...

NETIS プラス Q&A 集 - NETISプラス|新技術情報データベース

by user

on
Category: Documents
20

views

Report

Comments

Transcript

NETIS プラス Q&A 集 - NETISプラス|新技術情報データベース
平成 26 年 4 月 1 日
NETIS プラス
Q&A 集
ボンテラン工法研究会事務局
事務局長 森 雅人(環境科学博士)
Q1.ボンテラン工法で使用するボンファイバー(古紙破砕物)は有機物であるが、数年後に分解してしまい、ボ
ンテラン特有の強度特性や乾湿繰返し耐久性が損なわれてしまうのでは?
A1.セメントや石灰系の固化材と共に混合されたボンファイバーは基本的に分解しません。
「ボンファイバー」の長期安定性については、(1)アルカリ維持性能確認試験、(2)実施工現場におけ
る経年変化確認試験を実施した結果、降雨や酸性雨の影響により改良土内部は中性化しないことを確認
している。したがって、改良土は長期間アルカリ環境が維持されるため、ボンファイバーを分解する糸
状菌や白色腐朽菌の生育を妨げ、もしくは死滅するため、ボンファイバーが長期間残存することが確認
された。
したがって、ボンファイバーが長期間分解しないため、ボンテラン改良土が有する強度特性や乾湿繰
返し耐久性は長期間維持されることになる。
(1)生分解試験およびアルカリ維持性能確認試験
ボンファイバー(古紙破砕物)は、主にセルロースとリグニンで構成されており、一般的にセルロー
スは糸状菌、リグニンは白色腐朽菌によって強力に分解される。また、糸状菌や白色腐朽菌に好適な pH
範囲は普通 6~9 付近であるため、セメントや石灰等で処理された改良土は pH11 程度のアルカリ性を保
つことから、これらの菌は生育することができない。
そこで、ボンテラン改良土が実際の現場で再利用される環境を模擬するため、試験管に現場から採取
した泥とボンファイバー(紙片)、培地を投入し,、試料の pH を中性(セメント未添加を再現)とアル
カリ性(セメント添加を再現)に調整し、所定期間保管した後の分解性を確認した。試験状況を図-1 に、
pH ごとの生分解性試験結果を図-2 に示す。その結果、pH7.0 に調整した試料はボンファイバーが大部分
分解したが、pH9.5 以上に調整した試料は分解しないことを確認した。
図-1 試験状況
左:泥の採取状況,中:試験状況,右:試料試験状況
-1-
pH7.0 調整試料
BF の分解あり
pH9.5 調整試料
BF の分解無し
pH12.0 調整試料
BF の分解無し
図-2 pH ごとの生分解性試験結果
次に、ボンテラン改良土内部のアルカリ環境を明らかにするため、①人工降雨試験、②酸性雨模擬試
験を実施した。図-3 に人工降雨試験状況、図-4 に酸性雨模擬試験状況を示す。
その結果、①人工降雨試験ではボンテラン改良土に約 50 年分に相当する降雨に暴露されても改良土
中のアルカリ環境が維持されることを確認した。②酸性雨模擬試験ではボンテラン改良土が約 160 年分
に相当する酸性雨に暴露されても、改良土中のアルカリ環境が維持されることを確認した。
したがって、ボンテラン改良土は降雨や酸性雨の影響により改良土内部は中性化せず、長期間アルカ
リ環境を維持することが確認された。
13
12
改良土pH
11
10
9
セメント50 締固め無し
セメント50 締固め有り
セメント60 締固め有り
セメント80 締固め有り
8
7
0
図-3
10
20
30
降雨年数(年)
40
50
人工降雨試験
12
改良土pH
10
8
セメント50 締固め無し
セメント50 締固め有り
セメント60 締固め有り
セメント80 締固め有り
硫酸溶液
6
4
2
0
図-4
1
酸性雨模擬試験
-2-
2
3
4
浸漬日数(日)
5
6
7
(2)実施工現場における経年変化確認試験
本試験は、
「平成 13 年度大石田地区消流雪揚水機場工事築造工事」で発生した建設汚泥をボンテラン
改良した盛土箇所を長期間サンプリングし、①pH 測定、②目視による繊維有無、③強度(コーン指数)
からボンファイバーの経年変化を確認した。表-1 に工事概要、表-2 に経年変化確認試験結果を示す。
表-1
工事名
発注者
場 所
改良目標
概 要
工事概要
平成 13 年度大石田地区消流雪揚水機場工事
国土交通省東北地方整備局新庄河川事務所
山形県北村山郡大石田町大石田地内
第 3 種処理土(qc=400kN/m2 以上)
本工事は、消流雪用水用の揚水機場築造工事で、揚水機場の基礎杭(CJG 工法)の施工に伴
