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両親の思いと命の大切さ
大阪法務局長賞 「両親の思いと命の大切さ」 八尾市立南高安中学校 3年 椋野 沙良(むくの さら) 去年の春、母と2人でテレビを見ていたら「15歳未満初提供、心臓少年に移 植 5病院で臓器移植」というニュースが流れました。 男の子は交通事故で頭部に外傷を負って、主治医から「回復の見込みがない」 と説明を受けた。そして男の子の家族が脳死臓器提供を決意し、脳死判定と臓器 摘出を承諾する書類を移植ネットワークに提出したという内容でした。 15歳未満からの脳死臓器提供は、前年に全面施行された「改正臓器移植法」 で可能になっており、男の子は生前、家族と臓器提供についての話し合いはして いなかったが、提供を拒否する意志も特に示していなかったということで、男の 子の心臓は10代の男性に、両肺は50代女性に、肝臓は20代男性に、膵臓と 片方の腎臓は30代女性に、もう一つの腎臓は60代男性に移植されたのでした。 このニュースのあと私は、すごいなあ、男の子の体から、臓器を何かの部品み たいにどんどん他の人の体に移植して、男の子の家族も、いいですよって、よく 言ったなあと思いました。一緒にニュースを見ていた母に「お母さん、もし私が、 事故でこんなことになって、臓器提供して下さいって言われたらどうする?」と 聞いてみました。 すると母は、長い間考えて、私の方を見て「この男の子の家族は、すごいと思 う。まだ脳死と言われてもピンときていない時点で、臓器提供の話を聞かされて も、普通なら何も考えられないと思うし、冷静になられへんと思う。お母さんは、 自分の子どもがそうなったらなんて考えたくないけれど、もしそういう場面にな ったら、泣き叫んで自分を見失ってしまうかも分からない。だけど、自分の子ど もの臓器が、沢山の人の命を救い、沢山の人の体のなかでずっと生き続けていく んだと思えば、たぶん承諾すると思う。」と、それまで私に見せたことがないよ うな真剣な顔で、話をしてくれました。 私は、仕事から帰ってきた父にも同じことを聞いてみました。 すると父は「本人がいやならば、承諾はしないけれど」と言い、あとは母と同 じ考えだとも言いました。 夕食のあと、父は私の顔色に気付いたのかある話をしてくれました。 それは、私が産まれる少し前に、妊娠中毒症になった母が産婦人科の先生に「出 産時に危険な状態になって、母子どちらかしか助けられない場合、どちらを優先 されますか」と言われた時のことです。妊娠中毒症になった母は帝王切開という、 手術をして出産するため中毒症の症状がひどくなった場合、母体が危なくなるの で、赤ちゃんは諦めなければならないと産婦人科の先生に病院で言われていたの -1- 大阪法務局長賞 ですが、母は「自分はいいから、この子を助けて下さい」と即答したそうです。 私は、自分だったらどうするかなあと、考えてみました。 自分が犠牲になってまでも、子どもを助けられるだろうか、そんなことが私に はできるのだろうか、今の私には難しくて容易に判断できないと思いました。 父の話のあと、あのニュースの男の子の家族の事をすごいと言った母の言葉を 理解できるような気がしました。 あの男の子の臓器は5人もの人の命を助け、今も生き続けているということに、 改めて感動してしまいました。 そして両親が私に「どこの家族のお父さんも、お母さんも、子どもが可愛くな いわけがない。自分の命より大切に思って、元気に育ってほしいと願っているん や」と泣きながら話をしてくれました。 私は、三人姉妹の末っ子で、上に二人もいるし、私一人ぐらいどうなってもた ぶん両親は平気なんだろうなと思っていましたが、今回の話があって、私は両親 の思いを、こんなに強く感じることができ、また、命の大切さについても考える ことができて本当に良かったと思いました。 -2-