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2011年上半期の対中直接投資動向

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2011年上半期の対中直接投資動向
(特集)中国北アジア
日系企業が直面する課題
2011年9月号(Vol.15)
2011年上半期の対中直接投資動向
大連
北京● ●
青島● ●ソウル
武漢●
●東京
●上海
広州●
●香港
5
<
目
次
>
● 総論:日本が 63%増と急伸、全体では前年並みの伸び・・・・・・・・・・・・・ 4
● 京津冀地域:日本企業の対北京、天津向け投資が急増・・・・・・・・・・・・13
● 華東地域:上海市の実行額、2 ケタの伸びを回復・・・・・・・・・・・・・・19
● 遼寧省:香港企業の不動産関連投資が牽引・・・・・・・・・・・・・・・・・25
● 広東省・福建省:実行額はリーマン・ショック前の水準を回復・・・・・・・・31
● 山東省:青島市向けが 7 割増・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
● 陝西省:西安市進出企業の増資が大幅拡大・・・・・・・・・・・・・・・・・40
● 四川省・重慶市:IT関連企業の集積進む・・・・・・・・・・・・・・・・・43
● 湖北省:日本企業の投資が 3 倍に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
● 香港の対中投資:対中投資に占めるシェアが 6 割に拡大・・・・・・・・・・・51
● 台湾の対中投資:両岸関係緊密化で認可額が過去最高を更新・・・・・・・・・54
● 韓国の対中投資:製造業が高い伸び、非製造業は不振・・・・・・・・・・・・59
『(特集)中国北アジア 日系企業が直面する課題』は、北東アジア進出企業が直面するさ
まざまな問題点や課題について、ホットなトピックスを取り上げ、各地域の事務所から独自
の視点や地域事情に基づくレポートをお届けいたします。希望されるテーマ等がありました
ら、海外調査部中国北アジア課までご意見をお寄せいただければ幸いです。
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1
本レポートに関する問い合わせ先:
日本貿易振興機構(ジェトロ)
海外調査部
中国北アジア課
〒107-6006 東京都港区赤坂 1-12-32
TEL:03-3582-5181
E-mail:[email protected]
ジェトロは、本レポートの記載内容に関して生じた直接的、間接的、あるいは懲罰的
損害および利益の喪失については、一切の責任を負いません。これは、たとえ、ジェ
トロがかかる損害の可能性を知らされていても同様とします。
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2
<ポイント>
(1)香港からの投資が不動産業を中心に増加、日本からは6割増
・ 2011 年上半期の対中投資は、実行ベースで前年同期比 18.4%増と 2010 年並みの伸びを
維持した。目を引くのは、①香港からの投資が不動産開発を中心に増えている、②日本
からの投資が激増している地域が多い、などの点である。
・ 日本の対中投資は 62.9%増と、ここ数年ない大幅増となった。案件をみると特徴とし
て、①製造業の大型投資が目立つ、②輸送機械(含む建機)のサプライヤーの案件が多
い、③大手企業による中国統括会社の設立が目立つ、④上海市・江蘇省・浙江省・安徽
省など中国東部への進出が多い、等の点が指摘できる。
・ 日本からの投資増と3月の東日本大震災の関係については、研究者も企業関係者も総じ
て否定的である。そもそも直接投資の実行には、FS、合弁相手との交渉、用地の確保な
ど、実行にあたり一定の時間を要するからである。投資誘致についても担当者から、日
本の情勢が落ち着くのを待つとの声が聞かれた。
・ リーマンショックから既に2年半が経過した。その間、中国の内需は自動車市場をはじ
め力強く拡大してきたが、日本は低成長が続いた。震災後は電力不足の懸念も取りざた
され、また輸出の環境をみても、円レートは高止まり、欧米経済も債務問題を抱え先行
き不透明である。
・ 日本企業の投資はここ数年低調だった。その結果、企業の手元流動性は増えた。そうし
た中、中国での競争力強化と内需深耕に向け、統括会社設置や能力増強投資など大手企
業の本格的な体制整備の動きが相次ぐ形となった。以前から検討されていた投資プロジ
ェクトが昨今実行に移されてきているとの観がある。円高もあり、この増加の趨勢はし
ばらく続く可能性がある。
(2)各地域への投資(実行ベース)の動向
沿海部
・ 京津冀地域は、北京市が前年同期比 6.8%増と一ケタの伸びだったものの、天津市は
22.3%増、河北省は 31.1%増だった。日本からの投資は、北京市で 38.9%増、天津市
は前年同期の3倍近くに急増した。
・ 華東地域は、江蘇省が 9.7%増で、投資額は全省中第一位。蘇北、蘇中への投資が活発化
している。浙江省は 18.2%増で、特に嘉興市、寧波市、湖州市が増えている。上海市は 09 年、
10 年1ケタ増だったが、今期は 12.0%増と2ケタに回復した。地域統括本部、投資性
公司の設立が活発である。
・ 遼寧省は 45.8%増で、投資額は全省中第2位を維持した。特徴として、①不動産・建築
関連産業への投資増、②設備製造業を中心とする工業プロジェクトの大幅増、③案件の大型化
冀が指摘できる。不動産開発分野は香港系が中心だが、日系企業もプレゼンスを高めつつあ
る。都市別には、瀋陽市が半期ベースで過去最高額となったほか、省内最大の経済都市・
大連も 25.7%増と堅調である。
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・ 華南地域は、広東省も福建省も香港からの投資増により、それぞれ 13.1%、2.1%増加
した。実行金額はリーマンショック発生前の水準に戻っている。広東省は、近年増加傾
向にあったサービス産業向けが減少したものの、製造業向けが増加した。
・ 山東省は 47.3%増となった。国・地域別には香港が前年同期の 2.1 倍強で全体の 66.6%
を占め、日本も 56.7%増と高い伸びを示した。案件は油圧ショベル用部品、光学ガラ
ス、人工透析機器の製造・販売と様々だが、いずれも中国国内の内需拡大を見据えた投
資といえる。都市別には青島市が 7 割増となり、上半期だけで 09 年通年を上回った。
内陸部
・ 四川省は 62.1%増となった。うち成都市が約 96%を占めている。パソコン、電子部品、
自動車製造関連の投資が活発である。
・ 重慶市は前年同期の 2.4 倍になった。台湾企業を中心に PC 関連メーカーの集積が進ん
でいる。また両江新区への進出が増えている。同新区は、国際自動車産業基地、電子情
報(IT)産業基地、現代物流産業基地、クラウドコンピューティングデータ産業基地、
新エネルギー・新材料基地など、8 大産業の発展を推進している。
・ 中部4省はそれぞれ、湖北省 10.7%、湖南省 23.9%、河南省 41.8%、江西省 24.7%増
加した。うち湖北省は、金額は4省の中では最も少ないが、日本企業の投資が前年同期
の3倍に拡大した。
・ 陝西省は 31.0%増となった。6割近くを占める香港からの投資が前年同期比 58.2%増
と顕著な伸びを示した。投資は西安市に集中している。
(3)香港・台湾・韓国からの対中投資の動向
・ 香港(実行ベース)は、29.1%増だった。中国経済の順調な成長を背景に着実に伸びて
いる。対中直接投資全体に占める香港のシェアは、実行(使用)金額ベースで 2010 年
通年の 55.7%から 59.9%に上昇し、首位の座をますます確固たるものとしている。
・ 台湾(認可ベース)は、8.3%増の 77 億 9,386 万ドルと上半期ベースで過去最高を記録
した。増加の背景として、中国側の金融分野をはじめとする投資規制緩和措置や、海峡
両岸経済協力枠組協定(ECFA)に基づく投資分野におけるアーリーハーベストの実施な
どが挙げられる。
・ 韓国(実行ベース)は 20.4%増だった。製造業が 47.3%増の高い伸びだったが、非製
造業は 23.0%減と不振だった。省市別では韓国系企業が集中している山東省が第 1 位
となった。
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日本が 63%増と急伸、全体では前年並みの伸び
●北京発
2011 年上半期の対中直接投資は、実行ベースで前年同期比 18.4%増と、前年並みの伸びを
維持した。日本からの投資は 62.9%増と急伸し、国・地域別で第 3 位に浮上した。また、大型案
件が増えており、中国での競争力強化と内需深耕に向け、懸案の統括会社設置や能力増強投
資を実行に移す動きが、大手企業を中心に本格化しているようだ。
<業種別では非製造業が 5 割超>
商務部の 7 月 19 日の発表によると、11 年上半期の対内直接投資(銀行・証券・保険分野を含
まず)は、契約件数が前年同期比 8.8%増の 1 万 3,462 件、実行ベースの投資額は 18.4%増の
608 億 9,100 万ドルだった(表 1 参照)。投資額は、09 年 8 月から前年同月比プラスが続いてい
る。
表1 中国の対内直接投資の推移
(単位:件、%、億ドル)
対内直接投資件数 対内直接投資額
(契約ベース)
(実行ベース)
前年比
前年比
23,435 △ 14.8
900 △ 2.6
09年
27,406
16.9 1,057
17.4
10年
1月
2,243
20.2
100
23.4
2月
1,156
△ 4.9
78
32.2
3月
2,538
10.5
125
32.7
第1四半期
5,937
8.8
303
29.4
11年
4月
2,215
8.2
85
15.2
5月
2,391
12.2
92
13.4
6月
2,919
6.6
129
2.8
上半期
13,462
8.8
609
18.4
(注)3月単月は未公表のため計算値。
(出所)中国投資指南ウェブサイトを基に作成
業種別の伸び率をみると、製造業の 15.6%増に対し、非製造業が 20.9%増とやや上回った。非
製造業は軒並み堅調で、特に運輸・郵便業が 64.1%増と高い伸びを示した。この結果、非製造
業のシェアは 50.9%と 5 割を維持した(表 2 参照)。なお、寄与度でみると、製造業と不動産業が
大きかった。実行額の伸び 18.4%のうち製造業は 7.5 ポイント、非製造業は 10.4 ポイントで、うち
不動産業は 5.0 ポイントとなっている。
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表2 中国の業種別対内直接投資の推移
09年
業種
金額 シェア 前年比 金額
10年
シェア 前年比
(単位:100万ドル、%)
11年上半期
前年
金額 シェア
同期比
1,035
1.7
15.1
393
0.6
42.1
28,474 46.8
15.6
30,989 50.9
20.9
13,998 23.0
22.3
農業
1,429
1.6
20.0 1,912
1.8
33.8
鉱業
501
0.6 △ 12.6
684
0.6
36.7
製造業
46,771 51.9 △ 6.3 49,591 46.9
6.0
非製造業
41,332 45.9
1.5 53,548 50.6
29.6
不動産業
16,796 18.7 △ 9.6 23,986 22.7
42.8
リース・ビジネ
6,078
6.8
20.1 7,130
6.7
17.3 4,176
6.9
スサービス業
卸・小売り業
5,390
6.0
21.6 6,596
6.2
22.4 4,135
6.8
運輸・郵便業 2,527
2.8 △ 11.4 2,244
2.1 △ 11.2 1,616
2.7
その他
10,541 11.7
7.5 13,593 12.9
29.0 7,063 11.6
合計
90,033 100.0 △ 2.6 105,735 100.0
17.4 60,891 100.0
(出所)国家統計局「China Monthly Statistics」、CEIC
20.3
28.5
64.1
8.5
18.4
<日本からの投資、幅広い地域で高い伸び>
在中国の各ジェトロ事務所の報告によると、香港からの投資が不動産開発を中心に増えてい
る地域が多い。また日本からの投資が激増している地域が多いことも注目される。以下、各地の
主だった動きを 11 年上半期の実行額を中心に紹介する。
まず沿海部をみると、京津冀地域は天津市で日本からの投資が激増している。実行額全体は
前年同期比 22.3%増だが(表 3 参照)、うち日本からの投資は 3 倍弱に急拡大した。天津経済技
術開発区(TEDA)によると、アイシン精機の投資性公司設立をはじめ、自動車・同部品企業が管
理機能の拡充や生産拡大を目的に増資するケースが目立った。その他サービス業分野では、ヤ
マダ電機が 6 月に天津市内に中国 2 号店をオープンした。セブン-イレブンも 7 月に TEDA に天
津 2 号店を開店、伊勢丹も 12 年上半期に TEDA に天津 2 号店をオープンする予定だ。
華東地域では、上海市で地域統括本部や投資性公司の設立が活発化し、実行額は 12.0%増
と 2 ケタに復帰した。投資国・地域別(ただし契約ベース)にみると、ディズニーランドの建設がス
タートした米国は前年同期のほぼ 4 倍に拡大し、日本も 6 割増となった。江蘇省は省別実行額全
国第 1 位を維持した。地域としては蘇南への投資が 3 分の 2 を占めるが、伸びが大きいのは蘇
北・蘇中地域だ
遼寧省は好調さが際立っている。省別実行額は全国第 2 位、伸び率も 45.8%と大きい。投資
国・地域別にみると、投資の 7 割を占めるのは香港で、84.6%と急増している。牽引役は不動産
関連投資だ。日本からの投資も 98.3%増とほぼ倍増した。伸びの大きさは前年上半期が金融危
機で不調だった反動でもあるが、不動産や建築関連産業への投資が瀋陽を中心に増加している
点も見逃せない。
山東省は、香港、日本からの投資が伸びたという点が遼寧省と共通している。香港は前年同期
の 2 倍強、日本は 56.7%増となり、実行額合計は 47.3%増だった。案件は油圧ショベル用部品、
光学ガラス、人工透析機器の製造・販売とさまざまだが、いずれも中国国内の内需拡大を見据
えた投資といえる。なお、青島市向けが 7 割増となり、上半期だけで 09 年通年を上回った。
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広東省への実行額は 10 年下半期に続き 11 年上半期も 100 億ドルを超え(109 億ドル、前年同
期比 13.1%増)、リーマン・ショック前の水準に戻った観がある。近年増加傾向だったサービス業
は 5.6%減少したものの、製造業が 25.9%増えた。広東省の外資導入は、量的拡大よりも、技術
水準の向上や地域振興方針に沿った導入に力点が置かれるようになった。第 12 次 5 ヵ年規画で
の主な目標として、a.外資進出のハードルを高める、b.ASEAN との戦略協力を強化する、c.台湾
との交流を深化させる、などがある。
内陸に目を転じると、湖北省で日本からの投資が激増した。実行額は前年同期比 10.7%増に
すぎないが、このうち日本からの投資は前年同期の約 2.4 倍に膨れ上がった。4 月に新日本製鉄
と武漢鋼鉄がブリキ製造・販売の合弁会社を設立し、その総投資額は 18 億 5,000 万元(1 元=
約 12 円)に達するという。そのほか、大きなニュースとして日産の合弁会社である東風汽車が 7
月、販売台数を 230 万台以上に拡大するとの計画を発表した。投資総額は 500 億元と巨額だ。
四川省は実行額が 62.1%増加した。その 96%は成都市だ。ゼネラル・エレクトリック(GE)がイノ
ベーションセンター設立を発表したほか、台湾のウィストロン(緯創)グループがノートパソコン
(PC)工場建設に着工(計画投資総額 5 億ドル以上)、ボルボも生産拠点設置を発表している(投
資総額約 54 億元)。
重慶市は実行額が 2.4 倍に拡大した。業種別にみると前年同様、約 7 割が第三次産業だ。投資
国・地域別では、香港からの投資が 3 分の 2 を占めた。なお重慶市は、戦略的新興産業の発展
加速を目指し、15 年までにその生産額を総生産の 40%にまで拡大する計画だ。同期間に PC 生
産規模 1 億台、現地調達率 8 割を目標とするほか、生産額 500 億元超という国内最大規模のオ
フショアデータ開発処理センターの完成も目指している。
陝西省の実行額は 31.0%増だった。西安市向けが 9 割を占める。増資案件が多く、業種の過
半数は製造業だ。投資国・地域別にみると、6 割を占める香港が 6 割増だったほか、日本も 5 割
増だった。
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表3 中国の省・自治区・直轄市別対内直接投資(11年上半期)
(単位:件、100万ドル、%)
省・自治区・直轄市名 契約件数 伸び率 契約額 伸び率 実行額
伸び率
江蘇省
1,753
4.5 31,242
14.7
16,697
9.7
広東省
3,326
39.7 15,100
49.1
10,899
13.1
山東省
714 △ 6.1
8,393
34.5
6,095
47.3
浙江省
817 △ 8.2 10,465
22.8
6,284
18.2
遼寧省
519 △ 16.0
11,990
45.8
東
上海市
1,831
8.5
9,728
30.1
6,013
12.0
部
天津市
328
9,030
10.0
7,230
22.3
北京市
4,772
15.3
3,834
6.8
福建省
530 △ 2.9
4,927
31.6
3,910
2.1
河北省
90
2,130
108.5
2,320
31.1
海南省
592
355.0
湖北省
163
33.6
2,340
202.5
2,292
10.7
湖南省
343
34.0
5,102
64.4
3,442
23.9
395 △ 21.8
4,173
24.9
3,236
24.7
中 江西省
部 河南省
41.9
162
2.5
3,307
58.2
4,210
安徽省
120 △ 2.0
1,431
109.0
3,850
55.7
山西省
31
436
36.5
279
31.0
吉林省
707
14.6
黒龍江省
70
1.4
1,620
83.1
内モンゴル自治区
40
60.0
1,092 △ 15.0
四川省
4,089
62.1
陝西省
64
4.9
1,329
19.2
1,203
31.0
重慶市
129
37.2
3,130
376.9
2,919
136.6
519
0.1
西 広西チワン族自治区
部 青海省
貴州省
28
64.7
1,020
402.8
220
55.4
甘粛省
寧夏回族自治区
8 △ 11.0
87
28.4
151
313.0
雲南省
80
17.7
900
57.9
651
30.2
新疆ウイグル自治区
235
41.5
チベット自治区
(注)地方政府の公表する対内直接投資には「外商その他投資」(委託加工、補償貿
易、国際リースなど)が含まれる場合があるため、合計額は中央政府公表額を上回る。
伸び率が斜字体の部分は、直近の地方政府発表資料に伸び率の記載がないため、前
年(同期)のジェトロの発表資料に基づき算出したもの。
(出所)各省・自治区・直轄市政府統計資料などを基に作成
<1 位香港、2 位台湾は変わらず、3 位に日本>
国・地域別の対中投資(実行ベース)の発表は、09 年の途中から、各国・地域のデータにタック
スヘイブン経由の投資金額が含まれるようになった。11 年上半期の第 1 位は 10 年と同じく香港
で 399 億 8,700 万ドル、シェアは 65.7%と 10 年より 1.9 ポイント上昇した(表 4 参照)。第 2 位も
10 年同様台湾だった。第 3 位は 62.9%の高い伸びを示した日本で、10 年より 1 つ順位を上げた。
日本の対中投資額はここ数年大きな変化がなかったが、今期は急拡大した(図1参照)。
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8
表4 中国の国・地域別対内直接投資
(単位:100万ドル、%)
10年
順
09年
国・地域名
実行額 シェア 伸び率
位 国・地域名 実行額 シェア
1 香港
53,993 60.0 香港
67,474 63.8
25.0
2 台湾
6,563
7.3 台湾
6,701
6.3
2.1
5,657
5.4
45.6
3 日本
4,117
4.6 シンガポール
4 シンガポール 3,886
4.3 日本
4,242
4.0
3.0
5 米国
3,576
4.0 米国
4,052
3.8
13.3
6 韓国
2,703
3.0 韓国
2,693
2.5 △ 0.4
7 英国
1,469
1.6 英国
1,642
1.6
11.8
8 ドイツ
1,227
1.4 フランス
1,239
1.2
n.a.
9 マカオ
1,000
1.1 オランダ
952
0.9
n.a.
10 カナダ
959
1.1 ドイツ
933
0.9 △ 24.0
その他
10,540 11.7 その他
10,150
9.6 △ 3.7
全世界合計
90,033
全世界合計 105,735
17.4
順
位
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11年上半期
国・地域名 実行額 シェア 伸び率
香港
39,987 65.7
26.0
台湾
3,792
6.2
9.8
日本
3,505
5.8
62.9
シンガポール 3,199
5.3
16.2
米国
1,679
2.8 △ 22.3
韓国
1,274
2.1 △ 12.3
英国
918
1.5
17.4
ドイツ
678
1.1
39.5
フランス
423
0.7
n.a.
