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脳出血や炎症性大腸炎を 誘因・増悪する虫歯菌の検出方法

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脳出血や炎症性大腸炎を 誘因・増悪する虫歯菌の検出方法
Hamamatsu University
School of Medicine
脳出血や炎症性大腸炎を
誘因・増悪する虫歯菌の検出方法
※大阪大学大学院歯学研究科との共同研究の成果です。
国立大学法人浜松医科大学
医学部薬理学講座
教授
梅村 和夫
1
研究の背景
Hamamatsu University School of Medicine
●口腔内細菌は3種類
(1)非病原性菌
●う蝕原因菌(虫歯菌)による循環器疾患
感染性心内膜炎 (Infective Endocarditis)
(2)う蝕原因菌(虫歯菌)
弁膜や心内膜、大血管に細菌集簇を含む疣贅(ゆ
うぜい)を形成し、菌血症、血管塞栓、心障害など
多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患 →
10〜50 症例/100 万人/年間
(3)歯周病菌
●感染性心内膜炎に対する調査
1. 分離菌種(697 株)/871施設
→ グラム陽性菌(93.1%)
口腔レンサ球菌 (虫歯菌)(38.6%)
Staphyrococcus aureus(20.8%)
2. 感染性心内膜炎166症例中11例において
頭蓋内出血を起こしたという報告がある
+
口腔レンサ球菌
基礎となる心疾患を有する患者
に対して菌血症を誘発する処置
を行うと・・・
Pruitt AA et al. Medicine 1978:57:329
Ben Ismail M et al. Br Heart J 1987:58:72
3.聖隷浜松病院脳神経外科の研究より、脳出血患者
において、高病原性う蝕原因菌(虫歯菌) の保有
率が高いことが確認された。
心不全/菌血症/塞栓症
重篤な心疾患が誘因される
虫歯菌が心内膜炎以外の全身疾患にも関与する可能性あり
2
むし歯菌による脳出血への影響
Hamamatsu University School of Medicine
●マウス脳出血モデル
コラーゲン結合蛋白質を有する虫歯菌が脳出血を増悪
●脳出血のメカニズム
●脳卒中患者を対象とした臨床試験
男:女
年齢
平均 ± SD
(最小-最大)
健常者
(N=51)
21:30
64.1 ± 8.8
(36-76)
30/51
(58.8%)
4/30
(13.3%)
脳出血
(N=54)
33:21
69.2 ± 11.8
(30-97)
30/54
(55.6%)
12/30
(40.0%)
脳梗塞
心原性
(N=48)
29:19
75.8 ± 10.0
(55-98)
22/48
(45.8%)
(50.0%)
脳梗塞
その他
(N=151)
86:65
72.3 ± 10.3
(46-96)
90/151
(59.6%)
28/90
(31.1%)
CBP(+)率
p値
S.mutans
検出率 (+人数/Sm保菌者) (vs健常)
11/22
―
0.0233
0.0057
NS
Fisherの直接確率計算法
脳出血及び心原性脳梗塞を発症した患者は、菌体
表面にコラーゲン結合蛋白質を有する虫歯菌(cnm
+)の保有率が、4倍高い!
コラーゲン結合蛋白質を有するむし歯菌は、
血小板凝集能を抑制し、さらにマトリックスメ
タロプロテアーゼ9(MMP-9)の発現を亢進す
ることで脳出血を増悪していると考えられる。
3
脳出血増悪のスキーム
Hamamatsu University School of Medicine
血管の内皮細胞傷害
内皮下コラーゲン層の露出
高病原性虫歯菌
傷害血管に
虫歯菌が集積
MMP-9の活性化
血小板凝集抑制
口腔内のキズから血管に侵入
した高病原性虫歯菌は脳に運
ばれ、障害血管内皮のコラーゲ
ンと結合し、血小板凝集が抑制
する。またMMP-9を活性化する。
脳出血が増悪
脳出血の増悪
K. Nakao et al., “The collagen-binding protein of Streptocpccus mutans is involved in haemorrhagic stroke” Nat Commun. 2: 485
4
むし歯菌による消化器疾患の影響
Hamamatsu University School of Medicine
●虫歯菌による大腸炎への影響
マウス腸炎モデルにおいて腸炎の悪化と劇的な死亡率の増大がみられた
マウスの肝細胞にむし歯菌が取り込まれていた
コラーゲン蛋白質を持つむし歯菌によって肝
細胞でインターフェロンγの発現亢進
A. Kojima et al.“Infection of specific strains of Streptococcus mutans, oral bacteria confers a risk of ulcerative colitis” Scientific Reports 2 : 332
5
腸炎増悪・慢性化のスキーム
Hamamatsu University School of Medicine
口腔内の高病原性虫歯菌が血流を通
じて、肝臓の実質細胞内に取り込まれ、
インターフェロンγの産生が亢進する。
炎症が増悪/慢性化
A. Kojima et al.“Infection of specific strains of Streptococcus mutans, oral bacteria confers a risk of ulcerative colitis” Scientific Reports 2 : 332
6
本研究成果のポイント
Hamamatsu University School of Medicine
虫歯菌が全身疾患に対して高い病原性
を有するという報告は、世界初!
