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大豆生育期における雑草対策

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大豆生育期における雑草対策
大豆生育期における雑草対策
宮城県古川農業試験場水田利用部
研究員
平
智文
[講演要旨]
宮城県の大豆作は水田転作では日本一の作付(総面積では2位)であるが、単位面積当
たりの平均収穫量は低く、その原因の一つが雑草害である。大豆の生育期に使用できる
除草剤の登録は増加し、また除草技術が多様化したにもかかわらず、多くの圃場で雑
草害が問題となっている。最新の除草技術として注目されつつある大豆生育期畦間・
株間(けいかん・かぶかん)処理の有効性や従来の大豆畦間処理、大豆バサグラン液
剤(Na塩)、イネ科対象茎葉処理剤、中耕培土による除草等の大豆生育期における効
果と問題点を紹介する。
中耕培土では、中耕培土後に雑草が増える現象について、除草を目的とした中耕培土の
弱点について検証したところ、湿害が出やすい圃場環境でさらに、梅雨期間であることが
作業を適期に実施することができず雑草が大型化し、耕起で死にきれない状態を作ってい
る。また、中耕培土で土が動くことにより埋もれていた雑草種子が表層に運ばれたり、培
土された株元は保水力が高まり、出芽好適環境になっている。
大豆バサグラン液剤(Na塩)では同剤を処理しても雑草が残ったことについて、効果
の劣る雑草、効果があっても残草した雑草について検証した。効果があっても残草した雑
草は、6葉期を超えると除草効果が劣る草種であったり、次々と後から出芽する雑草で、
土壌処理効果がないため後から出芽する雑草には結果的に効果が劣った。
イネ科対象茎葉処理型除草剤では、共通する剤の特性や、それぞれの特性について検証
し、イネ科雑草の葉齢により剤を変える等の目安としたい。
これら上記の除草法では、残草することが多いため、さらなる除草技術が必要となる。
大豆畦間・株間(けいかん・かぶかん)処理技術として登録となった、リニュロン水和剤
(商品名:ロロックス水和剤)は大豆生育中期以降に土壌処理型除草剤として散布ができ、
さらに、後発生した雑草には茎葉処理効果が期待できる。これまでの畦間処理とは異なり、
大豆の株元にも処理することができるため、株間の雑草も防除することができるようにな
った。大豆播種後2ヶ月頃の大豆6葉期頃に処理では大豆株元(本葉へ飛散しない)へ飛
散しても収量に影響する薬害は認められなかった。
[連絡先]
宮城県古川農業試験場
電話:0229(26)5106
水田利用部 (〒 989-6227
FAX:0229(26)5102
e-mail:[email protected]
8
宮城県大崎市古川大崎字富国 88)
9
[大豆生育期の除草について]
作業機械が少ない
機械は3条用(多い)
作業が捗らない
過湿圃場(湿害)輪換田
のため排水が悪い
除草剤の効果
は約1ヶ月
梅雨期間(降雨・保湿)
雑草発芽・生育促進
一度降雨があると、なか
なか圃場が乾かない
(除草技術から見た弱点)
作業時期と梅雨期間が
重なる
中耕培土
4)茎葉処理兼土壌処理剤のダイズ畦間・株間処理
3)非選択性茎葉処理剤のダイズ畦間処理
2)広葉対象茎葉処理剤
)広葉対象 葉処 剤
1)イネ科対象茎葉処理剤
大豆生育期茎葉処理剤について
中耕培土と雑草
本日の内容
土を動かしたので、
タネも移動する
中耕培土した後に
雑草が増える!?
雑草種子
耕起による影響が小
さく復活(再生)
除草剤の処理層
は壊される
除草技術として過度の期待はしないで下さい
中耕培土と雑草
1
10
水分が保持される
4)茎葉処理兼土壌処理剤のダイズ畦間・株間処理
3)非選択性茎葉処理剤のダイズ畦間処理
2)広葉対象茎葉処理剤
大豆バサグラン液剤(Na塩)
ナブ乳剤、ワンサイドP乳剤、ポルトフロアブル等
1)イネ科対象茎葉処理剤
大豆生育期茎葉処理剤について
水分蒸発
除草剤の処理層
はない
耕起されない部分に水分が保持されやすい
水分蒸発
中耕培土した株間
に発生が多い
イネ科対象剤の特徴
・浸透移行性強い
・脂肪酸合成阻害
・耐雨性は茎葉処理剤中、最強
イネ科対象剤の違い
・使用できる時期
・価格
・効果発現までの期間
・ポルトフロアブル:イネ科雑草3~8葉期
(スズメノカタビラ除く)、収穫60日前、1回
・ワンサイドP乳剤:イネ科雑草3~5葉期
(スズメノカタビラ除く)、収穫60日前、1回
・ナブ乳剤:イネ科雑草3~5葉期(スズメノカタビラ除く)、
収穫2か月前、1回
1)イネ科対象茎葉処理剤
・一番使われているイネ科剤と他のイネ科剤は何が違う?