オランダ
346
0.6 △ 40.4
その他
5,090
8.4 △ 5.8
全世界合計
60,891
18.4
(注)全世界合計は、実行額の使用ベース、各国・地域は実行額の投入
ベース。バージン、ケイマン諸島、サモア、モーリシャス、バルバドスなどの
自由貿易港を経由して当該国・地域から投資された金額を含む。
(出所)表1に同じ
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9
図1
日本の対中投資の推移(半期ベース)
新系列(タックスヘイブン経由を含む)
(100万ドル)
旧系列(タックスヘイブン経由を除く)
4,000
3,000
2,000
1,000
0
上
06
下
上
07
下
上
08
下
上
09
下
上
10
下
上
11
下
(年)
(出所)新系列は商務部ウェブサイト「中国投資指南」、旧系列はCEIC
対中直接投資の動向に詳しい商務部国際貿易経済合作研究院・外資研究部の●(赤におお
ざと)紅梅副主任は、日本の対中投資の急増について次のような見方をしている。
このような高い伸びは近年の日本の対中投資にはなく、当研究院でも最近非常に注目してい
る。急増の理由として考えられるのは次の 4 点だ。第 1 に、日本の対中投資は 05~10 年と長い
間不振で、言い方を変えれば、多くの日本企業の投資プロジェクトは実施を待っている状態だっ
たこと。第 2 に、今の日本は低成長・電力不足懸念・円高と、投資環境が良いとはいえないこと。
第 3 に、今の日本企業はキャッシュリッチなこと。第 4 に、これまで日本の対外投資といえば欧米
向けがメーンだったが、近年欧米経済が不振なことだ。そもそも 10 年の対中投資に占める日本
のシェア 4.0%は低すぎた。日本の対中投資はしばらく堅調が続くのではないか。
また、東日本大震災と投資増の関連性について、11 年上半期中では、大震災当月の 3 月の投
資額が飛び抜けて多いが、直接投資には一定の準備期間が必要なことから考えて、増加は震
災前から始まっていた可能性を示唆した。
<日本の対外直接投資に占める中国のシェアは上昇続く>
日本の対外直接投資での中国の位置付けについて、日本の財務省統計(国際収支ベース、速
報値)でみると、中国のシェアは高まる傾向にあり、11 年上半期は 15.7%になった(表 5 参照)。
08~10 年に日本の対外直接投資が減少する中、対中投資は減少が小幅だったためにシェアが
高まったが、11 年上半期は日本の対外直接投資総額が 46.2%増だったのに対し、対中直接投
資の伸びがこれを大幅に上回る 91.1%増となり、シェアが上昇した。
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10
表5 日本の国・地域別対外直接投資の推移
09年
順
前年
位
国・地域
金額 シェア
同期比
1 ケイマン諸島
12,080 17.3 △ 47.1
2 米国
9,989 14.3 △ 77.6
3 オーストラリア
6,556
9.4
22.1
4 中国
6,492
9.3
△ 3.1
5 オランダ
6,314
9.0
△ 7.0
6 ブラジル
3,513
5.0 △ 34.7
7 インド
3,443
4.9 △ 36.6
8 ルクセンブルク 2,962
4.2
414.2
9 シンガポール
2,706
3.9
141.2
10 英国
2,045
2.9 △ 69.7
6,587
9.4
1.1
参 ASEAN
考 EU
15,942 22.8 △ 32.0
69,896 100.0 △ 47.2
合計
順
位
(単位:億円、%)
10年
前年
国・地域
金額 シェア
同期比
米国
7,968 16.1
20.2
中国
6,284 12.7 △ 3.2
オーストラリア 5,622 11.4 △ 14.2
英国
3,855
7.8
88.5
ブラジル
3,745
7.6
6.6
シンガポール 3,319
6.7
22.7
オランダ
2,949
6.0 △ 53.3
インド
2,411
4.9 △ 30.0
タイ
1,983
4.0
30.2
香港
1,768
3.6
16.2
ASEAN
7,711 15.6
17.1
EU
7,146 14.5 △ 55.2
合計
49,388 100.0 △ 29.3
11年上半期
前年
同期比
1 英国
4,928 18.0
676.1
2 中国
4,293 15.7
91.1
3 オーストラリア
3,175 11.6
1.0
4 米国
2,423
8.8 △ 39.5
5 ブラジル
1,874
6.8
12.5
6 オランダ
1,672
6.1 △ 28.4
7 インドネシア
1,441
5.3
n.a.
8 ドイツ
1,033
3.8
n.a.
9 韓国
970
3.5
166.5
10 ベトナム
960
3.5
638.5
4,760 17.4
87.9
参 ASEAN
考 EU
7,831 28.6
230.1
27,406 100.0
46.2
合計
(注)順位は10年(10~12月は速報)ベース。
(出所)財務省統計を基に作成
国・地域
金額
シェア
日本の統計で対中投資を業種別にみると、減少が続いていた製造業が直近の 11 年第 1 四半
期に前年同期比 86.7%増と大きく増えている(表 6 参照)。他方、非製造業も卸・小売業、通信業
などの激増で 3.6 倍と伸び率が製造業を大きく上回り、シェアを高めた。
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11
表6 日本の業種別対中直接投資の推移
(単位:億円、%)
09年
10年
11年1Q
金額 シェア 伸び率 金額 シェア 伸び率 金額 シェア 伸び率
製造業(計)
4,615 71.1 △ 8.0 3,896
62.0 △ 15.6 1,167
56.9
86.7
食料品
827 12.7 108.3
107
1.7 △ 87.1
39
1.9 680.0
繊維
154 2.4
79.1
70
1.1 △ 54.5
37
1.8 362.5
木材・パルプ
455 7.0 333.3
249
4.0 △ 45.3
87
4.2 278.3
化学・医薬
444 6.8 △ 4.9
646
10.3
45.5
176
8.6 214.3
石油
4 0.1
n.a. △ 6.0
n.a.
n.a.
×
n.a.
n.a.
ゴム・皮革
△ 6 n.a.
n.a. 253
4.0
n.a.
37
1.8
n.a.
ガラス・土石
119 1.8 △ 21.2
45
0.7 △ 62.2
81
3.9
n.a.
鉄・非鉄・金属
337 5.2 △ 42.8
446
7.1
32.3
156
7.6 178.6
一般機械器具
617 9.5 △ 16.7
865
13.8
40.2
327
15.9
63.5
電気機械器具
583 9.0 △ 46.3
364
5.8 △ 37.6
63
3.1 125.0
輸送機械器具
907 14.0 △ 11.0
854
13.6 △ 5.8
67
3.3 △ 72.5
精密機械器具
85 1.3 △ 8.6
36
0.6 △ 57.6
46
2.2 206.7
非製造業(計)
1,877 28.9
11.5 2,388
38.0
27.2
885
43.1 258.3
農・林業
3 0.0 △ 62.5
×
n.a.
n.a.
×
n.a.
n.a.
漁・水産業
1 0.0 △ 96.3
×
n.a.
n.a.
×
n.a.
n.a.
鉱業
・ n.a.
n.a.
0
n.a.
n.a.
・
n.a.
n.a.
建設業
9 0.1
n.a.
22
0.4 144.4
2
0.1 △ 66.7
運輸業
59 0.9 △ 44.9
24
0.4 △ 59.3
6
0.3 △ 64.7
通信業
13 0.2 △ 88.3
47
0.7 261.5
218
10.6 1,262.5
卸・小売業
805 12.4
1.4
924
14.7
14.8
495
24.1 251.1
金融・保険業
938 14.4 1,072.5
818
13.0 △ 12.8
70
3.4 △ 27.8
不動産業
△ 71 n.a.
n.a. 267
4.2
n.a.
31
1.5
n.a.
サービス業
90 1.4 △ 34.3
292
4.6 224.4
59
2.9 555.6
合計
6,492 100.0 △ 3.1 6,284 100.0 △ 3.2 2,052 100.0 135.3
(注1)報告件数が3件に満たない項目は、個別データ保護の観点から「X」と表示している。
(注2)当該データが存在しない項目は、ピリオド(「・」)で表示している。
(注3)「製造業(計)」、「非製造業(計)」は、各内訳項目、Xに、それぞれ「その他製造業」、
「その他非製造業」を加えた合計で、表上の各業種の合計と必ずしも一致しない。
(注4)伸び率は前年(同期)比。
(注5)金額がマイナスの場合、伸び率は計算していない。
(出所)表5に同じ
<日本の投資に 4 つの特徴>
11 年上半期の日本企業各社の対中投資関連プレスリリース資料をみると、4 つの特徴がある。
第 1 に、製造業の大型投資が目立つ。ここ数年は、代表的案件を拾う場合に対象を 5 億円以上
に絞ると数が限られてしまったが、11 年上半期の場合、例えば 20 億円を超える案件でもかなり
の数に上る。
第 2 に、具体的な業種としては、輸送機械(含む建機)のサプライヤーの案件が多い。例えば、
東海ゴム工業(自動車用ゴム、樹脂製品)、アイシン・エィ・ダブリュ(自動車部品)、ナブテスコ
(建設機械用の油圧モーター)、ネツレン(建設機械用部品)、日立化成(自動車樹脂成型品)、ス
タンレー電気、タチエス(自動車用シート)、日本精機(四輪車用計器)など。
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12
第 3 に、業種横断的傾向として、大手企業による中国統括会社の設立が目立つ。例えば、武田
薬品工業、神戸製鋼所、三菱自動車、スタンレー電気などだ。また三菱商事・伊藤ハム・米久が
中糧香港と合弁で、中糧集団(COFCO)の食肉部門統括会社を設立する。統括拠点設置には、
多数の中国現地法人の間接部門重複によるロスの回避、資金の運用の効率化、専門部署によ
る法務・コンプライアンス対応などが期待できる。
第 4 に、地域的には上海市・江蘇省・浙江省・安徽省など、中国東部への進出が目立つ。かつ
て進出のしやすさから広東省に進出した企業が、沿海部だけでなく内販推進をも展望し、華東地
域への拠点設置を検討する例が最近増えているという声もある。
このように 11 年上半期は、中国内需の深耕に向けた大手企業の本格的な態勢整備の動きが
相次いだ。東日本大震災発生以降、日本の対中投資の行方が注目される中、上半期は顕著な
増加となった。しかし、企業関係者によると、用地取得の手続きに要する時間や合弁企業設立に
必要な調整を考えれば、この増加が震災後の動きとは考えにくいという。
むしろ金融危機以降またはそれ以前から、日本の成長の緩慢さに対し中国の内需の強さが自
動車市場をはじめとして印象付けられる中、体力のある日本の大手企業が検討を重ねてきた投
資案件が、実行に移されてきたととらえる方が自然だろう。そうならば、この増加の動向は、11 円
上半期にとどまらずしばらく続く可能性がある。
なお、11 年上半期に発表された日系企業による対中直接投資案件の具体例は、添付資料の
表参照。
(箱崎大)
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13
日本企業の対北京、天津向け投資が急増(京津冀地域)
●北京発
京津冀地域(北京市、天津市、河北省)の 2011 年上半期の対内直接投資額(実行ベース)は、
北京市が前年同期比 1 ケタ増だったものの、天津市は 2 割、河北省では 3 割増えた。日本から
の投資は大幅増となり、北京市は 38.9%増、天津市は 3 倍近くに急増した。
<北京市:日本企業の持ち株会社、統括会社設立相次ぐ>
2011 年上半期の北京市の対内直接投資は、契約額が前年同期比 15.3%増の 47 億 7,155 万ド
ル、実行額が 6.8%増の 38 億 3,427 万ドルと、ともに増加した(表 1 参照)。
表1 京津冀地域の対内直接投資状況
(単位:件、100万ドル、%)
契約ベース
実行ベース
省・市名
年
前年
前年
前年
件数
金額
金額
(同期)比
(同期)比
(同期)比
09年
1,423 △ 25.0
6,121
0.6
北京市 10年
8,488
2.1 6,364
4.0
11年上半期
4,772
15.3 3,834
6.8
09年
596 △ 13.6 13,838
4.4 9,020
21.6
天津市 10年
592 △ 0.7 15,296
10.5 10,849
20.3
11年上半期
328 △ 3.8 9,035
10.0 7,234
22.3
09年
215 △ 13.3 2,606 △ 9.8 3,605
5.3
河北省 10年
246
14.4 3,290
26.3 3,830
6.5
11年上半期
90
2,130
108.5 2,320
31.1
(出所)北京市:北京市政府提供資料、天津市:天津市提供資料、河北省:河
北省政府提供資料
国・地域別の投資状況(実行額)をみると、1 位は香港で前年同期比 8.4%増の 19 億 5,479 万ド
ル(表 2 参照)。シェアは全投資額の 51.0%と半分を超えている。2 位の英領バージン諸島は前
年同期の大幅減から一転し、57.8%増の 5 億 209 万ドルと大きく伸びた。3 位の日本は 38.9%増
の 3 億 451 万ドルと、前年に引き続き 2 ケタ増になった。4 位の米国は 24.5%増の 1 億 8,747 万
ドル、5 位のドイツは 0.9%増の 1 億 5,511 万ドルだった。
契約額をみると、日本(3.5 倍)、シンガポール(3.3 倍)、韓国(9.6 倍)、カナダ(10.8 倍)からの投
資が急増している(表 2 参照)。
北京市商務委員会は日本からの契約額が急増したことについて、「日本企業による投資性公
司(持ち株会社)、または管理性公司(統括会社)の設立申請が相次いだ」と説明している。この
1 年を振り返ると、ヤマダ電機(10 年 9 月)、旭硝子(10 年 12 月)、豊田通商(11 年 2 月)、三菱
化学(管理性公司、11 年 4 月)などが相次いで設立しており、住友化学も 8 月 1 日から駐在員事
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14
務所を投資性公司に格上げしている。同委員会によると、シャープや本田技研(増資)も申請手
続きを完了させているという。
一方、韓国は、ポスコが朝陽区に 26 階建てと 31 階建てビルの建設をスタートしたこと、サムス
ングループが中央電視台(CCTV)南側の土地を自社ビル建設のために落札したことなどが挙げ
られる。
表2 北京市の国・地域別対内直接投資状況(11年上半期)
(単位:100万ドル、%)
契約ベース
実行ベース
国・地域
前年
前年
金額
金額
同期比
同期比
香港
2,410
16.8 1,955
8.4
英領バージン諸島
626 △ 32.0
502
57.8
日本
359
248.2
305
38.9
米国
271
69.3
187
24.5
ドイツ
105 △ 12.9
155
0.9
ケイマン諸島
180 △ 32.6
155 △ 18.2
シンガポール
113
233.3
77 △ 53.7
韓国
288
855.7
74 △ 30.1
英国
0.5 △ 99.2
46
526.6
カナダ
31
983.9
21
62.6
合計
4,772
15.3 3,834
6.8
(出所)北京市提供資料
<減少する不動産業投資>
産業別にみると、第一次産業は 88.6%減と大幅に減少したものの、第二次産業は 12.9%増と 2
ケタの伸びで、全投資実行額の 87.0%を占める第三次産業も 2.4%増加した。
業種別では、リース・ビジネスサービス業の金額が最も多く、2.2%増の 10 億 558 万ドルと全投
資実行額の 26.2%を占めた(表 3 参照)。うち投資性公司は 5.8%増の 6 億 5,282 万ドルだった。
一方契約額は 2.22 倍で、今後北京市では投資性公司の設立が拡大することが予想される。
このほか、伸びが顕著だったのは金融業の 69.5%増、建築業 57.7%増、卸・小売業 45.2%増。
製造業も 31.1%増と高い伸びを示した。その一方で、取引抑制策が強化された不動産業は 7 億
8,549 万ドルと投資規模はリース・ビジネスサービス業に次いだものの、2 割超の減少。契約額も
57.9%減ったため、今後も減少傾向が続く見込みだ。
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15
表3 北京市の業種別対内直接投資状況(11年上半期)
(単位:100万ドル、%)
契約ベース
実行ベース
国・地域
前年
前年
金額
金額
同期比
同期比
4 △ 20.3
1 △ 88.6
農林水産業
7 △ 21.1
6
57.7
建築業
281 △ 58.8
374
31.1
製造業
224 429.8
108 △ 17.8
交通運輸・倉庫業
889
41.5
432
9.8
情報サービス・ソフトウエア産業
1,275 191.1
552
45.2
卸・小売業
257 259.2
216
69.5
金融業
346 △ 57.9
785 △ 21.4
不動産業
883
30.0 1,006
2.2
リース・ビジネスサービス業
投資性公司
569 122.1
653
5.8
合計
4,772
15.3 3,834
6.8
(出所)表2に同じ
<今後の経済発展を支える戦略性新興産業>
北京市の第 12 次 5 ヵ年規画では、新世代情報技術、バイオ・医薬、新エネルギー、省エネ・環
境、新エネルギー自動車、新素材、ハイテク装備、航空宇宙の 8 産業を戦略性新興産業として位
置付けている。15 年末までに、売上高が 500 億元(1 元=約 12 円)を超える大企業を育成するこ
と、イノベーション能力の高い中小企業を創出すること、を目標として打ち出している。
これまでの重点産業だった電子情報(液晶パネル、通信など)、自動車、石油化学、設備製造
(環境保護設備、発送電設備など)、バイオ・医薬、都市型工業(食品・飲料、工芸美術など)の 6
大産業と併せ、今後の経済発展を支える支柱産業にしていく計画だが、外資導入に関する具体
的な指針は明記されていない。
<天津市:自動車関連企業の増資が目立った日系企業>
天津市の対内直接投資状況は、契約件数が前年同期比 3.8%減の 328 件、契約額は 10.0%増
の 90 億 3,472 万ドル、実行額は 22.3%増の 72 億 3,394 万ドルと、件数は減少したものの、金額
は契約、実行ベースとも前年に続き 2 ケタ増になった。
国・地域別の投資状況(実行額)をみると、1 位は香港で前年同期比 37.2%増の 32 億 2,866 万
ドルと高い伸びを示した(表 4 参照)。2 位は日本で、3 倍近い 7 億 707 万ドルと前年上半期の減
少から急増し、3 位の英領バージン諸島も前年上半期の大幅減から 2.8 倍の 6 億 4,054 万ドルと
大きくプラスに転じた。一方、前年上半期に 3.3 倍の伸びを記録した韓国は 38.0%減の 4 億 9,426
万ドルで 4 位となり、5 位のシンガポールは 82.6%増の 3 億 9,134 万ドルだった。
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16
表4 天津市の国・地域別対内直接投資状況(11年上半期)
(単位:100万ドル、%)
契約ベース
実行ベース
国・地域
前年
前年
前年
件数
金額
金額
同期比
同期比
同期比
香港
117 △ 12.0 4,129
7.4 3,229
37.2
日本
32
14.3
542 312.8
707 198.5
英領バージン諸島
12 △ 61.3 1,053 △ 31.2
641 175.5
韓国
34 △ 20.9
565
21.3
494 △ 38.0
シンガポール
14
16.7
454 370.2
391
82.6
米国
25
13.6
385 △ 44.3
199 △ 64.7
ドイツ
6 100.0
104
90.6
187 119.3
イタリア
4
33.3
4 △ 67.6
36 238.1
フランス
3
0.0
30 4,407.5
26 361.7
英国
2 △ 50.0
62 1,710.4
22 △ 61.9
台湾
19
18.8
68
35.9
14 △ 56.2
合計
328 △ 3.8 9,035
10.0 7,234
22.3
(出所)天津市提供資料
産業別にみると、全投資の 44.5%を占める製造業の実行額は、前年同期比 31.8%増の 32 億
1,713 万ドルと順調に伸びた(表 5 参照)。またサービス業を中心とした第三次産業の実行額は、
15.4%増の 39 億 1,000 万ドルと順調に増加し、全投資額の 54%を占めた。うち不動産業は、3.3
倍の 11 億 9,375 万ドルと前年の減少から大幅な増加に転じた。天津経済技術開発区(TEDA)は
増加の理由として、特に TEDA と天津エコシティー内での不動産開発が急速に進められているこ
ともあり、香港、シンガポール系などを中心に投資が急増したと説明している。
このほか、リース・ビジネスサービス業も投資性公司の設立が増えたことなどから 3 倍、卸・小
売業・飲食業も 2.2 倍と、いずれも前年のマイナスから大きくプラスに転じた。一方、交通運輸・倉
庫業は 46.8%減の 5 億 9,496 万ドルと急減した。
表5 天津市の業種別対内直接投資状況(11年上半期) (単位:100万ドル、%)
契約ベース
実行ベース
国・地域
前年
前年
前年
件数
金額
金額
同期比
同期比
同期比
農業
1 △ 66.7
22
28.4
21 167.0
建築業
2 △ 60.0
142 117.4
88
15.2
製造業
79 △ 12.2 3,160
84.8 3,217
31.8
交通運輸・倉庫業
30
87.5
942 △ 40.9
595 △ 46.8
卸・小売業・飲食業
66 △ 13.2
486 △ 60.2
384 119.2
不動産業
7 △ 12.5
605
90.1 1,194 225.5
81 △ 1.2 2,057
19.7
963 199.3
リース・ビジネスサービス業
銀行・証券・保険業
0
n.a.
