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2012/7/12
第11, 12, 13回講義資料
I.一成分系の熱力学の復習
目次
1. 熱力学の第一法則と第二法則
I.
一成分系の熱力学の復習
II.
化学ポテンシャルの導入
2. カルノーサイクル
3. エントロピー
4. 自由エネルギー
III. 相平衡
5. 熱力学ポテンシャルとマクスウェルの関係式
IV. 2成分溶液の混合
熱力学の応用にとって最も重要な役割を果たすのが熱力
学ポテンシャルであり、特にギブスの自由エネルギーが最
小になる平衡条件がよく利用される。(温度と圧力を変数
とするので現実の系を取り扱う場合に最も便利)
V. 化学平衡
多成分系の熱力学への拡張と幾つかの基本的な熱力
学の問題への応用
1. 熱力学の第1法則と第2法則
2. カルノーサイクルと熱効率
熱力学の第1法則(エネルギー保存則ー力学系の普遍的原理)
•
最大の熱効率となるのは全
てが可逆過程からなるカル
ノーサイクルの時である。
内部エネルギーの増加(dU)は系が受け取る熱量(d’Q)
と外界から受けた仕事(d’W)の和となる。
dU = d’Q + d’W
  1
熱力学の第2法則(熱の不可逆性をあらわす原理)
• 熱は高温から低温へ流れるがその逆は自発的には起
こらない。
熱の質 : 高温熱源の熱 > 低温熱源の熱
熱を全て仕事に変換することは出来ない(一方、仕事は
全て熱に変換できる)
3. エントロピー
エントロピーの定義:
Q1
T
 1 1
Q2
T2
熱効率を上げるための条件
カルノーサイクル:等温準静過程と
断熱準静過程からなる熱サイクル。
(可逆過程のみからなるサイクル)
1. 高温熱源の温度を高くする
2. 可逆サイクルに近づける(低温
熱源への熱の流出を避ける)
4. 自由エネルギー(系から取り出せる最大仕事)
dS 
d ' Qrev
,
T
S 
d ' Qrev
T
A B

(参考 T→0 で S → 0 :熱力学の第3法則)
断熱系においてエントロピーは常に増大する : S ≥ 0
断熱系における自発的変化の方向はエントロピーが増
大する方向であり、エントロピー S が極大値(=最大値:
凹関数の性質から)をとる位置で平衡が達成される。
定温・定積での自発的変化
ヘルムホルツの自由エネルギー F  U  TS
ΔF  0
F(凸関数)が極小値(=最小値)の時に平衡
F = 準静等温操作の時に系が外部にする仕事(最大仕事)
定温・定圧での自発的変化(一般的な条件下)
ギブスの自由エネルギー G  H  TS  U  TS  PV
ΔG  0 G(凸関数)が極小値(=最小値)の時に平衡
断熱系ではない系:新たな熱力学関数(自由エネルギー)
の導入による平衡条件の決定が可能
G = 等圧過程の場合に系が外部にする(非膨張の)最大仕事
1
2012/7/12
II. 化学ポテンシャルの導入
熱力学ポテンシャルとマクスウェルの関係式
熱力学ポテンシャルとその微分型
 p 
 T 

  

  S V
 V  S
(一成分の閉じた系)
dU = TdS – pdV
(S, V)
dH = TdS + Vdp
(p, S)
dF = – SdT – pdV
(T, V)
dG = – SdT + Vdp
(p, T)
 T
 V 

  
 S  p  p


S
 S 
 p 

 

  V  T   T V
 S 
 V 
   

 T  p
 p  T
状態変数の組に応じて対応する
熱力学ポテンシャルが存在
2. 部分モル量の定義と化学ポテンシャルの導入(2成分系)
3. ギブスの自由エネルギーと化学ポテンシャル
4. 部分モル量の物理的解釈(部分モル体積を用いて)
5. 化学ポテンシャルと開いた系の熱力学ポテンシャル
化学ポテンシャルは熱力学ポテンシャル
の部分モル量として定義される
マクスウェルの関係式
エントロピーは圧力、体積、温度に
並ぶ基本的な状態変数である。
(参考) dS = 0 は断熱可逆変化
1.多成分系の熱力学
1. 物質の相平衡
1. 多成分系の熱力学
2. 部分モル量の定義と化学ポテンシャルの導入(2成分系)
(第11回講義 6/28)
2. 溶液の混合
(第12回講義 7/5)
3. 化学平衡
(第13回講義 7/12)
(温度と圧力を制御)
系全体のギブスの自由エネルギー(G=H-TS)
を最小にする方向へ自発的変化は進む
多成分系では各成分(i)の物質量 ni を明示的に熱力学変数として含
め、今までの1成分系の熱力学の式に新たな熱力学量である化学ポテ
ンシャルを導入し加える必要がある。
示量性熱力学量Y=Y(T, p, n1, n2)
に対して部分モル量Yjm の定義:
 Y
Y jm  
 n
 j

