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公共事業の正しいあり方について

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公共事業の正しいあり方について
公共事業(運営委託・業務委託等)の正しいあり方について
第 二 回 報告書
(平成21年6月1日)
東京都議会自由民主党
入札・契約制度改革プロジェクトチーム
公共事業(運営委託・業務委託)の正しいあり方について
目
次
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
Ⅰ.まえがき
Ⅱ.公共事業の正しいあり方について
1. 運営委託
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
2. 業務委託
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
3. 都政の政策と連動した公共事業のあり方について
・・・・・・・・・・・・・・
9
Ⅲ.監理団体をどのように位置づけ、どう活用していくのか
1. 監理団体のあるべき姿とは
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
2. 指定管理者制度の視点から見た、都政の現場としての監理団体 ・・・・11
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
Ⅳ.あとがき
Ⅴ.参考資料
資料1
東京都における指定管理者制度の適用を改めて整理すべき主な
「公の施設」
資料2
公園事業費予算の推移
資料3
公営住宅の管理代行制度の実施状況
資料4
平成 7 年度~平成 20 年度東京都庁舎清掃業務請負業者及び金額一
覧
資料5
メンテナンスと耐用年数
資料6
都庁舎における削減義務達成に向けた取組方針
資料7
「公の施設」の管理における外郭団体の優位性
Ⅵ.東京都議会議事録
Ⅰ
まえがき
昨年9月に発表した、建設業、土木業など、工事関係の入札を主なテーマと
した私たちの「公共事業(工事)の正しいあり方について
第1回報告書」は、
都の入札契約制度研究会中間報告と前後して発表されたこともあり、今後の制
度改革に向けて関係者に大きな期待をもたれることになった。
しかし、一方で私たちは、第1回報告書を作成しながら、工事関係以外の公
共事業、例えば運営委託や業務委託などに対しても、今のままの制度でよいの
だろうかとの問題意識をもっていた。
公共事業にはいろいろな種類なものがある。住民からさまざまな行政に対す
るニーズがあり、行政は日々そのニーズにこたえる努力をし、実際実行してい
る。より充実した住民サービスを提供する上で、さまざまな制度の質的向上は、
行政の不断の努力によるところが大きいが、住民に直接選ばれる都議会議員が
広く都政のあるべき姿を展望しながら、実態に見合った制度設計を提言してい
く意味は大きい。
そのような観点に立って、今回は運営委託、業務委託、都政の政策と連動し
た公共事業のあり方などについて検証し、さらに運営委託を担う場合の多い監
理団体についても、今後のあるべき姿を提言することになった。
私たちの各種提言が、今後都政のより一層の充実をもたらすことが出来れば
幸いである。
1
Ⅱ.公共事業の正しいあり方について
1.
運営委託
いわゆる、指定管理者に対する業務のアウトソーシングについてである。
従来の管理委託制度では、自治体が公の施設の管理を外部へ委託する場合、
委託先は公共団体や自治体の出資法人などに限定されていた上、管理上の権限
および責任は自治体側で有する必要があったため、自由度が狭く、住民ニーズ
を柔軟に反映することができなかった。
そこで地方自治法の改正により平成 15 年 9 月に導入された指定管理者制度
(都は平成 18 年度から本格導入)では、委託先に民間事業者や NPO なども指定
できるようになり、使用許可など管理上の権限も委ねられることにより、管理
の代行を行えるようになったことから、条例の範囲内での料金設定も可能にな