100 △ 76.6
142 △ 80.3
その他
62
10.7 1,521
31.2
630 △ 8.1
合計
328 △ 3.8 9,035
10.0 7,234
22.3
(出所)表4に同じ
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17
<進む投資の大型化と急増する増資>
天津市商務委員会の発表によると、上半期に新たに認可された投資プロジェクトは、前年同様
に大型案件が増加している。契約件数 328 件のうち、1,000 万ドル以上のプロジェクトは 89 件に
上り、契約額は 79 億 4,000 万ドルと全契約額の 87.8%を占めた。また実行ベースでは 109 件、
38 億 9,000 万ドルで、全投資額の 53.7%に達した。投資の大型化が進んでいる業種としては、製
造業では引き続き自動車・同部品や液晶、太陽光、パソコンなどの電気・電子分野などで、国内
需要の拡大に伴う生産規模の拡大を目的とした投資や増資が増えている。
また、増資を行った外資系企業は 244 社に上り、増資の契約額は 64.2%増の 44 億 4,000 万ド
ルと、全契約額の 49%に達した。
<日系企業が中国製自動車部品の輸出も>
TEDA によると、日系企業の投資は活発で、アイシン精機が投資性公司を設立(資本金 6,500
万ドル)するなど、特に自動車・同部品企業が管理機能の拡充や生産拡大を目的に増資するケ
ースが目立った。TEDA 内には 100 社を超える自動車関連企業が進出しており、うちトヨタに関連
する企業だけで 70 社余りあるとみられている。上半期もティア 1(1 次部品メーカー)、ティア 2(2
次部品メーカー)を中心とするサプライヤーの増資が増えている。
その一方で賃金や原材料価格の上昇に伴い、日系自動車部品メーカーはコスト削減を目的に
中国企業からの部品調達を拡大している。中には中国企業の部品を自社生産分だけでなく販売
用にも調達し、日本をはじめとする海外に輸出する企業もある。現状では電子系統の部品でこ
の傾向が強まっているという。
このほか、サービス業分野ではヤマダ電機が 6 月に天津市内に中国 2 号店をオープンした。セ
ブン-イレブンも 7 月に TEDA に天津 2 号店を開店し、伊勢丹も 12 年上半期に TEDA に天津 2
号店をオープンすることが決まっている。特にここ 1、2 年、TEDA は住宅地の造成が急速に行わ
れており、居住人口も増加している。新たな商業地としての発展が期待され、小売業の新規投資
が急増している。
<ハイテクなどが外資奨励分野>
天津市の第 12 次 5 ヵ年規画では、航空宇宙、新世代情報技術、バイオ技術、新エネルギー、
新素材、省エネ・環境、ハイテク設備製造などを戦略性新興産業として位置付けている。天津市
が従来から挙げている重点産業は、航空宇宙、石油化学、設備製造(自動車産業が含まれる)、
電子情報、バイオ医薬、新エネルギー・新素材、紡織、国防産業で、戦略性新興産業とかなり重
なっている。
外資導入を奨励する分野としては、ハイテク、省エネ・環境、新エネルギー、現代農業、金融、
貿易、物流、住民サービス分野などが挙げられており、教育や医療など従来規制が多かった分
野も、今後は徐々に開放するとしている。また、これまでのグリーンフィールド型の投資に加え、
証券投資や M&A などによる投資も促進する。同規画が終了する 15 年には、実行額の累計額を
800 億ドル超(11 年上半期末の累計は 744 億ドル)にするという目標を打ち出している。
<河北省:台湾からの投資が約 2.5 倍に>
11 年上半期の河北省の対内直接投資は、契約件数が 90 件(前年同期の数字は未発表)、契
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約額は 2.1 倍の 21 億 3,000 万ドル、実行額は 31.1%増の 23 億 2,000 万ドルだった。
投資額が 1,000 万ドルを超える大型案件の契約件数は 28 件、金額は 2.2 倍の 9 億 1,000 万ド
ルと急増した。全契約額に占めるシェアは 42.7%に達し、投資の大型化が進んでいる。また増資
の契約件数は 20 件、金額は 9 億 7,000 万ドルと 1.6 倍も増加しており、北京や天津同様、事業
拡大を進める企業が増えている。
業種別では、製造業(実行額)が 24.2%増の 16 億 6,000 万ドルと、全投資額の 71.4%を占めた。
一方のサービス業(実行額)は、64.8%増の 6 億 3,000 万ドルと、伸び率では製造業を上回り、シ
ェアも 27%になった。
国・地域別(実行額)では、アジアからの投資が 39.4%増の 16 億 2,000 万ドルで、全投資の
70%を占めた。特に台湾からの投資は 2.4 倍に急増しており、香港も 40.5%増と高い伸び。欧州
からの投資も 98.5%増の 1 億 6,700 万ドルと大きく伸びている。
河北省政府が発表した第 12 次 5 ヵ年規画では、新エネルギー、新素材、新世代情報技術、ハ
イテク設備製造、省エネ・環境、海洋産業の 6 つを戦略性新興産業として位置付けているが、外
資導入に関する具体的な指針は明記されていない。その一方で、鉄鋼、石炭、セメント、ガラス、
製紙など、立ち遅れた産業の淘汰(とうた)を進めることが強調されている。省エネや二酸化炭素
の排出削減を強力に推進するなど、循環経済の構築に力点を置くことにしている。
(清水顕司)
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上海市の実行額、2 ケタの伸びを回復(華東地域)
●上海発
2011 年上半期の華東地域(上海市、江蘇省、浙江省)の対内直接投資額(実行ベース)は、
前年同期比 11.9%増の 289 億 9,400 万ドルとなった。江蘇省への投資額が最も大きく、華東地
域全体の 57.6%を占める。09 年、10 年と 1 ケタだった上海市の伸びは、2 ケタに回復した。
<上海市:第三次産業向けが 8 割占める>
上海市の 11 年上半期の対内直接投資は、契約件数が前年同期比 8.5%増の 1,831 件、契約
額が 30.1%増の 97 億 2,800 万ドル、実行額は 12.0%増の 60 億 1,300 万ドルとなり、契約額、実
行額ともに、10 年(通年)の伸び率を大きく上回った(表 1 参照)。
表1 華東地域の対内直接投資の推移
契約
前年
件数 (同期)比
09年
3,090 △17.6
上海市 10年
3,906
26.4
11年上半期 1,831
8.5
09年
4,219 △ 0.4
江蘇省 10年
4,661
10.5
11年上半期 1,753
4.5
09年
1,738 △ 6.5
浙江省 10年
1,944
11.9
11年上半期
817 △ 8.2
09年
9,047 △ 8.1
合計 10年
10,511
16.2
11年上半期 4,401 △ 9.2
契約額
13,301
15,307
9,728
50,981
56,833
31,242
16,018
20,047
10,465
80,300
92,187
51,434
(単位:件、100万ドル、%)
前年
前年
実行額
(同期)比
(同期)比
△ 22.3 10,538
4.5
15.1 11,121
5.5
30.1
6,013
12.0
0.5 25,323
0.8
11.5 28,498
12.5
14.7 16,697
9.7
△ 10.1
9,940
△ 1.3
25.2 11,002
10.7
22.8
6,284
18.2
△ 6.3 45,801
1.2
14.8 50,621
10.5
19.2 28,994
11.9
(出所)各市・省統計年鑑、対外経済統計データおよび各省統計局発表を基に作成
産業別では、第三次産業が契約件数で 11.9%増の 1,695 件、実行額で 13.0%増の 49 億 400
万ドルと、10 年の伸びには及ばなかったものの、ともに 2 ケタの伸びとなった。実行額は、同市の
対内直接投資の 81.6%を占める。一方で、第二次産業は、契約件数は、2 ケタの減少となったも
のの、実行額では 6.8%増の 10 億 7,500 万ドルとなり、09 年、10 年の減少から増加に転じた(表
2 参照)。
同市では、米ウォルト・ディズニーが 11 年 4 月に上海ディズニーランドの建設に着工した。投資
総額は約 290 億元(1 元=約 12 円)とされる。インドのインフォシス(IT サービス)は、ソフトウエア
の開発拠点を設ける計画だ。また英マークス&スペンサー(小売り)は、同市での出店を拡大す
る。製造業では、米オムノバ・ソリューションズ(機能化学品)の合成ラテックスの工場、オランダ
のフィリップス(電子機器)の自動車用照明器具の工場が操業を開始している。また、米 TRW オ
ートモーティブ(自動車部品)が、開発・評価センターを設ける計画だ。
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20
表2 上海市の産業別直接投資
(単位:件、100万ドル、%)
契約件数
実行額
前年
前年
(同期)比
(同期)比
09年
5
400.0
82
550.4
第一次産業 10年
26
420.0
89
9.3
11年上半期
8
100.0
34
45.4
09年
355 △ 23.8
2,840 △ 12.2
第二次産業 10年
372
4.8
2,201 △ 22.5
11年上半期
128 △ 23.8
1,075
6.8
09年
2,730 △ 16.8
7,616
11.4
第三次産業 10年
3,508
28.5
8,831
16.0
11年上半期
1,695
11.9
4,904
13.0
(出所)「上海統計年鑑」、「上海貿易外経統計月報」を基に作成
<米国がディズニーランド効果で大幅増>
国・地域別(契約ベース)では、日本は前年同期比で 64.3%増加し、契約額は 9 億 700 万ドルと
なった(表 3 参照)。順位は 3 位で 10 年と変わらなかったものの、10 年の伸び率(12.8%)を大き
く上回っており、日本からの直接投資が活発化している。また、米国の契約額が約 3.8 倍の 14 億
5,000 万ドルと大幅に増加し、10 年の 6 位から 2 位に浮上した。米国は、上海ディズニーランドの
効果が大きい。
表3 上海市の国・地域別直接投資
(単位:件、100万ドル、%)
09年
10年
11年上半期
契約
契約
契約
前年
前年
契約額
契約額
契約額
件数
件数
件数 同期比
同期比
順
全 体
3,090 13,301 3,906 15,307 1,831
8.5 9,728
30.1
位
1 香港
1,122 7,484 1,335 6,808
599
4.2 4,414
8.9
2 米国
245
408
297
359
127 △ 13.0 1,450 282.6
3 日本
358 1,150
566 1,298
289
30.2
907
64.3
4 シンガポール
139
705
200 2,252
74 △ 20.4
738
44.7
5 バージン諸島
91
455
112
969
49
32.4
373
22.3
6 台湾
286
160
399
156
172
4.9
42
10.5
7 英国
70
87
71
95
30
15.4
33 △ 15.4
8 ケイマン諸島
16 △ 59
21
468
5 △ 37.5
25 △ 90.3
(注)順位は11年上半期の契約額。
(出所)「上海貿易外経統計月報」を基に作成
日本企業の上海市への投資動向をみると、11 年 1 月に島津製作所が分析計測機器の開発セ
ンターを新設した。同センターは、マーケティング機能を強化し、現地ニーズに対応した新製品開
発を専門的に行う。2 月には、堀場製作所の新工場が完成した。新工場では、臨床検査用試薬
や半導体向け部品、酸性・アルカリ性を計る pH メーターの電極を生産する。横浜ゴムは、ホース、
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21
接着剤、コンベアベルトなどの販売会社を 5 月に設立した。6 月には味の素が、医薬用・食品用
アミノ酸について、上海市現地法人の生産設備増強を行うと発表。さらに同月、上海ブレッドトー
クと合弁会社を設立し、冷凍パン生地を製造・販売すると発表している。
<地域統括本部、投資性公司の設立が活発に>
11 年上半期は、地域統括本部 32 社、投資性公司 17 社、外資研究開発センター9 社がそれぞ
れ新設された。11 年に入り、地域統括本部、投資性公司の設立が活発だ。累計では地域統括本
部 337 社、投資性公司 230 社、外資研究開発センター328 社となった(表 4 参照)。
11 年 3 月には米メドトロニック(医療機器)が、6 月にはヒューレット・パッカード(パソコン関連機
器)が、地域統括本部の設立を発表している。神戸製鋼は、投資性公司「神鋼投資」を設立し、4
月から業務を開始している。中国国内での投資、資金管理の一元化、グループガバナンス強化、
グループ会社のサポートなどの業務を行う。また、米イーライリリー(製薬)、ドイツのコンチネンタ
ル(自動車部品)は研究開発センターを開設。米エコラボ(化学)も設立を進めている。
表4 上海市の新規「総部経済」企業数 (単位:社)
09年 10年 11年 累計
地域統括本部
36
45
32 337
投資性公司(傘型企業)
13
22
17 230
外資研究開発センター
30
15
9 328
合計
79
82
58 895
(出所)上海市統計局発表を基に作成
<外資プロジェクトの許可権限の一部を区・県レベルに移管>
上海市発展改革委員会は 11 年 4 月、外資プロジェクトの許可権限の一部を区・県レベルに移
管する意見を公布した。都市中心部の区には、総投資額 3 億ドル未満の奨励類、許可類のサー
ビス業プロジェクトや、そのほかの 1 億ドル未満の奨励類、許可類のプロジェクトの許可権限を
移管し、郊外の区・県には、総投資額 3 億ドル未満の奨励類、許可類の工業プロジェクトや、そ
のほかの 1 億ドル未満の奨励類、許可類のプロジェクトの許可権限を移管するとしている。今後、
外資プロジェクトの許可手続きの簡素化、効率化が期待される。
なお、第 12 次 5 ヵ年(12・5)規画期間中、上海市の外資利用のポイントは以下のとおり。
○現代サービス業と戦略性新興産業への投資を誘致する。
○多国籍企業による上海市を拠点にした業務展開を奨励し、総部経済の推進に力を入れる。
○海外のシンクタンク資源を導入し、開放型の自主的なイノベーションシステムの構築を推進す
る。
○外資利用の方式を多様化させ、外資が買収合併などで国内企業の合併再編に参画すること
を奨励し、外資の持ち株や創業の際の投資を促進する。
○条件を備える上場会社が海外の投資を受け入れることを奨励する。
<江蘇省:蘇北、蘇中への投資が活発化>
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江蘇省の 11 年上半期の対内直接投資は、契約件数が前年同期比 4.5%増の 1,753 件、契約
額が 14.7%増の 312 億 4,200 万ドル、実行額は 9.7%増の 166 億 9,700 万ドルとなった。実行額
は、10 年の伸び(12.5%増)を下回ったものの、華東地域の中では江蘇省への投資額が最も大
きく、華東地域全体の 57.6%を占める。
江蘇省を蘇北、蘇中、蘇南の地域別にみると、蘇南地域の実行額が 111 億 3,100 万ドルと最も
大きく江蘇省全体の 66.7%を占める(表 5 参照)。中でも蘇州市は 50 億 3,200 万ドルと蘇南地域
で最も大きなウエートを占める。一方で、蘇北地域は 28.1%増の 25 億 5,500 万ドル、蘇中地域は
22.0%増の 30 億 1,100 万ドルと、投資額はまだ小さいものの、伸び率では蘇南地域(3.5%)を大
きく上回っており、蘇北地域、蘇中地域への投資が活発化している。
(単位:100万ドル、%)
10年
11年上半期
前年
実行額 前年比 実行額 前年比 実行額
同期比
江蘇省
25,323
0.8 28,498
12.5 16,697
9.7
蘇南
17,414
3.6 18,569
6.6 11,131
3.5
南京市
2,282
0.9 2,676
17.3
1,656
25.8
無錫市
3,203
1.2 3,300
3.0
1,918
5.8
常州市
2,261
10.9 2,443
8.1
1,448
7.3
蘇州市
8,227
1.2 8,535
3.8
5,032 △ 3.3
鎮江市
1,441
19.9 1,615
12.1
1,077
0.7
蘇中
4,469 △ 17.3 5,279
18.1
3,011
22.0
南通市
2,005 △ 31.7 2,061
2.8
1,422
40.3
揚州市
1,519
0.6 2,056
35.4
1,133
23.9
泰州市
1,056
0.6 1,363
29.0
499 △ 19.1
蘇北
3,440
17.9 4,650
35.2
2,555
28.1
徐州市
698
19.8 1,013
45.2
546
46.7
連雲港市 1,040
11.2 1,101
5.9
297 △ 42.8
淮安市
547
51.8 1,051
92.2
773
71.8
塩城市
1,044
10.6 1,304
24.9
819
44.8
宿遷市
112
18.0
181
61.9
120
37.6
(注)各市の合計は各地域・江蘇省の合計と合致しない。
(出所)「江蘇統計年鑑」および「江蘇経済動態」を基に作成
表5 江蘇省の地域別直接投資
09年
<武田薬品が蘇中の泰州市に進出>
蘇州市では、日立電線が 11 年 1 月、建屋の新設と産業用電線の製造設備を導入し、鉄道車両
用電線と耐熱電線の製造を開始すると発表した。また、明治ホールディングスは 4 月、明治乳業
(蘇州)を設立したと発表。牛乳、ヨーグルトなどの製造を始める予定。日本企業以外では、韓国
のサムスン電子が液晶パネル工場の建設を発表。台湾の長興化学工業(熱硬化性樹脂)は、液
晶パネル用の光学ポリエステルフィルムの生産を行う。また、イタリアの GMG(自動車部品)は自
動車油圧システムの工場を建設する。
常州市では、ブリヂストンが 6 月、油圧ホース本体(ホース部分)の生産工場の新設を決定した。
投資総額は約 3 億 2,000 万元。また、米テレックス(建設機械)のクレーン工場、ドイツのマン(自
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23
動車・機械)のエンジン部品工場が操業を開始。THK(自動車部品)、ドイツの KSB(ポンプ・バル
ブ)も生産拠点を設立する。
南京市では、スウェーデンのアトラスコプコ(産業機械)が研究開発センターを新設する計画が
ある。
揚州市では、イタリアのマルチェガリア(溶接鋼管)が加工工場の操業を始めたほか、ドイツの
ブラウプンクト(電気機器)がカーオーディオ機器の工場建設を開始している。また、ドイツのフォ
ルクスワーゲン、米センサータ・テクノロジーズ(電子部品)も工場を新設する。
泰州市では、武田薬品工業が 4 月、武田薬品(中国)を設立したと発表。同社は販売・マーケテ
ィング活動、同社製品(完成品)の輸入などを行う。また、台湾の統一企業集団(食品)は、飲料
などの生産工場を新設する。
江蘇省では、12・5 規画期間中、外資企業による以下の投資を奨励している。
○ハイテク産業、現代サービス業、省エネ・環境産業、現代農業などの分野への投資
○江蘇省の北部地域、沿海地域への投資
○研究開発センター、販売組織および地域総括本部の設立に関する投資
また、同省は、外資が多様な方式で企業の再編などに参画することを支援する。外資の買収
合併に関する安全審査制度を策定・実施するとともに、省内の企業に対しては海外資本を利用
した上場、融資を奨励している。
<浙江省:嘉興市、寧波市、湖州市が著しい伸び>
浙江省の 11 年上半期の対内直接投資は、契約件数が前年同期比 8.2%減の 817 件と減少し
たものの、契約額では 22.8%増の 104 億 6,500 万ドル、実行額は 18.2%増の 62 億 8,400 万ドル
となり、実行額は 10 年の伸び(10.7%増)を上回った(表 6 参照)。
都市別にみると、杭州市が 18.6%増の 26 億 3,500 万ドルとなり、浙江省の約 42%を占める。
また、嘉興市(37.9%増)、寧波市(22.4%増)、湖州市(20.8%増)は、伸びが著しい。
表6 浙江省の地域別直接投資
09年
(単位:100万ドル、%)
10年
11年上半期
前年
実行額 前年比 実行額 前年比 実行額
同期比
浙江省
9,940 △ 1.3 11,002 10.7 6,284
18.2
杭州市
4,014
21.2 4,356 12.3 2,635
18.6
寧波市
2,210 △ 12.2 2,313
5.4 1,433
22.4
嘉興市
1,335 △ 1.8 1,610 20.6
916
37.9
紹興市
811
5.1
953 17.5
390 △ 1.7
湖州市
811
1.1
919 13.3
582
20.8
その他
759 △ 42.1
850 12.0
328 △ 14.1
(出所)「浙江統計年鑑」および各市統計局発表を基に作成
省内では、台湾の敏実集団(自動車部品)が嘉興市で新工場の建設に着工しているほか、フィ
ンランドのコネ(昇降機)は湖州市の合弁会社の出資比率を引き上げる。また、オランダのアクゾ
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24
ノーベル(化学)は、寧波市に新工場を建設する計画。
<パナソニックが杭州市で家電リサイクル事業>
日本企業では、パナソニックが 11 年 5 月、杭州大地環保、DOWA ホールディングス、住友商事
とともに、杭州市に合弁会社を設立すると発表した。中国では 11 年 1 月、「廃棄電器電子製品回
収処理管理条例」が施行され、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、パソコンのリサイクルが義務
付けられたことから、同合弁会社では、廃家電の回収、解体処理、資源売却の事業を行う。
浙江省では、12・5 規画期間中、外資企業による現代サービス業と戦略性新興産業への投資
を誘致し、高汚染・低水準・生産能力過剰のプロジェクトへの投資は厳格に制限するとしている。
特に、先進国と世界上位 500 社企業からの投資誘致に重点を置き、華僑からの投資誘致も重視
しているようだ。重点地域は、省内の中部、西南部。また、外資利用の方式を多様化し、外資企
業が買収合併などの方式で省内企業の合併再編などに参画することを奨励する。
なお、外資プロジェクトの許可権限に関して、これまで浙江省商務庁が審査と許可を行ってい
た、投資額 1 億ドル以下の「奨励類」、「許可類」に属する商業プロジェクトの設立や変更事項の
許可について、11 年 3 月から各市・県(市・区)の商務部門に権限が移譲されている。今後、外資
企業の利便性の向上が期待される。
(鈴木貴詞、張培葉)
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25
香港企業の不動産関連投資が牽引(遼寧省)
●大連発
瀋陽市の契約額、実行額がともに大幅に増えた。日系企業による不動産、建設関連の投資が
増加傾向にある。省内最大の経済都市大連の実行額は堅調に推移。省全体では、現地市場を
意識した進出が増えている。
<瀋陽市:実行額は半期ベースで過去最高>
2011 年上半期の遼寧省の対内直接投資は、契約件数が前年同期比 16%減の 519 件、契約額
が 28.3%増の 115 億 7,300 万ドル、実行額は 45.8%増の 119 億 9,000 万ドルだった(表 1 参照)。
省都瀋陽市は、契約額、実行額とも大幅に増加し、それぞれ 2.7 倍の 37 億 6,000 万ドル、57.2%
増の 31 億 5,000 万ドルだった。実行額は、半期でみると過去最高額となった。大連市の実行額は
46 億 7,500 万ドル、25.7%増と引き続き堅調な伸びで、省内トップの地位を維持している。
表1 遼寧省の対内直接投資
契約ベース
省・市名
年
(単位:件、%、100万ドル)
実行ベース
件数
金額
金額
前年
前年
前年
構成比
(同期)比
(同期)比
(同期)比
09年
1,629
23.5 28,184
38.9 15,444
28.5 100.0
遼寧省 10年
1,480 △ 9.2 25,635
△ 9.0 20,750
34.4 100.0
11年上半期
519 △16.0 11,573
28.3 11,990
45.8 100.0
09年
710
37.1 12,052
17.4 5,410 △ 9.8
35.0
瀋陽市 10年
473 △ 33.4 8,121 △ 32.6 5,054 △ 6.6
24.4
11年上半期
116 △28.8 3,760
166.3 3,150
57.2
26.3
09年
473 △ 6.7 6,575
9.2 6,017
20.2
39.0
大連市 10年
472
△0.2 8,087
23.0 10,031
66.7
48.3
11年上半期
186
△3.1 3,135