 (示強性熱力学量)

T , p , n i  j
2成分系においてギブスの自由エネルギーの全微分(変数T, p, n1, n2):
 G 
 G 
 G 
 G 



dG  
dT  
dp  
dn1  
dn2

 T  p ,n1 ,n2
 p T ,n1 ,n2
 n1  p ,T ,n2
 n2  p ,T ,n1
 G 


 V ( p, T , n1 , n2 )
 p T ,n1 ,n2
 G 

 1 ( p, T , n1 , n2 ), 
  2 ( p, T , n1 , n2 )
 n2  p ,T ,n1
 G 
  S ( p, T , n1 , n2 ),


 T  p ,n1 ,n2
 G 


 n1  p ,T ,n2
新たに付け
加えた項
dG   SdT  Vdp  1dn1   2 dn2
化学ポテンシャルは部分モルギブス自由エネルギーとして定義
3. ギブスの自由エネルギーと化学ポテンシャル
物質量(ni)の変化を考慮に入れた新たな物理量である化
学ポテンシャル(i)を導入する(T, p, ni が状態変数)。
dG   SdT  Vdp    i dni
i
i 
G
ni (示強性の物理量)
Gの示量性:
G ( p, T , ni )  G ( p, T , ni )
両辺をλで微分
G ( p, T , ni )  
i
λ=1を代入すると
G ( p, T ,  ni )
 ni
 (ni )
G ( p, T , ni )    i ni
i
純物質の場合、化学ポテンシャル( )は単位モル当たりのギブス
の自由エネルギー(G/n)に等しい。ただし、純物質を混合しても、自
由エネルギーはそれらの単純な和とはならない。
4. 部分モル量の物理的解釈(部分モル体積を用いて)
2成分系の場合部分モル体積 V1m, V2m を用いる
と全体の体積 V は
V ( p, T , n1 , n2 )  V1m n1  V2m n2
 V 
V1m  

 n1  p ,T ,n2
 V 
V2m  

 n2  p,T , n1
2種類の溶液を混合すると、最終的な体積は
純粋な溶液の体積の和には等しくならない。
それぞれのモル数(実際にはモル分率)に応じ
た部分モル体積を用いて上記の式で計算
モル分率
x1 
n1
n1  n2
2
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III. 相平衡
5. 化学ポテンシャルと開いた系の熱力学ポテンシャル
dG   SdT  Vdp    i dni
1. 純物質の相転移
i
dF   SdT  pdV    i dni
2. 相平衡の条件
相転移や化学反応など成分
間で物質量の変化がない閉
じた系(dni = 0)では化学ポ
テンシャルの項はゼロとなる
i
dH  TdS  Vdp    i dni
3. 化学ポテンシャルの圧力依存性
4. 化学ポテンシャルの温度依存性
i
5. 転移エンタルピー
dU  TdS  pdV    i dni
6. クラペイロンの式(2相境界線上の勾配)
i
 G 
 F 
 H 
j i
j i
7. 気相との相境界線(クラジウスークラペイロンの式)
 U 




 
 
 
 i  
 ni T , p , n
 ni T ,V , n
 ni  S , p , n
 ni  S ,V , n
ji
j i
化学ポテンシャルは物質量niの微小変化に対する
熱力学ポテンシャルの変化の割合を表している
2. 相平衡の条件
1. 純物質の相転移
純物質の相転移
気体
液体
固体
(液体や固体では複数の相もあり得る)
U(vap) > U(liq) > U(sol)
(液固平衡で固体が安定とは限らない)
相図
相1と相2が互いに平衡にある2相からなる系を考える。この時のギブ
スの自由エネルギーは G=G1+G2 で与えられる。ここで p, T を一定に
保ったまま相1から相2にdnだけ移動したとすると
p1 T1
温度(T)と圧力(p)を制御する一般
的な条件下での相の状態を示す図
(ギブスの自由エネルギーの応用)
n1
dn
G
G
dn1 
dn2
n2
n1
 1 (dn)   2 dn
dG ( p, T , n1 , n2 ) 
p2 T2
n2
 (  2  1 )dn = 0
p1=p2 , T1=T2
物質量の変化に伴うエネルギー変化を考慮
に入れた熱力学ポテンシャルが必要
平衡条件
1=2 : 化学ポテンシャルはその系全体で常に等しい
化学ポテンシャルの導入
3. 化学ポテンシャルの圧力依存性
  
