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エシカル消費を始めよう

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エシカル消費を始めよう
資料4-18-1
河口委員提出
エシカル消費を始めよう
株式会社 大和総研
調査本部 河口真理子
2015年5月20日
ESG Research
エシカル消費とは?
1. エシカルって何ですか?
• エシカル(Ethical)= ethics(倫理)の形容詞で、倫理的な、道徳
的な、という意味。
2.倫理的な振る舞いとは?
• 個人のエシカル行動 →エシカル消費
• 企業のエシカル行動→CSR(企業の社会的責任)
• 国のエシカル行動→ (紛争解決、人権擁護、信頼される社会構
築、GDPからGNHへ)
• お金のエシカル→ (持続可能な金融、社会的責任投資)
3. エシカル消費 = 「おもてなしの心」と 「おかげさま」の消費
Copyright © 2015 Daiwa Institute of Research Ltd. All rights reserved.
1
なぜ、今エシカルなのか?
1. パラダイムの変化
20世紀 地球は無限 → 「右肩あがりの成長」
vs 21世紀 地球は有限 → 「共生と持続可能性」
2. 人類を取り巻く環境の変化
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異常気象の多発、水資源不足、森林資源の枯渇、食糧危機、etc…
グローバルな格差拡大、国際的テロリスク、移民問題、感染症 etc
果たして人類は 持続可能なのか?という漠然とした不安。
「世界最大の消費経済を築いた需要は、今では『より多く』ではなく、『より
よく』を望んでいる」 ジョン・ガースマ、マイケル・アントニオ共著、有賀裕子訳『スペンド・シフト』プレジデント社 p38
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大量生産・大量消費・大量廃棄の社会と消費者の責任
農家・漁師・林業家
一次産業(農林水産業)
加 工・
製造 ・
輸送
政
二次産業 ・
サービ ス産業
リサイクル・
処理 ・
廃棄
行
企
業
お金の流れ
購入・使用・消費
消費者が、このサ
イクルの大きさを決
めている
消費者
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出所)大和総研
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「消費」って何?実は近代化が生み出した、新しい概念。
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今当たり前の「消費者」の歴史は150年に満たない。
消費大国米国でも1880年ごろまで、衣料は自給、食糧は自家栽培+地元の農家から。
地域の食料雑貨商が小売の拠点(掛売り、顔の見える対面販売、物々交換):共同体内の経済循環
「大量消費社会」
= 大量生産技術+包装技術+大量輸送技術+法整備(商標権など)+通信技術
+広告・メディア・流通業(セルフサービス、ショッピングモール、ネット販売など)+金融の発達
= 消費者層の誕生+都市生活者+新しいライフスタイル
= ニーズを満たす消費⇒ ウォンツをニーズに変換させて拡大させる消費
•1858年 メーシー百貨店 定価制度導入
•1872年 初の通信販売(モンゴメリー・ウォード社)、 大陸横断鉄道開通(ユニオンパシフィック鉄道)大量輸送
•1879年 P&G アイボリー石鹸発売(工場の生産物)
•1892年 コルゲート 練り歯磨き発売(新ジャンルの製品)
•1901年 ジレット 安全カミソリの特許取得(使い捨て製品の発売)
•1907年 初の使い捨て紙コップ発売(ディキシーカップ)、ベークライト(腐らないプラスチック)の開発
•1908年 ナビスコが製造販売する包装クッキーの品目40。
•1916年 初のセルフサービス店開設(テネシー州 メンフィス)
•1950年 ダイナーズクラブ設立
•1956年 ショッピングモール第一号
•(出典) スーザン・ストラッサー著川邉信雄訳『欲望を生み出す社会』東洋経済新報社2011年
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自給的社会から生産・消費分業社会へ
購入・
消費
自給
産業革命
新たな自給
持続可能な消費
現在
・19世紀後半まで、地域共同体を中心とした 自給、生産、購入経済。自分が使うものは自給するか、
購入するものもその作り手・作り方を理解していた。
・大量消費社会は、自給していたものをどんどん『消費財』として工業製品に転換(お茶でさえも!)
