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Title 公的住宅ローンと民間住宅ローン Author 瀬古, 美喜 Publisher 慶應

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Title 公的住宅ローンと民間住宅ローン Author 瀬古, 美喜 Publisher 慶應
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公的住宅ローンと民間住宅ローン
瀬古, 美喜
慶應義塾経済学会
三田学会雑誌 (Keio journal of economics). Vol.85, No.3 (1992. 10) ,p.382(30)- 392(40)
Journal Article
http://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/detail.php?koara_id=AN00234610-19921001
-0030
「三田学会雑誌」85 巻 3 号 (1992年 10月)
公 的 住 宅 ロ 一 ンと民間住宅ロ一 ン
瀬 古 美 喜
1• 序
論
本論文では, 日本の住宅関係の個票を用いて, 以下の問題を検討する。
どんな家計が, 公的住宅ロ 一 ン を 利 用 し た か ?
公 的 住 宅 ロ ー ン を 利 用 し た 家 計 と ,民 間 住 宅 ロ ー ン を 利 用 し た 家 計 の 属 性 に は , 違いがみられる
か ?
これらの 側 面 を 知 る こ と は , 公 平 性 の 観 点 か ら も 効 率 性 の 観 点 か ら も 重 要 で あ る 。 公平性に関し
て は , し ば し ば 公 的 住 宅 ロ ー ン は 逆 進 的 で あ る と い う 批 判 が な さ れ て い る 。効 率 性 に 関 し て は , 公
的住宅ロ一ンには幾つかの制度的な制約がありそれが歪みを生じているという指摘がある(
例えば,
床面積をベースとした住宅金融公庫の段階金利制度に伴う非効率性に関しては, Seko (January, 1993) を参照
のこと)。
本 稿 は , 以 上 の よ う な 問 題 を 探 る 為 の 予 備 的 分 析 と し て , まず公的住宅ローン と 民 間 住 宅 ロ ー ン
の利用者にはどのような差があるかを追求することを目的としている。
以下, ま ず 2 節で日本の住宅金融市場の特徴を概観する。次 に 3 節で,公的住宅ローンと民間住
宅ローンの両方を利用した家計,公的住宅ローンのみを利用した家計,民間住宅ローンのみを利用
した家計, 自 己 資 金 だ け を 利 用 し た 家 計 の 属 性 を , 比 較 検 討 す る 。 最 後 に 4 節 で ,他 の 資 金源を併
せ て 利 用 し て い る 家 計 に 関 し て , 公 的 住 宅 ロ ー ン を 利 用 し た 家 計 ,住 宅 金 融 公 庫 資 金 を 利 用 し た 家
計 ,民 間 住 宅 ロ ー ン を 利 用 し た 家 計 の 属 性 を 比 較 検 討 す る 。
2.
日本の住宅金融市場の特徴
日 本 の 住 宅 の 主 要 な 問 題 は 資 金 調 達 力 に あ る 。 社 会 的 • 経 済 的 要 因 の た め に , 日本の住宅価格は
非 常 に 高 く な っ て い る 。 そ の う え 日 本 の 金 融 機 関 は ,他 の 国 々 に お け る ほ ど 寛 容 な 条 件 で は 貸 付 け
注 (1 ) 本節の内容は, Seko [ 4 ] によっている0
3 0 { 3 8 2 ) ------
てくれないので持家住宅を購入したがっている人に著しい流動性制約を課している。
公的部門の貸付は日本の住宅金融制度の中で重要な役割を演じている。政府が管理する日本住宅
金融公庫(
J H L C ) は 世 界 で 最 大 の 単 一 の 住 宅 抵 当 証 書 の 貸 手 で あ り , 日本 の住 宅ローンの約25〜 35
% を 占 め て い る 。他 の 先 進 工 業 諸 国 と は 異 な り , 日 本 は ア メ リ 力 の 貯 蓄 貸 付 組 合 (the Savings and
Loan A sso c ia tio n s)や , イ ギ リ ス の 建 築 組 合 (Building S o c ie tie s )の よ う な , 有 力 な 民 間 部 門 の 専 門
住宅金融機関を持っていない。
そ の 他 の 大 き な 貸 し 手 に は 商 業 銀 行 と ,商 業 銀 行 の 子 会 社 で あ る 住 宅 金 融 会 社 と が あ る 。 これら
の 銀 行 は 1961年 か ら 住 宅 融 資 を 始 め た 。 双 方 の 比 率 は 1980年 代 に 不 動 産 ブ ー ム の 結 果 と し て 著 し い
増加を示してきた。
さらに, 日 本 に は 他 に も 幾 つ か の 公 的 住 宅 金 融 機 関 が 存 在 す る が , 住宅金 融 機 関 に お け る そ れ ら
の役割は公庫に比べれば小さなものである。
一般 的 な 日 本 の 住 宅 金 融 の 際 立 っ た 特 徴 は 中 古 住 宅 に 関 す る 抵 当 証 書 市 場 が 事 実 上 存 在 し な い こ
とである。 ア メ リ カ と は 異 な り ,住 宅 抵 当 証 書 は 商 品 と し て 売 り 買 い さ れ な い の で あ る 。 住宅抵当
証書のこうした取り引きの欠落は,資本の住宅金融市場への流れの障害となっている。