   V m
 p T
4. 化学ポテンシャルの温度依存性
純物質では は単位モル当たりのギブスの自由エネルギーであることから
単位モル当たりの体積
(モル体積)
化学ポテンシャル()ー圧力(p)曲線
Vm=RT/p
凝縮相(液相 or 固相)では Vm
は非常に小さい
凝縮相
気相
高圧になると は小さくなる
Sm(gas)>Sm(liq)>Sm(sol)
気相
それぞれの相での化学ポ
テンシャル曲線が交わる
点で相転移が起こる

固相
液相
転移温度ではSは一意に
決まらない
常温常圧で気体の分子を加
圧だけで液化するのは困難
p
単位モル当たりのエントロピー
(モルエントロピー)
化学ポテンシャル()ー温度(T)曲線
理想気体では

  
m
  S

 T  p
 G 

  S
 T  p
Tm
Tb
3
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5. 転移エンタルピー
6. クラペイロンの式(2相境界線上の勾配)
Htrs :相転移における転移温度でのエンタルピー変化:定圧下の転移熱
標準転移エンタルピー:標準状態でのモル当たりのエンタルピー変化
 i
  S im
T
 i
 Vi m
p
2相境界線
p
相2
圧力bar(=105 Pa)で純粋な形にある状態


d i  i dT  i dp
p
T
相1
発熱過程:< 0
T
吸熱過程 :0
純物質の2相境界線上では常に 1=2 でありこの境界線上を
(p,T) →(p+dp, T+dT)で変化させると d1=d2 となることから
相転移は可逆過程
d i 
(転移温度に無限小の温度変化を加えることで相転移の向きを変えることが可能)
d ' Qrev  trs H
 trs S 

T
Ttrs
 i

dT  i dp
p
T
 S1m dT  V1m dp   S 2m dT  V2m dp
相転移のエントロピー変化を
実測値から計算できる
(例)クラペイロンの式
モル体積
純物質の化学ポテンシャル
(以前は1atm)
相転移における吸熱または発熱量ー等圧過程でのエンタルピー変化
モルエントロピー
 trsG   trs H  T trs S  0
dp  trs H m

dT T trsV m
(クラペイロンの式)
7. 気相との相境界線(クラジウスークラペイロンの式)
(例) 氷の圧力1.00atmでの融点(通常融点)における dT/dp を求めよ。
氷のモル融解エンタルピーは273.15K、1atmで6.01kJ/mol、この時の融
解によるモル体積の変化は-1.63cm3/molである。また圧力1000 atmでの
氷の融点を求めよ。ただしモル融解エンタルピーとモル体積の変化は圧
力に依存しないとする。
2 3
dT T trsV
(273.15( K ))(1.63((m ) / mol ))


dp  trs H m
6010( J / mol )
 7.408 10 8 ( K / Pa )  7.408 1.01325 105 ( Pa / atm )  10 8
 7.506 10 3 ( K / atm )
m
1000 atm では T = -7.51Kより氷の融点は 273.15-7.51 = 265.6 K
0℃より僅かに低い温度では圧力を上
げると氷は溶け出すー水の特異性
測定値 263.7K
(例)クラジウスークラペイロンの式
気体のモル体積 >> 液体や固体のモル体積 となるので
m
P vap H m
dp  vap H


dT
TV gm
RT 2
1 dp d ln p  vap H


p dT
dT
RT 2
(理想気体の場合)
m
(クラジウスークライペイロンの式)
モル蒸発エントロピー(vapHm)が温度に依存しなとして積分すると
 H
1 1
p2
  vap
(  )
p1
R
T2 T1
m
ln
ある点(p1, T1)でのモル蒸発エンタルピーがわかると別の温度(T2)で
の蒸気圧(p2)を見積もることができる。
(例)相図:水の相図
(例) 水の1.00 atm での沸点(通常沸点)を373Kでとした時、360Kで水
が沸騰する時の圧力はいくらか。ここで水の蒸発熱を40.7kJ/molで温度
によらないとする。
ln
 vap H m 1 1
p2

(  )
p1
R
T2 T1
ln
p2 (atm )
1
1
40.7(kJ / mol )