るなど、民間事業者のノウハウや競争原理を適用することによる経費削減、住
民サービスの向上がきると考えられてきた。
しかし、すべての制度がそうであるように、この制度とて万能なものではな
い。当初考えられてきた経費節減の目的は一定程度達成されたと考えられるが、
都としては本格導入から 3 年が経過したいま、公の施設が住民福祉に真に寄与
しているのかという本質的な観点に立って、次の点を的確に検証しておかなけ
ればならないのではないか。
①適正な水準の管理を適切な事業費をもって委託できているか
②都と指定管理者の責任範囲が明確に整理され、指定管理者が指定管理事業
費として必要な経費を確保することができているか
③公の施設の設置目的及び公の施設の管理運営を通じて達成を図ろうとして
いる政策目的が実行されているか
④指定管理者に運営委託されている 210(平成 21 年 4 月 1 日現在)といわれ
るそれぞれの施設が、真に指定管理制度になじむのなのか
⑤都と指定管理事業の主な受け手である監理団体との関係はどうあるべきか
私たちは平成 23 年までに、運営委託を実施している全ての指定管理事業を今
一度立ち止まって検証する必要があると考え、ここでは代表的な 2 つの指定管
理事業について検証する。
なお、210 の全ての事業・施設についての検証は今後の課題とするが、私たち
の考え方の基本は(資料 1)の通りであるので参照されたい。
2
①都立公園
ひとくちに都立公園といっても、多種多様な公園がある。文化財庭園、都市
公園、自然公園、多摩丘陵地の公園、大規模防災公園、海上公園、霊園など、
それぞれ目的も役割も違うものであることから、適切な管理運営には、独自の
ノウハウや技術が必要となる。現在、主として海上公園の多くは東京港埠頭株
式会社、その他の多くは東京都公園協会が指定管理者となっている。
東京都公園協会の資料によると(資料 2)、公園霊園管理費予算の最も多かった
平成 9 年度(131 億 600 万円)を基準としてみると、指定管理制度の始まった平成
18 年度はその 51.3%、67 億 1800 万円であり、平成 20 年度は 53%、69 億 5200
万円である。同じように 1 ㌶あたりの公園管理費を比較してみると、平成 9 年
度が 870 万円、平成 18 年度が 370 万円、平成 20 年度が 380 万円である。
都立公園の面積はこの 20 年間順調に増え続けているが、管理費自体は大幅な
減額である。検証すべき観点の①~⑤は、このような実績を踏まえての私たち
の問題提起である。
ここではっきり申し上げておきたいのは、指定管理者は、東京都の下請け業
者ではないということ。1 円でも安く事業を行なうことに血道を上げて、結果と
して都民の付託に応えられないことがあってはならない。
公園管理費が減額され、指定管理者のみならず、指定管理者からさらに業務
委託を受ける業者が、予算が少ないために適切な樹木の管理・清掃作業などが
出来ないという切実な声もある。
たくさんの予算をかければ必ず良くなるとは思わないが、予算を削りすぎた
弊害があちこちに散見されることは間違いない。指定管理制度による民間活力
の導入⇒経費節減⇒行政効率のアップ⇒住民福祉の向上…という予定された考
え方通りには、残念ながら進んでいないものもあることを、私たちは冷静に検
証すべきであろうと考える。
また、都立公園の中には観光政策と連動性の高い文化財庭園や防災政策との
連動性を持つ大規模公園などがあるが、こうした都の政策との連動性の強い都
立公園をコスト削減偏重の管理に陥らせることにも問題がある。
政策と連動した事業を公園内で実施したり、政策実現に相応しい管理レベル
を維持するためには相応のコストが必要となる。
コスト削減ばかりを重視し、本来、その公園が果たすべき役割を損なってし
まっては本末転倒も甚だしい。単に都民が利用できる公園としてだけではなく、
都の政策と連動した管理・運営が必要なものについては、コスト削減よりも政
策実現性を重視した、
「公の施設」としてのパフォーマンス向上につながる指定
管理者制度の構築が重要である。
3
②都営住宅
かつての都営住宅は、住宅局が設置・募集・管理を一元的に行なってきたが、