日 本 の 住 宅 金 融 制 度 は 民 間 及 び 公 的 部 門 の 貸 付 の 独 特 の 組 み 合 わ せ に よ り 成 っ て い る 。 日本の住
宅 金 融 市 場 は ,公 的 ロ 一 ン へ の 依 存 の 減 少 と 民 間 ロ ー ン の 急 激 な 増 加 に よ っ て 特 徴 づ け ら れ る 1965
年 よ り , 大 い に 拡 大 し た 。 1975年 以 降 は 民 間 ロ ー ン の 成 長 率 の 減 少 の た め に 民 間 ロ ー ン の シ ェ ア は
減 少 し た が ,近 年 で は 趨 勢 は 投 機 家 及 び 一 般 の 住 宅 購 入 者 の 双 方 に よ る ロ 一 ン需要の殺到に刺激さ
れた土地価格の急上昇につれて大きく上向いてきている。
住宅ロー ン金利は,煽 ら れ た 不 動 産 市 場 に お い て 不 動 産 投 機 を 押 さ え る こ と を 目 的 と さ れ た 政 策
と同調して 1989年 か ら 増 加 し 始 め て き た も の の ,政 府 の 政 策 に よ っ て ,慎 重 に 低 く 保 た れ て き た 。
日 本 の 金 融 制 度 で は 基 準 金 利 は 日 本 銀 行 を 通 じ て 政 府 に よ っ て 設 定 さ れ る 。厳 密 な 基 準 金 利 と 預 金
金 利 の 上 限 は 他 の 通 貨 当 局 の 間 で の 交 渉 と 討 議 と に よ っ て 決 定 さ れ る 。 いったん基準金利が決定さ
れ る と ,す べ て の 他 の 利 率 は そ の 水 準 を 市 場 に お い て 見 出 だ す こ と に な る 。 公 庫 金 利 は 高 く な く ,
市場金利を下回っている。
近 年 ま で ,民 間 住 宅 ロ ー ン は 広 く 固 定 金 利 原 則 で 供 給 さ れ て き た 。 変 動 金 利 制 度 が 1983年に導入
され て以来, 変 動 金 利 抵 当 証 書 の 比 率 に は 急 激 な 上 昇 が み ら れ る が , 今ではおよそ民 間 住 宅 ロ 一 ン
の三分のニを成している。変動金利の導入は,各銀行が金利規制撤廃に適応しようと競争するかぎ
りでは,金 融 自 由 化 の 過 程 の 一 環 を な す の で あ る 。 し か し 政 府 が 金 利 を 低 く 維 持 す る か ぎ り ,銀行
はほぼリスクなしで固定金利ローンを拡張しうるが,今や金利の増加に対する弱みを減らすように
行動しなければならない。
住宅税制に関しては, 日本はアメリカと同じく持ち家の帰属家賃には所得税が課税されないが,
住 宅 ロ ー ン の 利 子 支 払 い ,減 価 償 却 費 , 固 定 資 産 税 支 払 額 を ア メ リ カ の よ う に 所 得 控 除 す る こ と は
できない 。
—
3 1 (383 )
—
表
1
(資金源)
民間分嫌住宅資金調達先別資金構成比(
単 位 :%)
(年度) 1984
1985
1986
1987
預貯金等
23.0
22.6
22.7
不動産売却
15.0
12.9
19.2
贈 与 • 相続
1.0
2.5
1.8
その他
0.8
0.5
0.9
39.9
38.5
44.5
1988
1989
23.4
18.7
20.4
17.9
16.1
19.7
18.6
23.3
2.3
1.9
2.0
1.1
1.2
0.8
1.7
1.1
42.9
41.5
41.9
44.1
1990
自己資金
計
借入金
親戚等
1.7
1.5
1.1
1.1
0.6
0.9
0.8
住 宅 関 係 政 府 金 融 機 関 37.8
41.7
36.3
46.4
42.7
39.8
勤務先
民間金融機関
その他
計
合 計
9.2
10.2
9.6
40.7
9.2
5.9
6.9
7.0
11.2
8.1
8.3
5.9
5 .5
7.5
8.2
0.3
0.1
0.2
0.2
0.1
0.0
0.1
60.1
61.5
55.5
57.1
58.5
58.1
55.9
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
100.0
出典:「
平成元年度民間住宅建設資金実態調査結果」 (
建設省住宅局)
「
平 成 2 年度民間住宅建設資金実態調査結果」(
建設省住宅局)
表 1 は日本の民間分譲住宅購入者が住宅を購入する際に実際に利用している多様な融資計画の大
要 を 示 し て い る 。 自 己資金の比率は約4 0 % で, そ の う ち の お よ そ 2 0 % は 個 人 貯 蓄 か ら の も の で あ る 。
新 規 購 入 者 が 資 金 を 自 分 の 親 か ら 担 保 な し で 借 り , デ ベ ロ ッ パ ^の 「手 付 金 」 にその資金をあて
が っ た 場 合 に は , そ の 資 金 量 は 依 然 七 し て 「自己資金」 で は な く 「ローン」 と し て 計 上 さ れ る た め ,
低く偏りうるにもかかわらず, で あ る (
H ayashi,Ito and Slemrod, 1988)。 購 入 価 格 の 約 40% は公的
ロ一 ンによって 出 資 さ れ て い る 。 日 本 の 住 宅 金 融 制 度 の 特 異 性 の 一 - 3 は 全 体 の お よ そ 1 0 % という,
相対的に小さI 、
民間貸付の役割にある。 日本の住宅金融制度のいまひとつの相違点は相対的に大き
い 個 人 貯 蓄 の 役 割 で あ る 。す な わ ち 住 宅 購 入 者 は 自 分 達 自 身 の 貯 蓄 か ら お よ そ 購 入 価 格 の 4 分 の 1
をまかなっているのである。
3.
