事実につい
(4面からつづく)
針(
い。経営トップからの方
たかを振り返ってみた
な取り組みにより浸透し
・カルチャーはどのよう
えば、コンプライアンス
エネルギーを要する。例
の中に導入する際には、
い。新たな枠組みを組織
るかについて考えてみた
次にリスクカルチャー
の醸成をどのように進め
って重要である。
ンダクトリスク対応にと
リスクビヘイビアが、コ
び付けられるカウンター
がイメージできる(リス
転倒し、けがをすること
前で通行人が足を滑らせ
みよう。雪により自宅の
するという行為を考えて
宅の前の道路の雪かきを
国で、雪が降った後、自
い。訴訟リスクの高い米
事に例えると分かりやす
これは、日常生活の出来
ばカウンターリスクビへ
断基準を身に付けなけれ
スクに対する合理的な判
る。自らの業務に伴うリ
イビアを担保できない。
保険契約の解約が増加し
(第 3 種郵便物認可)
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がある。それ故、コンダ
況、経済環境などの影響
て、 市 場 構 造 や 競 争 状
また、コンダクトリス
クを誘発する要因とし
が必要となる。
に結びつけるなどの対応
る。そして、具体的対策
の原因の可能性を抽出す
から要因分析をして、そ
く把握し、複数のデータ
た場合、その事実を素早
防衛線)。このようなガ
るモニタリング(第 3 の
線)、内部監査部門によ
リ ン グ( 第 2 の 防 衛
設置による推進とモニタ
プライアンス推進部門の
(第 1 の防衛線)、コン
アンス推進責任者の設置
処。各部へのコンプライ
反に対する人事面での対
し。コンプライアンス違
る 教 育・ 研 修 の 繰 り 返
プの発揮、組織内におけ
)、 リ ー ダ ー シ ッ
(つづく)
が醸成されたといえる。
めて、リスクカルチャー
までに結び付けられて初
このように自発的な行動
ーリスクビヘイビア)。
う行動に出る(カウンタ
発的に雪かきをするとい
然に防止するために、自
それ故、このリスクを未
(リスクリテラシー)。
あることを認識している
者から訴えられることが
事態が発生すると、被害
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T
クトリスクのモニタリン
クセンス)。そのような
グは、各国の市場環境・
する認識(リスクリテラ
セスに改善していこうと
適切な対処や適正なプロ
性(リスクセンス)と、
観点から課題を感じる感
らの業務に関しリスクの
織構成員一人一人が、自
な検証が必要である。組
について、多面的で冷静
特徴と顧客ニーズの関係
社のサプライチェーンの
クトリスク対応には、自
となる。そして、コンダ
実務との関連付けが必要
醸成される妥当なリスク
点にある。実務経験から
基準を示すことが困難な
クリテラシーは、簡単に
を示せるのに対し、リス
が法令などの明確な基準
ライアンス・リテラシー
ャーとの違いは、コンプ
ンプライアンス・カルチ
必要である。しかし、コ
リスクカルチャーにつ
いても同様のステップが
されるであろう。
続的な取り組みが思い出
バナンスの下における継
◆この連載は隔週木曜
日に掲載します。
ものではありません)
であり、所属する組織の
(文中の意見に当たる
部分は執筆者個人のもの
◇
シー)、さらに適時的確
センスを磨く必要があ
(注)
にそれを実際の行動に結
2 0 1 6 年(平成 2 8 年)9 月 1 5 日(木曜日)
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