...

モルテン・グロビュールをめぐって : 誌上対談

by user

on
Category: Documents
7

views

Report

Comments

Transcript

モルテン・グロビュールをめぐって : 誌上対談
誌上対談
モ ルテ ン ・
グ ロビュール を め ぐって
後藤祐児 ・高木俊夫
蛋 白質 の 構 造 を 議 論 す る場 合 に,
以 前 は 未 変 性 (ネ イテ ィブ) と変 性 とい う2つ の 状 態
を 頭 に 描 くの が 常 で あ った 。 そ の 後, 両 者 の中間 の 状 態 の 存 在 が 問 題 に され る よ うに な っ
た 。 さ らに 最 近 で は,
中 間 状 態 の 構 造 さら に は 生理 学 的 意義 ま で が 論 ぜ られ る よ うに な っ
Database Center for Life Science Online Service
て き て い る。 そ の よ うな 場 合 に, モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュー ル とい う用 語 が 頻 繁 に 用 い られ て
Key word
い る 。 こ こ で は, モル テ ン ・グ ロビ ュー ル と い う用 語 の 検 討 を 通 じて,
蛋 白質 の 上 記 の よ
う な構 造 をめ ぐる最 近 の研 究 の動 向 の 解 説 を試 み た。
グ ロ ビ ュール” とい う表 現 が しば しぼ 見 い だ され る よ う
は
じ
め
に な りま した。 こ の言 葉 か ら は, 夏 の夜 の 線 香 花 火 の 先
に
端 の 生 き 生 き して動 き に富 む が, 他 方 では 液 滴 の形 を 保
高 木 (T)
い ろ い ろ な専 門 用 語 が 生 ま れ て きます が,
っ た 真 っ赤 な塊 を連 想 させ ます 。 まず, モル テ ン ・グ ロ
そ れ らの 中 に は よ り広 い範 囲 の現 象 や概 念 に対 して用 い
ビ ュー ル とい う用 語 の提 唱 され た い き さつ を話 して くだ
られ る よ うに な る も のが あ ります 。 最 近, “ モ ル テ ン ・
さ い。
グ ロ ビ ュ ール” とい う用 語 が 広 く用 い られ る よ うに な っ
後 藤 (G)
大 串 と和 田 が モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュール とい
て き ま した 。 この 新 用 語 を と りあ げ て, 誌 上 で の議 論 を
う用 語 を最 初 に 用 い ま した^<1)>。
彼 らは シ トク 目ムcが 酸
企画 しま した 。
性pHに
後 藤 さ ん は β-ラク タマ ーゼ,
シ トク ロムcな
お い て, ネ イ テ ィブ (native, 未 変 性) 状 態 と
どい く
変 性 状 態 の中 間 の立 体 構 造 を と る こ とに気 づ き ま した 。
つ か の蛋 白質 の モル テ ン ・グ ロ ビ ュール 状 態 を熱 力 学 的
そ の状 態 を彼 らは モル テ ン ・グ ロ ビ ュ ール と名 づ け ま し
な 立 場 か ら研 究 して こ られ ま した 。 蛋 白質 の構 造 と安 定
た 。 そ れ 以 前 に, Ptitsyn の グル ー プ は α-ラク トアル ブ
性 を 理 解 す る に は, モ ンテ ン ・グ ロ ビ ュール を は じめ と
ミンが 比 較 的 マ イル ドな変 性 条 件 (酸 性pH,
す る “蛋 白質 の変 性 状 態” の研 究 が重 要 で あ る と考 え て
低 濃 度 の塩 酸 グ ア ニ ジ ン存 在) の も とに お い て 同様 な 状
お られ る よ うです 。 モル テ ン ・グ ロ ビ ュール に深 くか か
態 を とる こ とを指 摘 し, そ れ を “compact globule” と よ
わ っ て い る研 究 者 の一 人 と して, 誌 上 対 談 の相 手 に な っ
ぶ よ うに提 案 しま した^<2)>。
大 串 と和 田は シ トク ロ ムcの
て も ら い ま した。
上 記 の 中間 的 構 造 が, ま さ に Ptitsyn らの い う “compact
あ るい は
globule” で あ るが, そ の名 称 は必 ず しも実 体 を 表 わ して
1.
モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュ ー ル と い う 用 語 の 誕 生
い な い と考 え て “モル テ ン ・グ ロ ビ ュール 状 態” (mol
ten-globule
T蛋 白質 に 関 連 した 原 著 論 文 や 解 説 文 に “モ ル テ ン・
Yuji
Goto, ‘å•ã‘åŠw—•Šw•”•¶•¨Šw‹³Žº
University,
Toshio
What
Toyonaka,
Osaka
Takagi, ‘å•ã‘åŠw’`”’Ž¿Œ¤‹†•Š’`”’Ž¿—n‰tŠw•”–å
tutefor
Protein
is •gMolten
Research,
Globule•h?
ル テ ン ・グ ロ ビ ュ ール とい う用 語 は 国際 研 究 集 会 の席 上
(•§560 –L’†Žs‘ÒŒ“ŽR’¬1-1)
Machikaneyamacho,
Osaka
: Questions
560,
[Department of Biology, Faculty of Science, Osaka
Japan]
(•§565 ••“cŽsŽR“c‹u
University,
and
Yamadaoka,
state) とい う別 の名 称 を 提 唱 しま した 。 モ
Suita,
3-2) [Division of Physical Chemistry, Insti
Osaka
565, Japan]
Answers
【モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュー ル 】 【フ ォー ルデ ィン グ】 【ア ン フ ォー ル デ ィン グ 】【変 性 】 【再 生 】 【構 造 形 成 】
モ ル テン ・グ ロ ビュ ー ル を め ぐ って
表1.
で の議 論 の なか か ら生 まれ た とい う こ とで す^<3)>。
T
79
球 状 蛋 白 質 の3つ
の状 態 の比 較
モル テ ン ・グ ロ ビ ュ ール の 命 名 の端 緒 とな った シ
トク ロムcの 中間 状 態 に つ い て も う少 し詳 し く説 明 して
くだ さ い。
G
シ トク ロムc分 子 の 酸 性pHに
お け る高 次 構 造
が, 添 加 塩 濃 度 を変 化 させ る と著 し く変 化 す る こ とは 以
前 か ら知 られ て い ま した (た と え ば 文 献4)。
ムcは 酸 性pHに
シ トクロ
お い て, 低 イ オ ン強 度 であ れ ば ラ ンダ
ム コイ ル に 近 い状 態 を と ります が, 添 加 塩 濃 度 を高 め る
と (た とえばpH2に
す る),
お い て 添 加KCl濃
度 を0.5Mと
の相 当 す る状 態 は 塩 濃 度 に
関 係 な く安 定 です 。 しか し, これ は 本 質 的 な 問 題 で は あ
高 度 な変 性 状 態 とネ イ テ ィ ブ状 態 の 中 間 的 な構
りませ ん。 表1に
α-ラ ク トア ル ブ ミン につ い て の実 験
造 を と ります 。 大 串 と和 田 は, ネ イ テ ィ ブ状 態, 高 度 な
結 果 に基 づ い て提 案 され た モ ル テ ン ・グ ロ ビュ ール 構 造
変 性 状 態, そ して両 者 の 中 間 状 態 を 円 偏 光 二 色 性 (CD),
の 特徴 を ま とめ ま した 。協 同 的 な 熱 変 性 を示 さな い こ と
核 磁 気 共 鳴 (NMR),
が 代表 的 な 特 徴 と して あ げ られ て い ます 。 ところ が, シ
粘 度, 動 的 光 散 乱 な どを測 定 して
検 討 しま した 。 そ の結 果, 中 間 状 態 に お い て は, ポ リペ
Database Center for Life Science Online Service
トアル ブ ミンの酸 性pHで
プ チ ド鎖 は ネ イ テ ィ ブ状 態 に 匹 敵 す るほ ど コ ンパ ク トに
トクロ ムcの モル テ ン ・グ ロ ビ ュール は協 同的 な熱 変 性
を 示 します 。 これ は 後 でふ れ ます が重 要 な 問題 です 。
折 りた た まれ て い る こ とを 明 らか に し ま した 。 しか し,
2.