3— 1
デ
ー
タ
の
各資金源のみを利用した家計の分析
特徴
本 節 以 降 で は , 2 節 で 概 観 し た よ う な 特 徴 を 持 っ た 住 宅 金 融 市 場 に お け る ,各ローンを 利 用 し た
家計の特性を探る。
本 稿 で 用 い る デ ー タ は ,建 設 省 の 「昭 和 60年 度 民 間 住 宅 建 設 資 金 実 態 調 査 」 の 民 間分譲住宅購入
者 の 個 票 で あ る 。 この調査は, 昭 和 59年 4 月 か ら 昭 和 60年 3 月 ま で に 分 譲 を 行 っ た 住 宅 団 地 の 中 か
ら調查対 象 団 地 を 選 定 し , 当 該 団 地 の 住 宅 購 入 者 1 ,2 8 1 件 を 対 象 と し た も の で あ る 。 調査範囲は全
国 に わ た る 。住 宅 の 建 て 方 と し て は ,一 戸 建 て ,長 屋 建 て , 共 同 建 て の す べ て を 含 む 。
—
32 {384) —
表2
各資金源のみを利用した家計のデータの特徴
公的ロ一ンと
公的ローンのみ
民間ローンのみ
自己資金のみ
民間ロ 一 ン
所 得 ( 万円)
609.1
(196.3
年齢 ( 歳)
37.4
(7.7
地域ダミー(
=1)
(=0)
持ち家ダミー (=1)
(=0)
)
570.3
(210.4
)
40.9
(10.35 )
)
759.5
(245.7
)
43.720
(8 .78 6)
215
273
40
10
22
11
165
545
167
321
20
30
24
9
30.979
(8.209)
30.129
(8.416)
32.180
(10.358)
自己資金比率(%)
28.2
(15.0
)
43.5
(19.7
)
50.0
(28.7
)
2670.2
(879.5
)
2410.1
(788.7
)
4547.8
(2782.7
)
)
1295.3
(485.6
)
2133.0
(2185.7
ローン金額(
万円)
1857.2
(545.4
公的ローンの割合
0.45
(0.18 )
民間ローンの割合
0.27
(0.15 )
個人業主 ( %)
世帯規模(人)
返済金負担牢 ( %)
データ数
0.56
(0.20 )
0
3. 2
( 1 . 2
5. 1
(1.5
4. 0
(1.5
4. 9
( 2 .2
)
10.0
)
)
0
0
3. 7
488
3888.6
(2058.0
0.50
( 0. 29 )
3. 2
( 1 . 1 )
)
100.0
0
3. 4
( 1 . 1 )
710
32.182
(11.318)
0
3. 4
)
57.152
(10.878)
404
306
総畳数
購入価格(
万円)
581.0
(306.8
3. 0
)
2. 9
( 1 . 4
)
0
)
50
33
注 :括弧内は、標準偏差
返済金負担牢(年収に占める住宅に関する借入金の年間返済額の割合)
1=0 、2=1-9, 3=10-14、4=15-19、5=20-24、6=25-29、7=30-34、8=35-39、9=40-(%)
現 在 の 日 本 の 住 宅 ロ ー ン は , 2 節 で も 概 観 し た よ う に , 公 的 ロ ー ン の ほ う が 金 利 が 低 い 。 したが
って, 合 理 的 な 住 宅 購 入 者 で あ れ ば , ま ず 公 的 ロ ー ン を 利 用 し て ,残りを民間ローンで補うという
行動をとるものと思われる。 そこで本節では,公的ローンのみを利用している家計はどのような属
性 を 持 っ て い る か , 公的ローッと民間ロ一 ン の 両 方 を 利 用 し て い る の は ど の よ う な 家 計 か と い っ た
ことを 分析する 。実 際 に は , デ ー タ の 中 に ,民 間 ロ ー ン の み を 利 用 し て い る 家 計 が 存 在 し て お り ,
そのような家計がなぜ公的ロー ン を 利 用 し な か っ た か を 分 析 す る こ と も 興 味 深 い こ と で あ る 。
表 2 は,各 資 金 源 の み を 利 用 し た 家 計 の デ ー タ の 特 徴 を 示 し た も の で あ る 。
平 均 所 得 ,平 均 購 入 価 格 ,個 人 業 主 の 割 合 が ,民 間 ロ ー ン の み を 利 用 し た 家 計 の 場 合 に も っ と も
高 く な っ て い る 。 これは,個 人 業 主 の 場 合 に は , 比 較 的 年 齢 も 高 く 収 入 が 高 く , 公的 ロ ー ン を 利 用
する必要がない為,あるいは住居と店舗の兼用住宅で公的ローンの広さに関する制約を満たしにく
い 為 と い っ た こ と が 考 え ら れ る 。 後 者 の 考 え 方 は , 公 的 ロ ー ン の み , あるいは公的ローンと民間ロ
— ンの両方 を 借 り て い る 家 計 と 比 較 し て ,民 間 ロ ー ン の み を 利 用 し て い る 家 計 の ほ う が 平 均 総 G 数
33 ( 3 5 5 ) -------
が大きいことによってもある程度裏付けられる。
世 帯 主 の 平 均 年 齢 は , 1 0 0 % 自 己 資 金 の 家 計 の 場 合 に も っ と も 高 い 。 これは, ラ イ フ サ イ ク ル の