平成 16 年、住宅局は都市整備局都営住宅経営部となり、以後局から部への大幅
な組織変更のもとで運営されることとなった。
現在、都営住宅は全体で約 26 万 4 千戸あり、そのすべてを東京都住宅供給公
社が指定管理者として管理している。そもそも低所得者や障害者などの住宅困
窮者に対して直営で行っていた都営住宅事業が、ある一定の競争性を背景とし
てサービスの向上を目指す指定管理者制度になじむのかという問題は、検証す
べき観点の④に記述したとおりである。
つまり、住宅管理は、
「住宅」という人が生きていくために最も必要な部分を
取り扱うものであり、居住者の日常生活と切り離せない役割を負っていると考
えられることから、民間とは役割の違った都営住宅の管理・運営を実現する上
では、まずは提供するサービスの内容に継続性、安定性が求められること、ま
た東京都全体でおおむね同一水準のサービスを担保する公平性が求められるこ
と、さらに個人情報の厳重な管理などが求められる。
例えば地域ごとの指定管理者が違った場合にサービス格差発生の可能性が考
えられるが、この場合、同じ都営住宅での公平性は担保されないことになる。
また、同一地域で指定管理者が変更された場合に生じる、時期によるサービス
水準の格差という問題が今後予想されないか。
このように、居住者の生活に密接に関係する住宅管理の特殊性を考えた場合、
都営住宅の管理が指定管理者制度になじむのか、検証すべき課題ではないのか。
平成 17 年 6 月、公営住宅の管理に対して、新たに「公営住宅管理代行制度」
が創設された。この制度は、指定管理者制度よりもより継続的に、広い範囲で
権限を行使できる制度と思われるのだが、それならば直営方式とどのように違
うのか、どの程度メリットがあるのかなど、いまのところ判断が難しい。
現在、公営住宅を持つ 42 の都府県・政令指定都市の中で、管理代行制度を導
入している自治体は 23、そのうち、管理代行制度のみで行なっているのが 11
自治体である(資料 3)。こうした自治体の事例も参考にしながら、今後の都営住
宅がどうあるべきなのか、さらに検証が必要であろう。
以上のようなことから見えてくるのは、平成 18 年度以来行なってきた指定管
理者制度の実績を、①~⑤の項目を踏まえて検証し、いま一度今後の都政にお
けるアウトソーシングはどうあるべきなのかを考えることであろう。
特に③の政策目的の課題については、コスト削減ばかりに注目した安直な行
革議論の下で、現行の指定管理者制度が陥りやすい重要な問題であるので、十
分な精査が不可欠である。
4
さて、都政のアウトソーシングという課題は、石原知事が常々言及する「都政
は現場を持っている」という、その現場を行政自らが切り離していることとイコ
ールである。
もちろんそれは、財政再建が至上命題であった石原都政の 10 年間、必要があ
って行なわれてきたことであり、その結果財政再建は見事に達成されたのだが、
一方で現場を持つことの強みは、それぞれの事業で政策目的・地域社会・都民
などと密接に関わることにより、直接的な現場感覚から正しく真に必要な行政
施策を立案し実行できるという強みであったはずである。
石原知事が「都政は現場を持っている」と言った正にその現場を、これからも
アウトソーシングしていくとするならば、細心の注意を払いながらさらに以下
の課題について考える必要性がある。
① 都がこれからも現場を切り離していくとすれば、そもそも指定管理者を選
定し、指導する立場にある都職員の育成をどうするのか
② 都も指定管理者も、自身が持つ様々な技術やノウハウの継承が図れる仕組
みはどうあるべきなのか
③ それぞれの施設について、指定管理期間はどの程度が適切なのか。また指
定管理者の評価方法と適切な更新のルールとはどのようなものか
④ コスト削減と顧客満足度のバランスをどう捉え、二つの相関関係において
都政の目指す指定管理制度はどのようなものなのか
私たちは、このような点を今後のアウトソーシングにおける課題と捉えてい
る。全ての制度が 100%完璧なものではないので、平成 18 年度以来の経験と実
績を踏まえ、今後のより良い制度の構築が必要であると考える。
5
2.