53.9 4,675
25.7
39.0
(出所)09年:各省市統計年鑑、10、11年上半期:各省市政府発表資料を基に作成
省全体の実行額を国・地域別にみると、香港からの投資が全体の 69.5%と大部分を占める(表
2 参照)。省政府企業誘致担当部署によると、ここ数年来、香港からの不動産関連投資が省の対
内直接投資全体を牽引している。
日本は、98.3%の大幅増となった。10 年上半期には金融危機の余波で大幅に減少しており、そ
の反動と考えられるが、瀋陽を中心に増加している不動産、建築関連産業への投資も寄与して
いるとみられる。
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26
表2 遼寧省の国・地域別対内直接投資(11年上半期) (単位:%、100万ドル)
実行ベース
順
国・地域
位
金額
前年
構成比
同期比
1 香港
8,336
84.6
69.5
2 日本
687
98.3
5.7
3 韓国
538
23.3
4.5
4 英領バージン諸島
453
18.9
3.8
5 米国
213 △ 34.0
1.8
その他
1,763
14.7
合計
11,990
45.8
100.0
(出所)遼寧省政府発表資料を基に作成
<不動産関連投資は今後も継続の見込み>
省の実行額を業種別にみると、不動産関連産業が前年同期比 98.7%増と著しく伸びている(表
3 参照)。香港不動産大手の佳兆業や和記黄埔、世茂集団などが、省内各地でショッピングモー
ルなどを開発中、また開発を予定している。契約額も 74.4%増となっており、11 年下半期以降も
投資の高い伸びが継続するとみられる。
表3 遼寧省の業種別対内直接投資(11年上半期)
(単位:件、%、100万ドル)
契約ベース
実行ベース
順
業種
位
件数 前年
金額
金額
前年
前年
構成比
同期比
同期比
同期比
1 製造業
189 △ 8.7 3,259 △ 2.2 4,048
40.0
33.8
2 不動産業
26 △ 62.3 2,903
74.4 4,752
98.7
39.6
住民サービス・その
3
8 △ 38.5
1038 115.9
771
3.7
6.4
他のサービス業
科学研究・技術サー
4
59 △ 15.7
980 △ 27.8
457 △ 17.4
3.8
ビス・地質調査業
情報・コンピュータ
5 サービス・ソフトウエ
30 △ 33.3
193 △ 61.0
179 △ 50.2
1.5
ア業
水利・環境・公共施
6
6
0.0
256 △ 3.8
283
33.2
2.4
設管理業
リース・ビジネスサー
7
54 △ 14.3
821
45.1
426
118.9
3.6
ビス業
8 卸・小売業
86
7.5
446 102.6
238
27.0
2.0
文化・スポーツ・娯
9
2 △ 66.7
191
56.4
190
13.4
1.6
楽業
10 運輸・倉庫・郵便業
8
0.0
91 △ 56.5
42 △ 74.4
0.4
その他
51
0.0 1,395 350.0
604
67.3
5.0
合計
519 △ 16.0 11,573
28.3 11,990
45.8 100.0
(出所)表2に同じ
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<案件は大型化が目立つ>
瀋陽市への投資は、ここ数年実行ベースで減少が続いていたが、11 年上半期は大きく伸びて
いる。瀋陽市対外経済貿易合作局関係者の話などを総合すると、11 年には以下の 3 点の特徴
がある。
表4 日系企業による近年の瀋陽への投資案件(不動産、建築関係)
業
企業名
投資額
概要
種
06年9月発表。中国建設との共同プロジェクト。和平
資本金1,286万ドル。
区太原北街に商業施設、集合住宅が一体となった
新日本建設・ 出資比率は新日本
複合ビルを建設。08年2月に伊勢丹がオープン。
総 旭興進
建設70%、旭興進
10年9月には、日本式マンションの開発を発表。開
合
30%
発費は130億円。約1,000戸を設ける予定。
建
10年4月、瀋陽兆寰現代建築産業園と共同で、瀋
設
陽鉄西現代建築産業園で「瀋陽兆寰(日本)現代
業
総投資額40億元
鹿島建設
建築産業園」を着工。敷地面積は2平方キロ。
(1元=0.16ドル)
11年3月、トステム(当時)と共同出資で、投資総額
1,500万ドルのプレキャスト工場プロジェクトを開始。
08年4月発表。丸紅、東急不動産、香港新華集団
による合弁事業。持ち株比率は、それぞれ25%、
5%、70%。瀋陽市政府などがある瀋河区市府大路
丸紅・
総投資額20億元
で、約900戸の分譲住宅、9万8,202平方メートルの
東急不動産
以上
商業施設、オフィスなどを複合開発する。土地面積
は2万7,100平方メートル、開発建物面積は約30万
平方メートル。11年秋、デパートなどオープン予定。
不
11年2月発表。香港新澧集団が瀋北新区で手掛け
動
7,961万9,400元を投
る高級ブランドアウトレットモール「尚柏奥莱」に
産
資し、ショッピング
パートナーとして参画。150~200の有名ブランドが
三菱地所
開
モール権益の30%を
出店予定。建築面積は6万平方メートル。12年に開
発
取得
業予定。
11年6月発表。東京建物、京阪電鉄、万科グルー
プの合弁事業。東京建物は06年から万科グループ
東京建物・
と業務提携している。瀋陽では、マンション、商業施
未公表
京阪電鉄
設、オフィスからなる複合開発、「明天広場プロジェ
クト」(敷地面積19万9,319平方メートル)、「春河プロ
ジェクト」(同8万1,379平方メートル)を行う。
10年11月、100%出資で「瀋陽法庫経済開発区」に
INAX
資本金13億円、総投
陶板(外壁用大形タイル)製造工場を設立。12年春
(現、LIXIL)
資額26億円
に操業開始予定。
住
11年4月発表。瀋陽鉄西現代建築産業園で、鉄骨
宅
住宅の製造工場建設を開始。土地面積は30万平
部
方メートル、建屋面積は8万8,000平方メートル。11
積水ハウス
設備投資額80億円
材
年12月から出荷開始を予定。100%出資の現地法
製
人が運営。同時に、瀋陽市内2ヵ所でタウンハウス、
造
マンション、ホテルなどの複合開発を実施。
資本金10億円。出資 11年5月には、ノザワ(兵庫県神戸市)と合弁で押出
積水ハウス・
比率はノザワ51%、 成形セメント板の製造工場を設立。工場面積は1万
ノザワ
1,000平方メートル。12年4月、操業開始予定。
積水ハウス49%
(出所)各社プレスリリース、現地報道
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28
第 1 に、不動産と建築関連産業への投資が増加した。不動産については、省全体で香港系デ
ベロッパーが投資を進めており、瀋陽も例外ではない。その中で、日本企業もプレゼンスを高め
つつある。不動産開発分野では、三菱地所と香港新ライ(さんずいに豊)集団によるアウトレット
モール開発、東京建物と京阪電鉄および地場の万科グループによるマンション・オフィス・商業施
設の複合プロジェクトなど、瀋陽周辺の一般消費者を意識した進出が増えている。また、建築・
建材関連では、積水ハウスによる鉄骨住宅製造工場建設のように、現在進行中の市内再開発
プロジェクトなど、旺盛な建築需要を見込んでの進出が増えている(表 4 参照)。
第 2 に、設備製造業を中心とする工業プロジェクトが大幅に増えた。実行額は全体の 22%を占
める 7 億ドルで、そのうち、1,000 万ドル以上のプロジェクトが 2.5 倍増の 6 億 9,000 万ドルになっ
ている。
第 3 に、案件が大型化した。投資額が 5,000 万ドルを超えたのは全部で 15 件(前年同期は 3
件)、1 億ドルを超えたのは 8 件(同 1 件)で、各企業による投資規模の拡大が、市全体の投資の
伸びに直結している。
<大連市:実行額は依然省内 1 位>
大連市は省内最大の経済都市で、実行額は 46 億 7,500 万ドルと省内トップを維持している。
国・地域別の実行額をみると、香港が前年同期比 46.5%増の 24 億 4,270 万ドルで、全体の
52.3%を占める(表 5 参照)。ほとんどが不動産関連の投資とされる。日本も 53.3%増の 4 億
1,860 万ドルと大きく増加した。要因について大連市政府企業誘致関係者は、10 年上半期の投
資額が落ち込んだことに対する反動、金融危機でいったんストップしていた投資が企業の業績回
復に伴い動き出したこと、IT 関連企業を中心とした新規進出が継続していること、を挙げている。
表5 大連市の国・地域別対内直接投資(11年上半期) (単位:件、%、100万ドル)
契約ベース
実行ベース
順
国・地域
位
件数 前年
金額
金額
前年
前年
構成比
同期比
同期比
同期比
1 香港
33 △19.5 1,169.9 △8.3 2,442.7
46.5
52.3
2 英領バージン諸島
2 △33.3
42.4 △35.9 428.8
198.3
9.2
3 日本
73
19.7 283.7 106.3 418.6
53.3
9.0
4 米国
7 △46.2
22.4
64.6 279.3
48.1
6.0
5 韓国
34
6.3 359.1 345.0 218.9
48.7
4.7
6 ドイツ
2
0.0
1.4
63.2
68.6 5,057.9
1.5
7 台湾
3 △25.0
11.1 △77.8
67.3 △46.8
1.4
8 英国
1
0.0
0.2 △99.5
21.1 △62.3
0.5
9 ニュージーランド
2
n.a. 185.9
n.a.
20.7 10,250.0
0.4
10 シンガポール
3 △50.0
36.2 1,023.2
8.6 △17.2
0.2
その他
26
n.a. 1,022.9
n.a. 700.2
n.a.
15.0
合計
186
△3.1 3,135.2
53.9 4,674.8
25.7 100.0
(出所)大連市政府発表資料を基に作成
産業別の投資状況をみると、第二次産業、特に製造業が前年同期比 42.7%増と大きく伸びて
いる(表 6 参照)。新規進出に大型案件は少ないが、韓国の造船会社 STX の増資(1.6 億ドル)、
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米インテル、ドイツのフォルクスワーゲン(ギアボックス)、キヤノンの投資増(3 社計 6 億ドル)など、
既に進出した企業が増資する傾向がみられる。
表6 大連市の産業別対内直接投資(実行ベース)
(単位:%、100万ドル)
第一次
産業
第二次
第三次
前年
前年
前年
産業
産業
製造業
同期比
同期比
同期比
前年同期比
09年
7.46 △77.3 2,477.36 △4.3 2,445.72
△4.6 3,532.15
48.1
10年
40.99 449.5 2,828.36
14.6 2,502.82
2.8 7,162.14 102.2
11年上半期
4.32
52.7 1,519.41
35.8 1,517.81
42.7 3,151.02
21.3
(出所)09年:大連市統計年鑑、10年、11年上半期:大連市政府発表資料を基に作成
第三次産業は 31 億 5,102 万ドルで、投資額全体(46 億 7,500 万ドル)の 67%を占めている。不
動産関係が多くを占めるといわれる。IT 関係、例えば野村ホールディングスによるリテール部門
関連のオフショアセンターやベルシステム 24 の BPO センターなど、間接業務のオフショアアウト
ソーシングで拠点を設立する動きもある。
<沿海経済帯の各都市も投資増>
09 年から国家級の発展計画に指定されている、遼寧沿海経済帯の各都市への投資も増加傾
向にある。
盤錦市は中国三大油田の 1 つである遼河油田を抱え、石油化学工業がこれまで発展してきた。
11 年上半期も、台湾見龍による EPS(ビーズ法ポリスチレンフォーム)生産工場設立(投資額
4,275 万ドル)、台湾長春石化による石油加工基地設立(投資額1億ドル)など大型投資があった。
その一方で、ほかの地域同様、香港企業によるマンションやレジャー施設建設プロジェクトが複
数進んでおり、不動産関連投資が全体の 40%を占めている。実行額は 15 億ドルを超え、省内で
は大連、瀋陽に次ぐ第 3 位となり、既に年間誘致目標を達成した。
錦州市の実行額は、前年同期比 33.5%増の 2 億 6,800 万ドルだった。同市は、省内のほかの
都市に比較すると、不動産関連投資の比率が全体の 15%程度と少ない。錦州は単結晶シリコン
生産量が全国有数で、太陽光発電関連企業が集積しており、関連産業への投資が多い。同産
業への実行額は 8,569 万ドルと全体の 3 分の 1 を占めている。
遼寧省の最西に位置し河北省と接する葫蘆島市は、日本の花王グループが地場の葫蘆島錦
星鋳造材料と合弁で進出すると発表し、注目を集めた。現地報道によると、総投資額は 4,000 万
元、鋳造用樹脂とゲル剤を生産する予定。これまでは香港企業以外の外資進出は少なかったが、
今回の花王グループの進出でほかの国・地域からの投資増加に弾みがつくのでは、と葫蘆島市
対外貿易経済合作局の担当者は話す。
<大震災による日本からの製造拠点移転はなし>
11 年 3 月に発生した東日本大震災を受け、遼寧省政府以下、各市・開発区が日本を訪問し、
企業誘致活動を活発化させている。遼寧省対外貿易経済合作庁によると、製造拠点を遼寧省内
へ移転することを決定した、または今後移転を検討している日本企業は、現時点ではないとのこ
と。IT 産業が集積する大連などでは一部、事業継続計画(BCP)有効性の確保に向け、データセ
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30
ンターやバックアップサーバー移転を検討する日本国内企業からの引き合い企業もあるようだが、
実行された例はまだないようだ。
近年、遼寧省では、人件費安などのコストメリットを追求した製造拠点設立は減少傾向にある。
瀋陽市への進出事例にもみられるとおり、現地市場を意識した進出が増加している。国の南部
から沿海を北上してきた中国の発展地域は、ようやく遼寧省沿海地帯に達しつつある。地場企業
向けや一般消費者向けのビジネスが省内では拡大しており、今後も投資流入は継続すると省、
各市の企業誘致担当者はみている。
(渕田裕介)
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31
実行額はリーマン・ショック前の水準を回復(広東省、福建省)
●広州発
2011 年上半期の広東省と福建省の対内直接投資は、香港からの投資増で順調に伸びた。実
行額はリーマン・ショック前の水準に戻っている。広東省は、近年増加傾向にあったサービス産
業向け投資額が減少し、製造業向けが増加した。
<広東省:日本は実行額で 2 割増に>
広東省の 11 年上半期の対内直接投資は、実行額が 109 億ドル(前年同期比 13.1%増)、契約
件数が 3,326 件(39.7%増)、契約額が 151 億ドル(49.1%増)に増加した(表 1 参照)。実行額が
2 期連続で 100 億ドルを超え、契約額も半期で 150 億ドルを上回るなど、投資額はリーマン・ショ
ック前に戻った観がある。
表1 広東省の対内直接投資の推移
実行ベース
(単位:億ドル、%、件)
契約ベース
金額
件数
金額
前年
前年
前年
同期比
同期比
同期比
07年
171.3
18.0 9,506
12.5 339.4
38.1
上半期
81.0
4,334
141.8
下半期
90.3
5,172
197.6
08年
191.7
11.9 6,999 △ 26.4 286.4 △ 15.6
上半期
97.8
20.7 4,031
△ 7.0 155.7
9.8
下半期
93.9
4.0 2,968 △ 42.6 130.7 △ 33.9
09年
195.4
1.9 4,346 △ 37.9 175.6 △ 38.7
上半期
98.0
0.2 1,968 △ 51.2
75.5 △ 51.5
下半期
97.4
3.7 2,378 △ 19.9 100.1 △ 23.4
10年
202.6
3.7 5,641
29.8 246.0
40.1
上半期
96.4
△ 1.6 2,381
21.0 101.3
34.2
下半期
106.2
9.1 3,260
37.1 144.7
44.6
11年上半期 109.0
13.1 3,326
39.7 151.0
49.1
(出所)広東省投資促進局資料を基に作成
対内直接投資を国・地域別にみると、これまで広東省への投資の 7 割前後を占めてきた香港
からの投資は実行額で 69 億 3,000 万ドル(17.3%増)、契約件数で 2,466 件(49.7%増)、契約額
で 115 億 2,000 万ドル(43.7%増)になった(表 2 参照)。日本からの投資は、実行額が第 4 位の 3
億 6,000 万ドル(19.6%増)、契約件数が第 5 位の 58 件(38.1%増)、契約額が第 4 位の 3 億 6,000
万ドル(2.28 倍)だった。
投資性公司は、実行額が 2 億 3,000 万ドル(72.3%増)、契約件数が 22 件(83.3%増)、契約額
が 5 億 1,000 万ドル(2.35 倍)に急増した。
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32
表2 広東省の国・地域別対内直接投資(11年上半期)
(単位:億ドル、%、件)
実行ベース
契約ベース
順
位
金額
前年 件数
前年 金額
前年
シェア
シェア
シェア
同期比
同期比
同期比
1 香港
69.3 63.6
17.3 2,466 74.1
49.7 115.2 76.3
43.7
2 バージン諸島
12.7 11.6 △16.0
85
2.6
39.3
9.2
6.1
63.9
3 サモア
3.6
3.3 105.4
71
2.1
31.5
2.9
1.9
31.0
4 日本
3.6
3.3
19.6
58
1.7
38.1
3.6
2.4
127.7
5 投資性公司
2.3
2.1
72.3
22
0.7
83.3
5.1
3.3
134.7
6 韓国
2.0
1.8
53.4
50
1.5
8.7
0.6
0.4
△42.4
7 シンガポール
1.8
1.6 △39.4
46
1.4
53.3
3.4
2.2
121.6
8 米国
1.3
1.2
20.7
61
1.8 △7.6
2.9
1.9
192.6
9 フランス
1.3
1.2 △20.3
5
0.2
0.0 △1.1 △0.7 △7,126.3
10 ケイマン諸島
1.2
1.1 △12.6
4
0.1 100.0
1.6
1.1
81.6
全外資計
109.0 100.0
13.1 3,326 100.0
39.6 151.0 100.0
49.1
(注)投資性公司とは、外国企業が中国に法人を設立した時点では通常の外資企業と変
わりがないが、a.資本制限(資産総額4億ドル以上・登録資本金3,000万ドル以上・貸付金
額が登録資本金の4倍以内など)、b.資金用途(投資に限定)、c.出資形態(現金に限定さ
れ現物出資は認められない)、d.投資領域(国家推奨分野:工業・農業・インフラ・エネル
ギー分野など)、などの要件を満たす外資企業を指す。
(出所)表1に同じ
<サービス産業への投資が減少>
広東省への対内直接投資(実行額)を産業別にみると、第一次産業と第二次産業への投資が
増加し、近年増加傾向にあった第三次産業(サービス産業)向けが 37 億 3,000 万ドル(前年同期
比 5.6%減)に減少した(表 3 参照)。また、外資直接投資企業の新規登録許可件数は 3,326 社
(39.6%増)になった。
表3 広東省の産業分野別対内直接投資
(11年上半期)
(単位:億ドル、%)
前年
実行額
シェア
同期比
農、林、畜、水産業
0.7
33.9
0.6
製造業
71.0
25.9 65.2
サービス業
37.3 △5.6 34.2
合計
109.0
13.1 100.0
(出所)広東省対外貿易経済合作庁(外資管
理処)資料を基に作成
<外資誘致策は量から質へ>
広東省の外資誘致政策は、従来ほど量的拡大に固執せず、技術水準の向上や地域振興に沿
った外資企業の選別的優遇という流れが今後も強まっていくとみられる。広東省の第 12 次 5 ヵ
年規画期(11~15 年)の主な取り組みとして、以下の 3 点が挙げられる。
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33
(1)外資進出のハードルを高める
外資誘致の姿勢は量から質に向かい、産業別ではハイエンド製造、ハイテク、サービス、新エ
ネルギー、省エネ環境産業を積極的に誘致している。進出先は工業園や開発区に集中させる方
針だ。広東省は外資進出の技術的ハードルを、最低資本金規制設定などで高め、世界トップ 500
企業や大企業の進出誘致に注力している。
また、先進国、特に欧米や日本の技術移転と生産拠点移転を積極的に受け入れ、直接投資だ
けでなく、第三者割り当て、M&A などの形式による国内企業への資本参入と再編も重要な外資
誘致のツールとしている。ベンチャーキャピタルとプライベート・エクイティ・ファンドの省内企業へ
の投資も受け入れる。海外での上場基準に合致する企業に対して、海外資本市場の利用のサ
ポートも行っている。
(2)ASEAN との戦略協力を強化
ASEAN・中国自由貿易協定(ACFTA)締結に基づき、広東省を ASEAN との経済協力のモデル
地域として位置付ける。特に、スマートシティー建設国家プロジェクトに指定されている広州市内
の「中新(広州)知識城」の建設は、シンガポールと広東省政府との間でパートナーシップ協定が
締結されており、日本や米国などのハイテク産業誘致に力を入れている。
(3)台湾との交流を深化
中国本土と台湾との両岸経済協力枠組み協定(ECFA)締結に基づき、長期的で安定的な交流
体制を構築し、ハイテク産業園区での新興産業開発協力を強化する。仏山、湛江、珠海、汕頭
(スワトー)、梅州での台湾との農業園区の建設を支持する。
<福建省:契約ベースで持ち直し傾向が鮮明に>
福建省の対内直接投資は、毎年上半期の実行額が下半期の約 2 倍になる傾向がある。11 年
上半期の実行額が 39 億 1,000 万ドル(前年同期比 2.1%増)になったことから、11 年の年間実行
額は 60 億ドルを突破する可能性が出てきた(表 4 参照)。契約額は 49 億 3,000 万ドル(31.6%増)
と、10 年以降の増勢を維持し、リーマン・ショック前の状況に戻りつつある。契約件数は 530 件
(2.9%減)と微減したものの、09 年下半期以降 4 期連続で 500 件を上回った。
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34
表4 福建省の対内直接投資の推移
実行ベース
(単位:億ドル、%、件)
契約ベース
金額
件数
金額
前年
前年
前年
同期比
同期比
同期比
07年
40.6
26.1 1,723 △ 20.3
94.5
20.7
上半期
24.3
1,027
57.0
下半期
16.3
696
37.5
08年
56.7
39.7 1,101 △ 36.1
71.5 △ 24.3
上半期
37.0
52.0
614 △ 40.2
40.1 △ 29.7
下半期
19.7
21.2
487 △ 30.1
31.4 △ 16.1
09年
57.4
1.2
939 △ 14.7
53.6 △ 25.0
上半期
38.2
3.4
418 △ 31.9
24.1 △ 40.0
下半期
19.2
△ 2.7
521
7.0
29.5
△ 6.1
10年
58.0
1.1 1,139
21.3
73.8
37.6
上半期
38.3
0.3
546
30.6
37.4
55.3
下半期
19.7
2.9
593
13.8
36.3
23.1
11年上半期
39.1
2.1
530
△ 2.9
49.3
31.6
(出所)福建省対外貿易経済合作庁のデータを基に作成
<台湾からの投資が低迷>
福建省への対内直接投資を国・地域別にみると、香港が実行額で 25 億 9,000 万ドル(4.1%増)、
契約額で 31 億 8,000 万ドル(16.3%増)になった(表 5 参照)。トップ 10 入りしていた日本は、実行
額が 3,000 万ドルと 40.9%減少し、トップ 10 から外れた。一方、契約ベースは 11 件(37.5%増)、
6,000 万ドル(3.55 倍)に増加した。
台湾からの投資は、実行額が 1 億 1,000 万ドル(26.7%減)、契約件数が 172 件(14.4%減)に
減少したが、契約額は 4 億 1,000 万ドル(27.6%増)に増加した。台湾からの契約件数は香港に
近いが(香港 208 件、台湾 172 件)1 件当たりが小額で、金額は約 8 分の 1 にとどまった。
(単位:億ドル、%、件)
表5 福建省の国・地域別対内直接投資(11年上半期)
実行ベース
契約ベース
順
位
金額
前年
前年 件数
前年 金額
シェア
シェア
シェア
同期
同期比
同期比
1 香港
25.9 66.3
4.1
208 39.2 △2.8 31.8 64.5
16.3
2 バミューダ諸島
3.2
8.2 6,995.6
n.a. n.a.
n.a n.a. n.a.
n.a.