他 方 で は ア ミ ノ酸 側 鎖 の動 きは 高 度 な変 性 状 態 に お け る
そ の 後
の 進
展
それ と同程 度 に 自 由 で あ る こ と も見 いだ され ま した 。
T
Ptitsyn
T 名 称 を 別 にす れ ば モル テ ン ・グ ロ ビ ュール 状 態 の
らの グル ー プ の 指 摘 した α-ラ ク トアル
ブ ミンの “compact globule” も, モル テ ン ・グ ロ ビュ ー
研 究 の歴 史 は 長 い の です ね 。 そ の後 は どの よ うに進 展 し
ル と よぶ こ とが許 され る よ うな状 態 で し ょ うか 。
てい ます か。
G
α-ラク トアル ブ ミン の 中 間 的 構 造 も以 前 か ら 研
究 され て きま した。 なか で も桑 島 と須 貝 らは1975年
こ
G
Ptitsyn
ら の グル ー プ お よび 桑 島 と須 貝 らの グル
ー プ が これ ま で も っ とも活 発 に研 究 して きま した 。 そ し
るい は 低 濃 度 の塩 酸 グア ニ ジ ン存 在
て, 蛋 白質 の変 性 あ る い は構 造 形 成 に 関 心 の あ る多 くの
下 な どに お い て, ネ イ テ ィブ状 態 と高 度 な変 性 状 態 以 外
研 究 者 が モル テ ン ・グ ロ ビ ュール 状 態 に 注 目す る よ うに
の 中 間 的 な 変 性 状態 を とる こ とを示 し, それ をA構 造 と
な りま した。 そ の結 果, 上 述 の2種 以 外 の さ ま ざ まな 蛋
ろ か ら, 酸 性pHあ
よん で い ま した^<5)>。
一 方, 1981年
白質 につ い て の報 文 に, モル テ ン ・グ ロ ビュ ール とい う
に Ptitsyn
らの グル ー プは, α-ラク ト
用 語 が 登 場す る よ うに な りま した 。 例 を あ げ ます と, ウ
アル ブ ミンの, 酸, 熱 あ る い は 塩酸 グア ニ ジ ンに よる 中
シ ・カ ル ボ ニ ック ア ン ヒ ドラ ー ゼB^<6)>,
卵 白 アル ブ ミン^<8)>
間 的 な 変 性 状 態 を, CD,
粘 度, 蛍 光 寿命 な どの測 定 に よ
な どに つ い て モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュー ル 状 態 が 認 め られ ま
っ て総 合 的 に評 価 し ま した^<2)>。
彼 らは この状 態 を 次 の よ
した 。 私 た ち も, Bacillus cereus の β-ラク タ マ ー ゼが
うに要 約 して い ます : “Compact
酸 性, 高 塩濃 度 で モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュ ール 構 造 を とる こ
-like secondary
globule
structure and with
with
native
slowly fluctuating
とを 見 い だ し ま した^<9)>。
tertiary structure”。 これ は シ トク ロムcの 酸 性pHで
T 桑 島 と須 貝 らの グル ー プ の最 近 の研 究 対 象 は蛋 白
の モル テ ン ・グ ロピ ュ ール 状 態 の要 約 と して もほ ぼ 当 て
質 の リフ ォール デ ィ ン グ (refolding) の中 間 段 階 です 。
は ま ります 。 実 際, Ptitsyn
そ れ は 平 衡 状 態 では な く, 反 応 を 追 跡 した 場 合 に一 時 的
らは そ の後 モ ル テ ン ・グ ロ
ビ ュール とい う用 語 を α-ラ ク トアル ブ ミン の 中 間 的構
に 集 積 す る分 子 種 で す 。 か な り内 容 が 異 な った2つ
造 に使 用 して い ます 。 さ らに, モル テ ン ・グ ロ ビ ュ ール
態 を ひ っ くるめ て, モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュール とい う1つ
とい う用 語 は 後 か ら提 案 さ れ た が, そ の よ うな蛋 白 質構
の 用 語 で よぶ よ うに な って い る と理 解 して よい で し ょう
造 を 最 初 に 見 い だ した の は 自分 た ち だ と主 張 して い ま
か。
す^<6,7)>。
な お, シ トク ロムcの モル テ ン ・グ ロ ビュ ール 状 態 は
添 加塩 濃 度 の高 い条 件 でお い て のみ 安 定 です が, α-ラ ク
G
の状
実 験 結 果 に基 づ い て モル テ ン ・グ ロ ビ ュー ル状 態
を と っ てい る と最 初 に提 唱 され た も の は, 酸 性pH・
塩 濃 度 の条 件 下 に お か れ た シ トク ロムc,
高
あ るい は 酸
773
80
性pHで
蛋 白 質
核 酸
酵 素
の α-ラ ク トア ル ブ ミンな どの 平 衡 状 態 に あ る
Vol. 37
No. 4
(1992)
交 換 と プ ロ トンNMRを
組 み 合わ せ た 実 験 か ら もモ ル
もの で した 。 私 た ちが 本 当 に知 りた い のは, ポ リペ プチ
テ ン ・グ ロ ビ ュ ール 構 造 が リフ ォ ール デ ィ ン グの初 期 に
ド鎖 が 実 際 に折 りた た ま って 蛋 白質 の構 造 を形 成 して ゆ
形 成 され る こ とが 示 唆 され て い ます^<11)>。
く フ ォール デ ィ ング の過 程 で す 。 そ こに お い て も同 様 な
構 造 が 形 成 され るか 否 か を検 討 す る こ と に興 味 が もた れ
3.