後 半 段 階 で , 自 分 の 蓄 積 し た 貯 蓄 や 相 続 贈 与 な ど で ,住 宅 を 購 入 し て い る か ら で あ ろ う 。
平均世帯規模(
すなわち世帯人員数) と 返 済 金 負 担 率 (
年収に占める住宅に関する借入金の年間返済額
の割合) は, 両 方 の ロ ー ン を 利 用 し て い る 家 計 の 場 合 に も っ と も 大 き い 。 これは, こ れ ら の 家 計 が
ライフサイクルの段階でもっとも世帯規模が大きく,住宅関係の借入金の割合も大きいことから,
当然の結果といえよう。
3—2
推 定モ デ ル と 推 定 結 果
一般に, ノ
• 番 目 の 家 計 の / 番 目 の 資 金 源 の 選 択 i F d は,住 宅 サ ー ビ ス (Sプ
) と 住 宅 資 産 (A j)
の需要を決定する要因に依存するものと考えられる。そこで, 以下では,
F i= fC A .j, Sj")
Fn =
S j)
と い う基本 モ デ ル を 考 え る 。 こ こ で 只 は も し i• 番 目 の 選 択 肢 が 選 択 さ れ る な ら ば 1 , そうでない
場 合 に は 0 という値をとるニ項変数である。
また丨• 番 目 の 住 宅 資 金 の 借 り 入 れ 額 も , 同 様 の 要 因 に 依 存 す る も の と 考 え る 。
以 下 の 回 帰 分 析 で は ,次 の よ う な ダ ミ 一 変 数 を 用 い る 。
地 域 ダ ミ ー :埼 玉 県 ,千 葉 県 , 東 京 都 ,神 奈 川 県 な ら ば 1 ,
それ以外では0
持 ち 家 ダ ミ 一 :従 前 の 住 宅 が 持 ち 家 な ら ば 1 ,
それ以外では0
個 人 業 主 ダ ミ 一 :個 人 業 主 な ら ば 1 ,
それ以外では0
表 3 は,各 資 金 源 の み を 利 用 し た 家 計 の 資 金 の 選 択 に 関 す る ニ 項 ロ ジ ッ ト モ デ ル の 推 定 結 果 で あ
( 2)
る。
所 得 が 上 昇 す る に つ れ て , 公 的 ロ ー ン と 民 間 ロ ー ン の 両 方 を 選 択 す る 確 率 と ,民 間ローンのみを
選択する確率は上昇するが,公的ローンのみを選択する確率や,100% 自己資金の確率は減少する。
これは,民 間 ロ ー ン を 借 り る 場 合 に は ,貸 付 規 模 が 年 収 の 3 な い し 4 倍 で あ る こ と と い う 制 約 が あ
るためと思われる 。
世 帯 主 の 年 齢 が 上 昇 す る に つ れ て , 公的ロー ンと民間ロー ン の 両 方 を 選 択 す る 確 率 は 減 少 す る が ,
注 (2 ) 以下,表 3 , 4 , 5 , 6 , 7 の推定モデルにおいて各資金源間の金利差が説明変数に入ってこない
のは, クロスセクションデータを使用しており,すべての家計が同じ金利差に直面していると仮定し
ているためである。
—
34 (386 )
—
表3
各資金間の選択に間するニ項ロジットモデル( 各資金源のみを利用した家計の場合)
公的
独立変数
ローンと民 間 ローン
公的ロ一ンのみ
自己資金
のみ
のみ
0
0
5
0
0.0640
( 3 .4 7 6 )
0.0 6 66
( 4 .0 7 8 )
-0 .0 6 3
(-3 .9 6 5 )
年齢
-0 .0 4 2
( - 4 .9 6 1 )
-0 .0 4 5
( - 5 .2 2 2 )
-0 .0 6 1
(-8.101)
0.031
( 4 .4 2 2 )
(年船)2
0 .2 9 3
( 2 .3 7 2 )
0.496
3.611)
0 .3 5 3
2.663)
-0 .5 5 1
(-4 .4 6 0 )
5
5
0 89
1
0
1
0.0 8 1 3
(4 .5 3 3 )
0
0
9
3
所得
地域ダミ一
民間ロ一 ン
-0 .6 6 2
(-5 .1 5 9 )
個人業主ダミー
0.114
( 3 .1 1 8 )
-0 .0 5 6 5
(-1 .5 2 4 )
0 .2 9 5
( 1 .8 9 3 )
0.151
( 7 .0 2 0 )
- 0.00323
(-1 .8 8 0 )
0.684
( 1 .6 4 8 )
1.111
( 2 .9 2 9 )
1.544
(2 .8 7 1 )
持ち家ダミ一
-0 .0 2 9
(-3 .7 0 4 )
4
2
8
1
9
9
4
9
6
0
7
-
3
7
6
0
8
I I(
3
3
1
2
1
8
6
1
0
3
3
21
7
9
6
9
6
6
7
6
6
8
4
o
3
4
9
9
6
2
3
2 3
1
o
1
1
_
8
5
3
1 2
/ —_ ( 1 2
4
7
3
2
2
0
8
1
8o 1 1 8
/(\
/|\ 2
- 一 8
8
4
89
3
-8 7 2 _6
-8 1 8 .8
9
5
5
2
3
2
3
8
6 3 .0
1
-7 0 7 .9
( 1
28 4 8 7 9
1
-8 3 4 .3
1281
710
571
0 o
-8 3 7 .9
- 7 2 0 .7
-0 .0 2 0
(-2 ,7 2 9 )
0 .719
( 1 .5 9 4 )
1
At convergence
6 9 .0
8
2
Log likelihood
I n itia l
1
o
1
o
8
1 7
7
2
7
5
P e rc e n t
c o r r e c tly
