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農産物中の残留農薬検査結果 (平成22∼24年度)
高 知 衛 研 報 高 知 衛 研 報 . . . , , , 59, 2013 47 農産物中の残留農薬検査結果 (平成22∼24年度) 平松 佐穂・西山 佳央里*1)・橋 慎介・芦田 拓*2)・影山 宮 真美・中村 秋香*3)・宅間 範雄・西森 一誠*4) 温子 , ! " #, $ %! , $ &, $ !'(#, ! #, $ $ "! , " ! ! ) " % 【要旨】 当所では平成21年度より、 食品中の残留農薬一斉分析について、 迅速化と精度の向上を目的とし、 抽出 操作に 「QuEChERS法」、 精製操作に 「固相カートリッジ法」 を組み合わせたSTQ法による前処理とGC/MSへ の試料大量注入法を導入している。 今回、 第56号所報の続報として、 平成22年度から24年度までのSTQ法による残留農薬一斉分析検査結果 を取りまとめた。 行政依頼の食品安全対策検査として県内農産物及び冷凍野菜延べ198検体について一斉分析を行ったと ころ、 延べ56検体から24種類の農薬を検出した。 検出された農薬は、 概ね食品衛生法の残留基準を下回っ ていたが、 平成23年度に検査を実施したほうれんそう1検体から残留基準値を大きく超えるEPNが検出さ れた。 ! * :残留農薬、 農産物、 '+,、 -+,,、 . (+(法、 .法 / /'+,/-+,,/.(+( /. 食品中に残留する農薬等 (以下、 残留農薬) の試験 について、 平成18年5月にポジティブリスト制度が施 行されたことにより、 多数の農薬等の微量分析が必要 となり、 今まで以上に迅速で正確な分析結果が求めら れるようになった。 当所では、 食品安全対策検査の一環として野菜・果 実等の残留農薬検査を実施してきた。 先に報告1) があっ たように、 平成18年度から厚生労働省通知による一斉 分析法 (通知法)2) により分析を行っていたが、 平成 21年度、 前処理方法を含めて、 迅速で感度・精度の高 い分析法の検討を行い、 同年よりQuEChERS法と固相 *1) 医事薬務課 *2) 前衛生研究所 *3) カラムによる精製を組み合わせたSTQ法 (Solid Phase Extraction Technique with QuEChERS method) の 自動前処理装置を導入し、 一斉分析を実施することと した。 今回、 平成22年度から24年度にかけて実施したSTQ 法による残留農薬一斉分析の検査結果を取りまとめた ので報告する。 1. 試 料 自動前処理装置の処理能力を考慮し、 一斉分析1回 あたりの搬入検体は原則2品目まで計12検体とした。 中央東福祉保健所 *4) 環境対策課 . . . , , 48 平成22年度は県産野菜8品目47検体、 冷凍野菜4品 目18検体 (輸入品17検体、 県外産1検体)、 平成23年 度は県産野菜9品目 53検体、 冷凍野菜5品目 20検体 (輸入品19検体、 県外産1検体)、 並びに平成24年度は 県産野菜7品目 48検体、 輸入冷凍野菜2品目 12検体 について一斉分析を実施した。 