ま した 。 つ ま り, 高 度 な 変 性 状 態 か ら リフ ォール デ ィ ン
蛋 白質 の 構 造 形 成 とモ ル テ ン ・
グ ロ ビ ュー ル の 位 置 づ け
グを 開 始 させ た 場 合 に, モル テ ン ・グ ロ ビ ュール 状 の構
造 が 過 渡 的 に生 成 す るか 否 か を 明 らか に しよ う と して数
多 くの実 験 が 行 なわ れ ま した^<5∼7,10)>。
桑 島 と須 貝 らの グル ー プ は ス トップ トフ ロー装 置 を用
Database Center for Life Science Online Service
い て, 過 渡 的 な 状 態 のCDス
T “ モル テ ン ・グ ロ ビ ュ ール” は,
高度な変性状態
か ら ネ イ テ ィ ブ状 態 に 移 って ゆ く過 程 にお いて 形成 され
ペ ク トル を 測 定 しま し
る 中間 構 造 を意 味 す る用 語 と して市 民 権 を 得 よ うと して
い る と判 断 され ます 。 そ れ が 出現 す る の には, 平 衡 論 的
た^<5)>。
非 常 に デ リケ ー トな一 連 の実 験 の結 果, α-ラ ク ト
と速 度 論 的 な2つ の場 合 が あ る よ うです 。 平 衡 論 的 な も
アル ブ ミン, リゾチ ー ム, シ トク ロムcな
どの リフ ォー
の と速 度 論 的 な も の が 同一 か ど うか とい う疑 問 に は まだ
ル デ ィ ン グの過 程 に お い て, 二 次 構 造 が急 速 に形 成 す る
完 全 な解 答 が 与 え られ た わ け では な い よ うです が, 内 容
こ とが示 さ れ ま した 。 この よ うに して見 いだ され た過 渡
が類 似 して い る の で 同一 の 用 語 を用 い て も よ い で し ょ
的 な構 造 と, 穏 や か な変 性 条 件 下 で平 衡 状 態 と して観 測
う。 で は, モル テ ン ・グ ロ ビ ュール を 中 間 状 態 とす る蛋
され た モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュール 構 造 が類 似 して い る こ と
白質 の構 造 変 化 に関 して は具 体 的 に は どの よ うな イ メー
が 明 らか に な りま した。 個 々 の蛋 白質 に 固有 の三 次 構 造
ジ で し ょ うか 。
は, そ の後 に ゆ っ く りと形 成 され ます 。 同様 な速 度 論 的
G
な 実 験 に よ る中 間 構 造 は Ptitsyn らの グル ー プ も研 究 し
図1の
て い ます^<7)>。
さ らに最 近 で は,
ス タ ー トとす る と, まず 二 次 構 造 が 形 成 され (b),
図1.
774
Ptitsyn
ア ミ ドプ ロ トンの重 水 素
Ptitsyn が描 いた 蛋 白質 の構 造 変 化 の イ メー ジ は
よ うな も の で した^<6)>。
ラ ン ダ ム コイ ル (a)
は 蛋 白 質 の 構 造 変 化 が この よ うな 段 階 を 踏 ん で 進 行 す る と考 え た (筆 者原 図)
か ら
次に
モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュー ル を め ぐっ て
81
そ れ ら の相 互 作 用 の結 果 と して コ ンパ ク トな 中 間状 態,
る とい う実 験 が あ ります^<13)>。
後 で話 題 に します が, 細胞
す なわ ち モル テ ン ・ グ ロ ビ ュ ール (c)
内 の生 理 的 条 件 下 で も, モル テ ン ・グ ロ ビ ュー ル 状 態 の
が 形 成 され ま
す 。 最 後 に いわ ゆ る三 次 構 造 と よば れ る特 異 的 相 互 作 用
に よっ て最 終 的 な ネ イ テ ィ ブ状 態 (d)
存 在 が 推 定 され て い ます 。
が 安 定 化 され ま
4.
す 。 速 度 論 的 に は前 半 の2段 階 は すば や く起 こ り, モル
二次構造 の形成の先行
テ ン ・グ ロ ビ ュール か ら ネイ テ ィブ構 造 へ の変 換 が ゆ っ
く りと進 み ます 。
T
と ころ で 図1を 見 ます とラ ンダ ム コイル を 構 造 形
次 構 造 が 形 成 され る とい う概 念 が定 着 して きて い る よ う
成 の ス ター トと して い ます 。 蛋 白質 の変 性 の議 論 をす る
です ね 。 こ の よ うな概 念 を整 理 して提 出 した の は 誰 で し
場 合 に, ネ イ テ ィブ状 態 が圧 倒 的 に優 勢 な条 件 下 にお い
ょ うか 。
て, 6M塩
Database Center for Life Science Online Service
T 蛋 白質 が リフ ォール デ ィ ン グす る 際 に は, まず 二
酸 グア ニ ジ ン存 在 下 と同 じ よ うな ラ ンダ ム コ
G
1982年
イ ル 状 態 が きわ め てわ ず か で あ る が存 在 す るか の よ うに
ゼAのN末
考 え て い る人 が い ます 。 不 思 議 な こ とで す。6M塩
に Kim
と Baldwin
は, リボ ヌ ク レア ー
端 フ ラ グ メ ン トが安 定 な二 次構 造 を 形 成 す る
酸グ
事 実 に基 づ い て, 蛋 白質 の構 造 形 成 は, ま ず 二 次 構 造 の
ア ニ ジ ンは蛋 白質 の ポ リペ プ チ ドの 良溶 媒 です 。 そ れ に
骨 組 み が 形 成 され 次 に三 次 構 造 が形 成 さ れ る とい う “フ
反 し, 中 性pHの
レー ム ワー クモ デル” を提 唱 しま した^<14)>。
この モ デル で
希 薄 濃 度 緩 衝 液 の 多 くは貧 溶 媒 と して
作 用 します。 した が って, 変 性 状 態 とい って も, 6M塩
は中 間 状 態 の コ ンパ ク トさ に つ い て は ふ れ て い ませ ん が,
酸 グ ア ニ ジ ン中 と緩 衝 液 中 で は, 変 性 状 態 は異 な っ て い
二 次 構 造 が 先 に で き る とい う点 で は モ ル テ ン ・グ ロ ビュ
る のが 当 然 で す。 また, 前 者 か ら後 者 に移 され た ポ リペ
ール を中 間 体 とす る モ デル と共 通 して い ま す 。
プ チ ド鎖 は一 足 飛 び に ネ イ テ ィブ構 造 に移 行 で き な い場
T
こ の よ うな場 合, 二 次 構 造 とい う用 語 は そ の場 に
合 には, 低 濃度 に お い て は疎 水 性 部 分 を 身 中 に 隠す べ く
都 合 の よ い よ うに使 用 され て い ます 。 図1に 描 か れ てい
コ ンパ ク ト な 構 造 を とる こ とに な る で し ょ う。 モル テ
る二 次 構 造 は αヘ リ ッ クス そ して 隣接 した βス トラ ン ド
ン・ グ ロ ビ ュー ル とは上 記 の産 物 と考 え て よい で し ょ う
問 の逆 平 行 β構 造 に限 られ て い ます 。 前 者 は 本 質 的 に短
か。
距 離 間 の相 互 作 用 に よ って形 成 され る もの で す が,
G
β構
そ こは た いへ ん重 要 な点 だ と思 い ます 。 実 際, こ
造 は 長 距 離 相 互 作 用 に よっ て も形 成 され ます 。 中 間 的 あ
れ まで モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュール と して と りあ げ られ た も
る い は過 渡 的 に形 成 され る二 次 構 造 は短 距離 間 の相 互 作
の のな か に は, 単 に 貧溶 媒 に移 され た こ とに よ り “
グシ ャ