)  0.2877
(
1.00(atm )
8.314( J / Kmol ) 365( K ) 373( K )
気相・液相は一種類しかな
いが固相には様々な種類
が存在する。
固液境界線
非常に急な負の勾配:体
積変化が非常に小さい
蒸気圧曲線
(気液平衡)
蒸気圧が大気圧に等しい
温度が沸点
p2  0.750(atm )
三重点
測定値 0.746 atm
圧力が低くなると水の沸
点は低下する
4
2012/7/12
IV. 2成分溶液の混合
1. 理想気体の混合
本章の流れ
1 理想気体の化学ポテンシャルと混合のギブスの自由エネルギー
3. 非理想溶液の混合
1. 化学ポテンシャル
1. 溶媒の化学ポテンシャルと活量
2. 混合のギブスの自由エネルギー
2. 溶質の化学ポテンシャルと活量
3. 混合エントロピーとエンタルピー
3. 希薄溶液の束一的性質
4. 化学ポテンシャル
2 理想液体の化学ポテンシャルと混合のギブスの自由エネルギー
理想気体との類似性を利用して理想液体を定義する
1. 希薄溶液の蒸気圧降下
2. 沸点上昇
2. 理想溶液の混合
3 非理想溶液の化学ポテンシャルと混合のギブスの自由エネルギー
3. 凝固点降下
1. 理想溶液とラウールの法則
2. ラウールの法則と蒸気圧のモル
活量の導入(理想液体からのずれ)
分率依存性
理想希薄溶液の場合
3. ヘンリーの法則と理想希薄溶液
蒸気圧降下、沸点上昇と凝固点降下
1.1 理想気体の化学ポテンシャル
1.2 理想気体の混合のギブス自由エネルギー
  
RT
  V m 
p
 p T
純物質の化学ポテンシャル: 
Δ   T , p2    T , p1   RT 
p2
p1
(= G/n)
2種類の理想気体を混合する時、混合前のギブスの自由エネルギー Gi は

標準状態の圧力をp0(=1bar)、その時の化学ポテンシャル(標準化学ポ
テンシャル)を0 とすると理想気体の化学ポテンシャルは



G f  n1 10 T   RT ln  p1 / p 0  n2  20 T   RT ln  p2 / p 0 
p=p1+p2 : 定圧変化
2種類の理想気体の混合を考える
混合によるギブスの自由エネルギーmixGは
n1,T,p
n2,T,p
T,p1,p2 (p=p1+p2)
V1(T,p)
V2(T,p)
V(T,p)
1.3 理想気体の混合エントロピーと混合エンタルピー
混合エントロピーmixSは
 Gmix 
S mix  
 nR( x1 ln x1  x 2 ln x 2 )

 T  p ,n1 ,n
Smix>0 :エントロピーは増加
混合エンタルピーmixHは G=H-TS の関係より
エンタルピーは一定
混合する気体分子間に相互作用はない
混合による体積変化mixVは G が p に依存しないことから
Vmix  0

混合後のギブスの自由エネルギー Gf はそれぞれの分圧を p1, p2 とすると
 T , p    0 T   RT ln  p / p 0 
H mix  0

Gi  n1 10 T   RT ln p / p 0  n2  20 T   RT ln p / p 0
p 
dp
 RT ln 2 
p
 p1 
体積変化はない
理想気体の混合は純粋にエントロピーの変化のみにより
達成される過程(エネルギー変化は無し)
p 
p 
Gmix  n1RT ln 1   n2 RT ln 2   nRT ( x1 ln x1  x 2 ln x 2 )
 p
 p
n=n1+n2 xi=ni/n (モル分率)
1.4 理想気体の混合の化学ポテンシャル
混合後のギブスの自由エネルギーGfは
G f  Gi  Gmix 
n1 10 (T )  RT ln( p / p 0 )  n1 10 (T )  RT ln( p / p 0 )  RT n1 ln x1  n2 ln x 2 