効果は高大きくない?
・大豆バサグランは水稲でのバサグラン程、
大豆生育期の茎葉処理型除草剤
2
11
大豆の2葉期から開花前
畑地1年生雑草
広葉雑草
(イネ科を除く)
雑草茎葉散布
使用方法
トウダイグサ科(トウダイグサ、コニシキソウ等)、ア
カザ科、ヒユ科(イヌビユ、ハリビユ)、ハキダメギク
(キク科)
古川農業試験場での調査以外で効果が劣る雑草種
エノキグサ(トウダイグサ科)、ツユクサ(ツユクサ科)、
ギシギシ類(タデ科)、クサネム(マメ科)
中型だが汚粒の原因草種
1回
総使用回数
シロザ(アカザ科)、ホソアオゲイトウ(ヒユ科)、
イヌホオズキ類(ナス科)
大型化する草種
効果の劣る広葉雑草種
(雑草の生育初期~6葉
期)
※但し収穫45日前まで
使用時期
適用雑草名
使用量:100~150mℓ/10a
希釈水量:100ℓ/10a
浸透移行性は小さく 付着部位より上方の周辺部を故殺する
浸透移行性は小さく、付着部位より上方の周辺部を故殺する
有効成分:ベンタゾンNa塩[ダイアジン系、A類]・・・40%
作 用 性 :光合成阻害、茎葉に付着すると有効成分は付着部位より体
内に浸透し、蒸散流と共に上方へ移行。
2)大豆バサグラン液剤について
大豆の湿害による薬害の助長が報告が
ある。特に発芽時の湿害は影響大
コスズは少程度の薬害、その他の品種で
は微程度。回復はいずれも早い。
大豆は葉齢が小さいほど薬害が大きい。
大豆への影響
雑草への効果は葉数(節)が小さいほど高い。
オオオナモミ(キク科)、タカサブロウ(キク科)
古川農業試験場での調査以外で効果
のある雑草種
アメリカセンダングサ(キク科)、オオイヌタデ(タデ科)、
イヌタデ(タデ科)、ノボロギク(キク科)
効果の高い広葉雑草種
3
12
大豆薬害の助長
散布後2~3日で枯れ始め、効果が完了するまでに数日を要する
エチルチオメトン粒剤(有機リン剤)の大豆播種時処
チルチオ トン粒剤(有機リン剤)の大豆播種時処
理は薬害が強く出ます。
エチルチオメトン粒剤を使用した場合は処理しない。
展着剤加用の必要はない
登頂散布が主体になるので要注意
周辺作物にかからないよう注意が必要
利活用の留意点(2)
バサグランは接触部位およびその周辺を枯らすため、大豆・雑
草が過繁茂状態では、効果は著しく劣る。また、生き残った部位
より再生する。
雑草が増えてしまった栽培管理
をし続けても、その管理作業で、
雑草を減らすことは非常に難しい
散布中の機械のターン等により重複かかる場合がある
重複散布は薬害が大きくなる
※タチユタカやゆめみのりは特に弱い
発芽時に湿害を受けたものは薬害の影響が大きく、枯死する
場合もある。大豆生育時の湿害は、大豆が生育不良のため
薬害が目立つ。
3.大豆・雑草の繁茂状況の確認
※本県品種はコスズ(小粒系統)がやや弱い
大豆品種に程度の差はあるが薬班、
縮葉等の薬害症状が現れる
利活用の留意点(1)
2.湿害の確認
明らかにイネ科が優占していたり、効果の低い雑草が優占し
ている場合は散布しない
ている場合は散布しない。
1.雑草の発生草種の確認
バサグランNa塩を購入する前に確認すること
4
13
無処理
58.6
58
6
**
30.8
30
8
**
85.66
85
*
25.9
25
9
ns
33.88
ns
全重 子実重 主茎長 最下着 分枝数
(g/本) (g/本)
(cm) 莢高(cm) (本/本)
50.7
25.7
82.4
23.4
3.7
61 5
61.5
29 0
29.0
86 0
86.0
25 1
25.1
34
3.4
45.2
21.3
88.7
27.8
3.2
59.0
29.4
85.9
25.8
3.7
55.9
25.3
88.3
28.0
3.4
35.8
17.3
80.1
23.2
3.5
45.9
20.4
84.6
23.5
3.5
36.4
17.5
83.0
25.2
3.5
49.6
22.4
82.7
24.5
3.8
43.4
19.2
83.6
29.6
3.4
99.33
ns
茎経
(mm)
9.2
87
8.7
9.2
9.6
10.1
9.3
9.5
9.0
9.1
9.4