用 に基 づ くも の に限 定 す べ き で は な い で し ょうか 。
ッ” と凝 集 した にす ぎ な い も の も含 まれ て い る と思 わ れ
ます 。 と ころ が, 興 味 深 い こ とは, 多 くの モル テ ン ・グ
G
た しか に, 二 次 構 造 とい っ て も αヘ リ ック ス と β
構 造 では 性 質 が相 当異 な ります 。 しか し, フ レー ム ワー
ロ ビ ュ ール は そ こに相 当量 の二 次 構 造 を も っ て い る とい
クモ デル で い う二 次 構 造 の形 成 は β構 造 の 形成 も含 ん で
うこ とで す。Baldwin
い ます 。 これ ま で構 造 形 成 の初 期 中 間 状 態 あ るい は モル
は, 単 に貧 溶 媒 中 で凝 集 した 状 態
は “collapsed state”,他 方, 特 異 的 で安 定 な立 体 構 造 を
テ ン・ グ ロ ビ ュール 状 態 に存 在 す る と して と りあ げ られ
も った 状 態 は従 来 どお りモル テ ン ・グ ロ ビ ュール とよ ん
た 二 次 構 造 は多 くの場 合 αヘ リッ クス構 造 で す が,
では ど うか と提 案 して い ます^<11,12)>。
しか しな が ら, 貧 溶
造 が 見 いだ され た 例 も い くつ か あ りま す 。 代 表 的 な も の
媒 中 で 凝 集 した 状態 と特 異 的 な立 体 構 造 を も った モル テ
と して カル ボ ニ ッ クア ン ヒ ドラー ゼ の 中 間 的 状 態 が あげ
ン ・グ ロ ビ ュー ル の間 に は っ き り と した 区別 が あ る のか
られ ます^<6)>。
β構
ど うか とい う問題 は ま った く解 決 され て お らず, 後 でふ
れ ます が, モ ル テ ン ・グ ロ ビュ ール の実 験 的 な概 念 を曖
5.
モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュ ー ル の 分 子 構 造
昧 な もの に して い ます 。
また, モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュール は構 造 形 成 の中 間 状 態
と受 け 取 られ て きま した が, い ま質 問 され た視 点 か らみ
T
モル テ ン ・グ ロ ビ ュール とい う言 葉 が 使 わ れ た 初
期 に は, そ の状 態 は 明確 に定 ま った もの なの か, あ るい
る と, む しろ ネ イ テ ィブ 構 造 が安 定 で あ る 環 境 に お い
は相 互 につ ね に変 換 して い る複数 の構 造 の 集 合 体 で あ る
て, 蛋 白質 が とる変 性 状 態 とみ なす こ とが で き ます 。 た
か, 議 論 が分 か れ て い た と思 い ます 。 図1に 仮 想 的 に示
とえ ば, そ の よ うな条 件 下 で の ア ミ ドプ ロ トンの重 水 素
した よ うな “分 子 構 造” が 明 らか に な った例 は あ る ので
交 換 反応 は, 一 時的 に形 成 され る変 性 状 態 を通 して起 き
し ょ うか 。
775
32
G
蛋 白 質
核 酸
酵 素
モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュ ール 状 態 の二 次構 造 は, お も
にCDス
ペ ク トル の 測 定 に よ つて 検討 さ れ て きま した。
Vol. 37
No. 4
(1992)
cの モル テ ン ・グ ロ ビ ュール に対 す る塩 の効 果 な どを調
べ て き ま した が, 協 同 的 な 熱変 性 を示 す とい う点 以外 は
得 られ た結 果 を め ぐ って, そ の よ うな議 論 が 交わ さ れ ま
他 の蛋 白 質 の モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュー ル とた い へ ん よ く似
した。 モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュ ール 構 造 は, ネ イ テ ィ ブ構 造
て い ま す^<22,23)>。
シ トク ロムcな
と比 較 す る と, きわ め て ゆ ら ぎの 大 きな 構 造 で, X線 結
モ ル テ ン ・グ ロ ビ ゴ ール の安 定性 の 熱 力 学的 し くみ を 明
晶解 析 の対 象 とは な りえ な い で し ょう。 しか し, これ ま
らか に す る こ とが, 蛋 白質 の構 造 形 成 を 明 らか にす る う
で に α-ラ ク トアル ブ ミ ン^<15)>,
ア ポ ミオ グ ロビ ン^<16)>,
シト
え で 重 要 で あ ろ うと考 え て い ます 。
ク ロ ムc^<17)>に
つ い て プ ロ トンNMRと
ど協 同的 な熱 変 性 を示 す
重水素交換を組み
合 わ せ た 実 験 が 行 なわ れ ま した 。 そ の結 果, これ らの 蛋
6.
白 質 の モル テ ン ・グ ロ ビ ュール 状 態 にお い ては, 特 定 の
モ ル テ ン ・グ ロ ビュー ル : メ リ ッ ト
とデ メ リ ッ ト
部 分 に ネイ テ ィ ブ状 態 にお け る も の と同 じ疎 水 領 域 や α
ヘ リ ックス が 比 較 的 安 定 に形 成 され て い る こ とが 示 され
T “ モル テ ン ・グ ロ ビ ュ ール” は 単 に蛋 白質 の 構 造
ま した 。 モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュール 構 造 は蛋 白質 構 造 のひ
形 成 の研 究 者ば か りでは な く, 細 胞 生 物 学 の 分 野 の 人
とつ の 様 式 と して認 識 され て き て い る と考 え て い ます 。
人 に よ っ て も使 わ れ る よ うにな ってき ま した 。 た とえ ば
Database Center for Life Science Online Service
T
Privalov は熱 測 定 に よ り蛋 白質 の熱 力 学 的 安 定 性
『熱 シ ョ ッ ク蛋 白質 のひ とつ であ る シ ャペ ロ ニ ンと 基 質
を 明 らか に して き ま した 。 彼 は蛋 白質 の変 性 は, ネ イ テ
蛋 白質 が 相 互 作 用 した と き, 基 質 蛋 白質 は モル テ ン ・グ
ィ ブ状 態 と高 度 な変 性 状 態 の二 状 態 間 の転 移 反 応 (二 状
ロ ビ ュール 構 造 で あ る』 とい った 報 告 が あ ります^<24)>。
こ
態 転 移) と して説 明 で き る こ とを示 してい ます 。 彼 は モ
の よ うに “モル テ ン ・グ ロ ビ ュール” が 広 く使 わ れ る よ
ル テ ン ・グ ロ ビ ュール の存 在 を 否 定 は して い ませ ん が,
うにな っ て きた 原 因 は ど こに あ るの で し ょ うか 。
そ の熱 力 学 的 な存 在 意 義 につ い て は否 定 的 です 。 モ ル テ
G
モル テ ン ・グ ロビ ュ ール の 概 念 が 生 まれ る 以 前
ン ・グ ロ ビュ ール 構 造 とは, 変 性 状 態 とい うマ ク ロな 状
に, す でに さ ま ざ まな 蛋 白質 の 中 間 的 状 態 の 存 在 が 知 ら
態 内 の 分 子 分 布 が 変 わ った こ とに よ る見 か け の構 造 変 化
れ て い ま した 。 そ して, 高 次 構 造 形成 の 過 程 に お け るそ
で あ り, 熱 力 学 的 に は モル テ ン ・グ ロ ビュ ール は 単 独 の
れ ら の位 置 づ け が 議 論 され て き ま した 。 そ れ まで の モ デ