とあらわされることから、化学ポテンシャルは
 G f 

 n1 T , p ,n2
1  
   ln x 
  ln x 2  
1
 
  n2 
 10 (T )  RT ln( p / p 0 )  RT ln x1  RT  n1 
  n1  n2
 n1  n2 
0
0
 1 (T )  RT ln( p / p )  RT ln x1
星印(* asterisk)は純物質の量を示す記号
したがって各成分の化学ポテンシャルは
 i   i* (T , p)  RT ln x i
と書き下すことができる。ここで
 i* (T , p)   i0 (T )  RT ln( p / p 0 )
i* は純粋な気体(i)の化学ポテンシャルである。
5
2012/7/12
2. 理想溶液(混合の理想気体と同じ式が使える溶液)
一定の温度と圧力(T, p)で成分(1,2)からなる理想溶液が、その気相と平衡にあり、気相
では各成分が理想気体としてふるまうとする。平衡条件は各成分の化学ポテンシャルが
気相と液相で等しいことである(i(g)=i(l))。
理想混合溶液では化学ポテンシャルは
 i   i* (T , p)  RT ln x i
で表される。ただしi*は純物質のときの化学ポテンシャル
この時の混合のギブスの自由エネルギー、エントロピー、エンタ
ルピー、体積変化はそれぞれ
Gmix  nRT ( x1 ln x1  x 2 ln x 2 )
S mix   nR( x1 ln x1  x2 ln x 2 )
H mix  0
理想溶液とラウール(Raoult)の法則
i( g )  i0 (T )  RT ln  pi / p 0 
(理想気体)
i(l )  i*(l ) (T , p )  RT ln xi( l )
(理想溶液)
1(g), 2(g)
p1, p2 (p1+p2=p)
i0 (T )  RT ln  pi / p 0   i*(l ) (T , p )  RT ln xi(l )
1(l), 2(l)
ここで純粋な1成分の時の液体と気体の平衡を考えると
Vmix  0
i*(l ) (T , p )  i*( g ) (T , p )  i0 (T )  RT ln( pi* / p 0 )
(理想気体)
となる。
(気相で理想気体を仮定)
pi  p x
*
i
(l )
i
溶液のある成分(i)の蒸気圧と純粋な液体(i)の蒸気圧
の比は溶液中のモル分率に比例する(ラウールの法則)
ラウール(Raoult)の法則
(理想溶液の定義の1つ)
2.2 ラウールの法則と蒸気圧のモル分率依存性
ベンゼン・メチルベン
ゼンの混合系
2.3 ヘンリーの法則と理想希薄溶液
希薄溶液の場合(x1→1, x2 → 0: 成分1ー溶媒 成分2ー溶質)
溶質の蒸気圧はモル分率に比例するがその傾きはラウール
(p2 = k2x2)
の法則とは異なる。
よく似た液体の混合
の場合ラウールの
法則が良く成り立つ
(理想溶液)
ヘンリー(Henry)の法則
溶質がヘンリーの法則に従
い、溶媒がラウールの法則
に従う混合溶液
CS2・アセトン混合系
pi  p x
*
i
理想希薄溶液
(l )
i
ラウールの法則から
大きくずれている
(非理想溶液)
ラウールの法則が成り立つ場
合の2成分系での蒸気圧曲線
とモル分率の関係
3.1 非理想溶液の溶媒の化学ポテンシャルと活量
3.2 溶質の化学ポテンシャルと活量
(a) 理想希薄溶液 : ヘンリーの法則 p2=Kx2が成立
実在溶液の溶媒の化学ポテンシャル
1  1* (T , p)  RT ln a i
CS2と(CH3O)2CH2の混合溶液におけ
る蒸気圧曲線
理想希薄溶液では溶媒は純粋な液体
とほぼ同じ状態であるのに対して、溶
質は全く異なる環境下にあり、ラウー
ルの法則には従わない。
ai:活量(理想溶液では ai=xi )
活量:理想溶液からのずれを表す量(純物質では常に1)
p1*,
純物質(x1=1)と混合溶液(x1)での蒸気圧を
p1 とすると、これらが理想気体
の式を満足するとすれば、気液平衡の条件から液体の化学ポテンシャルは気
体の化学ポテンシャルに等しいので(p0=1barとして省略)
1*  10 (T )  RT ln p1*
純物質
1  10 (T )  RT ln p1
混合溶液
 2   2*  RT ln p2 / p2*   2*  RT ln K / p2*  RT ln x2
 20   2*  RT ln K / p2*
とおくと(標準化学ポテンシャルの変更)
 2   20  RT ln x2
理想希薄溶液の溶質の化学ポテンシャル
(b) 実在溶液 : モル分率 x2 を活量 a2 に置き換える
 2   20  RT ln a2
この両式の差をから
1  1*  RT ln p1 / p1*
a1=p1/p1*
活量は実験的に簡単に決定できる
理想溶液におけるモル分率が実在溶液の活量に相当する(実効モル分率)
a2=p2/K
活量は実験的に決定できる量
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希薄溶液の束一的性質
3.3.1 希薄溶液の蒸気圧降下
束一的性質:蒸気圧の降下、沸点上昇、凝固点降下、浸透圧など溶質
数のみに依存し、溶質の種類に依存しない性質のこと。
理想希薄溶液の蒸気圧降下(p)
溶媒1に不揮発性溶質2を少量加えた時
の蒸気圧降下はラウールの法則より
溶質の存在のために化学ポテンシャルが減少することに起因する
溶質が蒸気にも固体中にも現れない場合、気体
と固体の化学ポテンシャルは変化しないが、液体
の化学ポテンシャルを低下(安定化)
p1  p1* x1( l )
p  p1*  p1  (1  x 2 ) p1*  x1 p1*
純溶液と希薄溶液の
状態を表すp-T相図
溶質の種類によらずそのモル分率のみに依存する
沸点上昇、凝固点降下
(参考)一般の溶液の場合、x1→ a1で活量の実験的決定に用いられる
(今後の議論では理想希薄溶液を用いる)
3.3.2 理想希薄溶液の沸点上昇
3.3.3 理想希薄溶液の凝固点降下
沸点上昇:不揮発性溶質を微量付加したときの理想希薄溶液の沸点上昇
凝固点降下:析出する固相が純溶媒からなる場合の凝固点降下
溶液中の溶媒の化学ポテンシャル1(l)は純溶媒の蒸気の1*(g)に等しい
溶液中の溶媒の化学ポテンシャル1(l)は純溶媒の固相の1*(s)に等しい
1*( l ) (T , p)  RT ln x1  1*( g ) (T , p)
G m ( g )  G1m ( l )
ln x1  1
RT
ギブス・ヘルムホルツの式より
  ln x1