・欲しいものは、お金さえあれば手に入る時代。
・消費者はモノを所有し使うだけ。その生い立ち、引退後(モノにまつわる物語)には関心なし。
・消費(欲望)を喚起するために, モノにお化粧し、差別化・アピールするツール
⇒ デザイン、流行、ライフスタイルの提案、ステータス、 斬新さ、位 など
・しかし、最近(リーマンショック以降+3.11が加速)、この価値観を見直す兆し。(新たな共同体と自
給・持続可能な消費)
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今の大量消費社会が直面している危機
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世界の消費支出 2000年に20兆ドル(1600兆円)1960年から4倍に(日本のGDP537兆円)
2007年には世界の都市生活者が地方生活者を上回った(消費者が人口の過半数に)
一方で、1日1.25ドル以下で暮らす人は14億人。世界の13%は安全な水にアクセスできない。
金属資源消費量 220億トン
→ このままだと2020年には、金、銀、鉛、錫の累積使用量は、現有埋蔵量超える。
世界のエネルギー消費量(IEA調べ)
1971年 55億原油換算トン→ 2007年 120億原油換算トン → 2020年E 151億原油換算トン
世界の穀物需要 1970年 11億トン →2007年 21億トン 1.8倍に
世界の魚介類需要 1970年 5.6億トン → 2007年 12.6億トン 2倍以上に
世界で生産された食料の約1/3が失われ、捨てられている。(FAO調べ)
世界の森林地帯は過去300年で4割縮小。
世界のさんご礁の60%が、早ければ2030年までに消滅する
データの出典は、平成22年版環境白書、「生態系と生物多様性の経済学」、 物質・材料研究機構プレスリリース(2007.7.6)
UNDP 「ミレニアム開発目標資料」
世界の若年層(18-35歳)の最も関心のある社会的課題(上位3つ)
71% 貧困
59% 環境劣化
50% 経済
49% 犯罪
46% 社会的状況
17% 自由と民主主義
国連環境計画 ‘Visions for Change’2011 20カ国8000人のライフスタイル調査
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消費者の責任 を考える時代
消費者教育=賢い消費者を作り、悪徳業者の被害にあわないようにす
る。=消費者の権利教育
→ 消費者には権利はあっても義務はないのか?
→ 大量生産・大量消費・大量廃棄の責任は誰に?(大型家電の不法投
棄は年間9万台以上!冷蔵庫の4割が廃棄されている?!)
→企業は、儲からないもの(消費者が買ってくれないもの)は作らない。
日本の消費者は、エシカルに関心が薄い!?
→ エシカルの認知度 12%
→ エシカル行動 21% (レジ袋を断る省エネなどエコ行動 65%、エコ商品の購入 46%、フェア
トレード商品の購入 26%) (出所)株式会社デルフィス「第4回 エシカル実態調査」2015.1
マクドナルドのMSC(海のエコラベル)戦略の違いから見えるもの
消費者は神様か?安くて良いものを追い求める権利だけでいいのか?
(日本は最も消費者に優しい国では?)
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世界のエシカル市場は順調に拡大
世界のフェアトレード市場は2011年49.16億ユーロ(約4916億円)vs日本72億円
2004年→2011年で6倍弱に拡大
出所)フェアトレード・ラベル・ジャパン ウェブサイト http://www.fairtrade-jp.org/
米国では、食糧日用品市場7380億ドル(2013年)のうち1200億ドルはエシ
カル商品で、市場の伸びの7割はエシカル商品。
(出所)ボストンコンサルティング(2014)‘ An Imperative for Consumer Companies to Go Green’
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持続可能な消費へ:価値観の変化
価値観の変化―スペンド・シフト(『無節操な消費』から節度ある消費へ)
米国では55%、フランス53%、ドイツ45%、イギリス44% ロシア38%、インド34%、日本26%、中国
21%の人がスペンド・シフトの実践者
フォロワーは 米国27%、フランス31%、ドイツ36%、イギリス37%、ロシア41%、インド53%、日本40%、
中国41%。
震災後の日本の価値観の変化
社会貢献につながるブランドや
3割程度が震災を
期に社会性に目覚め
た。
7割以上の人が社
会性に関心あり
47.5
商品には共感できる
29.3
23.2
社会のために役立ちたい
40.3
35.1
38.9
38.9
24.6
生活者と企業が一丸となって
社会をよくすることに取り組むべ
き
0
20
40
60
22.2
80
100
(%)
震災前からそう考えていた
震災を機にそう考えるようになった
そう思わない
(出所)株式会社デルフィス「第2回エシカル実態調査」2011.8 を基に大和総研作成
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「市場メカニズムによる 自己利益最大化→ 豊かさ→幸せ 」という神話
• 近代経済学の始祖 アダム・スミスが本当に言いたかったことは?
→ 確かに彼は 自己利益最大化が社会に良いとは言っている。「国富論」1776年
• 生産物の価値がもっと高くなるように労働を振り向けるのは、自分の利益を増やす
ことを意図しているからにすぎない。だがそれによって、その他の多くの場合と同
じように、見えざる手に導かれて、自分がまったく意図していなかった目的を達成
する動きを促進することになる。・・・自分の利益を追求するほうが、実際にそう
意図している場合よりも効率的に、社会の利益を高められることが多いからだ。社
会の為に事業をお行っている人が実際に大いに社会の役に立った話は、いまだかつ
て聞いたことがない。・・・山岡洋一訳「国富論 下」(p32)
→ しかし、彼はこうも言っている。(道徳感情論 初版1759年~第6版1790年)
• 多くの貧しい人は、金持ちと思われることが名誉なのだと考えている、そして、金持ちだと
いう評判を維持するための義務(このように愚かな行いをこのように神聖は名前で呼ぶこと
が許されるなら)がすぐさま自分を物乞いの境遇へ突き落とし、憧れと模倣の対象から一
段と遠ざけてしまうことなど、考えようともしない。村井章子+北川知子訳「道徳感情論 アダム・スミス」(p172)
• 身体の安楽と心の平穏に関しては、身分の上下を問わず、誰もが似たり寄ったりであり、国
王がかちとろうとしている安全の保障を、街道の脇でひなたぼっこしている乞食はすでに所
有している(p402)
→ 彼の言いたかったこと。手段として富の蓄積のメカニズムの解明
しかし、富≠幸福の関係。
Copyright © 2015 Daiwa Institute of Research Ltd. All rights reserved.