業務委託
物品調達・委託・その他の業務委託については、財務局契約第二課が所管し
ているが、同課の契約実績のうち委託及び業務委託は、件数・金額とも7割以
上を占めている。その種類は多岐にわたっているので、私たちはその中でも代
表的なものとして、①印刷類、②建物維持管理(清掃、設備保守)
、③公園管理
委託を取り上げて検討した。以下、それぞれの検証から明らかになったことを
列記する。
① 印刷類について
印刷と印刷関連産業は東京の地場産業として、長年にわたって製造業では出
荷額第1位の地位を占めてきた。しかし昨今の業界を巡る状況は、デジタル化
や出版業の地盤沈下、あるいは中国などの安い労働力による価格競争の激化に
よって、大変厳しい環境におかれている。
そうした中、官公庁の入札では、ダンピングが問題となっている。ダンピン
グの背景には、信用を得るため(いわゆる「箔」をつける)から運転資金調達
のため、果てはどんな仕事でも設備を遊ばせておくよりはいい、などの事情が
あるといわれる。その結果、かなり高度の機密情報(カーナビの地図情報など
はその一例であるが)が中国に流出しているとの指摘もあり、看過できない問
題も含まれている。
これらを是正するためには、まず最低制限価格の導入が必要であろう。今ま
での印刷類の製造請負では最低制限価格が設定されておらず、入札になれば必
ずダンピングが横行すると言われてきた。
したがって印刷類はかなりの比率で随意契約となっている現実がある。いず
れにしても、
「見積もりの明細」を添付させて、例えば、
「紙代ゼロ」のような
無茶な積算ができなくなるような方策を検討する必要もある。
なお、発注者側の問題として、印刷の見積もり能力など職員の「技術力」が
失われているという指摘がある。技術系職員はもとより、職員全体の能力をア
ップさせる必要性が、ここにもあることは特に指摘しておきたい。
② 建物維持(清掃・設備保守)
建築物の維持管理費については、財政再建途上の予算シーリングの影響等で、
この 10 年間かなり切り詰められている。物件によっては、契約額が一時期の
半額以下になっているところもあり、さらに調べてみると、都庁舎や議会等の
建物清掃委託に至っては、平成 7 年と 20 年を比較してみると、軒並み 65%~
85%の減額となっている(資料 4)。
6
これは前年度実績を元に次の年度の予算を組んでいくため、年々事業費が少
なくなっているためであり、「都の入札に参加すると損をするので、参加しな
い」あるいは、「利益は出ないが、コマーシャルシンボルとして都の仕事を請
け負っている」といった声が頻繁に聞かれるのはそのためだ。
建築物のメンテナンスと耐用年数には、きわめて大きな相関関係があるとい
われる(資料 5)。ライフサイクルコストを考えると、いわゆる予防保全型の
丁寧なメンテナンスが求められるのではないか。また、働く人にしわ寄せがい
かないよう、適正な見積もりと最低制限価格導入など、品質確保のために改善
策を検討する必要がある。
仕様書に対する理解等を徹底し、積算ミスや事故発生を予防し適切な履行を
確保するため、事前説明会の開催も場合によっては検討する必要があろう。
さらに、障害者雇用を積極的に図るためには、障害者施策に対応した指導・
監督要員を配置できるような優遇措置も必要であろう。
これから都庁舎では、大規模改修が予定されている。費用として、建設費の
約半額の 780 億円が見込まれている。今までのメンテナンスに問題があった
とは思えないが、当初どのようにしたら修繕も含めた全体として効率的な設計
になるかという検討をしていたのかという疑問も浮かぶ。
ライフサイクルコストという概念をさらに重視すべきではないか。また、設
備保守などの技術者確保のためには、大手と中小では額は違うが、ある程度安
定した受注が必要であることも事実である。複数年契約のような、契約形態の
バリエーションを増やすことも検討すべきであろう。
③ 公園管理委託について
公園の管理委託については、道路の管理と同じ項目で扱われている。
しかし、公園の清掃や樹木の剪定には、伝統的な植木職人(庭師)の「庭の手
入れ」と同様、植物に対する知識や愛情、自然界の森羅万象に対する専門的な
勘と洞察力が必要であろう。
そういうことを抜きにして、価格だけで公園の管理を受託した業者が、抜い
てはいけない草花を抜き、切ってはいけない樹木の枝を切ってしまい、当初イ
メージした公園とは程遠い姿になってしまった事例が報告されている。
また同じように、わが国の最も美しい風景の一つである皇居周辺の見事な松