 T

H
  
p
H
RT 2
m( g)
1
m(l )
1
 G 
H
 G 
   2
H  G T

T  T  p
T
 T  p
m
 vap H
m

 vap H :モル蒸発熱
RT 2
ここで x2+x1=1, x2~0 x1~1 であることから
x2
x 2   x '2 
0
Tb

Tb*
 vap H m
RT 2
1*( l ) (T , p)  RT ln x1  1*( s ) (T , p)
純物質では化学ポテンシャルは単位モ
ル当たりのギブスの自由エネルギー
ln x1  ln1  x 2    x 2
m
 Hm  1
1   H Tb
    vap
  vap
R  Tb Tb* 
R
Tb2
  ln x1

 T
m

H m (s )  H1m ( l )  fus H
   1

RT 2
RT 2
p
 fus H m :モル融解熱
ここでギブス・ヘルムホルツの式を再び使った。さらに積分を行って
x2
Tm
x 2   x '2   
0
Tm*
 fus H m
RT 2

 fus H m  1
 H m Tm
1 

   fus

R  Tm Tm* 
R
Tm2
(Tm~T*m)
凝固点降下(-Tm=Tm*-Tm)は溶質の種類によらずモル分率に比例する
(Tb~T*b)
沸点上昇(Tb=Tb-Tb*)は溶質の種類によらずモル分率に比例する
(参考)質量モル濃度を用いた沸点上昇と凝固点降下
質量モル濃度 m2 溶媒1kg当たりの溶質のモル数
溶媒のモル質量をM1 (g/mol)とすると溶質のモル分率x2 は
x2 
n2
m2
m M

 2 1
n1  n1 1000  m
1000
2
M1
したがって沸点上昇および凝固点降下は溶質の質量モル濃度
m2を使ってそれぞれ次のように表すことができる
Tb 
RTb2 M1
m 2  K bp m 2
 vap H m 1000
Kbp: 沸点上昇定数
 Tm 
RTm2 M1
m 2  K fp m 2
 fus H m 1000
Kfp: 凝固点降下定数
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V. 化学反応と化学平衡
概論:化学反応と化学平衡
(反応物)
1. 化学反応における熱力学量
1. 標準反応エンタルピー
1. 反応進行度と化学平衡
2. ヘスの法則
2. 反応系でのギブスの自由エネル
3. 標準生成エンタルピー
ギー変化
 A
i
i
i
  j B j
j
または 0   i A i (i は反応物が負、生成物が正の値)
i
(等温等圧変化では)
化学平衡は全ギブス自由エネルギー(G)が最小となる場所で達成される
4. 反応エンタルピーの温度依存
3. 化学平衡の条件
5. 標準エントロピーと標準反応エ
4. 平衡定数と濃度平衡定数
G = H-TS
5. 平衡に対する外部条件の影響
ントロピー
6. 平衡定数の温度変化
6. 標準反応ギブス自由エネルギー
(生成物)
aA+bB+cC+···· → a’A’+b’B’+c’C’+····
化学反応:
2. 化学平衡
エネルギーの安定化(エンタルピー変化)とエ
ントロピーの増加の両者のバランスで決定
熱力学では化学変化の方向についての知見は得られるが反応の速度
に関する情報は得られない(→化学反応速度論での課題)
1.1 標準反応エンタルピー
1.2 ヘス(Hess)の法則
標準反応エンタルピー(標準反応熱) rH0
指定された温度の標準状態(p0=1bar)で純粋な生成物と反応物
のエンタルピーの差(H生成物-H反応物)ー定圧変化での反応熱
rH0 < 0:発熱反応
ある反応が複数の反応へ分割できれば全体の反応エンタルピーは
個々の反応の反応エンタルピーの和で表される(ヘスの法則)
1
C(s)  O 2 (g)  CO(g)  r H 0  110.5 (kJ/mol)
2
1
0
+) CO(g)  O 2 (g)  CO 2 (g)  r H  283.0 (kJ/mol)
2
(例)
rH0 > 0:吸熱反応
(例) 25℃(298.15K)でのCH4(g)分子の燃焼反応では
CH 4 (g)  2O 2 (g)  CO 2 (g)  2H 2 O(l)  r H 0  890.4 (kJ/mol)
(代数方程式のように計算可能)
エンタルピー
C(s)  O 2 (g)  CO 2 (g)
CH 4 (g)  2O 2 (g)
C(s)  O 2 (g)
 110.5(kJ/mol)
 r H 0  890.4 (kJ/mol)
CO 2 (g)  2H 2 O(l)
 r H 0  110.5  283.0  393.5(kJ/mol)
1
CO 2 (g)  O 2 (g)
2
 393.5(kJ/mol)
 283.0(kJ/mol)
CO 2 (g)
1.3 標準生成エンタルピー
(例)標準反応エンタルピーの計算
標準生成エンタルピー(標準生成熱) f
H0
分子1モルを、分子を構成する元素の単体から生成させる場合に必要
な反応熱のこと。ただし全ての反応物と生成物は標準状態にある。
(例) 25℃(298.15K)でのH2O(l)分子の fH0 は
1
H 2 (g)  O 2 (g)  H 2 O(l)  f H m 0  285.83 (kJ/mol)
2
(ヘスの法則)
任意の標準反応エンタルピー(rH0)は
r H 0 
となる。
 