p r e d ic te a
0 .0 1 9
( 2 .5 3 9 )
1 .413
( 4 .2 5 3 )
79
6
1281
710
571
その資金源
その他
4
データ数
1
2 .7 0 4
( 8 .5 9 5 )
4
3
1
定数項
- 1
_
-4 .9 7 9
(-1 2 .8 8 4 )
5 3
自己資金比率
0.379
( 2 .7 0 5 )
6 16
5 12
4
0 0
3
o 1
世带規模
3
8 93
0 3
0 4
総畳数
-0 .4 8 7
(-3 .4 9 4 )
-9 5 3 .6
-9 4 1 .1
-909.1
-9 0 0 .5
- 813.1
-7 8 1 .4
-1 8 1 .6
-
102.6
注 :括弧 内 はt 値
各列の従属変数
1 : その資金源を利用した場合
0 :それ以外の場合
民 間 ロ ー ン の み を 選 択 す る 確 率 , 公 的 ロ ー ン の み を 選 択 す る 確 率 や , 100% 自己資金の確率は増加
す る 。 これは,後 者 の 範 疇 の 家 計 が ラ イ フ サ イ ク ル の 比 較 的 後 半 の 段 階 に あ り ,借 入 金 以 外 の 形 で
購入資金を賄える為であろう0
東 京 圏 で 住 宅 を 購 入 す る 家 計 は ,公 的 ロ ー ン と 民 間 ロ ー ン の 両 方 , な い し は 民 間 ロ ー ン の み を 選
択 す る が , そ れ 以 外 の 地 域 で 購 入 す る 家 計 は 公 的 ロ ー ン の み を 選 択 す る 確 率 が 大 き い 。 これは,東
京圏では住宅の購入価格が高いため,公的ローンだけでは賄えない為であろう。
従前に持ち家に住んでi 、
た 家 計 は 公 的 ロ ー ン の み を 選 択 す る 確 率 が 高 い が , そ う でない家計は民
間 口 一 ン と 公 的 ロ ー ン の 両 方 を 選 択 す る 確 率 が 高 い 。 これは,実 物 資 産 と い う 形 の ス ト ッ ク を 持 っ
て い る 家 計 は ,公 的 ロ ー ン の み で 賄 え る と い う こ と を 意 味 し て い る も の と 考 え ら れ る 。
同 様に, 自 己 資 金 比 率 が 高 い 家 計 は , 公 的 ロ ー ン の み , あ る い は 民 間 ロ ー ン の み を 利 用 し て い る 。
前 者 の 家 計 は , 自 己 資 金 で あ る 程 度 賄 え る 為 ,民 間 ロ ー ン を 借 り 入 れ る 必 要 が な い と 考 え ら れ る 。
後 者 の 家 計 は , 自 己 資 金 で あ る 程 度 賄 え る た め ,逆 に 公 的 ロ ー ン の 制 約 を 嫌 っ て 民 間 ロ ー ン の み を
借り入れているのであろう。 自己資金比率が低い家計は,両方のローンを利用せざるをえないもの
—
3 5 (3 S 7 )—
表4
(従属変数 )
\
独 立 変 数 \
住 宅 ロ ー ン に 対 す る 縣 数 (各資金源のみを利用した家計)
公的ローンと民間ローン
(公的ローンの
(民間ロ一ンの
借り入れ額)
借り入れ額)
公的ローンのみ -
民問口 一 ンのみ
(公的ローンの
(民間コーンの
借り入れ額)
借り入れ額)
所得
0. 2 2 8
(2.571)
1. 416
(13.653)
1.061
(12.146)
3. 423
(3 .767)
年齡
2. 604
(1.224)
-2.869
( - 1. 151)
-7.470
( - 4. 265)
-20.960
( - 0. 988)
地域ダミー
99. 93
(3.213)
118. 37
(3.25 )
109. 27
(3.230)
393. 54
(0.742)
持ち家ダミー
19. 85
(0.56)
- 3 1. 87
(-0.76 )
-35.35
( - 0. 942)
53. 83
(0.132)
世带規模
5. 97
(0.453)
1 3. 15
(0.852)
50. 41
(3.38 )
43. 428
(0.300)
個人業主ダミ
-9 4 . 6 2 1
( - 1. 161)
53. 21
(0.56 )
10. 52
(0.12 )
4007. 6
(6.319)
返済金負担率
50. 51
(4 .931)
85. 89
(7.16 )
151. 0
( 13. 36 )
477. 33
(5.017)
定数項
549. 20
(4 .946)
- 5 6 9 .2
( - 4. 375)
185. 42
(1.770)
-2784.4
( - 2. 404)
データ数
710
—
Adj ust ed
R-squared
0. 612
710
0. 280
488
0. 441
50
0. 6 8 8
注 :括 弧 内 は t 値
と思われる。
広 い 住 宅 を 購 入 す る 家 計 は , 公 的 ロ ー ン と 民 間 ロ ー ン の 両 方 を 選 択 す る 確 率 が 高 い 。 狭い住宅を
購 入 す る 家 計 は 公 的 p — ン の み を 選 択 す る 確 率 が 高 い 。 これは, 公 的 ロ ー ン に 総 床 面 積 に 関 す る 制
約がある(
特に,住宅金融公庫の場合) と い うことと,広 い 住 宅 は 購 入 価 格 も 高 い 為 , 両方から借り