を、チェーンソーで軒並み刈ってしまった事例も笑えない事実である。価格が
全ての世界では、このようなことが現実に起こっている。
街路樹の剪定も同様で、周りの風景との統一感など、景観上の配慮が必要で
ある。しかしこの分野でも、本来の専門知識が無い業者が受託した場合、切れ
7
ばいいとばかりに街路樹が丸裸にされている例がある。
(社)日本造園建設業協会は、「街路剪定士」という業界内の資格をつくって
いるが、こういう資格、又はこれと同程度の技術者がいることを都の入札条件
に組み込むことも必要ではないか。
また、公園の管理では、指定管理制度も同様であるが、ある程度継続的な契
約をすることが必要な場合がある。他県の例であるが、日本の有名な庭園の剪
定業務を同一業者に 3 年間委託していたことがあった。
長期契約は不適当ではないかとの指摘を受け、市は造園学会に意見を求めた
ところ、「3 年では短すぎる、10 年程度が適当」という回答があったという。
公園管理で欠かせないのは人材の育成であるが、現在、求人募集をしても施工
業界では人が集まらないという問題も提起されている。
以上のように、いずれの業務委託でも、品質を確保するためにコスト最優先
を見直す必要があること、総合評価方式の入札制度を積極的に活用する必要が
あること、最低制限価格制度や入札時に見積書明細の点検を行うなど、ダンピ
ングを抑制していくための取組を強化する必要があること、受注者・発注者双
方が様々な分野における技術力(専門性)を強化する必要があること、などの
問題点が明らかになった。早急な改善が求められる。
8
3.
都政の政策と連動した公共事業のあり方について
「10 年後の東京」は、今後の都政の長期計画であり方向性を示すものである
が、そうした基本的な政策方針と公共事業は密接に連動すべきことは言うまで
もない。
いま、都庁舎の改修と、大規模施設の更新が行われようとしているが、たと
えば「環境」という切り口でこれらの事業を見たときに、環境に配慮した事業
計画、予算、耐用年数など、価格だけではない、考慮すべき課題が多いと考え
られるのはそのためだ。
入札契約制度にこのような考えを加味することが私たちは必要と考えるが、
今の制度、特に予定価格の事前公表を前提とした、価格面での競争によって落
札者を決める各種の入札制度では、このような考え方を導入することはかなり
難しいといわざるを得ない。
しかしながら、大きなくくりでの「環境」のような目指すべき政策にかかわ
る公共事業については、事業者とのより密接な協議の場を設け、民間のノウハ
ウも吸収しながらより良い方向性を見い出し、実績を上げて行く必要があるの
ではないかと思う。
都庁舎の改修を例にとって考えてみると、その意味合いはよりクリアーに見
えてくる。空調・電気設備など、CO2 削減のための機器の性能はどのレベルを
目指すのか、機器の耐用年数は何年に設定するのかなどは、実は価格との見合
いの中で相当の工夫の余地があるといわれる部分だ。裏を返せば、耐用年数の
短い機器を選択すれば、低価格はそれなりに実現できる。
それでいいと割り切る考えもあろうが、それで都民の期待に応えることがで
きるのだろうか。去る 3 月 30 日に出された「都庁舎における削減義務達成に向
けた取組方針」(資料 6)では、都庁舎の改修と合わせて CO2 削減の方針と「「省
エネ東京使用 2007」に基づき空調・電気設備等を高効率機器に更新」との言及
はあるものの、現時点で具体的な数値等にはふれていない。空調・電気設備に
ついては今年から設計に入ることになっているのだから、早急なる対応を求め
たい。
9
Ⅲ.監理団体をどのように位置づけ、どう活用していくのか
平成 21 年都議会第一定例会では、監理団体改革について本会議、予算委員会
で様々な議論が戦わされた。監理団体には無駄が多いと一方的に決め付ける民
主党に対して、私たちは監理団体が都政の一翼を担う重要なパートナーとの認
識を披瀝した。
その考え方の基本には、石原知事がわが党と一緒になって進めてきた監理団
体改革があり、石原知事就任当初、64 あった監理団体は現在 33 となり、すで
に半減している事実がある。今後監理団体は、質・量ともに更なる改革を進め
ていくべきことは言うまでも無いが、都民のための政策を実現する上での都政
の重要なパートナーであるという認識はいささかも揺るぐものではない。
そこで監理団体を今後の都政運営の中でどのように位置付け、どのように活
用していくのか、基本的な指針がなければならないと思う。
1.