3 バージン諸島
1.8
4.6 △15.2
15
2.8
50.0
3.7
7.5
n.a.
4 サモア
1.7
4.4 223.4
10
1.9
42.9
0.4
0.9 △12.9
5 シンガポール
1.4
3.6 △17.3
14
2.6
7.7
1.4
2.9 △3.7
6 台湾
1.1
2.8 △26.7
172 32.5 △14.4
4.1
8.3
27.6
7 投資性公司
0.6
1.5 △50.9
10
1.9 900.0
1.4
2.9 298.9
8 ケイマン諸島
0.5
1.2 △6.6
3
0.6
50.0
0.4
0.9
26.7
9 マカオ
0.4
1.0
27.5
7
1.3 △12.5
1.3
2.6 223.0
10 フィリピン
0.4
1.0 △20.8
6
1.1
50.0
0.2
0.4
n.a.
11 日本
0.3
0.7 △40.9
11
2.1
37.5
0.6
1.2 255.0
(出所)表4に同じ
(森路未央、蘆真、黎偉君)
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35
青島市向けが 7 割増(山東省)
●青島発
2011 年上半期の山東省の対内直接投資は、契約件数(増資を含まず)が 714 件と前年同期比
6.1%減少したが、実行額は 60 億 9,477 万ドルと 47.3%増加した。
<青島、濱州、済南の 3 市で全省の 6 割占める>
青島市向けの実行額が 69.0%増の 21 億 9,726 万ドルと急増し、省全体の 36.1%を占めた(表
1 参照)。同市への実行額は半期で 09 年通年を上回った。
次いで濱州市が約 3.2 倍の 7 億 1,697 万ドルで実行額 2 位となった。中国本土からの迂回投資
で設立されたアルミニウム材料メーカーの山東宏橋新型材料(香港)が、省内過去最大規模の
増資(6 億ドル、注 1)を行ったため。
3 位の済南市も 47.0%増の 6 億 6,184 万ドルと急増した。これら 3 都市で全省の 58.7%を占め
た。
表1 山東省の対内直接投資状況
省・市名
年
契約
件数
構成比
09年
1,468 100.0
10年
1,632 100.0
11年上半期
714 100.0
09年
650
44.3
青島市 10年
733
44.9
11年上半期
336
47.1
09年
n.a.
n.a.
濱州市 10年
18
1.1
11年上半期
8
1.1
09年
74
5.0
済南市 10年
87
5.3
11年上半期
51
7.1
09年
259
17.6
煙台市 10年
243
14.9
11年上半期
83
11.6
09年
99
6.7
威海市 10年
136
8.3
11年上半期
57
8.0
(出所)山東省商務庁資料を基に作成
山東省
(単位:100万ドル、%)
実行額
前年
前年
構成比
(同期)比
(同期)比
△ 3.9
8,010 100.0
△ 2.3
11.2
9,168 100.0
14.5
△ 6.1
6,095 100.0
47.3
2.2
2,189
27.3 △ 16.0
12.8
2,801
30.6
27.6
△ 7.2
2,197
36.1
69.0
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
63.6
310
3.4
83.2
60.0
717
11.8
218.1
5.7
981
12.2
13.4
17.6
1,040
11.3
6.1
27.5
662
10.9
47.0
7.0
1,085
13.5
2.6
△ 6.2
1,153
12.6
6.3
△ 27.2
654
10.7
10.1
△ 38.9
550
6.9
4.6
37.4
555
6.1
3.1
△ 20.8
476
7.8
95.1
<大型迂回投資で香港が大幅増>
最大の投資国・地域は中国本土からの迂回投資が多い香港。実行額は前年同期の 2.1 倍強
の 40 億 5,667 万ドルと大幅に増加し、全体の 66.6%を占めた(表 2 参照)。中遠(香港)集団(注
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36
2)による山東済荷澤高速公路(済南市)の一部株式取得(13 億 8,800 万元、1 元=約 12 円)や、
青島中海華業房地産(香港)による増資(1 億 5,181 万ドル)など大型投資が相次いだ。
以前からの主要投資国の韓国、日本からの投資も増加した。2 位の韓国は 20.7%増の 5 億
8,089 万ドルと前年の減少から増加に転じた。5 位の日本は 56.7%増の 2 億 389 万ドルと急増し、
契約額でも 68.7%増(2 億 6,604 万ドル)と増勢だ。
日本からは上半期に、建設機械部品大手のネツレンが、油圧ショベル用部品を製造、販売す
る高周波熱錬(中国)軸承(済寧市、資本金 3,000 万ドル、独資)の設立を発表した。HOYA も光
学ガラスを製造、販売する HOYA OPTICAL TECHNOLOGY (WEIHAI)(威海市、2,250 万ドル、独
資)を、東レと東レ・メディカルは人工透析機器を製造、販売する東医療科技(青島)(6,000 万元、
合弁)の設立を明らかにした。いずれも中国国内の需要拡大を見据えた投資だ。
表2 山東省の国・地域別対内直接投資状況(11年上半期)
(単位:100万ドル、%)
順
位
国・地域
契約
件数 構成比
1 香港
2 韓国
3 シンガポール
4 英領バージン諸島
5 日本
6 台湾
7 カナダ
8 米国
- アジア
- 北米
- 欧州
全 体
(注)順位は実行額順。
(出所)表1に同じ
251
171
26
13
60
45
14
42
581
56
42
714
35.2
23.9
3.6
1.8
8.4
6.3
2.0
5.9
81.4
7.8
5.9
100
前年 実行額
前年
構成比
同期比
同期比
21.8
4,057
66.6
114.7
△ 32.4
581
9.5
20.7
23.8
229
3.8 △ 39.7
△ 7.1
213
3.5 △ 30.3
5.3
204
3.3
56.7
△ 19.6
128
2.1
22.0
△ 12.5
76
1.2
123.5
5.0
73
1.2 △ 73.8
△ 5.4
5,241
86.0
72.1
△ 1.8
230
3.8 △ 30.5
2.4
177
2.9
9.4
△ 6.1
6,095
100
47.3
<日韓からの投資を重視>
「山東省利用外資“十二五”規画」(12.5 規画、11~15 年)は期間中、引き続き「香港が主要投
資元で、日韓からの投資は安定的に増加、台湾からの投資が最も伸びる」と見込んでいる。
山東省は日韓向けの投資誘致を加速する。12.5 規画は「日本の 5 大総合商社と上位 30 位の
製造大企業、韓国の上位 30 位のハイエンド製造業分野の企業グループ、日韓との現代サービ
ス業、現代農業、省エネ・環境、海洋産業分野での戦略提携を重点とする」としている。
山東半島藍色経済区発展規画(藍色経済規画、注 3)でも日韓両国との協力模索が明記され
ている。日中韓 3 ヵ国間での海洋産業協力、貿易投資円滑化、港湾手続きの電子化などの先行
実験を行う試験区構想や、海洋科学技術、省エネ・環境などの分野で両国との協力を強化する
ため、日中韓科学技術連合研究計画の策定を担う循環経済モデル基地の建設などを計画して
いる。
欧米からの投資はアジアに比べると停滞感が否めない。北米からは 10 年は前年比 75.6%増
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37
加したが、11 年上半期は前年同期比 30.5%減の 2 億 2,959 万ドルと減少に転じた。欧州からは
9.4%増の 1 億 7,664 万ドルと増加したものの、全体の伸び率(47.3%増)を大きく下回った。
12.5 規画では欧州からの投資について、「ドイツを重点にし、ハイエンド装備製造、自動車、バ
イオプロジェクト、情報技術、化学工業、新材料などの産業誘致を図る」としている。米国からは
「500 強企業に照準を合わせるとともに、イリノイ州、ニューヨーク州、ニュージャージー州などの
重点州との提携を拡大する」としている。
<港湾物流への投資相次ぐ>
業種別の投資額をみると、第三次産業の伸びが大きい。第二次産業の 38.7%増(39 億 2,793
万ドル)に対し、第三次産業は 59.8%増(19 億 9,464 万ドル)と大幅に増えた(表 3 参照)。
表3 山東省のの業種別対内直接投資状況(11年上半期)
契約
件数 構成比
全業種
第一次産業
第二次産業
鉱業
製造業
紡績
化学原料・同製品
医薬
一般機械
専用機械
通信、コンピュータ、電子設備
その他製造業
電力、ガス、水処理など
建設
第三次産業
運輸、倉庫、郵便
情報、コンピュータサービス・ソフト
卸・小売り
ホテル・飲食
金融
不動産
レンタル・ビジネスサービス
科学研究、技術サービスなど
水利、環境公共施設管理
住民サービス、その他サービス
教育
文化、スポーツ、娯楽
(出所)表1に同じ
714
28
380
3
358
10
21
7
34
29
24
233
11
8
306
16
18
163
13
4
13
42
27
6
2
0
2
100.0
3.9
53.2
0.4
50.1
1.4
2.9
1.0
4.8
4.1
3.4
32.6
1.5
1.1
42.9
2.2
2.5
22.8
1.8
0.6
1.8
5.9
3.8
0.8
0.3
0.0
0.3
(単位:100万ドル、%)
前年 実行額
前年
構成比
同期比
同期比
△ 6.1 6,095 100.0
47.3
21.7
172
2.8
198.9
△ 17.6 3,928
64.4
38.7
200.0
45
0.7
390.3
△ 19.7 3,573
58.6
38.6
100.0
126
2.1
57.5
△ 4.6
135
2.2 △ 57.4
16.7
37
0.6
407.7
△ 19.1
218
3.6 △ 13.3
11.5
397
6.5
292.7
△ 50.0
282
4.6
30.5
△ 21.6 2,377
39.0
48.2
0.0
224
3.7
12.0
166.7
87
1.4
91.6
10.9 1,995
32.7
59.8
14.3
400
6.6
144.9
△ 10.0
22
0.4 △ 33.5
37.0
256
4.2
107.0
8.3
16
0.3 △ 34.4
100.0
20
0.3 △ 71.9
△ 58.1 1,125
18.5
92.9
△ 17.7
38
0.6 △ 68.4
145.5
32
0.5 △ 7.7
△ 14.3
82
1.3
444.2
△ 60.0
1
0.0 △ 98.0
n.a.
0
0.0
n.a.
△ 50.0
3
0.0 △ 82.3
第三次産業の増加は、上位 3 業種の急増が要因。第三次産業の 56.4%を占める不動産が
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38
92.9%増(11 億 2,473 万ドル)、20%の運輸・倉庫・郵便が 2.4 倍(3 億 9,976 万ドル)、12.9%の卸
小売りが 2.1 倍(2 億 5,636 万ドル)だった。
海洋産業の育成を図る藍色経済規画の下で、特に港湾物流分野で大型投資の承認が続いた。
青島前湾新聨合集装箱碼頭(総投資額 3 億 2,000 万ドル、注 4)と、日照港裕廓碼頭(同 2 億
5,000 万ドル、注 5)の設立は、11 年最大の港湾物流案件とみられている。
第二次産業は、化学原料・同製品(57.4%減)と一般機械(13.3%減)以外の分野で軒並み増加
した。青島市で石油精製大手の Mecuria Energy Group(スイス)による国内初の先物取引向け石
油タンクプロジェクト(総投資額 40 億元)の建設や、食品大手のネスレ(スイス)による青島雀巣
への増資(インスタントコーヒー生産プロジェクト、総投資額 1 億 5,000 万ドル)、鉄道車両大手の
ボンバルディア(カナダ)による青島四方●(まだれに龍)巴廸鉄路運輸設備への増資(4,000 万ド
ル)など、国際的企業による投資、増資が相次いだ。
<戦略的新興産業、現代サービスに重点>
12.5 規画は、「戦略的新興産業の国際提携を強化する」としている。具体的には新世代情報技
術、省エネ・環境、新エネルギー、バイオ、ハイエンド装備製造、新材料、新エネルギー自動車な
どの分野への外資導入を進める。
サービス分野への外資参入も促進する。ターゲットは金融保険、科学技術情報、現代物流、文
化旅行、コンサルティング、コンベンションなどの現代サービス業だ。12.5 期間中に「戦略性新興
産業、装備製造、基礎原材料・消費品産業などの分野で、総投資額 5 億ドル以上の牽引的なプ
ロジェクトまたは産業群を導入する」計画。
山東省は 5 年間で、投資実行金額累計 600 億ドル、年平均増加率 9%以上、サービス業分野
への投資シェア 40%を目標に掲げている。
<有望案件は個別に優遇>
省内各地の誘致部門は東日本大震災後、日本企業の生産拠点分散化、海外展開加速の動き
に照準を合わせた誘致活動を積極的に展開している。青島市は各開発区や保税区単位で担当
者が訪日し、過去にコンタクトしたことのある企業を個別に訪問するなどしている。
誘致担当部門は「内資企業と外資企業は原則として平等だ」(青島市商務局関係者)として、具
体的な優遇策を明示していない。一方、「重点産業分野の大型プロジェクトなど、有望な外商投
資案件に対しては、人的支援、土地価格、地方税などで配慮できる」(同関係者)とし、日本企業
の海外展開に強い関心を示している。
(注 1)個別案件の投資金額は報道ベース。
(注 2)中国大手運輸の中国遠洋運輸(集団)が香港に設立した地域管理企業。
(注 3)山東省の海洋経済の発展、海洋資源の科学開発、海洋優勢産業の育成に関する国家発
展戦略計画。対象地域は、省内の全海域と青島、東営、煙台、●(さんずいに維)坊、威海、日
照の 6 市全陸域と濱州市一部地域。海洋装備製造業(造船、舶用設備など)、海洋バイオ産業
(医薬、機能性食品、バイオ新材料など)、海洋エネルギー産業(潮力、波力、海流発電)、インフ
ラ建設(洪水・高潮防災、河川海水侵入防止プロジェクト)などを重点的に発展させるとしている。
(注 4)青島前湾聨合集装箱碼頭と APL-SITC Terminal Holdings(シンガポール)による合弁企
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39
業。
(注 5)日照港集団と裕廊海港私人(シンガポール)との合弁企業。
(荒木正明)
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40
西安市進出企業の増資が大幅拡大(陝西省)
●北京発
2011 年上半期の陝西省の対内直接投資実行額は、西安市での増資を中心に大幅に伸びた。
6 割近く占める香港からの投資が前年同期比 58.2%増となり、依然として顕著な伸びを示してい
る。
<陝西省:実行、契約額とも大幅増に>
11 年上半期の陝西省の対内直接投資は、契約件数が前年同期比 4.9%増の 64 件、契約額は
19.2%増の 13 億 2,900 万ドル、実行額は 31.0%増の 12 億 300 万ドルだった(表 1 参照)。契約、
実行ベースとも金額が大幅に増加した。
表1 陜西省の対内直接投資の推移
(単位:件、%、100万ドル)
契約ベース
実行ベース
省・市名
年
前年
前年
前年
件数
金額
金額
(同期)比
(同期)比
(同期)比
09年
101 △ 35.3 1,401 △ 22.9 1,511
10.3
陜西省 10年
139
37.6 2,210
57.8 1,820
20.5
11年上半期
64
4.9 1,329
19.2 1,203
31.0
09年
65 △ 35.0
600 △ 49.2 1,219
6.2
西安市 10年
82
26.2 1,197
99.4 1,567
28.5
11年上半期
36
△ 2.7
577
△ 6.0 1,117
32.1
(出所)08、09年は陜西省統計年鑑、西安市統計年鑑、10年、11年上半期は
省市政府発表資料を基に作成
主な国・地域の実行額は、いずれも増加した。1 位の香港は 58.2%増の 7 億 800 万ドルで、全
体の 6 割弱を占めた(表 2 参照)。以下、英領バージン諸島、米国、ケイマン諸島と続く。日本は
2,100 万ドルでまだシェアは低いものの、50.7%の大幅増だった。
表2 陜西省の主要国・地域別対内直接投資(11年上半期)
(単位:100万ドル、%)
契約ベース
実行ベース
順
国・地域名
前年
前年
前年
位
件数
金額
金額
構成比
同期比
同期比
同期比
1 香港
26 △ 10.3
754
3.6
708
58.2
58.8
2 英領バージン諸島
3
50.0
109
76.3
130 101.2
10.8
3 米国
4 △ 20.0
108
11.4
115
6.9
9.6
4 ケイマン諸島
1
76 △ 825.9
97 146.3
8.0
5 投資性公司
5
25.0
196
250.2
57
14.7
4.7
6 日本
0
13
28.5
21
50.7
1.7
合計
64
4.9 1,329
19.2 1,203
31.0 100.0
(注)契約ベースは、件数は新規案件だけだが、金額は新規・増資案件の合計。
(出所)西安市商務局提供資料を基に作成
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41
業種別の実行額をみると、製造業が 40.9%増の 6 億 2,000 万ドルと堅調で、全体の 51.5%を占
めた(表 3 参照)。卸・小売業は 7.6 倍の 9,200 万ドルと急増した。不動産業は 1.6%増の 2 億 9,100
万ドルと微増にとどまった。
表3 陝西省の業種別対内直接投資(11年上半期) (単位:件、100万ドル、%)
契約件数
契約額
実行額
業種
前年
前年
前年
件数
金額
金額
同期比
同期比
同期比
農業
3 △ 25.0
37
15.0
7 257.1
鉱業
1
100
689.3
3 △ 91.8
製造業
32
68.4
736
38.2
620
40.9
不動産業
1 △ 80.0
109 △ 56.4
291
1.6
卸・小売業
5 △ 54.6
59
410.9
92 659.4
交通運輸・倉庫・郵政業
0
89
89
ホテル・飲食業
2 100.0
49 13,243.2
50 307.0
リース・ビジネスサービス業
5 150.0
25 △ 931.7
8 187.7
その他
15
123
44
合計
64
4.9 1,329
19.2 1,203
31.0
(出所)西安市商務局提供資料
<西安市:半期ベースの実行額、初めて 10 億ドルを突破>
陝西省への外資系企業の進出は西安市に集中している。同市への対内直接投資は、契約ベ
ースでは 36 件の 5 億 7,700 万ドルとそれぞれ 2.7%、6.0%減少したものの、実行額では 32.1%
増の 11 億 1,700 万ドルと、半期ベースで初めて 10 億ドルを突破し、陝西省全体の 92.9%を占め
た。
特徴として増資の拡大が挙げられる。11 年上半期は、増資案件 19 件、増資実行額が 6 億
3,200 万ドルと、前年同期比で倍増した。契約額も 88.7%増の 3 億ドルと、市全体の 52%を占め
た。西部の投資環境整備が進むにつれ、西安市の経済発展に期待して追加投資を実施する外
資企業が増えている、と西安市商務局はみている。
日系企業の大型増資案件としては、日立永済電気設備〔西安(日立と中国北車集団傘下の永
済新時速電機電器が 03 年 8 月に設立した合弁会社で鉄道車両用電気製品を生産〕が 11 年 2
月、鉄道部の高速鉄道車両の増産に対応する新工場設立のため、計 2,500 万ドル相当を増資し
た。
国・地域別にみると、香港からの投資が依然としてトップ。契約ベースでは件数が 13 件、金額
は 4 億 4,600 万ドルと、それぞれ市全体の 36.1%、77.3%を占めた。実行額は 7 億 5,300 万ドル
と、市全体の 67.4%を占めた。
業種別では、商業向けの投資が急増している。11 年上半期は、新規の商業案件が 11 件、契
約額は 1 億 4,600 万ドルと前年同期比 45 倍になり、市全体の 25.3%を占めた。また、重点産業
への投資の集中がみられる。製造業向けの実行額は 4 億 9,500 万ドルで市全体の 44.3%を占め、
その 47.5%が化学工業、機械、自動車部品、電気・電子などに集中している。
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42
西安市商務局は第 12 次 5 ヵ年規画(11~15 年)期間中の外資誘致政策について、ハイテク産
業、先端的製造業、現代サービス業などを中心に、省エネ、次世代通信、物流ネットワーク応用、
航空宇宙材料、チタン材料、新エネルギー、バイオ医薬など戦略的新興産業の誘致を強化して
いく方針を示している。
(張敏)
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43
IT 関連企業の集積進む(四川省、重慶市)
●上海発
2011 年上半期の四川省、重慶市の対内直接投資額(実行ベース)は、それぞれ 62.1%増、約