入れをしなければならないということを意味しているのであろう。
個 人 業 主 は ,民間ロ 一 ン の み か ら 借 り る 確 率 が 高 い (
その理由に関しては,3— 1 節ですでに述べた)。
表 4 は,各 資 金 源 の み を 利 用 し た 家 計 の 住 宅 ロ ー ン に 対 す る 需 要 関 数 を 最 小 自 乗 法 で 推 計 し た も
のである。
所 得 が 上 昇 す る に つ れ て ,各 ロ ー ン の 借 り 入 れ 額 は 増 加 し て い る 。 これは,所 得 が 上 昇 す る に つ
れ て ,返 済 能 力 が 増 え る た め 当 然 の 結 果 と い え よ う 。
公 的 ロ ー ン の み を 利 用 し て い る 家 計 は ,年 齢 が 若 い ほ ど ,世 帯 規 模 が 大 き い ほ ど , ローン借り入
れ 額 が 増 加 し て い る 。 これは, ラ イ フ サ イ ク ル の 初 期 の 若 年 段 階 で ,家 族 数 が 増 加 し て い る 時 期 に ,
相 対 的 に 安 い 公 的 ロ ー ン の み を 利 用 し て 住 宅 を 購 入 し て い る こ と を ,意 味 し て い る も の と 思 わ れ る 。
個 人 業 主 は ,民 間 ロ ー ン の み を 借 り 入 れ る 傾 向 が あ る 。 これは, 前 述 し た よ う に ,所 得 が 高 い ,
広さに関する制約を満たしにくいといった理由によるものであろう。
当然 の こ と な が ら ,返 済 金 負 担 率 は 各 ロ ー ン 借 り 入 れ 額 と 正 の 相 関 を 持 っ て い る 。
3 b ( 5 S S ) ------
各資金源を併用した家計の分析
4.
4
—
1
データの特徴
表 5 は,各 資 金 源 を 併 用 し た 家 計 の デ ー タ の 特 徴 を 示 し た も の で あ る 。
民 間 ロ ー ン 併 用 者 の 平 均 所 得 は , 公 的 ロ ー ン の 利 用 者 よ り 高 い 。 これは,民 間 ロ ー ン の 場 合 , 住
宅関係の返済金が年収の 3 な い し 4 倍内という制約があるためであろう。
世 帯 主 の 年 齢 は ,わ ず か で は あ る が ,民 間 ロ ー ン 併 用 者 の ほ う が 低 い 。 これは, 民 間 ローンの場
合 ,借 用 者 が 完 済 時 70歳 以 下 で な け れ ば な ら な い と い う 条 件 が あ る た め で あ ろ う 。
購 入 価 格 ,返 済 金 負 担 率 は ,民 間 ロ ー ン 併 用 者 の ほ う が 高 い 。 これは, 公 的 ロ ー ン に 加 え て 民 間
ローンを借りて , よ り 高 価 な 住 宅 を 購 入 し た 為 で あ ろ う 。
自己資金比率は, 民 間 ロ ー ン 併 用 者 の ほ う が 低 い 。 これは, 当 然 の 結 果 で あ ろ う 。
民間ロ
ー ン
併 用 者 の ほ う が ,総 床 面 積 は 広 い 。 これは, 公 的 ロ ー ン に 前 述 し た よ う に 広 さ 制 限 が
あ る こ と と ,民 間 ロ ー ン 併 用 の 場 合 の ほ う が , 購 入 価 格 が 高 く , より 広 い 住 宅 を 購 入 で き る た め で
表 5
各資金源を併用した家計のデータの特徴
全サンプル
\/
o 1
0 5
6
5
1
3
5
4
9
3
年 齢 ■(成 )
9 0
5 2
9
1
所 得 (万 円 )
-
(
=1)
ダ ミ ー (= 0 )
持 ち 家 (= 1 )
ダ ミ 一 (= 0 )
587.9
(199.9
619.0
(203.2
)
38.837
(9.036)
38. 7
(9.0
37.8
( 7 . 9
)
619
579
597
575
444
316
332
866
319
853
185
575
30.633
(8.301)
30.6
(8.3
31.1
8. 4
)
34.4
(18.6
)
34.0
(18.4
29.6
17.0
)
)
2510.0
(719.0
2793.7
1199.7
)
)
1614.0
(561.5
1875.3
768.7
)
2564.3
(852.3
1628.3
(590.2
0.50
0.15
(0.17
3. 6
1
6
0
1
37 { 3 8 & ) —
1
1
7
—
1172
6
7
4
8
6
1198
4. 7
( 1.6
1
)
5
1
\
)
/
4. 7
(1.6
4
3. 3
( 1.1
( 1 . 1 )
1
3. 3
8
3. 5
0 .2 1 )
7
1
0. 16
(0.17 )
0.42
8
2
(0.20 )
0.50
(0.19
3
-
3
2
1
3 1
注 :括 弧 内 は 、 標 準 偏 差
593.28
(202.96 )
3
-
7
3
データ数
民間ロ一ン
0
%/
0 0
返済金負担率
公庫ローン
0
/■ \
—/
o o
世帯規模
2•5 6 4 22 9 7 1 1
6 5
6
個 人 業 主 (% )
-
6
7
0
民間ローンの割合
8 5
5
6
2
1 1
公的ローンの割な
7 7
2
ロ ー ン 金 額 (万 円 )
6 1
1
2 67
購 入 価 格 (万 円 )
7
4
0 8
3
自 己 資 金 比 率 (% .)