監理団体のあるべき姿とは(資料 7)
監理団体はいうまでもなく東京都の外郭団体であるが、行政組織の外にあり
ながら、東京都から出資を受けるなどして補完的な業務をおこなう団体のこと
である。事業・活動の内容や人事などの面で東京都と密接な関連をもつが、設
立の経緯、目的、組織形態、出資割合や出向職員数について、そのあり方は多
種多様である。
都の監理団体は現在 33 団体、職員数(所要人員数)9022 人(都派遣 3238 人、
固有職員等 5784 人)。これだけの組織と人が都政の補完的役割を担っている。
団体の設立経緯や目的は様々だが、行政は監理団体(外郭団体)に対して、「行
政にない力」と「民間企業にない力」の両方を求めて組織をつくったはずである。
そうでなければ行政か民間企業のどちらかが事業を担えばよいわけで、監理
団体設立の意義はない。
監理団体(外郭団体)は従来、行政(第一セクター)でもなく、民間(第二
セクター)でもない、いわゆる第 3 セクターとの位置付けがなされてきたが、
私たちは本来的には公益性を最優先する行政と、経済効率性を最優先する民間
企業の間に立ち、その中間的性格による優位性を生かした、「1.5 セクター」とも
いうべき位置付けがふさわしいのではないかと考える。
そういう位置付けが監理団体に与えられるとするならば、「行政にない力」と
「民間企業にない力」の両方を発揮し、充実した都政運営のより重要なパートナ
ーとして機能することができるのではないか。監理団体のような組織が公益性
と効率性を十分に発揮し、都民福祉の向上に寄与する都政こそ、真に厚みのあ
る、わたしたちが目指すべき次世代の都政の一面であると思う。
10
2
指定管理者制度の視点から見た、都政の現場としての監理団体
運営委託の最後の部分で、都政は現場を持っている強みがあることを指摘し、
その現場を切り離している現実の中でいくつかの問題提起を行なった。ここに
再掲載する。
① 都がこれからも現場を切り離していくとすれば、そもそも指定管理者を選
定し、指導する立場にある都職員の育成をどうするのか
② 都も指定管理者も、自身が持つ様々な技術やノウハウの継承が図れる仕組
みはどうあるべきなのか
③ それぞれの施設について、指定管理期間はどの程度が適切なのか。また、
指定管理者の評価方法と適切な更新のルールとはどのようなものか
④ コスト削減と顧客満足度のバランスをどう捉え、二つの相関関係において
都政の目指す指定管理制度はどのようなものなのか
私たちはアウトソーシング自体を否定しないし、この手法自体は理にかなっ
ていると思っている。但し上記のような問題点があることに鑑み、制度をより
レベルアップさせる知恵が必要であると思うのだ。
特に人材育成の面では、いまの都政は危機的な状況にある。技術系職員の不
足について、第 1 回報告書でも指摘したが、財政再建を達成した石原都政は高
く評価すべきだが、一方で退職職員不補充の流れは、特に技術系職員の不足を
引き起こしている。
私たちは、監理団体からのヒアリングを通じて、監理団体こそ石原知事の言
う「都政の重要な現場」であることを実感した。したがって、監理団体との人
材交流をより活発にし、いろいろな都政の現場を経験させることで都職員のス
キルアップを図るべきと考える。
また技術系職員の人材交流はもちろん、監理団体が独自に採用する職員につ
いても、経営的に必要以上に減らす、または減らさざるを得なくなるような誘
惑にかられる仕組みであってはならない。人材育成には一定の経済的・時間的
コストがかかるのだから、業務内容による指定管理期間の長期化や、安定した