2.4 倍と前年同期比で大幅に増えた。ともにパソコン、電子部品、自動車製造関連の投資が活発
だ。
<四川省:成都市向けが大半占める>
四川省の 11 年上半期の対内直接投資は、実行額が前年同期比 62.1%増の 40 億 8,940 万ド
ルとなった。このうち、成都市は 64.5%増の 39 億 2,000 万ドルで、四川省全体の約 96%を占め
ている。また、成都市の契約件数は 60.9%増の 259 件だった(表 1 参照)。
表1 四川省、重慶市の対中直接投資状況
(単位:件、100万ドル、%)
契約
前年
前年
前年
省・市名
年
契約額
実行額
件数 (同期)比
(同期)比
(同期)比
08年
357 △ 23.1 6,251.8
37.5 3,088.0
106.8
09年
286 △ 19.9 2,425.4 △ 61.2 3,589.8
16.3
四川省
10年
379
32.5 6,116.5
152.2 6,025.2
67.8
11年上半期
4,089.4
62.1
08年
279 △ 23.6 5,061.7
47.9 2,245.2
97.3
09年
214 △ 23.3 1,672.7 △ 67.0 2,797.2
24.6
成都市
10年
294
37.4 4,982.5
197.9 4,856.0
73.6
11年上半期
259
60.9
3,920.0
64.5
08年
135
43.8 2,831.2 △ 30.5 2,729.1
151.5
09年
161
19.3 3,798.6
34.2 4,016.4
47.2
重慶市
10年
232
44.1 6,258.9
64.8 6,344.0
57.9
11年上半期
129
37.2 3,130.3
376.9 2,918.6
136.6
(出所)各省・市統計年鑑、商務庁・統計局網
11 年 1 月、米ゼネラル・エレクトリック(GE)が成都市にイノベーションセンターを設立すると発表
した。2 月には、台湾のウィストロン(緯創)グループ(ノートパソコン受託生産)の成都基地起工
式が同市双流県公興鎮で行われた。計画投資総額は 5 億ドル以上とされる。スウェーデンの自
動車メーカーのボルボも同月、今後 5 年間で同市に生産拠点を設立する計画を発表している。エ
ンジン、ギアなどの製造工場、研究センター、販売センターが設置される予定で、投資総額は約
54 億元(1 元=約 12 円)。
4 月には、韓国の現代自動車が四川南駿汽車集団(商用車メーカー)と商用車生産の合弁会
社を新たに設立することで合意した。現代は四川省資陽市に、自主研究開発能力を持つ商用車
生産基地を建設する。1 期工事の投資額 36 億元。また 5 月には、液晶ディスプレー用プリント基
板(PCB)を製造する台湾の志超科技が、同省遂寧市に工場を建設することを決定した。初期投
資額は 1,700 万ドル。
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44
<成都市は世界最大のクラウドサービス拠点目指す>
成都市第 15 回人民代表大会で 11 年 4 月 2 日に決定された「成都市国民経済と社会発展の第
12 次 5 ヵ年規画綱要」は、IT 産業、ハイテク技術産業などの現代化産業体系を構築するとともに、
現代製造業を発展させるとしている。
また、同市政府は 7 月 12 日、「成都クラウドコンピューティング応用と産業発展の第 12 次 5 ヵ
年規画綱要」を発表。同市でクラウドサービスに関する技術、応用、産業を確立し、15 年までに
産業規模を 3,000 億元に引き上げ、世界最大のサービス拠点、端末製造基地を目指す。
具体的には、天府新区と高新西区にクラウドサービスと端末製品製造を集約、総合保税区に
成都国際データ保税港を建設することによって、成都クラウドコンピューティング産業発展基地を
確立する。また、クラウドサービスの規模では、全国市場の 10%以上、スマートフォンなどの情報
端末製品の製造では、世界市場の 20%以上のシェアの獲得を目指す。
<成長型特色産業園区の新たな発展目標設定>
四川省政府は 6 月 30 日、「四川省の成長型特色産業園区(1525 プロジェクト)のリスト調整に
関する通達」を公布した。同プロジェクトは、08 年 11 月の全省産業園区工作会で、12 年までに年
間売上高 1,000 億元以上の産業園区を 1 ヵ所、500 億元以上を 5 ヵ所、100 億元以上を 25 ヵ所
設立し、全体の売り上げ総規模を 6,000 億元とする目標を設定していた。しかし、この目標は予
定より早く達成されたため、プロジェクトの調整を行い、12 年までに年間売上高 1,000 億元以上
の産業園区を 2 ヵ所、500 億元以上を 10 ヵ所、100 億元以上を 54 ヵ所とする新たな目標を設定
した(下表参照)。
「四川省成長型特色産業園区の育成(1525プロジェクト)2011年最新リスト」
成都ハイテク産業開発区
1,000億元産業園区
(2ヵ所)
成都経済技術開発区
双流経済開発区
▲ 成都新都工業園区
徳陽経済開発区
▲ 広漢経済開発区
500億元産業園区
五糧液工業集中区
▲ 成都現代工業港
(10ヵ所)
綿陽ハイテク産業開発区
威遠県連界工業園区
成都台商投資工業園区
成都青白江工業集中開発区
南駿自動車産業園
成都・資陽工業発展区
資陽機車産業園
西昌釩鈦産業園区
※ 四川南部経済開発区
南充経済開発区
内江経済開発区城西工業園
自貢ハイテク産業園区
遂寧経済開発区
※ 楽山治建材産業園区
※ 宜賓羅龍工業集中区
大英県工業集中発展区
雅安工業園区
楽山(五通橋)塩燐化工循環産業園区
※ 渠県工業園区
成都青羊工業集中発展区
100億元産業園区
※ 攀枝花ハイテク産業園
広安経済開発区
(54ヵ所)
※ 四川夾江経済開発区
達州市天然ガスエネルギー化工産業区
晨光科学技術園区
新津工業集中発展区
江安陽春工業集中区
江油工業園区
※ 普光経済開発区
大竹県工業集中発展区
眉山金象化工産業園区
旌陽区工業集中発展区
※ 中江県工業集中発展区
※ 四川綿竹経済開発区
※ 中国西部現代物流港
攀枝花釩鈦産業園区
※ 阿埧工業園区
峨眉山市工業集中区
成都・阿埧工業園区
瀘州酒業州痛発展区
(注)▲は目標引き上げのあった産業園区、※は新たに追加された産業園区。
(出所)各種報道を基に作成
※ 成都・涼山工業園区
安岳工業集中発展区
成都武侯工業園区
広元経済開発区
隆昌経済開発区
眉山アルミ・シリコン産業園区
綿陽市経済開発区
納溪化工園区
楽山ハイテク開発区
※ 会理県有色産業園区
什邡経済開発区
※ 攀枝花格里坪工業園区
※ 成都龍潭寺都市工業集中発展区
※ 武勝県経済開発区
米易白馬工業集中区
蓬安工業園区
合江臨港工業園区
成都金牛ハイテク産業園区
<重慶市:約 7 割が第三次産業向け投資>
重慶市の 11 年上半期の対内直接投資は、契約件数が前年同期比 37.2%増の 129 件、契約
額が約 4.8 倍の 31 億 3,030 万ドル、実行額は約 2.4 倍の 29 億 1,860 万ドルとなり、契約額、実
行額ともに大幅増となった。
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45
産業別の実行額は、第三次産業が 20 億 2,300 万ドル、第二次産業が 8 億 8,700 万ドル。重慶
市全体の対内直接投資に占めるシェアでは、第三次産業が 69.31%、第二次産業は 30.39%を
占め、その比率は 10 年とほぼ同様の傾向を示した(表 2 参照)。
表2 重慶市の産業別直接投資 年
件数
前年
(同期)比
83.3
△ 50.0
44.1
30.8
△ 54.8
34.4
-
08年
22
09年
11
第一次産業
10年
n.a.
11年上半期
n.a.
08年
52
09年
68
第二次産業
10年
n.a.
11年上半期
n.a.
08年
61
09年
82
第三次産業
10年
n.a.
11年上半期
n.a.
(注)n.a.は統計数値なしを表す。
(出所)「重慶統計年鑑」、重慶統計信息網
(単位:件、100万ドル、%)
前年
実行額
シェア
(同期)比
15.2 △ 75.6
0.56
10.0 △ 34.2
0.25
8.3 △ 17.4
0.10
8.6
n.a.
0.30
872.2
159.7 31.96
1,472.3
68.8 36.66
1,936.4
31.5 29.70
887.0
n.a. 30.39
1,841.8
147.8 67.48
2,534.1
37.6 63.09
4,586.7
81.0 70.20
2,023.0
n.a. 69.31
<アジアからの投資が 7 割以上>
重慶市への投資を国・地域別にみると、アジアからの投資額(実行ベース)が 21 億 9,100 万ド
ル、南米からは 3 億 3,300 万ドルで、シェアはアジア 75.08%、南米 11.4%だった(表 3 参照)。
表3 重慶市の主な国・地域別外資投資額
(11年上半期)
(単位:億ドル、%)
投資額
全体における
国・地域
(実行ベース)
割合
アジア
21.91
75.08
香港
19.54
66.95
台湾
0.65
2.24
シンガポール
1.41
4.82
南米
3.33
11.40
北米
1.32
4.52
米国
1.20
4.13
英国
0.53
1.81
ドイツ
0.45
1.56
(出所)重慶市政府網を基に作成
重慶市の 11 年上半期の対内直接投資のうち、外国企業による単独出資の投資額(実行ベー
ス)は 82.87%増の 13 億 7,700 万ドル、合弁の投資額(実行ベース)は 68.78%増の 7 億 4,600
万ドルだった。同市全体の対内直接投資に占めるシェアでみると、外資独資が 47.17%を占め、
合弁企業は 25.54%にとどまる。
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同市工商局によると、11 年 1~4 月に同市で新規登録された外商投資企業は 217 社(前年同
期比 9.79%増)。4 月末時点で同市に認可された外商投資企業は、累計 5,648 社となった。
<戦略型新興産業の発展を加速>
11 年 1 月 24 日に発表された「重慶市国民経済と社会発展の第 12 次 5 ヵ年規画綱要」では、
同市は情報産業を中心とした戦略型新興産業の発展を加速するとしており、15 年までに、同産
業の生産額は 1 兆 3,000 億元を超え、全市の工業生産総額の 40%を占めると見込んでいる。同
規画期間中に国内最大のノートパソコンの生産基地を建設し、1 億台の生産規模を実現、部品と
原材料の 80%を現地調達で賄う計画だ。また、15 年までに、生産額 500 億元超の国内最大のオ
フショアデータ開発処理センターの完成を目指している。
また同市は規画期間中、西部地区の金融センター、貿易物流センター、科学教育・文化情報セ
ンターになることを目指す。一層積極的な開放戦略を実施することによって、全市の貿易(輸出
入)総額は 1,000 億ドル、外商直接投資(実行ベース)額は 500 億ドルを目指し、内陸地区で最も
競争力のある地域を建設する計画だ。
<台湾企業を中心にパソコン関連メーカーが集積>
パソコン・同部品メーカーの台湾の華碩電脳(ASUS)は 11 年 4 月、重慶市に中国地区第 2 運
営本部とグローバル生産基地を建設する契約を同市と締結した。総投資額は 1 億 5,000 万ドル。
うち、初期投資額は 5,000 万ドルの予定だ。また、台湾緯創(ウィストロン)は 5 月、同市両路寸灘
保税港区でのパソコン工場建設に関する投資契約を同市政府と締結した。同社は、同保税港区
で産業基地を投資建設し、ノートパソコン、コンピュータ、通信製品、関連電子部品の生産と研究
開発を行う。また 6 月には、台湾の群光電子集団(パソコン周辺機器)が、同市江津区双福新区
で生産基地の起工式を行った。投資総額は 28 億元。
現在、重慶市には、ヒューレットパッカード、宏碁(エイサー)、華碩電脳(ASUS)のブランドメー
カー、富士康(フォックスコン)、英業達(インベンテック)、広達(クアンタ)、和碩聯合科技(ペガト
ロン)、緯創(ウィストロン)、仁宝電脳工業(コンパル)の代理加工企業と部品を供給する部品メ
ーカーが集積しており、産業チェーンが形成されている。
重慶市両江新区管理委員会は 11 年 7 月、両江新区設立から 1 年で、正式契約 447 件、総投
資額 1,954 億元を達成したと発表した。これらのプロジェクトのうち、既に 258 件が着工しており、
竣工後の生産高は 3,300 億元 (空港保税区のノートパソコンプロジェクトを除く)に達すると予測
している。
両江新区は、国際自動車産業基地、電子情報(IT)産業基地、現代物流産業基地、クラウドコ
ンピューティングデータ産業基地、新エネルギー・新材料基地など、8 大産業の発展を推進してお
り、11 年 6 月には、10 年後に年間 1 兆 6,500 億元、現在の市全体の約 1.5 倍の工業生産額を両
江新区として実現するという中長期計画を発表している(2011 年 6 月 28 日記事参照)。また、中
韓産業園区、日中産業園区の建設にも力を入れているという。
両江新区へは、自動車部品製造のドイツのティッセンクルップ、米国のテキストロン、カナダの
マグナが 11 年 3 月、進出を決定している。
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47
<中央政府は西部大開発をさらに推進>
国務院は 11 年 5 月、「成渝(成都・重慶)経済区区域計画」を認可し、成渝経済区の短期的発
展目標と長期的発展目標を示した。同経済区は、重慶市の万州、●(さんずいに立の下に口)陵、
渝中などの 31 区・県、四川省の成都、徳陽、綿陽、眉山、資陽、遂寧、楽山、雅安、自貢、濾州、
内江、南充、宜賓、達州、広安の 15 市で構成される。国家発展改革委員会は、同経済区を 15 年
までに西部地区の重要な経済センターとする目標を示しており、近代産業基地、内陸開放深化
の試験区、都市農村発展のモデル区、長江川上生態安全保障区として位置付けている。
また、7 月には、財政部、海関総署、国家税務総局が、四川省、重慶市を含む西部地区を対象
として、以下のような優遇措置を内容とする通知を出している。
(1)外資企業の「奨励類」産業への投資については、輸入し、自ら使用する設備の関税を政策規
定の範囲内で免除。
(2)11 年 1 月 1 日から 20 年 12 月 31 日まで、西部地区で設立された「奨励類」産業の企業に対
しては、企業所得税を 15%減額(ただし、「西部地区奨励類産業目録」に規定された産業プロジ
ェクトを主要業務とし、かつその主要業務の収入が企業収入総額の 70%以上の企業に限られ
る)。
こうした動きに後押しされて、今後も四川省、重慶市など西部地域への投資が、ますます活発
化していくことが期待される。
(鈴木貴詞、余慧玲)
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48
日本企業の投資が3倍に(湖北省)
●香港発
2011 年上半期の中部 4 省(湖北省、湖南省、河南省、江西省)への対内直接投資(実行ベー
ス)は軒並み増加した。湖北省は、武漢市を中心にアジアからの製造業の投資が大きく、中でも
日本からの投資は前年同期比 3 倍となった。
<中部 4 省はいずれも 2 ケタの伸び>
11 年上半期の中部 4 省の対内直接投資額(実行ベース)は、湖北省 22 億 9,230 万ドル(前年
同期比 10.7%増)、湖南省 34 億 4,200 万ドル(23.9%増)、河南省 42 億 1,000 万ドル(41.8%増)、
江西省 32 億 3,700 万ドル(24.7%増)と軒並み増加した(表 1 参照)。
表1 中部4省の対内直接投資状況
(単位:件、100万ドル、%)
契約
前年
前年
前年
省名
年
契約額
実行額
件数 (同期)比
(同期)比
(同期)比
09年
268 △ 21.9 2,049.0 △ 32.1 3,657.7
12.7
湖北省 10年
306
14.2 2,786.0
36.0 4,050.0
10.7
11年上半期
163
33.6 2,339.7
202.5 2,292.3
10.7
09年
547
5.8 5,310.4
15.8 4,598.0
14.8
湖南省 10年
634
15.9 7,212.0
35.8 5,180.0
12.8
11年上半期
343
34.0 5,101.8
64.4 3,442.0
23.9
09年
274 △ 24.7 4,920.0
n.a. 4,800.0
19.1
河南省 10年
362
32.1 5,780.0
17.5 6,250.0
30.2
11年上半期
162
2.5 3,307.0
58.4 4,210.0
41.8
09年
821
19.2
n.a.
n.a. 4,024.0
11.7
江西省 10年
1,092
33.0
n.a.
n.a. 5,100.0
26.8
11年上半期
395 △ 21.8 4,173.0
24.9 3,237.0
24.7
(注)n.a.は数字が公表されていないことを示す。
(出所)各省統計年鑑、商務庁・統計局網
<湖北省:武漢周辺都市への投資が 8 割超>
11 年上半期の湖北省の対内直接投資は、契約件数が 33.6%増の 163 件、契約額は約 3 倍の
23 億 3,970 万ドル、実行額は 10.7%増の 22 億 9,230 万ドルだった。
現在、湖北省政府は、武漢とその周辺の 8 都市(黄石、鄂州、黄岡、孝感、咸寧、仙桃、天門、
潜江)を結び付けて 1 つの経済圏として発展させる「漢 1+8 都市圏」構想を推進している。湖北
省の対内直接投資の 8 割以上が、武漢とその周辺都市への投資だった(表 2 参照)。
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49
表2 湖北省の地域別直接投資(11年上半期) (単位:件、100万ドル、%)
契約 前年
前年
省・市名
実行額
件数 同期比
同期比
湖北省
163
33.6 2,292.3
10.7
武漢市
60 △ 10.5 1,349.4
8.0
黄石市
12 500.0 173.0 △ 0.2
襄陽市
14
40.0 119.8
4.0
孝感市
11 120.0 104.4
43.4
宜昌市
8
60.0
96.5
12.1
(出所)湖北省商務経済指標
産業別(実行ベース)では、第二次産業が 15 億 6,070 万ドル(前年同期比 18.2%増)で全体の
68%を占め、うち、製造業が 14 億 3,000 万ドル(20.9%増)だった。また、第一次産業が 3,270 万
ドル(2.8 倍)に拡大する一方、第三次産業は 6 億 9,890 万ドル(11.5%減)と減少。うち不動産業
が 4 億 1,000 万ドル(9.5%減)と落ち込みが顕著だった(表 3 参照)。
(単位:件、100万ドル、%)
表3 湖北省の産業別直接投資 契約
前年
前年
年
実行額
割合
件数 (同期)比
(同期)比
09年
19 △ 26.9
76.5
76.8
2.1
第一次産業 10年
18
△ 5.3
45.4 △ 40.6
1.1
11年上半期
11
83.3
32.7
183.2
1.4
09年
139 △ 32.2 2,445.9
13.1 64.3
第二次産業 10年
154
10.8 2,604.6
6.5 36.7
11年上半期
95
66.7 1,560.7
18.2 68.1
09年
109
△ 2.7 1,135.3
9.4 31.0
第三次産業 10年
134
22.9 1,400.1
23.3 34.6
11年上半期
57
0.0
698.9 △ 11.5 30.5
(出所)表2に同じ
<自動車部品メーカーなど日本企業の投資は拡大基調>
湖北省商務庁は、11 年上半期の対内直接投資の特徴を以下のように述べている。
(1)国・地域別ではアジアの比率が高く、契約件数、契約額、実行額に占めるアジア諸国・地域
の比率はそれぞれ 68.7%、76.8%、67.3%。
(2)投資企業のほとんどは中小企業で、1 件当たりの投資額が小さい。
(3)武漢市の対内直接投資は湖北省全体の 58.8%で、武漢市と周辺都市の黄石市、宜昌市、孝
感市などに集中している。
(4)産業別では製造業に投資が集中している。業種は機電、紡績服飾、交通運輸設備製造、医
薬、化学原料。
(5)都市ごとに産業群が形成され、技術力も向上している。具体的には、a.武漢、襄陽に自動車
産業、エレクトロニクス産業、b.黄石・鄂州・仙桃に紡績産業、c.宜昌に化学工業、エレクトロニク
ス産業が集積しつつある。
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50
国・地域別(実行ベース)では、3 位の日本が 2 億 5,590 万ドルと 3 倍強に拡大した点が目を引
く。1 位の香港は 11 億 5,240 万ドル(前年同期比 19.7%増)、2 位の英領バージン諸島が 3 億 10
万ドル(30.2%減)だった(表 4 参照)。
表4 湖北省の国・地域別対内直接投資状況(11年上半期)
(単位:件、100万ドル、%)
順
前年
前年
前年
国・地域
件数
契約額
実行額
位
同期比
同期比
同期比
1 香港
76
33.6 1,764.9
205.1 1,152.4
19.7
2 英領バージン諸島
2 △ 33.3
170.7
n.a.