状 態 では な い とい う立 場 を とっ て い ます (た とえ ば 文 献
ル に比 べ て モル テ ン ・グ ロビ ュ ール の ユ ニ ー クな 点 は,
18)。 モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュール 状 態 の 構 造 解 析 はか な り
分 子 の コ ンパ ク トさ, 疎 水 性 相 互 作 用 の重 要 性 な どを 主
す す ん で きた よ うです が, そ の存 在 が熱 力 学 的 にあ ま り
張 した こ とな どに あ る と思 い ます 。 しか し, 何 よ りも
意 味 が な い と な る と興 味 が半 減 しませ んか 。
“モル テ ン ・グ ロ ビ ュール” とい う 概 念 に 多 くの 研 究 者
G
Privalov の 熱力 学 的 研 究 は 卓越 した も の です が,
モ ル テ ン ・グ ロ ピ ュール 構 造 の研 究 は まだ 始 ま った ば か
が 注 目 した 理 由 は, 混 沌 と して い た 蛋 白質 の構 造 形成 機
構 研 究 に, 理 解 しやす い も っ とも ら しい モ デル を 示 した
りで, そ れ が 熱 力 学 的 に意 味 が な い と早 ま っ て結 論 して
こ とに あ る と思 い ます 。 現 在, あ る蛋 白質 の新 た な 中 間
は い け な い と思 い ます 。 モル テ ン ・グ ロ ビ ュール の特 徴
的 構 造 が 見 つか った とき, 多 くの 場 合,
の ひ とつ と して協 同的 な 熱 変性 を しな い こ とが あげ られ
ン ・グ ロ ビ ュール か否 か とい う基 準 で研 究 が 進 め られ て
ま した
い る こ とが それ を よ く反 映 して い ます 。
(表1)。
この こ とが エ ンタル ピー的 に高 度 な変
性 状 態 と区 別 で きな い (疎 水 的相 互 作 用 が モル テ ン ・グ
ロビ ュ ール の安 定 化 に重 要 で な い)と い う Privalov
そ れ は モル テ
ま た 先 に述 べ ま した よ うに速 度 論 的 な実 験 か ら モル テ
の
ン ・グ ロ ビ ュー ル が構 造 形 成 の 中間 体 で あ る とい う推 論
結 論 につ な が って い ま す。 と ころ が, 一 方 で は モル テ
を支 持 す る証 拠 が 得 られ た こ とも重 要 です 。 そ して さ ら
ン ・グ ロ ビ ュール 構 造 の安 定化 に 疎 水 的相 互 作 用 が重 要
に 細胞 生物 学 の分 野 か ら蛋 白質 の不 安 定 化 状 態 の重 要 性
で あ る とい う こ と も示 唆 され て い ます^<7,10,11,19,20)>。
が 注 目さ れ る よ うに な った こ とも, モル テ ン ・グ ロ ピ ュ
関 連 した 問題 と して, モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュー ル で あ る
と され て い る シ トク ロムcの 状 態 は協 同 的 な 熱 変性 を示
ール が 流 行 に な った大 きな要 因 で し ょ う。
T
一方, “ モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュール” とい う用 語 の
す か ら^<21)>,
そ の 範 疇 に は入 れ る こ とが で きな い と Ptit
意 味 が 明確 で な い と して, そ の 使用 を意 識 的 に避 け る人
synは
も見 うけ られ ます 。
述 べ て い ます^<6)>。
しか し, シ トク ロムcの モ ル テ
ン ・グ ロ ビ ュー ル の 熱 変 性 は 本 質 的 に ネ イ テ ィ ブ蛋 白質
とは異 な った 特 徴 を も って い ます 。 私 た ち は シ トク ロム
G
モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュー ル の定 義 は表1あ
るいは図
1に 示 され る よ うに きわ め て 明快 で あ る と思 い ます 。 と
モ ル テ ン ・ グ ロビ ュ ー ル を め ぐ っ て 83
ころ が 実 験 的 に 観 測 され た モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュール は,
らは い くつ か の蛋 白質 の変 性 を二 状 態 転 移 の モ デル に従
詳 細 に 調 べ れば 調 べ るほ ど定 義 と矛 盾 す る点 が で て きま
っ て解 析 しま した 。 これ らの研 究 に お け る解 析 が た いへ
した 。 い くつ か の蛋 白質 で はNMRで
二 次構 造 の 位 置
ん み ご と であ った こ とか ら, 変 性 とは す な わ ち 蛋 白質 の
が 明 らか に され た と先 に 述 べ ま した が, 同 時 に わ か った
分 子 が コ ンパ ク トな 粒 状 か ら ラ ン ダ ム コイ ル 状 態 に一 気
こ とは ネ イ テ ィ ブ構 造 に 存 在 す る二 次 構 造 の 一 部 は 壊 れ
に 飛 び 移 る とい った イ メー ジ が定 着 し ま した 。
て い る ら しい とい うこ とで す 。 また, 三 次 構 造 の す べ て
当 時, 私 は Tanford
の 研 究 室 に い ま した 。そ の よ
うな イ メ ー ジ を彼 が 蛋 白質 に つ い て も って い た とは 思 い
が 形 成 され て い る ら しい とい うこ とも明 らか に され て き
ませ ん 。 リ ゾチ ーム の 酸 性pHに
ま した 。 これ も定 義 に反 します 。
グ ア ニ ジ ン変 性 の産 物 に比 べ て, ネ イ テ ィ ブ状 態 に近 い
“ネ イ テ ィブ構 造 に近 い コ ンパ ク トさ” と “二 次 構 造
お け る熱 変 性 の産 物 が
こ とを 示 す デ ー タが 彼 の研 究 室 で 得 られ, そ の 研 究 の進
の 保 持”, しか し “崩 れ た 三 次 構 造” とい う 旗 印 を 掲
行 を Tanford
げ て, α-ラ ク トアル ブ ミン, シ トク ロ ムcな ど の モル テ
彼 は 気 体 の爆 発 反 応 の速 度 論 か らス タ ー トした 研 究 者 で
ン ・グ ロ ビ ュール が 登 場 しま した 。 と ころ が, そ の後 に
い ろ い ろ な蛋 白質 を 調 べ てい くと, 中 間 状 態 にお け る二
次 構 造 含 量,
Database Center for Life Science Online Service
T
が 崩 れ て い る の では な く, 部 分 的 に は 特 異 的 な 三 次 構 造
は 非 常 に興 味 を も っ て 眺 め て い ま した 。
す 。 そ の 後 も低 分 子 の反 応 速 度 論 の 研 究 者 の メ ン タ リテ
ィを 維 持 して い ま した 。 した が って, 小 綺 麗 に 数 式 で も
コ ンパ ク トさに は さ ま ざ まな も のが あ る よ
っ て解 析 で き る対 象 に重 点 を置 きが ち で した 。 彼 の変 性
うです (た とえ ば 文 献25)。 これ で は, 中 間 的 構 造 す な わ
の研 究 の最 終 段 階 で は, 中間 状 態 の 存在 を 前 提 と した 速
ち モル テ ン ・グ ロ ビュ ール とい って い る の と同 じでは な
度 論 の解 析 法 も検 討 しま した^<26)>}。
い か とい う批 判 的 意 見 もあ ります 。 先 に ふ れ ま した よ う
に, 貧 溶 媒 中 で の凝 集 状 態 と特 異 的 な モ ル テ ン ・グ ロ ビ
8.