j 生成物
j
f
  
H 0j 
i  反応物
i
f
H i0

エンタルピー(H)
元素単体
任意の反応は元素単体への分解と
元素単体からの生成物の組み立ての
2段階に分けることができる。
化合物
fH0(kJ/mol)
CO2 (g)
-393.51
H2O (l)
-285.83
C2H2(g)
226.73
標準生成エンタルピーの表
任意の反応の標準反応エンタルピー
反応 2C 2 H 2 (g)  5O 2 (g)  4CO 2 (g)  2H 2 O(l) において標準反応エンタルピーは
 r H 0  4  f H 0 CO 2 (g)  2  f H 0 H 2 O(l)
 2  f H 0 C2 H 2 (g)  5  f H 0 O 2 (g)
反応物
rH0
生成物
 4  393.51  2  285.83  2 226.73  5 0 
 2599.16(kJ/mol)
と計算できる。
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1.4 反応エンタルピーの温度依存性
H  H (T2 )  H (T1 )   C p dT
T2
1.5 標準エントロピーと標準反応エントロピー
の関係より
標準エントロピー(S0): 標準状態での純物質のエントロピー(S(T=0K)=0)
T1
 r H 0 (T2 )   r H 0 (T1 )    r C 0p dT
T2
(キルヒホッフの法則)
T1
ここでCp0はそれぞれの物質の標準状態での定圧モル熱容量で
 rC 
0
p
 C
j 生成物
j
0
p, j

 C
i  反応物
i
物質が Tf で融解し Tb で沸騰すると、沸点以上の温度での標準エントロピーは
S 0 (T )  S 0 (0K )  
Tf
C 0p ( s )
0
0
p ,i
Cp0は標準状態で生成物と反応物の定圧モル熱容量に、化学方程式に
現れる量論数(i)の重みをかけたものの差に対応する。
1
0
(例)25℃ で H 2 (g)  O 2 (g)  H 2 O(g) Δ f H  - 241.82 (kJ/mol) を考える
2
T
dT 
 fus H 0
Tf
Tb
C 0p (l )
Tf
T

dT 
 vap H 0
T
C 0p ( g )
Tb
T

Tb
dT
標準反応エントロピー(rS0)
標準状態で純粋な反応物と生成物のモルエンタルピーの差(S生成物-S反応物)
反応
 A
i
i
  j B j
i
r S 0 
j

j 生成物
j
S 0j 
 S
i  反応物
i
0
i
100℃でのH2O(g)の標準生成反応エンタルピーを求めよ。ここで H2O(g), H2(g),
O2(g) の定圧モル熱容量はそれぞれ33.58, 28.84, 29.37 (J/Kmol) である。
(解)
 r C op  33.58  28.84  (1 2)29.37   9.945 (J/Kmol)

 f H (373.15K )  241.82  (75K )   9.945  10
0
3
  242.57 (kJ/Kmol)
1.6 標準反応ギブス自由エネルギー
反応のギブス自由エネル
ギーも実験的に決定可能
標準反応エンタルピー(rH0)も標準反応エン
トロピー(rS0)も実験的に決定できる物理量
2.1 反応進行度と化学平衡
それぞれの温度 T で標準反応ギブス自由エネルギー(rG0)は標準反
応エンタルピー(rH0)および標準反応エントロピー(rS0)を用いると
rG0 = rH0 ー TrS0
(反応物)
(生成物)
化学反応: aA+bB+cC+···· → a’A’+b’B’+c’C’+····
各成分モル数 nA, nB,····の変化 dnA, dnB ····は反応進行度  (mol)を用いて
dn
dn
dn
dn
 A   B    A '  B '    d
a
b
a'
b'
標準生成ギブス自由エネルギー fG0
標準状態の分子1モルを、標準状態にある分子を構成する元素の単
体から生成させる場合に必要なギブスの自由エネルギーのこと。
化学平衡に達した際、各成分の濃度[A], [B], ···· ,[A’], [B’], ···· の間には
[ A' ]a ' [B' ]b ' 
 Kc
[ A]a [ B]b 
Kcは平衡定数(各成分の濃度に依存しない)
(濃度平衡定数)
標準生成エンタルピーと標準エントロピーから計算できる
一般化
反応
 A
i
i
  j B j
i
 rG 0 
j