2. 対象農薬 市販混合農薬標準液を使用し、 表1の農薬を分析対 象農薬とした。 なお、 このうち7農薬はGC/MS、 LC/MS/MS両機器で 測定し、 そのクロマトグラムで農薬検出の有無を確認 している。 GC/MS対象農薬;82成分 (H22年度は84成分) LC/MS/MS対象農薬;22成分 表1 分析対象農薬 㪈 㪉 㪊 㪋 㪌 㪍 㪎 㪏 㪐 㪈㪇 㪈㪈 㪈㪉 㪈㪊 㪈㪋 㪈㪌 㪈㪍 㪈㪎 㪈㪏 㪈㪐 㪉㪇 㪉㪈 㪉㪉 㪉㪊 㪉㪋 㪉㪌 㪉㪍 㪉㪎 㪉㪏 㪉㪐 㪊㪇 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:Waters Atlantis○ (ODS) T3 LCカラム 和光純薬工業(株)製)、 塩化ナトリウム、 クエン酸 三ナトリウム二水和物 (試薬特級、 和光純薬工業 (2.0mm×150mm、 3μm) R ガードカラム:Waters Atlantis○ (ODS) T3 (2.1mm×10mm、 3μm) (株)製)、 クエン酸水素二ナトリウム一・五水和物 (和光一級、 和光純薬工業(株)製)、 無水硫酸マグネ カラム温度 :40℃ シウム (和光特級、 和光純薬工業(株)製)、 ポリエ 移動相 :A液 0.5mM酢酸アンモニウム溶液 B液 メタノール チレングリコール(300) (関東化学(株)製) 4. 装 置 自動前処理装置 流量 :0.2mL/min 注入量 :5μL グラジエント条件 :㈱アイスティサイエンス製STQ-L200 :0∼17分(A:B=70:30→2:98) ガスクロマトグラフ用大量注入口装置 ∼23分 (A:B=2:98) :㈱アイスティサイエンス製LVI-S200 ∼35分 (A:B=70:30) ガスクロマトグラフ/質量分析計 :アジレント製7890A /日本電子㈱製 JMS-Q1000GC MKⅡ 液体クロマトグラフ/タンデム質量分析計 :Waters製LC2795/JASCO :ESI (+) 分析モード :MRMモード イオンソース温度:120℃ TM Micromass Quattro Ultima Pt 5 分析条件 コーンガス :N2 65L/hr 乾燥ガス :N2 751L/hr 乾燥ガス温度 :400℃ GC/MS条件 5. 1. 1 GC条件 カラム イオン化法 キャピラリー電圧:3kV International㈱製 5. 1 5. 2. 2 タンデム型質量分析計条件 :ENV-5MS (0.25mmi.d.×30m、 膜圧0.25μm、 関東化学(株)製) ガス :He 流量 :1.2mL/min 6 試料溶液調製 6. 1 抽出 均質化した各試料10gを、 図1のとおりアセトニト リル10mLで抽出した。 . . . , , 50 試料10g 分取1mL アセトニトリル10mL ホモジナイズ(1 分) NaCl 1g クエン酸3Na2 水和物 1g クエン酸水素2Na1.5 水和物 0.5g 無水 MgSO 4 4g 攪拌1分 遠心分離 (3000rpm 固相C18-30mg +PSA-30mg :精製 洗液 メタノール 1mL 溶出液 水 0.5mL 固相C18-50mg :精製 洗液 80% メタノール 1mL 定容(水で 4mL に定容) 5分間) アセトニトリル層 図3 LC法試験溶液の精製フロー図 50 %アセトニトリル水で2倍希釈 GC 用分取1mL (試料0.5 g相当) LC用分取1mL (試料 1g相当) 図1 試験溶液の抽出フロー図 6. 2 自動前処理工程 抽出後、 分取した各1mLを自動前処理装置にて、 GC 法は図2、 LC法は図3のとおり、 固相カートリッジ Smart-SPE C18-30、 C18-50、 PSA-30で精製した。 GC法は、 溶出液に1ppmフェナントレンd体と0.1 %ポリエチレングリコール(300)のアセトン溶液を20 μL加えた後、 アセトン/ヘキサン(3/7)で1mLに定 容し、 GC/MS試験溶液とした。 LC法は、 溶出液を水で4mLに定容しLC/MS/MS試験 溶液とした。 7.添加回収試験等 一斉分析において、 品種ごとに1検体あたり2濃度 の添加回収試験を行った。 添加試料については、 試料換算濃度0.01ppm及び0.1 ppmとなるように調製し、 添加回収試験の結果が70∼ 120%の成分について定量を行った。 また、 試験中の夾雑物による妨害の有無を確認する ため、 最終試験溶液濃度が0.1ppmとなるようSTQ処理 後の抽出液に農薬混合標準液を添加し、 スパイク試験 を行った。 平成22年度から24年度に行った残留農薬一斉分析の 概要を表2に示した。 表2 一斉分析の概要 分取1mL 固相C18-30mg :精製 洗液 80% アセトニトリル水 1mL 下液 10% 食塩水 20mL 固相C18-50mg :保持 乾燥(窒素ガス 2分) 連結固相PSA-30mg :精製 アセトン/ヘキサン(3/7) 1mL 溶出液 フェナントレンd体+PEG(300)/ アセトン 定容(アセトン /ヘキサン(3/7)で1mL に定容) 図2 GC法試験溶液の精製フロー図 㘩ຠฬ 䉥䉪䊤 䈎䈹 䈎䈿䈤䉆 䈐䉆䈼䈧 䈐䉈䈉䉍 䈖䉁䈧䈭 䈘䈧䉁䈇䉅 䈛䉆䈏䈇䉅 䈣䈇䈖䉖 䊃䊙䊃 䈭䈜 䊆䊤 ⊕⩿ 䊏䊷䊙䊮 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通知法の個別法に基づきGCECDでの確認試験も実施したが、 同様の結果となった。 ほうれんそうから検出されたEPNは、 登録適用外農 薬であったため、 買上げを行った管轄福祉保健所と農 薬取締法所管課の協働で調査を実施したところ、 生産 者の不適正使用が判明し、 生産者及び販売店に対し両 者から行政指導を行った。 平成24年度には輸入冷凍枝豆から一律基準値と同等 のジフェノコナゾールが検出され、 STQ法により妥当 性評価を行ったうえ確認試験を実施したが、 同様の結 果となった。 この輸入冷凍枝豆は県外の輸入販売業者 が販売し、 高知県内で流通している商品であったため、 当県食品衛生担当課より輸入販売業者の所管担当課へ 通報し、 調査及び指導が行われた。 