\
/~ \/ ^
総畳数
3 9
3
7
1 o
6 5
8660 3
7 9
0
3
域
-
9
地
公的ローン
あろう
4— 2
推定モデルと推定結果
表 6 は, 各 資 金 源 を 併 用 し た 家 計 の 資 金 の 選 択 に 関 す る ニ 項 ロ ジ ッ ト モ デ ル の 推 定 結 果 で あ る 。
所 得 が 上 昇 す る に つ れ て ,民 間 ロ ー ン を 併 用 す る 確 率 は 上 昇 す る が , 公 的 ロ ー ン を 選 択 す る 確 率
は 減 少 す る 。 これは,民 間 ロ ー ン を 借 り る 場 合 に は ,貸 付 規 模 が 年 収 の 3 な い し 4 倍であることと
V、う制約があるた め と 思 わ れ る 。
世 帯 主 の 年 齢 が 上 昇 す る に つ れ て , 各 資 金 を 併 用 し て 借 り 入 れ る 確 率 は 減 少 す る 。 これは, 完済
時までにある年齢以下である必要があるからであろう。
東 京 圏 で 住 宅 を 購 入 す る 家 計 は ,民間ロー ン を 併 用 す る が , そ れ 以 外 の 地 域 で 購 入 す る 家 計 は 公
表S
各資金間の選択に関するニ項ロジットモデル
( 各資金源を併用した家計)
的 ロ ー ン を 選 択 す る 確 率 が 大 き い 。 これは,東京
圏 で は 住 宅 の 購 入 価 格 が 高 い た め ,民 間 P — ンを
借り入れないと賄えない為であろう。
公的ローン
公庫ロ一ン
民間ローン
所得
-0.076
(-2.795)
-0.099
(-3.733)
0.089
(4 .8 5 7 )
借 り 入 れ る 確 率 は , 当 然 の こ と で は あ る が ,減少
年齢
-0.0357
(-2.546)
-0.157
(-1.706)
-0.040
(-4.701)
する。
独立変数
自己資金比率が高まれば,各ローンを併用して
( 年齢) 2
0.0014
(1 .4 5 6 )
地域ダミ一
-0.927
(-2.991)
持ち家ダミ一
0.390
(1 .3 0 7 )
世帯規模
(規模) 2
個人業主ダミー
表7
-1.142
(-4.138)
0.663
(4 .8 5 3 )
0.218
(0 .5 1 3 )
-0.436
(-1.618)
-0.0176
(-0.275)
( 1.794)
従属変数) 公的ロ一ン
-1.469
(-2.634)
-1.031
(-1.877)
自己資金比率
-6.843
(-8.549)
-5.412
(-9.170)
返済金負担率
-0.227
(-2.426)
総畳数
0.071
-4.706
(-12.199)
0.038
( 4.320)
定数項
9.945
(9 .6 8 4 )
デ一夕数
その資金源
その他
1281
1198
83
95.6
Percent
correctly
predicted
住宅ローンに対する需要関数
( 各資金源を併用した家計)
10.349
(4 .7 3 3 )
1281
1172
109
93.4
1.885
(3 .4 9 2 )
1281
760
521
(民間ロ一ンの
借り入れ額)
借り入れ額)
『
借り入れ額)
所得
0.478
(7 .1 2 9 )
0.372
(8 .5 4 0 )
1.942
(12.791)
年齢
-1.592
(-1.066)
-2.415
(-2.558)
0.411
(0 .1 1 3 )
地域ダミ一
80.76
( 3 .1 8 5 )
88.60
(5 .4 6 2 )
144.11
(2 .6 0 7 )
持ち家ダミ一
19.28
(0 .6 7 1 )
13.883
(0 .7 5 8 )
-87.10
(-1.399)
世带規模
23.377
(2 .1 4 4 )
14.788
(2 .0 6 0 )
8.074
(0 .3 5 2 )
個人業主 ダミ一
-35.838
(-0.544)
-27.559
(-0.669)
918.21
(6 .8 1 3 )
返済金負担牢
62.425
(7 .8 3 5 )
13.903
( 2.744)
154.79
( 8.881)
独立変数
70.2
定数项
-488.6
-205.0
-512.5
-253.6
-814.2
-710.2
注 :括弧内はt 値
デ一夕数
A djusted
R -squared
各列の従属変数
1 : その資金源を利用した場合
注 :括弧内はt 値
0 :それ以外の場合
—
民間ローン
(公庫ローンの
総登数
Log likelihood
Initial
A t convergence
公庫ローン
(公的ローンの
38 i3 9 0 ~ )—
—
-4.795
(-4.751)
552.90
(6 .5 5 3 )
1198
0.106
777.13
(13.89 )
1172
0.122
-1310.0
(-6.902)
760
0.289
世 帯 規 模 が 上 昇 す る と , 民 間 ロ ー ン を 併 用 し て 借 り る 確 率 は 減 少 す る 。 これは, ライフサイクル
の段階で, ち ょ う ど 肚 帯 規 摸 が 増 加 す る 時 期 に は ,民 間 ロ ー ン を 借 り 入 れ る 余 裕 が な く な る と い う
ことを意味しているものと思われる。
個人業主は公的ロ一ンを借りる確率が低い(
その理由に関しては,3—1 節ですでに述べた)。
表 7 は,各 資 金 源 を 併 用 し た 家 計 の 住 宅 ロ ー ン に 対 す る 需 要 関 数 を 最 小 自 乗 法 で 推 計 し た も の で
ある。