変性状態の多様性
ュ ール とを 明確 に区 別 で き るか は 明 らか で あ りませ ん 。
最 初 提 示 され た モデ ル 比 近 い モル テ ン ・グ ロ ビ ュ ール が
G
最 近 で は, モル テ ン ・グ ロ ビ ュ ール を 含 め 変 性 状
普 遍 的 に 存 在 す る のか, あ るい は 中 間 的 構 造 は 蛋 白質 の
態 に も さ ま ざ まな 形 態 が あ る こ とが,
種 類 に よ っ て コ ンパ ク トな もの か らポ リペ プチ ド鎖 が か
され る よ うに な っ て き て お ります 。 た とえ ば, Dill
な り広 が った 構 造 (図1のb)
Shortle は,
まで あ るの か 明 らか で は
あ りませ ん 。 今 後 明 らか に す べ き問題 が数 多 く残 され て
い ます 。 当 面 は, 意 味 が 明 確 で な い まま に, モ ル テ ン ・
グ ロ ビ ュ ール とい う用 語 が 使 わ れ, そ れ に対 応 す る もの
と して 表1あ
るい は 図1cに
示 さ れ た よ うな もの が頭 に
描 か れ る とす るな らば, 概 念 だ け が先 走 って い る と非 難
さ れ て も仕 方 が な い で し ょ う。
Tanford
と
この 問題 に つ い て 詳 しい 検 討 を行 な い, 優
れ た 総 説 を書 い てい ます^<27)>。
変 性 状 態 に 関す る総 説 が 発
表 され る とい うこ とは そ れ だ け変 性 状 態 の重 要 性 が 認 識
され て い る こ とを 反 映 して い ます 。
T
そ の総 説 の 特 徴 は 変 性 蛋 白質 の溶 存 状 態 に 関 して
の議 論 に お い て, 高 分 子 溶 液 論 の概 念 を導 入す る こ とに
よ って, 新 しい切 り口を 出 して 論 議 して い る と ころ に あ
る と感 じ られ ます 。Dill
7.
あ らた め て 指 摘
の研 究
は 高 名 な 高 分 子 科学 者 Flory
の 弟子 で あ る との こ とで す 。 彼 が 生 化 学 畑 の蛋 白質 の 研
究 者 に は欠 け て い る 視 点 に 立 っ て蛋 白質 の構 造 変 化 を 眺
T
さ て, 蛋 白質 の ア ンフ ォール デ ィ ン グ と リフ ォー
ル デ ィ ン グに お い て 中間 状 態 が存 在 す る こ とが, 何 か 物
め ず ら しい こ との よ うに受 け取 られ て い る よ うに見 うけ
め る こ とが で き る の は, 育 った 環 境 が 違 っ て い る か らで
し ょ う。
G
Dill は さ ま ざ ま な 変 性 構 造 の存 在 を理 論 的 な立 場
られ ます 。 この背 景 に は, か っ て蛋 白質 の変 性 は二 状 態
か ら説 明 して い ます 。 彼 は モル テ ン ・グ ロ ビ ュール な ど
転 移 タ イ プ で あ る とい うイ メ ー ジ を強 調 しす ぎた こ とが
の 中間 的 状 態 は エ ネ ル ギ ー的 に は ネ イ テ ィブ状 態 と大 き
尾 を引 い て い る よ うに思 い ます 。
G
Tanford
くか け離 れ て お り, 変 性 状 態 の範 疇 に含 まれ る と考 え て
らの蛋 白質 の変 性 に関 す るみ ご とな一 連
い ます (図2参 照)。 他 方, Shortle は 蛋 白質 の安 定 性 に
の 研 究 成 果 の影 響 が あ る の で は な い で し ょ うか 。 彼 らは
変 性 状 態 が大 きな 寄 与 を す る こ とを黄 色 ブ ドウ状 球 菌 の
濃 厚 な尿 素 や塩 酸 グア ニ ジ ンに よる変 性 を受 け る と多 く
ヌ ク レア ー ゼ の ア ミノ酸 置 換 変 異 蛋 白質 を用 い て 実験 的
の蛋 白質 が ラ ン ダム コイル の状 態 に な る こ とを高 分 子 溶
に 示 して い ま す^<27)>。
液 論 の ア プ ロー チ を用 い て 明 らか に しま した 。 ま た, 彼
蛋 白質 のネ イ テ ィ ブ状 態 の変 性 状 態 に対 す る安 定 性 は
777
84
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 37
G
No. 4
(1992)
蛋 白質 の構 造 形 成 反 応 過 程 に お け る, 各 状 態 の エ
ネ ル ギ ー関 係 は 図2の
よ うな もの で あ ろ う と考 え られ て
い ます 。も っ とも高 い エ ネル ギ ー の 山 は つ ね に モル テ ン・
グ ロ ビ ュール とネ イ テ ィブ 構 造 の 中 間 に あ ります 。 通
常, 平 衡 論 的 に は モル テ ン ・グ ロ ビ ュー ル は ネ イ テ ィ ブ
構 造 あ る い は高 度 な変 性 構 造 に 比 べ 不安 定 で蓄 積 しませ
ん。 す なわ ち モル テ ン ・グ ロ ビ ュール が存 在 す る場 合 で
も平 衡 論 的 に は二 状 態 転 移 は よい 近 似 と して成 立 しま
す 。 リ フ ォール デ ィ ン グ反 応 で は モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュー
ル か ら ネ イ テ ィブ構 造 に移 る とき に越 え な けれ ば な ら な
い 山 が 高 い の で, モル テ ン ・グ ロ ビ ュール が過 渡 的 に蓄
積 します 。 一 方, ア ンフ ォール デ ィ ン グ反 応 で は ネ イ テ
ィブ状 態 か ら高 い 山 を越 す と, 小 さ な 窪 み は一 気 に飛 び
越 して しま うの で, モル テ ン ・グ ロ ビ ュール の状 態 に止
Database Center for Life Science Online Service
ま る こ とは あ りませ ん。
T
図2.
