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雑草埋土種子量及び作業間隔が チェーン除草機の除草効果に及ぼす影響

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雑草埋土種子量及び作業間隔が チェーン除草機の除草効果に及ぼす影響
雑草埋土種子量及び作業間隔が
チェーン除草機の除草効果に及ぼす影響
1 情報・成果の内容
(1)背景・目的
水稲有機栽培において、「チェーン除草機」による除草法が近年注目され、全国
各地で実践されている。本法は小面積のほ場からでも手軽に取り組みを開始できる
が、大型水田除草機に比較して除草能力が低いため、発生した雑草が活着するまで
に除草作業を行う必要がある。雑草種子の発芽は地温または水温の影響を受けるた
め、除草作業の開始時期および最適な作業間隔は地域によって異なると予想される。
しかし、温暖地における具体的な作業の目安はこれまで明らかにされておらず、
さらにほ場の雑草埋土種子量と除草効果との関連性についても十分に検討されて
いない。
そこで、埋土種子量の水準が異なる複数のほ場においてチェーンの種類および除
草作業の間隔を異にした試験を行い、チェーン除草機による効果的な除草方法につ
いて検討した。
(2)情報・成果の要約
1)チェーン除草機による除草作業を移植後3日頃から合計5回行うことで雑草発
生量を低減することができ、特に10kg 以上のチェーンを使用すると除草効果が
高い。
2)ノビエでは0~1日、コナギでは1~3日程度の作業間隔が残草量の低減に有
効である。
3)雑草埋土種子量が多いほ場では残草量が多く、他の除草技術との併用が望まし
い。
2 試験成果の概要
(1)チェーン除草機の除草効果とほ場の埋土種子量の関係
雑草埋土種子量が少ないほ場では、移植後40日におけるチェーン除草区の雑草
発生量は無処理区比10~59%まで減少する。特に、重量10kg 以上のチェー
ンの除草効果が高く、雑草発生量は無処理区比10~32%である(図1)
。
一方、雑草埋土種子量が多いほ場では、移植後40日におけるチェーン除草区の
雑草発生量は無処理区比17~69%まで減少するが、潜在的な雑草発生量が多い
ため、目標とした残草水準(50g/㎡以下)の達成は困難である。よって、チェー
ン除草のみの雑草対策では不十分と考えられる(図1,表1)
。
雑草埋土種子量の水準にかかわらず、チェーンが重いほど雑草発生量が減少する
ことで、水稲の生育および収量が良好となる。しかし、チェーンの重量が10kg
を超えると顕著な収量の増加は認められないことから、作業労力を考慮すると重量
10kg 程度のチェーンを使用すればよいと考えられる(表1)
。
(2)雑草種による除草効果の差異
- 51 -
除草作業の間隔が雑草の総風乾重に及ぼす有意な影響は危険率5%水準では認
められないが、ノビエに対しては0~1日間隔、コナギに対しては1~3日間隔の
除草作業により、雑草発生量が低下する傾向にある(表1)
。
埋土種子量 少ほ場
雑草風乾重(g/㎡)
250
埋土種子量 多ほ場
200
150
100
50
0
無処理
短・細
短・太
長・細
長・太
短・細
短・太
5日連続 5回
長・細
長・太
短・細
1日おき 5回
短・太
長・細
長・太
3日おき 5回
図1 移植後 40 日での雑草風乾重
試験ほ場;鳥取農試(細粒灰色低地土(灰褐系)
)
埋土種子量 少ほ場;ノビエ 0.2 千粒, コナギ 2.6 千粒, ホタルイ 3.0 千粒.
多ほ場;ノビエ 11.5 千粒, コナギ 79.7 千粒, ホタルイ 16.4 千粒.このほ場のみ 2 回代かきを実施.
移植日;6 月 9 日(コシヒカリ中苗. 栽植密度;条間 30cm, 株間 21cm)
チェーン除草;移植後 3 日目(本代かき後 6 日目に相当)に 1 回目の除草作業を実施.作業時の水深は 5~6cm.