j 生成物
j
 f G 0j 
  G
i
i  反応物
f
一般の化学反応: 0   i A i
0
i
i
2.2 反応系でのギブスの自由エネルギー変化
Δ r G 0   RT ln K
i
Δ r G  Δ r G  RT ln Q

Δ r G   i  io (T ) Q   pi / p 0
i

K   pi / p 0

i
平衡定数 K は温度のみに依存する関数である。(熱力学的平衡定数)
 i T , p    i0 T   RT ln  pi / p 0 
0
K  exp Δ r G 0 RT 
i
rG:反応ギブス自由エネルギー
全ての反応物・生成物が理想気体の場合
0
i
平衡の条件 dG = 0 より、この時の Q を平衡定数 K (無次元)とすれば
dG    i dni    i i d
 G 
Δ r G  
    i i
i
  T , p
K c   [ A i ] i
 d
2.3 化学平衡の条件
定温定圧で反応系のギブスの自由エネルギーの微小変化 dG は
i
i は反応物が負、生成物が正の値とする
i
dni

i
反応の進行に伴い反応物と生成物の組成が変化し、
それぞれの成分の化学ポテンシャルも変化する。
i
rG0:標準反応ギブス自由エネルギー(生成物と反応物
の標準モルギブスエネルギーの差)
全系のギブスの自由エネルギー(G)も変化
G    i ni
i
(参)実在溶液(気体)の場合はQは活量(またはフガシティ)の関数となる
 i   io (T )  RT ln ai
Q   a i  i (無次元量)

Gが最小値をとる時に平衡
i
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2.4 平衡定数と濃度平衡定数
(例) 平衡定数の計算
理想気体において各成分の濃度 ci は分圧 pi を用いて
アンモニアガス(NH3)の298Kでの標準生成ギブス自由エネルギーは-16.5kJ/mol
である。この時、次の反応
pi = (ni/V)RT = ciRT
で表される。したがって平衡定数 K と濃度平衡定数 Kc の間には
K
 p / p0  i  c RT / p0  i  RT / p 0 i  i c  i

i

i


i
i

i
i
i
K  K C RT / p i
0
の関係がある。ここでKp は温度のみに依存する関数なので Kc も温度の
みの関数となる。ここで c0=p0/RT とすると
i
c 
K    0i 
i c 
N2(g) + 3H2(g) ⇆2NH3(g)
の平衡定数を計算せよ。
(解答) この反応の標準反応ギブス自由エネルギー(rG0)は
 rG 0  2  f G 0 NH 3 (g)   f G 0 N 2 (g)  3  f G 0 H 2 (g)
 2  16.5  0   3 0   33.0 (kJ/mol)
したがって、
ln K  
 33.0  103 (J/mol)
8.3145 (J/Kmol)  298 (K)
K  6.09  105
2.5 平衡に対する外部条件の影響
ル・シャトリエ(Le Chatelier)の原理
平衡にある系の状態量の1つを変化させると、その変化に
よる影響をなるべく小さくする方向に平衡が移動する
2.6 平衡定数の温度変化
ギブス・ヘルムホルツの式
平衡定数の式 ln K  
d ln K  r H 0

dT
RT 2

T
Δ rG 0
RT
 Δ rG 0 
 H0

   r 2
より
T
T

p
は次の関係を満たす。
(ファント・ホッフの式)
(例1) 圧力が増加する時は系全体の体積が減少する方向へ平衡がずれる。
(例2) 温度が上昇すると吸熱方向に平衡がずれる
例) N2(g) + 3H2(g) ⇆2NH3(g) rH0(298K)=ー92.22 kJ/mol
温度が上昇すると平衡は左にずれ、圧力が上昇する
と平衡は右側にずれる。
両辺を積分して
 K (T2 )  T2  r H 0
 H0  1 1 
  
ln
dT   r
2
  
R  T2 T1 
 K (T1 )  T1 RT
ここで、この温度範囲ではrH0が温度に依存せず一定と仮定した。
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