N
: ネ イ テ ィ ブ状 態,
点)。(c)
い ち ば ん大 き な エ ネル ギ ー の 山 が あ る とい う話 です が,
蛋 白 質 の 構 造 形 成 能 に関 与 す る各 状 態 の
エ ネ ル ギ ー図
MG
具 体 的 に ど うい う こ とで し ょ う。
: モ ル テン ・グ ロ ビ ュー ル
状 態, U : 高 度 な 変 性 状 態, A
(a)
Nが 安 定 。(b)
NとUが
モル テ ン ・グ ロ ビ ュール とネ イ テ ィブ構 造 の間 に
G
: 構 造 形 成 の遷 移 状 態 。
同 じ安 定 性 (変 性 の 中
蛋 白質 を蛋 白質 ら し く して い る の が こ の 山 です。
モル テ ン・グ ロ ビ ュール は相 当量 の二 次 構 造 を も ち, コン
Uが 安 定 。
パ ク トさ を備 え て い ます が, け っ して蛋 白質 に本 来 の機
能 を与 え る よ うな高 次 構 造 を も っ て は い ませ ん 。 ネ イ テ
よ く知 られ て い る よ うに, せ い ぜ い5∼10kcal/molの
き
わ め て 低 い も の です 。 す な わ ち ネ イ テ ィブ構 造 の安 定 性
は 変 性構 造 との 微 妙 な エ ネル ギ ーバ ラ ンス に よっ て決 ま
って い ます 。 そ こ で ネ イ テ ィブ構 造 の安 定 性 を理 解 す る
に は 当 然, ネ イ テ ィブ状 態 と変 性 状 態 の双 方 を理 解 す る
ィブ状 態 の蛋 白質 の構 造 の も っ とも大 き な特 徴 は, 結 晶
構 造 に見 られ る よ うな きわ め て密 に詰 ま った 原 子 間 の相
互 作 用 で し ょ う。 また, 側 鎖間 の特 異 的 な相 互 作 用 (水
素 結 合, 塩 結 合 な ど) も重 要 で し ょ う。 こ の よ うな 相 互
作 用 を形 成 す る のが フ ォール デ ィ ング の律 速 段 階 だ と思
こ とが 必 要 です 。 と こ ろが 変 性 蛋 白質 の構 造 を詳 細 に研
い ます 。 特 異 的 な 相 互 作 用 は 蛋 白質 の長 い進 化 の過 程 を
究 す る こ とは む ず か し く, また, 変 性 状 態 とはす な わ ち
経 て獲 得 され て きた も の で し ょ う。
ラ ン ダ ム コ イル とい う偏 見 も あ り, これ ま で あ ま り研 究
多 くの合 成 ポ リペ プチ ドが 二 次 構 造 を 形 成 す る こ とば
され て き ませ ん で した 。 こ こ に至 っ て, 蛋 白質 の変 性 状
よ く知 られ て い ます 。 この よ うな 構 造 は 蛋 白質 中 の そ れ
態 を も っ と詳 し く知 る必 要 が あ る こ とが認 識 さ れ る よ う
に は ほ ど遠 い し, モル テ ン ・グ ロ ビュ ール 中 のそ れ と も
に な った よ うです 。
か な り異 な っ て い ます 。 しか し, ネ イ テ ィ ブ蛋 白質 を モ
デル と して 適 当 な ア ミノ酸 配 列 の ポ リペ プチ ドを 合成 す
9.
な ぜ リフ ォー ル デ ィ ン グ の 過 程 で
る と, モル テ ン ・グロ ビュ ール とか な り似 た 構 造 を も っ
た も のが 得 られ ます 。 私 た ちは,
T
と ころ で, 蛋 白質 の立 体 構 造 の変 化 の途 中 で過 渡
構 成 され る52残
リジ ン と ロイ シ ンか ら
基 の 合成 ペ プチ ドを つ く り, そ れ らを
的 に モ ル テ ン ・グ ロビ ュ ール の よ うな中 間 状 態 が生 成 す
モル テ ン ・グ ロビ ュ ール の モ デル と した 研 究 を 行 な い ま
る こ とが 実 験 的 に認 め られ てい る の は, リフ ォール デ ィ
した^<28)>。
また, Richardson
ン グの過 程 に お け る場 合 が 圧 倒 的 に多 い よ うです 。 ア ン
リ ック スか らな る79残
フ ォール デ ィ ン グの 過 程 で モル テ ン ・グ ロ ビ ュール 状 態
ン し, 大 腸 菌 に 発 現 させ, そ の 立 体 構 造 を検 討 して い ま
の存 在 が確 認 あ るい は 推 定 され た 例 は あ る の で し ょ う
す^<29)>。
彼 女 ら はそ の人 工 蛋 白質 を “Felix”と よん で い ま
か 。 こ の ア ンバ ラ ンス を どの よ うに 説 明 した ら よい で し
す 。Felix
ょ うか 。
と ります が, 安 定 性 の 低 さな どか ら モル テ ン ・グ ロ ビ ュ
778
らの グル ー プは4本 の αヘ
基 の新 規 な 人 工蛋 白 質 を デ ザ イ
は αヘ リッ クス か らな る予 想 どお りの構 造 を
85
モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュー ル を め ぐ って
ール に相 当 す る構 造 で あ ろ う と述 べ て い ます 。
造, あ るい は 安 定 性 を 研 究 す る人 た ち の間 で は きわ め て
つ くるの は そ れ ほ ど困難 で は な い よ うで す 。 そ れ に 比 べ
ポ ピ ュ ラー な 用 語 に な って き ま した 。 そ の使 用 を 以前 は
る と きわ め て コ ンパ ク トに詰 ま った構 造 を も った ネ イ テ
避 け て い た 人 の な か に も使 いは じめた 人 が見 うけ られ ま
ィブ状 態 に あ る新 規 な蛋 白質 を 新 た に 作製 す る こ とは む
す 。 さ らに は 熱 シ ョ ック蛋 白質 との相 互 作 用 な ど細 胞 内
ず か しい と思 い ます。
の 過 程 に お い て もそ の 重 要 性 が 示 唆 され る よ うに な って
T
を は じめ と して 多 くの研 究 者 が, 新
き ま した 。一 方 では モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュール とい う言葉
規 に人 工 蛋 白質 を つ くる努 力 を 続 け て い ます 。 そ の よ う
Richardson
は 必 ず し も実 態 を表 わ して い な い の も事 実 で あ ろ う と思
な試 み にお け る最 初 の作 品 が モル テ ン ・グ ロ ビ ュ ール 的
わ れ ます 。 今 後, 蛋 白質 の 中間 的 構 造 あ る い は変 性 構 造
な も の で あ る こ とは興 味 深 い こ と です 。 ど の よ うに して,
に 関 す る研 究 が 進 ん で い った とき, モル テ ン ・グ ロ ビ ュ
最 後 の ネ イ テ ィブ蛋 白質 状 の も のへ の障 壁 を 乗 り越 え る
ール とい う用 語 は ど うな っ て い くの で し ょ うか。
か は, 困難 です が 試 行 の効 果 は評 価 しや す い で し ょ う。
Database Center for Life Science Online Service
ぼ10年 が経 過 し よ うと して い ます 。 それ は蛋 白 質 の 構
モル テ ン ・グ ロ ビ ュール 状 態 を とる蛋 白質 を人 工 的 に
G
そ れ は ま さ に, 今 後 の研 究 の 動 向 に か か って い る
そ れ に反 して, す で に存 在 す る天 然 の蛋 白質 に お い て は,
と 思 い ます 。 蛋 白質 の 普 遍 的 な 中 間 状 態 と して の特 徴
進 化 の過 程 で の試 行 の成 功 と不 成 功 の両 方 の産 物 を抱 え
を “モル テ ン ・グ ロ ビ ュー ル” とい う言 葉 が表 わ して い
込 ん で い るの で, 新 た に人 為 的 に加 えた 試 行 の効 果 が判
る の で あれ ば, 多 少 矛 盾 す る点 が あ って も今 後 も使 わ れ
定 しに くい 場 合 が 少 な く あ りま せ ん。 モル テ ン ・グ ロ
るだ ろ う と思 い ます 。 いず れ に して も モル テ ン ・グ ロ ビ
ビ ュール か らの ア プ ロー チ は長 大 な ポ リペ プチ ドの有 機
ュー ル とい う用 語 を 使 用 す る場 合 は で き るだ けそ の実 体
合 成 技 術 の進 歩 に 助 け られ て, 蛋 白質 の構 造形 成 の メ カ
を 正確 に説 明す る こ とが 必 要 で あ る と考 え ます 。 モ ル テ
ニ ズ ム の解 明 に も大 き く貢 献 す る こ とが期 待 され ます 。
ン ・グ ロ ピ ュ ール を 叩 き台 と して, 蛋 白質 の安 定 性, 構
造 形成 の機 構, 生 体 反 応 にお け る過 渡 的 な変 性 状 態 の 生
10.