●疾患の誘因・増悪のメカニズムを解明済
●唾液からの虫歯菌の検出法を確立済
●虫歯菌に対するモノクロ抗体を取得済
●現在、大規模臨床試験を準備中
7
現時点での検出法の問題点
Hamamatsu University School of Medicine
問題点1
問題点2
問題点3
唾液からの虫歯菌の検出・解析には5~7日を要する。
作業も煩雑であり、大規模な臨床試験を実施するため
には、菌体の含有量が少ない唾液から迅速に検出
できる方法を開発する必要がある。
菌の検出にはPCR装置などが必要であり、研究環境が
整った施設でなければ検査できない。
→ 将来的には、歯科クリニックや検診などで迅速・
簡便に検査できる 「簡易検出キット」が実現
することが望ましい。
8
想定される用途
Hamamatsu University School of Medicine
●疾患リスクの予測
-ハイリスク患者に対する治療方針の検討や経過観察への利用
-ハイリスク者に対する発症予防の指導
虫歯菌の検出受託業
●虫歯菌の検出検査
-歯科クリニックにおける虫歯菌の検出検査、口腔ケアの指導
-妊産婦に対する虫歯菌の検出検査&保健指導
●虫歯菌の減菌・除菌
虫歯菌の簡易検出キット
-虫歯菌を減菌または増殖を抑制する口腔ケア商品
-虫歯菌の除菌・減菌剤の開発
●各種疾患の予防・治療
-各種疾患の予防・治療薬の開発
口腔ケア商品
虫歯菌の除菌剤
疾患の治療・予防薬
9
産業界に期待するもの
Hamamatsu University School of Medicine
迅速検出法の開発
現在、唾液からの虫歯菌の検出・解析には5~7日を要している。その作業も煩雑であり、大規模な臨床試験を
実施するためには、菌体含有量が少ない唾液から迅速に検出できる方法の開発が必要。
微量タンパクの検出技術を有する企業
ELIZAより高感度な抗体・免疫アッセイ技術を有する企業
簡易検出キットの開発
現在の検出法は、一部特殊な設備(PCR装置など)が必要である。
将来的には、歯科クリニックや検診などで簡便に検査できる「簡易検出キット」の実現を目指している。
唾液などからの簡易検査キットの開発技術を有する企業
除菌剤の開発
現在、高病原性虫歯菌を除菌できる薬剤はない。将来的には、ピロリ菌のように薬剤投与による除菌が
可能になることが理想である。
虫歯菌の除菌剤の候補物質を有する企業
10
知的財産権について
Hamamatsu University School of Medicine
●脳出血誘発性(高病原性)口腔細菌の高感度検出法
出願人:国立大学法人浜松医科大学、国立大学法人大阪大学
発明者:梅村和夫、外村和也、仲野和彦、大嶋 隆、野村良太、和田孝一郎
出願番号: 特願2009-88239(出願日:2009年3月31日)
PCT/JP2010/054364(出願日:2010年3月15日)
●高病原性口腔細菌による腸炎誘発原因分子の産生と
その高感度検出法
出願人:国立大学法人浜松医科大学、国立大学法人大阪大学
発明者:梅村和夫、外村和也、仲野和彦、大嶋 隆、野村良太、和田孝一郎
出願番号:特願2010-53079(出願日:2010年3月10日)
PCT/JP2011/055688(出願日:2010年3月10日)
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研究チームについて
Hamamatsu University School of Medicine
本研究成果は、下記の共同研究チームによる成果です。
●浜松医科大学
薬理学講座: 梅村 和夫、外村 和也
●大阪大学 大学院歯学研究科
薬理学
: 和田 孝一郎
小児歯科学: 仲野 和彦、野村 良太、大嶋 隆
●聖隷浜松病院
脳神経外科: 田中篤太郎
脳卒中科 : 大橋寿彦
神経内科 : 細井泰志
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Hamamatsu University
School of Medicine
本研究成果にご興味を持たれた方は
お気軽に下記までご連絡ください。
お問合わせ先:
浜松医科大学 知財活用推進本部
担当:阿部紀里子,小野寺雄一郎
〒431-3192 静岡県浜松市東区半田山1-20-1
Tel : 053-435-2677
Fax: 053-435-2179
URL: http://www.hama-med.ac.jp/
e-mail: [email protected]
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