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第86次答申予定の登録有形文化財建造物 詳細説明

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第86次答申予定の登録有形文化財建造物 詳細説明
登録文化財の詳細説明
大阪女学院ヘールチャペルについて
○名称及び建築年代
おおさかじょ がくいん
大阪女学院ヘールチャペル:昭和26年(1951)/昭和59年(1984)増築
平成13年(2001)改修
以上1件
○所在地
大阪市中央区玉造二丁目 26-15
○登録基準
基準(二) 造形の規範となっているもの
○建造物の説明
大阪女学院は、大阪城公園の南方に校地を構える、歴史あるミッションスクール
です。今回学内の礼拝堂と講堂を兼ねたヘールチャペルが登録されることになりま
した。
このヘールチャペルは、幅 20m、奥行 35m の鉄骨鉄筋コンクリート造 2 階建
の大規模な建物です。ヴォーリズ建築事務所による設計で、昭和 26 年(1951)
に竣工しました。当時戦災を受けた学院は、校舎や、礼拝堂の再建のため米国ミッ
ション・ボードから寄付を受け、学院の創設に携わった宣教師 A.D.ヘールを記念し
て、ヘールチャペルが建てられました。
外観は正面に矩形の開口を整然と並べ、装飾要素を抑えたモダニズム意匠を用い
ています。正面玄関部を入ると、内部はゆとりあるホールを備え、2階席を含めて
1,200 席余を有するオーディトリウムは、天井が高く広がりのある上質な空間を
実現しています。これまで学内において歴史に対する敬愛精神をもって維持、活用
されてきた建築です。
以上のように大阪女学院ヘールチャペルは、戦後復興期を代表するヴォーリズ建
築事務所の作品であり、登録基準(二)
「造形の規範となっているもの」に該当す
ると評価されました。
※ミッション・ボード:教会が宣教師を派遣し、その活動を支援し監督するために設置する「伝道局」の通
称です。
※ヴォーリズ建築事務所:著名な建築家 ウイリアム・メレル・ヴォーリズが創立した建築事務所。教会を
中心に、多くの優れた建築を手がけている。
※モダニズム:20 世紀に登場した新しい建築様式。過去の建築様式を見直し、鉄筋コンクリート造や鉄骨造
などの新しい建築技術の普及を背景に、合理的、機能的な建築が造られました。
※オーディトリアム:講堂・劇場・音楽堂など,大勢の聴衆が入ることのできる大ホールの総称です。
旧海野家住宅について
○名称及び建築年代
き ゅ う う み の け じゅうたく
旧海野家 住 宅
しゅおく
主屋
: 昭和3年(1928)
/昭和55 年(1980)・平成 27 年(2015)改修
へい
塀
ふんすいせん
噴水泉
: 昭和3年(1928)頃
: 昭和3年(1928)頃
以上3件
○所在地
泉大津市助松町
○登録基準
基準(一) 国土の歴史的景観に寄与しているもの
○建造物の説明
旧海野家住宅は、泉大津市助松の臨海住宅地に建つ個人住宅です。今回屋敷地の
3棟が登録されることになりました。
主屋は木造 2 階建切妻造で、外観は白い壁に赤瓦を葺き、アーチ窓を多用したス
パニッシュ様式でまとめられています。内部は1階に応接間や書斎などの洋室を配
し、黒褐色の木部と白漆喰を対比的に用いたチューダー様式でまとめています。一
方2階は茶室や座敷を配し、凝ったデザインの欄間が各和室を特徴づけています。
本住宅は昭和3年(1928)に施主自らが設計し、建てられたと伝えられています。
細部にまで工夫が凝らされた、本格的な西洋館です。
また本屋敷地に景観を特徴づけるものとして、敷地を取り囲む外塀や、庭園施設
として壁泉や噴水泉を整えています。外塀はアーチを連続させた意匠が特徴的です。
外塀から連続している壁泉は、庭を間仕切り半円形平面の泉と繰形をつけた開口部
が特徴です。さらに庭園の中心的をなす噴水泉は、長方形の各辺中央を円弧状に膨
らませた形状の泉の中央に、花弁状の噴出し口を設けています。
以上のように旧海野家住宅は、水準の高い西洋館と上質な庭園施設が総合的に屋
敷景観を整えていることから、登録基準(一)
「国土の歴史的景観に寄与しているも
の」に該当するものと評価されました。
※スパニッシュ様式:1920、30 年代の日本で、主に住宅建築において流行した様式です。アメ
リカから持ち込まれた影響の一つであり、白壁、赤瓦、アーチ窓が様式的特徴です。
※チューダー様式:イギリスの伝統的建築様式です。柱や梁などの骨組を壁の表面に見せることに
よって構造と装飾を兼ねたハーフ・ティンバー式の装飾が、スパニッシュ様式同様 1920、30
年代の日本で流行しました。
奥野家住宅について
○名称及び建築年代
お く の け じゅうたく
奥野家 住 宅
しゅおく
主屋
いしょうぐら
衣装蔵
どうぐぐら
道具蔵
こめぐら
米蔵
: 江戸末期/明治 35 年(1902)
・昭和 43 年(1968)改修
:
: 明治前期
: 江戸末期
ながやもん
長屋門
江戸末期
:
明治前期
以上5件
○所在地
枚方市春日元町
○登録基準
基準(一) 国土の歴史的景観に寄与しているもの
○建造物の説明
奥野家住宅は枚方市春日元町に所在する、江戸時代に庄屋を勤めた旧家です。今
回屋敷地内に建つ5棟が登録されることになりました。
主屋は敷地北寄りに建つ桟瓦葺の大規模な建物で、ツシ二階をもつ主屋部とその
東側に座敷棟を、背面に角屋を張り出しています。正面に式台を構え、増築の座敷
は欄間意匠を凝らすなど、江戸末期の上層農家の好例といえます。
衣装蔵は主屋の北側に建つ 2 階建本瓦葺の土蔵です。主屋と同時期のものとみら
れ木柄が太く、貴重品を収蔵するための丁寧な造りになっています。
道具蔵は主屋の南側に庭を挟んで建つ、平屋建桟瓦葺の土蔵です。街路に面する
他の土蔵と比較して、外観は簡素な意匠でまとめられています。
米蔵は敷地北西隅に建つ平屋建桟瓦葺の土蔵で、水切庇を付けた妻面を街路に向
けています。
敷地西面に位置する桁行 10 間の長大な長屋門は、街路側の腰から上を黒漆喰塗り
とし、重厚な表構えを見せています。
以上のように奥野家住宅は、北河内地方の優れた歴史的景観を備えた貴重な庄屋
屋敷の遺構として、登録基準(一)
「国土の歴史的景観に寄与しているもの」に該当
するものと評価されました。
※ツシ二階:2 階部分が低く、住居用でなく倉庫などに使用されていた空間です。
※角屋(つのや)
:増築された座敷など、主屋からツノのようにつき出ている部分を言います。
※式台:客を迎える上がり口です。農家では庄屋など上層農家しか設置が認められませんでした。
写
真
写真1
大阪女学院ヘールチャペル
写真2
旧海野家住宅
写真3
奥野家住宅
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