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昔のコメ作りと暮らし:循環の中に「生産」局面と「消費」局面がつながっている
消費
生産
水管理・草取り
収穫
田植え
廃棄・処理・リサイクル・生産
Copyright © 2015 Daiwa Institute of Research Ltd. All rights reserved.
出所)大和総研
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現在の大量消費ー持続不可能な消費
社会的影響
生産の現場を
処理の現場を
隠す役割
隠す役割
労働など
モノの生成過程
市場
消費
原料採取→加工→包装広告宣伝
原材料
行政
企業
廃棄
消費者の責任
環境負荷
消費者:モノとの最初の接点
自然環境
生産
モノの誕生までのプロセスが見
えない
消費
廃棄
出所)大和総研
Copyright © 2015 Daiwa Institute of Research Ltd. All rights reserved.
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「おかげ様」と「おもてなし」の消費
エシカル消費:おもてなしとおかげ様の消費モノが市場に誕生するまで、と消費者の手を
離れたあと(死と再生)も。
モノを評価する接点:市場に誕生した断面→モノの一生の物語と関係性
労働
社会的影響
モノの生成過程
原料採取→加工→包装広告宣伝
原材料
環境負荷
消費者の責任
生産
廃棄
生産現場は「おもてなしの心」で下流につなぐ。下流はモノの上流に感謝する「おかげ様」の消費。
出所)大和総研
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エシカル消費者その1.エシカル商品を買ってみよう。
エシカル商品のオシャレ化
⇒ デザイン二の次のエコ商品から、デザインもストーリーもオシャレなエシカル商品へ
⇒ ⇒ 我慢しない、オシャレで楽しいエコ・エシカルへ。
沢山の社会的企業がエコ・エシカル製品を提供。
大企業もエシカル調達・エシカル製品の提供
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<認証システム>
水資源の管理(ウォーターフットプリント)
持続可能な森林管理の(FSC認証)
持続可能なパーム油(RSPO)
持続可能な漁業(MSC認証)など・・・サカナから見える持続可能な消費
フェアトレードラベル(FLO)
<身近なエシカル製品>
低燃費カー、省エネ家電、オーガニック食品、エコハウス、フェアトレードコーヒーやチョコ、エシカル
ジュエリーやエシカル雑貨。伝統工芸品(織物や、木工、漆、陶磁器など)。
エコ・エシカルで大事なのは、素材や生産にまつわるストーリー。どういう人の手で、どこで
どんな形で作られたものなのか?作る場所や人を不幸にした製品は買いたくないというエ
シカルな価値を持つ消費者が若者を中心に増加中。
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エシカル消費その2.グッズを買った後も大事
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折角、オーガニック食品を買っても冷蔵庫で腐らせては×
冷蔵庫の余りものは捨てる?食べ残しを出さない。
それに賞味期限切れは全部捨てなければいけない?チラシの言葉につられて、割
安と思って、大量に買って腐らせていませんか?=(1コ百円のトマト、3つで250円
だと割安だけど、1つ腐らせたら、2個が250円)
国内で1700万トンの食料が毎年捨てられている。(年間の食料消費量8400万トン)
古い冷蔵庫・TV・洗濯機・エアコンはちゃんとリサイクル費用を払って? →9万台
以上が不法投棄。(経産省調べ)
省エネ家電買っても、エコな使い方しないと× たとえば冷蔵庫の脇に炊飯器を置
いては×
ペットボトルや容器は、ちゃんとラベルはがして分別している?
省エネカーも、エコドライブしないと、燃費は悪い。
無駄な割り箸やレジ袋をもらっていませんか?
エシカルな買い物をしても、その後の対応もちゃんとしないと×ですね。
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最後に:エシカル消費からエシカルな社会へ
本当に豊かで幸せな生活は、
長持ちする作り手が「おもてなしの心で」自信もって作った良いモノが「そこそこ」あって。
そんな素敵なモノたちが手元に来るプロセスを「おかげ様」と感謝しながら、
モノを持つこと、長いこと大事に使うことも楽しんで、
日々の自然の恵みも愛でながら
日々の家庭の暮らし(お料理、お掃除、お洗濯、お仕事、勉強)を大事に自分流に暮らしていく
こと。
みんながそういう暮らしを営んでいけば、多分この日本も世界も持続可能になるのでは。
御参考)
「エシカル消費はもうすぐ当たり前になる」 http://www.advertimes.com/20130910/article125749
「ステークホルダーとしての『責任ある消費者』と持続可能な消費」
http://www.dir.co.jp/research/report/esg/esg-report/12070201es.html
海洋生態系の持続可能性
http://www.dir.co.jp/research/report/esg/esg-report/20130902_007619.html
「5%じゃだめですかプロジェクト報告書」
http://www.sustainability-fj.org/pdf/141225.pdf
ご清聴ありがとうございました
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