所 得 が 上 昇 す る に つ れ て , 各 ロ ー ン の 借 り 入 れ 額 は 増 加 し て い る 。 これは,所 得 が 上 昇 す る に つ
れ て ,返 済 能 力 が 増 え る た め 当 然 の 結 果 と い え よ う 。
公 庫 ロ ー ン を 利 用 し て い る 家 計 は ,年 齢 が 若 い ほ ど ,世 帯 規 模 が 大 き い ほ ど , ローン借り入れ額
が 増 加 し て い る 。 これは, ラ イ フ サ イ ク ル の 初 期 の 若 年 段 階 で ,家 族 数 が 増 加 し て い る 時 期 に ,相
対 的 に 安 い 公 庫 ロ ー ン を 利 用 し て 住 宅 を 購 入 し て い る こ と を ,意 味 し て い る も の と 思 わ れ る 。
個 人 業 主 は ,民 間 ロ ー ン を 併 用 し て 借 り 入 れ る 傾 向 が あ る 。 これは,前 述 し た よ う に , このよう
な家計は比較的所得が高いといった理由によるものであろう。
当 然 の こ と な が ら ,返 済 金 負 担 率 は 各 ロ ー ン 借 り 入 れ 額 と 正 の 相 関 を 持 っ て い る 。
総 畳 数 は , 公 庫 ロ ー ン の 借 り 入 れ 額 と 負 の 相 関 を 持 っ て い る 。 これは, 住 宅 金 融 公 庫 の 床 面 積 を
ベースとした段階金利制度のためと思われる。
5.
結
論
以上, さまざ ま な 角 度 か ら , 各 ロ ー ン を 利 用 し た 家 計 の 属 性 を 比 較 検 討 し て き た 。
主な結果をまとめると, 以下のようになる。
より収入の高 い 家 計 は , 民 間 ロ ー ン の み (
あるいは民間ローンを併用)利 用 す る 傾 向 が あ る 。
もし自己資 金 比 率 が 高 い か ,従 前 の 居 住 形 態 が 持 ち 家 で あ る 場 合 に は ,所 得 が 高 く な く て も , 公
的ロー ンのみを 借 り 入 れ れ ば す む 。
より若い家計は, 公 的 ロ ー ン と 民 間 ロ ー ン の 両 方 を 利 用 す る 。 よ り 高 齢 の 家 計 は , 公的ローンの
みを借りる。
公 的 ロ ー ン を 利 用 す る 家 計 に は ,個 人 業 主 は 少 な い 。
より 狭 い 住 宅 を 購 入 す る 家 計 は , 公 的 ロ ー ン の み か ら 借 り る 。
東 京 大 都 市 圏 で 住 宅 を 購 入 す る 家 計 は ,民 間 ロ ー ン の み (あるいは民間ローンを併用)利 用 す る 傾
向がある。
今 後 は , この 研 究 を 基 に し て ,住 宅 需 要 と 各 資 金 源 の 選 択 の 同 時 決 定 , 公 的 ロ ー ン は す べ て の 家
計 が 利 用 す る と い う こ と を 前 提 と し て そ の 先 の 資 金 源 の 選 択 を モ デ ル 化 す る , これらのことをベー
スとして現在の住宅金融制度にともなう効率性と公平性の問題を分析するといったことを研究して
いきたいと思っている。
—
39 ( 3 9 1 ) —
参考文献
[ 1]
Hayashi, F.,T_ Ito, and J_ Slemrod. 1988. “Housing Finance Im perfections and N ational Sa­
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International Economies 2 CNo. 3 ): 215-238.
[2 ]
L^
]
建設省住宅局「
昭和60年民間住宅建設資金実態調査」昭和61年 3 月。
Seko, M . 1993.
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Japan—Tradeoff between Quality and Q uantity” The Journal o f Real Estate Finance and Econo­
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(4 ]
---------- forthcoming. “Financing Housing in Jap an ” in Y. Noguchi and J. Poterba, eds. The
Economics o f Housing in Japan and the United States (C hicago: The NBER and the University
of Chicago P r e s s ) ( 日本語訳:日本経済新聞社)
[5 ]
Struyk, R. and M. A. T urner. 1985. Finance and Housin , Quality in Two Developing Countries:
Korea and the Philippines. The U rban Institute Press, W ashington, D. C.
( 日本大学経済学部教授)
[謝辞]
本稿の作成に当たっては,渡辺真知子助教授,相場裕子研究員から,データの分割方法や分析に関
して,多くの教示を得たO また,本稿は,慶應義塾経済学会主催のコ ン フ ァ レ ン ス 「
公共経済学の新
展開」及び住宅土地経済研究会で発表した論文を修正したものである。 これらのコ ン フ ァ レ ン ス の 出
席者の方々からも貴重なコメントをいただいた。 ここに感謝の意を表する。
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