経営に資する指定管理制度のあり方はさらに研究されるべきであると考える。
11
Ⅳ.あとがき
都政のあるべき姿とはどのようなものか。
それには多種多様な切り口がある。例えば「10 年後の東京」を例にとってみ
ても、項目だけで 20 近くもあり、それぞれが東京のあるべき姿を実現するため
の政策である。
今回私たちのプロジェクトチームが取り上げた、運営委託・業務委託・都政
の政策と連動した公共事業のあり方、監理団体の活用などもまさにその一部で
あり、東京都議会自由民主党としての都政のあるべき姿を、それらの切り口で
検証し改革への提言を行ったものと理解していただきたいと思う。
したがって、さらに掘り下げていかなければならないテーマが多数あること
を承知の上で、今回はここで一区切りとした。
さて、今回は特に、都政の政策と連動した公共事業のあり方と、平成 18 年度
より導入された指定管理制度の検証を中心に、今後の都政のあるべき姿を提言
した。前回の報告書でも指摘したとおり、ここでも都政における人材の重要性
に触れざるを得ず、都庁職員のみならず、都政の現場として仕事を受託してい
る監理団体職員の質の向上も重要なテーマであることが浮き彫りになった。
つまり、適切なアウトソーシングは今後も必要であるのだから、インサイド(都
庁)とアウトサイド(監理団体等の指定管理者)には、ともに質の高い人材の確保
が必要であるということである。そのためにはどのような仕組みが必要なのか。
その具体的な手法についてはすでに論じたとおりである。
「組織は人なり」、という。まさに、どんなに完璧と思われる組織やルールを
つくっても、人材の質が伴わなければその仕組み自体が機能しないのは明らか
である。行政に対するニーズはますます多岐にわたり、限られた財源でそれを
実現するには相応の工夫が必要であろう。
指定管理制度などもその工夫の一つであったはずだが、導入後数年が経過し
たいま、更なるレベルアップが求められている。それはとりもなおさず、都政
のレベルアップであることに他ならない。私たちはそうした認識で、これから
も本プロジェクトチームを中心に、東京都議会自由民主党としてさまざまな課
題の検証を続けていく。
世に完璧な制度などありえない。あるべきは、完璧な制度を目指す努力と熱
意のみである。関係各位の一層の奮励努力を期待している。
12
編集後記
平成 17 年 7 月 23 日から始まった第 17 期東京都議会は、いよいよあと 1 ヶ
月の任期を残すのみとなりました。来る 7 月 12 日には、第 18 期の新しい都議
会議員の顔ぶれが決定します▼そんなあわただしい最中、この第 2 回報告書の
作成となりました。今期中に仕上げなければ意味がないという切迫感の中で、
多くの方々のご協力をいただき、何とかまとめることができました▼資料を提
供してくださった皆様、ヒアリングで貴重なご意見を聞かせてくれた皆様、ご
協力いただいた全ての方々に心より厚く御礼申し上げます。ありがとうござい
ました▼光陰矢のごとし…。つくづく、4 年間の任期は早いものだと思います。
あれよあれよという間に 4 年が経過し、私たちはこれから決戦の戦場に向かい
ます。全員が無事に帰ってくることはもちろん、東京都議会自由民主党の勝利
を確信しつつ、私たちはこれからも与党第一党の自信と責任感をもって、力強
く都政の発展に取り組んでいきます▼なお、本報告書の作成は、高島なおき座
長を中心に、秋田一郎・鈴木あきまさ・きたしろ勝彦・宇田川さとし・高木け
いの 6 名が担当いたしました。
13
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