注1)分散分析により除草剤間には**:1%水準で有意,*:5%水準で有意,ns:有意差無し
除草剤
処理時 処理
葉齢 高(cm)
ビアラホス液剤
3葉期
10
8葉期
10
8葉期
20
11葉期 10
11葉期 20
グリホサート・カリウム 3葉期
10
塩液剤
8葉期
10
8葉期
20
11葉期 10
11葉期 20
薬剤別,処理時葉齢・処理高別成熟・収量調査結果
・大豆畦間・株間(けいかん・かぶかん)処理
・大豆畦間処理
大豆生育期の非選択性茎葉処理除草剤による防除
平成17年 第80号
中間型
グルホシネート系
吸収移行型
グリホサート系
・中間型
バスタ(グルホシネート)
・接触型
プリグロックスL
ビアラホス
パラコート
接触型
ハービーは中間型と
接触型の中間型
タッチダウンIQ、ラウンドアップ等(グリホサート系)
2)非選択性茎葉処理型除草剤(雑草を選ばない)
・吸収移行型
http://www pref miyagi jp/res center/hukyuuniutusu/no 80/gujutu/1 02 pdf
http://www.pref.miyagi.jp/res_center/hukyuuniutusu/no.80/gujutu/1-02.pdf
「非選択性除草剤の条間散布による大豆雑草防除」
普及技術
分類名〔畑・特用作物〕
5
14
0
0
リニュロン200g
t
t
0
0
1%
2%
t
t
合計
165.8本
255.3g
微
微
甚
処理49日後
発生量
105%
291
早い
下位葉褐変(本葉2、3)
リニュロン200g
微
100
99%
同左
比率
73%
収量
収量
/10a
202kg
272
早い
回復
276kg
微
程度
下位葉褐変(本葉2、3)
薬害
リニュロン100g
症 状
※茎葉処理:ツユクサへの効果が劣る
0
0
イネ科雑草
ノビエ
エノコログサ
6.3本
14本
25.7g
7.1g
対無除草区比(㎡当たり)
大豆畦間処理
雑草
15cm
完全除草
無処理
薬害・収量調査
t:trace 0:残草無し
2%
t
リニュロン100g
無処理
その他
0本
0g
処理24日後の調査 風乾重
非イネ科雑草
アメリカセンダングザ オオイヌタデ
シロザ
103.2本
29.8本
12.5本
181.4g
30.6g
10.5g
残草調査結果
大豆畦間・株間処理
雑草
15cm
大豆播種2か月後頃
特徴:①土壌処理では温度の影響を受けにくい
②茎葉処理では温度が高いほど除草効果は大きい
(25℃以上の高温条件下で,その傾向が強い
10℃以下では除草効果は弱まる)
・畑作の土壌処理剤として有名
・非選択性茎葉処理除草剤の効果もある
リニュロン水和剤(商品名:ロロックス)
2008.1.26に ダイズ畦間・株間処理で登録
ダイズ畦間・株間(かぶかん)処理技術
6
大豆「おおすず」のちりめんじわ粒発生の要因
青森県農林総合研究センター
転作作物研究部長
西澤登志樹
「おおすず」は加工適性に優れ、青森県で広く栽培されています。しかし、作付面積の増加に伴い、障
害粒混入による落等が顕著に増え、しわ粒の発生もその大きな要因となってきています。そこで、
「おおす
ず」のちりめんじわ粒の発生要因を青森県農林総合研究センター転作作物研究部で検討してみました。
生育中の障害とちりめんじわの発生を示したのが図1です。大豆をポリエチレンポットにまき、水分ス
トレスを与えるため、子実肥大期から黄葉期にかけて、いくつかの時期に3日間地際まで湛水してみまし
た。 一株ごとに生育障害と百粒重、ちりめんじわの発生割合を調査しました。結果は、黒根腐病にかかっ
た株では正常な生育の株に比べ、粒の肥大が明らかに劣り、ちりめんじわ粒の発生が増加することがわか
りました。湿害により葉が着いたまま枯れ上がった株は、正常な株に比べ、黒根腐病ほどではないが、粒
の肥大が劣り、ちりめんじわ粒の発生も目立ちました。これらとは逆に、莢先熟(青立ち)株では、ちり
めんじわの発生は少なめとなりました。なお、みかけは正常な株でも6~40%と発生程度が異なり、ここ
で処理した湛水とは違う他のストレスがちりめんじわ粒をもたらした可能性があります。