変 性/再
生 と ア ン フ ォー ル デ ィ ン グ/
理 的 意 義 な ど さ ま ざ ま な 問題 の研 究 が発 展す る こ とが 期
待 され ます 。
リフ オ ー ル デ ィ ン グ
T
T
この対 話 で は蛋 白質 の “変 性 (denaturation)” と
ア ン フ ォール デ ィ ン グ (unfolding)
を区 別 して使 い ま し
た。 そ の理 由 を述 べ てお き ま し ょ う。
G
Dill と Shortle^<27)>
も指 摘 して い る よ うに, さ ま ざ
ま な様 式 の変 性 状 態 の存 在 が 明 らか に な っ て きつ つ あ り
ま す 。 今後 は, 蛋 白質 の変 性 と蛋 白質 の ア ンフ ォール デ
モル テ ン ・グ ロ ビ ュー ル を め ぐる 研 究 の 歴 史 か ら
今 後 の課 題 にわ た っ て, 誌 上 対 話 を進 め て き ま した 。 モ
ル テ ン ・グ ロ ビ ュール の概 念 とそ の 意 義, あ る い は問 題
点 な どにつ い て読 者 の皆 さ ん の 理 解 が 深 ま る の に少 しで
も役 立 った な らば 幸 い と考 え て い ます 。
本稿を脱稿す るに先立 って桑島邦博博士 (北海道大学理 学部
高分子学科) に原稿を送付 しご意見を求めま した。折 り返 しい
ただ いた有益 な助言 に感謝 します。
ィ ン グは 区 別 して使 うべ き です 。 蛋 白質 の変 性 とは機 能
を 保 持 した立 体 構 造 が失 わ れ る こ とを意 味 して お り, 構
文
献
造 の崩 壊 とは 必 ず しも 同一 で は あ りませ ん。 モル テ ン ・
グ ロビ ュー ル に 代表 され る 中 間状 態 は二 次 構 造 とい う点
1)
で は蛋 白質 は か な り折 りた た ま れ た 状 態( folded state)
で す 。 再 生 (renaturation)
は機 能 的立 体 構 造 へ の巻 き
Ohgushi,
24
2)
Dolgikh,
E. V.,
戻 りを 意 味 します が, フ ォール デ ィ ン グ (folding) あ る
M.,
D.
Lett.,
3) ˜a“c•ºˆò : •¶•¨•¨—•,
ュ ール 構 造 へ の フ ォール デ ィ ン グ” とい う表 現 が 許 され
4)
り
5)
Kuwajima,
6)
Ptitsyn,
に
Gilmanshin,
V.
R.
E.,
Yu.,
311-315
E.,
164,
21-
I.,
Brazhnikov,
Semisotnov,
Ptitsyn,
O.
G.
B.:
V.,
FEBS
(1981)
Babul,
284
J.:
(1991)
Biochemistry,
14,
(1975)
O.
Ptitsyn,
O.
tionsand
モ ル テ ン ・グ ロ ビ ュ ー ル と い う用 語 が 現 わ れ て ほ
Lett.,
K.:
Proteins,
B.:
J.
6,
Prot.
103
Chem.,
(1989)
6,
273-293
(1987)
7)
T
FEBS
31,
Stellwagen,
5135-5140
わ
A.,
S.
136,
しも機 能 的 構 造 であ る必 要 は な く, “モ ル テ ン ・グ ロ ビ
お
A.:
. Bychkova,
Venyaminov,
い は リフ ォール デ ィ ン グ (refolding) とい う場 合 は 必 ず
ます 。
Wada,
(1983)
B.
T.,
Dill,
B.,
Semisotnov,
Forces
in
K.
A.),
Protein
AASA,
G.
V.:
Folding
Washington,
Conforma
(eds.
Nall,
DC
779
86
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol.37
No. 4
(1992)(1991)8) Koseki, T., Kitabatake, N., Doi, E.: J. Biochem.,1
127-138 (1988)
19)
20)
21)
22)
23)
24)
25)
26)
Database Center for Life Science Online Service
27)
28)
29)
780
Mitaku, S., Ishido, S., Hirano, Y., Ito, H., Ka
taoka,R., Saito, N.: Biophys. Chem., 40, 217222 (1991).
Xie, D., Bhakuni, V., Freire, E.: Biochemis
try,30,
10673-10678 (1991)
Potekhin, S., Pfeil, W.: Biophys. Chem., 34,
55-62 (1989)
Goto, Y., Calciano, L. J., Fink, A. L.: Proc.
Natl. Acad. Sci. USA, 87, 573-577 (1990)
Goto, Y., Takahashi, N., Fink, A. L.: Bioche
mistry,29,
3480-3488 (1990)
Martin, J., Langer, T., Boteva, R., Schramel,
A., Horwich, A. L., Hartl, F.-U.:
Nature,
352, 36-42 (1991)
Sugawara, T., Kuwajima, K., Sugai, S.: Bio
chemistry,30,
2698-2706 (1991)
Ikai, A., Tanford, C.: Nature,
230, 100-102
(1971)
Dill, K. M., Shortle, D.: Ann. Rev. Biochem.,
60, 795-825 (1991)
Goto, Y., Aimoto, S.: J. Mol. Biol., 218, 387396 (1991)
Hecht, M. H., Richardson, J. S., Richardson, D.
C., Ogden, R. C.: Science, 249, 884-891 (1990)
Fly UP