300.1 △ 30.2
3 日本
13
85.7
145.4
149.1
255.9 236.6
4 シンガポール
6
20.0 1,671.0 △ 63.9
108.0 147.7
5 イタリア
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
49.6 △ 46.1
6 韓国
6
50.0
2.6 △ 84.9
47.1 361.7
7 台湾
15 △ 16.7
36.9
67.1
30.4
2.9
8 オランダ
2
100.0
1.4 △ 6.7
29.5 △ 61.0
9 マカオ
2
100.0
14.7
982.4
24.0
36.9
10 サモア
2
100.0
15.0 3,242.2
19.8 939.5
総計
163
33.6 2,339.7
202.5 2,292.3
10.7
(出所)表2に同じ
日本企業の湖北省への投資の事例としては、11 年 4 月に、新日本製鉄と武漢鋼鉄が、武漢市
にブリキ製造・販売の合弁会社「武鋼新日鉄(武漢)ブリキ」を設立すると発表。総投資額は 18 億
5,000 万元(1 元=約 12.1 円)。
また、日産の中国での合弁会社、東風汽車(本社:武漢市)が 7 月に、新たに総額 500 億元の
投資を行い、販売台数を 230 万台以上に拡大するとともに、自主ブランドの電気自動車を含む約
30 車種の新型車を投入すると発表した。広東省広州市、江蘇省常州市、湖北省十堰市に工場
新設が決まったため、河南省鄭州市の商用車工場を含め、中部地域に新たな生産拠点を構え
る日系自動車部品メーカーの動きが今後も継続するとみられる。
(天野真也)
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51
対中投資に占めるシェアが6割に拡大(香港)
●香港発
2011 年上半期の香港の対中直接投資は、契約件数が前年同期比 15.9%増の 6,635 件、実行
額も 29.1%増の 364 億 7,000 万ドルと、件数、金額ともに増加した。前年同期に比べると増加率
は低下したものの、比較的順調な本土経済を背景に、着実に伸びている。対中直接投資全体に
占める香港のシェアは、実行額で 10 年通年の 55.7%から 59.9%に上昇、圧倒的に他を引き離し
ている。
<対中投資のチャネルとして活躍>
商務部の統計によると、11 年上半期の香港から中国本土への直接投資は、契約件数が前年
同期比 15.9%増の 6,635 件、実行額は 29.1%の増の 364 億 7,000 万ドルとなった(表 1、図参照)。
対中直接投資全体に占める香港のシェアは契約件数で 49.3%、実行額で 59.9%に達し、国・地
域別で首位の座をさらに固めている。
表1 香港の対中直接投資の推移
(単位:件、%、ポイント、億ドル)
契約件数
実行額
前年
前年
シェ
シェア 増減幅
増減幅 金額
件数
(同期)比
(同期)比 ア
08年
12,857 △ 20.7 46.7
3.9 410.4
48.1 44.4
7.3
09年
10,701 △ 16.8 45.7 △ 1.0 460.8
12.3 51.2
6.8
10年
13,070
22.1 47.7
2.0 605.7
31.5 57.3
6.1
11年上半期 6,635
15.9 49.3
3.0 364.7
29.1 59.9
5.0
(注)実行額は使用金額ベース。増減幅は前年(同期)比。
(出所)商務部「中国投資指南」
香港の対中直接投資の推移
実行額(左目盛り)
(億ドル)
700
13,633
500
14,831
178.6 177.0
16,000
13,070
364.7
10,701
277.0
300
605.7
12,857
460.8
410.4
10,845
400
200
16,208
15,496
14,719
600
契約件数(右目盛り) (件数)
18,000
190.0 179.5 202.3
14,000
12,000
10,000
8,000
6,635
100
6,000
4,000
2,000
0
0
02
03
04
05
06
07
08
(出所)商務部台港澳経貿統計
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52
09
10
11
香港政府エコノミストで、経済分析部高級経済主任を務める侯家俊(デスモンド・ホー)氏は、こ
の実績を当然のものとして受け止めるとともに、「中国は直接投資を引き付けるエリア。そして香
港は(中国進出のための)ビジネスハブで、対中直接投資のチャネルとして大いに活躍している」
と評価している。こうした香港経由の投資のメリットとしては、税の優遇措置に加えて、投資の匿
名性確保を挙げる声もある。
<アジア地域の経済活力が支えに>
今後の対中直接投資を占う上では、中国・アジア地域の経済動向がカギを握る。ホー氏は「健
全なファンダメンタルズの下、ほとんどのアジア地域は経済活力を維持する」とみる。その上で今
後の香港経済は、米国経済の回復ペースに一定程度依存して不透明感は残るものの、上記地
域の経済活力に支えられ、対中直接投資は(減速しつつも)引き続き伸びていく可能性があると
いう。また、人民元の国際化や(華南との)経済統合の動きも対中直接投資の流れを支えていく
とみている。
<投資対象業種は多様化>
対中直接投資の内容を業種別にみると、「経済貿易緊密化協定(CEPA)の後押しもあり、製造
業だけでなく、小売業、銀行業や観光業など多様化している」(ホー氏)という。
例えば、香港のデベロッパー各社は、沿海部を中心に大型商業施設を建設する計画を打ち出
しており、飲食・小売業は、中国に展開した店舗網を拡充させる動きをみせている。さらに、銀行
は内陸部への進出を含めて支店網の充実を図っている(表 2 参照)。
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53
表2 11年以降の香港企業の対中投資事例
不
動 ○新世界発展:今後4年間に、武漢と瀋陽に計190億元を投資する計画。コンベンションセ
産 ンター、ホテル、オフィスビル、サービスアパートメント、ショッピングセンターなどの複合施設
開 を開発。傘下のK11コンセプツ(高級ショッピングモール「K11」を運営)は、今後3~5年以内
発 に80億香港ドルを投じて中国本土にモール7店をオープンする予定。また、2014~17年に
・ 上海、瀋陽、北京、広州、海口などへの出店を検討している。
イ ○恒隆地産:14年までに、瀋陽、済南、天津など6ヵ所で大型商業施設をオープンする。10
ン ~13年の間に対中投資を集中的に行う予定で、新プロジェクトに対して500億元を投資す
フ る計画。
ラ
○ワトソンズ(ドラッグストア大手):中国本土の店舗網(現在700店)を拡大、11年末までに、
新たに1,000店を120都市にオープンすると発表した。同社は 20年以上前に中国本土に進
出し、現在では最大級のドラッグストアチェーンに成長している。
○イオンストアーズ(香港):11年、華南地域にさらに5店をオープンする予定。
○利福国際集団:沿岸部主要都市(蘇州、大連、天津)で「そごう」デパートを展開。13年ま
でに瀋陽で開店予定。同社全体に占める中国事業の売り上げ割合は、現在の25%から5
年以内に50%まで上昇する見通し。
飲 ○大家楽(中華式ファストフード店):11年、華南地域の35ヵ所に追加出店を予定。6月14日
食 時点で中国本土の総店舗数は86店に拡大した。今後、中国本土での事業展開を強化し、
・ 毎年30~35店を出店する予定。14年3月までに中国本土の店舗数を200店にするのが目
小 標。投資金額は約6,000万~8,000万香港ドル。
売 ○美心集団(外食大手):香港式大衆カフェスタイルの店舗で中国本土への本格進出を図
り る。9月中に深センに2店をオープンする予定。13年第1四半期までに華南で12~15店を展
な 開したところで、中国本土北部への店舗展開を検討する。
ど ○金至尊(アクセサリー):現在、中国本土での店舗数は約290店で、11年中に300店に達
する計画。中国本土に毎年100店を出店する予定。
○卓悦(化粧品、日用品の小売店):11年末までに10店をオープンする予定。また、美容院
については、13年までに中国本土の店舗数を5店とする計画。
○莎莎国際(化粧品、日用品の小売店):11年末までに中国本土に40~50店をオープンす
る予定。11年3月時点で中国本土の総店舗数は47店。
○ジョルダーノ(カジュアルウエア):11年中にさらに23店をオープンする予定。3月時点で
中国本土の総店舗数は1,211店と大幅に増えている。
主要行は軒並み支店網拡充と独自サービス提供に努めている。
○恒生銀行:現在、中国本土の13都市に38拠点を展開。上海、深セン、広東、北京の4都
市に集中的に展開する計画。
銀
行 ○HSBC:11年3月時点で28都市に108拠点があり、中国本土で拠点が最も 多い外資銀行
になっている。中国本土の村鎮銀行の設立を積極的に行い、農村金融業務を充実さ せる
計画。
○東亜銀行:現在、中国本土の30都市に98拠点を展開。
(注)1元=約12円、1香港ドル=約9.9円。
(出所)各社資料を基に作成
(白井宏幸)
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54
両岸関係緊密化で認可額が過去最高を更新(台湾)
●中国北アジア課発
2011 年上半期の台湾の対中直接投資(認可ベース)は、前年同期比 8.3%増の 77 億 9,386
万ドルと上半期ベースで過去最高を記録した。中国側の金融分野をはじめとする投資規制緩和
措置や、海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA)に基づく投資分野でのアーリーハーベストの実
施などが追い風になった。
<対外直接投資に占めるシェアも過去最大に>
上半期の対中投資は、件数が前年同期比 1.5%増の 460 件(事後認可分を含む)、金額は
8.3%増の 77 億 9,386 万ドルと、上半期ベースで過去最高だった(表 1 参照)。ただし、伸び率は
大幅に縮小した。比較対象の 10 年上半期が、金融危機の影響からの急激な回復を受け、高い
水準(3.2 倍)だったことが要因として挙げられる。
表1 台湾の対中投資(認可ベース)
(単位:件、100万ドル、%)
事前認可
事後認可
計
件数 金額 件数 金額 件数 伸び率 金額 伸び率
09年
249 6,058 341 1,084 590 △ 35.4 7,142
27.8
10年
518 12,230 396 2,388 914
54.9 14,618 104.7
09年上半期
79 1,941
89
278 168 △ 55.0 2,219 △ 56.4
10年上半期
217 5,740 236 1,454 453 169.6 7,194 224.2
11年上半期
306 7,124 154
670 460
1.5 7,794
8.3
(注)事後申請は08年3月10日から可能になった。
(出所)台湾経済部投資審議委員会
また、対中投資の伸び率(8.3%増)が対外直接投資全体の伸び率(7.8%増)を上回ったことな
どから、台湾の対外直接投資額に占める中国のシェアは 84.7%となった。これは、初めて 8 割を
超えた 10 年(通年)の 83.8%よりも 0.9 ポイント高い(図参照)。
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55
台湾の対中直接投資(認可ベース)と
対外直接投資に占める対中投資のシェアの推移
投資額(左目盛り)
(億ドル)
シェア(右目盛り)
83.8 84.7
160
140
66.6 66.0 67.2
63.9
70
60.6
60
100
146.2
38.8
33.9
30
99.6
40
67.2 77.0 69.4 60.1 76.4
77.9
71.4
0
01
20
10
26.1 27.8
00
50
40
106.9
60
20
90
80
70.5 70.4
71.1
120
80
(%)
02
03
04
05
06
07
(出所)表1に同じ
08
09
0
10 11(年)
(上半期)
<規制緩和受け銀行の支店開設相次ぐ>
業種別にみると、投資額に占める割合が 25.4%と最も大きい電子部品は 3.1%増の 19 億 8,272
万ドルと、微増にとどまった(表 2 参照)。シェア 2 位のパソコン・電子製品・光学製品は 38.4%増
の 9 億 8,222 万ドルと好調だった。
表2 台湾の投資分野別の対中直接投資状況
(単位:件、100万ドル、%)
投資分野
件数 金額 構成比 伸び率
電子部品
97 1,983
25.4
3.1
パソコン・電子製品・光学製品
32
982
12.6
38.4
卸・小売り
56
593
7.6 116.9
金融・保険
14
548
7.0 342.9
化学材料
11
508
6.5 687.2
電力設備
21
403
5.2 △ 3.6
不動産
10
257
3.3 △ 69.0
非鉄金属
9
245
3.1 △ 58.5
自動車・部品
27
245
3.1
80.1
金属製品
21
235
3.0 △ 18.1
(注)事後認可案件も含む。
(出所)表1に同じ
特に伸び率が高かったのは、卸・小売り(2.2 倍)、金融・保険(4.4 倍)、化学材料(7.9 倍)だった。
うち卸・小売りでは、拡大する中国の消費市場を取り込むため、台湾企業の事業展開が引き続
き活発だ。「経済日報」(6 月 24 日)によると、食品・流通大手の統一企業は 11 年通年の対中投
資総額が前年(100 億台湾ドル、1 台湾ドル=約 2.6 円)を上回る見通しだという。
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56
金融・保険業では、中国側の投資規制緩和で銀行の支店開設が相次いでいる。10 年 1 月には
中台間の金融覚書(MOU)が発効し、台湾の銀行が中国に設置した駐在員事務所を支店に昇格
させることが可能になった(表 3 参照)。これを受け、10 年には銀行 7 行が行政院金融監督管理
委員会から支店開設の認可を取得し、うち 6 行がこれまでに中国側の認可を取得している。
11 年 1 月には、海峡両岸経済協力枠組み協定(ECFA、10 年 9 月発効)のアーリーハーベスト
条項による投資自由化措置第 2 弾が実施された。金融分野では外資の銀行の支店開設要件と
して通常、「駐在員事務所開設から 2 年経過したこと」が求められるが、台湾の銀行は開設から 1
年を経過すれば可能になるなど、さらなる規制緩和が行われた。これを受けて 11 年上半期には、
兆豊国際商業銀行、台湾銀行、玉山商業銀行の 3 行が行政院金融監督管理委員会から支店開
設の認可を取得。現在、中国側に対し認可申請中とみられる。
他方、前年同期比で落ち込みが大きかったのは不動産(69.0%減)と非鉄金属(58.5%減)だっ
た。
表3 台湾の銀行の中国での支店開設にかかわる行政院金融監督管理委員会からの
認可取得事例
【金融MOU発効】
銀行の駐在員事務所の支店への昇格申請が可能になる。
10年1月
(ただし駐在員事務所開設から2年経過しているなどの条件付き)
以下7行が台湾当局による支店昇格の認可を取得。
・第一銀行(上海支店)
・台湾土地銀行(上海支店)
・中国信託商業銀行(上海支店)
10年
・彰化商業銀行(昆山支店)
・国泰世華商業銀行(上海支店)
・華南商業銀行(深セン支店)
・合作金庫商業銀行(蘇州支店)
【ECFAのアーリーハーベストによる第2段階の投資自由化措置開始】
11年1月
銀行支店昇格申請条件のうち「駐在員事務所開設から2年経過」が1年に
短縮される。
以下3行が台湾当局による支店昇格の認可を取得。
・兆豊国際商業銀行(09年10月、蘇州駐在員事務所設立)蘇州支店
11年1~6月
・台湾銀行(10年2月、上海駐在員事務所設立)上海支店
・玉山商業銀行(10年4月、東莞駐在員事務所設立)東莞支店
(出所)行政院金融監督管理委員会のウェブサイトを基に作成
<四川省、遼寧省への投資額が大幅増>
地域別に対中投資の状況をみると、投資額に占める割合が 31.5%と最も大きい江蘇省では、
電子部品などの分野を中心に引き続き投資が活発で、14.6%増の 24 億 5,758 万ドルと 2 ケタの
伸びを示した(表 4 参照)。このほか伸び率が特に高かったのは四川省(5.6 倍)と遼寧省(5.8 倍)
だった。
四川省成都市は、重慶市とともにノートブックパソコンの生産拠点としての成長を目指しており、
10 年に米デルや中国国内メーカーのレノボが成都市に拠点設置を発表した。これを受け、両社
に OEM(相手先ブランドによる生産)供給の実績がある仁宝(COMPAL)や緯創(WISTRON)も 11
年に、経済部投資審議委員会から同市での生産販売拠点設置の認可を受けた。
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57
表4 台湾の地域別対中直接投資(認可ベース)
(単位:件、100万ドル、%)
省・市名
件数 金額 構成比 伸び率
江蘇省
122 2,458
31.5
14.6
上海市
39 1,106
14.2
7.5
広東省
100 1,053
13.5 △ 29.8
四川省
26
592
7.6
459.0
浙江省
28
542
7.0
81.8
福建省
38
400
5.1
0.5
遼寧省
9
355
4.6
481.8
山東省
7
247
3.2 △ 1.8
重慶市
20
220
2.8 △ 28.4
広西チワン族自治区
5
114
1.5 2,203.1
(注)事後申請案件も含む。
(出所)表1に同じ
<友達光電が中国企業に出資、大型パネル生産へ>
個別の投資案件をみると、最も投資額が大きいのは液晶パネル最大手、友達光電(AUO)によ
る昆山龍飛光電への間接投資で、投資額は 7 億 9,625 万ドルに達した(表 5 参照)。
表5 台湾の主な対中投資案件(11年上半期)
企業名
投資額
概要
友達光電
79,625 昆山龍飛光電への間接投資。
中国人寿保険
61,000
富邦金融
23,500
遠東新世紀
16,600
兆豊国際商業銀行 16,000
奇美電子
15,000
中国信託商業銀行 12,015
仁宝電脳工業
奇美電子
緯創資通
太平洋安泰人寿保険の株式の
19.9%を取得。
香港富邦銀行(香港)の普通株式
25%と特別株式3.28%を取得。アモ
イ銀行の株式の4.998%を取得。
遠東儀化(揚州)を設立(持ち株比率
は60%、中国石化儀征化繊が残りの
40%を取得)。
兆豊国際商業銀行蘇州支店を設立。
統宝光電(南京)への間接増資。
中国信託商業銀行上海支店を設立。
①仁宝投資(四川)を設立。うち8,000
万ドルを再投資し②仁宝電脳(成都)
を設立。さらに、400万を③仁宝管理
(成都)へ再投資。
南海奇美光電への間接増資。
(単位:万ドル)
事業内容
TFT液晶パネルの生産販
売
生命保険業務
銀行関連業務
純粋テレフタル酸の生産
販売
銀行関連業務
液晶モジュール組み立て
銀行関連業務
①対外投資業務
②ノートブックパソコンの
10,000
生産販売
③企業管理コンサル業務
10,000
液晶モジュール組み立て
デスクトップパソコン、マ
緯創ホールディングス(四川)を設立。 ザーボード、インター
10,000
また緯創資通(成都)を設立。
フェースカード・アダプ
ターなどの生産販売
(出所)表1に同じ
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58
台湾当局は 10 年 2 月、一部条件付きながらも大型液晶パネル、半導体ウエハー分野などで
対中投資規制の緩和に踏み切った。これを受け AUO は、3 月に江蘇省昆山市への液晶テレビ用
パネル(7.5 世代)の生産工場新設申請を経済部投資審議委員会に提出、10 年 12 月には同委
員会の認可を得た。
その後、当局は 11 年 3 月、大型液晶パネル分野の対中投資に関するさらなる規制緩和を発表。
第 6 世代以降のパネルについて、中国で建設できる工場は 3 棟までとする制限などは残しながら
も、中国企業への出資や買収を解禁するほか、台湾の工場より 1 世代以上前の技術に限定する
との制限を撤廃した。
これを受け AUO は、先の申請を取り消すとともに第 8.5 世代生産のため、中国の龍飛光電へ
の出資の認可を再度申請、11 年 6 月 22 日に認可を得た。韓国の LG ディスプレーやサムスン電
子などは、既に中国政府から中国での次世代パネル生産のライセンスを取得している。そうした
こともあり、AUO は、中国当局がパネルの供給過剰を懸念して次世代パネル生産に関する新た
なライセンスを発給する可能性は当面低いとみて、既にパネル生産のライセンスを取得している
龍飛光電への出資に切り替えたとされる。
<ヒト・モノ・カネの動きがますます活発に>
11 年に入って、中台間の投資規制緩和措置などが引き続き実施されており、これが対中投資
を後押しする 1 つの要因になっている。1 月に ECFA のアーリーハーベストによる関税引き下げ
措置と第 2 段階の投資自由化措置が開始されたほか、3 月には大型液晶パネルや金融分野で
さらなる対中投資規制緩和措置が実施された。7 月に経済建設委員会は、台湾の建設業者によ
る中国での不動産開発について、1 案件当たりの投資上限額を 5,000 万ドルとする規定を撤廃す
ることで関係省庁が合意に達した、と発表した。
投資以外の分野でも、6 月には両岸間の直行便を週 370 便から 558 便に増便することで中台
双方が合意したほか、中国人の台湾への個人旅行も解禁されるなど、中台間の関係緊密化に
伴う双方のヒト・モノ・カネの動きはますます活発化している。台湾企業による対中投資は今後も
引き続き増加が見込まれる。
(小林伶)
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59
製造業が高い伸び、非製造業は不振(韓国)
●ソウル発
2011 年上半期の対中直接投資(実行ベース)は前年同期比 20.4%増の 18 億 3,700 万ドルと
なった。製造業が 47.3%増の高い伸びを記録したが、非製造業は 23.0%減と不振だった。省市
別では韓国系企業が集中している山東省が 1 位だった。
<対中投資は全体に比べ低い伸び>
11 年上半期の韓国の対外直接投資(実行ベース)は、前年同期比 70.6%増の 121 億 4,000 万
ドルで、このうち対中直接投資は 20.4%増の 18 億 3,700 万ドルと、全体の 15.1%を占めた。韓国
の対外直接投資が高い伸びを記録したのは、石油関連の鉱業、金融・保険業などの急増による
ものだが、同分野の対中直接投資は不振だった。全体に占める対中直接投資の割合は、08 年