施肥;菜種油粕(基肥:5 月 13 日. 70kg/10a,追肥:7 月 22 日. 50kg/10a)
図中の点線は残存する雑草量の目標水準(50g/㎡).
処理区名はチェーン除草機の名称(チェーンの長さと太さを組み合わせたもの.参考 2 を参照)
.
表1 生育・収量および雑草発生量に関する分散分析
茎数
因 子
処 理
少
多
短・細
短・太
チェーン除草機
長・細
長・太
5日連続
作業間隔
1日おき
3日おき
(参考)無処理
(A)埋土種子量
分散分析
(B)チェーン除草機
(C)作業間隔
埋土種子量
(移植後48日)
本/㎡
308
229
244
264
290
276
260
279
267
181
**
+
n.s
穂数
精玄米重
籾数
本/㎡
264
208
220
232
253
240
238
238
233
170
**
n.s
n.s
kg/10a
327
288
276
298
331
325
306
312
304
216
**
**
n.s
×100/㎡
228
192
184
208
227
222
207
217
207
131
**
+
n.s
総重量
g/㎡
44.2
101.5
95.0
77.2
65.5
51.1
76.2
70.6
75.6
181.3
**
n.s
n.s
雑草発生量(移植後40日)
ノビエ
コナギ
g/㎡
g/㎡
1.9
29.0
21.1
50.4
24.1
48.2
9.8
40.6
6.2
36.6
5.6
33.0
9.1
45.1
10.5
37.5
16.5
37.9
70.7
72.9
*
**
n.s
n.s
n.s
n.s
ホタルイ
g/㎡
9.3
29.9
20.5
24.8
21.0
11.1
19.5
20.9
19.9
31.1
**
n.s
n.s
精玄米重は水分15%換算値。**, *, +, n.sはそれぞれ、1%水準で有意,5%水準で有意,10%水準で有意,有意ではないことを示す.
3 利用上の留意点
(1)チェーン除草機の概要
試験に用いたチェーン除草機は、20~35cm 程度に短く切断したチェーンを長
さ約2m の金属製の棒にすだれ状に取り付けたものである(図2,表2)。人力けん
引によるチェーン除草の所要時間は30~40分/10a 程度である。
(2)1回目除草時期の判断の目安
この情報は平坦地での試験結果に基づくものである。田植期の水温などの条件の違
いによって、除草作業の開始時期が異なるため、田面の状態を入念に観察し、目を凝
らせば雑草の発芽が確認できる頃(図3)を1回目の除草の目安とする。
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(3)欠株の発生
試験で用いたチェーン除草機による欠株発生率は5%以下であった(データ略)。
しかし、欠株部分には雑草が発生しやすいため、補植を行うことが望ましい。
(4)ほ場管理
均一かつ高い除草効果を得るため、ほ場の均平化や畦畔からの漏水対策などを
併せて行う。
(5)残草発生時の対応
チェーン除草を実施した場合でも一定量の雑草が残存するため、必要に応じて
手取り除草や複数回代かきなどを実施し、雑草埋土種子量を低水準に維持するこ
とが望ましい。
表2 試験に使用したチェーン除草機の仕様
項 目
除草機
チェーン除草機の名称
短・太
長・細
単位
短・細
チェーン重量
kg
6.5
7.0
10.0
素子(リング)数
個
7
5
11
9
長さ
㎝
21.5
20.0
32.5
34.5
取り付け間隔
㎝
3.5
4.0
3.5
4.0
線径
㎜
5.5
6.5
5.5
6.5
長幅
㎝
4.1
5.0
4.1
5.0
短幅
㎝
2.0
2.3
2.0
2.3
チェーン
部分
チェーン
素子(リング)
長・太
12.5
チェーン以外の部品(バー,紐など)の重量は約2.5kg.
図2 チェーン除草機の外観
図3 発生初期の雑草の様子
上図はコナギおよびホタルイの1葉
期頃。葉長は1cm 程度であり、田面
水に濁りがなければ判別可能。
4 試験担当者
有機・特別栽培研究室 研 究 員 西川知宏
室
長 熊谷 均
農業技手 山本博美
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