表3 検出農薬 (mg/kg) ㄘ⮎ฬ 䉝䉹䉨䉲䉴䊃䊨䊎䊮 䉟䊒䊨䉳䉥䊮 䉟䊚䉻䉪䊨䊒䊥䊄 䉟䊮䊄䉨䉰䉦䊦䊑 㪜㪧㪥 䉦䉵䉰䊖䉴 䉨䊉䊜䉼䉥䊅䊷䊃 䉨䊞䊒䉺䊮 䉪䊨䊙䊐䉢䊉䉳䊄 䉳䉣䊃䊐䉢䊮䉦䊦䊑 䉲䊊䊨䊃䊥䊮 䉳䊐䉢䊉䉮䊅䉹䊷䊦 䉲䊕䊦䊜䊃䊥䊮 䉼䉝䊜䊃䉨䉰䊛 䊃䊥䉝䉳䊜䊉䊷䊦 䊏䊥䉻䊔䊮 䊏䊥䊒䊨䉨䉲䊐䉢䊮 䊐䉢䊅䊥䊝䊦 䊐䉢䊮䊋䊧䊧䊷䊃 䊕䊦䊜䊃䊥䊮 䊖䉴䉼䉝䉷䊷䊃 䊚䉪䊨䊑䉺䊆䊦 䊜䉸䊚䊦 䊜䉼䉥䉦䊦䊑 ㄘ⮎↪ㅜ Ვ⩶ Ვ⩶ Ვ⯻ Ვ⯻ Ვ⯻ Ვ⯻ Ვ⯻ Ვ⩶ Ვ⯻ Ვ⩶ Ვ⯻ Ვ⩶ Ვ⯻ Ვ⯻ Ვ⩶ Ვ⯻ Ვ⯻ Ვ⩶ Ვ⯻ Ვ⯻ Ვ⯻ Ვ⩶ Ვ⯻ Ვ⯻ 䉥䉪䊤 䈎䈹 䈎䈿䈤䉆 㪇㪅㪇㪊㩿㪈㪀 㪓㪇㪅㪇㪈㩿㪈㪀 䈐䉈䈉䉍 㪇㪅㪇㪊㪌㩿㪈㪀 㪇㪅㪈㪐㩿㪈㪀 㪇㪅㪇㪈㪄㪇㪅㪇㪋㩿㪋㪀 䈖䉁䈧䈭 䈣䈇䈖䉖 䊃䊙䊃 㪇㪅㪇㪉㩿㪈㪀 㪇㪅㪇㪊㩿㪈㪀 㪓㪇㪅㪇㪈㩿㪈㪀 䈭䈜 㪇㪅㪇㪊㩿㪈㪀 䈮䉌 㪇㪅㪇㪈㪐㩿㪈㪀 䊏䊷䊙䊮 䈾䈉䉏䉖䈠䈉 㪇㪅㪊㪏㩿㪈㪀 䈇䉖䈕䉖䋨಄䋩 㪇㪅㪇㪈㪌㩿㪈㪀 ᨑ⼺㩿಄䋩 㪇㪅㪇㪈㩿㪈㪀 㪇㪅㪇㪈㩿㪈㪀 㪇㪅㪇㪊㩿㪉㪀 㪓㪇㪅㪇㪈㩿㪉㪀 㪇㪅㪇㪈㪐 㪎㪅㪇㩿㪈㪀 㪇㪅㪇㪉㪄㪇㪅㪇㪋㩿㪉㪀 㪇㪅㪇㪈㩿㪈㪀 㪓㪇㪅㪇㪈㩿㪈㪀 㪓㪇㪅㪇㪈㩿㪈㪀 㪓㪇㪅㪇㪈㩿㪈㪀 㪇㪅㪇㪉㩿㪈㪀 㪇㪅㪈㪈㩿㪈㪀 㪓㪇㪅㪇㪈㪄㪇㪅㪇㪉㩿㪊㪀 㪇㪅㪇㪊㩿㪈㪀 㪇㪅㪇㪉㩿㪈㪀 㪇 㪅 㪇㪈 㩿 㪈㪀 㪇㪅㪇㪉㪍㪄㪇㪅㪇㪉㪏㩿㪉㪀 㪇㪅㪈㪈㩿㪈㪀 㪇㪅㪇㪈㪏㪄㪇㪅㪇㪎㩿㪋㪀 㪇㪅㪇㪈㪉㩿㪈㪀 㪇㪅㪈㪄㪇㪅㪍㩿㪎㪀 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厚生労働省医薬食品局食品安全部長:食品中に残 留する農薬等に関する試験法の妥当性評価ガイド ラインについて. 食安発第1115001号, 平成19年 11月15日. 4) 中村秋香ら:自動前処理装置を用いた食品中残留 農薬一斉分析法の妥当性評価. 高知衛研報. 56, 53-62, 2010 5) 宮真美ら:自動前処理装置を用いた農産物中の 残留農薬一斉分析法の妥当性評価. 高知衛研報. 57, 47-64, 2011 平成22年度から24年度にかけて、 県内に流通する食 品の安全対策を目的として残留農薬分析を実施した農 産物198検体のうち、 延べ56検体から24種類の農薬が 検出された。 そのほとんどの農産物が食品衛生法の残留基準値を 下回っていたが、 平成23年度に検査を実施したほうれ んそう1検体からは、 一律基準値のおよそ700倍にあ たるEPNが検出され、 また、 平成24年度には輸入冷凍 枝豆から一律基準値と同等のジフェノコナゾールが検 出された。 残留基準値を超過する農薬が検出された場合には、 当該農産物が流通しないよう、 販売や生産を停止させ るとともに、 原因究明調査や生産者への指導が必要に なる。 そのためにも、 今回の事例のように食品担当部 局と農業担当部局の連携により迅速な対応を行うこと が重要である。 今後も食品安全対策検査の一環として、 野菜以外の