以来 10%台の状況が続いており、対外直接投資先の多様化が定着していることが分かる(図参
照)。
韓国の対中投資の推移
(100万ドル)
対中直接投資額(左目盛り)
対外直接投資に占める割合(右目盛り)
6,000
(%)
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11
(注)11年は1~6月の累計。
(出所)韓国輸出入銀行
<製造業の割合が 75.5%に上昇>
業種別にみると、製造業は前年同期比 47.3%増の 13 億 8,700 万ドル、非製造業は 23.0%減の
4 億 5,000 万ドルで、対中直接投資に占める製造業の割合は前年同期の 61.7%から 75.5%に上
昇した(表 1 参照)。製造業が伸びた理由としては、世界的不況で延期していた投資の実行、比
較対象となる前年同期の不振、などが指摘できる。
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60
表1 韓国の業種別対中直接投資(実行ベース)
09年
(単位:100万ドル、%)
10年
11年上半期
上半期
金額 構成比 金額 構成比
3
0.2
2
0.1
1
0.1
3
0.2
941 61.7 1,387 75.5
21
1.4
30
1.6
7
0.4
7
0.4
50
3.3
17
0.9
22
1.5
45
2.4
12
0.8
5
0.3
1
0.1
1
0.1
1
0.1
1
0.1
0
0.0
0
0.0
9
0.6
4
0.2
88
5.8
96
5.2
1
0.1
1
0.1
5
0.3
28
1.5
8
0.6
25
1.4
65
4.3
90
4.9
58
3.8
19
1.0
金額 構成比 金額 構成比
農業・林業・漁業
7
0.3
7
0.2
鉱業
3
0.1
4
0.1
製造業
1,683 79.5 2,282 72.1
食料品
57
2.7
67
2.1
飲料
47
2.2
14
0.4
繊維製品
42
2.0 105
3.3
縫製・衣服・帽子
18
0.9
35
1.1
皮革・かばん・靴
38
1.8
18
0.6
木材・木製品
5
0.2
1
0.0
パルプ・紙・紙製品
5
0.3
6
0.2
出版・印刷
2
0.1
1
0.0
コークス・石油精製品
22
1.0
23
0.7
化合物・加工製品
133
6.3 176
5.6
医療用物質・医薬品
5
0.2
2
0.1
ゴム・プラスチック
46
2.2
49
1.5
非金属鉱物製品
155
7.3
62
2.0
一次金属
66
3.1 132
4.2
組立金属
100
4.7 116
3.7
電子部品・コンピュータ・映像・
431 20.4 900 28.4 352 23.1 284 15.5
音響・通信装置
医療・精密・光学機器・時計
26
1.2
20
0.6
14
0.9
13
0.7
電機装備
43
2.0
78
2.5
27
1.7
50
2.7
その他機械装置
105
5.0 171
5.4
73
4.8 352 19.2
自動車・トレーラー
165
7.8 159
5.0
47
3.1 237 12.9
その他輸送機械装置
108
5.1
71
2.2
59
3.9
10
0.6
家具
9
0.4
7
0.2
2
0.1
2
0.1
その他製造業
53
2.5
69
2.2
18
1.2
68
3.7
電気・ガス・水道
1
0.0
7
0.2
0
0.0
0
0.0
下水・廃棄物処理・原料再生・環境
1
0.0
2
0.1
1
0.1
2
0.1
関連業
建設業
59
2.8
31
1.0
14
0.9
13
0.7
卸・小売り
157
7.4 220
6.9
90
5.9
99
5.4
運輸業
22
1.0
39
1.2
4
0.2
33
1.8
宿泊・飲食店
35
1.6
35
1.1
28
1.8
5
0.2
出版・映像・放送通信・通信サービス
18
0.9
9
0.3
5
0.3
13
0.7
金融・保険業
50
2.3 347 11.0 340 22.3
1
0.1
不動産・賃貸業
26
1.2
12
0.4
4
0.3
17
0.9
専門・科学・技術サービス
30
1.4 127
4.0
60
3.9 255 13.9
事業サービス業
3
0.1
2
0.1
1
0.1
4
0.2
公共行政、国防および社会福祉
0
0.0
0
0.0
0
0.0
0
0.0
サービス
教育サービス
5
0.2
4
0.1
1
0.1
0
0.0
保険・社会福祉
0
0.0
2
0.1
0
0.0
0
0.0
18
0.8
8
0.2
5
0.3
2
0.1
芸術・スポーツ・余暇関連サービス
協会団体・修理・その他個人サービス
2
0.1
28
0.9
27
1.8
2
0.1
合計
2,117 100.0 3,165 100.0 1,525 100.0 1,837 100.0
(出所)図に同じ
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61
製造業をさらに詳しくみると、「自動車・トレーラー」、「その他機械装置」が大幅な伸び(前年同
期のそれぞれ 5.0 倍、4.8 倍)を記録したが、これまで投資額が多かった「電子部品・コンピュータ・
映像・音響・通信装置」は 19.3%減った。非製造業は全般的に不振だったものの、「専門・科学・
技術サービス」は前年同期の 4.3 倍になり、非製造業を牽引した。
対中直接投資を省市別にみると、韓国系企業が集中している山東省が 5 億 3,000 万ドルで全
体の 28.8%を占めて 1 位、次いで江蘇省、北京市が続く(表 2 参照)。そのほか、遼寧省、上海市
と上位 10 位までの省市は従来から投資が多かった地域が占めており、上位 10 省市の対中直接
投資に占める割合は 96.8%に達する。
表2 韓国の省市別対中直接投資(実行ベース)
(単位:100万ドル、%)
09年
10年
11年上半期
順
省・市名
位
金額 構成比 金額 構成比 金額 構成比
1 山東省
429
20.3
678
21.4
530
28.8
2 江蘇省
487
23.0
753
23.8
283
15.4
3 北京市
166
7.9
119
3.8
148
8.1
4 遼寧省
241
11.4
279
8.8
318
17.3
5 上海市
136
6.4
234
7.4
108
5.9
6 天津市
185
8.7
275
8.7
148
8.0
7 浙江省
88
4.1
106
3.4
62
3.4
8 広東省
106
5.0
163
5.2
147
8.0
9 吉林省
19
0.9
327
10.3
27
1.5
10 四川省
9
0.4
13
0.4
8
0.4
上位10省市小計 1,866
88.1 2,948
93.1 1,779
96.8
合計
2,117 100.0 3,165 100.0 1,837 100.0
(出所)図に同じ
<下半期は電子、自動車に期待>
11 年下半期の対中直接投資は、米国債の格付け引き下げや南欧の財政危機など、欧米経済
の先行きが不透明なため不振が予想されるが、通年では前年を上回る見込み。サムスン電子の
液晶ラインの中国移転計画や現代自動車の第 3 工場稼働(12 年 3 月)など、一部の業種では好
材料もある。
〔李海昌(イ・ヘチャン)〕
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62
日系企業の主な対中直接投資案件(2011 年上半期)
企業名
概要
明治ホールディ
資本金3,200万ドル
ングス
食
料
品 三菱商事・伊藤
ハム・米久
(MIY)
木
材
・
北越紀州製紙
パ
ル
プ
化
学
・ 武田薬品工業
医
薬
ゴ
ム
・ 東海ゴム工業
皮
革
フェローテック
ガ
ラ
ス
・
土
石 旭硝子
概要
明治ホールディングスは3月28日、江蘇省蘇州市に「明治乳業(蘇州)」を設立した。牛
乳、ヨーグルト市場の規模が大きく成長性も高い中国に、独資の製造拠点を設立し市場
参入する。
持株会社の投資は2017
年までに総額100億元
(約1,250億円)を予定。
うちMIYは33億元(約413
億円)。
三菱商事、伊藤ハム、米久は6月22日、中糧集団(COFCO)の中国内における豚・鶏な
どの家畜生産と食肉処理・加工・販売事業、食肉輸入事業への参画を決定した。3社は
投資会社MIYを設立し、MIYはCOFCOの子会社・中糧香港と共同でCOFCOの食肉部門
を統括する持ち株会社を設立する。3社の技術力やノウハウをCOFCOの事業基盤に投入
し、安全・安心かつ高品質な食肉および加工食品の安定的・効率的供給体制を立ち上
げる。
①資本金5,000万ドル
②資本金5,000万ドル
北越紀州製紙は5月18日、香港の合弁会社①「星輝投資」と、広東省の製造販売孫会社
②「江門星輝造紙」の設立を発表した。①は香港企業と三菱商事との合弁、②は①の
100%子会社。安定した成長が見込める中国白板紙市場に、高品質・高効率・低環境負
荷の生産体制を築き上げてきた同社の技術力に基づいて生産される白板紙を提供する。
①資本金7,500万ドル
②資本金5,000万ドル
武田薬品工業は3月21日、上海市に中国統括子会社である①「武田(中国)投資」を設立
した。中国事業拡大に向けた戦略を立案・遂行するとともに管理部門および開発部門を
保有し、今後、中国における新製品の開発推進や、天津武田の営業人員増員および生
産設備の更新など、中国における投資活動全般を担う。天津武田薬品における営業人
員の増員も決定。4月28日には、統括会社の100%子会社として、販売会社である②「武
田薬品(中国)」を江蘇省泰州市の特区である中国医薬城に設立した。
資本金5,000万元
東海ゴム工業は6月16日、中国向けの自動車用ゴム・樹脂製品を開発する新会社「東海
橡塑技術中心(中国)」を、浙江省嘉興経済開発区に設立することを発表した。中国での
自動車用ゴム・樹脂製品の現地開発体制を構築する。日本・北米・タイに続く4つ目の開
発拠点。
①資本金1億元
②資本金5,000万元
フェローテックは4月22日、中国子会社である①寧夏銀和新能源科技と②寧夏富楽徳石
英材料の2社が、寧夏回族自治区銀川市に製造拠点設立認可を取得したことを発表し
た。太陽電池市場の拡大に伴い、太陽電池用シリコンインゴットおよび単結晶引き上げ装
置用の石英るつぼの増産を図る。
資本金22億円
旭硝子は5月11日、TFT液晶用ガラス基板の製造(加工)・販売子会社である「旭硝子顕
示玻璃(深圳)」を、広東省深セン市に設立することを発表した。液晶テレビやパソコンの
販売は新興市場を中心に拡大しており、フラットパネルディスプレー市場が今後年率
10%以上で成長し続けることが見込まれている。特に中国ではTFT液晶パネル需要の急
拡大により大型液晶パネルの生産拠点設置が相次ぎ、その生産に必要な大型ガラス基
板のさらなる需要の拡大が予想される。
淀川製鋼所
淀川製鋼所は3月18 日、センユースチールと共同で、安徽省合肥市に子会社を設立す
資本金約8,000万ドル
(約65億円、淀川製鋼所 ることを発表した。白物家電産業用鋼板のPCM(塗装鋼板)需要を確実に捉えるには、現
地に製造拠点を設けることが不可欠と判断した。
が60%出資)
神戸製鋼所
資本金5,014万ドル。
神鋼商務諮詢(上海、
100%出資会社)に
5,000万ドルを増資
鉄
・
非
鉄
・
金 JFEスチール
属
新日本製鉄
神戸製鋼所は3月24日、上海市に日本の高炉メーカーとして初めて統括会社を設立し
た。中国国内での投資・M&A、資金管理の一元化による効率的な資金活用、グループ
ガバナンス・リスク管理の強化、各種サポート業務などを行う。
資本金1億元(蘇州禾盛
86%、JFEスチール
10%、JFE商事上海
4%)
JFEスチールは3月31日、JFE商事(上海)貿易および蘇州禾盛新型材料とともに、家電
用、高級建材用PCM鋼板(塗装鋼板)および関連製品の製造・販売会社を江蘇省に設立
することを発表した。華東地域の家電メーカーの集積、中国需要の拡大に加え、環境保
護規制強化により家電メーカーの自社塗装のアウトソーシング化が進展し、PCM鋼板の需
要が拡大するとの判断が背景にある。
資本金7億4,000万元、
総投資額18億5,000万
元(約240億円)
新日本製鉄は4月22日、武漢鋼鉄(集団)と、ブリキ製造・販売の合弁会社である「武鋼新
日鉄(武漢)ブリキ」を、湖北省武漢市に設立することを発表した。武鋼との合弁事業によ
り、武鋼の事業基盤と新日鉄の技術を融合させ、現地からブリキ需要を捕捉する。
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63
クボタ
①資本金4億4,000万円
(クボタ50.5%出資)
②資本金8億円
③資本金7,300万ドル
(約60億円)
マブチモーター 資本金3,300万ドル
一
般
機
械
器
具 川崎重工業
電
気
機
械
器
具
クボタは3月7日、中国大手水処理エンジニアリング企業の安徽国禎社との合弁会社①
「久保田国禎環保工程科技(安徽)」、およびクボタ独資による新会社②「久保田環保科
技(上海)」を4月に設立することを発表した。中国水処理市場への本格参入、事業拡大
を目指す。合わせて、クボタとして初の地域統括会社③「久保田(中国)投資」(仮称)を
設立し、地域戦略の立案・実行と現地事業会社への経営支援を強化することを発表し
た。
マブチモーターは5月16日、江西省で2ヵ所目となる生産拠点をガン州市に設立すること
を発表した。需要拡大が見込まれる中国で、コスト競争力と生産・販売の拡大を追求す
る。
生産設備74億円
川崎重工業は5月30日、合弁企業である安徽海螺川崎装備製造のセメント製造設備の新
工場建設を発表した。新工場は、合弁相手の海螺水泥(CONCHセメント)が現在自社工
場向けに外部から調達している鋳造品などの消耗部品やセメントプラントを構成する主要
機器を内製化するためのもの。中国のセメント業界では、需要が旺盛である一方、生産効
率の低い旧型・小型の工場を廃止し最新鋭かつ大規模な新工場を建設する動きが出て
おり、セメントプラント主要機器や鋳造品などの消耗部品に対する需要も増加することが
見込まれている。
日本精工
資本金6,200万ドル(約
50億円)。投資金額1億
5,000万ドル(約120億
円)
日本精工は6月6日、安徽省合肥市の生産子会社設立および工場の建設について、合
肥国家高新技術産業開発区管理委員会と調印した。中国では、自動車産業や電機・工
作機械・鉄鋼・鉄道車両等の幅広い産業が急速に発展し、自動車軸受や産業機械軸受
の需要が大きく伸びているため、供給力を拡大する。
三菱電機
三菱電機は5月19日、江蘇省常熟市に、生産ラインの構築に必要なサーボや数値制御
装置(NC)などの駆動制御機器を製造・販売する新会社・三菱電機自動化機器製造(常
資本金3,500万ドル (約
熟)を設立することを発表した。FA 市場において「世界の市場」となった中国国内での需
31億5,000万円)
要、特にサーボや数値制御装置(NC)をはじめとする駆動制御機器需要の拡大に対し、
消費地生産体制を構築することにより、さらなる規模拡大と市場シェア拡大を図る。
ニチコン
資本金3,300万ドル
ニチコンは2月14日、江蘇省宿遷市に、子会社である尼吉康(宿遷)を設立した。パソコン
や薄型テレビ、家庭用ゲーム機など、デジタル民生機器に需要が拡大している導電性高
分子アルミ固体電解コンデンサと、太陽光および風力発電システムやエアコンおよび産
業機器用インバータ関連などのパワーエレクトロニクス分野で需要が増大している中高圧
の大型アルミ電解コンデンサの生産を増強する。
パナソニック、
DOWAホール
ディングス、住
友商事
資本金8,500万元(約11
億円、杭州大地環保
35%、パナソニックチャイ
ナ35%、DOWAエコシス
テム18%、住友商事
12%)
パナソニック、杭州大地環保、DOWAホールディングス、住友商事の4社は5月30日、廃家
電のリサイクル事業を行う合弁会社、「杭州パナソニック大地同和頂峰資源循環」を、浙江
省杭州市に設立することで合意した。浙江省における、廃家電5品目(テレビ、冷蔵庫、
洗濯機、エアコン、PC)の回収、解体処理および資源売却を行う。近年の経済成長によ
り、電気電子製品の普及ならびに高品位製品への置き換えが急速に進み、廃家電の量も
増大している。日本の家電メーカーによる中国のリサイクル事業進出は初めて。
三菱電機
1億7,500万元(約22億
4,000万円)
三菱電機は6月16日、第一汽車集団傘下の啓明信息技術と、カーマルチメディア製品の
開発・設計・製造・販売会社設立に関する合弁契約を締結した。啓明信息技術とは、
2004年から中国におけるカーマルチメディア製品のソフトウエアの開発で協業してきた。
今般、合弁会社を設立することで、現地開発力を一層向上させるとともに、カーマルチメ
ディア製品の製造・販売を強化する。
シャープ
資本金140万ドル
シャープは1月11日、上海市張江高科技園区に研究開発会社「シャープ先端科学技術
研究開発(上海)」を設立した。現地に密着したローカルフィット商品の創出に寄与する先
端技術の開発と、グローバル事業の核となるテーマの研究開発を行う。
フォスター電機
資本金750 万元(9,500 フォスター電機は2月24日、広西チワン族自治区崇左市に、子会社である豊達電機(香
万円)
港)の100%出資子会社を設立することを発表した。
AWは1月27日、江蘇省蘇州市に100%出資のAT生産会社「AW(蘇州)汽車零部件」を
アイシン・エィ・ 資本金1億ドル(約83億
設立することを発表した。主要得意先の現地での需要拡大が見込まれることから、新たに
ダブリュ(AW) 円)
生産会社を設立し中国での生産能力・品目の拡大を図る。
輸
送
機
械
器
具 ナブテスコ
資本金18億円(ナブテス ナブテスコは1月24日、江蘇省常州市に、今創集団」と合弁会社「江蘇納博特斯克今創
コ50%出資)
軌道設備」を設立した。鉄道車両用ブレーキ・ドア装置の製造・販売を行う。
資本金4,000万ドル
ナブテスコは6月24日、上海電気液圧気動との合弁で、江蘇省常州市に江蘇納博特斯
克液圧を設立することを発表した。中国建機市場向け走行用油圧モーターは、上海の子
会社で既に生産しているが、需要のさらなる拡大が予想されるため生産拠点を新設するこ
ととなった。
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三菱自動車
資本金3,000万元
三菱自動車は3月22日、上海に統括子会社である三菱汽車管理(中国)を設立を発表し
た。成長著しい中国自動車市場においてさらなる事業強化を図るため、技術、品質面を
中心とした管理統括会社を設立するもの。各事業会社に対して、技術、品質面などで支
援、管理業務を行っていく。
資本金2,300万ドル
日立化成は4月26日、河南省鄭州市に自動車用樹脂成形品の製造子会社である日立化
成工業(鄭州)汽車配件を設立することを発表した。
輸
送
スタンレー電気 資本金3,000万ドル
機
械
器
具
住友重機械工
資本金2,000万ドル
業
スタンレー電気は4月28日、上海市に地域統括会社「斯坦雷電気(中国)投資」を設立す
ることを発表した。中国における効率的な資金管理、新規投資対応、法務・税務・金融な
どの情報提供を行い、成長著しい中国の事業環境に即応できる体制を確立する。また、
中国グループ会社のガバナンスを強化する。
日立化成
住友重機械工業は5月9日、上海市内に建機リース会社を設立することを発表した。
タチエス
資本金5000万元
タチエスは4月6日、50%出資子会社である鄭州泰新汽車内飾件が東風日産乗用車公司
の自主ブランド「ヴェヌーシア」向けに自動車用シートを供給するため、合弁会社である鄭
州東風李爾泰新汽車座椅を、湖北省武漢市に設立したことを発表した。
日本精機
1億3,190万元(約16億
5,000万円、日本精機
75%)
日本精機は3月17日、中国において四輪車用計器の製造・販売を手掛ける合弁会社で
ある日精儀器武漢を、湖北省武漢市に設立することを発表した。四輪車用計器のシェア
拡大を目指す。
東レ、東レ・メ
ディカル
資本金6,000億元〔東レ
50%、東レ・メディカル
25%、即発集団 15%、
東麗(中国)投資 10%〕
東レおよび東レ・メディカルは5月30日、青島即発集団との合弁により、人工透析機器の
製造・販売会社である東麗医療科技(青島)を設立することを発表した。東レグループの医
薬・医療材事業にとって初の海外生産進出。中国市場では医療保険制度整備などの国
家施策の後押しにより、人工透析の大きな需要増加が見込まれているが、現在の中国市
場の透析機器需要の大半は輸入製品で賄われていることから、東レグループは市場ニー
ズに迅速に対応するべく、現地供給体制を構築する。
投資金額30億円
日立メディコは5月30日、子会社の日立医療系統(蘇州)を通じ、江蘇省蘇州市に工場を
新設することを発表した。将来の新興国向け製品の生産拡大に対応する。将来的に新興
国向け新製品の展示施設、中国を含むアジア地域の営業員・サービス員の教育・訓練施
設も併設し、「アジア開発センター」の位置付けで運営していく計画。
資本金2,250万ドル(約
18億円)
HOYAは6月16日、山東省威海市に生産拠点を設置することを発表した。デジタルカメラ・
光学レンズ市場は、今後も中国を中心とした新興国市場において産業集積が進み、需要
増加が見込まれているほか、原料調達でも中国を中心とした資源産出国との関係が重要
度を増している。中国に新たな生産拠点を設置し、市場に密着し高機能・高品質な光学
ガラス製品を生産し市場へ提供していく。
設備投資額80億元
積水ハウス4月15日、遼寧省瀋陽市の鉄骨住宅の生産工場に着工した。中国国内向け
次世代省エネ・高性能工業化住宅需要に対応すべく、瀋陽市が進める国家プロジェクト
の産業団地「現代建築産業パーク」の中核企業として進出するもの。
精
密
機
械 日立メディコ
器
具
HOYA
建
設 積水ハウス
業
卸
・
小 江守商事
売
業
積水ハウスは5月19日、江蘇省蘇州市に、現地開発業者の蘇州常成置業と合弁会社・積
資本金2億5,975万ドル 水常成(蘇州)房地産開発を設立することを発表した。蘇州市や瀋陽市において戸建住
(約211億円、積水ハウス 宅(タウンハウス)およびマンション群の大型都市開発を計画しており、全体で7,000戸、
97.85%)
売り上げ規模は2,000億円程度を予定している。蘇州市相城区では、合弁会社を通じマ
ンション開発(総戸数 約2,000戸)を行う。
資本金2,500万ドル
江守商事は4月11日、同社のアジア統括会社の100%子会社である意愛崎(上海)国際
貿易を上海市に設立することを発表した。中国地域の商社営業業務の拡大を目指す。
(資料)各社プレスリリースより作成
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