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胸部大動脈瘤スライド - 帝京大学 医学部心臓血管外科学講座
75 歳、男性。自覚症状なし。胸部CTで下行 大動脈に、57mmの動脈瘤を指摘された。 1. 破裂する危険性は? 2. 手術の危険性は? 3. 手術は勧められるか? 今日のお題 自然経過 •瘤径拡張速度 •破裂率 •イベント発生率 外科治療 •手術の危険性 •ガイドラインの手術適応 Ann Thorac Surg 2002;73:17–28 721例の胸部大動脈瘤患者の自然経過を最長9年間にわたって調査した。 自然経過 瘤径の拡大 破裂率 イベント発生率 瘤径拡張速度 動脈瘤の成長は1年どの位? 瘤径拡張速度 動脈瘤の成長は1年どの位? 昨年 今年 1年で何センチ大きくなったかを計測する。 瘤径拡張速度 平均すると 0.12 cm / 1年 瘤径拡張速度 瘤が大きいほど成長も早い。 0.1 4 ~ 5 cm 0.12 5 ~ 6 cm 0.14 6 ~ 7 cm 0.19 0.17 7 ~ 8 cm 動脈瘤の大きさ 8 ~ 9 cm J Thorac Cardiovasc Surg 1997;113:476-491 瘤径拡張速度 非解離 瘤の種類によっても異なる。 解離 0.56 0.49 0.42 0.35 0.28 0.07 0.08 4 ~ 5 cm 5 ~ 6 cm 0.1 6 ~ 7 cm 0.14 0.12 7 ~ 8 cm 動脈瘤の大きさ 8 ~ 9 cm J Thorac Cardiovasc Surg 1997;113:476-491 瘤径拡張速度 上行瘤 瘤の種類によっても異なる。 下行瘤 0.45 0.4 0.34 0.28 0.23 0.08 4 ~ 5 cm 0.1 5 ~ 6 cm 0.11 6 ~ 7 cm 0.15 0.13 7 ~ 8 cm 動脈瘤の大きさ 8 ~ 9 cm J Thorac Cardiovasc Surg 1997;113:476-491 瘤径拡大速度 • • • • 平均すると1年あたり0.1cmとかなり緩やかである。 瘤が大きくなるほど、成長も早い。 瘤の種類によって異なる(解離>非解離) 瘤の場所によって異なる(下行>上行) 破裂率 破裂の危険はどの位? 破裂率 どの位破裂していくのか? Ann Thorac Surg 2002;73:17–28 破裂率 1年あたりの破裂の危険はどの位? 3.6% 1.7% 0.3% 0.0% 3.5 ~ 4 cm 4 ~ 5 cm 5 ~ 6 cm 動脈瘤の大きさ 6 cm~ Ann Thorac Surg 2002;73:17–28 自覚症状なし。胸部CTで下行大動脈に、 57mmの動脈瘤を指摘された。 1. 破裂する危険性は? 1年あたり1.7% 2. 手術の危険性は? 3. 手術は勧められるか? 解離率 1年あたりの解離の危険はどの位? Ann Thorac Surg 2002;73:17–28 解離率 1年あたりの解離の危険はどの位? 3.7% 2.5% 2.2% 1.5% 3.5 ~ 4 cm 4 ~ 5 cm 5 ~ 6 cm 動脈瘤の大きさ 6 cm~ Ann Thorac Surg 2002;73:17–28 心血管イベント = 破裂 + 解離 +死亡 イベント発生率 1年あたりどの位? 生涯におけるイベント発生率 上行大動脈瘤における瘤径とイベント発生率の関係 動脈瘤の大きさ 6cmを超えたところでリスクは急激に増大する。 生涯におけるイベント発生率 下行大動脈瘤における瘤径とイベント発生率の関係 動脈瘤の大きさ 7cmを超えたところでリスクは急激に増大する。 大動脈瘤患者の遠隔期生存率 6cmを超えると、生存率は悪化。 心血管イベント(破裂、解離、死亡) • 1年あたりの破裂率は1-3%程度と高くない。 • 解離、死亡も含めると、1年あたり4-15%程度と高くなる。 • 上行大動脈で6cm、下行大動脈で7cmを超えると急激にリスク増加。 では、瘤径が何cmから手術を勧めるべきだろうか? 6cm、まで待つのか? 5.0cmの動脈瘤で6.0cmまで待っていると、 1年あたりの瘤径拡大速度 0.12cm/年 ⇒ 6cmになるまで8.3年 1年あたりの破裂または解離 3.0% 8.3 X 3.0 = 24.9% 相当数の患者がイベントを発生させてしまう。 手術の適応は、イベント発生の危険と手術の危険性との兼ね合いで決定 手術の危険性 イベント発生の危険性 手術死亡率 手術の危険はどの位? 大動脈基部 上行大動脈 大動脈弓部 下行大動脈 胸腹部大動脈 自覚症状なし。胸部CTで下行大動脈に、 57mmの動脈瘤を指摘された。 1. 破裂する危険性は? 2. 手術の危険性は? 手術死亡率 4.0% 3. 手術は勧められるか? 待機手術の危険性 2-4% イベント発生の危険性 2~4%の危険性 3cm~ 4cm~5cm~6cm~ 上行大動脈瘤 Class I • 症状のない5.5cm以上の胸部大動脈瘤では外科治療を考慮するべきである。 • 5.5cm以下であっても、1年あたりの瘤径拡大速度が0.5cm/年以上の場合に は、外科治療を考慮するべきである。 弓部大動脈瘤 Class IIa • 症状のない5.5cm以上の胸部大動脈瘤で、手術リスクが低いと考えられる場合 には、外科治療を考慮するべきである。 下行、胸腹部大動脈瘤 Class I • 手術リスクの少ない慢性解離症例や、瘤径が5.5cmを超える動脈瘤症例には 手術が勧められる。 • 瘤径が5.5cmを超える下行大動脈瘤と、 嚢状動脈瘤、術後仮性瘤にはステント グラフト留置が可能かどうか考慮するべ きである。 • 瘤径が6.0cmを超える胸腹部大動脈瘤 には手術が勧められる。 自覚症状なし。胸部CTで下行大動脈に、 57mmの動脈瘤を指摘された。 1. 破裂する危険性は? 2. 手術の危険性は? 3. 手術は勧められるか? 手術適応だが、ステント留置を 積極的に考慮。 ※このスライドは帝京大学で行っている CVS セミナーで使用しております。CVS セミナーは 心臓外科に関するレクチャーを毎月一回開催しています。心臓血管外科、麻酔科、循環器 内科を中心に、看護師、臨床工学技師、理学療法士など毎回 30 名前後のメンバーが参加 しています。下記のホームページより他のスライドもご覧いただけます。 帝京大学医学部心臓血管外科学講座ホームページ http://www.teikyo-cvs.com/index.html