同じほ場の中で、着莢が正常で結実期間の途中で立ち枯れ症状を呈した株と、正常な生育を示した株の
ちりめんじわの発生を比較してみたのが図2です。年によって発生程度は違いましたが、結果は2か年と
も、立枯れ株は健全株に比べ、ちりめんじわ粒の発生がかなり多くなりました。
これらの結果から、大豆の子実肥大期に地際まで湛水するという土壌の過湿条件が、大豆の結実期間を
短縮させたり、黒根腐病など立枯れをを発生させ、根を弱らせ、正常な粒肥大を妨げたことが一因と推測
されました。
黒根腐病
湿害
正常
莢先熟
100
ち
り
め 80
ん
じ 60
わ
粒 40
率
50
0
%
(
20
ち
り
め
ん
じ
わ
粒
率
(
)
%
30
20
10
0
立枯れ株
)
15
図1
40
20
25
30
百粒重(g)
35
40
健全株
立枯れ株
17年
生育障害と百粒重、ちりめんじわ粒率
図2
(ポット試験) (平成18年 青森農林総研)
健全株
19年
立枯れとちりめんじわ粒率
(平成17、19年
青森農林総研)
(注)立枯れ株:成熟期に下垂した葉が付き、
引っぱると簡単に抜ける株
15
◇秋田県より◇
秋田県北秋田地域における大豆生産性向上への支援対策について
秋田県北秋田地域振興局農林部普及指導課
1
大豆の生産概況
北秋田地域は、2市1村を
210
管 内 と し て 平 成 19年 産 作 付 面
190
積 は 、 756haで 昨 年 よ り 約 50ha
170
増えました。秋田県全体の面
度を占めています。
150
kg/10a
積 が 8,130haで 県 全 体 の 1 割 程
130
110
しかし、ここ数年の面積増
90
加 に 反 し て 、 10a 当 た り 収 量
70
は 低 下 し 昨 年 産 が 85kgと な り 、
50
県内において収量レベルが低
秋田県
大館市
北秋田市
上小阿仁村
30
平成10年
平成12年
平成14年
平成16年
平成18年
位な地域となっています。
図1 10a当たり収量の推移
作付品種は、県主力品種の
「リュウホウ」が約8割を占め、次いで「タチユタカ」となっています。また、リポ
欠大豆「すずさやか」が上小阿仁村を主体に作付けされています。
2
地域の課題
10a 当 た り 収 量 が 低 位 と な っ て い る 主 な 要 因 は 、 湿 害 等 の 出 芽 本 数 不 足 や 連 作 年 数
の経過による地力低下、雑草害などがあげられ、基本技術の徹底強化が必要とされて
います。
地域における水田農業の所得確保において、大豆の生産性向上は重要なポイントで
あり、県産大豆の底上げを図る点からも重点的に支援する必要があります。
3
支援の内容
本年は、普及指導課と管内3JA、市村等と連携して、生産者に対してこれまで以
上に栽培技術の向上へむけた取り組みを行っています。また、各JA営農担当者への
情報提供と研修会等を開催し指導体制の強化も図っています。
①作付前の栽培講習会の開催
②栽培技術情報の提供
③作付後の現地講習会の開催
④農政局からの情報提供
⑤県事業「大豆低コスト・高品質・高収量生産実証ほ」を活用した雑草対策技術の
普及
課題:うね間処理除草剤技術の導入による雑草防除の実証
⑥大豆生産実績検討会の開催
16
大豆栽培現地研修会(7月11日)
除草剤のうね間処理実演と
栽培現地研修会(7月30日)
17
*次号は、9月下旬頃、発刊の予定です。岩手県、宮城県、福島県からの話題提供があり
ます。
お楽しみに。
発行元:東北地域大豆振興協議会事務局
(東北農政局
生産経営流通部
農産課)
TEL:022-263-1111(内4428)
・記事や大豆生産振興に関するご質問・ご感想など、ご自由にお寄せください。
・記事を転載される場合は、ご一報ください。
・東北地域大豆振興協議会では大豆に関する情報発信手段としてホームページを開設
しておりますので、ぜひご利用ください。なお、ホームページアドレスは
http://www.maff.go.jp/tohoku/kyougikai/daizu/index.html です。
18
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