って発生した自硬性汚泥(約 W0=300%)をボンテラン工法で改良し、改良土を一旦仮置きした
後、着水槽保護のための盛土材として再利用した。平成 14 年 12 月施工完了。
表-2
経年変化確認試験
確認項目
日時
①pH
②繊維の
③強度
有無
(コーン指数)
確認者
備考
施工完了
平成 14 年
12 月
―
有り
―
―
ボンテラン工法に関する
先端建技術審査証明立会い
先端建設技術・技術審査
平成 17 年
8月
―
有り
1,400
kN/m2 以上
証明委員会
委員長:東京大学大学院
工学系研究科地球システ
ム工学専攻 教授 山冨
二郎氏
定期検査
表面
平成 19 年
6月
8.3
有り
内部
1,400
kN/m2 以上
ボンテラン工法研究会
11.8
定期検査
表面
平成 22 年
6月
7.6
有り
内部
1,400
kN/m2 以上
ボンテラン工法研究会
11.7
-3-
現場視察
東北大学大学院環境科
平成 23 年
6月
学研究科 教授 高橋弘
―
有り
―
氏
ハノイベトナムアカデミー
クー氏
現場視察
表面
平成 24 年
8月
7.9
(財)先端建設技術センタ
有り
内部
1,400 以上
ー
技術調査部 新田
氏、石丸氏
12.1
※
※
※
「pH 測定」は、JGS0211-2009「土懸濁液の pH 試験方法」に準拠し、改良土表面と内部深さ 5cm 地点を測定した
「目視による繊維有無」は、地中 10cm 以下の盛土箇所をサンプリングし、目視により繊維の有無を確認した
「強度」は、JIS A 1228「締固めた土のコーン指数」に準拠し、コーンペネトロメーターを用いてコーン指数を測定した
実施工現場における経年変化確認試験の結果、施工後約 10 年が経過した現在でも、ボンテラン改良
土は pH11 以上の高アルカリ環境と十分な強度を維持しており、ボンファイバーの繊維が長期間残存し
ていることを確認した。
-4-
Q2.ボンテラン工法で改良した場合、改良前後の体積変化はどうなるのか?
A2. ボンテラン工法で改良した土は、改良により 5%程度、運搬時(ほぐした土量)では約 2 割強体積が増加す
るものの、締固め後の体積は改良前の体積とほぼ変わりません。
ボンファイバー
固化材
ボンファイバー
固化材
水
体積増加
約 5%
土粒子
図-5
水
土粒子
ボンテラン改良土の体積増加イメージ図
ボンテラン工法は泥土のボンファイバーとセメント系固化材を添加し、水分を含んだまま固化する工
法であるため、図-5 に示すとおり改良土の体積増加は添加物(ボンファイバー、固化材)の体積だけ増
えることになる。
ここで、含水比 100%の高含水比泥土 1m3 を改良した場合の体積変化を試算する。
:55kg/m3(単位体積重量 1.373g/cm3)→
0.040m3
セメント系固化材:50kg/m3(単位体積重量 3.150g/cm3)→
0.016m3
ボンファイバー
したがって、添加材の合計体積は 0.056m3 であるため、計算上 1m3 の泥土を改良すると体積は 1.056m3
となり、5%程度の体積増加となる。
なお、この計算の体積増加は空気間隙を 0%として考えたものであり、実際には図-6 に示すとおり改
良土内部に間隙が存在するため、運搬時(締固めを行なわない状態)の土量は更に増加し経験上約 2 割
強増加するものと考えられる。
図-6
改良前(写真左)とボンテラン改良後(写真右)の性状
しかし、ボンテラン改良土は、締固め特性に優れていること、盛土材として利用する場合は養生期間
が必要なため養生時の乾燥により多少体積が減少することにより、体積増加量は無視できる範囲である
と考えられる。
※
上述の試算は、泥土の含水比がある程度高く飽和状態にあった場合のものであり、飽和していない泥土の場合は改良土の
実寸を測定し、土量変化を確認する必要があります。
-5-
Q3.ボンテラン改良土から溶出するアルカリ水はどうなのか?
A3.ボンテラン改良土は、乾湿繰返し耐久性が高く改良土が劣化しないため、固化処理土に比べ改良土内部
からのアルカリ溶出量が少ないことが確認されています。
セメント系固化材には、酸化カルシウム換算で 40~70%程度含まれているが、これは組成分析値で、
ほとんどは珪酸、アルミ、SO2、鉄などと複塩を構成しているため、フリーの状態で存在する Ca(OH)2 は
ほとんど存在しない。しかし、下記複塩の内、以下の化合物は水和とともに Ca(OH)2 を生成するため、
水和反応によって生成された水酸化カルシウム中の OH-が解離し、液相はアルカリ性を呈する。

2(3CaO・SiO2)
+ 6H2O
→
珪酸三カルシウム水

2(2CaO・SiO2)
+
3CaO・2SiO2・3H2O
+
3Ca(OH)2
珪酸カルシウム水和物
4H2O → 3CaO・2SiO2・3H2O
珪酸二カルシウム水
+
珪酸カルシウム水和物
水酸化カルシウム
Ca(OH)2
水酸化カルシウム
したがって、図-7 に示すとおり乾湿繰返しの影響により盛土表面が少しずつ崩壊し、改良土内部の
Ca(OH)2 からアルカリ水が溶出する。
アルカリ
溶出水
OH中性化
(雨水や CO2 による炭酸化)
図-7
固化処理土におけるアルカリ水の溶出イメージ
一方、ボンテラン改良土は乾湿繰返し耐久性に強く、改良土の崩壊や劣化が少ない。したがって、図
-8 に示すとおり降雨初期は表面部からアルカリ水が溶出するが、表面が中性化された後は改良土内部か
らアルカリ水がほとんど溶出しない。
中性化
(雨水や CO2 による炭酸化)
図-8
ボンテラン改良土におけるアルカリ水の溶出イメージ
-6-
Q4.ダンプトラックによる運搬可否はどう判断するのか?
A4.当研究会では、ボンテラン改良土の運搬可否について、モルタルフロー試験におけるフロー値 130mm 以
下であれば、運搬可能であると判断しています。
① 三浦重義他「吸水性樹脂による軟弱土改良システム」1)では、図-9 に示すとおり JIS R 5201 におけ
るモルタルフロー試験機を用いて、改良土のフローテーブルの落下回数 50 回までのフロー値を測定し、
150mm 以下であればほぼ流動性のおそれは無く、運搬可能であると述べている。
7cm
10cm
図-9
モルタルフロー試験
② 図-10 に示すとおり、財団法人先端建設技術センターの先端建設技術・技術審査証明委員会(委員
長:東京大学大学院工学系研究科地球システム工学専攻 教授 山冨二郎氏)より、ボンテラン改良土の
運搬性について現地確認が行われた。

改良直後のボンテラン改良土を普通ダンプトラックに積載し約 10km 運搬したところ、改良土は崩
壊しなかった

改良直後と 10km 運搬直後のボンテラン改良土をサンプリングしモルタルフロー試験を実施したと
ころ、150mm 以下となり再泥化は確認されなかった
図-10
先端建設技術・技術審査証明委員会による運搬性現地確認
③ 当研究会では、運搬可能な判断基準をフロー値 130mm 以下と規定し、より安全性を確保している。
参考文献
1) 三浦重義,川西順次,金光真作:吸水性樹脂による軟弱土改良システム,京都大学環境衛生工学研
究会,第 10 回シンポジウム講演論文集,pp.95~298,(1988).
以上
-7-
Fly UP